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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-13
(45)【発行日】2025-05-21
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/56 20060101AFI20250514BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250514BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20250514BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20250514BHJP
【FI】
C08G59/56
C09K3/10 L
H01L23/30 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022549774
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043352
(87)【国際公開番号】W WO2022118749
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020200901
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】河村 信哉
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】岸 智之
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110051号公報(JP,A)
【文献】特開2012-188629号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
H01L23/28-23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、
(B)エポキシ樹脂と、
を含む封止用樹脂組成物であって、
前記封止用樹脂組成物全体に対して、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール(A)を0.02質量%以上、0.5質量%以下の量で含
マレイミド化合物を含まない、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
さらにシランカップリング剤(C)を含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに無機充填剤(D)を含む、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに硬化剤(E)を含み、
硬化剤(E)が、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂を含む、請求項1~3のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(B)が、結晶性エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1~4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂(B)が、結晶性エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1~4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記封止用樹脂組成物の硬化物の常温(25℃)における曲げ弾性率が15,000MPa以上である、請求項1~のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
175℃における溶融粘度が30Pa・s以下である、請求項1~のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
以下の方法で測定された175℃での矩形圧が0.1kgf/cm~20.0kgf/cmである、請求項1~のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
(測定方法)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入速度177mm/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定する。次いで、測定結果から、封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力を算出して、この最低圧力を矩形圧とする。
【請求項10】
常温(25℃)で固体である、請求項1~のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項11】
タブレット状、粒子状又はシート状である、請求項1~10のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項12】
トランスファー成型、射出成型、または圧縮成型に用いられる、請求項1~11のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項13】
半導体素子と、
前記半導体素子を封止する、請求項1~12のいずれかに記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を封止するための封止用樹脂組成物として特許文献1に記載のものがある。同文献には、金属のイオン移動やイオン性のハロゲンによる電蝕を防止し、耐湿性に優れた、かつ従来組成物のメリットを保持した封止用樹脂組成物を提供することを目的とする技術として、エポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、所定量の2-ビニル-4,6-ジアミノ-s-トリアジンおよび所定量の無機質充填剤を含む封止用樹脂組成物について記載されている。同文献には、2-ビニル-4,6-ジアミノ-s-トリアジンを所定量配合すれば、電食を防止し、耐湿性に優れた封止用樹脂組成物が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-25118号公報
【文献】特開2010-065160号公報
【文献】特開2015-067618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が、特許文献1に記載の技術について検討したところ、同文献に記載の封止用樹脂組成物は成形性が低く、当該組成物から得られる硬化物は、金属部材との密着性および製品信頼性の点で、改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、所定のトリアゾール骨格を有する化合物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0006】
本発明によれば、
(A)3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、
(B)エポキシ樹脂と、を含む封止用樹脂組成物を提供することができる。
【0007】
本発明によれば、
半導体素子と、
前記半導体素子を封止する、前記封止用樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の封止用樹脂組成物は成形性に優れ、さらに当該組成物から得られる硬化物は、金属部材との密着性および製品信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0011】
[封止用樹脂組成物]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、
(A)3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、
(B)エポキシ樹脂と、
を含む。
以下に、本実施形態の封止用樹脂組成物に含まれる各成分を説明する。
【0012】
(化合物(A))
化合物(A)は、アミノトリアゾール化合物であり、具体的には、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールである。
当該化合物を用いることにより、銀、銅、ニッケル等の金属部材との密着性に優れ、さらに成形性および製品信頼性に優れる。
【0013】
封止用樹脂組成物中の化合物(A)の含有量は、封止材(硬化物)と金属部材との密着性を安定的に向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.04質量%以上である。また、封止用樹脂組成物の流動性(成形性)、弾性率を好ましいものとする観点から、化合物(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0014】
[エポキシ樹脂(B)]
エポキシ樹脂(B)は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0015】
エポキシ樹脂(B)は、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0016】
金属部材との密着性を向上する観点から、エポキシ樹脂(B)は、好ましくは、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、オルソクレゾール型二官能エポキシ樹脂、ビフェニル型二官能エポキシ樹脂およびビスフェノール型二官能エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
同様の観点から、エポキシ樹脂(B)は、好ましくは、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、3,3',5,5'-テトラメチルビフェニルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上であり、
より好ましくは、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、3,3',5,5'-テトラメチルビフェニルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上であり、
さらに好ましくはビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂である。
【0017】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる装置の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。
【0018】
また、封止用樹脂組成物は、好ましくはマレイミド化合物を含まない。封止用樹脂組成物が化合物(A)およびエポキシ樹脂(B)を含むとともにマレイミド化合物を含まない構成とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて得られる封止材と金属部材との密着性を向上しつつ、封止用樹脂組成物の低温での硬化性をさらに向上することができる。
ここで、マレイミド化合物は、具体的には、マレイミド基を2つ以上有する化合物である。また、封止用樹脂組成物には、好ましくはマレイミド化合物が意図的に配合されておらず、封止用樹脂組成物中のマレイミド化合物の含有量は、好ましくは実質的に0質量%であり、たとえば検出限界以下である。
【0019】
[シランカップリング剤(C)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、シランカップリング剤(C)を含むことができる。
シランカップリング剤(C)として、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシランが挙げられる。封止材と金属部材との密着性を向上する観点から、シランカップリング剤(C)は、好ましくはエポキシシランまたはアミノシランであり、より好ましくは2級アミノシランである。
同様の観点から、シランカップリング剤(C)は、好ましくはフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1つ以上であり、
より好ましくはフェニルアミノプロピルトリメトキシシランである。
【0020】
封止用樹脂組成物中のシランカップリング剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
また、樹脂粘度の増粘抑制の観点から、封止用樹脂組成物中のシランカップリング剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0021】
(無機充填材(D))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材(D)を含むことができる。
無機充填材(D)として、一般的に半導体封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。また、無機充填材(D)は表面処理がなされているものであってもよい。
【0022】
無機充填材(D)の具体例として、溶融シリカ等、結晶シリカ、非晶質二酸化珪素等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
無機充填材(D)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含む。シリカの形状としては、球状シリカ、破砕シリカ等が挙げられる。
【0024】
無機充填材(D)の平均径(D50)は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
ここで、無機充填材(D)の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより取得することができる。
【0025】
また、無機充填材(D)の最大粒径は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0026】
また、無機充填材(D)の比表面積は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは1m/g以上であり、より好ましくは3m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下であり、より好ましくは10m/g以下である。
【0027】
封止用樹脂組成物中の無機充填材(D)の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填材(D)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対してたとえば97質量%以下であってもよく、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
従来の封止用樹脂組成物は、得られる封止材の絶縁性等の観点から無機充填材を上記の量で含む場合、流動性が低下したり、金属部材との密着性が低下することがあった。本実施形態の封止用樹脂組成物は、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール(A)を含むことにより、流動性に優れ、さらに金属部材との密着性に優れた硬化物(封止材)を得ることができる。言い換えれば、本実施形態の成分(A)を含む封止用樹脂組成物は、これらの特性のバランスに優れる。
【0028】
[硬化剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化剤をさらに含んでもよい。硬化剤は、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
重付加型の硬化剤としては、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0030】
触媒型の硬化剤としては、たとえばベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0031】
縮合型の硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂硬化剤が好ましい。フェノール樹脂硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は限定されない。
【0033】
硬化剤に用いられるフェノール樹脂硬化剤としては、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格およびビフェニレン骨格の少なくとも1つを有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよびビフェニレン骨格の少なくとも1つを有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体装置の絶縁特性を向上させる観点から、トリスフェノールメタン型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂およびビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型・ホルムアルデヒド重縮合物からなる群から選択される1種または2種以上を用いることがより好ましい。
【0034】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対してたとえば0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0035】
[その他の成分]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえば硬化促進剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、低応力成分、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。また、封止用樹脂組成物は、たとえば、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミドおよび3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールのうち1以上をさらに含んでもよい。
【0036】
このうち、硬化促進剤は、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物;2,3-ジヒドロキシナフタレン等のポリヒドロキシナフタレン化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
【0037】
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0038】
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;パラフィン;およびエルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドからなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
封止用樹脂組成物中の離型剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化物の離型性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0039】
イオン捕捉剤の具体例として、ハイドロタルサイトが挙げられる。
封止用樹脂組成物中のイオン捕捉剤の含有量は、封止材の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0040】
低応力成分の具体例として、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー、シリコーンレジン等のシリコーン;アクリロニトリルブタジエンゴムが挙げられる。
封止用樹脂組成物中の各低応力成分の含有量は、封止材の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0041】
難燃剤の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンが挙げられる。
封止用樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、封止材の難燃性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0042】
着色剤の具体例として、カーボンブラック、ベンガラが挙げられる。
封止用樹脂組成物中の着色剤の含有量は、封止材の色調の好ましいものとする観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0043】
酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0044】
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であり、その形状は封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状;粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0045】
また、封止用樹脂組成物の製造方法については、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0046】
本実施形態において得られる封止用樹脂組成物は、成分(A)および成分(B)を含むため、金属部材との密着性に優れたものである。さらに具体的には、本実施形態によれば、封止材と、Ag、Ni、Cuまたはこれらの1以上を含む合金により構成された部材との密着性を向上することも可能となる。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、トランスファー成型、射出成型、または圧縮成型に用いることができる。
また、本実施形態において得られる封止用樹脂組成物を用いることにより、信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0047】
本実施形態の封止用樹脂組成物の175℃の溶融粘度は、30Pa・s以下、好ましくは20Pa・s以下である。これにより、成形性に優れ、封止用樹脂組成物で半導体素子を封止する場合、加工安定性に優れる。
【0048】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、以下の方法で測定された175℃での矩形圧が0.1kgf/cm~20.0kgf/cm、好ましくは0.5kgf/cm~15.0kgf/cmである。
これにより、本実施形態の封止樹脂組成物は、基板と半導体素子との間隙中への充填性をより高めることができる。
【0049】
(測定方法)
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入速度177mm/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定する。次いで、測定結果から、封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力を算出して、この最低圧力を矩形圧とする。
【0050】
次に、封止用樹脂組成物またはその硬化物の物性について説明する。
本実施形態の(A)成分を含む封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、曲げ強度が高く、従来の密着付与剤を含む硬化物に比べて曲げ弾性率の上り幅が小さいため、機械強度および製品信頼性に優れた封止材を提供することができる。
本実施形態の樹脂成形材料を175℃、120秒の条件で硬化させたときの硬化物の、常温(25℃)における曲げ弾性率が、15,000MPa以上、好ましくは16,000MPa以上、より好ましくは17,000MPa以上である。上限値は特に限定されないが30,000MPa以下とすることができる。
前記硬化物の260℃における曲げ弾性率が、200MPa以上、好ましくは250MPa以上、より好ましくは300MPa以上である。上限値は特に限定されないが2000MPa以下とすることができる。
【0051】
本実施形態の樹脂成形材料を175℃、120秒の条件で硬化させたときの硬化物は、常温(25℃)における曲げ強度が、30MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。上限値は特に限定されないが200MPa以下とすることができる。
前記硬化物の260℃における曲げ強度が、3MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは7MPa以上である。上限値は特に限定されないが50MPa以下とすることができる。
【0052】
本実施形態の封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、金属部材との密着性に優れており、製品信頼性に優れた封止材を提供することができる。
本実施形態の封止用樹脂組成物を、銅板上で175℃、180秒の条件で硬化させた硬化物を得、さらに、175℃で3時間加熱した際、銅板と硬化物とのダイシェア強度が、室温(25℃、以下同じ。)において、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは12MPa以上である。このように設定することで、たとえば、半導体装置として発熱の大きい素子を用いた場合や、より高温条件に曝される装置を作製する場合であっても、一段と高い信頼性を確保することができる。
同様の観点から、銅板上で上記の条件で硬化させて硬化物を得、さらに上記条件で加熱した際、銅板と硬化物とのダイシェア強度は、260℃において、好ましくは0.95MPa以上であり、より好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.1MPa以上である。
このダイシェア強度の上限値は限定されないが、室温または260℃において、たとえば、30MPa以下である。
【0053】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物を、ニッケル板上で175℃、180秒の条件で硬化させた硬化物を得、さらに、175℃で3時間加熱した際、ニッケル板と硬化物とのダイシェア強度が、室温において、好ましくは5.0MPa以上であり、より好ましくは7.0MPa以上、さらに好ましくは7.5MPa以上、さらにより好ましくは10MPa以上である。このように設定することで、たとえば、半導体装置として発熱の大きい素子を用いた場合や、より高温条件に曝される装置を作製する場合であっても、一段と高い信頼性を確保することができる。
同様の観点から、ニッケル板上で上記の条件で硬化させて硬化物を得、さらに上記条件で加熱した際、ニッケル板と硬化物とのダイシェア強度は、260℃において、好ましくは0.5MPa以上であり、より好ましくは0.7MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上である。
このダイシェア強度の上限値は限定されないが、室温または260℃において、たとえば、30MPa以下である。
【0054】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物を、銀板上で175℃、180秒の条件で硬化させた硬化物を得、さらに、175℃で3時間加熱した際、銀板と硬化物とのダイシェア強度が、室温において、好ましくは12MPa以上であり、より好ましくは15MPa以上である。このように設定することで、たとえば、半導体装置として発熱の大きい素子を用いた場合や、より高温条件に曝される装置を作製する場合であっても、一段と高い信頼性を確保することができる。
同様の観点から、銀板上で上記の条件で硬化させて硬化物を得、さらに上記条件で加熱した際、銀板と硬化物とのダイシェア強度は、260℃において、好ましくは0.95MPa以上であり、より好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.1MPa以上である。
このダイシェア強度の上限値は限定されないが、室温または260℃において、たとえば、40MPa以下である。
【0055】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されているものである。半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0056】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0057】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、たとえば、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0058】
図1および図2は、いずれも、半導体装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、半導体装置の構成は、図1および図2に示すものには限られない。
まず、図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
封止材50は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0059】
また、図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40としては、限定されないが、たとえば、Ag線、Ni線、Cu線、Au線、Al線が挙げられ、好ましくは、ワイヤ40はAg、NiまたはCuあるいはこれらの1種以上を含む合金で構成される。
【0060】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
本実施形態において、封止材50は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。このため、半導体装置100においては、封止材50とワイヤ40との密着性に優れており、これにより、半導体装置100は信頼性に優れるものである。
封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0061】
図2は、本実施形態における半導体装置100の構成を示す断面図であって、図1とは異なる例を示すものである。図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、図1に示す例と同様にして、本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0062】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0063】
以下、本実施形態を、実施例および比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0064】
実施例においては以下の成分を用いた。
(無機充填材)
・無機充填材1:溶融球状シリカ、TS13-006、マイクロン社製(平均径28μm、比表面積2.5m2/g、上限カット75μm)
・無機充填材2:溶融球状シリカ、FB-105、デンカ社製(平均径10.6μm、比表面積5.1m2/g、上限カット71μm)
・無機充填材3:溶融球状シリカ、SC-2500-SQ、アドマテックス社製
・無機充填材4:シリカ、マイクロン社製(平均径2μm)
・無機充填材5:溶融球状シリカ(体積平均粒径23μm)、FB-950、デンカ社製
【0065】
(着色剤)
・着色剤1:カーボンブラック、ERS-2001、東海カーボン社製
【0066】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、CF-4083、東レ・ダウコーニング社製
・シランカップリング剤2:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、GPS-M、JNC社製
・シランカップリング剤3:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チッソ社製
【0067】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、NC3000、日本化薬社製
・エポキシ樹脂2:3,3',5,5'-テトラメチルビフェニルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、YX4000K、三菱ケミカル社製
・エポキシ樹脂3:ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂、エピクロンHP-7200L、DIC社製
・エポキシ樹脂4:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、HP-6000L、DIC社製、
【0068】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂、MEH-7851SS、明和化成社製
・硬化剤2:以下の方法により合成されたMFBA型フェノールを用いた。
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、1,3-ジヒドロキシベンゼン(東京化成工業社製、「レゾルシノール」、融点111℃、分子量110、純度99.4%)291質量部、フェノール(関東化学社製特級試薬、「フェノール」、融点41℃、分子量94、純度99.3%)235質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4’-ビスクロロメチルビフェニル(和光純薬工業社製、「4,4’-ビスクロロメチルビフェニル」、融点126℃、純度95%、分子量251)125質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。
その後、系内温度を110~130℃の範囲に維持しながら3時間反応させた後、加熱し、140~160℃の範囲に維持しながら3時間反応させた。なお、上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。
反応終了後、150℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分を留去した。次いで、トルエン400質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分等の揮発成分を留去し、下記式(1A)で表されるフェノール樹脂硬化剤(重合体)を得た。
なお、このフェノール樹脂硬化剤における水酸基当量は135であった。
また、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD-MS)により測定・分析された相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られた、水酸基が1個の構造単位の繰り返し数kの平均値k0、水酸基が2個の構造単位の繰り返し数mの平均値m0の比k0/m0は、0.98/1であり、数平均分子量は460であった。
なお、前記数平均分子量はWaters社製アライアンス(2695セパレーションズモデュール、2414リフラクティブインデックスディテクター、TSKゲルGMHHR-Lx2+TSKガードカラムHHR-Lx1、移動相:THF、0.5ml/分)を用い、カラム温度40.0℃、示差屈折率計温度40.0℃、サンプル注入量100μlの条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定した。
【化1】
(式(1A)中、2つのYは、それぞれ互いに独立して、下記式(1B)または下記式(1C)で表されるヒドロキシフェニル基を表し、Xは、下記式(1D)または下記式(1E)で表されるヒドロキシフェニレン基を表す。)
【化2】
【0069】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム・4,4’-スルフォニルジフェノラート
【0070】
(離型剤)
・離型剤1:カルナバワックス、TOWAX-132、東亜合成社製
・離型剤2:酸化ポリエチレンワックス、リコワックス PED191、クラリアント・ジャパン社製
【0071】
(イオン捕捉剤)
イオン捕捉剤1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート、DHT-4H、協和化学工業社製
【0072】
(添加剤)
・添加剤1:3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、四国化成社製
【0073】
(低応力剤)
・低応力剤1:シリコーンオイル、FZ-3730、東レダウコーニング社製
・低応力剤2:以下の方法により調製された溶融反応物を用いた。
下記式(2)で表されるエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)[ジャバンエポキシレジン(株)製、jER(登録商標)YL6810、軟化点45℃、エポキシ当量172]66.1重量部を140℃で加温溶融し、下記式(3)で示されるオルガノポリシロキサン33.1重量部及びトリフェニルホスフィン0.8重量部を添加して、30分間溶融混合して溶融反応物を得た。
【化3】
【化4】
(式(3)中、nの平均値は7.5である。)
・低応力剤3:アクリロニトリルブタジエンゴム、CTBN1008SP、宇部興産社製
・低応力剤4:シリコーンレジン、KR-480、信越化学工業社製
・低応力剤5:エポキシ化ポリブタジエン、JP200、日本曹達社製
【0074】
(実施例1~2、比較例1~2)
表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
【0075】
<評価>
各例で得られた樹脂組成物または当該組成物を用いて以下の方法で評価用試料を作製し、得られた試料の密着性および信頼性を以下の方法で評価した。
[スパイラルフロー(SF)]
実施例および比較例の封止用樹脂組成物を用いてスパイラルフロー試験を行った。
試験は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定することにより行った。数値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0076】
[ゲルタイム(GT)]
175℃に加熱した熱板上で実施例および比較例の封止用樹脂組成物をそれぞれ溶融後、へらで練りながら硬化するまでの時間(単位:秒)を測定した。
【0077】
[溶融粘度]
実施例および比較例のそれぞれの封止用樹脂組成物について、高化式フローテスター(島津製作所(株)製、CFT-500C)を用いて、温度175℃、荷重40kgf(ピストン面積1cm)、ダイ穴直径0.50mm、ダイ長さ1.00mmの試験条件で溶解した封止用エポキシ樹脂組成物のみかけの粘度ηを測定した。ηは、以下の計算式より算出し、流動時における最低粘度を溶融粘度とした。計算式中、Qは単位時間あたりに流れる封止用エポキシ樹脂組成物の流量である。
η=(πD4 P×10/128LQ)(Pa・秒)
η:みかけの粘度
D:ダイ穴直径(mm)
P:試験圧力(Pa)
L:ダイ長さ(mm)
Q:フローレート(cm/秒)
【0078】
[矩形圧]
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入速度177mm/秒の条件にて、幅15mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定する。次いで、測定結果から、封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力を算出して、この最低圧力を矩形圧とした。
【0079】
[機械的強度の評価(曲げ強度および曲げ弾性率)]
封止用樹脂組成物を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間120秒の条件で金型に注入成形した。これにより、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間の条件で後硬化させた。これにより、機械的強度の評価用の試験片を作製した。そして、試験片の260℃または常温(25℃)における曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0080】
[密着性]
各例で得られた封止用樹脂組成物について、密着性の指標として、以下の方法でポストモールドキュア(PMC)におけるダイシェア強度を測定した。
各例で得られた封止用樹脂組成物について、低圧トランスファー成形機(山城精機社製、「AV-600-50-TF」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒の条件で、9×29mmの短冊状の試験用銅リードフレーム上、銀メッキリードフレーム上若しくはニッケル板上に3.6mmφ×3mmの密着強度試験片を10個成形した。
その後、175℃3時間の条件で硬化したサンプルについて、自動ダイシェア測定装置(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、DAGE4000型)を用いて、室温(RT)若しくは260℃にてダイシェア強度を測定することで、ダイシェア強度(MPa)を求めた。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2をそれぞれ対比すると、各実施例で得られた封止用樹脂組成物は3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールを含むことにより流動性に優れ、さらに得られる硬化物は金属部材との密着性に優れるとともに機械強度に優れていた。また、各実施例で得られた封止用樹脂組成物を用いることにより、信頼性に優れる半導体装置が得られた。
【0083】
この出願は、2020年12月3日に出願された日本出願特願2020-200901号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0084】
20 半導体素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール
100 半導体装置
図1
図2