(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-13
(45)【発行日】2025-05-21
(54)【発明の名称】インク印刷時のインクの温度を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20250514BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250514BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20250514BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20250514BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/01 451
B41J2/175 501
B41J2/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024139129
(22)【出願日】2024-08-20
【審査請求日】2024-09-10
(31)【優先権主張番号】10 2023 122 268.6
(32)【優先日】2023-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ハウプトマン
(72)【発明者】
【氏名】エアンスト-クリスティアン マシュラー
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-124195(JP,A)
【文献】特開2024-6606(JP,A)
【文献】特開2009-285845(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3222429(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク分配器(20)の供給管路(21)および戻し管路(22)を通り、前記供給管路(21)と前記戻し管路(22)との間で、インク(5)が並列に供給される印刷ヘッド(2)によって前記インク(5)が圧送される、インク印刷時のインクの温度を閉ループ制御する方法であって、温度実際値と、あらかじめ設定した温度目標値とを比較し、
前記温度目標値
と温度実際値
との差分から、インク加熱部(12)の目標値についての操作量を計算する、方法において、
前記供給管路(21)と前記戻し管路(22)との間で、かつ前記印刷ヘッド(2)に並列に流量センサ(32)を作動させ、前記インク(5)の流量を測定するか、または流量に依存する測定信号を生成し、それぞれあらかじめ設定した特性曲線を介して、前記流量または前記測定信号を温度補助値に変換し、前記温度実際値として、または前記温度目標値として前記温度補助値を閉ループ制御に使用する、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記流量に依存する前記測定信号は、次の測定信号、すなわち、パルスレートまたはパルス間隔またはアナログ電圧のうちの1つである、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記特性曲線は、前記インク(5)の測定した温度と、前記インク(5)の前記流量または前記流量に依存する前記測定信号との間の特性曲線である、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
既知の粘度のインク(5)を使用して前記特性曲線を特定する、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記流量センサ(32)の入力側と出力側との間の、前記インク(5)の圧力差分を一定に保つ、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのポンプ(13)によって前記インク(5)の圧力を生成し、前記ポンプ(13)を閉ループ制御して作動させる、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記インク(5)の前記圧力を閉ループ制御するために少なくとも1つの圧力センサ(31)を使用する、請求項
6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を備えた、インク印刷時のインクの温度を閉ループ制御する方法に関する。
【0002】
発明の分野
本発明のベースにあるのは、グラフィック工業の技術分野であり、しかもこの技術分野において特に、工業的な、すなわち、平坦な基材における高生産のインク印刷(インクジェット)の、すなわち、好ましくは紙、厚紙、ボール紙、プラスチック、金属または複合材料から成る枚葉紙状、ウェブ状、シート状またはラベル状の被印刷物に、液体インクから成る微細な液滴を画像として被着する分野である。特に、本発明のベースにあるのは、インク液滴を吐出する印刷ヘッドに液体インクを循環式に供給し、その際に液体インクの温度を閉ループ制御する下位区分である。
【0003】
背景技術
工業的なインク印刷において既に公知であるのは、並列にインクが供給される複数のインク印刷ヘッドに循環式にインク液を供給するための装置、すなわちインク回路を設けることである。このような装置には、インク用の貯蔵容器の他に、ヘッドに至る供給管路および容器に至る戻し管路と、これらの管路を通してインクを圧送するための少なくとも1つのポンプと備えたインク分配器(「マニホールド」とも称される)が含まれている。
【0004】
工業的なインク印刷において既に公知であるのは、インク分配器においてインク液の流体動力学的な圧力を連続的に測定し、閉ループ制御を用いて、あらかじめ設定された目標圧力に保つことである。このために、インク分配器には少なくとも1つの圧力センサが設けられている。
【0005】
工業的なインク印刷において既に公知であるのはさらに、印刷動作時に循環するインク液を温度調節し、特に加熱すること、すなわち温度を連続的に測定し、閉ループ制御によって、あらかじめ設定された目標温度に保つことである。これはとりわけ、支障のない印刷に必要なインクの粘度を設定するために行われる。このために、少なくとも1つの温度センサがインク分配器に設けられている。
【0006】
独国特許出願公開第102022109615号明細書には、インクジェットインクの粘度を連続的に特定して変更する方法が開示されている。ここではインク温度が、インク回路におけるポンプ回転数を閉ループ制御するための操作量として使用される。欧州特許出願公開第3741571号明細書には、いわゆる連続インクジェット印刷機の動作中にインク粘度を監視および設定する方法が開示されている。
【0007】
欧州特許の翻訳である独国特許発明第69213542号明細書には、インク印刷ヘッドまたはサーマル印刷ヘッドの温度を閉ループ制御するための、閉制御ループ回路を備えた装置が開示されている。
【0008】
国際公開第2023285291号には、供給ポンプの体積流量を読み込む閉ループ制御部が開示されている。しかしながらこのことは、供給ポンプの回転数が、これに対して不正確すぎる場合には、問題を引き起こすことがある。
【0009】
市場に存在するインク印刷機、例えばスイス国のGallus Ferd. Rueesch AG社の「Gallus Labelfire」または「Gallus One」等では、支障のない液滴形成に必要な温度は、インク分配器における異なる2つの箇所おいて直接に測定した、インクの温度を用いて閉ループ制御される。
【0010】
入力量として、様々な箇所において測定した、インクの温度だけを使用する、インク温度の閉ループ制御は、(例えば、メーカのロット間の製造における変動により、または予想よりも早いインクの経年変化により)インクの流動学的特性の変化を検出せず、したがって修正もできないという欠点を有し得る。しかしながら、支障のない液滴形成にとって重要であるのは、インクの流体学的特性である。
【0011】
これにより、インクの温度の測定は、インクの粘度を設定するための単なる補助手段であり、これは、2つの実践的な欠点につながり得る。すなわち、インクの変化が検出されないため、先を見越したメンテナンスもしくは機械作業員への警告は不可能である。インク粘度の変化に起因して液滴形成がもはや支障なしに機能しなくなると直ちに、生産はもはや不可能である。
【0012】
インクの粘度は、粘度計を用いて直接に測定することができる。しかしながら実現可能性の検討の枠内において判明したのは、市販の粘度計を組み込むことと、インク印刷機にそれらを組み込むこととは、経済的に容認し得ないコスト増になってしまい得ることである。
【0013】
別の点において既に公知であるのは、インクの流量を測定することである。欧州特許出願公開第3222429号明細書には、「連続インクジェット」印刷機に関連して、インク印刷ヘッドに導かれるインクの流量率を測定するための構成部材もしくは装置が開示されている。
【0014】
技術的な課題
したがって、本発明の課題は、特にインクの粘度が変化する際に、インク印刷によって持続的に支障なく生産することを可能にする、従来技術に対する改善を行うことである。
【0015】
本発明による課題の解決
上記の課題は、本発明により、請求項1記載の方法によって解決される。本発明の有利な、したがって好ましい発展形態は、従属請求項から、また以下の説明および図面から得られる。
【0016】
インク分配器の供給管路および戻し管路を通り、供給管路と戻し管路との間で、インクが並列に供給される印刷ヘッドによってインクが圧送される、インク印刷時のインクの温度を閉ループ制御する方法であって、温度実際値と、あらかじめ設定した温度目標値とを比較し、目標値・実際値偏差から、インク加熱部の目標値についての操作量を計算する、本発明に係る方法は、供給管路と戻し管路との間で、かつ印刷ヘッドに並列に流量センサを作動させ、インクの流量を測定するか、または流量に依存する測定信号を生成し、それぞれあらかじめ設定した特性曲線を介して、流量または測定信号を温度補助値に変換し、温度実際値として、または温度目標値としてこの温度補助値を閉ループ制御に使用する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の有利な実施形態および効果
本発明によって有利に可能になるのは、特にインクの粘度が変化する際に、インク印刷によって持続的に支障なく生産することである。
【0018】
本発明は、インクの流量の測定値か、または流量に依存する測定信号を利用する。インクの粘度が変化すると、流量が変化する。したがって、この測定値を介して粘度の変化が識別される。本発明はさらに、測定の結果(測定値または測定信号)を補助値に変換するために、あらかじめ定められた特性曲線を利用する。この補助値は、測定した温度ではなく、本発明によるとインクの温度閉ループ制御に使用されるため、「温度補助値」と称される。本発明は最終的にこの補助値を温度閉ループ制御に対する実際値として、または目標値として利用する。したがって、本発明には2つの変化形態が含まれる。閉ループ制御を介して、インクの温度、ひいてはそのインクの粘度を変化させる。2つの変形形態のそれぞれは、インク温度の変化を介して、所望のようにインク粘度を変化させ、ひいては(好ましくはあらかじめ設定されかつ好ましくは狭い)範囲であって、支障のない印刷製品を作製することができる範囲にインク粘度を保つために利用可能である。好ましいこの変形形態では、温度実際値として温度補助値を使用する。
【0019】
本発明によると、少なくとも1つの箇所で測定したインク流量から計算したインク温度により、従来技術においてこれまで測定されたインク温度のうちの少なくとも1つを置き換え、測定した温度の代わりに閉ループ制御に取り入れることにより、ノズルからインクが吐出する際の液滴形成についての最適な条件を閉ループ制御する。この計算は、特性曲線を介して行われ、この特性曲線は好ましくは、所望の目標温度を上回るかまたは下回る、複数のサンプリングポイントにおいて測定した温度に、測定した流量率を対応付けることによって求められる。この際に好ましくは、この較正に使用されるインク充填物が、正しい粘度を有するように留意する。これは、好ましくは、目標温度の近くでインクの試料の粘度を測定することによって保証することができる。好ましくはさらに、較正の際のすべてのコンポーネントの構造上の配置および流量センサの断熱が、機械設置後の後の構成と一致することに留意すべきである。流量それ自体(流量の値)の代わりに、流量に依存する測定信号を使用することもできる。
【0020】
本発明によると、以下の利点が得られる。すなわち、インク粘度の変化が検出されるため、先を見越したメンテナンスもしくは機械作業員への警告が可能である。インクの仕様に従った目標温度におけるインク粘度の変化に起因して、液滴形成がもはや支障なく機能しなくなるとしても、引き続いて生産が可能である。というのは、適正な液滴形成に必要な粘度が達成されるように、閉ループ制御により、指定されたインクの目標温度から逸脱してインク温度が調整されるからである。
【0021】
本発明の1つの変形形態(この変形形態では温度補助値が、温度目標値として閉ループ制御に使用される)では引き続いて変わらずに、インク分配器において測定したインク温度を閉ループ制御に取り入れることができる。分配器における温度の目標値は、開始時にあらかじめ設定された(インクの粘度の変化がない場合に有効である)目標値に対し、例えば流量センサ(DFS:Durchfluss-Sensor)の実際のパルスレートに対応して規則的に変化される。このために、最初に固定的にあらかじめ設定された目標値から、パルスレートと流量センサの特性曲線とから求めた温度目標値を減算し、最初にあらかじめ設定された目標値に差分を加算する。この新たに計算した目標値により、最初にあらかじめ設定された目標値を置き換える。それぞれ次のターンにおいて、それぞれの前の目標値を上書きする。これについては2つの例aおよびb、すなわち、
a)目標値:30℃;DFS信号と特性曲線とから求めた温度:29℃;差分:30-29=+1℃;新しい目標値:30+1=31℃
b)目標値:30℃;DFS信号と特性曲線とから求めた温度:31℃;差分:30-31=-1℃;新しい目標値:30-1=29℃
がある。
【0022】
外乱(例えば周辺状況の変化)の際にもマニホールドにおけるインク温度と、流量センサにおけるインク温度との間の温度差分を可能な限りに一定に保ち、ひいては特性曲線からの対応する偏差を可能な限りに小さく保つために、流量センサに対して好ましくは、可能な限りにマニホールドの近くに組み込み位置が設けられ、流量センサのハウジングおよびその線路に対して、可能な限りに良好な断熱が設けられる。
【0023】
本発明の2つの変形形態では有利には、(温度補助値が、温度実際値として、または温度目標値として閉ループ制御に使用されるかに応じて)、以下に注意する。すなわち、2つの圧力(マニホールドイン/アウト)、すなわち、それらの値またはそれらの差分が好ましくは、(特にポンプ回転数を介して)一定に閉ループ制御され、この閉ループ制御は好ましくは、前もって行われる較正における、すなわち同じコンフィギュレーションにおける閉ループ制御に対応するか、もしくは好ましくは、設置された機械においてはじめてこの較正が行われる。
【0024】
以下では、インクの経年変化によってインク粘度が変化する場合の、本発明の機能の例を示す。例えば、インク仕様よりも早い経年劣化により、流量センサにおいて求めたインク流量がx%だけ低下して、インクの粘度が変化するという仮定の下において以下が成り立つ。すなわち、-従来技術によるこれまでのアプローチでは、閉ループ制御によって引き続き、インク仕様によって必要なインク温度が保たれ、ひいては液滴形成時に、印刷対象のインクの粘度が、過剰に高く設定される。-本発明によるアプローチでは、流量センサにおいて求めた(x%だけ減少した)インク流量が、格納された特性曲線に対応して、目標温度から下方へ偏差する、対応して低下したインク温度に変換される。ここで、計算したこの(補助)温度をインクの実際温度として閉ループ制御に取り入れる。これにより、閉ループ制御が介入して、インクの実際の温度が高くなることになる。これにより、計算した温度と目標温度とが一致するまで、インクの粘度が減少するか、もしくは流量センサを通るインク流量が増大する。インクが変化したことが識別され、またインク温度の上昇によって粘度が再び正しく設定されるため、液滴形成が引き続いて正しく行われるようになる。
【0025】
例えば、印刷機の遠隔保守を介して、機械においてインク分配器の温度と、流量測定器のセンサ信号とが、格納された特性曲線ともはや一致しないことが確認されると、このことは第一に、異なる2つの理由を有し得る。すなわち、1.インクの粘度が変化した、2.流量測定器が劣化している。実際の原因を確定するために、インク試料を取り出し、その粘度を測定し、インクの仕様と比較することができる。インク試料の粘度が正しい場合には、高い確率で流量センサが劣化している。この場合には、流量測定器を交換するか、または(直接入手できない場合には)劣化した流量測定器を(暫定的な解決手段として)新たに較正し、閉ループ制御のソフトウェアにおける対応する特性曲線を交換する。これにより、少なくとも短期間、印刷機の生産能力を維持することできる。
【0026】
閉ループ制御対象のインク温度に必要な許容誤差を保つことができるようにするために、流量センサにおけるインク温度と、マニホールドにおけるインク温度との差分が、外部の影響(屋内気候、周辺条件)に起因して過度に変動する場合、流量センサそれ自体の近くにおける温度の測定/較正が有利である。このために好ましくは、流量センサのすぐ近くに(例えば、マニホールドにおいて、流量センサに至る分岐点に、または分岐部それ自体において、流量センサのすぐ前または後に)既存の温度センサまたは付加的な温度センサを設置するか、または温度センサが組み込まれた流量センサを使用することができる。既存の温度センサが、そのこれまでの箇所にそのままであり、流量センサの近くでインク温度が付加的に測定される場合、これによって得られる付加的なデータを使用することにより、外乱によって引き起こされる、上述した差分の偏差を修正することができる。
【0027】
マニホールドにおいて、印刷ヘッドに至る分岐点間の供給管路の中央でインク温度を測定することは、流量センサに至る分岐点に直接に配置することに比べて、個々の印刷ヘッド内での、インク温度からの平均偏差がより小さいという利点を有する。外乱に起因して、流量測定器の近くでの温度測定が必要である場合、3.2.に挙げた実施例の利点は、流量測定器の近くでT測定を付加的に行うことによって維持することができる。しかしながらこれには(流量測定器に至る分岐点において、また流量測定器の分岐部において、または流量測定器に既に組み込まれた)付加的なTセンサが必要である。
【0028】
本発明の発展形態
以下では、本発明の好ましい複数の発展形態(略して発展形態)を説明する。これらの発展形態は、技術的に排除し合うことがなければ、互いに組み合わせることができる。
【0029】
1つの発展形態は、測定値としてインクの流量を特定することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、ml/分またはl/分で測定値を特定することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、流量に依存する測定信号は、次の測定信号、すなわち、パルスレートまたはパルス間隔またはアナログ電圧のうちの1つであることによって特徴付けられていてよい。
【0030】
1つの発展形態は、流量センサが羽根車センサとして構成されていることによって特徴付けられてよい。
【0031】
1つの発展形態は、特性曲線が、インクの測定した温度と、インクの流量または流量に依存する測定信号との間の特性曲線であることによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、既知の粘度のインクを使用して特性曲線を特定することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、温度目標値をそれぞれ上回るかまたは下回る複数のサンプリングポイントにおいて、特性曲線を特定することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、特性曲線についての式を特定することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、インクの温度を閉ループ制御するための、装置の式を提供することによって特徴付けられていてよい。
【0032】
1つの発展形態は、流量センサの入力側と出力側との間の、インクの圧力差分を一定に保つことによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、少なくとも1つのポンプによってインクの圧力を生成し、ポンプを閉ループ制御して作動させる、ことによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、ポンプの回転数を閉ループ制御することによって特徴付けられていてよい。1つの発展形態は、インクの圧力を閉ループ制御するために少なくとも1つの圧力センサを使用することによって特徴付けられていてよい。
【0033】
技術分野、本発明および発展形態の上の節において、また実施例の以下の節において開示される特徴と、特徴の組み合わせとは、任意の互いの組み合わせにおいて、本発明の別の有利な発展形態である。
【0034】
本発明の実施例および図面
図1および
図2には、本発明および発展形態の好ましい実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による方法の好ましい実施例を実施する好ましい装置の概略図である。
【
図2】本発明に係る方法の好適な実施形態のフローチャートの図である。
【0036】
図1には、本発明に係る方法の好ましい実施例を実施する際の好ましい装置の概略図が示されている。
【0037】
例えば、枚葉紙、ウェブまたはラベルに印刷するための、工業的に使用可能な(手掛かりとしてのみ示した)インク印刷機1には、液体インク5から成る液滴4を画像として生成するための、それぞれ複数のノズル3を備えた複数の印刷ヘッド2が含まれている。印刷ヘッド2は、生産中、好ましくは位置固定で、かついわゆる印刷バーとして、被印刷物搬送方向に対して横方向に配置されている。機械1にはさらに、(デジタル)計算機40を含まれており、この計算機40は、印刷プロセスを制御することができ、インクの温度を本発明に従って閉ループ制御するために使用可能である。
【0038】
印刷機1には、貯蔵容器11と、制御可能なインク加熱部12と、インク5用の(回転数または生成する体積流量が)制御可能な少なくとも1つのポンプ13とを備えた、印刷ヘッド2に循環式にインクを供給するためのインク回路もしくは装置10が含まれている。装置10により、並列にかつ連続的に印刷ヘッド2にインク5が供給される。このために、供給管路21および戻し管路22(ホース管路または好ましくはパイブ管路)を備えたインク分配器20が設けられている。印刷ヘッド2は、管路21と管路22との間で互いに並列して配置されている。インク分配器20は、インク回路を閉じる管路23を介して貯蔵容器11に接続されている。
【0039】
本発明によると、インク回路において、ひいては印刷ヘッド2においてインク5の温度を閉ループ制御し、ここではこの温度を介して、支障のない液滴の生成に必要な、インク5の粘度が設定可能である。インク5を対応して温度調節するために、好ましくは電気的なインク加熱部12が設けられている。好ましくは少なくとも1つの温度センサ30により、温度閉ループ制御のための測定値が供給され、温度センサ30、もしくは温度センサ30の感知部は好ましくは供給管路21に配置されている。それぞれの温度センサ30は、(手掛かりとしてのみ示した)接続線路33aを介して計算機40に接続されており、したがって、その測定結果が処理のために計算機40に供給される。計算機は、インク温度を閉ループ制御するための装置41に接続されており、この装置41それ自体は、接続線路33bを介してインク加熱部12に接続されている。温度センサ30は好ましくは、流量センサ32に至る供給管路21の分岐点の近くに配置されており、択一的には、印刷ヘッド3に至る分岐点の間で供給管路21のほぼ中央に配置されている。(この図では図示されていない)別の温度センサが、既に公知のように、加熱部12の近くに配置されていてよく、この加熱部によってたった今加熱されたインクの温度を測定する。
【0040】
温度ひいては粘度の本発明による閉ループ制御は好ましくは、インク分配器20におけるインクの実質的に一定の圧力において行われる。したがって、供給管路21および戻し管路22には好適には、それぞれ1つの圧力センサ31もしくはその感知部が配置されている。それぞれの圧力センサ31は、(手掛かりとしてのみ示した)接続線路33aを介して計算機40に接続されており、したがって、その測定結果が処理のために計算機40に供給される。測定結果は、インク5の必要な液圧が一定のレベルに保たれるように、接続線路33cを介してポンプ13を駆動制御するために使用可能である。それぞれ1つの圧力センサ31により、供給管路21における流体動力学的圧力と、戻し管路22における流体動力学的な圧力とを、例えば
図1に示した測定箇所において測定することができる。
【0041】
本発明によると、装置10には、流量測定器としての流量センサ32、例えば羽根車センサが含まれている。流量センサ32は、(「バイパス」において)供給管路21と戻し管路22との間で、しかもそこで印刷ヘッドに対して並列に作動され、この際、インクの流量もしくは流量率または流量量(例えば、ml/分またはl/分の体積流量)が測定されるか、または流量に依存する測定信号(例えばパルスレートまたはパルス間隔またはアナログの電圧)が生成される。流量センサ32は、(手掛かりとしてのみ示した)接続線路33aを介してコンピュータ40に接続されており、したがって、その測定結果または測定信号が処理のためにコンピュータ40に供給される。
【0042】
コンピュータ40または装置41により、本発明による以下の閉ループ制御のステップを実行する。すなわち、温度実際値と、あらかじめ設定した温度目標値とを比較し、目標値・実際値偏差から、インク加熱部12の目標値についての操作量を計算し、それぞれあらかじめ設定された(かつ好ましくは計算機40または装置41に格納された)特性曲線を介して、流量または測定信号を温度補助値に変換し、温度実際値として、または温度目標値としてこの温度補助値を閉ループ制御に使用する。
【0043】
図2には、本発明に係る方法の好ましい実施形態のフローチャートが示されており、このフローチャートは、以下のステップを有する、すなわち、
ステップ50:好ましくは、インク分配器20におけるあらかじめ設定した測定箇所に対し、本発明による温度目標値をあらかじめ設定する。
ステップ51:好ましくはインク分配器20におけるあらかじめ設定した測定箇所において、本発明による温度実際値の(間接的な)測定を行う。この間接的な測定は、流量の本発明による測定と、本発明によってあらかじめ設定した特性曲線に対応する変換とを介して(択一的には流量に依存する測定信号を介して)行われる。
ステップ52:計算機40により、ステップ50および51の2つの値から、好ましくはインク加熱部12の出力部における測定箇所について、別の温度目標値(これは本発明による温度目標値とは異なる)を計算する。このために、計算機40により、場合によっては別の特性曲線(これは本発明による特性曲線とは異なる)に基づく、事前に作成されて格納されたアルゴリズムにアクセスする。インク分配器における測定箇所と、インク加熱部における測定箇所とは互いに離隔されているため、このアルゴリズムにより、好ましくは2つの箇所の間で生じる温度差分が考慮される。
ステップ53:ステップ52で計算した別の温度目標値を装置41に供給する。
ステップ54:装置41により、別の温度目標値に基づき、インク加熱部12を閉ループ制御するか、もしくはその(例えば内部の)制御ユニットを開ループ制御する。
ステップ55:制御ユニットにより、インク加熱部の制御ユニットを作動させる。
ステップ56:インク加熱部12を作動させ、これにより、インク加熱部12によってインク5を別の温度目標値まで加熱する。
ステップ57:好ましくはインク加熱部12の出力部おける測定箇所において、(例えば別の温度センサによって)インクの別の温度実際値の測定を行う。閉ループ制御ステップ54を実行するためにこの値を装置41に供給する。
【0044】
本発明に従い、あらかじめ設定した特性曲線を介して変換した温度補助値を温度目標値として閉ループ制御に使用する場合、ステップ50における温度補助値を、すなわち、そこの温度目標値として使用する。
【0045】
この代わりに、本発明に従い、あらかじめ設定した特性曲線を介して変換した温度補助値を温度実際値として閉ループ制御に使用する場合、ステップ51における温度補助値を、すなわち、そこの温度実際値として使用する。
【符号の説明】
【0046】
1 インク印刷機械
2 印刷ヘッド
3 ノズル
4 液滴
5 インク
10 インク供給のための装置
11 貯蔵容器
12 インク加熱部
13 インク用ポンプ
20 インク分配器
21 供給管路
22 戻し管路
23 管路
30 温度センサ
31 圧力センサ
32 流量センサ
33a,b,c 接続線路
40 計算機
41 インク温度を閉ループ制御するための装置
50~57 ステップ