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特許76812882剤硬化型接着剤、2剤硬化型接着剤用の硬化剤、及び、化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】2剤硬化型接着剤、2剤硬化型接着剤用の硬化剤、及び、化合物
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/00 20060101AFI20250515BHJP
   A61L 24/02 20060101ALI20250515BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20250515BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20250515BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20250515BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20250515BHJP
   C08H 1/00 20060101ALI20250515BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20250515BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20250515BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20250515BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20250515BHJP
   C08F 120/06 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
A61L24/00 200
A61L24/00 310
A61L24/02
A61L27/54
A61L27/58
A61L27/44
C08B37/08 A
C08H1/00
C08G18/64 023
C08G65/332
C08G63/06
C08G63/08
C08F120/06
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020204179
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091370
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】西口 昭広
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-79145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0129710(US,A1)
【文献】国際公開第2018/088541(WO,A1)
【文献】特表2014-519843(JP,A)
【文献】Jae Suk Yoo et al.,"Study on Genipin: A New Alternative Natural Crosslinking Agent for Fixing Heterograft Tissue",The Korean Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery,2011年,Vol.44,p.197-207,DOI: 10.5090/kjtcs.2011.44.3.197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
C08B 37/08
C08H 1/00
C08G 18/64,65/332,63/06,63/08
C08F 120/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1級アミノ基と、*を結合位置としたとき式1で表される基と、を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物Aと、塩基性化合物とを含む第1剤と、
酸性化合物を含む第2剤とを備える2剤硬化型接着剤。
【化1】
【請求項2】
前記第1剤、及び、前記第2剤からなる群より選択される少なくとも一方が溶媒を含み、
前記第1剤と前記第2剤とを混合したとき、混合液のpHが8.0以下となる請求項1に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項3】
前記混合液のpHが7.0未満となる、請求項2に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項4】
前記混合液のpHが5.0以上となる、請求項2又は3に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項5】
前記第2剤が溶媒を含み、
前記第2剤のpHが7.0未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項6】
前記第2剤のpHが、2.0~5.0である、請求項5に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項7】
前記第1剤が溶媒を含み、
前記第1剤のpHが7.0を超える、請求項1~6のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項8】
前記化合物Aが、骨格構造と、前記骨格構造に結合した前記第1級アミノ基と、前記式1で表される基とを有し、
前記骨格構造が、多糖、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する骨格構造である、請求項1~7のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項9】
前記化合物Aが、下記式2で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【化2】
(式2中、s1は1以上の整数であり、t1は1以上の整数であり、u1は0以上の整数であり、L、L、及び、Lは、それぞれ独立に単結合、又は、2価の基であり、Mはs1+t1+u1価の基であり、Yは水素原子、又は、前記第1級アミノ基を有しない1価の基であり、Xは前記式1で表される基である。)
【請求項10】
前記L、前記L、及び、前記Lが、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基を含む、請求項9に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項11】
前記化合物Aが、下記式5で表される化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【化3】
(式5中、S5は1~3の整数であり、L、及び、Lはそれぞれ独立に、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基を含む2価の基であり、Xは前記式1で表される基であり、Mは4価の基である。)
【請求項12】
前記第2剤が、細胞外マトリックスを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項13】
前記第1剤と前記第2剤とを混合したときpHが5.0~8.0となる請求項2~7のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項14】
前記化合物Aにおける、第1級アミノ基のモル基準の含有量に対する、前記式1で表される基のモル基準の含有量の含量比が0.05~1.2である、請求項1~13のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項15】
前記化合物Aが2~6個の第1級アミノ基と、2~6個の式1で表される基とを有する請求項1~14のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
【請求項16】
第1級アミノ基と、*を結合位置としたとき式1で表される基と、を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物Aを含む2剤硬化型接着剤用の硬化剤。
【化4】
【請求項17】
更に塩基性化合物を含む、請求項16に記載の硬化剤。
【請求項18】
前記化合物Aが、骨格構造と、前記骨格構造に結合した前記第1級アミノ基と、前記式1で表される基とを有し、
前記骨格構造が、多糖、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する骨格構造である、請求項16又は17に記載の硬化剤。
【請求項19】
化合物であって、骨格構造と、前記骨格構造に結合した第1級アミノ基と、下記式1で表される基とを有し、
前記骨格構造が、多糖、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する骨格構造であり、
下記式2で表される化合物。
【化5】
(式2中、s1は1以上の整数であり、t1は1以上の整数であり、u1は0以上の整数であり、L、L、及び、Lは、それぞれ独立に単結合、又は、2価の基であり、Mはs1+t1+u1価の基であり、Yは水素原子、又は、第1級アミノ基を有しない1価の基であり、Xは*を結合位置としたとき下記式1で表される基である。)
【化6】
【請求項20】
前記L 、前記L 、及び、前記L が、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基を含む、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
下記式5で表される、請求項19項に記載の化合物。
【化7】
(式5中、S5は1~3の整数であり、L 、及び、L はそれぞれ独立に、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基を含む2価の基であり、X は前記式1で表される基であり、M は4価の基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤硬化型接着剤、2剤硬化型接着剤用の硬化剤、及び、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲニピンは、グルタルアルデヒド等と比較して細胞毒性が低く、キセロゲルを含む医療用ゲルの硬化剤等として用いられている。特許文献1には、「ゲニピンと、ゼラチンと、を含む、止血材用スポンジ。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-68723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲニピンは、架橋反応の進行が遅く、2剤硬化型接着剤の硬化剤として用いることは難しかった。そこで本発明は、ゲニピン誘導体を含み、迅速に硬化可能な2剤硬化型接着剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、2剤硬化型接着剤用の硬化剤、及び、化合物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0006】
[1] 第1級アミノ基と、式1で表される基と、を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物Aと、塩基性化合物とを含む第1剤と、酸性化合物を含む第2剤とを備える2剤硬化型接着剤。
[2] 上記第1剤、及び、上記第2剤からなる群より選択される少なくとも一方が溶媒を含み、上記第1剤と上記第2剤とを混合したとき、混合液のpHが8.0以下となる[1]に記載の2剤硬化型接着剤。
[3] 上記混合液のpHが7.0未満となる、[2]に記載の2剤硬化型接着剤。
[4] 上記混合液のpHが5.0以上となる、[2]又は[3]に記載の2剤硬化型接着剤。
[5] 上記第2剤が溶媒を含み、上記第2剤のpHが7.0未満である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[6] 上記第2剤のpHが、2.0~5.0である、[5]に記載の2剤硬化型接着剤。
[7] 上記第1剤が溶媒を含み、上記第1剤のpHが7.0を超える、[1]~[6]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[8] 上記化合物Aが、骨格構造と、上記骨格構造に結合した上記第1級アミノ基と、後述する式1で表される基とを有し、上記骨格構造が、多糖、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する骨格構造である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[9] 上記化合物Aが、後述する式2で表される化合物である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[10] 上記L、上記L、及び、上記Lが、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基を含む、[9]に記載の2剤硬化型接着剤。
[11] 上記化合物Aが、下記式5で表される化合物である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[12] 上記第2剤が、細胞外マトリックスを含む、[1]~[11]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[13] 上記第1剤と上記第2剤とを混合したときpHが5.0~8.0となる[2]~[7]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[14] 上記化合物における、第1級アミノ基のモル基準の含有量に対する、上記式1で表される基のモル基準の含有量の含量比が0.05~1.2である、[1]~[13]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[15] 上記化合物Aが2~6個の第1級アミノ基と、2~6個の式1で表される基とを有する[1]~[14]のいずれか1項に記載の2剤硬化型接着剤。
[16] 第1級アミノ基と、式1で表される基と、を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物Aを含む2剤硬化型接着剤用の硬化剤。
[17] 更に塩基性化合物を含む、[16]に記載の硬化剤。
[18] 上記化合物Aが、骨格構造と、上記骨格構造に結合した上記第1級アミノ基と、上記式1で表される基とを有し、上記骨格構造が、多糖、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する骨格構造である、[16]又は[17]に記載の硬化剤。
[19] 後述する式2で表される化合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゲニピン誘導体を含み、迅速に硬化可能な2剤硬化型接着剤を提供できる。
また、本発明によれば、2剤硬化型接着剤用の硬化剤、及び、化合物も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】反応時間(横軸:分)に対する、ゲニピンの導入量(縦軸:個)を計算した結果を表す図である。
図2】ポリアミン液のpHに対する、ポリアミン1分子へのゲニピン平均導入量を計算した結果を表す図である。
図3】本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分として、経時的に変化するせん断弾性率(Pa)を表す図である。中実円が貯蔵弾性率、中空円が損失弾性率である。
図4】第2剤のみの経時的に変化するせん断弾性率(Pa)を表す図である。
図5】第2剤とゲニピンとの混合時を0分として、経時的に変化するせん断弾性率(Pa)を表す図である。
図6図6が第2剤、ゲニピン、及び、ポリアミンとの混合時を0分として、経時的に変化するせん断弾性率(Pa)を表す図である。中実円が貯蔵弾性率、中空円が損失弾性率である。
図7】ポリアミンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンを50モル%となるよう仕込んで合成した化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図8】ポリアミンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンを60モル%となるよう仕込んで合成した化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図9】ポリアミンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンを70モル%となるよう仕込んで合成した化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図10】ポリアミンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンを80モル%となるよう仕込んで合成した化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図11】ゲニピンとポリアミンとの反応時間を3分とした場合に得られた化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図12】ゲニピンとポリアミンとの反応時間を10分とした場合に得られた化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図13】ゲニピンとポリアミンとの反応時間を30分とした場合に得られた化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図14】ゲニピンとポリアミンとの反応時間を60分とした場合に得られた化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図15】UBM(Urinary bladder matrix)溶液のpHを2.0とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図16】UBM溶液のpHを2.5とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図17】UBM溶液のpHを3.0とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図18】UBM溶液のpHを5.0とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図19】UBM溶液のpHを7.0とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
図20】ハイドロケルの膨潤度測定の結果である。
図21】ハイドロゲルの応力-ひずみの関係である。
図22】細胞生存率(%)を表す図である。
図23】コラーゲンケーシングに対する接着性を表す図である。
図24】ブタ大動脈を用いた接着性評価結果である。
図25】耐圧試験後のブタ大動脈の組織学的評価結果である。
図26】UBMを含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図27】心臓由来のECM(extracellular matrix)を含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図28】肝臓由来のECMを含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図29】すい臓由来のECMを含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図30】小腸由来のECMを含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図31】PBS(Phosphate-buffered saline)のみからなる第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図32】種々のECMを含有する第2剤を用いて作製したハイドロゲルのコラーゲンケーシングに対する接着性を表す図である。
図33】ゲニピンの仕込み量(当量)に対する、ゲニピンの導入率(式1で表される基の導入率)を表す図である。
図34】ゲニピンの導入率が9%である第1剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図35】ゲニピンの導入率が18%である第1剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図36】ゲニピンの導入率が31%である第1剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
図37】ゲニピンの導入率が33%である第1剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
本明細書における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
【0011】
[2剤硬化型接着剤]
本発明の実施形態に係る2剤硬化型接着剤(以下、単に「本接着剤」ともいう。)は、第1級アミノ基と、*を結合位置としたとき式1で表される基と、を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物Aと、塩基性化合物を含む第1剤と、酸性化合物を含む第2剤とを含む2剤硬化型接着剤である。
【化1】
【0012】
上記2剤硬化型接着剤により本発明の課題が解決される機序は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のとおりと推測している。なお、以下の推測によって本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、以下の機序に依らずに課題が解決される場合であっても、各請求項に記載された事項により特定される2剤硬化型接着剤等については、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0013】
本発明者は、迅速に硬化する2剤硬化型接着剤の開発に際し、ゲニピンと第1級アミンとによる架橋(硬化)メカニズムについて鋭意検討してきた。
一般に、ゲニピンの架橋(硬化)反応機構としては、(1)第1級アミンによるゲニピンのC3炭素原子への求核攻撃から始まり、ジヒドロピラン環の開環に続いて、求核攻撃で生じた第2級アミンによる、上記開環で生じたアルデヒド基への攻撃でN含有複素環(ジヒドロピリジン環)が形成されることによるもの(下記式における「reaction scheme(1)」)、(2)エステル基を第2級アミド結合で置換するSN2求核置換反応によるもの(下記式における「reaction scheme(2)」)、及び、(3)酸素ラジカルの存在下で起こる二量化反応(二量化反応形態は複数あると考えられている)があることが知られている。
【0014】
これらの反応のうち、大気環境下でもその進行の制御がより容易で、硬化物における主たる架橋構造の形成に寄与すると推測されるreaction scheme(1)及びreaction scheme(2)の反応を段階的に起こさせれば、より迅速に硬化する2剤硬化型接着剤に応用できることを本発明者は着想した。
【0015】
reaction scheme(1)及びreaction scheme(2)の反応の速度は様々な要因の影響を受けて変化する可能性があることはすでに知られていた。しかし、本発明者は新たに、塩基性化合物を含む溶液、例えば、pH7.0を超える水溶液中(pH11.0以下が好ましい)では、reaction scheme(1)の反応が進みやすく、酸性化合物を含む溶液、具体的には、pH7.0未満の水溶液中(pH2.0以上が好ましい)では、reaction scheme(2)の反応が進みやすいことを知見し、これに着目した。
【0016】
かくして、第1級アミノ基を有するゲニピン誘導体を合成して、塩基性化合物によりpHを調整して(好ましくはpH=7.0超にして)これを第1剤の成分とし、これと酸性化合物を含む第2剤とを混合して、pHを下げて、(好ましくはpHを7.0未満として)、下記式におけるreaction scheme(4)の反応を起こさせて硬化させる2剤硬化型接着剤を本発明者は完成させた。
【0017】
第1剤に含まれる化合物Aは、上記の式1で表される基を有している。式1で表される基は、ゲニピンと第1級アミンとによるreaction scheme(1)の反応によって生ずる基であるが、驚くべきことに、この基は、反応液のpHを低下させることで、reaction scheme(4)の反応を非常に迅速に進行させることを本発明者は発見した。
【0018】
なお、以下の反応式は、模式的なものであり、それぞれの反応の前後、又は、途中でゲニピンの二量化機構に由来する反応が並行して起こる場合もあるが、省略している。なお、式中、R、及び、Rはそれぞれ1価の基を表す。
【0019】
【化2】
【0020】
なお、本発明者は、上記とは逆に、低pH領域でreaction scheme(2)の反応を進めてから、pH調整剤と混合し、pHを上げて、高pH領域でreaction scheme(5)の反応により架橋を進行させる形態についても検討したが、所望の効果は得られなかった。
【0021】
すなわち、本接着剤は、反応液のpHとゲニピンの架橋反応速度との関係を利用し、かつ、reaction scheme(4)の反応が迅速に進みやすい式1で表される基を有する化合物Aを予め準備し、これを架橋剤として用いることで、はじめて所望の効果が得られたものと推測される。
【0022】
なお、上記反応式のreaction scheme(4)では、第1級アミノ基を有する化合物「HN-R」と、化合物Aとが結合して架橋構造が形成される形態が示されている。この「HN-R」は、化合物A自体であってもよい。また、後述するように、「HN-R」は、第1剤又は第2剤(好ましくは第2剤)に含まれる他の化合物であってもよい。以下では、本発明の実施形態に係る2剤硬化型接着剤が含む成分について詳述する。
【0023】
〔第1剤〕
第1剤は、化合物Aと塩基性化合物とを含み、更に溶媒を含んでもよい。
【0024】
<化合物A>
化合物Aは、第1級アミノ基と、式1で表される基とをそれぞれ分子内に1つ以上有する化合物である。(なお、式中*は結合位置を表す。)
【0025】
【化3】
【0026】
第1剤における化合物Aの含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる点で、一般に第1剤中の固形分の全質量に対して、1~99質量%が好ましい。なお、第1剤は、化合物Aの1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。第1剤が、2種以上の化合物Aを含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0027】
化合物Aが有する第1級アミノ基の個数としては特に制限されないが、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、上限は特に制限されないが、50個以下が好ましく、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、6個以下が更に好ましい。
【0028】
化合物Aの1分子が有する式1で表される基の個数としては特に制限されないが、2個以上が好ましく、上限は特に制限されないが、50個以下が好ましく、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、6個以下が更に好ましく、4個以下が特に好ましい。
【0029】
化合物Aにおける第1級アミノ基のモル基準の含有量に対する、式1で表される基のモル基準の含有量の含有量比(式1で表される基/アミノ基)としては、特に制限されないが、一般に、0.01~2.0が好ましい。より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点では、0.05~1.2が好ましい。なかでも、化合物Aが後述する式1で表される化合物である場合、更に優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点で、0.4~1.0がより好ましく、0.5~0.9が更に好ましい。
一方、化合物Aが、後述するポリアミンとしてゼラチンとゲニピンとを反応させて得られるものである場合、上記含有量比としては、0.05~0.6が好ましい。
【0030】
化合物Aは、第1級アミノ基と式1で表される基とを分子内にそれぞれ1つ以上有する。すでに説明したとおり、式1で表される基は、典型的には、ゲニピンと第1級アミンとが結合して生じる基であり、化合物Aは、ゲニピン誘導体である。
【0031】
実施例(図22)にも示すとおり、従来、細胞毒性が低いと考えられていた遊離状態のゲニピン(図22では、「UBM+Genipinn」と記載されている)は、十分に細胞毒性が低いとは言えないことが本発明者の検討によればわかっている。
一方、本実施形態の2剤硬化型接着剤は、架橋に寄与する成分(化合物A)はゲニピン「誘導体」である。これは、言い換えれば、細胞毒性を有するゲニピンが後述する骨格構造に固定された状態となっており、架橋反応の進行に関わらず、ゲニピンそのもの(遊離のゲニピン)による毒性が発現しにくいという優れた特徴も有している。
【0032】
化合物Aは、典型的には、骨格構造と、上記骨格構造に結合した第1級アミノ基と、式1で表される基とを有する化合物である。
この骨格構造は特に制限されず、種々の有機化合物に由来する構造が使用できる。
例えば、上記骨格構造としては、多糖、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸等に由来する構造が使用できる。
【0033】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点では、骨格構造はエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造が好ましく、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造がより好ましく、ポリアルキレングリコールに由来する構造が更に好ましい。
【0034】
化合物Aとしては、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点から、式2で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
式2中、s1は1以上の整数であり、上限は特に制限されないが、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、2以下が特に好ましい。
式2中、t1は1以上の整数であり、2以上が好ましく、上限は特に制限されないが10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下が特に好ましい。
式2中、u1は0以上の整数であり、2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
【0037】
はs1+t1+u1価の基を表す。Mが2価の基である場合には、Mは、例えば、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-NR20-(R20は水素原子又は1価の有機基を表す)、アルキレン基(炭素数1~10個が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3~10個が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~10個が好ましい)、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点では、-C(O)-、-NH-、-O-、炭素数1~5個のアルキレン基、及び、これらの組み合わせ等が好ましい。
【0038】
また、Mが3価以上の基である場合には、特に制限されないが、例えば、(3a)~(3d)で表される基が挙げられる。
【化5】
【0039】
式3a中、Qは3価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、3個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
としては、第3級アミノ基、3価の炭化水素基(炭素数1~10個が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、3価の複素環基(5員環~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。Qの具体例としては、グリセリン残基、トリメチロールプロパン残基、フロログルシノール残基、及び、シクロヘキサントリオール残基等が挙げられる。
なお、Tの2価の基としては特に制限されないが、すでに説明したMの2価の基と同様の基が挙げられ、なかでも、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基が好ましい。
【0040】
式3b中、Qは4価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、4個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Qとしては、4価の炭化水素基(炭素数1~10個が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、4価の複素環基(5~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。Qの具体例としては、ペンタエリスリトール残基、及び、ジトリメチロールプロパン残基等が挙げられる。
なお、Tの2価の基としては特に制限されないが、すでに説明したMの2価の基と同様の基が挙げられ、なかでも、-O-、炭素数1~5のアルキレン基、又は、これらの組合せが好ましい。
【0041】
式3c中、Qは5価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、5個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Qとしては、5価の炭化水素基(炭素数2~10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、5価の複素環基(5~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。Qの具体例としては、アラビニトール残基、フロログルシドール残基、及び、シクロヘキサンペンタオール残基等が挙げられる。
なお、Tの2価の基としては特に制限されないが、すでに説明したMの2価の基と同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
【0042】
式3d中、Qは6価の基を表す。Tは単結合又は2価の基を表し、6個のTは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、Qとしては、6価の炭化水素基(炭素数2~10が好ましい。なお、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でもよく脂肪族炭化水素基でもよい。)、又は、6価の複素環基(6~7員環の複素環基が好ましい)が挙げられ、炭化水素基にはヘテロ原子(例えば、-O-)が含まれていてもよい。Qの具体例としては、マンニトール残基、ソルビトール残基、ジペンタエリスリトール残基、ヘキサヒドロキシベンゼン、及び、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン残基等が挙げられる。
なお、Tの2価の基としては特に制限されないが、すでに説明したMの2価の基と同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
【0043】
なお、Mが7価以上の基である場合には、式3a~式3dで表した基を組み合わせた基を用いることができる。
【0044】
式2中、L、L、及び、Lは、それぞれ独立に単結合、又は、2価の基であり、2価の基としては特に制限されないが、Mの2価の基としてすでに説明した基と同様の基が挙げられる。
また、L、L、及び、Lは、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基(オキシアルキレン基)を含むことが好ましい。なお、アルキレンオキシ基を含む基には、ポリオキシアルキレン基も含まれる。
、L、及び、Lは、炭素数が1~10個のアルキレンオキシ基(オキシアルキレン基)を含む場合、本接着剤の硬化物がより優れた親水性を有し、結果として、より優れた組織接着性、及び/又は、生体適合性を有する。
【0045】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点から、L、L、及び、Lの2価の基としては以下の式(4)で表される基が好ましい。
【0046】
【化6】
【0047】
式4中、Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい、炭素数が1~10個(より好ましくは炭素数2~6個)のアルキレン基が好ましく、-CHCH-がより好ましい。また、Lは、単結合、又は、2価の基であり、Lの2価の基としては、Mの2価の基として説明したのと同様の基が挙げられる。
また、p1は、2以上の数を表し、特に制限されないが、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、2000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。
また、*は、Mとの結合位置を表し、**は他方の結合位置を表す。
なお、L、L、及び、Lはそれぞれ同一でも異なってもよいが、全て同一であることが好ましい。
【0048】
また、式2においてYは水素原子、又は、第1級アミノ基を有しない1価の基である。1価の基としては特に制限されないが、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及び、アルコキシ基等が挙げられる。また、Yは、以下の式で表される基でもよい。なお、式中、*は結合位置を表す。
【0049】
【化7】
【0050】
また、式2においてXは式1で表される基である。
【0051】
より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる観点から、化合物Aは以下の式5で表される化合物が好ましい。
【化8】
【0052】
式5中、X、L、及び、Lはそれぞれ式2中における各記号と同義であり、好適形態も同様である。Mは4価の基であり、具体例、及び、好適形態は式2中のMの4価の基と同様である。また、s5は1~3の整数である。
【0053】
化合物Aの分子量としては特に制限されないが、典型的には、100~300,000が好ましく、1000~200,000がより好ましく、2000~100,000が更に好ましい。
【0054】
(化合物Aの合成方法)
化合物Aは、典型的には、ゲニピンとポリアミン(本明細書においては、第1級アミノ基を2個以上含む化合物を意味する。)とを塩基性溶液中で反応させることにより得ることができる。
【0055】
ポリアミンとしては、キトサン、アルブミン、ゼラチン、エチレンジアミン、及び、ポリエチレンイミン等のような、第1級アミノ基を複数有しているものであれば使用できる。また、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸等に、第1級アミノ基を導入したものも使用できる。
【0056】
得られる化合物Aを含む2剤硬化型接着剤がより優れた本発明の効果を有する点で、ポリアミンとしては、以下の式6で表される化合物が好ましい。
【0057】
【化9】
【0058】
式6中、s6は2以上の整数を表し、上限は特に制限されないが9以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下が特に好ましい。
式2中、u6は0以上の整数を表し、2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
【0059】
式6中、M、L、L、及び、Yは、それぞれ式2における各記号と同義であり、好適形態も同様である。
なかでも、Yは、水素原子、ヒドロキシ基、又は、以下の基が好ましい。なお、以下の式において*は結合位置を表す。
【0060】
【化10】
【0061】
ポリアミンの具体例としては、キトサン等のアミノ糖を構成単位として有する多糖;エラスチン、アルブミン、及び、コラーゲン等のタンパク質等が挙げられある。また、ポリアミンとしては、リジン(lysine)に由来する第1級アミノ基を有するゼラチン等も使用できる。
【0062】
また、ポリアミンの他の例として、エチレンジアミン、又は、ポリエチレンイミンも挙げられる。このとき、ポリエチレンイミンの分子量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、300~100,000が好ましい。
【0063】
また、ポリアミンの他の例として、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及び、ポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーに複数の第1級アミノ基が導入された誘導体を用いることもできる。
上記ポリマーより優れた親水性を有し、より優れた生体適合性を有するため、上記ポリアミンを用いた場合、2剤硬化型接着剤の硬化物は優れた生体適合性を有する。
【0064】
ポリアミンの分子量としては特に制限されないが、得られる硬化物がより優れた機械特性を有する点で、300以上が好ましく、第1剤がより優れた流動性を有する点で、200,000以下が好ましい。
【0065】
<塩基性化合物>
第1剤は塩基性化合物を含む。本明細書において、塩基性化合物とは、25℃の超純水1kgに、炭酸ガスを含まない不活性ガス雰囲気中で、その化合物を0.05mol溶解させたとき、水溶液のpHが7.0(小数第2位を切り上げ)を超える化合物を意味する。
【0066】
塩基性化合物としては、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及び、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。
第1剤が塩基性化合物を含む形態は特に制限されず、例えば、化合物Aの合成過程で使用されるpH調整剤(水酸化ナトリウム等)や、緩衝剤(リン酸水素二ナトリウム等)が、最終的に第1剤に残留した形態であってもよい。
【0067】
より具体的には、化合物Aは、典型的には、アルカリ性水溶液中で、ゲニピンとポリアミンとを反応させて得ることが好ましく、この際、溶液中にはpH調整剤や緩衝剤として塩基性化合物が含まれている。第1剤は、化合物Aの合成過程において使用された塩基性化合物が残留することにより、塩基性化合物を含む形態であってもよい。
【0068】
第1剤における塩基性化合物の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる点で、一般に第1剤の固形分の全質量に対して、0.0001~99質量%が好ましい。なお、第1剤は、塩基性化合物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。第1剤が、2種以上の塩基性化合物を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0069】
<溶媒>
第1剤は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては特に制限されないが、水、アルコール等の水溶性有機溶媒、又は、その混合物が好ましく、水が好ましい。
第1剤中の溶媒の含有量としては特に制限されないが、取り扱い性、及び、硬化性の観点から、第1剤の固形分が、0.01~99質量%に調製されることが好ましく、0.1~40質量%に調整されることがより好ましく、1~30質量%に調製されることがより好ましい。
第1剤が溶媒を含むとき、第1剤のpHとしては特に制限されないが、pH7.0を超えることが好ましく、11未満が好ましい。
【0070】
第1剤は本発明の効果を奏する範囲内において、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、第2剤が含んでもよい「その他の成分」と同様であり、後述する。
【0071】
〔第2剤〕
第2剤は酸性化合物を含む。本明細書において、酸性化合物とは、25℃の超純水1kgに、炭酸ガスを含まない不活性ガス雰囲気中で、その化合物を0.05mol溶解させたとき、水溶液のpHが7.0未満(小数第2位を切り上げ)となる化合物を意味する。
【0072】
第2剤中における酸性化合物の含有量としては特に制限されないが、第1剤との関係で、使用の際に2剤(溶媒を含む)を混合したとき、混合液のpHが8.0以下となるよう調整されることが好ましい。
混合液のpHは、第1剤に含まれる塩基性化合物の種類、及び、量、並びに、第1剤が溶媒を含む場合には溶媒の種類、及び、量の影響を受ける。また、使用時の混合液の温度等の影響も受ける。
従って、酸性化合物の含有量は、上記条件に従って適宜選択されればよい。このようなpHの調整は当業者にとっては容易である。
【0073】
2剤硬化型接着剤の硬化がより速くなりやすい点では、2剤の混合液のpHは7.0以下に調整されることがより好ましく、7.0未満となるよう調整されることが好ましい。
一方、混合液を調製した後から硬化までのより十分な時間(より十分なポットライフ)が確保される観点では、混合液のpHが2.0以上となるよう調整されることが好ましく、pHが2.0超となるよう調整されることがより好ましく、5.0以上となるよう調整されることが更に好ましい。
【0074】
第2剤のpHとしては、特に制限されないが、混合液のpHを調整し易い観点では、7.0未満であることが好ましく、5.0以下であることが好ましく、5.0未満であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましく、2.0以上が好ましく、2.0を超えることが好ましく、2.5以上が更に好ましい。
【0075】
酸性化合物としては特に制限されないが、塩酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、クエン酸塩等が挙げられる。
第2剤における酸性化合物の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する2剤硬化型接着剤が得られる点で、一般に第2剤の固形分の全質量に対して、0.001~99質量%が好ましい。なお、第1剤は、酸性化合物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。第1剤が、2種以上の酸性化合物を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0076】
<溶媒>
第2剤は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては特に制限されないが、水、アルコール等の水溶性有機溶媒、又は、その混合物が好ましく、水が好ましい。
第2剤中の溶媒の含有量としては特に制限されないが、取り扱い性、及び、硬化性の観点から、第2剤の固形分が、0.01~99質量%に調製されることが好ましく、0.01~10質量%に調製されることがより好ましい。
【0077】
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、及び、イソプロピルアルコール等の炭素数が5個以下のアルコール、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0078】
<その他の成分>
第2剤は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
上記成分としては例えば、化合物Aの合成に使用できる化合物として説明したポリアミンが挙げられる。第2剤がポリアミンを含有すると、より速く硬化する、及び/又は、より優れた接着性を有する硬化物を形成可能な、2剤硬化型接着剤が得られる。
【0079】
上記その他の成分としては、細胞外マトリックスが好ましい。
本明細書において「細胞外マトリックス」(ECM:Extracellular matrix)は、「細胞外基質」と同義であり、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質を意味する。
細胞外マトリックスは、一般には細胞が産生する生体物質の一つである。細胞外マトリックスは、組織の支持だけでなく、体細胞の生存に必要な内部環境の構成に関与する。細胞外マトリックスは、一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞や内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。
【0080】
細胞外マトリックスは線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維、及び、弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖-タンパク複合体)の高分子を形成している。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。代表的な細胞外マトリックスとしては、例えば、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンV、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンディン、及び、プロテオグリカン類(例えば、デコリン、バイグリカン、フィブロモジュリン、ルミカン、ヒアルロン酸、アグリカン等)等が挙げられる。
【0081】
第2剤が細胞外マトリックスを含む場合、2剤硬化型接着剤の硬化物はより優れた組織再生能を有し、より優れた組織接着力を有し、及び、より速く硬化する。
【0082】
細胞外マトリックスは購入してもよいし、公知の方法で調製してもよい。細胞外マトリックスを調製する方法としては特に限定されないが、例えば、生体由来の器官を洗浄し、その後に、必要に応じて核酸を除去する処理を行い、その後に、酸性溶液中でトリプシン、及び、ペプシン等の酸性プロテアーゼによる消化を行い、得られた消化液から凍結乾燥等の方法によって溶媒を除去する方法が使用できる。また、培養細胞に分泌させたものを使用することもできる。
第2剤が細胞外マトリックスを含む場合、その調製方法に由来して、第2剤に含まれる酸性化合物は、細胞外マトリックスの調製工程に起因して、結果として第2剤に含まれる(移行される)ものであってもよい。
【0083】
細胞外マトリックスの調製に使用される生体由来の器官の種類は特に限定されないが、例えば、哺乳類の膀胱、心臓、肝臓、すい臓、及び、小腸等が挙げられ、得られる2剤硬化型接着剤がより優れた接着性(耐圧強度:図32)を有する観点では、膀胱、心臓、肝臓、及び、小腸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、膀胱、及び、小腸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。また、培養細胞としては、ヒト胎児由来の線維芽細胞等が挙げられる。
【0084】
第2剤が細胞外マトリックスを含む場合、第2剤中における細胞外マトリックスの含有量としては特に制限されないが、一般に第2剤中の固形分の全質量を100質量%としたとき、特に限定されないが、0.1~99.99質量%が好ましく、第2剤中に含まれる他の成分、特に酸性化合物の含有量に応じて適宜調整されればよい。
【0085】
第2剤は、上記以外にも各種薬剤等を含んでもよい。
第2剤がこれらの薬剤を含有すると、本接着剤の硬化物を、薬剤の局所デリバリー担体、又は、徐放性デリバリー担体として使用できる。
薬剤としては、特に限定されないが、抗がん剤、抗炎症薬、抗血栓薬、抗生物質、及び、生物学的製剤、並びに、線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、及び、肝細胞増殖因子等の成長因子が挙げられる。
また、ワクチンとしてのウイルス、及び/又は、癌の抗原タンパク質を含む場合、本接着剤の硬化物をワクチンキャリアとして使用できる。
【0086】
〔2剤硬化型接着剤の構成〕
本接着剤は第1剤と第2剤とを有し、これを混合することで硬化反応が進行し、迅速に硬化するという特徴を有する。しかも、第1剤中の塩基性化合物の含有量、及び、第2剤の酸性化合物の含有量の相対的な関係を調整する、すなわち、混合物のpHを下げる程度を調整することによりポットライフを自由に制御できる(詳細は実施例に示されている)。そのため、生体内の損傷部位の修復を目的とする場合、作業時間を予め勘案の上、混合物のpHを下げる程度を調製すれば、2剤を混合後にその損傷部にシリンジ等で本接着剤を直接注入し、損傷部位で迅速に硬化させるといった使用もできる。
【0087】
2剤硬化型接着剤の全固形分に対する、第1剤の含有量の含有質量比(百分率)としては、特に限定されないが、0.01質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましく、99.99質量%以下が好ましい。
【0088】
一方、2剤硬化型接着剤の全固形分に対する、第2剤の含有量としては特に限定されないが、一般に、0.01質量%以上が好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0089】
本接着剤は第1剤と第2剤とを有するため、予めこれらをシリンジに封入してプレフィルドシリンジとしてもよい。その場合、後段の実施例に示されるとおり、力学特性、架橋時間、及び、ポットライフ等を自由に制御できるため、筋損傷の治癒、膵液漏の予防、心筋梗塞後の菲薄化予防、癒着防止、脊髄損傷治療、褥瘡治療、及び、消化管粘膜における創傷治癒等に応用できる。
【0090】
本接着剤の硬化方法としては特に限定されないが、例えば、20~40℃の温度で、10分~2時間程度静置することが好ましく、30~60分静置することがより好ましい。
【0091】
〔硬化物〕
本接着剤の硬化物は化合物A、及び、必要により添加される細胞外マトリックス等により形成される架橋構造により、3次元網目構造を有している。生体適合性、及び、組織再生能の観点からは、硬化物は水を含むハイドロゲルであることが好ましい。水は第1剤、及び/又は、第2剤に由来するものであってもよいし、被着物周辺に存在するものであってもよい。
【0092】
ハイドロゲルは、水を含む流動性の無いゲルである。ハイドロゲル中における水分含有量としては、特に限定されないが、ハイドロゲルの全質量を100質量%としたとき、80~99重量%であることが好ましい。
【0093】
〔2剤硬化型接着剤の用途〕
本接着剤は、ゲニピン誘導体を用いつつ、迅速に硬化可能である。また、第2剤がECMを含む形態では、より高い生体適合性、より高い組織接着性、及び、より高い組織再生能を有する硬化物(ハイドロゲル)を形成可能であるため、医療用の組織接着剤として用いることができる。
【0094】
また、第1剤又は第2剤が薬剤を含む形態では、硬化物を病巣に定着させて、薬剤を放出させる用途にも用いることができる。また、特に第2剤がECMを含む形態では生体適合性がより高いため、再生医療分野における、細胞移植の際の細胞の足場材料として使用することもできる。
【実施例
【0095】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
<化合物Aを含む第1剤の調製>
末端にアミノ基を有する4分岐型ポリエチレングリコール(NOF AMERICA CORPORATIO製、商品名「SUNBRIGHT PTE-200PA」、分子量2万)をリン酸緩衝液(Phosphate buffered saline、PBS、pH=7.4)に分散させた。以下、この水分散液を「ポリアミン液」という。
【0097】
なお、上記「SUNBRIGHT PTE-200PA」は、式6で表されるポリアミンに該当し、式6において、Mがペンタエリスリトール残基、Lが式4で表される基であり、式4のRが-CHCH-、Lが-CHCHCH-であり、u6が0であり、s6が4である化合物(分子量20,000)を主成分として含んでいる。
【0098】
ポリアミン液に、4分岐型ポリエチレングリコール中のアミノ基の量(n)を100モル%としたときに50~125モル%のゲニピンを添加し、撹拌した。20~30℃で3~60分間撹拌することによって、液中で化合物Aが合成され、いずれの条件でも式5に該当する化合物が得られた。反応終了後、分散液を急速冷凍し、サンプルを保管した。これは本接着剤における第1剤(溶媒を含む形態)に該当する。なお、第1剤は、リン酸水素二ナトリウム(緩衝剤)、及び、水酸化ナトリウム(pH調整剤)を含んでいる。
【0099】
また、上記分散液を凍結乾燥することで、化合物A(及び、塩基性化合物)を含む乾燥粉末が得られた。これは本接着剤における溶媒を含まない形態の第1剤に該当する。以下の各試験では、必要に応じてこれを超純水で再溶解して、液状の第1剤として使用した。
【0100】
<紫外可視分光光度計による測定>
上記方法に沿って化合物Aを合成する際に、ポリアミンの1分子あたりに導入されるゲニピンの個数を測定するために、紫外可視分光光度計による測定を行った。ゲニピン(70モル%)とポリアミン液(ポリアミンの含有量が20質量%、pH=10.5)を混合してから、各時間(~60分)にサンプルを分取し、吸収スペクトルからゲニピン導入量(式1で表される基の導入量)を計算した。なお、検量線としては、ゲニピンとエタノールアミンをとを反応させ、290nmの吸収を測定したものを用いた。
【0101】
その結果、ポリアミン液とゲニピンとを混合して1分経過後から290nmの吸収が大きく上昇し、反応時間の増加に伴って吸収が増加した。
図1は、横軸を反応時間(分)とし、縦軸をポリアミン1分子へのゲニピン(式1で表される基)の平均導入量(単位:個)を計算した結果を表す図である。
図1によれば、30分間の反応時間においては、ポリアミン(4分岐型ポリエチレングリコール)1分子あたり、平均で1.7個のゲニピン(式1で表される基)が導入されていることが分かった。
【0102】
<化合物Aの合成時のpHがゲニピン導入率に与える影響>
ポリアミン液(20質量%)のpHを2~10まで変化させ、そこにゲニピン(100モル%)を溶解させ反応させた場合に導入されるゲニピンの個数を紫外可視分光光度計によって測定した。
検量線としては、ゲニピンとエタノールアミンを反応させ、290nmの吸収を測定したものを用いた。
【0103】
図2は、ポリアミン液のpHに対する、ポリアミン1分子へのゲニピン平均導入量(式1で表される基)を計算した結果を表す図である。
図2によれば、低pH側では導入量が少ない、すなわち、反応速度が大きく低下しており、pHが7.0を超えると、よりゲニピンが導入されやすく、pHが9.0以上では更にゲニピンが導入されやすいことがわかった。
【0104】
<硬化化速度試験>
第2剤を以下の手順により準備し、第1剤と反応させて硬化速度(ゲル化速度)を調べた。
まず、第2剤の成分として、ブタ膀胱由来の脱細胞化マトリックス(Urinary Bladder Matrix、UBM)を作製した。
【0105】
UBMは、以下の手順で作製した。まず、ブタ膀胱の上皮組織をメスによって切除し、生理食塩水で洗浄した。その後、処理溶液(0.1重量%過酢酸、4%エタノール)で2時間洗浄し、生理食塩水と超純水で洗浄した。その後、DNase溶液(0.1mg/mL)で24時間処理し、DNAを除去した。更に、生理食塩水と超純水で洗浄し、得られた粉末10mgに対して、ペプシン1mgと、1mLの0.01M塩酸を添加して48時間処理し、PBSを加えてpHを7に調整してペプシンを不活化し、凍結乾燥によってUBM粉末を得た。
【0106】
上記UBM粉末に超純水を加えて再溶解し、1M塩酸を加えてpHを調製し、UBM溶液を得た。このUBM溶液(UBM粉末の1質量%、pH=2.5、塩酸を含み、第2剤に相当)と化合物A溶液(上記で得られた化合物Aの20質量%、pH=10.5、第1剤に相当)を等量混合し、37℃で撹拌し、硬化するまでの時間を測定した。なお、硬化(ハイドロゲル化)時間は、撹拌子が回転しなくなった時間として定義した。その結果、溶液を混合してから、30秒後に硬化することが明らかとなった。
これは、従来のゲニピン含有接着剤が、硬化に数時間~1日要していたのと比較すると、顕著に迅速であった。
【0107】
<粘度測定>
粘弾性測定装置(レオメーター「Rheoplus」、アントンパール社)を用いて、硬化物(ハイドロゲル)の粘弾性を測定した。
100μLのプレゲル溶液(第1剤と第2剤とを混合した液)をレオメーターのステージにのせ、直径10mmの治具で挟み込んだ。測定中、ステージの温度は37度とした。
【0108】
図3~6はその結果である。図3は、本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分として、経時的に変化するせん断弾性率(Pa)を表しており、中実円(黒丸、filled circle)が貯蔵弾性率、中空円(白丸、open circle)が損失弾性率を表している。
なお、上記と同様に、図4図6はそれぞれ、図4が第2剤(UBM溶液)のみ、図5が第2剤とゲニピンの混合物、及び、図6が第2剤、ゲニピン、及び、ポリアミンの混合物の結果である。
【0109】
UBM(図4)は、単独でもコラーゲンの自己集合によりゲル化するものの、貯蔵弾性率(G′)が小さい。一方、UBM溶液(1質量%、pH=2.5)と化合物A溶液(20質量%、pH=10.5)とからなるプレゲル溶液(図3)においては、第1剤と第2剤との混合後、即座にG′が上昇し、強度の高い硬化物(ハイドロゲル)が形成された。
【0110】
一方で、UBM/ゲニピン(図5)、UBM/ゲニピン/ポリアミン(図6)の組み合わせでは、ゲル化はするが、反応時間が遅かった。
これらの結果より、本接着剤は、2剤混合後、速やかに硬化し、脱細胞化マトリックスハイドロゲルを容易に形成できることがわかった。
【0111】
次に、ポリアミンと反応させるゲニピンの仕込み量を変化させ、化合物Aを複数合成して、それぞれから化合物A溶液を調製し(20質量%、pH10.5)、これをUBM溶液(1質量%、pH2.5)と混合してプレゲル溶液を調製した。このプレゲル溶液について、上記と同様に粘弾性測定を行った。
【0112】
図7~10はその結果である。図7はポリアミンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンを50モル%となるよう仕込んで合成した化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
なお、上記と同様に、図8~10はそれぞれ、ゲニピンを60モル%、70モル%、及び、80モル%とした場合の結果である。
【0113】
図7~10から、ゲニピンの仕込み量が60モル%以上となると、硬化(ゲル化)がより速くなった。一方で、70モル%以下では、2剤混合後から、硬化までの時間(以下「ポットライフ」という。)がより長くなった。
いずれの当量比でも硬化時間としては十分に速かった。
【0114】
次に、ポリアミンとゲニピンとの反応時間を変化させ、化合物Aを複数合成して、化合物A溶液を調製し(20質量%、pH10.5)、これをUBM溶液(1質量%、pH2.5)と混合してプレゲル溶液を調整した。このプレゲル溶液について、上記と同様に粘弾性測定を行った。
【0115】
図11~14はその結果である。図11は、ゲニピンとポリアミンとの反応時間を3分とした場合に得られた化合物Aを用いた本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
なお、上記と同様に、図12~14はそれぞれ、反応時間を10分、30分、60分とした場合の結果である。
【0116】
図11~14から、ゲニピンとポリアミンの反応時間としては、10分以上反応させると硬化が速くなることが分かった。
【0117】
次に、UBM溶液(第2剤)に含まれる酸性化合物の含有量を調整し、pHを変化させ、化合物A溶液(20質量%、pH10.5)と混合してプレゲル溶液を調整した。このプレゲル溶液について、上記と同様に粘弾性測定を行った。
【0118】
図15~19はその結果である。図15は、UBM溶液のpHを2.0とした場合の本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(Pa)の経時変化である。中実円は貯蔵弾性率、中空円は損失弾性率である。
なお、上記と同様に、図16~19はそれぞれ、UBM溶液のpHを2.5、3.0、5.0、及び、7.0とした場合の結果である。
【0119】
図15~19から、UBM溶液のpHが7.0未満であると硬化がより速くなること、5.0以下で更に大きく、5.0未満で特に大きくなること、3.0以下で最も大きくなることがわかった。また、UBM溶液のpHが2.0を超えると、より十分なポットライフが得られること、2.5以上だと更に十分なポットライフが得られることがわかった。
【0120】
<膨潤度測定>
UBM溶液(1質量%、pH=2.5)と化合物A溶液(20質量%、pH=10.5)とを等量混合し、37℃で60分間ゲル化させた。得られたゲルを直径5mmのディスク状にカットし、PBSに浸漬し、37℃で静置することで膨潤させた。所定時間おきにゲルを回収し、膨潤した重量(Ws)を測定し、さらに凍結乾燥することで乾燥重量(Wd)を求めた。式:(Ws-Wd)/Wdより膨潤度を算出した。
その結果、このハイドロゲルの膨潤度は約17で、1時間で平衡膨潤に達することが分かった(図20はその結果を示す図である)。
【0121】
<引張試験による力学強度測定>
UBM溶液(1質量%、pH=2.5)と化合物A溶液(5、10、及び、20質量%、pH=10.5)を等量混合し、ISO 37-2のサイズのシリコンモールドに注ぎ、37℃で60分間硬化(ゲル化)させた。
次に、テクスチャーアナライザーを用いて作製した硬化物(ゲル)の引張試験を行った。
【0122】
図21は、硬化物の応力-ひずみの関係である。図中の10%、5%、2.5%は、それぞれ、プレゲル溶液の調製に用いた第1剤中の化合物Aの含有量を表している。
図21から、硬化物(ハイドロゲル)の力学強度は化合物Aの含有量により制御可能であることがわかった。上記の結果から、硬化物の破断強度がより大きくなる観点では、混合液中における化合物Aの含有量としては、75質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましいことがわかった。また、硬化物の最大伸びがより大きくなる観点では、化合物Aの含有量が90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましいことがわかった。
【0123】
<硬化物(ハイドロゲル)の細胞毒性試験>
細胞毒性評価として、硬化物(ハイドロゲル)を培地に浸漬し、その上清を評価対象の細胞に添加することで細胞毒性を評価した。
UBM溶液(1質量%、pH=2.5)と化合物A溶液(5、10、20質量%、pH=10.5)を等量混合し、37℃で60分間硬化(ゲル化)させた。
【0124】
硬化物(ハイドロゲル)1gに対して10mLのRPMI(Roswell Park Memorial Institute medium)1640培地(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリンストレプトマイシン)を添加し、37℃で24時間静置し、上清を回収した。
評価細胞として、マウス線維芽細胞(L929細胞)を用いて、硬化物(ハイドロゲル)の毒性を評価した。
【0125】
L929細胞はRPMI1640培地(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリンストレプトマイシン)を用いて37℃、5%COのインキュベーターで培養した。1×10個のL929細胞を96ウェルプレートに播種し、24時間予備培養した。回収した上清、又は、コントロールとして未処理の培地のみを各ウェルに添加し、さらに24時間培養した。培養完了後、細胞数カウンティングキット(WST-8、DOJINDO)を用いて細胞数を定量した。
【0126】
図22は、細胞生存率(%)を表す図である。図22の結果から、UBM-化合物Aの硬化物であるハイドロゲル(図22中、「UBM+GeniPEG」と記載されている。)は高い細胞生存率を示した。
また、UBMを含まないハイドロゲル(図22中、「GeniPEG」と記載されたもので、第2剤がUBMを含有しないことを除いては、「UBM+GeniPEG」と同様である)も高い細胞生存率を示した。
【0127】
一方、誘導体化していないゲニピンとUBMとを含むサンプル(「UBM+Genipin」と記載されている)においては、細胞生存率が著しく低かった。
ゲニピンを含まない「UBM」のサンプルが高い細胞生存率を示したことからも、これは、ゲニピンの影響によるものと考えられた。
【0128】
従来、ゲニピンは細胞毒性の低い架橋剤と考えられてきたが、上記の様に、本発明者の検討によれば、細胞生存率は十分低いとは言えなかった。しかし、本発明の2剤硬化型接着剤の第1剤に含まれる架橋剤である化合物Aにおいては、ゲニピンは誘導体化されていて、硬化物等にゲニピンが溶出しにくい。そのため、ゲニピンの架橋機能を維持しつつ、細胞毒性を大幅に軽減することに成功したものと推測される。
すなわち、本接着剤の硬化物であるハイドロゲルは高い細胞適合性を示すことが明らかとなった。
【0129】
<コラーゲンケーシングに対する接着性>
ASTM-F2392-04Rに準拠して、組織接着性を評価するためのモデル組織として、コラーゲンケーシングを用いた接着性評価を行った。
直径35mmのコラーゲンケーシングに直径3mmのピンホールを作製し、200μLのプレゲル溶液を添加した。
なお、プレゲル溶液は、UBM溶液(1質量%、pH=2.5)の100μLと化合物A溶液(20質量%、pH=10.5)の100μLとを混合したものである。
【0130】
これを37℃で60分間静置し、耐圧強度を測定した。図23は、その結果である。図23の記載のとおり、本接着剤の硬化物(図23中、「UBM+GeniPEG」と記載されたもの)は、50mmHgの高い耐圧強度を示した。一方で、UBM単独では検出限界以下(0.75mmHg以下)であり、「UBM+Genipin」では、5.5mmHgと低い値であった。この結果より、本接着剤の硬化物は、高い組織接着性を有していることが明らかとなった。
【0131】
<ブタ大動脈に対する接着性>
ASTM-F2392-04Rに準拠して、ブタ大動脈を用いた接着性評価を行った。
直径30mmにカットしたブタ大動脈に直径3mmのピンホールを作製し、200μLのプレゲル溶液を大動脈の外側に添加した。これを37℃で60分間静置し、耐圧強度を測定した。図24はその結果である。
なお、プレゲル溶液はUBM溶液(1質量%、pH=2.5)の100μLと化合物A溶液(20質量%、pH=10.5)の100μLとを混合したものである。
【0132】
図24の記載のとおり、本接着剤の硬化物(図24中、「UBM+GeniPEG」と記載)は、100mmHgの高い耐圧強度を示した。一方で、UBM単独では検出限界以下(0.75mmHg以下)であり、「UBM+Genipin」では、3.3mmHgと低い値であった。この結果より、本接着剤の硬化物は、大動脈に対しても高い組織接着性を有していることが明らかとなった。
【0133】
また、図25は、耐圧試験後のブタ大動脈の組織学的評価結果である。図25から、「UBM+Genipin」は組織表面に残存していなかったのに対して、「UBM+GeniPEG」は組織表面に強く接着し、残存していることが明らかとなった。
【0134】
<種々のECMを含有する第2剤を用いて作製したハイドロゲルの粘弾性測定>
UBM以外の脱細胞化マトリックス(ECM)を含む第2剤を作製し、その硬化物(ハイドロゲル)の粘弾性を測定した。
【0135】
まず、ブタ心臓、肝臓、すい臓、及び、小腸の一部をメスによってそれぞれ切除し、生理食塩水で洗浄した。その後、処理溶液(0.1重量%過酢酸、4%エタノール)で2時間洗浄し、生理食塩水と超純水で洗浄した。その後、1%Triton/0.1% SDS溶液で24h洗浄を行い、超純水で洗浄した。その後、DNase溶液(0.5mg/mL)で24時間処理し、DNAを除去した。更に、生理食塩水と超純水で洗浄し、ペプシン(1mg/mL)で48時間処理し、凍結乾燥によって各種マトリックス粉末を得た。
【0136】
上記粉末を用いて、100μLのプレゲル溶液を作製した。なお、プレゲル溶液は、UBM、心臓、肝臓、膵臓、及び、小腸のぞれぞれから作製したECM粉末溶液(ECMは1質量%、pH=2.5、第2剤)の100μLと化合物A溶液(20質量%、pH=10.5、第1剤)の100μLとを混合したものである。
【0137】
100μLのプレゲル溶液を粘弾性測定装置のステージにのせ、直径10mmの治具で挟み込んだ。測定中、ステージの温度は37度とした。
図26~31ははその結果である。図26は、膀胱由来のECM(UBM)を含む第2剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断弾性率(貯蔵弾性率:Pa)の経時変化である。なお、上記と同様に、図27~30はそれぞれ、心臓、肝臓、すい(膵)臓、及び、小腸由来のECMを含む第2剤を含む本接着剤の結果である。また、図31は、ECMを含まず、PBSのみからなる(pH=2.5)第2剤を含む本接着剤の結果である。
【0138】
図26~31から、すべてのプレゲル溶液が30分以内で硬化(ゲル化)することがわかった。なかでも、UBM、又は、小腸由来のECMを含む第2剤を含む本接着剤はより速く硬化することが確認された。
図26~30と図31の比較から、第2剤がECMを含む場合、硬化がよりは速くなることが確認された。
【0139】
<種々のECMを含有する第2剤を用いて作製したハイドロゲルのコラーゲンケーシングに対する接着性>
ASTM-F2392-04Rに準拠して、組織接着性を評価するためのモデル組織として、コラーゲンケーシングを用いた接着性評価を行った。
直径35mmのコラーゲンケーシングに直径3mmのピンホールを作製し、200μLのプレゲル溶液を添加した。これを37℃で60分間静置し、耐圧強度を測定した。図32はその結果である。
なお、プレゲル溶液は、UBM、心臓、肝臓、膵臓、及び、小腸からそれぞれ作製したECM粉末溶液(ECMは1質量%、pH=2.5、第2剤)の100μLと、化合物A溶液(20質量%、pH=10.5)の100μLとを混合したものである。
【0140】
図32から、各硬化物(ハイドロゲル)は、40mmHg以上の高い耐圧強度を有することが確認された。なかでも、UBMと小腸(Small intestine)由来のECMを含む第2剤を含む2剤
硬化型接着剤の硬化物は、より高い組織接着強度を有していた。
なお、図32中、「Heart」は心臓、「Liver」は肝臓、「Pancreas」はすい臓由来のECMであることを示している。
【0141】
<紫外可視分光光度計による測定>
4分岐型ポリエチレングリコールに代えてゼラチンを含むポリアミン液を用いたこと以外は上記と同様にして、化合物Aを合成した。
その際に、ポリアミン(ゼラチン)の1分子あたりに導入されるゲニピン(式1で表される基)の個数を測定するために、紫外可視分光光度計による測定を行った。
ゼラチン液(含有量が20質量%、pH=10.5、PBS)に対して、ゼラチンの第1級アミノ基に対して、10~40モル%となるよう、ゲニピンを仕込んで、50℃で混合してから、2分後にサンプルを分取し、吸収スペクトルからゲニピン導入量(式1で表される基の導入量)を計算した。なお、検量線としては、ゲニピンとエタノールアミンとを反応させ、290nmの吸収を測定したものを用いた。
【0142】
その結果、ゼラチン液とゲニピンとを混合すると290nmの吸収が大きく上昇し、ゲニピンの仕込み量の増加に伴って吸収が増加した。図33は、横軸を反応時間(分)とし、縦軸をゼラチン中のアミノ基に対するゲニピン(式1で表される基)の導入量(単位:%)を計算した結果を表す図である。ゲニピンの仕込み量(アミノ基に対する当量)が増加するのに従って増加し、導入率は、9%~33%であることが分かった。
【0143】
<レオロジー>
ゼラチンと反応させるゲニピンの仕込み量を変化させ、化合物Aを複数合成して、それぞれから化合物A溶液を調製し(20質量%、pH10.5、第1剤)、これをUBM溶液(1質量%、pH2.5、第2剤)と混合してプレゲル溶液を調製した。このプレゲル溶液について、上記と同様に粘弾性測定を行った。
【0144】
図34~37はゼラチンの第1級アミノ基の100モル%に対してゲニピンが9~33%導入された化合物Aを含む第1剤を含む本接着剤の第1剤と第2剤との混合時を0分としたときの、せん断貯蔵弾性率(Pa)の経時変化である。
【0145】
図34~37から、ゲニピンの導入率が18モル%以上だと、硬化(ゲル化)がより速くなった。一方で、18モル%未満だと、2剤混合後から、ポットライフがより長くなった。
いずれの当量比でも硬化時間としては十分に速かった
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の2剤硬化型接着剤の硬化物であるハイドロゲルは、高い生体適合性と組織接着性、組織再生能を有するハイドロゲルであり、組織接着剤として医療用途に大変有用である。
また、抗がん剤をハイドロゲルに内包することで、がん治療への応用も期待される。さらに、再生医療分野においては、細胞移植の際の細胞の足場材料として使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
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図32
図33
図34
図35
図36
図37