(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-13
(45)【発行日】2025-05-21
(54)【発明の名称】センシングシステム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20250514BHJP
【FI】
B60S1/62 110A
B60S1/62 120B
B60S1/62 120C
(21)【出願番号】P 2022544457
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2021029818
(87)【国際公開番号】W WO2022044853
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2020141045
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 大輔
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/221007(WO,A1)
【文献】特開2008-68701(JP,A)
【文献】特開2019-153932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0215972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0023814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
B60S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシングシステムであって、
前記センシングシステムの外部に存在する対象物に関する情報を取得するように構成された制御部と、
透光性カバーとハウジングによって形成された空間内に配置され、前記外部の周辺環境を示す第1データを取得するように構成された第1センサと、
前記透光性カバーに付着した異物を除去するように構成されたカバークリーナーと、
を備え、
前記制御部は、
前記透光性カバーに異物が付着しているかどうかを判定し、前記透光性カバーに異物が付着しているとの判定に応じて前記カバークリーナーを駆動させ、
前記透光性カバーに異物が付着していない場合に、前記第1データに基づいて前記対象物に関する情報を取得し、
前記透光性カバーに異物が付着している場合に、前記空間外に配置された第2センサから前記外部の周辺環境を示す第2データを取得した上で、当該取得した第2データに基づいて前記対象物に関する情報を取得する、ように構成されている、センシングシステム。
【請求項2】
前記空間内に配置されると共に、前記外部に向けて照射領域と非照射領域とを有する配光パターンを出射するように構成された照明ユニットをさらに備え、
前記制御部は、前記対象物が前記配光パターンの非照射領域に含まれるように前記照明ユニットを制御するように構成されている、請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記第1センサは、前記外部の周辺環境を示す第1画像データを取得するように構成された第1カメラであって、
前記制御部は、前記第1画像データに基づいて、前記透光性カバーに異物が付着しているかどうかを判定するように構成されている、請求項1又は2に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1画像データを構成する各ピクセルの輝度と相関する画素値が所定の閾値以上であるかどうかを判定し、
画素値が前記所定の閾値以上のピクセルに関連する情報に基づいて、前記透光性カバーに異物が付着しているかどうかを判定する、ように構成されている、請求項3に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記センシングシステムは、車両に設けられており、
前記第2センサは、前記車両の室内に配置されている、請求項1から4のうちいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
前記第2センサは、前記車両のフロントウィンドウ又はリアウィンドウに対向するように配置されている、請求項5に記載のセンシングシステム。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載のセンシングシステムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センシングシステム及び当該センシングシステムを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、自車の乗員(特に、運転者)の周辺環境に対する視認性を向上させるために、照射領域と非照射領域とを含むADB(Adaptive Driving Beam)用配光パターンを車両の前方領域に向けて出射する照明ユニットが開示されている。車両の前方に先行車や対向車等の前方車が存在する場合には、照明ユニットは、前方車が非照射領域に含まれるようにADB用配光パターンを前方領域に向けて出射する。このように、ADB用配光パターンでは、前方車の乗員にグレア光を与えずに自車の乗員の周辺環境の視認性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、車両用灯具の灯室内にはカメラ等のセンサが配置されており、当該カメラによって取得された画像データに基づいて前方車等の対象物が検出されている。その後、照明ユニットの駆動を制御する照明制御部が、当該検出された対象物が非照射領域に含まれるようにADB用配光パターンを車両の前方に向けて出射している。
【0005】
ところで、車両用灯具の透光性カバーに異物が付着している場合、透光性カバーに付着した異物(雨粒、雪、泥、埃等)により、カメラからの画像データに基づいて正確に前方車に関連する情報(前方車の位置情報等)を取得できないことが想定される。かかる場合では、ADB用配光パターンの照射領域の一部に前方車が重なってしまい、前方車の乗員にグレア光を与えてしまう虞がある。このように、透光性カバーに異物が付着している場合であっても、車両の外部に存在する対象物(例えば、他車両等)に対する認知精度の低下を防止することが可能な車両用センシングシステムについて検討する余地がある。
【0006】
本開示は、センシングシステムの外部に存在する対象物に対する認知精度の低下を防止することが可能なセンシングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るセンシングシステムは、
前記センシングシステムの外部に存在する対象物に関する情報を取得するように構成された制御部と、
透光性カバーとハウジングによって形成された空間内に配置され、前記外部の周辺環境を示す第1データを取得するように構成された第1センサと、
前記透光性カバーに付着した異物を除去するように構成されたカバークリーナーと、
を備える。
前記制御部は、
前記透光性カバーに異物が付着しているかどうかを判定し、前記透光性カバーに異物が付着しているとの判定に応じて前記カバークリーナーを駆動させ、
前記透光性カバーに異物が付着していない場合に、前記第1データに基づいて前記対象物に関する情報を取得し、
前記透光性カバーに異物が付着している場合に、前記空間外に配置された第2センサから前記外部の周辺環境を示す第2データを取得した上で、当該取得した第2データに基づいて前記対象物に関する情報を取得する、ように構成されている。
【0008】
上記構成によれば、透光性カバーに異物が付着していない場合には、透光性カバーとハウジングによって形成された空間内に配置された第1センサにより取得された第1データに基づいて、センシングシステムの外部に存在する対象物に関する情報が取得される。一方で、透光性カバーに異物が付着している場合には、当該空間外に配置された第2センサにより取得された第2データに基づいて、対象物に関する情報が取得される。このように、透光性カバーに異物が付着している場合であっても、対象物に対する認知精度の低下を防止することが可能なセンシングシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、センシングシステム外部に存在する対象物に対する認知精度の低下を防止することが可能なセンシングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】左側センシングシステムのブロック図である。
【
図4】仮想鉛直スクリーン上に形成されたADB用配光パターンとロービーム用配光パターンの一例を概略的に示す図である。
【
図5】異物付着判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】リアカメラモジュールを備えた車両の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。尚、
図1では「前後方向」は示されていないが、「前後方向」は、左右方向及び上下方向に垂直な方向である。
【0013】
最初に、
図1及び
図2を参照して本実施形態に係る車両1及び車両システム2について説明する。
図1は、車両1の正面図を示す。
図2は、車両1に搭載された車両システム2のブロック図である。
【0014】
車両1は、
図2に示す車両システム2を備える。
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、左側センシングシステム4Lと、右側センシングシステム4Rとを備える。左側センシングシステム4Lと右側センシングシステム4Rは、車両用センシングシステムの一例である。さらに、車両システム2は、センサ5と、第2カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11とを備える。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0015】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。
【0016】
図3に示すように、左側センシングシステム4Lは、ロービーム用照明ユニット45Lと、ADB(Adaptive Driving Beam)用照明ユニット46Lと、第1カメラ43Lと、カバークリーナー47Lと、制御部20Lとを備える。ロービーム用照明ユニット45Lと、ADB用照明ユニット46Lと、第1カメラ43Lは、車両1の左前側に位置する空間SL内に配置されている(
図1参照)。
図1に示すように、空間SLは、ランプハウジング42L(ハウジングの一例)と透光性のランプカバー40L(透光性カバーの一例)とによって形成された灯室である。
【0017】
ロービーム用照明ユニット45Lは、例えば、光を出射する発光素子(例えば、LED)と、当該発光素子から出射された光を前方に向けて反射するリフレクタと、当該リフレクタで反射された光の一部を遮光するシェードとを有する。ロービーム用照明ユニット45Lは、車両1の前方領域にロービーム用配光パターンPL(
図4参照)を照射するように構成されている。
図4に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、車両1の25m前方に仮想的に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンである。ロービーム用配光パターンPLは、対向車線側カットオフラインCL1と、自車線側カットオフラインCL2と、これらのカットオフラインCL1,CL2に接続された斜めカットオフラインCL3を有する。
【0018】
ADB用照明ユニット46Lは、車両1の前方領域にADB用配光パターンPHを照射するように構成されている。ADB用配光パターンPHは、仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンである。ADB用配光パターンPHは、光が照射される照射領域PH1と、光が照射されない非照射領域PH2とを有する。特に、車両1の前方に前方車1A等の対象物が存在する場合には、ADB用照明ユニット46Lは、当該対象物が非照射領域PH2内に含まれるようにADB用配光パターンPHを車両1の前方に形成する。この場合、前方車1Aは、非照射領域PH2の左端部Elと右端部Erとの間に位置する。このように、前方車1A等の対象物にグレア光が与えられることが好適に防止される。一方、車両1の前方に対象物が存在しない場合には、ADB用照明ユニット46Lは、照射領域PH1のみからなるADB用配光パターン(つまり、ハイビーム用配光パターン)を車両1の前方に形成する。このように、ADB用照明ユニット46Lは、対象物の存在の有無に応じて、非照射領域PH2を有するADB用配光パターン又はハイビーム配光パターンを前方に向けて照射する。
【0019】
ADB用照明ユニット46Lは、例えば、マトリックス状(n行×m列、n,mは1以上の整数)に配列された複数の発光素子(例えば、LED)と、複数の発光素子から出射された光を通過させる投影レンズとを備えてもよい。この場合、各発光素子の点消灯が個別に制御されることで、ADB用照明ユニット46Lは、照射領域PH1と非照射領域PH2とを有するADB用配光パターンPHを車両1の前方に形成することができる。
【0020】
ADB用照明ユニット46Lの別の構成として、ADB用照明ユニット46Lは、例えば、光を出射する発光素子と、リフレクタと、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーと、投影レンズとを備えてもよい。リフレクタは、発光素子から出射された光をMEMSミラーに向けて反射するように構成される。MEMSミラーは、リフレクタによって反射された光を投影レンズに向けて反射するように構成される。MEMSミラーは、マトリックス状(n行×m列)に配列された複数の微小ミラー要素を備えている。複数の微小ミラー要素の各々の角度は、照明ユニット制御部23Lからの制御信号に応じて、光を投影レンズに向けて反射させる第1角度(ON状態)又は光を投影レンズに向けて反射させない第2角度(OFF状態)に設定される。このように、MEMSミラーの各微小ミラー要素の角度が制御されることで、ADB用照明ユニット46Lは、照射領域PH1と非照射領域PH2とを有するADB用配光パターンPHを車両1の前方に形成することができる。
【0021】
また、ADB用照明ユニット46Lの別の構成として、ADB用照明ユニット46Lは、光を出射する発光素子と、回転軸の周囲に複数のブレードが設けられた回転リフレクタとを備えたブレードスキャン方式の照明ユニットであってもよい。回転リフレクタは、回転軸を中心に一方向に回転しながら、発光素子から出射された光を反射することで、当該光を走査することができる。このように、回転リフレクタの回転に伴い、ADB用照明ユニット46Lは、照射領域PH1と非照射領域PH2とを有するADB用配光パターンPHを車両1の前方に形成することができる。
【0022】
第1カメラ43L(第1センサの一例)は、空間SL内に配置され、車両1の周辺環境を示す第1画像データ(第1データの一例)を取得するように構成されている。第1カメラ43Lは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子によって構成されてもよい。
【0023】
カバークリーナー47Lは、ランプカバー40Lの周辺に配置されており、ランプカバー40Lに付着した異物(例えば、雨粒、雪、泥、埃等)を除去することでランプカバー40Lを洗浄するように構成されている。カバークリーナー47Lは、洗浄液又は空気をランプカバー40Lに向けて噴射することでランプカバー40Lに付着した異物又は汚れを除去するように構成されてもよい。
【0024】
制御部20Lは、ロービーム用照明ユニット45Lと、ADB用照明ユニット46Lと、第1カメラ43Lと、カバークリーナー47Lとをそれぞれ制御するように構成されている。制御部20Lは、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステムと、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路(アナログ制御回路)を含む。プロセッサは、例えば、CPU、MPU、GPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。
【0025】
制御部20Lは、カメラ制御部21Lと、クリーナー制御部22Lと、照明ユニット制御部23Lとを備える。カメラ制御部21Lは、第1カメラ43Lの駆動を制御するように構成されていると共に、第1カメラ43Lから第1画像データを取得するように構成されている。さらに、カメラ制御部21Lは、後述するように、
図2に示す車両制御部3から第2カメラ6によって取得された第2画像データを取得するように構成されている。
【0026】
クリーナー制御部22Lは、カバークリーナー47Lを制御するように構成されている。特に、クリーナー制御部22Lは、第1画像データに基づいて、ランプカバー40Lに異物が付着しているかどうかを判定した上で、カバークリーナー47Lに異物が付着しているとの判定に応じて、カバークリーナー47Lを駆動させるように構成されている。
【0027】
照明ユニット制御部23Lは、ロービーム用照明ユニット45LとADB用照明ユニット46Lとを制御するように構成されている。特に、照明ユニット制御部23Lは、第1画像データ又は第2画像データに基づいて、車両1の周辺に存在する対象物(前方車や歩行者等)に関する情報を取得する。その後、照明ユニット制御部23Lは、当該取得された対象物に関する情報に基づいて、車両1の周辺に存在する対象物がADB用配光パターンPHの非照射領域PH2内に含まれるようにADB用照明ユニット46Lを制御するように構成されている(
図4参照)。対象物に関する情報は、例えば、対象物の角度位置に関する情報を含む。
【0028】
より具体的には、照明ユニット制御部23Lは、車両1の前方に前方車1Aが存在しないと判定した場合には、ハイビーム用配光パターン(即ち、照射領域PH1のみからなるADB用配光パターンPH)が前方に向けて出射されるようにADB用照明ユニット46Lを制御する。その一方で、照明ユニット制御部23Lは、車両1の前方に前方車1Aが存在すると判定した場合には、ADB用照明ユニット46Lの光軸に対する前方車1Aの角度位置θ(特に、前方車1Aの左端の角度位置と前方車1Aの右端の角度位置)を取得する。その後、照明ユニット制御部23Lは、前方車1Aの角度位置θに基づいて非照明領域PHを決定した上で、ADB用配光パターンPHが前方に向けて出射されるようにADB用照明ユニット46Lを制御する。
【0029】
右側センシングシステム4Rは、上記した左側センシングシステム4Lと同様の構成を有する。具体的には、
図1に示すように、右側センシングシステム4Rは、ロービーム用照明ユニット45Rと、ADB用照明ユニット46Rと、第1カメラ43Rと、カバークリーナー47Rと、図示しない制御部とを備える。ロービーム用照明ユニット45Rと、ADB用照明ユニット46Rと、第1カメラ43Rは、車両1の右前側に位置する空間SR内に配置されている。空間SRは、ランプハウジング42R(ハウジングの一例)と透光性のランプカバー40R(透光性カバーの一例)とによって形成された灯室である。右側センシングシステム4Rに設けられた各構成要素は、上記した左側センシングシステム4Lに設けられた各構成要素と同一の構成及び機能を有するため、ここでは説明を省略する。この点において、右側センシングシステム4Rに設けられた図示しない制御部は、
図3に示す制御部20Lと同一の機能及び構成を有する。
【0030】
図2に戻ると、センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。
【0031】
第2カメラ6は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子によって構成されている。第2カメラ6は、
図1に示すように、車両1のフロントウィンドウ70に対向するように車両1の室内に配置されている。第2カメラ6は、車両1の周辺環境を示す第2画像データ(第2データの一例)を取得した上で、当該第2画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、第2カメラから送信された第2画像データとメモリ内に保存された学習済みモデルとに基づいて、車両の周辺環境を示す周辺環境情報(即ち、対象物の属性や位置情報等)を特定してもよい。
【0032】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及びレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0033】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(例えば、Head Up Display(HUD)等)である。GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0034】
無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報を他車から受信すると共に、車両1に関する情報を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1は、他車両、インフラ設備若しくは携帯型電子機器とアドホックモードにより直接通信してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して通信してもよい。
【0035】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置11には、2次元又は3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0036】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両1の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0037】
次に、
図5を参照して左側センシングシステム4Lによって実行される異物付着判定処理について以下に説明する。
図5は、異物付着判定処理を説明するためのフローチャートである。尚、右側センシングシステム4Rも同様の異物付着判定処理を実行するものとする。
【0038】
図5に示すように、ステップS1において、クリーナー制御部22Lは、ランプカバー40Lに異物(雨粒、雪、泥、埃等)が付着していないかどうかを判定する異物付着判定を開始する。ステップS2において、クリーナー制御部22Lは、第1カメラ43Lによって取得された第1画像データに基づいて、ランプカバー40Lに異物が付着しているかどうかを判定する。この点において、第1カメラ43Lは空間SL内に配置されているため、第1カメラ43Lの視野内にはランプカバー40Lが含まれる。このため、ランプカバー40Lに異物が存在する場合には、第1画像データから異物の存在を特定可能となる。
【0039】
具体的には、クリーナー制御部22Lは、第1画像データを構成する各ピクセルの輝度に相関する画素値が所定の閾値以上であるかどうかを判定する。ここで、ピクセルの画素値は、ピクセルの輝度に相関する。つまり、ピクセルの輝度が大きい程、ピクセルの画素値は大きくなる一方で、ピクセルの輝度が小さい程、ピクセルの画素値は小さくなる。次に、クリーナー制御部22Lは、画素値が所定の閾値以上のピクセルを特定した上で、画素値が所定の閾値以上のピクセルに関連する情報に基づいて、ランプカバー40Lに異物が付着しているかどうかを判定する。この点において、異物付着判定は、車両1の周囲が暗い状況(例えば、夜)において実行されることが好ましい。車両1の周囲が暗い状況では、ロービーム用照明ユニット45L及び/又はADB用照明ユニット46L(以下、照明ユニット)から光が前方に向けて出射される。つまり、照明ユニットから出射された光がランプカバー40Lを通過する。ランプカバー40Lに異物が付着している場合には、照明ユニットから出射された光が異物によって反射された上で、当該反射光が第1カメラ43Lに入射する。このように、第1カメラ43Lによって撮像された第1画像データでは、異物が存在する領域に属するピクセルの画素値(輝度)は、異物が存在しない領域に属するピクセルの画素値(輝度)よりも大きくなる。このように、第1画像データの各ピクセルの画素値に着目することで異物が存在する領域に属するピクセルを特定することが可能となる。
【0040】
また、画素値が所定の閾値以上のピクセルに関連する情報としては、例えば、1)画素値が所定の閾値以上のピクセルから構成されるピクセル群の面積、2)画素値が所定の閾値以上のピクセルの個数、又は3)第1画像データを構成する全ピクセルに対する画素値が所定の閾値以上のピクセルの比率である。
【0041】
即ち、クリーナー制御部22Lは、画素値が所定の閾値以上のピクセルから構成されるピクセル群の面積が所定の面積以上であれば、ランプカバー40Lに異物が付着していると判定してもよい。反対に、クリーナー制御部22Lは、当該ピクセル群の面積が所定の面積よりも小さければ、ランプカバー40Lに異物が付着していないと判定してもよい。また、クリーナー制御部22Lは、画素値が所定の閾値以上のピクセルの個数が所定の個数以上であれば、ランプカバー40Lに異物が付着していると判定してもよい。反対に、クリーナー制御部22Lは、画素値が所定の閾値以上のピクセルの個数が所定の個数よりも小さければ、ランプカバー40Lに異物が付着していないと判定してもよい。さらに、クリーナー制御部22Lは、第1画像データを構成する全ピクセルに対する画素値が所定の閾値以上のピクセルの比率が所定の比率以上であれば、ランプカバー40Lに異物が付着していると判定してもよい。反対に、クリーナー制御部22Lは、当該比率が所定の比率よりも小さければ、ランプカバー40Lに異物が付着していないと判定してもよい。
【0042】
次に、クリーナー制御部22Lは、ランプカバー40Lに異物が付着していると判定した場合に(ステップS2でYES)、車両制御部3に第2カメラ6によって取得された第2画像データを転送するように要求する。その後、クリーナー制御部22Lは、車両制御部3から第2画像データを受信する。次に、照明ユニット制御部23Lは、第2画像データに基づいて、前方車等の対象物に関する情報(特に、前方車の角度位置に関する情報)を取得する(ステップS3)。その後、照明ユニット制御部23Lは、対象物がADB用配光パターンPHの非照射領域PH2内に位置するようにADB用照明ユニット46LからADB用配光パターンPHを照射させる。
【0043】
次に、クリーナー制御部22Lは、ランプカバー40Lに付着した異物を除去するためにカバークリーナー47Lを駆動させる(ステップS4)。その後、再びランプカバーに異物が付着しているかどうかを判定する処理(ステップS2の処理)を実行する。
【0044】
一方、クリーナー制御部22Lがランプカバー40Lに異物が付着していないと判定した場合に(ステップS2でNO)、照明ユニット制御部23Lは、第1カメラ43Lによって取得された第1画像データに基づいて、前方車等の対象物に関する情報(特に、前方車の角度位置に関する情報)を取得する(ステップS5)。その後、照明ユニット制御部23Lは、対象物がADB用配光パターンPHの非照射領域PH2内に位置するようにADB用照明ユニット46LからADB用配光パターンPHを照射させる。
【0045】
次に、クリーナー制御部22Lは、異物付着判定を終了する場合(ステップS6でYES)、
図5に示す一連の処理を終了する。一方、クリーナー制御部22Lは、異物付着判定を終了しない場合(ステップS6でNO)、ステップS2の処理を再び実行する。
【0046】
本実施形態によれば、ランプカバー40Lに異物が付着していない場合には、ランプカバー40Lとランプハウジング42Lによって形成された空間SL内に配置された第1カメラ43Lからの第1画像データに基づいて、車両1の外部に存在する対象物の角度位置に関する情報が取得される。その後、対象物の角度位置に関する情報に基づいて、ADB用配光パターンPHの照射が制御される。一方で、ランプカバー40Lに異物が付着している場合には、車両1の室内に配置された第2カメラ6からの第2画像データに基づいて、対象物の角度位置に関する情報が取得される。その後、対象物の角度位置に関する情報に基づいて、ADB用配光パターンPHの照射が制御される。このように、ランプカバー40Lに異物が付着している場合であっても、対象物に対する認知精度の低下を防止することが可能な左側センシングシステム4Lを提供することができる。さらに、前方車の乗員に対してグレア光が照射されてしまうといった状況を好適に防止することが可能となる。
【0047】
この点において、第2カメラ6がフロントウィンドウ70に対向するように車両1の室内に配置されているため、第2カメラ6に異物が付着する状況が防止される。さらに、第2カメラ6の視野内に位置するフロントウィンドウ70に付着した異物は、フロントウィンドウ70に設けられた図示しないワイパーによって確実に除去される。このように、第2カメラ6に取得された第2画像データに異物が映り込んでしまう状況が好適に防止される。したがって、ランプカバー40Lに異物が付着している場合であっても、制御部20Lは、異物が映り込んでいない第2画像データに基づいて対象物に関する情報を確実に取得することができる。このため、制御部20Lは、前方車がADB用配光パターンPHの非照射領域PH2に含まれるようにADB用配光パターンPHの照射を制御することができるので、前方車の乗員にグレア光を与えてしまう状況を好適に防止することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、第1カメラ43Lにより取得された第1画像データに基づいてランプカバー40Lに異物が付着しているかどうかが判定される。さらに、ランプカバー40Lに異物が付着していない場合には、第1画像データに基づいて前方車等の対象物に関する情報が取得される。このように、対象物及び異物の両方の存在を特定するために第1画像データを効率的に活用することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0050】
例えば、本実施形態では、透光性カバー及びハウジングの一例として、ランプカバー及びランプハウジングを挙げているが、本実施形態の透光性カバーとハウジングは、これらに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、車両1Bの後側に設置されたリアカメラモジュール43bの透光性カバーとハウジングが透光性カバーとハウジングの別の一例であってもよい。この場合、リアカメラモジュール43bは、車両1Bの後方領域を示す周辺環境情報を取得するように構成されている。リアカメラモジュール43bは、透光性カバーと、ハウジングと、第1カメラとを備える。第1カメラは、リアカメラモジュール43bの透光性カバーとハウジングとにより形成された空間内に配置され、第1画像データを取得するように構成される。また、カバークリーナー47bがリアカメラモジュール43bの周辺に設けられており、リアカメラモジュール43bの透光性カバーに付着した異物を除去するように構成される。さらに、第2画像データを取得する第2カメラ6aが車両1Bのリアウィンドウ80に対向するように車両1Bの室内に配置されている。
【0051】
また、車両センシングシステム4bは、リアカメラモジュール43bと、カバークリーナー47bと、ECUから構成される制御部(図示せず)とにより構成される。車両センシングシステム4bは、
図5に示す異物付着判定処理を実行するように構成されてもよい。車両センシングシステム4bは、リアカメラモジュール43bの透光性カバーに異物が付着しているかどうかの判定結果に応じて、第1カメラによって取得された第1画像データ又は第2カメラ6aによって取得された第2画像データのうちいずれか一方を採用する。その後、車両センシングシステム4bは、採用した第1画像データ又は第2画像データのいずれか一方に基づいて、車両1Bの後方領域を示す周辺環境情報を特定してもよい。
【0052】
このように、リアカメラモジュール43bの透光性カバーに異物が付着している場合であっても、周辺環境情報に対する認知精度の低下を防止可能な車両センシングシステム4bを提供することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、第1センサと第2センサの一例として、第1カメラ及び第2カメラを挙げているが、本実施形態の第1センサ及び第2センサは、カメラに限定されるものではない。例えば、第1カメラの代わりに第1LiDARユニットが採用されると共に、第2カメラの代わりに第2LiDARユニットが採用されてもよい。
図3に示す左側センシングシステム4Lは、ランプカバー40Lに異物が付着しているかどうかの判定結果に応じて、第1LiDARユニットによって取得された第1点群データ又は第2LiDARによって取得された第2点群データのうちいずれか一方を採用してもよい。その後、左側センシングシステム4Lは、採用した第1点群データ又は第2点群データのいずれか一方に基づいて、車両1の周辺領域を示す周辺環境情報を特定してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、車両に搭載された車両用センシングシステムについて説明しているが、センシングシステムは車両用センシングシステムに限定されるものではない。この点において、センシングシステムは道路上に設置された監視カメラ用のセンシングシステムであってもよい。この場合、監視カメラ用のセンシングシステムは、第1監視カメラユニットと、第2監視カメラユニットと、制御部と、カバークリーナーとを備える。第1監視カメラユニットは、透光性カバーとハウジングによって形成された空間内に配置され、周辺環境を示す第1画像データを取得するように構成されている。一方、第2監視カメラユニットは、透光性カバーとハウジングによって形成された空間の外に配置され、周辺環境を示す第2画像データを取得するように構成されている。制御部は、例えば、プロセッサとメモリとを有するマイクロコントローラによって構成される。カバークリーナーは、透光性カバーの周辺に設けられており、透光性カバーに付着した異物を除去するように構成される。制御部は、透光性カバーに異物が付着していない場合には、第1監視カメラユニットによって取得された第1画像データに基づいて歩行者や車両等の対象物に関する情報を取得する。一方、制御部は、透光性カバーに異物が付着している場合には、第2監視カメラユニットによって取得された第2画像データに基づいて当該対象物に関する情報を取得する。このように、本実施形態に係るセンシングシステムは、監視カメラ用のセンシングシステムとしても十分に機能を発揮する。
【0055】
本出願は、2020年8月24日に出願された日本国特許出願(特願2020-141045号)に開示された内容を適宜援用する。