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特許7681489ナースコールシステム、および状態判断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】ナースコールシステム、および状態判断システム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20250515BHJP
   A61G 7/043 20060101ALI20250515BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20250515BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20250515BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20250515BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20250515BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
A61G12/00 E
A61G7/043
H04N7/18 D
G08B25/00 510M
H04M9/00 D
A61B5/00 102C
G08B25/04 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021161653
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051152
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 憲一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 徹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 進吾
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴之
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071004(JP,A)
【文献】特開2014-166197(JP,A)
【文献】特開2016-059704(JP,A)
【文献】特開2004-275527(JP,A)
【文献】特開2015-132963(JP,A)
【文献】特開2019-067422(JP,A)
【文献】特開2014-090913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61G 7/043
H04N 7/18
G08B 25/00
H04M 9/00
A61B 5/00
G08B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と、ナースステーションに設置されて前記ナースコール子機による呼び出しに応答するためのナースコール親機とを有するナースコールシステムであって、
前記ベッド上の前記患者を前記ベッドの上方から撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像を解析して、前記患者の状態変化を検出し、前記状態変化が発生した場合には注意状態発生信号を出力する状態判断部と、
を備え、
前記ナースコール親機は、前記注意状態発生信号を受けて報知動作を実行する報知部を有し、
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、第一モードで前記状態変化を検出し、前記状態変化が第一条件を満たす場合には、前記第一モードとは異なる第二モードで前記状態変化を検出するかを前記看護師へ確認するよう構成されている、ナースコールシステム。
【請求項2】
前記第一条件は、前記状態変化の一定時間内での検出回数が所定の閾値範囲を外れた場合を含む、請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記状態判断部は、前記第一モードでは、前記患者のベッド上での移動を検出して、前記移動が前記ベッド上の所定範囲を超えたことを検出した場合に前記状態変化が発生したと判断する、請求項1または2に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
前記第一モードでの前記状態変化の発生は、前記患者の頭部又は身体の向きがベッドの外側を向いた状態を含む、請求項3に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
前記状態判断部は、前記第二モードでは、前記患者が上半身を起こした状態、前記患者が前記ベッドの端に腰かけた状態、及び前記患者がベッド上から離れた状態のうち少なくとも一つの発生を検出した場合に前記状態変化が発生したと判断する、請求項3または4に記載のナースコールシステム。
【請求項6】
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、前記状態変化が第二条件を満たす場合には、前記第一モード及び前記第二モードとは異なる第三モード、第四モードで前記状態変化を検出するよう構成され、
前記第二モードでの前記状態変化は、前記患者が上半身を起こした状態を含み、
前記第三モードでの前記状態変化は、前記患者が前記ベッドの端に腰かけた状態を含み、
前記第四モードでの前記状態変化は、前記患者がベッド上から離れた状態を含む、請求項3または4に記載のナースコールシステム。
【請求項7】
ベッド上の人物を前記ベッドの上方から撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像を解析して、前記人物の状態変化を検出し、前記状態変化が発生した場合には注意状態発生信号を出力する状態判断部と、
前記注意状態発生信号を受けて報知動作を実行する報知部と、
を備えた状態判断システムであって
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、第一モードで前記状態変化を検出し、前記状態変化が所定の条件を満たす場合には、前記第一モードとは異なる第二モードで前記状態変化を検出するかを前記状態判断システムのユーザへ確認するよう構成されている、状態判断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステム、および状態判断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド上の患者や被介護者が起き上がろうとしたり、ベッド上から離れる等の自発行動時に、ベッドからの転落や転倒などの危険性がある。
そのため、特許文献1や特許文献2では、ベッド上の患者をカメラにて撮像し、その撮像画像から患者が上半身を起こした状態や患者がベッド上から離れた状態を検出した場合に、廊下灯からナースコール親機に注意状態発生信号を出力し、ナースコール親機の表示部に患者映像を表示するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-090913号公報
【文献】特開2016-059704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、入院直後の患者に対して特許文献1や特許文献2に開示のような見守り動作を実行する場合には、患者の状態や行動範囲などが十分に把握できていないため、適切な監視モードが決定できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、患者の状態に応じた適切な監視モードを決定可能なナースコールシステムおよび状態判断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のナースコールシステムは、
ベッドに設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と、ナースステーションに設置されて前記ナースコール子機による呼び出しに応答するためのナースコール親機とを有するナースコールシステムであって、
前記ベッド上の前記患者を前記ベッドの上方から撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像を解析して、前記患者の状態変化を検出し、前記状態変化が発生した場合には注意状態発生信号を出力する状態判断部と、
を備え、
前記ナースコール親機は、前記注意状態発生信号を受けて報知動作を実行する報知部を有し、
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、第一モードで前記状態変化を検出し、前記状態変化が第一条件を満たす場合には、前記第一モードとは異なる第二モードで前記状態変化を検出するかを前記看護師へ確認するよう構成されている。
【0007】
この構成によれば、患者の状態に応じた適切な監視モードを決定可能なナースコールシステムを提供できる。これにより、患者のベッドからの転落や転倒をより確実に防止することができる。
【0008】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記第一条件は、前記状態変化の一定時間内での検出回数が所定の閾値範囲を外れた場合を含んでもよい。
【0009】
第一モードでの状態変化の検出回数が多すぎる場合に、異なるモードでの状態変化の検出を開始するかを看護師へ確認することで、より適切な監視モードで見守り動作を実行できる。
【0010】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記状態判断部は、前記第一モードでは、前記患者のベッド上での移動を検出して、前記移動が前記ベッド上の所定範囲を超えたことを検出した場合に前記状態変化が発生したと判断してもよい。
【0011】
この構成によれば、第一モードとして、厳しい監視モードであるベッド端移動検知モードを採用することで、患者の状態を細やかに監視できる。
【0012】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記第一モードでの前記状態変化の発生は、前記患者の頭部又は身体の向きがベッドの外側を向いた状態を含んでもよい。
【0013】
この構成によれば、患者のベッド端への移動に加えて、患者が外を向いているかどうかを検出することで、誤検知の少ない高精度な検出を実現できる。
【0014】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記状態判断部は、前記第二モードでは、前記患者が上半身を起こした状態、前記患者が前記ベッドの端に腰かけた状態、及び前記患者がベッド上から離れた状態のうち少なくとも一つの発生を検出した場合に前記状態変化が発生したと判断してもよい。
【0015】
この構成によれば、第二モードとして、ベッド端移動検知モードよりも監視の緩い起き上がりモードや、端座位検知モード、あるいは離床検知モードを採用することで、その患者にとってどの監視モードが適切であるかを看護師が決定することに役立てられる。
【0016】
また、本発明のナースコールシステムにおいて、
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、前記状態変化が第二条件を満たす場合には、前記第一モード及び前記第二モードとは異なる第三モード、第四モードで前記状態変化を検出するよう構成され、
前記第二モードでの前記状態変化は、前記患者が上半身を起こした状態を含み、
前記第三モードでの前記状態変化は、前記患者が前記ベッドの端に腰かけた状態を含み、
前記第四モードでの前記状態変化は、前記患者がベッド上から離れた状態を含んでもよい。
【0017】
この構成によれば、第二モードとして、ベッド端移動検知モードよりも監視の緩い起き上がりモード、第三モードとして、起き上がりモードよりも監視の緩い端座位検知モード、第四モードとして、端座位検知モードよりもさらに監視の緩い離床検知モードを採用することで、適切な監視モードの決定にさらに寄与できる。なお、第二条件としては、例えば、起き上がりモードや端座位検知モードでの一定時間内での検出回数が閾値以上である場合が考えられる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、本発明の状態判断システムは、
ベッド上の人物を前記ベッドの上方から撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像を解析して、前記人物の状態変化を検出し、前記状態変化が発生した場合には注意状態発生信号を出力する状態判断部と、
前記注意状態発生信号を受けて報知動作を実行する報知部と、
を備え、
前記状態判断部は、前記撮像画像に基づいて、第一モードで前記状態変化を検出し、前記状態変化が所定の条件を満たす場合には、前記第一モードとは異なる第二モードで前記状態変化を検出するかを判断するよう構成されている。
【0019】
この構成によれば、ベッド上の人物の状態に応じた適切な監視モードを決定可能な状態判断システムを提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、患者の状態に応じた適切な監視モードを決定可能なナースコールシステムおよび状態判断システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るナースコールシステムの構成図である。
図2図1のナースコールシステムが備えるカメラの配置を示す概略図である。
図3図1のナースコールシステムが備えるカメラの機能ブロック図である。
図4図1のナースコールシステムが備えるナースコール親機の機能ブロック図である。
図5】本実施形態におけるナースコールシステムの見守り動作を実行するためのフローチャートである。
図6図5のフローチャートに引き続き実行される動作を示すフローチャートである。
図7】患者の状態変化を判断する際のカメラによる撮像画像の一例を示した図である。
図8】患者がベッド端に移動した状態での撮像画像の一例を示した図である。
図9】ナースコール親機の表示部に、カメラから送信された患者の映像が表示された状態を示す図である。
図10図9の表示部において、検知モードを変更するか否かを決定するための操作画面が表示された状態を示す図である。
図11】患者の離床を検知させる際の撮像画像の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るナースコールシステムについて図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るナースコールシステム100の一例を示す構成図である。図1に示すように、ナースコールシステム100は、病室のベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出して通話するためのナースコール子機1と、各病室の出入口に設置されて患者からの呼出発生を報知する表示灯2aと患者名表示部2bとを備え廊下灯2と、ナースステーションに設置されて患者からの呼び出しを受けて応答するためのナースコール親機3と、機器間の通信を制御する制御機4とを備えている。ナースコールシステム100は、さらに、ベッド毎に設置されて患者を撮像するカメラ5と、看護師が携行して患者からの呼び出しに応答するための携帯端末6と、基地局8を介して携帯端末6の通信を管理する交換機7とを備えている。
【0024】
廊下灯2、ナースコール親機3、制御機4、カメラ5等はそれぞれHUB10を介してLAN接続され、ナースコール子機1は病室毎に廊下灯2に伝送線L1を介して接続されている。また、交換機7は伝送線L2を介して制御機4に接続されている。
【0025】
ナースコール子機1は、呼出ボタン1aと壁面に設置されたプレート子機1bを有している。プレート子機1bは、呼出ボタン1aの接続部及び看護師と通話するための通話部を備えている。
【0026】
図2は、カメラ5の配置を示す概略図である。図2に示すように、カメラ5は、ベッド9の上方に、詳しくはベッド9に伏した状態の患者Mの頭部の上方壁面に設置され、患者の頭部を中心に撮像するように設置されている。
【0027】
図3は、カメラ5の機能ブロック図を示す。図3に示すように、カメラ5は、カメラ5を制御するカメラCPU21と、撮像画像から患者の状態を判定する状態判断部22と、各種情報を記憶する記憶部23と、他のナースコール機器とHUB10を介してLAN接続するための通信インターフェース(通信IF)24と、撮像部25と、照明部26と、を備えている。
【0028】
カメラCPU21は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、プロセッサとメモリを含むマイクロコントローラと、その他電子回路(例えば、トランジスタ等)を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。メモリは、各種制御プログラム(例えば、人工知能(AI)プログラム等)が記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、ROMに記憶された各種制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0029】
状態判断部22は、カメラ5の撮像画像から、患者の状態変化を検出する。患者の状態変化は、撮像画像に基づいて患者の形状を抽出することで、判断される。患者の形状を抽出するアルゴリズムとして、例えば公知の動体検出手法や、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)、或いはSURF(Speeded-Up Robust Features)による特徴量を使用した識別方法等を用いてもよいし、Deep Learningを用いてもよい。
あるいは、状態判断部22は、カメラ5によって撮像された画像から、その画像に映る患者の人体骨格に関する情報を検出することで、患者の状態変化を判断してもよい。具体的には、状態判断部22は、撮像画像に基づいて、患者の骨格及び関節を推定する。骨格及び関節を推定する手法としては、例えば、既存の骨格トラッキング技術を利用できる。なお、状態判断部22は、対象人物の骨格及び関節のうちの一方を骨格情報として推定するようにしてもよい。
【0030】
記憶部23は、患者の状態を判断するためのデータベースとしての学習データや設定値等を記憶する。
なお、図3の例では、状態判断部22及び記憶部23は、カメラCPU21とは別に設けられているが、カメラCPU21が状態判断部22及び記憶部23の機能を備える構成としてもよい。
【0031】
撮像部25は、例えば、赤外線も透過するフィルタを設けたカメラモジュールで構成されている。照明部26は、例えば、赤外LED等の発光素子で構成されている。
【0032】
図1に示すように、ナースコール親機3は、患者と通話したり放送するためのハンドセットや報音部を備えた通話部3aと、各種情報を表示する表示部3bと、個々の患者の患者情報表示部Kが一覧表示されたボード部3cとを有している。表示部3bは例えば7型の液晶モニタが使用され、通話部3aの近傍に配置されている。
【0033】
図4は、ナースコール親機3の主要部の機能ブロック図を示している。図4に示すように、ナースコール親機3は、ナースコール親機3全体を制御する親機CPU31と、映像処理部32と、表示部3bに組み付けられた操作部としてのタッチパネル33と、設定部34と、を備えている。ナースコール親機3は、さらに、情報記憶部35と、音声処理部37と、通知灯38と、通信インターフェース(通信IF)39とを備えている。
【0034】
映像処理部32は、表示部3bに表示する画像或いは映像を制御する。具体的には、映像処理部32は、カメラ5で撮像されたベッド上の患者Mの映像を処理して表示部3bに表示する表示画像を生成する。
【0035】
タッチパネル33は、表示部3bに対する看護師による操作を受け付け可能である。タッチパネル33は、例えば、状態判断部22が検出するベッド上の所定範囲を設定することが可能な設定部34、あるいは表示部3bに表示される患者画像の表示範囲を変更することが可能な設定部34として機能する。
【0036】
情報記憶部35には、ナースコール子機1とカメラ5との対応関係に関する情報、各種設定情報、さらには、患者映像等が記憶される。具体的には、情報記憶部35は、ナースコール子機1とベッド番号の対応テーブル、ナースコール子機1と患者の対応テーブル、担当看護師テーブル、患者氏名や性別等の患者情報、ナースコール子機1とカメラ5の対応テーブル等を記憶している。
【0037】
音声処理部37は、通話部3aで報音する或いは通話部3aから入力される音声信号を処理する。通知灯38は、ボード部3cに設けられて呼出元を発光して通知する。通信IF39は、他のナースコール機器とLAN接続するためのインターフェースである。
【0038】
上記のように構成されたナースコールシステム100の動作について、図5図11を参照して、以下において詳細に説明する。なお、ナースコール子機1の呼出操作を受けて廊下灯2が報知動作し、ナースコール親機3或いは携帯端末6で応答する動作は従来と同様であるため説明を省略し、患者の撮像映像に基づいて患者の状態変化を判断し患者を見守る見守り動作を中心に説明する。図5及び図6は、本実施形態における見守り動作を実行するためのフローチャートである。なお、以下で説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。また、各装置が実行する処理は、矛盾の生じない範囲で、他の装置によって実行されてもよい。
【0039】
図5に示すように、まず、看護師によるタッチパネル33の所定の操作で、当該カメラ5が設置された対象の患者に対して見守り動作の開始を設定する(ステップS1)。
【0040】
ステップS1での見守り動作の開始の設定を受けて、親機CPU31は、見守り設定された患者に関連付けられているカメラ5を常時撮像状態とするとともに、状態判断部22を起動する(ステップS2)。
【0041】
次に、起動された状態判断部22は、撮像部25により撮像された映像に対し、記憶部23が記憶している学習データに基づいて、ベッド端移動検知モードでの検出動作を開始する(ステップS3)。図7は、患者の状態変化を判断する際のカメラ5による撮像画像の一例を示した図である。図8は、患者がベッド端に移動した状態での撮像画像の一例を示した図である。本例においては、状態判断部22は、ベッドに伏した状態(即ち仰臥位状態や側臥位状態)であった患者がベッド内にて端に移動した状態であるか否かを判断する。患者がベッドに伏した状態であるかは、例えば撮像画像内における患者の頭部の位置から判断される。すなわち、図7に示すように、撮像画像の下側の所定領域内に患者Mの頭部が位置する場合に、患者がベッドに伏した状態であると判断できる。患者Mがベッド端に移動したかどうかについても、例えば撮像画像内における患者Mの頭部の位置から判断される。すなわち、図8に示すように、患者Mの頭部がベッド端に移動した場合に、患者がベッド端に移動した状態であると判断できる。
【0042】
次に、ベッド端移動検知モードにおいて、状態判断部22は、患者がベッド端に移動したか否かを検出する(ステップS4)。ステップS4において、患者がベッド端に移動したことが検出された場合には(ステップS4のYes)、状態判断部22は、注意状態発生信号をナースコール親機3及び制御機4に対して出力し、合わせてカメラ5の撮像画像(患者映像)をナースコール親機3に送信する(ステップS5)。具体的には、状態判断部22は、患者がベッド端に移動したと判断したら、ナースコール親機3へ、注意状態発生信号(第一信号の一例)を出力するとともに当該患者の撮像画像(患者映像データ)を送信する。
【0043】
次に、注意状態発生信号を受信したナースコール親機3は、通話部3aが備える報音部から警報音を報音する(ステップS6)。報音部から警報音を報音するとともに、通知灯38を発光させて注意状態の発生を報知してもよい。
【0044】
次に、ナースコール親機3は、親機CPU31の制御で信号に含まれるカメラID情報を読み取り、情報記憶部35を参照して通知元の患者を特定し、特定した患者の患者情報を表示部3bに表示し、送信された映像を表示部3bに表示する(ステップS7)。また、ナースコール親機3は、カメラ5から送信された患者映像データを情報記憶部35に保存する。
【0045】
図9は、表示部3bに、カメラ5から送信された患者の映像が表示された状態を示す図である。図9に示すように、表示部3bには、病室番号P1や患者氏名P2、更には診療科目P3等の発生元情報が表示される発生元情報表示部D1、患者の映像が表示される映像表示部D2、更にメッセージ表示部D3等の表示エリアが設けられている。メッセージ表示部D3には、例えば「注意行動が発生しました」と表示され、注意状態発生により映像が表示されていることが表示される。
なお、図9における映像表示部D2に表示されている映像は、患者のベッド端への移動が検出された場合のカメラ5による撮像画像である。また、表示部3bの画面の右側には自動で開始される録画映像の操作ボタンD4が配置されている。
【0046】
次に、状態判断部22は、一定時間内におけるベッド端への移動の検出回数が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS8)。ステップS8において、ベッド端への移動の検出回数が閾値以上ではない、すなわち閾値よりも少ないと判断された場合には(ステップS8のNo)、状態判断部22は、処理をステップS4へと戻し、ベッド端移動検知モードでの検出動作を継続する。
【0047】
一方、ステップS8において、一定時間内におけるベッド端への移動の検出回数が閾値以上であると判断された場合には(ステップS8のYes)、状態判断部22は、検知モードを変更するか否かを決定するためのモード変更の要否を判断するためのモード確認信号をナースコール親機3へと送信する(ステップS9)。
【0048】
次に、モード確認信号を受信したナースコール親機3は、呼出しの応答終了後に、表示部3bに、検知モードを変更するか否かを決定するためのモード変更画面を表示する(ステップS10)。図10は、検知モードを変更するか否かを決定するためのモード変更画面が表示された状態の表示部3bを示す図である。図10に示すように、ステップS10においては、例えば、メッセージ表示部D3に「1時間に10回の検知が発生しました。検知モードを変更しますか?」というメッセージと、「起き上がり検知モードに変更する」と表示されたモード変更ボタンB1と、「変更せず行動把握を続ける」と表示されたモード非変更ボタンB2と、「今のベッド端移動検知モードで確定する」と表示されたモード非変更ボタンB3が表示される。
【0049】
次に、ナースコール親機3は、看護師等によりモード変更ボタンB1~B3がタッチ操作等されたか否かを検出する(ステップS11)。看護師によりモード変更ボタンB1、B3がタッチ操作されていない、あるいはモード非変更ボタンB2がタッチ操作された場合には(ステップS11のNo1)、ナースコール親機3は、状態判断部22へ検知モードを変更しない旨の信号を送信し、これにより、状態判断部22は、処理をステップS4へと戻してベッド端移動検知モードでの検出動作を継続する。
【0050】
一方で、看護師によりモード変更ボタンB1がタッチ操作等された場合には(ステップS11のYes)、状態判断部22は、起き上がり検知モードでの検出動作を開始する(ステップS12)。すなわち、状態判断部22は、検知モードを、ベッド端移動検知モードから起き上がり検知モードへと変更する。また、看護師によりモード非変更ボタンB3がタッチ操作等された場合には(ステップS11のNo2)、状態判断部22は、ベッド端移動検知モードで確定させ(ステップ13)、それ以降はモード変更画面を表示させない。
【0051】
次に、図6に示すように、起き上がり検知モードにおいて、状態判断部22は、患者が起き上がった状態であるかを検出する(ステップS14)。患者が起き上がった状態であるかは、患者がベッド上に伏した状態から上半身を起こした状態を検出したことで起き上がり動作が発生と判断する。
ステップS14において、患者が起き上がった状態であることが検出された場合には(ステップS14のYes)、状態判断部22は、注意状態発生信号をナースコール親機3及び制御機4に対して出力し、合わせてカメラ5の撮像画像(患者映像)をナースコール親機3に送信する(ステップS15)。
【0052】
次に、注意状態発生信号を受信したナースコール親機3は、通話部3aが備える報音部から警報音を報音するとともに、カメラ5から送信された撮像画像を表示部3bに表示する(ステップS16)。
【0053】
次に、状態判断部22は、一定時間内における患者の起き上がりの検出回数が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS17)。ステップS17において、起き上がりの検出回数が閾値よりも少ないと判断された場合には(ステップS17のNo)、状態判断部22は、状態判断部22は、処理をステップS14へと戻し、起き上がり検知モードでの検出動作を継続する。
【0054】
一方、ステップS17において、一定時間内における起き上がりの検出回数が閾値以上であると判断された場合には(ステップS17のYes)、状態判断部22は、モード確認信号をナースコール親機へと送信し、検知モードを変更すべきか否かを判断する(ステップS18)。検知モードを変更すべきか否かの判断は、上記のステップS9~11と同様に実行される。
【0055】
ステップS18において、検知モードを変更すべきと判断された場合には(ステップS18のYes)、状態判断部22は、端座位検知モードでの検出動作を開始する(ステップS19)。すなわち、状態判断部22は、検知モードを、起き上がり検知モードから端座位検知モードへと変更する。
なお、ステップS18において、看護師によりモード非変更ボタンB3がタッチ操作等された場合には(ステップS18のNo2)、状態判断部22は、起き上がり検知モードで確定させ(ステップ20)、それ以降はモード変更画面を表示させない。
【0056】
次に、端座位検知モードにおいて、状態判断部22は、患者がベッドに腰かけた端座位状態であるかを検出する(ステップS21)。ベッド上の患者がベッドから足を出してベッドに腰掛けた状態であるかは、撮像画像から検出したベッドエリア情報と、撮像画像から推定した患者の姿勢情報とに基づいて判断される。具体的には、状態判断部22は、患者の上半身の特定部位の位置情報として、例えば、首、右骨盤及び左骨盤の3点の位置情報を撮像画像から取得し、当該位置情報とベッドエリア情報を基に、患者が端座位状態であるか否かを判断する。
【0057】
ステップS21において、患者の端座位状態が検出された場合には(ステップS21のYes)、状態判断部22は、注意状態発生信号をナースコール親機3及び制御機4に対して出力し、合わせてカメラ5の撮像画像(患者映像)をナースコール親機3に送信する(ステップS22)。
【0058】
次に、注意状態発生信号を受信したナースコール親機3は、通話部3aが備える報音部から警報音を報音するとともに、カメラ5から送信された撮像画像を表示部3bに表示する(ステップS23)。
【0059】
次に、状態判断部22は、一定時間内における端座位状態の検出回数が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS24)。ステップS24において、端座位状態の検出回数が閾値よりも少ないと判断された場合には(ステップS24のNo)、状態判断部22は、処理をステップS21へと戻し、端座位検知モードでの検出動作を継続する。
【0060】
一方、ステップS24において、一定時間内における端座位状態の検出回数が閾値以上であると判断された場合には(ステップS24のYes)、状態判断部22は、モード確認信号をナースコール親機へと送信し、検知モードを変更すべきか否かを判断する(ステップS25)。検知モードを変更すべきか否かの判断は、上記のステップS9~11と同様に実行される。
【0061】
ステップS25において、検知モードを変更すべきと判断された場合には(ステップS25のYes)、状態判断部22は、離床検知モードでの検出動作を開始する(ステップS26)。すなわち、状態判断部22は、検知モードを、端座位検知モードから離床検知モードへと変更する。患者がベッドから離れた状態(離床状態)であるかの判断は、特定エリアEの外へ患者が移動したか否かに基づいて判断される。すなわち、状態判断部22は、特定エリアEの外へ患者が移動した場合に離床発生と判断する。
なお、ステップS25において、看護師によりモード非変更ボタンB3がタッチ操作等された場合には(ステップS25のNo2)、状態判断部22は、端座位検知モードで確定させ(ステップ27)、それ以降はモード変更画面を表示させない。
【0062】
図11は、離床発生と判断する際の撮像画像の一例を示した図である。図11に示すように、状態判断部22は、画像データにおいて、患者の離床を判断するための特定エリアEを設定する。具体的には、状態判断部22は、ベッド9の輪郭線に沿って4本のラインT1~T4を引き、この4本のラインT1~T4の内側の領域を特定エリアEと設定する。ラインT1~T4の位置は、記憶部23に記憶される。例えば、状態判断部22は、左側のラインT1よりも左側、または右側のラインT2から右側に患者が移動したら離床と判断する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るナースコールシステム100は、ナースコール子機1と、廊下灯2と、ナースステーションに設置されたナースコール親機3と、ベッド上の患者をベッド上方から撮像するカメラ5とを備えている。ナースコールシステム100は、さらに、カメラ5の撮像画像を解析して、患者の状態変化を検出し、状態変化が発生した場合には注意状態発生信号を出力する状態判断部22を備えている。ナースコール親機3は、注意状態発生信号を受けて報知動作を実行する通話部3a(報知部の一例)を有している。状態判断部22は、撮像画像に基づいて、ベッド端移動検知モード(第一モードの一例)で患者の状態変化を検出し、患者の状態変化が所定の条件(第一条件の一例)を満たす場合には、例えば、起き上がり検知モード(第二モードの一例)で状態変化を検出するよう構成されている。当該所定の条件は、ベッド端移動検知モードでの一定時間における患者の状態変化の検出回数が所定の閾値を超えた場合を含む。この構成によれば、患者の状態に応じた適切な監視モードを決定可能なナースコールシステムを提供できる。例えば、第一モードとして最も厳しい監視モードであるベッド端移動検知モードを採用し、このベッド端移動検知モードでの患者の状態変化の検出回数が多すぎる場合に、ベッド端移動検知モードよりも一段緩いモードである起き上がり検知モードでの状態変化の検出を開始することで、適切な監視モードで見守り動作を実行できる。これにより、患者のベッドからの転落や転倒をより確実に防止することができる。
【0064】
上記の実施形態では、最初にベッド端移動検知モードを採用し、ベッド端移動検知モードでの検出回数が閾値以上の場合に、起き上がり検知モード(第二モードの一例)、端座位検知モード(第三モードの一例)、離床検知モード(第四モードの一例)の順で、検知モードを変更していく方法を説明しているが、この例に限られない。例えば、第一モードとして、起き上がり検知モードを採用してもよい。このように、採用中の検知モードによる患者の状態変化の検出回数が所定の閾値範囲を外れた場合、すなわち、採用中の検知モードでの患者の状態変化の検出回数が多すぎる場合に、異なるモードでの状態変化の検出を開始することで、より適切な監視モードで見守り動作を実行できる。
【0065】
なお、上記実施形態では、カメラ5をベッドに伏した状態の患者の頭部上方に設置した場合を説明したが、カメラ5の搭載位置は、ベッドの上方であればよく、例えばベッドに伏した患者の足もとの上方にカメラ5を設置してもよい。ベッドの上方から撮像することで、ベッド周囲に人物が居てもベッド上から撮像した映像は変化しないため、誤動作を防ぐことができる。
【0066】
また、図8に示すように、ベッド端移動検知モードでの患者の状態変化の発生は、患者の頭部又は身体の向きがベッドの外側を向いた状態を含んでもよい。この構成によれば、患者のベッド端への移動に加えて、患者が外を向いているかどうかを検出することで、誤検知の少ない高精度な検出を実現できる。
【0067】
また、上記実施形態においては、状態判断部22をカメラ5に設けているが、この例に限られない。専用のサーバにてカメラ5の映像を常時受信できるよう構成し、そのサーバへ状態判断部22を設けてもよい。
【0068】
また、ナースコール親機3は、ベッド形状に応じて設定される特定エリアEを手動で変更可能な設定部をさらに有してもよい。
【0069】
また、表示部3bの映像表示部D2に表示される患者映像は、1つの映像に限定されるものではなく、注意状態発生信号が複数のカメラ5から重なって送信された場合は、対応する複数の映像を表示部3bに表示させてもよい。
【0070】
なお、状態判断部22から送信された注意状態発生信号を受信した制御機4は、信号に含まれるID情報から、関連付けられている看護師情報及び携帯端末情報をナースコール親機3の情報記憶部35を参照して入手し、読み取った携帯端末6、即ち担当看護師が携行する携帯端末6に対して、注意状態の発生を通知する信号と共に病室番号等の発生元情報、及びカメラ5の撮像画像を送信するようにしてもよい。この場合、制御機4からの信号を受信した携帯端末6は、ナースコール親機3の表示と同様に、表示部6aに発生元情報、患者映像、メッセージを表示する(図示せず)。
【0071】
また、上記実施形態においては、ナースコールシステム100における患者の見守り動作について説明しているが、この例に限られない。例えば、本実施形態における見守り動作は、ベッド上の患者を撮像し、状況に応じて異なるモードにより患者の状態変化を検出して、所定の関係者へ通知する状態判断システムとして構成されてもよい。この場合、状態判断システムは、カメラと、状態判断部及び報知部を備えた制御装置(例えば、コンピュータなど)を組み合わせることで簡易に構成することができる。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0073】
1:ナースコール子機、2:廊下灯、3:ナースコール親機、3a:通話部(報知部の一例)、3b:表示部、3c:ボード部、4:制御機、5:カメラ、6:携帯端末、6a:表示部、7:交換機、8:基地局、9:ベッド、21:カメラCPU、22:状態判断部、23:記憶部、24,39:通信インターフェース(通信IF)、31:親機CPU、32:映像処理部、33:タッチパネル、35:情報記憶部、37:音声処理部、38:通知灯、100:ナースコールシステム
図1
図2
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図11