(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20250515BHJP
H01M 50/51 20210101ALI20250515BHJP
H01M 50/521 20210101ALI20250515BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20250515BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20250515BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20250515BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20250515BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20250515BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/51
H01M50/521
H01M50/569
H01M50/522
H01M50/55 101
H01G11/10
H01G11/74
(21)【出願番号】P 2023539637
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013727
(87)【国際公開番号】W WO2023013155
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021129040
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】織田 将成
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
(72)【発明者】
【氏名】小才 高士
(72)【発明者】
【氏名】會澤 康幸
(72)【発明者】
【氏名】川崎 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】高森 良幸
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-099647(JP,A)
【文献】特開2018-116894(JP,A)
【文献】特開2005-332627(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/50-50/598
H01M50/20-50/298
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の正極端子と第1の負極端子が第1の方向に第1の間隔をもって配置した第1の電池と、第2の正極端子と第2の負極端子が前記第1の方向に第2の間隔をもって配置した第2の電池が、前記第1の方向と交差する方向の第2の方向に配列し、かつ、
前記第1の正極端子と前記第2の負極端子が前記第
2の方向に隣り合うように配列し、バスバが前記第1の正極端子と前記第2の負極端子を接続する組電池であって、
前記バスバの第1導通部材は、前記第1の正極端子と接合する第1接合部と、前記第1接合部から前記第1の方向に延在する第1延在部を有し、
前記バスバの第2導通部材は、前記第2の負極端子と接合する第2接合部と、前記第2接合部から前記第1の方向に延在する第2延在部を有し、
前記第1導通部材と前記第2導通部材とは互いに異なる材料であり、
前記第1導通部材と前記第2導通部材は第3接合部において接続し、
前記第1延在部の端部と前記第2延在部の端部は前記第1接合部と前記第2接合部を結ぶ線とは、前記第1の方向に離れて存在し、
前記第3接合部は、前記第1接合部あるいは前記第2接合部までの距離の一方が、他方よりも近い距離であって、前記第1延在部と前記第2延在部の重複部に形成されていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記第1延在部はさらに前記第2の方向に延在する第3延在部を有し、
前記第3接合部は、前記第2延在部と前記第3延在部の重複部に存在していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第2延在部はさらに前記第2の方向に延在する第4延在部を有し、
前記第3接合部は、前記第1延在部と前記第4延在部の重複部に存在していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記第2延在部はさらに前記第2の方向に延在する第4延在部を有し、
前記第3接合部は、前記第3延在部と前記第4延在部の重複部に存在していることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項5】
前記第1導通部材または前記第2導通部材は、平面で視て、前記第1の方向に電圧検出のための突起を有していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項6】
前記第3接合部が形成された面は、前記第1接合部及び前記第2接合部が形成された面に対して角度を有していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項7】
前記第1延在部と前記第2延在部は、ニッケルまたはニッケル合金を介して接合されている、請求項1
乃至6のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項8】
前記第3延在部は、前記第3接合部が形成された領域以外において、尺取り構造を有していることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項9】
前記第4延在部は、前記第3接合部が形成された領域以外において、尺取り構造を有していることを特徴とする請求項3に記載の組電池。
【請求項10】
前記第3延在部または前記第4延在部は、前記第3接合部が形成された領域以外において、尺取り構造を有していることを特徴とする請求項4に記載の組電池。
【請求項11】
前記第1の電池及び前記第2の電池は直方体であり、前記第1の電池の前記第1の正極
端子及び前記第1の負極
端子は、前記直方体の同一面に形成され、前記第2の電池の前記第2の正極
端子及び前記第2の負極
端子は、前記直方体の
前記同一面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項12】
前記第1の電池と前記第2の電池の組は、前記第2の方向に複数配列していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組電池用バスバおよび組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池を複数個備える組電池では、隣り合う二次電池の正・負極電極をバスバ (Bus Bar)といわれる金属製の接続部材により接続する。バスバは、アルミニウム、銅、鉄などの金属製の平板状部材であり、二次電池の正・負極電極に、レーザ溶接、超音波溶接等の接合により、または締結部材を用いて組付けられる。
【0003】
組電池を構成する各二次電池は、組立作業の際、あるいは運搬時の振動等により、二次電池セル相互の相対距離が希望しない位置関係へと変化する場合もある。また、通電や電池の膨張収縮によって、二次電池相互の相対距離が変化する場合もある。このため、バスバまたは二次電池の正・負極電極に応力が生じ、疲労破壊に至る懸念があった。
【0004】
バスバまたは二次電池に生じる応力を緩和するため、バスバの長さ方向における中間部に、プレスにより平板を厚さ方向に垂直に屈曲し、U字形状に突き出した応力緩和部を形成することが知られている。この構造においては、バスバが熱膨張したときに、応力緩和部が変形することで、二次電池の正・負極電極に伝達される負荷を軽減できるとされている。また、このような構造において、U字形状に形成した応力緩和部を、平板の厚さ方向に対して約90°捻った捻り部として形成する構造としたものもある(例えば、特許文献1参照)。ただし、厚さ方向に対して垂直方向にかかる負荷に対しては、応力を緩和する効果が殆どなく、応力緩和部を、平板の厚さ方向に対して約90°捻った捻り部として形成した場合でも、捻り部の剛直性が大きいので、基本的には、捻り部のないバスバと同様であり、厚さ方向に対して垂直方向にかかる負荷に対しては、応力を緩和する効果を期待することはできない。
【0005】
これに対して、特許文献2には、応力緩和効果を奏するバスバとして、第1取付け面11と第2取付け面12とが XY面に平行に配置され、第1立ち上がり面13と第2立ち上がり面14とがYZ面に平行または傾斜して配置され、つなぎ面15がXZ面に平行または傾斜して配置されており、前記第2立ち上がり面が前記第2取付け面のX方向における前記第1取付け面と同一側の側部からYZ面に平行または傾斜して配置され、前記つなぎ面はY方向に交差する方向に屈曲された断面U字形状の凹部を有し、前記第1取付け面と前記第1立ち上がり面との間に第1の湾曲部または傾斜部が形成され、前記第2取付け面と前記第2立ち上がり面との間に第2の湾曲部または傾斜部が形成されている、組電池用バスバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-73266号公報
【文献】特開2017-73398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数枚の金属板を板の厚さ方向に積層させて接合する形式の接合様式のうち、USWを用いて作製したバスバおよびそれを用いた組電池に関する。USWでは、大掛かりな装置を必要としないため、圧接、FSW接合に比べて、安価にUSW接合バスバを得ることができる。しかし、上記のようにこれらの接合様式では、複数枚の板の重なり領域の中に、接合部を設ける必要があるため接合の強度は板の平面方向の重なり面積の広さで、接合強度の上限が決まってしまう課題がある。
【0008】
バスバは、配置される隣り合う電池の正・負極の電極端子間を橋渡しする形で配置される。一般的に、バスバの形状は正・負極の電極端子間を結ぶ略平板的な形状であるが、USWバスバを略平板的な形状として作製する場合、特に端子間の直線距離が短い場合は、板同士の平面方向の重なり面積が狭く、接合強度に課題が生じやすい課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記課題を解決するため、接合する金属板同士の片面方向の重なり面積を増加させた形状のバスバを用いる。本発明の第一の様態によると、応力を緩和する立体構造を持たせつつ、接合面の接合強度を担保する方法として、第一の部材と第二の部材を重ね合わせ、その重ね合わせ部を超音波接合にて接合して、接合面積を稼ぎ、接合強度の尤度を上昇させる。それにより組電池内に配置されたバスバの疲労破壊の危険性を下げる。
【0010】
具体的には、本発明は、正極端子と、負極端子と、を備え、積層された複数の単電池と、第1の前記単電池の正極端子と第2の前記単電池の負極端子とを繋ぐバスバと、を有し、前記バスバは、第1の前記単電池の前記正極端子に接合する正極側導通部材と、第1の前記単電池の隣りに位置する第2の前記単電池の前記負極端子に接合する負極側導通部材と、を有し、前記正極端子及び前記正極側導通部材は前記負極端子及び前記負極側導通部材とは異なる材料からなり、前記正極側導通部材は、前記正極端子に接合される第1接合部と前記第1接合部から延長した第1延在部を有し、前記負極側導通部材は、前記負極端子に接合される第2接合部と前記第2接合部から延長し、前記第1接合部と前記第2接合部とを通る仮想線に対して前記第1延在部と同じ側に延長した第2延在部を有し、前記第1延在部と前記第2延在部とが接合された第3接合部を有し、前記バスバと前記単電池の重なる方向から見て、前記第1接合部と前記第2接合部とを結ぶ仮想線上に対し、前記正極側導通部材の端部は前記正極側導通部材に対向する前記負極側導通部材の端部と離れて配置され、前記第3接合部は、第1接合部或いは第2接合部から前記第3接合部までの距離の一方が他方より近い領域であって、前記第1延在部と前記第2延在部とが重ね合わされた重ね合わせ部に形成されたバスバ、を用いた組電池を用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるバスバを用いれば、三次元的に異なる方向に変形することが可能であるため、いずれの方向からの負荷に対しても応力緩和効果を奏するとともに、重なり合う板の平面方向の接合面積が広い特徴を持つため、応力に対する接合面の強度を十分に高くすることができる。そのため、バスバの疲労破壊の危険性が少ない組電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による組電池用バスバおよび組電池の例を図面と共に説明する。
図1は、この発明が適用される組電池の1例を示す分解斜視図である。
図1に示すように、組電池1は、多数の単電池2を、一対のエンドプレート4と一対のサイドプレート5によって固定した構造を有する。単電池2は、例えば、リチウムイオン二次電池等の角形二次電池である。
【0014】
角形の単電池2は、上面および下面、面積の大きい一対の平面および小さい面積の一対の側面を有する直方体形状を有している。単電池2の大きさは、例えば、長径が12cm、短径が1.2cm、高さが6.5cmであが、これは、単なる例であり、単電池は色々な大きさをとり得る。単電池2は、面積の大きい平面を対向して一列に配列されており、各単電池2の間、および列先頭の単電池2の前方および列最後尾の単電池2の後方にはホルダ3が介装されている。
【0015】
単電池2は、上部側に正極電極2aと負極電極2bとを有し、すべて同一のサイズ、形状、構造を有する。隣接する単電池2は、正極電極2aと負極電極2bとを対向させて、換言すれば、表裏の平面を交互に反転させて配列されている。正極電極2aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属により形成され、負極電極2bは、例えば、銅または銅合金等の銅系金属により形成されている。
【0016】
列先頭のホルダ3の前方および列最後尾のホルダ3の後方にはエンドプレート4が配置されている。一対のエンドプレート4は、金属材料により形成され、ほぼ矩形形状を有し、4つの角部にはボルト6を挿通する開口部4aが設けられている。一列に配列された単電池2の側方には、一対のサイドプレート5が配置されている。各サイドプレート5は、上下に間隔を置いて設けられた差渡し部と、この差渡し部を連結する連結部を有する矩形枠体である。枠体の各角部にはエンドプレート4の開口部4aに対応して開口部5aが形成されている。
【0017】
組電池1は、列先頭側のエンドプレート4と列後方側のエンドプレート4とを、各サイドプレート5の前後の連結部の内側に配し、ボルト6をサイドプレート5の開口部5aおよびエンドプレート4の開口部4aに挿通して締結により固定して形成される。ボルト6は、ホルダ3に形成したねじ孔(図示せず)に螺合するか、エンドプレート4の裏面側にナット(図示せず)を配して締結する。ボルト6による締結に代えてリベットによる固定としてもよい。
【0018】
各単電池2の上部側には、列状に配列された単電池2の正・負極電極2a、2bを囲うように絶縁カバー7が配置されている。隣接する単電池2の正極電極2aと負極電極2bは、バスバ10により接続されている。すべての単電池2は、バスバ10により直列に接続されている。列先頭の単電池2の正極電極2a1および列最後尾の単電池2の負極電極2b1には、端バスバ8が接続されている。バスバ10または端バスバ8と、正・負極電極2a、2bとは、レーザ溶接、超音波溶接等の溶接により接合される。溶接によらず、ねじ締結による接続とする構造としてもよい。
【0019】
一続きの絶縁カバー7の一方に配置されるバスバ10は、ほぼ同一の形状、構造を有している。他方の一続きの絶縁カバーに配置されるバスバ10は、一方の絶縁カバー7に配置されるバスバ10の形状とほぼ鏡面対象な形状をしている。端バスバ8は、単電池2の正・負極電極2a、2bの一方に接続される取付け面を有し、取付け面と反対側の端部には、ビス締結用の貫通孔が設けられている。本発明は、バスバ10の構造に特徴を有しており、以下、バスバ10の一実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
図2は、
図1に図示された組電池用バスバ10の、実施例1による外観斜視図であり、
図3は分解斜視図である。バスバ10は、アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系金属、銅または銅合金等の銅系金属、鉄等の金属からなる1枚の板金をプレス加工して形成される第1板11と、第1板11とは異なる素材で、アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系金属、銅または銅合金等の銅系金属、鉄等の金属からなる1枚の板金をプレス加工して形成される第2板12とからなる。以下の説明では、X方向、X方向に垂直なY方向、X方向およびY方向に垂直なZ方向は、
図3に示すとおりである。
【0021】
バスバ10は、第1の単電池の正極端子2aに接合する正極側導通部材である第1板11と、第1の単電池の隣りに位置する第2の単電池の負極端子2bに接合する負極側導通部材である第2板12とで構成している。正極側導通部材である第1板11は、前記正極端子2aに接合される第1接合部111と前記第1接合部111から延長した第1延在部112を有している。
【0022】
一方で、負極側導通部材である第2板12は、前記負極端子2bに接合される第2接合部121と前記第2接合部121から延長し、第1接合部111と第2接合部121とを通る仮想線に対して第1延在部112と同じ側に延長した第2延在部122を有している。
【0023】
これ等に加え、バスバ10には、第1延在部111と第2延在部121の少なくともいずれかの一方から、延在部112または122の端面から延長した第3延在部13を有し、第3延在部13は、前記単電池2の重なる方向に、ほぼ平行に延在しており、第3延在部13と他方の延在部112または122の面の少なくとも一部が、超音波接合をもって接合された第3接合部131を有している。第3接合部13は、第1接合部111と第2接合部121を結ぶ仮想線から直角方向に離れた位置に存在している。また、正極側導通部材である第1板11の端部と負極側導通部材である第2板12の端部は離れた位置に存在している。すなわち、端部突き合わせではない。さらに、第3接合部131は、第1接合部111或いは第2接合部121のいずれかとの距離が、他方との距離よりも短いという構成となっている。
【0024】
このような形状のバスバ10を用いる理由としては、バスバ10のうち、端子上部に配置される平坦性が求められることがあげられる。すなわち、バスバのうち、端子の上部に配置される部分が平坦でない場合、この後の工程で、端子とバスバを接合する場合、接合時の押えに不具合が生じる可能性や、接合不良が生じやすいという課題がある。一方、USW(Ultrasonic welding)接合では、USW接合に特有の接合痕が生じる。その結果、バスバの上面および下面は平たんではなくなるという課題がある。これに対して本発明におけるバスバ10を用いた場合、端子の上部の平坦性を維持しつつ、第1板11と第2板12を接合するための面積を広くとることができるという利点を有する。したがって、第1板11と第2板12の接合強度を高くすることが出来る。
【0025】
すなわち、単純な重ね合わせ構造では、正極端子と負極端子を結ぶ面の上下に第3接合部を用いた場合、上記の平坦性を求められるため、接合面積を小さくせざるを得ないという問題がある。これに対して、本発明におけるバスバ10を用いることで、この問題を解決することができる。本発明におけるバスバ10を用いれば、バスバ10における端子上面の部分に接合痕が入ることは無いため、接合面積を広くとることができる。
【0026】
具体的に採用することのできる接合面積を試算すると次のとおりである。ここでは板の平面方向の面積を記載する。すなわち、第1板11の幅をA,第2板12の幅をB,第1板11と第2板12の間の距離をC、第3延在部の幅をDとする。この時、本発明におけるバスバでは、超音波接合できる最大の面積S1は、S1=(A+B+C)×Dとあらわすことができる。ところで、A、B、C、Dの例としては、A=1cm、B=1cm、C=5mm、D=2mm乃至10mmである。また、第1板11、第2板12の板厚の例としては、例えば、0.5mm乃至1.5mm、であり、より好ましくは、0.6mm乃至0.8mm程度である。
【0027】
ただし、上記の寸法は例であり、A,B,C,Dの幅は特に制限はなく、モジュールやパックの中に取り付けることができる大きさであればどのような大きさでも構わない。また、接合面は、延在部と他方の板が重なっている領域であれば、どのような面積、かつ、どのような場所に配置しても本発明における効果が得られる。
【0028】
この時、第1延在部112と第2延在部122の両方から、延在部の端面から延長した第3延在部13あるいは第4延在部を有してもよく、この場合も、最大の面積S1も
図2に示すようになる。なおバスバ10の、第1延在部112と、第3延在部131と、第2延在部122の内の、USW接合部を設けていない個所については電圧検出線を取り付けることができる。
【0029】
バスバ10における第1板11あるいは、第2板12の少なくとも一方のうち、第1板11と第2板12が互いに物理的に接続される面には、ニッケルメッキを施しても良い。第1板11と第2板12の双方にニッケルメッキを施しても良い。ニッケルメッキが施される面は、第1板11と第2板12が互いに物理的に接続される面の一部のみでも良いし、全面でも良い。また、ニッケルメッキが施される面は、第1板11と第2板12が互いに物理的に接続される面だけでも良いし、板のうちのその他の面にも施されていても良い。
【0030】
第1板11と第2板12が互いに物理的に接続される面にニッケルメッキを施すことで、アルミニウム系金属と銅系金属を接合する際に、接合のプロセスマージンを増加させることができ、結果的に接合面の接合強度を高めることができる。また、アルミニウム系金属の腐食を抑える効果も期待できる。施されるニッケルメッキの厚さは、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上50μm以下であり、最も好ましくは4μm以上10μm以下である。このニッケルメッキの厚さを増加させることでもUSW接合のプロセスマージンを増加させることができる。ニッケルメッキの光沢度は、無光沢、半光沢、光沢メッキがあるが、接合条件に合わせて何れの光沢度を選んでも良い。
【0031】
光沢度は光沢度計を用いて測定することができる。具体的には、光沢度計を用いた測定で、板面の真上からの入射光の強度であるIin と、その光が入射光に対して45度方向
へ反射した反射光の強度であるIoutの比の逆数の対数である log(Iin/Io
ut)を光沢度と規定した際に、光沢度は0.2以上2.5以下が好ましく、より好ましくは0.3以上2.5以下が好ましく、最も好ましくは0.6以上2.5以下が好ましい。光沢度をこの範囲とすることでも、USW接合のプロセスマージンを増加させることができる。
【0032】
本実施例1の組み合わせの具体例を示す。第1板11に純アルミニウム、第2板12に無酸素銅、第2板12の表面にはニッケルめっきを施した材料とすることができる。この際のニッケルメッキ厚は5μmとすることができ、光沢度は2.0とすることができる。ニッケルメッキの方法としては電気メッキと無電解メッキがある。USW接合ができればいずれの方法を取っても良いが、電気メッキが好ましい。
【0033】
図4はバスバ10の比較例を示す斜視図である。
図4において、平板状の第1板11と平板状の第2板12とが端面において突き合わせで接合されている。以後この構成を平板状クラッド材と呼ぶ。
図4において、第1板11と第2板は接合面30において接合されている。接合面30を中心にして、板の平面方向に幅wにわたって、第1板11を構成する材料と第2板を構成する材料との混合領域31が形成されている。幅wは例えば1mmである。
図4に示す構成は、USWによる圧痕が存在しないので、正極電極あるいは負極電極における接続の信頼性は確保することが出来る。しかし、
図4のような、平板状クラッド材はコストが高いという問題がある。
【実施例2】
【0034】
図5は、実施例2を示す斜視図である。実施例2では、実施形態1に対し、第1板11から伸びる延在部112の端面から、第3延在部13の他に、さらに電圧検出線を取り付けるための突起113を設けた構成である。
図6は
図5の分解斜視図である。それ以外の構成は実施例1の構成と同じである。なお、ここには示さないが、第2板12から伸びる延在部122に、電圧検出線を取り付けるための突起113を設けても良い。この場合も、本発明におけるバスバでは超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S2はS2=(A+B+C)×Dであり、接合面積を大きくできることは同じである。
【実施例3】
【0035】
図7は実施例3を示す斜視図である。
図7は、実施例1の構成に対して、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112および第2延在部122を曲げ、その延在部112及び122の両方から延長した第3延在部13を持つ構成である。
図8は
図7の分解斜視図である。それ以外の構成は実施例1の構成と同じである。実施例3におけるバスバ10においても超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S3はS3=(A+B+C)×Dであり、大きくとることが出来る。この場合、曲げ角度はモジュールやパックの中に取り付けることができればどのような角度でも良い。本実施形態では45度の角度を示すが、90度にしても超音波接合可能な最大の面積は変わらない。なおバスバ10の、第1延在部112と第二延在部122において、USW接合部を設けていない個所については電圧検出線を取り付けることができる。
【実施例4】
【0036】
図9は、実施例4を示す斜視図である。
図9は、実施例3の構成において、第1板11に対し、第1延在部とは逆方向に、電圧検出線取付け用の突起114を追加した構成である。それ以外の構成は実施例3と同じである。実施例4においても、本発明におけるバスバでは超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S4は、S4=(A+B+C)×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例5】
【0037】
図10は実施例5の斜視図である。
図10は、実施例3において、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112および第2延在部122を曲げ、その延在部112または122の片方から延長した第3延在部13を持ち、第3延在部13に応力を緩和するための尺取構造14を設けた場合の構成である。実施例5では、第3延在部の、第1延在部及び第2延在部に対する曲げ角度を90度としたが、それ以外の角度でも同様の効果が得られる。それ以外の構成は実施例3と同様である。この場合、尺取構造14の長さをEとすると、本発明におけるバスバ10では超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S5は、S5=(A+C-E)×D、あるいは、S5=(B+C-E)×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例6】
【0038】
図11は実施例6を示す斜視図である。
図11は、実施例1の構成において、平面で視て、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112又は第2延在部122の一方の延在部から第2の方向に延長した第3延在部13を持つ場合の構成である。それ以外の構成は実施例1と同様である。実施例6においても、バスバ10における超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S6は、S6=A×D、あるいは、S6=B×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例7】
【0039】
図12は、実施例7を示す斜視図である。
図12は、実施例1の構成において、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112および第2延在部122を曲げ、その一方の延在部から延長した第3延在部13を持ち、第3延在部13のうちの一部に尺取構造14を設けた構成である。それ以外の構成は実施例1と同じである。この場合、本発明におけるバスバでは超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S7は、S7=(A+C-E)×D、あるいは、S7=(B+C-E)×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例8】
【0040】
図13は実施例8を示す斜視図である。
図13は、実施例3において、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112および第2延在部122を曲げ、その延在部の片方から延長した第3延在部13を持つ場合の構成である。実施例8では曲げ角度を90度としたが、それ以外の角度でも同様の効果が得られる。それ以外の構成は実施例3と同じである。この場合も、実施例8におけるバスバ10では超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S8は、S8=A×D、あるいは、S8=B×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例9】
【0041】
図14は実施例9を示す斜視図である。
図14は、第1板11と第2板12の片方に、電圧検出を取り付けるための突起114を設けたものであり、それ以外の構成は実施例5と同様である。実施例9では、第3延在部13の第1延在部112あるいは第2延在部122に対する曲げ角度を90度としたが、それ以外の角度でも同様の効果が得られる。この場合、尺取構造14の長さをEとすると、本発明におけるバスバでは超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S9は、S9=(A+C-E)×D、あるいは、S9=(B+C-E)×Dと表すことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【実施例10】
【0042】
図15は、実施例10を示す斜視図である。
図15は、第1板11と第2板12に存在する第1延在部112および第2延在部122を曲げ、その延在部112または122の片方から延長した第3延在部13を持つ場合とした構成であり、延在部13が、実施例8の構成とは逆の関係になっている。なおUSWのホーンとアンビルを当てる向きは、ホーンが第1板11側で、アンビルが第2板12側でも良いし、ホーンが第2板12側でアンビルが第1板11側になってもよい。いずれにしても、本発明における効果を得ることができる。実施例10では曲げ角度を90度としたが、それ以外の角度でも同様の効果が得られる。それ以外の構成は実施例3と同じである。実施例10におけるバスバ10においても、超音波接合できる、板の平面方向の最大の面積S3は、S3=(A+B+C)×Dとあらわすことができ、接合面積を大きくとることが出来る。
【0043】
なお、上記各実施形態は例示である。例えば第1板11および第2板12の厚さを変更した場合にも本発明における効果を得ることができる。またバスバ10におけるつなぎ面の位置および面積は、それぞれの延在部3の長さに応じて、さまざまに変更することができる。また、各々の延在部の平坦な部分に、湾曲部、折曲部、傾斜部を、適宜、追加して設けたり、段部を付けたりしてもよい。また、上記各実施形態に示された構造を、組み合わせてもよい。
【0044】
本発明におけるバスバと電圧検出線の取り付け方については特に限定されるものではないが、例えば超音波接合、レーザ溶接、ネジ締結、カシメなどを挙げることができる。また電圧検出線の取出しのためバスバ上に設ける構造については組電池の他の部品と干渉しない限りは、バスバの所望の個所に設けることができる。またその形状も様々としてよい。
【0045】
例えば、実施例に示すようにバスバの板面に平行な方向に延在部として設けても良いし、バスバの板面に垂直な方向などに突起構造として設けても良い。突起構造は平板状なだけではなく、立体的な複雑構造であっても良い。その突起構造に対して圧入コネクタを取り付けて電圧検出線を取り付けても良い。その突起構造は、圧入コネクタの大きさや、コネクタの組電池内の取り回しに合わせて自由に立体構造を取ることができる。
【0046】
本発明は、リチウムイオン二次電池を接続するバスバ10に限られるものではなく、ニッケル水素電池またはニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池のように水溶性電解液を用いる二次電池を接続するバスバにも適用することが可能である。また、本発明は、リチウムイオンキャパシタや電解二重層コンデンサ等の蓄電素子を接続するバスバにも適用が可能である。
【0047】
その他、本発明の組電池用バスバ10は、種々、変形して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…組電池、 2…単電池、 2a…正極電極、 2b…負極電極、 3…ホルダ、 4…エンドプレート、 4a…開口部、 5…サイドプレート、 5b…開口部、 6…ボルト、 7…絶縁カバー、 8…端バスバ、 10…バスバ、 10…表示パネル、 11…第1板(正極側導通部材)、 12…第2板(負極側導通部材)、 13…第3延在部、 14…尺取り構造、 20…電極端子の端部、 30…接合面、 31…混合領域、 111…第1接合部、 112…第1延在部、 113…第1突起、 114…第2突起、 121…第2接合部、 122…第2延在部、 131…第3接合部