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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】光電気伝送複合モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20250515BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20250515BHJP
   H10F 77/00 20250101ALI20250515BHJP
   H10F 77/63 20250101ALI20250515BHJP
   H01S 5/024 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H10F77/00
H10F77/63
H01S5/024
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022508415
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010881
(87)【国際公開番号】W WO2021187535
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020050086
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一聡
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022129(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109031546(CN,A)
【文献】特開2014-078552(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008555(WO,A1)
【文献】特開2007-142477(JP,A)
【文献】特開2015-065293(JP,A)
【文献】特開2016-027613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0044369(US,A1)
【文献】特開2009-003253(JP,A)
【文献】特開2018-093007(JP,A)
【文献】特開2013-134347(JP,A)
【文献】特開2006-270036(JP,A)
【文献】特開2013-219357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/42
G02F 1/00-1/125
H10F 77/00
H10F 77/63
H01S 5/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部と、
前記光電変換部と光学的および電気的に接続されるように構成され、光導波路および電気回路基板を厚み方向一方側に向かって順に含む光電気混載基板と、
前記電気回路基板と電気的に接続されるプリント配線板と、
放熱部材と、
前記光電気混載基板、前記プリント配線板および前記放熱部材の一部を収容する金属製の筐体であって、第1壁を含む前記筐体とを備え、
前記第1壁、前記放熱部材、前記プリント配線板と、前記光電気混載基板と、前記光電変換部とが、前記厚み方向一方側に向かって順に配置され、
前記放熱部材が、前記第1壁およびプリント配線板に接触していることを特徴とする、
光電気伝送複合モジュール。
【請求項2】
前記放熱部材の23℃におけるアスカーC硬度が、75以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の光電気伝送複合モジュール。
【請求項3】
前記放熱部材の厚み方向の熱伝導率が、5W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光電気伝送複合モジュール。
【請求項4】
前記光電変換部に接触する第2放熱部材をさらに備え、
前記筐体は、前記光電変換部に対して、前記厚み方向において前記第1壁の反対側に配置される第2壁をさらに含み、
前記第2放熱部材が、前記光電変換部および前記第2壁の間に介在し、前記第2壁と接触していることを特徴とする、請求項1または2に記載の光電気伝送複合モジュール。
【請求項5】
前記第2の放熱部材の23℃におけるアスカーC硬度が、55以下であることを特徴とする、請求項4に記載の光電気伝送複合モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気伝送複合モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電気変換器、FPC(プリント配線板)、光導波路、放熱シート、プリント基板および、筐体下壁を下側に向かって順に備える光モジュールが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1の光モジュールでは、光電気変換器から生じる熱を、主に、放熱シートを介して、筐体下壁に逃がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-22129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、光電気変換器は、それ自身から生じた熱によって損傷したり、作動性に影響があることから、光モジュールには、より一層高い放熱性が求められる。しかし、特許文献1の記載の光モジュールでは、上記した要求を満足できないという不具合がある。
【0005】
本発明は、光電変換部を効率的に放熱できる光電気伝送複合モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、光電変換部と光学的および電気的に接続されるように構成され、光導波路および電気回路基板を厚み方向一方側に向かって順に含む光電気混載基板と、前記電気回路基板と電気的に接続されるプリント配線板と、放熱部材と、前記光電気混載基板、前記プリント配線板および前記放熱部材の一部を収容する金属製の筐体であって、第1壁を含む前記筐体とを備え、前記第1壁、前記放熱部材、前記プリント配線板と、前記光電気混載基板とが、前記厚み方向一方側に向かって順に配置され、前記放熱部材が、前記第1壁およびプリント配線板に接触している、光電気伝送複合モジュールを含む。
【0007】
この光電気伝送複合モジュールでは、放熱部材が、第1壁およびプリント配線板に接触しているので、光電変換部で発生し、光電気混載基板およびプリント配線板を経由して放熱部材に至った熱を、第1壁に効率よく逃がすことができる。そのため、光電変換部が効率よく動作でき、さらには、光電変換部の熱を筐体に効率的に逃がすことができる。
【0008】
本発明(2)は、前記放熱部材の23℃におけるアスカーC硬度が、75以下である、(1)に記載の光電気伝送複合モジュールを含む。
【0009】
放熱部材のアスカーC硬度が75以下であるので、放熱部材が、第1壁およびプリント配線板に密着できる。そのため、光電変換部の熱を筐体により一層効率的に逃がすことができる。
【0010】
本発明(3)は、前記放熱部材の厚み方向の熱伝導率が、5W/m・K以上である、(1)または(2)に記載の光電気伝送複合モジュールを含む。
【0011】
この光電気伝送複合モジュールでは、放熱部材の熱伝導率が5W/m・K以上であるので、光電変換部で発生した熱をより一層効率よく逃がすことができる。
【0012】
本発明(4)は、前記光電気混載基板と光学的および電気的に接続される光電変換部と、前記光電変換部に接触する第2放熱部材をさらに備え、前記筐体は、前記光電変換部に対して、前記厚み方向において前記第1壁の反対側に配置される第2壁をさらに含み、前記第2放熱部材が、前記第2壁に接触している、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光電気伝送複合モジュールを含む。
【0013】
この光電気伝送複合モジュールは、さらに第2放熱部材を含み、かかる第2放熱部材が、第2壁に接触するので、光電変換部で発生した熱をより一層効率よく逃がすことができる。つまり、光電変換部の熱を放熱部材および第2放熱部材の2つによって筐体に効率よく逃がすことができる。
【0014】
本発明(5)は、前記第2放熱部材の23℃におけるアスカーC硬度が、55以下である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の光電気伝送複合モジュールを含む。
【0015】
この光電気伝送複合モジュールでは、第2放熱部材のアスカーC硬度が55以下であるので、第2放熱部材が光電変換部に柔軟に接触できる。そのため、光電変換部の損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光電気伝送複合モジュールでは、光電変換部で発生した熱をより一層効率よく逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の光電気伝送複合モジュールの一実施形態の断面図である。
図2図2は、図1に示す光電気伝送複合モジュールの変形例の断面図である。
図3図3は、図1に示す光電気伝送複合モジュールの変形例の断面図である。
図4図4は、図3に示す光電気伝送複合モジュールのさらなる変形例の断面図である。
図5図5は、図4に示す光電気伝送複合モジュールのさらなる変形例の断面図である。
図6図6は、比較例1の光電気伝送複合モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<一実施形態>
本発明の光電気伝送複合モジュールの一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0019】
光電気伝送複合モジュール1は、所定厚みを有し、長手方向に延びる形状を有する。光電気伝送複合モジュール1は、伝送された光を電気に変換してこれを伝送し、また、伝送された電気を光に変換してこれを伝送する。光電気伝送複合モジュール1は、筐体2と、放熱部材の一例としての放熱層3と、プリント配線板4と、光電気混載基板5と、光電変換部6とを備える。
【0020】
筐体2は、厚み方向長さが幅方向(厚み方向および長手方向に直交する方向)長さより短い略扁平箱形状を有する。筐体2は、少なくとも、第1壁21と、第2壁22と、連結壁23と、図示しない第2連結壁と、図示しない両側壁とを一体的に有する。
【0021】
第1壁21は、長手方向に沿って延びる平板形状を有する。
【0022】
第2壁22は、第1壁21の厚み方向一方側に間隔を隔てて対向配置されている。第2壁22の形状は、第1壁21のそれと同一である。
【0023】
連結壁23は、第1壁21の長手方向一端縁、および、第2壁22の長手方向一端縁を厚み方向に連結する。連結壁23は、幅方向に延びる平板形状を有する。なお、連結壁23の厚み方向中間部には、プリント配線板4の一端部が挿入される穴7が形成されている。穴7は、連結壁23を長手方向に貫通する。
【0024】
図示しない第2連結壁は、第1壁21の長手方向他端縁、および、第2壁22の長手方向他端縁を厚み方向に連結する。第2連結壁は、幅方向に延び、その外形形状は、連結壁23とのそれと同一である。
【0025】
図示しない両側壁は、第1壁21の幅方向一端縁、および、第2壁22の幅方向一端縁を厚み方向に連結し、また、第1壁21の幅方向他端縁、および、第2壁22の幅方向他端縁を厚み方向に連結する。さらに、図示しない両側壁は、連結壁23の幅方向両端縁、および、図示しない第2連結壁の幅方向両端縁に連続する。両側壁のそれぞれは、長手方向に延びる。
【0026】
なお、筐体2は、第1壁21と、連結壁23、第2連結壁および両側壁の一部(厚み方向他方側部分)とを含む第1部材91と、第2壁22と、第2連結壁および両側壁の残部(厚み方向一方側部分)とを含む第2部材92との2部材から構成されてもよい。
【0027】
筐体2は、金属製である。つまり、筐体2の材料は、金属である。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、白金、金、それらの合金(真鍮、丹銅、ステンレスなど)などが挙げられる。好ましくは、合金、より好ましくは、真鍮(銅および亜鉛の合金)が挙げられる。
【0028】
放熱層3は、所定厚みを有し、長手方向に延びる形状を有する。放熱層3は、筐体2内に収容されている。具体的には、放熱層3は、第1壁21の厚み方向一方面に接触している。詳しくは、放熱層3は、第1壁21の厚み方向一方面の全部に接触している。放熱層3は、例えば、放熱シート、放熱グリス、放熱板などを含む。放熱シートの材料は、例えば、フィラーが樹脂に分散されたフィラー樹脂組成物が挙げられる。フィラーとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、炭素繊維などが挙げられる。樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられ、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。なお、エポキシ樹脂には、硬化剤を添加してもよい。放熱シートは、高い熱伝導性を得るために、例えば、窒化ホウ素や炭素繊維などの異方性を有するフィラーを厚み方向に配向させものを含む。放熱シートでは、例えば、フィラーが樹脂に対して厚み方向に配向してもよい。また、樹脂が熱硬化性樹脂を含み、BステージまたはCステージである。さらに、樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことができる。フィラーおよび樹脂の割合は、後述するアスカーC硬度および熱伝導率となるように、適宜調整される。
【0029】
放熱層3のアスカーC硬度は、例えば、75以下、好ましくは、55以下、より好ましくは、50以下、さらに好ましくは、40以下であり、また、例えば、1以上である。放熱層3のアスカーC硬度は、アスカーゴム硬度計C型により求められる。放熱層3のアスカーC硬度が上記した上限以下であれば、放熱層3が第1壁21およびプリント配線板4に密着でき、そのため、放熱層3による放熱性を向上できる。
【0030】
放熱層3の厚み方向の熱伝導率は、例えば、1W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、8W/m・K以上、さらに好ましくは、10W/m・K以上であり、また、例えば、200W/m・K以下である。放熱層3の熱伝導率は、ASTM-D5470に準拠した定常法、またはISO-22007-2に準拠したホットディスク法により求められる。放熱層3の熱伝導率が上記した下限以上であれば、光電変換部6で発生する熱を放熱層3を介して効率的に逃がすことができる。
【0031】
放熱層3の厚みは、例えば、100μm以上、好ましくは、300μm以上であり、また、例えば、3000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
【0032】
放熱層3は、市販品を用いることができる。
【0033】
プリント配線板4は、所定厚みを有し、長手方向に延びる形状を有する。プリント配線板4において後述する突出端部76以外の部分(一部の一例)が、筐体2内に収容されている。
【0034】
具体的には、プリント配線板4は、平面視略矩形の外形形状を有する。プリント配線板4は、放熱層3の厚み方向一方面に接触している。プリント配線板4は、支持板71と、導体回路72とを含む。
【0035】
支持板71は、第1壁21に平行しており、長手方向に延びる形状を有する。支持板71は、突出端部76を含む。突出端部76は、支持板71における長手方向一方側端部に設けられており、連結壁23から長手方向一方側に向かって突出する。支持板71の材料としては、例えば、ガラス繊維強化エポキシ樹脂などの硬質材料が挙げられる。支持板71のショアA硬度は、例えば、80以上、さらには、90以上であり、また、例えば、200以下である。支持板71のショアA硬度が上記した下限以上であれば、突出端部76の強度を確実にしつ、さらに、光電気混載基板5および光電変換部6を確実に支持できる。ショアA硬度は、デュロメーター(スプリング式ゴム硬度計)を用いて、JIS K 6253-3(2012年)に基づいて測定される。
【0036】
導体回路72は、支持板71の厚み方向一方面に配置されている。導体回路72は、第3端子73と、第4端子74と、図示しない配線とを備える。
【0037】
第3端子73は、筐体2に収容されている。第3端子73は、連結壁23の長手方向他方側に間隔を隔てて配置されている。
【0038】
第4端子74は、突出端部76の厚み方向一方面に配置されている。
【0039】
図示しない配線は、第3端子73と第4端子74とを連結する。
【0040】
導体回路72の材料としては、例えば、銅などの導体が挙げられる。
【0041】
プリント配線板4の厚みは、例えば、100μm以上、好ましくは、500μm以上、より好ましくは、1,000μm以上であり、また、例えば、10,000μm以下である。
【0042】
光電気混載基板5は、筐体2内に収容されており、プリント配線板4に実装されている。光電気混載基板5は、所定厚みを有し、長手方向に延びる平板形状を有する。具体的には、光電気混載基板5は、プリント配線板4の厚み方向一方面に接触している。光電気混載基板5は、光導波路51と、電気回路基板52とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0043】
光導波路51は、所定厚みを有し、長手方向に沿って延びる形状を有する。光導波路51は、プリント配線板4の厚み方向一方面に接触している。光導波路51は、アンダークラッド層53と、コア層54と、オーバークラッド層55とを備える。
【0044】
アンダークラッド層53は、平面視において、光導波路51と同一形状を有する。
【0045】
コア層54は、アンダークラッド層53の厚み方向他方面の幅方向中央部に配置されている。コア層54の幅は、平面視において、アンダークラッド層53の幅より狭い。
【0046】
オーバークラッド層55は、アンダークラッド層53の厚み方向他方面に、コア層54を被覆するように配置されている。オーバークラッド層55は、平面視において、アンダークラッド層53の外形形状と同一の形状を有する。具体的には、オーバークラッド層55は、コア層54の厚み方向他方面および幅方向両側面と、アンダークラッド層53の厚み方向他方面におけるコア層54の幅方向両外側部分とに配置されている。また、オーバークラッド層55は、プリント配線板4の厚み方向一方面に接触している。
【0047】
また、コア層54の長手方向一端部には、ミラー16が形成されている。
【0048】
光導波路51の材料としては、例えば、エポキシ樹脂などの透明材料が挙げられる。コア層54の屈折率は、アンダークラッド層53の屈折率およびオーバークラッド層55の屈折率より高い。光導波路51の厚みは、例えば、20μm以上、例えば、200μm以下である。
【0049】
電気回路基板52は、平面視において、光電気混載基板5と同一形状を有する。つまり、電気回路基板52は、所定厚みを有し、長手方向に延びる平板形状を有する。光導波路51の厚み方向一方側に配置されている。
【0050】
この電気回路基板52は、金属支持層56と、ベース絶縁層57と、導体層58と、図示しないカバー絶縁層とを備える。
【0051】
金属支持層56は、平面視において、光電気混載基板5と同一の外形形状を有する。光導波路51は、光電気混載基板5の厚み方向最他方側部である。そのため、金属支持層56は、アンダークラッド層53と接触している。金属支持層56の材料としては、例えば、ステンレスなどの金属が挙げられる。金属支持層56の厚みは、例えば、3μm以上であり、また、例えば、100μm以下である。なお、金属支持層56は、厚み方向を貫通する貫通孔8を含む。貫通孔8は、厚み方向に投影したときに、ミラー16と重複する。
【0052】
ベース絶縁層57は、平面視において、金属支持層56と同一の外形形状を有する。ベース絶縁層57は、金属支持層56の厚み方向一方面に配置されている。具体的には、ベース絶縁層57は、金属支持層56の厚み方向一方面の全てに接触する。また、ベース絶縁層57は、貫通孔8の厚み方向一端縁を閉塞する。ベース絶縁層57の材料としては、例えば、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。ベース絶縁層57の厚みは、例えば、5μm以上であり、また、例えば、40μm以下である。
【0053】
導体層58は、ベース絶縁層57の厚み方向一方面に配置されている。導体層58は、第1端子27と、第2端子28と、図示しない配線とを含む。
【0054】
第1端子27は、次に説明する光電変換部6に対応して配置されている。第1端子27は、互いに間隔を隔てて複数配置されている。
【0055】
第2端子28は、第1端子27の長手方向一方側に間隔を隔てて配置されている。第2端子28は、ワイヤ65を介して第3端子73と電気的に接続されている。
【0056】
図示しない配線は、第1端子27と第2端子28とを連結する。
【0057】
導体層58の材料としては、例えば、銅などの導体が挙げられる。導体層58の厚みは、例えば、3μm以上であり、また、例えば、20μm以下である。
【0058】
図示しないカバー絶縁層は、図示しない配線を被覆する。ベース絶縁層57の厚み方向一方面に配置されている。カバー絶縁層の材料および厚みは、ベース絶縁層57のそれらと同一である。
【0059】
光電気混載基板5の厚みは、例えば、20μm以上、また、例えば、200μm以下である。
【0060】
光電変換部6は、筐体2に収容されており、光電気混載基板5に実装されている。光電変換部6は、第1端子27の厚み方向一方側に対向配置されている。光電変換部6は、受発光部材61と、バンプ62とを含む。
【0061】
受発光部材61は、長手方向および幅方向に延びる略平板矩形状を有する。受発光部材61は、受発光口63を含む。受発光口63は、受発光部材61の厚み方向他方面において、互いに間隔を隔てて複数(例えば、4個)設けられている。受発光口63は、厚み方向に投影したときに、貫通孔8と重複する。これによって、光電気混載基板5の光導波路51は、光電変換部6と光学的に接続される。なお、受発光部材61は、厚み方向に投影したときに、第2端子28と重複せず、長手方向他方側にずれている。受発光部材61としては、例えば、電気を光に変換する発光素子が挙げられ、具体的には、面発光型発光ダイオード(VECSEL)が挙げられる。また、受発光部材61としては、例えば、光を電気に変換する受光素子が挙げられ、具体的には、フォトダイオード(PD)などが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。なお、受発光部材61において、発光素子の近傍には、発光駆動素子(具体的には、Driver IC)が設けられ、受光素子の近傍には、受光駆動素子(具体的には、TIA)が設けられてもよい。
【0062】
バンプ62は、受発光部材61の厚み方向他方面から厚み方向他方側に向かって突出するように設けられている。バンプ62は、受発光口63の周囲に位置する。バンプ62の長さ(厚み方向長さ、厚み)は、例えば、1μm以上、また、例えば、100μm以下である。バンプ62の材料としては、例えば、銅、金、はんだなどの導体が挙げられる。バンプ62は、第1端子27と接触する。これによって、光電変換部6の受発光部材61が、光電気混載基板5の電気回路基板52と電気的に接続される。
【0063】
さらに、受発光部材61、バンプ62および光電気混載基板5の実装部は、接着剤によって固定されて補強される。
【0064】
この光電気伝送複合モジュール1では、第1壁21、放熱層3、プリント配線板4、光電気混載基板5および光電変換部6が、厚み方向一方側に向かって順に配置されている。
【0065】
次に、この光電気伝送複合モジュール1の製造方法を説明する。
【0066】
まず、放熱層3を筐体2の第1壁21に配置する。
【0067】
続いて、放熱層3を第1壁21の厚み方向一方面に配置する。詳しくは、放熱層3を第1壁21の厚み方向一方面に貼着する。なお、筐体2を2部材(第1部材91および第2部材92)から構成する場合には、放熱層3の長手方向一端面を、第1部材91における連結壁23および両側壁の内側面に接触させる。
【0068】
次いで、プリント配線板4を放熱層3の厚み方向一方面に配置する。具体的には、第1壁21が第1部材91に含まれている場合には、支持板71において突出端部76以外の部分が放熱層3に貼着され、突出端部76が連結壁23から突出するように、プリント配線板4を筐体2(第1部材91)および放熱層3に対して設置する。
【0069】
別途、光電気混載基板5および光電変換部6を準備する。
【0070】
光電気混載基板5を準備するには、公知の方法によって光導波路51を電気回路基板52に設ける。また、バンプ62を第1端子27に配置し、続いて、受発光部材61をバンプ62と接続することによって、光電変換部6を光電気混載基板5に実装する。これにより、光電変換部6が実装された光電気混載基板5を準備する。
【0071】
続いて、光電変換部6が実装された光電気混載基板5をプリント配線板4に搭載する。具体的には、光導波路51をプリント配線板4に固定(図示しない接着剤を介して接着)するとともに、第2端子28と第3端子73とを、ワイヤ65を介して接続する。
【0072】
その後、第2壁22を含む第2部材92を、第1部材91に配置する。具体的には、第2部材の連結壁23、図示しない第2連結壁および図示しない両側壁と、第1部材91の連結壁23、図示しない第2連結壁および図示しない両側壁とを接合する。これによって、筐体2を作製する。
【0073】
これによって、筐体2と、放熱層3と、プリント配線板4と、光電気混載基板5と、光電変換部6とを備える光電気伝送複合モジュール1を製造する。
【0074】
<一実施形態の作用効果>
そして、光電気伝送複合モジュール1では、放熱層3が、第1壁21およびプリント配線板4に接触しているので、光電変換部6で発生し、光電気混載基板5およびプリント配線板4を経由して放熱層3に至った熱を、第1壁21に効率よく逃がすことができる。そのため、光電変換部6が効率よく動作でき、さらには、光電変換部6の熱を筐体2に効率的に逃がすことができる。
【0075】
放熱層3の材料は、上記したように、樹脂を含有するフィラー樹脂組成物であって、放熱層3が適度な柔らかさを有することから、放熱層3は、第1壁21およびプリント配線板4の両方に柔軟に接触できる。具体的には、放熱層3のアスカーC硬度が75以下と低ければ、放熱層3が第1壁21およびプリント配線板4に確実に密着でき、そのため、放熱性を向上できる。
【0076】
一方、特許文献1の記載の光モジュールでは、放熱シートがたとえ柔軟であっても、放熱シートは、プリント基板および光導波路には接触するが、筐体に接触しないので、上記した優れた効果を奏することができない。
【0077】
また、この光電気伝送複合モジュール1では、放熱層3の熱伝導率が5W/m・K以上であれば、光電変換部6で発生した熱をより一層効率よく逃がすことができる。
【0078】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、一実施形態および各変形例を適宜組み合わせることができる。さらに、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
図2に示す光電気伝送複合モジュール1は、さらに、第2放熱部材の一例としての第2放熱層80を備える。
【0080】
第2放熱層80は、光電変換部6および第2壁22の間に介在し、それらと接触する。また、第2放熱層80は、少なくとも受発光部材61の厚み方向一方面と接触する。なお、図2の仮想線で示すように、さらに、第2放熱層80は、受発光部材61の周側面(長手方向両面および幅方向両面)に接触してもよい。この場合には、第2放熱層80が光電変換部6の周囲の電気回路基板52の厚み方向一方面にも接触する。
【0081】
第2放熱層80の物性は、放熱層3の物性と同一である。とくに、第2放熱層80のアスカーC硬度が上記上限以下(好ましくは、50以下)であれば、第2放熱層80が光電変換部6の受発光部材61と柔軟に接触できる。光電変換部6が第2放熱層80との接触に起因する損傷を抑制できる。
【0082】
とりわけ、第1部材91と第2部材92との接合時、第2壁22が第2放熱層80に対してプレスする場合には、第2放熱層80が光電変換部6を損傷させ易い。
【0083】
しかし、この変形例では、上記した第2放熱層80が上記した低いアスカーC硬度(例えば、55以下)を有するので、光電変換部6の損傷を効率的に抑制できる。
【0084】
第2放熱層80を光電気伝送複合モジュール1に備えるには、例えば、放熱層3を第1壁21に配置し、プリント配線板4を放熱層3に配置し、光電変換部6が実装された光電気混載基板5をプリント配線板4に配置し、その後、第2放熱層80を光電変換部6に配置する。第2放熱層80は、放熱層3と同様の材料からシート形状に形成されている。
【0085】
その後、第2壁22を含む第2部材92を、第1部材91と接続する。その際、第2壁22は、例えば、Bステージの第2放熱層80を厚み方向他方側に押し込む。すると、第2放熱層80が変形しながら、受発光部材61の周側面、および、受発光部材61の周囲の光電気混載基板5の第1方向一方面に接触する。
【0086】
これによって、筐体2と、放熱層3と、プリント配線板4と、光電気混載基板5と、光電変換部6と、第2放熱層80とを備える光電気伝送複合モジュール1を得る。
【0087】
この光電気伝送複合モジュール1は、さらに第2放熱層80を含み、かかる第2放熱層80が、第2壁22に接触するので、光電変換部6で発生した熱をより一層効率よく逃がすことができる。つまり、光電変換部6の熱を放熱層3および第2放熱層80の2つによって、筐体2に効率よく逃がすことができる。
【0088】
この光電気伝送複合モジュール1では、第2放熱層80のアスカーC硬度が55以下と低ければ、第2放熱層80が光電変換部6に柔軟に接触できる。そのため、光電変換部6の損傷を抑制できる。
【0089】
また、光電気伝送複合モジュール1は、光電変換部6と電気的に接続される第1端子27および第2端子28を備えればよく、光電気混載基板5が光電変換部6をまだ実装しなくてもよい。
【0090】
図3図5に示すように、光導波路51と、電気回路基板52と、光電変換部6との厚み方向における配置は、逆であってもよい。
【0091】
図3に示すように、この光電気伝送複合モジュール1では、光導波路51と、電気回路基板52と、光電変換部6とが、厚み方向他方側に向かって順に配置されている。
【0092】
プリント配線板4は、厚み方向を貫通する貫通孔41を有する。光電変換部6は、貫通孔41内に配置されている。第3端子73は、貫通孔41の長手方向一方側であって、貫通孔41の近傍に配置されている。また、電気回路基板52は、貫通孔41の周囲の光電変換部6の厚み方向一方面に、接着剤42を介して固定されている。
【0093】
図3の変形例では、放熱層3は、プリント配線板4における厚み方向他方面および貫通孔41の内側面と、光電変換部6の厚み方向他方面および外周面と、光電変換部6の周囲の電気回路基板52の厚み方向他方面とに接触する。
【0094】
図4の変形例では、第2壁22と光導波路51との間に、第2放熱層80が配置されている。第2放熱層80は、第2壁22と光導波路51とに接触する。
【0095】
図5の変形例では、第1壁21は、第1突出部25を有する。第2壁22は、第2突出部26を有する。
【0096】
第1突出部25は、第1壁21において厚み方向一方側に向かって突出する。第1突出部25は、放熱層3と接触する。
【0097】
第2突出部26は、第2壁22において厚み方向他方側に向かって突出する。第2突出部26は、第2放熱層80と接触する。
【実施例
【0098】
以下に調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら調製例、実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0099】
調製例1
放熱シートとしてLiPOLY社製PK95を使用した。(放熱シートA)
【0100】
調製例2
フィラーとしてアルミナ(デンカ社製DAM-70)と、樹脂としてエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製jER828)および硬化剤(三新化学社製SI-60, SI-S)とを適量配合しワニスを調製した。次いで、ワニスを、アプリケーターで1mm程度の厚みに成膜した後、80℃のオーブンで30分加熱し、放熱シートBを作製した。
【0101】
調製例3
熱伝導率が、調製例2の放熱シートBの熱伝導率より低くなるように、アルミナの配合量を減らした以外は、調製例1と同様に処理して放熱シートCを作製した。
【0102】
<放熱シートの物性>
放熱シートおよび第2放熱シートの物性を表1に記載する。
【0103】
実施例1~3
図1に示す一実施形態の光電気伝送複合モジュール1を製造した。
【0104】
実施例1では、放熱シートAを放熱層3の作製に用いた。
【0105】
実施例2では、放熱シートBを放熱層3の作製に用いた。
【0106】
実施例3では、放熱シートCを放熱層3の作製に用いた。
【0107】
実施例4~6
図2に示す変形例の光電気伝送複合モジュール1を製造した。この光電気伝送複合モジュール1は、第2放熱層80をさらに備える。
【0108】
実施例4では、2つの放熱シートAを放熱層3および第2放熱層80の作製に用いた。
【0109】
実施例5では、2つの放熱シートBを放熱層3および第2放熱層80の作製に用いた。
【0110】
実施例6では、2つの放熱シートCを放熱層3および第2放熱層80の作製に用いた。
【0111】
比較例1
プリント配線板4と放熱層3との厚み方向における配置を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして、図6に示す光電気伝送複合モジュール1を製造した。
【0112】
比較例1の光電気伝送複合モジュール1では、第1壁21、プリント配線板4、放熱層3、光電気混載基板5および光電変換部6が厚み方向一方側に向かって順に配置されており、放熱層3は、第1壁21に接触していない。
【0113】
<評価>
下記の項目を評価した。
【0114】
(1)光電変換部の放熱
光電変換部6を駆動して、下記の基準で放熱性を評価した。
【0115】
シミュレーションにより駆動時の発光素子の温度を算出し、放熱性を評価した。なおシミュレーションでは、発光素子、発光駆動素子、受光素子および受光駆動素子を含む光電変換部6を設けたモデルとし、風速0.1m/sで冷却している環境下とした。
◎:発光素子の温度が50℃未満であった。
○:発光素子の温度が50℃以上55℃未満であった。
△:発光素子の温度が55℃以上60℃未満であった。
×:発光素子の温度が60℃以上であった。
【0116】
(2)光電変換部の損傷
光電変換部6を観察し、下記の基準で損傷を評価した。
◎:光電変換部6の損傷が全く観察されなかった。
○:光電変換部6の損傷がわずかに観察された。
【0117】
【表1】
【0118】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0119】
光電気伝送複合モジュールは、信号伝送に用いられる。
【符号の説明】
【0120】
1 光電気伝送複合モジュール
2 筐体
3 放熱層
4 プリント配線板
5 光電気混載基板
6 光電変換部
21 第1壁
22 第2壁
51 光導波路
52 電気回路基板
80 第2放熱層
図1
図2
図3
図4
図5
図6