(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】電流強度を測定する装置を製造する方法および電流強度を測定する装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/00 20060101AFI20250513BHJP
【FI】
G01R15/00 500
(21)【出願番号】P 2021082990
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】10 2020 003 458.6
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592179160
【氏名又は名称】ヴィーラント ウェルケ アクチーエン ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WIELAND-WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ガーハード ツァム
(72)【発明者】
【氏名】ボルガー ヴォッガサー
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル ウォルフ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015588(JP,A)
【文献】特表2019-508689(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042732(WO,A1)
【文献】特開2020-085544(JP,A)
【文献】中国実用新案第206922072(CN,U)
【文献】中国実用新案第206864671(CN,U)
【文献】特開平03-263771(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110320404(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102006019895(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00114976(EP,A2)
【文献】国際公開第2012/069928(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0275171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗アセンブリにより電流強度を測定する装置を製造する方法であって、
a)少なくとも2つの端子素子と、電流の流れの方向に関して前記端子素子間に配置された少なくとも1つの抵抗素子と、を備える抵抗アセンブリを提供するステップであって、前記少なくとも1つの抵抗素子と前記端子素子がそれぞれ異なった導電材料からなる、ステップと、
b)少なくとも1つの前記端子素子の材料の一部を移すことにより、前記端子
素子の1つとモノリシックかつ一体に接続されている少なくとも1つのコンタクトピンを成形するステップと、
c)少なくとも1つの導体路と少なくとも1つの貫通孔とを有する回路基板を、少なくとも1つの前記コンタクトピンが前記貫通孔を通り抜けて突き出して前記回路基板の、前記抵抗アセンブリから離反した側で前記回路基板上に突出部を有するように、前記抵抗アセンブリ上に位置決めするステップと、
d)前記材料を変形させることによって、少なくとも前記コンタクトピンの前記突出部の領域において前記コンタクトピンを横方向に拡張し、それにより前記回路基板を前記抵抗アセンブリに機械的に固定する、ステップと、
e)前記コンタクトピンと前記回路基板の少なくとも1つの導体路との間に導電接続を形成するステップと、を包含する方法。
【請求項2】
前記ステップb)における前記コンタクトピンの成形は、型押し加工ステップまたは押し出し成形により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンタクトピンの形状付与のために、前記コンタクトピンの輪郭に対応する少なくとも1つの切欠きを有する負型が使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップd)における前記コンタクトピンの前記横方向の拡張は、据込み工程、型押し加工、かしめ加工、またはフランジ加工によって行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップd)における前記コンタクトピンの前記横方向の拡張は、超音波またはレーザにより材料を加熱することによって支援されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップe)における前記導電接続の形成は、前記ステップd)における前記コンタクトピンの前記突出部の領域において前記コンタクトピンを前記横方向に拡張することにより行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップe)における前記導電接続の形成は、前記コンタクトピンが前記回路基板の前記貫通孔の内側表面に接触するように変形されることにより行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
抵抗アセンブリと、前記抵抗アセンブリと機械的および電気的に接続された回路基板とを備える電流強度を測定する装置であって、前記抵抗アセンブリは、少なくとも2つの端子素子と、前記端子素子間に配置された少なくとも1つの抵抗素子と、を備え、前記少なくとも1つの抵抗素子と前記端子素子とはそれぞれ異なった導電材料からなり、前記回路基板が少なくとも1つの導体路と少なくとも1つの貫通孔とを有する、装置において、
前記抵抗アセンブリは、前記端子素子の材料の一部を移して作り出されていることにより前記端子素子の1つとモノリシックかつ一体に接続されている少なくとも1つのコンタクトピンを有し、前記コンタクトピンが前記回路基板の前記貫通孔を通り抜けて延在し、かつ前記回路基板の、前記抵抗アセンブリから離反した側に横方向の拡張部を有し、前記拡張部によって前記回路基板を前記抵抗アセンブリに機械的に固定することにより、前記抵抗アセンブリが前記コンタクトピンによって前記回路基板と接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコンタクトピンは、その横方向の拡張部によって前記回路基板の少なくとも1つの導体路と電気的に接触していることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコンタクトピンは、前記回路基板の前記貫通孔の内側表面と電気的に接触していることを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコンタクトピンが段差部を有し、前記回路基板が前記端子素子から離隔されるように、前記段差部に前記回路基板が載ることを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコンタクトピンの表面は、金属コーティング、特に錫含有、銀含有、またはニッケル含有コーティングを有することを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流強度を測定する装置を製造する方法および電流強度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の電流を測定するために、監視されるべき部品と直列に接続された測定抵抗器が使用される。その際、シャント抵抗器と呼ばれる測定抵抗器で降下する電圧から電流強度が決定される。例えば電気車またはハイブリッド車のバッテリマネージメントシステムにおいて、電流強度の正確かつ確実な測定が特に重要である。約10~50μOhmの低オーム抵抗の測定抵抗器と、抵抗アセンブリを電流回路と接続するための端子素子とを備える抵抗アセンブリは、長手方向にシーム溶接された複合材料から製造することができる。これは例えば特許文献1から知られている。複合材料は3つの金属帯から、個々の金属帯を電子ビーム溶接法またはレーザ溶接法でそれぞれ長手方向継ぎ目にわたって互いに接合することにより製造される。
【0003】
測定抵抗器で降下する電圧は、測定抵抗器の両側の端子素子に配置されているコンタクトピンまたは類似の素子により取り出される。この種のコンタクトピンは、抵抗アセンブリの端子素子に半田付け、圧着、または溶接され得る。電圧は、測定および評価電子機器によって検出され、さらに処理される。このために電子部品が設けられ、これらの電子部品は回路基板に配置され得る。その場合、回路基板は抵抗アセンブリの直ぐ近くに位置し得る。
【0004】
特許文献2から、低オーム抵抗の電流測定抵抗器を有する抵抗アセンブリが知られている。この抵抗アセンブリでは、電圧を取り出すために、抵抗アセンブリを外部電流回路に接続するために用いられる板状の部材に型押し加工、およびねじ山成形することによって形成された接続接点が設けられている。電圧測定のための測定線路と接続接点との接続は、ケーブルシューおよび固定ねじによって行われる。
【0005】
さらに、特許文献3から、抵抗アセンブリを外部電流回路に接続するための2つの板状素子とストリップ状の抵抗素子とを有する抵抗アセンブリが知られている。抵抗素子の両側の2つの端子素子にそれぞれ1つの穴が設けられ、この穴にそれぞれ1つのコンタクトピンが差し込まれる。コンタクトピンは別個の部品であり、別途製造して抵抗アセンブリに付加されなければならない。
【0006】
従来技術から知られる装置では、測定抵抗器で降下する電圧を取り出すために追加の部品を使用する必要がある。これは追加の手間とコストを要する。さらに個々の部品の接触箇所に、電圧信号を歪曲する可能性のある接触電圧が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第0605800号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009031408号明細書
【文献】米国特許第10163553号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電流強度を測定する改善された装置を製造する、特により簡単かつ安価な方法および電流強度を測定する装置を提供するという課題にもとづいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、方法に関して請求項1の特徴により、装置に関して請求項8の特徴により示される。他の引用する請求項は、本発明の有利な実施形態および発展形態に関する。
【0010】
本発明は、抵抗アセンブリによって電流強度を測定する装置を製造する方法を含み、この方法は、以下のステップを包含する:
a)少なくとも2つの端子素子と、電流の流れの方向に関して端子素子間に配置された少なくとも1つの抵抗素子と、を備える抵抗アセンブリを提供するステップであって、少なくとも1つの抵抗素子と端子素子がそれぞれ異なった導電材料からなる、ステップ、
b)少なくとも1つの端子素子の材料から少なくとも1つのコンタクトピンを成形するステップ、
c)少なくとも1つの導体路と少なくとも1つの貫通孔とを有する回路基板を、少なくとも1つのコンタクトピンが貫通孔を通り抜けて突き出して回路基板の、抵抗アセンブリから離反した側で回路基板上に突出部を有するように、抵抗アセンブリ上に位置決めするステップ、
d)材料を変形させることによって、少なくともコンタクトピンの突出部の領域においてコンタクトピンを横方向に拡張し、それにより回路基板を抵抗アセンブリに機械的に固定する、ステップ、
e)コンタクトピンと回路基板の少なくとも1つの導体路との間に導電接続を形成するステップ。
【0011】
電流強度の測定とは、一時的に場合によって変化する電流の強度の測定とも解される。上記の抵抗アセンブリは、低オーム抵抗のシャント抵抗器を抵抗素子として備え得る。抵抗アセンブリの端子素子は、銅、好ましくは低合金化した銅合金、アルミニウム、または好ましくは低合金化したアルミニウム合金からなり得るか、あるいはこれらの材料のうちの少なくとも1つを含み得る。抵抗素子は、抵抗合金として一般的に使用される銅合金からなり得る。抵抗合金の比電気抵抗は、端子素子の材料の比電気抵抗より格段に高い。端子素子は、抵抗アセンブリの末端にある端子素子であり得る。しかし、少なくとも1つの端子素子が、可能な電流経路に関して2つの抵抗素子間に配置されることも可能である。抵抗アセンブリは平面配置で形成され得る。その際、端子素子および少なくとも1つの抵抗素子が板状またはストリップ状の素子として形成され、一平面上に並べて、好ましくは一列に配置されている。その際、1つの抵抗素子もしくは複数の抵抗素子の厚さは任意であり得る。しかし抵抗素子の厚さは、通常、端子素子の厚さより大きくならない。
【0012】
回路基板は、好ましくは回路基板の、抵抗アセンブリから離反した側に配置される少なくとも1つの導体路を有する。さらに、電気信号を測定および評価するために用いられる電気的部品が回路基板上に配置され得る。貫通孔という用語は、回路基板における回路基板の厚さ全体にわたって延在する切欠きを意味する。
【0013】
コンタクトピンとは、端子素子の、その他は変形されない表面上に隆起する材料凸部と解される。コンタクトピンの成形は、端子素子の表面に対して実質的に垂直の方向に端子素子の材料を移すことによって行われる。材料が移される方向はコンタクトピンの軸線を定義する。コンタクトピンは、中実、部分的に中空、または軸線全体に沿って中空であり得る。コンタクトピンの横断面形状は任意であり得、中実のコンタクトピンでは好ましくは円形、矩形、正方形、または六角形であり得、あるいは中空のコンタクトピンでは環状であり得る。コンタクトピンの横断面の形状および/または大きさは一定であってもよいし、あるいはコンタクトピンの延在に沿って定常的または非定常に変化してもよい。例えばコンタクトピンは、わずかに円錐形の輪郭を有することができ、すなわち端子素子の表面に対してわずかに傾けられた境界面を有する輪郭を備え得る。さらにコンタクトピンは段差部を有し得る。段差部とは、コンタクトピンの横断面形状および/または横断面の大きさの非定常的な、すなわち急激な変化と解される。端子素子の変形されない表面に対するコンタクトピンの高さは回路基板の厚さより高い。したがってコンタクトピンは、コンタクトピンが貫通孔を通り抜けて貫通孔から突き出すように、回路基板が抵抗アセンブリ上に位置決めされる場合に回路基板上に突出部を有する。
【0014】
コンタクトピンは、好ましくはさらに別のコンタクトピンと一緒に、少なくとも1つの抵抗素子で降下する電圧を測定するための電圧取出し部として使用され得る。これに代えて、コンタクトピンは、抵抗アセンブリを接地するために用いることもできる。抵抗アセンブリのすべての端子素子において1つまたは複数のこの種のコンタクトピンが成形されることが好ましい。その際、電圧測定のために用いられるコンタクトピンは、電圧降下が検知されるべき抵抗素子の可能な限り近くに位置決めされる。
【0015】
方法ステップd)におけるコンタクトピンの横方向の拡張は、コンタクトピンの軸線に対して垂直方向に、すなわち軸線に対して径方向に材料を移すことによるコンタクトピンの変形を示す。この変形は、回路基板から突き出すコンタクトピンの領域において比較的大きい突出し(Auspraegung)で行われる。この領域において、方法d)に従って移された材料の横方向の延在が少なくとも局所的に貫通孔の幅より大きい。回路基板は、コンタクトピンのこの種の変形によって抵抗アセンブリに取り付けられる。特にコンタクトピンは、回路基板から突き出す区分の横方向の拡張によって、きのこのそれに似た、または釘の釘頭部の領域に似た形状を得る。コンタクトピンの軸方向の横断面は、特にT字形であり得る。
【0016】
回路基板の貫通孔内にある領域においても比較的小さい突出しでコンタクトピンの横方向の拡張が行われる。この領域において、横方向の拡張部は貫通孔の内壁によって制限される。
【0017】
上記の方法の特別な利点は、抵抗アセンブリと回路基板との間に接続を形成するために追加の部品および/または材料が必要とされないことである。コンタクトピンが端子素子の材料から直接成形されるので、抵抗アセンブリまたは回路基板にコンタクトピンを別々に組み付ける必要がない。このために必要な作業工程、および必要とされる、例えば半田などの材料が省略される。複数のコンタクトピンを同時に成形することができる。端子素子とコンタクトピンとの間のモノリシックな接続によって、測定値を歪曲する可能性のある不都合な接触電圧が回避される。
【0018】
長手方向にシーム溶接された帯状の複合材料から切断されることにより抵抗アセンブリが製作される場合、複合材料を切断するのと同時にコンタクトピンを成形することができる。すなわちこの場合、方法のステップa)とb)が同時に行われる。したがってコンタクトピンを成形するために別個の追加作業工程は必要ない。したがって方法は、複合材料を切断して初めてコンタクトピンが成形される場合よりも迅速かつ安価になる。さらに、このようにすることでコンタクトピンの高い位置精度が達成される。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態の範囲内で、方法ステップb)におけるコンタクトピンの成形を型押し加工(Praegen)ステップまたは押し出し成形(Fliesspressen)によって行うことができる。型押し加工および押し出し成形は、特に端子素子の材料とモノリシックに接続され、端子素子の表面に対して実質的に垂直方向に延在するコンタクトピンを成形するのに適している。その際、材料の成形はパンチによって行われる。
【0020】
本発明のこの実施形態の特殊な形態の範囲内で、コンタクトピンの形状付与のためにコンタクトピンの輪郭に対応する少なくとも1つの切欠きを有する負型を使用することができる。この種の負型によってコンタクトピンの外輪郭が決定され得る。
【0021】
本発明の別の好ましい一実施形態の範囲内で、方法ステップd)におけるコンタクトピンの横方向の拡張を据込み工程、型押し加工、かしめ加工(caulking)、またはフランジ加工(flanging)によって行うことができる。その際、フランジ加工が、好ましくは軸線全体に沿って中空のコンタクトピンに使用されるのに対して、他の方法は、中実の、または部分的にのみ中空のコンタクトピンに好適に使用される。これらの方法では、横方向の変形のために必要な力がコンタクトピンの軸線の方向に導入される。それによりコンタクトピンの材料が横方向に拡張されるだけでなく、コンタクトピンの軸線の方向にも回路基板へ押し付けられる。したがって上記の方法は、回路基板を越えて突き出すコンタクトピンの部分をコンタクトピンの軸線に対して垂直なすべての方向に、または特定の方向のみに拡張し、それと同時に抵抗アセンブリへの回路基板の良好な機械的固定を達成するのに特に良く適している。
【0022】
本発明の特別な一実施形態の範囲内で、方法ステップd)におけるコンタクトピンの横方向の拡張が超音波またはレーザにより材料を加熱することによって支援され得る。コンタクトピンの材料は、方法ステップb)における変形にもとづいて非常に硬化され、かつ硬質である。これは、次のステップd)における変形の妨げとなる。レーザまたは超音波による熱の入力によって、コンタクトピンの材料が少なくとも部分的に軟化され、すなわちより軟質になるように加熱され得る。その場合、ステップd)における変形がより容易に可能である。
【0023】
有利には、方法ステップe)における導電接続の形成は、方法ステップd)での突出部の領域におけるコンタクトピンの横方向の拡張によって行うことができる。ステップd)におけるコンタクトピンの変形によって、回路基板とコンタクトピンとの間に力結合的接続が形成される。その際、さらに、コンタクトピンの拡張された領域が、抵抗アセンブリから離反した回路基板の表面に位置する少なくとも1つの導体路と接触することが企図されていることが有利である。その場合、回路基板とコンタクトピンとの間の力結合的接続は、コンタクトピンと導体路との間にも電気的接続をもたらす。
【0024】
本発明の付加的実施形態の範囲内で、方法ステップe)における導電接続の形成を、コンタクトピンが回路基板の貫通孔の内側表面に接触するようにコンタクトピンが変形されることにより行うことができる。この場合、貫通孔の内側表面が回路基板の少なくとも1つの導体路と接触する導電材料を有する。ステップd)におけるコンタクトピンの横方向の拡張によって、コンタクトピンと貫通孔の内面との間に、例えば圧嵌のような力結合的接続が生じる。このようにすることで、コンタクトピンと導体路との間に特に良好な電気的接触を形成することができる。
【0025】
本発明による方法の他の技術的特徴および利点については、本発明による装置と関連した以下の説明、ならびに図、および図の説明が明示的に参照される。
【0026】
本発明の別の態様は、電流強度を測定する装置を含む。これは、一時的に場合によって変化する電流の強度の測定とも解される。装置は、抵抗アセンブリと、該抵抗アセンブリと機械的および電気的に接続された回路基板とを備える。抵抗アセンブリは、少なくとも2つの端子素子と、電流の方向に関して端子素子間に配置された少なくとも1つの抵抗素子と、を備え、少なくとも1つの抵抗素子と端子素子はそれぞれ異なった導電材料からなる。回路基板は少なくとも1つの貫通孔を有する。さらに、回路基板は、好ましくは回路基板の、抵抗アセンブリから離反した側に配置されている少なくとも1つの導体路を有する。本発明によれば、抵抗アセンブリは、端子素子の1つとモノリシックに接続され、かつ端子素子の材料から作り出された少なくとも1つのコンタクトピンを有し、コンタクトピンが回路基板の貫通孔を通り抜けて延在し、回路基板から突き出し、かつ回路基板の、抵抗アセンブリから離反した側に横方向の拡張部を有し、拡張部によって回路基板を抵抗アセンブリに機械的に固定することにより、抵抗アセンブリがコンタクトピンによって回路基板と接続されている。
【0027】
装置の説明のために使用される用語に関して、この装置を製造する方法の説明と関連した用語の上記の説明が明示的に参照される。
【0028】
上記の装置の特別な利点は、端子素子とコンタクトピンとの間のモノリシックな接続によって、測定値を歪曲する可能性のある不都合な接触電圧が回避されることである。さらに、コンタクトピンが端子素子の材料から直接成形されることから装置を安価に、かつ高精度で製造することができる。
【0029】
装置の一実施形態の範囲内で、少なくとも1つのコンタクトピンは、その横方向の拡張部によって回路基板の少なくとも1つの導体路と電気的に接触し得る。抵抗アセンブリへの回路基板の機械的固定およびこれらのコンポーネントの電気的接触はコンタクトピンによって行われる。
【0030】
装置の別の実施形態の範囲内で、少なくとも1つのコンタクトピンは、回路基板の貫通孔の内側表面と電気的に接触し得る。
【0031】
装置の別の有利な一実施形態の範囲内で、少なくとも1つのコンタクトピンが段差部を有することができ、回路基板が端子素子からひいては抵抗アセンブリから離隔されるように、段差部に回路基板が載る。回路基板と抵抗アセンブリとの間の距離は、抵抗アセンブリからの回路基板のより良好な熱的切り離しをもたらす。この場合、電流が抵抗素子を流れた場合に発生する熱は、抵抗素子または端子素子から直接回路基板に伝わることができず、熱は、コンタクトピンを通って流れなければならない。コンタクトピンの横断面が比較的小さいため、コンタクトピンの熱抵抗は大きい。そのため抵抗アセンブリから回路基板への熱流が低減され、回路基板は、回路基板が端子素子上に直接載っている場合よりも低い温度レベルにとどまる。この実施形態は、特に、抵抗素子の厚さが端子素子の厚さより小さくない場合に有利である。
【0032】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つのコンタクトピンの表面が、金属コーティング、特に錫含有、銀含有、またはニッケル含有コーティングを有し得る。この種のコーティングは腐食を防止し、それに伴いコンタクトピンと導体路との間の電気的接触が装置の全寿命にわたって高品質であることをもたらすことができる。その場合、コーティングは、ステップb)におけるコンタクトピンの成形の前に設けられてもよいし、またはコンタクトピンは、方法ステップb)とc)との間の別個のステップでコーティングされてもよい。
【0033】
本発明による装置の他の技術的特徴および利点については、上記の本発明による方法と関連した説明、ならびに図、および図の説明が明示的に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図3】方法ステップb)が終わった抵抗アセンブリの図である。
【
図4】コンタクトピンが成形された抵抗アセンブリの図である。
【
図5】回路基板が位置決めされた抵抗アセンブリの図である。
【
図6】回路基板が固定された抵抗アセンブリの図である。
【
図7】段差部を有するコンタクトピンを備える装置の図である。
【
図8】中空コンタクトピンを有する装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施例について模式的図面を用いて詳しく説明する。
【0036】
すべての図において同一の部品には同じ参照符号が付されている。
【0037】
図1は、コンタクトピンのない抵抗アセンブリ2の斜視図を示す。抵抗アセンブリ2は、2つの末端にある端子素子3と、2つの端子素子3間に位置決めされた抵抗素子4とを有する。端子素子3および抵抗素子4はそれぞれ板状の形である。抵抗素子4の厚さは、2つの端子素子3の厚さよりいくらか小さい。抵抗アセンブリ2は、2つの端子素子3で電流回路と接続され得る。この目的で、2つの端子素子3は図示されない接続装置、例えば孔を有し得る。これらの接続装置は、それぞれ端子素子3の、抵抗素子4から離れた領域に設けられている。抵抗素子4は、電流の流れの方向に関して端子素子3間にある。電流が流れると抵抗素子4で電圧が降下し、この電圧を用いて、抵抗アセンブリ2を流れる電流の強度を検知することができる。
【0038】
図2は、
図1による抵抗アセンブリ2の側面図を示す。
図1および
図2に示される抵抗アセンブリ2は、周知のごとく、3つの帯体を長手方向のシーム溶接により複合材料とされ、続いて溶接された複合材料を切断することによって製造することができる。
【0039】
図3は、方法ステップb)が終わった
図1および
図2による抵抗アセンブリ2を示す。抵抗アセンブリ2の上面に2つの切欠き13を有する負型12が位置決めされた。抵抗アセンブリ2の下面では2つの端子素子3の材料内に2つのパンチ11が入り込んでいる。パンチ11は、負型12の切欠き13に向き合うように位置決めされている。パンチ11が入り込むことによって、端子素子3の材料が端子素子3の表面に対して垂直方向に押し除けられ、負型12の切欠き13内に移された。このようにして、コンタクトピン5をなす2つの材料凸部が成形された。図示された例ではコンタクトピン5が中実に形成されている。
【0040】
図4は、方法ステップb)に従い成形された2つのコンタクトピン5を有する抵抗アセンブリ2を示す。パンチ11と負型12とは除去された。パンチ11および負型12の除去を容易にするために、パンチ11と切欠き13は負型12においてそれぞれ離型のための傾斜面を有する輪郭を備え得る。それに対応して、成形されたコンタクトピン5も同様に傾斜面を有する輪郭を備え得る。離型のための傾斜面と端子素子3の表面の法線とがなす角度は、典型的には約2°である。法線からの逸脱がわずかであるため、傾斜面は図に明確には示されていない。コンタクトピン5の高さは記号Hで示されている。コンタクトピン5は、抵抗素子4で降下する電圧を取り出すために設けられている。測定値の歪曲を最小化するために、コンタクトピン5は、それぞれの端子素子3と抵抗素子4との間の接続箇所の近くに位置決めされるように端子素子3から成形された。
【0041】
図5は、2つの成形されたコンタクトピン5と抵抗アセンブリ2に位置決めされた回路基板8とを有する抵抗アセンブリ2を示す。したがって、
図5は、方法ステップc)による抵抗アセンブリ2と回路基板8とを示す。回路基板8は2つの貫通孔9を有する。回路基板8は、コンタクトピン5が貫通孔9を通り抜けて突き出すように位置決めされた。コンタクトピン5の高さHは回路基板8の厚さTより高く、それによりコンタクトピン5は、回路基板8の、抵抗アセンブリ2から離反した側で回路基板8上にそれぞれ1つの突出部6を有する。貫通孔9の内のりは、コンタクトピン5の外側寸法よりわずかに大きい。
【0042】
図6は、抵抗アセンブリ2と、抵抗アセンブリ2上に固定された回路基板8とを有する電流強度を測定する装置1を示す。
図6は、方法ステップe)による装置1を示す。抵抗アセンブリ2の2つのコンタクトピン5は、回路基板8を抵抗アセンブリ2上に機械的に固定し、それと同時に回路基板8のそれぞれ1つの導体路とのそれぞれ1つの電気接点を形成するように変形された。このためにコンタクトピン5は、回路基板8上の突出部6の領域と、回路基板8の貫通孔9内にある領域とが横方向に拡張された。貫通孔9の領域において、横方向の拡張が貫通孔9の内壁によって制限される。コンタクトピン5は、それぞれの貫通孔9を形状結合的にふさぐ。突出部6の領域において、それぞれの貫通孔9の幅より広く延在するそれぞれ1つの横方向の拡張部7が形成されるように変形が行われる。したがって、コンタクトピン5は、軸方向にT字形横断面を有する形状を得る。それにより、回路基板8は抵抗アセンブリ2に力結合的に固定される。それと同時に、各コンタクトピン5の横方向の拡張部7は、回路基板8の、抵抗アセンブリ2から離反した側でそれぞれ少なくとも1つの導体路と接触する。それにより抵抗アセンブリ2と回路基板8との間に電気的接続が形成される。導体路は、図示されない電子部品と接続され、これらの電子部品によって抵抗素子4で降下する電圧を検知することができる。
【0043】
図7は、抵抗アセンブリ2と抵抗アセンブリ2に固定された回路基板8とを有する電流強度を測定する装置1の別の実施例を示す。
図7に示された実施例では、抵抗素子4の厚さが端子素子3の厚さと略同じである。コンタクトピン5は、コンタクトピン5を取り囲むそれぞれ1つの段差部51を有し、この段差部に回路基板8が載っている。この目的で、コンタクトピン5は、コンタクトピン5の外側寸法がそれぞれのコンタクトピン5の、端子素子3に直接隣接する部分領域において回路基板8のそれぞれの貫通孔9の内のりよりそれぞれ大きくなるように形成されている。それにより回路基板8は、端子素子3にも抵抗素子4にも直接載らず、回路基板は端子素子3、抵抗素子4、それに伴い抵抗アセンブリ2全体に対して距離sを有する。したがって回路基板は、抵抗アセンブリから熱的により良好に切り離されている。それぞれの端子素子3の材料からコンタクトピン5を成形する際にそれぞれの段差部51の高さがすでに考慮された。コンタクトピン5による回路基板8の固定および接触接続が
図6に示され、かつ
図6との関連で説明された実施例と同様に行われる。
【0044】
図8は、別の実施例として、抵抗アセンブリ2と、抵抗アセンブリ2に固定された回路基板8とを有する電流強度を測定する装置1を示し、コンタクトピン5は、それぞれその延在全体にわたって中空に形成されている。回路基板8を固定するための横方向の拡張部7をそれぞれ作製するために、コンタクトピン5が突出部7の領域においてフランジ加工された。コンタクトピン5は、中空リベットに似た形である。
図8に示される装置1の実施例では、回路基板8が2つの端子素子3上に載っている。これに代えて、中空コンタクトピン5を、
図7に示されるコンタクトピン5と同じように段差部51を備えて形成することも可能であろうし、それにより回路基板8が端子素子3から離隔される。
【0045】
より良く表示するという理由から、本発明は
図1~
図8において例示的に、それぞれ1つのみの抵抗素子4と2つの末端にある端子素子3とを備える抵抗アセンブリ2を用いて説明した。2つ以上の抵抗素子4と、可能な電流経路に関して2つの抵抗素子4間に配置された少なくとも1つの別の端子素子3とを有する抵抗アセンブリに上記の方法を適用することも可能である。その際、同じ電流が少なくとも2つの抵抗素子4を流れ、そのことが冗長な電流測定を可能にするように、あるいは少なくとも2つの抵抗素子4を相違する電流が流れ、そのことが部分電流の測定を可能にするように、抵抗アセンブリを構成することができる。これらの場合において、上記の説明、
図1~
図8、および実施例を用いて説明したコンタクトピン5を成形する、ならびに回路基板8との機械的および電気的接続を形成する方法は、2つの抵抗素子4間に配置される端子素子3の材料から1つまたは複数のコンタクトピン5を成形するためにも使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 装置
2 抵抗アセンブリ
3 端子素子
4 抵抗素子
5 コンタクトピン
51 段差部
6 突出部
7 横方向拡張部
8 回路基板
9 貫通孔
11 パンチ
12 負型
13 切欠き
H コンタクトピンの高さ
T 回路基板の厚さ
s 距離