(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】中空構造体
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20250515BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20250515BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250515BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
B32B3/12 Z
B32B27/32 Z
B32B3/26 A
(21)【出願番号】P 2021074150
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和浩
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107144(JP,A)
【文献】特開2008-222208(JP,A)
【文献】特開2011-011615(JP,A)
【文献】特開2009-113226(JP,A)
【文献】特開2019-162968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0367998(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、
前記複数のセルが並設されたコア層と、
前記コア層の上下面の少なくとも一方の表面に配置されたシート層とを備え、
前記コア層は、熱可塑性樹脂が配合された素材によって構成されており、
前記シート層は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とが配合された素材によって構成されている
基材本体層と、前記基材本体層の上下面の両方の表面に配置された樹脂層とを有し、
前記樹脂層は、熱可塑性樹脂によって構成されている中空構造体。
【請求項2】
前記シート層の素材である熱可塑性樹脂繊維と、前記コア層の素材である熱可塑性樹脂とは、ポリプロピレン樹脂であ
り、
前記シート層の素材である無機繊維は、ガラス繊維である請求項1に記載の中空構造体。
【請求項3】
前記コア層の素材には、熱可塑性樹脂に加えて、タルクが配合されている請求項1
または2に記載の中空構造体。
【請求項4】
前記シート層は、上下面の少なくとも一方の表面に設けられた凹状あるいは凸状の係合部を有している請求項1~
3のいずれか一項に記載の中空構造体。
【請求項5】
前記コア層及び前記シート層により構成された本体部と、
前記本体部の上下面の少なくとも一方の表面に設けられた溝状の凹条部とを備え、
前記凹条部が屈曲変形することにより、前記本体部における前記凹条部を基準とした一方側の第1本体部が前記本体部における前記凹条部を基準とした他方側の第2本体部に対して回動可能に構成されている請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に複数のセルが並設された中空構造体が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の中空構造体は、例えば、自動車の後方に荷物を収容するためのラゲッジルームに載置されるラゲッジボードに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の中空構造体には、さらなる強度の向上が要望されることがある。例えば、ラゲッジボードに用いられた中空構造体では、上面に荷物が積載されたとしても塑性変形しないことが求められる。このため、特許文献1の中空構造体には、強度の観点からはなお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する中空構造体は、内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、前記複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の上下面の少なくとも一方の表面に配置されたシート層とを備え、前記コア層は、熱可塑性樹脂が配合された素材によって構成されており、前記シート層は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とが配合された素材によって構成されている。
【0006】
上記構成では、中空構造体のシート層に無機繊維を配合することで強度を高めることができる。このため、中空構造体にシート層を設けない場合と比べて、中空構造体の強度を高めることができる。
【0007】
上記の中空構造体において、前記シート層の素材である熱可塑性樹脂繊維と、前記コア層の素材である熱可塑性樹脂とは、ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
上記の中空構造体において、前記シート層の素材である無機繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
【0008】
上記の中空構造体において、前記コア層の素材には、熱可塑性樹脂に加えて、タルクが配合されていることが好ましい。
上記構成では、コア層の素材にタルクを配合することでコア層の曲げ剛性を更に高めることができる。
【0009】
上記の中空構造体において、前記シート層は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とが配合された素材によって構成されている基材本体層と、前記基材本体層の上下面の両方の表面に配置された樹脂層とを有し、前記樹脂層は、熱可塑性樹脂によって構成されていることが好ましい。
【0010】
基材本体層が無機繊維と熱可塑性樹脂とが配合された素材によって構成されていると、基材本体層の表面に各繊維の端部が露出されることがある。この点、上記構成では、基材本体層の上下面の両方の表面に樹脂層が配置されることで、シート層の表面に各繊維の端部が露出することが抑えられる。
【0011】
上記の中空構造体において、前記シート層は、上下面の少なくとも一方の表面に設けられた凹状あるいは凸状の係合部を有していることが好ましい。
上記構成では、シート層に係合部を設けることによって、シート層とコア層との間の接合強度を高めたり、中空構造体の表面に対して外部に載置される物体の滑り止めをしたり、中空構造体の表面に対して外部に載置される物体の位置決めをしたりすることができる。
【0012】
上記の中空構造体において、前記コア層及び前記シート層により構成された本体部と、前記本体部の上下面の少なくとも一方の表面に設けられた溝状の凹条部とを備え、前記凹条部が屈曲変形することにより、前記本体部における前記凹条部を基準とした一方側の第1本体部が前記本体部における前記凹条部を基準とした他方側の第2本体部に対して回動可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
凹条部には、第1本体部が第2本体部に対して回動する際に応力が集中しやすい。凹条部を有する中空構造体には上記コア層及びシート層を適用している。そのため、中空構造体に上記シート層を設けない場合と比べて、凹条部の機能を維持しやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度に優れた中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1におけるラゲッジボードのα-α線断面図。
【
図7】上側基材及び下側基材の概略断面を示す断面図。
【
図8】中空構造体における凹条部が設けられた部位の概略断面を示す断面図。
【
図9】上側シート層における凹条部が設けられた部位の概略断面を示す断面図。
【
図10】上側シート層における凸条部が設けられた部位の概略断面を示す断面図。
【
図11】(a)は、コア層を構成する凹凸シート材の斜視図、(b)は、凹凸シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は、凹凸シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図12】(a)~(f)は、ラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
【
図14】(a)~(f)は、変形例のラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
中空構造体の一実施形態を図面に従って説明する。
<ラゲッジボード1>
図1及び
図2に示すように、ラゲッジボード1は、左右方向に長い略長方形板状に形成されている。ラゲッジボード1は、左右対称に設けられている。ラゲッジボード1は、車両の後部に設けられたラゲッジルームの底面に載置されるものである。ラゲッジボード1は、ラゲッジルームに設けられた支持部に支持されることで、ラゲッジルームに取り付けられている。
【0017】
ラゲッジボード1は、本体部2と、本体部2の下面に設けられた溝状の凹条部3と、本体部2の上面に設けられた凸条部4とを備えている。凹条部3は、ラゲッジボード1を構成する中空板材の板厚が圧縮されてその板厚が薄くされることによって形成されている。すなわち、ラゲッジボード1における凹条部3が設けられた部分の板厚は、ラゲッジボード1における凹条部3及び凸条部4が設けられていない部分の板厚よりも薄くされている。また、凹条部3は、左右方向に沿って延びている。
【0018】
凸条部4は、ラゲッジボード1を構成する中空板材の板厚が厚くされることによって形成されている。すなわち、ラゲッジボード1における凸条部4が設けられた部分の板厚は、ラゲッジボード1における凹条部3及び凸条部4が設けられていない部分の板厚よりも厚くされている。凸条部4は、本体部2における凹条部3を基準とした一方側である後側に設けられている。また、凸条部4は、左右方向に沿って延びている。凸条部4は、本体部2の上面に3つ設けられている。これら3つの凸条部4は、互いに平行に設けられている。また、凸条部4と凹条部3とは、互いに平行に設けられている。このため、ラゲッジボード1を上下方向から見た場合、凸条部4は、凹条部3とずれた位置に設けられている。凸条部4は、ラゲッジボード1の本体部2の上面に載置される荷物等が上面から滑らないようにする滑り止めの機能を有している。
【0019】
本体部2は、本体部2における凹条部3を基準とした一方側である後側の第1本体部5と、本体部2における凹条部3を基準とした他方側である前側の第2本体部6とを有している。凹条部3は、屈曲変形することにより、第1本体部5が第2本体部6に対して回動可能に構成されている。凹条部3を屈曲変形させることで、第1本体部5が第2本体部6に対して上方に持ち上げられると、ラゲッジボード1の下面1bとラゲッジルームの底面との間に形成された空間に工具等を出し入れすることができる。また、ラゲッジボード1の端縁は、R形状をなすようにその板厚が薄くされている。
【0020】
ここで、本実施形態において、ラゲッジボード1の厚さ方向は、車両の上下方向と同じである。ラゲッジボード1の上に位置する面を上面1a、ラゲッジボード1の下に位置する面を下面1bというものとする。また、ラゲッジボード1の前後方向は、車両の進行方向における前後方向と同じである。また、ラゲッジボード1の左右方向は、車両の車幅方向と同じである。
【0021】
図2に示すように、ラゲッジボード1の上面1aは、平坦面として形成されている。ラゲッジボード1の下面1bは、凹条部3以外の部分は平坦面として形成されている。なお、ラゲッジボード1の上面1a及び下面1bは、平坦面でなくてもよい。ラゲッジボード1を構成する中空板材は、後述の中空構造体10によって構成されている。
【0022】
<中空構造体10>
図3に示すように、中空構造体10は、内部に複数のセルSが並設された中空板材である。中空構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上面に配置された上側シート層30と、コア層20の下面に配置された下側シート層40とを備えている。複数のセルSは、方向X及び方向Yに沿って列をなすように並設されている。
【0023】
<コア層20>
コア層20は、所定の凹凸形状を有する後述の凹凸シート材100を折り畳んで形成されている。凹凸シート材100は、平坦シート材に所定の凹凸形状を形成することによって構成されている。
【0024】
コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とを有している。上壁部21及び下壁部22は、1層構造と2層構造とが混在した構造をなしている。
図3では、便宜上、コア層20の上壁部21及び下壁部22を1層構造で示している。
【0025】
図3~
図5に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1と第2セルS2とが存在する。
図4に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。2層構造の上壁部21には、コア層20の成形時の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。
【0026】
図5に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部22には、コア層20の成形時の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。
【0027】
図4及び
図5に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部23の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
図4及び
図5では、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
【0028】
図3に示すように、第1セルS1は、X方向に沿って列をなすように並設されている。第2セルS2は、X方向に沿って列をなすように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向と直交するY方向において交互に配列されている。第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は全体としてハニカム構造体をなしている。
【0029】
コア層20は、熱可塑性樹脂が配合された素材によって構成されている。コア層20に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態において、コア層20の素材である熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。
【0030】
コア層20の素材には、熱可塑性樹脂に加えて、無機材料が配合されている。コア層20に配合される無機材料としては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。本実施形態において、コア層20の素材である無機材料は、タルクである。すなわち、本実施形態のコア層20の素材には、ポリプロピレン樹脂及びタルクが配合されている。
【0031】
<上側シート層30及び下側シート層40>
図6に示すように、上側シート層30は、コア層側溶着層31と、上側基材32と、意匠側溶着層33と、上側不織布34とを有している。なお、
図6では、コア層20の中空構造を省略して示している。
【0032】
上側基材32は、コア層20の上面にコア層側溶着層31を介して配置されている。上側基材32は、平坦シート状をなしている。
図7に示すように、上側基材32は、基材本体層32aと、コア層側樹脂層32bと、意匠側樹脂層32cとを有している。基材本体層32aは、コア層側樹脂層32bと意匠側樹脂層32cとの間に設けられている。基材本体層32aの素材には、無機繊維と発泡剤と熱可塑性樹脂繊維とが配合されている。すなわち、基材本体層32aは、無機繊維と発泡剤と熱可塑性樹脂繊維とが配合された複合素材である。
【0033】
基材本体層32aに配合される熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体繊維、アクリル繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等の各種繊維が挙げられる。本実施形態において、基材本体層32aの素材である熱可塑性樹脂繊維は、ポリプロピレン繊維である。基材本体層32aに配合される熱可塑性樹脂繊維と、コア層20に配合される熱可塑性樹脂とは同素材であることが好ましい。
【0034】
基材本体層32aに配合される無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、岩石繊維、スラッグ繊維、金属繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維等の各種繊維が挙げられる。本実施形態において、基材本体層32aに配合される無機繊維は、ガラス繊維である。これらの無機繊維は、基材本体層32aの強度を高めるために配合される。
【0035】
ガラス繊維とポリプロピレン繊維との配合比率は、40:60~70:30の範囲に設定されることが好ましい。発泡剤の配合比率は適宜変更可能であり、必要とされる膨張性能や防音性能によって配合比率が設定される。基材本体層32aは、いわゆるスタンパブルシートである。
【0036】
コア層側樹脂層32bは、コア層側溶着層31の上面と基材本体層32aの下面との間に配置されている。コア層側樹脂層32bは、平坦シート状をなしている樹脂シートである。コア層側樹脂層32bの素材には、熱可塑性樹脂が配合されている。コア層側溶着層31に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態において、コア層側溶着層31の素材である熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。コア層側樹脂層32bは、基材本体層32aの下面に対して凹凸が少なくされている。
【0037】
意匠側樹脂層32cは、基材本体層32aの上面と意匠側溶着層33の下面との間に配置されている。意匠側樹脂層32cは、平坦シート状をなしている樹脂シートである。意匠側樹脂層32cの素材には、熱可塑性樹脂が配合されている。コア層側溶着層31に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態において、コア層側溶着層31の素材である熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。意匠側樹脂層32cは、基材本体層32aの上面に対して凹凸が少なくされている。
【0038】
図6に示すように、コア層側溶着層31は、コア層20の上面と上側基材32の下面との間に配置されている。コア層側溶着層31の素材には、熱可塑性樹脂が配合されている。コア層側溶着層31に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態において、コア層側溶着層31の素材である熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。コア層側溶着層31の素材である熱可塑性樹脂は、上側基材32に配合される熱可塑性樹脂繊維及びコア層20に配合される熱可塑性樹脂と相溶性のある素材であることが好ましい。
【0039】
上側不織布34は、上側基材32の上面に意匠側溶着層33を介して配置されている。上側不織布34は、平坦シート状をなしている。上側不織布34は、必要とされる対象物や対象物の意匠面に応じて設けられている。上側不織布34を構成する素材としては、例えば、ポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維等の従来公知の各種繊維が挙げられる。
【0040】
意匠側溶着層33は、上側基材32の上面と上側不織布34の下面との間に配置されている。意匠側溶着層33の素材には、熱可塑性樹脂が配合されている。意匠側溶着層33に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態において、コア層側溶着層31の素材である熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。意匠側溶着層33の素材である熱可塑性樹脂は、上側基材32に配合される熱可塑性樹脂繊維及び上側不織布34を構成する素材の少なくとも一方と相溶性のある素材であることが好ましい。
【0041】
下側シート層40は、コア層側溶着層41と、下側基材42と、意匠側溶着層43と、下側不織布44とを有している。また、下側基材42は、基材本体層42aと、コア層側樹脂層42bと、意匠側樹脂層42cとを有している。下側シート層40は、上側シート層30と同一素材及び同一構成を有しているため、その説明を省略する。また、下側基材42は、上側基材32と同一素材及び同一構成を有しているため、その説明を省略する。なお、下側シート層40と上側シート層30の素材や構成は異なっていてもよい。また、下側基材42と上側基材32の素材や構成は異なっていてもよい。
【0042】
コア層20の上面と上側基材32とは、コア層側溶着層31が溶着することで接合されている。上側基材32と上側不織布34とは、意匠側溶着層33が溶着することで接合されている。また、コア層20の下面と下側基材42とは、コア層側溶着層41が溶着することで接合されている。下側基材42と下側不織布44とは、意匠側溶着層43が溶着することで接合されている。
【0043】
<凹条部3>
凹条部3が設けられた部位のコア層20、上側シート層30、及び下側シート層40について説明する。
【0044】
図8に示すように、中空構造体10では、後述のラゲッジボード1の製造方法によって、凹条部3が設けられた部位の板厚が薄くされている。
具体的には、コア層20の上面には、凹条部3に相当する部位に係合凸部20aが形成されている。また、コア層20の下面には、凹条部3に相当する部位に係合凹部20bが形成されている。係合凹部20bは、最深部分が断面円弧状をなしている。係合凹部20bの深さは、係合凸部20aの高さよりも深い。コア層20は、係合凸部20aと係合凹部20bとの間でセルSが押し潰されている。
【0045】
上側シート層30は、係合凸部20aに沿った形状を有している。上側シート層30の上面は、平坦面をなしている。上側シート層30の下面には、凹条部3に相当する部位に係合凹部30bが形成されている。上側シート層30は、その上面と係合凹部30bとの間で押し潰されている。
【0046】
図9に示すように、詳しくは、上側シート層30のなかでも、上側基材32の基材本体層32aが押し潰されている。これにより、基材本体層32aの下面には、凹条部3に相当する係合凹部30cが設けられている。これは、基材本体層32aは、スプリングバックされている分、コア層側樹脂層32b、意匠側樹脂層32c、コア層側溶着層31、意匠側溶着層33、及び上側不織布34と比べて、後述のラゲッジボード1の製造方法のプレスによる変形量が大きいためである。また、基材本体層32aは、発泡剤が配合されている分、コア層側樹脂層32b、意匠側樹脂層32c、コア層側溶着層31、意匠側溶着層33、及び上側不織布34と比べて、後述のラゲッジボード1の製造方法のプレスによる変形量が大きいためである。なお、基材本体層32aは、スプリングバックされていると、後述のラゲッジボード1の製造方法における加熱工程の前の状態よりも板厚が厚くなる。本実施形態において、基材本体層32aの係合凹部30cは、凹状の係合部に相当する。
【0047】
図8に示すように、下側シート層40は、係合凹部20bに沿った形状を有している。下側シート層40の上面には、凹条部3に相当する部位に係合凸部40aが形成されている。また、下側シート層40の下面には、凹条部3に相当する部位に係合凹部40bが形成されている。係合凹部40bは、最深部分が断面円弧状をなしている。下側シート層40は、係合凸部40aと係合凹部40bとの間で押し潰されている。なお、図示は省略するが、詳しくは、下側シート層40のなかでも、下側基材42の基材本体層42aが押し潰されている。
【0048】
<凸条部4>
凸条部4が設けられた部位の上側シート層30について説明する。
図10に示すように、上側シート層30では、後述のラゲッジボード1の製造方法によって、凸条部4が設けられた部位の板厚が厚くされている。詳しくは、上側シート層30では、後述のラゲッジボード1の製造方法におけるプレスによって、凸条部4が設けられた部位の板厚と比べて凸条部4以外の部位の板厚が薄くされることで、凸条部4が設けられた部位の板厚が相対的に厚くされている。詳しくは、上側シート層30のなかでも、上側基材32の基材本体層32aが押し潰されている。これは、基材本体層32aは、スプリングバックされている分、コア層側樹脂層32b、意匠側樹脂層32c、コア層側溶着層31、意匠側溶着層33、及び上側不織布34と比べて、後述のラゲッジボード1の製造方法のプレスによる変形量が大きいためである。また、基材本体層32aは、発泡剤が配合されている分、コア層側樹脂層32b、意匠側樹脂層32c、コア層側溶着層31、意匠側溶着層33、及び上側不織布34と比べて、後述のラゲッジボード1の製造方法のプレスによる変形量が大きいためである。
【0049】
基材本体層32aの上面には、凸条部4に相当する部位に係合凸部32dが形成されている。基材本体層32aの下面は、平坦面をなしている。係合凸部32dは、断面円弧状をなしている。
【0050】
意匠側樹脂層32cは、基材本体層32aの係合凸部32dに沿った係合凸部32eを有している。意匠側樹脂層32cでは、凸条部4に相当する部位以外の部位の板厚が凸条部4に相当する部位の板厚と比べてわずかに薄くされていてもよい。
【0051】
意匠側溶着層33は、意匠側樹脂層32cの係合凸部32eに沿った係合凸部32fを有している。意匠側溶着層33では、凸条部4に相当する部位以外の部位の板厚が凸条部4に相当する部位の板厚と比べてわずかに薄くされていてもよい。
【0052】
上側不織布34は、意匠側溶着層33の係合凸部32fに沿った係合凸部32gを有している。上側不織布34では、凸条部4に相当する部位以外の部位の板厚が凸条部4に相当する部位の板厚と比べてわずかに薄くされていてもよい。本実施形態において、基材本体層32aの係合凸部32dは、凸状の係合部に相当する。
【0053】
<ラゲッジボード1の製造方法>
ラゲッジボード1を製造する方法を、
図11及び
図12に従って説明する。ラゲッジボード1を製造する方法は、コア層形成工程、加熱工程、接合工程、成形工程、及び後加工工程に分けることができる。コア層形成工程は、コア層20を形成する工程である。加熱工程は、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を加熱する工程である。接合工程は、コア層20に対して上側シート層30及び下側シート層40を接合する工程である。成形工程は、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を成形して中間体60を得る成形工程である。後加工工程は、中間体60の端面の形状を整えてラゲッジボード1を得る工程である。
【0054】
コア層形成工程について説明する。コア層20は、凹凸シート材100を折り畳むことによって形成される。
図11(a)に示すように、凹凸シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成されている。凹凸シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、凹凸シート材100の長手方向であるX方向に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向であるY方向の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向C字状となる。また、第1膨出部121の幅である上面の短手方向の長さは平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さである側面の短手方向の長さの2倍の長さとなるように設定されている。
【0055】
膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0056】
こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、凹凸シート材100は、真空成形法や収縮成形法等の周知の成形方法によって1枚の平坦シート材から成形することができる。
【0057】
図11(a)、
図11(b)に示すように、上述のように構成された凹凸シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、凹凸シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に収縮する。
図11(b)、
図11(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
【0058】
上記のように凹凸シート材100を収縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、
図11(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分が重ね合わせ部131となる。また、下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分が重ね合わせ部131となる。
【0059】
第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、凹凸シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0060】
その後、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を図示しない加熱装置によって加熱する。加熱装置は、上側シート層30のコア層側溶着層31、及び下側シート層40のコア層側溶着層41の素材である熱可塑性樹脂が溶融する程度の温度に設定されている。そして、コア層20の両面に対して上側シート層30及び下側シート層40を接触させた状態で、図示しない金型内にコア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を載置し、型締めをする。そして、所定の圧力、時間の間、金型内でコア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を密着させることにより、コア層20に対して上側シート層30及び下側シート層40を接合する。これにより、中空構造体10が製造される。そして、製造された中空構造体10がラゲッジボード1に相当する大きさ、形状となるように成形し、当該中空構造体10の端縁の形状を整えることでラゲッジボード1を得ることができる。
【0061】
加熱工程について説明する。
図12(a)に示すように、まず、ラゲッジボード1に使用するコア層20として、先に製造したコア層20をラゲッジボード1より大きな形状に切断したものを準備する。例えば、ラゲッジボード1に使用するコア層20として、ラゲッジボード1の大きさより長手方向及び短手方向にそれぞれ50mm程度大きな長方形状に切断したものを準備する。なお、
図12(a)~(f)では、コア層20の中空構造を省略して示している。また、
図12(a)~(f)では、
図1のδ‐δ線断面図に対応する部分を模式図として示している。
【0062】
ラゲッジボード1に使用する上側シート層30及び下側シート層40は、ラゲッジボード1より大きな形状、具体的にはコア層20と同程度の大きさに切断されている。
図12(b)に示すように、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40をそれぞれ加熱する。コア層20を加熱する場合には、所定温度に設定された加熱炉71内にコア層20を入れて、所定時間保持する。上側シート層30、及び下側シート層40も同様に、所定温度に設定された加熱炉72内に上側シート層30、及び下側シート層40を入れて、所定時間保持する。加熱炉71、72内の温度は、コア層20、上側シート層30のコア層側溶着層31、及び下側シート層40のコア層側溶着層41の素材である熱可塑性樹脂が溶融する程度に設定されている。この場合、上側シート層30及び下側シート層40の板厚は、スプリングバックによって加熱工程の前よりも厚くなる。
図12(b)では、上側シート層30及び下側シート層40の板厚を誇張して示している。
【0063】
次に、接合工程及び成形工程について説明する。
図12(c)に示すように、接合工程及び成形工程に使用する金型は、上型51及び下型52を備えている。本実施形態の上型51及び下型52は、全体が加熱されることなく常温に保持されている。
【0064】
下型52に形成された凹部52aは、上面視略長方形状をなしている。凹部52aの長手方向の長さは、ラゲッジボード1の長手方向(左右方向)の長さとほぼ同一とされている。凹部52aの短手方向の長さは、ラゲッジボード1の短手方向(前後方向)の長さとほぼ同一とされている。また、凹部52aの深さは、ラゲッジボード1の厚みの約半分とされている。凹部52aは、後に説明する成形工程において、ラゲッジボード1を成形するための部分である。なお、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40の熱収縮を考慮して、凹部52aの大きさを設定することが好ましい。以下、同様である。
【0065】
凹部52aには、凹条部3に対応した形状を有する凸部52bが設けられている。凸部52bは、その長さ方向の長さが、ラゲッジボード1の長手方向の長さとほぼ同一とされている。凸部52bの高さは、凹条部3の深さとほぼ同一とされている。凸部52bの高さは、凹部52aの深さよりも高く設定されている。
【0066】
上型51に形成された凹部51a、51bは、上面視略長方形環状をなしている。凹部51aの深さは、ラゲッジボード1の厚みの約半分とされている。また、凹部51bの深さは、後に説明する中間体60の収縮部分61の厚みとほぼ同一とされている。凹部51aは、後に説明する成形工程において、ラゲッジボード1を成形するための部分であり、凹部51bは、中間体60の収縮部分61を成形するための部分である。つまり、上型51及び下型52を型締めしたときに、凹部51a及び凹部52aでラゲッジボード1に対応する大きさの空間を形成し、凹部51bは凹部51a及び凹部52aの外縁より外方に位置する。
【0067】
凹部51aには、凸条部4に対応した形状を有する凹部51cが3つ設けられている。凹部51aは、その長さ方向の長さが、ラゲッジボード1の長手方向の長さとほぼ同一とされている。
【0068】
図12(c)に示すように、まず、加熱されたコア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を、下から、下側シート層40、コア層20、及び上側シート層30の順に、下型52の凹部52aの上に載置する。コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40は、ラゲッジボード1より大きな長方形状に切断されていることから、凹部52aの上に載置した状態では、長手方向両端部及び短手方向両端部が凹部52aから外方に突出した状態となる。加熱工程では、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さに応じて、コア層20の表面温度を調整することになる。
【0069】
このとき、上側シート層30のコア層側溶着層31、及び下側シート層40のコア層側溶着層41の素材である熱可塑性樹脂が一部熱溶融された状態となっている。このため、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40は、下型52の上で仮接合された状態で位置決めされる。
【0070】
続いて、
図12(d)に示すように、上型51を下型52に向けて下降させて型締めして、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40をプレスすることにより接合工程と成形工程を同時に行う。上型51及び下型52には、図示しない吸引孔が複数形成されている。型締め時には、吸引孔を通じてコア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を吸引することで、上型51及び下型52内部に位置決め状態で密着させることができる。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。
【0071】
図12(d)に示すように、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40は、上型51及び下型52の内面形状、すなわち、凹部51a、51b、52aの形状に成形されて中間体60となる。このときに、凹条部3及び凸条部4は成形されている。
【0072】
図12(c)に示すように、上型51の凹部51bは、凹部51aより浅く、型締めしたときに対応する位置の下型52には凹部は形成されていない。そのため、この部分は、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さが低い部分となる。この部分では、型締めによって、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が溶融してコア層20が熱収縮され、中間体60の収縮部分61が形成される。収縮部分61では、上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が溶融して一体化した状態となっている。
【0073】
上型51の凹部51aと下型52の凹部52aでは、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さが高い部分となり、加熱工程において、表面温度が相対的に低くなるように調整された部分が配置されている。この部分では、型締めによって、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が溶融しにくくなり、コア層20の高さ寸法を維持した形状となる。
【0074】
型締めによって、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40が下型52の凹部52a内に押し込まれると、上側の上側シート層30が下側の下側シート層40側に曲げられて、その角部がR形状に形成される。また、下側の下側シート層40が上側の上側シート層30側に曲げられて、その角部がR形状に形成される。
【0075】
図12(e)に示すように、下型52から上型51を離間させて中間体60を冷却した後、中間体60を下型52から取り出す。接合工程、成形工程を経て得られた中間体60は、コア層20の上面に上側シート層30が接合され、コア層20の下面に下側シート層40が接合されたものとなる。この場合、中間体60は、ラゲッジボード1に相当する大きさ、形状を有する部分の端部全周に亘って収縮部分61が形成された形状となる。
【0076】
後加工工程について説明する。
図12(f)に示すように、中間体60に形成された収縮部分61を、図示しない切断冶具で切断する。その後、切断された部分を研磨、塗装等して、端面の形状を整える。なお、収縮部分61を切断する切断冶具としてトムソン刃やレーザー等を使用し、研磨、塗装等を行わなくてもよい。
【0077】
本実施形態の作用について説明する。
上側シート層30の上側基材32及び下側シート層40の下側基材42に無機材料の一つであるガラス繊維を配合することで強度を高めることができる。
【0078】
本実施形態の効果について説明する。
(1)中空構造体10に上側シート層30及び下側シート層40を設けない場合と比べて、中空構造体10の強度を高めることができる。
【0079】
(2)上側シート層30の上側基材32及び下側シート層40の下側基材42に発泡剤を配合することで、中空構造体10に上側シート層30及び下側シート層40を設けない場合と比べて、中空構造体10の防音性を高めることができる。
【0080】
(3)コア層20の素材である熱可塑性樹脂と、上側シート層30の素材である熱可塑性樹脂繊維と、下側シート層40の素材である熱可塑性樹脂繊維とは、同一のポリプロピレン樹脂であることから、互いの相溶性を高めることができる。
【0081】
(4)上側基材32及び下側基材42の素材である無機繊維は、ガラス繊維である。ガラス繊維は、無機繊維のなかでも引張強度や弾性率が高く、金属繊維等と比べると比較的に軽量である。このため、上側基材32及び下側基材42の強度を高めつつ、上側基材32及び下側基材42の軽量化を図ることができる。
【0082】
(5)コア層20の素材にタルクを配合することでコア層20の曲げ剛性を更に高めることができる。
(6)凹条部3には、第1本体部5が第2本体部6に対して回動する際に応力が集中しやすい。凹条部3を有する中空構造体10には上記コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を適用している。そのため、中空構造体10に上側シート層30及び下側シート層40を設けない場合と比べて、凹条部3の機能を維持しやすい。
【0083】
(7)第1比較例として、ガラス繊維を配合しない各シート層を設けた中空構造体を想定し、第2比較例として、ガラス繊維を配合しない各シート層を設けて比較的に薄い鋼板で補強された中空構造体を想定する。本実施形態の中空構造体10、第1比較例の中空構造体、及び第2比較例の中空構造体で構成されたラゲッジボード1に対して、載荷試験を行った場合について説明する。載荷試験では、ラゲッジボード1における凹条部3の直上に所定の質量及び大きさの重りを落下させた場合に、第1本体部5を第2本体部6に対して回動させる凹条部3の機能を維持できるかどうかを試験している。
【0084】
第1比較例及び第2比較例の中空構造体を用いたラゲッジボード1では、第1本体部5を第2本体部6に対して回動させる凹条部3の機能を維持することができなかった。これに対し、本実施形態の中空構造体10を用いたラゲッジボード1では、第1本体部5を第2本体部6に対して回動させる凹条部3の機能を維持することができた。これは、本実施形態の中空構造体10では、上側シート層30の上側基材32及び下側シート層40の下側基材42にガラス繊維を配合することで強度を高めているからである。また、本実施形態の中空構造体10を用いたラゲッジボード1で載荷試験により生じた変形量は、第1比較例及び第2比較例の中空構造体を用いたラゲッジボード1で載荷試験により生じた変形量よりも小さいことが確認できた。
【0085】
(8)車両の後部に設けられたラゲッジルーム内は温度変化が大きい。上側基材32の線膨張係数が大きいと、上側基材32の熱変形に起因して中空構造体10が変形することがある。この場合、ラゲッジルームに設けられた支持部に対してラゲッジボード1がずれてしまうことがある。この点、ガラス繊維とポリプロピレン繊維とを配合した上側基材32は、ポリプロピレン繊維のみを配合した上側基材と比べて、線膨張係数を小さくすることができる。このため、上側基材32の熱変形を抑制することができ、ひいては、支持部に対してラゲッジボード1がずれることを抑えられる。これは、下側基材42についても同様である。すなわち、コア層20の両面に配置される上側基材32及び下側基材42により、中空構造体10の両面が変形することが抑えられる。このように、上側基材32及び下側基材42を用いた中空構造体10の適用先として、ラゲッジルーム内に載置されるラゲッジボード1は好適である。特に、左右方向あるいは前後方向のいずれかが長いラゲッジボード1に対して、中空構造体10を適用する場合に、その効果は顕著である。
【0086】
(9)ガラス繊維とポリプロピレン繊維とが配合された上側基材32の基材本体層32aでは、当該基材本体層32aの表面に各繊維の端部が露出することがある。各繊維の端部が上側シート層30の表面に露出していると、中空構造体10を製造するための製造装置に傷を付けたり、中空構造体10の表面の手触りが悪くなるおそれがある。この点、本実施形態では、基材本体層32aの上下面の両方の面に樹脂層が配置されることで、上側シート層30の上下面の両方の面に各繊維の端部が露出することを抑えられる。これは、下側シート層40についても同様である。
【0087】
(10)本実施形態では、上側シート層30の上面に上側不織布34が配置されることで、中空構造体10の上面の手触りを良くしたり、中空構造体10の上面の見栄えを良くしたりできる。これは、中空構造体10の下面についても同様である。
【0088】
(11)上側シート層30の基材本体層32aに係合凸部32d及び係合凹部30cを設けることによって、上側シート層30とコア層20との間の接合強度を高めることができる。他にも、中空構造体10の表面に対して外部に載置される物体の滑り止めをしたり、中空構造体10の表面に対して外部に載置される物体の位置決めをしたりすることができる。例えば、中空構造体10を用いたラゲッジボード1では、ラゲッジボード1の上面に載置される荷物が係合凸部32dに対して引っ掛かることで滑らないようにすることができる。
【0089】
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・コア層20は、折り畳み工程を経て形成されるものでなく、塑性を有するシート材を膨出されることによって形成してもよい。例えば、塑性を有するシート材を真空成形して、多角柱形状や円柱形状のセルが複数膨出されたような形状のものをコア層20としてもよい。あるいは、シート材を折り曲げることにより膨出領域と平面領域とが交互に形成されたものをコア層20として使用してもよい。
【0090】
・1枚の熱可塑性樹脂製のシートを折り畳み成形してコア層20を構成するものに限らず、複数枚のシートを使用してコア層20を構成してもよい。例えば、帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させるとともに、湾曲及び屈曲させた帯状のシートを複数向かい合わせて配置することによりコア層20を構成してもよい。さらに、セルを形成したシートを複数積み重ねてコア層20を構成してもよい。すなわち、上側シート層30及び下側シート層40の間において、シートによって複数のセルが区画形成できるのであれば、コア層20を構成するシートの枚数やその湾曲及び屈曲の態様はどのようなものであってもよい。
【0091】
・本実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は特に限定されるものでなく、例えば四角柱状、八角柱状等の多角柱状や円柱状としてもよい。その際、コア層20の内部には異なる形状のセルSが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくてもよく、セルとセルの間に隙間が存在していてもよい。
【0092】
・コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下面の両方の面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0093】
・本実施形態では、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを折り畳み成形して、コア層20の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層20を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層20を形成してもよい。
【0094】
・上側シート層30及び下側シート層40の積層数は適宜変更可能である。
・コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40の素材である熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能である。また、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40の少なくともいずれかに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能である。
【0095】
・コア層20の素材には、熱可塑性樹脂に加えて、無機材料が配合されたが、少なくとも熱可塑性樹脂が配合されていればよく、無機材料が配合されなくてもよい。
・上側基材32の素材には、発泡剤が配合されたが、発泡剤が配合されなくてもよい。なお、上側基材32に発泡剤が配合されない場合であっても、上側基材32は、加熱工程において上記スプリングバック等が生じることで、その内部に複数の孔が生じた多孔質部材となることがある。こうした場合にも、上記効果(2)と同様に、中空構造体10の防音性を高めることができる。これは、下側基材42についても同様である。
【0096】
・中空構造体10では、上側シート層30の上面からコア層20の上壁部21まで貫通する連通孔を針等により設けるようにしてもよい。この場合、連通孔を設けることによって特に低音域の周波数の吸音率及び遮音性を高めることができる。
【0097】
・上側基材32のコア層側樹脂層32b及び意匠側樹脂層32cのいずれかあるいは両方は、省略してもよい。これは、下側基材42についても同様である。
・本実施形態では、コア層20の上下面の両面に上側シート層30及び下側シート層40を溶着したが、コア層20の上下面のうち片面にのみシート層を溶着するようにしてもよい。
【0098】
・上側シート層30及び下側シート層40の厚みは互いに異なっていてもよい。
・上側不織布34及び下側不織布44のいずれかあるいは両方は、省略してもよい。この場合、意匠側溶着層33,43は、省略することができる。
【0099】
・コア層20の上面と上側基材32の下面との間に配置されているコア層側溶着層31は、省略してもよい。この場合、コア層20の上面には、上側基材32が直接溶着される。この場合には、特に、上側基材32に配合される熱可塑性樹脂と、コア層20に配合される熱可塑性樹脂とが、相溶性のある素材であることが好ましい。なお、上側基材32のコア層側樹脂層32b及び意匠側樹脂層32cが溶着層として機能するようにしてもよい。これは、コア層20の下面と下側基材42の上面との間に配置されているコア層側溶着層41についても同様であり、コア層側溶着層41は、省略してもよい。
【0100】
・意匠側溶着層33は、省略してもよい。この場合、上側基材32の上面には、上側不織布34が直接溶着され、下側基材42の下面には、下側不織布44が直接溶着される。この場合には、上側基材32に配合される熱可塑性樹脂と、コア層20に配合される熱可塑性樹脂とが、相溶性のある素材であることが好ましい。
【0101】
・加熱工程における加熱温度は、中空構造体10の素材に応じて適宜変更することができる。
・加熱工程では、コア層20、上側シート層30及び下側シート層40をそれぞれ別個の加熱炉71、72内で加熱したが、これに限定されない。例えば、コア層20、上側シート層30、及び下側シート層40を同じ加熱炉内で加熱してもよい。
【0102】
・加熱工程での加熱は、加熱炉71、72内での加熱ではなく、開放された環境下での加熱であってもよい。例えば、バーナーで加熱してもよいし、IHヒータで加熱してもよいし、赤外線ヒータで加熱してもよい。
【0103】
・本実施形態では、接合工程と成形工程とを同時に行ったが、これらの工程を別々に行ってもよい。この場合、接合工程では、コア層20に対して上側シート層30及び下側シート層40を接合することで中空板材を得ることができる。そして、成形工程では、上型51及び下型52を用いて中空板材から中間体60を得ることができる。
【0104】
・接合工程及び成形工程は、上型51及び下型52を加熱して行ってもよい。
・上側シート層30は、上側不織布34が設けられていない状態で、加熱工程及び接合工程に供されてもよい。この場合、例えば、上側不織布34は、接合工程の後で上側基材32の上面に意匠側溶着層33を介して配置されることになる。これは、下側不織布44についても同様である。
【0105】
・凹条部3の形成方法は、適宜変更可能である。凹条部は、例えば、熱を掛けることによって生じるスプリングバックを用いて設けるようにしてもよい。なお、凹条部3が設けられるタイミングは、スプリングバックが生じる時であってもよいし、スプリングバックが生じた後であってもよい。これは、凸条部4についても同様であり、凸条部4の形成方法は、適宜変更可能である。
【0106】
・凹条部3は、本体部2に複数列設けるようにしてもよい。この場合、複数列の凹条部3は、例えば、ラゲッジボード1をラゲッジルームに対して滑り難くするための滑り止め部として機能したり、ラゲッジボード1をラゲッジルームに対して複数段階に位置決めするための位置決め部として機能したりする。
【0107】
・凸条部4の本数は、適宜変更可能である。凸条部4は、本体部2に1列のみ設けるようにしてもよいし、2列設けるようにしてもよいし、4列以上設けるようにしてもよい。また、凸条部4の形状は、適宜変更可能である。凸条部4は、例えば、上から見た場合に、L字状や、V字状等に延びていてもよい。
【0108】
例えば、
図13に示すように、L字状の凸条部4は、左右方向に延びる第1凸条部4aと、前後方向に延びる第2凸条部4bとを有している。第1凸条部4aは、本体部2における左右方向の右端部から本体部2における中間位置まで延びている。第2凸条部4bは、本体部2における前後方向の後端部から第1凸条部4aの左端部まで延びている。また、本変形例の凸条部4は、
図10に示した通り、凸条部4が設けられた部位の板厚が厚くされている。L字状の凸条部4によって囲われた本体部2の上面に荷物を載置することで、ラゲッジボード1の上面に対して荷物の位置決めをすることができる。
【0109】
図13に示した本変形例のラゲッジボード1の製造方法について
図14(a)~(f)に従って説明する。なお、ここでは、上記実施形態との違いを中心に説明する。
図14(c)に示すように、上型51に形成された凹部51aには、凸条部4に対応した形状を有する凹部51dが設けられている。凹部51dは、第1凸条部4aに対応する部分と、第2凸条部4bに対応する部分とを有している。そして、
図14(d)に示すように、型締めされることによって、凸条部4は成形されている。
【0110】
・凸条部4は、本体部2に設けないようにしてもよい。この場合、凸条部4は、3列とも省略される。
・凹条部3は、本体部2の上面に設けてもよいし、本体部2の上面及び下面の両面に設けてもよい。また、凹条部3は、本体部2に設けないようにしてもよい。
【0111】
・ラゲッジボード1の形状は、左右方向に長い略長方形板状に限らず、略正方形板状や、略円形板状等、適宜変更可能である。
・中空構造体10の適用先は、ラゲッジボード1に限らず、凹条部3を有する扉状部材や、吸音パネル等、適宜変更可能である。また、中空構造体10の適用先は、凹条部3を有する部材に限らず、凹条部3を有さない床構造や、凹条部3を有さない吸音パネル等、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0112】
1…ラゲッジボード
2…本体部
3…凹条部
5…第1本体部
6…第2本体部
10…中空構造体
20…コア層
30…上側シート層
40…下側シート層