(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/20 20060101AFI20250516BHJP
H02B 1/32 20060101ALI20250516BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20250516BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20250516BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
H02B1/20 H
H02B1/20 N
H02B1/32 C
H02B1/40 D
H05K5/02 L
H05K7/06 C
(21)【出願番号】P 2021197458
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2024-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
(72)【発明者】
【氏名】南井 祥吾
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-019008(JP,A)
【文献】実開昭49-079953(JP,U)
【文献】実開平03-060802(JP,U)
【文献】国際公開第2014/076954(WO,A1)
【文献】特開2010-022087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/20
H02B 1/32
H02B 1/40
H05K 5/02
H05K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子部と第2の端子部を備える端子台を筐体の内部に備えた分電盤であって、
端子台が、筐体の外から配線される入線ケーブルが接続される第1の端子部の下方に第2の端子部が位置するように設置され、
盤内構成部材が、第2の端子部から配線される配線部材の垂直下方に設置され、
前記盤内構成部材への液類の滴下を抑制可能な液類受け部が、端子台の第1の端子部より下方かつ、盤内構成部材より上方に設置された分電盤。
【請求項2】
液類受け部が、第2の端子部から配線される配線部材の垂直下方かつ、盤内構成部材の垂直上方に位置する請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
端子台の第2の端子部に接続される配線部材は銅バーであり、
盤内構成部材は、前記銅バーを介して端子台の第2の端子部と電気的に接続される電気機器であり、
前記盤内構成部材は、端子台の垂直下方に設置され、
前記銅バーは、端子台側に形成した第1曲げ部と、電気機器側に形成した第2曲げ部を含むクランク形状を備え、
第1曲げ部の垂直下方に液類受け部を設けた請求項2に記載の分電盤。
【請求項4】
銅バーの第1曲げ部の曲げ角度を鋭角とした請求項3に記載の分電盤。
【請求項5】
液類受け部は、下側にへこんだ凹み部を備える請求項1から4の何れかに記載の分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筐体内に端子台を備えた分電盤が知られている。特許文献1に記載の分電盤では、主幹ブレーカの一次側に端子台が備えられている。この例のように、入線ケーブルを端子台に接続し、その端子台から、その他の機器(ブレーカや端子台等)に配線を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、入線ケーブルを上方から端子台に接続する場合、入線ケーブルから液類が滴下することがある。例えば、入線ケーブル被覆内の導体から圧着端子の隙間に液類が滴下してしまうことがある。
【0005】
液類は、雨水などの場合もあれば、グリスなどの場合もある。雨水が滴下する原因の一つは、地中から配線される入線ケーブルの被覆の一部の損傷である。その損傷部から雨水等の液類が毛細管現象により入線ケーブルの先端部まで到達し、滴下する。また、滴下するグリスの例としては、防錆用のグリスを挙げることができる。入線ケーブルの導体がアルミニウムである場合、アルミニウムの防錆のために導体と圧着端子や圧縮端子間にグリスが塗布されるが、このグリスが重力により滴下する場合がある。
【0006】
いずれにせよ、入線ケーブルから滴下した液類が下方にある機器(ブレーカや端子台等)に接触するのは好ましくない。これは、滴下した液類が、機器の筐体の劣化(割れ等)による絶縁性能の低下を引き起こしたり、異極間の短絡の発生をもたらしたりするおそれがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、入線ケーブルから端子台にもたらされる液が端子台より下方に位置する盤内構成部材に滴下しにくいようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の端子部と第2の端子部を備える端子台を筐体の内部に備えた分電盤であって、端子台が、筐体の外から配線される入線ケーブルが接続される第1の端子部の下方に第2の端子部が位置するように設置され、盤内構成部材が、第2の端子部から配線される配線部材の垂直下方に設置され、前記盤内構成部材への液類の滴下を抑制可能な液類受け部が、端子台の第1の端子部より下方かつ、盤内構成部材より上方に設置された分電盤とする。
【0009】
また、液類受け部が、第2の端子部から配線される配線部材の垂直下方かつ、盤内構成部材の垂直上方に位置する構成とすることが好ましい。
【0010】
また、端子台の第2の端子部に接続される配線部材は銅バーであり、盤内構成部材は、前記銅バーを介して端子台の第2の端子部と電気的に接続される電気機器であり、前記盤内構成部材は、端子台の垂直下方に設置され、前記銅バーは、端子台側に形成した第1曲げ部と、電気機器側に形成した第2曲げ部を含むクランク形状を備え、第1曲げ部の垂直下方に液類受け部を設けた構成とすることが好ましい。
【0011】
また、銅バーの第1曲げ部の曲げ角度を鋭角とすることが好ましい。
【0012】
また、液類受け部は、下側にへこんだ凹み部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、入線ケーブルから端子台にもたらされる液が端子台より下方に位置する盤内構成部材に滴下しにくいようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における分電盤を前側から見た図である。ただし、扉を開放している。
【
図2】入線ケーブルが接続される端子台と主幹ブレーカ周りの例を示した斜視図である。
【
図3】入線ケーブルが接続される端子台と主幹ブレーカ周りの例を左側から見た状態を示した側面図である。
【
図5】入線ケーブルが接続される端子台と主幹ブレーカ周りの例を左側から見た状態を示した断面図である。ただし、液類受け部材が第1の端子部と第2の端子部の間に位置している。
【
図6】ベース部の上に液類受け部材を載置した状態を示した例の図である。
【
図7】
図6に示す液類受け部材を左右方向にスライドさせた例を示す図である。
【
図8】液類受け部で主に配線部材からの液滴を受けるようにした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図3に示されていることから理解されるように、本実施形態の分電盤1は、第1の端子部11aと第2の端子部11bを備える端子台11を筐体10の内部に備えている。この分電盤1は、端子台11が、筐体10の外から配線される入線ケーブル20が接続される第1の端子部11aの下方に第2の端子部11bが位置するように設置され、盤内構成部材が、第2の端子部11bから配線される配線部材50の垂直下方に設置され、前記盤内構成部材への液類の滴下を抑制可能な液類受け部61が、端子台11の第1の端子部11aより下方かつ、盤内構成部材より上方に設置されている。このため、入線ケーブル20から端子台11にもたらされる液が端子台11より下方に位置する盤内構成部材に滴下しにくいようにすることが可能となる。より詳しくは、第1の端子部11aに接続された入線ケーブル20から滴下する液類を液類受け部61により受けることができるので、盤内構成部材に液類が接触することを防ぐことができる。その結果、液類の接触に起因する盤内構成部材の劣化による絶縁性能の低下や、異極間で短絡が起こることを防ぐことができる。
【0016】
なお、液類受け部61で保護する盤内構成部材は、ブレーカ、端子台、銅バー、バーホルダ、導電部保護カバーなどが好ましい。また、液類と接触することで部材の劣化が起きて絶縁性能が低下するものや、異極間の短絡が起きる可能性のあるものであることが好ましい。
【0017】
ここで、実施形態の分電盤1について説明をする。実施形態の分電盤1は、筐体10の上部から入線ケーブル20が導入される。この入線ケーブル20は、分電盤1の筐体10の外で地中や地上をとおるように配線され、分電盤1の筐体10内に入線されるものであり、端部に設けられた圧着端子22と端子台11の第1の端子部11aが密着するように接続される。
図1に示す例では、筐体10の天板に設けられた穴を通って入線ケーブル20が筐体10内に導入されている。この入線ケーブル20は、筐体10内で端子台11に接続される。なお、圧着端子22は圧縮端子であってもよい。
【0018】
図1に示す例では、筐体10の上部に設けられた端子台11にアルミニウムを用いた入線ケーブル20が接続されている。なお、この入線ケーブル20はアルミニウムを用いて形成された導体の周囲が保護部材により被覆されている。なお、導体はアルミニウムを用いて形成されている必要は無いため、例えば、導体の材質に銅を用いても良い。
【0019】
端子台11は、入線ケーブル20が接続される第1の端子部11aが上部に位置し、端子台11の二次側の電気機器に繋がる配線部材50が接続される第2の端子部11bが下部に位置するように配置されている。この第1の端子部11aと第2の端子部11bは電気的に接続されている。
【0020】
また、液類受け部61が、端子台11の第1の端子部11aより下方かつ、盤内構成部材の一つである主幹ブレーカ81より上方に設置されている。このため、入線ケーブル20から端子台11にもたらされた液類が主幹ブレーカ81に滴下することを抑制することができる。なお、端子台11は、入線ケーブル20が上方から第1の端子部11aに接続できるような向きに配置されればよい。
【0021】
ところで、
図1から
図3に示す例では、端子台11の第2の端子部11bに接続される配線部材50が銅バーであり、盤内構成部材は、前記銅バーを介して端子台11の第2の端子部11bと電気的に接続される電気機器であり、前記盤内構成部材が、端子台11の垂直下方に設置される。このような場合には、前記銅バーが、端子台11側に形成した第1曲げ部50dと、電気機器側に形成した第2曲げ部50eを含むクランク形状を備えるとともに、第1曲げ部50dの垂直下方に液類受け部61を設ける構成とするのが好ましい。このような構成とすると、端子台11を大きくせずとも、銅バーを介して液類を液類受け部61に滴下させることができる。
【0022】
このような構成の場合、銅バーの第1曲げ部50dの曲げ角度は90度以内とすることが好ましいが、鋭角とするのがより好ましい。銅バーの第1曲げ部50dの曲げ角度を鋭角とすれば、筐体10がやや傾けて取り付けらることで配線部材50がやや傾いた場合でも、液類が第1曲げ部50d付近で滴下する可能性が高くなるからである。
【0023】
なお、この例では、端子台11の第2の端子部11bは配線部材50である銅バーにより主幹ブレーカ81と接続されている。また、主幹ブレーカ81の二次側には複数の分岐ブレーカ82が、銅バーを介して接続されている。
【0024】
実施形態の端子台11は筐体10に対して、基台12を介して取り付けられている。また、
図2に示す例の基台12は、断面がハット形状である。この基台12は曲げ加工をすることで当該形状が形成されている。また、
図3に示すことから理解されるように、実施形態の基台12は基板13に取り付けられている。
【0025】
図1から
図3に示す例では、端子台11が取り付けられる基台12に液類受け部61を備えた液類受け部材Rが取り付けられている。この例では、液類受け部材Rは端子台11の垂直下方に位置するように配置されており、端子台11から流出した液類が盤内構成部材の一つである主幹ブレーカ81に滴下することを抑制することができる。
【0026】
なお、この明細書では、「・・・の垂直下方」や「・・・の垂直上方」は、「・・・から垂直に下にあること」や「・・・から垂直に上にあること」を意味している。また、「・・・よりも下方」や「・・・よりも上方」は、「・・・の位置よりも下にあること(斜め下も含む)」や「・・・の位置よりも上にあること(斜め上も含む)」を意味している。
【0027】
また、実施形態の液類受け部61は、下側にへこんだ凹み部61aを備えている。このため、液類受け部61に到達した液類が液類受け部61の外に出ることを抑制することができる。なお、液類受け部61は凹み部61aを備える構成とすることが好ましいが、平板形状でもよい。なお、凹み部61aは傾斜する部位を備えるものであってもよい。
【0028】
端子台11の第2の端子部11bには、配線部材50が接続される。液類受け部61は、端子台11からの液類の滴下だけではなく、配線部材50を伝って流れる液類の滴下からも、盤内構成部材を保護するようにしても良い。
【0029】
ここで、
図1から
図3に示す例の配線部材50について、より詳しく説明をする。この配線部材50は、上下方向にずれた位置で略平行に延びる部位同士を連結部50bで連結した部位を備えている。より具体的には、第2の端子部11bに接する上下方向に延びる部分である上流配線部50aと、一方の端部側で上流配線部50aと角をなす連結部50bと、連結部50bの他方の端部側と角をなすように上下方向に延びる下流配線部50cと、を備えた略クランク形状の配線部材50としている。
【0030】
図1から
図3に示すことから理解されるように、上流配線部50aと連結部50bが角をなす部分である第1曲げ部50dは鋭角をなすようにしている。なお、
図1から
図3に示す例では、連結部50bと下流配線部50cが角をなす部分である第2曲げ部50eも鋭角をなすようにしている。このため、配線部材50は側面視でZ字形状となっている。
【0031】
この例では、第1曲げ部50d付近から液類を滴下させて、液類受け部61で受けるようにしているが、液類受け部61の清掃などをしやすくするには、液類受け部61を備える液類受け部材Rを分電盤1に対して取り外し可能に取り付けるのが好ましい。
【0032】
図1から
図4に示す例では、液類受け部材Rを基台12に対してねじ71を用いて固定できるようにしている。より具体的には、液類受け部材Rに備えたねじ固定部R1に差し込んだねじ71を用いて、基台12に対して液類受け部材Rを取り外し可能に固定している。
【0033】
ここまでの例では、液類受け部61が、第2の端子部11bから配線される配線部材50の垂直下方かつ、盤内構成部材の垂直上方に位置するようにしている。このような構成とすれば、液類受け部61の設置がしやすくなる。とはいえ、液類受け部61はこのような位置に配置されていなくてもよい。例えば、
図5に示すことから理解されるように、第1の端子部11aと第2の端子部11bの間に液類受け部61を設けるようにしても良い。この場合でも、液類受け部61に凹み部61aを備えるようにし、その開放側を第1の端子部11aに向けるように構成するのが好ましい。
【0034】
ところで、液類受け部61は、その設置個所に関わらず、滴下した液類を受けた状態で外す作業や移動する作業などをすることが想定される。したがって、液類受け部61内の液類がこぼれにくいように、液類受け部材Rを移動できるようにするのが好ましい。
図6及び
図7に示す例では、液類受け部材Rがスライド移動できるように、ベース部75で支えられている。スライド移動は垂直方向などになされるものでも良いが、水平方向になされるものであるのが好ましい。
【0035】
なお、
図6及び
図7に示す例では、基板13にベース部75がねじ固定されている。このベース部75に液類受け部材Rの一端側が支えられた状態でスライド移動させて、所定の箇所に液類受け部材Rを配置した後、その個所で液類受け部材Rを固定できるようにするのが好ましい。この例では、ねじ固定部R2に差し込んだねじを用いて、液類受け部材Rのねじ固定を可能としているが、固定の態様はねじを用いたものである必要は無い。
【0036】
ところで、液類受け部61は、端子台11から滴下することへの対応よりも、端子台11に接続された配線部材50から滴下することへの対応を主とする位置に配置しても良い。
図8に示す例では、端子台11の斜め下の位置で電線状の配線部材50が下に凸となるように屈曲しているが、ここからの滴下を主として受けるように液類受け部61を配置している。なお、液類受け部61は複数個所に設置しても良いため、主として端子台11からの滴下を受ける液類受け部61と、主として配線部材50からの滴下を受ける液類受け部61を離して設けても良い。
【0037】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、図示した例では、端子台は、3極分を接続できる構造であるが、その他極数に対応したものであってもよい。
【0038】
液類受け部は、端子台を固定する基台とは別の基台に固定されてもよい。
【0039】
また、液類受け部は端子台と別体である必要は無く、端子台と一体的であっても良い。また、本実施形態では、第1の端子部が1次側端子、第2の端子部が2次側端子であるが、第1の端子部が2次側端子、第2の端子部が1次側端子であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 分電盤
10 筐体
11 端子台
11a 第1の端子部
11b 第2の端子部
20 入線ケーブル
50 配線部材
50d 第1曲げ部
50e 第2曲げ部
61 液類受け部
61a 凹み部