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特許7679877推定装置、推定システム、推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】推定装置、推定システム、推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20250513BHJP
【FI】
A61B5/16 200
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023518571
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017463
(87)【国際公開番号】W WO2022234638
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】野崎 岳夫
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063963(JP,A)
【文献】特開2015-078919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0317044(US,A1)
【文献】米国特許第10898133(US,B1)
【文献】特開昭56-060531(JP,A)
【文献】特開2013-163010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0065549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
G10H 10/00-80/00
G06Q 50/22
A63B 69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取手段と、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定手段と、
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する運動強度推定手段と、
測定された前記心拍数の推移から算出された前記運動強度の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定する静定時間推定手段と、
前記疲労度と前記運動強度とを出力する出力手段と、
を備える推定装置。
【請求項2】
前記推定モデルは、前記心拍数の推移における最大心拍数である測定最大心拍数と前記安静状態における心拍数である安静時心拍数と、に基づいて、前記疲労度を推定する
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定モデルは、疲労度推定対象時点における心拍数にさらに基づいて、前記疲労度推定対象時点における前記疲労度を推定する
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記疲労度推定手段は、直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された時点における前記疲労度を推定し、
前記運動強度推定手段は、前記直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された前記時点における前記運動強度を推定し、
前記出力手段は、当該直近の心拍数が測定された前記時点における、前記疲労度と前記運動強度とを出力する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記疲労度が所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知を行う通知手段
をさらに備える請求項1乃至のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記心拍数測定装置と、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の推定装置と、
を含む推定システム。
【請求項7】
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取り、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定し、
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定し、
測定された前記心拍数の推移から算出された前記運動強度の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定し、
前記疲労度と前記運動強度とを出力する、
推定方法。
【請求項8】
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取処理と、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定処理と、
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する運動強度推定処理と、
測定された前記心拍数の推移から算出された前記運動強度の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定する静定時間推定処理と、
前記疲労度と前記運動強度とを出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心拍数を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人物の疲労の程度を表す疲労度を推定する技術のが、例えば以下の文献によって開示されている。
【0003】
特許文献1には、運動負荷の蓄積に基づく疲労度を算出する方法が記載されている。特許文献1に記載されている疲労度は、過去の日における疲労度がその日からの経過日数とその間の休息日数とに基づく減衰率で減衰する。
【0004】
特許文献2には、心拍の間隔の揺らぎに基づく脳疲労度と、仰向けの状態で測定された臥位時心拍数と立った状態で測定された立位時心拍数との差に基づく肉体疲労度とから、疲労度を算出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-033565号公報
【文献】特開2017-063963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、疲労度を算出するために運動負荷を得る必要がある。また、引用文献1の方法では、短い時間間隔で疲労度を算出できない。特許文献2の方法では、疲労度を算出するために、臥位時心拍数と立位時心拍数とを測定する必要がある。言い換えると、疲労度の算出の対象人物が、疲労度を算出するために特定の動作(すなわち、この例では、臥位になる動作及び立位になる動作)を行う必要がある。そのため、疲労度を算出するためには、少なくとも、臥位で心拍数を測定し、さらに、立位で心拍数を測定する時間が必要である。
【0007】
本開示の目的の1つは、疲労度の推定のリアルタイム性を向上できる推定装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る推定装置は、心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取手段と、心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定手段と、前記疲労度を出力する出力手段と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る推定方法は、心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取り、心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定し、前記疲労度を出力する。
【0010】
本開示の一態様に係る記憶媒体は、心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取処理と、心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定処理と、前記疲労度を出力する出力処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを記憶する。本開示の一態様な、上述のプログラムによっても実現される。
【発明の効果】
【0011】
本開示には、疲労度の推定のリアルタイム性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係る推定装置10の構成の例を表すブロック図である。
図2図2は、本開示の第1の実施形態に係る推定装置10の動作の例を表すフローチャートである。
図3図3は、本開示の第2の実施形態に係る推定システム1の構成の例を表すブロック図である。
図4図4は、本開示の第2の実施形態に係る推定システム1の実装の例を模式的に表すブロック図である。
図5図5は、本開示の第2の実施形態に係る受取部110が受け取る心拍数の推移の例を模式的に表す図である。
図6図6は、本開示の第2の実施形態に係る推定装置100の動作の例を表すフローチャートである。
図7図7は、本開示の第2の実施形態の変形例に係る推定装置100の動作の例を表すフローチャートである。
図8図8は、本開示の第2の実施形態に係る推定装置100の受取処理の動作を表すフローチャートである。
図9図9は、推定心拍数に対するBorg指標の例を表す図である。
図10図10は、計測された最大心拍数と心肺能力到達比率との関係の例を表す図である。
図11図11は、計測された最大心拍数と心肺能力到達比率との関係の他の例を表す図である。
図12図12は、心拍数の推移と、運動強度の推移とを表す図である。
図13図13は、心拍数の推移と、運動強度の推移とを表す図である。
図14図14は、心拍数の推移の例と、算出された傾きの直線の例を表す図である。
図15図15は、本開示の実施形態に係る推定装置の各々を実現することができる、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について図面を使用して詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
まず、本開示の第1の実施形態について説明する。
【0015】
<構成>
図1は、本開示の第1の実施形態に係る推定装置10の構成の例を表すブロック図である。図1に示す例では、推定装置10は、受取部110と、疲労度推定部120と、出力部130と、を備える。受取部110は、心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る。疲労度推定部120は、心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する。出力部130は、前記疲労度を出力する。
【0016】
心拍数測定装置は、例えば、ウェアラブル端末が備える、心拍数を測定する装置である。心拍数の推移は、例えば、所定時間ごとに算出された、単位時間当たりの心拍数の時系列データである。心拍数の推移は、少なくとも1つの期間に測定された心拍数の時系列データである。心拍数の推移に含まれる個々の心拍数(具体的には、心拍数の値)に、その心拍数が測定された時刻を表す値が関連付けられていてよい。心拍数の推移が2つ以上の期間に測定された心拍数の時系列データである場合、少なくとも1つの期間が、複数の測定時点を含み、他の期間は、1つの測定時点のみを含んでいてもよい。疲労度推定部120は、例えば、心拍数の推移に含まれる心拍数が測定された時点の疲労度を推定する。推定モデルと、心拍数の推移とによる疲労度の推定方法については、後で詳細に説明する。
【0017】
<動作>
図2は、本開示の第1の実施形態に係る推定装置10の動作の例を表すフローチャートである。図2に示す例では、受取部110が、心拍数の推移を受け取る(ステップS10)。言い換えると、受取部110は、心拍数の推移を表す情報を受け取る。次に、疲労度推定部120が、推定モデルと心拍数の推移とに基づいて、疲労度を推定する(ステップS11)。そして、出力部130が、推定された疲労度を出力する(ステップS12)。
【0018】
<効果>
本実施形態には、疲労度の推定のリアルタイム性を向上できるという効果がある。その理由は、疲労度推定部120が、推定モデルと、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移とに基づいて、疲労度を推定するからである。安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移とが得られていれば、疲労度を推定するために、新たな心拍数の測定を行う必要はない。従って、本実施形態の推定装置10は、疲労度の推定のリアルタイム性を向上できる。
【0019】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について、図面を使用して詳細に説明する。
【0020】
<構成>
図3は、本開示の第2の実施形態に係る推定システム1の構成の例を表すブロック図である。図3に示す例では、推定システム1は、推定装置100と、心拍数測定装置200と、出力装置300と、通知装置400とを含む。推定装置100は、心拍数測定装置200、出力装置300及び通知装置400と、通信可能に接続されている。
【0021】
<心拍数測定装置200>
心拍数測定装置200は、例えば、単位時間当たりの心拍数を測定し、測定した単位時間当たりの心拍数を、例えば所定時間ごとに出力する心拍計である。心拍数測定装置200は、心拍数を測定するたびに、測定した心拍数を推定装置100に送信してもよい。心拍数測定装置200は、2回以上の測定によって得られた心拍数を一度に推定装置100に送信してもよい。以下の説明では、心拍数測定装置200は、心拍数を測定するたびに、測定した心拍数を推定装置100に送信する。また、心拍数測定装置200が、心拍数の測定を開始してから中断するまでに計測され複数の心拍数の時系列を、心拍数の推移と表記する。上述のように、心拍数の推移に含まれる心拍数の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0022】
<出力装置300>
出力装置300は、例えば、ディスプレイである。出力装置300は、推定装置100とは異なる、コンピュータまたはサーバなどの情報処理装置であってもよい。出力装置300は、対象人物を管理する管理者が画面を見ることができる端末装置であってもよい。
【0023】
<通知装置400>
通知装置400は、心拍数測定装置200によって心拍数が測定されている対象人物に通知を行う装置である。通知装置400は、ディスプレイ、スピーカ、バイブレータ、発光素子などを備える。通知は、ディスプレイ、スピーカ、バイブレータ、発光素子などを用いて、音、光、振動、文字、画像などの少なくともいずれかによって行われる。
【0024】
図4は、本開示の第2の実施形態に係る推定システム1の実装の例を模式的に表すブロック図である。図4に示す例では、上述の心拍数測定装置200及び通知装置400が、ウェアラブル装置500に含まれる。心拍数測定装置200は、ウェアラブル装置500を装着する対象人物の心拍数を測定する。通知装置400は、ウェアラブル装置500を装着委する対象人物に対して通知を行う。ウェアラブル装置500は、歩行アシストロボットであってもよい。図4に示す例では、出力装置300は、ウェアラブル装置500に含まれていないが、出力装置300も、ウェアラブル装置500に含まれていてよい。そして、対象人物が、出力装置300による出力を確認できてよい。この場合、出力装置300が、通知装置として動作してもよい。
【0025】
通知装置400は、対象人物ではなく、対象人物を管理する管理者に通知してもよい。この場合、通知装置400は、例えば、管理者が保持する端末装置であってもよい。通知装置400は、例えば、管理者が画面を見ることができる端末装置であってもよい。
【0026】
<推定装置100>
図3に示す例では、推定装置100は、受取部110と、疲労度推定部120と、出力部130と、運動強度推定部140と、静定時間推定部150と、通知部160とを含む。
【0027】
<受取部110>
受取部110は、心拍数測定装置200から、心拍数測定装置200によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る。上述のように、受取部110が受け取る心拍数の推移は、測定された安静状態と活動状態とを、少なくとも1つの期間に含む状態の対象人物の心拍数の推移である。受取部110が複数の期間の心拍数の推移を受け取る場合、1つ以上の期間の心拍数の推移が、安静状態と活動状態とを含む状態で測定された心拍数の推移を含んでいなくてよい。安静状態と活動状態とを含む状態で測定された心拍数の推移を含まない心拍数の推移は、1つの時点で測定された心拍数のみを含んでいてもよい。
【0028】
図5は、本開示の第2の実施形態に係る受取部110が受け取る心拍数の推移の例を模式的に表す図である。図5は、対象人物がロボットスーツを装着した状態で測定された心拍数の推移と、対象人物がロボットスーツを装着せず心拍数測定装置200を装着た状態で測定された心拍数の推移とを表す。
【0029】
受取部110は、受け取った心拍数の推移(具体的には、心拍数の推移を表す情報)を疲労度推定部120に送出する。
【0030】
<疲労度推定部120>
疲労度推定部120は、受取部110から、心拍数の推移(具体的には、心拍数の推移を表す情報)を受け取る。疲労度推定部120は、心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、心拍数の推移と、に基づいて、対象人物の疲労度を推定する。具体的には、疲労度推定部120は、受け取った心拍数の推移から、心拍数の推移における最大心拍数である測定最大心拍数と、安静状態における心拍数である安静時心拍数と、を検出する。安静時心拍数は、例えば、心拍数の推移における最小の心拍数である。疲労度推定部120は、測定最大心拍数と、安静時心拍数と、疲労度推定対象時点における心拍数と、推定モデルと、に基づいて、疲労度推定対象時点における疲労度を推定する。疲労度及び疲労度の具体的な算出方法については、後で詳細に説明する。
【0031】
疲労度推定対象時点は、心拍数測定装置200によって測定された心拍数の推移の中で、最も新しい心拍数が測定された時点であってよい。
【0032】
疲労度推定部120は、推定した疲労度を、出力部130に送出する。疲労度推定部120は、推定した疲労度に、疲労度推定対象時点の時刻を関連付け、疲労度推定対象時点の時刻が関連付けられた疲労度を、出力部130に送出してもよい。
【0033】
疲労度推定部120は、推定した疲労度を、通知部160に送出する。疲労度推定部120は、推定した疲労度に、疲労度推定対象時点の時刻を関連付け、疲労度推定対象時点の時刻が関連付けられた疲労度を、通知部160に送出してもよい。
【0034】
疲労度推定部120は、心拍数の推移と、疲労度推定対象時点を表す情報とを、運動強度推定部140に送出する。また、疲労度推定部120は、測定最大心拍数を表す情報と、安静時心拍数を表す情報とを、運動強度推定部140に送出する。測定最大心拍数を表す情報は、例えば、測定最大心拍数の値と、測定最大心拍数が測定された時刻を特定する情報とである。安静時心拍数を表す情報は、例えば、安静時心拍数の値と、安静時心拍数が測定された時刻を特定する情報とである。なお、疲労度推定部120は、心拍数の推移及び疲労度推定対象時点を表す情報の代わりに、疲労度推定対象時点の心拍数を表す情報を、運動強度推定部140に送出してもよい。疲労度推定対象時点の心拍数を表す情報は、心拍数の推移及び疲労度推定対象時点を表す情報であってもよい。
【0035】
<運動強度推定部140>
運動強度推定部140は、疲労度推定部120から、心拍数の推移と、疲労度推定対象時点を表す情報と、測定最大心拍数を表す情報と、安静時心拍数を表す情報とを受け取る。運動強度推定部140は、心拍数の推移及び疲労度推定対象時点を表す情報の代わりに、疲労度推定対象時点の心拍数を表す情報を、疲労度推定部120から受け取ってもよい。
【0036】
運動強度推定部140は、心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する。具体的には、運動強度推定部140は、測定最大心拍数と、安静時心拍数と、強度推定対象時点における心拍数と、に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する。運動強度及び運動強度を推定する方法については、後で詳細に説明する。
【0037】
なお、強度推定対象時点は、適宜指定されてもよい。強度推定対象時点は、疲労度推定対象時点と同じであってもよい。以下の説明では、強度推定対象時点は、疲労度推定対象時点と同じである。
【0038】
運動強度推定部140は、推定した運動強度を、出力部130に送出する。
【0039】
運動強度推定部140は、心拍数の推移と、疲労度推定対象時点を表す情報と、測定最大心拍数を表す情報と、安静時心拍数を表す情報とを、静定時間推定部150に送出してもよい。
【0040】
<静定時間推定部150>
静定時間推定部150は、運動強度推定部140から、心拍数の推移と、疲労度推定対象時点を表す情報と、測定最大心拍数を表す情報と、安静時心拍数を表す情報とを受け取る。
【0041】
静定時間推定部150は、心拍数の推移に基づいて、静定時間を推定する。静定時間は、例えば、静定時間推定対象時点において対象人物の状態が座位安定状態に推移した場合における、静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が座位安定状態になるまでの時間である。静定時間推定部150は、座位安定状態を、対象人物の心拍数が安静時心拍数になる状態としてよい。静定時間推定部150は、疲労度推定対象時点を、静定時間推定対象時点としてよい。静定時間を推定する方法については、後で詳細に説明する。
【0042】
静定時間推定部150は、推定した静定時間を、出力部130に送出する。
【0043】
<出力部130>
出力部130は、疲労度を疲労度推定部120から受け取る。出力部130は、運動強度を運動強度推定部140から受け取る。出力部130は、静定時間を静定時間推定部150から受け取る。
【0044】
出力部130は、受け取った、疲労度と運動強度と静定時間とを出力する。例えば、疲労度推定対象時点が、受け取った心拍数の推移において最も新しい心拍数が測定された時刻であり、強度推定対象時点が、疲労度推定対象時点と同じである場合、出力部130は、最も新しい疲労度及び運動強度を出力することになる。この場合、心拍数測定装置200が継続的に測定した心拍数を推定装置100に送信し、出力部130が継続的に疲労度と運動強度とを出力することによって、リアルタイムに疲労度と運動強度とを知ることができる。また、上述のように、静定時間推定対象時点が、疲労度推定対象時点と同じであってもよい。そして、出力部130は、疲労度と運動強度とに加えて、静定時間を、継続的に出力してもよい。
【0045】
<通知部160>
通知部160は、疲労度を疲労度推定部120から受け取る。受け取った疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知部160は、対象人物に通知を行う。具体的には、通知部160は、受け取った疲労度の値と、所定レベルを表す閾値とを比較することによって、受け取った疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示しているか否かを判定する。受け取った疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知部160は、通知装置400が通知を行うように、通知装置400を制御する。さらに具体的には、通知部160は、例えば、通知装置400に、通知を行う指示を送信する。通知を行う指示を受け取った通知装置400が、対象人物への通知を行う。
【0046】
<動作>
次に、本開示の第2の実施形態に係る推定装置100の動作について、図面を使用して詳細に説明する。
【0047】
図6は、本開示の第2の実施形態に係る推定装置100の動作の例を表すフローチャートである。
【0048】
図6に示す例では、受取部110が、心拍数測定装置200から、心拍数の推移を受け取る(ステップS101)。次に、疲労度推定部120が、推定モデルと心拍数の推移とに基づいて、疲労度を推定する(ステップS102)。運動強度推定部140は、心拍数の推移に基づいて、運動強度を推定する(ステップS103)。静定時間推定部150は、心拍数の推移に基づいて、静定時間を推定する(ステップS104)。そして、出力部130は、疲労度と運動強度とを出力する(ステップS105)。また、出力部130は、静定時間を出力する(ステップS106)。なお、出力部130は、ステップS105の動作と、ステップS106の動作とを、まとめて行ってもよい。疲労度が基準よりも大きくはない場合(ステップS107においてNO)、すなわち、疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示していない場合、推定装置100は、図6に示す動作を終了する。
【0049】
疲労度が基準よりも大きい場合(ステップS107においてYES)、すなわち、疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示していない場合、通知部160が、通知を行う(ステップS108)。そして、推定装置100は、図6に示す動作を終了する。
【0050】
<効果>
異常で説明した本実施形態には、第1の実施形態の効果と同じ効果がある。その理由は、第1の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
【0051】
<第2の実施形態の変形例>
受取部110は、受け取った心拍数の推移(具体的には、心拍数の推移を表す情報)を運動強度推定部140に送出してもよい。この場合、疲労度推定部120は、心拍数の推移を運動強度推定部140に送出しなくてもよい。疲労度推定部120は、測定最大心拍数と、安静時心拍数とを、運動強度推定部140に送出しなくてもよい。その場合、運動強度推定部140が、受け取った心拍数の推移において、測定最大心拍数と、安静時心拍数とを検出する。
【0052】
受取部110は、受け取った心拍数の推移(具体的には、心拍数の推移を表す情報)を静定時間推定部150に送出してもよい。この場合、運動強度推定部140は、心拍数の推移を、静定時間推定部150に送出しなくてよい。また、運動強度推定部140は、測定最大心拍数を、静定時間推定部150に送出しなくてもよい。この場合、静定時間推定部150が、受け取った心拍数の推移において、測定最大心拍数を検出する。
【0053】
また、図6に示す動作では、ステップS101において受取部110が心拍数の推移を受け取っているが、受取部110は、例えば継続的に、心拍数を受け取ってもよい。そして、例えば、疲労度推定部120が、受け取った心拍数を記憶してもよい。言い換えると、疲労度推定部120が、受け取った複数の心拍数から、心拍数の推移を表すデータを生成してもよい。そして、疲労度推定部120は、心拍数の推移を表すデータを保持していてよい。疲労度推定部120は、心拍数を受け取った場合、受け取った心拍数を心拍数の推移の末尾に加えることによって、心拍数の推移を更新してもよい。疲労度推定部120は、保持している心拍数の推移に基づいて、上述のように、疲労度を推定してよい。この場合、複数の心拍数を受け取ることが、心拍数の推移を受け取ることに対応する。そして、この場合、図6のステップS101の代わりに、受取部110が心拍数を受け取り、疲労度推定部120が、受け取った心拍数を用いて、保持している心拍数の推移を更新する。以下で説明する図7が、この場合の推定装置100の動作の例を表す。
【0054】
図7は、本開示の第2の実施形態の変形例に係る推定装置100の動作の例を表すフローチャートである。
【0055】
図7に示す動作は、図6に示す動作と比較して、ステップS101の代わりにステップS201の動作を行う点が異なる。ステップS201において、推定装置100は、受取処理を行う。推定装置100は、ステップS102以降の動作において、図6に示すステップS102以降の動作と同じ動作を行う。推定装置100は、心拍数測定装置200から心拍数を受け取るたびに、図7の動作を繰り返す。
【0056】
図8は、本開示の第2の実施形態に係る推定装置100の受取処理の動作を表すフローチャートである。図8に示す例では、まず、受取部110が、心拍数測定装置200から、心拍数を受け取る(ステップS211)。具体的には、受取部110は、心拍数測定装置200から、心拍数を表す情報を受け取る。次に、疲労度推定部120が、受け取った心拍数を用いて、心拍数の推移を更新する(ステップS212)。具体的には、疲労度推定部120は、心拍数の推移の末尾に、受け取った心拍数を付加することによって、心拍数の推移を更新する。
【0057】
<効果>
本実施形態には、第1の実施形態の効果と同じ効果がある。その理由は、第1の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
【0058】
本実施形態には、対象人物の過労等を予防できるという効果がある。その理由は、対象人物の疲労度が、所定レベルよりも疲労が大きいことを示す場合、通知部160が通知を行うからである。
【0059】
<疲労度及び運動強度>
以下では、本開示の説明における疲労度について詳細に説明する。
【0060】
疲労度として、Borgスケール疲労度が、知られている。Borgスケールは、個人の体力、環境、全身疲労要因を考慮した臨床学でも認められている被験者の運動中の自分の感覚を主観的に評価する指標である。Borgスケールの例であるBorgスケール疲労度は、安静時心拍数が60であり、最大推定心拍数が220であると仮定して、心拍10拍分を1段階である15段階で疲労の程度を表した指標である。最大推定心拍数は、心拍数の最大値として推定される心拍数である。Borgスケール疲労度は、実運動計測でも実態に合う運動評価指標として知られている。なお、血中乳酸値の変化量や酸素飽和度の様な非線形な指標を説明するための修正ポルグ指標も存在する。Borgスケール疲労度の段階は、最大心拍数に対する心拍数の割合に基づいて定まる。Borgスケール疲労度では、ややきつい状態の心拍数が、最大推定心拍数の60%の心拍数であり、きつい状態の心拍数が、最大推定心拍数の85%の心拍数であると仮定されている。心拍数と、Borgスケール疲労度において使用される、最大推定心拍数に対する心拍数の割合との関係は、次式によって表される。
【0061】
【数1】
【0062】
数1において、aは、対象人物の年齢を表し、YBorg[%]は、パーセントを単位として表した、最大推定心拍数に対する心拍数の割合を表し、X^(すなわち、Xの上にハット記号がある変数)は、心拍数を表す。この式によって、YBorg[%]を指定した場合の、個人の心拍数X^を推定できる。以下の説明において、YBorg[%]を、Borg指標と表記する。数1に示す式によって、YBorg[%]を指定した場合の個人の心拍数X^を推定できるので、X^を推定心拍数とも表記する。
【0063】
数1の式は、次式のように変形できる。
【0064】
【数2】
【0065】
数2の式において、kageは、年齢によって定まる、直線の傾きに対応する。傾きkageは、年齢が低いほど小さい。
【0066】
図9は、推定心拍数に対するBorg指標の例を表す図である。図9には、年齢の異なる2名の推定心拍数とBorg指標との関係が示されている。
【0067】
図10は、計測された最大心拍数と心肺能力到達比率との関係の例を表す図である。心肺能力到達比率は、220から年齢を引いた心拍数が、心肺能力の限界(以下、心肺限界とも表記)であるとした場合の、心肺限界に対する心拍数の比率である心肺能力到達比率を表す。図10には、様々な条件のもとで測定された心拍数がプロットされている。図10における「装着有り」は、歩行アシストロボットを装着した状態で測定されたことを表す。「装着無し」は、歩行アシストロボットを装着しない状態で測定されたことを表す。
【0068】
図11は、計測された最大心拍数と心肺能力到達比率との関係の他の例を表す図である。
【0069】
図10及び図11に示す心拍数の計測時における対象人物による、測定された最大心拍数に対する、Borg指標が示す主観的指標は、自覚する状態とほぼ一致していたので、Borg指標は、ある程度、妥当な自覚症状の主観的指標を実現していると推定される。
【0070】
数1及び数2の式において、X^とYBorg[%]とを、時刻tにおいて測定された心拍数及びBorg指標とする拡張を行った場合、数1は次式のように表される。
【0071】
【数3】
【0072】
さらに、YBorg(t)[%]は、Borgスケールの定義より、観測された最大心拍数と安静時心拍数の範囲で、安静時心拍数をベースラインとし、最大推定心拍数が観測された時の心肺能力に対する、時刻tで計測された心拍数時の心肺能力の比率である。YBo rg(t)[%]は、心肺能力到達率、又は、最大心肺能力到達率とも表記される。
従って、YBorg(t)[%]は、運動前の安静時心拍数を基本ベースにした最大観測心拍数範囲での時刻tにおける心拍数の心肺能力コントラストと等価である。以下では、
観測された最大心拍数をXmaxと表記し、観測された安静時心拍数をXminと表記する。YBorg(t)[%]は、次式によって表される。
【0073】
【数4】
【0074】
数4の式において、x(t)は、時刻tにおいて測定された心拍数を表す。
【0075】
ところで、時刻tにおける、運動強度の2つである有酸素運動強度VO2maxは、その定義から、次式のように表される。
【0076】
【数5】
【0077】
数2及び数4の式から、次式が成り立つ。
【0078】
【数6】
【0079】
数6の右辺の分子と分母をそれぞれxmax-xminによって割ることによって、次式が得られる。
【0080】
【数7】
【0081】
数7の式を、数5に示すVO2maxによって表現すると、次式が得られる。
【0082】
【数8】
【0083】
次式は、数8の式の変形に使用されるパラメータである。
【0084】
【数9】
【0085】
次式は、数8の式を数9に示すパラメータを使用して書き換えた式である。
【0086】
【数10】
【0087】
数10の式を、VO2max(t)が左辺になるように変形した式が、次式である。
【0088】
【数11】
【0089】
数11に示すように、有酸素運動強度VO2max[%]は、ボルグ推定心拍数x(t)を変数とし
、係数αによる年齢パラメータと、個々人の心肺能力(最大観測心拍数xmax)と安静時心拍数xmin)で決まる簡単な一次関数で表現できる。数4及び数11の式に従って計算を行う
ことによって、従来のBorg指標の様な年齢条件だけでなく、個々人の心肺能力を考慮した運動強度が定量化と、リアルタイムでのBorg指標に基づく主観評価が可能になる。
【0090】
疲労度推定部120は、数4の式に従って、疲労度を推定する。具体的には、疲労度推定部120は、心拍数の推移における心拍数の最大値(すなわち、xmax)を、測定最大心拍数として検出し、心拍数の推移における心拍数の最小値(すなわち、xmin)とを、安静時心拍数として検出する。疲労度推定部120は、疲労度推定対象時点(すなわち、時刻t)における心拍数x(t)を用いて、数4の式に従って心肺能力到達率YBo rg(t)を算出する。疲労度推定部120は、算出した心肺能力到達率YBorg(t)に対応する疲労度を、疲労度推定対象時点における疲労度とする。
【0091】
図11は、心肺能力到達率と指標の例との関係を表す図である。図11には、心肺能力到達率と、Borg指標及び修正Borg指標との関係が示されている。疲労度推定部120は、例えば、算出した市内能力到達率が含まれる範囲に対応する指標(例えば、Borg指標又は修正Borg指標)を、疲労度とする。
【0092】
運動強度推定部140は、例えば、図11の式に従って、VO2max(t)を算出し、算出した有酸素運動強度VO2max(t)を運動強度とする。なお、運動強度推定部140は、数10の式におけるパラメータkを最初に算出し、算出したパラメータkを保持していてよい。そして、運動強度推定部140は、保持しているパラメータkと、強度推定対象時点(すなわち、時刻t)における心拍数(X^(t))とを使用して、有酸素運動強度VO2max(t)を算出してよい。
【0093】
<静定時間>
上述の静定時間推定部150の説明では、心拍数の推移が、対象人物が、最大心拍数の状態において安静状態になり、対象人物の心拍数が安静時心拍数になるまでに測定された心拍数の推移を含むように測定されていた。しかし、心拍数の推移がそのように測定されてない場合であっても、静定時間推定部150は、例えば以下のように、静定時間を推定できる。
【0094】
静定時間推定部150は、心拍数の推移において、心拍数の極大値と極小値とを検出する。静定時間推定部150は、検出された極大値と、その極大値が観測された時刻から時間方向で次に検出された極小値との間の、心拍数の変化の傾きを算出する。静定時間推定部150は、検出された極大値と、その極大値が観測された時刻から所定時間以上経過した後、次に検出された極小値との間の、心拍数の変化の傾きを算出してもよい。静定時間推定部150は、心拍数の推移に対して平滑化を行い、平滑化の後の心拍数の推移において極大値と極小値とを検出してもよい。複数の傾きが算出された場合、静定時間推定部150は、算出された傾きの統計値(例えば、平均値、中間値、又は、中央値等)を算出する。
【0095】
静定時間推定部150は、静定時間推定対象時点(時刻t)において測定された心拍数(x(t))から、算出された傾きによって表される減少率で心拍数が低下した場合に、心拍数が座位安定状態の心拍数に到達するまでの時間を算出する。静定時間推定部150は、心拍数の推移における心拍数の最小値を、座位安定状態の心拍数としてよい。
【0096】
静定時間推定部150は、上述の極大値と極小値までの間の心拍数の推移を、直線以外の式(例えば、時間の多項式)に当てはめてもよい。具体的には、静定時間推定部150は、極大値と極小値までの間の心拍数の推移を表す多項式のパラメータを算出する。静定時間推定部150は、静定時間推定対象時点(時刻t)において測定された心拍数(x(t))から、算出したパラメータによる多項式に従って心拍数が低下する場合の、心拍数が座位安定状態の心拍数に到達するまでの時間を算出する。
【0097】
静定時間推定部150は、心拍数の推移から算出された、運動強度の推移に基づいて、静定時間を算出することもできる。静定時間推定部150は、運動強度の推移において極大値と極小値とを検出し、上述のように傾きを算出し、傾きの統計値を算出する。静定時間推定部150は、運動強度が、静定時間推定対象時点(時刻t)において測定された心拍数(x(t))から算出された運動強度の値から、算出された傾きの統計値に従って減少した場合に、運動強度がゼロになるまでの時間を、静定時間として算出する。
【0098】
図12及び図13は、心拍数の推移と、運動強度の推移とを表す図である。図12及び図13は、歩行アシストスーツ(ロボスーツとも表記)を装着した場合及び装着しない場合の、心拍数の推移と、運動強度の推移とを表す。
【0099】
図14は、心拍数の推移の例と、算出された傾きの直線の例を表す図である。図14に示す例では、2か所で直線の傾きが算出されている。2つの傾きから算出された静定時間がTs1及びTs2である。
【0100】
<効果について>
本開示の第2の実施形態の効果についてさらに説明する。
【0101】
上述のように、運動時の時系列と心拍数の関係性の特徴が、運動強度[%]では、その特
徴量が顕著に表れることがわかる。さらに心拍数の観測データy(t)のみで、Borgスケールの自覚症状とVO2max数値情報をリアルタイムで表示できる。これは、運動中の被験者本
人だけでなく、観測者が被験者の余力体力、自覚症状を容易に把握でき、心肺に対する過剰負荷・運動に達していかどうかの判定が容易にできるという効果がある。運動時刻tで
の心肺能力、残存心肺能力という効果がある。
【0102】
さらに最大心拍数観測時から座位安定性までにかかる静定時間は、運動した 量(運動した時間の長さ)や負荷(ロボット荷重)で決まるのではなく、最大心拍数観測時から安静座
位時の心拍数に戻るまでの静定時間と運動強度[%]の関係性は、同一の歩行速度条件では
、ほぼ、リニアであり、時刻tを変数とした多項式で近似すれば、最大観測時を起点とす
る静定時間(Ts)を容易に推定できる。静定時間の逆数は、被験者の回復度合いの速さ(体
力回復度の強さ)として数値化できる。
【0103】
VO2maxで表現される運動強度とBorg指標に基づく推定心拍数との関係性を求めると、直線の傾き情報が負荷の程度を数値情報と等価であり、直線傾き情報の比較により疲労に直結する負荷の高低が数値として定量化できる。これらの関係式をシステムに組み込んで、ウェアラブル心拍計と連動させることにより、同一の被験者であれば、リアルタイムで計測された心拍数のみでその時の運動強度が求められるため、個々人の最大心肺能力に対する現在の使用度を定量的に把握できるという効果がある。
【0104】
また、これまでBorg指標では年齢パラメータのみが個人情報を考慮したものであったが、本実施形態では、拡張されたBorg指標は、個々人の持つ最大心拍数と安静心拍数データ、時刻tでの心拍数のみから個人の持つ最大心肺能力に対する時刻tでの心肺能力比率を計算できるため、Borg指標で予め決められている心肺能力比率を基に、個々人の心肺能力のより現状に近い個人の心肺能力を考把握できるという効果がある。さらにBorg指標で決められた心肺比率に基づき、時刻tでの主観的疲労自覚度を表示でき、被験者以外の第3者も被験者の運動中の疲労度を容易に把握できるという効果がある。
【0105】
<他の実施形態>
上述の推定装置10及び推定装置100は、記憶媒体から読み出されたプログラムがロードされたメモリと、そのプログラムを実行するプロセッサとを含むコンピュータによって実現することができる。推定装置10及び推定装置100は、専用のハードウェアによって実現することもできる。推定装置10及び推定装置100は、前述のコンピュータと専用のハードウェアとの組み合わせによって実現することもできる。
【0106】
図15は、本開示の実施形態に係る推定装置の各々を実現することができる、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を表す図である。図15に示す例では、コンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002と、記憶装置1003と、I/O(Input/Output)インタフェース1004とを含む。また、コンピュータ1000は、記憶媒体1005にアクセスすることができる。メモリ1002と記憶装置1003は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶媒体1005は、例えば、RAM、ハードディスクなどの記憶装置、ROM(Read Only Memory)、可搬記憶媒体である。記憶装置1003が記憶媒体1005であってもよい。プロセッサ1001は、メモリ1002と、記憶装置1003に対して、データやプログラムの読み出しと書き込みを行うことができる。プロセッサ1001は、I/Oインタフェース1004を介して、例えば、心拍数測定装置200、出力装置300、通知装置400にアクセスすることができる。プロセッサ1001は、記憶媒体1005にアクセスすることができる。記憶媒体1005には、コンピュータ1000を、本開示の実施形態に係る推定装置として動作させるプログラムが格納されている。
【0107】
プロセッサ1001は、記憶媒体1005に格納されている、コンピュータ1000を、本開示の実施形態に係る推定装置として動作させるプログラムを、メモリ1002にロードする。そして、プロセッサ1001が、メモリ1002にロードされたプログラムを実行することにより、コンピュータ1000は、本開示の実施形態に係る推定装置として動作する。
【0108】
受取部110、疲労度推定部120、出力部130、運動強度推定部140、静定時間推定部150、通知部160は、例えば、メモリ1002にロードされたプログラムを実行するプロセッサ1001により実現することができる。受取部110、疲労度推定部120、出力部130、運動強度推定部140、静定時間推定部150、通知部160の一部又は全部を、各部の機能を実現する専用の回路によって実現することもできる。
【0109】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0110】
(付記1)
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取手段と、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定手段と、
前記疲労度を出力する出力手段と、
を備える推定装置。
【0111】
(付記2)
前記推定モデルは、前記心拍数の推移における最大心拍数である測定最大心拍数と前記安静状態における心拍数である安静時心拍数と、に基づいて、前記疲労度を推定する
付記1に記載の推定装置。
【0112】
(付記3)
前記推定モデルは、疲労度推定対象時点における心拍数にさらに基づいて、前記疲労度推定対象時点における前記疲労度を推定する
付記2に記載の推定装置。
【0113】
(付記4)
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する運動強度推定手段
を備え、
前記出力手段は、前記運動強度を更に出力する
付記1乃至3のいずれか1項に記載の推定装置。
【0114】
(付記5)
前記疲労度推定手段は、直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された時点における前記疲労度を推定し、
前記運動強度推定手段は、前記直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された前記時点における前記運動強度を推定し、
前記出力手段は、当該直近の心拍数が測定された前記時点における、前記疲労度と前記運動強度とを出力する
付記4に記載の推定装置。
【0115】
(付記6)
測定された前記心拍数の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定する静定時間推定手段
を備える付記1乃至5のいずれか1項に記載の推定装置。
【0116】
(付記7)
前記疲労度が所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知を行う通知手段
をさらに備える付記1乃至6のいずれか1項に記載の推定装置。
【0117】
(付記8)
前記心拍数測定装置と、
付記1乃至7のいずれか1項に記載の推定装置と、
を含む推定システム。
【0118】
(付記9)
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取り、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定し、
前記疲労度を出力する、
推定方法。
【0119】
(付記10)
前記推定モデルは、前記心拍数の推移における最大心拍数である測定最大心拍数と前記安静状態における心拍数である安静時心拍数と、に基づいて、前記疲労度を推定する
付記9に記載の推定方法。
【0120】
(付記11)
前記推定モデルは、疲労度推定対象時点における心拍数にさらに基づいて、前記疲労度推定対象時点における前記疲労度を推定する
付記10に記載の推定方法。
【0121】
(付記12)
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定し、
前記運動強度を更に出力する
付記9乃至11のいずれか1項に記載の推定方法。
【0122】
(付記13)
直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された時点における前記疲労度を推定し、
前記直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された前記時点における前記運動強度を推定し、
当該直近の心拍数が測定された前記時点における、前記疲労度と前記運動強度とを出力する
付記12に記載の推定方法。
【0123】
(付記14)
測定された前記心拍数の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定する
付記9乃至13のいずれか1項に記載の推定方法。
【0124】
(付記15)
前記疲労度が所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知を行う
付記9乃至14のいずれか1項に記載の推定方法。
【0125】
(付記16)
心拍数測定装置によって測定された、安静状態と活動状態とを含む状態の対象人物の心拍数の推移を受け取る受取処理と、
心拍数に基づいて疲労度を推定する推定モデルと、前記心拍数の推移と、に基づいて、前記対象人物の疲労度を推定する疲労度推定処理と、
前記疲労度を出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムを記憶する記憶媒体。
【0126】
(付記17)
前記推定モデルは、前記心拍数の推移における最大心拍数である測定最大心拍数と前記安静状態における心拍数である安静時心拍数と、に基づいて、前記疲労度を推定する
付記16に記載の記憶媒体。
【0127】
(付記18)
前記推定モデルは、疲労度推定対象時点における心拍数にさらに基づいて、前記疲労度推定対象時点における前記疲労度を推定する
付記17に記載の記憶媒体。
【0128】
(付記19)
前記プログラムは、
前記心拍数の推移に基づいて、強度推定対象時点における運動強度を推定する運動強度推定処理
をコンピュータに実行させ、
前記出力処理は、前記運動強度を更に出力する
付記16乃至18のいずれか1項に記載の記憶媒体。
【0129】
(付記20)
前記疲労度推定処理は、直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された時点における前記疲労度を推定し、
前記運動強度推定処理は、前記直近の心拍数に基づいて、当該直近の心拍数が測定された前記時点における前記運動強度を推定し、
前記出力処理は、当該直近の心拍数が測定された前記時点における、前記疲労度と前記運動強度とを出力する
付記19に記載の記憶媒体。
【0130】
(付記21)
前記プログラムは、
測定された前記心拍数の推移に基づいて、静定時間推定対象時点において前記対象人物の状態が前記安静状態に推移した場合における、前記静定時間推定対象時点から、前記対象人物の心拍数が前記安静状態になるまでの時間である静定時間を推定する静定時間推定処理
をコンピュータに実行させる付記16乃至20のいずれか1項に記載の記憶媒体。
【0131】
(付記22)
前記プログラムは、
前記疲労度が所定レベルよりも疲労が大きいことを示している場合、通知を行う通知処理
をさらにコンピュータに実行させる付記16乃至21のいずれか1項に記載の記憶媒体。
【0132】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0133】
1 推定システム
10 推定装置
100 推定装置
110 受取部
120 疲労度推定部
130 出力部
140 運動強度推定部
150 静定時間推定部
160 通知部
200 心拍数測定装置
300 出力装置
400 通知装置
500 ウェアラブル装置
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 記憶装置
1004 I/Oインタフェース
1005 記憶媒体
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