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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】回転電機及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20250513BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20250513BHJP
【FI】
H02K5/167 A
H02K11/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024545049
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2023012572
(87)【国際公開番号】W WO2024201725
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 将臣
(72)【発明者】
【氏名】馬場 和彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 貴也
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0346360(US,A1)
【文献】特開2015-156794(JP,A)
【文献】特開2013-038869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心に固定子巻線が巻回され、前記固定子巻線が前記固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子と、
前記固定子の内側に間隔を空けて配置された回転子と、
前記回転子の中央に設けられたシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記固定子巻線と前記固定子鉄心を一体成形する樹脂材料であるモールド材と、
前記モールド材の内部に設けられ、前記固定子巻線への通電を制御する回路基板と、
前記回路基板とは別体として設けられ、前記軸受と導通され、前記モールド材の内部において少なくとも一部が前記固定子巻線部分と対向する位置に前記固定子巻線とは離れて設けられ、回転動作時に生じる軸電圧が前記軸受内部の潤滑剤の絶縁破壊電圧より大きくならないような静電容量を前記固定子巻線部分との間に形成する導電性部材とを備える回転電機。
【請求項2】
前記軸受を固定し、前記軸受と導通されたブラケットが設けられ、前記導電性部材は、前記ブラケットに接合されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記導電性部材は複数設けられ、前記固定子巻線部分との間に複数の静電容量を形成する請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
固定子鉄心に固定子巻線が巻回され、前記固定子巻線が前記固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子と、
前記固定子の内側に間隔を空けて配置された回転子と、
前記回転子の中央に設けられたシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記固定子巻線と前記固定子鉄心を一体成形する樹脂材料であるモールド材と、
電性パターンが複数設けられ、前記導電性パターン間にはキャパシタが接続される回路基板と、
少なくとも一つの前記導電性パターンと一体となり成形され、前記軸受と導通され、前記モールド材の内部において少なくとも一部が前記固定子巻線部分と対向する位置に前記固定子巻線とは離れて設けられ、回転動作時に生じる軸電圧が前記軸受を潤滑する潤滑剤の絶縁破壊電圧未満となるような静電容量を前記固定子巻線部分との間に形成する導電性部材とを備える回転電機。
【請求項5】
前記キャパシタと並列に接続される放電抵抗を備える請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記回路基板は、複数の前記導電性パターンを有する多層回路基板である請求項4又は5に記載の回転電機。
【請求項7】
固定子鉄心に固定子巻線を巻回し、前記固定子巻線が前記固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子を形成するステップと、
モールド材の内部に、前記固定子巻線への通電を制御する回路基板を配置するステップと、
軸受を配置し、前記軸受と導通され、少なくとも一部が前記固定子巻線部分と対向し、前記固定子巻線とは離れて、回転動作時に生じる軸電圧が前記軸受内部の潤滑剤の絶縁破壊電圧より大きくならないような静電容量を前記固定子巻線部分との間に形成し、前記回路基板とは別体である導電性部材を設けるステップと、
前記固定子及び前記導電性部材を前記モールド材で一体成形するステップと、
前記固定子の内側に間隔を空けて回転子及びシャフトを配置するステップと、
を備える回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機を回転数制御する方法としてインバータ等の電力変換機によって駆動する方法が用いられている。インバータによる駆動の方式としては電圧形PWM(Pulse Width Modulation)インバータが良く知られている。この種の方式では、変調正弦波信号に比例したパルス幅の一定キャリア周期をもつ矩形波状の電圧パルス列を回転電機に印加して、回転電機の固定子巻線に流れる電流を変調正弦波信号の周波数に等しい周波数の正弦波になるように回転電機を駆動する。
【0003】
近年の電力用半導体素子の発展に伴い、電圧形PWMインバータのキャリア周波数の高周波化が進んでいるため、インバータによる駆動の方式を用いた場合、インバータのスイッチングに起因した高周波電圧が発生してしまう。この高周波電圧は、例えば回転電機内部の静電容量によって分圧されることによって、ベアリングの外輪と内輪との間に発生する電位差による高周波電圧(軸電圧)である。この軸電圧がベアリングの潤滑剤の絶縁破壊電圧を超えると、外輪と内輪間に高周波電流(軸電流)が流れる。軸電流が流れた場合、ベアリングの内輪、外輪両軌道及びベアリングボールの転動面に電食と呼ばれる腐食を発生し、ベアリングの耐久性を悪化させてしまう。そのため、インバータにより駆動される回転電機では、電食による不具合を抑制するため、軸電圧を低減する必要がある。
【0004】
特許文献1では、固定子巻線と軸受の内輪との間のインピーダンス及び固定子巻線と軸受の外輪との間のインピーダンスの少なくともいずれかのインピーダンスを調整するインピーダンス調整部材が設けられている。この電動機では、固定子巻線と軸受の内輪又は固定子巻線と軸受の外輪との間に誘電素子であるキャパシタを電気的に接続しており、この接続を行うために固定子巻線の側面に位置するモールド材の一部に切削して貫通孔を設けている。この工程によって固定子巻線を露出させ、貫通孔を通して露出させた固定子巻線の一部にキャパシタの一端を接続する。キャパシタの他端は軸受の内輪又は軸受の外輪に接続されており、このような構成とすることで、インピーダンスを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/001546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電動機においては、固定子巻線と軸受の内輪との間のインピーダンス及び固定子巻線と軸受の外輪との間のインピーダンスの少なくともいずれかのインピーダンスを調整することで、軸受の電食による不具合を抑制することができる。しかしながら、モールド材の一部に切削して貫通孔を設けているため、製造時の工程が複雑になるという課題があった。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたもので、軸受に発生する電食を防止することができるとともに、製造時の作業の複雑化を防ぐことができる回転電機及び回転電機の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る回転電機は、固定子鉄心に固定子巻線が巻回され、固定子巻線が固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子と、固定子の内側に間隔を空けて配置された回転子と、回転子の中央に設けられたシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受と、固定子巻線と固定子鉄心を一体成形する樹脂材料であるモールド材と、モールド材の内部に設けられ、固定子巻線への通電を制御する回路基板と、回路基板とは別体として設けられ、軸受と導通され、モールド材の内部において少なくとも一部が固定子巻線部分と対向する位置に固定子巻線とは離れて設けられ、回転動作時に生じる軸電圧が、軸受内部の潤滑剤の絶縁破壊電圧より大きくならないような静電容量を固定子巻線部分との間に形成する導電性部材とを備える。
また、本開示に係る回転電機は、固定子鉄心に固定子巻線が巻回され、固定子巻線が固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子と、固定子の内側に間隔を空けて配置された回転子と、回転子の中央に設けられたシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受と、固定子巻線と固定子鉄心を一体成形する樹脂材料であるモールド材と、導電性パターンが複数設けられ、導電性パターン間にはキャパシタが接続される回路基板と、少なくとも一つの導電性パターンと一体となり成形され、軸受と導通され、モールド材の内部において少なくとも一部が固定子巻線部分と対向する位置に固定子巻線とは離れて設けられ、回転動作時に生じる軸電圧が軸受を潤滑する潤滑剤の絶縁破壊電圧未満となるような静電容量を固定子巻線部分との間に形成する導電性部材とを備える。
【0009】
本開示に係る回転電機の製造方法は、固定子鉄心に固定子巻線を巻回し、固定子巻線が固定子鉄心から軸方向に突出した固定子巻線部分を有する固定子を形成するステップと、モールド材の内部に、固定子巻線への通電を制御する回路基板を配置するステップと、軸受を配置し、軸受と導通され、少なくとも一部が固定子巻線部分と対向し、固定子巻線とは離れて、回転動作時に生じる軸電圧が、軸受内部の潤滑剤の絶縁破壊電圧より大きくならないように静電容量を固定子巻線部分との間に形成し、回路基板とは別体である導電性部材を設けるステップと、固定子及び導電性部材をモールド材で一体成形するステップと、固定子の内側に間隔を空けて回転子及びシャフトを配置するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る回転電機によれば、導電性部材が、軸受と導通され、モールド材の内部において、少なくとも一部が固定子巻線部分と対向する位置に設けられ、固定子巻線部分との間に静電容量が形成される。これにより、軸受に発生する電食を防止することができるとともに、製造時の作業の複雑化を防ぐことができる。
【0011】
また、本開示に係る回転電機の製造方法によれば、少なくとも一部が固定子巻線部分と対向し、固定子巻線部分との間に静電容量が形成されるように導電性部材を設けたのち、固定子及び導電性部材をモールド材で一体成形するため、軸受に発生する電食を防止することができるとともに、製造時の作業の複雑化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る回転電機の概略回路図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る回転電機の製造方法を示すフローチャートである。
図5】本開示の実施の形態2に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図6】本開示の実施の形態3に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図7】本開示の実施の形態4に係る導電性パターンの構造を示す上面図である。
図8】本開示の実施の形態5に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図9】本開示の実施の形態5に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。
図10】本開示の実施の形態6に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図11】本開示の実施の形態6に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。
図12】本開示の実施の形態7に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。
図13】本開示の実施の形態8に係る回転電機の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る回転電機の構造を示す断面図である。図1に示すように、回転電機1は、固定子2と、回転子5と、シャフト6と、軸受7、8と、ブラケット9、10と、モールド材11と、導電性部材12と、回路基板13を備える。以下の説明では、シャフト6が延びる方向を「軸方向」とし、シャフト6の中心から放射状に延びる方向を「径方向」とする。
【0014】
固定子2は、固定子巻線3と固定子巻線3が巻回された固定子鉄心4を有する。固定子巻線3と固定子鉄心4との間には、固定子鉄心4を絶縁するためのインシュレータ(図示せず)が介在している。固定子2は、回転子5の外側に間隔を空けて配置されている。固定子2は、回転子5を囲んでいる。固定子巻線3は、固定子鉄心4から軸方向に突出した第一固定子巻線部分3aと、第二固定子巻線部分3bとを含む。第一固定子巻線部分3aは、軸方向において、軸受7及びブラケット9側に位置し、第二固定子巻線部分3bは、軸方向において、軸受8及びブラケット10側に位置している。固定子巻線3固定子鉄心4とは、モールド材11によって一体成形され、モールド材11の内部に設けられている。固定子鉄心4は、磁性材料で形成されている。固定子鉄心4は、例えば、軟質磁性材料である電磁鋼板が用いられる。
【0015】
固定子鉄心4の径方向内側には、間隔を空けて回転子5が配置されている。回転子5は、磁性材料で形成されている。また回転子5は、例えば、樹脂を含む磁性かつ絶縁性の材料で形成されてもよい。回転子5は、例えば、ナイロン、エラストマーまたはポリフェニレンサルファイド(PPS)のような絶縁樹脂材料と、フェライト、ネオジウムまたはサマリウムコバルト合金のような磁性材料とが混合された磁性かつ絶縁性の材料で形成されてもよい。回転子5は、硬質磁性材料である永久磁石で形成されてもよい。回転子5は、例えば、絶縁性材料、または磁性かつ絶縁性の材料と、永久磁石とが一体成形されてもよい。
【0016】
回転子5の中央にはシャフト6が設けられている。シャフト6は回転子5の径方向内側に締結されている。シャフト6は、鉄鋼(例えば、S45Cなどの炭素鋼)または合金鋼(例えば、ステレンス鋼)のような導電性材料で形成されている。
【0017】
シャフト6には、シャフト6を回転可能に支持する2つの軸受7、8が取り付けられている。軸受7はシャフト6の軸方向の一端側に位置し、軸受8はシャフト6の軸方向の他端側に位置する。軸受7は、外輪7aと、内輪7bと、複数の転動体7cと、潤滑剤7dとを有する。軸受7の外輪7aは、モールド材11とブラケット9に固定される。軸受7の内輪7bの内側には、複数の転動体7cと、潤滑剤7dを介して、シャフト6が固着されている。軸受8は、外輪8aと、内輪8bと、複数の転動体8cと、潤滑剤8dとを有する。軸受8の外輪8aは、モールド材11とブラケット10に固定される。軸受8の内輪8bには、複数の転動体8cと、潤滑剤8dを介して、シャフト6が固着されている。
【0018】
ブラケット9はシャフト6の軸方向の一端側に位置し、ブラケット10はシャフト6の軸方向の他端側に位置する。ブラケット9は軸受7を固定し、ブラケット10は軸受8を固定する。ブラケット9、10は、鉄鋼(例えば、S45Cなどの炭素鋼)または合金鋼(例えば、ステレンス鋼)のような導電性材料で形成されている。
【0019】
固定子2とブラケット9、10とはモールド材11により絶縁されている。また、軸受7の外輪7aとブラケット9とは電気的に接続され、軸受8の外輪8aとブラケット10も電気的も接続されている。軸受7の内輪7bと軸受8の内輪8bは、シャフト6と電気的に接続されている。そして、回転電機1が駆動されたとき、軸受7、8の内部において、潤滑剤7d、8dにより絶縁状態が生じる。
【0020】
回転電機1には駆動回路を実装した回路基板13が内蔵されている。回路基板13は、軸方向に対し垂直に板状に拡がるように設けられ、軸方向において、固定子2とブラケット9との間に位置している。回路基板13の中央にはシャフト6が貫通して設けられている。回路基板13はモールド材11の内部に設けられている。回路基板13は、PWM方式のインバータ駆動回路が搭載されている。このインバータ駆動回路により、固定子巻線3への通電が制御される。
【0021】
本実施の形態では、ブラケット9を介して軸受7と導通された導電性部材12が設けられている。導電性部材12は、モールド材11の内部に設けられている。導電性部材12は、少なくとも一部が固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。導電性部材12はブラケット9と接合され、電気的に接続されている。ブラケット9と導電性部材12とは、例えば、溶接、圧接、ろう接などの溶接により接合されている。また、ブラケット9と導電性部材12は、例えば、接着剤による化学的接合されていてもよい。また、ブラケット9と導電性部材12とは、例えば、リベット、ボルト、焼き嵌めによる機械的接合されていてもよい。また、ブラケット9と導電性部材12とは一つの部材で形成されていてもよい。
【0022】
ここで、図1では導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通され、第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられている例を示したが、導電性部材12はブラケット10を介して軸受8に導通され、第二固定子巻線部分3bと対向して設けられていてもよい。
【0023】
導電性部材12は、アルミニウム合金、銅、鉄鋼(例えば、S45Cなどの炭素鋼)または合金鋼(例えば、ステンレス鋼)のような導電性材料で形成されている。BMC(Bulk Molding Compound)は、不飽和ポリエステル樹脂を主成分として低収縮剤としての熱可塑性ポリマー、硬化剤、充填材、離型剤を均一に混合したマトリックスに補強材として繊維(主としてガラス繊維)を使用した熱硬化性成形材料である。SMC(Sheet Molding Compound)は、樹脂マトリックス中に、低収縮剤、充填材、添加剤等を加えた混合物を強化材に含浸させ、厚さ1~5ミリのシート状または、板状に加工した熱硬化性成形材料のことである。
【0024】
以下では、回転電機1の動作について説明する。図2は、本開示の実施の形態1に係る回転電機の概略回路図である。図2に示すように、回転電機1は電力供給装置14に接続される。電力供給装置14は、例えば、三相交流電力のような交流電力を回転電機1に供給する。電力供給装置14は、例えば、電源15と、平滑コンデンサ16と、インバータ回路17と、正極ライン18と、負極ライン19と、制御回路20とを含む。電源15は、正極ライン18と負極ライン19とに接続されている。電源15は、例えば、直流電源である。平滑コンデンサ16は、正極ライン18と負極ライン19とに接続されている。平滑コンデンサ16は、正極ライン18と負極ライン19との間の直流電力を安定化させる。
【0025】
インバータ回路17は、正極入力端子17aと、負極入力端子17bと、レグ21u、21v、21wと、u相出力端子22uと、v相出力端子22vと、w相出力端子22wとを含む。正極入力端子17aは、正極ライン18に接続されている。負極入力端子17bは、負極ライン19に接続されている。レグ21u、21v、21wは、各々、正極入力端子17aと、負極入力端子17bとに接続されている。レグ21u、21v、21wは、各々、上アームと、下アームとを含む。上アームと下アームとは、各々、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のような半導体スイッチング素子23と、半導体スイッチング素子23に逆並列接続されている還流ダイオード24とを含む。
【0026】
半導体スイッチング素子23がIGBTである場合、上アームのIGBTのコレクタ端子は正極入力端子17aに接続されており、下アームのIGBTのエミッタ端子は負極入力端子17bに接続されている。u相出力端子22uは、レグ21uに接続されている。v相出力端子22vは、レグ21vに接続されている。w相出力端子22wは、レグ21wに接続されている。u相固定子巻線3uは、u相出力端子22uに接続されている。v相固定子巻線3vは、v相出力端子22vに接続されている。w相固定子巻線3wは、w相出力端子22wに接続されている。
【0027】
制御回路20は、半導体スイッチング素子23の各々のゲート端子に接続されている。インバータ回路17は、制御回路20によって、例えば、パルス幅変調(PWM)方式で制御される。インバータ回路17は、電源15からインバータ回路17に入力された直流電力を、三相交流電力(u相交流電力、v相交流電力、w相交流電力)に変換する。インバータ回路17は、三相交流電力を、固定子巻線3に出力する。具体的には、インバータ回路17は、u相交流電力を、u相固定子巻線3uに出力する。インバータ回路17は、v相交流電力を、v相固定子巻線3vに出力する。インバータ回路17は、w相交流電力を、w相固定子巻線3wに出力する。固定子巻線3に三相交流電力を供給することによって、回転子5と回転子5が固定されているシャフト6が回転する。
【0028】
次に、回転電機1の静電容量の概略分布について説明する。図1には、回転電機1を構成する部材によって形成される静電容量の概略分布を示している。静電容量CB-Nは、ブラケット9と回路基板13の基準電位パターンとの間の静電容量である。静電容量CB-Nの値は、モールド材11の誘電率及び絶縁距離に主に依存する。静電容量CW-Sは、固定子巻線3とシャフト6との間の静電容量である。静電容量CW-Sの値は、モールド材11の誘電率と絶縁距離及び回転子5の誘電率と厚みに主に依存する。
【0029】
静電容量CW-Cは、固定子巻線3と固定子鉄心4との間の静電容量である。静電容量CW-Cの値は、モールド材11の誘電率及び絶縁距離に主に依存する静電容量CC-Sは、固定子鉄心4とシャフト6との間の静電容量である。静電容量CC-Sの値は、モールド材11の誘電率と絶縁距離及び回転子5の誘電率と厚みに主に依存する。静電容量CS-Nは、シャフト6と回路基板13の基準電位パターンとの間の静電容量である。静電容量CS-Nの値は、モールド材11の誘電率および絶縁距離に主に依存する。
【0030】
静電容量Cbearは、軸受7の内輪7bと複数の転動体7cとの間の静電容量と、軸受7の外輪7aと複数の転動体7cとの間の静電容量と、軸受8の内輪8bと複数の転動体8cとの間の静電容量と、軸受8の外輪8aと複数の転動体8cとの間の静電容量の総和である。静電容量Cbearの値は、軸受7の内輪7bと複数の転動体7cとの間の絶縁距離と、軸受7の外輪7aと複数の転動体7cとの間の絶縁距離と、軸受8の内輪8bと複数の転動体8cとの間の絶縁距離と、軸受8の外輪8aと複数の転動体8cとの間の絶縁距離と、潤滑剤7d、8dの誘電率に主に依存する。
【0031】
以下では、電食が発生するメカニズムを説明する。図3は、本開示の実施の形態1に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。図3における中性点電位VCOMは、回転電機1の動作時における、固定子巻線3と、回路基板13におけるインバータ回路17の基準電位である負極ライン19との間の電位差である。回転電機1の動作時における固定子巻線3の中性点25の電位である中性点電位VCOMは、三相交流電力の電圧(u相交流電力のu相電圧、v相交流電力のv相電圧、w相交流電力のw相電圧)の平均値である。パルス幅変調(PWM)方式で制御されるインバータ回路において、中性点電位VCOMの値はゼロにならないことがあり、これを中性点電位変動という。
【0032】
図3に示すように、軸受7、8の外輪電位VOuterは、中性点電位VCOMが、固定子巻線3と外輪7a又は外輪8aの間の静電容量CW-Bと、外輪7aと回路基板13の基準電位パターンとの間の静電容量CB-Nが直列接続された回路A1によって分圧されている。このときのVOuterは以下の式(1)に示すとおりである。
【0033】
【数1】
【0034】
図3において、軸受7、8の内輪電位(軸受の内輪電位)VInnerは、中性点電位VCOMが、固定子巻線3とシャフト6との間の合成静電容量CCOMB1と、シャフト6と回路基板13の基準電位パターンとの間の静電容量CS-Nが直列接続された回路A2によって分圧される。このときのVInner及びCCOMBは以下の式(2)と式(3)のようになる。
【0035】
【数2】
【0036】
【数3】
【0037】
図3において、軸受7、8の静電容量に発生する電位差、つまり軸受7、8の外輪電位と軸受7の内輪電位との電位差(軸電圧)をVAxisとすると、VAxisは以下の式(4)に示すとおりである。
【0038】
【数4】
【0039】
回転電機1が動作している場合、軸受7、8には軸電圧が印加された状態になる。このとき、軸受7、8の内部で潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧よりも、軸電圧の方が大きい場合、局所的な絶縁破壊による放電現象が発生する。この放電現象により、軸受7、8の転動面に微小の放電痕が形成され、それが長時間継続することで電食に至る。したがって、軸受7、8の外輪電位と軸受7、8の内輪電位が異なることにより発生する軸電圧VAxisが電食発生の一因となる。
【0040】
次に、本開示における電食防止の原理について、図1及び図3を参照して説明する。本実施の形態では、図1に示すように、導電性部材12は、ブラケット9を介して軸受7と電気的に接続され、モールド材11の内部において、少なくとも一部が第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられることで、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量Cadjを形成する。この静電容量Cadjは、図3に示すように、回路A1において固定子巻線3と外輪7aとの間の静電容量CW-Bと並列接続される。
【0041】
軸受7の外輪電位VOuterは、中性点電位VCOMが、固定子巻線3とブラケット9との間の静電容量CW-Bとの導電性部材12と固定子巻線3との間に発生する静電容量Cadjの合成容量CCOMB2と、ブラケット9と回路基板13の基準電位パターンとの間の静電容量CB-Nによって分圧される。このときのVOuter及びCCOMB2は、式(5)と式(6)のようになる。
【0042】
【数5】
【0043】
【数6】
【0044】
本開示の回転電機では、導電性部材12と固定子巻線3との間に発生する静電容量Cadjを適切に設定することで、軸受7の外輪電位VOuterを軸受7の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受7の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7の内部の潤滑剤7dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。
回転電機
【0045】
次に回転電機1の製造方法を説明する。図4は本発明の実施の形態1に係る回転電機の製造方法を示すフローチャートである。ステップS1では、まず固定子巻線3を固定子鉄心4に巻回する。ステップS2では、軸受7及び軸受8を配置し、導電性部材12軸受7と導通させ、少なくとも一部が固定子巻線3の固定子鉄心4から軸方向に突出した固定子巻線部分3aと対向するように設ける。このように導電性部材12を配置することで、固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成している。ステップS3では、固定子巻線3、固定子鉄心4及び導電性部材12をモールド材11で一体成形する。ステップS4では、固定子2の内側に間隔を空けて回転子5及びシャフト6を配置する。
【0046】
上述のとおり、本開示の回転電機1は、導電性部材12が、軸受7と導通され、モールド材11の内部において、少なくとも一部が固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、固定子巻線部分3aとの間に静電容量が形成される。これにより、軸受7、8に発生する電食を防止することができるとともに、製造時の作業の複雑化を防ぐことができる。また、導電性部材12はモールド材11の内側に配置されるため、回転電機1のサイズの増加を生じさせずに、電食発生を防止することができる。
【0047】
また本開示の回転電機1の製造方法では、導電性部材12の少なくとも一部が固定子巻線部分3aと対向し、固定子巻線部分3aとの間に静電容量が形成されるように設けたのち、固定子2及び導電性部材12をモールド材11で一体成形するため、軸受7に発生する電食を防止することができるとともに、製造時の作業の複雑化を防ぐことができる。
【0048】
なお、本実施の形態の回転電機1では、一つの導電性部材12がブラケット9を介して軸受7、8のいずれかに導通している例を示したが、複数の導電性部材12を設けてもよい。また、導電性部材12は、軸受7及び軸受8の双方に導通するように設けてもよい。複数の導電性部材12が、軸受7、8と導通され、モールド材11の内部において、少なくとも一部が固定子巻線部分3a、3bと対向する位置に設けることで、固定子巻線部分3a、3bとの間に複数の静電容量が形成されることになり、電食発生の防止および一体成形後の作業の複雑化を防いだうえで、さらに回転電機1に発生する電食の抑制効果のばらつきを低減することが可能となる。
【0049】
また本実施の形態の回転電機1は、導電性部材12がブラケット9、10を介して軸受7、8と導通されている例を示したが、ブラケット9、10を介さず、直接、軸受7、8に導通されていてもよい。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態2では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態2に係る回転電機1bについて説明する。
【0051】
図5は、本開示の実施の形態2に係る回転電機の構造を示す断面図である。図5に示すように、本実施の形態に係る回転電機1bは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0052】
本実施の形態の回転電機1bでは、導電性部材12の一部である導電性パターン26と固定子巻線3との間には静電容量Cadjが発生するため、実施の形態1と同様に軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7、8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。導電性パターン26が実施の形態1と同様にモールド材11の内側に設けられているため、一体成形後の作業の複雑化を防ぐことができる。
【0053】
さらに、本実施の形態の回転電機1bでは、導電性部材12の一部として導電性パターン26が設けられているため、静電容量Cadjの値を、モールド一体成形するモールド材11の誘電率および絶縁距離、回路基板13の誘電率及び厚みを考慮して設定することができる。回路基板13の誘電率と厚みによってもCadjを調整することができるため、静電容量Cadjの調整時のパラメータを多くすることができ、容易に静電容量値を最適に調整することが可能となる。
【0054】
実施の形態3.
実施の形態3では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態3に係る回転電機1cについて説明する。
【0055】
図6は、本開示の実施の形態3に係る回転電機の構造を示す断面図である。図6に示すように、本実施の形態に係る回転電機1cは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。回路基板13の中央にはシャフト6が貫通して設けられているが、回路基板13はシャフト6に固定されていない。回路基板13がシャフト6に固定されていないため、導電性パターン26と第一固定子巻線部分3aの相対的な位置関係は、モールド一体成型時における回路基板13の軸方向における配置により可変である。
【0056】
本実施の形態の回転電機1cでは、導電性部材12の一部である導電性パターン26と固定子巻線3との間には静電容量Cadjが発生するため、実施の形態1と同様に軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7及び軸受8の内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。導電性部材12の一部である導電性パターン26が実施の形態1と同様にモールド材11の内部に設けられているため、一体成形後の作業の複雑化を防ぐことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態の回転電機1cでは、回路基板13はシャフト6に固定されていないため、固定子巻線3との間にあるモールド材11の誘電率と、回路基板13の誘電率と厚みだけでなく、回路基板13と固定子巻線3との間の絶縁距離によってもCadjを調整することができる。このように、本実施の形態の回転電機1cでは、静電容量Cadjの調整時のパラメータを多くすることができ、容易に静電容量値を最適に調整することが可能となる。
【0058】
実施の形態4.
実施の形態4では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態4に係る回転電機1dについて説明する。
【0059】
本実施の形態に係る回転電機1dは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0060】
図7は、本開示の実施の形態4に係る回転電機の導電性パターンの上面図である。図7に示すように、導電性部材12の一部である導電性パターン26は、回路基板13上に複数設けられている。この複数の導電性パターン26は、各々が異なるパターン幅と異なるパターン長を備えているため、回路基板13には、互いに面積が異なる導電性パターン26が複数設けられていることとなる。したがって、本実施の形態の回転電機1dは、回路基板13のブラケット9と対向する面に少なくとも一つ以上、互いに面積の異なる導電性パターン26が設けられ、軸受7と導通させる導電性パターン26が選択されている。
【0061】
本実施の形態の回転電機1dでは、導電性部材12の一部である複数の導電性パターン26と固定子巻線3との間には静電容量Cadjが発生するため、実施の形態1と同様に軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7及び軸受8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。導電性パターン26が実施の形態1と同様にモールド材11の内部に設けられているため、一体成形後の作業の複雑化を防ぐことができる。
【0062】
さらに、本実施の形態の回転電機1dでは、回路基板13に互いに面積の異なる導電性パターン26が設けられているため、固定子巻線3との間にあるモールド材11の誘電率と、回路基板13の誘電率と厚みだけでなく、外輪7aと導通させる導電性パターン26の面積によってCadjを調整することができる。したがって、本実施の形態の回転電機1dでは、外輪7aと導通させる導電性パターン26適宜選択することによって、静電容量Cadjの調整時のパラメータをより多くすることができ、容易に静電容量値を最適に調整することが可能となる。
【0063】
実施の形態5.
実施の形態5では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態5に係る回転電機1eについて説明する。
【0064】
図8は、本開示の実施の形態5に係る回転電機の構造を示す断面図である。図8に示すように、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0065】
導電性パターン26は、回路基板13のブラケット9と対向する面に少なくとも2つ設けられ、導電性パターン26同士の間に静電容量Cadj2を形成している。回路基板13の固定子巻線2と対向する面にも導電性パターン26が設けられ、導電性パターン26同士の間に静電容量Cadj2が形成されている。このとき、ブラケット9と対向する面に設けられた導電性パターン26と固定子巻線3と対向する面に設けられた導電性パターン26とは電気的に接続されている。これらの導電性パターン26は、面積と配置される間隔の少なくともいずれかが異なるものである。
【0066】
図9は、本開示の実施の形態5に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。図9に示すように、静電容量Cadj2は静電容量Cadjと直列に接続されている。実施の形態1以降と同様に、静電容量Cadjと静電容量Cadj2を適切に設定することで、軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7、8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。
【0067】
さらに、本実施の形態の回転電機1eでは、固定子巻線3と、回路基板13の固定子巻線3と対向する面に設けられた導電性パターン26との間に発生する静電容量Cadjと、回路基板13のブラケット9と対向する面に設けられた少なくとも2つの導電性パターン26の間に発生する静電容量Cadj2を最適に調整することで軸電圧を低く抑えることができる。静電容量Cadj2の値は、回路基板13において、導電性部材12の接続先である導電性パターン26を変えることにより調整することができる。これは、導電性パターン26において、少なくとも一対以上の導電性パターン26の面積と配置される間隔を調整していることに等しい。
【0068】
このように、回転電機1eは、回路基板13において、導電性パターン26が複数設けられ、導電性パターン26の面積と配置される間隔の少なくともいずれかを変えることにより、静電容量Cadj2の値を調整することができる。したがって、固定子巻線3と導電性パターン26との間の静電容量Cadjだけでなく、導電性パターン26同士の間の静電容量Cadj2を調整することによっても容易に軸電圧を低減することが可能である。
【0069】
実施の形態6.
実施の形態6では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態6に係る回転電機1fについて説明する。
【0070】
図10は、本開示の実施の形態6に係る回転電機の構造を示す断面図である。図10に示すように、回転電機1fは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0071】
導電性パターン26は、回路基板13のブラケット9と対向する面に少なくとも2つ以上設けられている。回路基板13のブラケット9と対向する面に設けられた導電性パターン26同士の間には、キャパシタ27が設けられている。
【0072】
図11は、本開示の実施の形態6に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。図11に示すように、回転電機1fでは、キャパシタ27の静電容量CCapが静電容量Cadjと直列に接続されている。実施の形態1以降と同様に、静電容量Cadjと静電容量CCapを適切に設定することで、軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7、8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。
【0073】
さらに、本実施の形態の回転電機1fでは、静電容量CCapの値はキャパシタ27を付け替えることにより容易に変更することが可能である。したがって、固定子巻線3と導電性パターン26との間の静電容量Cadjだけでなく、静電容量CCapを調整することによっても容易に軸電圧を低減することが可能である。
【0074】
実施の形態7.
実施の形態7では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態7に係る回転電機1gについて説明する。
【0075】
本実施の形態に係る回転電機1gは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、回路基板13と一体に成形された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0076】
導電性パターン26は、回路基板13のブラケット9と対向する面に少なくとも2つ以上設けられている。回路基板13のブラケット9と対向する面に設けられた導電性パターン26同士の間には、キャパシタ27が設けられている。また、キャパシタ27には、放電抵抗28が並列に接続されている。
【0077】
図12は、本開示の実施の形態7に係る回転電機の各構成部材間の静電容量を表した回路図である。図12に示すように、キャパシタ27と並列に放電抵抗28が接続されている。
【0078】
回転電機1gでは、キャパシタ27の静電容量CCapが静電容量Cadjと直列に接続されている。実施の形態1以降と同様に、静電容量Cadjと静電容量CCapを適切に設定することで、軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7、8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。
【0079】
さらに、本実施の形態の回転電機1gでは、キャパシタ27と並列に放電抵抗28が接続されている。この放電抵抗28が接続されていることにより、キャパシタ27に貯まっている電荷を放電し、無電圧状態にすることができる。キャパシタ27が無電圧状態となることで、感電防止による安全を確保でき、電源再投入時の過電圧抑制による回路の破損を防ぐことが可能となる。
【0080】
実施の形態8.
実施の形態8では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態8に係る回転電機1hについて説明する。本実施の形態では、実施の形態1の回路基板13にかえて多層回路基板29が設けられている。
【0081】
図13は、本開示の実施の形態8に係る回転電機の構造を示す断面図である。図13に示すように、本実施の形態に係る回転電機1hは、導電性部材12がブラケット9を介して軸受7と導通されている。また、導電性部材12の一部は、多層回路基板29に形成された導電性パターン26である。導電性パターン26は、固定子巻線3の第一固定子巻線部分3aと対向する位置に設けられ、第一固定子巻線部分3aとの間に静電容量を形成する。
【0082】
導電性パターン26は、多層回路基板29に少なくとも2つ以上設けられている。導電性パターン26は、多層回路基板29の固定子巻線3と対向する面及び多層回路基板29のブラケット9と対向する面に設けられている。導電性パターン26は、多層回路基板29の固定子巻線3と対向する面及び多層回路基板29のブラケット9と対向する面の間の層に設けられている。また、多層回路基板29の固定子巻線3と対向する面に設けられた導電性パターン26と固定子巻線2とは、第2の導電性部材30により接続される。導電性パターン26は、互いに導電性パターン26の面積及び配置される間隔の少なくともいずれかが異なる。つまり、回転電機1hにおいても、少なくとも2つ以上の導電性パターン26の間に静電容量Cadjが発生している。
【0083】
回転電機1hでは、実施の形態1以降と同様に、静電容量Cadjを適切に設定することで、軸受の外輪電位VOuterを軸受の内輪電位VInnerに近似あるいは一致させることができる。したがって、軸受の外輪電位と軸受の内輪電位との電位差である軸電圧VAxisを低く抑えることが可能となる。これにより、軸電圧VAxisが軸受7、8内部の潤滑剤7d、8dの絶縁破壊電圧に達することを抑制することができるため、電食発生を防止できる。
【0084】
さらに、本実施の形態の回転電機1hでは、導電性パターン26が回路基板の断面に少なくとも一対以上設けられる多層回路基板29を有しているため、静電容量Cadjは、導電性パターン26の面積、配置される間隔及び多層回路基板29の誘電率に依存することになる。したがって、導電性部材12を接続する導電性パターン26と、固定子巻線3と導通させる導電性パターン26の組合せを変えることにより、静電容量Cadjを調整することが可能となる。
【0085】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能である。また本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 回転電機、2 固定子、3固定子巻線、3u u相巻線、3v v相巻線、3w w相巻線、4 固定子鉄心、5 回転子、6 シャフト、7 8 軸受、7a 8a 外輪、7b 8b内輪、7c 8c 複数の転動体、7d 7d 潤滑剤、9 10 ブラケット、11 モールド材、12 導電性部材、13 回路基板、14 電源供給装置、15 電源、16 平滑コンデンサ、17 インバータ回路、17a 正極入力端子、17b 負極入力端子、18 正極ライン、19 負極ライン、20 制御回路、21u 21v 21w レグ、22u u相出力端子、22v v相出力端子、22w w相出力端子、23 半導体スイッチング素子、24 還流ダイオード、25 中性点、26 導電性パターン、27 キャパシタ、28 放電抵抗、29 多層回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13