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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/00 20060101AFI20250516BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20250516BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20250516BHJP
   A47L 5/36 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
A47L9/00 103
H04R1/02 107
G10K11/178 120
A47L5/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021166180
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056773
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2024-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀明
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-287510(JP,A)
【文献】特開平04-187131(JP,A)
【文献】特表平09-512737(JP,A)
【文献】特開2021-124079(JP,A)
【文献】特開2005-226608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0166674(US,A1)
【文献】特開平06-341174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111938504(CN,A)
【文献】特開平05-003841(JP,A)
【文献】特開平05-003843(JP,A)
【文献】特開平06-343584(JP,A)
【文献】特開2009-118996(JP,A)
【文献】特開平05-003842(JP,A)
【文献】特開平07-155275(JP,A)
【文献】特開平05-007536(JP,A)
【文献】特開平08-248964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00
H04R 1/02
G10K 11/178
A47L 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定作業のために運動するように構成される機械と、
前記機械を少なくとも部分的に収容するハウジングであって、開口部を備えるハウジングと、
前記開口部から前記ハウジング内に延びる通路であって、前記機械の運動によって生じる気流を制御するための通路と、
前記機械の運動によって前記ハウジング内で生じる動作音を含む前記ハウジング内の音を収集し、収集した音に対応する電気信号である音信号を出力するように構成されるマイクロフォンと、
前記マイクロフォンからの前記音信号に基づき、前記動作音に関する処理を実行するように構成される処理部と、
前記動作音が前記ハウジング外に伝播する前記通路に沿って、前記マイクロフォンの収容空間を形成する構造体と、
を備え、
前記マイクロフォンは、前記ハウジング内の前記収容空間に配置され、
前記構造体は、前記収容空間と前記通路とを連結する開口構造であって前記通路の下流を向く開口構造を有し、前記開口構造より前記通路の上流において、前記開口構造の上流から前記構造体を通過して前記収容空間に進入する気流が発生しないように、前記収容空間を囲む作業機。
【請求項2】
前記構造体は、前記通路の側壁から、前記通路の下流に向かって前記側壁から離れるように延びる隔壁を備え、前記側壁と前記隔壁との接続点より前記通路の下流において前記側壁を利用して前記側壁と前記隔壁との間で前記収容空間を囲む請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記構造体は、前記通路の側壁に接続され、前記側壁から離れるように延びる第1の壁要素と、前記第1の壁要素から前記通路の下流に向かって延びる第2の壁要素と、を含む隔壁を備え、前記側壁と前記隔壁との間で前記収容空間を囲む請求項1記載の作業機。
【請求項4】
前記構造体は、前記収容空間の前記開口構造より前記通路の上流全体を覆う請求項1~請求項3のいずれか一項記載の作業機。
【請求項5】
前記隔壁は、前記開口構造より前記通路の上流で、前記通路の底面から天井までの前記通路の高さ全体に亘って広がり、前記収容空間を覆う請求項2又は請求項3記載の作業機。
【請求項6】
前記マイクロフォンの周囲を覆う風防を備え、
前記マイクロフォンは、前記風防に覆われた状態で前記収容空間に配置される請求項1~請求項5のいずれか一項記載の作業機。
【請求項7】
前記マイクロフォンを覆う風防と、
前記隔壁の前記収容空間を向く側面とは反対側の側面を覆う整流用の多孔質材と、
を備え、
前記マイクロフォンは、前記風防に覆われた状態で前記収容空間に配置される請求項2、請求項3、又は請求項5記載の作業機。
【請求項8】
スピーカを備え、
前記動作音に関する処理は、前記動作音の前記ハウジング外での伝播を抑制するための制御音を前記スピーカに出力させる処理を含む請求項1~請求項7のいずれか一項記載の作業機。
【請求項9】
前記通路は、前記機械の運動によって生じる前記気流を前記ハウジング外に誘導するための排気通路であり、前記開口部は、排気口であり、
前記マイクロフォンの前記収容空間は、前記排気通路に沿って形成される請求項1~請求項8のいずれか一項記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、アクティブノイズコントロール(ANC)が適用された電動工具を開示する。ANCは、マイクロフォンで収集された音を用いて、消音したい位置で逆位相となる音を発生させることにより、騒音を打ち消す技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0275657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、集音によりマイクロフォンから電気信号として出力される音信号には、風切り音成分に疑似音(すなわち流体的な圧力変動)が含まれる場合がある。音信号に含まれる疑似音としての風切り音成分は、音信号に基づいた処理の実行結果に対して好ましくない影響を与える可能性がある。
【0005】
例えば音信号に含まれる疑似音としての風切り音成分は、作業機を利用するユーザの耳に聞こえる種類の騒音成分ではなく、ANCによる騒音低減に好ましくない影響を与える可能性がある。音信号に基づき、作業機内の異常を検知する場合にも、風切り音成分は、異常検知の精度を悪化させる原因になり得る。
【0006】
そこで、本開示の一側面は、ハウジング内の動作音がマイクロフォンで収集される作業機において、マイクロフォンで風切り音(換言すれば、疑似音)が収集されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面によれば、作業機が提供される。作業機は、機械を備える。機械は、所定作業のために運動するように構成される。作業機は、ハウジングを備える。ハウジングは、機械を少なくとも部分的に収容する。ハウジングは、開口部を備える。
【0008】
作業機は、開口部からハウジング内に延びる通路を備える。通路は、機械の運動によって生じる気流を制御するために設けられる。作業機は、マイクロフォンを備える。マイクロフォンは、機械の運動によってハウジング内で生じる動作音を含むハウジング内の音を収集し、収集した音に対応する電気信号である音信号を出力するように構成される。
【0009】
作業機は、処理部を備える。処理部は、マイクロフォンからの音信号に基づき、動作音に関する処理を実行するように構成される。作業機は、動作音がハウジング外に伝播する通路に沿って、マイクロフォンの収容空間を形成する構造体を更に備える。
【0010】
本開示の一側面によれば、マイクロフォンは、ハウジング内の収容空間に配置される。構造体は、収容空間と通路とを連結する開口構造であって通路の下流を向く開口構造を有し、開口構造より通路の上流で収容空間を囲む。
【0011】
このように構成された作業機によれば、気流制御用の通路を通じて開口部よりハウジング外に伝播する可能性がある作業機内の動作音を、マイクロフォンで収集する場合に、マイクロフォンで風切り音(換言すれば、疑似音)が収集されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】集塵機の外観を示す斜視図である。
図2】集塵機本体の底面図である。
図3】後ハウジングを、部品を取り除いた状態で前ハウジングとの接合面側から見た斜視図である。
図4】集塵機本体から後ハウジングを取り除いた内部状態を示す斜視図である。
図5】前ハウジングを、部品を取り除いた状態で後ハウジングとの接合面側から見た斜視図である。
図6】後ハウジングとの接合面側から見た隔壁に関連する部品を含む前ハウジングの一部拡大平面図である。
図7】前ハウジングとの接合面側から見た後ハウジングの一部拡大平面図である。
図8】集塵機本体の上下方向に垂直な断面図である。
図9】集塵機の電気的な構成を示すブロック図である。
図10】フィードフォワード型ANCモデルを表すブロック図である。
図11図11Aは、第1変形例のマイク収容構造を説明する図であり、図11Bは、第2変形例のマイク収容構造を説明する図である。
図12】第3変形例のマイク収容構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.実施形態の総括]
ある実施形態における作業機は、機械を備え得る。機械は、所定作業のために運動するように構成され得る。加えて/あるいは、作業機は、ハウジングを備え得る。ハウジングは、機械を少なくとも部分的に収容し得る。ハウジングは、開口部を備え得る。
【0014】
加えて/あるいは、作業機は、通路を備え得る。通路は、開口部からハウジング内に延びるように配置され得る。通路は、機械の運動によって生じる気流を制御するために設けられ得る。
【0015】
加えて/あるいは、作業機は、マイクロフォンを備え得る。マイクロフォンは、ハウジング内の音を収集するように配置され得る。マイクロフォンは、機械の運動によってハウジング内で生じる動作音を含むハウジング内の音を収集し得る。マイクロフォンは、収集した音に対応する電気信号である音信号を出力するように構成され得る。
【0016】
加えて/あるいは、作業機は、処理部を備え得る。処理部は、マイクロフォンからの音信号に基づいた処理を実行するように構成され得る。例えば、処理部は、マイクロフォンからの音信号に基づき、動作音に関する処理を実行するように構成され得る。
【0017】
加えて/あるいは、作業機は、マイクロフォンの収容空間を形成する構造体を備え得る。構造体は、通路に沿って、マイクロフォンの収容空間を形成し得る。動作音は、通路を通じて、ハウジング外に伝播し得る。
【0018】
ある実施形態では、マイクロフォンは、ハウジング内の収容空間に配置され得る。ある実施形態では、構造体は、通路の下流を向く開口構造を有し得る。開口構造は、収容空間と通路とを連結し得る。構造体は、開口構造より通路の上流で収容空間を囲み得る。構造体は、開口構造より通路の上流から収容空間への気流の進行を抑えるように配置され得る。
【0019】
ある実施形態では、構造体は、隔壁を備え得る。隔壁は、収容空間を画定し得る。隔壁は、通路の側壁から延設され得る。隔壁は、通路の側壁と隔壁との間に収容空間を画定し得る。隔壁は、通路の側壁と隔壁との間で収容空間を囲み得る。
【0020】
ある実施形態では、隔壁は、通路の側壁から、通路の下流に向かって側壁から離れるように延設され得る。隔壁は、側壁と隔壁との接続点より通路の下流において側壁を利用して側壁と隔壁との間で収容空間を囲み得る。
【0021】
ある実施形態では、隔壁は、通路の側壁に接続され、側壁から離れるように延びる第1の壁要素を備え得る。隔壁は、第1の壁要素から通路の下流に向かって延びる第2の壁要素を備え得る。隔壁は、隔壁の下流側端部と通路の側壁との間の開口構造より通路の上流から収容空間への気流の進入を抑えるように、配置され得る。
【0022】
ある実施形態では、隔壁は、開口構造より通路の上流で、通路の底面から天井までの通路の高さ全体に亘って広がり、収容空間を覆い得る。高さ全体に広がる隔壁によれば、開口構造より通路の上流から収容空間への気流の進行を効果的に抑制することができる。従って、マイクロフォンで作業機内の動作音を収集しつつ、望まない風切り音の収集を抑制することができる。
【0023】
ある実施形態では、構造体は、収容空間の開口構造より通路の上流全体を覆うように設けられ得る。こうした構造体によれば、マイクロフォンによる望まない風切り音の収集を抑制することができる。
【0024】
ある実施形態では、作業機は、マイクロフォンの周囲を覆う風防を備え得る。マイクロフォンは、風防に覆われた状態で収容空間に配置され得る。ある実施形態では、作業機は、隔壁の収容空間を向く側面とは反対側の側面を覆う整流用の多孔質材を備え得る。
【0025】
ある実施形態では、作業機は、スピーカを備え得る。動作音に関する処理は、動作音のハウジング外での伝播を抑制するための制御音をスピーカに出力させる処理を含み得る。風切り音成分の少ない音信号に基づき制御音をスピーカに出力させることによれば、風切り音成分による制御誤差を抑えて、動作音を打ち消すための制御音を効果的に生成することができる。
【0026】
ある実施形態では、通路は、機械の運動によって生じる気流をハウジング外に誘導するための排気通路であり得る。開口部は、排気口であり得る。マイクロフォンの収容空間は、排気通路に沿って形成され得る。
【0027】
この例によれば、排気通路を通じてハウジング外に伝播しようとする動作音を、風切り音の影響を抑えながらマイクロフォンで適切に収集することができる。従って、制御音により動作音を打ち消すための制御を行う場合に、風切り音成分による制御誤差を抑えて、動作音を打ち消すための制御音を効果的に生成することができる。
【0028】
上述の作業機を構成する複数の構成要素のうちの一つ又は複数は、任意に削除され得る。作業機には、追加の要素が任意に設けられ得る。作業機を構成する複数の構成要素の一つ又は複数は、任意に、他の要素に置換され得る。
【0029】
[2.特定の例示的な実施形態]
[2.1.集塵機の構成]
作業機の例として、集塵機1の構成を以下に説明する。本実施形態では、説明の利便性のために、図1図8に示すように、集塵機1に対して相対的に、前、後、上、下、左、及び右を定義する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の集塵機1は、本体3と、操作装置6と、装着具7とを備える。装着具7は、肩ベルト71A,71Bと、腰ベルト72とを備える。肩ベルト71A,71B及び腰ベルト72は、本体3の後部に取り付けられる。
【0031】
肩ベルト71A,71Bは、本体3の上端かつ左右両端付近から延設される。腰ベルト72は、本体3の下端付近から延設される。装着具7は、作業者が本体3を背負うために使用される。
【0032】
操作装置6は、集塵機1を起動及び停止させるためのスイッチを含み、作業者によって操作される。操作装置6は、ケーブル61を介して本体3の下端中央付近に接続される。
【0033】
本体3は、集塵機1の電気的及び/又は機械的な主要部品を収容するためのハウジング30を備える。ハウジング30は、後ハウジング301と、前ハウジング302と、プレート303とを含む。後ハウジング301の構成は、図2及び図3に示される。前ハウジング302の構成は、図4及び図5に示される。
【0034】
後ハウジング301は、前を向く内面を有する有底箱状の部材である。前ハウジング302は、開口部を有する枠状の部材である。プレート303は、前ハウジング302の開口部を前から塞ぐ板状部材である。ハウジング30は、例えば、樹脂材料を射出成形することで成形される。
【0035】
ハウジング30は、図3図4、及び図5に示すように、吸引口31と、集塵室32と、第1流路33と、モータ室34と、第2流路35と、第3流路36と、隔壁37と、第1のバッテリ収容部38Aと、第2のバッテリ収容部38Bと、部品配置部39とを備える。
【0036】
吸引口31は、ハウジング30の上端の中央部に設けられる。吸引口31には、図示しない可撓性のホースの第1の端部が接続される。ホースの第2の端部には、図示しない吸込口を有するノズルが接続される。
【0037】
集塵室32は、図4に示すように、ハウジング30の上部に設けられる矩形状の内部空間である。集塵室32は、吸引口31に接続される集塵パック41を収容する。集塵パック41は、例えば紙製のパックであり、吸引口31から吸い込まれてくる塵埃を捕集する。
【0038】
第1流路33は、集塵室32の右辺に沿って設けられ、かつ、下端がモータ室34に接続される。第1流路33と集塵室32との境界には、フィルタ42が配置される。フィルタ42は、例えば、高効率微粒子エアフィルタ(HEPA)である。
【0039】
モータ室34は、集塵室32の下方に設けられる内部空間である。モータ室34は、図6及び図7に示すように、右端中央部に第1流路33が接続される流入口341を有し、左端上部に第2流路35が接続される流出口342を有する。モータ室34には、駆動機械43が収容される。図6及び図7に記される太い矢印は、気流を概念的に表す。
【0040】
駆動機械43は、ファン431と、モータ432と、ダンパー433とを含む。ファン431は、モータ432の回転軸に接続され、モータ432からの動力を受けて回転運動し、それにより、モータ室34の流入口341から流出口342へ向かう気流を発生させる。
【0041】
ダンパー433は、モータ432の周囲を覆う環状部材であり、モータ432が発する音を吸収する。図4において、モータ432は、ダンパー433に覆われて図示されていないが、ダンパー433の中央に位置する。図8には、モータ432の配置が示される。
【0042】
第2流路35は、モータ室34の上側に設けられた、モータ室34から左方向に延びる排気通路である。第2流路35は、モータ室34の流出口342と第3流路36とを接続する。
【0043】
第3流路36は、モータ室34の左側に設けられた下方向に延びる排気通路であり、下流部に排気口361を有する。排気口361は、図2及び図7に示すように、ハウジング30の後面に形成されたスリットの一群の形態を有する。図2に記される排気口361からの矢印は、排気口361からハウジング30の外側への排気を概念的に表す。
【0044】
第2流路35及び第3流路36は、L字形状の排気通路を構成し、モータ室34から排気口361への気流を制御する。具体的には、第2流路35及び第3流路36は、モータ室34からの気流を、排気口361を通じてハウジング30の外まで誘導する。
【0045】
隔壁37は、第2流路35の左方向に延びる上側の側壁35Aから、側壁35Aとは直交する方向である下方向に延設される。隔壁37は、第3流路36の下方向に延びる左側の側壁36Aから所定間隔開けて、第2流路35の側壁35Aから離れるように、下方向、換言すれば、排気通路の下流に向かって延設される。
【0046】
隔壁37は、図5に示すように前ハウジング302の後ハウジング301と向き合う面から、後ハウジング301に向けて立設される。これにより、隔壁37は、図8に示すように、第3流路36の天井から底面までの高さ全体に亘って広がるように、第3流路36に沿って設けられる。
【0047】
隔壁37は、この配置によって、排気通路、特には第3流路36に沿うマイクロフォン53の収容空間を形成する。すなわち、隔壁37は、マイクロフォン53の収容空間を形成する構造体として機能する。図5では、収容空間に配置されるマイクロフォン53を点線で表す。
【0048】
具体的に、隔壁37は、側壁35A,36Aとの間にマイクロフォン53の収容空間を画定する。隔壁37は、第2流路35の側壁35Aとの接続点より排気通路の下流において、第2流路35の側壁35A及び第3流路36の側壁36Aと共にマイクロフォン53の収容空間を囲む。
【0049】
隔壁37の下端、換言すれば下流側の端は、第3流路36の側壁36Aとの間に、マイクロフォン53の収容空間と第3流路36とを連結する開口構造を形成する。隔壁37と、第2流路35の側壁35Aと、第3流路36の側壁36Aと、後ハウジング301の底面と、前ハウジング302の内面とによって、マイクロフォン53の収容空間は、開口構造より排気通路の上流全体で前後左右及び上方から漏れなく囲まれる。
【0050】
マイクロフォン53は、隔壁37と側壁35A,36Aとの間の収容空間に、風防として機能する多孔質材530に全方位から包囲された状態で収容される。図4では、多孔質材530で隠れたマイクロフォン53を点線で表す。
【0051】
多孔質材530は、マイクロフォン53の収容空間に対応する形状を有し、マイクロフォン53が正に配置される部位を除いてマイクロフォン53の収容空間をほぼ満たす。隔壁37の側壁36Aを向く左面とは反対側の右面には、整流用の多孔質材37Cが、その面全体に貼り付けられる。図7では、後ハウジング301における隔壁37、マイクロフォン53、多孔質材530、及び多孔質材37Cの配置を点線で示す。
【0052】
多孔質材の例には、繊維系吸音母材と発泡系吸音母材とが含まれる。繊維系吸音母材の例には、グラスウール、ロックウール、及びポリエステル繊維不織材等が含まれる。発泡系吸音母材の例には、発泡ポリウレタン等が含まれる。多孔質材530には、上記の具体的な材料の中から、風防として適した材料が選択され得る。多孔質材37Cには、上記の具体的な材料の中から、整流に適した材料が選択され得る。材料選択に際しては、使用環境、耐性、及びコスト等が考慮され得る。多孔質材530及び多孔質材37Cには、発砲系吸音母材、例えば発泡ポリウレタンが用いられてもよい。
【0053】
マイクロフォン53は、ANCにおける参照マイクロフォンとして使用される。以下では、マイクロフォン53のことを、参照マイク53という。参照マイク53は、ハウジング30内の機械の運動によってハウジング30内で発生する集塵機1の動作音を含む、ハウジング30内の音を収集するために、ハウジング30内に配置される。参照マイク53は、収集した音に対応する電気信号である音信号を出力する。
【0054】
参照マイク53により収集される動作音は、ANCによってハウジング30の外側で減衰するように制御されるべき騒音(以下、対象騒音という。)である。対象騒音は、駆動機械43のモータ432やファン431から生じる騒音、及び、駆動機械43の運動により発生した気流によって生じる騒音を含む。
【0055】
参照マイク53は、排気通路及び排気口361を通じてハウジング30の外側に伝播する対象騒音を効率よく適切に収集できるように、排気通路に沿う上述の収容空間に設置される。
【0056】
このように構成された本体3では、駆動機械43の運動によって気流が発生すると、吸引口31を介して、外気がハウジング30の内部空間に吸引される。吸引された外気は、まず集塵室32に入り、吸引口31に取り付けられた集塵パック41を通過する。この通過により、外気に含まれる塵埃が捕捉される。
【0057】
集塵パック41を通過した空気は、フィルタ42を介して第1流路33に到る。第1流路33に到った空気は、モータ室34及び第2流路35を通過して第3流路36に到り、排気口361を介してハウジング30の外側に排出される。
【0058】
排気口361を通じてハウジング30の外側に伝播しようとする動作音の一部は、対象騒音として、参照マイク53で収集される。上述したように、隔壁37と側壁36Aとの間には、動作音を参照マイク53に誘導するための開口構造が設けられている。このため、動作音は開口構造及び多孔質材530を介して参照マイク53で適切に収集される。
【0059】
参照マイク53の収容空間は、開口構造より上流では、開口構造を臨む方位を除く残りの全方位で周囲から漏れなく覆われており、排気通路の本線から遮断されている。従って、参照マイク53の収容空間には、排気通路と比較して、ほとんど気流が発生せず、参照マイク53に収集される疑似音としての風切り音は大きく低減される。
【0060】
この他、ハウジング30が有する第1のバッテリ収容部38Aは、第1のバッテリパック45Aを収容する空間であり、ハウジング30の下端付近に設けられ、ハウジング30の下端左端付近に開口する第1のバッテリ取付口381Aを有する。
【0061】
第2のバッテリ収容部38Bは、第2のバッテリパック45Bを収容する空間であり、ハウジング30の下端付近に設けられ、ハウジング30の下端右端付近に開口する第2のバッテリ取付口381Bを有する。第1及び第2のバッテリパック45A,45Bは、それぞれ第1及び第2のバッテリ取付口381A,381Bから第1及び第2のバッテリ収容部38A,38Bに挿入される。
【0062】
部品配置部39は、モータ室34及び第2流路35、第3流路36と、第1及び第2のバッテリ収容部38A,38Bとの間に位置する内部空間であり、ここには種々の電気部品が配置される。
【0063】
部品配置部39は、モータ室34、第2流路35、及び第3流路36の壁面によって3方を囲われた縦長部位391と、モータ室34と第1及び第2のバッテリ収容部38A,38Bとに挟まれ縦長部位391と連通する横長部位392とを有する。
【0064】
横長部位392には、コネクタ52が配置される。コネクタ52は、第1のバッテリ収容部38Aと第2のバッテリ収容部38Bとの間に配置され、操作装置6が有するケーブル61を、内部回路に接続するために設けられる。
【0065】
縦長部位391には、ANCに用いられる制御スピーカ54及び誤差マイクロフォン(以下、誤差マイク)55と、駆動コントローラ44とが配置される。制御スピーカ54及び誤差マイク55は、後ハウジング301の下面に形成された取付孔304,305を利用して、制御スピーカ54及び誤差マイク55の指向性がハウジング30の外側を向くように取り付けられる。
【0066】
駆動コントローラ44は、図4に示すように、縦長部位391と、モータ室34との境界となる壁面に取り付けられる。駆動コントローラ44は、電源制御、モータ制御、騒音制御等を行う回路基板であり、その詳細については後述する。
【0067】
誤差マイク55は、消音点となる排気口361の近傍、すなわち、誤差マイク55が消音点にあるとみなせる位置であり、且つ、駆動機械43によって発生した気流が直接当たらない位置に配置される。
【0068】
制御音は、対象騒音を打ち消すために制御スピーカ54から出力される。参照マイク53、制御スピーカ54、及び誤差マイク55は、制御スピーカ54から放射される制御音が消音点に到達するまでの時間が、対象騒音が直接消音点に到達するまでの時間より短くなるように配置される。つまり、この時間差の間に制御音を生成する処理が実行される。
【0069】
制御スピーカ54は、ハウジング30の外に向けて制御音を放射する。誤差マイク55は、排気口361から排出される対象騒音と制御音とが合成された音を収集する。制御スピーカ54は、対象騒音より十分に大きな音を出せる能力を有する。誤差マイク55は、対象騒音と制御音との合成音を歪みなく受信できる能力を有する。
【0070】
[2.2.駆動コントローラ]
図9に示すように、駆動コントローラ44は、制御回路441と、集塵用回路群442と、騒音用回路群443と、電源回路447とを含む。
【0071】
電源回路447は、第1及び第2のバッテリパック45A,45Bから供給される電力を適切な電圧にて各部へ分配する。制御回路441は、マイクロコンピュータとして構成される。制御回路441は、CPU441Aと、メモリ441Bとを備える。
【0072】
別例として、制御回路441は、マイクロコンピュータに代えて、又はマイクロコンピュータに加えて、例えばディスクリート素子などのような電子部品の組み合わせを備えてもよい。制御回路441は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及び/又は、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えてもよい。制御回路441は、特定応用向け汎用品(ASSP)を備えてもよい。制御回路441は、プログラマブル・ロジック・デバイスを備えてもよい。
【0073】
集塵用回路群442は、集塵機1としての機能を果たすために必要な回路を含む。具体的には、集塵用回路群442は、モータ駆動回路と、バッテリ切替回路とを含む。モータ駆動回路は、モータ432を駆動する回路である。バッテリ切替回路は、第1及び第2のバッテリパック45A,45Bの充電残量に応じて、電力の供給源を第1及び第2のバッテリパック45A,45Bのいずれかに適宜切り替えるための回路である。
【0074】
騒音用回路群443は、騒音制御装置としての機能を果たすために必要な各種回路である。騒音用回路群443は、第1及び第2のアナログ/デジタル(A/D)変換器444,445と、デジタル/アナログ(D/A)変換器446とを含む。
【0075】
第1のA/D変換器444は、参照マイク53からの音信号をA/D変換して制御回路441に供給する。第2のA/D変換器445は、誤差マイク55からの音信号をA/D変換して制御回路441に供給する。D/A変換器446は、制御回路441からの制御データを、D/A変換して制御スピーカ54に供給する制御信号を生成する。
【0076】
制御回路441は、集塵用回路群442を制御することにより、集塵機1としての機能を実現する処理の他、動作音に関する処理として、対象騒音を抑制するための騒音抑制処理を実行する。
【0077】
制御回路441は、騒音制御処理の実行により、フィードフォワード型のアクティブノイズコントロール(ANC)を実現する。ANCにより、動作音のハウジング30の外側での伝播を抑制するための制御音、換言すれば対象騒音を打ち消すための制御音が制御スピーカ54から出力される。
【0078】
[2.3.ANCモデル]
図10を用いて、集塵機1に適用されたフィードフォワード型ANCのモデルを説明する。フィードフォワード型ANCモデルは、参照センサM1と、制御音源M2と、誤差センサM3と、騒音制御フィルタM4と、二次系フィルタM5と、係数更新部M6とを備える。
【0079】
参照センサM1は、参照マイク53及び第1のA/D変換器444に対応する。制御音源M2は、D/A変換器446及び制御スピーカ54に対応する。誤差センサM3は、誤差マイク55及び第2のA/D変換器445に対応する。
【0080】
騒音制御フィルタM4、二次系フィルタM5、及び係数更新部M6は、いずれも制御回路441の処理によって実現され得る。あるいは、騒音制御フィルタM4、二次系フィルタM5、及び係数更新部M6の一部又は全部は、ハードウェアによって実現され得る。
【0081】
参照センサM1は、対象騒音を収集することで参照信号xを生成する。参照信号xは、参照マイク53からの音信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングして生成されるデジタル信号に対応する。nは、離散時間を表し、対応する参照信号xがn番目のサンプリングデータであることを表す。
【0082】
騒音制御フィルタM4は、L個のタップを含むFIRフィルタである。Lは正の整数である。騒音制御フィルタM4は、直近で検出されたL個の参照信号{x,xn-1,…,xn-L+1}を要素とするL次元の参照ベクトルx(n)から、制御信号uを生成する。
【0083】
制御音源M2は、制御信号uに従って制御音を生成する。誤差センサM3は、対象騒音と制御音との合成音を収集することで誤差信号eを生成する。誤差信号eは、誤差マイク55からの音信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングして生成されるデジタル信号に対応する。
【0084】
以下では、参照センサM1から誤差センサM3に至る音声の伝搬経路を一次系とよび、制御音源M2から誤差センサM3に至る音声の伝搬経路を二次系とよぶ。二次系フィルタM5は、N個のタップを含むFIRフィルタである。Nは正の整数である。二次系フィルタM5は、直近で検出されたN個の参照信号{x,xn-1,…,xn-N+1}を要素とするN次元の参照ベクトルx(n)からフィルタード参照信号rを生成する。
【0085】
二次系フィルタM5は、二次系の伝達特性をモデル化したフィルタであり、各タップの係数には固定値が用いられる。フィルタード参照信号rは、制御音が誤差センサM3に到達したときに制御音に付加されている二次系の影響分を、参照信号xに付与した信号である。
【0086】
係数更新部M6は、フィルタード参照信号r及び誤差信号eに基づき、誤差センサM3の位置(すなわち、消音点)にて、対象騒音と制御音とが互いに打ち消し合って、誤差信号eが最小となるように、騒音制御フィルタM4に含まれるL個のタップの係数{w,w,…,w}を更新する。
【0087】
騒音制御フィルタM4の係数の更新には、例えば適応アルゴリズムの一つであるFiltered-x NLMSアルゴリズムを用いることができる。この係数の更新によって、対象騒音は、ハウジング30の外側で、制御音によって打ち消されるように減衰する。
【0088】
[2.4.集塵機の効果]
以上に説明した本実施形態の集塵機1は、以下の効果を奏する。
(2.4.1)排気口361を通じてハウジング30の外側に漏れ出る集塵機1のハウジング30内で生じた動作音が、排気通路に沿って設けられた参照マイク53により収集される。制御スピーカ54から、ハウジング30の外側に伝播する動作音を打ち消すための制御音が出力される。従って、集塵機1の動作音が不快な騒音として周囲に鳴り響くのを効果的に抑制することができる。
【0089】
(2.4.2)参照マイク53の収容空間を形成する隔壁37が、参照マイク53への気流の進行を抑制する。このため、制御音の生成に用いられる参照マイク53の音信号において疑似音としての風切り音成分が効果的に抑制される。従って、風切り音成分に起因した制御音による動作音の打ち消し効果の劣化を効果的に抑制することができる。それにより、ユーザの耳に届く動作音の小さい集塵機1を構成することができる。
【0090】
(2.4.3)参照マイク53による収集対象の動作音が参照マイク53に伝播するように、隔壁37の端に開口構造が設けられる。開口構造は、排気通路の下流側を向いており、排気通路を流れる気流が参照マイク53側に進行するのを抑制することができる。
【0091】
(2.4.4)隔壁37が排気通路の高さ全体に広がり、参照マイク53の収容空間は、開口構造より上流の全体において周囲から隔離されるように覆われる。従って、参照マイク53の収容空間への気流の進行を効果的に抑制することができる。排気通路を通じてハウジング30の外に伝播しようとする動作音を、風切り音の影響を抑えながら参照マイク53で適切に収集することができる。参照マイク53で収集される風切り音のANCへの影響を効果的に抑制することができる。
【0092】
(2.4.5)排気通路の側壁35A,36Aを活用し、隔壁37と、側壁35A,36Aとの間に、参照マイク53の収容空間を形成する。従って、参照マイク53の風切り音を効果的に抑制可能な構造を、ハウジング30内に低コストに形成することができる。
【0093】
(2.4.6)参照マイク53が風防として機能する多孔質材530に包まれた状態で収容空間に収容される。多孔質材530が参照マイク53の周囲を覆う。従って、風切り音成分が一層効果的に抑制される。
【0094】
(2.4.7)隔壁37の参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面に、整流用の多孔質材37Cが設けられる。多孔質材37Cは、隔壁37の上流で発生した乱流と隔壁37との干渉を抑えるのに効果的である。多孔質材37Cがある場合、多孔質材37Cがない場合と比較的して、気流に起因する騒音が効果的に抑制される。
【0095】
[3.変形例]
[3.1.第1変形例]
上述の集塵機1において、隔壁37は、図11Aに示す構造を有する隔壁371に変更されてもよい。図11Aでは、第1変形例における集塵機1の排気通路周辺の構成が、簡易的に表される。
【0096】
第1変形例の隔壁371は、第1の壁要素371Aと、第2の壁要素371Bとを備える。第1の壁要素371Aは、第3流路36の側壁36Aに接続され、側壁36Aから離れるように延設される。具体的には、第1の壁要素371Aは、側壁36Aとの接続部から、側壁36Aに対して角度を有した状態で、第3流路36の下流に斜めに延設される。
【0097】
第2の壁要素371Bは、第1の壁要素371Aから第3流路36の下流に向かって延設される。第2の壁要素371Bは、第3流路36の側壁36Aから所定距離離れた位置で側壁36Aに平行に延設される。
【0098】
この隔壁371もまた、側壁36Aとの間で参照マイク53の収容空間を囲み、収容空間を画定する。隔壁371は、第3流路36の天井から底面まで高さ全体に亘って広がり、収容空間を覆う。隔壁371は、側壁36Aとの間に開口構造を形成し、収容空間に配置された参照マイク53が開口構造を通じて動作音を適切に収集可能に構成される。
【0099】
参照マイク53は、風防としての多孔質材531に周囲を覆われた状態で、収容空間に配置される。隔壁371は、整流用の多孔質材371Cを、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面に備える。
【0100】
図11Aにおいて、多孔質材531及び多孔質材371Cは、破線により表される。多孔質材531は、隔壁371と側壁36Aとの間に形成される収容空間に対応した形状を有し、参照マイク53周辺の収容空間をほぼ満たす。多孔質材371Cは、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面全体に貼り付けられる。
【0101】
第1変形例によっても、開口構造より上流から参照マイク53の収容空間への気流の進入を抑制することができ、参照マイク53の音信号内の風切り音成分を効果的に抑制することができる。
【0102】
[3.2.第2変形例]
上述した集塵機1において、隔壁37は、図11Bに示す構造を有する隔壁372に変更されてもよい。第2変形例の隔壁372は、第1の壁要素372Aと、第2の壁要素372Bとを備える。
【0103】
第1の壁要素372Aは、第3流路36の側壁36Aに接続され、側壁36Aから垂直に離れるように右方向に延設される。第2の壁要素372Bは、第1の壁要素372Aから第3流路36の下流に向かって延設される。第2の壁要素372Bは、第3流路36の側壁36Aから所定距離離れた位置で側壁36Aに平行に延設される。
【0104】
この隔壁372もまた、側壁36Aとの間で参照マイク53の収容空間を囲み、収容空間を画定する。隔壁372は、第3流路36の天井から底面まで高さ全体に亘って広がり、収容空間を覆う。隔壁372は、側壁36Aとの間に開口構造を形成し、収容空間に配置された参照マイク53が開口構造を通じて動作音を適切に収集可能に構成される。
【0105】
参照マイク53は、風防としての多孔質材532に周囲を覆われた状態で、収容空間に配置される。多孔質材532は、隔壁372と側壁36Aとの間に形成される収容空間に対応した形状を有し、参照マイク53周辺の収容空間をほぼ満たす。
【0106】
隔壁372は、整流用の多孔質材372Cを、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面に備える。多孔質材372Cは、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面全体に貼り付けられる。図11Bにおいて、多孔質材532及び多孔質材372Cは、破線により表される。
【0107】
第2変形例によっても、開口構造より上流から参照マイク53の収容空間への気流の進入を抑制することができ、参照マイク53の音信号内の風切り音成分を効果的に抑制することができる。
【0108】
[3.3.第3変形例]
上述した集塵機1には、図12に示すように、L字状の排気通路を構成する第2流路35及び第3流路36に代えて、弧状に湾曲した排気通路363が設けられてもよい。
【0109】
排気通路363には、隔壁37に代えて、図12に示す構造を有する湾曲した隔壁373が設けられてもよい。第3変形例の隔壁373は、排気通路363の湾曲部363Cの上流で、排気通路363の側壁363Aに接続され、その接続部から排気通路363の湾曲部363Cに沿って排気通路363の下流に延設される。
【0110】
隔壁373は、排気通路363の下流ほど、側壁363Aから離れるように配置される。この配置により、隔壁373は、排気通路363の側壁363Aとの間に、参照マイク53の収容空間を形成する。
【0111】
すなわち、隔壁373は、側壁363Aとの間で参照マイク53の収容空間を囲み、収容空間を画定する。隔壁373もまた、排気通路363の天井から底面まで高さ全体に亘って広がり、収容空間を覆う。隔壁373は、側壁363Aとの間に開口構造を形成し、参照マイク53が良好に、開口構造を通じて動作音を収集可能に構成される。
【0112】
参照マイク53は、風防としての多孔質材533に周囲を覆われた状態で、収容空間に配置され得る。多孔質材533は、収容空間に対応した形状を有し、参照マイク53周辺の収容空間をほぼ満たす。
【0113】
隔壁373は、整流用の多孔質材373Cを、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面に備える。多孔質材373Cは、参照マイク53の収容空間を向く面とは反対側の面全体に貼り付けられる。図12において、多孔質材533及び多孔質材373Cは、破線により表される。
【0114】
第3変形例によっても、開口構造より上流から参照マイク53の収容空間への気流の進入を抑制することができ、参照マイク53の音信号内の風切り音成分を効果的に抑制することができる。
【0115】
[4.その他]
(4.1)変形例を含む上述の実施形態によれば、マイクロフォン53からの出力が、ANCに利用された。しかしながら、マイクロフォン53からの出力は、集塵機1の動作音に基づく集塵機1の異常検知に利用されてもよい。この場合、制御スピーカ54及び誤差マイク55は、集塵機1内に設けられなくてもよい。
【0116】
(4.2)本開示の技術は、集塵機1への適用に限定されない。本開示の技術は、例えば、日曜大工、製造、園芸、及び/又は工事などの作業現場で使用され、ファンを用いて発生させた気流を利用する作業機に適用されてもよい。園芸用の作業機、及び/又は作業現場の環境を整える作業機に、本開示の技術が適用されてもよい。例えば、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機などの各種電動作業機に本開示の技術が適用されてもよい。
【0117】
(4.3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…集塵機、3…本体、30…ハウジング、31…吸引口、32…集塵室、33…第1流路、34…モータ室、35…第2流路、35A,36A,363A…側壁、36…第3流路、37,371,372,373…隔壁、37C,371C,372C,373C…多孔質材、43…駆動機械、44…駆動コントローラ、45A…第1のバッテリパック、45B…第2のバッテリパック、53…参照マイクロフォン、54…制御スピーカ、55…誤差マイクロフォン、301…後ハウジング、302…前ハウジング、303…プレート、304,305…取付孔、341…流入口、342…流出口、361…排気口、363…排気通路、363C…湾曲部、371A,372A…第1の壁要素、371B,372B…第2の壁要素、431…ファン、432…モータ、433…ダンパー、441…制御回路、441A…CPU、441B…メモリ、442…集塵用回路群、443…騒音用回路群、444,445…A/D変換器、446…D/A変換器、447…電源回路、530,531,532,533…多孔質材、M1…参照センサ、M2…制御音源、M3…誤差センサ、M4…騒音制御フィルタ、M5…二次系フィルタ、M6…係数更新部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12