IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図1
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図2
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図3
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図4
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図5
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図6
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図7
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図8
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図9
  • 特許-シャーシダイナモメータ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】シャーシダイナモメータ
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20250513BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024527842
(86)(22)【出願日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2023038191
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】浦田 瑶平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳司
(72)【発明者】
【氏名】西宮 和彦
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-519905(JP,A)
【文献】登録実用新案第3163882(JP,U)
【文献】特公平6-16004(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2002/0043102(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113188817(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ装置を備えたシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ装置は、
車両のタイヤを載置するローラと、
前記ローラの外部に設けられる冷却器とを備え、
前記ローラは、
ローラ外枠体と、
前記ローラ外枠体内に設けられるモータとを含み、
前記モータは、
モータ回転子と、
前記モータ回転子を囲むように配置された固定子構造体と、
前記モータ回転子に連結される回転シャフトと、
前記固定子構造体に連結される揺動シャフトとを含み、前記回転シャフトと前記揺動シャフトとは前記ローラを基準として互いに対向して設けられ、
前記ローラ装置は、
前記回転シャフトを回転可能に支持する回転用軸受台と、
前記揺動シャフトを揺動可能に支持する揺動用軸受台とをさらに備え、
前記回転シャフトは、前記モータ回転子の回転動作に連動して回転し、
前記揺動シャフトは、前記モータ回転子の回転動作に連動せず、
前記回転シャフトは前記ローラ外枠体を回転可能に前記ローラ外枠体に取り付けられ、
前記ローラ外枠体はローラ開口部を有し、
前記冷却器は、前記ローラ外枠体の前記ローラ開口部を介して前記モータに冷却風を供給する、
シャーシダイナモメータ。
【請求項2】
請求項1記載のシャーシダイナモメータであって、
前記固定子構造体は、
前記モータ回転子を囲むように配置されたモータ固定子と、
前記モータ固定子との間にケース内空間を確保した状態で、前記モータ固定子を収容するモータケースとを含み、
前記モータケースは前記ケース内空間に連通するケース開口部を有し、
前記冷却器は、前記ローラ開口部及び前記ケース開口部を介して前記ケース内空間に前記冷却風を供給する、
シャーシダイナモメータ。
【請求項3】
請求項2記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ外枠体は円状のローラ底面を有する円柱構造を呈し、前記ローラ底面は前記揺動シャフト側の第1のローラ底面と前記回転シャフト側の第2のローラ底面とを含み、
前記モータケースは円状のケース底面を有する円柱構造を呈し、前記ケース底面は前記揺動シャフト側の第1のケース底面と前記回転シャフト側の第2のケース底面を含み、
前記ローラ外枠体は前記第1のローラ底面を貫通する第1のローラ開口部を有し、前記ローラ開口部は前記第1のローラ開口部を含み、
前記モータケースは前記第1のケース底面を貫通して、前記ケース内空間に連通する第1のケース開口部を有し、前記ケース開口部は前記第1のケース開口部を含み、
前記冷却器は、前記揺動シャフトの軸方向に沿って、前記第1のローラ開口部から前記冷却風を供給するように設けられ、
前記モータケースの内径を「ID2」とし、前記モータ固定子の外径を「ED1」とし、前記ローラ外枠体の内径を「ID0」し、前記モータケースの外径を「ED2」とした時、前記モータケース、前記モータ固定子及び前記ローラ外枠体は寸法特性{(ID2-ED1)>(ID0-ED2)}を満足する、
シャーシダイナモメータ。
【請求項4】
請求項3記載のシャーシダイナモメータであって、
前記第1のローラ開口部は、前記第1のローラ底面において前記揺動シャフトを中心とした円周領域に沿って設けられ、
前記冷却器は前記冷却風を吹き出す冷却風吹出口を有し、前記冷却風吹出口は前記円周領域の一部に対向するように配置され、
前記ローラ装置は、
前記円周領域のうち前記冷却風吹出口に対向する領域以外の吹出口外領域を覆って設けられる遮断板をさらに備える、
シャーシダイナモメータ。
【請求項5】
請求項3記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ外枠体は前記第2のローラ底面を貫通する第2のローラ開口部を有し、前記ローラ開口部は前記第2のローラ開口部を含み、
前記モータケースは前記第2のケース底面を貫通し、前記ケース内空間と連通する第2のケース開口部を有し、前記ケース開口部は前記第2のケース開口部を含む、
シャーシダイナモメータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ装置は、
前記ローラ、前記冷却器、前記回転用軸受台及び前記揺動用軸受台を含む旋回対象を回転させるローラ旋回機構をさらに備える、
シャーシダイナモメータ。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ装置は、
トルクアームを介して前記揺動シャフトに連結され、前記ローラの回転時における前記モータの反力を測定するロードセルをさらに備える、
シャーシダイナモメータ。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ装置は、
前記回転シャフトに取り付けられ、前記ローラの回転速度を測定するエンコーダをさらに備える、
シャーシダイナモメータ。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記モータは交流モータであり、
前記ローラ装置は
前記ローラの外部に設けられ、電源を供給する交流電源と、
前記交流電源と前記モータとを電気的に接続するモータ用配線とをさらに備え、
前記モータ用配線の一部は前記揺動シャフト内に設けられる、
シャーシダイナモメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両の各種走行試験に用いられるシャーシダイナモメータに関する。
【背景技術】
【0002】
シャーシダイナモメータは、従来、車両(自動車)の走行試験を行う際に用いられており、主要構成要素としてローラ装置を含んでいる。また、シャーシダイナモメータは、走行試験を行う際に、ローラ装置上に配置した車両を固定する車両固定機構を有している。従来のシャーシダイナモメータとして、例えば、特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータがある。
【0003】
車両のステアリング操作に伴う種々の走行試験を行うには、タイヤの旋回動作に適合するようにローラを旋回させるローラ旋回動作を行う必要がある。すなわち、左右のタイヤ用のローラ装置をステアリング操作によるタイヤの切れ角度に追従させるための制御方式を実現するには、ローラ旋回動作が必要となる。上記制御方式は自動運転やADAS模擬走行試験に適用することができる。なお、「ADAS(Advanced Driver Assistance System)」は、「先進運転システム」を意味し、事故などの可能性を事前に検知し回避するシステムである。
【0004】
ローラ旋回機能を備えたシャーシダイナモメータとして例えば特許文献2で開示された車両試験装置に含まれるシャーシダイナモメータがある。
【0005】
(ローラ装置200)
図8は特許文献2に代表されるローラ旋回機能を備えた従来のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置200の構造を模式的に示す正面図である。図8では前方(+Y方向)から視た正面図を示している。図8にXYZ直交座標系を記している。ステアリング操作によって車両60の前輪側の2つのタイヤ6(6R、6L)がタイヤ旋回動作を行う場合、少なくとも前輪側の2台のローラ装置として、図8で示すローラ装置200が用いられる。
【0006】
ローラ装置200は前輪右側のタイヤ6R用のローラ装置200Rと前輪左側のタイヤ6L用のローラ装置200Lとを有する。以下、ローラ装置200R及びローラ装置200Lのうちローラ装置200Lを代表して説明する。
【0007】
同図に示すように、ローラ装置200Lはローラ旋回機構300L及びローラ駆動機構80Lを主要構成要素として含んでいる。
【0008】
ローラ旋回機構300Lは、固定ベース36、旋回用モータ42、及び旋回軸受38を主要構成要素として含んでいる。固定ベース36上に旋回軸受38が設けられ、固定ベース36の側面に隣接して旋回用モータ42が取り付けられる。
【0009】
旋回用モータ42は速度制御が可能なギヤ付モータである。旋回用モータ42の先端にはギヤ42gが取り付けられ、旋回ベース35の外周に取り付けられたギヤとギヤ42gとをかみ合わせている。したがって、旋回用モータ42の回転により、旋回ベース35を旋回させることができる。
【0010】
旋回軸受38は旋回可能に旋回ベース35を支持しており、旋回軸受38の中心を旋回中心として、旋回用モータ42の動力で旋回ベース35を旋回させている。このように、ローラ旋回機構300Lは、旋回用モータ42によって旋回される旋回ベース35を有している。
【0011】
ローラ旋回機構300Lにおける旋回ベース35の旋回に連動して、ローラ旋回機構300Lより上方のローラ駆動機構80Lは旋回する。したがって、ローラ旋回機構300Lは、ローラ対20を旋回させるローラ旋回動作を実行することができる。
【0012】
次に、ローラ駆動機構80Lについて説明する。ローラ対20を有するローラ駆動機構80Lは旋回ベース35上に設けられる。
【0013】
ツインローラ構成対応のローラ駆動機構80Lは、ローラ駆動用モータ48、エンコーダ49、カップリング43、ギヤボックス等により構成される減速機5、ローラ対20及び回転軸41を主要構成要素として含んでいる。ここで、回転軸41はローラ対20に対応して一対の回転軸41となる。
【0014】
ローラ駆動用モータ48及び減速機5は旋回ベース35上に固定され、駆動源となるローラ駆動用モータ48からカップリング43及び減速機5を介して、一対の回転軸41それぞれを回転駆動させている。具体的には、減速機5内で回転動作伝達機能を2つに分岐させて、一対の回転軸41の回転駆動を可能にしている。また、ローラ駆動用モータ48の回転速度に基づくローラ対20それぞれの回転速度がエンコーダ49によって測定される。エンコーダ49の測定結果はローラ駆動用モータ48を制御するためのフィードバック信号としても利用される。
【0015】
図8では図示省略しているが、旋回ベース35上にローラ駆動用モータ48を跨ぐように一対のローラ用軸受台が設けられており、一対の回転軸41は減速機5と一対のローラ用軸受台との間でローラ対20が回転可能に支持される。
【0016】
ローラ対20それぞれの中心部を貫通するように一対の回転軸41が取り付けられることにより、一対の回転軸41の回転と共にローラ対20は回転動作を実行することができる。
【0017】
したがって、ローラ駆動機構80Lは、第1のローラである前方ローラ20Fを回転駆動するローラ駆動動作と、第2のローラである後方ローラ20Bを回転駆動するローラ駆動動作とを実行することができる。
【0018】
なお、旋回ベース35上にシングルローラ構成対応のローラ駆動機構80Lを2つ設けることにより、ツインローラ構成にしても良い。
【0019】
なお、ローラ装置200Rは、ローラ装置200Lと同様にローラ旋回機構300R及びローラ駆動機構80Rを主要構成要素として含んでいる。ローラ旋回機構300Rの各部構成及び動作内容はローラ旋回機構300Lと同様であり、ローラ駆動機構80Rの各部構成及び動作内容はローラ駆動機構80Lと同様である。
【0020】
以下、ローラ装置200L及びローラ装置200Rを総称する場合、単に「ローラ装置200」と称し、ローラ対20L及びローラ対20Rを総称する場合、単に「ローラ対20」と称する場合がある。
【0021】
また、ローラ駆動機構80L及びローラ駆動機構80Rを総称する場合、単に「ローラ駆動機構80」と称し、ローラ旋回機構300L及びローラ旋回機構300Rを総称する場合、単に「ローラ旋回機構300」と称する場合がある。
【0022】
図9及び図10はそれぞれローラ駆動機構80Rにおけるトルク測定機構を模式的に示す説明図である。図9及び図10それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0023】
これらの図に示すように、旋回ベース35上に揺動軸受47及び油膜46を介してローラ駆動用モータ48が支持されている。図9に示すように、揺動軸受47及び油膜46の組合せはローラ駆動用モータ48に対して2つ設けられる。
【0024】
ローラ駆動用モータ48は油膜46を介することにより旋回ベース35上において浮いた状態で支持されているため、ローラ駆動用モータ48の回転方向のロスが小さくなる特徴を有している。
【0025】
ローラ駆動用モータ48の側面にトルクアーム44を介してロードセル45が取り付けられる。車両60の走行試験時にローラ駆動用モータ48の回転方向に反力が発生すると、ローラ駆動用モータ48が回転方向にフリーな状態で支持されているため、ローラ駆動用モータ48の反力をロードセル45によって測定することができる。
【0026】
なお、ローラ駆動機構80Lにおいてもローラ駆動機構80Rと同様なトルク測定機構を有していることは勿論である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】特開昭53-1579号公報
【文献】特開2023-89808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
図8図10で示した従来のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置200はローラ対20を回転駆動するためにローラ駆動機構80を必要としていた。ローラ駆動機構80はローラ駆動用モータ48や減速機5等の比較的サイズが大きい構成要素を必要としている。
【0029】
ローラ装置200は通常、車両60を載置する床面下の地下ピットと呼ばれる領域に設けられるが、ローラ装置200の装置サイズが大きいため、地下ピットを深く設ける等の処置を施し、ローラ装置200用の比較的広い設置スペースを確保する必要があった。
【0030】
例えば、図8で示した従来のシャーシダイナモメータでは、タイヤ6R用にローラ駆動機構80Rを設け、タイヤ6L用にローラ駆動機構80Lを設ける必要があるため、幅方向(X方向)のサイズは制限を補うべく、高さ方向(Z方向)のサイズを大きくする必要があった。したがって、動力伝達機構である減速機5は幅方向のサイズを小さくする分、高さ方向のサイズを大きくする必要があった。
【0031】
このように、従来のシャーシダイナモメータは、ローラ装置200の装置サイズが大きくなる分、設置スペースが広くなり過ぎるという問題点があった。
【0032】
本開示では、上記のような問題点を解決し、設置スペースの縮小化を図ったシャーシダイナモメータの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本開示のシャーシダイナモメータは、ローラ装置を備えたシャーシダイナモメータであって、前記ローラ装置は、車両のタイヤを載置するローラと、前記ローラの外部に設けられる冷却器とを備え、前記ローラは、ローラ外枠体と、前記ローラ外枠体内に設けられるモータとを含み、前記モータは、モータ回転子と、前記モータ回転子を囲むように配置された固定子構造体と、前記モータ回転子に連結される回転シャフトと、前記固定子構造体に連結される揺動シャフトとを含み、前記回転シャフトと前記揺動シャフトとは前記ローラを基準として互いに対向して設けられ、前記ローラ装置は、前記回転シャフトを回転可能に支持する回転用軸受台と、前記揺動シャフトを揺動可能に支持する揺動用軸受台とをさらに備え、前記回転シャフトは、前記モータ回転子の回転動作に連動して回転し、前記揺動シャフトは、前記モータ回転子の回転動作に連動せず、前記回転シャフトは前記ローラ外枠体を回転可能に前記ローラ外枠体に取り付けられ、前記ローラ外枠体はローラ開口部を有し、前記冷却器は、前記ローラ外枠体の前記ローラ開口部を介して前記モータに冷却風を供給する。
【発明の効果】
【0034】
本開示のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置が有するローラは、ローラ外枠体内にモータを有しているため、モータの回転シャフトによってローラ外枠体を直接回転させることができる。
【0035】
したがって、本開示のシャーシダイナモメータは、ローラの外部にローラ回転駆動用の外部モータを設ける従来構成に比べて、ローラ回転駆動用に外部モータ及びローラへの動力伝達機構を設ける必要がない分、装置サイズの縮小化を図ることができる。
【0036】
さらに、本開示のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置は、ローラの外部に設けられる冷却器を備えるため、ローラ外枠体に設けられるローラ開口部を介してモータに冷却風を供給することにより、ローラ外枠体内に存在するモータを効果的に冷却することができる。
【0037】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施の形態のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置の構造を模式的に示す説明図である。
図2図1で示したローラ駆動機構を側面方向から視た説明図である。
図3】ローラ駆動機構の詳細を示す説明図である。
図4】ローラ駆動機構におけるトルク測定原理を示す説明図である。
図5】ローラ駆動機構におけるローラ等の内部構造の詳細を示す説明図である。
図6図5のA-A断面構造を模式的に示す説明図である。
図7図5で示した遮断板の平面構造を模式的に示す説明図である。
図8】従来のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置の構造を示す正面図である。
図9図8で示したローラ駆動機構におけるトルク測定機構を模式的に示す説明図(その1)である。
図10】ローラ駆動機構におけるトルク測定機構を模式的に示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(ローラ装置100)
図1は本実施の形態のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置100の構造を模式的に示す説明図である。図1では前方(+Y方向)から視た正面図を示している。図1にXYZ直交座標系を記している。ステアリング操作によって車両60の前輪側の2つのタイヤ6(6R、6L)がタイヤ旋回動作を行う場合、少なくとも前輪側の2台のローラ装置として、図1で示すローラ装置100が用いられる。
【0040】
ローラ装置100は前輪右側のタイヤ6R用のローラ装置100Rと前輪左側のタイヤ6L用のローラ装置100Lとを有する。ローラ装置100Rはローラ駆動機構8R及びローラ旋回機構30Rを主要構成要素として含み、ローラ装置100Lはローラ駆動機構8L及びローラ旋回機構30Lを主要構成要素として含んでいる。また、ローラ装置100R及びローラ装置100Lはそれぞれ図1では図示しない冷却器である冷却ファン50をさらに含んでいる。
【0041】
図2はローラ駆動機構8Lを側面方向(-X方向)から視た説明図である。図3はローラ駆動機構8Lの詳細を示す説明図である。図2及び図3それぞれにXYZ直交座標系を記している。以下、これらの図を参照して、ローラ装置100R及びローラ装置100Lのうちローラ装置100Lを代表して説明する。
【0042】
これらの図に示すように、ローラ装置100Lはローラ旋回機構30L及びローラ駆動機構8Lを主要構成要素として含んでいる。
【0043】
ローラ旋回機構30Lは、固定ベース36、旋回用モータ42、及び旋回軸受38を主要構成要素として含んでいる。固定ベース36上に旋回軸受38が設けられ、固定ベース36の側面に隣接して旋回用モータ42が取り付けられる。
【0044】
旋回用モータ42は速度制御が可能なギヤ付モータである。旋回用モータ42の先端にはギヤ42gが取り付けられ、旋回ベース35の外周に取り付けられたギヤとギヤ42gとをかみ合わせている。したがって、旋回用モータ42の回転により、旋回ベース35を旋回させることができる。
【0045】
旋回軸受38は旋回可能に旋回ベース35を支持しており、旋回軸受38の中心を旋回中心として、旋回用モータ42の動力で旋回ベース35を旋回させている。このように、ローラ旋回機構30Lは、旋回用モータ42によって旋回される旋回ベース35を有している。
【0046】
ローラ旋回機構30Lにおける旋回ベース35の旋回に連動して、ローラ旋回機構30Lより上方のローラ駆動機構8Lは旋回する。したがって、ローラ旋回機構30Lは、ローラ2Lを旋回させるローラ旋回動作を実行することができる。
【0047】
このように、ローラ旋回機構30Lは、ローラ駆動機構8Lを旋回対象としてローラ旋回動作を実行する。ローラ駆動機構8Lはローラ2、後述する冷却ファン50、回転用軸受台11及び揺動用軸受台12を主要構成要素として含んでいる。
【0048】
次に、ローラ駆動機構8Lについて説明する。ローラ2Lを有するローラ駆動機構8Lは旋回ベース35上に設けられる。
【0049】
ツインローラ構成対応のローラ駆動機構8Lは、ベース13、ローラ2L、回転用軸受台11、揺動用軸受台12、回転シャフト21、揺動シャフト22、トルクアーム27及びロードセル28を主要構成要素として含んでいる。ここで、ツインローラ構成のローラ2Lに対応して、回転シャフト21は一対の回転シャフト21となり、揺動シャフト22は一対の揺動シャフト22となる。
【0050】
旋回ベース35上にベース13が固定され、ベース13上に回転用軸受台11及び揺動用軸受台12が立設される。回転用軸受台11は回転シャフト21を回転可能に支持し、揺動用軸受台12は揺動可能に揺動シャフト22を支持する。
【0051】
回転用軸受台11及び揺動用軸受台12間にローラ2Lが設けられる。後に詳述するように、ローラ2Lは回転シャフト21の回転に伴い回転する。
【0052】
ローラ2Lの中心部を貫通するように回転シャフト21が取り付けられることにより、回転シャフト21の回転共にローラ2Lは回転動作を実行することができる。回転シャフト21にエンコーダ23が取り付けられ、エンコーダ23によってローラ2の回転速度が直接測定される。エンコーダ23の測定結果はモータ7を制御するためのフィードバック信号としても利用される。
【0053】
ローラ2Lはツイン構成であるため、図1及び図3で示したローラ2Lは、図2で示した前方ローラ2F及び後方ローラ2Bのいずれかに対応する。
【0054】
ローラ駆動機構8Lはローラ2Lを回転駆動するローラ駆動動作を実行する。ローラ2Lが第1のローラである前方ローラ2Fに該当する場合は前方ローラ2Fが回転駆動され、ローラ2Lが第2のローラである後方ローラ2Bに該当する場合は後方ローラ2Bが回転駆動される。
【0055】
一方、固定子構造体72はモータ回転子71の回転動作に連動しないように、回転動作に関しモータ回転子71とは独立して設けられる。そして、揺動シャフト22は、モータ回転子71の回転動作に連動しない固定子構造体72に取り付けられる。
【0056】
図1図3に示すように、ローラ装置100において、揺動シャフト22の端部にトルクアーム27を介してロードセル28が取り付けられる。
【0057】
図4はローラ駆動機構8Lにおけるトルク測定原理を示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。図4に示すように、車両60の走行試験時に前方ローラ2F(ローラ2L)がローラ回転方向R1に沿って回転するに伴い、ローラ2に内蔵されたモータ7の回転方向に沿った反力が揺動シャフト22に伝達される。したがって、ロードセル28によってモータ7の反力を測定することができる。
【0058】
モータ7の反力には、前方ローラ2Fの加速度に伴う反力や、車両60の走行試験時にタイヤ6Lが前方ローラ2Fに付与する力等が反映される。具体的には、車両60の走行試験時にタイヤ6からローラ2に力が加えられると、モータ7の反力が揺動シャフト22の揺動状態として伝達される。
【0059】
したがって、揺動シャフト22に伝達されたモータ7の反力は、トルクアーム27を介して揺動シャフト22に接続されるロードセル28によって測定することができる。
【0060】
このように、ローラ駆動機構8Lは揺動シャフト22に対応してトルクアーム27及びロードセル28を含むトルク測定機構を有している。図2に示すように、前方ローラ2F及び後方ローラ2Bそれぞれの揺動シャフト22に対応してトルク測定機構(トルクアーム27+ロードセル28)が設けられる。
【0061】
ローラ2Lはローラ外枠体10とローラ外枠体内に設けられるモータ7とを主要構成要素として含んでいる。モータ7はモータ回転子71及び固定子構造体72と、前述した回転シャフト21及び揺動シャフト22とを主要構成要素として含んでいる。
【0062】
固定子構造体72はモータ回転子71を囲むように配置されており、回転シャフト21はモータ回転子71に連結され、揺動シャフト22は固定子構造体72に連結される。回転シャフト21と揺動シャフト22とはローラ2Lを基準として互いに対向して設けられる。
【0063】
したがって、回転シャフト21は、モータ回転子71の回転動作に連動して回転する。一方、固定子構造体72はモータ回転子71の回転動作に連動することなく、回転動作に関し、モータ回転子71と独立して設けられる。
【0064】
なお、ローラ装置100Rは、ローラ装置100Lと同様にローラ旋回機構30R及びローラ駆動機構8Rを主要構成要素として含んでいる。ローラ旋回機構30Rの各部構成及び動作内容はローラ旋回機構30Lと同様であり、ローラ駆動機構8Rの各部構成及び動作内容はローラ駆動機構8Lと同様である。
【0065】
以下、ローラ装置100L及びローラ装置100Rを総称する場合、単に「ローラ装置100」と称し、ローラ対20L及びローラ対20Rを総称する場合、単に「ローラ対20」と称し、ローラ2L及びローラ2Rを総称する場合、単に「ローラ2」と称する場合がある。
【0066】
また、ローラ駆動機構8L及びローラ駆動機構8Rを総称する場合、単に「ローラ駆動機構8」と称する称し、ローラ旋回機構30L及びローラ旋回機構30Rを総称する場合、単に「ローラ旋回機構30」と称する場合がある。
【0067】
なお、図1図4では図示を省略しているが、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、走行試験を行う際に、ローラ装置100上に配置した車両60を固定する車両固定機構を有している。
【0068】
図5はローラ駆動機構8におけるローラ2、回転用軸受台11及び揺動用軸受台12の内部構造の詳細を示す説明図である。図6図5のA-A断面構造を模式的に示す説明図である。
【0069】
これらの図に示すように、回転用軸受台11は内部にベアリング61を有し、このベアリング61の軌道輪(内輪)内に回転シャフト21を挿入する態様で、回転用軸受台11は回転シャフト21を回転可能に支持している。なお、回転シャフト21はローラ2内の回転子直結シャフト21aとローラ2外の軸受台保持用シャフト21bとを含んでいる。回転シャフト21において、回転子直結シャフト21aと軸受台保持用シャフト21bとは、軸受台保持用シャフト21bの軸方向に穴を空け、この穴に回転子直結シャフト21aを差し込む形で連結されている。なお、図5で示す縦長の矩形領域も軸受台保持用シャフト21bに含まれる。
【0070】
ローラ外枠体10は円状のローラ底面を有する円柱構造を呈し、ローラ底面は揺動シャフト22側の第1のローラ底面と回転シャフト21側の第2のローラ底面を含んでいる。
【0071】
ローラ外枠体10の第1のローラ底面の中心領域にベアリング62が設けられる第1のローラ底面はベアリング62を設けるため、揺動用軸受台12側に一部突出している。
【0072】
一方、ローラ外枠体10の第2のローラ底面の中心に回転シャフト21が固定される。このように、モータ回転子71の回転動作に連動して回転可能な回転シャフト21はローラ外枠体10に取り付けられる。すなわち、回転シャフト21はローラ外枠体10を回転可能にローラ外枠体10に取り付けられる。
【0073】
揺動用軸受台12は内部にベアリング63を有し、ローラ外枠体10は第1のローラ底面の中央領域にベアリング62を有している。そして、ベアリング62及び63それぞれの軌道輪(内輪)内に揺動シャフト22を挿入する態様で、揺動シャフト22はローラ外枠体10及び揺動用軸受台12それぞれによって揺動可能に支持される。
【0074】
図5に示すように、固定子構造体72はモータ固定子721及びモータケース722を主要構成要素として含んでいる。モータ固定子721はモータ回転子71を囲むように配置されており、モータケース722はモータ固定子721との間にケース内空間S72を確保した状態で、モータ固定子721を収容している。
【0075】
モータ固定子721はモータ回転子71の回転動作に連動することなく、回転動作に関しモータ回転子71と独立して設けられる。モータケース722もモータ固定子721と同様、回転動作に関しモータ回転子71と独立して設けられる。ただし、モータ固定子721及びモータケース722にはモータ7の反力が加わるために揺動する。
【0076】
モータケース722は円状のケース底面を有する円柱構造を呈し、ケース底面は揺動シャフト22側の第1のケース底面と回転シャフト21側の第2のケース底面を含んでいる。
【0077】
揺動シャフト22の端部がモータケース722の第1のケース底面の中心に連結される。このように、モータ回転子71の回転動作に連動しない揺動シャフト22は、モータケース722に取り付けられる。
【0078】
図5に示すように、ローラ外枠体10の第1のローラ底面とモータケース722の第1のケース底面との間にケース外空間S8が設けられる。
【0079】
なお、モータ7の駆動用の電源は、外部の交流電源であるAC電源9からモータ用配線L7を介してローラ外枠体10内のモータ7に供給される。すなわち、モータ用配線L7によってAC電源9とモータ7とが電気的に接続される。モータ用配線L7の一部は揺動シャフト22内に設けられる。すなわち、モータ7は交流モータである。
【0080】
図6に示す揺動用軸受台12側のローラ外枠体10の円状のローラ外枠体底面10Sが第1のローラ底面となる。ローラ外枠体底面10Sにおいて、揺動シャフト22及びベアリング62の回りに、揺動シャフト22を中心とした円周領域C10に沿って複数のローラ開口部15が離散的に設けられる。複数のローラ開口部15はそれぞれローラ外枠体底面10Sを貫通して設けられる。このように、複数のローラ開口部15は揺動シャフト22を中心とした円周領域C10に沿って設けられる。
【0081】
図5に示すように、モータケース722の第1のケース底面を貫通して、各々がケース内空間S72に連通する複数のケース開口部16が設けられる。
【0082】
ローラ2の外部に設けられる冷却器である冷却ファン50は冷却風F2を吹き出す冷却風吹出本体50tを有し、冷却風吹出本体50tの冷却風吹出口50oがローラ外枠体底面10Sの円周領域C10の一部に対向するように配置される。
【0083】
図5に示すように、揺動用軸受台12を貫通してダクトスペースS5が設けられており、ダクトスペースS5冷却風吹出本体50tを挿入する態様で冷却ファン50は配置される。また、冷却ファン50の一部はベース13上に設けられたファン設置台14上に固定される。
【0084】
したがって、冷却器である冷却ファン50は、冷却風吹出本体50tの冷却風吹出口50oから冷却風F2を吹き出すことにより、ローラ外枠体底面10Sの複数のローラ開口部15のいずれかから、ケース外空間S8内に冷却風F2を供給することができる。そして、ケース外空間S8から、複数のケース開口部16を介してローラ外枠体10内のケース内空間S72に冷却風F2を供給することができる。
【0085】
この際、冷却風吹出本体50tの冷却風吹出口50oから吹き出される冷却風F2は、揺動シャフト22の軸方向(X方向)に沿って、複数のローラ開口部15のいずれか介して供給される。
【0086】
ケース外空間S8における方向の間隔である軸方向距離d8は、ケース内空間S72に含まれる底面間空間S72aにおけるX方向の間隔である軸方向距離d72と比較して狭くなるように設定される。底面間空間S72aはケース内空間S72のうちモータ固定子721の底面(-X方向側)とモータケース722の第1のケース底面との間の空間である。
【0087】
さらに、図5に示すように、ローラ外枠体底面10Sにおける円周領域C10のうち冷却風吹出本体50tの冷却風吹出口50oに対向する領域以外の吹出口外領域を覆って遮断板52が設けられる。
【0088】
図7は遮断板52の平面構造を模式的に示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0089】
同図に示すように、ローラ外枠体底面10Sにおいて、YZ平面で平面視してベアリング62より外側に、揺動シャフト22を中心とした円周状の円周領域C10が設けられる。
【0090】
遮断板52は円周領域C10の大部分を覆って設けられる。遮断板52が覆わない円周領域C10は、ダクトスペースS5及びその周辺のみである。ダクトスペースS5内に冷却風吹出口50oが存在する。したがって、遮断板52は、ローラ外枠体底面10Sにおける円周領域C10のうち冷却風吹出口50oに対向する領域以外の吹出口外領域を覆って設けられる。
【0091】
図5に示すように、ローラ外枠体10は第2のローラ底面を貫通する複数のローラ開口部17(第2のローラ開口部)を有する。したがって、ローラ外枠体10の2つの底面を貫通して設けられるローラ開口部は、第1のローラ底面を貫通して設けられる複数のローラ開口部15(第1のローラ開口部)と、第2のローラ底面を貫通する複数のローラ開口部17(第2のローラ開口部)とを含んでいる。
【0092】
モータケース722は第2のケース底面を貫通し、ケース内空間S72と連通する複数のケース開口部18(第2のケース開口部)を有する。したがって、モータケース722の2つの底面を貫通して設けられるケース開口部は、第1のケース底面を貫通する複数のケース開口部16(第1のケース開口部)と、第2のケース底面を貫通する複数のケース開口部18(第2のケース開口部)とを含んでいる。
【0093】
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおいて、ローラ外枠体10、モータ固定子721及びモータケース722は以下の不等式(1)を満足する寸法特性を有している。
【0094】
(ID2-ED1)>(ID0-ED2)…(1)
式(1)において、「ID2」はモータケース722の内径を示し、「ED1」はモータ固定子721の外径を示し、「ID0」はローラ外枠体10の内径を示し、「ED2」はモータケース722の外径を示している。
【0095】
図5において、差分Δ1が不等式(1)の左辺(ID2-ED1)となり、差分Δ2が不等式(1)の右辺(ID0-ED2)となる。
【0096】
(効果)
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置100のローラ2は、ローラ外枠体10内にモータ7を有しているため、モータ7のモータ回転子71に連結される回転シャフト21によってローラ外枠体10を直接回転させることができる。
【0097】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、図8で示した従来構成に比べて、ローラの外部に外部モータ及びローラへの動力伝達機構を設ける必要がない分、装置サイズの縮小化を図ることができる。
【0098】
図8で示した従来のシャーシダイナモメータのローラ装置200において、ローラ駆動用モータ48が外部モータに相当し、ローラ対20用の減速機5がローラへの動力伝達機構に相当する。
【0099】
本実施の形態のシャーシダイナモメータのローラ装置100において、ローラ2のローラ外枠体10内にモータ7が内蔵されているため、減速機5等の動力伝達機構が不要となる。このため、ローラ駆動機構8の高さ方向(Z方向)のサイズを大幅に縮小することができ、ローラ旋回機構30を含めてもローラ装置100の設置スペース及びコストの低減化を図ることができる。
【0100】
さらに、本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置100の主要構成要素であるローラ駆動機構8は、ローラ2の外部に設けられる冷却器である冷却ファン50を備えている。このため、冷却ファン50からローラ外枠体10の複数のローラ開口部15のいずれかを介してローラ外枠体10内に冷却風F2を供給することにより、ローラ外枠体10内に存在するモータ7を効果的に冷却することができる。
【0101】
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおける冷却ファン50は、ローラ外枠体10の第1のローラ底面に設けられる複数のローラ開口部15と、モータケース722の第1のケース底面に設けられる複数のケース開口部16を介しケース内空間S72に冷却風F2を供給することができる。
【0102】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、冷却風F2をモータ固定子721の表面及びローラ外枠体10の内面に直接付与することにより、モータ7及びローラ外枠体10を効果的に冷却することができる。また、モータ固定子721の表面をフィン構造とすることにより冷却効果を高めることができる。
【0103】
したがって、ローラ2内にモータ7を内蔵した本実施の形態のシャーシダイナモメータは、車両60に対する走行試験を支障無く行うことができる。
【0104】
本実施の形態のシャーシダイナモメータのローラ2において、ローラ外枠体10、モータ固定子721及びモータケース722は上述した不等式(1)を満足する寸法特性を有している。この寸法特性は、冷却風F2の通路に関し、冷却が必要な空間体積を、冷却が不要な空間体積より広く設定する特性となる。
【0105】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、上述した寸法特性を有するため、冷却が必要なモータ7の主要部となるモータ回転子71及びモータ固定子721を効果的に冷却することができる。
【0106】
第1のローラ開口部となる複数のローラ開口部15は揺動シャフト22を中心とした円周領域C10に沿って設けられる。このため、ローラ外枠体10が回転動作を行っている場合でも、冷却ファン50における冷却風吹出本体50tの冷却風吹出口50oから冷却風F2を吹き出すことにより、複数のローラ開口部15のいずれかを介して冷却風F2を確実にケース外空間S8に供給することができる。
【0107】
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ駆動機構8は、円周領域C10のうち冷却風吹出口50oに対向する領域以外の吹出口外領域を覆って設けられる遮断板52を備えているため、ケース外空間S8に供給された冷却風F2が複数のローラ開口部15のいずれかからローラ外枠体10の外部に漏れることはない。
【0108】
冷却風吹出口50oから吹き出される冷却風F2はケース外空間S8内に溜まる。一方、円周領域C10の大部分となる吹出口外領域は遮断板52によって遮断されているため、ケース外空間S8内に溜まった冷却風F2は外部に漏れることなく、複数のケース開口部16を介してケース内空間S72に精度良く導かれる。
【0109】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、ケース外空間S8からケース内空間S72への冷却風F2の供給効率を高めることにより、モータ7の冷却効果を向上させることができる。
【0110】
本実施の形態のシャーシダイナモメータは、ローラ外枠体10の第2のローラ底面に複数のローラ開口部17(第2のローラ開口部)を設け、モータケース722の第2のケース底面に複数のケース開口部18(第2のケース開口部)を設けている。このため、複数のローラ開口部15(第1のローラ開口部)を冷却風F2の供給口とし、複数のローラ開口部17を冷却風F2の排気口とすることができる。
【0111】
すなわち、ローラ駆動機構8において、複数のローラ開口部15、ケース外空間S8、複数のケース開口部16(第1のケース開口部)、ケース内空間S72、複数のケース開口部18、及び複数のローラ開口部17による冷却風通路が確保される。
【0112】
なお、ローラ外枠体10の第2のローラ底面とモータケース722の第2のケース底面との間にケース外空間S8に相当する空間が存在する。また、冷却風F2の排出効率を高めるべく、複数のローラ開口部17とは複数のケース開口部18とはYZ平面において互いに対向する位置に設けられることが望ましい。

【0113】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、冷却器である冷却ファン50によって冷却風通路に冷却風F2を流すことにより、ローラ2のローラ外枠体10内に配置されるモータ7をより効果的に冷却することができる。
【0114】
本実施の形態のシャーシダイナモメータはローラ旋回機構30によってローラ駆動機構8を旋回対象として旋回させることにより、ローラ旋回動作を含む多様な車両60の試験を行うことができる。なお、前述したように、ローラ駆動機構8は主要構成要素として、ローラ2、冷却ファン50、回転用軸受台11及び揺動用軸受台12を含んでいる。
【0115】
本実施の形態のシャーシダイナモメータはトルクアーム27を介して揺動シャフト22に連結されるロードセル28によって、揺動シャフト22に伝達されるモータ7の反力を測定している。車両60の走行試験時におけるモータ7の反力は揺動シャフト22の揺動状態に正確に反映される。
【0116】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、ロードセル28によって、車両60の走行試験時におけるモータ7の反力を精度良く測定することができる。
【0117】
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置100は、回転シャフト21に取り付けられるエンコーダ23をさらに備えている。エンコーダ23はローラ2の回転速度を直接的に測定している。
【0118】
ローラ装置100は、回転シャフト21によってローラ外枠体10を直接回転させているため、エンコーダ23は回転シャフト21の回転速度をそのままローラ2の回転速度として精度良く測定することができる。
【0119】
本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ装置100に含まれるローラ駆動機構8は交流モータとなるモータ7用のAC電源9及びモータ用配線L7を有している。
【0120】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータは、一部が揺動シャフト22内に設けられるモータ用配線L7を介して、ローラ2の外部に設けられたAC電源9からローラ2の内部に設けられたモータ7に交流電源を支障なく供給することができる。
【0121】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0122】
本実施の形態で示したローラ装置100は、車両60の前輪側のタイヤ6を載置する装置として示したが、同様に車両60の後輪側のタイヤ6を載置する装置としてローラ装置100を用いても良い。また、車両60の前輪側及び後輪側のタイヤ6のうち一方側のタイヤ6を載置するローラをフリーローラとする場合、フリーローラ側にはローラ装置100を設ける必要はない。
【0123】
なお、ローラ旋回機構30は通常、前輪側及び後輪側のタイヤ6のうち前輪側のタイヤ6を載置するローラ装置100に設けられることが一般的である。
【符号の説明】
【0124】
6,6L,6R タイヤ
2,2L,2R ローラ
7 モータ
8,8L,8R ローラ駆動機構
9 AC電源
27 トルクアーム
28 ロードセル
11 回転用軸受台
12 揺動用軸受台
15,17 ローラ開口部
16,18 ケース開口部
30,30L,30R ローラ旋回機構
50 冷却ファン
50o 冷却風吹出口
52 遮断板
60 車両
71 モータ回転子
72 固定子構造体
100,100L,100R ローラ装置
721 モータ固定子
722 モータケース
C10 円周領域
L7 モータ用配線
【要約】
本開示は、設置スペースの縮小化を図ったシャーシダイナモメータの構造を提供することを目的とする。そして、本開示のシャーシダイナモメータが備えるローラ装置(100)におけるローラ(2)はローラ外枠体(10)内に設けられるモータ(2)を含む。モータ(2)において、回転シャフト(21)は、モータ回転子(71)の回転動作に連動して回転可能にローラ外枠体(10)に取り付けられ、揺動シャフト(21)は、モータ回転子(71)の回転動作に連動することなく固定子構造体(72)に取り付けられる。回転シャフト(21)は回転用軸受台(11)によって支持され、揺動シャフト(22)は揺動用軸受台(12)によって支持される。モータ(7)に冷却風(F2)を供給する冷却ファン(50)がローラ(2)の外部に設けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10