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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20250515BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C11/00 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024562804
(86)(22)【出願日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2023055324
(87)【国際公開番号】W WO2023228099
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2024-11-22
(31)【優先権主張番号】102022000010961
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ボナッコルシ,ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】トルチアーナ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】パレンテ,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ナポリターノ,ルカ
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051425(JP,A)
【文献】特開2013-014191(JP,A)
【文献】特許第6040100(JP,B1)
【文献】特許第4974695(JP,B1)
【文献】特開2008-189041(JP,A)
【文献】特開2009-056899(JP,A)
【文献】特開2008-044448(JP,A)
【文献】特開2019-131114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤道面(X-X)およびトレッドバンド(8)を備える自動二輪車用タイヤ(1)であって、前記トレッドバンド(8)が、
a)半径方向外側部分(11)であって、
a1)前記タイヤの前記赤道面(X-X)をまたいで配置され、第1の加硫エラストマー材料で作られた中央サブ部分(11a)と、
a2)前記タイヤ(1)の前記赤道面(X-X)に対して遠位であり、前記中央サブ部分(11a)の両側に配置された一対の横方向サブ部分(11b、11c)であって、第2の加硫エラストマー材料で作られた一対の横方向サブ部分(11b、11c)とを備え、
前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料が、前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より大きい、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有し、
前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料および前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料が、5.2~6.5MPa、好ましくは5.8~6.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたそれぞれの動弾性係数(E’)を有する、半径方向外側部分(11)と、
b)前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の下方で、その軸方向展開部の全体に沿って延在する半径方向内側部分(12)であって、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料および前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より低い、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する第3の加硫エラストマー材料で作られた半径方向内側部分(12)とを備え、
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数(E’)と、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R1が0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の間に含まれ、
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδと、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R2が0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の間に含まれる、自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項2】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料が、5.1~5.5MPa、好ましくは5.2~5.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項3】
前記.トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料が、0.26~0.30、好ましくは0.27~0.29の間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδを有する、請求項1または2に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項4】
前記.トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料が、2.5~2.9MPa、好ましくは2.6~2.8MPaの間に含まれる、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項5】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料が、0.24~0.28、好ましくは0.25~0.27の間に含まれる、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδを有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項6】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料が、2.5~2.9MPa、好ましくは2.6~2.8MPaの間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項7】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料が、0.25~0.29MPa、好ましくは0.26~0.28MPaの間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδを有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項8】
前記トレッドバンド(23)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料が、6.0~6.5MPa、好ましくは6.2~6.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項9】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料が、0.40~0.44、好ましくは0.41~0.43の間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項10】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料が、5.5~6.0MPa、好ましくは5.7~5.9MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項11】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料が、0.66~0.70、好ましくは0.67~0.69の間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項12】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料が、4.0~5.0MPa、好ましくは4.2~4.5MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項13】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料が、0.49~0.53MPa、好ましくは0.50~0.52MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項14】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδと、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R3が0.5~1.2、好ましくは0.7~1.0の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項15】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)と、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R4が1.3~2.0、好ましくは1.5~1.8の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項16】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)との比R5が1.1~1.6、好ましくは1.2~1.5の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項17】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記横方向サブ部分(11b、11c)の前記第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδとの比R6が1.1~1.6、好ましくは1.2~1.5の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項18】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)との比R7が1.2~1.8、好ましくは1.3~1.7の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項19】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向外側部分(11)の前記中央サブ部分(11a)の前記第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδとの比R8が0.6~1.1、好ましくは0.7~1.0の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項20】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、この同じ加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R9が1.2~2.0、好ましくは1.4~1.9の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項21】
前記トレッドバンド(8)の前記半径方向内側部分(12)の前記第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、この同じ加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R10が1.5~2.4、好ましくは1.7~2.1の間に含まれる、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項22】
約0.30以上、好ましくは0.30~0.35の間に含まれる横断方向曲率比を有する、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車用タイヤに関する。
【0002】
特に、本発明は、レーストラックでも使用される、大排気量(例えば、600または1000cm以上)および/または大きな出力(例えば、200馬力以上)の「スーパースポーツ」および/または「ハイパースポーツ」自動二輪車のための自動二輪車用タイヤに関する。
【0003】
さらにより詳細には、本発明は、自動二輪車のリアホイールに取り付けることを意図された高性能タイヤに関し、言い換えれば、少なくとも約210km/hの最高速度を維持することができるタイヤ、もしくは、少なくとも約210kgの最大荷重に耐えることができるタイヤ、またはその両方を兼ね備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0004】
自動二輪車用タイヤは、例えば欧州特許出願公開第2662226(A1)号および国際公開第2019/082012号から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、スーパースポーツまたはハイパースポーツ用の大きな出力の自動二輪車が市場に投入される傾向があるのが観察される。実際、例えば、排気量1000cm以上で200馬力以上の一般道路用の自動二輪車が市場に存在する。
【0006】
本出願人は、一般道路およびレーストラックの両方でのこのようなスーパースポーツ自動二輪車の使用に対する需要が増大していることに気付いた。
【0007】
これと並行して、本出願人は、非常に要求の厳しいスポーツ走行(例えば、レーストラックで行われる)のため、および、あらゆる大気条件および季節条件での(1年を通じた自動二輪車の一般道路での使用に対する)寿命およびハンドリングの両方で、高性能タイヤの需要が増大していることに気付いた。
【0008】
この点に関して、本出願人は、特に、ユーザが、スーパースポーツ自動二輪車に取り付けられたタイヤに、湿ったおよび/もしくは低温の気候条件または最適でない路面条件(以下、「低温」使用条件としても示される)におけるハンドリング性能およびロードホールディング性能とともに、乾いたおよび/または高温の地面(以下、「高温」使用条件としても示される)における極端な速度および操縦の条件でのハンドリング性能および性能、ならびに、長期間にわたってタイヤ性能をできるだけ一定に保つことを望む最近の傾向を観察した。
【0009】
このような互いに対照的な要求を単一の組のタイヤで満足させることは、解決策が互いに対照的なものであれば、特に厳しい課題となる。典型的には、上記の要求のそれぞれに対して異なる調整が採用されて、特定の問題に適した解決策を適用することになるためである。
【0010】
乾いたおよび/または高温の地面、ならびに湿ったおよび/または低温の気候条件または最適でない路面でのハンドリング性能および性能を改善するために、特に、これらの異なる走行条件で地面に対する最適なグリップを確実にすることが必要である。
【0011】
タイヤのグリップを向上させるために、トレッドバンドの製造時に、いわゆる柔らかい種類の加硫エラストマー材料(本明細書では「ゴムコンパウンド」という用語でも規定する)を使用して、路面の不規則なプロファイルを反映する路面の粗さによりよく適応させることが可能である。これらの加硫エラストマー材料は、典型的には、低い弾性係数および/または高いヒステリシスを特徴とする。
【0012】
しかしながら、本出願人は、ゴムコンパウンドが柔らかすぎると、直線コースを走行する走行安定性が低下し、タイヤの寿命が短くなることを観察した。
【0013】
前述の問題を克服するために、異なるゴムコンパウンドで作られたトレッドバンドを有するタイヤが提案されている。典型的には、ショルダー部により柔らかいゴムコンパウンドを、クラウン部にあまり柔らかくないゴムコンパウンドを使用する。
【0014】
このように構成されたタイヤは、例えば欧州特許第2662226号に記載されている。
【0015】
しかしながら、トレッドバンドのこの構成に関連して、本出願人は、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリング性能および性能が、特に、例えばレーストラックなどの極端な使用の場合に低下する傾向があり、タイヤの耐用年数が著しく損なわれることを観察した。
【0016】
前述の対照的な要求を単一の組のタイヤで満たそうとするために、例えば、本出願人名義の国際公開第2019/082012号に記載されているように、異なるゴムコンパウンド、典型的には、ショルダー部分にはカーボンブラック充填材の含有量が高いゴムコンパウンド、トレッドバンドのクラウン部分および中間環状部分には白色充填材の含有量が高いいくつかのゴムコンパウンドで作られたトレッドバンドを有するタイヤも提案されており、これらすべては、異なる組成のゴムコンパウンド間の境界面においてトレッドバンドの溝の適切な分布および配置と組み合わされている。
【0017】
最後に、本出願人は、極端な操縦に十分にも対応できるように接地面積を大きくするために、製造者によって推奨される圧力に対して数十分の1バールだけタイヤの空気が抜かれた、レーストラックでの使用に典型的な剛性の高いタイヤ構造は、製造者によって推奨される圧力に膨らませたタイヤが、快適性、ロードホールディング、および様々な路面での負荷を吸収する能力を提供するように要求される一般道路での使用にはあまり適していないようであることを観察した。
【0018】
自動二輪車用タイヤの絶え間ない改良を追求する中で、本出願人は、タイヤの前述の「低温」使用条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を犠牲にすることなく、「高温」使用条件におけるハンドリング性能およびタイヤ性能を改善し、できるだけ長期間にわたって一定に保つという2つの目的を自らに課した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、トレッドバンドのいわゆる「キャップアンドベース(cap-and-base)」構成を採用し、タイヤの「低温」および「高温」使用条件における適切な動的機械特性を有する加硫エラストマー材料を使用することによって、このような2つの目的を達成することが可能であることを見出した。
【0020】
特に、本出願人は、この目的のために、以下の条項を同時に採用する必要があることを見出した。
i)タイヤの赤道面をまたいで配置された中央サブ部分と、タイヤの赤道面に対して遠位であり、この中央サブ部分の両側に配置された一対の横方向サブ部分とを備えるタイプのトレッドバンドの半径方向外側部分の構成を使用すること、および
ii)トレッドバンドの各部分に、タイヤの「高温」および「低温」のそれぞれの使用条件における特定の動的機械特性を有する加硫エラストマー材料を使用すること。
【0021】
この点に関して、本出願人はまた、トレッドバンドの異なる部分を製造するために使用される加硫エラストマー材料の動的機械特性を、各エラストマー材料について区別された方法で、かつ、タイヤの使用中に、トレッドバンドにおけるその位置に応じて異なるタイプの応力および異なる温度にさらされる各材料の実際の使用条件と相関させることができる特定の応力および温度条件で評価することが必要であることを見出した。
【0022】
タイヤの「低温」使用に関する限り、本出願人は特に、トレッドバンドを形成するエラストマー材料のすべてに対して、このような使用条件におけるタイヤの挙動を予測する動的機械特性が、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’およびtanδであることを見出した。
【0023】
逆に、タイヤの「高温」使用に関する限り、本出願人は、このような使用条件におけるタイヤの挙動を予測する動的機械特性が、
- トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の加硫エラストマー材料およびトレッドバンドの半径方向内側部分の加硫エラストマー材料に対しては、周波数10Hz、70℃で、および
- トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の加硫エラストマー材料に対しては、周波数10Hz、100℃で
それぞれ測定された動弾性係数E’およびtanδであることを見出した。
【0024】
したがって、本出願人は、タイヤの前述の「低温」使用条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を保つという所望の目標は、
- トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分において、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分において使用される第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’より大きい、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’を有する第1の加硫エラストマー材料、および
- トレッドバンドの半径方向内側部分において、前述の第1および第2のエラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’より低い、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’を有する第3の加硫エラストマー材料
を使用することによって達成できることを見出した。
【0025】
一方、タイヤの「高温」使用に関する限り、本出願人は、タイヤのハンドリングおよび性能を改善し、できるだけ長期間にわたって一定に保つという所望の目的を、
- トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分に使用される第2の加硫エラストマー材料の「高温」動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分に使用される第3の加硫エラストマー材料の動弾性係数(E’)との比を1に近い値に保つことによって、すなわち、このような材料の動弾性係数(E’)を互いに非常に類似した値に保つことによって、ならびに
- 第2の加硫エラストマー材料の「高温」tanδと第3の加硫エラストマー材料の「高温」tanδとの比、および、第1の加硫エラストマー材料の「高温」tanδと第3の加硫エラストマー材料の「高温」tanδとの比を1に近い値に保つことによって、すなわち、このような材料のtanδを互いに非常に類似した値に保つことによって
同時に達成できることを見出した。
【0026】
本出願人は、驚くべきことに、トレッドバンドの様々な部分を作るために使用される加硫エラストマー材料のタイヤの使用条件に相関する係数値およびヒステリシス値、特にtanδ値を、考慮されるトレッドバンドの面積に応じて特定の比の範囲内に制御することによって、タイヤの前述の「低温」使用条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を犠牲にすることなく、タイヤの「高温」ハンドリングおよびロードホールディング性能をともに改善することができ、最適なレベルに長期間にわたって維持できることを見出した。
【0027】
特に、トレッドバンドの半径方向内側部分に、低温条件および高温条件の両方で、トレッドバンドの半径方向外側部分に使用される加硫エラストマー材料よりも低い弾性係数および高いヒステリシスを有する、いわゆる「柔らかい」加硫エラストマー材料を使用することによって、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善し、長期間にわたって維持することが、驚くべきことに達成された。
【0028】
このような「柔らかい」加硫エラストマー材料をトレッドバンドの半径方向内側部分に使用することは、このような使用条件で長期間にわたって一定の性能を提供するのに適していないだけでなく、逆にタイヤの性能を急速に低下させやすいと思われたので、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善し、長期間にわたって維持することは驚くべきことである。
【0029】
したがって、本発明は自動二輪車用タイヤに関する。
【0030】
このような自動二輪車用タイヤは、赤道面およびトレッドバンドを備え、トレッドバンドは、
a)半径方向外側部分であって、
a1)タイヤの赤道面をまたいで配置され、第1の加硫エラストマー材料で作られた中央サブ部分と、
a2)タイヤの赤道面に対して遠位であり、この中央サブ部分の両側に配置された一対の横方向サブ部分であって、第2の加硫エラストマー材料で作られた一対の横方向サブ部分とを備え、
中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料が、横方向サブ部分のこの第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より大きい、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有し、
中央サブ部分のこの第1の加硫エラストマー材料および横方向サブ部分のこの第2の加硫エラストマー材料が、5.2~6.5MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたそれぞれの動弾性係数(E’)を有する、半径方向外側部分と、
b)トレッドバンドの半径方向外側部分の下方で、その軸方向展開部の全体に沿って延在する半径方向内側部分であって、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料およびトレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より低い、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する第3の加硫エラストマー材料で作られた半径方向内側部分とを備え、
トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R1は0.8~1.2の間に含まれ、
トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδと、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R2は0.8~1.2の間に含まれる。
【0031】
本出願人は、前述の特性を有するいわゆる「キャップアンドベース」タイプのトレッドバンドを使用することによって、自動二輪車用タイヤ、特に「スーパースポーツ」および/または「ハイパースポーツ」自動二輪車用タイヤの「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を、湿ったおよび/もしくは低温の気候条件、または最適でない路面におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を実質的に変化させずに保ちながら、改善し、長期間にわたって維持することが驚くべきことに可能であることを実験的に見出した。
【0032】
いかなる解釈理論にも縛られたくはないが、本出願人は、「高温」使用条件において、上記で規定したようなタイヤは、ショルダー領域、すなわちこのような使用条件において最も応力のかかる領域において、実質的に均一なトレッドバンドの動的およびヒステリシス挙動を有すると考える。
【0033】
本出願人は、この実質的に均一な動的およびヒステレシス挙動は、タイヤの早期摩耗現象およびタイヤ性能の劣化を有利に制限し、
i)トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向またはショルダーサブ部分に存在する第2の加硫エラストマー材料と、トレッドバンドの半径方向内側部分に存在する第3の加硫エラストマー材料との変形特性間の比-上記で特定されたそれぞれの「高温」使用条件における動弾性係数(E’)の値に相関する-、および
ii)第2の加硫エラストマー材料と第3の加硫エラストマー材料とのヒステリシス特性間の比-上記で特定されたそれぞれの「高温」使用条件におけるtanδ値に相関する-を1に近い値に制御することによって達成され得ることを見出した。
【0034】
驚くべきことに、上記で概略を述べたように、この有利な技術的効果は、タイヤの使用条件において、トレッドバンドの半径方向内側部分に、トレッドバンドの半径方向外側部分のショルダー領域に使用される第2の加硫エラストマー材料より低い弾性係数および高いtanδを有する第3の加硫エラストマー材料を使用することによって観察された。これは、タイヤの「高温」使用条件において性能が急速に低下すると考えられていた特性であるが、実際にはそうではないことが分かった。その代わりに、第3の加硫エラストマー材料により、実際には、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善し、長期間にわたって保つことができた。
【0035】
逆に、この場合も、いかなる解釈理論にも縛られたくはないが、本出願人は、タイヤの「低温」使用条件において、トレッドバンドの半径方向内側部分に存在する第3の加硫エラストマー材料は、変形(弾性係数E’に相関する)およびヒステリシス現象(tanδパラメータに相関する)を受け、それにより、その上にあるトレッドバンドの半径方向外側部分(より硬く、ヒステリシスが小さい)を「加熱」することができ、それにより、トレッドバンドの半径方向外側部分が、濡れたおよび/または低温条件の地面によりよく密着することができ、それによって、これらの使用条件において十分なハンドリングおよびロードホールディング性能が得られると考える。
【0036】
基本的に、本発明によるタイヤでは、タイヤのトレッドバンドのショルダー領域におけるヒステリシス特性の効果的な収束と、「高温」の使用条件において、乾いたおよび/または高温の地面での極端な速度および操縦条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能の改善および長期間にわたる維持と同時に、タイヤの「低温」使用条件におけるトレッドバンドの異なる部分間の剛性およびヒステリシスの特性の効果的な区別化を有し、湿ったおよび/もしくは低温の気候条件または最適でない路面におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を維持する。
【0037】
特に、「高温」使用条件において、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向またはショルダーサブ部分、およびトレッドバンドの半径方向内側部分の本発明によるタイヤのこのようなサブ部分の下にある部分によって形成される組立体は、変形性およびヒステリシスの観点から、これらの使用条件における最適な特性を備える単一の加硫エラストマー材料によって実質的に構成されるかのように挙動する。
【0038】
有利には、したがって、本発明によるタイヤは、乾いたおよび/または高温の表面での極端な速度および操縦条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能の改善を達成するだけでなく、このような性能をより長い期間維持することができる。
【0039】
さらに、「高温」使用条件において、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分、およびトレッドバンドの半径方向内側部分の本発明によるタイヤのこのようなサブ部分の下にある部分によって形成される組立体は、路面のいかなる凹凸もできるだけ減衰させる必要がある直線コースの走行条件においても、変形性およびヒステリシスの観点から、最適に振る舞う。
【0040】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、量、パラメータ、パーセンテージなどを示すすべての数値的実体は、他に示されていなければ、すべての場合において「約」という用語が先行するものと理解されるべきである。さらに、数値的実体のすべての範囲には、本明細書で以下に具体的に示す範囲に加えて、最大および最小数値のすべての可能な組み合わせ、ならびにすべての可能な中間範囲が含まれる。
【0041】
他に示されていなければ、数値的実体の範囲のすべてはまた、最大および最小数値を含む。
【0042】
本発明の目的のために、以下の定義が適用される。
【0043】
「phr」(ゴムの100重量部あたり(per hundred parts)の頭字語)という用語は、可塑化伸展油を除いたエラストマーポリマーの100重量部あたりのエラストマーゴムコンパウンドの所与の成分の重量部を示す。
【0044】
「エラストマー材料」、「ゴム」、「エラストマーポリマー」、または「エラストマー」という用語は、加硫可能な天然または合成ポリマーと補強充填材とを含む材料を示すために使用され、このような材料は、室温において、加硫を受けた後、力によって変形させることができ、変形力を除去した後、迅速かつ力強く実質的に元の形状および大きさに戻ることができる(規格ASTM D1566-11 ゴムに関する標準用語の定義による)。
【0045】
「ジエンポリマー」という用語は、少なくとも1つが共役ジエン(共役ジオレフィン)である1つまたは複数の異なるモノマーの重合から得られるポリマーまたはコポリマーを示すために使用される。
【0046】
「ゴムコンパウンド」または「エラストマーゴムコンパウンド」という用語は、少なくとも1つのエラストマーポリマーを、タイヤ用ゴムコンパウンドの調製に一般的に使用される添加剤の少なくとも1つと混合し、場合によっては加熱することによって得られる混合物を示すために使用される。
【0047】
「加硫可能なゴムコンパウンド」または「加硫可能なエラストマーゴムコンパウンド」という用語は、エラストマーゴムコンパウンドに、加硫剤を含むすべての添加剤を配合することによって得られる加硫可能なエラストマー混合物を示すために使用される。
【0048】
「加硫エラストマー材料」という用語は、加硫可能なエラストマーゴムコンパウンドを加硫することによって得られる材料を示すために使用される。
【0049】
「加硫」という用語は、架橋剤、典型的には硫黄系、によって誘導される天然または合成ゴムの架橋反応を示すために使用される。
【0050】
「加硫剤」という用語は、分子間結合および分子内結合の三次元格子の形成により、天然または合成ゴムを弾性および強度のある材料に変化させることができる化合物を示すために使用される。典型的な加硫剤は、例えば、元素状硫黄、重合性硫黄、ビス[(トリアルコキシシリル)プロピル]ポリスルフィド、チウラム、ジチオジモルホリン、およびカプロラクタムジスルフィドなどの硫黄供与剤などの硫黄系化合物である。
【0051】
「加硫促進剤」という用語は、例えばTBBS、スルフェンアミド全般、チアゾール、ジチオホスフェート、ジチオカルバメート、グアニジン、およびチウラムなどの硫黄供与体などの、加硫工程の持続時間の短縮および/または運転温度の低下を可能にする化合物を示すために使用される。
【0052】
「加硫活性剤」という用語は、加硫をさらに促進し、それにより、加硫をより短時間で、場合によってはより低温で行うことを可能にする化合物を示すために使用される。活性剤の一例はステアリン酸-酸化亜鉛系である。
【0053】
「加硫遅延剤」という用語は、加硫反応の開始を遅延させる、かつ/または、望ましくない二次反応を抑制することができる化合物、例えばN-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(CTP)を示すために使用される。
【0054】
「補強充填材」という用語は、タイヤのゴムの機械的特性を改善するために、好ましくはカーボンブラックおよび「白色充填材」の中から選択される、当該分野で典型的に使用される補強材料を示すために使用される。
【0055】
「白色充填材」という用語は、従来のシリカおよびケイ酸塩、例えば、好ましくは、強酸で沈殿させた非晶質珪砂、珪藻土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、アルミナ、アルミノケイ酸塩、カオリン、ケイ酸塩繊維、例えば、セピオライト、アタパルジャイトとしても知られているパリゴルスカイト、モンモリロナイト、ハロイサイトなどのフィロ珪酸塩鉱物、任意選択により、酸処理および/または誘導体化によって改質されたもの、ならびにこれらの混合物の中から選択された当該分野で使用される従来の補強材料を示すために使用される。典型的には、白色充填材は表面ヒドロキシル基を有する。
【0056】
「自動二輪車用タイヤ」という用語は、大きな曲率比(典型的には、0.20より大きい)を有し、コーナリング時に大きなキャンバー角を達成することができるタイヤを示すために使用される。
【0057】
「曲率比」という用語は、タイヤの断面において、トレッドバンドの半径方向最高点とタイヤの半径方向断面の最大幅との間に含まれる距離(このような距離はまた「矢印」として示されている)と、タイヤの同じ最大幅(「最大コード」とも呼ばれる)との比を示すために使用される。
【0058】
トレッドバンドまたはその一部の「軸方向展開部」という用語は、タイヤの回転軸を含む平面によって行われる、タイヤの断面において、トレッドバンドまたはその一部の半径方向最も外側のプロファイルの展開部を示すために使用される。
【0059】
トレッドバンドまたはその一部のトレッドパターンの「軸方向半展開部」という用語は、タイヤの回転軸を含む平面によって行われるタイヤの断面において、赤道面からタイヤの軸方向最も外側の端部に向かう、トレッドバンドまたはその一部の半径方向最も外側のプロファイルの展開部を示すために使用される。
【0060】
タイヤの「赤道面」という用語は、タイヤの回転軸に垂直で、タイヤを対称的に2等分する平面を示すために使用される。
【0061】
「幅」という用語は、赤道面に垂直な方向に沿って測定された寸法を示すために使用される。
【0062】
「トレッドパターン」という用語は、タイヤの赤道面に垂直で、タイヤの最大直径に接する平面におけるトレッドバンドのすべての箇所(溝を含む)を表すために使用される。トレッドパターンは、溝によって分離された複数のランド部によって画定され、場合によってはサイプを含む。
【0063】
「半径方向」および「軸方向」という用語、ならびに「半径方向内側/外側」および「軸方向内側/外側」という表現は、それぞれ、タイヤの赤道面に実質的に平行な方向、およびタイヤの赤道面に実質的に垂直な方向、すなわち、それぞれ、タイヤの回転軸に実質的に垂直な方向、およびタイヤの回転軸に実質的に平行な方向を指して使用される。
【0064】
「周方向の」および「周方向に」という用語は、タイヤの周方向展開の方向、すなわちタイヤの転がり方向を指して使用され、タイヤの赤道面と一致する平面または実質的に平行な平面の方向に相当する。
【0065】
タイヤ、またはトレッドバンド、またはその一部の「周方向展開部」という用語は、タイヤに接する平面上の、タイヤ、またはトレッドバンド、またはその一部の半径方向最も外側の表面の平面展開部を示すために使用される。
【0066】
「軸方向最も内側」および「軸方向最も外側」という表現は、参照要素に対して赤道面に近い位置および赤道面から遠い位置をそれぞれ示す。
【0067】
「ラジアルカーカス構造」という用語は、タイヤのクラウン部において、それぞれが実質的に軸方向に沿って向けられた複数の補強コードを備えるカーカス構造を示すために使用される。このような補強コードは、単一のカーカスプライ、または、互いに半径方向に重ね合わせたいくつか(好ましくは2つ)のカーカスプライに組み込むこともできる。
【0068】
「実質的に軸方向」という用語は、タイヤの赤道面に対して、60°~90°の間に含まれる角度で傾斜した方向を示すために使用される。
【0069】
「実質的に周方向」という用語は、タイヤの赤道面に対して、0°~20°の間に含まれる角度を向く方向を示すために使用される。
【0070】
トレッドゴムコンパウンドの「静的機械特性」という用語は、170℃で10分間加硫されたゴムコンパウンドの供試体に対して予め定められた温度で測定された、UNI規格6065:2001に従って加硫された熱可塑性ゴムを引っ張ったときの応力-ひずみ特性を示すために使用される。
【0071】
トレッドゴムコンパウンドの「動的機械特性」という用語は、本明細書で説明するように、引張-圧縮モードにおいてインストロン動的装置モデル1341を使用して測定された機械特性を示すために使用される。
【0072】
円筒形状(長さ=25mm、直径=18mm)の(170℃、15分間)架橋された材料の試験片を用い、初期長さに対して長手方向の変形が25%になるまで圧縮予荷重をかけ、試験の全期間、予め定められた温度(例えば23℃、70℃、および100℃)に保った。2分間の待機時間に続いて、予荷重下の長さに対して7.5%の変形振幅、10Hz、125サイクルの機械的な予調整を行った後、試験片は、予荷重下の長さに対して±3.5%の振幅を有する動的正弦波応力を予め定められた周波数、例えば10Hzで受けた。動的機械特性は、動弾性係数(E’)およびtanδ(損失係数)の値によって表される。tanδ値は、動粘性係数(E’’)と動弾性係数(E’)との比として計算された。
【0073】
本発明は、前述した態様の1つまたは複数において、以下に示す好ましい特徴の1つまたは複数を有することができ、これらの特徴は、適用要件に応じて所望のように組み合わせることができる。
【0074】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料および横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料は、5.8~6.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたそれぞれの動弾性係数(E’)を有する。
【0075】
このようにして、タイヤの「低温」使用条件におけるトレッドバンドの適切な剛性特性を有することは有利にも可能である。
【0076】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R1は0.9~1.1の間に含まれる。
【0077】
有利には、この好ましい特徴は、タイヤのトレッドバンドのショルダー領域が、その「高温」変形能力の観点から、道路上でのその挙動の観点から実質的に「均質」な加硫エラストマー材料によって形成されるので、コーナリング時の乾いたおよび/または高温の表面での極端な速度および操縦条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を最適化し、長期間にわたって実質的に一定に保つことに寄与する。
【0078】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδと、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R2は0.9~1.1の間に含まれる。
【0079】
この場合もまた、この好ましい特徴は、タイヤのトレッドバンドのショルダー領域が、その「高温」変形能力の観点から、道路上でのその挙動の観点から実質的に「均質」である加硫エラストマー材料によって形成されるので、コーナリング時の乾いたおよび/または高温の表面での極端な速度および操縦条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を最適化し、長期間にわたって実質的に一定に保つことに有利に寄与する。
【0080】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料は、5.1~5.5MPa、より好ましくは5.2~5.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0081】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料は、0.26~0.30、より好ましくは0.27~0.29の間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδを有する。
【0082】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料は、2.5~2.9MPa、より好ましくは2.6~2.8MPaの間に含まれる、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0083】
有利には、この好ましい特徴は、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善するように、最適な接地性能および地面上でのタイヤの最適なグリップを達成することに寄与する。
【0084】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料は、0.24~0.28、より好ましくは0.25~0.27の間に含まれる、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδを有する。
【0085】
この場合もまた、この好ましい特徴は、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善するように、最適な接地性能および地面上でのタイヤの最適なグリップを達成することに有利に寄与する。
【0086】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、2.5~2.9MPa、より好ましくは2.6~2.8MPaの間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0087】
有利には、この好ましい特徴により、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「高温」使用条件下におけるタイヤの最適なハンドリングおよび性能を達成することに効果的に寄与することができる。
【0088】
このような「高温」使用条件において、実際、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、トレッドバンドの様々な領域において適切に区別され、「高温」使用条件においてトレッドバンド全体として動的性の観点から高い安定性の特性を達成することを可能にする、動弾性係数(E’)の値に相関する変形性の特性を同時に有する。
【0089】
第3の加硫エラストマー材料は、実際、トレッドバンドの半径方向外側部分のショルダーサブ部分の第2の加硫エラストマー材料と実質的に同一で、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央部分の第1の加硫エラストマー材料よりずっと低い変形特性を有し、それによって、ショルダー部分のヒステリシス挙動に「似る」ことができ、変形性の低いゴムコンパウンドによって形成されたトレッドバンドの中央サブ部分を「加熱」することができる。
【0090】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、0.25~0.29、より好ましくは0.26~0.28の間に含まれる、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδを有する。
【0091】
有利には、この好ましい特徴により、また、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「高温」使用条件におけるタイヤの最適なハンドリングおよび性能を達成することに効果的に寄与することができ、この場合、トレッドバンドの半径方向外側部分の第1および第2の加硫エラストマー材料のヒステリシス特性と実質的に同一である、tanδ値に相関するヒステリシス特性を有する。
【0092】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料は、6.0~6.5MPa、より好ましくは6.2~6.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0093】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料は、0.40~0.44、より好ましくは0.41~0.43の間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する。
【0094】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料は、5.5~6.0MPa、より好ましくは5.7~5.9MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0095】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料は、0.66~0.70、より好ましくは0.67~0.69の間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する。
【0096】
このようにして、「低温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善するように、地面上でのタイヤの最適なグリップを達成することは有利にも可能である。
【0097】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、4.0~5.0MPa、より好ましくは4.2~4.5MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)を有する。
【0098】
有利には、この好ましい特徴により、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「低温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善するように、最適な接地面積および地面上でのタイヤの最適なグリップを達成することに効果的に寄与することができる。
【0099】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、0.49~0.53、より好ましくは0.50~0.52の間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδを有する。
【0100】
有利には、また、この好ましい特徴により、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「低温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善するように、最適な接地面積および地面上でのタイヤの最適なグリップを達成することに効果的に寄与することができる。
【0101】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδと、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R3は0.5~1.2、より好ましくは0.7~1.0の間に含まれる。
【0102】
このようにして、タイヤのトレッドバンドの中央領域が、半径方向外側部分および半径方向内側部分の両方において、ヒステリシスの観点から実質的に「均質」な加硫エラストマー材料で形成されるので、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を、直線走行時においても最適化し、長期間にわたって実質的に一定に保つことが有利にも可能である。
【0103】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R4は1.3~2.0、より好ましくは1.5~1.8の間に含まれる。
【0104】
このようにして、タイヤのトレッドバンドの中央領域が、その「高温」変形能力の観点から、トレッドバンドの半径方向外側の中央サブ部分の係数特性(modulus characteristics)によって地面の粗さによく適応し、同時に、トレッドバンドの半径方向内側部分の係数特性によって高いグリップを達成する加硫エラストマー材料から形成されるので、直線走行時の乾いたおよび/または高温の表面での高速走行条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を最適化し、長期間にわたって実質的に一定に保つことが有利にも可能である。
【0105】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)との比R5は1.1~1.6、より好ましくは1.2~1.5の間に含まれる。
【0106】
このようにして、例えば、タイヤの暖機段階、あるいは濡れた地面および/もしくは低温の気候条件、または最適でない路面のカーブでの非常に厳しいキャンバー条件など、「低温」使用条件におけるタイヤの優れたレベルのハンドリングおよび性能を達成することが有利にも可能である。
【0107】
いかなる解釈理論にも縛られたくはないが、本出願人は、この場合、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料により、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向またはショルダーサブ部分の適切な変形が可能になり、それによってそれらの接地面積を増大させると考える。
【0108】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδとの比R6は1.1~1.6、より好ましくは1.2~1.5の間に含まれる。
【0109】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)との比R7は1.2~1.8、より好ましくは1.3~1.7の間に含まれる。
【0110】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδとの比R8は0.6~1.1、好ましくは0.7~1.0の間に含まれる。
【0111】
このようにして、例えば、タイヤの暖機段階、あるいは濡れた地面および/もしくは低温の気候条件、または最適でない路面での直線走行時など、「低温」使用条件におけるタイヤの優れたレベルのハンドリングおよび性能を達成することが有利にも可能である。
【0112】
いかなる解釈理論にも縛られたくはないが、本出願人は、この場合、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料のヒステリシスと実質的に等しいか、またはそれよりも適切に大きいヒステリシスを有し、それにより、前述の接地面積を増大させる中央サブ部分の適切な熱的作用を達成することができると考える。
【0113】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)と、この同じ加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数(E’)との比R9は1.2~2.0、より好ましくは1.4~1.9の間に含まれる。
【0114】
有利には、この好ましい特徴により、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「低温」および「高温」使用条件において、その変形特性の最適な「柔軟性」を有することができ、この柔軟性は、以下の有利な技術的効果を達成することに効果的に寄与する。
【0115】
第1に、互いに非常に近い「高温」動弾性係数すなわち変形度を有する(前述の比R1の値を参照)、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料と、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向またはショルダーサブ部分の第2の加硫エラストマー材料との協働により、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善し、長期間にわたって維持することに寄与するという技術的効果。
【0116】
第2に、例えばタイヤの暖機段階、あるいは濡れた地面および/もしくは低温の気候条件、または最適でない路面での使用など、「低温」使用条件におけるタイヤの優れたレベルのハンドリングおよび性能を維持することに寄与するという技術的効果。これは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料と、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料との間の協働によるものであり、これらのエラストマー材料は、「低温」動弾性係数、すなわち実質的な態様で互いに区別された変形度を有する(前述の比R7の値を参照)。
【0117】
タイヤの「低温」使用条件において、実際、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分の第1の加硫エラストマー材料に比べてずっと変形しやすく、ヒステリシスもずっと大きく、それによって、暖機段階でのトレッドバンドの加熱を促進し、「低温」動作温度において、濡れた表面および/もしくは低温の気候条件、または最適でない路面でのタイヤのグリップを改善することに寄与する。
【0118】
好ましくは、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定されたtanδと、この同じ加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R10は1.5~2.4、より好ましくは1.7~2.1の間に含まれる。
【0119】
有利には、また、この好ましい特徴により、トレッドバンドの半径方向内側部分の第3の加硫エラストマー材料は、「低温」および「高温」の使用状態において、そのヒステリシス特性の最適な「柔軟性」を有することができ、この柔軟性は、上記の有利な技術的効果を達成することに効果的に寄与する。
【0120】
好ましくは、本タイヤは、自動二輪車リアホイール用のタイヤであり、約0.30以上、好ましくは0.30~0.35の間に含まれる横断方向曲率比を有する。
【0121】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、例示的で非限定的な目的のための以下に示すいくつかの好ましい実施形態の以下の説明からより容易に明らかになるであろう。
【0122】
このような図面は概略図であり縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】自動二輪車のリアホイールに取り付けられることを意図された、本発明の好ましい実施形態によるタイヤの斜視図である。
図2図1のタイヤの断面の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
図において、参照数字1は、全体として、本発明の好ましい実施形態による自動二輪車ホイール用のタイヤを示す。これは、好ましくは、大排気量、例えば600ccのスーパースポーツ自動二輪車のための、自動二輪車のリアホイールに使用されることを意図されたタイヤである。
【0125】
赤道面X-Xおよび回転軸(図示せず)がタイヤ1に定められる。周方向(図1では、タイヤ1の回転方向を向く矢印Fで示されている)、および図2では赤道面X-Xに垂直な軸rで示されている軸方向も定められる。
【0126】
タイヤ1は、複数の補強要素(コード)を備える少なくとも1つのカーカス層3によって形成されたカーカス構造2を備える。
【0127】
カーカス構造2は、典型的には、その内壁が、基本的にエラストマー材料の気密層からなるシール層、いわゆる「ライナー」によってコーティングされており、膨らませたときにタイヤ自体の気密封止を確実にするように構成される。
【0128】
カーカス層3に含まれる補強要素は、好ましくは、繊維材料からなる織物コードを含む。
【0129】
コードの製造に使用される繊維性材料は、レーヨン、リヨセル、ポリエステル(例えばPEN、PET、PVA)、芳香族ポリアミド(例えばTwaron(登録商標)、Kevlar(登録商標)などのアラミド)の中から選択された天然または合成由来の繊維から単独でまたは混合して作ることができる。より詳細には、コードを作るための繊維性材料は、好ましくは、ポリエステル、レーヨン、リヨセル、芳香族ポリアミド、または前述の材料のうち2つ以上によって形成されるハイブリッド材料の中から選択される。
【0130】
少なくとも1つのカーカス層3に含まれる補強要素は、好ましくは、放射状に配置される、すなわち周方向に対して70°~110°、より好ましくは80°~100°の間に含まれる角度に従って配置される。
【0131】
少なくとも1つのカーカス層3は、実質的にトロイダル形態に従って形づくられ、その両側の周縁3aによって、少なくとも1つの環状補強構造に係合される。
【0132】
特に、少なくとも1つのカーカス層3の両側の側縁3aは、環状補強構造の周りに折り返すことができ、環状補強構造はそれぞれ、1つまたは複数の金属製の環状のビードコア4と、カーカス層3とカーカス層3の対応する折り返された側縁3aとの間に画定された空間を占めるテーパ状のエラストマー充填材5とを備える。
【0133】
ビードコア4および充填材5を備えるタイヤの領域はいわゆるビード9を形成し、ビード9は、図示していない対応する取付けリムにタイヤ1を固定するように意図される。
【0134】
図示していない実施形態では、少なくとも1つのカーカス層3は、前述のコードによって補強されたエラストマー材料の複数の片を結合させることによって作られ、2つの環状インサートを備えた特定の環状補強構造に、折り返すことなく関連付けられたその両側の側縁を有する。エラストマー材料からなる充填材は、第1の環状インサートに対して軸方向外側位置に配置することができる。一方、第2の環状インサートは、カーカス層の端部に対して軸方向外側位置に配置することができる。最後に、この第2の環状インサートに対して軸方向外側位置に、必ずしもそれと接触する必要はないが、環状補強構造の構築を終わらせるさらなる充填材が場合によっては設けられてもよい。
【0135】
典型的にはゴム被覆されたコードで形成された少なくとも1つのベルト層6aを備えるベルト構造6が、カーカス構造2の上に、半径方向外側位置で周方向に適用される。
【0136】
好ましくは、層6aは、複数の輪を形成するように互いに実質的に平行で並列に配置されたコードによって作られる。このような輪は、実質的に周方向に従って(典型的には0°~5°の間の角度で)向けられるが、このような方向は、通常、タイヤの周方向に対して敷設する方向を基準として「ゼロ度」と呼ばれる。
【0137】
好ましくは、「ゼロ度」層6aは、軸方向に隣り合う単一のコードの巻き、または軸方向に隣り合うコードを備えるゴム被覆された布のバンドの軸方向に隣り合う巻きを備えることができる。
【0138】
層6aのコードは織物または金属コードである。好ましくは、このようなコードは、高炭素含有量の鋼線、言い換えれば、少なくとも0.6~0.7%の炭素含有量の鋼線からなる金属コードである。
【0139】
好ましくは、このような金属コードは高い伸び(HE:high elongation)を有する。
【0140】
ベルト構造6とカーカス構造2との間の接着性を向上させるために、エラストマー材料から作られた接着層7を前述の2つの構造の間に挟んでもよい。
【0141】
図示していない実施形態では、ベルト構造6は、少なくとも2つの半径方向に重なった層から構成することができる。これらの層は、第1のベルト層のコードがタイヤの周方向に対して斜めに向けられ、第2の層のコードも斜めに向けられるが、第1の層のコードに対して実質的に対称に交差するように配置される。
【0142】
トレッドバンド8は、ベルト構造6上に周方向に重ねられ、タイヤの加硫と同時に行われる成形作業の後、典型的には、トレッドバンド8に、所望のトレッドパターンを画定するように配置された長手方向および/または横断方向の溝が形成される。
【0143】
図1は、非限定的な例として、タイヤ1の赤道面X-Xの両側に様々に配置された複数の溝を備えるトレッドパターンを示す。
【0144】
好ましくは、トレッドパターンは、実質的にL字形の第1の周方向連続溝13と、溝13に対して軸方向外側位置にある第2の周方向連続溝14と、タイヤ1の赤道面X-Xに対して様々に傾き、溝13と溝13との間に周方向に挟まれた第3の周方向連続溝の群15a、15b、15c、および15dとを備える。
【0145】
簡略化のため、このような溝は図2には表されていない。
【0146】
タイヤ1は、カーカス構造2の両側に横方向に適用された一対のサイドウォール10を備えることができる。
【0147】
タイヤ1は、赤道面X-Xにおいて、トレッドバンド8の頂部と、タイヤ1のビードを通る基準線rで特定される取付径との間で測定される断面高さHを有する。
【0148】
タイヤ1はまた、トレッドバンド8のプロファイルの軸方向の両端部E間の距離によって定義される横断方向断面の最大幅Cと、タイヤ1の赤道面において測定される、トレッドバンド8自体の両端部Eを通る線からのトレッドバンド8の頂部の距離fと前述の最大幅Cとの比として定義される曲率比とを有する。トレッドバンド8の軸方向の両端部Eは、端部において形成することができる。
【0149】
特に、タイヤ1は、大きな曲率比、好ましくは、少なくとも約0.30の曲率比f/Cによって特徴付けられる横断方向断面を有する。
【0150】
好ましい実施形態では、本発明の自動二輪車用タイヤ1は、実質的に160~210mmの間に含まれるコード寸法を有するリアホイールに取り付けられるように意図される。
【0151】
好ましくは、トレッドバンド8の半径方向最も外側の点と、タイヤ1のトレッドバンド8自体の軸方向の両端部Eを通る線との間の距離fは、実質的に50~70mmの間に含まれる。
【0152】
好ましくは、自動二輪車のリアホイールに取り付けられるように意図されるタイヤ1に対して、横断方向の曲率比f/Cは、実質的に約0.30以上であり、より好ましくは0.30~0.35の間に含まれる。
【0153】
好ましくは、全高/コード比H/Cは、実質的に0.5~0.65の間に含まれる。
【0154】
好ましい実施形態では、例えば、タイヤ1は、自動二輪車のリアホイールに取り付けられるように意図される場合、タイヤ1が、例えば、サイドウォール高さ比(H-f)/Hの値が0.35以上、より好ましくは0.4以上となる実質的な高さのサイドウォール10を有するときにより良い性能を達成することを可能にする。
【0155】
好ましくは、タイヤ1は、ショルダー半径と最大断面幅との比が0.60以上である。
【0156】
本発明によれば、トレッドバンド8は、いわゆる「キャップアンドベース」タイプであり、少なくとも3つの異なるエラストマー材料で作られる。
【0157】
図示した好ましい実施形態では、トレッドバンド8は、
a1)タイヤ1の赤道面X-Xをまたいで配置され、第1の加硫エラストマー材料で作られた中央サブ部分11aと、
a2)タイヤ1の赤道面X-Xに対して遠位であり、中央サブ部分11aの両側に配置された一対の横方向サブ部分11b、11cと
を備える半径方向外側部分11を備える。
【0158】
上記で概略を述べたように、トレッドバンド8の横方向サブ部分11b、11cは、第2の加硫エラストマー材料で作られる。
【0159】
図示した好ましい実施形態では、トレッドバンド8は、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の下方で、その軸方向展開部の全体に沿って延在する半径方向内側部分12を備える。
【0160】
上記で概略を述べたように、トレッドバンド8の半径方向内側部分12は、第3の加硫エラストマー材料で作られる。
【0161】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状サブ部分11aは、横断方向に、トレッドバンド8の軸方向展開部全体Lの25~40%、より好ましくは30~35%延在する軸方向展開部L1を有する。
【0162】
好ましくは、トレッドバンド8の横方向サブ部分11b、11cは、横断方向に、トレッドバンド8の軸方向展開部全体Lの25~40%、より好ましくは30~35%延在するそれぞれの軸方向展開部L2、L3を有する。
【0163】
トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aは、有利には、例えば、前述の第1の加硫エラストマー材料の少なくとも1つの連続した細長い要素の螺旋体を隣接させて周方向に配置して、一体に形成される。
【0164】
逆に、トレッドバンド8の横方向サブ部分11b、11cは、有利には、例えば、前述の第2の加硫エラストマー材料の少なくとも1つの連続した細長い要素の輪を隣接させて周方向に配置して、一体に形成される。
【0165】
このように、また上記で概略を述べたように、トレッドバンド8の半径方向外側部分11において、タイヤ1の赤道面X-Xの両側で中央環状部分11aの両側に、第1の加硫エラストマー材料と第2の加硫エラストマー材料との間の一対の境界面16が画定される。
【0166】
したがって、トレッドバンド8のこの好ましい構成では、境界面16は、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aを、軸方向に沿って横方向サブ部分11b、11cから分ける。
【0167】
好ましくは、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の横方向サブ部分11b、11c、したがって、境界面16は、上記で定めたように、トレッドバンドの軸方向展開部の半分L/2の25~40%、より好ましくは30~35%の間に含まれる、タイヤ1の赤道面X-Xからの距離に配置される。
【0168】
図2に示す好ましい実施形態では、境界面16は、トレッドバンド8の内側から外側へタイヤ1の赤道面X-Xの方へ収束することができ、境界面は、30°~50°、好ましくは35°~40°の間に含まれる角度で赤道面X-Xに対して傾斜する方向に従って向けられている。
【0169】
トレッドバンド8のこの好ましい構成では、トレッドバンド8の半径方向内側部分12は、実質的に、ベルト構造6の軸方向展開部全体にわたって延在する。
【0170】
したがって、トレッドバンド8のこの好ましい構成では、トレッドバンド8の半径方向内側部分12は、ベルト構造6と、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aおよび横方向サブ部分11b、11cとの間に半径方向に沿って挟まれる。
【0171】
トレッドバンド8の異なる部分のゴムコンパウンドは、タイヤ1を形成する他の半加工品のゴムコンパウンドと同様に、少なくとも1つのエラストマージエンポリマー(a1)を含む。
【0172】
有利には、このようなゴムコンパウンドは、少なくとも1つのα-オレフィンを含み、以下により詳細に説明するような特定の配合を有する。
【0173】
一実施形態によれば、この少なくとも1つのエラストマージエンポリマー(a1)は、例えば、タイヤの製造に特に適している、硫黄で架橋(加硫)可能なエラストマー組成物に一般的に使用されるエラストマージエンポリマーから、すなわち、通常、20℃より低い、好ましくは0℃~-110℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する不飽和鎖を有するエラストマーポリマーまたはコポリマーから選択することができる。これらのポリマーまたはコポリマーは、天然由来のものであってもよいし、任意選択により、モノビニルアレーンおよび/または極性コモノマーから選択される少なくとも1つのコモノマーと混合された、1つまたは複数の共役ジオレフィンの溶液重合、乳化重合、または気相重合によって得られるものであってもよい。
【0174】
好ましくは、トレッドゴムコンパウンドに対して、ポリブタジエン(BR)および/またはスチレンブタジエンポリマー(SBR)、例えばSSBR(溶液重合スチレンブタジエンエラストマー)またはE-SBR(乳化重合スチレンブタジエンエラストマー)が単独でまたは混合して使用されてもよい。
【0175】
好ましくは、スチレンブタジエンポリマー(SBR)は、本発明のゴムコンパウンド中に、約50~100phr、より好ましくは70~100phrの可変量で存在することができる。
【0176】
有利には、ポリブタジエン(BR)は、本発明のゴムコンパウンド中に、特にトレッドゴムコンパウンド中に存在しない、または約0phr~40phr、より好ましくは約10~30phrの量で含むことができる。
【0177】
好ましくは、スチレンブタジエンポリマーは、溶液またはエマルジョンから得ることができ、一般に、約10~40重量%、好ましくは約15~30重量%の量のスチレンを含む。
【0178】
好ましくは、スチレンブタジエンポリマーは低分子量を有することができ、200,000g/molより低い、好ましくは150,000~200,000g/molの間に含まれる平均分子量Mnを有する。
【0179】
トレッドバンド8の異なる部分のエラストマー材料は、一般に1phr~130phrの間に含まれる量で存在する少なくとも1つの補強充填材を含む。
【0180】
このような補強充填材は、好ましくは、カーボンブラック、ならびに、いわゆる白色充填材、すなわち、シリカ、アルミナ、ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、およびこれらの混合物から選択される。
【0181】
トレッドバンド8の異なる部分のエラストマー材料に使用される補強充填材は、カーボンブラックのみ、またはカーボンブラックと1つまたは複数の白色充填材、例えばシリカとの両方を含むことができる。
【0182】
好ましい実施形態では、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aの第1の加硫エラストマー材料は、上記で規定したような「白色」補強充填材について、補強充填材の全重量の75重量%より多く、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上超える量を含む。
【0183】
より好ましくは、このような「白色」補強充填材は、シリカ、アルミナ、ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、およびこれらの混合物から選択される。
【0184】
さらにより好ましくは、「白色」補強充填材は、50m/g~500m/g、好ましくは70m/g~200m/gの間に含まれるBET表面積(ISO規格5794/1に従って測定)を有する熱分解法シリカまたは沈降法シリカとすることができる。
【0185】
このようにして、タイヤ1のトレッドバンド11の迅速な暖機、および路面の異なる条件での優れたグリップを達成することは有利にも可能である。
【0186】
好ましい実施形態では、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の横方向サブ部分11b、11cの第2のエラストマー材料は、カーボンブラックについて、補強充填材の全重量の75重量%より多く、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上超える量を含む。
【0187】
好ましくは、カーボンブラックは、20m/gより小さくない、好ましくは50m/gより大きい表面積(ISO18852:2005によるSTSA-統計的厚さ比表面積(statistical thickness surface area)により決定)を有するものの中から選択される。
【0188】
カーボンブラックは、例えば、Birla Group(インド)から販売されているN234、N326、N330、N375、N550、もしくはN660、またはCabot CorporationのCRX 1391とすることができる。
【0189】
補強充填材は、例えばカーボンブラックとシリカとの混合物を含むことができる。
【0190】
このようにして、例えば前世代のスーパーバイクなどの高い性能の自動二輪車によって生成されるトルクを管理するために、コーナリング時の最適な支持および加速時の最適なトラクションを達成することは有利にも可能である。
【0191】
上記のエラストマー組成物およびタイヤ1の他の構成要素のエラストマー組成物は、知られている技術を用いて、特に、エラストマーポリマーに一般的に使用される硫黄系加硫システムを用いて加硫することができる。この目的のために、エラストマー組成物には、1つまたは複数の熱機械処理工程の後に、硫黄系加硫剤が加硫促進剤とともに配合される。この処理の最終段階では、温度は一般に140℃より低く保たれて、望ましくない予備架橋現象を避ける。
【0192】
最も有利に使用される加硫剤は硫黄または硫黄含有分子(硫黄供与体)であり、促進剤および活性剤は当業者に知られている。
【0193】
特に有効な活性剤は、亜鉛系化合物で、特にZnO、ZnCO、炭素原子8~18個を含む飽和または不飽和脂肪酸の亜鉛塩で、例えば、好ましくはZnOおよび脂肪酸からエラストマー組成物中でその場で形成されステアリン酸亜鉛、また、BiO、PbO、Pb、PbO、またはこれらの混合物などである。
【0194】
一般的に使用される促進剤は、ジチオカルバミン酸塩、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、スルホンアミド、チオウラム、アミン、キサンテート、またはこれらの混合物から選択することができる。
【0195】
使用されるエラストマー組成物は、各組成物が意図される特定の用途に基づいて一般的に選択される他の添加剤を含むことができる。
【0196】
例えば、これらのエラストマー組成物に、抗酸化剤、抗老化剤、可塑剤、接着剤、抗オゾン剤、改質樹脂、繊維(アラミドまたは天然由来の繊維)、またはそれらの混合物を添加することができる。
【0197】
以下の表1では、加硫後に、タイヤ1の好ましい実施形態における第1、第2、および第3の加硫エラストマー材料となるゴムコンパウンドを示すための単なる例を示す。
【0198】
エラストマー組成物の様々な構成要素の量は、一般に、上記で定義したようなphrで示される。
【0199】
【表1】


S-SBR:溶液重合スチレンブタジエンコポリマー(乾燥ポリマーとしてのphr、乾燥エラストマーポリマー100phr当たりTDAE油37.5phrで伸展)-TUFDENE E680(旭化成)
E-SBR:乳化重合スチレンブタジエンコポリマー(乾燥ポリマーとしてのphr、乾燥エラストマーポリマー100phr当たりRAE油37.5phrで伸展)-INTOL1789(Versalis)
BR:官能基化低シスポリブタジエン-YB03(旭化成)
CB:CRX(商標)1391(Cabot)
シリカ:ULTRASIL(登録商標)7000(Evonik)
液状コポリマー(グリップ向上剤):低分子量ブタジエン/スチレン液状コポリマー(4500g/mol)-RICON(登録商標)100(Cray Valley)
伸展油:TDAE(Orgkhim)
潤滑剤:リン酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOF)(Lanxess)
樹脂1:炭化水素樹脂-KRISTALEX(登録商標)5140LV(Eastman)
樹脂2:炭化水素樹脂-RHENOSIN(登録商標)TT90(Lanxess)
樹脂3:炭化水素樹脂-NOVARES(登録商標)TT30(Reutgers Germany GmbH)
亜鉛塩:ネオデカン酸亜鉛50(Rhein Chemie)
ステアリン酸:ステアリン酸(Undesa)
酸化亜鉛:RHENOGRAN(登録商標)ZnO(Zincol Ossidi)
シラン:SILAN(Evonik)
ステアリン酸亜鉛:ACID GRAS SARE DE ZINC(Eigenmann & Veronelli)
ワックス:WAX(Repsol)
抗酸化剤:2,2,4-トリメチル-1,1-ジヒドロキノリン-TMQ(Lanxess)
抗オゾン剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン-SANTOFLEX(登録商標)6PPD(Eastman)
硫黄:RHENOCURE(登録商標)IS 90 P(Rhein Chemie)
架橋剤:二官能性1,6-ビス(NN’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン-VULCUREN(登録商標)KA9188(Lanxess)
接着促進剤:ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸)二ナトリウム二水和物塩-DURALINK(登録商標)HTS(Eastman)
加硫促進剤1:N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド-TBBS(Huatai Chemical)
加硫促進剤2:ジベンゾチアゾールジスルフィド-RHENOGRAN(登録商標)MBTS80(Rhein Chemie)
加硫促進剤3:テトラベンジルチウラムジスルフィド-TBZTD(Akrochem)
加硫遅延剤:N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド-PVI(Akrochem)
【0200】
本発明によれば、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aの第1の加硫エラストマー材料は、横方向サブ部分11b、11cの第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’より大きい、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’を有する。
【0201】
さらに、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aの第1の加硫エラストマー材料および横方向サブ部分11b、11cの第2の加硫エラストマー材料は、5.2~6.5MPa、好ましくは5.8~6.4MPaの間に含まれる、周波数10Hz、23℃で測定されたそれぞれの動弾性係数E’を有する。
【0202】
さらに本発明によれば、トレッドバンド8の半径方向内側部分12の第3の加硫エラストマー材料は、前述のトレッドバンド8の半径方向外側部分11の中央サブ部分11aの第1の加硫エラストマー材料および横方向サブ部分11b、11cの第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’より低い、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数E’を有する。
【0203】
上記で概略を述べたように、本出願人は、タイヤ1の「低温」使用条件では、トレッドバンド8の半径方向内側部分12に存在する第3の加硫エラストマー材料は、タイヤの横方向またはショルダー部分に変形(弾性係数E’に相関する)およびヒステリシス現象(tanδパラメータに相関する)を受け、それにより、上にあるトレッドバンド8の半径方向外側部分11(より硬く、より小さいヒステリシス)を「加熱」することができ、それにより、半径方向外側部分11は、濡れた条件および/または低温の条件の地面によりよく密着することができると考える。
【0204】
本発明によれば、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の横方向サブ部分11b、11cの第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数E’と、トレッドバンド8の半径方向内側部分12の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数E’との比R1は0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の間に含まれる。
【0205】
さらに、トレッドバンド8の半径方向外側部分11の横方向サブ部分11b、11cの第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定されたtanδと、トレッドバンド8の半径方向内側部分12の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定されたtanδとの比R2は0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の間に含まれる。
【0206】
上記で概略を述べたように、本出願人は、動弾性係数E’の値に相関する変形特性間の前述の比R1、およびtanδ値に相関するヒステリシス特性間の前述の比R2を1に近い値になるように制御することによって、タイヤの「高温」使用条件において、最適な動的挙動およびヒステリシス挙動を有して、ショルダー領域で早期摩耗および性能劣化の現象を制限し、かつ中央領域で直線コースの最適な走行性能を確保することが有利にも可能であることを実験的に観察した。
【0207】
タイヤ1はまた、対応する有利な技術的効果を達成する上記の好ましい特徴の1つまたは複数を備えることができる。
【0208】
次に、本発明をいくつかの例によって説明するが、これらは例示するためで、限定する目的ではない。
【0209】
加硫エラストマー組成物の特性
以下の表2では、加硫後に、タイヤ1の特に好ましい実施形態における第1、第2、および第3の加硫エラストマー材料となるゴムコンパウンドを示すための単なる例を示す。
【0210】
エラストマー組成物の様々な構成要素の量は、一般に、上記で定義したようなphrで示される。
【0211】
【表2】


S-SBR:溶液重合スチレンブタジエンコポリマー(乾燥ポリマーとしてのphr、乾燥エラストマーポリマー100phr当たりTDAE油37.5phrで伸展)-TUFDENE E680(旭化成)
E-SBR:乳化重合スチレンブタジエンコポリマー(乾燥ポリマーとしてのphr、乾燥エラストマーポリマー100phr当たりRAE油37.5phrで伸展)-INTOL1789(Versalis)
BR:官能基化低シスポリブタジエン-YB03(旭化成)
CB:CRX(商標)1391(Cabot)
シリカ:ULTRASIL(登録商標)7000(Evonik)
液状コポリマー:低分子量ブタジエン/スチレン液状コポリマー(4500g/mol)-RICON(登録商標)100(Cray Valley)
伸展油:TDAE(Orgkhim)
潤滑剤:リン酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOF)(Lanxess)
樹脂1:炭化水素樹脂-KRISTALEX(登録商標)5140LV(Eastman)
樹脂2:tertブチルフェノール樹脂(BASF)
樹脂3:炭化水素樹脂-RHENOSIN(登録商標)TT90(Lanxess)
亜鉛塩:ネオデカン酸亜鉛50(Rhein Chemie)
ステアリン酸:ステアリン酸(Undesa)
酸化亜鉛:RHENOGRAN(登録商標)ZnO(Zincol Ossidi)
シラン:SILAN(Evonik)
ステアリン酸亜鉛:ACID GRAS SARE DE ZINC(Eigenmann & Veronelli)
ワックス:WAX(Repsol)
抗酸化剤:2,2,4-トリメチル-1,1-ジヒドロキノリン-TMQ(Lanxess)
抗オゾン剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン-SANTOFLEX(登録商標)6PPD(Eastman)
硫黄:RHENOCURE(登録商標)IS 90 P(Rhein Chemie)
架橋剤:二官能性1,6-ビス(NN’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン-VULCUREN(登録商標)KA9188(Lanxess)
接着促進剤:ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸)二ナトリウム二水和物塩-DURALINK(登録商標)HTS(Eastman)
加硫促進剤1:N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド-TBBS(Huatai Chemical)
加硫促進剤2:ジベンゾチアゾールジスルフィド-RHENOGRAN(登録商標)MBTS80(Rhein Chemie)
加硫促進剤3: N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド-TBBS80(Rhein Chemie)
加硫遅延剤:N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド-PVI(Akrochem)
【0212】
以下の表3は、本発明によるタイヤ1のトレッドバンド8の半径方向内側部分12および半径方向外側部分11の3つの材料に使用された組成物の供試体に対して実行された静的および動的機械分析の結果を示しており、その配合は前の表1に示されている。
【0213】
これらの分析は、温度および周波数条件下で、上に示した技術に従って実行された。
【0214】
【表3】
【0215】
以下の表4は、様々な加硫エラストマー材料で、本発明の目的の対象である各加硫エラストマー材料において、上記の弾性係数E’およびtanδの動的機械特性の比を示す。
【0216】
【表4】
【0217】
表4から、1に等しいか、または近い比R1、R2、R5、およびR6の値は、第2の加硫エラストマー材料と第3の加硫エラストマー材料との間で、すなわちタイヤ1のショルダー領域の半径方向外側部分に存在するゴムコンパウンドと、半径方向内側部分に存在するゴムコンパウンドとの間で、「高温」および「低温」の両方において、均質な挙動を予測するものであることが明らかに分かる。
【0218】
表4から、また、タイヤ1のトレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分に存在する第1の加硫エラストマー材料と、半径方向内側部分に存在する第3の加硫エラストマー材料との、tanδおよび動弾性係数E’の比R3およびR4の「高温」での値は、このような材料間での適切に区別された挙動、すなわち、トレッドバンドのベース部分ではより変形しやすくヒステリシス性の高い挙動、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分ではより剛性が高くヒステリシス性の低い挙動を予測するものであることが明らかに分かる。
【0219】
このようにして、上記で概略を述べたように、このような加硫エラストマー材料により、直線コースを走行時のタイヤの最適な「高温」でのハンドリング性能およびロードホールディング性能を達成することができる。
【0220】
最後に、表4から、タイヤ1の半径方向外側の中央サブ部分に存在する第1の加硫エラストマー材料と、半径方向内側の部分に存在する第3の加硫エラストマー材料との、動弾性係数E’およびtanδの比R7およびR8の「低温」での値は、このような材料間での適切に区別された挙動、すなわち、トレッドバンドのベース部分ではより変形しやすくヒステリシス性の高い挙動、トレッドバンドの半径方向外側の中央部分ではより剛性が高くヒステリシス性の低い挙動を予測するものであることが明らかに分かる。
【0221】
このようにして、上記で概略を述べたように、このような加硫エラストマー材料により、直線コースを走行時のタイヤの最適な「低温」でのハンドリング性能およびロードホールディング性能を達成することができる。
【0222】
タイヤの屋外試験
本出願人は、改善された性能を得るために、スポーツユーザから高い評価を得ていることが判明し、今でもベンチマークタイヤであるPirelli Diablo Rosso(商標)IV 190/55ZR17をリアホイール用の比較走行試験のベースとして選んだ。
【0223】
スポーツ走行では、リアタイヤは、フロントタイヤよりも熱的負荷が大きいので、リアタイヤで試験を行うという選択は特に厳しいものであると考えられた。
【0224】
本発明によるタイヤと比較タイヤは両方ともトレッドバンドの「キャップアンドベース」構成を有するが、比較タイヤは2つの異なる加硫エラストマー材料、すなわち、トレッドバンドの半径方向外側部分の横方向サブ部分に第1のエラストマー材料、トレッドバンドの半径方向外側部分の中央サブ部分および半径方向内側部分に第2のエラストマー材料を有する構成を有した点が異なる。
【0225】
本発明によるタイヤは、図2を参照して上記で示したように、半径方向外側に2つ、半径方向内側に1つの3つの異なる加硫エラストマー材料を有する構成を有した。
【0226】
表3および4に示す機械特性を有する表2に示したゴムコンパウンドを使用して、比較タイヤと類似したサイズの、リアホイール用のスーパースポーツタイヤのトレッドバンドの半径方向内側部分および半径方向外側部分を作製した。
【0227】
キャップアンドベースタイプの比較タイヤのトレッドバンドは、以下の表5に示す2つの材料(該当するものについては、先に表2に示した成分)を用いて作製された。
【0228】
【表5】
【0229】
乾いた地面および濡れた地面の両方でグリップおよび操縦性を試験するために、一連の操作を行うことによって様々な試験セッションが私有のレーストラックで実施された。運転者の評価は、様々な操作における評価の平均である。
【0230】
乾いた地面での試験では、条件は以下のようなものであった。タイヤの空気圧:2.5バール、トラックのアスファルト温度:39℃、気温:18℃。
【0231】
濡れた地面での試験では、条件は以下のようなものであった。タイヤの空気圧:2.9バール、トラックのアスファルト温度:8℃、気温:8℃。
【0232】
試験は「スーパースポーツ」自動二輪車モデルBMW(登録商標)S1000Rで実施された。
【0233】
以下の表6と表7は、試験操縦者が、乾いた地面および濡れた地面での試験において、それぞれ、試験されるタイヤの様々なタイプの要求性能について与えた得点をまとめたものである。
【0234】
さらに、乾いた地面での試験では、本発明によるタイヤと比較タイヤとの異なる組が、トラックの1周(表6の列1および列2)および20周完走(表6の列3および列4)の両方で試験され、この2番目の場合に、トラックでのレースまたは数回のトレーニングセッション(約100km走行)を模擬した高負荷使用(「ハードハンドリング」)による性能劣化を確認した。
【0235】
表5は、本発明によるタイヤに対して、比較タイヤと等しい性能の評価を記号「=」によって示し、比較タイヤに対して改善の評価を、性能の向上が大きくなるにつれて、より多くの数の記号「+」で示している。
【0236】
列1と列2との間(1周)でのみ、および、列3と列4との間(20周走行後)でのみ評価の同質性があることに留意すべきである。言い換えれば、1周の評価は、レース模擬試験のタイヤの組とは異なるタイヤの組で行われたものであり、このような1周はレース模擬の最初の1周目ではない。
【0237】
【表6】
【0238】
【表7】
【0239】
表6および表7に示した評価から、本発明によるタイヤにより、タイヤの前述の「低温」使用条件におけるハンドリングおよびロードホールディング性能を犠牲にすることなく、「高温」使用条件におけるハンドリング性能およびタイヤの性能を改善し、できるだけ長期間にわたって一定に保つという、所望の2つの目的を達成することができたことが明らかに分かる。
【0240】
驚くべきことに、トレッドバンドの半径方向内側部分に、このタイプの走行条件には明らかにあまり適さない「柔らかい」加硫エラストマー材料を使用しているにもかかわらず、「高温」使用条件におけるタイヤのハンドリングおよび性能を改善し、長期間にわたって維持するという効果が達成された。
【0241】
試験の実施中、本発明によるタイヤでは、テストサーキットでのラップタイムが大幅に短縮されたことにも気付いた。
【0242】
以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲内に留まってさえいれば、詳細に説明した実施形態に様々な変更を行うことができる。
【要約】
第1の加硫エラストマー材料で作られた中央サブ部分(11a)、および第2の加硫エラストマー材料で作られた一対の横方向サブ部分(11b、11c)によって形成された半径方向外側部分と、第3の加硫エラストマー材料で作られた半径方向内側部分(12)とを備える「キャップアンドベース」タイプのトレッドバンド(8)を備える自動二輪車ホイール用のタイヤ(1)が記載されている。中央サブ部分(11a)の第1の加硫エラストマー材料は、横方向サブ部分(11b、11c)の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より大きい、同じ条件で測定された動弾性係数(E’)を有し、両方のこのような加硫エラストマー材料は、5.2~6.5MPaの間に含まれ、第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、23℃で測定された動弾性係数(E’)より大きい、同じ条件で測定されたそれぞれの動弾性係数(E’)を有する。本タイヤ(1)では、半径方向外側部分の横方向サブ部分(11b、11c)の第2の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、100℃で測定された動弾性係数およびtanδと、トレッドバンド(8)の半径方向内側部分(12)の第3の加硫エラストマー材料の、周波数10Hz、70℃で測定された動弾性係数およびtanδとのそれぞれの比R1およびR2は0.8~1.2の間に含まれる。
図1
図2