(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】ZADOFF-CHU系列を用いて変調するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
H04J 13/14 20110101AFI20250515BHJP
H04W 72/044 20230101ALI20250515BHJP
H04B 1/707 20110101ALI20250515BHJP
【FI】
H04J13/14
H04W72/044 110
H04B1/707
(21)【出願番号】P 2021550134
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 FR2020050345
(87)【国際公開番号】W WO2020174167
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521378750
【氏名又は名称】ターンウェーヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・カノニッチ
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/044629(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0165903(US,A1)
【文献】特表2016-528791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0362891(US,A1)
【文献】国際公開第2018/099984(WO,A1)
【文献】特開2008-011517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 13/14
H04W 72/044
H04B 1/707
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送チャネルを介して送信されるべき複数のKビットのワードを変調するための方法であって、各Kビットのワードが、このKビットのワードに関連付けられたZadoff-Chu系列に変換され、前記Zadoff-Chu系列が、長さN、累乗根r、および周波数オフセットqのものであり、ただし、Nが、log
2N≧Kとなるような正の整数であり、rが、r>1かつNに対して素となるような整数であり、qが整数であることと、前記複数のKビットのワードのうちの任意の2つのKビットのワードが、異なる周波数オフセットを有するZadoff-Chu系列に関連付けられ、各Kビットのワードが、前記Kビットのワードに関連付けられた前記Zadoff-Chu系列の連続する複素要素の、2
K以上の長さの系列の形態で変調されることとを特徴とする、変調方法。
【請求項2】
連続する複素要素の前記系列が、前記Zadoff-Chu系列のすべての
複素要素から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の変調方法。
【請求項3】
前記Zadoff-Chu系列の前記長さが、2のべき乗に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の変調方法。
【請求項4】
前記Zadoff-Chu系列の前記長さが、2
Kよりも大きい最小の素数に等しくなるように選ばれることと、連続する複素要素の前記系列が、前記Zadoff-Chu系列を2
K個の要素に短縮させることによって取得されることとを特徴とする、請求項1に記載の変調方法。
【請求項5】
前記Zadoff-Chu系列の前記長さが、その系列の
複素要素の送信期間の個数で表現される、前記Kビットのワードを変調するための最大周波数オフセットと、前記伝送チャネルの時間拡散との間の差分よりも大きくなるように選ばれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の変調方法。
【請求項6】
Kビットのワードに関連付けられたZadoff-Chu系列の連続する複素要素の前記系列の前記複素要素の実数部および虚数部が、それぞれ、2つの直交キャリアを変調することと、そのように取得された被変調信号が、前記伝送チャネルを介して送信されることとを特徴とする、請求項1から5のうちの一項に記載の変調方法。
【請求項7】
Kビットのワードに関連付けられた前記Zadoff-Chu系列の前記連続する複素要素の位相として取得された位相信号が、ベースバンドにおいて生成されることと、前記位相信号が、RF帯域に変換され、そのように取得されたRF信号が、前記伝送チャネルを介して送信されることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の変調方法。
【請求項8】
様々なユーザとの間の複数の通信を介してデータを送信するための方法であって、送信されるべき前記データが、Kビットのワードに変換され、前記様々なユーザの前記Kビットのワードが、請求項1から7のうちの一項に記載の変調方法によって変調され、異なる2人のユーザの前記Kビットのワードを変調するために使用される前記Zadoff-Chu系列の前記累乗根が、異なるように選ばれ、前記Zadoff-Chu系列の長さが、共通の長さに等しくなるように選ばれることを特徴とする、データ送信方法。
【請求項9】
異なる2人のユーザの前記Kビットのワードを変調するために使用される前記累乗根が、それらの差分の絶対値が前記共通の長さに対して素となるように選ばれることを特徴とする、請求項8に記載のデータ送信方法。
【請求項10】
伝送チャネルを介して送信されるべき複数のKビットのワードを変調するための変調デバイスであって、前記変調デバイスが、Kビットのワードを
異なる整数値に変換する2進10進変換器(110)と、系列長N、およびr>1かつNに対して素となる整数rのような累乗根r、ならびに周波数オフセットqを入力パラメータとして有する、Zadoff-Chu系列生成器(120)とを備え、qが、整数であり、前記Zadoff-Chu系列生成器が、Kビットのワードごとに、長さN、累乗根r、および前記2進10進変換器によって提供される前記整数値に等しい周波数オフセットのZadoff-Chu系列の複素要素によって形成される、2
K以上の長さを有する系列を生成し、前記Zadoff-Chu系列生成器は、前記複数のKビットのワードのうちの任意の2つのKビットのワードが、異なる周波数オフセットを有するZadoff-Chu系列に関連付けられるように構成されることを特徴とする、変調デバイス。
【請求項11】
請求項1から7のうちの一項に記載の変調方法によって周波数オフセットで変調されたZadoff-Chu系列を表す信号を復調するための方法であって、前記信号が、複素サンプルの系列を提供するためにベースバンドサンプリングされることと、複素サンプルの前記系列が、循環相関結果を提供するために循環相関(710)によって基準Zadoff-Chu系列と相関させられることと、そのように取得された前記循環相関結果の絶対値における相関ピークの時間位置が検出される(740)ことと、この時間位置に対応する周波数オフセット
【数1】
がそれらから推定され、前記周波数オフセットが、次いで、10進2進変換器(750)によってKビットのワードに変換されることとを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1から7のうちの一項に記載の変調方法によって周波数オフセットで変調されたZadoff-Chu系列を表す信号を復調するためのデバイスであって、前記信号が、サイズNの複素要素の第1のブロックを提供するためにベースバンドサンプリングされ、前記デバイスが、複素周波数要素の第1のブロックを提供するために複素要素の前記第1のブロックのサイズNの離散フーリエ変換を実行するように構成されたDFTモジュール(610)と、
複素周波数要素の前記第1のブロックの前記複素周波数要素を、基準Zadoff-Chu系列の離散フーリエ変換の複素共役によって取得された第2のブロックの前記複素周波数要素と、項ごとに乗算するための乗算器(620)と
、複素周波数要素の前記第1のブロックの前記複素周波数要素と前記第2のブロックの前記複素周波数要素の乗算結果の絶対値を計算するための絶対値計算器(630)とを備え、そのように取得された前記絶対値が、循環相関ピークの周波数位置を決定するために相関ピーク検出器(640)の中で比較されることと、その周波数位置に対応する前記周波数オフセット
【数2】
が推定され、前記周波数オフセットが、Kビットのワードを生成するために10進2進変換器(650)に提供されることとを特徴とする、デバイス。
【請求項13】
請求項1から7のうちの一項に記載の変調方法によって周波数オフセットで変調されたZadoff-Chu系列を表す信号を復調するためのデバイスであって、前記信号が、サイズNの複素要素の第1のブロックを提供するためにベースバンドサンプリングされ、前記デバイスが、前記第1のブロックを第2のブロックと循環的に相関させるためのサイズNの循環相関器(710)であって、前記第2のブロックが、基準Zadoff-Chu系列から構成される、循環相関器(710)と、循環相関の絶対値を計算する絶対値計算器(730)と、循環相関ピークの時間位置をこの絶対値から決定するとともに、前記時間位置に対応する周波数オフセット
【数3】
をそれらから推定する相関ピーク検出器(740)とを備え、前記周波数オフセットが、Kビットのワードを生成するために10進2進変換器に提供されることを特徴とする、デバイス。
【請求項14】
請求項10に記載の少なくとも1つの変調デバイスと、請求項12または13のうちの一項に記載の少なくとも1つの復調デバイスとを備えることを特徴とする、送信機/受信機。
【請求項15】
請求項10に記載の複数の変調デバイスであって、前記複数の変調デバイスの各変調デバイスが、異なる累乗根値に対応する、変調デバイス、および/または請求項12もしくは13のうちの一項に記載の複数の復調デバイスであって、前記複数の復調デバイスの各復調デバイスが、異なる累乗根値に対応する、復調デバイスを備えることを特徴とする、請求項14に記載の送信機/受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、デジタル電気通信の分野に関し、より詳細には、拡散スペクトル技法を使用するデジタル電気通信に関する。本発明は、特に、ワイヤレス通信システムおよびモノのインターネット(IoT:Internet of Things)に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
自律的で低消費電力の対象物に適合される、広範囲かつ低データレートの無線技術の出現は、最近ではモノのインターネット(IoT)の発展を可能にしている。IoTネットワークのワイヤレス通信システムは、いくつかの制約に従わなければならない。
【0003】
第一に、接続された対象物の受信機は、展開される少数の基地局、したがって、それらのカバレッジゾーンの大規模なサイズに起因して、感度が高くなければならない。
【0004】
第二に、接続された対象物の送信機/受信機は、数年という自律持続時間を可能にするために、特に簡素でありエネルギー効率が高くなければならない。
【0005】
最後に、基地局(IoTゲートウェイとも呼ばれる)が、接続された多数の対象物をサービスすることが可能でなければならない限り、無線アクセスシステムはスケーラブルでなくてはならない。
【0006】
モノのインターネットは、現在、多種多様なネットワークを包含する。
【0007】
それらのうちのいくつか(LTE-M、NB-IoT)は、既存のセルラー基盤からの技術を使用する。しかしながら、これらは、しばしば、一般の用途にとって複雑すぎるか、またはあまりにエネルギーを消費することがわかる。
【0008】
他のものは、チャープ式拡散スペクトル(CSS:Chirped Spread Spectrum)変調を使用するLoRa、および超狭帯域(UNB:Ultra Narrow Band)変調を使用するSigFoxなどの、特定の、さらにはプロプライエタリな技術に依拠する。これらの技術は、エネルギー効率が高く、極めて低い受信しきい値、したがって、極めて広いカバレッジを達成することができる。
【0009】
しかしながら、これらの特定の技術は、信号対雑音比の劣化プラス通信に影響を及ぼす干渉に起因して、同じカバレッジゾーンの中で同時にサービスされ得るユーザの人数である、容量の観点からの限定を有する。詳細には、LoRaシステムにおけるCSS信号の間の未解決の多数の衝突は、異なるスペクトル拡散率(SF:spreading factor)が使用されるときでさえ、この技術に基づく大規模なLPWANの展開への、さらには、異なる事業者によるネットワークの展開への、障壁である。これらの限定の説明が、特にIEEE Communication Letters、第22巻、第4号、2018年4月、796~799頁において公開された「Impact of LoRa imperfect orthogonality: analysis of link-level performance」と題するD.Croceらによる論文に見出される。
【0010】
したがって、本発明の目的は、IoTネットワークの制約に特に適合される変調方法(および関連する変調器)を提供すること、および通信間干渉に対する、より大きいロバストネスをもたらすことである。本発明の別の目的は、対応する復調方法(および関連する復調器)を提供することである。最後に、様々なユーザの通信の間の干渉を低減するために当該の変調方法を利用する、データ送信方法も提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】IEEE Communication Letters、第22巻、第4号、2018年4月、796~799頁、「Impact of LoRa imperfect orthogonality: analysis of link-level performance」、D.Croceら
【文献】「Polyphase codes with good correlation properties」IEEE Trans.Inform.Theory、第IT-18巻、531~532頁、1972年7月、D.C.Chu
【文献】IEEE Trans. on Information Theory、第IT-25巻、第6号、Nov.79、720~724頁、「Bounds on crosscorrelation and autocorrelation of sequences」、D.V.Sarwate
【文献】「preamble sequence generation」、3GPP TS36.211、セクション5.7.2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、伝送チャネルを介して送信されるべき複数のK相シンボルを変調するための方法によって定義され、各K相シンボルは、そのシンボルに関連付けられたZadoff-Chu系列に変換され、前記Zadoff-Chu系列は、長さN、累乗根r、および周波数オフセットqのものであり、ただし、Nは、log2N≧Kとなるような正の整数であり、rは、r>1かつNに対して素となるような整数であり、qは相対的な整数であり、前記複数のK相シンボルのうちの任意の2つのK相シンボルは、異なる周波数オフセットを有するZadoff-Chu系列に関連付けられ、各K相シンボルは、前記K相シンボルに関連付けられたZadoff-Chu系列の連続する複素要素の、2K以上の長さの系列の形態で変調される。
【0013】
第1の実施形態によれば、連続する複素要素の系列は、前記Zadoff-Chu系列のすべての要素から構成される。Zadoff-Chu系列の長さは、有利には、2のべき乗に等しくなるように選ばれ得る。
【0014】
第2の実施形態によれば、前記Zadoff-Chu系列の長さは、2Kよりも大きい最小の素数に等しくなるように選ばれ、連続する複素要素の系列は、次いで、前記Zadoff-Chu系列を2K個の要素に短縮させることによって取得される。
【0015】
好ましくは、Zadoff-Chu系列の長さは、この系列の要素の送信期間の個数で表現される、K相シンボルを変調するための最大周波数オフセットと、伝送チャネルの時間拡散との間の、差分よりも大きくなるように選ばれる。
【0016】
K相シンボルに関連付けられたZadoff-Chu系列の連続する複素要素の系列の要素の実数部および虚数部は、それぞれ、2つの直交キャリアを変調し、そのように取得された被変調信号は、伝送チャネルを介して送信される。
【0017】
代替として、K相シンボルに関連付けられたZadoff-Chu系列の連続する複素要素の位相として取得された位相信号が、ベースバンドにおいて生成され、位相信号は、RF帯域に変換され、そのように取得されたRF信号は、伝送チャネルを介して送信される。
【0018】
本発明はまた、様々なユーザとの間の複数の通信を介してデータを送信するための方法に関し、送信されるべきデータは、K相シンボルに変換され、様々なユーザのK相シンボルは、本変調方法によって変調され、異なる2人のユーザのK相シンボルを変調するために使用されるZadoff-Chu系列の累乗根は、異なるように選ばれ、それらの長さは、共通の長さに等しくなるように選ばれる。
【0019】
異なる2人のユーザのK相シンボルを変調するために使用される累乗根は、有利には、それらの差分の絶対値が前記共通の長さに対して素となるように選ばれる。
【0020】
本発明はさらに、伝送チャネルを介して送信されるべきK相シンボルを変調するための変調デバイスに関し、前記デバイスは、各K相シンボルのKビットを異なる整数値に変換する2進10進変換器と、系列長N、およびr>1かつNに対して素となる整数rのような累乗根r、ならびに周波数オフセットqを入力パラメータとして有する、Zadoff-Chu系列生成器とを備え、前記生成器は、K相シンボルごとに、長さN、累乗根r、および前記2進10進変換器によって提供される整数値に等しい周波数オフセットのZadoff-Chu系列の複素要素によって形成される、2K以上の長さの系列を生成する。
【0021】
本発明はさらに、上記で定義したような変調方法を使用して周波数オフセットで変調されたZadoff-Chu系列を表す信号を復調するための方法に関する。前記信号は、複素サンプルの系列を提供するためにベースバンドサンプリングされ、複素サンプルの前記系列は、循環相関結果を提供するために循環相関によって基準Zadoff-Chu系列と相関させられ、そのように取得された循環相関結果の絶対値における相関ピークの時間位置が検出され、最後に、この時間位置に対応する周波数オフセット
【数1】
がそれらから推定され、前記周波数オフセットは、次いで、10進2進変換器によってK相シンボルに変換される。
【0022】
本発明はまた、上記で定義したような変調方法によって周波数オフセットで変調されたZadoff-Chu系列を表す信号を復調するためのデバイスに関する。
【0023】
第1の代替形態によれば、前記信号は、サイズNの複素要素の第1のブロックを提供するためにベースバンドサンプリングされ、前記復調デバイスは、複素周波数要素の第1のブロックを提供するために複素要素の第1のブロックのサイズNの離散フーリエ変換を実行するように構成されたDFTモジュールと、第1のブロックの複素周波数要素を、基準Zadoff-Chu系列の離散フーリエ変換の複素共役によって取得された第2のブロックの複素周波数要素と、項ごとに乗算するための乗算器と、第1および第2の複素周波数要素の乗算結果の絶対値を計算するための絶対値計算器とを備え、そのように取得された絶対値が、循環相関ピークの周波数位置を決定するために相関ピーク検出器の中で比較され、この周波数位置に対応する周波数オフセット
【数2】
がそれらから推定されるとともに、K相シンボルを生成するために10進2進変換器に提供される。
【0024】
第2の代替形態によれば、前記信号は、サイズNの複素要素の第1のブロックを提供するためにベースバンドサンプリングされ、復調デバイスは、前記第1のブロックを第2のブロックと循環的に相関させるためのサイズNの循環相関器であって、前記第2のブロックが基準Zadoff-Chu系列から構成される、循環相関器と、前記循環相関の絶対値を計算する絶対値計算器と、循環相関ピークの時間位置をこの絶対値から決定するとともに、この時間位置に対応する周波数オフセット
【数3】
をそれらから推定する、相関ピーク検出器とを備え、前記周波数オフセットは、次いで、K相シンボルを生成するために10進2進変換器に提供される。
【0025】
本発明は最後に、上記で定義したような変調デバイスおよび少なくとも1つの復調デバイスを備える、送信機/受信機システムに関する。
【0026】
システムが複数の変調デバイスを備えるとき、前記複数の変調デバイスのうちの各変調デバイスは、有利には、異なる累乗根値に対応し、かつ/または複数の復調デバイスは、第1または第2の代替形態に従い、前記複数の復調デバイスのうちの各復調デバイスは、異なる累乗根値に対応する。
【0027】
本発明のさらなる特性および利点は、添付の図を参照しながら説明する本発明の優先的な実施形態を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による変調デバイスを概略的に表す図である。
【
図2A】基本Zadoff-Chu系列の一例を表す図である。
【
図2B】被変調Zadoff-Chu系列の一例を表す図である。
【
図3A】Zadoff-Chu系列ファミリーの例に対する循環相関ピークマトリックスを表す図である。
【
図3B】Zadoff-Chu系列ファミリーの例に対する循環相関ピークマトリックスを表す図である。
【
図3C】Zadoff-Chu系列ファミリーの例に対する循環相関ピークマトリックスを表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による変調方法を使用する送信フレームを概略的に表す図である。
【
図5】カバレッジコードの要素で乗算されるパイロットシンボルの系列を概略的に表す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態による復調デバイスを概略的に表す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態による復調デバイスを概略的に表す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による復調デバイスとともに使用され得るプリアンブル検出同期デバイスを表す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による変調デバイスおよび復調デバイスを使用する第1の送信機/受信機を概略的に表す図である。
【
図10】本発明の一実施形態による第2の送信機の中で使用可能な極性変調器を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の基礎をなす着想とは、Zadoff-Chu系列のオフセット周波数を変調することによってK相から信号への変調を実行することであり、異なる同期通信または非同期通信、アップリンク通信またはダウンリンク通信の間の分離が、異なる累乗根を選ぶことによって取得される。
【0030】
累乗根r、長さN、および周波数オフセットのZadoff-Chu系列が複素要素の系列によって定義されることが最初に想起される。
【数4】
ただし、Nは正の整数であり、qは相対的な整数であり、0<r<Nであり、r、Nは互いに素となる。Zadoff-Chu系列の概説は、「Polyphase codes with good correlation properties」IEEE Trans.Inform.Theory、第IT-18巻、531~532頁、1972年7月と題するD.C.Chuによる論文の中に見出され得る。
【0031】
Zadoff-Chu系列の連続する要素の位相が考察される場合、それらが時間インデックスkに応じて線形成分ならびに平方成分を含むことが理解され得る。線形成分は、周波数オフセット
【数5】
に対応し、ただし、f
sは系列の要素が生成される周波数であり、平方成分は、系列の長さにわたって-rf
sという偏移を伴う瞬時周波数の線形変動に対応する。
【0032】
Zadoff-Chu(ZC)系列は、通信システムに対していくつかの極めて興味深い特性を有する。第一に、それらは、小さいPAPRを伴う被変調信号を引き起こす、定振幅を有する(ZC系列のすべての要素が単位円に属する)。第二に、ZC系列の周期的な自己相関は、いかなる非0のオフセットに対しても0であるという点で理想的である(言い換えれば、ZC系列の周期自己相関関数は、期間Nを有するDiracくし形である)。最後に、同じ奇数長N、および|r-u|がNに対して素であって異なる累乗根r、uの、2つのZC系列の周期的な相互相関は、その絶対値が
【数6】
によって境界が示される周期関数である。IEEE Trans. on Information Theory、第IT-25巻、第6号、Nov.79、720~724頁において公開された「Bounds on crosscorrelation and autocorrelation of sequences」と題するD.V.Sarwateによる論文の中で、周期相互相関関数におけるこの境界が、理想的な周期自己相関関数を有する系列にとって最適であることが、さらに示されている。言い換えれば、自己相関特性および相互相関特性の観点からZadoff-Chu系列よりも良好な系列はない。
【0033】
元の方法では、Zadoff-Chu系列の周波数オフセットを変調してK≦log2Nビットのワードを送信することが提案されている。LTEシステムにおけるプリアンブルの生成における事例のように(「preamble sequence generation」と題する3GPP TS36.211、セクション5.7.2を参照)、特に同期目的のために使用されるとき、ZC系列の周波数オフセットが、一般に、従来技術では0であるものと理解されることに留意されたい。
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態による変調デバイスを概略的に表す。
【0035】
変調デバイス100は、送信されるべきKビットのワードα
0,..,α
K-1(ここで、α
0がLSBであり、α
K-1がMSBである)を整数値
【数7】
に変換する2進10進変換器(BDC:Binary to Decimal Converter)110を備える。この整数値は、Zadoff-Chu系列生成器120への周波数オフセット値として提供される。
【0036】
送信されるべきワードは、場合によってはそれらがインターリーブされた後、情報シンボルのチャネルコーディングから得ることができる。代替として、送信されるべきワードは、伝送チャネル用のパイロットシンボルであり得る。
【0037】
送信されるべきワードはまた、情報シンボルのGrayコーディングから得ることができる。このコーディングによれば、連続する2つの2進ワードが、1ビットだけ異なるコードワードを生み出すことが想起される。
【0038】
生成器120は、生成されるべき系列の累乗根rおよび長さNを、入力パラメータとしてさらに受信する。パラメータrおよびNは、後で述べるような送信リソーススケジューラによって提供され得る。
【0039】
生成器120によって生成されるZadoff-Chu系列の複素要素
【数8】
が、次いで、本来知られている方法で(RFまたはIF)キャリアを変調するために使用される。
【0040】
すべての場合において、変調器の出力における複素要素系列が、上記で定義したようなZadoff-Chu系列であることに留意されたい。詳細には、生成器120の出力においていかなる位相補正も実行する必要がなく、したがって、変調器の構造は特に簡素である。
【0041】
上記で理解されているように、整数rおよびNは互いに素となるように選ばれる。
【0042】
第1の代替形態によれば、この制約を尊重するために、数Nは素数となるように選ばれる。後者の場合、長さNが同じであるが累乗根r、uが異なる2つの通信の間の干渉は、
【数9】
に比例する同じ値によって境界が示される。
【0043】
しかしながら、好ましくは、実装の簡単という理由のために、生成器によって生成される系列
【数10】
は、K'≧Kであって長さ2
K'<Nに短縮され得、詳細には、最適なレートを取得するために長さ2
Kに短縮され得る。
【0044】
第2の有利な代替形態によれば、以前に示された実装を簡単にするために、数Nは、2のべき乗、たとえば、N=2Kに等しくなるように選ばれ、累乗根rは、このとき、奇数であり、その結果、rおよびNが互いに素となる。
【0045】
さらに、ZC系列の累乗根は1よりも大きく(r>1)選ばれる。この場合、(q=0を伴うものである)無変調ZC系列に対する位相変動が、系列の連続する要素間に少なくとも1つのエイリアシングを提示すること、言い換えれば、瞬時周波数が系列の長さにわたって少なくとも1つの不連続性を有することに気づく。実際、連続する2つの要素間の位相回転は、
【数11】
として書くことができる。
【0046】
したがって、r>1の場合、系列の末尾における位相回転は2πを上回ることがある。
【0047】
等価的に、瞬時周波数は、
【数12】
として表現され得、r>1の場合、瞬時周波数は系列の要素が生成されるレートf
sを上回ることがある。
【0048】
一例として、無変調Zadoff-Chu系列の連続する要素が
図2Aに表されており、周波数オフセットによって変調された同じ系列の連続の要素が
図2Bに表されている。
【0049】
図示の場合には、系列の長さはN=17であり、その累乗根はr=4である。関係(3-1)が与えられると、5番目の要素と6番目の要素との間に最初の位相エイリアシングが発生し、連続する後続の要素間の位相回転がなおさらエイリアシングにつながることに気づく。
【0050】
同様に、
図2Bでは、このときにはオフセットq=1を用いて変調された同じ系列が考察されている。4番目の要素と5番目の要素との間の遷移と同じくらい早く、最初の位相エイリアシングがここで発生することに留意されたい。
【0051】
したがって、同じ基本ZC系列に対して、被変調系列の要素の異なる分布が、異なる周波数オフセットを用いて取得されることが理解される。
【0052】
図3Aは、長さN=521(素数)、およびそれぞれの累乗根r=2,...,520の、無変調Zadoff-Chu系列(q=0)の循環相関最大値のマトリックスを概略的に表す。言い換えれば、
【数13】
および
【数14】
という2つの系列に対して、図はτに対する
【数15】
の最大値を縦軸上に表し、ただし、τは2つの系列
【数16】
と
【数17】
との間のシフトであり、
【数18】
は、長さNの循環相関を表す。対角線(自己相関関数の最大値)において最大値(N)が取得されること、および循環相互相関関数が、(
【数19】
によって境界が示される)低い絶対値を有することが、実際に確認される。
【0053】
図3Bは、長さN=512、およびそれぞれの累乗根r=2,...,511の、無変調ZC系列(q=0)の循環相関最大値のマトリックスを概略的に表す。rおよびNが互いに素でない限り、これらの系列のうちのいくつかが厳密に言えばZC系列でないことに気づく。
【0054】
マトリックスの対角線が常に最大値(N)から構成されるが、循環相互相関の最大値が系列のペア
【数20】
、
【数21】
に強く依存することに気づく。累乗根の値(特にNに対して素となる値)を好適に選ぶことによって、その循環相互相関関数が所定の最大値によって境界が示される、サブファミリーが取得される。
【0055】
図3Cは、素数N=521に等しい長さの、ただし512個の要素に短縮された、無変調ZC系列(q=0)の循環相関最大値のマトリックスを概略的に表す。自己相関性能および循環相互相関性能が、
図3Aに示すものに対してわずかに劣化するにすぎないことが理解され得る。
【0056】
概して、2のべき乗P=2Kに等しい長さの系列を選択することが望まれる場合、その長さNが、Pよりも大きい最小の素数に等しい、ZC系列が、選択され得るとともにP個の要素に短縮され得る。したがって、性能損失は、レートと相互相関のレベルの両方の観点から最小である。
【0057】
したがって、たとえば、長さ128、256、512、1024、2048、4096の系列に対して、それぞれ、131、257、521、1031、2053、4099という長さを伴うZC系列が選ばれる。
【0058】
生成されるべき系列の長さNは、SNR(信号対雑音比)、BER(ビット誤り率)、必要とされる通信レート、さらには後で述べるような伝送チャネルの時間拡散などの、様々な基準に応じて選択され得る。
【0059】
より正確には、拡散率(SF)とはまさしくN/Kであり、大きい値のNの選択により、BERが、同じSNR値に対して低減されること、または劣化したSNR条件に対するBERレートに従うことが可能になる。同様に、小さい値のNにより、送信帯域幅が低減されること、および通信レートが高められることが可能になる。
【0060】
次いで、Nという所与の値に対して、その干渉が低減されることが望まれる通信のために、異なる累乗根が選ばれる。たとえば、同じ基地局から、この基地局のカバレッジ内に位置する接続された2つの対象物または2つの端末へ発信する、ダウンリンクチャネル上の2つの通信に、これらの2つの通信が同期式であるか否かにかかわらず2つの異なる累乗根が割り当てられ得る。さらに、1つの同じ受信機へのダウンリンクチャネル上の2つの異なる通信に対して、2つの異なる累乗根が割り当てられ得る。
【0061】
同様に、アップリンクチャネルの場合、干渉することがある接続された2つの対象物または2つの端末には、異なる累乗根が割り当てられ得る。
【0062】
系列長/累乗根の割振りは、スケジューラによって動的に行われ得る。場合によっては、動的なスケジューリングは暗黙的であり得る。たとえば、2つのアップリンク通信が干渉する場合、基地局は、関係している接続された対象物にこの状況を通知することができ、それらのうちの少なくとも1つは、接続された対象物と基地局の両方に知られている、所定の累乗根系列の中の、後続の別の累乗根に切り替えることができる。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、集中モードまたは分散モードに従って、隣接する基地局間のスケジューリングの様々な代替形態を提供することができる。
【0063】
どんな実施形態でも、K相シンボル、すなわち、Kビットのワードのパケットの送信は、通常、その構造が
図4に示される送信フレームによって実行される。
【0064】
この送信フレームは、プリアンブル410およびペイロード420を備える。プリアンブルは、受信機がフレームの開始を検出し同期されることを可能にするための、パイロットシンボルを含む。
【0065】
たとえば、パイロットシンボルは、専用の周波数オフセットq0、たとえば、q0=0に関連付けられる。言い換えれば、この場合、送信フレームのプリアンブルは、無変調ZC系列から構成されるにすぎない。
【0066】
パイロットシンボルは、続けて行われる相関(すなわち、継続的な相関)を受信信号に対して実行する相関器を用いて、受信機によって検出される。たとえば、パイロットシンボルの所定の回数Mの反復は、フレームの開始のインジケータであり得る。フレーム(さらには、フレームの系列)の開始の同期および検出を容易にするために、これらのパイロットシンボルは、非周期的な相関特性が良好なカバレッジコードの要素、たとえば、Barkerコードの要素で乗算され得る。プリアンブル検出による受信機同期が、
図8に関して後で説明される。すべてのフレームにおいて、または一般に、J個のフレームごとに、フレームの系列の受信時間の間、受信機再同期が定期的に実行され得、ただし、Jは所定の整数である。
【0067】
図5は、それぞれ、CC(1),...,CC(M)と示されるカバレッジコードのM個の要素で乗算された、フレームプリアンブルの一連のパイロットシンボルを示す。言い換えれば、第1のパイロットシンボルに対応する第1のZC系列がCC(1)で乗算され、第2のパイロットシンボルに対応する第2のZC系列がCC(2)で乗算され、最後のZC系列がCC(M)で乗算されるまで以下同様である。
【0068】
たとえば、長さM=11のBarkerコードの要素は、
+1、+1、+1、-1、-1、-1、+1、-1、-1、+1、-1
によって与えられる。
【0069】
受信時に、(これらのパイロットシンボルに対応するZC系列である)個々のパイロットシンボルは、継続的な相関の前または後に、同じカバレッジコード要素で乗算される。カバレッジコード要素がパイロットシンボルと理想的に位置合わせされるとき、相関結果は最大値を有する。
【0070】
送信フレームのペイロードは、送信されるべきK相ワードによって変調されたZC系列から構成される。ペイロードはまた、制御ヘッダ、およびCRCシンボルによって変調されたZC系列を含むことができる。
【0071】
K相シンボルは連続的に送信され、したがって、これらのシンボルによって変調されたZC系列も送信機において互いに後続するが、伝送チャネルは、マルチパスチャネルである場合、シンボル間干渉を生じることがある。言い換えれば、第1のシンボルによって変調されたZC系列の複製が、第2のシンボルによって変調されたZC系列と、受信機において重畳され得る。
【0072】
シンボル間干渉を低減するために、
N-Δ>qmax (5)
となるような長さNの系列が有利に選ばれ、ただし、Δは伝送チャネルの時間拡散であり、qmaxはK相シンボルを変調するための最大周波数オフセットであり、その両方がZC系列の要素生成期間の個数で表現される。実際、伝送チャネル拡散に起因する、連続するシンボル間のオーバーラップが、ZC系列の冗長な部分の持続時間(N-2K)よりも短い持続時間のものである限り、当該のシンボルは情報の損失なしに復元され得る。
【0073】
図6は、本発明の第1の実施形態による復調デバイスを概略的に表す。
【0074】
この第1の実施形態は、周波数領域における循環相関器の実装に対応する。
【0075】
復調器は、これらのシンボルを変調することによって取得された一連のZC系列である、上記で説明したようなシンボルのフレームに対応する信号を受信する。
【0076】
復調器600は、ZC系列の要素が生成される周波数fsで(2つの直交クロックによって)前にサンプリングされた受信信号に対して、(ZC系列の長さに等しい)サイズNのFFTを実行するための、FFTモジュール610を含む。FFTの結果は、N個の複素数値のブロックである。
【0077】
フレームおよびZC系列の開始の検出は、プリアンブルの中の一連のパイロットシンボルを用いて達成される。後で説明するように、受信機がプリアンブル検出によって受信機自体を以前に同期させていることが想定される。
【0078】
復調器は、
図3または
図4の変調器の中に存在する生成器と同一の、基準ZC系列のローカル生成器605を含む。ローカル生成器は、ZC系列の長さN、通信のために使用される累乗根r、および適用可能な場合、パイロットシンボルに専用の周波数オフセットq
0によってパラメータ化される。通信のために使用される累乗根rは、後で説明するプリアンブル検出器によって提供され得る。
【0079】
離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)モジュール615は、ローカル生成器605によって提供されたZC系列の要素のブロックに対して、サイズNのDFTが実行されることを可能にする。Nが2のべき乗であるとき、DFTはFFTを使用して実行される。
【0080】
周波数領域においてそのように取得されたN個の複素数値のブロックは、共役モジュール625の中で共役させられてから、DFTモジュール610からのN個の複素数値のブロックと620の中で項ごとに乗算される。
【0081】
これらのN個の複素数値の絶対値は、630の中で計算され、相関ピーク検出器640によって比較される。言い換えれば、ピーク検出器640は、受信されたブロックにおける、絶対値が最大の複素数値に対応する周波数オフセットを決定する。
【0082】
同じ長さN、同じ累乗根r、および周波数オフセットq、lの、2つのZC系列の循環相関ピークが、値
【数22】
を有するので、このピーク弁別は、短縮ZC系列の存在下でさえ極めて効果的である。したがって、検出器640は、
【数23】
を決定し、ただし、σは復調器によって受信されたサンプルの系列Nを表し、ρは循環相関演算を表す。
【0083】
この周波数オフセットは、最後に(図の中のビットデマッパによって示される)10進2進変換器650の中でKビットのワード
【数24】
に変換される。
【0084】
生成器605が、rおよび適用可能な場合Nの、すべての可能な値に対して、基準系列を生成できることに留意されたい。
【0085】
周波数オフセットが、基準周波数を生成するために使用された周波数オフセットに対して相対的に決定され得る限り、基準系列は、送信機によって送信されたZC系列と同じ長さおよび同じ累乗根の任意のZC系列であり得る。したがって、たとえば、基準系列は、無変調ZC系列、またはパイロットシンボル(したがって、オフセットq0)に対応するZC系列であり得る。
【0086】
すべての場合において、基準系列生成器605、DFTモジュール615、および共役モジュール625から構成されるセットは、長さN、累乗根r、および適用可能な場合、基準周波数オフセットによってアドレス指定される、簡素なメモリによって置き換えられ得る。このアドレスにおいてメモリの中に記憶される値は、単純に
【数25】
であり、ただし、
【数26】
は、周波数vにおいて、
【数27】
の離散フーリエ変換によって取られる値であり、z
*はzの共役である。メモリから読み取られる値
【数28】
が、次いで、今度は乗算器620に提供される。
【0087】
図7は、本発明の第2の実施形態による復調デバイスを概略的に表す。
【0088】
この第2の実施形態は、時間領域における循環相関器の実装に対応する。
【0089】
復調器700によって受信された信号は、ZC系列の要素が生成される周波数fsで(2つの直交クロックによって)サンプリングされる。その結果はN個の複素数値のブロックである。このブロックは、循環相関器710に提供される。
【0090】
循環相関器710は、追加として、ローカル生成器705によって生成される基準ZC系列の連続するN個の要素を受信する。このローカル生成器は、
図1の変調器の中に存在する生成器と同一である。ローカル生成器は、ZC系列の長さN、通信のために使用される累乗根r、および適用可能な場合、パイロットシンボルに専用の周波数オフセットq
0によってパラメータ化される。
【0091】
ZC基準系列の要素は、循環相関器710に提供される。(時間領域における様々な遅延時間に対応する)循環相関結果は、730の中で計算された絶対値であり、ブロックにおける最大絶対値が相関ピーク検出器740によって決定される。ピーク検出器740は、ZC基準系列と復調器によって受信されたZC系列との間の循環相関ピークの位置を決定し、対応する時間オフセットをそれらから推定する。
【0092】
ZC系列の定義が与えられると、時間オフセットによるZC系列の巡回置換が周波数オフセットという結果になることが示され得る。
【0093】
Nが奇数値である場合、
【数29】
であり、ここで、
【数30】
は、系列の端から端まで定位相項である。
【0094】
同様に、Nが偶数値である場合、
【数31】
であり、ここで、
【数32】
は、系列の端から端まで定位相項である。
【0095】
循環相関結果の絶対値に対して検出が実行されるので、(期間T
s=1/f
sの個数で表現される)時間オフセットq'が、(増分
【数33】
で表現される)周波数q'におけるオフセットという結果になることが理解されよう。言い換えれば、同じ受信信号に対して、ピーク検出器740によって提供される(期間T
s=1/f
sの個数で表現される)時間オフセット値は、ピーク検出器640によって提供される周波数オフセット値と同一である。
【0096】
(図の中でビットデマッパとして参照される)10進2進変換器750は、このオフセット値を2進数
【数34】
に変換する。
【0097】
生成器705が、rおよび適用可能な場合Nの、すべての可能な値に対して、基準系列を生成できることに留意されたい。
【0098】
いずれの場合も、以前のように、基準系列生成器705から構成されるセットは、長さN、累乗根r、基準時間(または周波数)オフセットによってアドレス指定される、簡素なメモリによって置き換えられ得る。このアドレスにおいてメモリの中に記憶される値は、単純に
【数35】
である。メモリから読み取られる値
【数36】
は、循環相関器710に提供される。
【0099】
図8は、本発明による復調デバイスとともに使用され得るプリアンブル検出同期デバイスを概略的に表す。
【0100】
より正確には、この同期デバイスは、一方では通信のために使用される累乗根rを、また他方ではフレームの、さらにはペイロードの開始に対応する瞬間を、復調器に提供することを可能にする。
【0101】
継続的相関器820は、第1の入力部において受信信号の(複素)サンプルのストリームを、また第2の入力部においてプリアンブルの複製に対応するサンプルの系列を受信する。
【0102】
プリアンブルの複製は、ローカル生成器805によって生成されたZC系列から、モジュール810によって形成される。ローカル生成器805は、前に説明した生成器605(または705)と同一であり、同じ代替形態も適用される。プリアンブル形成モジュール810は、プリアンブルのパイロットシンボルのZC系列を連結する。たとえば、プリアンブルが、反復するM個の同一のパイロットシンボルから構成される場合、モジュール810は、そのパイロットシンボルのZC系列をM回反復する。さらに、プリアンブルがBarkerカバー系列を使用する場合、モジュール810は各ZC系列を対応するコード要素と乗算する。
【0103】
当然、生成器805およびモジュール810は、パイロットシンボルに対応する周波数オフセットq0、累乗根r、および系列の長さN、ならびにパイロットシンボルの反復の回数Mによってアドレス指定される、簡素なメモリを使用して実装され得る。
【0104】
相関器820は、モジュール810によって提供されるプリアンブルのサンプルの系列との、受信信号のサンプルの系列の、続けて行われる相関を実行する。言い換えれば、各期間Tsにおいて、相関器は、最後のMN個の信号サンプルとのMN個のプリアンブルサンプルの相関結果を計算する。
【0105】
これらの相関結果の絶対値が830の中で計算され、相関ピーク検出は検出器840の中で実行される。実際には、検出器は、830によって提供される絶対値をNよりも小さい所定のしきい値と比較する。
【0106】
検出器は、プリアンブルの、したがって、フレームの開始を示す、相関ピークの時間位置を与える。復調器は、次いで、情報シンボルを復調するためにペイロードの開始を捕え追尾することができる。
【0107】
さらに、累乗根rが受信機に知られていない場合、同期デバイスは、可能な累乗根のセット、さらには(たとえば、累乗根のセットが階層的であり、その累乗根が位置するツリー分岐の事前知識を受信機が有する場合)後者のサブセットに属する、累乗根の値から生成されたプリアンブルに対して、連続的または平行な探索を実行することができる。連続的な探索によって、テストされるべきR個の累乗根に対してレートRfsを伴って相関が実行されることが意図される。平行な探索によって、R個の分岐に対して並行して相関が実行されることが意図され、各分岐はテストされるべきR個の累乗根のうちの1つに関連する。いずれの場合も、相関結果は検出器840によって処理される。検出器は、次いで、(相関ピークを提供する)累乗根値と、(このピークの位置からの)プリアンブルの開始の両方を決定する。
【0108】
図9は、本発明の一実施形態による変調デバイスおよび復調デバイスを使用する第1の送信機/受信機を概略的に表す。
【0109】
送信機/受信機900は、たとえば、基地局または接続された対象物に適合され得る。
【0110】
送信機/受信機900は、
図1に関して説明したような実施形態による変調デバイス910を備える。変調デバイスは、送信されるべきK相シンボルをZC系列に変換し、K相シンボルはZC系列の周波数オフセットに変換される。ZC系列の複素要素は、変調デバイスによってレートf
sで提供される。これらの複素要素の実数部は同位相チャネルに、また虚数部は直交チャネルに提供され、各チャネルは、通常、低域フィルタ920およびベースバンド増幅器930を備える。これらのチャネルのI信号およびQ信号は、それぞれ、直交変調器940の中で2つの直交キャリア信号と混合される。キャリア信号は、周波数が安定化された正弦波発振器950によって生成される。直交変調器の出力部におけるRF信号は、電力増幅器960の中で増幅され、次いで、デュプレクサ970を介してアンテナ980によって送信される。
【0111】
受信時には、デュプレクサ970を介して受信されたアンテナ信号が、低雑音増幅器(LNA:low noise amplifier)965によって増幅され、次いで、直交ミキサ945によって直交復調される。ミキサの出力部におけるI信号およびQ信号は、増幅器935によって増幅され、低域フィルタ925によってフィルタ処理され、次いで、レートf
sでサンプリングされる。そのように取得された複素サンプルは、
図6に関して説明したような第1の実施形態による、または
図7に関して説明したような第2の実施形態による、復調デバイス915に提供される。
【0112】
図9のダイレクトコンバージョン送信機/受信機の中の直交変調器940は、送信されるべきZC系列の要素の実数部および虚数部を使用する。直交変調器ではなく極性変調器が、以下で説明するように使用され得る。
【0113】
図10は、本発明の一実施形態による第2の送信機の範囲内で使用可能な極性変調器を概略的に表す。
【0114】
概して、極性変調器では、送信されるべき複素シンボルが、極性ベースバンド変換器1020の中で、ベースバンド信号を表す包絡線信号(複素要素の絶対値)および位相信号(複素要素の瞬時位相)に変換される。
s(t)=A(t)cos(2πf0t+φ(t)) (8)
【0115】
ここで、A(t)は包絡線信号であり、cos(2πf0t+φ(t))は位相信号である。位相信号は、次いで、ミキサ1050によってRF帯域に変換されてから、電力増幅器1060によって増幅される。包絡線信号は、振幅分岐と位相分岐との間に存在し得る、伝搬時間における差分を補正するために、1025において遅延させられ、電力増幅器の利得を制御することによって包絡線変調器1040を用いてRF信号の振幅を変調する。そのように変調されたRF信号は、次いで、アンテナ1070によって送信される。
【0116】
本発明におけるように、変調器1010によって生成されるようなZC系列の複素要素を送信する問題の場合には、これらの要素の絶対値が一定であり1に等しい限り、包絡線信号の生成が不必要であることが理解される。遅延1025および包絡線変調器1040は単に除去され得、電力増幅器の利得は設定点値に設定される。
【0117】
対称的に、受信において極性復調器が実装され得ることを当業者は理解されよう。
【0118】
図9および
図10に示すもの以外のRF送信機/受信機アーキテクチャが、本発明の範囲から逸脱することなくさらに企図され得る。
【0119】
当然、様々なユーザとの間の通信を分離するために、同じ送信機/受信機内に様々な基本の変調/復調デバイスが設けられ得る。前に示したように、これらの変調/復調デバイスは、このとき、異なる累乗根値を使用する。有利には、Nに等しいZC系列長に対して、|rp-rp'|(∀p、p')がNに対して素となるような累乗根値rp(p=1,..,P)が選ばれる。
【符号の説明】
【0120】
100 変調デバイス
110 2進10進変換器
120 Zadoff-Chu系列生成器
410 プリアンブル
420 ペイロード
600 復調器
605 ローカル生成器
605 基準系列生成器
610 FFTモジュール、DFTモジュール
615 離散フーリエ変換モジュール
620 乗算器
625 共役モジュール
630 絶対値計算器
640 相関ピーク検出器
650 10進2進変換器
700 復調器
705 ローカル生成器
710 循環相関器
730 絶対値計算器
740 相関ピーク検出器
750 10進2進変換器
805 ローカル生成器
810 プリアンブル形成モジュール
820 継続的相関器
840 検出器
900 送信機/受信機
910 変調デバイス
915 復調デバイス
920、925 低域フィルタ
930 ベースバンド増幅器
935 増幅器
940 直交変調器
945 直交ミキサ
950 正弦波発振器
960 電力増幅器
965 低雑音増幅器
970 デュプレクサ
980 アンテナ
1010 変調器
1020 極性ベースバンド変換器
1025 遅延
1040 包絡線変調器
1050 ミキサ
1060 電力増幅器
1070 アンテナ