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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】河川監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20250515BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20250515BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20250515BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
G01P13/00 E
G08B31/00 B
G08B25/00 510M
G08B21/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021198036
(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公開番号】P2023083989
(43)【公開日】2023-06-16
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】落合 亮太
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-047156(JP,A)
【文献】特開2013-171317(JP,A)
【文献】特開2012-194738(JP,A)
【文献】特開2015-049199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0005658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 13/00 ~ 13/04
G08B 23/00 ~ 31/00
G08B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に対して設置されたカメラと、
前記カメラにより撮影された前記河川の画像に対してオプティカルフロー解析を行う画像処理装置と、
前記オプティカルフロー解析の結果と、前記河川の状態に関する閾値とに基づいて、前記河川の氾濫に関する予測を行う河川分析装置とを備え、
前記河川分析装置は、平常時を含む複数の状況に対して前記河川の状態がどのように推移するかを学習した所定の学習モデルを使用して前記オプティカルフロー解析の結果を分析することで、平常時の状況を基準として前記河川の状態に関する閾値を算出し直し、前記河川の状態に関する閾値を変更する機能を有することを特徴とする河川監視システム。
【請求項2】
請求項に記載の河川監視システムにおいて、
前記河川分析装置により前記河川の氾濫が予測された場合に、前記河川の氾濫の予測結果を配信する配信装置を更に備えたことを特徴とする河川監視システム。
【請求項3】
請求項に記載の河川監視システムにおいて、
前記配信装置は、前記河川の氾濫の予測結果として、前記河川の氾濫の予測情報を前記河川の画像に重畳した氾濫予測画像を配信することを特徴とする河川監視システム。
【請求項4】
請求項に記載の河川監視システムにおいて、
前記配信装置は、前記河川の氾濫の予測結果として、前記河川の氾濫による危険エリア情報を地図に重畳した氾濫予測地図を配信することを特徴とする河川監視システム。
【請求項5】
請求項乃至請求項のいずれかに記載の河川監視システムにおいて、
前記配信装置は、前記河川の氾濫の予測結果の配信を、住民が所持する端末装置の位置情報、及び/又は、前記住民の避難先の混雑情報に基づいて制御することを特徴とする河川監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の状態を監視する河川監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の氾濫や堤防の決壊などの災害に対して種々の対策が検討されている。例えば、河川の要所毎の水位を観測し、必要に応じて調整池への水の誘導や付近の住民の避難の要否等を判断することが行われている。ここで、本明細書における「河川」は、自然や人口の河川の他、農業用水路や発電用水路などの特定用途の水路も含まれる。
【0003】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、事前に流速計を用いて計測された河川の流速と、その計測時に撮影された河川映像のオプティカルフローとの対応関係に基づいて、判定時の河川映像のオプティカルフローから河川の流速を算出する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-047156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大雨などによる洪水の激甚化が問題となっている。従来の洪水予測では、観測地点での降雨量、河川の水位の値、気象レーダーによる観測値などの情報を収集し、これら情報に基づいて洪水の発生を予測していた。しかしながら、河川の環境が変化して形状や幅などが変わった場合には、洪水の予測データの正確性が損なわれる懸念があり、また、洪水予測に使用する閾値を設定し直す必要があるために管理が難しくなる懸念もある。更に、既存の技術では、個々の観測地点について収集した情報に基づいて、その地点の将来の状態を予測していたが、観測地点の情報だけでは予測できない災害(例えば、土砂ダムによる鉄砲水の発生など)もある。このため、従来の洪水予測に基づく避難警報に従って避難を行うと、逆に危険な目に遭うという二次災害の可能性もあった。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、河川の氾濫に関する予測を精度よく行うことが可能な河川監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る河川監視システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る河川監視システムは、河川に対して設置されたカメラと、カメラにより撮影された河川の画像に対してオプティカルフロー解析を行う画像処理装置と、オプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の氾濫に関する予測を行う河川分析装置とを備え、河川分析装置は、オプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の状態に関する閾値を変更する機能を有し、当該閾値を用いて河川の氾濫に関する予測を行うことを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明に係る河川監視システムにおいて、河川分析装置は、所定の学習モデルを使用してオプティカルフロー解析の結果を分析することで、河川の状態に関する閾値を算出するように構成され得る。
【0009】
また、本発明に係る河川監視システムにおいて、河川分析装置により河川の氾濫が予測された場合に、河川の氾濫の予測結果を配信する配信装置を更に備えるように構成され得る。
【0010】
また、本発明に係る河川監視システムにおいて、配信装置は、河川の氾濫の予測結果として、河川の氾濫の予測情報を河川の画像に重畳した氾濫予測画像を配信するように構成され得る。
【0011】
また、本発明に係る河川監視システムにおいて、配信装置は、河川の氾濫の予測結果として、河川の氾濫による危険エリアを地図に重畳した氾濫予測地図を配信するように構成され得る。
【0012】
また、本発明に係る河川監視システムにおいて、配信装置は、河川の氾濫の予測結果の配信を、住民が所持する端末装置の位置情報、及び/又は、住民の避難先の混雑情報に基づいて制御するように構成され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、河川の氾濫に関する予測を精度よく行うことが可能な河川監視システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る河川監視システムの構成例を示す図である。
図2図1の河川監視システムによる処理フローの例を示す図である。
図3図1の河川監視システムによる処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る河川監視システムの構成例を示してある。図1の河川監視システムは、上流カメラ10と、下流カメラ15と、画像処理装置20と、河川分析装置30と、配信装置40と、端末装置50とを備えている。これらの装置は、ネットワーク回線を通じて互いに通信可能に接続されている。また、これらの装置は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備え、本発明に係る各機能を実現するためのプログラムをプロセッサが実行するように構成される。
【0016】
上流カメラ10及び下流カメラ15は、監視対象となる河川を撮影するための監視カメラであり、ユーザの操作により又は自動で河川の撮影を行う。上流カメラ10は、河川の上流側の地点に設置されており、下流カメラ15は、河川の下流側の地点に設置されている。なお、本例のように、河川に対して上流カメラ10と下流カメラ15の2つを設置する構成に限定されず、上流カメラ10と下流カメラ15の間の1つ又は複数の地点に中流カメラを追加してもよい。また、河川に対して設ける監視カメラは1つでもよいが、河川の氾濫の予測精度を上げる観点では複数の監視カメラを設けることが好ましい。
【0017】
画像処理装置20は、上流カメラ10や下流カメラ15などの監視カメラにより撮影された河川の画像に対し、オプティカルフローによる画像解析を行う。オプティカルフローは、被写体の移動を捉えてベクトル表現により可視化したものであり、連続する複数フレームの画像を比較・分析することで算出できる。
【0018】
画像処理装置20は、例えば、上流カメラ10により撮影された河川の画像に基づいて上流側の地点でのオプティカルフローを算出し、このオプティカルフローを解析することで、上流側の地点での河川の状態を検出する。河川の状態としては、流速、川幅、流向などが挙げられる。流速は、例えば、特許文献1に記載されるように、オプティカルフローの移動速度に基づいて算出することができる。川幅は、例えば、オプティカルフローが得られる領域の幅に基づいて算出することができる。流向は、例えば、オプティカルフローの向きに基づいて算出することができる。画像処理装置20は、同様の処理を、他の監視カメラ(本例では、下流カメラ15)の画像に対しても行う。
【0019】
更に、画像処理装置20は、後述の河川分析装置30によって河川の氾濫が予測された場合に、その旨を地域住民に報知するための配信用データなどを生成する処理も行う。配信用データとしては、例えば、予測される氾濫を示す氾濫予測情報を河川の画像に重畳した氾濫予測画像や、河川の氾濫による危険エリアを地図に重畳した氾濫予測地図などが挙げられる。河川の画像に重畳する氾濫予測情報は、テキスト形式であってもよく、これを模式化した画像形式であってもよい。氾濫予測地図は、複数の避難経路が想定される場合に、安全な避難経路や危険な避難経路を示す情報を含んでもよい。
【0020】
河川分析装置30は、河川の画像に対するオプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の氾濫に関する予測を行う。オプティカルフロー解析の結果には、河川の画像に基づいて算出されたオプティカルフローや、そのオプティカルフローから検出された河川の状態(流速、川幅、流向など)などが含まれる。河川分析装置30は、例えば、オプティカルフローから検出された河川の状態が、河川の状態に関して設定された閾値を超えた場合に、河川の氾濫が発生する可能性があると予測する。
【0021】
また、河川分析装置30は、河川の画像に対するオプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の状態に関する閾値を算出して、河川の氾濫に関する予測に使用する閾値の設定を変更する機能を有する。すなわち、河川分析装置30は、河川の環境が変化して河川の形状や川幅などが変わった場合を考慮して、河川の氾濫に関する予測に使用する閾値を自動的又は手動で変更する機能を有する。なお、閾値の設定は、例えば定期的(1月程度の頻度)に平常時の状況を基準として再設定するようにしてもよい。これにより、常に最新の河川状況に基づく閾値を設定することができる。
【0022】
河川の氾濫に関する予測に使用する閾値(すなわち、河川の状態に関する閾値)は、閾値の種類(流速、川幅、流向など)に応じて算出する場合、一定期間計測していく中で測定された数値に基づいて設定するものとする。
【0023】
本例では、河川分析装置30は、河川の状況(通常時、増水時、氾濫時など)に対して、川幅や水位、流速、流向などがどのように推移するかについての学習モデルを使用したAI(Artificial Intelligence)によりオプティカルフロー解析の結果を分析することで、河川の状態に関する閾値を算出する。すなわち、河川分析装置30は、AIによる閾値推定を利用して、河川の氾濫に関する予測に使用する閾値を自動的に変更できるように構成されている。
【0024】
河川分析装置30は、河川の氾濫を予測した場合(すなわち、オプティカルフローから検出された河川の状態が閾値を超えた場合)には、予測される氾濫に関する氾濫予測情報を作成し、画像処理装置20へ送信する。氾濫予測情報には、予測される氾濫の位置、規模、時間等が含まれる。
【0025】
なお、河川分析装置30は、オプティカルフローから検出された河川の状態と閾値との比較だけでなく、他の条件に基づいて河川の氾濫の予測を行うことも可能である。例えば、河川分析装置30は、オプティカルフローから検出された流向に基づいて、逆流が発生していると判断された場合に、河川が氾濫すると予測してもよい。このとき、河川の合流地点などの河川の状態の条件も考慮の上で河川の氾濫を予測することにより、より精度の高い予測を行うことができる。また、河川分析装置30は、気象レーダーから取得できる気象情報などの他の情報を更に考慮して、河川の氾濫に関する予測を行ってもよい。
【0026】
配信装置40は、河川分析装置30によって河川の氾濫が予測された場合に、その旨を地域住民に報知するために、画像処理装置20によって作成された配信用データ(氾濫予測画像や氾濫予測地図など)を端末装置50に配信する。配信装置40は、配信用データの配信を、住民が所持する端末装置50の位置情報や住民の避難先の混雑情報に基づいて制御することができる。
【0027】
端末装置50の位置情報は、例えば、端末装置50が有するGPS(Global Positioning System)機能により取得され、配信装置40へ定期的に送信される。避難先の混雑情報は、例えば、避難先に設置された避難所端末により取得され、配信装置40へ定期的に送信される。なお、混雑情報は、避難所端末への入力又は監視カメラの映像により生成することができる。避難所端末からの入力情報は、例えば、避難者の性別や年齢などの個人情報や位置情報、避難状況などを避難所端末へ入力することによりデータベースで管理され、各避難所の混雑状況を把握することができる。また、監視映像による混雑検知方法としては、例えば、国際公開第2018/061976号に開示された方法がある。この方法は、画像処理装置の混雑度推定部が、画像入力部から取得した映像内の混雑状況を推定するものである。
【0028】
端末装置50は、地域住民が所持する端末であり、配信装置40から配信された配信用データを表示することが可能である。本例では、端末装置50(1)~50(N)のN台を想定しているが、端末装置50の台数は任意である。端末装置50としては、携帯電話、タブレット、ラップトップ等の携帯型の端末に限定されず、デスクトップ等の据置型の端末であってもよい。
【0029】
図2に示す処理シーケンスの例を参照して、本例の河川監視システムの動作について説明する。ここでは、監視カメラの設置地点毎に、その監視カメラにより撮影された画像に基づいて河川の氾濫を予測するものとする。
【0030】
上流カメラ10や下流カメラ15などの監視カメラは、監視対象となる河川を撮影し、河川の画像を画像処理装置20へ送信する(ステップS11)。画像処理装置20は、受信した河川の画像に対するオプティカルフロー解析を行って河川の状態(流速、川幅、流向など)を検出し(ステップS12)、オプティカルフロー解析の結果を含む解析データを河川分析装置30へ送信する(ステップS13)。
【0031】
河川分析装置30は、画像処理装置20から受信した解析データに基づき、河川の状態(流速、川幅、流向など)に関する閾値の算出・設定を必要に応じて行った後、河川の氾濫の予測を行う(ステップS14)。その結果、河川の氾濫が発生することが予測された場合、河川分析装置30は、氾濫予測情報を生成して画像処理装置20へ送信する(ステップS15)。
【0032】
画像処理装置20は、河川分析装置30により作成された氾濫予測情報に基づいて、氾濫予測情報を河川の画像に重畳した氾濫予測画像を生成する(ステップS16)。画像処理装置20は更に、河川の氾濫による危険エリアを地図に重畳した氾濫予測地図を生成する(ステップS17)。氾濫予測画像及び氾濫予測地図は、画像処理装置20から配信装置40へ送信される(ステップS18)。
【0033】
配信装置40は、氾濫が予測される地点の位置情報(すなわち、予測に用いた画像を撮影した監視カメラの位置情報)に基づいて、河川の氾濫が予測される旨の報知の要否を地域毎に判定し(ステップS19)、報知が必要と判定された地域の住民の端末装置50へ氾濫予測画像及び/又は氾濫予測地図を配信する(ステップS20)。
【0034】
これにより、氾濫の危険がある地域の住民の端末装置50に、氾濫予測画像や氾濫予測地図を表示させることができる。また、配信装置40は、他の地域の端末装置50からの要求に応じて、その端末装置50へ氾濫予測画像や氾濫予測地図を配信することも可能である。
【0035】
ここで、図2を用いた上記の説明では、監視カメラの設置地点毎に、その監視カメラの画像に基づいて河川の氾濫を予測しているが、他の地点の監視カメラの画像を更に考慮するようにしてもよい。以下、その場合の処理について、図3に示す処理フローの例を参照して説明する。
【0036】
まず、画像処理装置20は、上流カメラ10により撮影された河川の上流地点の画像を受信し(ステップS31)、河川の上流地点の画像に対するオプティカルフロー解析を行う(ステップS32)。次に、河川分析装置30は、オプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の状態(流速、川幅、流向など)に関する閾値の算出・設定を必要に応じて変更した後に、河川の上流地点の状態が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS33)。
【0037】
上記の判定の結果、河川の上流地点の状態が閾値を超えている(すなわち、河川の氾濫が予測される)と判定された場合には、画像処理装置20は、上流カメラ10に係る氾濫予測情報を生成する(ステップS34)。画像処理装置20は更に、上流カメラ10に係る氾濫予測情報や、予め設定された河川情報(上流-下流間の長さ、平常時の川幅等)に基づいて、河川の下流地点についても氾濫の予測を実行し、下流カメラ15に係る氾濫予測情報を更に作成する(ステップS35)。例えば、下流カメラまでの距離や、上流カメラにおいて解析される増水予測情報から、河川の下流地点における氾濫を予測する。このとき、下流カメラ15により撮影された画像に対するオプティカルフロー解析の結果を更に考慮して、河川の下流地点での氾濫の予測を行ってもよい。
【0038】
河川分析装置30により生成された氾濫予測情報は、画像処理装置20へ送信され、画像処理装置20による氾濫予測画像や氾濫予測地図の生成に使用される(ステップS36)。画像処理装置20により生成された氾濫予測画像や氾濫予測地図は、配信装置40による制御の下、地域住民の端末装置50へ配信される(ステップS37)。
【0039】
以上のように、本例の河川監視システムは、監視対象の河川に対して設置された上流カメラ10及び下流カメラ15と、これらカメラにより撮影された河川の画像に対してオプティカルフロー解析を行う画像処理装置20と、オプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の氾濫に関する予測を行う河川分析装置30とを備えている。このように、河川の画像のオプティカルフロー解析の結果に基づいて河川の氾濫に関する予測を行うため、河川の情報を正確に推定して、河川の氾濫に関する予測を精度よく行うことが可能となる。また、オプティカルフロー解析により流向を検知できるため、従来では観測が困難であった逆流による河川の氾濫の予測も可能である。
【0040】
また、本例の河川監視システムでは、河川分析装置30は、オプティカルフロー解析の結果に基づいて、河川の状態に関する閾値を変更する機能を有し、当該閾値を用いて河川の氾濫に関する予測を行うように構成されている。従って、河川の環境が変化して形状や幅などが変わった場合には、河川の氾濫に関する予測に使用する閾値が自動的に変更されるため、河川の氾濫に関する予測の精度が劣化することを抑制することが可能である。
【0041】
また、本例の河川監視システムでは、図3を参照して説明したように、上流カメラ10の画像に対するオプティカルフロー解析の結果を下流カメラ15の地点における河川の氾濫に関する予測に使用するように構成されている。このように、ある地点における河川の氾濫に関する予測を行う際に、別の地点の監視カメラの画像に対するオプティカルフロー解析の結果を考慮することで、従来では予測できない災害(例えば、土砂ダム等による鉄砲水の発生)を予測することが可能である。すなわち、河川状況の時間的予測(同じ地点での未来の氾濫予測)だけでなく、地理的予測(別地点での未来の氾濫予測)を行うことが可能である。
【0042】
また、本例の河川監視システムは、河川分析装置30により河川の氾濫が予測された場合に、河川の氾濫の予測結果として、氾濫予測画像や氾濫予測地図を地域住民の端末装置50へ配信する配信装置40を更に備えた構成となっている。従って、河川の氾濫が予測されたことを、河川付近の地域住民へ速やかに報知することが可能である。また、従来の災害情報や避難情報のみでは、住民に氾濫の信憑性が低いと判断される可能性もあったが、氾濫予測情報を実際の河川の画像に重畳した氾濫予測画像を住民に提供することで、氾濫の危険性を正確に認知させることが可能である。また、避難経路を含む氾濫予測地図を住民に提供することで、住民の避難経路の選定にも役立たせることが可能である。
【0043】
また、本例の河川監視システムでは、配信装置40は、氾濫予測画像や氾濫予測地図の配信を、住民が所持する端末装置50の位置情報や住民の避難先の混雑情報に基づいて制御するように構成されている。このように、位置情報や混雑情報と連動させて配信を行うことで、混雑している避難所を避けることが可能となり、避難後の生活環境も考慮した避難計画を立てることが可能となる。例えば、近隣に避難所が複数ある場合に、住民は端末装置50にて受信した混雑情報に基づき、より適切な避難所への選択が可能となる。また、河川の氾濫予測情報も共に受信するため、氾濫予測情報に基づいて氾濫する河川近辺を迂回して避難所へ移動することも可能となる。また、人流や交通流を考慮して、道路の渋滞予測、電車等の混雑予測、車両の自動運転などへ応用することも可能である。
【0044】
ここで、本例の河川監視システムでは、画像処理装置20と河川分析装置30とを別々の装置として構成しているが、これらを一体化した装置として構成してもよい。また、本例の河川監視システムでは、配信装置40についても同様に、画像処理装置20又は河川分析装置30と一体化した装置として構成してもよい。あるいは、これら装置の機能を複数台の装置に分散して設けてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、河川の状態を監視する河川監視システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:上流カメラ、 15:下流カメラ、 20:画像処理装置、 30:河川分析装置、 40:配信装置、 50(1)~50(N):端末装置

図1
図2
図3