(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】光センシングシステム及び光センシング方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/86 20200101AFI20250513BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20250513BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S17/89
G01B11/24 A
(21)【出願番号】P 2023563374
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042956
(87)【国際公開番号】W WO2023095197
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】武井 大祐
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-117041(JP,A)
【文献】特開2018-40680(JP,A)
【文献】特開2016-130664(JP,A)
【文献】特開2015-194410(JP,A)
【文献】特開2006-170740(JP,A)
【文献】特開平11-211517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01B 11/00-11/30
G01C 1/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置と
、前記複数台のスキャナ装置
の各々と
光ファイバでそれぞれ接続される信号処理装置と、を備え、
前記複数台のスキャナ装置
の各々は、
前記信号処理装置から前記光ファイバを介して出力される光を対象物に向け
て出射し、
前記光が前記対象物により反射された反射光を
前記光ファイバを介して前記信号処理装置に送信し、
前記信号処理装置は、
出力先となるスキャナ装置を切り替えながら、当該スキャナ装置と接続される前記光ファイバを介して前記光を出力し、前記出力先となったスキャナ装置から送信される前記反射光に基づき、前記対象物の点群データを生成する
ことを特徴とする光センシングシステム。
【請求項2】
前記複数台のスキャナ装置は、前記対象物の周囲に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の光センシングシステム。
【請求項3】
前記複数台のスキャナ装置は、互いに異なる方向から同一の前記対象物に向けて前
記光を出射する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光センシングシステム。
【請求項4】
前記複数台のスキャナ装置のうちの少なくとも1台のスキャナ装置は、前記複数台のスキャナ装置のうちの他のスキャナ装置と独立して移動自在である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の光センシングシステム。
【請求項5】
複数本の
前記光ファイ
バのうちの少なくとも1本の光ファイ
バに設けられた光中継器を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の光センシングシステム。
【請求項6】
前記信号処理装置は
、前記出力先となる前記スキャナ装置を切り替えるための光スイッチを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の光センシングシステム。
【請求項7】
前記対象物は、原料ヤードにおける原料の山であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記原料ヤードに設置される
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の光センシングシステム。
【請求項8】
前記対象物は、空港における停留中の航空機であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記空港に設置される
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の光センシングシステム。
【請求項9】
互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置
の各々が、
信号処理装置から光ファイバを介して出力される光を対象物に向け
て出射し、
前記光が前記対象物により反射された反射光を
前記光ファイバを介して前記信号処理装置に送信し、
前記複数台のスキャナ装置
の各々と
光ファイバでそれぞれ接続される
前記信号処理装置が
、出力先となるスキャナ装置を切り替えながら、当該スキャナ装置と接続される前記光ファイバを介して前記光を出力し、前記出力先となったスキャナ装置から送信される前記反射光に基づき、前記対象物の点群データを生成する
ことを特徴とする光センシング方法。
【請求項10】
前記複数台のスキャナ装置は、前記対象物の周囲に配置される
ことを特徴とする請求項9に記載の光センシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センシングシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)の原理に基づく光センシングを実行するシステムが知られている。また、かかるシステムにおいて、LiDAR用のスキャナ部とLiDAR用の信号処理部とを光ファイバケーブルを用いて接続する方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、車載用のLiDARシステムが開示されている。特許文献1の
図1A及び
図1Bに示す如く、かかるLiDARシステムは、複数個のスキャナ部(ライダースキャナ110A~110F)及び1個の信号処理部(集中型レーザ送達システム101)を備える。個々のスキャナ部は、光ファイバケーブル(光ファイバチャネル112A~112F)を用いて信号処理部と接続されている。複数個のスキャナ部、1個の信号処理部及び複数本の光ファイバケーブルは、1台の車両(車両100)に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のLiDARシステムにおいては、1台の車両に複数個のスキャナ部が搭載されており、当該複数個のスキャナ部が互いに異なる空間範囲を走査している(例えば、特許文献1の段落[0036]~[0038]参照)。すなわち、ある特定の空間範囲に対しては、1個のスキャナ部が1方向から走査しているのみである。したがって、特許文献1に記載のLiDARシステムでは、当該特定の空間範囲に存在する物体について、当該1方向から走査される範囲における当該物体の形状を認識することができるものの、それ以外の範囲における当該物体の形状を認識することができない。すなわち、当該物体の形状のうちの対応する1個のスキャナ部から見た裏側に対応する部位の形状を認識することができない。この結果、当該物体の全体形状を把握することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、信号処理部と個々のスキャナ部とが光ファイバケーブルを用いて接続される方式のシステムにおいて、対象となる物体の全体形状を認識可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光センシングシステムは、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置と、複数本の光ファイバケーブルを用いて複数台のスキャナ装置と接続される信号処理装置と、を備え、複数台のスキャナ装置は、対象物に向けてレーザ光を出射し、対象物により反射された反射光を受信し、信号処理装置は、複数台のスキャナ装置により出射されるレーザ光に対応する第1光信号を複数本の光ファイバケーブルを介して複数台のスキャナ装置に出力し、複数台のスキャナ装置により受信された反射光に対応する第2光信号を複数本の光ファイバケーブルを介して複数台のスキャナ装置から取得する。
【0008】
本発明の光センシング方法は、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置が、対象物に向けてレーザ光を出射し、対象物により反射された反射光を受信し、複数本の光ファイバケーブルを用いて複数台のスキャナ装置と接続される信号処理装置が、複数台のスキャナ装置により出射されるレーザ光に対応する第1光信号を複数本の光ファイバケーブルを介して複数台のスキャナ装置に出力し、複数台のスキャナ装置により受信された反射光に対応する第2光信号を複数本の光ファイバケーブルを介して複数台のスキャナ装置から取得する。
【発明の効果】
【0009】
本発明よれば、信号処理部と個々のスキャナ部とが光ファイバケーブルを用いて接続される方式のシステムにおいて、対象となる物体の全体形状を認識可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光センシングシステムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける個々のスキャナ装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける個々のスキャナ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の信号処理部を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の信号処理部の動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る光センシングシステムの具体例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る光センシングシステムに対する比較用の光センシングシステムの具体例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る光センシングシステムの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る光センシングシステムを示すブロック図である。
図2は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける個々のスキャナ装置を示すブロック図である。
図3は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける個々のスキャナ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置を示すブロック図である。
図5は、第1実施形態に係る光センシングシステムにおける信号処理装置の信号処理部を示すブロック図である。
図1~
図5を参照して、第1実施形態に係る光センシングシステムについて説明する。
【0013】
図1に示す如く、光センシングシステム100は、複数台のスキャナ装置1及び1台の信号処理装置2を備える。複数台のスキャナ装置1は、複数本の光ファイバケーブル3を用いて信号処理装置2と接続されている。
図1に示す例において、光センシングシステム100は、N台のスキャナ装置1_1~1_Nを備える。スキャナ装置1_1~1_Nの各々は、N本の光ファイバケーブル3_1~3_Nのうちの対応する1本の光ファイバケーブル3を用いて信号処理装置2と接続されている。すなわち、
図1に示す例においては、光ファイバケーブル3_1~3_Nとスキャナ装置1_1~1_Nとが一対一に対応している。ここで、Nは、2以上の任意の整数である。ただし、後述するとおり、かかる対応関係は、一対一に限定されるものではない。
【0014】
個々のスキャナ装置1は、光センシングシステム100によるセンシングの対象となる物体(以下「対象物」ということがある。)を含む空間(以下「対象空間」ということがある。)に設置される。また、個々のスキャナ装置1は、対象物に向けて設置される。ここで、複数台のスキャナ装置1は、互いに独立して設置される。すなわち、複数台のスキャナ装置1は、対象空間における互いに異なる地点に設置される。これにより、複数台のスキャナ装置1は、互いに異なる位置から対象物に向けられる。換言すれば、複数台のスキャナ装置1は、互いに異なる方向から対象物に向けられる。
【0015】
より具体的には、複数台のスキャナ装置1は、対象物の周囲に配置される。すなわち、複数台のスキャナ装置1は、対象物を囲むように配置される。例えば、対象物を含むN角形状の領域の各頂点に対応する位置に、N台のスキャナ装置1のうちの対応する1台のスキャナ装置1が配置される。これにより、
図11を参照して後述するとおり、センシング用のレーザ光が対象物の全体又は略全体に照射される。以下、全体又は略全体を総称して単に「全体」ということがある。
【0016】
対象物は、例えば、原料ヤードにおける複数個の原料の山である。この場合、原料ヤードが対象空間である。通常、複数個の原料の山は、原料ヤードにおいて、一列に又は複数列に配列されている。また、通常、原料ヤードの面積は、数十メートル~数百メートル四方である。すなわち、対象空間の面積は、例えば、数十メートル~数百メートル四方である。
【0017】
具体的には、例えば、製鉄所の原料ヤードにおいて、製鉄用の複数種類の原料が保管されている。このとき、かかる製鉄所の原料ヤードにおいて、これらの原料の山を囲むように複数台のスキャナ装置1が配置される。
【0018】
図1に示す如く、信号処理装置2は、電気通信回線4を用いて上位システム200と接続されている。これにより、信号処理装置2は、上位システム200と通信自在である。上位システム200は、光センシングシステム100に対する上位のシステムである。上位システム200は、光センシングシステム100の外部に設けられている。電気通信回線4は、例えば、電気通信用のケーブルにより構成されている。具体的には、例えば、電気通信回線4は、LAN(Local Area Network)ケーブルにより構成されている。
【0019】
図2に示す如く、個々のスキャナ装置1は、光出射部11及び受光部12を備える。光出射部11は、対象物に向けてセンシング用のレーザ光を出射する。当該出射されたレーザ光は、対象物に照射される。ここで、個々のスキャナ装置1においては、光出射部11によるレーザ光の出射方向が可変である。光出射部11は、複数方向にレーザ光を順次出射する。これにより、対象物をスキャンするようにレーザ光が照射される。当該照射されたレーザ光は、対象物により反射される。当該反射された光(以下「反射光」ということがある。)のうちの後方散乱成分は、受光部12により受信される。以下、反射光のうちの受光部12により受信された光を「受信光」ということがある。
【0020】
ここで、個々のスキャナ装置1は、レーザ光を生成する機能を有しない。また、個々のスキャナ装置1は、受信光を電気信号に変換する機能を有しない。
図4を参照して後述するとおり、これらの機能は、信号処理装置2に設けられている。
【0021】
すなわち、
図3に示す如く、個々のスキャナ装置1は、光出射部11及び受光部12に対応する光学系21を備える。換言すれば、光出射部11及び受光部12の機能は、光学系21により実現される。なお、光学系21は、光出射部11に対応する第1の光学系(不図示)及び受光部12に対応する第2の光学系(不図示)を含むものであっても良い。
【0022】
図4を参照して後述するとおり、信号処理装置2は、レーザ光により構成されている光信号(以下「第1光信号」ということがある。)を生成して、当該生成された第1光信号を個々の光ファイバケーブル3に出力する。当該出力された第1光信号は、かかる光ファイバケーブル3の内部を伝搬して、対応するスキャナ装置1に入力される。光学系21は、当該入力された第1光信号(すなわちレーザ光)をセンシング用のレーザ光として出射する。このようにして、光出射部11の機能が実現される。
【0023】
また、個々のスキャナ装置1の光学系21は、反射光を受信して、対応する光ファイバケーブル3に当該受信された反射光(すなわち受信光)を出力する。このようにして、受光部12の機能が実現される。当該出力された受信光は、かかる光ファイバケーブル3の内部を光信号(以下「第2光信号」ということがある。)として伝搬して、信号処理装置2に入力される。当該入力された第2光信号は、
図4を参照して後述するとおり、信号処理装置2において電気信号に変換される。
【0024】
図4に示す如く、信号処理装置2は、光信号出力部31、光信号取得部32、光スイッチ部33、信号処理部34及び通信部35を備える。光スイッチ部33は、光信号出力部31及び光信号取得部32と、複数本の光ファイバケーブル3との間に設けられている。
【0025】
光信号出力部31は、第1光信号を生成して、当該生成された第1光信号を出力する。上記のとおり、第1光信号は、レーザ光により構成されている。当該出力された第1光信号は、光スイッチ部33を介して個々の光ファイバケーブル3に出力される。光信号出力部31は、例えば、LiDAR用の光送信機により構成されている。
【0026】
他方、個々の光ファイバケーブル3を介して信号処理装置2に入力された第2光信号は、光スイッチ部33を介して光信号取得部32に入力される。光信号取得部32は、第2光信号を取得して、当該取得された第2光信号を電気信号に変換する。光信号取得部32は、例えば、LiDAR用の光受信機により構成されている。
【0027】
光スイッチ部33は、第1光信号の出力先及び第2光信号の取得元を切り替えるためのスイッチである。光スイッチ部33は、1個以上の光スイッチにより構成されている。
【0028】
例えば、3台のスキャナ装置1_1~1_3が3本の光ファイバケーブル3_1~3_3を用いて信号処理装置2とそれぞれ接続されているものとする。この場合、光スイッチ部33は、以下の第1接続状態、第2接続状態及び第3接続状態を切り替え自在である。すなわち、第1接続状態は、光信号出力部31及び光信号取得部32が第1の光ファイバケーブル3_1と光学的に接続された状態である。第2接続状態は、光信号出力部31及び光信号取得部32が第2の光ファイバケーブル3_2と光学的に接続された状態である。第3接続状態は、光信号出力部31及び光信号取得部32が第3の光ファイバケーブル3_3と光学的に接続された状態である。
【0029】
第1接続状態においては、光信号出力部31により出力された第1光信号が光スイッチ部33及び第1の光ファイバケーブル3_1を介して第1のスキャナ装置1_1に入力される。また、第1のスキャナ装置1_1により出力された第2光信号が第1の光ファイバケーブル3_1及び光スイッチ部33を介して光信号取得部32に入力される。
【0030】
第2接続状態においては、光信号出力部31により出力された第1光信号が光スイッチ部33及び第2の光ファイバケーブル3_2を介して第2のスキャナ装置1_2に入力される。また、第2のスキャナ装置1_2により出力された第2光信号が第2の光ファイバケーブル3_2及び光スイッチ部33を介して光信号取得部32に入力される。
【0031】
第3接続状態においては、光信号出力部31により出力された第1光信号が光スイッチ部33及び第3の光ファイバケーブル3_3を介して第3のスキャナ装置1_3に入力される。また、第3のスキャナ装置1_3により出力された第2光信号が第3の光ファイバケーブル3_3及び光スイッチ部33を介して光信号取得部32に入力される。
【0032】
このように、第1光信号は、スキャナ装置1_1~1_3の各々に出力される。換言すれば、複数個の第1光信号が複数台のスキャナ装置1にそれぞれ(respectively)出力される。また、第2光信号は、スキャナ装置1_1~1_3の各々から取得される。換言すれば、複数個の第2光信号が複数台のスキャナ装置1からそれぞれ(respectively)取得される。
【0033】
光スイッチ部33は、第1接続状態、第2接続状態及び第3接続状態を順次切り替える。これにより、センシング用のレーザ光の出射及び対応する反射光の受信は、第1のスキャナ装置1_1、第2のスキャナ装置1_2及び第3のスキャナ装置1_3により順次実行される。光信号取得部32においては、これらの受信光に対応する第2光信号が順次取得されて、これらの第2光信号が電気信号に順次変換される。光信号取得部32は、当該変換された電気信号を信号処理部34に出力する。
【0034】
信号処理部34は、光信号取得部32により出力された電気信号を用いて、所定の信号処理を実行する。信号処理部34により実行される信号処理は、例えば、LiDARの原理に基づく距離Dの測定、及び当該測定された距離Dに基づく点群データの生成を含む。この場合、
図6に示す如く、信号処理部34は、距離測定部41及び点群データ生成部42を備える。
【0035】
距離測定部41は、LiDARの原理に基づく距離Dの測定を実行する。かかる測定は、例えば、ToF(Time of Flight)方式又はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式を用いる。
【0036】
〈ToFを用いる場合〉
ToFを用いる場合、光信号出力部31は、パルス状の第1光信号を出力する。個々のパルス(すなわち個々の第1光信号)は、個々のスキャナ装置1により各方向に出射されるレーザ光に対応するものとなる。換言すれば、光スイッチ部33における接続の切替え、及び個々のスキャナ装置1におけるレーザ光の出射方向の変更は、かかる対応関係が実現されるように設定されている。
【0037】
距離測定部41は、光信号出力部31が第1光信号を出力したタイミングT1’を示す情報を取得する。かかる情報は、例えば、光信号出力部31から取得される。また、距離測定部41は、光信号取得部32により出力された電気信号を用いて、上記出力された第1光信号に対応する第2光信号を光信号取得部32が取得したタイミングT2’を検出する。具体的には、例えば、距離測定部41は、当該出力された電気信号の時間波形における振幅を所定の閾値と比較して、かかる振幅が閾値を超えたタイミングを検出することにより、タイミングT2’を検出する。
【0038】
ここで、タイミングT1’,T2’の時間差ΔT’は、上記出力された第1光信号に対応するセンシング用のレーザ光が出射されたタイミングT1と、上記入力された第2光信号に対応する反射光が受信されたタイミングT2との時間差ΔTと同等である。換言すれば、時間差ΔT’は、これらの光(すなわち対応するセンシング用のレーザ光及び対応する反射光)の往復伝搬時間と同等である。そこで、距離測定部41は、ToFに係る所定の数式を用いて、かかる往復伝搬時間に対応する片道伝搬距離(すなわち距離D)を算出する。このようにして、距離Dが測定される。
【0039】
〈FMCWを用いる場合〉
FMCWを用いる場合、光信号出力部31は、FMCW用の所定の周波数変調処理を実行することにより、チャープ状の第1光信号を出力する。これにより、個々のスキャナ装置1により各方向に出射されるレーザ光もチャープ状となる。また、光信号取得部32は、第2光信号(すなわち受信光)に対するコヒーレント検波を実行する。これにより、光信号取得部32により出力される電気信号は、対応する第2光信号(すなわち受信光)における周波数及び位相を含むものとなる。
【0040】
距離測定部41は、第1光信号の周波数を示す情報を取得する。かかる情報は、例えば、光信号出力部31から取得される。また、距離測定部41は、光信号取得部32により出力された電気信号を用いて、対応する第2光信号の周波数を検出する。距離測定部41は、これらの周波数の差分値(いわゆる「ビート周波数」)を算出する。距離測定部41は、当該算出されたビート周波数に基づき、FMCWに係る所定の数式を用いて距離Dを算出する。このようにして、距離Dが測定される。
【0041】
なお、距離Dの測定方法は、これらの具体例に限定されるものではない。距離Dの測定には、公知の種々の技術を用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。例えば、距離測定部41は、第1光信号と対応する第2光信号との位相差(すなわちセンシング用のレーザ光と対応する受信光との位相差)に基づき距離Dを算出するものであっても良い(いわゆる「間接ToF」)。
【0042】
距離測定部41は、このようにして測定された距離Dを示す情報(以下「距離情報」ということがある。)を生成する。距離測定部41は、当該生成された距離情報を点群データ生成部42に出力する。ここで、距離情報は、個々の距離Dに対応するレーザ光を出射したスキャナ装置1の設置位置を示す情報(以下「出射位置情報」ということがある。)と紐付けて出力される。また、距離情報は、個々の距離Dに対応するレーザ光の出射方向を示す情報(以下「出射方向情報」ということがある。)と紐付けて出力される。これらの紐付けは、例えば、以下のようにして実現される。
【0043】
すなわち、個々のスキャナ装置1が設置された後において、光センシングシステム100の使用が開始される前に、個々のスキャナ装置1の設置位置及び設置方向を示す情報を人(例えば光センシングシステム100のユーザ)が信号処理装置2に入力する。
【0044】
また、光センシングシステム100においては、複数台のスキャナ装置1がレーザ光を出射する順番、及び個々のスキャナ装置1が複数方向にレーザ光を出射する順番が予め設定されている。これらの順番を示す情報が信号処理装置2に記憶されている。なお、光信号出力部31が第1光信号を出力するタイミング、光スイッチ部33が接続状態を切り替えるタイミング及び順番、並びに個々のスキャナ装置1におけるレーザ光の出射方向の変更は、これらの順番が実現されるように制御される。
【0045】
これらの情報を用いることにより、個々の距離Dに対応するレーザ光が、いずれの位置にあるスキャナ装置1により、いずれの方向に出射されたものであるのかが特定される。このようにして、距離情報と出射位置情報及び出射方向情報との紐付けが実現される。かかる紐付けは、信号処理装置2(例えば距離測定部41)により実行される。
【0046】
点群データ生成部42は、距離測定部41により出力された距離情報、並びに当該距離情報に紐付けられた出射位置情報及び出射方向情報を用いて、点群データを生成する。すなわち、点群データ生成部42は、これらの情報を用いて、個々の距離Dに対応するレーザ光が反射された地点(以下「反射点」という。)の位置を算出する。これにより、これらの反射点の位置に対応する点群を示すデータ、すなわち点群データが生成される。
【0047】
ここで、上記のとおり、距離情報は、複数台のスキャナ装置1の各々が出射したレーザ光に対応する距離Dを含む。点群データ生成部42により生成される点群データにおける点群は、かかる複数台のスキャナ装置1に対応する反射点の位置を示す。すなわち、点群データ生成部42による点群データの生成は、いわゆる「点群合成」によるものである。換言すれば、点群データ生成部42は、複数台のスキャナ装置1について、点群合成を実行することにより点群データを生成する。
【0048】
なお、センシング用のレーザ光が対象物と異なる他の物体(例えば対象物の周囲の地面)に照射されることにより、対象物に対応する点群に加えて、当該他の物体に対応する点群が点群データに含まれ得る。このような場合、点群データ生成部42は、点間距離又は平面検出の結果などに基づき点群をグループ化することにより、これらの点群のうちの対象物に対応する点群を抽出するものであっても良い。これにより、点群データ生成部42は、当該他の物体に対応する点群を点群データから除外するものであっても良い。
【0049】
通信部35(
図4参照)は、信号処理部34による信号処理の結果を示す情報(以下「結果情報」ということがある。)を外部に送信する。より具体的には、通信部35は、結果情報を上位システム200に送信する。結果情報の送信には、電気通信回線4が用いられる。
【0050】
このようにして、光センシングシステム100が構成されている。すなわち、光センシングシステム100は、LiDARの原理に基づく光センシングを実行するシステムである。
【0051】
結果情報は、上位システム200により種々のアプリケーションに用いられ得る。具体的には、例えば、上位システム200は、結果情報に含まれる点群データを用いて、対象物の三次元モデルを生成する。上位システム200は、当該生成された三次元モデルを用いて、対象物(例えば原料の山)の体積を推定する。または、例えば、上位システム200は、当該生成された三次元モデルの形状に基づき、対象物における異常(例えば原料の山が崩れている状態)の発生を検出する。
【0052】
ここで、上位システム200は、以下のような画像を生成して、当該生成された画像を図示しない表示装置(例えばディスプレイ)に表示するものであっても良い。具体的には、例えば、上位システム200は、結果情報に含まれる点群データを用いて、点群データに含まれる点群を仮想的な三次元空間に配置してなる画像(以下「点群画像」ということがある。)を生成する。または、例えば、上位システム200は、上記のとおり三次元モデルを生成して、当該生成された三次元モデルを含む画像(以下「三次元モデル画像」ということがある。)を生成する。点群画像又は三次元モデル画像がディスプレイに表示されることにより、人(例えば上位システム200のユーザ)は、対象物の形状を視覚的に容易に認識することができる。
【0053】
次に、
図6~
図8を参照して、信号処理装置2のハードウェア構成について説明する。
【0054】
図6~
図8の各々に示す如く、信号処理装置2は、光送信機51、光受信機52、光スイッチ53、送信機54及び受信機55を備える。光信号出力部31の機能は、光送信機51により実現される。光信号取得部32の機能は、光受信機52により実現される。光スイッチ部33の機能は、光スイッチ53により実現される。通信部35の機能は、送信機54及び受信機55により実現される。
【0055】
また、
図6に示す如く、信号処理装置2は、プロセッサ56及びメモリ57を備える。この場合、メモリ57は、信号処理部34の機能に対応するプログラムを記憶する。プロセッサ56は、メモリ57に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これにより、信号処理部34の機能が実現される。
【0056】
または、
図7に示す如く、信号処理装置2は、処理回路58を備える。この場合、処理回路58は、信号処理部34の機能に対応する処理を実行する。これにより、信号処理部34の機能が実現される。
【0057】
または、
図8に示す如く、信号処理装置2は、プロセッサ56、メモリ57及び処理回路58を備える。この場合、信号処理部34の機能のうちの一部の機能がプロセッサ56及びメモリ57により実現されるとともに、信号処理部34の機能のうちの残余の機能が処理回路58により実現される。
【0058】
プロセッサ56は、1個以上のプロセッサにより構成されている。個々のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)を用いたものである。
【0059】
メモリ57は、1個以上のメモリにより構成されている。個々のメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを用いたものである。すなわち、個々のメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、MO(Magneto Optical)ディスク又はミニディスクを用いたものである。
【0060】
処理回路58は、1個以上の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)又はシステムLSI(Large Scale Integration)を用いたものである。
【0061】
次に、光センシングシステム100の動作について説明する。より具体的には、
図9に示すフローチャートを参照して、信号処理装置2の動作について説明する。
【0062】
まず、光信号出力部31が第1光信号を出力する(ステップST1)。次いで、光信号取得部32は、対応する第2光信号を取得して、当該取得された第2光信号を電気信号に変換する(ステップST2)。これらの処理は、例えば、光センシングシステム100に含まれる全てのスキャナ装置1により、予め設定された全ての方向にセンシング用のレーザ光が出射されるまで、繰り返し実行される。
図9に示すフローチャートにおいて、かかる繰り返しの条件は図示を省略している。
【0063】
次いで、信号処理部34は、上記変換された電気信号を用いて、所定の信号処理を実行する(ステップST3)。信号処理部34により実行される信号処理の具体例については、既に説明したとおりである。このため、詳細な説明は省略する。
【0064】
次いで、通信部35は、ステップST3における信号処理の結果を示す情報(すなわち結果情報)を外部に送信する(ステップST4)。より具体的には、通信部35は、電気通信回線4を用いて、上位システム200に結果情報を送信する。
【0065】
次に、
図10に示すフローチャートを参照して、信号処理部34の動作について説明する。すなわち、ステップST3にて実行される信号処理の具体例について説明する。
【0066】
まず、距離測定部41は、LiDARの原理に基づく距離Dの測定を実行する(ステップST11)。これにより、距離情報が生成される。かかる測定方法の具体例は、既に説明したとおりである。このため、詳細な説明は省略する。
【0067】
次いで、点群データ生成部42は、ステップST11にて生成された距離情報並びに紐付けられた出射位置情報及び出射方向情報を用いて、点群データを生成する(ステップST12)。すなわち、点群データ生成部42は、点群合成を実行することにより点群データを生成する。この場合、ステップST4にて送信される結果情報は、当該生成された点群データを含む情報である。
【0068】
次に、
図11を参照して、光センシングシステム100の具体例について説明する。
【0069】
図中、Oは、対象物を示している。上記のとおり、対象物は、例えば、原料ヤードにおける複数個の原料の山である。
図11に示す例においては、3個の原料の山が一列に配列されている。この場合における対象空間(図中「S」)は、原料ヤードである。
【0070】
図11に示す例において、光センシングシステム100は、3個のスキャナ装置1_1~1_3を備える。スキャナ装置1_1~1_3の各々は、3本の光ファイバケーブル3_1~3_3のうちの対応する1本の光ファイバケーブル3を用いて信号処理装置2と接続されている。上記のとおり、スキャナ装置1_1~1_3は、対象空間に設置されている。これに加えて、
図11に示す例においては、信号処理装置2も対象空間に設置されている。また、上位システム200も対象空間に設置されている。
【0071】
スキャナ装置1_1~1_3の各々は、対象物に向けて設置されている。ここで、スキャナ装置1_1~1_3は、互いに独立して設置されている。すなわち、スキャナ装置1_1~1_3は、対象空間における互いに異なる地点に設置されている。より具体的には、スキャナ装置1_1~1_3は、対象物の周囲に配置されている。すなわち、スキャナ装置1_1~1_3は、対象物を囲むように配置されている。
図11に示す例において、スキャナ装置1_1~1_3は、対象物を含む三角形状の領域(不図示)における各頂点に対応する位置に配置されている。これにより、対象物の全体にセンシング用のレーザ光が照射される。
【0072】
次に、
図12を参照して、光センシングシステム100に対する比較用の光センシングシステム100’について説明する。なお、
図12において、
図11に示す要素と同様の要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
図12に示す如く、光センシングシステム100’は、複数台の光センシング装置6’を備える。個々の光センシング装置6’は、LiDAR装置により構成されている。すなわち、個々の光センシング装置6’は、スキャナ部1’及び信号処理部2’を備える。スキャナ部1’は、光センシングシステム100におけるスキャナ装置1に相当する。信号処理部2’は、光センシングシステム100における信号処理装置2に相当する。
【0074】
スキャナ部1’は、対象物に向けてセンシング用のレーザ光を出射して、対応する反射光を受信する。ただし、スキャナ部1’は、センシング用のレーザ光を生成する機能、及び受信光を電気信号に変換する機能を有する。すなわち、スキャナ部1’は、例えば、LiDAR用の光送信機、光受信機及び光学系により構成されている。
【0075】
信号処理部2’は、LiDARの原理に基づく距離Dの測定を実行する。これにより、距離情報が生成される。これに加えて、信号処理部2’は、当該生成された距離情報を用いて、点群データを生成するものであっても良い。これにより、個々の光センシング装置6’により得られる点群を示す点群データが生成される。
【0076】
個々の信号処理部2’は、電気通信回線4’を用いて上位システム200’と接続されている。これにより、個々の信号処理部2’は、上位システム200’と通信自在である。すなわち、電気通信回線4’は、光センシングシステム100における電気通信回線4に相当する。個々の信号処理部2’は、上記生成された点群データを上位システム200’に送信する。上位システム200’は、これらの点群データを合成することにより(すなわち点群合成を実行することにより)、対象物の三次元モデルを生成する。
【0077】
個々の電気通信回線4’は、電気通信用のケーブルにより構成されている。具体的には、例えば、個々の電気通信回線4’は、LANケーブルにより構成されている。通常、1本の有線の電気通信回線を用いて信号を伝送可能な距離は、1本の光ファイバケーブルを用いて信号を伝送可能な距離に比して短い。このため、特に対象空間の面積が大きいとき、1本の有線の電気通信回線の長さが長くなることにより、かかる信号の伝送が困難となることがある。そこで、かかる信号を増幅するための中継器5’が設置される。
【0078】
図12に示す例において、光センシングシステム100’は、3台の光センシング装置6’_1~6’_3を備える。光センシング装置6’_1~6’_3は、スキャナ部1’_1~1’_3をそれぞれ備える。また、光センシング装置6’_1~6’_3は、信号処理部2’_1~2’_3をそれぞれ備える。信号処理部2’_1~2’_3は、3本の電気通信回線4’_1~4’_3のうちの対応する1本の電気通信回線4’を用いて上位システム200’と接続されている。ただし、電気通信回線4’_1の途中に増幅用の中継器5’_1が設けられている。これにより、1本の電気通信回線4’_1が2本の電気通信回線4’_1_1,4’_1_2に分割されている。
【0079】
次に、
図13を参照して、光センシングシステム100の変形例について説明する。
【0080】
通常、1本の光ファイバケーブルを用いて信号を伝送可能な距離は、1本の有線の電気通信回線を用いて信号を伝送可能な距離に比して長い。特に、1本の光ファイバケーブルを用いて信号を伝送可能な距離は、対象空間の面積に対して十分に長い。このため、原則、光センシングシステム100において、中継器5’に相当する光中継器は不要である。
【0081】
ただし、個々の光ファイバケーブル3の敷設態様によっては、個々の光ファイバケーブル3の敷設長が、上記信号を伝送可能な距離を超えて長くなり得る。例えば、かかる光ファイバケーブル3が蛇行するように配設されたり、障害物を大きく迂回するように配設されたりすることにより、かかる光ファイバケーブル3の敷設長が長くなり得る。このような場合、例外的に、光センシングシステム100は、中継器5’に相当する光中継器5を備えるものであっても良い。すなわち、光中継器5は、複数本の光ファイバケーブル3のうちの少なくとも1本の光ファイバケーブル3の途中に設けられる。光中継器5は、例えば、光増幅器により構成されている。
【0082】
図13に示す例においては、光ファイバケーブル3_1の途中に増幅用の光中継器5_1が設けられている。これにより、1本の光ファイバケーブル3_1が2本の光ファイバケーブル3_1_1,3_1_2に分割されている。
【0083】
次に、光センシングシステム100の他の変形例について説明する。
【0084】
対象物は、原料ヤードにおける原料の山に限定されるものではない。対象物は、点群データの取得の対象(すなわち三次元モデルの生成の対象)となる物体であれば、如何なる物体であっても良い。例えば、対象物は、空港における停留中の航空機であっても良い。この場合、かかる空港が対象空間である。
【0085】
また、信号処理部34により実行される信号処理は、第2光信号に対応する電気信号を用いるものであれば良く、上記の具体例に限定されるものではない。
【0086】
例えば、信号処理部34は、距離Dの測定及び点群データの生成を実行するのに加えて、当該生成された点群データを用いて対象物の三次元モデルを生成するものであっても良い。すなわち、三次元モデルの生成は、上位システム200により実行されるのに代えて、信号処理部34により実行されるものであっても良い。この場合、信号処理部34は、距離測定部41及び点群データ生成部42に加えて、三次元モデル生成部(不図示)を備える。通信部35により送信される結果情報は、三次元モデル生成部により生成された三次元モデルを含む。上位システム200は、当該生成された三次元モデルを用いて、対象物の体積を推定したり、又は対象物における異常の発生を検出したりする。
【0087】
または、例えば、信号処理部34は、距離Dの測定及び点群データの生成のうち、距離Dの測定のみを実行するものであっても良い。すなわち、信号処理部34は、距離測定部41及び点群データ生成部42のうちの距離測定部41のみを備えるものであっても良い。この場合、通信部35により送信される結果情報は、当該測定された距離Dを示す距離情報、並びに紐付けられた出射位置情報及び出射方向情報を含む。上位システム200は、これらの情報を用いて、点群合成を実行することにより点群データを生成する。上位システム200は、当該生成された点群データを用いて、対象物の三次元モデルを生成する。
【0088】
また、信号処理装置2は、信号処理部34を有しないものであっても良い。この場合、通信部35は、結果情報を上位システム200に送信するのに代えて、光信号取得部32により出力された電気信号を示す情報を上位システム200に送信する。また、通信部35は、個々の第2光信号に対応する出射位置情報及び出射方向情報を上位システム200に送信する。上位システム200は、これらの情報を用いて、距離Dの測定及び点群データの生成を実行する。上位システム200は、当該生成された点群データを用いて、対象物の三次元モデルを生成する。
【0089】
また、複数台のスキャナ装置1のうちの少なくとも1台のスキャナ装置1は、移動型であっても良い。移動型のスキャナ装置1は、他のスキャナ装置1と独立して移動自在である。移動型のスキャナ装置1は、移動することにより、互いに異なる複数個の位置の各々から対象物に向けてセンシング用のレーザ光を出射する。
【0090】
また、点群画像の生成及び表示は、上位システム200により実行されるのに代えて、信号処理装置2により実行されるものであっても良い。また、三次元モデル画像の生成及び表示は、上位システム200により実行されるのに代えて、信号処理装置2により実行されるものであっても良い。すなわち、信号処理装置2は、点群画像又は三次元モデル画像を生成して、当該生成された画像を図示しない表示部(例えばディスプレイ)に表示する。点群画像又は三次元モデル画像が表示されることにより、人(例えば光センシングシステム100のユーザ)は、対象物の形状を視覚的に容易に認識することができる。
【0091】
また、複数本の光ファイバケーブル3と複数台のスキャナ装置1との対応関係は、一対一に限定されるものではない。例えば、複数本の光ファイバケーブル3のうちの1本の光ファイバケーブル3が分岐ケーブルにより構成されており、当該1本の光ファイバケーブル3が複数台のスキャナ装置1のうちの2台以上のスキャナ装置1と接続されているものであっても良い。
【0092】
次に、光センシングシステム100の効果について説明する。
【0093】
上記のとおり、光センシングシステム100は、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置1と、複数本の光ファイバケーブル3を用いて複数台のスキャナ装置1と接続される信号処理装置2と、を備える。複数台のスキャナ装置1は、対象物に向けてレーザ光を出射し、対象物により反射された反射光を受信する。信号処理装置2は、複数台のスキャナ装置1により出射されるレーザ光に対応する第1光信号を複数本の光ファイバケーブル3を介して複数台のスキャナ装置1に出力し、複数台のスキャナ装置1により受信された反射光に対応する第2光信号を複数本の光ファイバケーブル3を介して複数台のスキャナ装置1から取得する。これにより、以下のような効果を奏する。
【0094】
第一に、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置1を用いることにより、特許文献1に記載のLiDARシステムに比して、以下のような有利な効果を奏する。
【0095】
すなわち、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置1を用いることにより、これらのスキャナ装置1を対象物の周囲に配置することができる(
図11参照)。これにより、互いに異なる複数個の位置から、同一の対象物にセンシング用のレーザ光が照射される。換言すれば、互いに異なる複数個の方向から同一の対象物にセンシング用のレーザ光が照射される。この結果、かかる対象物において、センシング用のレーザ光が照射されない部位が発生するのを抑制することができる。これにより、かかる対象物の三次元モデルを生成するとき、センシング用のレーザ光が照射されないことに起因する欠落部の発生を抑制することができる。
【0096】
より具体的には、互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置1を用いることにより、対象物を囲むように当該複数台のスキャナ装置1を配置することができる(
図11参照)。これにより、対象物の全体にセンシング用のレーザ光が照射される。この結果、三次元モデルにおける欠落部の発生を回避することができる。このように、信号処理装置2と個々のスキャナ装置1とが光ファイバケーブル3を用いて接続される方式の光センシングシステム100において、対象物の全体形状を認識可能とすることができる。
【0097】
第二に、信号処理装置2と個々のスキャナ装置1とが光ファイバケーブル3を用いて接続される方式を用いることにより、比較用の光センシングシステム100’に比して、以下のような有利な効果を奏する。
【0098】
すなわち、上記のような欠落部の発生を抑制するにあたり、光センシングシステム100’における信号処理部2’の個数に比して、光センシングシステム100における信号処理装置2の個数を低減することができる(
図11及び
図12参照)。これにより、光センシングシステム100’の構成に比して、光センシングシステム100の構成を簡単にすることができる。また、通常、信号処理装置2は、個々のスキャナ装置1に比して高価である。すなわち、個々の信号処理部2’は、個々のスキャナ部1’に比して高価である。このため、信号処理部2’の個数に比して信号処理装置2の個数を低減することにより、光センシングシステム100’に比して光センシングシステム100を安価に実現することができる。
【0099】
また、通常、光ファイバケーブルにおける信号の距離減衰は、有線の電気通信回線(例えばLANケーブル)における信号の距離減衰に比して小さい。このため、光センシングシステム100’における中継器5’の個数に比して、光センシングシステム100における光中継器5の個数を低減することができる(
図11及び
図12参照)。特に、対象空間の面積が大きく、対象物が広い範囲に亘り配置されているとき、中継器5’の個数に比して、光中継器5の個数を大きく低減することができる。これにより、光センシングシステム100’の構成に比して、光センシングシステム100の構成を更に簡単にすることができる。
【0100】
次に、光センシングシステム100の他の効果について説明する。
【0101】
複数台のスキャナ装置1は、対象物の周囲に配置される。これにより、上記のとおり、互いに異なる複数個の位置から、同一の対象物にセンシング用のレーザ光が照射される。換言すれば、互いに異なる複数個の方向から、同一の対象物にセンシング用のレーザ光が照射される。この結果、かかる対象物において、センシング用のレーザ光が照射されない部位が発生するのを抑制することができる。
【0102】
また、複数台のスキャナ装置1は、互いに異なる方向から同一の対象物に向けてレーザ光を出射する。これにより、上記のとおり、かかる対象物において、センシング用のレーザ光が照射されない領域が発生するのを抑制することができる。この結果、かかる対象物の三次元モデルを生成するとき、センシング用のレーザ光が照射されないことに起因する欠落部の発生を抑制することができる。
【0103】
また、複数台のスキャナ装置1のうちの少なくとも1台のスキャナ装置1は、複数台のスキャナ装置1のうちの他のスキャナ装置1と独立して移動自在である。移動型のスキャナ装置1は、移動することにより、互いに異なる複数個の位置の各々から同一の対象物に向けてセンシング用のレーザ光を出射することができる。このため、移動型のスキャナ装置1を用いることにより、対象物の全体にセンシング用のレーザ光を照射するにあたり、要求されるスキャナ装置1の台数を低減することができる。すなわち、光センシングシステム100に含まれるスキャナ装置1の台数を低減することができる。この結果、光センシングシステム100の構成を更に簡単にすることができる。
【0104】
また、光センシングシステム100は、複数本の光ファイバケーブル3のうちの少なくとも1本の光ファイバケーブル3に設けられた光中継器5を備える。これにより、かかる1本の光ファイバケーブル3の敷設長が長くなる場合であっても、光センシングシステム100を実現することができる。
【0105】
また、信号処理装置2は、第1光信号の出力先及び第2光信号の取得元を切り替えるための光スイッチ53を備える。これにより、信号処理装置2において、スキャナ装置1間の光信号の混合が発生するのを回避することができる。
【0106】
また、対象物は、原料ヤードにおける原料の山である。複数台のスキャナ装置1は、原料ヤードに設置される。これにより、例えば、原料の山の体積の推定、又は原料の山における異常の発生の検出に光センシングシステム100を用いることができる。
【0107】
また、対象物は、空港における停留中の航空機である。複数台のスキャナ装置1は、空港に設置される。これにより、例えば、停留中の航空機における異常の発生の検出に光センシングシステム100を用いることができる。
【0108】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0109】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0110】
[付記]
[付記1]
互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置と、複数本の光ファイバケーブルを用いて前記複数台のスキャナ装置と接続される信号処理装置と、を備え、
前記複数台のスキャナ装置は、対象物に向けてレーザ光を出射し、前記対象物により反射された反射光を受信し、
前記信号処理装置は、前記複数台のスキャナ装置により出射される前記レーザ光に対応する第1光信号を前記複数本の光ファイバケーブルを介して前記複数台のスキャナ装置に出力し、前記複数台のスキャナ装置により受信された前記反射光に対応する第2光信号を前記複数本の光ファイバケーブルを介して前記複数台のスキャナ装置から取得する
ことを特徴とする光センシングシステム。
[付記2]
前記複数台のスキャナ装置は、前記対象物の周囲に配置されることを特徴とする付記1に記載の光センシングシステム。
[付記3]
前記複数台のスキャナ装置は、互いに異なる方向から同一の前記対象物に向けて前記レーザ光を出射することを特徴とする付記1又は付記2に記載の光センシングシステム。
[付記4]
前記複数台のスキャナ装置のうちの少なくとも1台のスキャナ装置は、前記複数台のスキャナ装置のうちの他のスキャナ装置と独立して移動自在であることを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の光センシングシステム。
[付記5]
前記複数本の光ファイバケーブルのうちの少なくとも1本の光ファイバケーブルに設けられた光中継器を備えることを特徴とする付記1から付記4のうちのいずれか一つに記載の光センシングシステム。
[付記6]
前記信号処理装置は、前記第1光信号の出力先及び前記第2光信号の取得元を切り替えるための光スイッチを備えることを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか一つに記載の光センシングシステム。
[付記7]
前記対象物は、原料ヤードにおける原料の山であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記原料ヤードに設置される
ことを特徴とする付記1から付記6のうちのいずれか一つに記載の光センシングシステム。
[付記8]
前記対象物は、空港における停留中の航空機であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記空港に設置される
ことを特徴とする付記1から付記6のうちのいずれか一つに記載の光センシングシステム。
[付記9]
互いに異なる地点に設置される複数台のスキャナ装置が、対象物に向けてレーザ光を出射し、前記対象物により反射された反射光を受信し、
複数本の光ファイバケーブルを用いて前記複数台のスキャナ装置と接続される信号処理装置が、前記複数台のスキャナ装置により出射される前記レーザ光に対応する第1光信号を前記複数本の光ファイバケーブルを介して前記複数台のスキャナ装置に出力し、前記複数台のスキャナ装置により受信された前記反射光に対応する第2光信号を前記複数本の光ファイバケーブルを介して前記複数台のスキャナ装置から取得する
光センシング方法。
[付記10]
前記複数台のスキャナ装置は、前記対象物の周囲に配置されることを特徴とする付記9に記載の光センシング方法。
[付記11]
前記複数台のスキャナ装置は、互いに異なる方向から同一の前記対象物に向けて前記レーザ光を出射することを特徴とする付記9又は付記10に記載の光センシング方法。
[付記12]
前記複数台のスキャナ装置のうちの少なくとも1台のスキャナ装置は、前記複数台のスキャナ装置のうちの他のスキャナ装置と独立して移動することを特徴とする付記9から付記11のうちのいずれか一つに記載の光センシング方法。
[付記13]
前記複数本の光ファイバケーブルのうちの少なくとも1本の光ファイバケーブルに光中継器が設けられることを特徴とする付記9から付記12のうちのいずれか一つに記載の光センシング方法。
[付記14]
前記信号処理装置の光スイッチが、前記第1光信号の出力先及び前記第2光信号の取得元を切り替えることを特徴とする付記9から付記13のうちのいずれか一つに記載の光センシング方法。
[付記15]
前記対象物は、原料ヤードにおける原料の山であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記原料ヤードに設置される
ことを特徴とする付記9から付記14のうちのいずれか一つに記載の光センシング方法。
[付記16]
前記対象物は、空港における停留中の航空機であり、
前記複数台のスキャナ装置は、前記空港に設置される
ことを特徴とする付記9から付記14のうちのいずれか一つに記載の光センシング方法。
【符号の説明】
【0111】
1 スキャナ装置
2 信号処理装置
3 光ファイバケーブル
4 電気通信回線
5 光中継器
11 光出射部
12 受光部
21 光学系
31 光信号出力部
32 光信号取得部
33 光スイッチ部
34 信号処理部
35 通信部
41 距離測定部
42 点群データ生成部
51 光送信機
52 光受信機
53 光スイッチ
54 送信機
55 受信機
56 プロセッサ
57 メモリ
58 処理回路
100 光センシングシステム
200 上位システム