(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】変性樹脂を含む液晶シール剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20250513BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20250513BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20250513BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
C09K3/10 B
C09K3/10 E
G02F1/1339 505
C08F299/02
C08G59/14
(21)【出願番号】P 2021171633
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】臼井 大晃
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172483(JP,A)
【文献】特開2010-065090(JP,A)
【文献】特開2002-014467(JP,A)
【文献】特開2009-167314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00-299/08
C08F 290/00-290/14
C08G 59/00-59/72
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し、(メタ)アクリル酸を除き、そして、カルボン酸の酸無水物を除く)で変性した、変性樹脂であって、前記カルボン酸は、多価カルボン酸を含む、変性樹脂と、
(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、
を含む、液晶シール剤。
【請求項2】
カルボン酸が、2価のカルボン酸であるか、又は、2価のカルボン酸と1価のカルボン酸との組み合わせである、請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
カルボン酸が脂肪族カルボン酸である、請求項1又は2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
カルボン酸が炭素原子数4~14のカルボン酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
芳香環を有するエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
請求項1に記載の液晶シール剤の製造方法であって、変性樹脂と、光重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを混合する工程を含み、
変性樹脂は、芳香環を有するエポキシ樹脂と、変性化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させる工程を含む製造方法で得られ、ここで、前記変性化合物は、多価カルボン酸を含むカルボン酸(但し、(メタ)アクリル酸を除き、そして、カルボン酸の酸無水物を除く)であり、前記芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に対する(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性比率合計が
10~90%であり、そして、(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性合計に対するカルボン酸の変性の割合が10~80%である、請求項1に記載の液晶シール剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性樹脂を含む硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法は硬化性樹脂組成物の閉ループ内に液晶を直接滴下、真空貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作成することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シールの硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
特許文献1には、シール剤の原料として、二官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸誘導体で部分変性することにより、液晶の配向特性を改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの知見によれば、特許文献1に記載されたような樹脂は、液晶表示素子の基材同士を貼り合せたときに、接着強度が低いという問題があった。よって、本発明は、基材同士を貼り合せたときに、高い接着強度を発揮する、変性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[7]に関する。
[1](A)芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)で変性した、変性樹脂であって、前記カルボン酸は、多価カルボン酸を含む、変性樹脂と、
(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
[2]カルボン酸が、2価のカルボン酸であるか、又は、2価のカルボン酸と1価のカルボン酸との組み合わせである、[1]の硬化性樹脂組成物
[3]カルボン酸が脂肪族カルボン酸である、[1]又は[2]の硬化性樹脂組成物。
[4]カルボン酸が炭素原子数4~14のカルボン酸である、[1]~[3]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[5]芳香環を有するエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[6]液晶シール剤である、[1]~[5]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[7][1]に定義された変性樹脂の製造方法であって、芳香環を有するエポキシ樹脂と、変性化合物と(メタ)アクリル酸を反応させる工程を含み、ここで、前記変性化合物は、多価カルボン酸を含むカルボン酸(但し、(メタ)アクリル酸を除く)であり、前記芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に対する(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性比率合計が10~90%であり、そして、(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性合計に対するカルボン酸の変性の割合が10~80%である、[1]に定義された変性樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基材同士を貼り合せたときに、高い接着強度を発揮する、変性樹脂を含む硬化性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH2=CH2-C(=O)-)及び/又はメタクリロイル基(CH2=CH(CH3)-C(=O)-)を意味する。
【0009】
「(A)芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)で変性した、変性樹脂であって、前記カルボン酸は、多価カルボン酸を含む、変性樹脂」を「(A)成分」ともいう。「(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤」等についても同様である。
【0010】
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、(A)芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)で変性した、変性樹脂であって、前記カルボン酸は、多価カルボン酸を含む、変性樹脂と、(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、を含む。
【0011】
硬化性樹脂組成物は、フィラーの配合量が少ない場合であっても接着強度を向上させることができる。また、硬化性樹脂組成物は、変性樹脂の(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)による変性比率によっては高エポキシ当量となり、必要とする硬化剤量を減らすことができる。そのため、液晶シール剤において一般的に使用されている硬化剤やフィラーといった粉体材料の含有量を削減することができ、塗布性や洗浄性等の作業性を改善することができる。
【0012】
<(A)芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)で変性した、変性樹脂であって、前記カルボン酸は、多価カルボン酸を含む、変性樹脂>
【0013】
≪芳香環を有するエポキシ樹脂≫
芳香環を有するエポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物の硬化性成分であり、変性樹脂の原料でもある。
芳香環を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂)、2官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物(例えば、レゾルシノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香環を有するエポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であることが好ましく、2官能~4官能のエポキシ樹脂であることが特に好ましい。
芳香環を有するエポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
芳香環を有するエポキシ樹脂は、1種の成分又は2種以上の成分であってもよい。
【0014】
≪カルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)≫
カルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く。以下、単に「カルボン酸」ともいう。)は、多価カルボン酸を含む。カルボン酸は、変性樹脂の原料であり、芳香環を有するエポキシ樹脂を変性樹脂とするための変性化合物である。
【0015】
カルボン酸は、分子中に2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸を含む。多価カルボン酸の価数は、2価以上であれば特に限定されず、2価~4価のカルボン酸であることが好ましく、2価のカルボン酸であることが特に好ましい。また、カルボン酸は、分子中に2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸を含む限り、分子中に1つのカルボキシル基を有する1価のカルボン酸を含んでいてもよい。
【0016】
カルボン酸の炭素原子数は、特に限定されない。多価カルボン酸の炭素原子数は、2以上であることができる。また、1価のカルボン酸の炭素原子数は、1以上であることができる。
【0017】
カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸が有する脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。不飽和脂肪族カルボン酸が有する不飽和結合の数は、1個又は2個であることが好ましく、1個であることが特に好ましい。ここで、「不飽和結合」とは、エチレン性不飽和結合(C=C)及び/又はアセチレン性不飽和結合(C≡C)を意味し、エチレン性不飽和結合であることが好ましい。
【0018】
多価の脂肪族カルボン酸は、多価の飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。多価の飽和脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸(C2)、コハク酸(C4)、アジピン酸(C6)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)等の2価の飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。ここで括弧内の数字は、カルボン酸の炭素原子数を示す。
【0019】
1価の脂肪族カルボン酸は、1価の不飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、不飽和結合を1つ有する1価の不飽和脂肪族カルボン酸であることが特に好ましい。このような1価の不飽和脂肪族カルボン酸としては、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)等が挙げられる。
【0020】
芳香族カルボン酸は、芳香環を有するカルボン酸であれば特に限定されない。芳香族カルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の多価芳香族カルボン酸;安息香酸、3-フェニルプロピオン酸等の1価の芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0021】
(好ましい態様)
カルボン酸は、2価のカルボン酸であるか、又は、2価のカルボン酸と1価のカルボン酸との組み合わせであることが好ましい。
カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましい。また、多価カルボン酸は、多価脂肪族カルボン酸であることが好ましく、2価の脂肪族カルボン酸(脂肪族ジカルボン酸)であることが特に好ましい。そして、1価のカルボン酸は、1価の脂肪族カルボン酸であることが好ましく、1価の不飽和脂肪族カルボン酸であることが特に好ましい。
カルボン酸は、炭素原子数4~14のカルボン酸を含むことが好ましく、炭素原子数4~14のカルボン酸から構成されることが好ましい。
カルボン酸は、1種の成分又は2種以上の成分であってもよい。
【0022】
≪(メタ)アクリル酸≫
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される1以上である。
【0023】
≪変性≫
(A)成分において、「芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)で変性した」とは、多価カルボン酸の全てのカルボキシル基が、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の変性に関与することを意味する。即ち、(A)成分においては、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部が、(メタ)アクリル酸で変性されており、当該(メタ)アクリル酸で変性された、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部が、多価カルボン酸で変性されている。ここで、前記芳香環を有するエポキシ樹脂の変性に関与していない多価カルボン酸の残余のカルボキシル基は、更なる芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を変性する。
【0024】
このような変性樹脂は、例えば、下記式(1)で示される構造を有する成分を含み得る。
【0025】
【化1】
〔式中、
X
1は、n1価の炭化水素基であり、
n1は、2以上であり、
B
1は、それぞれ独立に、下記式(2)で示される基であって、式(2)中のエステル基がX
1に結合し、
Ar
1は、それぞれ独立に、n2+1価の芳香環を有する基であり、
n2は、それぞれ独立に、1以上であり、
A
1は、それぞれ独立に、下記式(3)で表される基又は下記式(4)で表される基であるが、但し、分子中に、式(3)で表される基、及び、式(4)で表される基を有し、
R
1は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、
*は、結合位置を意味する。〕
【0026】
【0027】
・X1、n1
X1は、n1価の炭化水素基である。X1は、多価カルボン酸から、カルボキシル基を除いた残基である。n1価の炭化水素基としては、脂肪族基であっても、芳香族基であってもよい。
n1は、2以上であり、多価カルボン酸の価数に相当する。n1は、2~4であってもよく、2であってもよい。
n1価が2価である場合のX1としては、後述するX11が挙げられる。n1価が3価以上である場合のX1としては、後述するX11から水素原子を1以上除いた基が挙げられる。
【0028】
・B1
B1は、それぞれ独立に、式(2)で示される基であって、式(2)中のエステル基がX1に結合する。B1は、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基と、多価カルボン酸のカルボキシル基とが反応して、エポキシ基が開環した構造である。
【0029】
・Ar1、n2
Ar1は、それぞれ独立に、n2+1価の芳香環を有する基である。Ar1は、芳香環を有するエポキシ樹脂の芳香環部分に相当する。
n2は、それぞれ独立に、1以上であり、芳香環を有するエポキシ樹脂の「エポキシ官能数-1」に相当する。n1は、1~3であってもよく、1であってもよい。
【0030】
Ar1に含まれる芳香環は、ヘテロ芳香環であってもよい。Ar1に含まれる芳香環は、1種単独であっても2種以上で複数存在してもよく、単環構造であっても縮合環構造であってもよい。
【0031】
芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、チアジン環、並びにこれらの環に置換基が結合したもの等が挙げられる。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルメルカプト基、シクロアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
また、芳香環は直接結合又は連結基を介して結合して複数存在してもよい。連結基の具体例としては、炭素数1~4のアルキレン基、炭素数2~4のアルキリデン基、エーテル基、エステル基、ケト基、スルフィド基、スルホニル基等が挙げられる。また、式(1)において、Ar1に結合する酸素原子とAr1に含まれる芳香環とは、この連結基を介して結合してもよいが、Ar1に含まれる芳香環は、Ar1に結合する酸素原子と直接結合しているのが好ましい。
【0033】
n2+1価が2価である場合のAr1の具体例として、アリーレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基又はアリーレン-O-(R51-O)m1-アリーレン基(式中、R51は、アルキレン基であり、m1は、0又は1~6の整数である)が挙げられ、フェニレン基(レゾルシノールから2つの水酸基を除いた基)、フェニレン-イソプロピリデン-フェニレン基(ビスフェノールAから2つの水酸基を除いた基)、フェニレン-メチレン-フェニレン基(ビスフェノールFから2つの水酸基を除いた基)、フェニレン-エチリデン-フェニレン基(ビスフェノールADから2つの水酸基を除いた基)等のビスフェノール類から2つの水酸基を除いた基が好ましい。
【0034】
n2+1価が3価である場合のAr
1の具体例として、下記式が挙げられる。ここで、*は、結合位置を示す。
【化3】
【0035】
n2+1価が4価である場合のAr
1の具体例として、下記式が挙げられる。ここで、*は、結合位置を示す。
【化4】
【0036】
n2+1価が2価以上である場合のAr
1の具体例として、下記式で表されるフェノールノボラックも挙げられる。
【化5】
〔式中、R
61は、独立に、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基であり、m4は、0又は1以上であり、R
62は、独立に、結合位置又は水酸基であり、R
62における結合位置の数は、Ar
1の価数に一致する。〕
【0037】
なお、n2+1価が5価以上である場合のAr1の具体例として、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ターフェニリル基、アントラセニル基、フルオレニル基等の芳香族炭素原子に結合した水素原子を4以上除いた基や、n2+1価が2価である場合のAr1の具体例の芳香族炭素原子に結合した水素原子を3以上除いた基や、n2+1価が3価である場合のAr1の具体例の芳香族基の芳香族炭素原子に結合した水素原子を2以上除いた基や、n2+1価が4価である場合のAr1の具体例の芳香族炭素原子に結合した水素原子を1以上除いた基が挙げられる。
【0038】
A1は、それぞれ独立に、上記式(3)で表される基又は上記式(4)で表される基である。式(3)で表される基は、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に相当する。式(4)で表される基は、芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボン酸とが反応して形成される構造に相当する。
R1は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。アクリル酸で変性した場合は、R1は、水素原子である。また、メタクリル酸で変性した場合は、R1は、メチル基である。
【0039】
芳香環を有するエポキシ樹脂が2官能のエポキシ樹脂であり、多価カルボン酸が2価のカルボン酸である場合は、(A)成分の代表的な構造は下記式(5)で示されることが好ましい。
【0040】
【化6】
〔式中、
X
11は、アルキレン基、アルケニレン基又はAr
11と同義であり、
Ar
11及びAr
12は、それぞれ独立に、アリーレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基、又は、アリーレン-O-(R
51-O)
m1-アリーレン基(式中、R
51は、アルキレン基であり、m1は、0又は1~6の整数である)であり、
A
11及びA
12は、それぞれ独立に、式(3)で表される基又は式(4)で表される基であるが、但し、分子中に、式(3)で表される基、及び、式(4)で表される基を有する。
【0041】
なお、カルボン酸が1価のカルボン酸を含む場合は、変性樹脂は、エポキシ基が1価のカルボン酸で変性された基を有する。このような基として、下記式(6)で示される基が挙げられる。そして、上記式(1)におけるA1(上記式(5)におけるA11及びA12)は、式(6)を含む。
【0042】
【化7】
〔式中、R
2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基であるが、但し、R
2は、ビニル基又は1-メチルビニル基ではなく、*は、結合位置を意味する。〕
【0043】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルキル基」は、直鎖状又は分岐状である、1価の基である。アルキル基の炭素原子数は、1~20であるのが好ましく、1~18であるのがより好ましく、1~10であるのが更に好ましく、1~4であるのが特に好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0044】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルキレン基」は、直鎖状又は分岐状である、2価の基である。アルキレン基の炭素原子数は、1~20であるのが好ましく、1~8であるのが特に好ましい。アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、エチリデン基(エタン-1,1-ジイル基)、トリメチレン基、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基)、プロピリデン基(プロパン-1,1-ジイル基)、イソプロピリデン基(プロパン-2,2-ジイル基)、テトラメチレン基、ブチリデン基(ブタン-1,1-ジイル基)、イソブチリデン基(2-メチルプロパン-1,1-ジイル基)、ペンタメチレン基、2-メチルペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサメチレン基、2-エチルヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
【0045】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルケニル基」は、直鎖状又は分岐状である、1価の基である。アルケニル基が有する不飽和結合の数は、1~5であるのが好ましく、1又は2であるのが特に好ましい。アルケニル基は、炭素原子数が2~20であるのが好ましく、3~20であるのがより好ましく、3~15であるのが更に好ましく、3~10であるのが特に好ましい。また、アルケニル基がビニル基又は1-メチルビニル基を含む場合、アルケニル基は、炭素原子数が2~20であってもよく、2~15であってもよく、2~10であってもよい。アルケニル基は、ビニル基、1-メチルビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基等が挙げられる。
【0046】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルキニル基」は、直鎖状又は分岐状である、1価の基である。アルキニル基の炭素原子数は、2~20であるのが好ましく、2~15であるのが特に好ましい。アルキニル基は、エチニル基、プロパルギル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。
【0047】
アルキル基、アルキレン基、アルケニル基及びアルキニル基は、置換基により置換されていてもよい。置換基は、特に限定されず、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0048】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アリール基」は、単環又は多環の芳香族環を有する1価の基である。アリール基の炭素原子数は、6~20であるのが好ましい。アリール基は、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ターフェニリル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0049】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アリーレン基」は、単環又は多環の芳香族環を有する2価の基である。アリーレン基の炭素原子数は、6~20であるのが好ましい。アリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナントラニレン基等が挙げられ、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0050】
アリール基及びアリーレン基は置換基により置換されていてもよい。置換基は、特に限定されず、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルメルカプト基、シクロアルキル基、ハロゲン原子が挙げられる。アルキル基は、炭素原子数が1~4であるのが好ましい。アルコキシ基におけるアルキル部分は、炭素原子数が1~4であるアルキル基が好ましい。アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。アルキルカルボニル基及びアルキルメルカプト基におけるアルキル部分は、炭素原子数が1~4であるアルキル基が好ましい。アルキルカルボニル基として、アセチル基、プロパノイル基、2-メチルプロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられる。アルキルメルカプト基として、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基、i-プロピルメルカプト基、ブチルメルカプト基、i-ブチルメルカプト基、sec-ブチルメルカプト基、tert-ブチルメルカプト基等が挙げられる。シクロアルキル基は、炭素原子数3~20の単環又は多環の脂肪族炭化水素基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0051】
[変性樹脂の製造方法]
変性樹脂の製造方法は、変性樹脂が得られる方法であれば特に限定されない。変性樹脂の製造方法としては、例えば、芳香環を有するエポキシ樹脂と、変性化合物(即ち、多価カルボン酸を含むカルボン酸(但し、(メタ)アクリル酸を除く))と、(メタ)アクリル酸とを反応させる工程を含む製造方法が挙げられる。
【0052】
<反応条件>
変性樹脂を得るための反応条件は、エポキシ樹脂と、変性化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により用いられる公知の条件を適宜適用できる。
【0053】
反応は塩基性触媒及び/又は酸触媒の存在下又は非存在下で行うことができる。塩基性触媒及び酸触媒としては、エポキシ樹脂と、変性化合物との反応により用いられる公知の塩基性触媒及び酸触媒が挙げられる。
【0054】
塩基性触媒は、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド等)、3価の有機リン化合物及び/又はアミン化合物が好ましい。また、塩基性触媒をポリマーに担持させた、ポリマー担持塩基性触媒を用いることもできる。
【0055】
3価の有機リン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィンのようなアルキルホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリス-(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル等のアリールホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸トリエステル類及びその塩等が挙げられる。3価の有機リン化合物の塩としては、トリフェニルホスフィン・エチルブロミド、トリフェニルホスフィン・ブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・オクチルブロミド、トリフェニルホスフィン・デシルブロミド、トリフェニルホスフィン・イソブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・プロピルクロリド、トリフェニルホスフィン・ペンチルクロリド、トリフェニルホスフィン・ヘキシルブロミド等が挙げられる。
【0056】
アミン化合物としては、ジエタノールアミン等の第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリスジエチルアミノメチルフェノール等の第3級アミン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(Me-TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン等の強塩基性アミン及びその塩が挙げられる。中でも、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)が好ましい。アミン化合物の塩としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0057】
酸触媒は、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸、グラファイト酸化物、フッ化アンチモン等が挙げられる。また酸触媒は、陽イオン交換体(例えば、市販品としてアンバーリストが挙げられる)を用いてもよい。酸触媒は、エポキシ樹脂と、アルコール及びチオールからなる群より選択される1以上の化合物との反応のために用いられ得る。
【0058】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。反応に際しては炭化水素、エーテル又はケトンのような反応に不活性な溶媒を用いることもできるが、エポキシ樹脂を過剰に用いた場合には当該樹脂が溶媒としても機能するため、これらの溶媒は必須ではない。
【0059】
反応温度は、用いる触媒及び原料化合物等に応じて当業者が適宜設定できる。例えば、触媒が塩基性触媒であり、(メタ)アクリル酸、及び変性化合物としてカルボン酸(但し、(メタ)アクリル酸を除く)及びカルボン酸無水物(但し、(メタ)アクリル酸無水物を除く)からなる群より選択される1以上が用いられる場合、反応温度は、好ましくは60~120℃、より好ましくは80~120℃、さらに好ましくは90~120℃であり、特に好ましくは100℃~120℃である。
【0060】
変性樹脂の製造方法において、前記芳香環を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に対する(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性比率合計は、0%超100%未満であり、10~90%であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸及び変性化合物の変性合計に対するカルボン酸の変性の割合は、0%超100%未満であり、10~80%であることが好ましい。変性樹脂の製造方法において、エポキシ基と、(メタ)アクリル酸及び変性化合物との反応は定量的に進むため、得られた変性樹脂の変性率は、エポキシ当量より推定することもできる。
【0061】
(メタ)アクリル酸及び変性化合物は、同時に、芳香環を有するエポキシ樹脂と反応させて変性樹脂を得てもよい。また、芳香環を有するエポキシ樹脂と、変性化合物とを反応させて変性化合物で部分変性されたエポキシ樹脂を得、前記変性化合物で部分変性されたエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて、変性樹脂を得てもよく、芳香環を有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて(メタ)アクリル酸で部分変性されたエポキシ樹脂を得、(メタ)アクリル酸で部分変性されたエポキシ樹脂と変性化合物とを反応させて、変性樹脂を得てもよい。
【0062】
なお、変性樹脂の製造方法により得られる変性樹脂は、同じ骨格を有する樹脂を含む樹脂混合物として得られてもよい。ここで、変性樹脂における前記骨格とは、芳香環を有するエポキシ樹脂からエポキシ基を除いた部分をいう。例えば、エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂である場合は、前記骨格とは、フェニレン-イソプロピリデン-フェニレン基(ビスフェノールAから2つの水酸基を除いた基)、フェニレン-メチレン-フェニレン基(ビスフェノールFから2つの水酸基を除いた基)、フェニレン-エチリデン-フェニレン基(ビスフェノールADから2つの水酸基を除いた基)等のビスフェノール類から2つの水酸基を除いた基が挙げられる。
【0063】
(A)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。即ち、変性樹脂は、芳香環を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸及びカルボン酸(但し(メタ)アクリル酸を除く)の種類に応じて、変性樹脂は1種の成分のみからなっていてもよく、式(1)における、X1、A1、及びAr1の少なくとも一方が異なる、2種以上の成分の混合物であることができる。例えば、芳香環を有するエポキシ樹脂が2官能のエポキシ樹脂であり、カルボン酸が2価のカルボン酸と1価のカルボン酸との組み合わせである場合、変性樹脂は、式(5)において、A11及びA12として、式(3)で表される基、式(4)で表される基、及び式(6)で示される基を有する、式(5)で表される成分の混合物であることができる。また、変性樹脂の製造方法により得られる変性樹脂が樹脂混合物である場合、芳香環を有するエポキシ樹脂、変性化合物及び(メタ)アクリル酸の種類に応じて、式(1)におけるX1及びA1(式(5)におけるX1、A11及びA12)の少なくとも一方が異なる、2種以上の(A)成分の混合物であることができる。
【0064】
<(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤>
光重合開始剤は、硬化性樹脂組成物を光重合硬化性の組成物とすることができる成分である。熱硬化剤は、硬化性樹脂組成物を熱硬化性の組成物とすることができる成分である。光重合開始剤及び/又は熱硬化剤は、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の種類及び所望の硬化条件(エネルギー線硬化及び/又は熱硬化)に応じて適宜選択できる。よって、(B)成分としては、光重合開始剤、熱硬化剤、及び、光重合開始剤と熱硬化剤との組み合わせが挙げられる。
【0065】
≪光重合開始剤≫
光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及び/又はカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0066】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、有機過酸化物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。また、ラジカル重合開始剤として、特開2020-076794に記載されている、ジアルキルアミノベンゾイル基を有するポリエーテル化合物、及び、チオキサントンから1つの水素原子を除いた基を有するポリエーテル化合物との混合物である重合開始剤が好ましく、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ジメチルアミノ安息香酸とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ヒドロキシチオキサントンとを反応させて得られる化合物との混合物である重合開始剤が特に好ましい。
【0067】
アニオン重合開始剤としては、イミダゾール類、アミン類、ホスフィン類、有機金属塩、金属塩化物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0068】
カチオン重合開始剤としては、オニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体、ルイス酸化合物、ブレンステッド酸化合物、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド、スルホン化合物類、スルホン酸エステル類、スルホンイミド類、ジスルホニルジアゾメタン類、及びアミン類等が挙げられる。
【0069】
光重合開始剤は、市販されているか、又は、公知の方法に従い調製することができる。
光重合開始剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0070】
≪熱硬化剤≫
熱硬化剤は、特に限定されないが、アミン系熱硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、及びポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)IDH(イソフタル酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;株式会社ADEKAから、アデカハードナーEH-5030S等として販売されているポリアミン系化合物;味の素ファインテクノ株式会社から、アミキュアPN-23、アミキュアPN-30、アミキュアMY-24、アミキュアMY-H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。
熱硬化剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0071】
<その他の成分>
硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その目的に応じて、(A)成分以外の硬化性樹脂((C)成分)、及び/又は、(C)成分以外のその他の成分((D)成分)を含むことができる。(D)成分としては、シランカップリング剤、重合禁止剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。なお、(C)成分及び(D)成分は、上記した(A)成分及び(B)成分ではない。
【0072】
≪(A)成分以外の硬化性樹脂((C)成分)≫
(C)成分としては、(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂、(C-2)前記(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、並びに、(C-3)その他の硬化性樹脂(但し、(C-1)成分、及び(C-2)成分を除く。)が挙げられる。
【0073】
≪(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂≫
(C-1)成分としては、特に限定されず、芳香環を有するエポキシ樹脂として前記した樹脂が挙げられる。また、3官能及び4官能のエポキシ樹脂として、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂が挙げられる。(C-1)成分のエポキシ官能数は、特に限定されないが、2~4であることが好ましい。(C-1)成分は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
(C-1)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0074】
≪(C-2)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂≫
(C-2)成分は、(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂である。すなわち、(C-2)成分は、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を有するか、又は、樹脂中にエポキシ基を有さず、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(C-1)成分は、好ましいものを含め、前記した通りである。
(C-2)成分は、2官能のエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂であることが特に好ましい。
(C-2)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0075】
≪(C-3)その他の硬化性樹脂≫
(C-3)成分は、(A)成分、(C-1)成分及び(C-2)成分以外の硬化性樹脂であれば特に限定されず、硬化性樹脂組成物の主剤として用いられる従来の不飽和基及び/又はエポキシ基を有する樹脂、エポキシ基を1つ有する樹脂、並びに、不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂が挙げられる。ここで、「不飽和基」とは、エチレン性不飽和基及び/又はアセチレン性不飽和基を意味する。(C-3)成分は、カチオン重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂及び/又はアニオン重合性樹脂から、硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤及び/又は熱硬化剤の種類に応じて適宜選択される。
【0076】
不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物、脂肪族アクリルアミド化合物、脂環式アクリルアミド化合物、芳香族を含むアクリルアミド化合物、N-置換アクリルアミド系化合物、ジエン系ポリマー(例えば、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー等)が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物の官能性は、1官能性、2官能性又は3官能性以上の多官能性であることができ、2官能性又は3官能性以上であることが好ましい。
【0077】
2官能性の(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(例えば、ARONIX M-6100、東亜合成株式会社製)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、4G、新中村化学工業株式会社製)、及びシリコンジ(メタ)アクリレート(例えば、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス株式会社製)からなる群より選択される1以上の化合物が好ましい。ここで、「EO」はエチレンオキシドを意味し、「PO」はプロピレンオキシドを意味する。
【0078】
3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(6官能性)及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(4官能性)より選択される1以上の化合物が好ましい。
【0079】
更に、不飽和基を有する樹脂として、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有する変性化合物(但し、(メタ)アクリル酸、アクリル酸無水物を除く。)で変性されたエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ基を1つ有する樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有さない変性化合物で変性された変性エポキシ樹脂、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物から形成されるウレタン樹脂等が挙げられる。
(C-3)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0080】
(C)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(C)成分は、1種以上の(C-1)成分と、1種以上の(C-2)成分との組み合わせであってもよい。
【0081】
≪(C)成分以外のその他の成分((D)成分)≫
(D)成分としては、シランカップリング剤、重合禁止剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。
【0082】
≪シランカップリング剤≫
シランカップリング剤としては、エポキシ基、アルケニル基(例えば、ビニル基)、(メタ)アクリロイル基、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の反応性官能基又は前記基で置換されたアルキル基と、1以上のアルコキシ基とを有し、非置換のアルキル基を有していてもよいシラン化合物が挙げられる。なお、前記反応性官能基は、前記反応性官能基で置換されたアルキル基として、シラン化合物のケイ素原子に結合していてもよい。
【0083】
シランカップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のアルケニル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級又は第2級アミノ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の基と、1以上のアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0084】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(沈降性シリカ、フュームドシリカ(煙霧質シリカ)等)、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、水酸化アルミニウム、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、カーボン、マイカ、スメクタイト、カーボンブラック、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。無機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0085】
有機フィラーとしては、アクリル粒子、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン(ポリスチレンビーズ)、これらを構成するモノマー(即ち、メタクリル酸メチル又はスチレン)と他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエチレン粒子、ポリシロキサン樹脂粒子、ポリアミド粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子(アクリルゴム粒子、イソプレンゴム粒子)が挙げられる。有機フィラーは、コアシェル構造を有していてもよい。有機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0086】
無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm~10μmであることが好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0087】
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、パラメトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール等が挙げられる。
上記した成分以外は、硬化性樹脂組成物に用いられる公知の成分から適宜選択できる。
【0088】
(D)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(D)成分は、1種以上のシランカップリング剤と、1種以上の重合禁止剤との組み合わせであってもよい。
【0089】
<硬化性樹脂組成物の調製方法>
硬化性樹脂組成物は、各成分を混合することで製造することができる。
【0090】
<硬化方法>
硬化性樹脂組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。よって、硬化性樹脂組成物は、光(エネルギー線)硬化性、熱硬化性、又は、エネルギー線及び熱硬化性の組成物である。
【0091】
<用途>
硬化性樹脂組成物は、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる。よって、硬化性樹脂組成物は、液晶シール剤(表示素子用の液晶シール剤、及び、調光用の液晶シール剤等)、有機EL等の各種フレキシブルディスプレイ用シール剤として用いることができる。また、硬化性樹脂組成物は、モジュール型ディスプレイ、三次元ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクション型ディスプレイ等を含む液晶ディスプレイ(又は液晶表示素子);調光フィルタ、調光シャッター、防眩ミラー、空間光量変調器等の光量調整液晶素子;液晶レンズ等の焦点可変液晶素子;及び、光偏向器、光分波器、位相制御、偏光制御、ホログラム、回折格子、波長フィルタ、周波数フィルタ等の光変調液晶素子;に用いられる液晶用シール剤であってもよい。
【0092】
硬化性樹脂組成物の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、本発明は、硬化性樹脂組成物でシールされた、液晶表示体も対象とする。液晶表示体を製造する方法としては、ディスペンサーを用いて、二枚の電極付き透明基板の一方に、硬化性樹脂組成物を塗布して、硬化性樹脂組成物のパターンを形成する工程、液晶を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐにもう一方の透明基板を貼り合わせる工程、及び、シールパターン部分に紫外線等の光を照射するか、硬化性樹脂組成物を加熱するか、シールパターン部分に紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【実施例】
【0093】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0094】
1.製造例
(1)部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA-850CRP、DIC株式会社製)340.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)86.1g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)524mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を418.0g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、470g/eqであった。
【0095】
(2)部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)320.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)86.1g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)524mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂を400.1g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、410g/eqであった。
【0096】
(3)部分メタクリレート化レゾルシノール型エポキシ樹脂
レゾルシノール型エポキシ樹脂(EX-201、ナガセクムテックス株式会社製)35.1g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.9g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)81mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化レゾルシノール型エポキシ樹脂を42.5g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、330g/eqであった。
【0097】
(4)変性エポキシ樹脂1
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、ドデカン二酸(東京化成工業株式会社製)4.03g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂1を121.2g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、242g/eqであった。
【0098】
(5)変性エポキシ樹脂2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、ドデカン二酸(東京化成工業株式会社製)24.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂2を141.7g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、425g/eqであった。
【0099】
(6)変性エポキシ樹脂3
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)30.1g、ドデカン二酸(東京化成工業株式会社製)24.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂3を160.3g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、1284g/eqであった。
【0100】
(7)変性エポキシ樹脂4
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)3.54g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂4を120.8g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、242g/eqであった。
【0101】
(8)変性エポキシ樹脂5
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂5を139.9g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、418g/eqであった。
【0102】
(9)変性エポキシ樹脂6
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)30.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂6を158.4g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、1314g/eqであった。
【0103】
(10)変性エポキシ樹脂7
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、アジピン酸(東京化成工業株式会社製)2.56g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂7を118.0g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、239g/eqであった。
【0104】
(11)変性エポキシ樹脂8
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、アジピン酸(東京化成工業株式会社製)15.3g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂8を130.7g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、407g/eqであった。
【0105】
(12)変性エポキシ樹脂9
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA-850CRP、DIC株式会社製)119.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂9を143.2g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、451g/eqであった。
【0106】
(13)変性エポキシ樹脂10
レゾルシノール型エポキシ樹脂(EX-201、ナガセクムテックス株式会社製)81.9g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂10を109.7g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、341g/eqであった。
【0107】
(14)変性エポキシ樹脂11
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、クロトン酸(東京化成工業株式会社製)3.01g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂5を140.7g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、474g/eqであった。
【0108】
(15)変性エポキシ樹脂12
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、クロトン酸(東京化成工業株式会社製)9.04g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂5を147.6g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、639g/eqであった。
【0109】
(16)変性エポキシ樹脂13
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、アクリル酸(東京化成工業株式会社製)10.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)3.54g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、アクリル酸残存量を計算し、始めに加えたアクリル酸量とアクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂13を120.2g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、237g/eqであった。
【0110】
(17)変性エポキシ樹脂14
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、アクリル酸(東京化成工業株式会社製)10.1g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、アクリル酸残存量を計算し、始めに加えたアクリル酸量とアクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂14を139.2g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、416g/eqであった。
【0111】
(18)変性エポキシ樹脂15
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)112.0g、アクリル酸(東京化成工業株式会社製)25.2g、セバシン酸(東京化成工業株式会社製)21.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)275mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、アクリル酸残存量を計算し、始めに加えたアクリル酸量とアクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の変性エポキシ樹脂15を153.8g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、1249g/eqであった。
【0112】
(19)光重合開始剤1
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX-830、ナガセケムテックス社製)26.8g(0.1エポキシ当量)、4-ジメチルアミノ安息香酸16.5g(0.1当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.02当量)、MIBK(メチルイソブチルケトン)25gをフラスコに入れ、オイルバスを用いて110℃で24時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤1を35.3g得た。
【0113】
(20)光重合開始剤2
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX-830、ナガセケムテックス社製)26.8g(0.1エポキシ当量)、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン22.83g(0.1当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.02当量)、MIBK40gをフラスコに入れ、オイルバスを用いて110℃で72時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤2を36.2g得た。
【0114】
2.硬化性樹脂組成物の作製
表に示す各成分を、以下の表に示す配合量(質量部)にて混合後、3本ロールミル(C-4 3/4×10、株式会社井上製作所製)により充分に混練して、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を作製した。なお、熱硬化剤として、EH-5030S(ポリアミン系化合物、株式会社ADEKA製、活性水素当量105g/eq)を用いた。
【0115】
3.試験方法
(1)接着強度測定
硬化性樹脂組成物を、6μmスペーサーを散布したITO基板(30mm×30mm×0.5mmt)上の15mm×3mm、15mm×21mmの位置に、貼り合わせ後の硬化性樹脂組成物の直径が1.5~2.5mmφの範囲となるように点塗布した。その後、同種の基板(23mm×23mm×0.5mmt)を貼り合わせ、紫外線を積算光量3000mJ/cm2で照射(照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機株式会社製)して硬化させ、120℃オーブンで1時間熱硬化を行い、硬化物試験片を作成した。オートグラフ(TG-2kN、ミネベア株式会社製)を用い、試験片を固定して基板の15mm×25mmの位置を5mm/分の速度で押し抜き、ITO基板同士(ITO/ITO)の接着強度を測定した。
【0116】
(2)NI点変化
実施例及び比較例の各シール剤について、直径5mm、厚さ0.5mmtの型に注型し、紫外線を積算光量3,000mJ/cm2で照射して硬化させ、各シール剤の光硬化物を得た。得られた光硬化物をアンプル瓶に約0.1g入れ、さらに、液晶(MLC-6609、メルク社製)を光硬化物の10倍量加えた。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し、0.2μmフィルターによりろ過して評価用液晶サンプルとした。
【0117】
NI点の測定は、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、PYRIS6)を使用し、評価用液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で行った。なお、上記液晶10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った結果をブランクとした。実施例1~8及び比較例1~3の測定時のブランクの値は93.70℃、実施例9~12の測定時のブランクの値は93.61℃、実施例13~15の測定時のブランクの値は93.62℃であった。
【0118】
ブランクの吸熱ピークトップ(相転移温度)TBと、評価用液晶の吸熱ピークトップ(相転移温度)TEの差;TE-TBをNI点変化とした。
液晶の相転移温度であるNI点(Nematic-Isotropic point)は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は変化することが知られている。シール剤の含有成分の液晶への溶出を抑制し、液晶の配向を安定に確保して、表示特性を向上する観点から、NI点変化の絶対値は小さいほど好ましい。
【0119】
【0120】