(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20250515BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20250515BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20250515BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 114
B41M5/00 100
C09D11/40
C09D11/54
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2021110160
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021047385
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】古川 壽一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164571(JP,A)
【文献】特開2018-035233(JP,A)
【文献】特開2020-082731(JP,A)
【文献】特開2018-165417(JP,A)
【文献】特開2021-021003(JP,A)
【文献】特開2021-066864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
B41M 5/00
B41M 5/50-5/52
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与するカラーインク付与工程と、を有する画像形成方法であって、
前記白色インク及び前記カラーインクにおいて、25℃における静的表面張力の差は、1.0mN/m以下であり、
前記白色インク及び前記カラーインクにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1500msec時の25℃における動的表面張力の差は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であ
り、
前記白色インク付与工程及び前記カラーインク付与工程の間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱工程を有しないことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記白色インク付与工程前において、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程を有する請求項
1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間は、20秒以内である請求項
1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記記録媒体は、濃色の布帛である請求項
1~3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。しかし、この方法は、インクと記録媒体との組み合わせによっては文字滲みに代表される画像欠陥が発生しやすく、画像品質が大きく低下するという問題を有するため、カチオン性化合物などを含む前処理液を用いて、事前に記録媒体に対して前処理を施す技術が知られている。
また、濃色の記録媒体などに対して印刷を行う場合、前処理液を付与された記録媒体に対して白色インクを付与することで白色の下地を形成し、白色の下地上にカラーインクを付与することで画像の発色性を向上させる技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、布帛の少なくともインクジェットインクの印字領域に処理液を付与する工程、処理液を付与した布帛を加熱する工程、処理液を付与したインクジェットインクの印字領域にインクジェット捺染用白色インク組成物を印字する工程、及び白色以外のインクジェット捺染用有色インク組成物を印字する工程を含むインクジェット捺染方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録媒体に対して白色インクを付与した後で、記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する場合、カラーブリードが発生する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、白色インク及びカラーインクを有するインクセットであって、前記白色インク及び前記カラーインクにおいて、25℃における静的表面張力の差は、1.0mN/m以下であり、前記白色インク及び前記カラーインクにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1500msec時の25℃における動的表面張力の差は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とするインクセットに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、記録媒体に対して白色インクを付与した後で、記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する場合において、カラーブリードの発生を抑制するインクセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、収容手段の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、インクジェット印刷装置を用いて印刷されるチャートを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
<<インクセット>>
本開示のインクセットは、白色インク及びカラーインクを有し、必要に応じて前処理液などを有することが好ましい。また、白色インク及びカラーインクは、それぞれ、1つであっても複数であってもよい。
本開示における「インクセット」は、白色インク及びカラーインクがそれぞれ独立した状態で存在していればよく、例えば、白色インクを収容している白色インク収容手段およびカラーインクを収容しているカラーインク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、白色インク収容手段およびカラーインク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、白色インク及びカラーインクが併用されることを前提としている場合、及び白色インク及びカラーインクが併用されることを実質的に誘導している場合などはインクセットに含まれる。
本開示における「白色インク」は、記録媒体に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物である。また、前処理液を用いる場合、白色インクは、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物である。白色インクは、記録媒体上に白色画像を形成することで、例えば、白色インクが付与された領域に対して付与されるカラーインクにより形成されるカラー画像の下地として機能し、カラー画像の発色性を向上させる。なお、「白色」とは、社会通念上、白及びホワイト等と称される色であり、微量着色されているものも含む。
本開示における「カラーインク」は、記録媒体の白色インクが付与された領域に対して付与されることでカラー画像を形成する液体組成物である。なお、「カラー」とは、上記の「白色」に含まれない色を表し、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローなどを含む。
本開示における「前処理液」は、記録媒体に対して付与され、前処理液が付与された領域に対して後から付与された白色インク又はカラーインクと接触することで、白色インク又はカラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせる液体組成物である。
【0010】
インクセットに含まれる白色インク及びカラーインクにおいて、25℃における静的表面張力の差は、1.0mN/m以下であり、0.8mN/m以下であることが好ましく、0.6mN/m以下であることがより好ましく、0.5mN/m以下であることが更に好ましい。なお、上記の静的表面張力の差は絶対値を表し、0mN/m以上である。また、白色インク又はカラーインクを複数用いる場合、所定の白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の静的表面張力の差を満たしていればよいが、全ての白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の静的表面張力の差を満たしていることが好ましい。
また、白色インク及びカラーインクにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1500msec時の25℃における動的表面張力の差は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、0.9mN/m以下であることが好ましい。なお、上記の動的表面張力の差は絶対値を表し、0mN/m以上である。また、白色インク又はカラーインクを複数用いる場合、所定の白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の動的表面張力の差を満たしていればよいが、全ての白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の動的表面張力の差を満たしていることが好ましい。また、上記の「それぞれ独立して」とは、各バブルライフタイムにおける動的表面張力の差が1.0mN/m以下である限り同一であっても相違してもいいことを表す。
インクセットが上記の静的表面張力の差及び動的表面張力の差を満たすことで、記録媒体に対して白色インクを付与した後で、記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する場合において、カラーブリードの発生を抑制することができる。
【0011】
まず、上記インクセットにおいてカラーブリードの発生が抑制される理由について説明する。
一般に、濃色の記録媒体などに対して印刷を行う場合、記録媒体に対して白色インクを付与することで白色画像である下地を形成し、白色インクが付与された領域に対して後からカラーインクを付与することでカラー画像の発色性を向上させる。しかし、白色インクを付与してから短時間(例えば、20秒以内)でカラーインクを付与する場合、白色インクの付与量が多い場合、記録媒体が低浸透性(非浸透性を含む)である場合、又は白色インクが付与されてからカラーインクが付与されるまでの間に白色インクが付与された記録媒体を加熱手段により加熱しないでカラーインクを付与する場合などにおいて、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して、白色インク及びカラーインクが混ざるカラーブリードが生じうる。なお、上記同様に白色インクの乾燥が不十分であることに起因して、白色インクが付与された領域に対して後から付与されるカラーインクの乾燥性が低下し、カラー画像における濃度ムラであるビーディングも生じうる。
これに対し、上記のような静的表面張力及び動的表面張力の関係を有する白色インク及びカラーインクを含むインクセットを用いることで、白色インクの乾燥が不十分となりうる場合であってもカラーブリードの発生が抑制される。
【0012】
また、上記のように白色インクの乾燥が不十分である場合において、複数のカラーインクを使用するとき、白色インク及び各カラーインクが混ざるカラーブリードに加えて、白色インクが付与された領域上でカラーインク同士が接触して混ざるカラーブリードも生じうる。
このような場合、カラーインク間において、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることが好ましく、0.9mN/m以下であることがより好ましい。上記の動的表面張力の差を満たすことで、カラーインク間で生じるカラーブリードを抑制することができる。なお、上記の動的表面張力の差は絶対値を表し、0mN/m以上である。また、全てのカラーインク同士の組み合わせにおいて上記の動的表面張力の差を満たしていることが好ましい。例えば、複数のカラーインクとしてブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを用いるとき、ブラックインク及びシアンインク間、ブラックインク及びマゼンタインク間、ブラックインク及びイエローインク間、シアンインク及びマゼンタインク間、シアンインク及びイエローインク間、マゼンタインク及びイエローインク間の全てにおいて上記の動的表面張力の差を満たしていることが好ましい。また、上記の「それぞれ独立して」とは、各カラーインク間における動的表面張力の差が1.0mN/m以下である限り同一であっても相違してもいいことを表す。
【0013】
また、上記のように複数のカラーインクを使用する場合において、複数のカラーインクとしてブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを用いるとき、各インクにおける最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力は、下記関係式(1)を満たすことが好ましい。下記関係式(1)において左側に位置するインクほど、カラーブリードを生じた場合に他の色のインクの領域に視覚上与える影響が大きいが、下記関係式(1)を満たすことで、下記関係式(1)において左側に位置するインクが右側に位置するインクに侵入するようなカラーブリードの発生を抑制することができる。
【数1】
【0014】
インクセットに含まれる白色インク及びカラーインクにおいて、25℃における静的表面張力は、それぞれ独立して、40.0mN/m以下であることが好ましく、36.0mN/m以下であることがより好ましく、30.0mN/m以下であることが更に好ましい。白色インク及びカラーインクにおいて上記の静的表面張力を満たすことで、白色インク及びカラーインク間のビーディングだけではなく、異なるカラーインク間におけるビーディングの発生も抑制することができる。なお、白色インク又はカラーインクを複数用いる場合、所定の白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の静的表面張力を満たしていればよいが、全ての白色インク及びカラーインクの組み合わせにおいて上記の静的表面張力を満たしていることが好ましい。また、上記の「それぞれ独立して」とは、白色インク及びカラーインクにおける静的表面張力が40.0mN/m以下である限り同一であっても相違してもいいことを表す。
【0015】
<白色インク及びカラーインク>
白色インク及びカラーインクは、それぞれ、目的に応じて、有機溶剤、水、色材、樹脂、界面活性剤、及びその他の成分などを含む。また、前処理液を用いる場合、色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つは、アニオン性であることが好ましい(これらを「アニオン性化合物」と総称してもよい)。色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、白色インク又はカラーインクが前処理液に含まれていた成分(凝集剤等)と接触した際に、白色インク又はカラーインクが凝集又は増粘を生じ、これにより記録媒体表面において白色インク又はカラーインクを留めることができる。
【0016】
-有機溶剤-
有機溶剤としては特に制限されないが、例えば、温度23℃、相対湿度80%環境中における平衡水分量が30質量%以上であるもの(湿潤剤とも称する)を用いることが好ましく、これらの中でも平衡水分量及び沸点が高いものがより好ましい。このような有機溶剤の選択は、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)に関係するが、インクの吐出安定性向上や画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などにも関係する。
なお、平衡水分量(%)は、塩化カリウム/塩化ナトリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23℃±1℃、相対湿度80%±3%に保ち、このデシケーター内に各有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管し、平衡する水分量を測定し、下記式により算出したものである。
平衡水分量(質量%)=〔有機溶剤が吸収した水分量/(有機溶剤量+有機溶剤が吸収した水分量)〕×100
【0017】
湿潤剤としては、例えば、温度23℃、相対湿度80%環境中における平衡水分量が30質量%以上である多価アルコールが挙げられる。このような多価アルコールとしては、具体的には、ジエチレングリコール(bp245℃、平衡水分量43質量%)、トリエチレングリコール(bp285℃、平衡水分量39質量%)、テトラエチレングリコール(bp324℃~330℃、平衡水分量37質量%)、1,3-ブタンジオール(bp203℃~204℃、平衡水分量35質量%)、グリセリン(bp290℃、平衡水分量49質量%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、平衡水分量38質量%)、1,2,3-ブタントリオール(bp175℃/33hPa、平衡水分量38質量%)、及び1,2,4-ブタントリオール(bp190℃~191℃/24hPa、平衡水分量41質量%)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの中でも、グリセリン及び1,3-ブタンジオールが好ましい。
【0018】
多価アルコール以外の湿潤剤としては、具体的には、2-メチル-1,3-ブタンジオール(bp214℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(bp203℃)、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5-ペンタンジオール(bp242℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196℃~198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体~固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6-ヘキサンジオール(bp253℃~260℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199℃~201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0019】
有機溶剤の含有量は、各インクの質量に対して、10.0質量%以上75.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましい。10.0質量%以上であると、各インクにおける保湿効果が向上し、75.0質量%以下であると、記録媒体上における各インクの乾燥性が向上する。
【0020】
また、低浸透性(非浸透性を含む)の記録媒体を用いる場合、有機溶剤としては、溶解度パラメーターが9.0(J/cm3)1/2以上11.8(J/cm3)1/2未満のものを用いることが好ましい。溶解度パラメーターが9.0(J/cm3)1/2以上11.8(J/cm3)1/2未満の有機溶剤としては、具体的には、3-エチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.31(J/cm3)1/2)、3-メチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.79(J/cm3)1/2)、β-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:9.19(J/cm3)1/2)、β-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:9.03(J/cm3)1/2)、1,2-ヘキサンジオール(SP値:11.8(J/cm3)1/2)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値:11.07(J/cm3)1/2)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(SP値:11.19(J/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.14(J/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:9.64(J/cm3)1/2)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(SP値:9.64(J/cm3)1/2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.8(J/cm3)1/2)、メチルプロピレントリグリコール(SP値:9.43(J/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(SP値:9.86(J/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.34(J/cm3)1/2)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.12(J/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:9.82(J/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.19(J/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.69(J/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:10.65(J/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-プロパノール(SP値:10.41(J/cm3)1/2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:9.84(J/cm3)1/2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.80(J/cm3)1/2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
溶解度パラメーターが9.0(J/cm3)1/2以上11.8(J/cm3)1/2未満の有機溶剤の含有量は、各インクの質量に対して、5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下がより好ましい。5.0質量%以上60.0質量%以下であると、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)の観点から好ましく、各インクの発色性の観点からも好ましい。
【0022】
なお、色材と有機溶剤との質量比は、インクの吐出安定性向上や画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などに関係するため、適宜調整することが好ましい。例えば、色材の含有量が多い一方で有機溶剤の含有量が少ないインクをインクジェットヘッドから吐出する場合、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進むことで吐出不良を生じることがある。
【0023】
-水-
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
各インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、各インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、各インクの質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0024】
-色材-
白色インクは白色の色材を含有し、カラーインクはカラーの色材を含有する。なお、本開示においては、白色の色材及びカラーの色材を区別しない場合は、単に色材と記載する。
【0025】
色材としては、顔料などを使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0026】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、及びカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたチャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
【0027】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、及びアニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料及び多環式顔料などが好ましい。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などが挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフラロン顔料などが挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、及び酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0028】
有機顔料としては、具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、139、150、151、155、153、180、183、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
【0029】
顔料のBET比表面積は、10m2/g以上1500m2/g以下が好ましく、20m2/g以上600m2/g以下がより好ましく、50m2/g以上300m2/g以下が更に好ましい。所望のBET比表面積の顔料を使用するためには、一般的なサイズ減少又は粉砕処理(例えば、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、超音波処理)を行えばよい。
顔料の累積50%体積粒子径D50は、各インク中において、50nm以上350nm以下であることが好ましい。
顔料の含有量は、固形分で、インクの質量に対して、1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。1.0質量%以上であることで、各インクの発色性及び画像濃度が向上し、15.0質量%以下であることで、各インクの吐出性が安定する。
【0030】
また、色材は、有機顔料又は無機顔料の粒子を有機顔料又はカーボンブラックで被覆した複合顔料であってもよい。複合顔料は、無機顔料の粒子の存在下で有機顔料を析出させる方法や、無機顔料と有機顔料を機械的に混合摩砕するメカノケミカル法等により作製することができる。更に必要に応じて、ポリシロキサン、アルキルシランから生成されるオルガノシラン化合物の層を、無機顔料及び有機顔料の間に設けることにより両者の接着性を向上させることもできる。
有機顔料又は無機顔料の粒子と、これを被覆する有機顔料又はカーボンブラックと、の質量比は、発色性、着色力、色調、及び透明性の向上の観点から、3:1~1:3が好ましく、3:2~1:2がより好ましい。
複合顔料としては、一次平均粒径が小さい観点から、戸田工業株式会社製のシリカ/カーボンブラック複合材料、シリカ/フタロシアニンPB15:3複合材料、シリカ/ジスアゾイエロー複合材料、シリカ/キナクリドンPR122複合材料などが好適である。
なお、例えば、一次粒子径が20nmである無機顔料粒子を等量の有機顔料で被覆した場合、この複合顔料の一次粒子径は、25nm程度になる。これに適当な分散剤を用いて一次粒子まで分散できれば、分散粒子径が25nmの非常に微細な複合顔料分散インクを作製することができる。複合顔料は、被覆している表面の有機顔料が分散に寄与するが、厚み約2.5nmの有機顔料の薄層を通して中心にある無機顔料の性質も現れてくるため、両者を同時に分散安定化できる顔料分散剤の選択も求められる。
【0031】
また、インクセットにおいて、白色インク及びカラーインクに加えて前処理液を用いる場合、上記の通り、色材はアニオン性であることが好ましく、アニオン性の顔料であることがより好ましい。アニオン性の顔料としては、界面活性剤で顔料を分散させた界面活性剤分散顔料、樹脂で顔料を分散させた樹脂分散顔料、顔料の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆分散顔料、及び顔料表面に親水基を設けた自己分散顔料などがあるが、いずれの分散形態においても水分散性であることが好ましい。
【0032】
アニオン性の顔料が樹脂被覆分散顔料又は自己分散顔料である場合、表面に少なくとも一つの親水基を有するものが好ましい。親水基としては、-COOM、-SO3M、-PO3HM、-PO3M2、-CONM2、-SO3NM2、-NH-C6H4-COOM、-NH-C6H4-SO3M、-NH-C6H4-PO3HM、-NH-C6H4-PO3M2、-NH-C6H4-CONM2、-NH-C6H4-SO3NM2などが挙げられる。これらの親水基は公知の方法で導入することができる。また、上記親水基においてMで表示するカウンターイオンは四級アンモニウムイオンであることが好ましい。四級アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの中でも、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、及びベンジルトリメチルアンモニウムイオンなどが挙げられ、テトラブチルアンモニウムイオンが好ましい。このような顔料を用いた各インクは、経時の保存安定性に優れ、水分蒸発時の粘度上昇が抑制される。これは、水リッチなインクから水分が蒸発し、有機溶剤リッチとなった際においても、四級アンモニウムイオンを有する親水基により、顔料の分散が安定に保てるためであると推測される。
【0033】
上記の表面に親水基を有するもの以外の色材としては、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンが好ましい。顔料はポリマー微粒子中に封入されていても、ポリマー微粒子の表面に吸着されていてもよい。この場合、全ての顔料が封入又は吸着されている必要はなく、一部がエマルジョン中に分散していてもよい。ポリマー微粒子用のポリマーとしてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられるが、ビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーが好ましい。
【0034】
-樹脂-
樹脂としては、特に制限されないが、造膜性に優れ、かつ耐溶剤性、耐水性、及び耐候性を備えた樹脂であることが画像形成において有用であり、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。また、樹脂は、水分散性樹脂(樹脂粒子の形態)であることが好ましい。
また、インクセットにおいて、白色インク及びカラーインクに加えて前処理液を用いる場合、上記の通り、樹脂はアニオン性であることが好ましい。
【0035】
縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
なお、インクを商用印刷用紙やフィルムなどの低浸透性(非浸透性を含む)の記録媒体に付与する場合、インクの定着性を向上させる点から、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂は、インクの定着性をより向上させる点から、下記構造式(A)で示される構造を有するポリオールに由来する構造を有することが好ましい。
【化1】
【0037】
構造式(A)で示される構造を有するポリオール原料としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられる。
構造式(A)で示される構造を有するポリオール原料の割合は、ポリウレタン樹脂の原料全体に対して10~30質量%が好ましく、全ポリオール原料に対して約50質量%が好ましい。構造式(A)で示される構造を有するポリオール原料の割合が上記範囲であることで、耐アルコール性が向上する。
【0038】
水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を有して自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を有さずに界面活性剤や親水基を有する樹脂により分散性が付与されたものなどが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂のアイオノマーや、不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが好ましい。
不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水中で反応させて樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を替えやすく、目的の性質を作りやすい。
【0039】
水分散性樹脂は、強アルカリ性又は強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂を抑制する観点から、インクのpHは4~12が好ましい。また、水分散性の色材との混和性の点から、pHは7~11がより好ましく、8~10.5が更に好ましい。
【0040】
水分散性樹脂は、水分散性の色材を記録媒体に定着させる働きを有し、常温以上で被膜化して色材の定着性を向上させる機能を有する。そのため、水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は100℃以下であることが好ましい。
また、水分散性樹脂のガラス転移温度が-40℃以下になると、樹脂皮膜の粘稠性が強くなり、印刷物にタックが生じるため、ガラス転移温度は-30℃以上であることが好ましい。水分散性樹脂のインク中の含有量は、固形分で、インクの質量に対して0.5質量%以上20.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。
一方で、インクを商用印刷用紙やフィルムなどの低浸透性(非浸透性を含む)の記録媒体に付与する場合であって、樹脂としてポリウレタン樹脂を用いるとき、ポリウレタン樹脂の含有量はインクの質量に対して3.0質量%以上であり、且つ色材とポリウレタン樹脂との固形分質量比は1.0:(2.0~12.0)が好ましく、1.0:(2.0~11.0)がより好ましい。
【0041】
-界面活性剤-
白色インク及びカラーインクは、それぞれ、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)のための一手段として界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン化合物、アセチレングリコール界面活性剤、及びアセチレンアルコール界面活性剤などを用いることができる。また、上記界面活性剤に加えてフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などを併用してもよい。なお、界面活性剤を用いることで、各インクがインクジェットヘッドのノズルプレートにおける撥インク膜に濡れ難くなり、インクがノズルに付着することによる吐出不良を抑制することができ、吐出安定性が向上する。
【0042】
ポリエーテル変性シロキサン化合物としては、下記一般式(1)~(5)で表されるものが好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは0~23の整数、nは1~10の整数、aは1~23の整数、bは0~23の整数を表す。
【0045】
【0046】
一般式(2)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1~8の整数、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数を表す。
【0047】
【0048】
一般式(3)中、R4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、eは1~8の整数を表す。
【0049】
【0050】
一般式(4)中、R5は下記一般式(5)のポリエーテル基を表し、fは1~8の整数を表す。
【0051】
【0052】
一般式(5)中、R6は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、gは0~23の整数、hは0~23の整数を表す。但し、g及びhが同時に0となる場合はない。
【0053】
一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、下記構造式(1)~(8)で示される化合物などが挙げられる。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
一般式(2)で示される化合物としては、具体的には、下記構造式(9)で示される化合物などが挙げられる。
【0063】
【0064】
一般式(3)で示される化合物としては、具体的には、下記構造式(10)で示される化合物などが挙げられる。
【0065】
【0066】
一般式(4)で示される化合物としては、具体的には、下記構造式(11)~(13)で示される化合物などが挙げられる。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
更に、市販品のポリエーテル変性シロキサン化合物としては、例えば、TORAY ダウ・コーニング社製の71ADDITIVE,74ADDITIVE,57ADDITIVE,8029ADDITIVE,8054ADDITIVE,8211ADDITIVE,8019ADDITIVE,8526ADDITIVE,FZ-2123,FZ-2191;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4440,TSF4441,TSF4445,TSF4446,TSF4450,TSF4452,TSF4460;日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG002,シルフェイスSAG003,シルフェイスSAG005,シルフェイスSAG503A,シルフェイスSAG008,シルフェイスSJM003;エボニック社製のTEGO WetKL245,TEGO Wet250,TEGO Wet260,TEGO Wet265,TEGO Wet270,TEGO Wet280;ビックケミー・ジャパン社製のBYK-345,BYK-347,BYK-348,BYK-375,BYK-377などが挙げられる。
【0071】
また、アセチレングリコール界面活性剤及びアセチレンアルコール界面活性剤としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、サーフィノール104、サーフィノール104E、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノールSE、サーフィノールSEF、サーフィノールPSA-336、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF58、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(いずれも、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0072】
界面活性剤の含有量は、インクの質量に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。0.001質量%以上であることで界面活性剤の添加効果が得られる。また、5.0質量を超えると添加効果が飽和する。
【0073】
-その他の成分-
その他の成分としては、必要に応じて、公知の種々の添加剤用いることができ、例えば、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0074】
--抑泡剤--
抑泡剤は、インクに微量添加することによって、インクの発泡を抑えるために用いられる。ここで、発泡とは液体が薄い膜になって空気を包むことである。この泡の生成にはインクの表面張力や粘度等の特性が関与する。即ち、水のように表面張力が高い液体は、液体の表面積をできるだけ小さくしようとする力が働くため発泡し難い。これに対し、高粘度で高浸透性のインクは、表面張力が低いために発泡し易く、溶液の粘性により生成した泡が維持されやすく消泡し難い。
通常、抑泡剤は、泡膜の表面張力を局部的に低下させて泡を破壊するか、発泡液に不溶な抑泡剤を発泡液表面に点在させることにより泡を破壊する。インクに界面活性剤として表面張力を低下させる働きの極めて強いポリエーテル変性シロキサン化合物を用いた場合には、前者の機構による抑泡剤を用いても泡膜の表面張力を局部的に低下させることができない。そこで、後者の発泡液に不溶な抑泡剤を用いることが好ましいが、この場合、溶液に不溶な抑泡剤によりインクの安定性が低下する場合がある。
これに対して、下記一般式(6)で示される抑泡剤は、表面張力を低下させる働きがポリエーテル変性シロキサン化合物ほど強くないものの、ポリエーテル変性シロキサン化合物に対する相溶性が高い。このため、抑泡剤が効率的に泡膜に取り込まれ、ポリエーテル変性シロキサン化合物とこの抑泡剤との表面張力の違いにより泡膜の表面が局部的に不均衡な状態となり、泡が破壊すると考えられる。
【0075】
【0076】
一般式(6)中、R7及びR8はそれぞれ独立して炭素原子3~6個を有するアルキル基、R9及びR10はそれぞれ独立して炭素原子1~2個を有するアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。
【0077】
一般式(6)で表される化合物としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが挙げられる。これらの中でも、抑泡効果とインクへの相溶性が高いことから、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが好ましい。
抑泡剤の含有率は、インクの質量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。0.01質量%以上であることで泡抑効果が得られ、10質量%以下であることで粘度、粒径等のインク物性に影響が出ることを抑制することができる。
【0078】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、インクのpHを調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、及びアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。インクのpHは、インクの吐出安定性向上の観点から7~11であることが好ましい。
【0079】
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオールなどが挙げられる。
アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムなどが挙げられる。
アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、及び第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0080】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、及びペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
【0081】
--キレート試薬--
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0082】
--防錆剤--
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0083】
--酸化防止剤--
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0084】
--紫外線吸収剤--
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及びニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0085】
-各インクの物性-
各インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、各インクの25℃での粘度は、5mPa・s以上25mPa・s以下が好ましく、6mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。粘度が5mPa・s以上であることで画像濃度や文字品位の向上効果が得られる。粘度が25mPa・s以下であることでインク吐出性を向上することができる。
粘度は、例えば、粘度計(RE-85L、東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定することができる。
【0086】
-各インクの製造方法-
各インクは、各種材料を撹拌し混合する撹拌混合工程及び得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程などを経て製造することができる。この撹拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等により行うことができる。
【0087】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤を含み、必要に応じて、樹脂粒子、ワックス粒子、有機溶剤、水、界面活性剤、及びその他の成分などを含む。
【0088】
-凝集剤-
本開示において「凝集剤」とは、前処理液が白色インク又はカラーインクと接触したときに、白色インク又はカラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせる成分を表す。具体的には、例えば、白色インク又はカラーインクに含まれる色材又は樹脂などの水分散性粒子(例えば、上記のアニオン性化合物)を凝集させる成分が挙げられる。このような凝集剤を含む前処理液を用いることで、前処理液と接触した白色インク又はカラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせ、これにより記録媒体表面において白色インク又はカラーインクを留めることができる。
凝集剤としては、カチオン性化合物が挙げられ、例えば、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーなどを用いることができる。
【0089】
無機金属塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムなどが挙げられる。
【0090】
有機酸金属塩としては、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、DL-酒石酸ナトリウム、及び酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。
【0091】
上記の無機金属塩及び有機酸金属塩においては、それぞれ、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、およびアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの塩である場合、白色インク又はカラーインクに含まれる水分散性粒子に対する凝集機能が向上し、カラーブリード及びビーディングの発生をより抑制する。また、前処理液の保存安定性の観点からも好ましい。
【0092】
有機酸アンモニウム塩としては、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、琥珀酸アンモニウム(琥珀酸二アンモニウム)、マロン酸ジアンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、及びL-グルタミン酸アンモニウムなどがあげられる。
【0093】
カチオン性ポリマーとしては、例えば、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましく、具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、及びジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
また、その他のカチオン性ポリマーとしては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、及びカチオン性エポキシポリアミド化合物などが挙げられる。
特に好ましいカチオン性ポリマーとしては、下記一般式(7)~(9)の化合物が挙げられる。
【0094】
【0095】
一般式(7)中、R10はメチル基又はエチル基を表し、Y-はハロゲンイオン表し、nは整数を表す。
【0096】
【0097】
一般式(8)中、Y-はハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、R11はH又はCH3を表し、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立してH又はアルキル基を表し、nは整数を表す。
【0098】
【0099】
一般式(9)中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Y-はハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、nは整数を表す。
【0100】
凝集剤の含有量は、凝集剤の溶解性等の観点及びカラーブリード及びビーディングの発生を抑制する観点から、前処理液の質量に対して0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0101】
-樹脂粒子-
前処理液は樹脂粒子を含有することが好ましい。前処理液が樹脂粒子を含有することで白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性を向上させることができる。
【0102】
樹脂粒子は、前処理液中においてカチオン性化合物である凝集剤と共存するため、長期的な保存安定性の観点から、一般的に用いられている電荷反発型エマルションではなく、立体障害により分散したノニオン性樹脂粒子であることが好ましい。なお、電荷反発型エマルションであるアニオン性樹脂粒子を用いた場合、凝集剤の一例である無機金属塩と共存すると凝集が生じ、特に、解離すると3価の陽イオンを生じる多価金属塩と共存させると瞬時に凝集が生じる。また、カチオン性樹脂粒子を用いた場合、常温放置では充分に安定であるが、長期安定性を見越した加速試験として加温下で静置すると、増粘が生じる。従って、上記の通り、樹脂粒子はノニオン性樹脂粒子であることが好ましい。
樹脂粒子がノニオン性樹脂粒子であることを判断する方法としては特に限定されないが、例えば、前処理液から遠心分離により固形分を単離後、熱分解GC-MS(例えば、島津製作所製のGC-17Aなど)により、カルボキシル基及びスルホ基などの酸性官能基、又はアミノ基などの塩基性官能基を含有する材料が検出されないことを示す方法などが挙げられる。
【0103】
ノニオン性樹脂粒子としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂、及びこれらの樹脂の重合に用いられる重合性化合物の共重合体などを用いることができる。また、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂、及び塩素化オレフィン樹脂であることがより好ましい。これら樹脂は、白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0104】
ノニオン性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、-30℃以上30℃以下であることが好ましく、-25℃以上25℃以下であることがより好ましい。-30℃以上であることで樹脂皮膜が強靭なものとなり、前処理液により形成される層がより堅牢なものとなる。また、30℃以下であることで樹脂の成膜性が向上し、柔軟性も担保されるため、白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0105】
樹脂粒子の含有量(固形分量)は、前処理液の質量に対して0.5質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上20.0質量%以下であることで、白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0106】
-ワックス粒子-
ワックス粒子としては特に制限されず、水分散性ワックスなどを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、キャンデリラワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物、動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス、カーボンワックス、へキストワックス、ポリエチレンワックス、及びステアリン酸アミド等の合成ワックス等が挙げられる。これらの中でも、白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる観点及び前処理液中における分散性の観点からパラフィンワックス及びポリエチレンワックスが好ましい。
【0107】
ワックス粒子の融点は、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。融点が上記範囲であることで白色インク及びカラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0108】
ワックスの含有量(固形分量)は、前処理液の質量に対して0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。0.05質量%以上5.0質量%以下であることで、白色インクを記録媒体表面付近に留めることが可能になり、ハンター白色度を向上させることができる。ただし、ワックスを含有した前処理液を塗布した後に、白色インク層を形成し、白色インク層上にカラーインクで画像形成を行うと、ワックスを含まない前処理液に比べてカラーブリードが起こりやすくなる場合がある。
【0109】
-有機溶剤-
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤などを用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0110】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、有機溶剤として、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1つを含有する場合、記録媒体表面に濡れ易くなるので好ましい。
【0111】
有機溶剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、前処理液の質量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下がより好ましい。
【0112】
-水-
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
前処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の乾燥性の点から、前処理液の質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0113】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0114】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0115】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが、起泡性が小さいため好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0116】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0117】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0118】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0119】
-その他成分-
その他成分としては、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、及び防錆剤などを含有してよい。
【0120】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0121】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0122】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0123】
<記録媒体>
白色インク、カラーインク、及び前処理液などが付与される記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布帛、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙などが挙げられる。これらの中でも、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、本開示のインクセットを適用することにより得られる効果が顕著になる観点から、商業印刷用紙などの低浸透性の記録媒体、サイネージ用などの非浸透性の記録媒体、及び布帛などが好ましい。なお、布帛は、フィルムや紙などと異なり、凹凸に富んだ表面構造を有するため、付与される白色インク及びカラーインクなどの量が多くなりやすく、これに伴ってカラーブリード及びビーディングが発生しやすくなる記録媒体である。
【0124】
記録媒体の一例として、布帛について説明する。本開示において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、及び天然繊維などの有機質繊維であることが好ましい。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及びポリイミドなどの繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどの繊維が挙げられる。再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、及びキュプラなどの繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、及び毛などの繊維が挙げられる。布帛を形成する繊維の中でも、綿などの天然繊維よりも、ポリエステルなどの合成繊維の方が、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、更に白色インクを表面にとどめることも難しい。しかし、本開示のインクセットは、このような布帛に対しても好適に作用し、カラーブリードとビーディングを抑制し、更に白色インクを表面に留めることも可能となる。
【0125】
布帛は、布帛に用いられる繊維が顔料又は染料等の着色剤を内部又は表面において化学的に又は物理的に保持することにより着色されていることで、濃色であることが好ましい。布帛が濃色である場合、布帛に形成されるカラー画像の発色性を向上させることを目的として、布帛とカラー画像との間に白色の下地が形成され得る。これにより、本開示の白色インクとカラーインクを有するインクセットを使用することが好適になるためである。なお、本開示において「濃色の布帛」とは、布帛の明度(L*)を分光測色計(例えば、X-rite exact(エックスライト社製))を用いて測定した場合に、60>L*の範囲を満たす布帛を表し、50>L*の範囲を満たす布帛であることが好ましく、40>L*の範囲を満たす布帛であることがより好ましく、30>L*の範囲を満たす布帛であることが更に好ましく、20>L*の範囲を満たす布帛であることが特に好ましい。
【0126】
<<画像形成装置及び画像形成方法>>
画像形成装置は、白色インクを収容した白色インク収容手段と、カラーインクを収容したカラーインク収容手段と、記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与手段と、記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与するカラーインク付与手段と、を有し、必要に応じてその他構成を有してもよい。その他構成としては、例えば、前処理液を収容した前処理液収容手段、記録媒体に対して前処理液を付与する前処理液付与手段、及び記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱する加熱手段などが挙げられる。なお、画像形成装置が前処理液収容手段及び前処理液付与手段を有する場合、白色インク付与手段は、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して白色インクを付与する手段と言い換えることができる。
画像形成方法は、記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与するカラーインク付与工程と、を有し、必要に応じてその他工程を有してもよい。その他工程としては、例えば、白色インク付与工程前において、記録媒体の白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程、及び記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱する加熱工程などが挙げられる。なお、画像形成方法が前処理液付与工程を有する場合、白色インク付与工程は、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して白色インクを付与する工程と言い換えることができる。
【0127】
<画像形成装置>
図1~2を参照して、画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2は、収容手段(白色インク収容手段、カラーインク収容手段、又は前処理液収容手段)の一例を示す概略図である。
【0128】
図1に示す画像形成装置400は、シリアル型のインクジェットヘッドを有する画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。前処理液用の前処理液収容手段410p、白色インク用の白色インク収容手段410w、ブラックインク用のブラックインク収容手段410k、シアンインク用のシアンインク収容手段410cにおける収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容手段410は、カートリッジとして用いられる。
【0129】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、各収容手段410が着脱自在に装着される。これにより、各供給チューブ436を介して、各収容手段410の排出口413とインクジェット吐出ヘッド434とが連通し、インクジェット吐出ヘッド434から記録媒体へ前処理液及び各インクを吐出可能となる。
なお、
図1に示す画像形成装置400では、前処理液をインクジェット吐出方式で記録媒体に付与するが、前処理液の付与方法としてはこれに限らない。例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法などで付与してもよい。
【0130】
なお、画像形成装置400は、記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱する加熱手段を有していてもよいが、白色インク付与後からカラーインク付与前までの間に、白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱手段を有さないことが好ましい。このような加熱手段は、白色インクを加熱して乾燥させることで、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的で設けられるが、本開示のインクセットは加熱手段を有さずともカラーブリード及びビーディングを抑制することができるためである。なお、加熱手段としては、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などの公知の加熱手段を挙げることができる。
【0131】
<画像形成方法>
画像形成方法の、白色インク付与工程、カラーインク付与工程、前処理液付与工程における付与方式としては、それぞれ独立して、例えば、吐出方式及び塗布方式などが挙げられる。白色インク付与工程及びカラーインク付与工程は、吐出方式であることが好ましく、インクジェット吐出方式であることがより好ましい。
【0132】
吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
【0133】
塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0134】
画像形成方法は、記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱する加熱工程を有していてもよいが、白色インク付与工程及びカラーインク付与工程の間に、白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱工程を有さないことが好ましい。このような加熱工程は、白色インクを加熱して乾燥させることで、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的で設けられるが、本開示のインクセットは加熱工程を有さずともカラーブリード及びビーディングを抑制することができるためである。
また、画像形成方法において、記録媒体に対して白色インクが付与されてから記録媒体の白色インクが付与された領域に対してカラーインクが付与されるまでの間の時間は、20秒以内であることが好ましい。上記時間は、白色インクを乾燥させる時間であり、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的に鑑みれば一般的には20秒より長いことが好ましいが、本開示のインクセットは20秒以内であってもカラーブリード及びビーディングを抑制することができるためである。
【0135】
白色インク付与工程における記録媒体に対する白色インクの付与量は、記録媒体の種類によって大きく異なるが、例えば、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましい。また、記録媒体として布帛を用いる場合は、50g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましく、150g/m2以上300g/m2以下であることが更に好ましい。
【0136】
カラーインク付与工程における記録媒体に対するカラーインクの付与量は、記録媒体の種類によって大きく異なるが、例えば、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。また、記録媒体として布帛を用いる場合は、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。
【0137】
なお、前処理液付与工程における記録媒体に対する前処理液の付与量は、記録媒体の種類によって大きく異なるが、例えば、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、0.1g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましい。また、記録媒体として布帛を用いる場合は、100g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以上500g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以上400g/m2以下であることが更に好ましい。
【実施例】
【0138】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0139】
<顔料分散体の調整例>
-調製例1:表面改質ブラック顔料分散体の調整-
Cabot Corporation社製Black Pearls(登録商標)1000(BET比表面積343m2/g、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)105mL/100gのカーボンブラック)100g、スルファニル酸100ミリモル、及びイオン交換高純水1Lを、室温でSilversonミキサー(6,000rpm)により混合した。
次に、得られたスラリーに硝酸100ミリモルを添加し、更に30分間後に10mLのイオン交換高純水に溶解させた亜硝酸ナトリウム(100ミリモル)をゆっくり添加した。更に撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させてカーボンブッラクにスルファニル酸が付加した改質顔料を得た。
次に、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。次いでこの分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質ブラック顔料分散体を得た。
得られた表面改質ブラック顔料分散体の顔料の表面処理レベルは0.75mmol/gであり、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は120nmであった。
【0140】
-調製例2:表面改質マゼンタ顔料分散体の調整-
SENSIENT社製顔料分散体SMART Magenta 3122BA(Pigment Red 122表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを0.1NのHCl水溶液で酸析した。
次に、10質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラエチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質マゼンタ顔料分散体を得た。
得られた表面改質マゼンタ顔料分散体について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0141】
-調製例3:表面改質シアン顔料分散体の調整-
SENSIENT社製顔料分散体SMART Cyan 3154BA(Pigment Blue 15:4表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを0.1NのHCl水溶液で酸析した。
次に、40質量%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質シアン顔料分散体を得た。
得られた表面改質シアン顔料分散体について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は116nmであった。
【0142】
-調製例4:表面改質イエロー顔料分散体の調整-
SENSIENT社製の顔料分散体SMART Yellow 3074BA(Pigment Yellow 74表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpH9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む表面改質イエロー顔料分散体を得た。
得られた表面改質イエロー顔料分散体について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は145nmであった。
【0143】
-調製例5:マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調整-
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gをフラスコ内で混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間撹拌した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間撹拌した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
次に、ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に撹拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に撹拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。
得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は127nmであった。
【0144】
-調製例6:シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調整-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更した以外は、調製例5と同様にして、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は93nmであった。
【0145】
-調製例7:イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調整-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をビスアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー155)に変更した以外は、調製例5と同様にして、イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は76nmであった。
【0146】
-調製例8:ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調整-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変更した以外は、調製例5と同様にして、ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0147】
-調製例9:ポリマー分散ホワイト顔料分散液の調整-
DISPERBYK-2081(BYKジャパン社製)コポリマー溶液55.6g、酸化チタン(TITONE R-25、堺化学工業株式会社製)517g、β-メトキシ-N,N-ジメチル-プロピオンアミド50g、及びイオン交換水377.4gを十分に撹拌した後、ビーズミル(ダイノーミル)に投入し、累積50%体積粒子径D50が300nm以下になるまで分散を行った。更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、ホワイト顔料50質量%含有のポリマー分散ホワイト顔料分散液を得た。
得られたポリマー分散ホワイト顔料分散液における顔料粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は283nmであった。
【0148】
<樹脂粒子の合成例>
-合成例1:水分散性ポリウレタン樹脂Aの合成-
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸830質量部、イソフタル酸830質量部、エチレングリコール374質量部、ネオペンチルグリコール598質量部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み、180℃~230℃で酸価が1mgKOH/g以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、水酸基価74.5mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、平均分子量1500のポリエステルポリオールP-1を得た。
次に、温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、オルソフタル酸1660質量部、ジエチレングリコール1637質量部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み180℃~230℃で酸価が1mgKOH/g以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、水酸基価190mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gの芳香族環式構造を有するポリエステルポリオールQ-1を得た。
次に、得られたポリエステルポリオールP-1の1000質量部を減圧下100℃で脱水し、その後、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907質量部を加え、十分に撹拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80質量部を加えた。その後、イソホロンジイソシアネート281質量部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1質量%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、得られたポリエステルポリオールQ-1を340質量部加えて均一溶液とした後、トリエチルアミン60質量部加えて中和し、更に水7,000質量部を加えて水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40℃~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分30質量%の安定な半透明コロイド状の水分散性ポリウレタン樹脂Aを含む水分散液を得た。なお、水分散性ポリウレタン樹脂Aは、上記の構造式(A)で示される構造を有する。
【0149】
-合成例2:水分散性ポリウレタン樹脂Bの合成-
合成例1と同様にして得られたポリエステルポリオールP-1の1000質量部を減圧下、100℃で脱水し、その後、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907質量部を加え、十分に撹拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80質量部を加えた。
次に、イソホロンジイソシアネート281質量部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化を実施した。イソシアネート値が0.1質量%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン60質量部加えて中和した後、水7000質量部を加えて水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40℃~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分30%の安定な半透明コロイド状の水分散性ポリウレタン樹脂Bを含む水分散液を得た。なお、水分散性ポリウレタン樹脂Bは、上記の構造式(A)で示される構造を有する。
【0150】
-合成例3:水分散性ポリウレタン樹脂Cの合成-
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸664質量部、イソフタル酸631質量部、1,4-ブタンジオール472質量部、ネオペンチルグリコール447質量部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み、180℃~230℃で5時間エステル化した後、酸価が1mgKOH/g以下になるまで230℃で6時間重縮合反応を行った。次に、120℃まで冷却し、アジピン酸321質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸268質量部を加え、再び170℃に昇温し、この温度で20時間反応させ、酸価46.5mgKOH/g、水酸基価59.8mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリエステルポリオールP-2を得た。
得られたポリエステルポリオールP-2の1,000質量部を減圧下、100℃で脱水し、その後、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン812質量部を加え、十分撹拌溶解し、1,4-ブタンジオール20質量部を加えた。次に、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)198質量部を加えて75℃で8時間反応させた。イソシアネート値が0.1質量%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン84質量部加えて中和した後、水7000質量部を加えて水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40℃~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分30%の安定な半透明コロイド状の水分散性ポリウレタン樹脂Cを含む水分散液を得た。なお、水分散性ポリウレタン樹脂Cは、上記の構造式(A)で示される構造を有する。
【0151】
-合成例4:水分散性ポリウレタン樹脂Dの合成-
合成例1と同様にして得られたポリエステルポリオールP-1の1,000質量部を減圧下、100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907質量部を加え、十分に撹拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80質量部を加えた。
次に、イソホロンジイソシアネート281質量部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化を実施した。イソシアネート値が0.1質量%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン60質量部加えて中和した後、水7,000質量部を加えて水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40℃~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分30質量%の安定な半透明コロイド状の水分散性ポリウレタン樹脂Dを含む水分散液を得た。なお、水分散性ポリウレタン樹脂Dは、上記の構造式(A)で示される構造を有する。
【0152】
-合成例5:アクリル-シリコーン樹脂の合成-
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、イオン交換水350gに、8.0gのラテムルS-180(花王株式会社製、反応性陰イオン性界面活性剤)を加えて混合し、65℃に昇温した。次に、反応開始剤のt-ブチルパーオキソベンゾエート3.0g、イソアスコルビン酸ナトリウム1.0gを加え、5分間後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸-2-エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、ビニルトリエトキシシラン15g、ラテムルS-180を8.0g、及びイオン交換水340gの混合物を、3時間かけて滴下した。次いで、80℃で2時間加熱熟成した後、常温まで冷却し、水酸化ナトリウムでpHを7~8に調整した。次いで、エバポレータによりエタノールを留去し、水分調節をして、固形分40質量%のアクリル-シリコーン樹脂粒子を含む水分散液730gを得た。水分散液中の樹脂粒子の累積50%体積粒子径D50を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ、125nmであった。
【0153】
<白色インク及びカラーインクの製造例>
-製造例1:インク1の製造-
撹拌機を備えた容器に、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールを1.00質量部、グリセリンを22.00質量部、1,3-ブタンジオールを11.00質量部、2,5,8,11-テトラメチルデカン-5,8-ジオールを0.320質量部、ユニダイン DSN403Nを0.08質量部を入れ、30分間混合撹拌した。次いで、防腐防黴剤(アビシア社製、Proxel GXL)0.05質量部、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール0.30質量部、調製例5のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を40.00質量部、合成例1の水分散性ポリウレタン樹脂Aの水分散液を20.00質量部、及び全体が100質量部となる量の高純水を加え、60分間混合撹拌した。次いで、得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去してインク1を得た。
【0154】
-製造例2~45:インク2~45の製造-
製造例1において、インクの処方を下記表1~9に示す材料に変更した以外は製造例1と同様にしてインク2~45を得た。なお、下記表1~9において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量(又は有効成分量)ではなく全量の表示である。
【0155】
なお、下記表1~9において示す各種材料の詳細は以下の通りである。
--色材--
・AC-RW7:ホワイト顔料分散液、大日精化工業社製、顔料固形分45.3質量%
--樹脂--
・スーパーフレックス300:ポリウレタンディスパージョン、固形分33.0質量%、ガラス転移温度(Tg)=-42℃、第一工業製薬株式会社製
・タケラック W-6110:ポリウレタンディスパージョン、固形分33.4質量%、ガラス転移温度(Tg)=-20℃、三井化学株式会社製
--界面活性剤--
・TEGO Wet270:ポリエーテル変性シロキサン化合物、エボニック社製、有効成分100%
・シルフェイスSAG503A:ポリエーテル変性シロキサン化合物、日信化学工業株式会社製、有効成分100%
・サーフィノール104E:日信化学工業株式会社製、有効成分50%
・ユニダイン DSN403N:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、ダイキン工業株式会社製、有効成分100%
--防カビ剤--
・Proxel GXL:1,2-benzisothiazolin-3-oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
<白色インク及びカラーインクの物性>
次に、得られたインク1~45について、以下のようにして各種物性を測定した。結果を表10に示した。
【0166】
-粘度-
インクの粘度は、粘度計(RE-85L、東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0167】
-pH-
インクのpHは、pHメーター計(HM-30R型、TOA-DKK社製)を用いて、25℃で測定した。
【0168】
-静的表面張力-
インクの静的表面張力は、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0169】
-動的表面張力-
最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1500msec時のインクの動的表面張力を、SITA_DynoTester(SITA社製)を用いて、25℃で測定した。
【0170】
【0171】
<前処理液の製造例>
-製造例1:前処理液1の製造-
ガラスビーカーに乳酸アンモニウムを7.5質量部秤量し、高純水50.00質量部投入後5分間撹拌する。次いで、プロピレングリコール10.00質量部とオルフィンEXP.4300を0.1質量部及びProxel GXL 0.05質量部と1,2,3-ベンゾトリアゾール0.1質量部を投入後、15分間混合撹拌する。更に、高純水を添加して合計100質量部にし、10分間混合撹拌した。この混合物を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、不溶物等のごみを除去して、前処理液1を作製した。
【0172】
-製造例2~16:前処理液2~16の製造-
製造例1において、前処理液の処方を下記表11~13に示す材料に変更した以外は製造例1と同様にして前処理液2~16を得た。なお、下記表11~13において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量(又は有効成分量)ではなく全量の表示である。
【0173】
なお、下記表11~13において示す各種材料の詳細は以下の通りである。
--カチオン性ポリマー--
・シャロールDC-902P:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、固形分51.0質量%、第一工業製薬株式会社製
・DK8610:ポリアミン樹脂、固形分55.0質量%、星光PMC株式会社製
--ノニオン性樹脂粒子--
・タケラックW-635:ポリウレタンエマルション、固形分35質量%、三井化学株式会社製
・SUMIKAFLEX850HQ:エチレン-塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、固形分50質量%、住友化学株式会社製
・SUMIKAFLEX951HQ:エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、固形分55質量%、住友化学株式会社製
--カチオン性樹脂粒子--
・アローベースCB-1200:固形分23質量%、ユニチカ株式会社製
--界面活性剤--
・オルフィンEXP.4300、日信化学工業株式会社製、有効成分60質量%
--ワックス--
・AQUACER497:パラフィンワックス、有効成分50質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER539:変性パラフィンワックス、有効成分35質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER531:変性ポリエチレンワックス、有効成分45質量%、BYKジャパン株式会社製
--防カビ剤--
・Proxel GXL:1,2-benzisothiazolin-3-oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0174】
<前処理液の保存安定性>
次に、得られた前処理液1~16を60℃の加温環境下にて10日間保管し、保管中の前処理液の変化を以下の評価基準に従って評価した。結果を表11~13に示した。
(評価基準)
A:目立った変化は無い
B:凝集又は増粘が生じ、前処理液としての使用が困難
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
<インクセットを用いた画像形成>
(実施例1~18、比較例1~7)
23℃±0.5℃、50%±5%RHに調整された環境条件下、インクジェット印刷装置(Direct to Garment Printer RICOH Ri 6000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録媒体に同じ付着量のインクが付着するように設定した。
まず、表14に示す通り、所定の記録媒体に対し、所定の前処理液を、所定の付与方法で、所定の付与量になるように付与した。その後、記録媒体がコート紙、塩ビフィルム、又はPETフィルムである場合は70℃オーブンで120秒間乾燥させ、濃色ポリエステルTシャツである場合は130℃オーブンで90秒間乾燥させ、濃色綿Tシャツである場合は165℃オーブンで90秒間乾燥させた。
次に、表14に示す所定のインクセットに含まれる白色インク及びカラーインクをそれぞれ上記インクジェット印刷装置に充填し、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して表14に示す所定の付与量で白色インクを付与してベタ画像を形成し、白色インクの付与から17秒後に、記録媒体の白色インクが付与された領域に対して表14に示す所定の付与量でカラーインクを付与して
図3に示すチャートを形成した。なお、白色インクの付与からカラーインクの付与までの間において記録媒体の加熱は行わなかった。
次に、
図3に示すチャートが形成された記録媒体が、記録媒体がコート紙、塩ビフィルム、又はPETフィルムである場合は70℃オーブンで5分間乾燥させ、濃色ポリエステルTシャツである場合は130℃オーブンで3分間乾燥させ、濃色綿Tシャツである場合は165℃オーブンで2分間乾燥させることによりサンプル画像を得た。
なお、
図3において、Wは下地としての白色のベタ画像部を表し、Yは下地W上に形成されたイエロー色のベタ画像部を表し、Mは下地W上に形成されたマゼンタ色のベタ画像部を表し、Cは下地W上に形成されたシアン色のベタ画像部を表し、Rは下地W上に形成された赤色のベタ画像部を表し、Bは下地W上に形成された青色のベタ画像部を表し、Gは下地W上に形成された緑色のベタ画像部を表し、Kは下地W上に形成された黒色のベタ画像部を表し、k1~k6は下地W上に形成された黒色の文字「R」を表し、yは下地W上に形成されたイエロー色の文字「R」を表す。また、
図3に示すチャートは、ソフトウェアであるフォトショップ(アドビ社製)を用いて色補正無しでデータ化した画像を基に作成され、600dpi×600dpiで印刷された。
【0179】
なお、下記表14において示す各種記録媒体の詳細は以下の通りである。
・OKトップコート+:コート紙、米坪157g/m2、王子製紙株式会社製
・NIJ-PVCM:塩ビフィルム、基材の厚み120μm/粘着剤25μm、ニチエ株式会社製
・ルミラー#50-T11:透明PETフィルム、易接着性処理、東レ株式会社製
・00300-ACT:濃色ポリエステルTシャツ、Glimmer 00300-ACT Black、トムス株式会社製
・00085-CVT:濃色綿Tシャツ、Printstar 00085-CVT Black、トムス株式会社製
【0180】
【0181】
得られた各サンプル画像について、以下のようにして、ハンター白色度、カラーブリード、及びビーディングを評価した。結果を表15に示した。
【0182】
[ハンター白色度]
得られたサンプル画像の白色のベタ画像部における画像濃度を、分光測色計(X-rite exact、X-rite社製)を用いて測定し、下記計算式(1)によりハンター白色度を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。なお、画像濃度の測定は、色上質紙 中厚口 黒紙(北越コーポレーション株式会社製)を5枚重ねた上にサンプル画像を置いて測定した。但し、実施例1~3は使用した記録媒体が元から白色であり、ハンター白色度を測定する意義がないため未評価とした。
(評価基準)
A+:ハンター白色度が85以上である
A:ハンター白色度が80以上85未満である
B:ハンター白色度が75以上80未満である
C:ハンター白色度が70以上75未満である
D:ハンター白色度が70未満である
【0183】
【0184】
[カラーブリード]
得られたサンプル画像の各カラーのベタ画像部において、隣接する白色のベタ画像部との間におけるカラーブリード(例えば、白及びイエロー間の色境界にじみ)及び隣接する他のカラーのベタ画像部との間におけるカラーブリード(例えば、黒及びイエロー間の色境界にじみ)の程度を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A+:色境界にじみが発生していない
A:極僅かに色境界にじみが発生している
B:僅かに色境界にじみが発生している
C:色境界にじみが発生している
D:著しく色境界にじみが発生している
【0185】
[ビーディング]
得られたサンプル画像の各カラーのベタ画像部において、ビーディング(濃度ムラ)の程度を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:濃度ムラが発生していない
B:僅かに濃度ムラが発生している
C:濃度ムラが発生している
D:著しく濃度ムラが発生している
【0186】
【符号の説明】
【0187】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410p 前処理液収容手段
410w 白色インク収容手段
410k ブラックインク収容手段
410c シアンインク収容手段
411 収容部
413 排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 インクジェット吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0188】