(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/82 20140101AFI20250513BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20250513BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
E05B81/82
B60J5/00 N
H02J7/00 302C
(21)【出願番号】P 2021061622
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中東 政一
(72)【発明者】
【氏名】高田 祐輔
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0052337(US,A1)
【文献】特開2021-035814(JP,A)
【文献】特表2009-513844(JP,A)
【文献】特開2014-151873(JP,A)
【文献】特表2018-505639(JP,A)
【文献】特開2002-037062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05F 15/00-15/79
B60J 5/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの施解錠を行う第一のドアラッチ装置と、
ドアの施解錠を行う第二のドアラッチ装置と、
前記第一のドアラッチ装置と前記第二のドアラッチ装置に給電する主電源部と、
前記第一のドアラッチ装置に設けられた、第一のアクチュエータ部及び前記
第一のアクチュエータ部を制御する第一の制御部と、
前記第二のドアラッチ装置に設けられた、第二のアクチュエータ部及び前記
第二のアクチュエータ部を制御する第二の制御部と、
前記第一のドアラッチ装置に設けられた、主電源からの給電がされない車両故障状態時に前記第一のアクチュエータ部に給電を行う予備電源部と、
前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記予備電源部と前記第二のドアラッチ装置とを接続する補助電源ラインと、
前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記第一の制御部と前記第二のドアラッチ装置に設けられた前記第二の制御部とを接続する制御ラインと、
前記第一のドアラッチ装置は、第一の車両ドアに設置され、
前記第二のドアラッチ装置は、第二の車両ドアに設置された、車両用ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記第一のドアラッチ装置の
前記第一の制御部は、車両故障状態において、前記予備電源部から前記第二のドアラッチ装置に給電を行う、請求項1記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記第一のドアラッチ装置は、前記第一の制御部と前記予備電源部とを接続する予備電源ラインと、前記予備電源ラインと前記補助電源ラインとの間に設けられたスイッチング部を有する、請求項1又は請求項2記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記第二のドアラッチ装置の
前記第二の制御部は、車両故障状態において、操作部から解錠指令を受けた際に、前記第一のドアラッチ装置の
前記第一の制御部に、前記制御ラインを介して、電源供給要請信号を送信する、請求項3記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記電源供給要請信号を受けた前記第一のドアラッチ装置の
前記第一の制御部は、前記スイッチング部を制御し、前記第二のドアラッチ装置に電力を供給する、請求項4記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項6】
前記第一のドアラッチ装置は、第三の車両ドアにも設けられ、前記第三の車両ドアの前記第一のドアラッチ装置は、第三の制御部と、第二の予備電源部と、前記第三の制御部と前記第二の予備電源部を接続する第二の予備電源ラインと、
前記第二の予備電源ラインと前記補助電源ラインとの間に設けられた第二のスイッチング部を有する、請求項1乃至請求項5記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項7】
前記第二のドアラッチ装置は予備電源部を有していない、請求項1乃至請求項6記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項8】
前記第一のドアラッチ装置が設けられる前記第一の車両ドアは、後部席ドアである、請求項1乃至請求項7記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項9】
前記第二のドアラッチ装置が設けられる前記第二の車両ドアは、運転席ドアである、請求項1乃至請求項8記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項10】
前記操作部は、車内外ドアハンドルである、請求項4乃至請求項5記載の車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のドアに電気式のドアラッチ装置を採用することが知られている。従来、電気式のドアラッチ装置においては、車両側に設置された主電源から電力供給用の配線を介してドアに設けられたドアラッチ装置に電力を供給するように構成されていた。
【0003】
一方、車両の事故などによって、主電源からドアラッチ装置への電力が遮断された場合に備えて、スーパーキャパシタを使用した緊急用の予備電源を設けたドアラッチ装置が開発されており、例えば、特表2016-503135号公報にかかるドアラッチ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のドアラッチ装置では、緊急用のスーパーキャパシタを使用した予備電源が各ドアに配置され各ドアのドアラッチにのみ電力を供給する構成となっている。このため、各ドアの予備電源は限られた電力能力しか得ることができなかった。また、全席のドアに予備電源を設けているため、スペース、コスト、又は、重量において不利となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置は、例えば、ドアの施解錠を行う第一のドアラッチ装置と、ドアの施解錠を行う第二のドアラッチ装置と、前記第一のドアラッチ装置と前記第二のドアラッチ装置に給電する主電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられたアクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第二のドアラッチ装置に設けられたアクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられ、主電源からの給電がされない車両故障状態時に前記第一の車両ドアのアクチュエータ部に給電を行う予備電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記予備電源部と前記第二のドアラッチ装置とを接続する補助電源ラインと、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記制御部と前記第二の車両ドアのドアラッチ装置に設けられた前記制御部とを接続する制御ラインと、を有し、前記第一のドアラッチ装置が第一の車両ドアに設置され、前記第二のドアラッチ装置が第二の車両ドアに設置されている。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置は、前記第二のドアラッチ装置の制御部が、車両故障状態において、操作部から解錠指令を受けた際に、前記第一のドアラッチ装置の制御部に、前記制御ラインを介して、電源供給要請信号を送信することにより、前記予備電源部から電力供給を受けるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置によれば、高出力、高効率で電力を必要なドアラッチ装置に供給することが出来る。また、本発明の一実施形態によれば、予備電源を設けるドアを一部のドアに限ることができるため、車両のスペースを有効に活用することが出来、コストが押さえられ、及び/又は、車両重量を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。
【
図2】
図2は、本発明の他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置の動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素は、重複する説明を省略することがある。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。
図1に示す車両用ドアラッチ装置は、例えば、自動車等の車両100に設置される。車両100は、車両100の各部に電力を供給する主電源101及び複数の車両ドア110並びに120を有している。
【0012】
車両ドア110は、車両ドア110の施錠および解除を行うドアラッチ装置111を有している。かかるドアラッチ装置111は、ドアラッチモータ等で構成されたアクチュエータ部112、アクチュエータ部111の駆動を制御する制御部114、アクチュエータ部112及び制御部114を有している。
【0013】
車両ドア120も同様に、車両ドア120の施錠および解除を行うドアラッチ装置121、かかるドアラッチ装置121に配置されたドアラッチモータ等で構成されたアクチュエータ部122、アクチュエータ部121の駆動を制御する制御部124、アクチュエータ部122及び制御部124に電源を供給する予備電源部125を有している。
【0014】
特に制限されないが、各制御部は、マイクロプロセッサ等の演算装置を含んで構成される。
【0015】
また、アクチュエータ部112及び122は、特に制限されないが、ドアポストに固定されたストライカーに対して選択的に回転可能なラチェットと、かかるラチェットの回転を阻止するポールと、そのポールを回転駆動するドアラッチモータを有している。制御部114及び124は、各アクチュエータ部のドアラッチモータを駆動制御するためのドライバ回路を含むことができる。他の実施形態では、かかるドライバ回路をアクチュエータ部の一部として構成することもできる。ここではアクチュエータ部の例としてドアラッチモータを例示したが、アクチュエータ部としては、モータにかぎらず、ソレノイドを用いたアクチュエータ等を用いることもできる。
【0016】
上述のように、本発明の一実施形態によれば、ドアラッチ装置111には予備電源装置が設けられていない一方、ドアラッチ装置121には予備電源装置125が設けられている。以下の説明では、予備電源装置が設けられているドアラッチ装置を第一のドアラッチ装置と呼ぶことがあり、ドアラッチ装置が設けられていないドアラッチ装置を第二のドアラッチ装置と呼ぶことがある。
【0017】
車両100に設けられた主電源101は、電源ライン102を介して、常時各車両ドアのドアラッチ装置111及び121に電力を供給している。
図1においては、制御部114及び124が電源ライン102に接続され、アクチュエータ部112及び122には制御部114及び124を介して電力が供給されるよう構成されている。他の実施形態では、アクチュエータ部112及び122に独立して電源ライン102が接続されるよう構成することもできる。また、特に制限されないが、かかる主電源101は自動車用バッテリとして広く普及している鉛蓄電池などの蓄電池を用いることができる。
【0018】
制御部114は、操作部113が、その操作を検出し、アクチュエータ部112を制御し、車両ドア110の施錠又は解錠を行う。
【0019】
操作部113は、車両100の乗員等がドアの施錠又は解錠を操作するためのドアラッチスイッチであり、車両100の外側に設置されたアウターハンドル及び車両100の内側に配置されたインナーハンドルを含むものである。
【0020】
主電源101は、常時電力を供給することが期待されているが、車両の事故などの緊急時において、主電源101からの電力供給が遮断されたり、電源ライン102の断線などによりその給電が途絶してしまう場合がある。第一のドアラッチ装置に配置された予備電源部125は、主電源が途絶してしまったような車両故障状態の際に第一のドアラッチ装置であるドアラッチ装置121に加え、予備電源部を有しない第二のドアラッチ装置であるドアラッチ装置111にも電力を提供するものである。
【0021】
後述するように、予備電源部125は、例えば、スーパーキャパシタ(ウルトラキャパシタと呼ばれることもある)を用いて構成される。スーパーキャパシタは、電解二重層コンデンサ、疑似コンデンサ、又は、これらを組み合わせたコンデンサを含むものである。かかる予備電源部125を設けることにより、主電源が途絶した際にドアラッチ装置の制御部及び/又はアクチュエータ部に電源を供給し、車両事故状態においても、アクチュエータ部を確実に動作させることができ、車両ドアの施錠動作又は解錠動作を良好に確保することができる。一般に、スーパーキャパシタは、エネルギ密度が高く、高い出力電流特性を有しており、比較的サイズも小さいため、車両ドアに設けられる予備電源部として適しているが、これに限らず、予備電源部はスーパーキャパシタ以外の静電容量素子にて構成することも可能であり、また、ニッケル水素等の二次電池において構成することも可能である。
【0022】
ここで、本発明の一実施形態にかかる車両用ドアラッチ装置では、第一のドアラッチ装置121に設けられた予備電源部125と第二のドアラッチ装置111とを接続する補助電源ライン104が設けられている。さらに、第一のドアラッチ装置121に設けられた制御部124と第二のドアラッチ装置111に設けられた制御部114とが制御ライン103により接続されている。
【0023】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置は、ドアの施解錠を行う第一のドアラッチ装置と、ドアの施解錠を行う第二のドアラッチ装置と、前記第一のドアラッチ装置と前記第二のドアラッチ装置に給電する主電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられたアクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第二のドアラッチ装置に設けられたアクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられた、主電源からの給電がされない車両故障状態時に前記第一の車両ドアのアクチュエータ部に給電を行う予備電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記予備電源部と前記第二のドアラッチ装置とを接続する補助電源ライン104を備えることにより、一方のドアラッチ装置に予備電源装置を設けるだけで複数のドアラッチ装置に予備電源を供給することが可能となる。車両ドアの一部のドアラッチ装置にのみ予備電源部を設けるため、予備電源装置の数を少なくすることができ、車両全体の重量を軽減することも可能となる。車両重量の軽減は、特に電気自動車の場合などに主電源部の消耗を抑制することが期待される。
【0024】
また、
図1の車両ドアラッチ装置によれば、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記制御部と前記第二の車両ドアのドアラッチ装置に設けられた前記制御部とが制御ライン103により相互に接続されている。特に制限されないが、かかる接続には、多重通信技術を用いた車内通信網を用いることができる。車内通信網の代表的なものには、シリアル通信プロトコルであるCAN(Controller Area Network)が存在する。このように、この実施形態によれば、前記制御部がそれぞれ車内通信網で接続されているため、相互に通信が可能であり、車両故障状態時に、前記一つの車両ドアの前記操作部から解錠指示を受けた際、前記補助電源ラインを介して、前記他の車両ドアの予備電源部から前記一つの車両ドアのドアラッチ装置に給電するよう、制御部どうしで通信・制御することが可能となる。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。
図1においては、車両100が車両ドアを二つ有している場合、あるいは、少なくとも二つの車両ドアがそれぞれドアラッチ装置を有し、かつ、二つのドアラッチ装置が補助電源ライン及び制御ラインにより接続されている。
【0026】
図2に示された実施形態おいては、車両200は、主電源201及び四つの車両ドア210、220、230並びに240を有している。それぞれの車両ドアは、ドアラッチ装置211,221,231並びに241、及び、操作部213,223,233並びに243を有している。それぞれのドアラッチ装置は、アクチュエータ部212,222,232並びに242、及び、制御部214,224,234並びに244を有している。
【0027】
本実施形態においては、予備電源部を有する第一のドアラッチ装置を後席の二つの車両ドア230及び240に設けている。また、車両前席の二つの車両ドア210及び220には、予備電源部を有さない第二のドアラッチ装置が設けられている。
【0028】
各車両ドアの制御部214、224,234及び244はそれぞれ制御ライン203で相互に接続されている。車両ドア230の予備電源部235は、補助電源ライン204を介して、ドアラッチ装置211及び221に接続され、車両ドア240の予備電源部245は、補助電源ライン205を介して、ドアラッチ装置211及び221に接続されている。
【0029】
予備電源部はその性質上、一定の電力を蓄積・保持するものであるため、限られた電力供給能力しか有していない。本実施形態によれば、各第二のドアラッチ装置は、車両故障時に二つの予備電源部から電力の供給を受けることが可能となる。一方で、車両ドアの一部のドアラッチ装置にのみ予備電源部を設けるため、予備電源の数を少なくすることができ、車両全体の重量を軽減することも可能となる。上述のとおり、車両重量の軽減は、特に電気自動車の場合などに主電源部の消耗を抑制することが期待される。
【0030】
本実施形態においては、後席に第一のドアラッチ装置を設けている。後席は比較的事故による破損の可能性が低いため、これにより、事故時に予備電源が使用不能となる可能性を低減することができる。
【0031】
一方、これに限らず、前席に第一のドアラッチ装置を設けることも可能である。後席のいずれか又は後席の二席に加え前席の運転席に予備電源を設ける、あるいは後席のいずれか又は後席の二席に加え前席の助手席側に予備電源を設けるよう構成することも可能である。
【0032】
また、第一のドアラッチ装置は必ずしも二つの席に設ける必要は無く、例えば、後席の一つのみに設け、他の、例えば、三席の車両ドアには第二のドアラッチ装置を設ける構成とすることもできる。この場合、第一のドアラッチ装置を設ける数が減ることにより、車両の重量をより低減させることができる。
【0033】
また、
図2においては、補助電源ラインを一つの第一のドアラッチ装置230から電力を供給する補助電源ライン204と、他の第一のドアラッチ装置240から電力を供給する補助電源ライン205とを独立した電源ラインとしている。これにより、一方の補助電源ラインに短絡・切断などの異常が生じた場合であっても、他の補助電源ラインから電力を供給することが可能となる。一方、これに限らず、補助電源ラインを複数の予備電源部に共通に接続される構成とすることも可能である。この場合、補助電源ラインの本数を削減するこができ、車両の配線構造を簡素化することができる。
【0034】
なお、
図2においては、車両200が四つのドアを用いる場合を説明したが、これに限定されるものではなく、車両ドアの数は二ドアのもの、若しくは、三つ、または五つ以上でも同様の構成とすることが可能である。
図1又は
図2に記載された車両ドアには、車両に対し回動可能に設けられた通常のタイプのドアのほか、スライド式のドアや、両開き式のドア、ガルウイング式のドアなど、いかなる開閉方式のドアであっても良く、ドアの方式、配置された場所、数などに応じて、第一のドアラッチ装置又は第二にドアラッチ装置の配置を適宜変更することが可能である。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置を説明するための図である。本図では、車両ドアを四つ有している場合の例を示しているが、
図2の場合と同様に、これに限定されるものではなく、車両ドアの数は三つ、または五つ以上でも同様の構成とすることが可能である。
【0036】
図3に示された実施形態は、
図1又は
図2を用いて説明した実施形態のより具体的な形態を示したものである。
図1又は
図2と同様の部分についてはその説明を省略する。
【0037】
図3に示す車両用ドアラッチ装置は、車両300に設置される。車両300は、主電源301及び複数の車両ドア310、320、330及び340を有している。
【0038】
車両ドア310、320、330及び340は、それぞれ、車両ドアの施錠および解除を行うドアラッチ装置311、321,331及び341を有している。かかるドアラッチ装置は、それぞれ、ドアラッチモータ等で構成されたアクチュエータ部312,322,332並びに342、及び、アクチュエータ部の駆動を制御する制御部314,324,334並びに344を有している。なお、アクチュエータ部の例としてドアラッチモータを例示したが、これに限られないことは上述のとおりである。
【0039】
ここで、本実施形態では、後席の車両ドア330及び340に予備電源335及び345を有する第一のドアラッチ装置331及び341を設けている。
【0040】
車両300に設けられた主電源301は、電源ライン302を介して、常時各車両ドアのドアラッチ装置に電力を供給している。かかる主電源301は自動車用バッテリとして広く普及している12Vの鉛蓄電を用いることができることも上述のとおりである。
【0041】
各ドアラッチ装置の制御部は、主電源301から電力を供給されるとともに、各操作部の操作状況に応じて、各アクチュエータ部を操作し、車両ドアの施錠又は解錠を行う。
【0042】
特に制限されないが、各制御部は、マイクロプロセッサ等の演算装置を含んで構成されている。
また、上述のとおり、各アクチュエータ部は、ドアポストに固定されたストライカーに対して選択的に回転可能なラチェットとかかるラチェットを回転駆動するドアラッチモータを有している。各制御部は、各アクチュエータ部のドアラッチモータを駆動制御するためのドライバ回路を含むことができ、他の実施形態では、かかるドライバ回路をアクチュエータ部の一部として構成することもできる。
【0043】
主電源301は、電源ライン302を介して、常時各車両ドアの各ラッチ装置へ電力を供給している。
図3においては、各制御部が電源ライン302に接続され、各アクチュエータ部には各制御部を介して電力が供給されるよう構成されているが、他の実施形態では、各アクチュエータ部が独立して電源ラインに接続されるよう構成することもできる。
【0044】
各制御部は、対応する操作部が操作されると、その操作を検出し、対応するアクチュエータ部を制御し車両ドアの施錠又は解錠を行う。
各操作部は、車両300の乗員等がドアの施錠又は解錠を操作するためのドアラッチスイッチであり、車両300の外側に設置されたアウターハンドル及び車両300の内側に配置されたインナーハンドルを含むものである。
【0045】
各予備電源部335及び345は、それぞれ、上述したスーパーキャパシタが直列に接続して構成されている。特に制限されないが、かかるキャパシタの最大使用電圧は2.5V程度であり、5個直列接続することにより全体として12.5Vの電圧を生じることができる。
【0046】
また、別の実施形態によれば、各コンデンサと並列にツェナーダイオード等の定電圧素子(図示せず)を接続することにより、各コンデンサに蓄積される電圧を一定に保つ等価回路を設けることも可能である。
【0047】
また、別の実施形態によれば、キャパシタの接続数を減らして、例えば二つとし、各予備電源部の電圧を昇圧するための昇圧コンバータ(図示せず)を、各予備電源部内又は各制御部内に設けることも可能である。また、予備電源部としては、スーパーキャパシタ以外の静電容量素子やニッケル水素等の二次電池を用いることもできる。特に限定されないが、ニッケル水素電池の公称電圧は1.2V程度であるため、ニッケル水素電池により予備電源部を構成する際には、同電池を10程度直列に接続して設けるか、直列に接続される本数を減らし上述の昇圧コンバータを設けることもできる。
【0048】
かかる予備電源部の一端は接地電位に接続され、他端は予備電源ライン337又は347を介して各制御部334又は344にそれぞれ接続されている。すなわち、各予備電源部は、各制御部314,324,334及び344を介して電源ライン302に接続され、主電源301から電力が供給される正常状態において図示しない各制御部314,324,334及び344に設けられた充電回路により充電が行われるよう構成される。
【0049】
本実施形態においては、それぞれの第一のドアラッチ装置はさらにスイッチング部336及び346を有している。スイッチング部336は予備電源ライン337と補助電源ライン304との間に配置され、制御部334からスイッチング制御ライン338を介してその開閉が制御される。スイッチング部346は予備電源ライン347と補助電源ライン305との間に配置され、制御部344からスイッチング制御ライン348を介してその開閉が制御される。なお、かかるスイッチング部は、例えば、リレー素子、半導体リレー、パワートランジスタ、FETなどにより構成することができる。一例によれば、スイッチング部は、二つのMOSFETをバック・トゥ・バック接続(ソース・コモン接続)することにより構成することができる。
【0050】
以下、
図4も参照しながら、本実施形態におけるドアラッチ装置の制御及び動作を説明する。第一のドアラッチ装置の制御部334及び344は、主電源301と電源ライン302を介して接続されており、主電源部の電圧を常時或いは定期的にモニタするように構成されている。これにより、各制御部は、主電源から電力が供給されている正常状態か、主電源からの電力供給が遮断された車両故障状態(又は、主電源故障状態)かを判断する。なお、制御部は、主電源からの電力が完全に途絶した場合に限らず、主電源の電圧が一定程度低下した状態を車両故障状態として検出するように構成することも可能である。
【0051】
制御部により車両故障状態(主電源故障状態)が検出される(ステップ401)と、少なくとも、第一のドアラッチ装置においては、自動的にそれぞれの予備電源部から制御部及びアクチュエータ部に電力が供給されるようになる。なお、説明の便宜上、予備電源部から電源供給がなされる状態をバックアップモードと呼ぶことがある。
【0052】
図4のステップ431及び441に記載されているように、車両故障状態(主電源故障状態)は、
図3の各車両ドア331及び341の各制御部334及び344によりそれぞれ検出され、各制御部がバックアップモードに入る。
【0053】
次に、第一のドアラッチ装置においては、各制御部が各予備電源ラインの状態をモニタし、電源供給か可能な状態か否かを判別する(ステップ432及び442)。予備電源ラインに短絡又は断線などがなく正常と認められ、電力供給が可能と判断された場合には、ドアラッチ装置は供給ラインモードとなり、対応するスイッチング部を断続的にオン状態とすることにより、対応する補助電源ラインに断続的に電力を供給する(ステップ433及び443)。
【0054】
これは、第二のドアラッチ装置には予備電源部が存在しないため、主電源故障の際に第二のドアラッチ装置の各制御部を駆動するための電力が必要となるためである。この状態ではアクチュエータ部の駆動は必要とされないため、断続的な電力供給により予備電源装置の電力消耗を防ぎつつ、第二のドアラッチ装置の制御部の動作を保証することができる。
【0055】
なお、他の実施形態としては、当初から連続的な電力供給を行うように構成することも可能である。その場合、予備電源装置の電力消費は大きくなる可能性があるが、第二のドアラッチ装置の制御部に安定した電力を供給することができ、第二のドアラッチ装置をより確実に動作させることができる。
【0056】
また、予備電源ラインに短絡又は断線などの異常が認められた場合には、一連の処理は終了される(ステップ435又は445)
ここで、ステップ411に記載されたように、車両ドアの操作部が操作されると、バックアップモードにより予備電源部から給電されている図示しないセンサ部がその操作を検出し、そのセンサ部が操作を検出したことを示す操作検出信号を送出し、制御部はその操作検出信号により操作部の操作を検出する。ここでは、第二のドアラッチ装置である車両ドア311の操作部313が操作され、図示しないセンサ部からの操作検出信号を制御部314が検出し、制御ライン304を介して第一のドアラッチ装置331及び341の制御部334及び344に電源供給要請信号を送信する(ステップ412)。
【0057】
電源供給要請信号を受けた第一のドアラッチ装置の制御部334及び344は、今まで行っていた断続的な電力の供給を、スイッチング部336及び346を連続的に導通状態とすることにより、連続的な電力の供給に切り替える(ステップ434及び444)。
【0058】
第二のドアラッチ装置311では、第一のドアラッチ装置331及び341から供給された電力を用いて、制御部314がアクチュエータ部312を駆動し、一連の処理を終える。
【0059】
なお、第一のドアラッチ装置331及び341においては、ステップ434及び444において断続的な電力の供給に切り替える前に、自身の予備電源部の電力量を判定し、他のドアラッチ装置に電力の供給が可能か判断するステップを設けることも可能である。電力量の判定は、例えば、それぞれの予備電源部の電圧を測定し、測定した電圧が予め定められた電圧値を有するか否かで判定することができる。
【0060】
また、第二のドアラッチ装置311の制御部314では、アクチュエータ部312の駆動が終了したことを検出し、第一のドアラッチ装置の各制御部に駆動終了を通知するように制御することもできる。この場合、第一のドアラッチ装置の制御部は、駆動終了通知を受け、予備電源部からの電力の供給を断続的なものに切り替えることができる。
【0061】
なお、上記の例では、第二のドアラッチ装置である車両ドア311においてユーザの操作があった場合を説明したが、第二のドアラッチ装置である車両ドア321においてユーザの操作があった場合も同様の動作となる。
【0062】
なお、各制御部を相互に接続する制御ライン303に多重通信技術を用いた車内通信網を用いることができることは上述のとおりである。
【0063】
図5は、本発明の実施形態の動作を説明する図であり、
図3及び
図4に基づき説明した動作を時系列で示したものである。
【0064】
時刻t1において、
図4のステップ433に示された断続的な電力の供給が開始されると、スイッチング部は断続的に導通状態(オン状態)となる(時刻t1及びt2)。これに応じて、第二のドアラッチ装置(フロントドア)への電力供給も断続的行われる(時刻t1及びt2)。
【0065】
一方、車両ドア311においてユーザの操作が検出されると(ステップ411、時刻t2)、それに基づき、電源供給要請信号が出力され、スイッチング部が連続的に導通状態(オン状態)に制御される(ステップ434及び444、時刻t3)。
【0066】
続いて、第一のドアラッチ装置からの電力供給に基づき、フロントドアのモータが時刻t3に少し遅れて駆動される。
【0067】
その後、第二のドアラッチ装置からのオプショナルな駆動終了通知(時刻t5経過後)を受けて、スイッチングの連続的な導通状態が終了する(時刻t6)。
図2に基づき説明した実施形態と同じく、本実施形態においても、各第二のドアラッチ装置は、車両故障時に二つの予備電源部から電力の供給を受けることが可能となる。一方で、車両ドアの一部のドアラッチ装置にのみ予備電源部を設けるため、予備電源の数を少なくすることができ、車両全体の重量を軽減することも可能となる。
【0068】
図2に基づき説明した実施形態と同じく、本実施形態においても、後席に第一のドアラッチ装置を設けている。これにより、後席は比較的事故による破損の可能性が低いため、事故時に予備電源が使用不能となる可能性を低減することができる。これに限らず、前席に第一のドアラッチ装置を設けることも可能である。後席及び前席の運転席に予備電源を設ける、あるいは後席及び前席の助手席側に予備電源を設けるよう構成することも可能である。
【0069】
また、本実施形態では、第一のドアラッチ装置からの給電を、第二のドアラッチ装置からの電源要請信号に応じて行うようにしているため、各予備電源部の無駄な電力消費を抑制することができる。
【0070】
また、各制御部は、電源要請信号に応じて自身の予備電源部に十分な予備電力があるか否かを判定して対応するスイッチング部を切り替えるよう構成できるため、不適切な電力消費を抑制することもできる。
【0071】
本実施形態では、第一のドアラッチ装置の予備電源部からの給電は、複数の予備電源部から略同時に給電することを想定している(ステップ434及び444)。しかしながら、各制御部は各スイッチング部の制御を順番に切り替えることにより、順次予備電源が供給されるように構成することも可能である。この場合、全ての予備電源を一気に消耗させてしまうことを防止することができる、車両の安全性を向上することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、主電源故障を検出することにより、バックアップモードに入るが、これに限らず、図示しない衝突センサからの信号を各制御部が受けることにより、衝突センサからの信号により、又は、衝突センサからの信号と主電源の状態との組合せによりバックアップモードに入るよう制御することも可能である。
【0073】
また、第一のドアラッチ装置は必ずしも二つの席に設ける必要は無く、例えば、後席の一つのみに設け、他の、例えば、三席の車両ドアには第二のドアラッチ装置を設ける構成とすることもできる。第一のドアラッチ装置を設ける数が減ることにより、車両の重量をより低減させることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、二つの独立した補助電源ライン304及び305を用いているため、一方の補助電源ラインに短絡・切断などの異常が生じた場合であっても、他の補助電源ラインから電力を供給することが可能となる。一方、これに限らず、補助電源ラインは複数の予備電源部に共通に接続される構成とすることも可能である。
【0075】
以上のとおり、本発明にかかる実施形態を説明した。これに加え、本発明の実施形態は以下の形態をも含むものである。
【0076】
(1)本発明の実施形態による車両用ドアラッチ装置は、ドアの施解錠を行う第一のドアラッチ装置と、ドアの施解錠を行う第二のドアラッチ装置と、前記第一のドアラッチ装置と前記第二のドアラッチ装置に給電する主電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられたアクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第二のドアラッチ装置に設けられた、アクチュエータ部及び前記アクチュエータ部を制御する制御部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられ車両故障状態時又は電源故障状態時に前記第一の車両ドアのアクチュエータ部に給電を行う予備電源部と、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記予備電源部と前記第二のラッチ装置とを接続する補助電源ラインと、前記第一のドアラッチ装置に設けられた前記制御部と前記第二の車両ドアのラッチ装置に設けられた前記制御部とを接続する制御ラインとを有し、前記第一のドアラッチ装置は第一の車両ドアに設置され、前記第二のドアラッチ装置は第二の車両ドアに設置される。
【0077】
(2)前記車両用ドアラッチ装置は、第一のドアラッチ装置の制御部が、車両故障状態又は電源故障状態において、前記予備電源部から前記第二のドアラッチ装置に電力を供給する。
【0078】
(3)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第一のドアラッチ装置が、制御部と予備電源部とを接続する予備電源ラインを有し、前記予備電源ラインと前記補助電源ラインとの間に設けられたスイッチング部を有する。
【0079】
(4)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第二のドアラッチ装置の制御部が、車両故障状態において、操作部から解錠指令を受けた際に、前記第一のドアラッチ装置の制御部に、前記制御ラインを介して、電力の供給を要請する信号を送信する。
【0080】
(5)前記車両用ドアラッチ装置は、前記信号を受けた前記第一のドアラッチ装置の制御部が、前記スイッチング部を制御し、前記第二のドアラッチ装置に電力を供給する。
【0081】
(6)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第一のドアラッチ装置が、第三の車両ドアにも設けられ、前記第三の車両ドアの前記第一のドアラッチ装置は、制御部と予備電源部とを接続する予備電源ラインと、前記予備電源ラインと前記補助電源ラインとの間に設けられたスイッチング部を有する。
【0082】
(7)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第二のドアラッチ装置が予備電源部を有していない、請求項1乃至請求項6記載の車両用ドアラッチ装置。
【0083】
(8)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第一のドアラッチ装置が設けられる前記第一の車両ドアが、後部席ドアである。
【0084】
(9)前記車両用ドアラッチ装置は、前記第二のドアラッチ装置が設けられる前記第二の車両ドアが、運転席ドアである。
【0085】
(10)前記車両用ドアラッチ装置は、前記操作部が、車内外ドアハンドルである。
【符号の説明】
【0086】
100、200、300 車両
101、201、301 主電源
102、202、302 電源ライン
103、203、303 制御ライン
104、204、205、304、305 補助電源ライン
110、120、210、220、230、240、310、320、330、340 車両ドア
111、121、211、221、231、241、311、321、331、341 ドアラッチ装置
112、122、212、222、232、242、312、322、332、342 アクチュエータ部
113、123、213、223、233、243、313、323、333、343 操作部
114、124、214、224、234、244、314、324、334,344 制御部
125、235、245、335、345 予備電源部
336,346 スイッチング部
337、347 予備電源ライン
338、348 スイッチング部制御ライン