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7681726漂白されたたばこ残渣およびその製造方法、再生たばこ材料およびその製造方法、並びにたばこ製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】漂白されたたばこ残渣およびその製造方法、再生たばこ材料およびその製造方法、並びにたばこ製品
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/12 20060101AFI20250515BHJP
   A24B 15/167 20200101ALI20250515BHJP
   A24B 15/24 20060101ALI20250515BHJP
【FI】
A24B15/12
A24B15/167
A24B15/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023568904
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047673
(87)【国際公開番号】W WO2023119517
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 研児
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸也
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0196658(US,A1)
【文献】米国特許第04235247(US,A)
【文献】国際公開第2005/122803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/12
A24B 15/167
A24B 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、前記たばこ残渣を漂白することを含む、漂白されたたばこ残渣の製造方法。
【請求項2】
前記処理に先立って、たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、前記たばこ残渣を調製することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により得られる、漂白されたたばこ残渣。
【請求項4】
たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣とを得ることと、
前記たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、漂白されたたばこ残渣を得ることと、
前記たばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得ることと、
前記酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、前記酸性たばこ抽出液から有色成分を除去し、これによりたばこ香味液を得ることと、
前記漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを混合すること
を含む、再生たばこ材料の製造方法。
【請求項5】
前記逆相吸着剤での処理が、前記逆相吸着剤からなる固相に前記酸性たばこ抽出液を通すことにより行われる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性たばこ抽出液の取得が、エタノールの最終濃度が10質量%以下になるように、前記たばこ抽出液またはpH4.1以下に調整された前記たばこ抽出液にエタノールを添加することを更に含む請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4~6の何れか1項に記載の方法により得られる再生たばこ材料。
【請求項8】
請求項7に記載の再生たばこ材料を含むたばこ製品。
【請求項9】
請求項7に記載の再生たばこ材料を含む加熱型香味吸引器。
【請求項10】
請求項7に記載の再生たばこ材料を含む口腔用たばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白されたたばこ残渣およびその製造方法、再生たばこ材料およびその製造方法、並びにたばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
葉たばこなどのたばこ材料から水溶性成分を抽出し、得られたたばこ抽出液やたばこ残渣を、たばこ製品の香味源として使用することが報告されている。例えば、たばこ残渣からシートたばこを調製し、シートたばこにたばこ抽出液を添加して、得られた再生たばこ材料を紙巻たばこ、口腔たばこ、香味吸引器などのたばこ製品の香味源として使用することが報告されている(特許文献1)。
【0003】
再生たばこ材料をたばこ製品の香味源として使用する場合、再生たばこ材料を収容するカートリッジの交換時などに再生たばこ材料がユーザによって視認されたり、再生たばこ材料中の色素成分が、再生たばこ材料を包む包材(例えば、紙または不織布)に染み出たりする可能性がある。このため、再生たばこ材料の色は白色に近い方が外観上好まれる。
【0004】
一方、紙巻たばこのたばこ主流煙や加熱型香味吸引器のたばこベイパー中に、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)が含まれることが知られている。TSNAは、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、N’-ニトロソノルニコチン(NNN)、N’-ニトロソアナタビン(NAT)、およびN’-ニトロソアナバシン(NAB)の4成分を指す。
【0005】
たばこ主流煙中に含まれるTSNAは、3つの経路により生成されることが報告されている(非特許文献1~3)。3つの経路は、具体的には、たばこ充填材中に含まれるTSNAが蒸発により煙へ直接移行する経路と、たばこ充填材中のアルカロイド類が燃焼時の熱を利用してニトロソ化してTSNAが合成される経路と、リグニン様高分子成分に結合しているNNKが燃焼時の熱により解離して煙中へ移行する経路である。たばこ充填材中でリグニン様高分子成分に結合しているNNKは、「結合型NNK」と呼ばれ、たばこ充填材中でリグニン様高分子成分に結合することなく遊離しているNNKは、「遊離型NNK」と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4895175号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hoffmann D. et al., “Origin in tobacco smoke of N’-nitrosonornicotine, a tobacco-specific carcinogen: Brief Communication”, J. Natl. Cancer Inst., Vol. 58(6), p. 1841-1844, 1977
【文献】Adams J. D. et al., “On the formation of the tobacco-specific carcinogen 4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone during smoking”, Cancer Lett., Vol. 17(3), p. 339-346, 1983
【文献】Lipowicz P. J. and Seeman J. I., “A model to estimate the sources of tobacco-specific nitrosamines in cigarette smoke”, Chem. Res. Toxicol., Vol. 30(8), p. 1556-1561, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、たばこ特異的ニトロソアミンの一種である4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(以下、NNKともいう)が低減し、かつ白色化したたばこ残渣に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの側面によれば、たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、前記たばこ残渣を漂白することを含む、漂白されたたばこ残渣の製造方法が提供される。
別の側面によれば、前述の方法により得られる、漂白されたたばこ残渣が提供される。
【0010】
更に別の側面によれば、
たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣とを得ることと、
前記たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、漂白されたたばこ残渣を得ることと、
前記たばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得ることと、
前記酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、前記酸性たばこ抽出液から有色成分を除去し、これによりたばこ香味液を得ることと、
前記漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを混合すること
を含む、再生たばこ材料の製造方法が提供される。
更に別の側面によれば、前述の方法により得られる再生たばこ材料が提供される。
更に別の側面によれば、前述の再生たばこ材料を含むたばこ製品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、たばこ特異的ニトロソアミンの一種である4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)が低減し、かつ白色化したたばこ残渣に関する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、漂白されたたばこ残渣および再生たばこ材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、非燃焼加熱型香味吸引器の一例を示す斜視図である。
図3図3は、非燃焼加熱型香味吸引物品の断面図である。
図4図4は、エアロゾル生成装置の内部構造を示す図である。
図5図5は、漂白液の濃度とたばこ残渣の色との関係を示すグラフである。
図6図6は、漂白液の濃度とたばこ残渣の色との関係を示すグラフである。
図7図7は、反応時間とたばこ残渣の色との関係を示すグラフである
図8図8は、漂白液の濃度と結合型NNK量との関係を示すグラフである。
図9図9は、漂白液中の漂白剤の濃度と結合型NNK量との関係を示すグラフである。
図10図10は、反応時間と結合型NNK量との関係を示すグラフである。
図11図11は、たばこ残渣に対する漂白液の量と結合型NNK量との関係を示すグラフである。
図12図12は、漂白液の濃度とたばこ残渣の質量比との関係を示すグラフである。
図13図13は、漂白液の濃度とたばこ残渣の質量比との関係を示すグラフである。
図14図14は、たばこ香味液の色分析の結果を示すグラフである。
図15図15は、酸性たばこ抽出液のpHとたばこ香味液中のニコチン含量との関係を示すグラフである。
図16図16は、酸性たばこ抽出液中のエタノール濃度とたばこ香味液中のベンズアルデヒド含量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
<1.漂白されたたばこ残渣の製造方法>
一実施形態によれば、漂白されたたばこ残渣の製造方法は、たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、たばこ残渣を漂白することを含む。好ましい実施形態によれば、漂白されたたばこ残渣の製造方法は、上記の漂白処理に先立って、たばこ材料からたばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ残渣を調製することを更に含む。
【0015】
すなわち、好ましい実施形態によれば、漂白されたたばこ残渣の製造方法は、
(S1)たばこ材料からたばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ残渣を得ることと、
(S2)たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、たばこ残渣を漂白することと
を含む。
【0016】
好ましい実施形態に係る方法を図1に示す。なお、図1は、「漂白されたたばこ残渣の製造方法」に加えて、「再生たばこ材料の製造方法」も併せて示す。
【0017】
以下、好ましい実施形態に係る方法を、「抽出工程(S1)」、「漂白工程(S2)」の順に説明する。
【0018】
[抽出工程(S1)]
抽出工程(S1)では、たばこ材料からたばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ残渣を得る。抽出工程(S1)では、たばこ残渣が得られるのと同時にたばこ抽出液も得られる(図1参照)。
【0019】
たばこ材料は、燃焼型または加熱型の香味吸引器などのたばこ製品に配合される準備が整ったたばこ刻を使用することができる。「たばこ製品に配合される準備が整ったたばこ刻」とは、農家での乾燥工程、その後の原料工場での1年ないし数年の長期熟成工程、およびその後の製造工場でのブレンドおよび裁刻など種々の加工処理を経て、たばこ製品に配合される準備が整ったたばこ刻を指す。
【0020】
たばこ刻は、葉たばこの裁刻物である。たばこ刻は、除骨葉の刻、中骨の刻、再構成たばこ(すなわち、工場の作業工程で生じる葉屑、刻み屑、中骨屑、細粉などを再使用可能な形状に加工したたばこ材料)の刻、またはこれらの混合物のいずれであってもよい。たばこ刻は、抽出効率を高めるために粉砕し、得られた粉砕物を抽出のために使用してもよい。
【0021】
たばこ刻は、任意の品種のものを使用することができ、たとえば黄色種、バーレー種、オリエント種などのものを使用することができる。たばこ刻は、単一品種のものを使用してもよいし、異なる品種の混合物を使用してもよい。
【0022】
水性溶媒としては、水または10質量%以下の濃度のエタノール水溶液を使用することができる。水性溶媒は、一般的には水であり、好ましくは室温(例えば、約20℃)~70℃の水である。水性溶媒は、例えば、たばこ材料に対して500~5000質量%の量で使用することができる。
【0023】
抽出は、例えば、たばこ材料を40~60℃の温水中で30~180分間浸漬するか、あるいは、たばこ材料を40~60℃の温水中で30~180分間振盪(例えば200rpm)することにより行うことができる。
【0024】
また、抽出は、複数回の抽出操作を繰り返すことにより行ってもよい。具体的には、たばこ材料からたばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出し、その後、得られたたばこ残渣を新たな水性溶媒に入れて2回目の抽出操作を行い、更に必要に応じて、新たな水性溶媒での抽出操作を繰り返すことにより、抽出を行ってもよい。
【0025】
抽出により、たばこ残渣とたばこ抽出液との混合物が得られる。たばこ抽出液は、たばこ材料に含まれる水溶性成分を含有する。「たばこ材料に含まれる水溶性成分」として、例えば、たばこ香味に寄与する成分(例えば、有機酸、葉面樹脂、テルペノイド、ポリフェノール類)などが挙げられる。
【0026】
抽出の後、たばこ残渣とたばこ抽出液とは分離され、たばこ抽出液は、たばこ香味液を得るための原料として使用することができる。一方、たばこ残渣は、最終的に得られたたばこ香味液と混合し、得られた混合物を適宜加工して、たばこ充填材(以下、再生たばこ材料ともいう)を作製するために使用することができる。例えば、たばこ残渣は、最終的に得られたたばこ香味液と混合し、得られた混合物からシートたばこなどのたばこ成形体を作製するために使用してもよい。あるいは、たばこ残渣は、最終的に得られたたばこ香味液と混合し、得られた混合物を乾燥させ粉砕してたばこパウダーを作製するために使用してもよい。
【0027】
[漂白工程(S2)]
漂白工程(S2)では、抽出工程(S1)で得られたたばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、たばこ残渣を漂白する(図1参照)。これにより、漂白されたたばこ残渣を得る。本明細書において「漂白されたたばこ残渣」は、漂白処理を施されたたばこ残渣を指す。すなわち、「漂白されたたばこ残渣」は、漂白処理を施されていればよく、漂白処理によって完全に白色に変化している必要はない。
【0028】
漂白工程は、たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液に浸漬させることにより行うことができる。
【0029】
過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用すると、たばこ残渣と過酢酸とが反応することにより消費された過酢酸の減少分を、酢酸と過酸化水素との反応により生成する過酢酸が補うことができ、これにより、所定濃度以上の濃度で過酢酸を反応液中に存在させることができる。この場合、たばこ残渣の漂白効率を向上させることができる。
【0030】
水溶液中の過酢酸の濃度は、例えば0.015~10質量%、好ましくは0.15~1.5質量%である。水溶液中の酢酸の濃度は、例えば0.04~4質量%、好ましくは0.4~4質量%である。水溶液中の過酸化水素の濃度は、例えば0.0055~0.55質量%、好ましくは0.055~0.55質量%である。
【0031】
過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液は、過酢酸製剤として市販されているものを使用することができる。好ましくは、食品添加物として認可されている過酢酸製剤を使用することができる。例えば、パーサンMP2-J(関東化学株式会社)を使用することができる。パーサンMP2-Jは、過酢酸15質量%、酢酸40質量%、過酸化水素5.5質量%、1質量%未満の安定剤、および残りの水から構成される。
【0032】
漂白工程は、たばこ残渣を漂白することが可能な条件下で、たばこ残渣を漂白液に浸漬させることにより実施することができる。例えば、漂白工程は、22~100℃の温度で、15~240分間にわたって行うことができる。漂白工程は、加温しながら行うことが好ましく、例えば40~100℃の温度で行うことが好ましい。漂白工程を加温しながら行うと、たばこ残渣の漂白効果を高めることができるとともに、たばこ残渣中の結合型NNK量の低減効果を高めることができる。
【0033】
また、漂白工程において、たばこ残渣の質量と水溶液(漂白液)の質量との比(固液比)は、例えば1:30~1:100とすることができる。
【0034】
[効果]
上述の方法によれば、たばこ残渣を効率良く漂白できるとともに、たばこ残渣中の結合型NNKの量を低減することができる(後述の実施例1および2を参照)。このため、上述の方法は、白色化されて優れた外観(すなわち、たばこ製品に組み込んだ際にユーザに望まれる色)を有し、低減した量の結合型NNKを含んでいるたばこ残渣を製造することができる。本明細書において「白色化された」という用語は、たばこ残渣の視覚的な色が、漂白処理によって、より薄い色に変化していることを指す。すなわち、「白色化された」という用語は、たばこ残渣が視覚的に完全に白色に変化している場合だけでなく、たばこ残渣が視覚的に完全に白色に変化していない場合も包含する。
【0035】
<2.再生たばこ材料の製造方法>
上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣を、無色化されたたばこ抽出液と組み合わせると、白色化された再生たばこ材料を製造することができる。
【0036】
一実施形態によれば、再生たばこ材料の製造方法は、
上記の抽出工程(S1)で得られたたばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得ることと、
前記酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、前記酸性たばこ抽出液から有色成分を除去し、これによりたばこ香味液(すなわち、無色化されたたばこ抽出液)を得ることと、
上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを混合すること
を含む(図1参照)。
【0037】
すなわち、一実施形態によれば、再生たばこ材料の製造方法は、
(S1)たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣とを得ることと、
(S2)前記たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、漂白されたたばこ残渣を得ることと、
(S3)前記たばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得ることと、
(S4)前記酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、前記酸性たばこ抽出液から有色成分を除去し、これによりたばこ香味液(すなわち、無色化されたたばこ抽出液)を得ることと、
(S5)前記漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを混合すること
を含む(図1参照)。
【0038】
本明細書において、たばこ材料から水溶性成分を抽出することにより得られる液体を「たばこ抽出液」と呼び、この抽出の際に得られる固体を「たばこ残渣」と呼び、たばこ抽出液のpHを4.1以下に調整することにより得られる液体を「酸性たばこ抽出液」と呼び、酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理することにより得られる液体を「たばこ香味液」と呼ぶ。
【0039】
以下、この実施形態に係る方法を、(S1)~(S5)の工程順に説明する。
【0040】
[抽出工程(S1)および漂白工程(S2)]
「抽出工程(S1)」および「漂白工程(S2)」は、<1.たばこ残渣の製造方法>の欄で説明したとおり実施することができる。
【0041】
[pHの調整工程(S3)]
pHの調整工程(S3)では、抽出工程(S1)で得られたたばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得る(図1参照)。
【0042】
pHの調整工程(S3)では、たばこ抽出液のpHを、好ましくは1~4.1、より好ましくは2~3の範囲内に調整する。pHの調整は、たばこ抽出液に、たばこ抽出液のpHを低下させるためのpH調整剤を、所望のpHに到達するのに必要な量で添加することにより行うことができる。pH調整剤として、例えば、リン酸、クエン酸、酢酸などの弱酸を使用してもよいし、硝酸、塩酸、硫酸などの強酸を使用してもよい。
【0043】
本明細書において、pHは、JIS Z 8802:2011に記載されるpH測定方法に従って、ガラス電極を用いたpHメーターで測定された値、すなわち、ガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、この2本の電極の間に生じた電位差を測定することにより得られた値を指す。pHメーターとして、ガラス電極法に基づく市販のpHメーター、例えばLAQUA F-72(HORIBA)を使用することができる。pHの測定は、例えば20℃のたばこ抽出液に対して行うことができる。なお、pHの測定値が、小数点第2位以下まで得られる場合は、小数点第2位以下を四捨五入し、得られた値をpH値とみなすことができる。
【0044】
酸性たばこ抽出液は、エタノールを10質量%以下の濃度で含むように調製されてもよい。好ましくは、酸性たばこ抽出液は、エタノールを1~10質量%の濃度で含むように調製されてもよい。すなわち、酸性たばこ抽出液の調製は、最終濃度が10質量%以下(好ましくは1~10質量%)になるように、抽出工程(S1)で得られたたばこ抽出液またはpH4.1以下に調整されたたばこ抽出液に、エタノールを添加することを更に含んでいてもよい。
【0045】
酸性たばこ抽出液が、エタノールを10質量%以下の濃度で含んでいると、最終産物として得られるたばこ香味液が、無色または無色に近い色を示しながら、より多くの量のたばこ香味成分を含むことができる(後述の実施例7を参照)。
【0046】
[逆相吸着剤での処理工程(S4)]
処理工程(S4)では、酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、酸性たばこ抽出液から有色成分を除去する。これにより、たばこ香味液を得る(図1参照)。
【0047】
逆相吸着剤は、逆相固相抽出で使用される任意の吸着剤を使用することができる。「逆相固相抽出」とは、極性の溶液または懸濁液(移動相)を、非極性の固体(固定相)に流して、移動相に含まれる疎水性成分を固定相に吸着させて分離する方法を指す。
【0048】
逆相吸着剤としては、シリカゲル担体粒子にオクタデシルシリル基(ODS)などの疎水性基が結合している吸着剤、およびスチレンジビニルベンゼン共重合体などの疎水性ポリマー粒子からなる吸着剤などが挙げられる。逆相吸着剤は、市販されており、例えば、InterSep C18(ジーエルサイエンス株式会社)固相抽出カートリッジ、オアシスHLB(日本ウォーターズ株式会社)固相抽出カートリッジの他、ダイヤイオンHPシリーズ(三菱ケミカル株式会社)、アンバーライトXADシリーズ(オルガノ株式会社)などの合成吸着剤が挙げられる。なお、逆相吸着剤は、例示したものに限定されず、例示したものと同様の分離モードを有する公知の吸着剤を使用することができる。
【0049】
処理工程(S4)は、酸性たばこ抽出液を、逆相吸着剤からなる固相に通すことにより行ってもよいし、酸性たばこ抽出液に、逆相吸着剤の粒子を添加し、その後、逆相吸着剤の粒子を酸性たばこ抽出液から濾過などで除去することにより行ってもよい。
【0050】
好ましい態様において、処理工程(S4)は、酸性たばこ抽出液を、逆相吸着剤からなる固相に通すことにより行うことができる。より好ましい態様において、処理工程(S4)は、酸性たばこ抽出液を、逆相吸着剤を充填したカラムに通すことにより行うことができる。「逆相吸着剤」は、一般的には、逆相吸着剤の粒子の集合体から構成され得る。
【0051】
処理工程(S4)を行うと、たばこ抽出液に含まれるたばこ香味成分を損なうことなく、たばこ抽出液から有色成分およびたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を除去することができる(後述の実施例4~6を参照)。例えば、酸性たばこ抽出液を、逆相吸着剤を充填したカラムに通した場合、たばこ抽出液に含まれる有色成分およびたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を、カラムに吸着させることができ、たばこ抽出液に含まれるたばこ香味成分を、溶出液に溶出させることができる。
【0052】
たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)とは、葉たばこなどのたばこ充填材中やシガレットの煙中に特異的に存在するニトロソアミンであり、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、N’-ニトロソノルニコチン(NNN)、N’-ニトロソアナタビン(NAT)、およびN’-ニトロソアナバシン(NAB)の4成分を指す。
【0053】
[混合工程(S5)]
混合工程(S5)では、上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液とを混合する。これにより、再生たばこ材料を得る(図1参照)。
【0054】
漂白されたたばこ残渣は、シートや顆粒などの特定の形態に成形して、シートたばこやたばこ顆粒などのたばこ成形体を調製し、得られたたばこ成形体をたばこ香味液と混合してもよい。また、たばこ香味液は、濃縮して、たばこ香味液の濃縮物を調製し、得られた濃縮物をたばこ残渣またはたばこ成形体と混合してもよい。
【0055】
上記の実施形態では、漂白されたたばこ残渣を、無色化されたたばこ抽出液(すなわち、たばこ香味液)と混合して、再生たばこ材料を製造する。本発明は、この実施形態に限定されず、漂白されたたばこ残渣を、抽出工程(S1)で得られたたばこ抽出液と混合して、再生たばこ材料を製造してもよい。
【0056】
[効果]
上述の方法によれば、たばこ残渣を効率良く漂白できるとともに、たばこ残渣中の結合型NNKの量を低減することができる(後述の実施例1および2を参照)。加えて、上述の方法によれば、たばこ抽出液に含まれるたばこ香味成分を維持しながら、たばこ抽出液から有色成分およびたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を除去することができる(後述の実施例4~6を参照)。このため、上述の方法に従って再生たばこ材料を製造した場合、白色化されて優れた外観(すなわち、たばこ製品に組み込んだ際にユーザに望まれる色)を有し、十分な量のたばこ香味成分を含んでいるが、低減した量のたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を含んでいる再生たばこ材料を製造することができる。
【0057】
<3.漂白されたたばこ残渣>
別の側面によれば、上述の「漂白されたたばこ残渣の製造方法」により得られる、漂白されたたばこ残渣が提供される。
【0058】
上述のとおり、漂白されたたばこ残渣は、白色化されて優れた外観を有し、低減した量の結合型NNKを含んでいる。したがって、漂白されたたばこ残渣をたばこ製品に組み込んだ場合、望ましい外観をユーザに提供するとともに、たばこ製品の使用時に、低減した量のNNKをユーザに提供することができる。背景技術の欄に記載したとおり、たばこ残渣中の結合型NNKは、熱により解離して遊離型NNKに変換され、煙中へ移行するため、漂白されたたばこ残渣は、加熱型香味吸引器で加熱された場合に特に、低減した量のNNKをユーザに提供することができる。
【0059】
加えて、漂白されたたばこ残渣は、漂白処理前のたばこ残渣と比べて質量が低下している(後述の実施例3を参照)。したがって、漂白されたたばこ残渣をたばこ製品に組み込んだ場合、より多くの量のたばこ残渣をたばこ製品に組み込むことができる。
【0060】
漂白されたたばこ残渣は、公知技術に従って、香味吸引器などのたばこ製品に組み込むことができる。以下に、漂白されたたばこ残渣の使用例を説明する。
【0061】
例えば、漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液とを混合し、得られた混合物を乾燥させ、得られた乾燥物をたばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0062】
あるいは、漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液とを混合し、得られた混合物から、シートたばこやたばこ顆粒などのたばこ成形体を作製し、たばこ成形体をたばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0063】
あるいは、漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液とを混合し、得られた混合物を乾燥させ粉砕してたばこパウダーを作製し、たばこパウダーをたばこ材料(例えば、除骨葉や葉たばこ)に添加し、得られた混合物をたばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0064】
あるいは、漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液とを混合し、得られた混合物を乾燥させ粉砕してたばこパウダーを作製し、たばこパウダーを水に懸濁してたばこスラリーを調製し、たばこスラリーをたばこ材料(例えば、除骨葉や葉たばこ)に添加し、得られた混合物をたばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0065】
<4.再生たばこ材料>
別の側面によれば、上述の「再生たばこ材料の製造方法」により得られる再生たばこ材料が提供される。
【0066】
上述のとおり、再生たばこ材料は、白色化されて優れた外観を有し、十分な量のたばこ香味成分を含んでいるが、低減した量のたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を含んでいる。したがって、かかる再生たばこ材料をたばこ製品に組み込んだ場合、望ましい外観をユーザに提供するとともに、たばこ製品の使用時に、十分な量のたばこ香味成分および低減した量のたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)をユーザに提供することができる。
【0067】
加えて、再生たばこ材料に含まれる漂白されたたばこ残渣は、漂白処理前のたばこ残渣と比べて質量が低下している(後述の実施例3を参照)。したがって、再生たばこ材料をたばこ製品に組み込んだ場合、より多くの量の再生たばこ材料をたばこ製品に組み込むことができる。
【0068】
以下に、再生たばこ材料の具体例を説明する。
例えば、再生たばこ材料は、上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液との混合物を乾燥させることにより得られた生成物であってもよい。この生成物は、たばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0069】
あるいは、再生たばこ材料は、上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液との混合物を、シート形状や顆粒形状などの特定形状に成形することにより得られたたばこ成形体であってもよい。たばこ成形体は、たばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0070】
あるいは、再生たばこ材料は、上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液との混合物を、乾燥させ、パウダー状に粉砕することにより得られたたばこパウダーであってもよい。たばこパウダーは、たばこ材料(例えば、除骨葉や葉たばこ)に添加することにより、たばこ材料の香味を増強することができる。香味を増強されたたばこ材料は、たばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0071】
あるいは、再生たばこ材料は、上記の漂白工程(S2)で得られた漂白されたたばこ残渣と、上記の処理工程(S4)で得られたたばこ香味液との混合物を、乾燥させ、パウダー状に粉砕し、得られたパウダーを水に懸濁させることにより得られたたばこスラリーであってもよい。たばこスラリーは、たばこ材料(例えば、除骨葉や葉たばこ)に添加することにより、たばこ材料の香味を増強することができる。香味を増強されたたばこ材料は、たばこ製品のたばこ香味源として使用することができる。
【0072】
再生たばこ材料は、必要に応じて、バインダー、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0073】
<5.たばこ製品>
上述の「再生たばこ材料」は、任意のたばこ製品に組み込むことができる。すなわち、別の側面によれば、上述の「再生たばこ材料」を含むたばこ製品が提供される。たばこ製品としては、燃焼型香味吸引器、加熱型香味吸引器、非加熱型香味吸引器、および無煙たばこが挙げられる。
【0074】
「燃焼型香味吸引器」は、たばこ充填材(たばこ刻またはたばこ成形体など)を燃焼させることによりたばこ香味をユーザに提供する香味吸引器である。燃焼型香味吸引器の例として、シガレット、パイプ、キセル、葉巻、またはシガリロなどが挙げられる。
【0075】
「加熱型香味吸引器」は、たばこ充填材を燃焼させることなく加熱することによりたばこ香味をユーザに提供する香味吸引器である。加熱型香味吸引器の例として、
炭素熱源の燃焼熱でたばこ充填材を加熱する炭素熱源型香味吸引器(例えばWO2006/073065を参照);
たばこ充填材を含むたばこスティックと、たばこスティックを電気加熱するための加熱デバイスとを備えた電気加熱型香味吸引器(例えばWO2010/110226を参照);または
液状のエアロゾル源をヒータにより加熱してエアロゾルを発生させ、エアロゾルとともにたばこ充填材由来の香味を吸引する液体霧化型香味吸引器(例えばWO2015/046385を参照)
などが挙げられる。
【0076】
「非加熱型香味吸引器」は、たばこ充填材を燃焼も加熱もしないで、たばこ香味をユーザに提供する香味吸引器である。非加熱型香味吸引器の例として、吸引により空気を流通させる空気流通路を備えた吸引器本体と、空気流通路内に配置されたタバコフレーバー放出顆粒とを含む非加熱型タバコフレーバー吸引器(例えばWO2012/023515を参照)が挙げられる。
【0077】
「無煙たばこ」は、ユーザが鼻腔や口腔に直接製品をふくんでたばこ香味を味わう製品である。前者を鼻腔用たばこ製品と呼び、後者を口腔用たばこ製品と呼ぶ。前者の例として嗅ぎたばこが挙げられ、後者の例として噛みたばこが挙げられる。
【0078】
(たばこ製品の代表的な例)
代表的な例によれば、上述の「再生たばこ材料」は、加熱型香味吸引器に組み込むことができる。すなわち、代表的な例によれば、上述の「再生たばこ材料」を含む加熱型香味吸引器が提供される。加熱型香味吸引器は、再生たばこ材料を含むたばこ充填材を加熱するためのヒータを更に含んでいてもよい。
【0079】
あるいは、代表的な例によれば、上述の「再生たばこ材料」は、口腔用たばこ製品に組み込むことができる。すなわち、代表的な例によれば、上述の「再生たばこ材料」を含む口腔用たばこ製品が提供される。口腔用たばこ製品は、再生たばこ材料を含むたばこ充填材を包む液体透過性の包装材(例えば、不織布の小袋)を更に含んでいてもよい。具体的には、口腔用たばこ製品は、たばこ香味源が不織布の小袋に包まれたティーバッグ形状を有していてもよい。
【0080】
(加熱型香味吸引器の例)
以下に、上述の「再生たばこ材料」を含む加熱型香味吸引器の例を、図2~4を参照して説明する。図2は、非燃焼加熱型香味吸引器の一例を示す斜視図である。図3は、非燃焼加熱型香味吸引物品の断面図である。図4は、エアロゾル生成装置の内部構造を示す図である。
【0081】
図2に示すとおり、香味吸引器100は、
上述の「再生たばこ材料」とエアロゾル源とを含む香味吸引物品110と、
香味吸引物品110を加熱して、エアロゾル源を霧化させるとともに再生たばこ材料から香味成分を放出させるエアロゾル生成装置120と
を備えている。
【0082】
香味吸引物品110は、交換可能なカートリッジであり、一方向に沿って延びる柱状形状を有する。香味吸引物品110は、エアロゾル生成装置120に挿入された状態で加熱されることによって、香味成分を含むエアロゾルを発生するように構成されている。
【0083】
図3に示すとおり、香味吸引物品110は、その一方の端部を形成し、充填物111と、充填物111を巻装する第1巻紙112とを含む基材部110Aと、基材部110Aとは反対側の端部を形成する吸口部110Bとを有する。基材部110Aと吸口部110Bは、第2巻紙113によって連結されている。
【0084】
吸口部110Bは、紙管部114と、これと隣り合ったフィルタ118とを有する。フィルタ118は、フィルタプラグ115と、中空プラグ116と、これらを覆うことにより連結している成形紙117とを有する。紙管部114は、紙を円筒形に巻いて形成された紙管であり、内側は空洞である。中空プラグ116は、紙管部114に隣接して配置され、フィルタプラグ115は、吸口部110Bの端部に配置されている。
【0085】
フィルタプラグ115は、アセテートトウなどの濾材102と、濾材102を巻装する第1プラグ巻取紙101とを備える。
【0086】
中空プラグ116は、充填層104と、充填層104を巻装する第2プラグ巻取紙103とを備える。充填層104は、高密度に充填された繊維で構成されており、1つ又は複数のチャネル(中空部)を有する。1つ又は複数のチャネルの各々は、香味吸引物品110の長さ方向(以下、長手方向という)に延びている。そのため、吸引時は、空気やエアロゾルはチャネルのみを流れることになり、繊維間の隙間をほとんど流れない。香味吸引物品110において、フィルタプラグ115でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときには、フィルタプラグ115の長さを短くして中空プラグ116で置き換えることは、エアロゾルのデリバリ量を増大させるために有効である。
【0087】
フィルタ118は、図3に示される通り、2つのプラグから構成されていてもよいし、3つ以上のプラグまたは1つのみのプラグから構成されていてもよい。例えば、フィルタ118は、中空プラグ116を省略し、フィルタプラグ115のみから構成されていてもよい。即ち、フィルタプラグ115を紙管部114と互いに隣接配置して吸口部110Bを形成することもできる。
【0088】
吸口部110Bは、紙管部114及びフィルタ118の2つのセグメントから構成されているが、吸口部110Bは1つのセグメントから構成されていてもよいし、3つ又はそれ以上のセグメントから構成されていてもよい。
【0089】
なお、図には示さないが、香味吸引物品110の通気抵抗を適宜調整するために、吸口部110Bに、開孔部を設けて外部からの空気を取り込む態様であってもよい。この場合、紙管部114に開孔部を設けることが望ましい。
【0090】
香味吸引物品110の長手方向の寸法、すなわち長さは、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mmであることがさらに好ましい。香味吸引物品110の周囲長は、15~25mmであることが好ましく、17~24mmであることがより好ましく、20~23mmであることがさらに好ましい。また、香味吸引物品110において、基材部110Aの長さは20mm、紙管部114の長さは20mm、中空プラグ116の長さは8mm、フィルタプラグ115の長さは7mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0091】
充填物111は、上述の「再生たばこ材料」とエアロゾル源とを含む。充填物111は、上述の「再生たばこ材料」とエアロゾル源のみから構成されていることが、発明の効果の観点で好ましい。ただし、発明の効果を奏する限り、充填物111が、上述の「再生たばこ材料」以外のたばこ充填材を含んでいても差し支えない。
【0092】
エアロゾル源は、所定温度で加熱されて蒸気を発生する。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。エアロゾル源は、充填物111に含まれる全たばこ充填材に対して、例えば15~19質量%の量で含むことができる。
【0093】
香味吸引物品110における充填物111の含有量は、基材部110Aが周囲長22mm、長さ20mmの場合、例えば、200~400mgであり、250~320mgであることが好ましい。
【0094】
第1巻紙112及び第2巻紙113としては、それぞれ、シガレットで使用される巻紙及びチップペーパーと同じものを使用することができる。また、第1プラグ巻取紙101、第2プラグ巻取紙103及び成形紙117としては、シガレットで使用されるプラグ巻取紙及び成形紙と同じものを使用することができる。
【0095】
図4に示すとおり、エアロゾル生成装置120は、香味吸引物品110を挿入可能な挿入孔130を有する。すなわち、エアロゾル生成装置120は、挿入孔130を構成する内側筒部材132を有する。内側筒部材132は、例えばアルミニウムやステンレス(SUS)のような熱伝導性材料によって構成されていてよい。
【0096】
また、エアロゾル生成装置120は、挿入孔130を塞ぐ蓋部140を有していてよい。蓋部140は、スライド可能であり、挿入孔130を塞いだ状態と、挿入孔130を露出させた状態(図2参照)との間での状態変化を可能としている。
【0097】
エアロゾル生成装置120は、挿入孔130に連通する空気流路160を有していてよい。空気流路160の一端は、挿入孔130に連結されており、空気流路160の他端は、挿入孔130とは別のところでエアロゾル生成装置120の外部(外気)に連通している。
【0098】
エアロゾル生成装置120は、空気流路160の、外気に連通する側の端部を覆う蓋部170を有していてよい。蓋部170は、空気流路160の、外気に連通する側の端部を覆った状態にすることもできるし、あるいは、この端部を露出させた状態にすることもできる。
【0099】
ここでは、蓋部170は、空気流路160の上記端部を覆った状態にあるが、空気流路160に気密に閉塞してはいない。すなわち、蓋部170は、空気流路160を覆った状態にあるが、空気流路160の上記端部から離間しており、それらの隙間から外気が空気流路160内へ流入可能に構成されている。
【0100】
ユーザは、エアロゾル生成装置120に香味吸引物品110を挿入した状態で、香味吸引器110の一端部、具体的には、図3に示される吸口部110Bを咥え、吸引動作を行う。ユーザの吸引動作により、空気流路160に外気が流入する。空気流路160内に流入した空気は、挿入孔130内の香味吸引物品110を通って、ユーザの口腔内に導かれる。
【0101】
エアロゾル生成装置120は、空気流路160内又は空気流路160を構成する壁部の外面に、温度センサを有していてよい。温度センサは、例えば、サーミスタや熱電対等であってよい。ユーザが香味吸引物品110の吸口部110Bを吸引すると、空気流路160内を蓋部170側から後述するヒータ30側に向かって流れる空気の影響で、空気流路160の内部温度又は空気流路160を構成する壁部の温度が低下する。温度センサは、この温度低下を測定することによってユーザの吸引動作を検知することができる。
【0102】
エアロゾル生成装置120は、バッテリ10と、制御ユニット20と、ヒータ30と、を有する。バッテリ10は、エアロゾル生成装置120で用いる電力を蓄積する。バッテリ10は、充放電可能な二次電池であってよい。バッテリ10は、例えばリチウムイオン電池であってよい。
【0103】
ヒータ30は、内側筒部材132の周りに設けられていてよい。ヒータ30を収容する空間と、バッテリ10を収容する空間は、隔壁180によって互いに分離されていてよい。これにより、ヒータ30により加熱された空気が、バッテリ10を収容する空間内に流入することを抑制することができる。したがって、バッテリ10の温度上昇を抑制することができる。
【0104】
ヒータ30は、柱状の香味吸引物品110の外周を加熱可能な筒形状であることが好ましい。ヒータ30は、例えばフィルムヒータであってよい。フィルムヒータは、一対のフィルム状の基板と、一対の基板の間に挟まれた抵抗発熱体とを有していてよい。フィルム状の基板は、耐熱性及び電気絶縁性に優れた材料から作られることが好ましく、典型的には、ポリイミドから作られる。抵抗発熱体は、銅、ニッケル合金、クロム合金、ステンレス、白金ロジウム等の金属材料の1つ又は2つ以上から作られることが好ましく、例えば、ステンレス製の基材によって形成され得る。さらに、抵抗発熱体は、フレキシブルプリント回路(FPC)を介して電源と接続するために、接続部位及びそのリード部に銅メッキを施してもよい。
【0105】
好ましくは、熱収縮チューブが、ヒータ30の外側に設けられる。熱収縮チューブは、熱により半径方向に収縮するチューブであり、例えば熱可塑性エラストマによって構成されている。熱収縮チューブの収縮作用により、ヒータ30が内側筒部材132に押し付けられる。これにより、ヒータ30と内側筒部材132の密着性が高まるので、ヒータ30から香味吸引物品110への内側筒部材132を介した熱の伝導性が高まる。
【0106】
エアロゾル生成装置120は、ヒータ30の半径方向の外側、好ましくは熱収縮チューブの外側に、筒状の断熱材を有していてもよい。断熱材は、ヒータ30の熱を遮断することによって、エアロゾル生成装置120の筐体外面が過度な高温に達するのを防止する役割を果たし得る。断熱材は、例えば、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル等のエアロゲルから作られることができる。断熱材としてのエアロゲルは、典型的には、断熱性能が高くかつ製造コストが比較的低いシリ力エアロゲルであってよい。ただし、断熱材は、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材であってもよいし、ウレタンフォームやフェノールフォームの発泡系断熱材であってもよい。或いは、断熱材は真空断熱材であってもよい。
【0107】
断熱材の外側には、外側筒部材134が設けられている。断熱材は、香味吸引物品110に面する内側筒部材132と、外側筒部材134との間に設けられていてよい。外側筒部材134は、例えばアルミニウムやステンレス(SUS)のような熱伝導性材料によって構成されていてよい。断熱材は、密閉された空間内に設けられることが好ましい。
【0108】
制御ユニット20は、回路基板、中央処理装置(CPU)、及びメモリ等を含んでいてよい。また、エアロゾル生成装置120は、制御ユニット20による制御の下でユーザに各種情報を報知するための通知部を有していてもよい。通知部は、例えば発光ダイオード(LED)のような発光素子もしくは振動素子、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0109】
制御ユニット20は、ユーザの起動要求を検知したら、バッテリ10からヒータ30への電力供給を開始する。ユーザの起動要求は、例えば、ユーザによる押しボタンやスライド式スイッチの操作や、ユーザの吸引動作によって為される。ユーザの起動要求は、押しボタン150の押下によって為されてもよい。より具体的には、ユーザの起動要求は、蓋部140が開いた状態での押しボタン150の押下によって為されてもよい。或いは、ユーザの起動要求は、ユーザの吸引動作の検知によって為されてもよい。ユーザの吸引動作は、例えば前述したような温度センサによって検知できる。
【0110】
<6.好ましい実施形態>
以下に、好ましい実施形態をまとめて示す。
【0111】
[A1] たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、前記たばこ残渣を漂白することを含む、漂白されたたばこ残渣の製造方法。
[A2] 前記処理に先立って、たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、前記たばこ残渣を調製することを更に含む[A1]に記載の方法。
[A3] 前記水性溶媒が水である[A2]に記載の方法。
[A4] 前記水性溶媒が、10質量%以下の濃度のエタノール水溶液である[A2]に記載の方法。
【0112】
[A5] 前記処理が、前記たばこ残渣を、前記水溶液に浸漬させることにより行われる[A1]~[A4]の何れか1に記載の方法。
[A6] 前記水溶液中の過酢酸の濃度が、0.015~10質量%、好ましくは0.15~1.5質量%である[A1]~[A5]の何れか1に記載の方法。
[A7] 前記水溶液中の酢酸の濃度が、0.04~4質量%、好ましくは0.4~4質量%である[A1]~[A6]の何れか1に記載の方法。
[A8] 前記水溶液中の過酸化水素の濃度が、0.0055~0.55質量%、好ましくは0.055~0.55質量%である[A1]~[A7]の何れか1に記載の方法。
【0113】
[A9] 前記処理が、22~100℃の温度で行われる[A1]~[A8]の何れか1に記載の方法。
[A10] 前記処理が、40~100℃の温度で行われる[A1]~[A9]の何れか1に記載の方法。
[A11] 前記処理が、15~240分間にわたって行われる[A1]~[A10]の何れか1に記載の方法。
[A12] 前記たばこ残渣の質量と前記水溶液の質量との比が、1:30~1:100である[A1]~[A11]の何れか1に記載の方法。
[B1] [A1]~[A12]の何れか1に記載の方法により得られる、漂白されたたばこ残渣。
【0114】
[C1] たばこ材料から前記たばこ材料に含まれる水溶性成分を水性溶媒で抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣とを得ることと、
前記たばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液で処理して、漂白されたたばこ残渣を得ることと、
前記たばこ抽出液のpHを4.1以下に調整して、酸性たばこ抽出液を得ることと、
前記酸性たばこ抽出液を逆相吸着剤で処理して、前記酸性たばこ抽出液から有色成分を除去し、これによりたばこ香味液を得ることと、
前記漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを混合すること
を含む、再生たばこ材料の製造方法。
[C2] 前記水性溶媒が水である[C1]に記載の方法。
[C3] 前記水性溶媒が、10質量%以下の濃度のエタノール水溶液である[C1]に記載の方法。
【0115】
[C4] 前記水溶液での処理が、前記たばこ残渣を、前記水溶液に浸漬させることにより行われる[C1]~[C3]の何れか1に記載の方法。
[C5] 前記水溶液中の過酢酸の濃度が、0.015~10質量%、好ましくは0.15~1.5質量%である[C1]~[C4]の何れか1に記載の方法。
[C6] 前記水溶液中の酢酸の濃度が、0.04~4質量%、好ましくは0.4~4質量%である[C1]~[C5]の何れか1に記載の方法。
[C7] 前記水溶液中の過酸化水素の濃度が、0.0055~0.55質量%、好ましくは0.055~0.55質量%である[C1]~[C6]の何れか1に記載の方法。
【0116】
[C8] 前記水溶液での処理が、22~100℃の温度で行われる[C1]~[C7]の何れか1に記載の方法。
[C9] 前記水溶液での処理が、40~100℃の温度で行われる[C1]~[C8]の何れか1に記載の方法。
[C10] 前記水溶液での処理が、15~240分間にわたって行われる[C1]~[C9]の何れか1に記載の方法。
[C11] 前記たばこ残渣の質量と前記水溶液の質量との比が、1:30~1:100である[C1]~[C10]の何れか1に記載の方法。
【0117】
[C12] 前記逆相吸着剤での処理が、前記逆相吸着剤からなる固相に前記酸性たばこ抽出液を通すことにより行われる[C1]~[C11]の何れか1に記載の方法。
[C13] 前記逆相吸着剤での処理が、前記逆相吸着剤を充填したカラムに前記酸性たばこ抽出液を通すことにより行われる[C1]~[C12]の何れか1に記載の方法。
[C14] 前記たばこ抽出液のpHが、1~4.1、好ましくは2~3に調整される[C1]~[C13]の何れか1に記載の方法。
[C15] 前記酸性たばこ抽出液の取得が、最終濃度が10質量%以下になるように、前記たばこ抽出液またはpH4.1以下に調整された前記たばこ抽出液にエタノールを添加することを更に含む[C1]~[C14]の何れか1に記載の方法。
【0118】
[D1] [C1]~[C15]の何れか1に記載の方法により得られる再生たばこ材料。
[D2] 前記再生たばこ材料が、前記漂白されたたばこ残渣と前記たばこ香味液とを含む材料を成形することにより得られたたばこ成形体である[D1]に記載の再生たばこ材料。
[D3] 前記たばこ成形体が、シートたばこまたはたばこ顆粒である[D2]に記載の再生たばこ材料。
【0119】
[E1] [D1]~[D3]の何れか1に記載の再生たばこ材料を含むたばこ製品。
[E2] [D1]~[D3]の何れか1に記載の再生たばこ材料を含む加熱型香味吸引器。
[E3] 前記再生たばこ材料を加熱する加熱デバイスを更に含む[E2]に記載の加熱型香味吸引器。
[E4] 前記再生たばこ材料とエアロゾル源とを含む香味吸引物品と、
前記香味吸引物品を加熱して、前記エアロゾル源を霧化させるとともに前記再生たばこ材料から香味成分を放出させる加熱デバイスと
を含む[E2]に記載の加熱型香味吸引器。
【0120】
[E5] [D1]~[D3]の何れか1に記載の再生たばこ材料を含む口腔用たばこ製品。
[E6] 前記再生たばこ材料を包む液体透過性の包装材を更に含む[E5]に記載の口腔用たばこ製品。
【実施例
【0121】
[実施例1]
実施例1では、漂白されたたばこ残渣の色分析を行った。
【0122】
1-1.漂白されたたばこ残渣の調製
バーレー種のたばこ材料1gに蒸留水40mLを加え、1時間にわたって振とう抽出を行った。その後、遠心分離(3000rpm、5分)し、上澄みを0.45μmメンブレンフィルターで濾過し、さらに同様の操作を2回繰り返して、抽出残渣(たばこ残渣)を回収した。得られたたばこ残渣を、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液に浸漬させて漂白した。過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液は、パーサンMP2-J(関東化学株式会社)の希釈液を使用した。これにより、漂白されたたばこ残渣を得た。
【0123】
パーサンMP2-Jは、15質量%の過酢酸、40質量%の酢酸、および5.5質量%の過酸化水素を含有する水溶液である。
【0124】
比較例では、漂白液として過酸化水素水を使用したこと以外は上記と同様の手順で、漂白されたたばこ残渣を得た。
【0125】
1-2.分析方法
漂白されたたばこ残渣を色分析にかけた。色測定は測色計(コニカミノルタ、CM-5)及び解析ソフト(コニカミノルタ、Spectra Magic DX)により行い、L*a*b*表色系により数値化した。漂白されたたばこ残渣を凍結乾燥させ、得られたたばこ残渣を底面が透明なガラス容器に充填し、反射法により測定した。色差(ΔE*ab)は以下の計算式により算出した。
【0126】
【数1】
【0127】
1-3.結果
色分析の結果を図5~7に示す。
【0128】
図5は、本発明の例の結果を示し、図6は、比較例の結果を示す。図5および図6において、横軸は漂白液の濃度(パーサンMP2-Jの濃度または過酸化水素水の濃度)を示し、縦軸は色差を示す。図5および図6において、白丸は、反応温度が22℃の場合の結果を示し、黒丸は、反応温度が60℃の場合の結果を示す。図5および図6の実験では、120分の反応時間を採用した。
【0129】
本発明の例では、3種類の漂白液として、10質量%のパーサンMP2-J(1.5質量%の過酢酸、4質量%の酢酸、0.55質量%の過酸化水素を含有する水溶液)、1質量%のパーサンMP2-J(0.15質量%の過酢酸、0.4質量%の酢酸、0.055質量%の過酸化水素を含有する水溶液)、および0.1質量%のパーサンMP2-J(0.015質量%の過酢酸、0.04質量%の酢酸、0.0055質量%の過酸化水素を含有する水溶液)を使用した。一方、比較例では、3種類の漂白液として、10質量%の過酸化水素水、1質量%の過酸化水素水、および0.1質量%の過酸化水素水を使用した。
【0130】
本発明の例(図5)は、比較例(図6)と比較して、漂白液に含まれる漂白剤の濃度が低い。このことを考慮して図5図6の結果を比較すると、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用した場合、過酸化水素水を使用した場合と比べて、漂白効率が高く、白色により近い色を有するたばこ残渣が得られることが分かる。
【0131】
また、図5の結果は、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用し、かつ、漂白処理を加温しながら行うと、漂白効率を高めることができることを示す。漂白の反応温度は、55℃~100℃程度が望ましいと考えられる。
【0132】
図7は、本発明の例の結果を示す。図7において、横軸は反応時間を示し、縦軸は色差を示す。図7の実験では、漂白液して10質量%のパーサンMP2-Jを採用し、60℃の反応温度を採用した。
【0133】
図7の結果は、15分の反応時間により、白色により近い色を有するたばこ残渣が得られることを示す。この結果から、反応時間は、例えば15分~240分の範囲内とすることができると考えられる。
【0134】
[実施例2]
実施例2では、漂白されたたばこ残渣の結合型NNK量の分析を行った。
【0135】
2-1.方法
実施例1に記載の方法に従って、漂白されたたばこ残渣を調製し、漂白されたたばこ残渣中の結合型NNK量の分析を行った。分析は、たばこ残渣中の結合型NNKを遊離させることにより行った。具体的には、漂白されたたばこ残渣30mgに対して水3mLを加え、密閉容器内で160℃、2時間加熱した。冷却後、液体部分(結合型NNKから遊離したNNKを含有する)をLC-MS-MS分析にかけた。
【0136】
2-2.結果
結合型NNK量の分析結果を図8~11に示す。
【0137】
図8は、本発明の例の結果を示し、図9は、本発明の例および比較例の結果を示す。図8において、横軸は漂白液の濃度(パーサンMP2-Jの濃度)を示し、縦軸は結合型NNK量を相対値で示す。図8において、白丸は、反応温度が22℃の場合の結果を示し、黒丸は、反応温度が60℃の場合の結果を示す。図9において、横軸は漂白液中の漂白剤の濃度(パーサンMP2-J中の過酢酸の濃度または過酸化水素水中の過酸化水素の濃度)を示し、縦軸は結合型NNK量を相対値で示す。図9において、白丸は、比較例の結果を示し、黒丸は、本発明の例の結果を示す。図8および図9の実験では、120分の反応時間を採用した。
【0138】
図8の結果は、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を用いてたばこ残渣の漂白処理を行うと、たばこ残渣に含まれる結合型NNKの量を低減できることを示す。また、図8および図9の結果は、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用した場合、過酸化水素水を使用した場合と比べて、結合型NNKの低減効果が高く、これにより、低減した量の結合型NNKを含むたばこ残渣が得られることを示す。
【0139】
また、図8の結果は、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用し、かつ、漂白処理を加温しながら行うと、結合型NNKの低減効果を高めることができることを示す。漂白の反応温度は、55℃~100℃程度が望ましいと考えられる。
【0140】
図10は、本発明の例の結果を示す。図10において、横軸は反応時間を示し、縦軸は結合型NNK量を相対値で示す。図10の実験では、漂白液として10質量%のパーサンMP2-Jを採用し、60℃の反応温度を採用した。
【0141】
図10の結果は、10質量%のパーサンMP2-Jを用いた漂白処理を15分間以上の時間にわたって行うと、たばこ残渣に含まれる結合型NNKの量を低減できることを示す。反応時間は、例えば15分~240分の範囲内とすることができると考えられる。
【0142】
図11は、本発明の例の結果を示す。図11において、横軸はたばこ残渣に対する漂白液の量(固液比)を示し、縦軸は結合型NNK量を相対値で示す。図11の実験では、漂白液として10質量%のパーサンMP2-Jを採用し、60℃の反応温度および30分の反応時間を採用した。
【0143】
図11の結果は、たばこ残渣150mgに対して5mL以上の量で漂白液を使用すると、特に高いNNK低減効果が達成され、低減した量のNNKを含むたばこ残渣が得られることを示す。この結果から、たばこ残渣150mgに対して5mL以上の量で漂白液を使用することが特に好ましいと考えられる。
【0144】
[実施例3]
実施例3では、漂白されたたばこ残渣の質量の測定を行った。
【0145】
3-1.方法
実施例1に記載の方法に従って、漂白されたたばこ残渣を調製し、漂白されたたばこ残渣の質量を測定した。
【0146】
3-2.結果
たばこ残渣の質量の測定結果を図12および13に示す。
【0147】
図12は、本発明の例の結果を示し、図13は、比較例の結果を示す。図12および図13において、横軸は漂白液の濃度(パーサンMP2-Jの濃度または過酸化水素水の濃度)を示し、縦軸は、漂白前のたばこ残渣の質量に対する漂白されたたばこ残渣の質量の比を示す。図12および図13において、白丸は、反応温度が22℃の場合の結果を示し、黒丸は、反応温度が60℃の場合の結果を示す。図12および図13の実験では、120分の反応時間を採用した。
【0148】
実施例1で述べたとおり、本発明の例(図12)は、比較例(図13)と比較して、漂白液に含まれる漂白剤の濃度が低い。このことを考慮して図12図13の結果を比較すると、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用した場合、過酸化水素水を使用した場合と比べて、たばこ残渣の質量低減効果が高く、より小さい質量を有するたばこ残渣が得られることが分かる。
【0149】
また、図12の結果は、過酢酸と酢酸と過酸化水素とを含む水溶液を漂白液として使用し、かつ、漂白処理を加温しながら行うと、たばこ残渣の質量低減効果を高めることができることを示す。漂白の反応温度は、55℃~100℃程度が望ましいと考えられる。
【0150】
[実施例4]
実施例4では、たばこ香味液の色分析を行った。
【0151】
4-1.たばこ香味液の調製
バーレー種のたばこ材料751gを60℃の温水で抽出した。その後、所定のpHになるように調整したリン酸水溶液を加え、攪拌しながら30分浸漬し、1時間にわたって振とう抽出を行った。その後、遠心分離(3000rpm、5分)し、上澄みを0.45μmメンブレンフィルターで圧搾濾過して、ろ液(たばこ抽出液)と抽出残渣(たばこ残渣)に分離した。
【0152】
得られたたばこ抽出液0.5mLにリン酸水溶液と水酸化カリウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液を加えて、pHを種々の値に調整した。pHメーターとして、LAQUA F-72(HORIBA)を使用した。なお、水酸化カリウム水溶液および硫酸ナトリウム水溶液の添加は、後述の香味成分分析(GC-MS分析)のために行った。
【0153】
pH調整された溶液(酸性たばこ抽出液)の各々を逆相固相抽出カラム(オアシス-HLB)に通した。これによりたばこ香味液を得た。
【0154】
4-2.分析方法
たばこ香味液を10倍希釈して、希釈液を吸光度分析にかけた。コントロールとして、カラムに通過させる前の抽出液(酸性たばこ抽出液)を同様に吸光度分析にかけた。
【0155】
4-3.結果
吸光度分析の結果を図14および表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
図14は、pH2.2の酸性たばこ抽出液から得られたたばこ香味液の分析結果を示す。表1は、種々のpHを有する酸性たばこ抽出液から得られたたばこ香味液の分析結果を示す。表1において、約0.1以下の吸光度が、たばこ香味液が望ましい無色度を有していることを表す。
【0158】
図14の結果は、酸性たばこ抽出液は着色されているが、たばこ香味液は、有色成分が除去され、無色であることを示す。表1の結果は、pH5.6以下の酸性たばこ抽出液から得られたたばこ香味液は、有色成分が除去され、無色であることを示す。
【0159】
[実施例5]
実施例5では、たばこ香味液中の香味成分の分析を行った。
【0160】
5-1.方法
実施例4に記載の方法に従ってたばこ香味液を調製し、たばこ香味液をGC-MS分析にかけた。たばこ香味液は、pH0.9~5.3の酸性たばこ抽出液から調製した。香味成分として、ニコチン、ミオスミン、アナバシン、ニコチリン、アナタビン、およびジピリジルの量を分析した。
【0161】
5-2.結果
図15に、ニコチンの分析結果を示す。図15は、酸性たばこ抽出液のpHとたばこ香味液中のニコチン含量との関係を示すグラフである。
【0162】
図15の結果は、pH4.1以下に調整した酸性たばこ抽出液からたばこ香味液を調製すると、逆相固相抽出カラムでの処理によって、酸性たばこ抽出液からニコチンがほとんど除去されないが、pH5.3に調整した酸性たばこ抽出液からたばこ香味液を調製すると、逆相固相抽出カラムでの処理によって、酸性たばこ抽出液からニコチンが除去されやすいことを示す。
【0163】
ミオスミン、ニコチリンについては、pH0.9~5.3に調整した酸性たばこ抽出液からたばこ香味液を調製したすべての場合で、逆相固相抽出カラムでの処理によって、酸性たばこ抽出液から香味成分がほとんど除去されなかった。
【0164】
アナバシン、アナタビン、ジピリジルについては、pH3.2以下に調整した酸性たばこ抽出液の場合、逆相固相抽出カラムでの処理によって、酸性たばこ抽出液から香味成分がほとんど除去されないが、pH4.1に調整した酸性たばこ抽出液の場合、酸性たばこ抽出液から香味成分が多少除去され、pH5.3に調整した酸性たばこ抽出液の場合、酸性たばこ抽出液から香味成分が除去されやすかった。
【0165】
[実施例6]
実施例6では、たばこ香味液中のたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)の分析を行った。
【0166】
6-1.方法
実施例4に記載の方法に従ってたばこ香味液を調製し、たばこ香味液を、LC-MS-MS分析にかけた。たばこ香味液は、pH0.9~5.3の酸性たばこ抽出液から調製した。
【0167】
6-2.結果
表2に、TSNA量の分析結果を示す。
【0168】
【表2】
【0169】
表2に示されるTSNA含量は、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)含量、N’-ニトロソノルニコチン(NNN)含量、N’-ニトロソアナタビン(NAT)含量、およびN’-ニトロソアナバシン(NAB)含量の合計を指す。また、表2に示されるTSNA低減率は、以下の式により算出される値を指す。
TSNA低減率[%]={(酸性たばこ抽出液中のTSNA含量)-(たばこ香味液中のTSNA含量)/(酸性たばこ抽出液中のTSNA含量)}×100
【0170】
表2の結果は、pH0.9~4.1に調整した酸性たばこ抽出液からたばこ香味液を調製したすべての場合で、逆相固相抽出カラムでの処理によって、TSNAが除去されたことを示す。
【0171】
実施例4~6の結果によると、pH4.1以下に調整した酸性たばこ抽出液から、逆相固相抽出カラムでの処理によってたばこ香味液を調製すると、たばこ抽出液に含まれるたばこ香味成分を維持しながら、たばこ抽出液から有色成分およびたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)を除去できることが分かる。
【0172】
[実施例7]
実施例7では、たばこ香味液の調製に対するエタノール添加効果を調べた。
【0173】
7-1.たばこ香味液の調製
実施例4に記載の方法に従って酸性たばこ抽出液(pH2.2または3.2)を調製し、酸性たばこ抽出液に、所定のエタノール濃度になるようにエタノールを加えた。その後、酸性たばこ抽出液を逆相固相抽出カラム(オアシス-HLB)に通した。これによりたばこ香味液を得た。
【0174】
7-2.分析方法
たばこ香味液をGC-MS分析にかけた。たばこ香味液は、種々の濃度のエタノールを含有する酸性たばこ抽出液から調製した。香味成分として、ミオスミン、アナバシン、アナタビン、ジピリジル、ベンズアルデヒド、フェネチルアルコール、およびメガスチグマトリエノンの量を分析した。
【0175】
7-3.結果
図16に、ベンズアルデヒドの分析結果を示す。図16は、酸性たばこ抽出液中のエタノール濃度とたばこ香味液中のベンズアルデヒド含量との関係を示すグラフである。
【0176】
図16の結果は、酸性たばこ抽出液にエタノールを添加し、得られたたばこ抽出液を用いてたばこ香味液を調製すると、たばこ香味液中のベンズアルデヒドの含量を増加させることができることを示す。
【0177】
その他の香味成分(ミオスミン、アナバシン、アナタビン、ジピリジル、フェネチルアルコール、およびメガスチグマトリエノン)についても、ベンズアルデヒドと同様、酸性たばこ抽出液にエタノールを添加し、得られたたばこ抽出液を用いてたばこ香味液を調製すると、たばこ香味液中の香味成分の含量を増加させることができた。
【0178】
ただし、酸性たばこ抽出液中のエタノールの含量が増加すると、逆相固相抽出カラムでの処理により有色成分が除去され難くなり、たばこ香味液の無色度が低下した。例えば、酸性たばこ抽出液中のエタノールの含量が50質量%の場合、たばこ香味液は茶色に着色しており、酸性たばこ抽出液中のエタノールの含量が10質量%の場合、たばこ香味液はほとんど無色であった。したがって、エタノールは、10質量%以下の最終濃度になるように酸性たばこ抽出液に添加することが好ましい。
【0179】
実施例7の結果によると、酸性たばこ抽出液が、エタノールを10質量%以下の濃度で含んでいると、最終産物として得られるたばこ香味液が、無色または無色に近い色を示しながら、より多くの量のたばこ香味成分を含むことができることが分かる。
【0180】
[実施例8]
実施例8では、再生たばこ材料を含む非燃焼加熱型香味吸引器を用いて香喫味評価を行った。
【0181】
8-1.抄造シートたばこの調製
再生たばこ材料として、抄造シートたばこを調製した。抄造シートたばこは、製紙の抄造技術を利用して製造されたシートたばこを指す。
【0182】
まず、黄色種60質量%およびバーレー種40質量%からなるたばこ材料を50℃の温水で1時間にわたって抽出した。たばこ材料の質量と温水の質量との比(固液比)は、1:20とした。得られた抽出物を、液体(たばこ抽出液)と固体(たばこ残渣)に分離し、それぞれを回収した。たばこ残渣に、漂白液(すなわち、過酢酸1.5質量%、酢酸4質量%、過酸化水素0.55質量%を含有する水溶液)を加え、60℃で0.5時間にわたって処理した。たばこ残渣の質量と漂白液の質量との比(固液比)は、1:40とした。得られた漂白されたたばこ残渣を水洗し、その後、抄紙してベースシートたばこを調製した。このベースシートたばこに、上記のたばこ抽出液をかけ戻して、抄造シートたばこを調製した。抄造シートたばこを0.8mm幅で裁刻して、シートたばこの刻(本発明の例)を作成した。
【0183】
コントロールの抄造シートたばこは、たばこ残渣に漂白処理を行わなかったこと以外は、上記の抄造シートたばこと同様の方法により調製した。コントロールの抄造シートたばこも同様に、0.8mm幅で裁刻して、シートたばこの刻(コントロール)を作成した。
【0184】
8-2.香味吸引物品の調製
シートたばこの刻(本発明の例)シートたばこの刻(コントロール)の各々をたばこ充填材として用いて、図3に示す香味吸引物品を調製した。まず、シートたばこの刻を巻紙で巻いて、たばこロッドを作成した。たばこロッドは、20mmの長さを有し、シートたばこの刻を260mg含有していた。市販の加熱式たばこ製品(Ploom X、日本たばこ産業株式会社)のたばこスティックを切断してフィルタ部を取り出し、これに、上記のたばこロッドを接続し、香味吸引物品を調製した。
【0185】
8-3.評価方法
エアロゾル生成装置として、市販の加熱式たばこ製品(Ploom X、日本たばこ産業株式会社)の加熱デバイスを使用して、香味吸引物品を加熱し、専門パネル2名により試喫評価を実施した。
【0186】
8-4.結果
本発明の例の香味吸引物品は、コントロールの香味吸引物品と比較すると、香喫味の全体的な印象として大きな違いはなかった。本発明の例の香味吸引物品において、香喫味に関して著しくネガティブとなるポイントは見当たらなかった。
【符号の説明】
【0187】
100…香味吸引器、110…香味吸引物品、120…エアロゾル生成装置、130…挿入孔、140…蓋部、150…押しボタン、
110A…基材部、110B…吸口部、101…第1プラグ巻取紙、102…濾材、103…第2プラグ巻取紙、104…充填層、111…充填物、112…第1巻紙、113…第2巻紙、114…紙管部、115…フィルタプラグ、116…中空プラグ、117…成形紙、118…フィルタ、
10…バッテリ、20…制御ユニット、30…ヒータ、132…内側筒部材、134…外側筒部材、160…空気流路、170…蓋部、180…隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16