(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】歩行者横断予測方法及び歩行者横断予測装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250515BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021210783
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】方 芳
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
(72)【発明者】
【氏名】武井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 佳奈子
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-003497(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126389(WO,A1)
【文献】特開2021-047644(JP,A)
【文献】特開2009-175871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0300359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されたセンサによって検出された歩行者が道路を横断する尤度を算出するコントローラを備える歩行者横断予測装置の歩行者横断予測方法であって、
前記コントローラは、
前記センサによって検出された歩行者の位置を基準として道路を挟んだ向こう側で送迎車が検出された場合、前記送迎車が停車しているか否か、または停車しようとしているか否かを判定し、
前記送迎車が停車している、または停車しようとしていると判定された場合、前記送迎車が検出されていない場合と比較して、前記尤度を高くする
ことを特徴とする歩行者横断予測方法。
【請求項2】
前記送迎車はバスであり、
前記歩行者は横断歩道の周囲において前記センサによって検出され、
前記バスは前記歩行者の位置を基準として前記歩行者が渡ろうとする横断歩道を挟んだ向こう側で前記センサによって検出され、
前記コントローラは、前記バスが発車するまでの残り時間に応じて前記歩行者が前記横断歩道の横断する尤度を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項3】
前記コントローラは、前記バスが発車するまでの残り時間が短いほど前記尤度を高くする
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項4】
前記コントローラは、前記バスの乗車待ちの人数が少ないほど前記尤度を高くする
ことを特徴とする請求項2または3に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項5】
前記コントローラは、前記バスが発車するまでの残り時間が所定時間以下の場合、前記バスが発車するまでの残り時間が前記所定時間より長い場合と比較して、前記尤度を低くする
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項6】
前記コントローラは、前記バスが発車するまでの残り時間が前記所定時間より長い場合、かつ前記自車両以外に前記歩行者が前記横断歩道を渡ることを待たせる原因となる他車両が検出された場合、前記他車両が検出されない場合と比較して前記尤度を高くする
ことを特徴とする請求項5に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項7】
前記歩行者の顔向き及び歩行に関する加速度は前記センサによって検出され、
前記コントローラは、前記歩行者が前記バスの方向を見ながら加速していると判定された場合、前記加速度に応じて前記尤度を高くする
ことを特徴とする請求項5に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項8】
前記コントローラは、前記加速度の値がプラスからマイナスに変化した後、所定時間以内にマイナスからプラスに変化しない場合、高くした尤度を低くする
ことを特徴とする請求項7に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項9】
前記コントローラは、前記バスが停車している、または停車しようとしていると判定された後、所定時間以内に前記歩行者の加速が検出された場合、前記加速度に応じて前記尤度を高くする
ことを特徴とする請求項7に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項10】
前記コントローラは、算出された尤度が所定値より大きい場合、前記自車両の減速を早める
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の歩行者横断予測方法。
【請求項11】
歩行者を検出するセンサと、
前記センサによって検出された歩行者が道路を横断する尤度を算出するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記歩行者の位置を基準として道路を挟んだ向こう側で送迎車が検出された場合、前記送迎車が停車しているか否か、または停車しようとしているか否かを判定し、
前記送迎車が停車している、または停車しようとしていると判定された場合、前記送迎車が検出されていない場合と比較して、前記尤度を高くする
ことを特徴とする歩行者横断予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者横断予測方法及び歩行者横断予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交差点での右左折時において、車両の右左折後の進行方向及び速度と歩行者の進行方向及び速度とに基づいて両者が交差する可能性を予測する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載された発明において、道路を挟んで送迎車が存在する場合、歩行者が急いで横断歩道を渡るために加速する可能性が考慮されておらず、予測精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、道路を挟んで送迎車が存在する場合において歩行者が道路を横断するか否かを精度よく予測可能な歩行者横断予測方法及び歩行者横断予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歩行者横断予測方法は、歩行者の位置を基準として道路を挟んだ向こう側で送迎車が検出された場合、送迎車が停車しているか否か、または停車しようとしているか否かを判定し、送迎車が停車している、または停車しようとしていると判定された場合、送迎車が検出されていない場合と比較して尤度を高くする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、道路を挟んで送迎車が存在する場合において歩行者が道路を横断するか否かを精度よく予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る歩行者横断予測装置の構成図である。
【
図2】
図2は、尤度の算出方法の一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、加速度閾値と時刻との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、速度閾値と時刻との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、歩行者横断予測装置の一動作例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、尤度の算出方法の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、尤度の算出方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して歩行者横断予測装置の構成例を説明する。
図1に示すように、歩行者横断予測装置は、物体検出装置1と、自車位置推定装置2と、地図データベース3と、コントローラ100とを備える。
【0011】
歩行者横断予測装置は車両(自車両)に搭載される。歩行者横断予測装置は自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、歩行者横断予測装置は自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。また、自動運転機能は操舵制御、制動力制御、駆動力制御などの車両制御機能のうちの一部の機能のみを自動的に制御して運転者の運転を支援する運転支援機能であってもよい。
【0012】
物体検出装置1は、レーザレンジファインダ、レーダ、ライダ、カメラ、ソナーなどの物体検出センサから構成される。物体検出装置1は複数の物体検出センサを用いて自車両の周囲の物体を検出する。物体検出装置1は、他車両、バス、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び横断歩道、バス停などを含む静止物体を検出する。物体検出装置1は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢、大きさ、速度、加速度などを検出する。物体検出装置1は検出された物体に関する情報をコントローラ100に出力する。なお、レーザレンジファインダ、レーダ、ライダ、カメラ、ソナーなどを用いた物体検出方法は周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
自車位置推定装置2は地上における自車両の位置(位置情報)を検出する。自車位置推定装置2は一例としてGPS受信機である。GPS受信機は人工衛星からの電波を受信することにより、地上における自車両の位置情報を検出する。GPS受信機が検出する自車両の位置情報には緯度情報及び経度情報が含まれる。GPS受信機は検出した自車両の位置情報をコントローラ100に出力する。なお、自車両の位置情報を検出する方法は、GPS受信機に限定されない。例えば、自車両の位置はオドメトリと呼ばれる方法を用いて推定されてもよい。オドメトリとは、自車両の回転角、回転角速度に応じて自車両の移動量及び移動方向を求めることにより、自車両の位置を推定する方法である。なおGPS受信機の代わりにGNSS受信機が用いられてもよい。
【0014】
コントローラ100は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、歩行者横断予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは歩行者横断予測装置が備える複数の情報処理回路として機能する。なおここでは、ソフトウェアによって歩行者横断予測装置が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して情報処理回路を構成することも可能である。また複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ100は、複数の情報処理回路の一例として、検出統合部4と、物体追跡部5と、地図内位置推定部6と、行動予測部10と、車両制御部20とを備える。さらに行動予測部10は、歩行者検出部11と、歩行者速度変化検出部12と、顔向き検出部13と、周囲物体検出部14と、送迎車検出部15と、バス発車時刻取得部16と、乗車待ち人数計測部17と、尤度算出部18とに分類される。
【0015】
検出統合部4は、物体検出装置1が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には周知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
【0016】
物体追跡部5は、検出統合部4によって検出された物体を追跡する。具体的には物体追跡部5は異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に物体を追跡する。
【0017】
地図内位置推定部6は、自車位置推定装置2により得られた自車両の絶対位置、及び地図データベース3により取得された地図情報から地図上における自車両の位置を推定する。地図データベース3はカーナビゲーション装置などに記憶されているデータベースであって、道路情報、施設情報など経路案内に必要となる地図情報が記憶されている。道路情報とは、例えば、交差点、道路の車線数、道路境界線、車線の接続関係などに関する情報である。地図データベース3は地図内位置推定部6の要求に応じて地図情報を地図内位置推定部6に出力する。本実施形態では、歩行者横断予測装置が地図データベース3を有するものとして説明するが、必ずしも歩行者横断予測装置が地図データベース3を有する必要はない。地図情報はカメラなどの各種センサにより取得されてもよく、また車車間通信、路車間通信を用いて取得されてもよい。また、地図情報が外部に設置されたサーバに記憶されている場合、歩行者横断予測装置は通信により随時地図情報をサーバから取得してもよい。また、歩行者横断予測装置はサーバから定期的に最新の地図情報を入手して、保有する地図情報を更新してもよい。なお地図データベース3に格納される地図情報は、高精度地図データ(HD MAP)でもよく、通常の地図データ(SD MAP)でもよい。
【0018】
次に
図2~7を参照して行動予測部10の機能の詳細について説明する。
図2に示すシーンは、自車両50が交差点に向かって走行しているシーンである。符号60は歩行者を示す。符号70はバスを示す。符号61~63はバスの到着を待っている者を示す。符号80はバス停を示す。
【0019】
図2に示すように、横断歩道の手前(横断歩道の付近)に歩行者60が居る場合、歩行者60は歩行者検出部11によって検出される(
図5のステップS101)。より詳しくは歩行者検出部11は物体追跡部5から取得したデータを用いて歩行者60を検出する。歩行者60が検出された場合(
図5のステップS101でYES)、歩行者検出部11は歩行者60の歩行速度を検出する(
図5のステップS103)。
【0020】
送迎車検出部15は、歩行者60の位置を基準として道路を挟んだ向こう側において送迎車を検出する。本実施形態において「送迎車」とは多くの旅客を輸送可能な車両であって、例えばバスである。送迎車検出部15は歩行者60の位置を基準として道路を挟んだ向こう側においてバス70を検出したとき、バス70が停車しようとしているか否か、またはバス70が停車しているか否かを判定する(
図5のステップS105)。検出された物体がバスか否かについては、車両の幅、大きさで判定すればよい(
図5のステップS107)。バス70が停車しているか否かについては、検出されたバス70の速度で判定すればよい。具体的には検出されたバス70の速度が0km/hである場合、または0km/hと見なせるほど小さい値である場合、送迎車検出部15はバス70が停車していると判定することができる。バス70が停車しようとしているか否かについて、バス70の側部から道路端までの距離で判定すればよい。具体的にはバス70の側部から道路端までの距離が所定距離以下である場合、送迎車検出部15はバス70が停車しようとしていると判定することができる。別の方法として、バス70が減速しながら道路端に近づく場合、送迎車検出部15はバス70が停車しようとしていると判定してもよい。なおバス70の速度、バス70の側部から道路端までの距離は物体検出装置1によって検出される。送迎車検出部15によって検出された情報はバス発車時刻取得部16に出力される。なお
図2において「バス70が停車している」とは、「バス70がバス停80で停車している」ということを意味する。「歩行者60の位置を基準として道路を挟んだ向こう側」とは、「歩行者60の進行方向における道路を挟んだ向こう側」と表現されてもよい。
【0021】
バス発車時刻取得部16は、送迎車検出部15によって停車しているバス70または停車しようとしているバス70が検出されたとき(
図5のステップS105,107でYES)、検出されたバス70の発車時刻を取得し、現在の時間に近い発車時刻を読み出す(
図5のステップS109)。バス70の発車時刻を取得する方法は特に限定されないが、例えばバス停ごとの発車時刻が記憶装置(不図示)に格納されている場合、バス発車時刻取得部16は記憶装置を参照することによりバス70の発車時刻を取得することができる。あるいはバス70の発車時刻は路車間通信によって取得されてもよい。別の方法として、バス70が停車したことを検出した場合には、予め定められた停車時間から経過時間(バス70が停車を継続している時間)を減算して、バス70が発車するまでの時間を算出してもよい。これらの方法によって、バス70が検出された現在時間からバス70が発車するまでの残り時間が算出される(
図5のステップS111)。
【0022】
バス70が発車するまでの残り時間によって歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度が変わる。本実施形態において「尤度」とはもっともらしさを意味し、高低の概念を有する。例えば「歩行者60が横断歩道を渡る尤度が高い」とは、「歩行者60が横断歩道を渡る可能性が高い」ことを意味する。
図2のシーンにおいてバス70が発車するまでの残り時間が長い場合を考える。この場合、歩行者60は自車両50が横断歩道を通過するのを待ってから横断歩道を横断してもバス70の乗車に間に合う。よってこの場合、歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は低く算出される。一方、バス70が発車するまでの残り時間が短い場合、自車両50が横断歩道を通過するのを待つとバス70の乗車に間に合わなくなる。よってバス70が発車するまでの残り時間が短いほど、歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は高く算出される。ただし、バス70が発車するまでの残り時間が短すぎて、残り時間が所定時間以下(一例として3秒以下)の場合、歩行者60が急いで横断歩道を渡ることをあきらめる可能性が高い。この場合歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は低く算出される。尤度の算出は尤度算出部18によって行われる。なお「尤度が高く算出される」、「尤度が低く算出される」とは一例としてその原因となる事象が存在しない場合と比較して、ということを意味する。また、「歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度」は単に「歩行者60が横断歩道を渡る尤度」と言い換えられてもよい。
【0023】
乗車待ち人数計測部17は、バス70の乗車待ちの人数を計測する(
図5のステップS113)。「バス70の乗車待ちの人数」とは、バス停80でバス70の到着を待っている人数である(
図2では符号61~63の3人である)。乗車待ち人数計測部17は物体検出装置1によって検出された情報を用いてバス70の乗車待ちの人数を計測する。一般的なバスの運用においてバス70は全員が乗車した後に発車するため、乗車待ちの人数が多いほど歩行者60に残された時間は長い。逆に言えば、乗車待ちの人数が少ないほど歩行者60に残された時間は短い。つまり乗車待ちの人数が少ないほど歩行者60が急いで横断歩道を渡る可能性が高いといえる。よって乗車待ちの人数が少ないほど歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は高く算出されてもよい。
【0024】
歩行者速度変化検出部12は、歩行者検出部11によって検出された歩行者60の速度変化を算出する(
図5のステップS115)。バス70の停車またはバス70が停車しようとする動作のタイミングに合わせて歩行者60が加速し始めた場合、歩行者60が横断歩道を渡る可能性が高い。歩行者60の加速度が所定値(閾値)を超えた場合、歩行者60が横断歩道を渡る尤度は高くなるように算出されてもよい。また、バス70が発車するまでの残り時間によって閾値を変更してもよい。例えば
図3に示すようにバス70が発車するまでの残り時間が短いほど閾値を大きくしてもよい。必要となる加速度が大きいからである。
図3の縦軸は加速度閾値を示し、横軸はバスが発車する時刻を示す。バスが発車する時刻が原点に近いほどバスが発車する時刻が早いことを示す。時刻T1,T2(T1<T2)において時刻T1のほうが時刻T2より先に発車することを示す。
図3に示すように時刻T2と比較してバス70が発車するまでの残り時間が短い時刻T1の場合、加速度閾値をA2より大きいA1としてもよい。また、速度変化(加速度)が検出されない場合において、歩行者60が検出された時点での速度が閾値(例えば10km/h)より大きい場合、歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度が高くなるように算出されてもよい。歩行者60が検出された時点においてすでに加速済みの可能性があるためである。なお速度閾値も加速度閾値と同様にバス70が発車するまでの残り時間が短いほど大きくしてもよい。
図4の縦軸は速度閾値を示し、横軸はバスが発車する時刻を示す。バスが発車する時刻が原点に近いほどバスが発車する時刻が早いことを示す。
図4に示すように時刻T2と比較してバス70が発車するまでの残り時間が短い時刻T1の場合、速度閾値をV2より大きいV1としてもよい。なお歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は歩行者60の加速度が大きいほど高くなるように算出されてもよい。また、歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度は歩行者60の速度が大きいほど高くなるように算出されてもよい。
【0025】
顔向き検出部13は、歩行者検出部11によって検出された歩行者60の顔向きを検出する(
図5のステップS117)。「歩行者60の顔向きの検出」は「歩行者60の視線の検出」であってもよい。カメラ画像などから顔向きを検出する方法は周知であるため詳細な説明は省略する。歩行者60がバス70に乗る意図がある場合、歩行者60はバス70の方向を確認し、バス70の状況に合わせて行動を決めることが多い。
図2に示すように歩行者60の顔向きとしてバス70の方向を向いていることが検出され、歩行者60がバス70の方向を見ながら加速する場合、歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度が高くなるように算出されてもよい。なお
図6に示すように、歩行者60が検出された時点の顔向きがバス70の方向に向いていなくても(
図6では歩行者60が検出された時点の顔向きは図面に向かって右方向ではなく上方向)、歩行者60がバス70の方向を確認しながら加速、または所定値以上の速度で歩いている場合、進行方向を変えて横断歩道を渡る尤度が高くなるように算出されてもよい。
【0026】
周囲物体検出部14は、歩行者60の周囲における他の車両(以下、他車両と呼ぶ)、他の物体を検出する(
図5のステップS119)。他車両、他の物体を検出する目的は、自車両50以外に歩行者60を待たせる他車両、他の物体が存在するか否かによって歩行者60が横断歩道を渡る尤度が変化するからである。一例として、
図7に示すように自車両50の後ろを走行する他車両51~52(後続車両51~52)が存在する場合を考える。この場合、歩行者60が自車両50の通過を待つと、後続車両51~52の通過も待つことになり、横断歩道の手前で長く待つことになる。そうするとバス停80に到達する時間が遅くなる。バス70が出発するまでの残り時間が所定時間より長く、自車両50以外に歩行者60を待たせる他車両51~52が存在する場合は、他車両51~52が存在しない場合と比較して歩行者60が急いで横断歩道を渡る尤度が高くなるように算出されてもよい。
【0027】
尤度算出部18は、バス70の有無、バス70が発車するまでの残り時間、乗車待ち人数、歩行者60の速度変化、歩行者60の顔向き、他車両の有無などに応じて歩行者60が横断歩道を渡る尤度を算出する(
図5のステップS121)。上述のように、尤度算出部18は検出された各要素に基づいて歩行者60が横断歩道を渡る尤度を変化させ、各要素に基づいて算出される尤度を加算する。尤度算出部18は尤度の合計値が所定値(一例として0.7)を超える場合、歩行者60は横断歩道を渡ると予測する。尤度算出部18は予測した結果を車両制御部20に出力する。なお、バス70が停車している、または停車しようとしていると判定された場合は、バス70が検出されていない場合と比較して尤度が高くなるように算出されてもよい。
【0028】
車両制御部20は、尤度算出部18によって歩行者60は横断歩道を渡ると予測された場合、自車両50の減速を早めて、横断歩道の手前で自車両50を停止させる。これにより、例えば自車両50が自動運転機能を備える車両である場合、乗員が自動運転に対して感じる違和感がなくなる、もしくは軽減される。なお、「尤度算出部18によって歩行者60は横断歩道を渡ると予測された場合」とは、「尤度算出部18によって算出された尤度が所定値より大きい場合」と表現されてもよい。
【0029】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る歩行者横断予測装置によれば、以下の作用効果が得られる。
【0030】
歩行者横断予測装置は歩行者を検出するセンサ(物体検出装置1)と、センサによって検出された歩行者が道路を横断する尤度を算出するコントローラ100とを備える。コントローラ100は、センサによって検出された歩行者60の位置を基準として道路を挟んだ向こう側で送迎車が検出された場合、送迎車が停車しているか否か、または停車しようとしているか否かを判定する。コントローラ100は、送迎車が停車している、または停車しようとしていると判定された場合、送迎車が検出されていない場合と比較して、尤度を高くする。これにより道路を挟んで送迎車が存在する場合において歩行者60が道路を横断するか否かを精度よく予測することが可能となる。なお上述の実施形態では歩行者60が横断歩道を渡るケースについて説明したが、道路を挟んで送迎車が存在するケースは横断歩道に限定されず、本発明は歩行者60が横断歩道以外の道路を渡るケースについても適用可能である。
【0031】
送迎車の一例はバス70である。歩行者60は横断歩道の周囲においてセンサによって検出されてもよい。バス70は歩行者60の位置を基準として歩行者60が渡ろうとする横断歩道を挟んだ向こう側でセンサによって検出されてもよい。コントローラ100は、バス70が発車するまでの残り時間に応じて歩行者60が横断歩道の横断する尤度を変更してもよい。バス70が発車するまでの残り時間を考慮することにより歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。
【0032】
コントローラ100はバス70が発車するまでの残り時間が短いほど尤度を高くしてもよい。バス70が発車するまでの残り時間が短い場合、バス70の乗車に間に合わなくなる可能性があり歩行者60が急いで横断歩道を渡る可能性が高くなると想定される。バス70が発車するまでの残り時間が短いほど尤度を高くすることにより、歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。
【0033】
コントローラ100はバス70の乗車待ちの人数が少ないほど尤度を高くしてもよい。乗車待ちの人数が少ないほど歩行者60に残された時間は短い。つまり乗車待ちの人数が少ないほど歩行者60が急いで横断歩道を渡る可能性が高いといえる。バス70の乗車待ちの人数が少ないほど尤度を高くすることにより、歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。
【0034】
コントローラ100は、バス70が発車するまでの残り時間が所定時間以下の場合、バス70が発車するまでの残り時間が所定時間より長い場合と比較して、尤度を低くしてもよい。残り時間が所定時間以下(一例として3秒以下)の場合、歩行者60が急いで横断歩道を渡ることをあきらめる可能性が高い。このような場合は尤度を低くしてもよい。これにより不要な減速を回避することが可能となる。
【0035】
コントローラ100はバス70が発車するまでの残り時間が所定時間より長い場合、かつ自車両50以外に歩行者60が横断歩道を渡ることを待たせる原因となる他車両51~52が検出された場合、他車両51~52が検出されない場合と比較して尤度を高くしてもよい。
図7に示すように歩行者60が自車両50の通過を待つと、後続車両51~52の通過も待つことになり、横断歩道の手前で長く待つことになる。そうするとバス停80に到達する時間が遅くなる。このような場合歩行者60の心理として急いで横断歩道を渡りたくなることが想定される。そこでこのような場合に尤度を高くすることにより、歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。
【0036】
歩行者60の顔向き及び歩行に関する加速度はセンサによって検出されてもよい。コントローラ100は、歩行者60がバス70の方向を見ながら加速していると判定された場合、加速度に応じて尤度を高くしてもよい。これにより歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。
【0037】
コントローラ100は、加速度の値がプラスからマイナスに変化した後、所定時間以内にマイナスからプラスに変化しない場合、高くした尤度を低くしてもよい。加速度の値がプラスからマイナスに変化するとは、歩行者60が加速の状態から減速したことを意味する。減速した場合所定時間以内に再度加速が検出されなければ、歩行者60がバス70に乗車することをあきらめた可能性が高いといえる。このような場合は高くした尤度を低くしてもよい。これにより不要な減速を回避することが可能となる。
【0038】
コントローラ100は、バス70が停車している、または停車しようとしていると判定された後、所定時間以内に歩行者60の加速が検出された場合、加速度に応じて尤度を高くしてもよい。「バス70が停車している、または停車しようとしていると判定された後、所定時間以内に歩行者60の加速が検出された」とは、バス70の存在に起因して歩行者60が加速したと解釈されうる。したがってこのような場合に尤度を高くすることにより、歩行者60が横断歩道を渡るか否かを精度よく予測することが可能となる。なお所定時間を経過した後に歩行者60の加速が検出されたとしてもその加速はバス70の存在に起因するものではないと考えられる。よって、所定時間を経過した後に歩行者60の加速が検出されたとしても尤度を高くしなくてもよい。
【0039】
コントローラ100は、算出された尤度が所定値より大きい場合、自車両50の減速を早め横断歩道の手前で停車させる。これにより、例えば自車両50が自動運転機能を備える車両である場合、乗員が自動運転に対して感じる違和感がなくなる、もしくは軽減される。
【0040】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0041】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0042】
1 物体検出装置、2 自車位置推定装置、3 地図データベース、4 検出統合部、5 物体追跡部、6 地図内位置推定部、10 行動予測部、11 歩行者検出部、12 歩行者速度変化検出部、13 顔向き検出部、14 周囲物体検出部、15 送迎車検出部、16 バス発車時刻取得部、17 乗車待ち人数計測部、18 尤度算出部、20 車両制御部、100 コントローラ