(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】茶テイストアルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20250513BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
C12G3/04
A23F3/16
(21)【出願番号】P 2021077387
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】森 暁平
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233354(JP,A)
【文献】特開2012-147680(JP,A)
【文献】日本醸造協会誌,2013年,第108巻第3号,p.132-140
【文献】「世界のウェブアーカイブ|飲みやすい麦焼酎「かのか」の美味しい飲み方おすすめ8選」、[online],2020年,[令和6年11月14日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20201023081045/https://xn--n8jm1b365zob8b1jwa.com/焼酎/かのかの美味しい飲み方/>
【文献】日本醸造協会誌,2013年,第108巻第2号,p.113-121
【文献】“芋焼酎の緑茶割がおいしい”、[online],2019年,[令和6年11月14日検索]、インターネット<URL: https://ascii.jp/limit/group/ida/elem/000/001/824/1824672/>
【文献】日本醸造協会誌,2014年,第109巻第1号,p.49-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉抽出液と、
連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類と、
単式蒸留焼酎と、
を含み、
カプロン酸エチル濃度が、5μg/l以上
100μg/l以下である、茶テイストアルコール飲料
であって、
前記単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度が、10mg/l以上である、飲料。
【請求項2】
茶葉抽出液と、
連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類と、
単式蒸留焼酎と、
を含み、
カプロン酸エチル濃度が、5μg/l以上である、茶テイストアルコール飲料であって、
前記単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度が、10mg/l以上であり、
前記茶テイストアルコール飲料に含まれるエタノールのうち、前記酒類に由来するエタノール濃度がXvol%であり、
前記
飲料のエタノール濃度がYvol%であり、
前記酒類のカプロン酸エチル濃度がZμg/lであり、
以下の関係式を満たす、
(式1):XZ/Y<5μg/l
飲料。
【請求項3】
カプロン酸エチル濃度が、100μg/l以下である、請求項
2に記載の飲料。
【請求項4】
酢酸イソアミル濃度が、2.0μg/l以上である、請求項1~
3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
茶葉抽出液と、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類と
、単式蒸留焼酎とを混合し、茶テイストアルコール飲料を調製する工程と、
前記茶テイストアルコール飲料のカプロン酸エチル濃度を5μg/l以上
100μg/l以下に調整する工程とを含む、茶テイストアルコール飲料の製造方法
であって、
前記単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度が、10mg/l以上である、製造方法。
【請求項6】
茶葉抽出液と、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類と、単式蒸留焼酎とを混合し、茶テイストアルコール飲料を調製する工程と、
前記茶テイストアルコール飲料のカプロン酸エチル濃度を5μg/l以上に調整する工程とを含む、茶テイストアルコール飲料の製造方法であって、
前記単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度が、10mg/l以上であり、
前記茶テイストアルコール飲料に含まれるエタノールのうち、前記酒類に由来するエタノール濃度がXvol%であり、
前記飲料のエタノール濃度がYvol%であり、
前記酒類のカプロン酸エチル濃度がZμg/lであり、
以下の関係式を満たす、
(式1):XZ/Y<5μg/l
製造方法。
【請求項7】
前記茶テイストアルコール飲料のカプロン酸エチル濃度を5μg/l以上に調整する工程において、カプロン酸エチル濃度を100μg/l以下に調整する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記カプロン酸エチル濃度を5μg/l以上に調整する工程は、前記茶テイストアルコール飲料に、単式蒸留焼酎を含有させる工程を含む、請求項
5~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶テイストアルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶、ウーロン茶、及び紅茶等の茶葉の抽出液(すなわち、茶)を配合したアルコール飲料(以下、茶テイストアルコール飲料という)が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。茶テイストアルコール飲料は、フルーツテイストのアルコール飲料に比べ、甘くなくて食事に合う、カロリー・糖類が少なく健康的である、といった理由から根強い人気がある。
このような茶テイストアルコール飲料は、通常、アルコール原料として、茶の風味を妨げないように、風味が比較的弱い原料(例えば、連続式蒸留焼酎や原料用アルコール)を使用して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-184633号公報
【文献】特開2012-147775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、茶テイストアルコール飲料は、甘くないことから、アルコール刺激感が感じられやすく、茶テイストアルコール飲料が敬遠される一因にもなっている。
そこで、本発明の課題は、アルコール刺激感が抑制された茶テイストアルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、下記の手段により、上記課題が解決できることを見出した。
[1]茶葉抽出液と、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類とを含み、カプロン酸エチル濃度が、5μg/l以上である、茶テイストアルコール飲料。
[2]前記茶テイストアルコール飲料に含まれるエタノールのうち、前記酒類に由来するエタノール濃度がXvol%であり、前記酒類のエタノール濃度がYvol%であり、カプロン酸エチル濃度がZμg/lであり、
以下の関係式を満たす、[1]に記載の飲料。
(式1):XZ/Y<5μg/l、
[3]さらに単式蒸留焼酎を含む、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]前記単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度が、10mg/l以上である、[3]に記載の飲料。
[5]カプロン酸エチル濃度が、100μg/l以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]酢酸イソアミル濃度が、2.0μg/l以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]茶葉抽出液と、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類とを混合し、茶テイストアルコール飲料を調製する工程と、前記茶テイストアルコール飲料のカプロン酸エチル濃度を10μg/l以上に調整する工程とを含む、茶テイストアルコール飲料の製造方法。
[8]前記カプロン酸エチル濃度を10μg/l以上に調整する工程は、前記茶テイストアルコール飲料に、単式蒸留焼酎を含有させる工程を含む、[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルコール刺激感が抑制された茶テイストアルコール飲料、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料は、茶葉抽出液と、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類(以下、単に「酒類」と記載する場合がある)とを含み、カプロン酸エチル濃度が、5μg/l以上である。本実施形態によれば、カプロン酸エチルが5μg/l以上の濃度で含まれていることにより、茶テイストアルコール飲料におけるアルコール刺激感を抑制することができる。
【0008】
以下に、本実施形態に係る飲料について詳述する。
【0009】
本明細書において、「茶葉抽出液」とは、茶葉の成分を水(湯)により抽出した液であり、いわゆる「茶」である。
茶葉抽出液としては、チャノキ(Camellia sinensis)を用いたものが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。茶葉抽出液に使用される茶葉としては、処理方法(加熱処理の有無、発酵の有無等)に限らず、いずれのものも使用可能である。好ましい茶葉抽出液としては、緑茶(抹茶、煎茶、ほうじ茶等)、烏龍茶、及び紅茶等を挙げることができ、好ましくは緑茶である。
抽出時の水の温度は、特に限定されないが、例えば50~90℃、好ましくは50~80℃である。
抽出時に使用される茶葉の量は、水100mlに対して、例えば0.5~5g、好ましくは茶葉1.0~4.0gである。
茶テイストアルコール飲料中の茶葉抽出液の含有量は、例えば500ml/L以上、600ml/L以上、700ml/L以上、または750ml/L以上とすることができ、あるいは、950ml/L以下、930ml/L以下、910ml/L以下、又は900ml/L以下とすることができる。
茶テイストアルコール飲料中における茶葉抽出液由来のタンニン量は、例えば10mg/100ml以上、20mg/100ml以上、又は40mg/100ml以上とすることができ、例えば100mg/100ml以下、90mg/100ml以下、又は80mg/100ml以下とすることができる。
【0010】
「酒類」としては、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類であればよく、特に限定されない。「連続式蒸留焼酎」、「スピリッツ」及び「原料用アルコール」の定義は、本件出願日において有効な日本国の酒税法及びこれに関連する法令の規定に従う。これらの酒類は、比較的風味の少ない酒類であり、茶葉抽出液の風味を妨げ難いことから好ましい。
【0011】
茶テイストアルコール飲料の全エタノール濃度(vol%)のうち、「酒類」由来のエタノール濃度(vol%)が占める割合は、例えば70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上とすることができる。このような範囲であれば、茶の風味がしっかりと感じられる茶テイストアルコール飲料が得られる。
【0012】
カプロン酸エチルは、吟醸香を構成する成分である。本実施形態においては、カプロン酸エチルを5μg/l以上の濃度で含有させることにより、アルコール刺激感を抑制することができる。
カプロン酸エチルの濃度は、5μg/l以上であればよく、特に限定されない。カプロン酸エチルの濃度を増やすと、アルコール刺激感がより低減される。また、カプロン酸エチルの濃度を増やすと、茶の風味が感じられにくくなり、すっきりとした味わいになる。カプロン酸エチルの濃度は、例えば10μg/l以上とすることができ、200μg/l以下、75μg/l以下、又は30μg/l以下とすることができる。
【0013】
「カプロン酸エチル」は、単一成分として添加されてもよいし、カプロン酸エチルを含有する飲食可能な原料を使用することで、茶テイストアルコール飲料中に含有させてもよい。
例えば、上記の「酒類」とは別に、カプロン酸エチルを含有する単式蒸留焼酎を原料として用いることにより、カプロン酸エチルを含有する茶テイストアルコール飲料を得ることができる。この場合において、原料として使用する単式蒸留焼酎のカプロン酸エチル濃度は、エタノール濃度25vol%換算で、例えば10mg/l以上、13mg/l以上、又は15mg/l以上とすることができ、例えば30mg/l以下、27mg/l以下、又は25mg/l以下とすることができる。尚、「エタノール25vol%換算」とは、エタノール濃度が25vol%になるように単式蒸留焼酎の濃度を調整した場合における成分濃度を意味する。
カプロン酸エチルを含有する単式蒸留焼酎としては、例えば、麦焼酎等が挙げられる。
【0014】
茶テイストアルコール飲料のアルコール度数(エタノール濃度)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5vol%以上、1.0vol%以上、又は2.0vol%以上とすることができ、例えば15.0vol%以下、10.0vol%以下、又は8.0vol%以下とすることができる。
【0015】
一の態様において、茶テイストアルコール飲料に含まれるカプロン酸エチルのほとんどが、上記の「酒類」とは異なる原料に由来する。
具体的には、茶テイストアルコール飲料に含まれるエタノールのうちの「酒類」に由来するエタノール濃度(Xvol%)と、酒類のエタノール濃度(Yvol%)と、酒類のカプロン酸エチル濃度(Zμg/l)とが、下記式1の関係を満たすことが好ましい。
(式1):XZ/Y<5μg/l
【0016】
一の態様において、茶テイストアルコール飲料中の上記の「酒類」に由来するカプロン酸エチルの濃度を、例えば5μg/l以下、3μg/l以下、又は1.5μg/l以下とすることができる。
【0017】
茶テイストアルコール飲料中に上記「酒類」及び「単式蒸留焼酎」を含ませる場合は、原料としてあらかじめ上記「酒類」と「単式蒸留焼酎」を混和した混和酒を用いてもよい。「連続式蒸留焼酎」と「単式蒸留焼酎」を混和した混和酒を原料として用いた場合、原材料として「連続式・単式蒸留焼酎混和」、「焼酎甲類・乙類混和」、「ホワイトリカー(1)(2)混和」などのように表示されるが、「単式蒸留焼酎」の割合が純アルコール数量で5%未満となる場合、単に「連続式蒸留焼酎」、「焼酎甲類」、「ホワイトリカー(1)」などのように表示される。
【0018】
一の態様において、茶テイストアルコール飲料は、更に、酢酸イソアミルを含有することが好ましい。酢酸イソアミルは、カプロン酸エチルと同様に、吟醸香を構成する成分である。酢酸イソアミルを含有させることにより、アルコール刺激感をより抑制することができる。
茶テイストアルコール飲料における酢酸イソアミル濃度は、例えば2.0μg/l以上、2.5μg/l以上、又は3.0μg/l以上とすることができ、例えば15.0μg/l以下、10.0μg/l以下、又は8.0μg/l以下とすることができる。
【0019】
酢酸イソアミルは、カプロン酸エチルと同様に、単一成分として添加されてもよいし、酢酸イソアミルを含有する飲食可能な原料を使用することで、茶テイストアルコール飲料中に含有させてもよい。例えば、原料として、上記の「酒類」とは別に、酢酸イソアミルを含有する単式蒸留焼酎を用いることにより、酢酸イソアミルを含有する茶テイストアルコール飲料を得ることができる。この場合に使用される単式蒸留焼酎の酢酸イソアミル濃度は、エタノール濃度25vol%換算で、例えば1.0mg/l以上、2.0mg/l以上、又は3.0mg/l以上とすることができ、例えば20.0mg/l以下、15.0mg/l以下、又は10.0mg/l以下とすることができる。
【0020】
本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料には、上記の成分の他にも、必要に応じて、他の成分が配合されていてもよい。例えば、他の成分として、香料、酸味料、甘味料、及び色素等が挙げられる。
但し、好ましくは、茶テイストアルコール飲料は、甘さが抑制された飲料である。そのため、甘味料が使用される場合であっても、甘味度が3.0/100ml以下であることが好ましい。甘味度は、より好ましくは1.0/100ml以下、さらに好ましくは0.5/100ml以下、さらに好ましくは0.1/100ml以下、最も好ましくはゼロ(甘味料不使用)である。
なお、茶テイストアルコール飲料の「甘味度」は、飲料中に含まれる「各甘味料の含有量(g/100ml)」に、「砂糖を1.00とした場合の各甘味料の甘味度」を乗じた値として求められる。「砂糖を1.00とした場合の各甘味料の甘味度」とは、砂糖の甘さを1.00とした場合の甘味料の甘味の強さを官能検査により評価したものである。甘味料の甘味度としては、精糖工業会発行「甘味料の総覧」(1990年5月発行)及び株式会社光琳発行「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(2003年5月発行)等に記載されている値を用いることができる。
【0021】
また、茶テイストアルコール飲料は、糖類を含んでいないことが好ましい。
【0022】
茶テイストアルコール飲料は、炭酸飲料であってもよく、非炭酸飲料であってもよい。好ましくは、茶テイストアルコール飲料は、非炭酸飲料である。
【0023】
本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、茶葉抽出液と、上述の「酒類」と、必要に応じて他の原料とを混合し、カプロン酸エチル濃度を5μg/l以上に調整することにより、茶テイストアルコール飲料を得ることができる。既述のように、カプロン酸エチルについては、単一成分を添加することにより飲料中に含有させてもよいし、カプロン酸エチルを含む単式蒸留焼酎を使用することにより、飲料中に含有させてもよい。得られた飲料を容器に充填して密封することにより、茶テイストアルコール飲料を製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明をより具体的に説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0025】
下記の方法に従って、茶葉抽出液、連続式蒸留焼酎、及び単式蒸留焼酎を調製した。
(茶葉抽出液の調製)
市販の茶葉(煎茶)を、80℃のお湯で抽出(お湯100mlあたり茶葉2.5g)し、常温まで冷却し、茶葉抽出液を得た。
【0026】
(連続式蒸留焼酎の調製)
原料用アルコール(エタノール濃度:95%)を水で希釈して、エタノール濃度を35.0vol%に調製したものを連続式蒸留焼酎とした。
【0027】
連続式蒸留焼酎におけるカプロン酸エチル濃度及び酢酸イソアミル濃度を測定したところ、いずれも検出限界以下(0.01mg/l以下)であった。尚、カプロン酸エチル濃度及び酢酸イソアミル濃度は、以下の方法により測定した。
【0028】
(カプロン酸エチルの測定方法)
カプロン酸エチル濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法を用いて測定した。対象の飲料を氷冷し、脱気した試料を、HPLC装置に注入し、処理した。測定条件は次の通りである。
HPLC装置=Agilent Technologies社製「LC1200」シリーズ
UV検出器=検出波長340nm
カラム=ジーエルサイエンス株式会社製「Inertsil ODS-4」
移動相=A:0.2%トリフルオロ酢酸水溶液、B:0.2%トリフルオロ酢酸をメタノールに溶解した水溶液
流量=0.3mL/minでグラジエント
カラム温度=40℃
試料注入量=40μL
【0029】
(酢酸イソアミルの測定方法)
酢酸イソアミル濃度は、FID付ヘッドスペースガスクロマトグラフにより測定した。バイアル内で加温したビールサンプルの気相部をFID検出器付きガスクロマトグラフへ導入し、ガスクロマトグラムより酢酸イソアミルの面積を読み取り、内部標準物質(n-ブタノール)の面積に対する比から成分量を算出することにより行った。
【0030】
(単式蒸留焼酎の調製)
市販の単式蒸留焼酎(麦焼酎、エタノール濃度25.0vol%)を準備した。カプロン酸エチル濃度及び酢酸イソアミル濃度を上述の方法により測定した。その結果、カプロン酸エチル濃度が20.0mg/lであり、酢酸イソアミル濃度が6.0mg/lであった。
【0031】
(実験例1)
表1に示す組成に従って、例1~例9に係る飲料を得た。具体的には、茶葉抽出液及び連続式蒸留焼酎を混合し、エタノール濃度が4.0vol%である例1に係る飲料を得た。更に、例1に係る飲料に、カプロン酸エチルを異なる量で添加し、例2~例9に係る飲料を得た。尚、各飲料の茶葉抽出液由来のタンニン量は、60mg/100ml程度であった。
尚、表中、例2~例4のカプロン酸エチルは、数値範囲により示されている。これは、連続式蒸留焼酎由来のカプロン酸エチル濃度が1.14μg/l未満であることを考慮した値である。例えば、例2については、例1の飲料に3.0μg/lのカプロン酸エチルを添加したため、「3.0-4.14」と表記した。一方で、例5~例9におけるカプロン酸エチルの濃度は、実測値である。尚、後述する表2~表4におけるカプロン酸エチル、酢酸イソアミルについても、同様である。
【0032】
例1~例9に係る飲料について、5名のパネリストによる官能評価を実施し、アルコール刺激感及び茶風味について評価した。平均値を結果とした。尚、評価基準は、後述する例10を基準として、下記の通りとした。
(アルコール刺激感)
7:非常に強く感じる(例10と同等)
6:強く感じる
5:少し強く感じる
4:感じる
3:弱く感じる
2:わずかに感じる
1:感じない
(茶風味)
5:非常に強く感じる(例10と同等)
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:感じない
【0033】
結果を表1に示す。表1に示されるように、例3~例9に係る飲料は、例1~2に係る飲料に比べて、アルコール刺激感が低減していた。このことから、カプロン酸エチルを5.0μg/l以上の濃度で含有させることにより、茶テイストアルコール飲料におけるアルコール刺激感を低減できることが判った。
また、カプロン酸エチル濃度が高くなるほど、茶の風味が感じられにくくなり、すっきりとした味わいになることが判った。カプロン酸エチル濃度が30μg/l以下である例3~7に係る飲料では、適度な茶風味が維持されていた。
【0034】
(実験例2)
表2に示される組成に従って、例10~例18に係る飲料を得た。具体的には、茶葉抽出液及び連続式蒸留焼酎を混合し、エタノール濃度が7.0vol%である例10に係る飲料を得た。更に、例10に係る飲料に、カプロン酸エチルを異なる量で添加し、例11~例18に係る飲料を得た。
【0035】
例10~例18に係る飲料について、実験例1と同様に官能評価を実施した。結果を表2に示す。
表2に示されるように、例12~例18に係る飲料は、例10~例11に係る飲料に比べて、アルコール刺激感が低減していた。従って、エタノール濃度が7.0vol%である場合も、カプロン酸エチルを5.0μg/l以上の濃度で含有させることにより、茶テイストアルコール飲料におけるアルコール刺激感を低減できることが判った。実験例2においても、カプロン酸エチル濃度が高くなるほど、茶の風味が感じられにくくなり、すっきりとした味わいになることが判った。カプロン酸エチル濃度が30μg/l以下である例12~16に係る飲料では、適度な茶風味が維持されていた。
【0036】
(実験例3)
表3に示される組成に従って、例19~例25に係る飲料を得た。具体的には、茶葉抽出液及び連続式蒸留焼酎を混合し、エタノール濃度が4.0vol%である例19に係る飲料を得た。更に、例19に係る飲料に、単式蒸留焼酎を異なる量で添加し、例20~例25に係る飲料を得た。
【0037】
例19~例25に係る飲料について、実験例1と同様に官能評価を実施した。結果を表3に示す。
表3に示されるように、例21~例25に係る飲料は、例19~例20に係る飲料に比べて、アルコール刺激感が低減していた。従って、単式蒸留焼酎を添加することにより、カプロン酸エチルを5.0μg/l以上の濃度で含有させた場合にも、茶テイストアルコール飲料におけるアルコール刺激感を低減できることが判った。
また、カプロン酸エチル濃度が30μg/l以下である例21~25に係る飲料では、適度な茶風味が維持されていた。
【0038】
(実験例4)
表4に示される組成に従って、例26~例32に係る飲料を得た。具体的には、茶葉抽出液及び連続式蒸留焼酎を混合し、エタノール濃度が7.0vol%である例26に係る飲料を得た。更に、例26に係る飲料に、単式蒸留焼酎を異なる量で添加し、例27~例32に係る飲料を得た。
【0039】
例26~例32に係る飲料について、実験例1と同様に官能評価を実施した。結果を表4に示す。
表4に示されるように、例28~例32に係る飲料は、例26~例27に係る飲料に比べて、アルコール刺激感が低減していた。従って、エタノール濃度が7.0vol%である場合に、単式蒸留焼酎をカプロン酸エチル濃度が5.0μg/l以上になるような量で使用することにより、茶テイストアルコール飲料におけるアルコール刺激感を低減できることが判った。
また、カプロン酸エチル濃度が30μg/l以下である例28~32に係る飲料では、適度な茶風味が維持されていた。
【0040】