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特許7682074保全管理装置、保全管理システム、保全管理方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】保全管理装置、保全管理システム、保全管理方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250516BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20250516BHJP
【FI】
G05B23/02 X
G06Q10/20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021168609
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058849
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】金丸 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 啓
(72)【発明者】
【氏名】開田 健
(72)【発明者】
【氏名】今村 英二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 幸大
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 佳正
(72)【発明者】
【氏名】江戸 貴広
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰智
(72)【発明者】
【氏名】加島 隆博
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平井 覚
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028834(JP,A)
【文献】特開2019-191990(JP,A)
【文献】特開2018-010523(JP,A)
【文献】特開2021-077006(JP,A)
【文献】特開2018-106389(JP,A)
【文献】特開2017-071972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検作業を行うタイミングにおいて、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いて前記プラントにおける前回の点検時の前記劣化度と比較して前記設備を構成する機器の劣化が進んでいない場合は点検を簡略化または省略した点検作業フローを作成する点検作業フロー作成部と、
前記点検作業フローを出力する出力部と、
を備えることを特徴とする保全管理装置。
【請求項2】
前記点検作業フロー作成部は、前回以前の点検において連続して所定の回数の点検を省略したときは今回の劣化度に依らず点検を実施する前記点検作業フローを出力することを特徴とする請求項1に記載の保全管理装置。
【請求項3】
前記点検作業フロー作成部は、前記劣化度に対応した点検作業の内容ごとに巡回する前記点検作業フローを作成することを特徴とする請求項1または2に記載の保全管理装置。
【請求項4】
前記プラントは複数のエリアに分割され、
前記点検作業フロー作成部は、各前記エリア内では前記劣化度の高い順に1つの前記エリア内の前記機器の点検作業を行い、前記エリア内の前記機器の点検作業が終了した後に次の前記エリアの点検作業を行うように点検作業フローを作成することを特徴とする請求項3に記載の保全管理装置。
【請求項5】
前記出力部は、点検作業者が携帯可能な端末に前記点検作業フローを送信することで前記点検作業フローを出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項6】
前記出力部は、さらに、前記状態情報および前記診断結果を前記端末へ送信することを特徴とする請求項5に記載の保全管理装置。
【請求項7】
前記点検作業フロー作成部は、前記劣化度がしきい値を超える場合、前記劣化度が前記しきい値以下の場合の点検作業の内容より時間を要する点検作業の内容となるように、前記点検作業フローにおける作業内容を決定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項8】
前記点検作業フロー作成部は、前記劣化度が前記しきい値以下の場合、前記プラントにおける点検を行わないことを示す前記点検作業フローを作成することを特徴とする請求項7に記載の保全管理装置。
【請求項9】
前記劣化度を用いて、前記機器の健全度である機器健全度を算出し、
前記点検作業フロー作成部は、前記機器健全度を用いて前記機器の点検の順序を決定し、決定した順序を反映した前記点検作業フローを作成することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項10】
前記点検作業フロー作成部は、前記機器ごとに、前記機器の健全度に前記機器の重要度を乗算した値を優先度として算出し、前記優先度の高い順に前記機器の点検が行われるように前記機器の点検の順序を決定することを特徴とする請求項9に記載の保全管理装置。
【請求項11】
前記点検作業フロー作成部は、前記点検作業フローに基づく点検において取得された点検結果を用いて、前記点検作業フローを再作成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項12】
前記点検結果は、前記設備の状態を検出する計器を撮像した画像に基づいて読み取られた前記計器の指示値を示す計器読取情報であることを特徴とする請求項11に記載の保全管理装置。
【請求項13】
前記計器読取情報と、当該計器読取情報に対応する前記計器から送信された前記状態情報とを用いて、前記計器または計装機器の故障の有無を判定することを特徴とする請求項12に記載の保全管理装置。
【請求項14】
前記設備を構成する機器の健全度である機器健全度を用いて更新計画を作成する更新計画作成部、
を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項15】
前記プラントは、水処理設備を含む水処理場であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項16】
前記状態情報は、前記水処理設備におけるろ過膜の膜間差圧、ろ過流量および水温のうちの少なくとも1つの検出結果を含むことを特徴とする請求項15に記載の保全管理装置。
【請求項17】
前記状態情報を用いて劣化診断を行う劣化診断解析部、
を備えることを特徴とする請求項1から16のいずれか1つに記載の保全管理装置。
【請求項18】
点検作業者が携帯可能な端末と、
保全管理装置と、
を備え、
前記保全管理装置は、
点検作業を行うタイミングにおいて、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いて前記プラントにおける前回の点検時の前記劣化度と比較して前記設備を構成する機器の劣化が進んでいない場合は点検を簡略化または省略した点検作業フローを作成する点検作業フロー作成部と、
前記点検作業フローを前記端末へ送信する情報送信部と、
を備えることを特徴とする保全管理システム。
【請求項19】
前記状態情報を用いて前記劣化診断を行い、前記劣化診断の前記診断結果を前記保全管理装置へ送信する診断装置、
を備えることを特徴とする請求項18に記載の保全管理システム。
【請求項20】
保全管理装置における保全管理方法であって、
点検作業を行うタイミングにおいて、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いて前記プラントにおける前回の点検時の前記劣化度と比較して前記設備を構成する機器の劣化が進んでいない場合は点検を簡略化または省略した点検作業フローを作成するステップと、
前記点検作業フローを出力するステップと、
を含むことを特徴とする保全管理方法。
【請求項21】
コンピュータシステムに、
点検作業を行うタイミングにおいて、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いて前記プラントにおける前回の点検時の前記劣化度と比較して前記設備を構成する機器の劣化が進んでいない場合は点検を簡略化または省略した点検作業フローを作成するステップと、
前記点検作業フローを出力するステップと、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラントの設備の保全管理を行う保全管理装置、保全管理システム、保全管理方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のプラントでは、安定した設備の稼働のために設備の点検が行われる。従来、プラントにおける点検作業は、点検作業者によって行われてきたが、人件費の抑制、熟練した点検作業者の不足などにより、点検作業の効率化が望まれている。
【0003】
特許文献1には、十分な保守点検および運転管理と、合理化とを両立するために、データベースに蓄積された、プラントの運転状態、保守点検結果などの情報を用いて、設備機器のリスクを評価し、リスク評価結果に基づいて監視強化モード、通常モード、省人モードなどのいずれかの運転モードに決定し、運転モードに応じた点検作業の勤務シフトを作成する維持管理支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-191990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の維持管理支援システムでは、過去の保守点検結果を用いてリスクを評価し、リスク評価結果に応じ運転モードを決定しているため、設備の状態の反映が十分でなく、適切な運転モードが設定されず、その結果、本来は監視強化を行う必要のない場合に監視強化が行われ点検作業が増える可能性がある。このため、特許文献1に記載の維持管理支援システムでは省人化が不十分であり、点検作業のさらなる効率化が望まれる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、点検作業を効率化することができる保全管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる保全管理装置は、点検作業を行うタイミングにおいて、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いてプラントにおける前回の点検時の劣化度と比較して設備を構成する機器の劣化が進んでいない場合は点検を簡略化または省略した点検作業フローを作成する点検作業フロー作成部と、点検作業フローを出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる保全管理装置は、点検作業を効率化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる保全管理システムの構成例を示す図
図2】実施の形態の各診断装置および計器読取機の構成例を示す図
図3】実施の形態の保全管理装置の構成例を示す図
図4】実施の形態の端末の構成例を示す図
図5】実施の形態の点検作業フローの作成処理の一例を示すフローチャート
図6】実施の形態の劣化度対応情報の一例を示す図
図7】実施の形態の点検内容情報の一例を示す図
図8】実施の形態の点検内容情報の別の一例を示す図
図9】実施の形態のエリア単位の点検を説明するための図
図10】実施の形態の端末における処理手順の一例を示すフローチャート
図11】実施の形態の計器の文字盤の一例を示す図
図12】点検結果を用いた実施の形態の劣化診断の一例を示すフローチャート
図13】実施の形態の更新計画の作成処理手順の一例を示すフローチャート
図14】実施の形態の保全管理装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる保全管理装置、保全管理システム、保全管理方法およびコンピュータプログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施の形態にかかる保全管理システムの構成例を示す図である。本実施の形態の保全管理システム10は、本実施の形態の保全管理装置3と、端末4とを備える。保全管理装置3は、例えば、水処理プラント、発電プラント、各種の生産工場などのプラントの保全管理を行う装置である。図1に示した例では、プラント全体の監視を行う監視システム1が、保全管理装置3を備えている。すなわち、図1に示した例では、監視システム1が保全管理装置3としての機能も有する。以下では、プラントの例として水処理場を例に挙げて説明するが、プラントは水処理場に限定されない。
【0012】
監視システム1は、保全管理装置3と、表示部2とを備える。保全管理装置3は、プラントの各設備の状態を示す状態データであるセンサ情報に基づいて、劣化診断項目ごとの劣化度を推定する劣化診断を行い、劣化診断の診断結果とデータベース装置6に記憶されている情報とに基づいて点検作業フローを作成する。保全管理装置3は、センサ情報と診断結果と点検作業フローとを表示部2および端末4へ出力する。保全管理装置3は、診断結果に基づいて、機器の更新計画を作成し、更新計画をデータベース装置6の記憶部7へ格納する。保全管理装置3は、診断結果を劣化診断結果としてデータベース装置6の記憶部7に格納する。
【0013】
データベース装置6は、各種の情報をデータベースとして記憶する記憶部7を備える。データベース装置6の記憶部7には、例えば、点検作業情報、更新計画、劣化診断結果、重要度、機器健全度が格納される。点検作業情報は、劣化度に応じた各機器の点検作業の内容を含む情報である。重要度は、プラントにおける設備を構成する機器の重要度であり、あらかじめ記憶部7に格納される。機器健全度は、プラントにおける設備を構成する機器の健全度であり、例えば、交換可能な機器の単位での健全度を示す情報である。データベース装置6に記憶される情報の詳細については後述する。データベース装置6の記憶部7には、これら以外の情報も格納されてよい。なお、図1では、データベース装置6を1つの装置として記載しているが、データベース装置6は保全管理装置3の一部であってもよいし、監視システム1の一部であってもよい。また、データベース装置6は複数の装置に分かれていてもよい。
【0014】
図1に示した例では、保全管理装置3の保全管理の対象となるプラントの一例である水処理場は、受変電設備と、機械設備と、水処理設備とを備える。受変電設備は、変圧器51と、遮断器53を備える受配電盤52と、を備える。変圧器51および受配電盤52には、変圧器51および遮断器53の状態をそれぞれ計測する計器54および計器55が設けられている。計器54は、計測結果をセンサ情報として受変電設備コントローラ50へ送信する。変圧器51および受配電盤52には、変圧器51および遮断器53の状態を検出する図示を省略したセンサが設けられており、センサは検出結果をセンサ情報として受変電設備コントローラ50へ送信し、受変電設備コントローラ50は受信したセンサ情報を監視システム1へ送信する。また、変圧器51の近傍には、変圧器51の状態を示すセンサ情報を用いて劣化診断を行う変圧器診断装置56が設けられ、受配電盤52の近傍には、遮断器53の状態を示すセンサ情報を用いて遮断器53の劣化診断を行う遮断器診断装置57が設けられる。変圧器診断装置56および遮断器診断装置57は、センサ情報と、劣化診断の診断結果を示す診断結果情報とを監視システム1へ送信する。変圧器診断装置56および遮断器診断装置57の詳細については後述する。
【0015】
機械設備は、配電盤61および機器設備64を備える。機器設備64は、モータ65、ポンプ66およびブロア67を備える。配電盤61は、電路の状態を示すセンサ情報を用いて電路の劣化診断を行う電路診断装置62と、機器設備64における各機器であるモータ65、ポンプ66およびブロア67の状態を示すセンサ情報を用いて各機器の劣化診断を行う機器診断装置63とを備える。配電盤61および機器設備64には、配電盤61および機器設備64の状態を検出する図示を省略したセンサが設けられており、センサは検出結果をセンサ情報として機械設備コントローラ60へ送信し、機械設備コントローラ60は受信したセンサ情報を監視システム1へ送信する。配電盤61および機器設備64には、電路診断装置62および機器設備64の状態をそれぞれ計測する計器68および計器69が設けられている。電路診断装置62および機器診断装置63は、センサ情報と、劣化診断の診断結果を示す診断結果情報とを監視システム1へ送信する。電路診断装置62および機器診断装置63の詳細については後述する。
【0016】
水処理設備は、最初沈殿池71、生物反応槽73および最終沈殿槽76を備える。生物反応槽73は、ろ過膜74を備える。また、最初沈殿池71、生物反応槽73および最終沈殿槽76は、最初沈殿池71、生物反応槽73および最終沈殿槽76の状態をそれぞれ検出するセンサ72、センサ75およびセンサ77を備える。センサ72、センサ75およびセンサ77は、例えば、水質センサ、溶存酸素計、水温計、曝気量計、水・汚泥の流量計などを含む。これらのセンサによって得られるセンサ情報は、例えば、曝気量、電気伝導率、アンモニア濃度、溶存酸素、水温などである。また、センサ75は、例えば、ろ過膜74の状態を検出する膜間差圧計、ろ過流量計、水温計などを含む。例えば、センサ75によって取得されるセンサ情報は、例えば、ろ過膜74の膜間差圧、ろ過流量および水温のうちの少なくとも1つを含む。センサ72、センサ75およびセンサ77は、検出結果であるセンサ情報を水処理設備コントローラ70へ送信し、水処理設備コントローラ70は受信したセンサ情報を監視システム1へ送信する。最初沈殿池71、生物反応槽73および最終沈殿槽76には、最初沈殿池71、生物反応槽73および最終沈殿槽76の状態をそれぞれ計測する計器78、計器79および計器80が設けられている。
【0017】
以下、計器54,55,68,69,78,79,80を区別せずに示すときには、単に計器と記載する。また、センサ72,75,77および上述した図示しないセンサを区別せずに示すときには、センサと記載する。センサは、検出結果であるセンサ情報を電気信号として他の装置へ出力することが可能である。計器は、検出結果を目盛とともに表示することで、計器を確認する点検作業員に検出結果を提示するものであり、計器のうち少なくとも一部は検出結果を、表示するだけでなく他の装置へ送信可能であってもよい。図1に示した例では、計器54は、検出結果を、表示するとともに監視システム1へ受変電設備コントローラ50を介して送信する。
【0018】
図1に示した水処理場の構成は例示であり、水処理場の設備、および各設備を構成する機器は図1に示した例に限定されない。また、図1に示したセンサの数、計器の数についても図1に示した例に限定されない。また、上述したように、水処理場以外のプラントが保全管理装置3の保全管理の対象となる場合には、当該プラントに応じた設備構成であればよく、プラントの設備に応じて設備の状態を検出する計器、センサが設けられる。また、図1に示した例では、各設備における各機器および各装置が、受変電設備コントローラ50、機械設備コントローラ60、水処理設備コントローラ70といったコントローラを介して情報を監視システム1へ送信しているが、これに限らず、各設備における各機器および各装置は、コントローラを介さずに監視システム1へ直接情報を送信してもよいし、図示しない他の装置を介して監視システム1へ情報を送信してもよい。
【0019】
端末4は、点検作業員が携帯可能な携帯端末であり、例えば、タブレット、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどである。端末4は、保全管理装置3から受信したセンサ情報と診断結果と点検作業フローとを、点検作業者の選択に従って適宜表示する。これにより、点検作業者は、端末4に表示された点検作業フローを確認しながら点検作業を行うことができる。さらに、点検作業者は、端末4にセンサ情報、診断結果が表示されることで、重点的に点検すべき場所を判定することができるため、点検作業を効率的に行うことができる。また、端末4は、作業者が身に着けることが可能なスマートグラス、AR(Augmented Reality)グラスなどと呼ばれるメガネ型のディスプレイに点検作業フロー、センサ情報、診断結果などを送信して表示させてもよい。
【0020】
また、点検作業員は、点検作業において、計器の検出結果を計器読取機5に読み取らせてもよい。計器読取機5による読み取りの結果を示す計器読取情報は、端末4に送信される。端末4は、計器読取情報を監視システム1へ送信する。なお、計器読取機5は、端末4を介さずに、計器読取情報を監視システム1へ送信してもよい。計器読取機5は、撮像機能を有する単独の装置であってもよいし、カメラ機能を有する上述したメガネ型のディスプレイであってもよい。また、端末4が計器読取機5としての機能を有していてもよい。ここでは、計器読取機5または端末4が、計器を撮像し、撮像して得られる画像を画像処理することで計器の指示値を求め、求めた指示値を示す計器読取情報を生成する例を説明するが、これに限らず、計器読取機5または端末4は、撮像した画像を監視システム1へ送信し、監視システム1の保全管理装置3が、受信した画像を用いて計器の指示値を求めてもよい。
【0021】
また、点検作業員は、点検結果を端末4に入力してよく、端末4は点検結果を監視システム1へ送信してもよい。点検作業員が、例えば、目視、聴音などを行った結果を点検結果として端末4に入力する。また、点検作業員は、振動計などの点検作業に用いる計測器を用いて点検を行った場合には計測器による計測結果を点検作業員が確認して端末4に入力してもよいし、端末4が計測器の計測結果を受信することが可能な場合には、端末4が計測結果を取得して表示してもよい。また、端末4は取得した計測結果を監視システム1へ送信してもよい。計測器が、直接、または受変電設備コントローラ50、機械設備コントローラ60、水処理設備コントローラ70といったコントローラを介して、計測結果を監視システム1へ送信してもよい。
【0022】
一般に、プラントにおける点検作業は、定期的に行われている。例えば、水処理場の場合、従来は、現場の点検作業員が、毎日水処理場の各設備を巡回し、目視、聴音などの五感を基に点検を行い、点検表に点検結果を記録している。水処理場は、受変電設備、機械設備、水処理設備といったように複数の設備が広範囲に設けられているため、点検作業には手間と時間を要する。一方、水処理場においては、水道料金の収入減少、ベテラン技術者の退職などによって、安定した運転管理が見込めない場合がある。また、施設老朽化による設備の故障の可能性が高まると同時に、維持管理費用が増加傾向にある。このため、水処理場では維持管理の省力、省人、効率化が望まれている。一方で、一律に点検作業を省いてしまうと、劣化が進んでいる機器の点検が十分に行われず、プラント全体の稼働に影響を与える可能性もある。このため、適切に点検作業を行いつつ、効率化を実現することが望まれている。水処理場以外のプラントにおいても、一般に、点検作業においては複数の機器を点検する必要があり、同様に、人件費の削減、運転管理費の削減などのために、十分な点検作業を行いつつ、点検作業を効率化することが望まれている。
【0023】
本実施の形態の保全管理装置3は、診断結果すなわち推定された劣化度に応じて点検作業フローを生成するため、例えば、劣化が進んでいると推定された機器については詳細な点検作業を行い、劣化が進んでいないと推定された機器については劣化が進んでいると推定された機器の点検作業よりも簡略化された点検作業を行うといったように、必要な場合には十分な点検を行いつつ詳細な点検が不要な場合には点検作業を簡略化することができる。このように、本実施の形態の保全管理装置3は、点検作業を効率化することができる。
【0024】
図2は、本実施の形態の各診断装置および計器読取機5の構成例を示す図である。図2に示すように、変圧器診断装置56は、通信部561、センサ部562および劣化診断解析部563を備える。センサ部562は、例えば、変圧器51の状態を検出するAE(Acoustic Emission)センサなどのセンサを含み、センサによる検出結果を示すセンサ情報を劣化診断解析部563および通信部561へ出力する。劣化診断解析部563は、センサ情報を用いて劣化診断解析、すなわち劣化度を推定する劣化診断を実施する。
【0025】
劣化診断解析部563が行う劣化診断の具体的方法に特に制約はないが、例えば、CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)と呼ばれる手法で用いられる劣化診断方法を用いることができる。例えば、劣化診断の方法は、時系列データとして得られるセンサ情報の周波数スペクトルを用いる方法であってもよいし、しきい値を用いた方法であってもよいし、機械学習を用いた方法であってもよい。周波数スペクトルを用いる方法は、例えば、時系列データとして得られるセンサ情報の周波数スペクトルを求め、周波数スペクトルにおける特徴量を算出し、特徴量に応じて劣化度を推定するものでありこの特徴量は、例えば、周波数スペクトル形状を表すパラメータまたは周波数スペクトルにおける定められた条件を満たす箇所の値などであるがこれらに限定されない。しきい値を用いる方法は、センサ情報の値に対して、あらかじめ劣化度に応じたしきい値を定めておくことで劣化度を推定する方法である。機械学習を用いた方法は、例えば、熟練の点検作業者などがセンサ情報から得られる特徴量ごとに、劣化度を正解データとして与えておき、特徴量と正解データとを含むデータセットを複数用いて教師あり学習により学習済モデルを生成する方法であってもよい。特徴量は、センサ情報の振幅、特定の周波数成分などであってもよいし、一定期間分が切り出されたセンサ情報自体であってもよい。このような学習済モデルを用いる場合には、劣化診断解析部563は、センサ情報から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を学習済モデルに入力することで劣化度の推定結果を得る。また、K-means法などのクラスタリングを用いた機械学習により、劣化診断を行ってもよい。劣化診断の方法は、上述した例に限定されない。
【0026】
ここでは、劣化診断解析部563による劣化診断の診断結果として劣化度を示す量が算出されるとし、算出された量に基づいて保全管理装置3が診断結果から劣化度を求める例を挙げて説明するが、劣化診断解析部563による劣化診断の結果は劣化度自体であってもよい。また、劣化診断解析部563は、1つのセンサから得られるセンサ情報を用いて1つの診断結果を求めてもよいし、複数のセンサから得られる複数のセンサ情報を用いて1つの診断結果を求めてもよい。診断結果は、変圧器51などの機器を単位として得られてもよいし、機器を構成する部品単位で得られてもよい。例えば、機器Xの部品Aと部品Bとのそれぞれの診断結果が得られてもよい。すなわち、診断結果が得られる単位、すなわち劣化度の推定結果が得られる単位を、劣化推定項目と呼ぶとすると、劣化診断解析部563は、劣化推定項目ごとの診断結果を求めることになる。
【0027】
劣化診断解析部563は、診断結果を示す診断結果情報を通信部561へ出力する。通信部561は、診断結果情報およびセンサ情報を受変電設備コントローラ50へ送信する。受変電設備コントローラ50は、変圧器診断装置56から受信した診断結果情報およびセンサ情報を、監視システム1内の保全管理装置3へ送信する。
【0028】
遮断器診断装置57は、通信部571、センサ部572および劣化診断解析部573を備える。センサ部572は、センサとして、例えば、遮断器53の動作音を検出するマイクロフォン、遮断器53の補助接点の電圧を検出する補助接点リレー、遮断器53の制御電流を検出する制御電流リレーを含む。通信部571、センサ部572および劣化診断解析部573の機能および動作は、センサ部572が遮断器53の状態を検出するセンサを備え、劣化診断解析部573が遮断器53に対応する劣化診断を行う以外は、変圧器診断装置56の通信部561、センサ部562および劣化診断解析部563の機能および動作とそれぞれ同様である。
【0029】
電路診断装置62は、通信部621、センサ部622および劣化診断解析部623を備える。センサ部622は、センサとして、例えば、電路の漏洩電流を検出する漏洩電流センサ、電路の電圧を検出する電圧センサを含む。通信部621、センサ部622および劣化診断解析部623の機能および動作は、センサ部622が電路の状態を検出するセンサを備え、劣化診断解析部623が電路に対応する劣化診断を行う以外は、変圧器診断装置56の通信部561、センサ部562および劣化診断解析部563の機能および動作とそれぞれ同様である。
【0030】
機器診断装置63は、通信部631、センサ部632および劣化診断解析部633を備える。センサ部632は、センサとして、例えば、モータ65の電流を検出する電流センサまたはモータ65の電流および電圧を検出するセンサを含む。またセンサ部632は、センサとして、例えば、ポンプ66の電流を検出する電流センサ、ブロア67の電流を検出する電流センサを含む。通信部631、センサ部632および劣化診断解析部633の機能および動作は、センサ部632が機器設備64の各機器の状態を検出するセンサを備え、劣化診断解析部633が機器設備64の各機器に対応する劣化診断を行う以外は、変圧器診断装置56の通信部561、センサ部562および劣化診断解析部563の機能および動作とそれぞれ同様である。また、劣化診断解析部633は、例えば、誘導電動機電流徴候解析(Motor Current Signature Analysis)と呼ばれる劣化診断を行ってもよい。
【0031】
計器読取機5は、通信部501、画像解析部502および画像取得部503を備える。画像取得部503は、撮像装置であり、計器を撮像し、撮像して得られた画像を画像解析部502へ出力する。画像解析部502は、画像取得部503から受け取った画像を解析することで計器の指示値を求め、求めた指示値を示す情報を計器読取情報として通信部501へ出力する。通信部501は、画像解析部502から受け取った計器読取情報を端末4へ送信する。端末4は、計器読取機5から受信した計器読取情報を監視システム1の保全管理装置3へ送信する。上述したように、端末4が計器読取機5の機能を有してもよい。
【0032】
次に、本実施の形態の保全管理装置3の構成例について説明する。図3は、本実施の形態の保全管理装置3の構成例を示す図である。監視システム1内の保全管理装置3は、センサ情報取得部31、診断結果情報取得部32、読取情報取得部33、情報送信部34、解析部35および判定部36を備える。
【0033】
センサ情報取得部31は、受変電設備コントローラ50、機械設備コントローラ60、水処理設備コントローラ70の各コントローラを介して各診断装置およびセンサからセンサ情報を受信することで、プラントの設備の状態を示すセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報を解析部35へ出力する。診断結果情報取得部32は、端末4を介して変圧器診断装置56および遮断器診断装置57から診断結果情報を受信し、機械設備コントローラ60を介して電路診断装置62、機器診断装置63から診断結果情報を受信することで、各診断装置から診断結果情報を取得し、取得した診断結果情報を解析部35へ出力する。なお、診断結果情報取得部32は、受変電設備コントローラ50を介して変圧器診断装置56および遮断器診断装置57から診断結果情報を受信してもよい。読取情報取得部33は、端末4から計器読取情報を受信することで計器読取情報を取得し、取得した計器読取情報を解析部35へ出力する。
【0034】
解析部35は、劣化診断解析部351、劣化度算出部352および機器健全度算出部353を備える。劣化診断解析部351は、センサ情報のうち、水処理設備のセンサ72,75,77のセンサ情報に基づいて劣化診断を実施する。劣化診断解析部351が行う劣化診断は、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62、機器診断装置63の各診断装置における劣化診断と同様である。劣化度算出部352は、診断結果情報取得部32から受け取った診断結果情報および劣化診断解析部351の診断結果を示す診断結果情報と、診断結果と劣化度との対応を示す劣化度対応情報とを用いて、診断結果ごとの、すなわち劣化診断項目ごとの劣化度を算出する。なお、診断結果(劣化診断結果)が劣化度そのものとして算出される場合には、劣化度算出部352を備える必要はない。すなわち、劣化度は、劣化診断の診断結果に基づいて決定されるものであればよく、診断結果自体が劣化度であってもよい。機器健全度算出部353は、劣化度算出部352により算出された劣化度を用いて、機器単位の健全度を示す機器健全度を算出する。また、劣化診断解析部351は、読取情報取得部33から計器読取情報を受け取った場合には、計器読取情報を用いて劣化診断を行う。
【0035】
劣化度は、劣化診断項目ごとに算出され、機器単位に算出されるとは限らない。例えば、遮断器53の劣化診断により、センサ情報として動作音を用いた診断結果と、センサ情報として補助接点信号の電圧を用いた診断結果と、センサ情報として制御電流を用いた診断結果との3つの診断結果が得られたとする。この場合、各診断結果は各劣化診断項目に対応し、診断結果ごとに劣化度が算出される。これらは同じ機器である遮断器53の劣化度であるため、遮断器53の機器健全度は、これら3つの劣化度を考慮して算出される。機器健全度は、同一の機器に対応する劣化度の平均値であってもよいし劣化度ごとの重み係数が反映された加重平均であってもよい。各劣化度に対応する重み係数はあらかじめ定められる。なお、機器健全度は、後述する更新計画で用いられるため、機器健全度における交換が行われる単位であり、各機器を構成する部品単位で交換が行われる場合に機器健全度は部品単位で算出される。
【0036】
解析部35は、センサ情報取得部31から受け取ったセンサ情報、診断結果情報取得部32から受け取った診断結果情報、読取情報取得部33から受け取った計器読取情報、劣化診断解析部351による診断結果を示す診断結果情報、劣化度算出部352により算出された劣化度、機器健全度算出部353によって算出された機器健全度を判定部36、表示部2および情報送信部34へ出力する。また、解析部35は、診断結果情報取得部32から受け取った診断結果情報、劣化診断解析部351による診断結果を示す診断結果情報を、劣化診断結果としてデータベース装置6の記憶部7に格納し、機器健全度算出部353によって算出された機器健全度をデータベース装置6の記憶部7に格納する。
【0037】
判定部36は、点検作業フロー作成部361、センサ故障判定部362および更新計画作成部363を備える。点検作業フロー作成部361は、プラントにおける設備の状態を示す状態情報であるセンサ情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いて、プラントにおける点検作業フローを作成する。詳細には、点検作業フロー作成部361は、解析部35から受け取った劣化度と、データベース装置6の記憶部7に格納されている点検作業情報とを用いて、劣化度に応じた点検作業フローを作成し、作成した点検作業フローを表示部2および情報送信部34へ出力する。また、点検作業フロー作成部361は、点検作業フローを作成する際に、さらに、データベース装置6の記憶部7に格納されている各機器の重要度を用いてもよい。判定部36は、データベース装置6の記憶部7に格納されている各機器の重要度を表示部2および情報送信部34へ出力する。
【0038】
センサ故障判定部362は、計器読取情報のうち、センサ情報としても情報が得られているものがある場合、計器読取情報と対応するセンサ情報とを比較し、比較結果に基づいて、計器内の故障の有無を判定する。センサ故障判定部362は、例えば、計器読取情報と対応するセンサ情報との差がしきい値以上の場合、計器の故障があると判定する。また、センサ故障判定部362は、計器読取情報と対応するセンサ情報との比較結果に基づいて計装機器の故障の有無を判定してもよい。このように、センサ故障判定部362は、計器読取情報に対応する計器から送信されたセンサ情報を用いて、計器または計装機器の故障の有無を判定してもよい。センサ故障判定部362は、計器の故障判定の結果を表示部2および情報送信部34へ出力する。更新計画作成部363は、解析部35から受け取った機器健全度を用いて、機器および部品の更新計画を作成し、作成した更新計画を、データベース装置6の記憶部7に格納するとともに表示部2および情報送信部34へ出力する。
【0039】
情報送信部34は、解析部35から受け取ったセンサ情報、診断結果情報および機器健全度と、判定部36から受け取った点検作業フロー、計器の故障判定の結果、更新計画および重要度とを、端末4へ送信する。
【0040】
表示部2は、解析部35から受け取ったセンサ情報、計器読取情報、診断結果情報および機器健全度と、判定部36から受け取った点検作業フロー、計器の故障判定の結果、更新計画および重要度とを表示する。なお、表示部2はこれらの全てを同時に表示してもよいし、図示しない入力手段を介して点検作業員などによって選択結果に応じて、表示する情報を切替えて表示してもよい。表示部2は、例えば、センサ情報などの時系列データについてはグラフ表示と数値の表示とを切替えてもよいし、2つ以上の選択された情報を同時に表示してもよいし、入力に応じて拡大、縮小などを行ってもよい。表示部2における表示方法に特に制約はなく、どのような表示方法で表示が行われてもよい。また、表示部2は、保全管理装置3内に設けられていてもよい。
【0041】
情報送信部34および表示部2は、点検作業フローを出力する出力部の一例である。情報送信部34は、端末4へ送信することで点検作業フローを出力し、表示部2は点検作業フローを表示することで点検作業フローを出力する。点検作業フローが端末4へ送信される場合には、点検作業フローは端末4によって表示される。これにより、点検作業者は、表示部2または端末4に確認された点検作業フローを視認することができる。
【0042】
次に、本実施の形態の端末4の構成例について説明する。図4は、本実施の形態の端末4の構成例を示す図である。端末4は、入力受付部41、情報取得部42、点検作業フロー取得部43、読取情報取得部44、情報送信部45および表示部46を備える。
【0043】
入力受付部41は、点検作業者などのユーザからの入力を受け付ける。情報取得部42は、保全管理装置3からセンサ情報、計器の故障判定の結果、診断結果情報および機器健全度と、更新計画および重要度の各種の情報を受信することで、これらの情報を取得し、取得した情報を表示部46へ出力する。また、情報取得部42は、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62および機器診断装置63からセンサ情報および診断結果情報を受信することで、これらの情報を取得し、取得した情報を表示部46へ出力する。点検作業フロー取得部43は、保全管理装置3から点検作業フローを受信することで、点検作業フローを取得し、取得した点検作業フローを表示部46へ出力する。
【0044】
読取情報取得部44は、計器読取機5から計器読取情報を受信することで、計器読取情報を取得し、取得した計器読取情報を情報送信部45へ出力する。情報送信部45は、計器読取情報を保全管理装置3へ送信する。
【0045】
表示部46は、情報取得部42から受け取った各種の情報と、点検作業フロー取得部43から受け取った点検作業フローと、読取情報取得部44から受け取った計器読取情報とを表示する。なお、表示部46は、上述した表示部2と同様に、これらの全てを同時に表示してもよいし、入力受付部41を介して点検作業員などによって選択された選択結果に応じて、表示する情報を切替えて表示してもよい。表示部46は、例えば、センサ情報などの時系列データについてはグラフ表示と数値の表示とを切替えてもよいし、2つ以上の選択された情報を同時に表示してもよいし、入力に応じて拡大、縮小などを行ってもよい。表示部46における表示方法に特に制約はなく、どのような表示方法で表示が行われてもよい。
【0046】
なお、以上述べた例では、保全管理装置3は、監視システム1内に設けられたが、監視システム1とは別に保全管理装置3が設けられてもよい。また、端末4内に保全管理装置3が設けられてもよいし、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62、機器診断装置63の各診断装置のうちの1つに保全管理装置3が設けられてもよい。
【0047】
また、以上述べた例では、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62、機器診断装置63が、保全管理装置3とは別に設けられ、保全管理装置3が水処理設備に関する劣化診断を行う例を説明したが、全ての設備の劣化診断が保全管理装置3によって行われてもよい。または、水処理設備の各機器の劣化診断を行う劣化診断装置が設けられ、保全管理装置3は、水処理設備の診断結果情報も当該劣化診断装置から取得するようにしてもよい。各設備の劣化診断は、それぞれ保全管理装置3で行われてもよく、別の診断装置で行われてもよく、劣化診断を行う装置は上述した例に限定されない。
【0048】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図5は、本実施の形態の点検作業フローの作成処理の一例を示すフローチャートである。保全管理装置3は、点検作業フローの作成タイミングであるか否かを判断し(ステップS1)、点検作業フローの作成タイミングでない場合(ステップS1 No)、処理を終了する。点検作業フローの作成タイミングである場合(ステップS1 Yes)、保全管理装置3は、劣化診断結果を取得する(ステップS2)。ステップS1では、詳細には、例えば、定期的な点検作業を行う時刻が定められている場合には、当該時刻になると、保全管理装置3の劣化度算出部352は、点検作業フローの作成タイミングであると判断する。または、点検作業員により、図示しない保全管理装置3の入力手段を介して、または端末4を介して、点検作業フローの作成が指示された場合に、点検作業フローの作成タイミングであると判断する。ステップS2では、詳細には、例えば、保全管理装置3のセンサ情報取得部31および診断結果情報取得部32が、それぞれセンサ情報および診断結果情報を取得し、劣化診断解析部351がセンサ情報を用いて劣化診断を行うことで、劣化診断結果が取得される。または、センサ情報取得部31および診断結果情報取得部32の取得と劣化診断解析部351による劣化診断は、定められた演算周期で、または情報を取得するたびに行われ、劣化診断情報がデータベース装置6の記憶部7に劣化診断結果として格納され、ステップS2では、劣化度算出部352がデータベース装置6の記憶部7から劣化診断結果を読み出してもよい。
【0049】
次に、保全管理装置3は、劣化度を算出する(ステップS3)。詳細には、劣化度算出部352が、劣化診断項目ごとに、保持している劣化度対応情報を用いて劣化診断結果に対応する劣化度を算出し、算出した劣化度を判定部36の点検作業フロー作成部361へ出力する。図6は、本実施の形態の劣化度対応情報の一例を示す図である。図6に示した例では、劣化度対応情報は、劣化診断項目ごとの、診断結果として得られる値の範囲と当該範囲に対応する劣化度とを含む。図6に示した例では、劣化度は、1から3までの3段階で示されており、劣化度が1の場合は正常、劣化度が2の場合は注意、劣化度が3の場合は異常に対応している。劣化度はこれに限定されず、正常と異常の2段階で表されてもよく、4段階以上で表されてもよい。なお、ここでは、劣化診断結果が、劣化度を示す何らかの量である例を示しているが、上述したように、劣化診断結果は劣化度自体であってもよい。この場合には、保全管理装置3は、ステップS3を実施する必要はない。また、ここでは、劣化度は、劣化の度合いが少ないほど小さい値であるとする。
【0050】
図5の説明に戻る。次に、保全管理装置3は、点検作業フローを作成し(ステップS4)、作成した点検作業フローを出力する(ステップS5)。詳細には、ステップS4では、判定部36の点検作業フロー作成部361が、劣化度算出部352から受け取った劣化度と、データベース装置6の記憶部7に記憶されている点検作業情報とを用いて、劣化度に応じた点検作業フローを作成する。ステップS5では、判定部36の点検作業フロー作成部361が、表示部2および情報送信部34へ点検作業フローを出力する。これにより、表示部2が点検作業フローを表示することができる。また、情報送信部34が端末4へ点検作業フローを送信することで端末4が点検作業フローを表示できる。なお、点検作業フローは、表示部2および端末4のうち少なくとも一方で表示されればよいため、ステップS5では、点検作業フローの表示部2および情報送信部34への出力のうち少なくとも一方が行われればよい。
【0051】
次に、上述したステップS4の点検作業フローの作成方法の詳細について説明する。データベース装置6の記憶部7に記憶されている点検作業情報は、例えば、劣化診断項目ごとの各劣化度に対応する点検作業の内容を示す点検内容情報と、標準点検作業フローとを含む。
【0052】
図7は、本実施の形態の点検内容情報の一例を示す図である。図7に示した例では、劣化診断項目Aに関する点検内容情報を示しており、点検内容情報は、劣化度と当該劣化度に対応する点検作業の内容とを含む。図7に示した例では、劣化度が1の場合すなわち正常の場合には、点検作業として目視と異音確認(聴音)を行い、劣化度が2の場合すなわち注意の場合には、点検作業として目視と聴音棒を用いた確認を行い、劣化度が3の場合すなわち異常の場合には、点検作業として目視と聴音棒を用いた確認と振動センサを用いた確認とを行うことを示している。
【0053】
図8は、本実施の形態の点検内容情報の別の一例を示す図である。図8に示した例では、劣化診断項目Bに関する点検内容情報を示しており、点検内容情報は、劣化度が1の場合すなわち正常の場合には、点検が不要であることを示し、劣化度が2の場合すなわち注意の場合には、点検作業として目視により計器読み取りを行い、劣化度が3の場合すなわち異常の場合には、点検作業として目視により計器読み取りと振動センサを用いた確認とを行うことを示している。
【0054】
図7,8は、それぞれ1つの劣化診断項目に対応する点検内容情報を示しており、図7,8に例示したような点検内容情報が、劣化診断項目ごとにあらかじめ定められる。図7,8は例示であり、各劣化度に応じた点検作業の内容はこれらの例に限定されない。なお、劣化診断項目は、上述したようにセンサ情報に基づく診断結果に対応しており、例えば、劣化診断項目に対応するセンサ情報が遮断器53の動作音の検出結果であれば、劣化診断項目は遮断器53の動作音となる。点検作業情報に含まれる標準点検作業フローは、これらの劣化診断項目ごとの点検内容情報のうち、劣化度が1すなわち正常な場合に対応する点検内容に基づいて作成されたプラント全体の点検作業の手順を示すものである。標準点検作業フローは、例えば、プラントにおける各機器の配置に基づいて点検作業者の点検における巡回の経路が短くなるようにあらかじめ決定される。
【0055】
また、上記の例では、劣化診断項目ごとに点検内容情報が定められたが、複数の劣化診断項目を1つの単位として点検内容情報が定められてもよい。例えば、同一の機器に対応する2つの劣化診断項目の値の組み合わせごとに、点検内容が定められてもよい。
【0056】
点検作業フロー作成部361は、劣化度算出部352から受け取った劣化度が全て1すなわち正常である場合には、点検作業情報の標準点検作業フローを読み出し、読み出した標準点検作業フローを点検作業フローに決定する。点検作業フロー作成部361は、劣化度算出部352のうち劣化度が1ではないものがある場合には、当該劣化度に対応する劣化診断項目の点検内容情報を参照し、当該劣化度の点検内容を修正点検内容として読み出す。そして、点検作業フロー作成部361は、点検作業情報の標準点検作業フローを読み出し、読み出した標準点検作業フローのうち、劣化度が1ではない劣化診断項目に対応する部分の点検内容を、読み出した修正点検内容で更新するすなわち読み出した修正点検内容で上書きすることで点検作業フローを作成する。
【0057】
上記の例では、劣化度は3段階で表されたが、これに限らず、劣化度が何段階で表されていたとしても、点検作業フロー作成部361は、劣化度がしきい値を超える場合、劣化度がしきい値以下の場合の点検作業の内容より時間を要する点検作業の内容となるように、点検作業フローにおける作業内容を決定すればよい。上記の劣化度は3段階の場合には、しきい値は1である。また、上記の3段階の例では、しきい値が複数段階で設定される場合に相当し、第1のしきい値が1であり、第2のしきい値が2である。
【0058】
このような処理を行うことで、点検作業フロー作成部361は、劣化診断項目ごとの劣化度に応じた点検作業フローを作成することができる。これにより、本実施の形態では、劣化度が1すなわち正常と推定された劣化診断項目については点検を簡略化しつつ、劣化度が1ではないすなわち正常ではないと推定された劣化診断項目については詳細な点検を行うことができるため、十分な点検を行いつつ点検作業を効率化することができる。
【0059】
また、全ての劣化診断項目に関して劣化度が1すなわち正常と推定された場合には、プラントの点検自体が不要と定めておいてもよく、この場合には標準点検フローは定めなくてもよい。すなわち、点検作業フロー作成部361は、劣化度がしきい値以下の場合、プラントにおける点検を行わないことを示す点検作業フローを作成してもよい。これにより、例えば、3時間おきなどのように従来定期的な点検が行われている場合に、劣化度が1すなわち正常と推定されれば1回分の点検が省略される。また、従来の標準点検フローに相当する標準点検フローを定めておき、例えば、全ての劣化診断項目に関して劣化度が1すなわち正常と推定された場合でも、前回点検が省略されていたら、または前回までに連続してN(Nは2以上の整数)回点検が省略されていたら、標準点検フローの点検作業フローで点検を行うようにしてもよい。これにより、連続して長期間点検作業が行われないことを防ぐことができる。
【0060】
また、プラントの全ての劣化診断項目に関して、前回の点検作業が行われた際の劣化度と同一であった場合、点検作業フロー作成部361は、点検自体を行わないと判定してもよい。この場合も、プラントの全ての劣化診断項目に関して、前回の点検作業が行われた際の劣化度と同一であっても、前回点検が省略されていたら、または前回までに連続してN回点検が省略されていたら、点検を行うようにしてもよい。
【0061】
なお、上述した例では、劣化度が3段階で表される例を説明したが、劣化度が2段階または4段階以上で表される場合も同様に、劣化度に応じた点検作業フローを作成することができる。例えば、最も劣化が進んでいない劣化度の値を正常と定義し、正常な場合に対応する点検内容に基づいてあらかじめ標準点検フローを作成しておき、点検作業フロー作成部361は、推定された劣化度に応じて点検内容を修正することにより、劣化度に応じた点検作業フローを作成する。
【0062】
また、上述した例では、標準点検フローから、劣化度が正常ではないと推定された劣化診断項目に対応する作業内容を変更する例を説明したが、点検作業フロー作成部361は、機器健全度を用いて機器の点検の順序を決定し、決定した順序を反映した点検作業フローを作成してもよい。例えば、点検作業フロー作成部361は、機器健全度に応じて点検作業員が点検時に巡回する経路も変更してもよい。機器健全度は、劣化度に基づいて算出されるため、ここでは、例えば、劣化度と同様に3段階で示されるとする。上述したように、同一の機器に対応する劣化度に基づいて機器健全度が算出されるため値が整数とならない可能性があるが、例えば、計算により算出した1以下であれば1とし、1を超え2以下であれば2とし、2を超える場合に3とするといったように、整数化を行うとする。整数化の方法はこの例に限定されない。また、機器健全度は劣化度と数値の大小の意味をあわせるために、数値が小さいほど健全であるとする。すなわち、劣化度および機器健全度は、数値が小さい方が、劣化の度合いが低く健全であるとする。なお、劣化度および機器健全度の数値と劣化の度合いとの対応の定義を逆にし、数値が小さい方が、劣化が大きくなるように定義をしてもよく、この場合には、しきい値を用いた判定における大小関係を逆にすればよい。
【0063】
点検作業フロー作成部361は、例えば、機器健全度が3すなわち異常と推定された機器を先に点検し、その次に機器健全度が2すなわち注意と推定された機器を点検し、最後に機器健全度が1すなわち正常と推定された機器を点検するように点検の順序を変更してもよい。このとき、異常と推定された機器の位置が分散している場合には、効率的に点検を行うことができるようにエリアごとに劣化度の順に点検が行われるように点検作業フローが決定されてもよい。
【0064】
図9は、本実施の形態のエリア単位の点検を説明するための図である。図9に示した例では、プラント内を地理的位置に応じてエリア#1~#5の5つのエリアにあらかじめ分割している。図9では、各エリア内に、異常、注意、正常の数をそれぞれ記載しており、これらの数は、当該エリア内の機器に対応する機器健全度の値の数を示している。例えば、エリア#1では、エリア#1に存在する機器に対応する劣化診断項目のうち、機器健全度が正常と判定されたものが10個であり、機器健全度が注意と判定されたものが1個であり、機器健全度が異常と判定されたものが5個であったとする。異常と判定された機器は、エリア#1だけでなくエリア#2、エリア#3およびエリア#5にも存在する。このため、プラント全体で、異常と判定された機器を優先して点検すると、例えば、エリア#1だけでなくエリア#2、エリア#3およびエリア#5を巡回した後で、さらに、再度エリア#1に戻り注意と判定された劣化診断項目に対応する機器を点検するといったように、点検作業者の移動が多くなる。このため、例えば、エリア#1内で異常、注意、正常の順に対応する機器の点検を行い、エリア#1の点検が完了した後に、エリア#2内で異常、注意、正常の順に対応する機器の点検を行うといったように、エリア単位で劣化度に応じた点検の順とすることで、点検作業者の移動を減らし点検を効率的に行うことができる。
【0065】
また、上記の例では、劣化度に応じて点検の順序を決定したが、さらに、機器の重要度も考慮しても点検の順序が決定されてもよい。例えば、点検作業フロー作成部361は、劣化度とデータベース装置6の記憶部7に格納されている機器の重要度と、当該機器に対応する機器健全度とに基づいて当該機器の点検の優先度を決定してもよい。そして、点検作業フロー作成部361は、点検の優先度を、例えば、機器の重要度と機器健全度とを乗算した値として算出する。点検の優先度は、これに限定されず、例えば、重要度が高いほど優先度が高く、かつ機器健全度が高いほど優先度が高くなるように決定されればよい。なお、ここでは重要度は、重要なものほど値が大きいとしている。点検作業フロー作成部361は、例えば、決定した優先度の高い順に点検を行うように点検作業フローを決定してもよいし、図9のようにエリアごとに優先度の高い順に点検を行うように点検作業フローを決定してもよい。
【0066】
次に、本実施の形態の端末4の動作について説明する。図10は、本実施の形態の端末4における処理手順の一例を示すフローチャートである。点検作業者は、点検を行う際に、端末4を携帯し、端末4に表示された情報を確認しながら点検作業を進める。図10は、点検作業者が点検作業を行う前、および点検作業中の端末4の動作を示している。図10に示すように、端末4は、点検作業フロー、センサ情報および診断結果情報を取得する(ステップS11)。詳細には、情報取得部42が、保全管理装置3および変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62および機器診断装置63から、センサ情報および診断結果情報を受信し、受信した情報を表示部46へ出力する。
【0067】
端末4は、点検作業フロー、センサ情報および診断結果情報のうち選択された情報を表示する(ステップS12)。詳細には、入力受付部41が点検作業員から表示する情報の選択を受け付け、受け付けた結果を表示部46へ通知し、表示部46は、入力受付部41から通知された選択結果に対応する情報を表示する。例えば、点検作業者は定期的な点検作業が行われる前に、点検作業フローを端末4に表示させることで、点検作業の内容を事前に確認することができる。また、点検作業中は、点検作業フローを端末4に表示させながら点検を行ったり、点検中の機器に対応するセンサ情報および診断結果情報のうち少なくとも一方を端末4に表示させたりすることで、点検を適切に実施することができる。なお、ここでは、保全管理装置3および変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62および機器診断装置63が周期的にセンサ情報および診断結果情報を端末4に送信する例を示しているが、これに限らず、点検作業者から表示する情報が選択された後に、対応する情報を端末4が、各装置から取得するようにしてもよい。この場合には、ステップS11の前にステップS12が行われる。
【0068】
次に、端末4は、計器の読取情報(計器読取情報)を取得する(ステップS13)。詳細には、点検作業において、作業者が計器読取機5を用いて計器の指示値を撮像し計器読取機5が画像に基づいて指示値を求める。そして、計器読取機5が、指示値を示す計器読取情報を端末4へ送信し、端末4の読取情報取得部44が、計器読取機5から計器読取情報を受信することで、計器読取情報を取得する。読取情報取得部44は、取得した計器読取情報を表示部46および情報送信部45へ出力する。また、端末4が計器読取機5としての機能を有している場合には、端末4の内部の計器読取機5が計器の指示値を撮像し計器読取機5が画像に基づいて指示値を示す計器読取情報を生成し、読取情報取得部44が計器読取機5から計器読取情報を取得する。
【0069】
図11は、本実施の形態の計器の文字盤の一例を示す図である。計器は、例えば、図11のような文字盤に、目盛が示されるとともに、針の指す位置によって計測結果が示される。図11では図示を省略しているが、目盛のうち少なくとも一部には対応する数値が表示されており、このような文字盤が撮像されることで、目盛に対応する数値と針の指す位置とに基づいて指示値の読み取りが行われる。なお、図11は一例であり、計器の指示値の表示方法はこの例に限定されず、例えば、棒状温度計のように、直線の棒状の管における着色された部分の長さにより指示値が示されるものであってもよい。
【0070】
次に、端末4は、計器読取情報を表示し(ステップS14)、計器読取情報を保全管理装置3へ送信する(ステップS15)。詳細には、ステップS14では、表示部46が計器読取情報を表示し、ステップS15では、情報送信部45が保全管理装置3へ計器読取情報を送信する。ステップS14では、計器読取情報は数値として表示されてもよいし、端末4が対応する計器の過去の計器読取情報を記憶し、横軸を時間とし縦軸を指示値としたグラフによって計器読取情報を表示してもよい。また、端末4は、計器の指示値に対する正常範囲を示す情報を保持し、当該情報に基づいて正常範囲か否かを判定し、判定結果を表示部46に表示させてもよい。
【0071】
点検作業者は、センサ情報および診断結果情報に加えて、計器読取情報を考慮して、対応する機器の点検を行うことで、機器の状態をより適切に判定することができる。また、また、保全管理装置3は、上述したように端末4から受信した計器読取情報を用いて劣化度の更新と点検作業フローの更新が行われてもよい。
【0072】
なお、計器読取情報は点検により得られる点検結果の一例であるが、計器読取情報の点検結果も端末4から保全管理装置3へ送信されてもよい。詳細には、点検作業者は、端末4に各点検項目に関する点検結果を入力し、入力受付部41が入力された結果を情報送信部45へ出力し、情報送信部45が点検結果を保全管理装置3へ送信する。例えば、ある機器の目視という点検項目がある場合に、点検作業者は、目視により異常がないと判定した場合には点検結果として異常がないことを示す情報を端末4へ入力する。また、振動計などの計測装置を用いて点検を行った場合には、当該計測装置によって検出された結果を端末4へ入力してもよい。また、当該計測装置を端末4へ接続可能な場合には、端末4を介して計測装置の計測結果を保全管理装置3へ送信させてもよい。
【0073】
図12は、点検結果を用いた本実施の形態の劣化診断の一例を示すフローチャートである。保全管理装置3は、点検結果を取得し(ステップS21)、取得した点検結果を用いて劣化度を算出する(ステップS22)。詳細には、ステップS21では、例えば、点検結果取得部の一例である読取情報取得部33が、端末4から計器読取情報を受信することで計器読取情報を取得し、計器読取情報を解析部35へ出力する。解析部35の劣化診断解析部351は、計器読取情報を用いて劣化診断を行う。劣化度算出部352は、計器読取情報を用いた劣化診断結果に対応する劣化度を算出する。または、計器読取情報に関して計器読取情報の指示値と劣化度との対応をあらかじめテーブル形式で定めておき、解析部35は、劣化診断は行わずに、劣化度算出部352が、計器読取情報と当該対応に基づいて劣化度を求めてもよい。なお、ここでは、解析部351が計器読取情報を用いた劣化診断を行う例を記載したが、計器読取情報を用いた劣化診断を、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62、機器診断装置63の各診断装置が行ってもよい。
【0074】
次に、保全管理装置3は、点検作業フローを更新する(ステップS23)。詳細には、点検作業フロー作成部361が、劣化度算出部352により算出された劣化度を用いて作成済みの点検作業フローのうち当該劣化度に対応する部分の点検作業の内容を点検内容情報に基づいて更新する。なお、この場合、点検内容情報は劣化診断項目だけでなく計器ごとにもあらかじめ作成される。計器の検出結果がセンサ情報と計器読取情報との両方で取得される場合には、点検内容情報は共通のものが用いられてもよい。劣化診断項目と更新された点検作業フローは、端末4に送信され端末4に表示される。点検結果として、計器読取情報以外の計測結果が得られる場合も同様に、計器読取情報と同様に、点検結果を用いて劣化度の算出が行われ、点検作業フローが再作成される。このように、点検作業フロー作成部361は、決定した点検作業フローに基づく点検において取得された点検結果を用いて、点検作業フローを再作成してもよい。
【0075】
また、点検結果を反映した劣化度を用いて機器健全度も更新される。なお、上記の例では、点検結果を反映した劣化度が、点検作業フローの再作成に用いられる例を説明したが、点検結果を反映した劣化度は機器健全度の算出に用いられ、点検作業フローの再作成の処理は行われなくてもよい。
【0076】
次に、本実施の形態の更新計画の作成について説明する。図13は、本実施の形態の更新計画の作成処理手順の一例を示すフローチャートである。図13に示す処理は、例えば、オペレータにより指示されたときなどに行われてもよいし、1週間に一度などのように定期的に行われてもよい。図13に示す処理の実施タイミングはこれらに限定されない。
【0077】
保全管理装置3は、図5と同様にステップS2,S3を実施する。次に、保全管理装置3は、機器健全度を算出する(ステップS31)。詳細には、機器健全度算出部353が、劣化度を用いて機器単位の健全度を算出する。詳述したように機器健全度は、交換が可能な機器の単位で算出される。次に、保全管理装置3は、機器健全度を用いて更新計画を作成する(ステップS32)。詳細には、更新計画作成部363が、機器健全度を用いて更新計画を作成する。更新計画の作成方法はどのような方法であってもよいが、例えば、機器健全度ごとに次の交換までの日数を範囲で定めた交換日数テーブルを保持しておき、当該テーブルに基づいて更新計画を作成する。次の交換までの日数の範囲は、機器ごとに定められてもよいし、機器によらずに同一の範囲として定められてもよい。または、更新計画作成部363は、機器ごとに機器健全度を用いて将来の機器健全度を予測し、予測した機器健全度が定められたしきい値に達する日に基づいて更新計画を定めてもよい。更新計画の作成方法は上述した例に限定されない。また、更新計画の作成には、機器健全度だけでなく機器の重要度も考慮されてもよい。
【0078】
以上のように、本実施の形態の保全管理装置3は、劣化診断の診断結果を反映して更新計画を作成するため、実際の機器の状態にあった適切な更新計画を作成することができる。
【0079】
次に、本実施の形態の保全管理装置3のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の保全管理装置3は、コンピュータシステム上で、保全管理装置3における処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが保全管理装置3として機能する。図14は、本実施の形態の保全管理装置3を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図14に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0080】
図14において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の保全管理装置3における処理が記述されたプログラムを実行する。なお、制御部101の一部が、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用ハードウェアにより実現されてもよい。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタ、スピーカなどである。なお、図14は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図14の例に限定されない。
【0081】
ここで、本実施の形態のプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、コンピュータプログラムが記憶部103にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部103から読み出されたプログラムが記憶部103の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の保全管理装置3としての処理を実行する。
【0082】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、保全管理装置3における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0083】
本実施の形態のコンピュータプログラムは、例えば、コンピュータシステムに、プラントにおける設備の状態を示す状態情報を用いた劣化診断の診断結果から決定される劣化度を用いてプラントにおける点検作業フローを作成するステップと、点検作業フローを出力するステップと、を実行させる。
【0084】
図3に示した解析部35および判定部36は、図14に示した記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムが図14に示した制御部101により実行されることにより実現される。図3に示した解析部35および判定部36の実現には、図14に示した記憶部103も用いられる。図3に示したセンサ情報取得部31、診断結果情報取得部32、読取情報取得部33、情報送信部34は、図14に示した通信部105により実現される。また、保全管理装置3は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、保全管理装置3は、クラウドコンピュータシステムにより実現されてもよい。
【0085】
また、図3に示したように、保全管理装置3が監視システム1内に設けられる場合には、監視システム1が図3に例示したコンピュータシステムであり、図3に示した表示部2は、図14に示した表示部104により実現される。
【0086】
端末4、変圧器診断装置56、遮断器診断装置57、電路診断装置62、機器診断装置63も、同様に、例えば、図14に示した構成のコンピュータシステムにより実現される。各診断装置も複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、各診断装置のうちの一部が、クラウドコンピュータシステムにより実現されてもよい。また、データベース装置6も、例えば、図14に示した構成のコンピュータシステムにより実現されてもよい。または、データベース装置6は、ハードディスク装置などのように保全管理装置3からアクセス可能な記憶装置であってもよい。
【0087】
以上述べたように、本実施の形態の保全管理装置3は、プラントの各設備の状態を示す状態データであるセンサ情報に基づいて、劣化診断項目ごとの劣化度を推定する劣化診断を行い、劣化診断の診断結果とデータベース装置6に記憶されている情報とに基づいて点検作業フローを作成する。これにより、本実施の形態の保全管理装置3は、点検作業を効率化することができる。
【0088】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 監視システム、2,46 表示部、3 保全管理装置、4 端末、5 計器読取機、6 データベース装置、7 記憶部、10 保全管理システム、31 センサ情報取得部、32 診断結果情報取得部、33,44 読取情報取得部、34,45 情報送信部、35 解析部、36 判定部、41 入力受付部、42 情報取得部、43 点検作業フロー取得部、50 受変電設備コントローラ、51 変圧器、52 受配電盤、53 遮断器、54,55,68,69,78,79,80 計器、56 変圧器診断装置、57 遮断器診断装置、60 機械設備コントローラ、61 配電盤、62 電路診断装置、63 機器診断装置、64 機器設備、65 モータ、66 ポンプ、67 ブロア、70 水処理設備コントローラ、71 最初沈殿池、72,75,77 センサ、73 生物反応槽、74 ろ過膜、76 最終沈殿槽、351,563,573,623,633 劣化診断解析部、352 劣化度算出部、353 機器健全度算出部、361 点検作業フロー作成部、362 センサ故障判定部、363 更新計画作成部、501,561,571,621,631 通信部、502 画像解析部、503 画像取得部、562,572,622,632 センサ部。
図1
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図14