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特許7682026エチレン系重合体、エチレン系重合体の製造方法、および、フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】エチレン系重合体、エチレン系重合体の製造方法、および、フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20250516BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20250516BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20250516BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20250516BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20250516BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
C08F10/02
C08J3/215 CES
C08L23/06
C08K5/14
C08F8/00
C08J5/18 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021092773
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022013717
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2020112821
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021047383
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】美濃 貴之
(72)【発明者】
【氏名】眞見 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】一宮 宜也
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019112(JP,A)
【文献】特開2009-018497(JP,A)
【文献】特開2010-144134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00、301/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28、99/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)および(2)を満たし、
高圧法低密度ポリエチレンであり、
温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレートが2g/10分以上6g/10分以下である、エチレン系重合体。
0.362≦ηL1256%/ηL10%≦0.466 (1)
(式中、
ηL10%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=10%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。
ηL1256%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=1256%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。)
0.0282≦I52506%/I12506%≦0.0328 (2)
(式中、
I12506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる基準波の強度を表す。
I52506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる5次高周波の強度を表す。)
【請求項2】
下記式(1’)および(2’)を満たす、請求項1に記載のエチレン系重合体。
0.370≦ηL1256%/ηL10%≦0.466 (1’)
0.0282≦I52506%/I12506%≦0.0320 (2’)
【請求項3】
下記式(1’’)および(2’’)を満たす、請求項1または2に記載のエチレン系重合体。
0.370≦ηL1256%/ηL10%≦0.440 (1’’)
0.0300≦I52506%/I12506%≦0.0320 (2’’)
【請求項4】
架橋構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン系重合体。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン系重合体を製造する方法であって、
エチレン系重合体とラジカル開始剤とを含む混合物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(A)と、
該工程(A)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(B)と、
該工程(B)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(C)と、
を含み、
下記式(11)を満たす、エチレン系重合体の製造方法。
<T<T (11)
【請求項6】
前記工程(A)が、溶融混練押出機(a)を用いて溶融混練する工程であり、
前記工程(B)が、溶融混練押出機(b)を用いて溶融混練する工程であり、
前記工程(C)が、溶融混練押出機(c)を用いて溶融混練する工程であり、
溶融混練押出機(a)、溶融混練押出機(b)および溶融混練押出機(c)がそれぞれ異なる、請求項に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)が、エチレン系重合体とラジカル開始剤とを含む混合物と、エチレン系重合体と、を溶融混練する工程である、請求項またはに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ラジカル開始剤がパーオキサイドである、請求項のいずれか一項に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン系重合体を含有する、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体、該エチレン系重合体の製造方法、および、前記エチレン系重合体を含有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等を包装するフィルムとして、基材フィルム上にエチレン系重合体を含有する樹脂組成物を溶融押出することにより、基材フィルムとエチレン系重合体から構成されるフィルムとを積層(ラミネート)させたラミネートフィルムが広く用いられている。このようなエチレン系重合体から構成されるフィルムは、ラミネートフィルムの表面に用いられる場合はシーラント層として、ラミネートフィルムの内部に用いられる場合は接着層として好適に用いられることから、透明性および接着強度に優れることが求められる。
【0003】
ラミネートフィルムに用いられるエチレン系重合体の材料として、例えば、特許文献1では、高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂5~95重量%と、該ポリエチレン系樹脂以外の高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂95~5重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.001~1.0重量部のラジカル発生剤を配合して変性してなることを特徴とする積層用ポリエチレン系樹脂材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-144134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エチレン系重合体から構成されるフィルムには、透明性および接着強度を向上させるため、該フィルムの厚みムラを低減させ、平坦性を向上させることが求められる。しかしながら、特許文献1のエチレン系重合体から構成されるフィルムは、厚みムラが大きいという問題点を有する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、厚みムラが低減されたフィルムを得ることが可能なエチレン系重合体、該エチレン系重合体の製造方法、および、前記エチレン系重合体を含有するフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエチレン系重合体は、下記式(1)および(2)を満たす。
0.362≦ηL1256%/ηL10%≦0.466 (1)
(式中、
ηL10%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=10%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。
ηL1256%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=1256%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。)
0.0282≦I52506%/I12506%≦0.0328 (2)
(式中、
I12506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる基準波の強度を表す。
I52506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる5次高周波の強度を表す。)
【0008】
本発明に係るエチレン系重合体の製造方法は、上述のエチレン系重合体を製造する方法であって、エチレン系重合体とラジカル開始剤とを含む混合物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(A)と、該工程(A)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(B)と、該工程(B)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(C)と、を含み、下記式(11)を満たす。
<T<T (11)
【0009】
本発明に係るフィルムは、上述のエチレン系重合体を含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚みムラが低減されたフィルムを得ることが可能なエチレン系重合体、該エチレン系重合体の製造方法、および、前記エチレン系重合体を含有するフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<エチレン系重合体>
本実施形態に係るエチレン系重合体は、下記式(1)および(2)を満たす。
0.362≦ηL1256%/ηL10%≦0.466 (1)
(式中、
ηL10%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=10%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。
ηL1256%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=1256%における最もせん断速度が速い時の粘度(Pa・sec)を表す。)
0.0282≦I52506%/I12506%≦0.0328 (2)
(式中、
I12506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる基準波の強度を表す。
I52506%は、LAOS法で150℃、0.05Hzの条件で測定されるエチレン系重合体のひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換して得られる5次高周波の強度を表す。)
【0013】
ここで、LAOS(Large Amplitude Oscillatory Shear/大振幅振動せん断)法とは、試料に大きく速いせん断ひずみを加え、応答応力を観測および解析する手法である。
【0014】
ηLは、試料に正弦波のせん断ひずみ(変形)を加え、変形速度と応答応力とをプロットしてリサージュ曲線を作製し、変形速度が最も速いときの応答応力を、そのときの変形速度で割ったもの、すなわち、粘度を意味する。このηLを、せん断ひずみ(変形)の大きさを変えながら測定すると、エチレン系重合体の構造に応じた変化をする。具体的には、せん断ひずみ(変形)を大きくすると、エチレン系重合体はせん断方向(変形方向)に配向するため、ηLは低下する。そして、ηLの低下度合いは、エチレン系重合体のせん断方向(変形方向)への配向のしやすさによって変化する。エチレン系重合体がせん断方向(変形方向)に配向しにくければ、エチレン系重合体が絡み合って動きにくい状態を意味することから、ηL1256%/ηL10%は、絡み合う分岐構造の量を反映するパラメータであると言える。
【0015】
ηL10%の測定は、通常、試料に0.05Hzの正弦波のせん断ひずみを6周期分加えて、後半3周期分の平均値を測定値とする。ηL10%の測定の所要時間は、通常、120秒である。
【0016】
ηL1256%の測定は、通常、試料に0.05Hzの正弦波のせん断ひずみを6周期分加えて、後半3周期分の平均値を測定値とする。ηL1256%の測定の所要時間は、通常、120秒である。
【0017】
通常、ηL10%の測定を最初に行い、ひずみγを段階的に大きくしながらηLの測定を行う。具体的には、ひずみγ=10%~100%を対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながら(すなわち、γ=10%、13%、16%、20%、25%、32%、40%、50%、63%、79%、100%)、ηLの測定を行う。同様に、ひずみγ=100%~1000%を対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながらηLの測定を行い、γ=1000%~10000%を対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながらηLの測定を行う。上述のとおり、1つのηLの測定の所要時間は、通常、120秒である。
【0018】
ηL1256%/ηL10%は、後述するエチレン系重合体の製造方法において、ラジカル開始剤の配合量を0.03質量%よりも多くすることにより値を大きくすることができ、ラジカル開始剤の配合量を0.03質量%よりも少なくすることにより値を小さくすることができる。
【0019】
基準波の強度に対する5次高周波の強度の比率(I5/I1)は、エチレン系重合体の構造に応じた変化をする。具体的には、エチレン系重合体の絡み合う分岐構造の分布(偏り)が大きいほど、I5/I1は大きくなる傾向にある。よって、I52506%/I12506%は、絡み合う分岐構造の分布(偏り)を反映するパラメータであると考えられる。
【0020】
ひずみγ=2506%における応答応力の測定は、通常、試料に0.05Hzの正弦波のせん断ひずみを6周期分加えて、後半3周期分の平均値を測定値とする。ひずみγ=2506%における応答応力の測定の所要時間は、通常、120秒である。
【0021】
上述と同様に、通常、ひずみγ=10%における応答応力の測定を最初に行い、ひずみγを段階的に大きくしながら応答応力の測定を行う。具体的には、ひずみγ=10%~100%、100%~1000%、1000%~10000%のそれぞれを対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながら応答応力の測定を行う。上述のとおり、1つの応答応力の測定の所要時間は、通常、120秒である。
【0022】
I52506%/I12506%は、後述するエチレン系重合体の製造方法において、温度Tを210℃より高くすることにより値を大きくすることができ、温度Tを210℃より低くすることにより値を小さくすることができる。
【0023】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、フィルムの厚みムラをより低減する観点から、下記式(1’)および(2’)を満たすことが好ましく、下記式(1’’)および(2’’)を満たすことがより好ましい。
0.370≦ηL1256%/ηL10%≦0.466 (1’)
0.370≦ηL1256%/ηL10%≦0.440 (1’’)
0.0282≦I52506%/I12506%≦0.0320 (2’)
0.0300≦I52506%/I12506%≦0.0320 (2’’)
【0024】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、加工安定性の観点から、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が2g/10分以上6g/10分以下であることが好ましく、3g/10分以上5g/10分以下であることがより好ましい。なお、MFRは、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、JIS K7210-1に規定されたA法により測定される。
【0025】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、加工安定性の観点から、分子量分布が3以上15以下であることが好ましく、5以上13以下であることがより好ましい。なお、分子量分布とは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwとポリスチレン換算の数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)である。
【0026】
GPC測定は下記の条件で行い、ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定してピークを指定した。
【0027】
(測定条件)
装置:HLC‐8121GPC/HT(東ソー社製)
GPCカラム:TOSOH TSKgelGMH6-HT 7.8mm I.D.×300mm(東ソー社製) 3本
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社、特級)にBHTを0.1w/V添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
試料溶液濃度:1mg/mL
GPCカラム較正用標準物質:東ソー社製標準ポリスチレンをそれぞれ下記表1のような組み合わせで量り取り、組み合わせごとに5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)を加え、室温で溶解させて調製した。
【0028】
【表1】
【0029】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、フィルムの厚みムラをより低減する観点から、架橋構造を有することが好ましい。
【0030】
また、本実施形態に係るエチレン系重合体は、フィルムの厚みムラをより低減する観点から、高圧法低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0031】
高圧法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレンである。一般的には、耐圧重合反応器中、重合開始剤として酸素または有機過酸化物の存在下、1000~2500気圧の圧力下、150~300℃でエチレンモノマーを連続的に重合することにより、高圧法低密度ポリエチレンを製造する。
【0032】
高圧法低密度ポリエチレンのMFRは、製膜時の押出負荷を低減する観点から、4g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましく、6g/10分以上25g/10分以下であることが更に好ましい。
【0033】
高圧法低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m以上930kg/m以下であることが好ましく、912kg/m以上925kg/m以下であることがより好ましく、915kg/m以上920kg/m以下であることが更に好ましい。なお、該密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0034】
高圧法低密度ポリエチレンの分子量分布は、5.0以上15.0以下であることが好ましく、7.0以上10.0以下であることがより好ましい。
【0035】
高圧法低密度ポリエチレンのメルトフローレート比(MFRR)は、25以上60未満であることが好ましく、30以上45以下であることがより好ましい。なお、MFRRは、MFRに対するH-MFRの比を意味する。H-MFRは、温度190℃、荷重21.60kgの条件で、JIS K7210-1に規定されたA法により測定される。
【0036】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体であってもよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンに基づく単量体単位と酢酸ビニルに基づく単量体単位とを有する共重合体である。
【0037】
エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRは、10g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、15g/10分以上25g/10分以下であることがより好ましい。
【0038】
エチレン-酢酸ビニル共重合体に含有される酢酸ビニルに基づく単量体単位の含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体100質量%に対して、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
エチレン-酢酸ビニル共重合体の分子量分布は、3.0以上7.0以下であることが好ましく、3.5以上5.0以下であることがより好ましい。
【0040】
エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRRは、25以上60未満であることが好ましく、30以上50以下であることがより好ましい。
【0041】
エチレン-酢酸ビニル共重合体の製造方法は、例えば、エチレンと酢酸ビニルとをラジカル発生剤の存在下、50~400MPa、100~300℃で、適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法が挙げられる。高圧ラジカル重合の重合条件を調整することによって、エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRもしくは分子量分布、または、エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルに基づく単量体単位の含有量を制御することができる。
【0042】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、前記高圧法低密度ポリエチレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体とは異なる熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを含有してもよい。
【0043】
前記高圧法低密度ポリエチレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体とは異なる熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム等が挙げられる。
【0044】
前記高圧法低密度ポリエチレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体とは異なる熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーの含有量は、本実施形態に係るエチレン系重合体に含まれる樹脂成分の全質量100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態に係るエチレン系重合体は、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤、耐候安定剤、離型剤、難燃剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、フィラー、発泡剤等の添加剤を含むことができる。
【0046】
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX(登録商標) 1010)やn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX(登録商標) 1076)等のフェノール系安定剤、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のホファイト系安定剤、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製、商品名:スミライザー(登録商標)GP)等のフェノールーホスファイト二官能系安定剤等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、エチレン系重合体の合計質量100質量%に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
滑剤としては、例えば、エルカ酸アミド、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられる。滑剤の含有量は、エチレン系重合体の合計質量100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
帯電防止剤としては、例えば、炭素数8~22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられる。帯電防止剤の含有量は、エチレン系重合体の合計質量100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が挙げられる。加工性改良剤の含有量は、エチレン系重合体の合計質量100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。抗ブロッキング剤の含有量は、エチレン系重合体の合計質量100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
これらの添加剤は、エチレン系重合体に添加してもよく、エチレン系重合体に添加剤を添加したマスターバッチを、エチレン系重合体と混合してもよい。エチレン系重合体が2種以上含まれる場合、添加剤は、2種以上のエチレン系重合体を予めブレンドした後に添加してもよく、1種のエチレン系重合体に添加してもよく、各エチレン系重合体にそれぞれ添加してもよい。
【0052】
<エチレン系重合体の製造方法>
本実施形態に係るエチレン系重合体の製造方法は、上述のエチレン系重合体を製造する方法であって、エチレン系重合体とラジカル開始剤とを含む混合物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(A)と、該工程(A)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(B)と、該工程(B)で得られた溶融混練物を、温度T(℃)で溶融混練する工程(C)と、を含み、下記式(11)を満たす。
<T<T (11)
【0053】
前記混合物に含まれるエチレン系重合体としては、上述の高圧法低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム等の各種エチレン系重合体を用いることができる。
【0054】
前記混合物に含まれるラジカル開始剤としては、パーオキサイドであることが好ましく、下記式(I)で示される環状有機過酸化物であることがより好ましい。
【0055】
【化1】
【0056】
ここで、R~Rは、独立に、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基またはアルキル置換フェニル基を表す。これらの中でも、R~Rは、独立に、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましい。また、R~Rのうち、R~Rが同一構造を有するアルキル基であり、R~Rが同一構造を有するアルキル基であることがより好ましく、R~Rがメチル基であり、R~Rがエチル基であることが更に好ましい。
【0057】
ラジカル開始剤は、式(I)で示される環状有機過酸化物以外の有機過酸化物であってもよい。式(I)で示される環状有機過酸化物以外の有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、取り扱いの容易性の観点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンであることが好ましい。
【0058】
ラジカル開始剤の配合量は、前記混合物に含まれるエチレン系重合体の合計量100質量%に対して、成形体の強度の観点から、0.03質量%以上であることが好ましく、0.04質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、流動性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
温度Tは、95℃以上130℃以下であることが好ましく、100℃以上125℃以下であることがより好ましく、105℃以上120℃以下であることが更に好ましい。温度Tは、ラジカル開始剤の半減期が1分を超える温度であることが好ましく、具体的には、130℃以上180℃以下であることが好ましく、135℃以上175℃以下であることがより好ましく、140℃以上170℃以下であることが更に好ましい。温度Tは、ラジカル開始剤の半減期が1分以下となる温度であることが好ましく、具体的には、生産性の観点から、210℃以上320℃以下であることが好ましく、220℃以上310℃以下であることがより好ましく、230℃以上300℃以下であることが更に好ましい。
【0060】
温度T(℃)で溶融混練する時間は、均一分散性の観点から、0.1分以上であることが好ましく、0.5分以上であることがより好ましく、生産性の観点から、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。温度T(℃)で溶融混練する時間は、均一分散性の観点から、0.1分以上であることが好ましく、0.5分以上であることがより好ましく、生産性の観点から、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。温度T(℃)で溶融混練する時間は、通常、有機過酸化物の半減期以上となる時間であり、具体的には、成形体の強度の観点から、0.1分以上であることが好ましく、0.5分以上であることがより好ましく、流動性の観点から、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。
【0061】
各工程で得られる溶融混練物は、ペレットであることが好ましい。
【0062】
溶融混練する装置としては、単軸押出機、二軸押出機、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、熱ロール、ニーダー等の各種ミキサー等の公知のものを使用することができる。溶融混練は、混練する全成分を一括して溶融混練してもよいし、一部の成分を混練した後に選択しなかった成分を加え溶融混練してもよい。
【0063】
本実施形態に係るエチレン系重合体の製造方法は、前記工程(A)が、溶融混練押出機(a)を用いて溶融混練する工程であり、前記工程(B)が、溶融混練押出機(b)を用いて溶融混練する工程であり、前記工程(C)が、溶融混練押出機(c)を用いて溶融混練する工程であり、溶融混練押出機(a)、溶融混練押出機(b)および溶融混練押出機(c)がそれぞれ異なることが好ましい。斯かる構成により、作業性を向上させることができる。
【0064】
なお、工程(A)、工程(B)および工程(C)は、いずれか2つの工程において同一の溶融混練押出機を用いてもよく、すべての工程において同一の溶融混練押出機を用いてもよい。同一の溶融混練押出機を用いる場合、該溶融混練押出機において溶融混練温度を段階的に変えることにより、複数の工程を行うことができる。
【0065】
<フィルム>
本実施形態に係るフィルムは、上述のエチレン系重合体を含有する。
【0066】
本実施形態に係るフィルムは、基材フィルムと、前記エチレン系重合体から構成されるフィルムとを有する多層フィルムである。基材フィルムは、1層または2層以上の基材フィルムであってもよい。
【0067】
基材フィルムとしては、例えば、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが挙げられる。基材フィルムは、アンカーコート層を有していてもよい。2層以上の基材フィルムは、各層をドライラミネートまたは押出しラミネートにより積層することにより得られる。
【0068】
前記多層フィルムの製造方法としては、基材フィルム上に、前記エチレン系重合体を含有する樹脂組成物を溶融押出し、押出しラミネートする方法が挙げられる。押出ラミネート加工により、例えば、耳切れや膜割れ等の成形不良が発生することなく、多層フィルムを製膜することが可能である。そのため、本実施形態に係るフィルムは、製膜性に優れる。なお、耳切れとは、押出ラミネート加工中にエチレン系重合体からなる溶融膜が破断する現象である。膜割れとは、エチレン系重合体からなる溶融膜の一部で機械流れ方向(MD方向)に長い穴が発生し、未積層の部分が生じる現象である。
【0069】
前記多層フィルムにおけるエチレン系重合体から構成されるフィルムは、多層フィルムの表面に用いられる場合はシーラント層となり、フィルムの内部に用いられる場合は接着層となる。また、エチレン系重合体を含有する樹脂組成物を押出しラミネートにて基材フィルムに積層する場合に、基材フィルムのアンカーコート層上に塗布してもよい。
【0070】
本実施形態に係るフィルムの厚みは、3μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上300μm以下であることがより好ましい。
【0071】
なお、本実施形態に係るエチレン系重合体、エチレン系重合体の製造方法、および、フィルムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記以外の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、上記の1つの実施形態に係る構成や方法等を上記の他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい。
【実施例
【0072】
以下、実施例、および、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
<メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
JIS K7210-1に規定された方法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定した。
【0074】
<実施例1>
エチレン系重合体の粉砕パウダー(住友精化株式会社製、フローセンFG801NN)80質量部に対して、ラジカル開始剤(化薬ヌーリオン株式会社製、Trigonox301)20質量部を浸漬させた。得られた浸漬パウダーを、スクリュー径30mmの溶融混練押出機(a)(ユニプラスチックス株式会社製)を用いて、110℃で1分間溶融混練して、マスターバッチペレット(以下、MBペレットともいう)を作製した。
【0075】
エチレン系重合体(住友化学株式会社製、スミカセンCE4506)100質量部に対して、上記で得られたMBペレットを5800ppmの濃度になるように加えて、スクリュー径40mmの溶融混練押出機(b)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、150℃で1分間溶融混練して、ペレットを得た。得られたペレットを、別のスクリュー径40mmの溶融混練押出機(c)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、240℃で1分間溶融混練して、ペレットを得た。
【0076】
上記で得られたペレットを、150℃で5分間静置し(予熱工程)、150℃、5MPaで5分間加圧し(プレス工程)、25℃で5分間徐冷し(徐冷工程)、厚み0.5mmのプレスシートを得た。得られたプレスシートから8mm径の円型シートを打ち抜いて、測定試料を作製した。得られた測定試料を、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント製、ARES-G2)を用いて、LAOS法を使って測定した。
【0077】
測定試料について、温度150℃、周波数0.05Hzの条件で、ひずみγ=10%における最もせん断速度が速い時の粘度ηL10%と、ひずみγ=1256%における最もせん断速度が速い時の粘度ηL1256%とを測定した。ηL10%の測定およびηL1256%の測定は、それぞれ、測定試料に0.05Hzの正弦波のせん断ひずみを6周期分加えて、後半3周期分の平均値を測定値とした。また、ηL10%の測定を最初に行い、ひずみγ=10%~100%、100%~1000%、1000%~10000%のそれぞれを対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながら、ηL1256%の測定を行った。その比であるηL1256%/ηL10%は0.430であり、(1)式を満たしていた。
【0078】
また、測定試料について、温度150℃、周波数0.05Hzの条件で、ひずみγ=2506%における応答応力をフーリエ変換(TAインスツルメント製、ソフト名:TRIOS ver5.0.0)して得られる基準波の強度I12506%と、5次高周波の強度I52506%とを測定した。I12506%の測定およびI52506%の測定は、それぞれ、測定試料に0.05Hzの正弦波のせん断ひずみを6周期分加えて、後半3周期分の平均値を測定値とした。また、ひずみγ=10%における応答応力の測定を最初に行い、ひずみγ=10%~100%、100%~1000%、1000%~10000%のそれぞれを対数的に等間隔な10段階に分けて大きくしながら、応答応力の測定を行った。その比であるI52506%/I12506%は0.0308であり、(2)式を満たしていた。結果を表2に示す。
【0079】
上記で得られたペレットを、スクリュー径65mmの押出機の先端に800mm幅のTダイを備えた共押出ラミネーター(住友重機械モダン株式会社製)を用いて、Tダイの内幅500mm、エアギャップ140mm、エチレン系重合体のラミネート厚み7μm、Tダイ直下温度333℃、ラミネート速度150m/分の条件で、厚み12μmの基材PET上に押出ラミネート成形した。得られたラミネートサンプルについて、卓上型オフライン厚み計(株式会社山文電気製、TOF-5R01)を用いて、サンプルの中央部200mm幅を、幅方向にわたってエチレン系重合体層の厚みを測定した。得られた測定値の標準偏差は0.67であった。結果を表2に示す。
【0080】
<実施例2>
実施例1と同様にして、MBペレットを作製した。エチレン系重合体(住友化学株式会社製、スミカセンCE4506)100質量部に対して、上記で得られたMBペレットを2900ppmの濃度になるように加えて、スクリュー径40mmの溶融混練押出機(b)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、150℃で溶融混練して、ペレットを得た。得られたペレットを、別のスクリュー径40mmの溶融混練押出機(c)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、240℃で溶融混練して、ペレットを得た。
【0081】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、LAOS法を使ってηL1256%/ηL10%を測定したところ、0.383であり、(1)式を満たしていた。また、I52506%/I12506%を測定したところ、0.0313であり、(2)式を満たしていた。結果を表2に示す。
【0082】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、押出ラミネートサンプルを作製し、中央部200mm幅のエチレン系重合体ラミネート層の厚みを幅方向にわたって測定した。得られた測定値の標準偏差は0.83であった。
【0083】
<実施例3>
実施例1と同様にして、MBペレットを作製した。エチレン系重合体(住友化学株式会社製、スミカセンCE3049)100質量部に対して、上記で得られたMBペレットを500ppmの濃度になるように加えて、スクリュー径40mmの溶融混練押出機(b)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、150℃で溶融混練して、ペレットを得た。得られたペレットを、別のスクリュー径40mmの溶融混練押出機(c)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、240℃で溶融混練して、ペレットを得た。
【0084】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、LAOS法を使ってηL1256%/ηL10%を測定したところ、0.463であり、(1)式を満たしていた。また、I52506%/I12506%を測定したところ、0.0284であり、(2)式を満たしていた。結果を表2に示す。
【0085】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、押出ラミネートサンプルを作製し、中央部200mm幅のエチレン系重合体ラミネート層の厚みを幅方向にわたって測定した。得られた測定値の標準偏差は0.53であった。
【0086】
<比較例1>
実施例1と同様にして、浸漬パウダーを作製した。エチレン系重合体(住友化学株式会社製、スミカセンCE4506)100質量部に対して、上記で得られた浸漬パウダーを5800ppmの濃度になるように加えて、事前に混練した後、スクリュー径40mmの溶融混練押出機(c)(田辺プラスチックス機械株式会社製)を用いて、240℃で溶融混練して、ペレットを得た。
【0087】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、LAOS法を使ってηL1256%/ηL10%を測定したところ、0.438であり、(1)式を満たしていた。一方、I52506%/I12506%を測定したところ、0.0329であり、(2)式を満たさなかった。結果を表2に示す。
【0088】
上記で得られたペレットを用いて、実施例1と同様にして、押出ラミネートサンプルを作製し、幅方向の中央部200mm幅のエチレン系重合体層の厚みを測定した。得られた測定値の標準偏差は1.05であり、厚みムラが発生した。
【0089】
<比較例2>
エチレン系重合体(住友化学株式会社製、スミカセンL420)のペレットを用いて、実施例1と同様にて、LAOS法を使ってηL1256%/ηL10%を測定したところ、0.361であり、(1)式を満たさなかった。また、I52506%/I12506%を測定したところ、0.0329であり、(2)式を満たさなかった。結果を表2に示す。
【0090】
上記のペレットを用いて、実施例1と同様にして、押出ラミネートサンプルを作製し、幅方向の中央部200mm幅のエチレン系重合体層の厚みを測定した。得られた測定値の標準偏差は1.45であり、厚みムラが発生した。
【0091】
【表2】