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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】自着性粘着剤組成物及び自着製品
(51)【国際特許分類】
   C09J 111/02 20060101AFI20250516BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20250516BHJP
   C09J 113/02 20060101ALI20250516BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250516BHJP
【FI】
C09J111/02
A61L15/58 310
C09J113/02
C09J7/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021074381
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168718
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高市 千尋
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043586(WO,A1)
【文献】特開2014-152183(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065524(WO,A1)
【文献】特開2013-159741(JP,A)
【文献】米国特許第06156424(US,A)
【文献】特開昭58-149269(JP,A)
【文献】特開2012-249755(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
A61F 13/00-13/14
A61F 15/00-17/00
A61L 15/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面上に自着性粘着剤組成物から形成された自着性粘着剤層を有する、自着製品であって、前記自着性粘着剤組成物が、
(a)クロロプレンホモポリマーからなるクロロプレンゴムラテックス及び
(b)クロロプレンとメタクリル酸との共重合体であるクロロプレンポリマーからなるクロロプレンゴムラテックス
を含有し、
前記(a)と(b)を固形分換算の質量比で(a):(b)=90:10~30:70の割合で含有する、
自着製品。
【請求項2】
前記自着性粘着剤組成物がさらに、
(c)粘着付与樹脂
を含み、前記(a)と(b)の固形分換算での合計100質量部に対して、(c)を20~40質量部の割合で含有する、請求項1に記載の自着製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自着性粘着剤組成物及び該組成物から形成された自着剤粘着剤層を有する自着製品に関する。
【背景技術】
【0002】
自着包帯などに代表される医療用自着性テープには、現在、天然ゴムラテックス系粘着剤を配合した自着性粘着剤が多く使用されている(例えば特許文献1、特許文献2等参照)。一般に自着性粘着剤には、タック感(べたつき)が少なく、かつ、該粘着剤が塗布された表面同士は強く接着し、容易に剥がれることのない固定性が求められ、こうした性能を満足できる自着粘着剤として上記天然ゴムラテックス系粘着剤が使用されてきた。しかし医療現場などにおけるラテックスアレルギーリスクの観点から、こうした用途における自着粘着剤においても脱天然ゴムラテックス化への要望が高まっている。
【0003】
天然ゴム代替材料に近い物性を示す材料として合成ポリイソプレン(IR)が挙げられる。合成ポリイソプレンを用いる場合、一般に溶剤型粘着剤の形態にて基材に塗工することとなるが、溶剤型粘着剤は、製造や使用の際の有機溶剤による毒性、火気危険性、環境汚染などの問題から脱溶剤化の要求がある。合成ポリイソプレンをラテックス形態とすることで、前記溶剤型粘着剤における問題の解決を図るも、コストの大幅な増加につながり、使用用途が制限される問題がある。
一方、自着性粘着剤として、アクリル系エマルジョン形態の粘着剤の使用も検討されているが、自着性粘着剤に求められる低タック感と高い自着性を両立するものは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-260553号公報
【文献】特開平11-89874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脱天然ゴムラテックス化、かつ、脱溶剤型粘着剤化を図り、自着性粘着剤に求められる低タック感と高い自着性を実現する新たな自着性粘着剤組成物及び自着製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、低タック感を実現するべく、物性面で伸びが小さく、比較的タック感の少ないクロロプレンゴムラテックスを自着性粘着剤のエラストマー成分として採用した。そしてここで、せん断力の高いクロロプレンホモポリマーラテックスと、初期接着性の高いカルボキシル基含有クロロプレンポリマーラテックスを組み合わせた粘着剤組成物が、タック感(べたつき)が少なく、かつ、これより形成した粘着面同士が強く接着し、容易に剥がれることのない固定力を発現させることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、下記自着性粘着剤組成物を対象とする。
[1](a)クロロプレンホモポリマーからなるクロロプレンゴムラテックス、及び(b)分子内にカルボキシル基を有するクロロプレンポリマーからなるクロロプレンゴムラテックスを含有し、前記(a)と(b)を固形分換算の質量比で(a):(b)=90:10~30:70の割合で含有する、自着性粘着剤組成物。
【0008】
そして本発明によれば、さらに以下の実施態様が提供される。
[2]さらに、(c)粘着付与樹脂を含み、前記(a)と(b)の固形分換算での合計100質量部に対して、(c)を20~40質量部の割合で含有する、[1]に記載の自着性粘着剤組成物。
[3]基材と、該基材の少なくとも一方の面上に[1]又は[2]に記載の自着性粘着剤組成物から形成された自着性粘着剤層を有する、自着製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自着性粘着剤組成物は、クロロプレンホモポリマーラテックスとカルボキシル基含有クロロプレンラテックスを組み合わせることにより、べたつき感が少なく、これを塗布し形成した粘着面(粘着剤層)同士の自背面粘着力と自着固定力のバランスに優れたものとすることができる。
従って、本発明の自着性粘着剤組成物を用いた、粘着包帯・バンテージ類等の自着製品は、止血用途やカテーテル固定などの医療・衛生分野に加えて、スポーツ分野におけるテーピングなどの外用用途への展開が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の自着性粘着剤組成物や自着製品に係る「自着性」とは、それ自身は微粘着性(初期タック感)を有する粘着剤であって、そして比較的弱い圧力でも粘着剤同志が接着性を示し、但し他の多くの物質には強い圧力を加えてもほとんど接着しない性質を指す。
たとえば基材の両面に該自着性粘着剤組成物より形成した粘着剤層(粘着面)を備えた態様とした自着製品にあっては、該粘着剤層同志(粘着面同士)が密着することによって直巻きが可能となり、また使用時において比較的軽い力で巻き戻しができ(規定条件でロールから巻き戻すのに要する力が小さい、すなわちテープ等を繰り出しやすい)、かつ比較的弱い圧力でも粘着剤層同志が接着性を示すことによって良好な固定機能を発現する。
【0011】
これまでにも、クロロプレンゴムラテックスを水系のコンタクト型接着剤、すなわち接着剤(接着剤層)同士を張り合わせるタイプの接着剤に用いた提案がなされている(特許第4180195号公報、特許第5426976号公報等)。これら従来の提案は、建材用、住宅用、輸送機内装用、家具用、履物用など幅広い用途において、初期接着力や常態接着力、耐熱接着力等の向上・バランスを図ったものであって、また高い永久接着性が求められる用途や機能に対して高圧力下での貼付により高接着力を発現するように設計がなされたものであった。これらは、貼付時には比較的低圧力・短時間で接着し、数~数十時間と短い使用時間後に軽い力で剥がせるような設計は一切なされておらず、これまでに本発明が対象とする自着製品、たとえば自着性包帯のように、比較的短時間で剥がせる(巻き直す)用途(たとえば医療用途)への適用に関する検討はなされていない。
医療用途のような低圧力・短時間で接着し、かつ短い使用時間後に軽い力で剥離可能という用途に対して、上記クロロプレンゴムラテックスを用いた接着剤の適用がなされていない要因の一つとして、弱い初期タック性と自着による固定性の両立が困難であったことが考えられる。手袋用途など医療用向けにも実績があるクロロプレンホモポリマーからなるラテックスは単独では初期タック感に乏しく、またカルボキシル基含有のクロロプレンポリマーからなるラテックスは高い初期タック感を示すものの、実使用を想定した際に粘着力が十分とはいえない。また、従来の永久接着性が求められる用途においては粘着力の向上を志向し、より粘着力の高いラテックスの採用や、高い粘着力を発現する組み合わせ等を種々検討すればよいが、本発明が対象とする医療用途では、初期タック感が高すぎると使用上の不具合(衣類などへの付着や汚れ付着による外観不良)が生じ得、一方で粘着力が高すぎるとロール状の製品形態とした際に巻き戻し力の上昇による使用感の悪化にもつながり得る。
本発明者らは、医療用途における脱天然ゴムラテックス化への要望と、自着性粘着剤に
おける適度な初期タック性、そしてべたつきが抑制された低タック感と高い自着性の両立を目指し、以下の特定のクロロプレンゴムラテックス(樹脂)の組み合わせとこれらの特定の配合量を見出し、本発明を完成させたものである。
以下、本発明について詳述する。
【0012】
<自着性粘着剤組成物>
本発明の自着性粘着剤組成物は(a)クロロプレンホモポリマーからなるクロロプレンゴムラテックスと(b)分子内にカルボキシル基を有するクロロプレンポリマーからなるクロロプレンゴムラテックスを、質量比で(a):(b)=90:10~30:70の割合で含有する。
【0013】
本発明が対象とするクロロプレンゴムラテックス(「クロロプレン系重合体ラテックス」ともいう)とは、ポリクロロプレンを水中に分散させて得られるラテックス(エマルジョン)である。クロロプレンゴムとは、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下クロロプレンと記す)の単独重合体、又は、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体との共重合体である。
【0014】
本発明で用いる上記(a)クロロプレンゴムラテックスとは、クロプレン単独重合体を水中に分散させて得られるラテックスである。
上記(a)クロロプレンゴムラテックスは、乳化剤、たとえばロジン酸又はロジン酸金属塩等のロジン酸系乳化剤の存在下で、上記クロロプレンを単独で乳化重合させることにより得られる。
【0015】
本発明で用いる上記(b)クロロプレンゴムラテックスは、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル系単量体(エチレン性不飽和カルボン酸)との共重合体、或いは、クロロプレンと上記カルボキシル基含有ビニル系単量体とさらにその他のビニル系単量体との共重合体を水中に分散させて得られるラテックスである。
上記カルボキシル基含有ビニル系単量体(エチレン性不飽和カルボン酸)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等が、上記その他のビニル系単量体としてはエチレン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル等のエステル類、(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。
たとえば(b)クロロプレンゴムラテックスは、クロロプレンとメタクリル酸との共重合体を水中に分散させて得られるラテックスを用いることができる。
【0016】
上記(b)クロロプレンゴムラテックスは、乳化剤の存在下で、上記クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル系単量体等とを乳化重合させることにより得られる。
【0017】
上記(a)クロロプレンゴムラテックス及び(b)クロロプレンゴムラテックスのゲル含有率(トルエン不溶成分含有率)は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えばゲル含有率が0~20質量%程度の範囲にあるものを挙げることができる。
なお、クロロプレンゴムラテックスのゲル含有率は以下の方法により測定する。クロロプレンゴムラテックスを凍結乾燥させ凝集物を得る、これを2日間トルエンに浸漬し、200メッシュ(目開き0.075mm)に通し、メッシュ上に残ったものを真空乾燥することによりトルエンを除去し、ゲルを得る。ゲルの重量と凝集物の重量の比からゲル含有率を求めることができる。
【0018】
また(a)クロロプレンゴムラテックスにおけるクロロプレン重合体、及び(b)クロロプレンゴムラテックスにおけるクロロプレン共重合体の結晶化速度は、本発明の効果を
損なわない限り特に限定されない。
例えば、本発明に係る自着性の用途においては、(a)クロロプレンゴムラテックスにおけるクロロプレン重合体は結晶化速度が中程度のタイプを、(b)クロロプレンゴムラテックスにおけるクロロプレン共重合体は結晶化速度が中程度から遅いタイプを組み合わせて用いることができる。なお(b)クロロプレンゴムラテックスとして結晶化速度が早いラテックスを使用した場合、自着性を示さないことがあるため使用には注意を要する。
【0019】
上述した通り、本発明の自着性粘着剤組成物は、2種のクロロプレンゴムラテックスを含有することを特徴とする。
本発明において、初期タック性と自着性を両立させるべく、(a)クロロプレンゴムラテックスと(b)クロロプレンゴムラテックスは、固形分換算での質量比で(a):(b)=90:10~30:70の割合で配合し、例えば90:10~50:50の割合で配合することが好ましい。
【0020】
上記(a)クロロプレンゴムラテックス及び(b)クロロプレンゴムラテックスは、市販品を用いることができる。
クロロプレンゴムラテックスの市販品の一例として、昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)シリーズ、東ソー(株)製のスカイプレン(登録商標)シリーズなどが挙げられる。これら市販品を使用する際には、上記市販品の中からクロロプレンホモポリマーからなるラテックス(a)又は分子内にカルボキシル基を有するクロロプレンポリマーからなるラテックス(b)であって、適宜上記ゲル含有率や結晶化速度を考慮して選択すればよい。
【0021】
本発明の自着性粘着剤組成物には、前記(a)及び(b)成分に加え、さらに(c)粘着付与樹脂を含むことができる。
粘着付与樹脂は、一般に、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル、これらの水素添加物などのロジン系樹脂;テルペン樹脂、炭化水素変性テルペン樹脂、これらの水素添加物などのテルペン系樹脂;テルペンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂の水素添加物などのテルペンフェノール系樹脂;脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ピュアーモノマー系石油樹脂、これらの水素添加物などの石油系樹脂;スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、ダンマル、コーパル、シェラックなどの具体例を挙げることができる。
これらの中でも、本発明で使用するのに好ましい粘着付与樹脂としては、例えばクロロプレンゴムと相溶性を示すもの、具体的にはクロロプレンゴムの溶解度パラメーター(SP値)に近いSP値を有する粘着付与樹脂を挙げることができる。たとえば、テルペン系樹脂ではフェノールや芳香族石油樹脂との共重合体、石油系樹脂(石油系炭化水素樹脂)では芳香族成分含有の脂肪族-芳香族系石油樹脂などを挙げることができる。なお本発明の用途を考慮すると、例えばポリオレフィン系樹脂に対する付着性を強化する塩素化ポリオレフィン樹脂などは通常使用されない。
これら粘着付与樹脂は、自着性粘着剤組成物中に均一分散させるためにエマルジョン形態にて添加することが好ましい。
(c)粘着付与樹脂は、前記(a)及び(b)の固形分換算での合計100質量部に対して10質量超50質量未満の割合にて、たとえば20~40質量部の割合で配合することができる。
【0022】
本発明の自着性粘着剤組成物には前記各成分の他、可塑剤・軟化剤、炭酸カルシウムやシリカなどの無機充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤、分散剤などのその他成分を適宜配合できる。
【0023】
本発明の自着性粘着剤組成物は、上記(a)クロロプレンゴムラテックス及び(b)クロロプレンゴムラテックス及び所望により(c)粘着付与樹脂、そして必要に応じてその他成分を混合して得られる。必要に応じて水を加え、濃度調整してもよく、その場合の自着性粘着剤組成物の固形分の濃度としては10~50質量%程度とすることができる。
【0024】
<自着製品>
本発明は、基材と、該基材の少なくとも一方の面上に上記自着性粘着剤組成物から形成された自着性粘着剤層を有する自着製品も対象とする。該自着製品は、好ましくは基材の両面上に該自着性粘着剤層を有する。両面に自着性粘着剤層を有する態様により、自着製品同士が互いに重なり合って自着性粘着剤層同士が接着することにより、自着性の機能を好適に発現する。
【0025】
上記基材としては、フィルム、不織布、和紙、綿布、編布、織布、不織布とフィルムのラミネート複合体等を挙げることができる。これらの中でも、通気性、伸縮性などの観点から織布、編布、及び不織布が好ましく、織布又は編布がより好ましい。
これらの基材の材質としては、例えば、綿(木綿)、絹、麻などの天然繊維;ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維;アセテート繊維などの半合成繊維;レイヨン繊維、キュプラ繊維などの再生繊維;などが挙げられる。
これらの中でも、綿を材質とする織布が好ましい。綿織布に伸縮性を付与するために、ポリウレタン糸などの弾性糸で一部置き換えることができる。綿織布への弾性糸の打ち込み本数は、1インチ当り、縦方向に30~40本、横方向に15~80本程度が適当である。
また、上記織布の坪量としては、通常、10g/m乃至200g/mとすることができる。
【0026】
包帯基材の少なくとも一方の面(すなわち、片面または両面)上に上記自着性粘着剤組成物を塗工することにより、自着性粘着剤層を形成する。
上記自着性粘着剤層の塗工量は、基材の性状、所望の自着性の程度、自着性包帯の外観や性状などに応じて適宜選択することができるが、通常5~100g/m、好ましくは10~80g/mの範囲内である。上記自着性粘着剤組成物を塗工後、これを乾燥させることにより、基材の少なくとも一方の面上に自着性粘着剤層が形成された自着製品を得ることができる。
【0027】
[自背面粘着力]
本発明の自着製品、特に基材の両面に自着性粘着剤層が形成された自着製品において、その自背面粘着力を例えば0.5~8.0N/38mmの範囲、好ましくは、1.5~5.0N/38mmの範囲とすることができる。前記数値範囲内の自背面粘着力を前記自着製品が有することにより、使用時には剥がれにくく、一方で貼り直し(巻き直し)時には剥がれやすく、貼り直し(巻き直し)が可能となる自着製品とすることができる
前記自背面粘着力は、例えば、自着製品(基材の両面に自着性粘着剤層を塗工・形成したもの、先に粘着剤層を形成した面をI面、後に形成した面をIIと称する)を縦100mm(長さ方向)×横38mm(幅方向)に2枚裁断し、ステンレステープに両面テープを貼り付け、その上に試験片をI面が下になるように貼り付け、その上にもう1つの試験片をI面が下になるように重ねて貼り付けた後、2kgローラーにて300mm/分で2往復圧着し、圧着後30分後にインストロン型引張試験機により、長さ方面から300±30mm/分の速度で、180°引き剥がし剥離力(N)を測定して求めることができる(単位:N/38mm)。
【0028】
[自背面ラップ力]
自背面ラップ力は、固定用途によって、必要なラップ力が異なる。例えば、比較的弱い固定用途(ガーゼ固定など)なら30g/m以上あれば固定性は確保できるとみられるが、使用の際の剥がれを抑制し、またより強い固定用途(圧迫止血など)の場合には50g/m以上のラップ力があることが望ましい。
本発明の自着製品の自背面ラップ力は、例えば30N/38mm以上であり、好ましくは50N/38mm以上、従来の自着製品と変わらない自背面ラップ力を有する。
前記自背面ラップ力は、例えば、自着製品(同上)を縦100mm(長さ方向)×横38mm(幅方向)に2枚裁断し、片方の試験片のII面にもう一方の試験片をI面が下になるように50mm長さで重ねて貼り付けた後、2kgローラーにて300mm/分で1往復圧着し、圧着後30分後に引張試験機にて剪断接着力を測定して求めることができる(単位:N/38mm)。
【実施例
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
<自着性粘着剤組成物の調製>
表2に示す配合量に基づき、固形分濃度20質量%(イオン交換にて濃度調整)にて、例1~例9の自着性粘着剤組成物を製造した。
なお、表2中の各成分の配合量は、CRラテックスAとBの配合量の合計(固形分換算)を100質量部としたときの、その他の成分(粘着付与樹脂、その他添加剤)の配合割合(質量部、固形分換算値)である。
また、各成分の詳細は表1に示す通りである。
【0031】
【表1】
【0032】
<自着製品サンプルの調製>
織布基材(素材:綿、坪量:約100g/m)の両面に、キス・メイヤーバー方式にて、乾燥後の塗工量が両面の合計で約70g/m(片面:約35g/m)となるように、例1~例9の自着性粘着剤組成物を塗布した。なお、先に自着性粘着剤組成物を塗工した面をI面、後に塗工した面をII面と称する。その後120℃にて3分間乾燥し、自
着性粘着面を両面に有する自着製品サンプルを製造した。
【0033】
得られた各自着製品サンプルの性能評価として、下記試験例1~試験例3を実施した。以降の説明において、自着性粘着剤組成物の例番号を、これを用いて形成した自着製品サンプルの性能評価の例番号としても扱うものとする。
得られた結果を表2に合わせて示す。
【0034】
<試験例1:タック感>
「粘着ハンドブック 第3版」(日本粘着テープ工業会、粘着ハンドブック編集委員会編、2005年10月1日発行)記載の方法にて、自着製品サンプルの自着性粘着面に瞬間的に当てた親指に対する粘着剤のつき(べとつき)を5段階にて官能評価した。
評価:〈べとつきなし〉1<2<3<4<5〈べとつき大〉
上記評価で3以下、好ましくは2~3であると、初期タック性に優れると評価できる。
【0035】
<試験例2:自背面粘着力>
JIS Z 0237に規定されている180度引き剥がし法に準じて、テープの自背面粘着力を測定した。
具体的には、上記製造した自着製品サンプルから、長さ100mm×幅38mmの短冊状に裁断した試験片を2片取り、試験片1、試験片2とした。ステンレステープ上に両面テープを貼り付け、その上に試験片1をI面が下になるように貼り付けた。そして該試験片1のII面と、他方の試験片2のI面が対面するようにこれらを重ね合わせた。
次いで、試験片2(II面)上を、端部を残して2kgのゴムロールで300mm/分の速度で2往復圧着した。圧着直後、並びに、圧着から30分経過後において、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で試験片2を試験片1から引き剥がし、試験片1に対する試験片2の180℃引き剥がし剥離力(自背面粘着力、単位:N/38mm)を測定した(N=3の平均値)。なお測定雰囲気は、温度23±2℃、相対湿度50±5%とした。
なお圧着後30分経過後の自背面粘着力が1.5[N/38mm]以上であれば、自着製品の実際の使用時において、重ね貼りした部分が身に付けている衣類との擦れ等により剥がれたり、重ね貼り部分の端部に浮きが生じたりすることが抑制されると評価できる。ただし、自背面接着力が5[N/38mm]を超えると、巻き戻し(テープの繰り出しにくさ)が非常に重くなるとともに、背面のべたつきが強くなり、衣類への擦れによる摩擦剥がれ等の不具合にもつながる。
【0036】
<試験例3:自背面ラップ力>
上記製造した自着製品から、長さ100mm×幅38mmの短冊状に裁断した試験片を2片取り、試験片1、試験片2とした。試験片1のII面と、他方の試験片2のI面が対面するよう、そして2片の重なり部分が50mmとなるように重ね合わせた。次いで、試験片2上の2片の重なり部分を、2kgのゴムロールで300mm/分の速度で1往復圧着した。圧着から30分経過後に、引張試験機にて上記試験片のせん断方向に引張り、接合部が破断したときの荷重(引張せん断接着力)を自背面ラップ力(単位:N/38×50mm)とした(N=3の平均値)。
自背面ラップ力は、実用面における自着製品の固定能力(自着固定力)を測る指標であり、自背面ラップ力がおよそ50[N/38×50mm]以上であれば、自着製品の実際の使用時において、重ね貼りした部分が身に付けている衣類との擦れ等により剥がれたり、重ね貼り部分の端部に浮きが生じたりすることが抑制されると評価できる。
【0037】
上記自背面粘着力(圧着後30分経過後)が1.5~5[N/38mm]、かつ、自背面ラップ力が50[N/38×50mm]以上であれば、自背面粘着力と自着固定力のバランスに優れ、該粘着剤層同志が密着することにより直巻きが可能、かつ、使用時に比較
的軽い力で巻き戻しができ、比較的弱い圧力でも粘着剤層同士が接着性を示し、良好な固定機能を発現すると評価できる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すように、CRラテックスA[(a)クロロプレンホモポリマーからなるクロロプレンゴムラテックス]の配合割合が減少し、CRラテックスB[(b)分子内にカルボキシル基を有するクロロプレンポリマーからなるクロロプレンゴムラテックス]の配合
割合が増加することにより[CRラテックスA 配合量(質量部):例8(100)、例1(90)、例2(60)、例4(55)、例9(0)参照]、タック感は数値が増大する傾向にあった。
また自背面粘着力はCRラテックスBの配合増加に伴い増加する傾向にあるが、CRラテックスAの配合量を0(例9)とすると、CRラテックスBの配合量が0の場合(例8)よりも低下した。また自背面ラップ力は、CRラテックスAの配合量を0とすると50[N/38×50mm]を下回る数値となった。
これらの結果より、(a)クロロプレンホモポリマーからなるクロロプレンゴムラテックスと(b)分子内にカルボキシル基を有するクロロプレンポリマーからなるクロロプレンゴムラテックスとを、固形分換算の質量比で(a):(b)=90:10~30:70の範囲の割合で配合することにより、良好なタック感と自背面粘着力・自背面ラップ力の両立を図ることが確認された。
【0040】
なお粘着付与樹脂は、その種類によらず、タック感や自背面粘着力・自背面ラップ力を両立できることが確認された(例3、例5)。
また粘着付与樹脂は配合量の増加により、自背面粘着力が増加し、タック感も増大するが、むしろタック感が高すぎる(悪化に転じる)ものとなり得ることが確認された[樹脂エマルジョンA 配合量(質量部):例7(10)、例3(25)、例2(30)、例6(50)参照]。