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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】充電インレット
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20250513BHJP
【FI】
H01R13/533 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022205097
(22)【出願日】2022-12-22
(65)【公開番号】P2024089729
(43)【公開日】2024-07-04
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 暁洋
(72)【発明者】
【氏名】青島 信輔
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156843(JP,A)
【文献】特開2020-113449(JP,A)
【文献】特開2019-087492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0228948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電用の相手方コネクタ端子と接続されるコネクタ端子と、
前記コネクタ端子が、所定の挿入方向に挿入されて前記相手方コネクタ端子と接続可能な状態で収容されるハウジングと、
前記コネクタ端子において前記相手方コネクタ端子と接続する端子部分から前記挿入方向とは反対側に離れた被吸熱部分、又は当該被吸熱部分に接する間接部材に、前記挿入方向と交差する接触方向に接触した状態となるように、前記ハウジングに着脱可能に収容され、当該ハウジングへの収容時には前記被吸熱部分の熱を吸熱する熱引き部品と、
を備え
前記熱引き部品が、前記ハウジングへの収容時には所定の隣接部にも接触した状態となり、前記被吸熱部分から吸熱した熱を前記隣接部へと放熱するものであり、
前記ハウジングには、当該ハウジングの外壁と一体形成され、一端側が外部に向かって開口するとともに他端側が前記コネクタ端子における前記被吸熱部分に向かって開口するように前記接触方向に延在した筒状で、前記一端側からの前記熱引き部品の抜き差しが可能な熱引き部品収容室が設けられており、
前記熱引き部品は、前記一端側の開口から前記接触方向へと前記熱引き部品収容室に挿入され、取り外し可能な所定部材によって前記熱引き部品収容室の内部に保持されることで前記ハウジングに着脱可能に収容され、前記他端側の開口から突出して前記被吸熱部分から吸熱するとともに、前記熱引き部品収容室の内周面を前記隣接部として接触して放熱することを特徴とする充電インレット。
【請求項2】
前記熱引き部品収容室が、円筒形状に形成されており、
前記熱引き部品が、前記熱引き部品収容室における前記円筒形状の前記内周面に、外周面が全周に亘って接触した状態で当該熱引き部品収容室に収容される円柱形状の部材であることを特徴とする請求項に記載の充電インレット。
【請求項3】
前記コネクタ端子が、前記ハウジングの内部において、前記挿入方向に延在する電線の端部に設けられた電線端子にボルトによって締結される電線接続部分を有するものであり、
前記熱引き部品が、前記間接部材としての前記電線端子に接触した状態で、前記ボルトによって、前記電線端子と一緒に前記電線接続部分に対して共締め固定されることで、前記ボルトを前記所定部材の少なくとも一つとして前記熱引き部品収容室の内部に保持されており、当該電線接続部分を前記被吸熱部分として前記電線端子を介して間接的に吸熱することを特徴とする請求項1に記載の充電インレット。
【請求項4】
前記熱引き部品として、電導物質で形成された電導熱引き部品と、非電導物質で形成された非電導熱引き部品と、が用意されており、
前記ハウジングには、前記コネクタ端子が、前記電導熱引き部品が設置される第1状態、前記非電導熱引き部品が設置される第2状態、及び前記熱引き部品が設置されない第3状態、のうちの何れかの状態で、状態切替可能に収容されることを特徴とする請求項1に記載の充電インレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子がハウジングに収容された充電インレットに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等に搭載されるバッテリを外部電源から充電するための車両側コネクタとして、充電インレットが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。充電インレットは、コネクタ端子がハウジングに収容され、充電用の相手方コネクタと接続するための充電規格に対応した機構を有している。特許文献1の充電インレットでは、コネクタ端子が、充電対象のバッテリへと延びる電線にハウジング内部で接続されている。
【0003】
ここで、近年では、充電インレットを介して充電されるバッテリの大容量化や充電時間の短縮等のニーズに対応するために、充電電流の大電流化が進む傾向にある。充電インレットにおいて大電流化が進むときに問題となるのが、主としてコネクタ端子周辺の発熱である。このような発熱に対する対処法の一例として、コネクタ端子に接続された電線を大径化し、コネクタ端子との接続抵抗の低抵抗化や、電線による熱引き能力の向上を図ることが挙げられる。コネクタ端子周辺では、相手方コネクタ端子との接点部分等において抵抗が大きく、その結果として発熱が大きくなりがちである。このような部位で発生した熱が大径の電線によって熱引きされることで、充電時の温度上昇が抑制されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような対処法により充電インレットから延出する電線の大径化が進むと、インレット周りの重量及びコストを増大させるだけでなく、大径化した電線を内部に通すためにインレットサイズの大型化を招く可能性がある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、インレット周りの重量及びコストの増大やインレットサイズの大型化を抑えつつ充電時の温度上昇を抑えることができる充電インレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、充電インレットは、充電用の相手方コネクタ端子と接続されるコネクタ端子と、前記コネクタ端子が、所定の挿入方向に挿入されて前記相手方コネクタ端子と接続可能な状態で収容されるハウジングと、前記コネクタ端子において前記相手方コネクタ端子と接続する端子部分から前記挿入方向とは反対側に離れた被吸熱部分、又は当該被吸熱部分に接する間接部材に、前記挿入方向と交差する接触方向に接触した状態となるように、前記ハウジングに着脱可能に収容され、当該ハウジングへの収容時には前記被吸熱部分の熱を吸熱する熱引き部品と、を備え、前記熱引き部品が、前記ハウジングへの収容時には所定の隣接部にも接触した状態となり、前記被吸熱部分から吸熱した熱を前記隣接部へと放熱するものであり、前記ハウジングには、当該ハウジングの外壁と一体形成され、一端側が外部に向かって開口するとともに他端側が前記コネクタ端子における前記被吸熱部分に向かって開口するように前記接触方向に延在した筒状で、前記一端側からの前記熱引き部品の抜き差しが可能な熱引き部品収容室が設けられており、前記熱引き部品は、前記一端側の開口から前記接触方向へと前記熱引き部品収容室に挿入され、取り外し可能な所定部材によって前記熱引き部品収容室の内部に保持されることで前記ハウジングに着脱可能に収容され、前記他端側の開口から突出して前記被吸熱部分から吸熱するとともに、前記熱引き部品収容室の内周面を前記隣接部として接触して放熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述の充電インレットによれば、インレット周りの重量及びコストの増大やインレットサイズの大型化を抑えつつ充電時の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る充電インレットを電線の延出側から見た平面図である。
図2図1に示されている充電インレットの、図1中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。
図3図1及び図2に示されている充電インレットにおいて熱引き部材が取り付けられる様子を、充電インレットにおける相手方コネクタとの接続側から見た斜視図である。
図4図3に示されている熱引き部材の取付けの様子を図2と同様の断面で示す図である。
図5図2図4に示されている熱引き部品によって充電時の熱による温度上昇が抑制される様子を示す模式図である。
図6図1図5に示されている充電インレットと比較するための比較例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、充電インレットの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る充電インレットを電線の延出側から見た平面図であり、図2は、図1に示されている充電インレットの、図1中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。また、図3は、図1及び図2に示されている充電インレットにおいて熱引き部材が取り付けられる様子を、充電インレットにおける相手方コネクタとの接続側から見た斜視図である。そして、図4は、図3に示されている熱引き部材の取付けの様子を図2と同様の断面で示す図である。
【0012】
充電インレット100は、車体に搭載されるバッテリを外部電源から充電等するために電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等で用いられる部品である。この充電インレット100における相手方コネクタとの接続側には、バッテリに対する直流の充電電流が流れるDCソケット101と、充電に関する交流電流が流れるACソケット102と、が設けられている。そして、充電インレット100における上記の接続側に対する反対側からは、DCソケット101を介して流れる直流の充電電流を通す充電用のDC電線W11と、ACソケット102を介して流れる交流電流を通すAC電線W12とが延出している。DC電線W11はバッテリまで延び、AC電線W12は交流機器まで延びている。
【0013】
ここで、本実施形態における充電インレット100の特徴はDCに関する部分にあり、図2及び図4の断面図はDCソケット101を通る断面を示し、図3の斜視図はDCソケット101側から見た外観を示している。以下では、充電インレット100について、DCに関する部分に注目して説明を行う。この充電インレット100は、2本のコネクタ端子110、ハウジング120、及び熱引き部品130を備えている。
【0014】
コネクタ端子110は、充電インレット100のDCソケット101における金属端子である。コネクタ端子110は、充電インレット100の内部でDC電線W11に接続されている。このコネクタ端子110は、相手方コネクタ端子に接続される丸ピン状の端子部分111と、当該端子部分111から挿入方向D11とは反対側に離れてDC電線W11に接続されるブロック状の電線接続部分112と、を備えたオス端子となっている。本実施形態では、コネクタ端子110における電線接続部分112は、DC電線W11の端部に設けられた電線端子W111と、ボルト140によって締結される部分となっている。電線接続部分112には、この締結用のボルト140が捩じ込まれる雌ねじ孔112aが形成されている。
【0015】
ハウジング120は、コネクタ端子110が2本、所定の挿入方向D11に挿入されてDCソケット101において相手方コネクタ端子と接続可能な状態で収容される樹脂部材である。尚、説明については割愛するが、このハウジング120は、ACソケット102においてAC用の相手方コネクタ端子と接続可能な状態でAC用のコネクタ端子を収容するものともなっている。このハウジング120は、相手方コネクタとの嵌合側を構成する本体ハウジング121と、DC用のコネクタ端子110における電線接続部分112が収容されるターミナルホルダ122と、を備えている。コネクタ端子110は、端子部分111が本体ハウジング121の内部に位置し、電線接続部分112がターミナルホルダ122の内部に位置する。また、電線接続部分112は、このターミナルホルダ122の内部においてDC電線W11の端部における電線端子W111とボルト締結される。
【0016】
熱引き部品130は、ハウジング120に着脱可能に収容され、当該ハウジング120への収容時にはコネクタ端子110で充電時に発生した熱を吸熱してハウジング120へと放熱する部材である。この熱引き部品130は、コネクタ端子110における電線接続部分112を被吸熱部分とし、電線接続部分112に接する間接部材としての電線端子W111に、挿入方向D11と交差する接触方向D12に接触した状態となるように収容される。そして、熱引き部品130は、ハウジング120への収容時には電線接続部分112の熱を吸熱する。
【0017】
ここで、本実施形態では、ハウジング120のターミナルホルダ122には、次のような熱引き部品収容室122aが、各コネクタ端子110について1つずつ設けられている。各熱引き部品収容室122aは、ターミナルホルダ122の外壁と一体形成されている。そして、熱引き部品収容室122aは、一端側が外部に向かって開口するとともに他端側がコネクタ端子110における電線接続部分112に向かって開口するように上記の接触方向D12に延在した筒状、具体的には円筒状に設けられている。
【0018】
熱引き部品130は、熱引き部品収容室122aにおいてターミナルホルダ122の外部へと開口した一端側の開口122a-1から接触方向D12へと熱引き部品収容室122aに収容される。そして、熱引き部品130は、熱引き部品収容室122aの他端側の開口122a-2から突出して電線端子W111に接触するとともに、熱引き部品収容室122aの内周面122a-3を放熱対象の隣接部とし、当該内周面122a-3に接触する。また、この熱引き部品130は、熱引き部品収容室122aにおける円筒形状に応じた円柱形状の部材となっている。そして、熱引き部品130は、熱引き部品収容室122aに、その円筒形状の内周面122a-3に、外周面131が全周に亘って接触した状態で収容される。
【0019】
また、本実施形態では、熱引き部品130は、ボルト140によって、コネクタ端子110の電線接続部分112及び電線端子W111と共締め固定される。この共締め固定において、熱引き部品130は、コネクタ端子110における電線接続部分112との間に電線端子W111を挟むように取り付けられる。この熱引き部品130は、ボルト140の貫通孔132が設けられている。
【0020】
組立時には、図4に示されているように、挿入方向D11へのコネクタ端子110の挿入後、この挿入方向D11と同じ電線挿入方向D111に電線端子W111が挿入され、熱引き部品収容室122aへと熱引き部品130が接触方向D12に挿入される。すると、ターミナルホルダ122の内部で、電線接続部分112の雌ねじ孔112a、電線端子W111の端子孔W111a、及び熱引き部品130の貫通孔132が互いに連通する。そして、ボルト140が、熱引き部品130の貫通孔132及び電線端子W111の端子孔W111aを貫通して電線接続部分112の雌ねじ孔112aに捩じ込まれる。このボルト締めにより、熱引き部品130は、コネクタ端子110の電線接続部分112及び電線端子W111と共締め固定される。また、熱引き部品130の取付け後には、2つの熱引き部品収容室122aの外部側の開口122a-1が、図2及び図3に示されているように1つのキャップ部材122bで塞がれる。
【0021】
このように固定された熱引き部品130は、熱引き部品収容室122aのコネクタ端子110側の開口122a-2から突出して電線端子W111に接触し、外周面131で熱引き部品収容室122aの内周面122a-3に接触する。そして、コネクタ端子110において、相手方コネクタ端子との接点部であって充電時に抵抗が大きくなる端子部分111で熱が発生すると、その時の熱による温度上昇が熱引き部品130を介して次のように抑制される。
【0022】
図5は、図2図4に示されている熱引き部品によって充電時の熱による温度上昇が抑制される様子を示す模式図である。この図5には、図2の断面図における熱引き部品130の周辺部が拡大されて示されている。
【0023】
充電インレット100による充電時にコネクタ端子110で発生した熱P11は、電線接続部分112まで伝わると、図5に示されているように、熱引き部品130によって吸熱される。即ち、電線接続部分112まで伝わった熱P11は、この電線接続部分112に接する電線端子W111を介し、この電線端子W11に対する熱引き部品130の接触方向D12に沿った熱引き方向D13へと熱引き部品130によって間接的に吸熱される。そして、熱引き部品130は、その吸熱した熱P11を外周面131から、隣接部たる熱引き部品収容室122aの内周面122a-3へと放熱方向D14に放熱する。放熱された熱P11は、ターミナルホルダ122を介しハウジング120の各所へと拡散して行く。以上のような吸熱、放熱、及び拡散により、充電インレット100における充電時の温度上昇が抑制されることとなる。
【0024】
ここで、本実施形態では、熱引き部品130として、電導物質で形成された電導熱引き部品と、非電導物質で形成された非電導熱引き部品と、が用意されている。電導物質としては、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等といった導電性金属が挙げられる。非電導物質としては各種プラスチック等といった樹脂が挙げられる。そして、ハウジング120には、コネクタ端子110が、第1状態、第2状態、及び第3状態、のうちの何れかの状態で、状態切替可能に収容されることとなっている。第1状態は、熱引き部品130として電導熱引き部品が設置されてコネクタ端子110に対する吸熱が行われる状態である。第2状態は、熱引き部品130として非電導熱引き部品が設置されてコネクタ端子110に対する吸熱が行われる状態である。第3状態は、熱引き部品130が設置されず充電時の吸熱が積極的には行われない状態である。第3状態では、コネクタ端子110とハウジング120との接触部や電線端子W111やDC電線W11により、熱引き部品130を用いる場合に比べて緩やかな吸熱が行われることとなる。
【0025】
以上に説明した実施形態の充電インレット100において得られる効果について説明する前に、本実施形態に対する比較例について説明する。
【0026】
図6は、図1図5に示されている充電インレットと比較するための比較例を示した図である。この図6には、比較例の充電インレット500が、この充電インレット500から延出するDC電線W51を通る断面で示されている。尚、この図6の断面図では、図中右側がDC電線W51の延出側で、図中左側が相手方コネクタとの接続側となっている。
【0027】
比較例の充電インレット500では、DC電線W51の導体が、コネクタ端子510にハンダ付けによって直に接続されている。そして、本比較例では、ハウジング520の内部に上述の実施形態における熱引き部品130のような部材は設けられていない。充電時にコネクタ端子510と相手方コネクタ端子との接点部分等で発生し、コネクタ端子510の内部を伝わる熱P51は、主にDC電線W51によって、その延出方向D51に沿って吸熱、伝達、拡散され、これにより、充電時の温度上昇が抑制される。そして、そのような温度上昇の抑制効果を十分ならしめるために、本比較例では、DC電線W51の大径化により、コネクタ端子510との接続抵抗の低抵抗化や、DC電線W51による熱引き能力の向上が図られている。しかしながら、充電インレット500から延出するDC電線W51の大径化が進むと、インレット周りの重量及びコストを増大させるだけでなく、大径化したDC電線W51をハウジング520の内部に通すためにインレットサイズの大型化を招く可能性がある。
【0028】
以上に説明した比較例の充電インレット500に対し、図1図5を参照して説明した実施形態の充電インレット100によれば、以下のような効果を得ることができる。即ち、本実施形態では、コネクタ端子110で発生した熱P11は熱引き部品130によって吸熱される。この熱引き部品130は、コネクタ端子110における被吸熱部分としての電線接続部分112に間接部材として接する電線端子W111へと、コネクタ端子110の挿入方向D11と交差する接触方向D12から接触する。この接触により、コネクタ端子110の熱P11はDC電線W11に向かう前に熱引き部品130によってコネクタ端子110から吸熱される。従って、充電インレット100における充電時の温度上昇を、コネクタ端子110に接続されるDC電線W11のサイズ等を変えることなく抑えることができる。そして、DC電線W11のサイズ等がそのまま維持されることから、インレット周りの重量及びコストの増大やインレットサイズの大型化も抑えられることとなる。このように、本実施形態の充電インレット100によれば、インレット周りの重量及びコストの増大やインレットサイズの大型化を抑えつつ充電時の温度上昇を抑えることができる。
【0029】
ここで、本実施形態では、熱引き部品130が、ハウジング120への収容時には熱引き部品収容室122aの内周面122a-3という隣接部にも接触した状態となる。熱引き部品130は、被吸熱部分としての電線接続部分112から吸熱した熱を隣接部としての熱引き部品収容室122aの内周面122a-3へと放熱する。この構成によれば、熱引き部品130からの放熱により充電時の温度上昇を抑えつつ熱引き部品130の小型化を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、ハウジング120の内外を繋ぐように筒状の熱引き部品収容室122aが設けられている。熱引き部品130は、この熱引き部品収容室122aに収容され、その開口122a-2から突出して吸熱するとともに、熱引き部品収容室122aの内周面122a-3に接触して放熱する。この構成によれば、ハウジング120に設けられた熱引き部品収容室122aの内周面122a-3という熱容量の大きな部位に放熱を行うことができるので、充電時の温度上昇を一層抑えることができる。また、熱引き部品収容室122aが、ハウジング120の内外を繋いだ筒状に設けられることで、熱引き部品130の着脱収容を良好な作業性の下で行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、熱引き部品収容室122aが円筒形状に形成されており、収容時には、円柱形状の熱引き部品130の外周面131が、熱引き部品収容室122aの内周面122a-3に全周に亘って接触する。この構成によれば、円柱形状の熱引き部品130の外周面131を、その全周に亘って、円筒形状の熱引き部品収容室122aの内周面122a-3に対する放熱面とすることで、放熱面積を増大させて放熱性能を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、熱引き部品130が、コネクタ端子110の電線接続部分112を被吸熱部分とし、ボルト140によって電線接続部分112へと共締め固定された電線端子W111を介して間接的に吸熱する。この構成によれば、コネクタ端子110の電線に対する接続と、熱引き部品130のコネクタ端子110に対する接触固定と、が1回のボルト締めによって行われるので、組立作業の効率化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態では、熱引き部品130として電導熱引き部品と非電導熱引き部品と、が用意されている。そして、ハウジング120には、コネクタ端子110が、電導熱引き部品が設置される第1状態、非電導熱引き部品が設置される第2状態、及び熱引き部品130が設置されない第3状態、のうちの何れかの状態で、状態切替可能に収容される。
【0034】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等においては、その車種等によって充電時に求められる通電性能(通電要求と呼ぶ)が異なる。代表的な通電要求として、次のような3タイプが挙げられる。第1タイプは、大型バッテリが搭載されて大電流による急速充電が行われるとともに、ある程度のコスト上昇は許容しつつ十分な温度上昇の抑制が求められる性能重視のタイプである。第2タイプは、大電流による急速充電が行われるが、ある程度の温度上昇は許容しつつコストの低減が求められるコスト重視のタイプである。そして、第3タイプは、搭載バッテリが小型で充電電流が小さく、充電時の温度上昇をそれほど気にする必要がない小電流タイプである。上述した構成によれば、電導熱引き部品及び非電導熱引き部品の選択設置や熱引き部品130の非設置によりコネクタ端子110の収容状態を切換えることで、上記の3タイプの通電要求に応じて熱引き部品130の設置を適宜に使い分けることができる。
【0035】
尚、以上に説明した実施形態は充電インレットの代表的な形態を示したに過ぎない。充電インレットは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、充電インレットの一例として、バッテリ充電のために電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等で用いられる充電インレット100が例示されている。しかしながら、充電インレットは、これに限るものではなく、充電用の相手方コネクタとの接続機構を有するものであれば、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0037】
また、上述した実施形態では、熱引き部品の一例として、コネクタ端子110における被吸熱部分に接する間接部材としての電線端子W111に接触して値引きを行う熱引き部品130が例示されている。しかしながら、熱引き部品は、これに限るものではなく、コネクタ端子の被吸熱部分に直に接触して熱引きを行うもの等であってもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、熱引き部品の一例として、ハウジング120に設けられた熱引き部品収容室122aの内周面122a-3を隣接部とし、当該内周面122a-3に接触して放熱する熱引き部品130が例示されている。しかしながら、熱引き部品は、これに限るものではなく、コネクタ端子の被吸熱部や間接部材以外には接触することなく、空気中に放熱するもの等であってもよい。ただし、何等かの隣接部に接触して放熱する熱引き部品130によれば、充電時の温度上昇を一層抑えることができる点は上述した通りである。
【0039】
また、上述した実施形態では、熱引き部品が接触して放熱する隣接部の一例として、ターミナルホルダ122に設けられた筒状の熱引き部品収容室122aの内周面122a-3が例示されているが、隣接部はこれに限るものではない。熱引き部品に対する隣接部は、熱引き部品が接触して放熱可能な部位であれば、その具体的な態様を問うものではない。ただし、筒状の熱引き部品収容室122aの内周面122a-3を熱引き部品130に対する隣接部とすることで、温度上昇の抑制だけでなく、熱引き部品130の着脱収容を良好な作業性の下で行うことができる点も上述した通りである。
【0040】
また、上述した実施形態では、熱引き部品収容室の一例として、円筒形状に形成された熱引き部品収容室122aが例示され、熱引き部品の一例として、円柱状の熱引き部品130が例示されている。しかしながら、熱引き部品収容室及び熱引き部品の形状は、円筒形状及び円柱形状に限るものではなく、熱引き部品の外周面が、筒状の熱引き部品収容室の内周面に接触して放熱可能であれば、任意の形状を採用し得るものである。ただし、円筒形状の熱引き部品収容室122a及び円柱形状の熱引き部品130によれば、熱引き部品130による放熱面積を増大させて放熱性能を向上させることができる点は上述した通りである。
【0041】
また、上述した実施形態では、熱引き部品の一例として、間接部材である電線端子W111と一緒に、被吸熱部分である電線接続部分112に対して共締め固定されてコネクタ端子110から間接的に吸熱する熱引き部品130が例示されている。しかしながら、熱引き部品は、これに限るものではなく、間接部材を介して吸熱を行うものであっても、その具体的な部材態様を問うものではない。また、固定方法についても、共締め固定に限るものではなく、熱引き部品と間接部材とを個別に固定することとしてもよい。ただし、電線端子W111を間接部材として熱引き部品130を共締め固定することで、電線の接続と熱引き部品130の固定とが1回のボルト締めで済み、組立作業の効率化を図ることができる点は上述した通りである。
【0042】
また、上述した実施形態では、充電インレットの一例として、コネクタ端子110が、第1~第3の3種類の状態で状態切替可能に収容される充電インレット100が例示されている。第1状態はコネクタ端子110とともに電導熱引き部品が設置される状態であり、第2状態はコネクタ端子110とともに非電導熱引き部品が設置される状態である。そして、第3状態は、熱引き部品130が設置されない状態である。しかしながら、充電インレットは、これに限るものではなく、一意的に決められた熱引き部品がコネクタ端子とともに必ず設置されるもの等であってもよい。ただし、上述した状態切替により、性能重視の第1タイプ、コスト重視の第2タイプ、及び小電流タイプという電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等における通電要求に適宜に応じることができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0043】
100 充電インレット
101 DCソケット
102 ACソケット
110 コネクタ端子
111 端子部分
112 電線接続部分(被吸熱部分)
112a 雌ねじ孔
120 ハウジング
121 本体ハウジング
122 ターミナルホルダ
122a 熱引き部品収容室
122a-1,122a-2 開口
122a-3 内周面(隣接部)
122b キャップ部材
130 熱引き部品
131 外周面
132 貫通孔
140 ボルト
D11 挿入方向
D12 接触方向
D13 熱引き方向
D14 放熱方向
P11 熱
W11 DC電線
W111 電線端子(間接部材)
W111a 端子孔
W12 AC電線W
図1
図2
図3
図4
図5
図6