(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-13
(45)【発行日】2025-05-21
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250514BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250514BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250514BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20250514BHJP
G02F 1/13363 20060101ALN20250514BHJP
H10K 50/86 20230101ALN20250514BHJP
H10K 59/10 20230101ALN20250514BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/30
C09J201/00
G02F1/1335 510
G02F1/13363
H10K50/86
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2021567391
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047390
(87)【国際公開番号】W WO2021132068
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019237911
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】新地 真規子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203984(JP,A)
【文献】特開2018-097124(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110277(WO,A1)
【文献】特開2016-085305(JP,A)
【文献】特開2007-138147(JP,A)
【文献】特開2016-190996(JP,A)
【文献】特開2018-028573(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118038(WO,A1)
【文献】特開2013-011872(JP,A)
【文献】特開2009-251213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 7/30
C09J 201/00
G02F 1/1335
G02F 1/13363
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に粘着剤層を介して貼り合わせられた位相差層と、を有し、
該偏光子の厚みが
3μm~8μmであり、
該粘着剤層が、アクリル系粘着剤組成物で構成され、
該アクリル系粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含み、
該(メタ)アクリル系ポリマーが、カルボキシル基含有モノマー単位を3重量%~7重量%含み、かつ、ヒドロキシル基含有モノマー単位を0.05重量%~0.1重量%含み、
該粘着剤層は、荷重3Nを負荷した時の残存深さが11μm以下である、
位相差層付偏光板。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚みが6μm~15μmである、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項3】
前記視認側の保護層の厚みが30μm以上である、請求項1または2に記載の位相差層付偏光板。
【請求項4】
前記位相差層が、nx>nz>nyの屈折率特性を示す、請求項1から3のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項5】
前記位相差層のNz係数が、0.3~0.7である、請求項4に記載の位相差層付偏光板。
【請求項6】
前記位相差層の面内位相差Re(550)が250nm~350nmであり、厚みが150μm以下であり、および、光弾性係数が1.0×10
-12m
2/N以上である、請求項4または5に記載の位相差層付偏光板。
【請求項7】
前記位相差層が環状オレフィン系樹脂を含む、請求項4から6のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項8】
前記位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が、
90°±7°または
0°±7°である、請求項1から7のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の位相差層付偏光板を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、画像表示セルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。画像表示装置の視認側に配置される偏光板には、外光反射や背景の映り込みの防止、色相の改善等を目的として、その画像表示セル側に位相差フィルムが積層される場合がある(位相差層付偏光板)。画像表示装置の薄型化に伴い、位相差層付偏光板の薄型化も強く要望されている。このような要望に対応すべく、偏光子の薄型化が進められている。しかし、薄型偏光子を含む位相差層付偏光板は取り扱いが困難であり、例えば作業者の取り扱いミスに起因する外力によりダメージ痕(代表的には、一定領域内における多数の微細な割れ)が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ダメージ痕が抑制された位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に粘着剤層を介して貼り合わせられた位相差層と、を有する。該偏光子の厚みは12μm以下であり、該粘着剤層は、荷重3Nを負荷した時の残存深さが11μm以下である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の厚みは6μm~15μmである。
1つの実施形態においては、上記視認側の保護層の厚みは30μm以上である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、nx>nz>nyの屈折率特性を示す。1つの実施形態においては、上記位相差層のNz係数は0.3~0.7である。1つの実施形態においては、上記位相差層の面内位相差Re(550)は250nm~350nmであり、厚みは150μm以下であり、および、光弾性係数は1.0×10-12m2/N以上である。1つの実施形態においては、上記位相差層は環状オレフィン系樹脂を含む。
1つの実施形態においては、上記位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は、実質的に直交または実質的に平行である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の位相差層付偏光板を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、薄型偏光子を含む位相差層付偏光板において、特定の残存深さを有する粘着剤層を用いることにより、ダメージ痕が抑制された位相差層付偏光板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
(6)実質的に直交または実質的に平行
本明細書において「実質的に直交」および「略直交」という表現は、2つの方向のなす角度が90°±7°である場合を包含し、好ましくは90°±5°であり、さらに好ましくは90°±3°である。「実質的に平行」および「略平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±7°である場合を包含し、好ましくは0°±5°であり、さらに好ましくは0°±3°である。さらに、本明細書において単に「直交」または「平行」というときは、実質的に直交または実質的に平行な状態を含み得るものとする。
【0010】
A.位相差層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。図示例の位相差層付偏光板100は、偏光板10と位相差層30とを有する。偏光板10は、偏光子11と偏光子11の少なくとも視認側に保護層(視認側保護層)12とを含む。図示例では、視認側保護層12のみが設けられているが、視認側と反対側に別の保護層(内側保護層)が設けられてもよい。位相差層30は、偏光板10の視認側と反対側に粘着剤層20を介して貼り合わせられている。位相差層30は、面内位相差を有するので、遅相軸を有する。位相差層30の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、代表的には、実質的に直交または実質的に平行である。実用的には、位相差層30の偏光板10と反対側に(すなわち、視認側と反対側の最外層として)別の粘着剤層(図示せず)が設けられ、位相差層付偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。さらに、別の粘着剤層の表面には、位相差層付偏光板が使用に供されるまで、セパレーター(図示せず)が仮着されていることが好ましい。セパレーターを仮着することにより、別の粘着剤層を保護するとともに、位相差層付偏光板のロール形成が可能となる。
【0011】
本発明の実施形態においては、粘着剤層20は、荷重3Nを負荷した時の残存深さが11μm以下であり、好ましくは10.8μm以下である。残存深さは小さいほど好ましく、その下限は例えば10μmであり得る。残存深さは、例えば以下のようにして測定され得る:(1)粘着剤シートをガラス板の上に貼り付ける;(2)粘着シートの表面を微小荷重自動スクラッチ試験機により荷重を増加させながらスクラッチする。(3)荷重3Nでスクラッチしたときの押し込み深さを変位センサーにより計測し、これを残存深さとする。粘着剤層の残存深さを最適化することにより、ダメージ痕(代表的には、一定領域内における多数の微細な割れ)を顕著に抑制することができる。ダメージ痕は、代表的には、作業者の取り扱いミスに起因する外的要因(例えば、衝撃および/または押圧力)により発生する。さらに、偏光子の一方の面に粘着剤層を有する位相差層付偏光板において、ダメージ痕は代表的には偏光子に発生する。ダメージ痕は、薄型偏光子において顕著であり、さらに、取り扱いがより困難となる大型画像表示装置(例えば、テレビ)用の位相差層付偏光板において顕著である。本発明者らは、一見微細なクラックの集合体に見えるダメージ痕が、クラックとは全く発生原因が異なること、したがってクラックの抑制手段(例えば、粘着剤層の貯蔵弾性率の調整)ではダメージ痕は抑制できないことを見出し、試行錯誤の結果、残存深さ(すなわち、粘着剤層に外力を負荷した後の戻り具合)を最適化することが有効であることを見出した。すなわち、残存深さを最適化することによりダメージ痕が抑制されるという効果は、ダメージ痕という新たに発見された課題を解決するものであり、かつ、当該課題に対応した試行錯誤により得られた予期せぬ優れた効果である。
【0012】
本発明の実施形態においては、偏光子11の厚みは12μm以下である。上記のとおりダメージ痕は薄型偏光子において顕著であり、実質的には薄型偏光子特有の課題であるところ、本発明の実施形態によれば、このような課題を解決することができる。
【0013】
位相差層付偏光板100は、位相差層30の偏光子10と反対側(画像表示セル側)に、目的に応じて任意の適切な機能層をさらに有していてもよい(図示せず)。機能層の代表例としては、別の位相差層、導電層が挙げられる。機能層の種類、数、組み合わせ、配置位置、特性(例えば、別の位相差層の光学特性:具体的には、屈折率特性、面内位相差、厚み方向位相差、Nz係数)は、目的に応じて適切に設定され得る。位相差層付偏光板が導電層をさらに有することにより、当該位相差層付偏光板は、インナータッチパネル型入力表示装置に好適に用いられ得る。
【0014】
以下、位相差層付偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
【0015】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子11は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成される。
【0016】
樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。
【0017】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0018】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~4500、さらに好ましくは1500~4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0019】
樹脂フィルムに含まれる二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0020】
樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0021】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0022】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0023】
偏光子の厚みは、上記のとおり12μm以下であり、好ましくは1μm~12μmであり、より好ましくは3μm~10μmであり、さらに好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0024】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0025】
B-2.保護層
視認側保護層12および内側保護層(存在する場合)は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0026】
位相差層付偏光板は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、視認側保護層12は、その視認側に配置される。したがって、視認側保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0027】
視認側保護層の厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは30μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。保護層の厚みがこのような範囲であれば、上記粘着剤層の残存深さとの相乗的な効果により、ダメージ痕がさらに顕著に抑制され得る。なお、視認側保護層に表面処理が施されて表面処理層が形成される場合、視認側保護層の厚みは、表面処理層を含めた厚みである。
【0028】
内側保護層(存在する場合)は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。内側保護層の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。薄型化の観点からは、保護層は好ましくは省略され得る。本発明の実施形態においては、好ましくは、位相差層30が内側保護層を兼ねる。
【0029】
C.粘着剤層
粘着剤層20を形成する粘着剤としては、上記所望の残存深さを実現する限りにおいて任意の適切な粘着剤が採用され得る。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。耐薬品性、浸漬時における処理液の浸入を防止するための密着性、被着体への自由度等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。すなわち、粘着剤層20は、好ましくはアクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)で構成され得る。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸)、ヒドロキシル基含有モノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、アミド基含有モノマー(例えば、アクリルアミド)、芳香環含有(メタ)アクリレート(例えば、ベンジルアクリレート)、複素環含有(メタ)アクリレート(例えば、アクリロイルモルホリン)、橋かけ環構造を有する(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル)等が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、カルボキシル基含有モノマー単位およびヒドロキシル基含有モノマー単位を有する。(メタ)アクリル系ポリマー中のカルボキシル基含有モノマー単位の含有量は、好ましくは3重量%~7重量%であり、ヒドロキシル基含有モノマー単位の含有量は、好ましくは0.05重量%~0.1重量%である。このような構成であれば、粘着剤層の所望の残存深さが実現され得る。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー単位、シランカップリング剤および架橋剤を適切に組み合わせて用いることにより、所望の特性を有するアクリル系粘着剤(結果として、粘着剤層)を得ることができる。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2007-138147号公報、特開2016-190996号公報、特開2018-028573号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0030】
粘着剤層20の厚みは、好ましくは6μm~25μmであり、より好ましくは6μm~15μmであり、さらに好ましくは10μm~15μmである。粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、偏光子と位相差層との貼り合わせ時の気泡が抑制され得る。
【0031】
粘着剤層20のクリープ値は、好ましくは30μm/h~50μm/hであり、より好ましくは35μm/h~45μm/hである。粘着剤層のクリープ値がこのような範囲であれば、ダメージ痕を顕著に抑制することができる。クリープ値は、例えば以下のようにして測定することができる。保護層および偏光子を含む偏光板の保護層に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、粘着剤層付偏光板を作製する。作製した偏光板を幅10mm×長さ50mmに切断する。切断した粘着剤層付偏光板のうち、幅10mm×長さ10mmの部分を粘着剤層を介してステンレス板に貼着し、次いで、オートクレーブ(50℃、5気圧)で15分間処理した後、1時間室温で放置する。放置した後、粘着剤層付偏光板のステンレス板に貼着しなかった側の端部に、23℃下で500gの荷重(引張荷重)を1時間負荷し、負荷をかけた後の粘着剤層のズレ量(変形量)をレーザー式クリープ試験機を用いて測定することにより、粘着剤層のクリープ値を測定することができる。
【0032】
D.位相差層
位相差層30は、上記のとおり面内位相差を有し、遅相軸を有する。また、上記のとおり、位相差層は、偏光子の保護層と位相差層(または光学補償層)とを兼ねる。このような構成とすることにより、保護層と光学補償層とを別個に設ける必要がなくなるので、画像表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは250nm~350nmであり、より好ましくは270nm~330nmであり、さらに好ましくは290nm~310nmである。位相差層の面内位相差Re(550)がこのような範囲であれば、ポアンカレ球上での移動距離が短いので優れた色相および輝度特性が実現され、かつ、画像表示パネルのカラーシフトおよびTFTの位相差成分によるずれも小さくなる。
【0033】
位相差層は、好ましくは、屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示す。位相差層がこのような屈折率特性を有することにより、位相差層付偏光板を適用する画像表示装置の斜め方向の色相を良好に改善することができる。さらに、このような斜め方向の色相改善は、位相差層と斜め方向の光学補償を行う層とを別個に設けることなく行うことができるので、位相差層付偏光板(結果として、画像表示装置)の薄型化に貢献し得る。
【0034】
位相差層のNz係数は、好ましくは0.3~0.7であり、より好ましくは0.4~0.6であり、さらに好ましくは0.45~0.55である。Nz係数がこのような範囲であれば、斜め方向の色相をさらに良好に改善することができる。
【0035】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。位相差層は、代表的には、フラットな波長分散特性を示す。
【0036】
位相差層は、その光弾性係数の絶対値が好ましくは15×10-12m2/N以下であり、より好ましくは10×10-12m2/N以下である。光弾性係数の絶対値の下限は、例えば1.0×10-12m2/Nであり得る。位相差層の光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、画像表示装置の表示ムラを良好に抑制することができる。
【0037】
位相差層は、代表的には、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成された位相差フィルムである。この位相差フィルムを形成する樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリビニルアルコール、ポリフマル酸エステル、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂およびポリウレタンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。好ましくは、環状オレフィン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂の代表例としては、ノルボルネン系樹脂が挙げられる。
【0038】
上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを重合単位として重合される樹脂である。当該ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5-メチル-2-ノルボルネン、5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3-ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-クロロ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-シアノ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-ピリジル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-メトキシカルボニル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3~4量体、例えば、4,9:5,8-ジメタノ-3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9-トリメタノ-3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0039】
位相差層(位相差フィルム)は、上記樹脂から形成されたフィルムの延伸フィルムである。延伸フィルムの作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。代表的には、樹脂フィルムの片面または両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸する方法が挙げられる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向に収縮力を付与するために用いられる。そのような収縮力を付与することによりnzを大きくすることができ、結果として、Zフィルムを作製することができる。収縮性フィルムに用いられる材料としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。収縮均一性、耐熱性が優れる点から、ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
【0040】
上記延伸方法としては、上記樹脂フィルムの延伸方向への張力と、当該延伸方向とフィルム面内で直交する方向への収縮力とを付与し得る限り、任意の適切な延伸方法を採用し得る。延伸温度は、好ましくは、上記樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上である。得られる延伸フィルムの位相差値が均一になり易く、また、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。延伸温度は、より好ましくは上記高分子フィルムのTg+1℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg+2℃~Tg+20℃、特に好ましくはTg+3℃~Tg+15℃、最も好ましくはTg+5℃~Tg+10℃である。延伸温度をこのような範囲とすることにより、均一な加熱延伸を行い得る。さらに、延伸温度は、フィルム幅方向で一定であることが好ましい。位相差値のバラツキが小さい良好な光学均一性を有する延伸フィルムを作製し得るからである。
【0041】
上記延伸時の延伸倍率は、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは1.05~2.00倍、さらに好ましくは1.10~1.50倍、特に好ましくは1.20~1.40倍である。延伸倍率をこのような範囲とすることにより、フィルム幅の収縮が少なく、機械的強度に優れた延伸フィルムが得られ得る。
【0042】
位相差層の厚みは、好ましくは80μm~200μmであり、より好ましくは90μm~150μmであり、さらに好ましくは110μm~150μmである。このような厚みであれば、所望の面内位相差値が得られ得る。
【0043】
E.画像表示装置
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、画像表示装置に適用され得る。代表的には、位相差層付偏光板は、偏光板が視認側となるようにして画像表示装置の視認側に配置される。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置、量子ドット表示装置が挙げられる。好ましくは液晶表示装置であり、より好ましくはIPSモードの液晶表示装置である。斜め方向の色相改善がより顕著だからである。画像表示装置は、好ましくは大型(例えば、27インチ以上のテレビ用)である。粘着剤層の残存深さを最適化することによるダメージ痕抑制効果が顕著だからである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0045】
(1)残存深さ
製造例で調製した粘着剤から粘着剤シートを形成した。得られた粘着剤シートをガラス板の上に貼り付け、粘着シートの表面を微小荷重自動スクラッチ試験機により荷重を増加させながらスクラッチした。荷重3Nでスクラッチしたときの押し込み深さを変位センサーにより計測し、これを残存深さとした。
(2)ダメージ痕
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を縦50mmおよび横25mmに切り出し、測定サンプルとした。この測定サンプルを、通常のアクリル系粘着剤(別の粘着剤層に対応)を介してガラス板に貼り合わせた。ガラス板に貼り合わせた測定サンプルに、重りを取り付けたギターピックを荷重3Nで粘着剤シートに押しつけ、その状態で摺動試験機を用いて長手方向に往復させた。往復回数は、1回、5回、10回、50回および70回とした。その後、測定サンプルを95℃のオーブンに1時間投入した。オーブンから取り出した測定サンプルについてダメージ痕の有無を顕微鏡で確認し、以下の基準で評価した。
優良:70回の往復でもダメージ痕は認められなかった
良好:50回の往復ではダメージ痕は認められなかったが、70回の往復では認められた
不可:10回の往復ではダメージ痕は認められなかったが、50回の往復では認められた
劣悪:1回、5回または10回の往復でダメージ痕が認められた
(3)外観
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板について、作製時(偏光子と位相差層との貼り合わせ時)における偏光子と位相差層との間の気泡の状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
良好 :気泡は認められなかった
許容可能:わずかに気泡が認められたが、表示特性に影響がない程度であった
不可 :表示特性に影響を与え得る程度の気泡が認められた
なお、外観評価は、二次的な評価として実施した。
【0046】
[製造例1:粘着剤層を構成する粘着剤の調製]
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.075部および2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、このアクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(A1)を得た。
得られたアクリル系ポリマー溶液(A1)の固形分100部に対して、架橋剤として、0.6部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)と、シランカップリング剤として、0.075部のγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB-403」)とをこの順に配合して、粘着剤Aを調製した。粘着剤Aから形成した粘着剤層(粘着剤シート)の残存深さは10.7mmであった。
【0047】
[製造例2:粘着剤層を構成する粘着剤の調製]
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1.0部および2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた。次いで、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)を得た。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.15部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製(株)製、商品名:ナイパーBO-Y)、0.08部のトリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD110N)および0.2部のシランカップリング剤(綜研化学株式会社製、商品名A-100、アセトアセチル基含有シランカップリング剤)をアクリル系ポリマー溶液に添加して、粘着剤Bを調製した。粘着剤Bから形成した粘着剤層(粘着剤シート)の残存深さは12.5mmであった。
【0048】
[実施例1]
1.偏光子の作製
樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
最後に、積層体を乾燥して、樹脂基材上に偏光子が形成された積層体を得た。なお、偏光子の厚みは5μm、単体透過率は42.3%であった。
【0049】
2.保護層の貼り合わせ
上記1.で得られた積層体の偏光子表面に、保護層として、ラクトン環構造を含むアクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護層(アクリル系樹脂フィルム)/偏光子の構成を有する積層体を得た。
【0050】
3.位相差層(位相差フィルム)の作製
厚み130μmのノルボルネン系樹脂フィルムの両側に、厚み60μmの収縮性フィルム[東レ社製 商品名「トレファンBO2873」]を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせた。その後、ロール延伸機でフィルム長手方向を保持して、146℃の空気循環式オーブン内で1.38倍に延伸し、延伸後、収縮性フィルムをアクリル系粘着剤層と共に剥離して、位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムは、nx>nz>nyの屈折率特性を示し、Re(550)=280nm、Nz係数=0.52、光弾性係数は4.0×10-12m2/N、厚みは138μmであった。
【0051】
4.位相差層付偏光板の作製
上記2.で得られた積層体の偏光子表面に、上記3.で得られた位相差フィルム(位相差層)を、
製造例1で得られた粘着剤A(厚み12μm)を介して貼り合せた。このようにして、保護層/偏光子/粘着剤層/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記(2)および(3)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例2]
粘着剤Aの厚みを23μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例3]
粘着剤Aの厚みを5μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
粘着剤Aの代わりに粘着剤B(厚み12μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例2]
粘着剤Aの代わりに粘着剤B(厚み20μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0056】
[参考例1]
1.偏光子の作製
平均重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚みが50μmであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用意した。ポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で、20℃の膨潤浴(水浴)中に30秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に2.4倍に延伸し(膨潤工程)、続いて、30℃の染色浴(ヨウ素濃度が0.03重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.3重量%である水溶液)中で最終延伸後の単体透過率が所望の値となるように浸漬して染色しながら元のポリビニルアルコールフィルム(搬送方向に全く延伸していないポリビニルアルコールフィルム)を基準にして搬送方向に3.7倍に延伸した(染色工程)。この時の浸漬時間は約60秒であった。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が3.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%である水溶液)中で浸漬しながら元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に4.2倍まで延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、64℃の延伸浴(ホウ酸濃度が4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が5.0重量%である水溶液)中で50秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に6.0倍まで延伸した(延伸工程)後、20℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%である水溶液)中で5秒間浸漬した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを、30℃で2分間乾燥して偏光子(厚み20μm)を作製した。
【0057】
2.偏光板および位相差層付偏光板の作製
上記1.で得られた偏光子の表面に、保護層として、ラクトン環構造を含むアクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を、実施例1と同様にして貼り合せ、保護層(アクリル系樹脂フィルム)/偏光子の構成を有する積層体を得た。以下の手順は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によればダメージ痕を顕著に抑制できることがわかる。さらに、参考例から明らかなように、このようなダメージ痕は、薄型偏光子に特有の課題であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の位相差層付偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置のような画像表示装置に好適に用いられ得、特に液晶表示装置に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0061】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
20 粘着剤層
30 位相差層
100 位相差層付偏光板