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特許7680066コイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】コイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/12 20060101AFI20250513BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
F16F1/12 K
F16F1/06 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023146900
(22)【出願日】2023-09-11
(65)【公開番号】P2025040160
(43)【公開日】2025-03-24
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】澤井 智哉
(72)【発明者】
【氏名】高巣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌文
(72)【発明者】
【氏名】牧野 継聖
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-177839(JP,U)
【文献】特開2009-185893(JP,A)
【文献】特開2018-096437(JP,A)
【文献】実開昭62-185808(JP,U)
【文献】国際公開第2016/157881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/04- 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルばねを保持部材により保持する保持構造であって、
前記コイルばねは、軸線方向の端部を構成する変径部と、同変径部以外の部分を構成するベース部とからなり、
前記変径部は、弾性変形していない自由状態において、前記コイルばねの延設端に向かうに連れてコイル径が一方向に徐々に変化する形状であって、且つ、前記ベース部の周面から前記コイルばねの径方向に突出する形状をなし、
前記保持部材は、前記コイルばねを保持する側の面に複数の凸部が設けられてなり、
前記コイルばね及び前記保持部材の相対位置は、第1位置と、同第1位置から前記コイルばねを軸線周りに回転させた位置である第2位置と、を含み、
前記第1位置では、前記コイルばねを前記複数の凸部を避けながら前記保持部材の側に押し込むことで、前記コイルばねが前記自由状態のままで前記複数の凸部に組み合わされた状態になり、
前記第2位置では、前記複数の凸部の各々の周面が前記コイルばねの周面に押し付けられた状態になるとともに、前記複数の凸部のうちの少なくとも一つによって押し退けられる態様で前記変径部が前記径方向に弾性変形した状態になる、
コイルばねの保持構造。
【請求項2】
前記複数の凸部は、同一円上において180度未満の間隔で並ぶように設けられた3つの凸部により構成される、
請求項1に記載のコイルばねの保持構造。
【請求項3】
前記凸部は、前記軸線方向において延びる円柱状をなす
請求項1または2に記載のコイルばねの保持構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載のコイルばねの保持構造に適用され、前記コイルばねを前記保持部材により保持するコイルばねの保持方法であって、
前記コイルばねを前記複数の凸部を避けながら前記保持部材の側に押し込んで、前記コイルばねを前記自由状態のままで前記複数の凸部に組み合わせる組み合わせ工程と、
前記組み合わせ工程の後に、前記複数の凸部のうちの少なくとも一つによって前記変径部が押し退けられるようになる回転方向で、前記コイルばねと前記保持部材とを当該コイルばねの軸線周りにおいて相対回転させる回転工程と、を備える、
コイルばねの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、付勢するための付勢部材として、コイルばねが多用されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のコイルばねは、2つの部材間に、挟み込まれた状態で配置されている。これにより、コイルばねは、2つの部材間に圧縮状態で保持されている。
【0003】
コイルばねを、これを挟持する挟持部材に対して固定すること等も提案されている。この場合、コイルばねは、挟持部材に対して接着や溶接により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-174438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルばねの保持を2つの部材間に挟み込むようにして行う場合には、コイルばね及び2つの部材の各々を位置決めしつつ配置する作業や、コイルばねが圧縮されるように2つの部材に圧力を加える作業などが必要になる。そのため、この場合には、コイルばねの保持にかかる作業が繁雑なものになってしまう。
【0006】
また、コイルばねの保持を2つの部材への接着や溶接を通じて行う場合においても、接着や溶接にかかる作業が必要になる分だけ、コイルばねの保持にかかる作業が煩雑なものになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための装置の各態様を記載する。
[態様1]コイルばねを保持部材により保持する保持構造であって、前記コイルばねは、軸線方向の端部を構成する変径部と、同変径部以外の部分を構成するベース部とからなり、前記変径部は、弾性変形していない自由状態において、前記コイルばねの延設端に向かうに連れてコイル径が一方向に徐々に変化する形状であって、且つ、前記ベース部の周面から前記コイルばねの径方向に突出する形状をなし、前記保持部材は、前記コイルばねを保持する側の面に複数の凸部が設けられてなり、前記コイルばねが前記保持部材によって保持される保持状態では、前記複数の凸部の各々の周面が前記コイルばねの周面に押し付けられるとともに、前記複数の凸部のうちの少なくとも一つによって前記変径部が押し退けられる態様で、前記変径部が前記コイルばねの径方向に弾性変形している、コイルばねの保持構造。
【0008】
上記構成によれば、保持状態においては、弾性変形している変径部の復元力により、コイルばねの周面が複数の凸部の周面に押し付けられた状態にすることができる。そして、この押し付け力により、コイルばねを複数の凸部、すなわち保持部材に保持させることができる。したがって、コイルばねを接着や溶接によって保持部材に接合したりすることなく、複数の凸部を利用して、それら凸部により定められる位置にコイルばねを容易に固定および保持することができる。
【0009】
[態様2]前記保持部材における前記複数の凸部の配置、および、前記コイルばねにおける前記保持部材の側の部分である被保持部分の形状は、前記変径部が前記自由状態のままで前記複数の凸部の周面と前記被保持部分の周面とが対向する位置関係になるように、前記複数の凸部と前記コイルばねとを組み合わせることが可能になる態様で定められている、[態様1]に記載のコイルばねの保持構造。
【0010】
上記構成によれば、コイルばねを保持部材に保持する際には、先ず、コイルばねの変径部を自由状態に保ったままで、保持部材の複数の凸部を避けながら、コイルばねを保持部材に組み合わせることができる。このようにして、コイルばねを保持部材に組み合わせる作業を簡単に、且つスムーズに行うことができる。その後、コイルばねを軸線周りに回転させることで、複数の凸部のうちの少なくとも一つによって変径部を押し退けるようにして、変径部を弾性変形させることができる。したがって上記構成によれば、コイルばねを自由状態のままで保持部材に組み合わせた後に回転させるといった簡単な作業で、コイルばねを保持部材に固定および保持することができる。
【0011】
[態様3]前記複数の凸部は、同一円上において180度未満の間隔で並ぶように設けられた3つの凸部により構成される、[態様1]または[態様2]に記載のコイルばねの保持構造。
【0012】
上記構成によれば、保持部材に設けられた3つの凸部による3点支持によって、コイルばねを安定保持することができる。
[態様4]前記凸部は、前記軸線方向において延びる円柱状をなす、[態様1]~[態様3]のいずれか一つに記載のコイルばねの保持構造。
【0013】
上記構成によれば、凸部の周面とコイルばねの周面とを共に円弧状にすることができるため、凸部の周面およびコイルばねの周面との接触部分に局所的に大きな力が作用し難い構造にすることができる。
【0014】
[態様5][態様1]~[態様4]のいずれか一つに記載のコイルばねの保持構造に適用され、前記コイルばねを前記保持部材により保持するコイルばねの保持方法であって、前記複数の凸部の周面と、前記コイルばねにおける前記保持部材の側の部分である被保持部分の周面と、が対向する位置関係になるように前記コイルばねを前記保持部材に組み合わせる組み合わせ工程と、前記組み合わせ工程の後に、前記複数の凸部のうちの少なくとも一つによって前記変径部が押し退けられるようになる回転方向で、前記コイルばねと前記保持部材とを当該コイルばねの軸線周りにおいて相対回転させる回転工程と、を備えるコイルばねの保持方法。
【0015】
上記保持方法によれば、コイルばねを保持部材に組み合わせた後に回転させることで、複数の凸部のうちの少なくとも一つによって変径部を押し退けるようにして、同変径部を弾性変形させることができる。こうして弾性変形させた変径部の復元力により、コイルばねの周面が複数の凸部の周面に押し付けられた状態になる。この押し付け力により、コイルばねを複数の凸部、すなわち保持部材に保持させることができる。上記保持方法によれば、コイルばねを保持部材に組み合わせた後に回転させるといった簡単な作業で、コイルばねを保持部材に固定および保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保持部材における予め定められた位置にコイルばねを容易に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態のコイルばねの保持構造を示す斜視図である。
図2】同実施形態の保持部材の平面図である。
図3】同保持部材の図2における3-3線に沿った断面図である。
図4】同実施形態のコイルばねの平面図である。
図5】同コイルばねの側面図である。
図6】コイルばねと保持部材とを組み合わせた状態を示す平面図である。
図7】回転途中のコイルばねおよび保持部材を示す平面図である。
図8】コイルばねが保持部材によって保持される保持状態を示す平面図である。
図9】変更例のコイルばねの保持構造を示す平面図である。
図10】同変更例のコイルばねと保持部材とを組み合わせた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、コイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる保持構造では、コイルばね10が保持部材20により保持される。
【0019】
<保持部材>
図1図3に示すように、保持部材20は、平板状をなす基部21と、3つの凸部22とを有する。
【0020】
3つの凸部22は、基部21におけるコイルばね10(図1)を保持する側の面211に突設される。3つの凸部22は、中心を点C1(図2)とする同一円上において120度間隔で並ぶように設けられる。各凸部22は、コイルばね10の軸線L1の延びる方向(以下、軸線L1方向という。)において延びる円柱状をなす。
【0021】
<コイルばね>
図1に示すように、コイルばね10は、延伸方向において波打つ波板状のばね線材(本実施形態では、鋼材)が右巻きで螺旋状に巻かれた形状をなす、いわゆるコイルドウェーブスプリングである。このコイルばね10は、ばねとして作用する部分である有効巻部101と、軸線L1方向における一方の端部に設けられた座巻部102とにより構成される。
【0022】
コイルばね10は、ベース部13と変径部14とからなる。
<ベース部>
図4および図5に示すように、ベース部13は、軸線L1方向において、同一のコイル径で延びる。ベース部13は、コイルばね10における上記変径部14以外の部分を構成する。詳しくは、ベース部13は、有効巻部101(図1参照)の全体と座巻部102の一部(具体的には、有効巻部101側の部分)とにより構成される。
【0023】
<変径部>
変径部14は、上記座巻部102(図1参照)における延設端15側の部分を構成する。変径部14は、弾性変形していない自由状態において、延設端15に向かうに連れてコイル径が一方向(本実施形態では、コイル径が小さくなる方向)に徐々に変化する形状をなす。この変径部14は、ベース部13の内周面からコイルばね10の径方向内側に突出する形状をなす。
【0024】
ここで以下では、図4に示すように、ベース部13の内周面に接する円の直径を「コイル内径R1」とする。また、軸線L1を中心とする円であって、且つ変径部14の基端部分16の内周面に接する円を描いた場合における同円の直径を「基端径R2」とする。さらに、軸線L1を中心とする円であって、且つ変径部14の延設端15の内周面に接する円を描いた場合における同円の直径を「先端径R3」とする。また、図2に示すように、3つの凸部22を囲むように延びる円であって、且つ3つの凸部22の外周面に接する円を描いた場合における同円の直径を「凸部径R4」とする。
【0025】
本実施形態では、図2または図4に示すように、保持部材20における3つの凸部22の配置、および、コイルばね10の各部の形状が、以下の[構成A]~[構成C]を満たすように定められている。
【0026】
[構成A]コイル内径R1と基端径R2とが略等しい(R1=R2)。
[構成B]先端径R3は基端径R2よりも小さい(R3<R2)。
[構成C]凸部径R4は、先端径R3よりも大きく、且つ、コイル内径R1よりも小さい(R3<R4<R1)。
【0027】
図6は、各部が弾性変形していない自由状態のコイルばね10を保持部材20に組み合わせた状態の一例を示している。図6に示すように、変径部14が弾性変形していない自由状態のままで、3つの凸部22の外周面とコイルばね10の被保持部分103(図5参照)の内周面とが対向する位置関係になるように、3つの凸部22とコイルばね10とを組み合わせ可能になっている。本実施形態では、こうした構成が実現されるように、保持部材20における3つの凸部22の配置、および、コイルばね10における保持部材20の側の部分である被保持部分103の形状が定められている。なお、図5に示すように、上記被保持部分103は、変径部14とベース部13における変径部14側の部分とを含む。
【0028】
以下、本実施形態のコイルばね10を保持部材20に保持させる手順について説明する。
<組み合わせ工程>
コイルばね10を保持部材20に保持させる際には、先ず、組み合わせ工程が実行される。
【0029】
組み合わせ工程では、3つの凸部22の外周面とコイルばね10の被保持部分103の内周面とが対向する位置関係になるように、コイルばね10が保持部材20に組み合わせられる。具体的には、先ず、コイルばね10と保持部材20の3つの凸部22との位置関係が図6に示す位置関係になるように、コイルばね10と保持部材20との位置合わせが行われる。その後、コイルばね10を保持部材20の側に押し込むことで、同コイルばね10が保持部材20に組み合わされる。
【0030】
本実施形態によれば、こうした作業を通じて、コイルばね10の変径部14を自由状態に保ったままで、保持部材20の3つの凸部22を避けながら、コイルばね10を保持部材20に組み合わせることができる。これにより、コイルばね10を保持部材20に組み合わせる作業を簡単に、且つスムーズに行うことができる。
【0031】
<回転工程>
組み合わせ工程の後には、回転工程が実行される。
回転工程では、3つの凸部22のうちの少なくとも一つによって変径部14が押し退けられるようになる回転方向(図6中に矢印Aで示す方向)で、コイルばね10と保持部材20とが軸線L1周りにおいて相対回転される。
【0032】
具体的には、図6図8に示すように、右巻きのコイルばね10が保持部材20に対して反時計回りに回転される。そして、変径部14の延設端15に凸部22が到達する前の位置(図8に示す位置)で、コイルばね10の回転が停止される。
【0033】
この回転工程では、コイルばね10の回転に伴い、図7中および図8中に矢印Bで示すように、変径部14の内周面の形状にならって同変径部14が凸部22に押し退けられることで、変径部14が徐々に径方向外側に弾性変形するようになる。このとき、弾性変形している変径部14の復元力により、コイルばね10の内周面を3つの凸部22の外周面に押し付ける力を発生させるとともに、この押し付け力を徐々に大きくすることができる。そして、変径部14の延設端15に凸部22が到達する前の位置でコイルばね10の回転を停止させることにより、上記押し付け力が適度に大きい状態のままになる。本実施形態では、この押し付け力により、コイルばね10が3つの凸部22、すなわち保持部材20に保持されるようになる。
【0034】
本実施形態によれば、コイルばね10を接着や溶接によって保持部材20に接合したりすることなく、3つの凸部22を利用して、それら凸部22により定められる位置にコイルばね10を容易に固定および保持することができる。しかも、コイルばね10を保持部材20に保持させる保持構造を、コイルばね10を自由状態のままで保持部材20に組み合わせた後に回転させるといった簡単な作業を通じて実現することができる。
【0035】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1)コイルばね10は、変径部14とベース部13とからなる。変径部14は、弾性変形していない自由状態において、コイルばね10の延設端15に向かうに連れてコイル径が一方向に徐々に変化する形状であって、且つ、ベース部13の内周面からコイルばね10の径方向内側に突出する形状をなす。保持部材20における上記コイルばね10を保持する側の面211には3つの凸部22が設けられる。保持状態(図8に示す状態)では、3つの凸部22の各々の外周面がコイルばね10の内周面に押し付けられるとともに、凸部22によって変径部14が押し退けられる態様で、同変径部14がコイルばね10の径方向外側に弾性変形している。本実施形態によれば、コイルばね10を接着や溶接によって保持部材20に接合したりすることなく、3つの凸部22を利用して、それら凸部22により定められる位置にコイルばね10を容易に固定および保持することができる。
【0036】
(2)本実施形態では、変径部14が自由状態のままで、3つの凸部22の外周面と被保持部分103の内周面とが対向する位置関係になるように3つの凸部22とコイルばね10とを組み合わせることが可能になっている。これにより、コイルばね10を保持部材20に組み合わせる作業を簡単に、且つスムーズに行うことができる。
【0037】
(3)3つの凸部22は、同一円上において120度間隔で並ぶように設けられる。したがって、保持部材20に設けられた3つの凸部22による3点支持によって、コイルばね10を安定保持することができる。
【0038】
(4)凸部22は、軸線L1方向において延びる円柱状をなす。これにより、凸部22の外周面とコイルばね10の内周面とを共に円弧状にすることができるため、凸部22の外周面およびコイルばね10の内周面との接触部分に局所的に大きな力が作用し難い構造にすることができる。
【0039】
(5)組み合わせ工程および回転工程を通じて、コイルばね10が保持部材20に保持される。そのため、コイルばね10を保持部材20に組み合わせた後に回転させるといった簡単な作業で、コイルばね10を保持部材20に固定および保持することができる。
【0040】
<変形例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・組み合わせ工程において、変径部14を弾性変形させた状態で、3つの凸部22の外周面と被保持部分103の内周面とが対向する位置関係になるように、3つの凸部22とコイルばね10とを組み合わせるようにしてもよい。こうした作業が可能になる範囲で、保持部材20における3つの凸部22の配置、および、コイルばね10の被保持部分103の形状は、任意に変更することができる。
【0042】
この場合、組み合わせ工程においては、変径部14を弾性変形させる必要があるものの、同変径部14を小さい力で弾性変形させることでコイルばね10を保持部材20に組み合わせることができる。しかも、その後の回転工程において、コイルばね10を保持部材20に対して回転させることで、変径部14の弾性変形量を大きくして、コイルばね10の内周面を3つの凸部22の外周面に押し付ける押し付け力を適度に大きくすることができる。
【0043】
・3つの凸部22の間隔は、120度間隔にすることに限らず、任意に変更することができる。3つの凸部22を、同一円上において180度未満の間隔で並ぶように設けるようにすればよい。
【0044】
・凸部22の形状としては、楕円柱状や、半円柱状、角柱状を採用するなど、任意の形状を採用することができる。
・保持部材20に、3つの凸部22を設けることに限らず、2つの凸部22を設けたり、4つ以上の凸部22を設けたりしてもよい。
【0045】
・基部21におけるコイルばね10を保持する側の面211の形状は、平面状にすることに限らず、湾曲面状にする等、任意に変更することができる。
図9および図10に一例を示すように、コイルばね30の外周面を複数の凸部42の外周面に押し付けることによって、コイルばね30を保持部材20により保持する保持構造を採用することができる。
【0046】
この場合には、変径部34は、弾性変形していない自由状態において、コイルばね30の延設端35に向かうに連れてコイル径が徐々に大きくなる形状をなす。変径部34は、ベース部33の外周面からコイルばね30の径方向外方に突出する形状をなす。3つの凸部42は、コイルばね30の周囲を囲むように配置される。
【0047】
上記構成によれば、保持状態においては、弾性変形している変径部34の復元力により、コイルばね30の外周面が複数の凸部42の外周面に押し付けられた状態にすることができる。そして、この押し付け力により、コイルばね30を複数の凸部42、すなわち保持部材40に保持させることができる。したがって、コイルばね30を接着や溶接によって保持部材40に接合したりすることなく、複数の凸部42を利用して、それら凸部42により定められる位置にコイルばね30を容易に固定および保持することができる。
【0048】
上記構成において、コイルばね30を保持部材40に保持させる際には、図10に示すようにコイルばね30を保持部材40に組み合わせた後に、図9に示すようにコイルばね30を保持部材40に対して軸線L2周りに回転させるようにすればよい。これにより、凸部42によって押し退けるようにして変径部34を弾性変形させることができるため、同変径部34の復元力により、コイルばね30の外周面が複数の凸部42の外周面に押し付けられた状態になる。そして、この押し付け力により、コイルばね30を複数の凸部42、すなわち保持部材40に保持させることができる。
【0049】
この場合には、図9に示すように、変径部34が弾性変形していない自由状態のままで、複数の凸部42の外周面とコイルばね30の外周面とが対向する位置関係になるように複数の凸部42とコイルばね30とを組み合わせ可能になっていることが好ましい。
【0050】
こうした構成によれば、コイルばね30を自由状態のままで保持部材40に組み合わせた後に回転させるといった簡単な作業で、コイルばね30を保持部材40に固定および保持することができる。
【0051】
・上記実施形態にかかるコイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法は、右巻きのコイルばねに適用することに限らず、左巻きのコイルばねにも適用することができる。この場合、回転工程においては、左巻きのコイルばねを保持部材に対して時計回りに回転させるようにすればよい。
【0052】
・上記実施形態にかかるコイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法は、コイルドウェーブスプリングからなるコイルばねに適用することに限らず、ばね線材が単純な螺旋状に巻かれた形状をなすコイルばねにも適用することができる。
【0053】
・上記実施形態にかかるコイルばねの保持構造およびコイルばねの保持方法は、硬鋼線や、ピアノ線、ステンレス鋼線などの金属材料からなるコイルばねに適用することの他、樹脂材料からなるコイルばねにも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…コイルばね
101…有効巻部
102…座巻部
103…被保持部分
13…ベース部
14…変径部
15…延設端
16…基端部分
20…保持部材
21…基部
211…面
22…凸部
30…コイルばね
33…ベース部
34…変径部
35…延設端
40…保持部材
42…凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10