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特許7681330CO2分離方法、CO2分離装置、及び燃焼システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】CO2分離方法、CO2分離装置、及び燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20250515BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20250515BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20250515BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20250515BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D61/58
B01D69/00 500
C01B32/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022545458
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021826
(87)【国際公開番号】W WO2022044481
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2020141971
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305009898
【氏名又は名称】株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114476
【弁理士】
【氏名又は名称】政木 良文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 治
(72)【発明者】
【氏名】寺本 正明
(72)【発明者】
【氏名】花井 伸彰
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148736(JP,A)
【文献】特開2014-200767(JP,A)
【文献】特開2009-242773(JP,A)
【文献】特開平11-200817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/58
B01D 69/00
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と選択的に反応するCO2キャリアを含むCO2分離膜と、前記CO2分離膜によって隔てられた第1処理室と第2処理室を備えて構成される分離膜モジュールを2段以上直列に連結した分離膜モジュール列を少なくとも使用し、
前記分離膜モジュールの各段において、
前記CO2キャリアと反応しないメタン、二酸化炭素、及び水蒸気を含む混合ガスを、前記第1処理室の一端側から前記第1処理室内に供給し、
前記第1処理室内に供給された前記混合ガス中の二酸化炭素を、前記CO2分離膜を介して前記第2処理室側に透過させることにより、前記混合ガスから二酸化炭素を分離し、
前記CO2分離膜を透過せずに前記第1処理室内に残留したメタン、二酸化炭素、及び水蒸気を含む非透過ガスを、前記第1処理室の他端側から排出し、
分離された二酸化炭素を含む前記CO2分離膜を透過した透過ガスを、前記第2処理室の前記第1処理室の他端側と同じ側から外部に排出し、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1処理室の他端側から排出された前記非透過ガスに水蒸気を追加し、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記混合ガスとして、当該後段側の前記分離膜モジュールの前記第1処理室の前記一端側から前記第1処理室内に供給し、
最終段の前記分離膜モジュールの前記第1処理室から排出される前記非透過ガス中のドライベースでのメタン濃度が80mol%以上であることを特徴とするCO2分離方法。
【請求項2】
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1処理室の他端側から排出された前記非透過ガスに、当該非透過ガスの相対湿度が20%以上増加するように水蒸気を追加することを特徴とする請求項1に記載のCO2分離方法。
【請求項3】
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1処理室の他端側から排出された前記非透過ガスに、当該非透過ガスの相対湿度が前記第1処理室の一端側から前記第1処理室内に供給された前記混合ガスの相対湿度にまで戻すのに必要な水蒸気流量で水蒸気を追加することを特徴とする請求項1または2に記載のCO 2 分離方法。
【請求項4】
二酸化炭素と選択的に反応するCO2キャリアを含むCO2分離膜と、前記CO2分離膜によって隔てられた第1処理室と第2処理室を備えて構成される分離膜モジュールを2段以上直列に連結した分離膜モジュール列と、水蒸気供給部とを少なくとも備え、
前記分離膜モジュールの各段が、
前記第1処理室の一端側に、前記CO2キャリアと反応しないメタン、二酸化炭素、及び水蒸気を含む混合ガスを、前記第1処理室内に供給する第1送入口を備え、
前記第1処理室の他端側に、前記CO2分離膜を透過せずに前記第1処理室内に残留したメタン、二酸化炭素、及び水蒸気を含む非透過ガスを排出する第1排出口を備え、
前記第2処理室の前記第1処理室の他端側と同じ側に、前記混合ガス中のメタン、二酸化炭素、及び水蒸気の一部であって、前記CO2分離膜を介して前記第1処理室側から前記第2処理室側に透過した透過ガスを排出する第2排出口を備え、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1排出口が、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記第1送入口と相互に連結して、連結部が構成され、
前記水蒸気供給部が、前記連結部のそれぞれに水蒸気を供給するように構成され、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1排出口から排出された前記非透過ガスと前記連結部に供給された水蒸気が、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記混合ガスとして、当該後段側の前記分離膜モジュールの前記第1送入口から前記第1処理室内に供給されるように構成されており、
最終段の前記分離膜モジュールの前記第1処理室から排出される前記非透過ガス中のドライベースでのメタン濃度が80mol%以上であることを特徴とするCO2分離装置。
【請求項5】
前記水蒸気供給部が、最終段以外の前記分離膜モジュールの各段に対して、前記第1排出口から排出された前記非透過ガスの相対湿度が20%以上増加するように、前記連結部に水蒸気を供給することを特徴とする請求項に記載のCO2分離装置。
【請求項6】
前記水蒸気供給部が、最終段以外の前記分離膜モジュールの各段に対して、前記第1排出口から排出された前記非透過ガスの相対湿度を前記第1送入口から前記第1処理室内に供給される前記混合ガスの相対湿度にまで戻すのに必要な水蒸気流量で、前記連結部に水蒸気を供給することを特徴とする請求項4または5に記載のCO 2 分離装置。
【請求項7】
前記水蒸気供給部は、1段目の前記分離膜モジュールの前記第1処理室内に供給する前記混合ガスに、当該混合ガスの相対湿度が70%未満の場合、当該相対湿度が70%以上となるように、水蒸気を供給することを特徴とする請求項4~6の何れか1項に記載のCO2分離装置。
【請求項8】
請求項4~7の何れか1項に記載のCO2分離装置と、燃焼装置を備えた燃焼システムであって、
前記CO 2 分離装置の1段目の前記分離膜モジュールの前記第1処理室内に供給する前記混合ガスが、有機物のメタン発酵により生成されたバイオガスに由来するガスを含み、
前記CO2分離装置の最終段の前記分離膜モジュールの前記第1処理室から排出される前記非透過ガスが、前記燃焼装置に燃料ガスとして供給されることを特徴とする燃焼システム。
【請求項9】
前記CO2分離装置の前記水蒸気供給部は、前記燃焼装置からの排熱を利用して、水蒸気を生成することを特徴とする請求項に記載の燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と選択的に反応するCOキャリアを含むCO分離膜と、前記CO分離膜によって隔てられた第1処理室と第2処理室を備えて構成される分離膜モジュールを複数段直列に連結して使用し、COキャリアと反応しない特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するCO分離方法及び装置に関し、更に、CO分離装置と燃焼装置を備えた燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜モジュールを複数段直列に連結して使用し、二酸化炭素を分離するCO分離方法及び装置については、下記の特許文献1及び2に既に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているCO分離方法及び装置では、或る段の分離膜モジュールの供給側に位置する第1処理室において、CO分離膜を透過しなかった非透過ガスは、次段の分離膜モジュールの第1処理室にそのまま供給される。
【0004】
特許文献2に開示されているCO分離方法及び装置では、或る段の分離膜モジュールの供給側に位置する第1処理室において、CO分離膜を透過しなかった非透過ガスは、相対湿度が所定値を下回ると、冷却して相対湿度を上昇させてから、次段の分離膜モジュールの第1処理室に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-200767号公報
【文献】特開2015-027654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
COキャリアを含むCO分離膜は、促進輸送機構によるCOとCOキャリアの反応により、COを選択的に透過させるCO促進輸送膜として機能する。CO促進輸送膜のCO透過速度は、CO促進輸送膜の供給側に供給されるCOとスチーム(HO)を含む混合ガスの相対湿度に依存し、相対湿度が低いほどCOパーミアンスは低下する。CO促進輸送膜に該混合ガスを供給した場合、スチームの透過速度はCOの透過速度よりも速く、CO促進輸送膜の供給側における混合ガスの流れる方向に沿って、混合ガス中のスチーム量は減少していき、相対湿度は低下する。
【0007】
従って、分離膜モジュールを複数段直列に連結して使用するCO分離方法及び装置では、後段の分離膜モジュールほど、COの透過速度が低下するという問題がある。
【0008】
上記特許文献2では、上記問題を解決するために、分離膜モジュールの第1処理室から排出される非透過ガスを冷却して相対湿度を上昇させてから、次段の分離膜モジュールの第1処理室に供給している。しかしながら、非透過ガスを冷却して相対湿度を上昇させる方法では、相対湿度の上昇が小さく、また、非透過ガスの温度低下に伴うCOパーミアンスの低下が懸念されるため、COの透過速度の低下を十分に抑制できない可能性がある。
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑み、分離膜モジュールを複数段直列に連結して使用するCO分離方法及び装置において、後段の分離膜モジュールでのCOパーミアンスの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るCO分離方法は、
二酸化炭素と選択的に反応するCOキャリアを含むCO分離膜と、前記CO分離膜によって隔てられた第1処理室と第2処理室を備えて構成される分離膜モジュールを2段以上直列に連結した分離膜モジュール列を少なくとも使用し、
前記分離膜モジュールの各段において、
前記COキャリアと反応しない特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気を含む混合ガスを、前記第1処理室の一端側から前記第1処理室内に供給し、
前記第1処理室内に供給された前記混合ガス中の二酸化炭素を、前記CO分離膜を介して前記第2処理室側に透過させることにより、前記混合ガスから二酸化炭素を分離し、
前記CO分離膜を透過せずに前記第1処理室内に残留した前記特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気を含む非透過ガスを、前記第1処理室の他端側から排出し、
分離された二酸化炭素を含む前記CO分離膜を透過した透過ガスを、前記第2処理室の前記第1処理室の他端側と同じ側から外部に排出し、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1処理室の他端側から排出された前記非透過ガスに水蒸気を追加し、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記混合ガスとして、当該後段側の前記分離膜モジュールの前記第1処理室の前記一端側から前記第1処理室内に供給することを第1の特徴とする。
【0011】
更に、上記目的を達成するための本発明に係るCO分離装置は、
二酸化炭素と選択的に反応するCOキャリアを含むCO分離膜と、前記CO分離膜によって隔てられた第1処理室と第2処理室を備えて構成される分離膜モジュールを2段以上直列に連結した分離膜モジュール列と、水蒸気供給部とを少なくとも備え、
前記分離膜モジュールの各段が、
前記第1処理室の一端側に、前記COキャリアと反応しない特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気を含む混合ガスを、前記第1処理室内に供給する第1送入口を備え、
前記第1処理室の他端側に、前記CO分離膜を透過せずに前記第1処理室内に残留した前記特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気を含む非透過ガスを排出する第1排出口を備え、
前記第2処理室の前記第1処理室の他端側と同じ側に、前記混合ガス中の前記特定ガス、二酸化炭素、及び水蒸気の一部であって、前記CO分離膜を介して前記第1処理室側から前記第2処理室側に透過した透過ガスを排出する第2排出口を備え、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1排出口が、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記第1送入口と相互に連結して、連結部が構成され、
前記水蒸気供給部が、前記連結部のそれぞれに水蒸気を供給するように構成され、
最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1排出口から排出された前記非透過ガスと前記連結部に供給された水蒸気が、後段側に連結している前記分離膜モジュールの前記混合ガスとして、当該後段側の前記分離膜モジュールの前記第1送入口から前記第1処理室内に供給されるように構成されていることを第1の特徴とする。
【0012】
更に、上記第1の特徴のCO分離方法において、最終段以外の前記分離膜モジュールの各段において、前記第1処理室の他端側から排出された前記非透過ガスに、当該非透過ガスの相対湿度が20%以上増加するように水蒸気を追加することが好ましい。
【0013】
更に、上記第1の特徴のCO分離装置において、前記水蒸気供給部が、最終段以外の前記分離膜モジュールの各段に対して、前記第1排出口から排出された前記非透過ガスの相対湿度が20%以上増加するように、前記連結部に水蒸気を供給することが好ましい。
【0014】
更に、上記第1の特徴のCO分離装置において、1段目の前記分離膜モジュールの前記第1処理室内に供給する前記混合ガスに、当該混合ガスの相対湿度が70%未満の場合、当該相対湿度が70%以上となるように、水蒸気を供給することが好ましい。
【0015】
更に、上記第1の特徴のCO分離方法及び装置において、1段目の前記分離膜モジュールの前記第1処理室内に供給する前記混合ガスが、有機物のメタン発酵により生成されたバイオガスに由来するガスを含み、前記特定ガスがメタンであることを第2の特徴とする。
【0016】
上記第2の特徴のCO分離方法及び装置において、最終段の前記分離膜モジュールの前記第1処理室から排出される前記非透過ガス中のドライベースでのメタン濃度が80mol%以上であることが好ましい。
【0017】
更に、本発明に係る燃焼システムは、上記第2の特徴のCO分離装置と、燃焼装置を備えた燃焼システムであって、前記CO分離装置の最終段の前記分離膜モジュールの前記第1処理室から排出される前記非透過ガスが、前記燃焼装置に燃料ガスとして供給されることを特徴とする。
【0018】
上記特徴の燃焼システムにおいて、前記CO分離装置の前記水蒸気供給部は、前記燃焼装置からの排熱を利用して、水蒸気を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記特徴のCO分離方法及び装置によれば、最終段以外の各分離膜モジュールの第1処理室から排出された非透過ガスに水蒸気が供給されることで、2段目以降の分離膜モジュールにおいて、相対湿度の低下に伴うCOパーミアンスの低下が抑制されて、所望のCOパーミアンスを維持することが可能となる。この結果、直列に連結された全ての分離膜モジュールにおいて高いCOパーミアンスを実現でき、分離膜モジュール列として高い選択透過性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るCO分離装置で使用する分離膜モジュールの基本的な構成例を模式的に示す概略断面図
図2】本発明に係るCO分離装置の基本的な構成例を模式的に示す概略断面図
図3】実施例1及び比較例1~3の各分離装置における分離膜モジュールの連結構造を示す図
図4】比較例4~7の各分離装置における分離膜モジュールの連結構造を示す図
図5】本発明に係る燃焼システムの要部構成を模式的に示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明に係るCO分離装置及びCO分離方法(以下、適宜「本分離装置」及び「本分離方法」という。)の一実施形態につき、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に、本分離装置1で使用する分離膜モジュール2の基本的な構成例を模式的に示す。また、図2に、本分離装置1の基本的な構成例を模式的に示す。図1及び図2中の矢印は、ガスが流れる流路及び向きを簡略化して示したものである。また、図1及び図2の概略断面図に示す各構成要素の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致するものではない。これらは、後述の第2実施形態で説明する燃焼システムの要部構成図についても同様とする。また、各概略断面図及び要部構成図において、同一の構成要素については、同一の符号を付すこととし、その説明を省略することがある。
【0023】
[分離膜モジュールの構成]
図1に示すように、分離膜モジュール2は、平膜状のCO分離膜3が筐体4内に収容され、筐体4の内壁とCO分離膜3の供給側面に囲まれた空間によって、第1処理室5が形成され、筐体4の内壁とCO分離膜3の透過側面に囲まれた空間によって、第2処理室6が形成されている。つまり、第1処理室5と第2処理室6がCO分離膜3によって隔てられている。よって、筐体4は、第1処理室5と第2処理室6を構成する筐体である。
【0024】
筐体4は、例えば、ステンレス製であり、図示していないが、CO分離膜3の外周端部と筐体4の内壁との間に、一例として、フッ素ゴム製ガスケットをシール材として介装して、CO分離膜3を筐体4内に固定している。尚、CO分離膜3の固定方法及びシール方法は、上記方法に限定されるものではない。また、CO分離膜3を筐体4内に固定するための具体的な構造は、CO分離膜3の形状及び筐体4内への収容形態によって異なるため、また、本発明の本旨ではないので、詳細な説明を省略する。
【0025】
第1処理室5の対向する壁面の一方側と他方側には、混合ガスFGを外部から第1処理室5内に送入する第1送入口7と、混合ガスFG中のCO分離膜3を透過せず第1処理室5内に残留した非透過ガスEGを第1処理室5から外部へ排出する第1排出口8が設けられている。図1に示す第1送入口7と第1排出口8の開口位置は、例示であり、非透過ガスEGが、第1処理室5内においてCO分離膜3の供給側面に沿って一定の方向に流れる限りにおいて、第1処理室5の形状に応じて適宜変更可能である。
【0026】
第2処理室6には、CO分離膜3を透過したCOを含む透過ガスPGを第2処理室6から外部へ排出する第2排出口9が設けられている。尚、本実施形態では、第2排出口9は、第2処理室6の対向する壁面の第1排出口8の開口位置と同じ側に設けられている。つまり、第2処理室6内において透過ガスPGのCO分離膜3の透過側面に沿って流れる方向が、第1処理室5内において非透過ガスEGのCO分離膜3の供給側面に沿って流れる方向と同じ方向に設定されている。以下、透過ガスPGと非透過ガスEGの流動方向が同じ場合を、便宜的に「並流」と記す場合がある。また、透過ガスPGと非透過ガスEGの流動方向が逆方向である場合を、便宜的に「向流」と記す場合がある。また、図1に示す第2排出口9の開口位置は、例示であり、透過ガスPGと非透過ガスEGの流動方向が「並流」となる限りにおいて、第2処理室6の形状に応じて適宜変更可能である。
【0027】
また、本実施形態では、第2処理室6には、スイープガス等を外部から第2処理室6内に送入する送入口は設けていない。
【0028】
CO分離膜3は、一例として、親水性多孔膜上に分離機能層を担持させた積層構造を有する。分離機能層は、COを選択的に透過させるための層であり、本実施形態では、一例として、親水性ポリマーのゲル層中に、COと選択的に反応する化合物であるCOキャリアを含み、促進輸送膜として機能する。
【0029】
親水性多孔膜は、分離機能層のゲル層を形成する工程において、親水性ポリマーを含む水溶液からなるキャスト溶液を塗工する下地材であり、キャスト溶液中の親水性ポリマーをゲル化して得られるゲル層を支持する支持膜として機能する。分離機能層のゲル層を形成する工程については、多くの特許文献及び非特許文献に開示されており、詳細な説明は割愛する。
【0030】
CO分離膜3の上記積層構造において、分離機能層の露出面を保護するために、当該露出面上に疎水性多孔膜を貼合して第1の保護膜を形成した3層構造としても良い。更に、親水性多孔膜の分離機能層支持面と反対側の露出面を保護するために、当該露出面上に疎水性多孔膜を貼合して第2の保護膜を形成した4層構造としても良い。
【0031】
分離機能層を構成する親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸(PVA/PAA)塩共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、キトサン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、または、ポリビニルピロリドン等の使用が想定され、特に、ポリアクリル酸を主成分として含む親水性ポリマーが好適に使用される。更に、親水性ポリマーのゲル層がハイドロゲルであっても良い。ハイドロゲルは、親水性ポリマーが架橋することで形成された三次元網目構造物であり、水を吸収することで膨潤する性質を有する場合が多い。親水性ポリマーがPVA/PAA塩共重合体またはポリビニルアルコールの場合のハイドロゲルの架橋度は、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物、等の架橋剤の添加量により調節することができる。尚、当業者において、PVA/PAA塩共重合体は、PVA/PAA共重合体と呼ばれることもある。
【0032】
分離機能層に含まれるCOキャリアとして、炭酸セシウム(CsCO)、炭酸ルビジウム(RbCO)等のアルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、または、水酸化物、或いは、グリシン、2,3‐ジアミノプロピオン酸塩(DAPA)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、セリン、オルニチン、クレアチン、トレオニン、サルコシン、及び、2‐アミノ酪酸等のアミノ酸が、好適に使用される。
【0033】
促進輸送機構によるCOとCOキャリアの反応は、総括反応式としては、下記の(化1)のように示される。但し、(化1)ではCOキャリアが炭酸塩である場合を想定している。反応式中の記号「⇔」は、可逆反応であることを示している。
【0034】
(化1)
CO + HO + CO 2- ⇔ 2HCO
【0035】
ここで、COキャリアがアルカリ金属の炭酸塩の場合には、上記(化1)に示す反応が生じるが、COキャリアがアルカリ金属の水酸化物の場合は、下記の(化2)に示すような反応が生じる。尚、(化2)では、一例としてアルカリ金属がセシウムの場合を示す。
【0036】
(化2)
CO+ CsOH → CsHCO
CsHCO+ CsOH → CsCO+ H
【0037】
尚、上記(化2)を纏めると、下記(化3)のように表すことができる。即ち、これにより、添加された水酸化セシウムが炭酸セシウムに転化することが示される。更に、上記(化2)より、COキャリアとして、アルカリ金属の炭酸塩の代わりに重炭酸塩を添加した場合においても同様の効果を得ることができることが分かる。
【0038】
(化3)
CO+ 2CsOH → CsCO+ H
【0039】
グリシンやDAPA等のアミノ酸をCOキャリアとして利用する場合、二酸化炭素はNH と反応せず、フリーのNHと反応することが知られている。このため、COキャリアとしてグリシンやDAPA等のアミノ酸を用いる場合、アミノ酸に対して等量以上のアルカリを添加して、後述のキャスト溶液中に溶解したNH を脱プロトン化してNHに変換する必要がある。当該アルカリとしては、プロトン化したNH からプロトンを奪い、NHに変換できるだけの強塩基性を有するものであれば良く、アルカリ金属元素の水酸化物または炭酸塩を好適に利用できる。
【0040】
親水性ポリマーのゲル層中には、COキャリア及び上記脱プロトン化剤としてのアルカリ以外に、CO水和反応触媒を添加しても良い。この場合、CO水和反応触媒として、オキソ酸化合物を好適に使用する。CO水和反応触媒は、より具体的には、6族元素、14族元素、15族元素、及び、16族元素の中から選択される少なくとも1つの元素のオキソ酸化合物を使用し、特に好ましくは、亜テルル酸化合物、亜セレン酸化合物、亜ヒ酸化合物、オルトケイ酸化合物、或いは、モリブデン酸化合物を使用する。
【0041】
親水性多孔膜は、ポリカーボネート(PC)、ポリセルロースエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、後述する疎水性多孔膜を親水化処理した膜、等が好適に使用される。更に、親水性多孔膜の多孔度(空隙率)は55%以上であるのが好ましく、親水性多孔膜11の細孔径は、0.1~1μmの範囲にあるのが好ましく、0.1~0.5μmの範囲にあるのがより好ましい。
【0042】
尚、「親水性」とは25℃における水との接触角が90°未満であることを意味する。本実施形態においては、親水性多孔膜の上記接触角は、45°以下が好ましい。
【0043】
疎水性多孔膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等が好適に使用される。更に、疎水性多孔膜の多孔度(空隙率)は55%以上であるのが好ましく、疎水性多孔膜の細孔径は、0.1~1μmの範囲にあるのが好ましく、0.1~0.5μmの範囲にあるのがより好ましい。
【0044】
尚、「疎水性」とは25℃における水との接触角が90°以上であることを意味する。本実施形態においては、疎水性多孔膜の上記接触角は、95°以上が好ましく、100°以上がより好ましく、105°以上が更に好ましい。
【0045】
[本分離装置の構成]
次に、本分離装置1の基本的な構成について、図2を参照して説明する。本分離装置1は、分離膜モジュール2の複数段(m段:mは2以上の整数)を直列に連結した分離膜モジュール列と、水蒸気供給部11を備えて構成される。尚、複数段の分離膜モジュール2は、混合ガスFG及び非透過ガスEGの流れる方向に沿って、先頭から順番に、1段目、2段目、……、m段目(最終段)と呼ぶ。
【0046】
図2に示すように、2段目以降の各分離膜モジュール2の第1送入口7は、その前段の分離膜モジュール2の第1排出口8と相互に、直接または連結管を介して連結し、当該前段の分離膜モジュール2の第1排出口8に対して連結部10が構成されている。最終段(m段目)の分離膜モジュール2を除いて、1段目から(m-1)段目の各分離膜モジュール2の第1排出口8に連結部10が構成されている。連結部の個数は分離膜モジュール2の段数mより1だけ少ないので、便宜的に、各連結部の先頭からの順番は、その前方に位置する各分離膜モジュール2の順番に対応させている。
【0047】
図2に示すように、一実施態様において、m段の分離膜モジュール2のm個の第2排出口9は相互に連結され、各第2排出口9から排出される透過ガスPGは、まとめて当該透過ガスPGを回収または再利用する装置(図示せず)に供給される。透過ガスPGは、二酸化炭素を多く含んでおり、各種産業用利用のために回収及び再利用が可能である。尚、透過ガスPGを回収または再利用せず、大気放出する場合は、各第2排出口9は開放して
おいても良い。
【0048】
図2に示すように、水蒸気供給部11から、1段目から(m-1)段目の各分離膜モジュール2の連結部10に水蒸気(HO)が供給される。この結果、1段目から(m-1)段目の各分離膜モジュール2において、第1排出口8から排出された非透過ガスEGは、連結部10に供給された水蒸気(HO)とともに、次段の分離膜モジュール2の第1処理室5内に混合ガスFGとして供給される。
【0049】
各段の連結部10に供給される水蒸気の量は、供給された水蒸気によって各連結部10に排出される非透過ガスEGの相対湿度が20%以上増加するのに必要な量とするのが好ましい。また、20%以上増加後の非透過ガスEG(次段の分離膜モジュール2に供給する混合ガスFG)の相対湿度は、50%以上100%未満であることが好ましく、更に、1段目の分離膜モジュール2に供給される混合ガスFGの相対湿度と同等または略同等(例えば、±5%以内)であることがより好ましい。但し、増加後の相対湿度が100%に至る場合、或いは、100%未満であっても温度変動等により、非透過ガスEG中の水蒸気が凝縮する場合には、100%に至らない程度に、或いは、当該凝縮が発生しない程度に、水蒸気の供給量を抑えるのが好ましい。
【0050】
尚、本実施形態では、各段の分離膜モジュール2において、第1処理室5内に供給された混合ガスFGが、第1処理室5内を通過して非透過ガスEGとして排出されるまでに、相対湿度が20%以上低下する場合を想定している。各段の連結部10への水蒸気の供給量は、同じであっても、各段の分離膜モジュール2毎の非透過ガスEGの相対湿度の低下の程度に応じて変化させても良い。
【0051】
水蒸気供給部11は、水蒸気供給部11内で水を加熱して水蒸気を生成して、各段の連結部10に分配する構成、或いは、外部から水蒸気を水蒸気供給部11内に収集して、各段の連結部10に分配する構成の2種類の構成が想定される。また、水蒸気供給部11を、2種類の構成を組み合わせて実現しても良い。例えば、後者の外部から水蒸気を収集する構成としては、最終段(m段目)の分離膜モジュール2から排出される非透過ガスEGに含まれる水蒸気を、例えば、パーフルオロ系膜(またはパーフルオロスルホン酸系膜)等の水蒸気透過膜を用いる公知の膜分離方式によって水蒸気のまま分離する水蒸気除去部を設け、当該水蒸気除去部で分離された水蒸気を水蒸気供給部11内に収集する構成、或いは、各段の分離膜モジュール2から排出される透過ガスPGに含まれる水蒸気を、例えば、上述の膜分離方式の水蒸気除去部によって水蒸気のまま分離して、水蒸気供給部11内に収集する構成、或いは、両者を組み合わせた構成が想定される。
【0052】
水蒸気供給部11から各段の連結部10に水蒸気が供給されることで、2段目以降の分離膜モジュール2の第1処理室5内に供給された混合ガスFGの相対湿度を、混合ガスFGの温度を下げることなく、所定値以上に維持することができる。この結果、2段目以降の分離膜モジュール2において、相対湿度の低下に伴うCOパーミアンスの低下を抑制して、所望のCOパーミアンスを維持することが可能となる。従って、本分離装置1の水蒸気供給部11が各段の連結部10に水蒸気を分配する構成によって、分離膜モジュール2を複数段直列に連結して使用する従来のCO分離方法及び装置における後段の分離膜モジュールほど、COの透過速度が低下するという問題が解消される。
【0053】
1段目の分離膜モジュール2の第1送入口7から第1処理室5内に供給される混合ガスFGは、CO分離膜3の分離機能層に含まれるCOキャリアと反応しない特定ガスとCOと水蒸気(HO)を含む混合ガスである。特定ガスは、分離機能層内でCOキャリアと反応せず、溶解・拡散機構でのみ透過するH、CH、N、O、CO等が想定される。各段の分離膜モジュール2において、混合ガスFG内の各ガス成分の一部は、CO分離膜3を透過せずに第1処理室5内に残留するため、非透過ガスEGも、混合ガスFGとは各ガス成分の配分比は異なるが、特定ガスとCOと水蒸気(HO)を含む混合ガスである。
【0054】
上述したように、水蒸気供給部11から各段の連結部10に水蒸気が供給されることで、2段目以降の分離膜モジュール2において、相対湿度の低下に伴うCOパーミアンスの低下を抑制して、所望のCOパーミアンスを維持することが可能となる。従って、各段の分離膜モジュール2においては、1段目の分離膜モジュール2と同様に、CO分離膜3の分離機能層を透過する特定ガスのガスパーミアンスに対して、約100倍から数1000倍程度の極めて高いCOパーミアンスを実現でき、高い選択透過性が維持される。
【0055】
尚、上記説明では、1段目の分離膜モジュール2の第1送入口7から第1処理室5内に供給される混合ガスFGの相対湿度は、1段目の分離膜モジュール2のCO分離膜3の分離機能層において、所与のCO分圧差で所期のCOパーミアンスが実現できる程度であると想定していた。しかし、当該相対湿度が十分に高くなく、所期のCOパーミアンスが得られない場合は、水蒸気供給部11から、1段目の分離膜モジュール2に供給される混合ガスFGに対して、当該相対湿度が所定値(例えば、50%~80%の範囲内で設定、一例として70%)以上となるように、水蒸気を供給するのも、好ましい実施態様である。図2において、当該水蒸気の供給路を点線で示す。
【0056】
従って、各段の分離膜モジュール2において、第1処理室5内に供給された混合ガスFG中のCOが、CO分離膜3を特定ガスに対して選択的に透過することで、混合ガスFGから段階的に分離される。そして、非透過ガスEGが各分離膜モジュール2の第1処理室5から排出される毎に、非透過ガスEG中のドライベースでのCO濃度は段階的に低下し、逆に、特定ガスの濃度は段階的に増加する。
【0057】
尚、図2には図示していないが、1段目の分離膜モジュール2の第1送入口7には、混合ガスFGを第1処理室5内に供給するための配管が接続され、最終段の分離膜モジュール2の第1排出口8には、非透過ガスEGを第1処理室5から外部に排出するための配管が接続され、各段の分離膜モジュール2の第2排出口9には、透過ガスPGを第2処理室6から外部に排出するための配管が接続されている。
【0058】
上記各配管には、ガス管の他、複数のガス種を混合するため装置、ガス流量を調整または計測するための装置、ガスの供給圧を調整するための装置、ガスの背圧を調整するための装置、ガス中に水蒸気を添加するための装置、ガス中の水分を除去するための装置等が、必要に応じて、設けられる。これらは、後述の第2実施形態で説明する燃焼システムの要部構成図についても同様とする。
【0059】
[本分離装置の性能評価]
次に、本分離装置1の実施例1と、本分離装置1の7種類の比較例1~7に対して、混合ガスFGの処理性能を、シミュレーションで評価した結果を説明する。
【0060】
図3に、実施例1及び比較例1~3の各分離装置における分離膜モジュール2の相互に異なる4種類の連結構造を示す。図4に、比較例4~7の各分離装置における分離膜モジュール2の相互に異なる4種類の連結構造を示す。図3及び図4に示す各連結構造では、2台の分離膜モジュール2を使用している。
【0061】
実施例1は、図2に示す本分離装置1のm段の分離膜モジュール2を最小段数の2段で構成したものである。実施例1の連結構造を、便宜的に「直列並流中間加湿」と称す。
【0062】
比較例1は、実施例1で実施している連結部10への水蒸気の供給を行わない比較例である。比較例1の連結構造を、便宜的に「直列並流」と称す。
【0063】
比較例2は、実施例1で実施している連結部10への水蒸気の供給に代えて、連結部10を流れる非透過ガスEGの温度を10℃冷却する比較例である。比較例2の連結構造を、便宜的に「直列並流中間冷却」と称す。
【0064】
比較例3は、実施例1で実施している連結部10への水蒸気の供給を行わない比較例であり、各分離膜モジュール2における透過ガスPGと非透過ガスEGの流動方向が逆方向(向流)となっている。また、1段目の第2処理室6から排出された透過ガスPGが、2段目の第2処理室6に供給される。比較例3の連結構造を、便宜的に「直列向流」と称す。
【0065】
比較例4は、実施例1で実施している連結部10への水蒸気の供給を行わない比較例であり、1段目の第2処理室6にスイープガスSGとして水蒸気が供給され、1段目の第2処理室6から排出された透過ガスPGとスイープガスSGの混合ガスMGが、2段目の第2処理室6に供給される。比較例4の連結構造を、便宜的に「直列並流連結スイープ」と称す。
【0066】
比較例5は、実施例1で実施している連結部10への水蒸気の供給を行わない比較例であり、1段目と2段目の各第2処理室6にスイープガスSGとして水蒸気が各別に供給される。各段の第2処理室6からは、透過ガスPGとスイープガスSGの混合ガスMGが外部に排出される。比較例5の連結構造を、便宜的に「直列並流独立スイープ」と称す。
【0067】
比較例6は、比較例1の直列に連結した2つの分離膜モジュール2を分離して並列に配置した比較例である。比較例6の連結構造を、便宜的に「並列並流」と称す。
【0068】
比較例7は、比較例6に対して、各分離膜モジュール2における透過ガスPGと非透過ガスEGの流動方向を逆方向(向流)とした比較例である。比較例7の連結構造を、便宜的に「並列向流」と称す。
【0069】
次に、実施例1及び比較例1~7に対するシミュレーションで使用した各種条件について説明する。
【0070】
1段目の分離膜モジュール2に供給する混合ガスFGは、特定ガスがメタン(CH)である、メタン(CH)とCOと水蒸気(HO)を含む混合ガスであり、ドライベースでのCHとCOと配分比(mol%)は、CH:CO=60:40である。また、当該混合ガスFGの相対湿度RHFin(初期値)及び温度Tは80%と110℃である。CO分離膜3の有効膜面積は、10m/モジュールである。各分離膜モジュール2の第1処理室5内の圧力PF(絶対圧)及び第2処理室6内の圧力PS(絶対圧)は、750kPa及び101.3kPa(大気圧)である。分離膜モジュール2間での圧力損失は無視した。
【0071】
2段目の分離膜モジュール2から排出される非透過ガスEG中のメタン濃度(「回収メタン濃度」と称す)が80mol%になるときの実施例1及び比較例1~5の1段目の分離膜モジュール2に供給する混合ガスFGの供給ガス流量をF(dryNm/h)とし、比較例6及び7では、2つの分離膜モジュール2にそれぞれ供給する混合ガスFGのガス流量をF/2(合計のガス流量をF)とする。また、実施例1及び比較例1~7の1段目の分離膜モジュール2に供給する混合ガスFG中の水蒸気流量をLF(kg/h)、実施例1の連結部10に供給する水蒸気流量をLM(kg/h)、比較例4及び5のスイープガスSGとして供給する水蒸気流量をLS(kg/h)とする。但し、水蒸気流量LMは、1段目の分離膜モジュール2から排出される非透過ガスEGの相対湿度を、上記相対湿度RHFin(80%)にまで戻すのに必要な水蒸気流量として与えられる。また、水蒸気流量LSは、水蒸気流量LMと同じに設定した。
【0072】
従って、実施例1及び比較例1~7における総水蒸気流量L(kg/h)は、下記のように表される。
実施例1: L=LF+LM
比較例4及び5: L=LF+LS
比較例1~3,6,7: L=LF
【0073】
次に、実施例1及び比較例1~7に対して、上記条件でシミュレーションを行い、回収メタン濃度が80mol%になるときの供給ガス流量F(dryNm/h)、及び、総水蒸気流量L/供給ガス流量F(kg/Nm)を求めた。下記の表1にシミュレーション結果をまとめて示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1の供給ガス流量Fと、スイープガスSGを使用しない同じ直列連結型の比較例1~3の供給ガス流量Fを比較すると、成績が大幅に向上していることが分かる。つまり、「直列並流中間加湿」タイプの本分離装置1は、所与の回収メタン濃度の精製メタンガスの単位時間当たりの収量が大きく、精製メタンガスの生産効率が高いことを意味する。これは、本分離装置1の混合ガスFGに対するCO分離性能が高いことを示している。
【0076】
特に、比較例2の「直列並流中間冷却」タイプと比較すると、比較例2においても、連結部10において、非透過ガスEGの相対湿度を上昇させる試みがなされているが、10℃程度冷却しただけでは、相対湿度の上昇が少なく、COパーミアンスの低下を十分に抑制できていないことが分かる。これは、比較例1の「直列並流」タイプと比較例2の「直列並流中間冷却」タイプとの対比からも明かである。更に、比較例2において、相対湿度の上昇幅を上げるために、冷却による非透過ガスEGの温度低下を大きくすると、当該温度低下に伴う次段の分離膜モジュール2におけるCOパーミアンスの低下が顕著になるという問題が生じる。
【0077】
実施例1の供給ガス流量Fと、スイープガスSGを使用する同じ直列連結型の比較例4及び5の供給ガス流量Fを比較すると、成績が略同じであることが分かる。つまり、実施例1は、混合ガスFGの処理性能に関しては、比較例4及び5と比較して有意差はない。しかし、本分離装置1で使用する分離膜モジュール2は、第2処理室6内に外部からスイープガスSGを供給するための第2送入口を設ける必要がないため、比較例4及び5で使
用する分離膜モジュール2と比べて構造が簡素化され、例えば、CO分離膜3の形状を平膜の平板型から変形し、それに応じて第1処理室5及び第2処理室6の形状も大幅に変形させる場合等において、設計の自由度において有利となる。
【0078】
実施例1の供給ガス流量Fと、並列型の比較例6及び7の供給ガス流量Fを比較すると、成績が大幅に向上していることが分かる。つまり、「直列並流中間加湿」タイプの本分離装置1は、並列型の連結構造と比較しても、所定の回収メタン濃度の精製メタンガスの単位時間当たりの収量が大きく、精製メタンガスの生産能力が高いことを意味する。これは、本分離装置1の混合ガスFGに対するCO分離性能が高いことを示している。
【0079】
尚、比較例6及び比較例7を比較すると、「向流」タイプは、「並流」タイプと比べて著しく成績が劣っており、「向流」に起因する相対湿度低下の影響が顕著であることが分かる。このため、本分離装置1は「並流」タイプの分離膜モジュール2を採用している。
【0080】
[第2実施形態]
次に、本分離装置1を利用して構成される燃焼システム20について、図5を参照して説明する。図5に、燃焼システム20の要部構成を模式的に示す。燃焼システム20は、本分離装置1、及び、燃焼装置21を備えて構成される。
【0081】
本実施形態では、本分離装置1の1段目の分離膜モジュール2の第1処理室5内に供給される混合ガスFGとして、有機物のメタン発酵により生成されたバイオガスに由来する成分を含む混合ガスであって、メタン(CH)とCOと水蒸気(HO)を含む混合ガスを想定する。以下、1段目の分離膜モジュール2に供給される混合ガスFGを、「原料ガスFG1」と称し、2段目以降の分離膜モジュール2の第1処理室5内に供給される混合ガスFGと区別する。
【0082】
本分離装置1は、原料ガスFG1からCOを除去し、最終段の分離膜モジュール2から、高純度のメタンを含む非透過ガスEGを燃焼装置21に供給することができる。最終段の分離膜モジュール2から排出される非透過ガスEGのメタン濃度(回収メタン濃度)は、原料ガスFG1のガス供給流量及びガス供給圧の調整、及び、水蒸気供給部11による原料ガスFG1及び各連結部10における非透過ガスEGの相対湿度の調整等の各種パラメータの調整によって、所期の高濃度となるように制御することができる。
【0083】
燃焼装置21は、例えばガスエンジンやガスタービン等であり、供給された非透過ガスEGに含まれる高純度メタンの燃焼反応による熱エネルギを、運動エネルギや電力等のエネルギに変換する。燃焼装置21は、メタンの燃焼に適合するものであれば、特定の燃焼装置に限定されるものではない。
【0084】
原料ガスFG1中のバイオガス由来の成分のうち、硫化水素、シロキサン等の不純物は、図示していない既存の脱硫装置、活性炭吸着方式のシロキサン除去装置等を用いて、予め取り除かれている。脱硫装置としては吸収液を用いた湿式脱硫法や酸化亜鉛や酸化鉄等の硫黄吸着材を用いた吸着脱硫方式が使用できる。また銅亜鉛系の超高次脱硫触媒を用いればppbレベル以下まで完全に硫黄を除去することができる。本分離装置1の分離膜モジュール2で用いるCOキャリアの種類やその濃度によっては、硫化水素の影響を受けることがあるため、超高次脱硫触媒を用いるのが好ましい。
【0085】
本分離装置1の一部として設けられている水蒸気供給部11は、第1実施形態において説明したように、主として連結部10に水蒸気を供給するためのものであるが、原料ガスFG1中の水蒸気が少なく、原料ガスFG1の相対湿度が、所定値(例えば、50%~80%の範囲内で設定、一例として70%)未満の場合、水蒸気供給部11から、原料ガスFG1に対して水蒸気を供給し、相対湿度が上記所定値以上となるように制御するのが好ましい。図5において、当該水蒸気の供給路を点線で示す。この場合、原料ガスFG1の流路上に図示しない湿度計を配置し、湿度計の計測値に基づいて、水蒸気供給部11が原料ガスFG1に対して水蒸気を供給する。
【0086】
本実施形態では、本分離装置1の1段目の分離膜モジュール2の第1排出口8と燃焼装置21のガス供給口の間のガス流路に、燃焼装置21に供給される非透過ガスEGに含まれる水蒸気を除去するための水蒸気除去部22が介装されている。
【0087】
水蒸気除去部22で除去された水蒸気は、水蒸気として回収することにより、図5に例示するように、水蒸気供給部11において、連結部10に供給する水蒸気として再利用可能である。
【0088】
更に、図示していないが、本分離装置1の各段の分離膜モジュール2の各第2排出口9から排出される透過ガスPGをまとめて回収または再利用する装置に供給する場合は、透過ガスPGのガス流路に、別の水蒸気除去部を設け、透過ガスPG中の水蒸気を回収し、水蒸気供給部11において、連結部10に供給する水蒸気として再利用しても良い。
【0089】
更に、水蒸気除去部22、及び、透過ガスPGのガス流路に設けた水蒸気除去部において、非透過ガスEG及び透過ガスPG中の水蒸気を、水蒸気として回収するのではなく、水として回収する場合は、別途エネルギーを消費するが、回収した水を加熱して水蒸気を生成して、水蒸気供給部11において利用してもよい。この場合、加熱用の熱源として、燃焼装置21におけるメタンの燃焼により生成された高温の排気ガスを利用できる。
【0090】
以上、本実施形態で説明した燃焼システム20によれば、例えば、燃焼装置21としてガスエンジンを使用する場合において、燃焼システム20に供給される燃料としてメタン濃度の変動が大きいバイオガスを使用する場合であっても、ガスエンジンには、メタン濃度の変動の抑制された高純度メタンガスを供給できるため、複雑なエンジン調整作業の必要なく安定した出力を得ることが可能で、小型化・高出力化を望める。
【0091】
[別実施形態]
以下に、別実施形態について説明する。
【0092】
〈1〉 上記実施形態では、分離膜モジュール2の複数段(m段:mは2以上の整数)を直列に連結した分離膜モジュール列において、各分離膜モジュール2は、図1に示すような1台の分離膜モジュール2を想定した。しかし、各段の分離膜モジュール2は、2以上の分離膜モジュール2を並列に連結して構成しても良く、これにより、分離膜モジュール2の1段当たりの有効膜面積を大きくして、本分離装置1の処理能力を増大させても良い。この場合、各段において、2以上の分離膜モジュール2の各第1送入口7は相互に連結し1つの第1送入口7とし、2以上の分離膜モジュール2の各第1排出口8も相互に連結し1つの第1排出口8とし、当該2以上の分離膜モジュール2が1つの分離膜モジュール2として機能する。
【0093】
〈2〉 上記実施形態では、分離膜モジュール2のCO分離膜3の形状として、図1及び図2に示すように、平膜状のCO分離膜3をそのままの形状で使用する平板型を例示したが、CO分離膜3を円筒状の2層乃至4層構造とする円筒型、2層乃至4層構造の平膜状の1または複数枚のCO分離膜3をスパイラル状に複数回巻いた形状とするスパイラル型、或いは、2層乃至4層構造の平膜状の1または複数枚のCO分離膜3を蛇腹状に折り畳んだ形状とするプリーツ型、等の平板型以外の形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るCO分離装置及びCO分離方法は、二酸化炭素を選択的に分離する分離膜モジュールを複数段直列に連結して使用し、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に分離することに利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1: CO分離装置
2: 分離膜モジュール
3: CO分離膜
4: 筐体
5: 第1処理室
6: 第2処理室
7: 第1送入口
8: 第1排出口
9: 第2排出口
10: 連結部
11: 水蒸気供給部
20: 燃焼システム
21: 燃焼装置
22: 水蒸気除去部
FG: 混合ガス
FG1: 原料ガス
EG: 非透過ガス
PG: 透過ガス
SG: スイープガス
MG: 透過ガスとスイープガスの混合ガス
図1
図2
図3
図4
図5