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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】小型3リードモバイル心臓監視装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20250516BHJP
   A61B 5/282 20210101ALI20250516BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20250516BHJP
   A61B 5/341 20210101ALI20250516BHJP
   A61B 5/358 20210101ALI20250516BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/282
A61B5/346
A61B5/341
A61B5/358
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021568329
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 US2020032556
(87)【国際公開番号】W WO2020232040
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】62/847,308
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521497006
【氏名又は名称】ハートビーム,インク.
【氏名又は名称原語表記】HEARTBEAM,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジェディック,ブラニスラブ
(72)【発明者】
【氏名】ブリチェビッチ,ボスコ
(72)【発明者】
【氏名】ハジェヴスキー リュプコ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-195690(JP,A)
【文献】実開平03-091304(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0017420(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0174204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3リードモバイル心臓監視装置であって、
前面と背面とを有する筐体と、
2個の胸部用電極と、
2個の指用電極と、
前記筐体の両端部で前記筐体に旋回可能に装着される2本の格納式アームであって、前記2個の指用電極が前記筐体の前記前面又は縁部に配設されて、前記2個の胸部用電極が前記格納式アームに配設される2本の格納式アームと、
前記筐体のいずれかの側の2個の略柱状区画であって、格納位置の前記アームを受容する為に各々が構成されると共に、2個の側壁部と底部と前壁部とピンとを各々が有する区画であり、各ピンが各区画の2個の対向側壁部を接続する、2個の略柱状区画と、
を具備する装置。
【請求項2】
各格納式アームが、患者の胸部から信号を獲得する為の前記胸部用電極の一つを収容する陥凹テーパ状部分を一端部に有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ピンと同軸のねじりばねを各アームが具備して前記ばねが第1及び第2タングを有し、前記第1タングが前記アームと嵌合して前記第2タングが前記筐体と嵌合する、請求項に記載の装置。
【請求項4】
一対の区画と、格納位置の前記アームの各々を前記区画対の区画内に保持する一以上のロックとを更に具備し、前記アームの側面側に垂直な円筒体に配設される2個のばねプランジャを各アームが有するので、前記区画の各側壁部に形成される陥凹部と嵌合するように各プランジャの先端が構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記前面の一以上の長縁部の面取り部分に前記指用電極が配設され、前記面取り部分が前記前面の横中心線に対してオフセットしており、縦中心線上で前記前面の短縁部に隣接して、又は短縁部に前記アームが配設される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記1本又は2本の格納式アームの一部分を受容するのに適応した開口部を各々が有する一対の区画を更に具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記筐体の長さと厚さの比が約15以上であって長さと幅の比が約1.6以上である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
非格納位置での前記胸部用電極の間の距離が約10cmより大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
格納位置での前記アームの間の角度が約135度である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置であって、
前面と背面とを有する筐体と、
2個の胸部用電極と、
2個の指用電極と、
両端部で前記筐体に旋回可能に装着される2本の格納式アームと、
を具備して、
前記2個の指用電極が前記筐体の前記前面又は前縁部に配設されて、前記2個の胸部用電極が前記格納式アームに配設され、
前記格納式アームが、前記非配備構成で前記背面と同一平面に格納されて前記配備構成で前記背面に対して角度を成して延在する、
装置。
【請求項11】
各格納式アームが、患者の胸部から信号を獲得する為の前記胸部用電極の一つを収容する陥凹テーパ状部分を一端部に有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
更に、格納位置の前記アームを受容する為に各々が構成される2個の略区画を前記筐体の各側に具備する、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
第1及び第2タングを有するねじりばねを各アームが具備し、前記第1タングが前記アームと嵌合して前記第2タングが前記筐体と嵌合する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
一対の区画と、前記一対の区画の区画内に前記アームの各々を格納位置で保持する一以上のロックとを更に具備し、前記アームの側面側に垂直な円筒体に配設される2個のばねプランジャを各アームが有するので、前記区画の各側壁部に形成される陥凹部と嵌合するように各プランジャの先端が構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記指用電極が前記前面の一以上の長縁部の面取り部分に配設される、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記面取り部分が前記前面の横中心線に対してオフセットし、縦中心線上で前記前面の短縁部に隣接して、又は短縁部に前記アームが配設される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記1本又は2本の格納式アームの一部分を受容するのに適応した開口部を各々が有する一対の区画を更に具備する、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記筐体の長さと厚さの比が約15以上であって長さと幅の比が約1.6以上である、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
非格納位置での前記胸部用電極の間の距離が約10cmより大きい、請求項10に記載の装置。
【請求項20】
格納位置での前記アームの間の角度が約135度である、請求項10に記載の装置。
【請求項21】
患者の急性心臓事象リスクを自動的に評価する方法であって、
リスク因子を包含するリスク評価情報を前記患者から受理することであって、前記リスク評価情報がプロセッサにより受理されることと、
前記リスク評価情報に基づいて既存リスクスコアを記憶することと、
サンプル心電図(ECG)を前記患者から受理することであって、前記患者が、3リードモバイル心臓監視装置を使用して前記サンプルECGを自動記録し、現在症状表示を前記患者から受理することと、
前記サンプルECG及び基準ECGからのECGリスクスコアと、前記現在症状表示に基づく胸部痛リスクスコアとを前記プロセッサで判断し、前記ECGリスクスコアと前記既存リスクスコアと前記胸部痛リスクスコアとを使用して検査後リスクスコアを判断することと、
前記検査後リスクスコアに基づく診断レポート及び患者動作指示を前記患者に提示することと、を包含し、
前記3リードモバイル心臓監視装置は、
前面と背面とを有する筐体と、
2個の胸部用電極と、
2個の指用電極と、
両端部で前記筐体に旋回可能に装着される2本の格納式アームと、
を具備して、
前記2個の指用電極が前記筐体の前記前面又は前縁部に配設されて、前記2個の胸部用電極が前記格納式アームに配設され、
前記格納式アームが、非配備構成で前記背面と同一平面に格納されて配備構成で前記背面に対して角度を成して延在する、
方法。
【請求項22】
前記3リードモバイル心臓監視装置を前記非配備構成から前記配備構成へ配備することを更に包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルECGを受理する24時間以上前に、前記プロセッサで前記基準ECGを前記患者から受理することであって、前記患者がハンドヘルド機器を使用して前記基準ECGを獲得することを更に包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
更に、前記リスク因子が、年齢、総コレステロール、HDL、収縮期血圧、真性糖尿病ステータス、そして現在喫煙ステータスを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記リスク評価情報に基づく前記既存リスクスコアが、前記リスク因子の加重合計を計算することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記患者からの前記サンプルECGの受理が、第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する前記3リードモバイル心臓監視装置を前記患者が使用することを包含し、3本の略直交リードを獲得する少なくとも4個の電極をハンドヘルド機器が有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記患者からの前記現在症状表示の受理が、ハンドヘルド機器で選択可能な所定の症状リストから前記現在症状表示を選択することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記選択が、前記ハンドヘルド機器のユーザインタフェースから前記現在症状表示を選択することを包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ECGリスクスコアの判断が、高(H)、中(I)、又は低(L)であるリスクを表示することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記胸部痛リスクスコアの判断が、高(H)、中(I)、又は低(L)であるリスクを表示することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記検査後リスクスコアの判断が、前記ECGリスクスコアと胸部痛リスクスコアと既存リスクスコアとをインデックスとするルックアップテーブルを適用することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記ECGリスクスコアの判断に先立って、前記サンプルECGと前記現在症状表示とを受理するステップが反復される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、「小型3リードモバイル心臓監視装置(COMPACT MOBILE THREE-LEAD CARDIAC MONITORING DEVICE)」の名称で2019年5月13日出願の米国仮特許出願第62847308号の優先権を主張する。
【0002】
(参照による援用)
本明細書で言及される全ての公報及び特許出願は、個々の公報又は特許出願の各々が参照により援用されると明確かつ個別的に指摘された場合と同じ程度に、参照により本明細書にその全体が援用される。
【0003】
本明細書に記載の方法及び機器(例えばシステム、装置等)は、概ね心電図検査に関する。本明細書に記載されるのは、格納式電極を備える小型ハンドヘルド心電図(ECG)装置を含む機器及びシステムとこれらを使用する方法である。ECG信号の記録に加えて、これらの装置は、ECGデータを処理してハンドヘルドプロセッサ(例えばスマートフォン)へ送信する、及び/又は、患者に返送される、及び/又は、医療専門家に送信される診断情報の自動解析及び作成の為に遠隔コンピュータサーバへECGデータを送信し得る。
【背景技術】
【0004】
ハンドヘルドECG装置が提案されている。このような装置は、ECGを記録するのに患者(又は医療専門家)により使用され得る。しかしながら、今日まで、このようなハンドヘルド機器の潜在的な長所にも関わらず、広く使用されているものはない。これは一部には、ハンドル及び/又は数本のケーブルを含み得る装置案のサイズ及び重量が比較的大きく形状因子が複雑であることによるものである。付加的に、このような装置案の多くは、装置が使用中でない時に装置の外形から突出する部品を有する。それ故、広範囲の心臓状態の診断が可能であると共に、他方では小型でポケット又は財布での持ち運びが容易であるハンドヘルドECGの必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に記載されるのは、これらの問題に対処し得る機器及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポケット又は財布に滑り込ませることを含めて持ち運び及び取り扱いが容易であり得る小型で軽量のハンドヘルドECG機器を含む方法及び機器に関する。これらの機器は更に、人間工学的で使用が容易であり、様々な心臓病態の検出が可能である。
【0007】
例えば、本明細書に記載されるのは、ECGの自動記録の為のクレジットカード状3リードモバイル心臓監視機器である。これらの装置は小型であり、例えば、2cm以下(例えば、0.2と2.2cmの間、0.2と2cmの間等を含めて、1.9cm以下、1.8cm以下、1.7cm以下、1.6cm以下、1.5cm以下、1.4cm以下、1.3cm以下、1.2cm以下、1.1cm以下、1.0cm以下等)の保管構成での最大厚さを有する。これらの装置は取り扱いが容易であるのと同時に軽量であり、使用中でない時に持ち運びが容易であり、また様々な心臓状態の検出及び診断において効果的である。
【0008】
故に、本明細書に記載されるのは、ケーブルを使用せずに患者のECGを記録及び解析する為の小型ハンドヘルドECG装置である。幾つかの変形例で、クレジットカード状である(例えば比較的薄く、小径を有する。例えば、12cm以下(例えば11cm以下、10cm以下、9cm以下、8cm以下等)の最大直径を有する)。これらの機器はモバイル性が高く、3リード心臓監視を行うように構成され得る。機器は、患者の胸部と接触する為の2個の電極と、患者の指と接触する為の2個の電極とを含み得る。指用電極は装置の前部及び/又は側部に一体化され得る。
【0009】
例えば、装置が作動位置にある時に既定配向のユーザの両手により保持され得るように、そしてユーザの胸部に保持された時に直交3リード心臓信号を記録するように、4個の電極が前面に設けられて2本の旋回式アームの上にあり得る。直交リード記録の例は、参照により本明細書に全体が援用される国際公開第2016/164888号に記載されている。
【0010】
幾つかの変形例において、機器は、進行中の心臓事象に関連する症状を起こしている患者により操作されて、例えば一以上の心臓事象を検出するのに心臓ベクトルの差分ベクトル解析の一部として更に使用され得る心臓ベクトルを作成するのに使用され得る4個の一体的電極から略直交リードを獲得することにより、急性心筋梗塞(AMI)、心房細動、又は他の心疾患の自動的又は半自動的な検出及び診断の為に構成されるシステムと共に、又はその一部として使用され得る。患者の緊急状態を更に明確にする、例えば患者が心臓事象を起こしていると判断又は確認するのに、リスク因子情報と現在症状情報とを含む追加情報と共に、心臓差分ベクトルが使用され得る。
【0011】
3本の直交リードは、中心点を有する抵抗ネットワークを備えるか備えない多様な電極構成を使用することにより形成され得る。結果的に得られる3本のリードは、一般的に非同一平面上にあり、可能な限り直交に近い。
【0012】
幾つかの変形例で、機器(システム、装置等)は、メモリ(例えば抵抗器)に記憶され得る3本の直交リードによる第1集合の基準記録を実施し得る。診断記録中に、3本の直交リードによる第2集合が取得され、二つの集合の間の差分信号が判断され得る。ECG基準記録と診断記録と差分信号とのパラメータにより表される心臓記録信号は、内部プロセッサへ送信される、及び/又は、処理の為に遠隔プロセッサへ無線送信され得る。装置はまた、装置により診断情報を患者に伝える為に構成され得る。受信される診断情報は、特徴的な音、音声、グラフィック、又はテキストの形でユーザに提示され得る。
【0013】
例えば、機器は、前面及び/又は背面を有するプレート状の筐体を含み得る。筐体は、一般的なクレジットカードと同様のサイズ及び形状を有し得る。筐体は、その各側に配設される2本の旋回式アームを備え、電極を備える各アームは患者の胸部に関する信号を獲得し得る。アームは、非使用時、例えば輸送中に(例えば小型構成で)筐体の外表面と同一平面で嵌着するように、筐体に設けられたそれぞれの区画に格納され得る。
【0014】
更に、アームがばね付勢方式で筐体に対してロックされるように、格納位置に保持された時にアームを筐体にロックする為のロック手段をアームが具備し得る。アームは、格納位置からの解除の為にアームにばね付勢する為のバイアス(例えば弾性、ばね等)を備え得る。代替的に、折畳み構成で保持されるようにアームにバイアスが加えられてもよい。アームが展開された時にバイアスは付勢解除され得る。アームは折畳み構成でロックされ(そしてロックが解除された時にバイアスを受けて拡張し)得る、及び/又は、拡張構成でロックされ(そして幾つかの変形例では、ロックが解除された時にバイアスを受けて小型構成に折り畳まれ)得る。例えば、アームの各々と関連して当該のねじりばねが設けられるので、各ねじりばねの端部分はアームと筐体にそれぞれ支持される。
【0015】
旋回式アームは、それぞれの区画に後退した時に小型サイズとなる。展開された時に、アームは延出して間に角度を形成する作動位置となり、それ故、患者の胸部形態への適合が可能であり、関連の胸部用電極と患者の皮膚との間に良好な接触を設ける。配備(例えば作動)位置での胸部用電極の間の距離は10cmを超え得る。幾つかの変形例で、配備構成では、アーム及び関連の電極を筐体の縁部よりも延出させてもよい。
【0016】
幾つかの変形例で、装置は、筐体の前面及び/又は側面に配設される2個の手用電極を含み得る。例えば、これら2個の電極は、胸部用電極が患者の胸部の定位置にある時に患者の指が2個の電極に載せられるように、筐体の前面に配設され得る。こうして患者はECG記録の為に装置を充分に把持してこれを確実に保持することができるので有利である。
【0017】
幾つかの変形例で、これら2個の「手用」電極は、筐体の縦方向前縁部の対応の面取り部に配設される。こうして、筐体を胸部に保持するのに必要な圧力と共に、患者の指による容易なアクセスが可能である。手用電極は前面の横中心線に対してオフセットしているので、患者により左右の手の間で指が切り替えられるのを防止する為に、手用電極は記録中に患者の左腕に近くなる。
【0018】
幾つかの変形例で、手用電極は筐体の前面の陥凹部分に配設されて、手用電極を前面と同一平面に嵌着することを可能にする。幾つかの変形例で、装置は、2個の指用電極及び2個の胸部用電極に加えて、手用記録電極と同じように、指により押圧されるように接地電極が筐体の前面に配設される。
【0019】
例えば、本明細書に記載されるのは、第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置(例えば「小型」装置)である。装置は、前面と背面とを有する筐体と、2個の胸部用電極と、2個の指用電極と、両端部で筐体に旋回可能に装着される2本の格納式アームとを含み、2個の指用電極は筐体の前面又は前縁部に配設され、2個の胸部用電極は格納式アームに配設され、格納式アームは非配備構成では背面と同一平面で格納されて、配備構成では背面に角度を成して延在する。
【0020】
やはり本明細書に記載されるのは、本明細書に記載のように第1小型非配備構成と第2配備構成とを有するこれらの3リードモバイル心臓監視装置を使用する方法である。例えば、本明細書に記載されるのは、患者の急性心臓事象リスクを自動的に評価する方法であり、この方法は、リスク因子を包含するリスク評価情報を患者から受理することであって、リスク評価情報がプロセッサにより受理されることと、リスク評価情報に基づく既存リスクスコアを記憶することと、サンプル心電図(ECG)を患者から受理することであって、第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を使用して患者がサンプルECGを自動記録することと、現在症状表示を患者から受理することと、プロセッサにおいて、サンプルECG及び基準ECGからのECGリスクスコアと、現在症状表示に基づく胸部痛リスクスコアとを判断し、ECGリスクスコアと既存リスクスコアと胸部痛リスクスコアとを使用して検査後リスクスコアを判断することと、検査後リスクスコアに基づいて診断レポートと患者動作指示とを患者に提示することとを包含する。
【0021】
これらの方法のいずれかは、3リードモバイル心臓監視装置を第1小型非配備構成から第2配備構成へ配備することを含み得る。例えば、装置の配備は、保管区画から脚状部が自動的に延出するようにロックを解除することを含み得る。配備は、脚状部を胸部に保持することを含み得る。本明細書に記載の電極及び/又は脚部の構成は、接触強化、快適性、そして精度を提供し得る。装置の本体は胸部から離れて保持されるのに対して、電極はこれに適合できる。
【0022】
これらの方法は、サンプルECGを受理する24時間以上前にプロセッサで患者から基準ECGを受理することを含み、患者はハンドヘルド機器を使用して基準ECGを獲得する。リスク因子は、年齢、総コレステロール、HDL、収縮期血圧、真性糖尿病ステータス、現在喫煙ステータスを含み得る。幾つかの変形例で、リスク評価情報に基づく既存リスクスコアは、計算によるリスク因子の加重合計を包含する。
【0023】
サンプルECGの受理は、第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を患者が使用することを包含し、ハンドヘルド機器は、略直交3リードを獲得するのに少なくとも4個の電極を有する。現在症状表示の受理は、ハンドヘルド機器で選択可能な所定の症状リストから現在症状表示を選択することを包含し得る。これらの方法のいずれかにおいて、選択は、現在症状表示をハンドヘルド機器のユーザインタフェースから選択することを包含し得る。ECGリスクスコアの判断は、高(H)、中(I)、又は低(L)であるリスクを表示することを包含し得る。胸部痛リスクスコアの判断は、高(H)、中(I)、又は低(L)であるリスクを表示することを包含し得る。例えば、検査後リスクスコアの判断は、ECGリスクスコアと胸部痛リスクスコアと既存リスクスコアとをインデックスとするルックアップテーブルを適用することを包含し得る。ECGリスクスコアの判断に先立って、サンプルECG及び現在症状表示の受理ステップが反復され得る。
本発明の新規の特徴が以下の請求項に詳しく提示される。発明の原理が利用される例示的な実施形態を提示する以下の詳細な説明と添付図とを参照すると、本発明の特徴及び利点のより深い理解が得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】装置がECG記録の使用準備状態にある時の展開位置のアームを備える装置の正面不等角投影図を示す。
図2】装置が作動中でない時のように、アームが筐体の区画に格納された輸送位置にある装置の正面不等角投影図を示す。
図3】アームが格納位置にある装置の背面不等角投影図である。
図4】展開位置で後方から見たアーム及び区画の不等角投影図を示す詳細図である。
図5図4の縦断面不等角投影図を示す。
図6A】乃至
図6B】ECGを記録する為のプロトタイプ信号収集装置を図示する。
図7】本明細書に記載の信号収集装置を患者が使用する例である。
図8】信号収集装置を使用するシステムの動作を概略的に図示する。
図9A】本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を含む、AMIのような心疾患の検出の為の診断システムの概略構成の一変形例を示す。
図9B】第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を含む診断システムの別の概略図であり、プロセッサはハンドヘルド装置から遠隔位置にある。
図10】本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置内に2個の抵抗器を備える簡易抵抗ネットワークを介して両手の電極を接続することにより中心点CPを求める為の簡易電気方式を示す。
図11A】胴体で測定される3本の心臓リードの概略構成を示し、1本のリードは中心点を参照極として使用する。
図11B】3本の心臓リードの電気回路を示し、1本のリードは中心点を参照極として使用する。
図11C】胴体で測定される3本の心臓リードの概略構成を示し、2本のリードは中心点を参照極として使用する。
図11D】3本の心臓リードの電気回路であり、2本のリードは中心点を参照極として使用する。
図11E】乃至
図11G】2個の胸部用電極及び2個の手用電極の中で3本のリードを測定する為の三つの可能な構成の概略図を示す。
図12】本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を含む、AMIを検出する為の方法のフローチャートを示す。
図13】本明細書に記載の胸部痛リスク(CPR)を推定するのに使用され得るパラメータ問診リストを図示するテーブルである。
図14】本明細書に記載のAMIリスク評価方法の一例を図示するテーブルである。
図15】本明細書に記載のリスク及び治療アドバイスを患者に表示する一方法を図示するプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されるのは、胸部へのユーザ設置の為の小型(例えばクレジットカードのサイズ及び形状)3リードモバイル心臓監視装置を含み得る装置及びシステムを含む機器である。これらの装置は、3個の直交ECGリード信号の記録を可能にするように配置される4個の記録電極を有し得る。これらのハンドヘルド装置は、装置の筐体にヒンジ結合される旋回及び/又は後退可能なアームに配設される2個の胸部用記録電極を含み得る。装置は、筐体の前面及び/又は(面取り側面を含む)側面に配設されて左右の手の指からの心臓信号を収集するのに使用され得る胸部以外の為の2個の電極を含み得る。装置は、装置の前面に配設されて接地電極として使用され得る任意の第5電極も含み得るので、装置は4個の記録電極と1個の接地電極とを含む。
【0026】
本明細書に記載の機器は、例えば想定される心臓事象のケースで急性心筋梗塞(AMI)、心房細動(AFiB)、その他のような心臓状態の自動的遠隔診断に使用され得る。装置は、略直交性の3本の心臓リードを測定して、従来の12リードECGに存在する診断情報の大部分と共に患者のECG信号を記録する為のECG記録コンポーネント(例えば電極、回路構成、制御器)を格納するように構成される。
【0027】
図1乃至4は、本明細書に記載の装置(クレジットカード状のハンドヘルドECG装置)の一例を示す。装置は、長さ及び幅と比較して厚さが相対的に小さいプレート状の筐体を含み得る。筐体の形状は一般的なクレジットカードのものと類似し得るので、筐体の基部は標準的なクレジットカードとほぼ同じ長さ及び幅、例えば約6と10cmの間(例えば、約7と9cmの間、約7.5と9cmの間、約8.2と8.8cmの間、約8.6cm)の長さと、約4cmと約6.5cmの間(例えば、約5.4cmのように、約4.5cmと約6.5cmの間、約5と約6cmの間、約5.2と5.8cmの間等)をそれぞれ有する。平均すると、装置筐体は10mmより肉薄(例えば、約8mm以下、約7mm以下、約6mm以下、約5mm以下、約4mm以下等)であり得る。
【0028】
幾つかの変形例で、筐体10は、患者の手からの信号を収集する為の手用電極14と、筐体10にヒンジ結合される2本の旋回式アーム16とを備える面12(例えば前面)を有し、各アームは、患者の胸部からの信号を収集する為の胸部用電極18を備える。筐体10はプラスチック又は金属で製作され得る。
【0029】
付加的に、筐体10は、互いに反対にある2個の略柱状区画22が背面20の縦中心線上について対称的に配置されるように陥凹状態である面20(例えば背面)を有し、各区画22は前面の短縁部23に隣接して形成される。
【0030】
各区画は、底部24と、2個の側壁部26と、前壁部28とを有する。底部24に垂直である側壁部26と異なり、前壁部28は、好ましくは約45度の角度で底部24に対して傾斜しているので、区画22は底部から外向きに拡開している。
【0031】
区画22の底部24では、縦中心線上において、離間した2個の略矩形の開口部30,32が形成されている。近位開口部30は傾斜前壁部28に隣接しているのに対して、遠位開口部32は、開口端部を有するように前面12の短縁部に配置されている。側壁部26の遠位端部はピン34により接続されている。
【0032】
区画22に配設されたピン34を介して筐体10にヒンジ結合される2本の旋回式アーム16を区画22が受容し得る。テール部分36で各アームは一体形成スリーブ38を有するのに対して、スリーブ38と同軸になるようにアーム16に形成されるスロット42に、コイル状ねじりばね40が配設される。ねじりばね40は2個の径方向突出タング44,46を含む。第1タング44はアーム16と嵌合し、第2タング46は区画22内でピン34と嵌合する。アームが格納されると、第1タング44は第2タング46に対して角度を成して移動して、ばね40のねじり付勢を起こす。アーム16は、ばね40と共に締り嵌めでピン34に取り付けられる。各アーム16は当該のピン34を中心に旋回可能であるので、アームは、区画22に受容され得るか、約135度の角度を間に形成するように展開され得る。
【0033】
アームは、開放及び/又は閉止するようにバイアスを受け得る。例えば、2個のばねプランジャが、側面48に垂直にアーム16の内側に含まれ得る。プランジャは関連のシリンダ内で摺動変位可能であるので、ばねが付勢解除された時にプランジャの先端55は外向きになり得る。格納状態での側壁部26へのばね力によりアーム16を解除可能にロックして保持する為に、区画22の側壁部26に形成される対応のソケット56とプランジャの先端55が、バイアス(例えばばね付勢)方式で嵌合し得る。故に、この例で区画22の側壁部26とアーム16とは、留めばねを介して互いに付勢される。ばね力とソケット56の形状とが、ばね52を圧迫してプランジャの先端55をソケット56から解除することによりアーム16をロック解除するのに必要な閾値力を規定する。先端55とソケット56との協働は、ユーザによりポケット又は財布に格納された時にアーム16の確実な保持を保証する。
【0034】
アーム16が格納位置にある時に、区画22の形状と相補的に適合する段付き柱形状のアーム16を設けることにより、区画22へのアーム16の収容が可能になる。
【0035】
各アーム16は、胸部用記録電極18を収容する為の陥凹面61を形成する遠位端部においてテーパ状であるヘッド部分60を含む。アーム16が展開位置にある時に筐体の前面12及び背面20と平行になり、アーム16が格納位置で区画22に受容された時に区画の傾斜前壁部28と平行になるように、面61はヘッド部分60の上側63に対して約45度の角度で傾斜している。テール部分36の上側68がヘッド部分60の上側63よりも下方になるように、アーム16は段状である。
【0036】
アーム16のヘッド部分60は、アームが格納された時に区画22の矩形開口部30に受容される形状を持つ矩形の基部を有する。同時に、ヘッド部分60の上側63とアーム16の底側72とは、筐体10の前面12及び背面20と同一平面でそれぞれ嵌着する。この様に、使用されない時に最も小型サイズの装置が達成される。
【0037】
アーム16のヘッド部分60の上側63を押圧してアーム16を展開位置へ移動させることにより指の押圧で充分な圧力が発生されてアームをロック解除するように、区画22の底部24の開口部30は患者の指による前側からアーム16へのアクセスを可能にする。各アームのヘッド部分60の上側63は、視認性が低い時でも操作を可能にするように目立つ着色が施される。
【0038】
ソケット56と嵌合する前にプランジャの先端55を受容するのに適応した4個の半円形陥凹部73の各々が当該のソケット56の上に隣接して配置されるように、背面20に陥凹部73が設けられる。
【0039】
アーム16に配設される2個の胸部用記録電極18は、記録位置での患者の胸部と接触するのに使用される。アーム16が作動位置で展開されると、2個の胸部用電極18は頭尾方向に約10cmより大きい距離に及ぶように配置され得る。このような離間配置を設ける理由は、リード直交性を可能な限り達成するのに必要とされる心筋の概算直径より大きい距離を達成するので有利であるということである。
【0040】
加えて、アーム16を旋回させてこれを展開作動位置に移動させると、アームの間の角度が多様な身体形状の湾曲に応じたものになるので、患者の胴体の形態に関係なく患者の胸部との良好な接触を可能にする。
【0041】
幾つかの変形例によれば、2個の胸部用電極に加えて、装置は更に、指によるアクセスが容易であるように装置前面12の前方長縁部78の面取り部分76に配設される2個の手用記録電極14を含む。指用電極は、好ましくは患者の親指で押圧することにより左右の手の指から心臓信号を獲得するのに使用される。
【0042】
代替的な実施形態によれば、装置は、指で押圧されるように前面に配設されて接地電極として使用される第3電極を含み得る。指で押圧することにより、筐体10の前面12に取り付けられる胸部以外の為の電極では、装置を胸部に保持するのに充分な圧力が発生する。
【0043】
記録電極14,18は、患者の胸部及び指との効果的な把持を可能にして適所での装置の確実な保持を保証する球形突部を備える外形を持つ生体適合性プラスチック材料で製作される。動作の為に、ユーザ(例えば患者)は、各親指が1個の手用電極14と接触するように親指を含めて例えば両手で装置を胸部に配置及び押圧し、これにより胸部と装置との間に密着接触を発生させる為に胸部用電極18が胸部と接触する。これは装置を胸部に保持するのに充分な圧力を発生させ得る。
【0044】
装置の誤配置を防止するように、一実施形態によれば、非対称的な電極構成を設ける為に手用電極14は前面12の横中心線に対してオフセットしている。すなわち、記録中に、手用電極14が配設される前面12の側は患者の頭部を向いた配向を持つ。この様に、患者により装置の上側及び下側が容易に区別され得る。
【0045】
最適な記録位置で、胸部用電極がほぼ鎖骨中央線(鎖骨の中点を通る垂直線)上にあるように装置の中心は心臓の中心のすぐ上方に設置され、下方の胸部用電極はおよそ胸骨の下端部の高さにある。
【0046】
更に、代替実施形態では、手指によるアクセス及び接触が容易であるように、手用電極は、筐体の前方長縁部の面取り部分ではなく筐体の前面に配設されてもよい。左右の手の親指以外の指で押圧することにより左右の腕のECG信号を記録する為の電極は、前面と同一平面で嵌着するように、上述のように前方長縁部のテーパ状部分ではなく前面の陥凹部分に配設され得る。
【0047】
患者の胸部のECG信号を記録する為の活性記録電極は、上述したものと同じように装置の旋回式アームに配設される。記録位置で、胸部用電極は上に示されたのと同等のやり方で胸部に押圧される。
【0048】
別の代替実施形態では、指用記録電極を押圧することにより装置が胸部に押圧されるので、接地電極として機能する追加電極が空いている指のいずれかにより同時に触れられるように筐体の前面に配設され得る。接地電極は、装置を胸部に押圧して正確な記録を実施するのに必要な追加の力を発生させるように機能し、患者の指による効果的な把持を可能にして適所での装置の確実な保持を保証する球形突部を備える外形を持つ生体適合性プラスチック材料で好ましくは製作され得る。
【0049】
胸部におけるハンドヘルド装置の最適な位置は、心筋の中心のほぼ上方で胸部の左側に装置の中心が存在するというものである。この位置で、従来ECGのV4電極と同じように、胸部用電極はほぼ、鎖骨の中点を通る垂直線である鎖骨中央線上にあり、下方胸部用電極はおよそ胸骨の下端部の高さにある。
【0050】
本明細書に記載のハンドヘルド装置は、機械的に安定して胸部との良好な電気接触を可能にすると共に、指接触の切り替えの可能性を無くすように構成される。記録手順の間に装置を上下逆にして記録を無駄にするのを防止する為に、上側が頭部を向くのではなく患者のつま先を向くように、例えば、現在の記録段階を指示するLEDダイオードを装置筐体の前方上表面に一体化することにより、装置の上側又は前側がはっきりと識別される、及び/又は、患者による区別を容易にするように(マーキングを含めて)形成され得る。加えて、装置を上下逆にすると記録ミスにつながるので、装置の(頭部を向く)上部と(つま先を向く)下部とが容易に区別されるとよい。
【0051】
幾つかの変形例では、接地電極を備えない(例えば2個の胸部用電極と2個の指用電極とを有する)4個の記録電極の構成が使用される。この構成は、接地不要の信号増幅器構成が使用される場合に、許容範囲の50~60Hzの電気ノイズ性能を付与し得る。この記録電極構成は、高直交性という条件も満たし得る。この要件を満たす最も単純な手法は、三つの主な身体方向、つまり水平(左腕‐右腕)、矢状(前後)、頭尾(頭部‐つま先)で信号を記録することである。例えば、水平方向の信号は、左右の手の間のリードを測定することにより取得され得る。頭尾方向の信号は、心筋の概算直径より大きくする為に、胸部用電極の間の距離が少なくとも5cm、好ましくは約10cmより大きいという条件で、2個の胸部用電極の間のリードを測定することにより得られる。理想的なケースでは、矢状方向の信号は患者の背中と胸部との間で測定され、指用及び胸部用電極のみを使用するという制約により、これは可能でない。これを克服する為に、心臓電気中心に近い中点(CP)を設ける簡易抵抗ネットワークを使用する。ほぼ矢状方向にリードを記録する為に、2個の手用電極と2個の抵抗器とを使用して得られる中点(CP)について下方胸部用電極の電圧を記録する。2個の抵抗器が等しくて各々がほぼ5kOhm(kΩ)であるか、等しくなくて左手電極とCPとの間の第1抵抗器がほぼ5kOhm(kΩ)であると共に右手電極とCPとの間の第2抵抗器がほぼ10kOhm(kΩ)である。この非対称性は胴体において心臓が左側に位置することを反映しており、故に、心臓のほぼ電気中心にCPをシフトさせる。こうして、略直交性の3リードシステムが得られる。CPを含むか含まない他のリード構成も使用され得る。
【0052】
ハンドヘルド装置は、電極により検出された信号を増幅する為の増幅器及びADコンバータと、記録信号を記憶する為のデータ記憶回路構成(例えばメモリ)と、GSM、WWAN、又は遠隔プロセッサ(例えばPCコンピュータ、パッド、スマートフォン等)との通信の為の類似の遠隔通信規格で作動する通信回路構成、そして診断情報を視覚及び/又は聴覚出力の形でユーザに通信する為の回路構成(例えばスクリーン、スピーカ等)を含む心臓信号記録回路構成が組み込まれた独立型装置として構成される。
【0053】
特殊な電極構成を備えるハンドヘルド装置は、直交3リード心臓信号を配向固有方式で記録することと、これらの信号をプロセッサ(例えばPC又は他のコンピューティング装置)へ送信することとが可能である。遠隔プロセッサは、AMIを診断/検出して、診断情報をハンドヘルド装置へまた送信するように構成され得る。
【0054】
各ユーザは、3本の心臓リードによる自身の無症状時心臓記録の初回送信を実施することにより診断システムに登録され得る。この初回記録は、診断記録におけるAMI検出の為の参照基準記録として使用され得る(診断記録は、同じユーザの3本の心臓リードの更なる記録を意味する)。参照基準心臓記録の有用性により、新旧のST上昇型(STE)又は同等のパラメータと、AMIを示唆する他の心臓信号変化を区別し、人によるECG解釈に匹敵する診断精度を有し得る自動AMI検出の為のツールを提供することも可能である。
【0055】
遠隔プロセッサは、受信した心臓信号を処理して診断情報を生成する為と、患者に診断情報を伝える為にハンドヘルド装置にまた情報を送信する為の診断ソフトウェアを装備し得る。装置は3リードシステムに基づく心臓状態の自動検出を実施することが可能であり、処理後の診断情報を専門家が解釈する必要がない。
【0056】
信号処理及び診断ソフトウェアは、記録された心臓信号を処理して診断情報を生成する為にハンドヘルド装置の筐体に一体化されるプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)でも機能し得る。遠隔プロセッサにより診断処理が行われる時には、マイクロプロセッサで機能するソフトウェアのバックアップバージョンがハンドヘルド装置に一体化され、無線ネットワークサービスエリア外のゾーンでユーザが使用するという状況で使用され得る。
【0057】
装置は、通信集積回路を介して遠隔プロセッサと通信し得る。遠隔プロセッサは一体化された通信モジュールを介してハンドヘルド装置と通信し得る。生成された診断情報は、商用通信ネットワークを介して遠隔プロセッサ(例えばPCコンピュータ、サーバ等)から装置メモリへ送信され得る。ハンドヘルド装置は、特徴的な音や音声メッセージを発するマイクロフォンを介した特徴的な音を介して、或いは装置に一体化されたディスプレイを介したグラフィック情報の形で、診断情報を患者に伝え得る。
【0058】

本明細書に記載の装置は、信号収集装置と呼ばれ得る。図6A乃至6Bは、小型構成(図6A)と胸部用電極が配備された配備構成(図6B)とで示された例示的な信号(ECG)収集装置のプロトタイプを図示している。
【0059】
幾つかの変形例では、患者がサブスクリプションプランにサインするか、心臓事象の症状を示してECGを記録している間には医師、保険業者等によりサインされるサブスクリプションサービス(例えば、x$/月のリカーリングサービス)の一部として、装置が使用され得る。システムは、患者に直接、及び/又は、患者と連絡し得る医師に、レポートを提供し得る。出力(例えば患者又は医師のレポート)はアドバイス(ERに行く、医師を呼ぶ等)を含み得る。幾つかの変形例において、レポートは、リスク因子と共に、心臓ベクトルの解析、及び/又は、(心臓ベクトル/直交リードから発生される合成ECGを含む)ECG表現を含み得る。幾つかの変形例で、レポートから、心臓事象の可能性を表す高、低、中(その他)の指示が得られる。
【0060】
代替的に、レポートが完全に自動化され、システムは、(心臓事象が見られると患者が疑っている時に)急遽測定される心臓ベクトルと、(例えば、システムによる入念な検査で心臓事象が見られない時に患者から測定される)基準心臓ベクトルとの間の差分比較に基づいてスコアを作成する。システム解析エンジンはスコアを作成し、ハンドヘルド信号収集装置、及び/又は、ハンドヘルド信号収集装置と関連するモバイル装置(例えばスマートフォン)のいずれかへ、患者に直接これを送る。
【0061】
故に、本明細書に記載の機器のいずれかは、信号収集装置の一部、及び/又は、信号収集装置との通信状態にあるモバイル装置(例えばスマートフォン)の一部のいずれかであるソフトウェア又はファームウェアを含み得る。例えば、本明細書に記載されるのは、信号収集装置及び/又はモバイル通信装置のプロセッサを駆動し得ると共に、信号収集装置を作動させて患者データ(例えばリスク因子)を収集し、患者とサブスクリプション契約し、患者が信号収集装置を使用して一以上のECGを収集し、ECGと関連するユーザ症状データを収集する、及び/又は、解析結果をレポートする為のユーザインタフェースを提供し得るアプリケーション(例えば「アプリ」)である。アプリケーションは、信号収集装置と、患者ECGデータ、リスク因子、そして他の関連データを解析及び記憶する為の遠隔サーバ(例えばクラウドベースのサーバ)との間で確実な通信を行い得る。
【0062】
例えば、幾つかの変形例で、患者は、信号収集装置を使用してECGを取得するのにアプリを使用し得る。患者はアプリを起動し、新たな記録(基準又は検査/症状ECG)を選択し、アプリによりユーザは記録を検索し得る。信号収集装置は、幾つかの変形例で、アプリを動かすモバイル通信装置と(例えば、何らかの無線技術、特にブルートゥース(登録商標)等を含む無線パーソナルエリアネットワークを介して)無線通信し得る。初期化されると、アプリは信号収集装置を探して自動的にこれを起動させ(そしてその後で停止させ)、信号収集装置とアプリのいずれか(又は両方の組み合わせ)が皮膚接点を検出し、胸部用及び指用電極からの記録を開始し得る。(左手及び右手用電極と共に胸部用電極の一つ、例えば下方胸部用電極との間の抵抗ネットワークの中心点から導出されるバーチャル矢状リードを含む、3本のリード全てからの)記録信号は、充分に低いノイズと収集データの品質と適合させる処理を含めて、信号収集装置及び/又はアプリケーション(例えばスマートフォン)で処理され得る。記録信号は使用時に信号収集装置及び/又はモバイル通信装置に記憶され、後で遠隔サーバへ送信され得る。信号収集装置は記憶装置を含み得る、及び/又は、信号が患者のスマートフォンに記憶されてから、解析処理の為に遠隔サーバ(例えばクラウド)へ送信され得る。
【0063】
概して、解析は基準の解析を含み得る。基準ECG(例えば基準心臓ベクトル)は、患者が最初に機器についてサブスクリプション契約及び/又は購入を行う時に取得され得る。基準信号はシステムにより入念に検査され得る。例えば、幾つかの既定の「正常」パラメータ範囲にあることを確認するように基準信号が検討され得る。例えば、信号収集装置の3本の直交リードから判断される基準心臓ベクトルの差分ベクトル解析を行うことにより、患者の基準信号が判断され得る。多数の基準測定が行われて平均が求められるか、最良のものが選択され得る。例えば(同時的な未検出の心臓事象を含む)何らかの理由で不規則な心臓ベクトルを有するので基準が予想パラメータ内に含まれないと、不適格候補として患者が却下され得る。システムは、更新済み基準信号を提供するように周期的にユーザに促し得る。
【0064】
幾つかの変形例で、アプリケーションソフトウェアは、基準心臓ベクトルが充分であるか否かを表し得る信号(例えば、QCエージェント、ソフトウェアエージェント等)をチェックする品質制御(QC)を行い得る。これはリアルタイムで行われ、信号収集装置とモバイル通信装置(例えばスマートフォン)のいずれか又は両方で、及び/又は、遠隔サーバで行われ得る信号品質チェックの両方を含み得る。QCエージェントは信号の明瞭性を追求し得る、及び/又は、患者が心臓発作を起こしていないことも確認し得る。これは最終レベル品質チェックの一部であり得る。
【0065】
アプリケーションソフトウェア/ファームウェアは、患者からリスク因子も獲得し得る。これはサブスクリプション契約の時点で行われ得ると有利である。患者は一連の問診を提示され得る、及び/又は、心臓疾患(例えば心臓発作等)と関連するリスク因子を表す電子医療記録へのアクセスを行い得る。情報は、患者固有情報(年齢、性別、体重、身長、民族性、コレステロールレベル、血圧等)を含み得る。問診には順序及び重みが付けられる。最低限のリスク因子情報(例えば、年齢のみ、年齢と性別のみ等)の入力が許可されてもよい。最低限の情報も入力されない場合に、患者はサブスクリプション契約を許可されない。
【0066】
上述のように、アプリケーションは、アプリ内で、又はアプリなしで(遠隔サーバから)メッセージ(SMS/テキストメッセージ)を送ることにより、周期的に(例えば、毎週、隔月、毎月等)基準を更新するように患者に促し得る。
【0067】
使用時に、患者はアプリを使用して、(例えば、心臓事象と関連する症状が見られるか、或いは心臓事象のリスクを感じている時に)検査する為に、或いは例えば有症状時又は無症状時の基準を更新する為に、ECG記録を開始し得る。ユーザは、どのタイプの記録が行われるかを最初に指示し得る。症状が見られると患者が指摘する場合に、アプリはECG記録及び解析を促進して、可能な限り迅速にリアルタイム応答を提供し得る。ユーザがアプリを開始して、有症状時ECG解析が行われることを希望するとユーザインタフェースから指示した後に、システムは、心臓ベクトルを提供する3本の直交リードの記録を行い得る(そしてQCエージェントを使用して、二以上の記録を取得し得る)。この記録が最初に局所的又は遠隔的に(例えば、信号収集装置ではスマートフォン/アプリ、及び/又は、遠隔サーバで)検討されて、心臓事象が発生する可能性があることを直近の心臓ベクトルが表すかどうかを判断し得る。(基準心臓ベクトルと比較した)心臓ベクトルの差分ベクトル解析に基づくと、そして幾つかの変形例では、記録された患者固有のリスク因子と併せて、カットオフ閾値を尤度が上回る場合には、例えばアプリを通して、或いは(例えば電話等で)直接連絡して治療を求めることにより、患者は即座に指示を受ける。幾つかの変形例で、医療専門家は直接連絡を受け得る。予備解析スコアが閾値を下回る場合に、箇所、期間、及び/又は、痛みの強度、痛みのタイプ、痛みの鋭さ等のように付加的な症状情報を提供するように患者が促され得る。症状情報はアプリで収集されて遠隔サーバへ送信され、遠隔サーバは、この情報を患者リスク因子及び差分心臓ベクトル情報と組み合わせて、患者及び/又は医療専門家に送られる最終スコアを作成する。スコアが閾値を上回って心臓事象の可能性を示す場合に、患者は即座に治療を受けるように指示され得る、及び/又は、医療的介入が行われるように自動的に連絡され得る。スコアが中間範囲内にある場合に、患者は、医療提供者によるフォローを受けるべきであると指示され得る。スコアが低確率範囲内にある場合には、これも患者に通知され得る。中間又は低スコアについては、アプリにより調整され得る所定の時間量(例えば10分、20分、30分等)にわたってフォローアップ解釈を行うように患者が指示され得る。
【0068】
代替的に幾つかの変形例では、レポートが医師に送られて、医師は、リスク因子及び症状を含む結果を手作業か半手作業で解釈して、アプリ経由を含めて患者に直接連絡し得る。
【0069】
図7は、信号収集装置703を胸部に保持している患者700の一例を図示している。信号収集装置は、延出時に10cm以上離間して(図のように垂直に配置された)胸部と接触する一対の延出可能/旋回胸部用電極709,711を含む、一方の707は左、一方の705は右にある2個の指用電極は、電気接触を完成させて、図のように小型軽量の装置を胸部に保持するのに使用される。これらの接触により、(指用電極の間、胸部用電極の間、そして指用電極の間の抵抗ネットワークの中心点と胸部用電極の一方との間での)高直交性の3本のリードが判断され得る。信号品質を確認する為のアプリ(ソフトウェア又はファームウェア)を含み得る、及び/又は、付加的な記録を行い得るモバイル通信装置(例えばスマートフォン)と、装置が無線通信し得る。アプリは、視覚、聴覚、触覚、又はこれらの何らかの組み合わせにより、記録が行われたことを示す。図8に概略的に示されているように、記録は遠隔サーバへ送信され得る。
【0070】
図8は、心臓ベクトルを正確に規定する3本の直交リード804を判断するのに使用され得る信号収集装置800を含むシステムの例を概略的に図示し、この信号を処理する、及び/又は、信号の品質を確認し、信号を記憶する、及び/又は、遠隔サーバ810へ送信し得る患者のモバイル遠隔通信装置806(例えば、電話、iパッド、ウェアラブル電子機器等)へ、この信号が送信され得る。遠隔サーバは、患者と(例えば、また患者のモバイル遠隔通信装置と)、或いは監視サービス及び/又は医師(不図示)と通信し得る。
【0071】
本明細書に記載のこの方法及び機器は、「3リードモバイル心臓監視装置及び自動診断方法(MOBILE THREE LEAD CARDIAC MONITORING DEVICE AND METHOD FOR AUTOMATED DIAGNOSTICS)」の名称で2015年4月9日出願の米国仮特許出願第62/145,431号の優先権を主張する「3リードモバイル心臓監視装置及び自動診断方法(MOBILE THREE LEAD CARDIAC MONITORING DEVICE AND METHOD FOR AUTOMATED DIAGNOSTICS)」の名称で2016年4月11日出願の米国特許出願第15/096,159号と共に使用され得る(そしてこれに対する改良であり得る)。これらの出願は、参照によりその全体が本願に援用される。
【0072】
例えば、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、心臓状態の自動的遠隔診断に使用され、これらの改良型ハンドヘルド心臓機器を使用する自動診断方法を含み得る。これらの方法及び機器は、三つのリスク要素、つまり患者のリスク因子に関連する既存リスクと、現在症状リスクに関連する胸部痛リスクと、記録された心臓信号とに基づいてリスクスコアリングモデルを具現し得る。これらの方法及び機器は、3本の直交心臓信号リードに加えて、リスク因子と現在症状とを追加入力として使用するので、AMIばかりでなく、狭心症のような他の心臓症状が検出され得る。加えて、例えば測定干渉により心臓信号記録が低い確度及び精度を有する事例では特に、手動入力される患者関連データを使用して心臓診断の正確な設定を提供し得る。故に、重篤な心臓状態の自動的診断ばかりでなく高確度の診断を可能にすることにより、本明細書に記載の方法及び機器は現在の解決法の動作を向上させ得る。方法及び機器は、データ獲得、データ処理(例えばスコアリングモデルの適用)、そして心臓状態についての診断情報の患者への送信を含むように構成され得る。症状が現在進行中のAMIに関連する状況或いは類似の状況において、患者関連データ(例えば既存リスクと現在症状リスクデータ)の入力と、患者による心臓信号の記録と、前に記憶された心臓リスク関連データを検索することとを可能にするハンドヘルド装置として構成される機器において、この方法が実施され得る。これらのシステムのいずれも、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を含み得る。これらのシステムは、患者の心臓リスク因子データと現在症状データとをテキスト形式で入力する為のユーザインタフェースと共に、患者の心臓リスク因子データを記憶する為のメモリも含み得る。獲得されると、データは遠隔プロセッサへ送信され得る。プロセッサは診断情報を患者に提供して診断情報をまたハンドヘルド装置へ送信するように構成され得る。患者は、受理した情報に基づいて、救急医療の要請のように更なるアクションを取ることを決定する。ハンドヘルド装置は、特徴的な音、音声メッセージ、又はグラフィカルディスプレイを介して診断情報を患者に伝え得る。プロセッサは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、その他を介して構成され、受理した信号を処理して差分信号を生成してAMIの検出に関連する情報を確実に抽出し得る。
【0073】
例えば、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、心臓症状が発生した時に患者により操作されるように構成され得る。装置は、患者の心臓リスク因子についてのデータ及び他のデータを記憶する為の記憶装置(例えばメモリ)と、患者の心臓信号を記録する為の心臓信号記録コンポーネント(例えば電極、回路構成、制御器)を含み得る。記録コンポーネントは、上述したようにボヨヴィッチその他(Bojovic et al.)による国際公開第2016/164888号に開示されているものと類似であり得る。グラフィカルユーザインタフェース(例えばタッチスクリーン又はスクリーンとキーボード等)を備える装置を装備することにより、患者関連データ(リスク因子及び現在症状)が入力され、診断メッセージが患者に伝えられ得る。診断情報もまた、或いは代替的に、スピーカを介し、特徴的な音又は音声メッセージを通して患者に伝えられ得る。通信は、スマートフォン又はタブレット等のような独立ユーザ操作装置に有線又は無線接続を介して発生し得る。
【0074】
上述のように、第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、2個の胸部用電極と2個の非胸部用(指用)電極を使用して、3本の略直交心臓信号リードを記録するように構成され得る。幾つかの電極構成では、装置の表面のどこかに一体化される接地電極を装置が有し得る。
【0075】
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、3本の直交心臓リード信号を記録する為の様々な電極構成を有し得る。一実施形態において、ハンドヘルド装置は、2個の胸部用記録電極と、装置の左側の1個の指用記録電極と、装置の前側の1個(又は幾つかの変形例では2個)の指用電極と、1個の記録及び1個の接地電極とを有する。胸部におけるハンドヘルド装置の最適位置は、心筋の中心のほぼ上方で胸部の左側に装置の中心があるようなものである。この位置で、従来ECGのV4電極と同じように、胸部用電極はほぼ、鎖骨の中点を通る垂直線である鎖骨中央線上にあり、下方胸部用電極はおよそ胸骨の下端部の高さにある。
【0076】
(例えば2個の胸部用電極と2個の指用電極とを有する)4記録電極構成は、例えば、三つの主な身体方向、つまり水平(左腕‐右腕)、矢状(前後)、そして頭尾(頭部‐つま先)で信号を記録することにより、高直交性の条件を満たし得る。例えば、左腕と右腕との間のリードを測定することにより水平方向の信号が取得され得る。心筋の概算直径よりも大きくなるように、頭尾方向での胸部用電極の間の距離が少なくとも5cm、好ましくは約10cmより大きい状態で2個の胸部用電極の間のリードを測定することにより、頭尾方向の信号が取得され得る。理想的なケースでは、患者の背中と胸部との間で矢状方向の信号が測定され、これは1個の指用電極と胸部用電極のみを使用するという制約下では可能ではない。これを克服する為、心臓電気中心に近い中心点(CP)が簡易抵抗ネットワークに設けられる。ほぼ矢状方向のリードを記録する為に、2個の手用電極と2個の抵抗器とを使用して取得される中心点(CP)について下方胸部用電極の電圧を記録する。2個の抵抗器は等しく各々がほぼ5kOHMであるか、等しくなく、左手用電極とCPとの間の第1抵抗器がほぼ5kOHMであり、右手用電極とCPとの間の第2抵抗器がほぼ10kOHMである。この非対称性は胴体において心臓が左側位置にあることを反映しており、故にほぼ心臓の電気中心にCPをシフトさせる。この様に、略直交性の3リードシステムが得られる。
【0077】
同じCPを含む他の類似のリード構成は、2個の胸部用電極と2個の手用電極との同じ集合を使用して選択され得る。例えば、CPの参照極によりリードを記録するのに両方の胸部用電極が使用される時には、このようなリード構成は略直交性であり得る。CPを規定する別の可能性は、2個の手用電極と1個の胸部用電極という3個の電極と、Y(星形)構成で接続された3個の抵抗器とを使用することである。
【0078】
左手用電極信号に対する2個の胸部用電極及び右手用電極の信号を記録する構成のように、CPを含まない他のリード構成も使用され得る。抵抗器又はCPを備えていないこのような構成は、例えば50~60Hz電気ノイズに対するノイズ耐性が高いが、CPを使用する記載の構成よりも直交リード方向の直交性は低い。概して、記載されたものと同じ4個の電極を使用する他の何らかのリード構成(CPを備えない合計20個の構成)は非同一平面上にあって故に3方向全ての診断信号を捕捉するリードが得られるが、高度な直交性は欠如し得る。しかしながら、これらの構成は、右手用電極の使用に応じて、異なるレベルの直交性を有し得る。右手用電極を3本のリード全てに共通の参照極として使用する構成は、右手用電極が4個の電極のうち心臓から最も遠く、故に3本のリードに対応するベクトルの間の角度が最小であるので、最も低い直交性を有し得る。しかしながら、直交性が最低のこの構成は、非双極子コンテンツが小さいので、3本リード信号に基づいて12リードECGを再構築するのに最適である。それにも関わらず、この構成を使用して得られる信号は、12リードの再構築を含めても含めなくても使用され得る。
【0079】
装置の裏側に一以上の胸部用電極が追加される場合には、記載の解決法の有効性は影響を受けず、一以上の対応の追加リードが診断アルゴリズムで記録及び使用される。また、前方電極が指ではなく手のひら又は手の他の部位に押圧される場合にも、有効性は影響を受けない。
【0080】
例えば、本明細書に記載の機器は、急性心筋梗塞(AMI)、心房細動(AFib)、その他のような心臓状態の遠隔診断に使用され得る。特に、本明細書に記載されるのは、配向固有方式で3本の直交心臓リード信号を記録してこれらの信号をプロセッサ(例えばPC又は他のコンピューティング装置)へ送信することを可能にする特殊な電極構成を備えるハンドヘルド装置である。プロセッサは、AMIを診断/検出して診断情報をまたハンドヘルド装置へ送信するように構成され得る。ハンドヘルド装置は、特徴的な音、音声メッセージを介して、又はグラフィカルディスプレイを介して、診断情報を患者に通信し得る。プロセッサは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、その他を介して構成され、受信した信号を処理して、差分信号を生成し、AMI(及び臨床的関連の追加情報)の検出に確実に関連する情報を抽出し得る。故に、これらの機器及び方法は、12L ECG再構築の必要性を伴わずに3リードシステムに基づいて心臓状態の自動検出を実施して、一般的にはこのような決定について医療従事者に依存する先行技術システムとは異なり、医療従事者がECGを解釈する必要性を低減又は解消する。本明細書に記載の自動診断方法は、改良型ハンドヘルド心臓装置との組み合わせで、他のシステムに存在する必要性及び問題の多くに対処する。
【0081】
明確に記すと、本明細書に記載されるのは、前後の両方への(或いは変形例では、一以上の側面、例えば前方傾斜側面への)電極の配置を含む胸部へのユーザ設置の為の3リード心臓記録装置であるので、ユーザの胸部に保持された時に3本のリード心臓信号を記録するように既定配向のユーザの両手により装置が保持され得る。上に記載の機能を果たす為に、ハンドヘルド装置はケーブルを使用せずに3本のリードを記録し得る(例えば、身体に保持されるか保持される表面電極のみを含み得る)。更に、その結果得られる3本のリードは非同一平面上にあって、可能な限り直交に近い。最後に、少なくとも一つの電極が胸部側とは反対の装置の前部(及び/又は傾斜側面)に取り付けられて、装置を胸部に保持するのに必要な力を発生させ得る。本明細書に記載の機器及び方法は、測定された3本のリードからの12L ECGの再構築を必要としないので、低い非双極子コンテンツという要件は生じない。
【0082】
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成の装置を有する3リードモバイル心臓監視装置は、機械的に安定しており胸部との良好な電気接触を許容すると共に、指の接点の切り替えの可能性を回避するように構成される。ハンドヘルド装置は、装置の中心が心筋の中心のほぼ上方で胸部の左側にある状態で胸部に配置され得る。この位置で、従来ECGのV4電極と同じように、胸部用電極はほぼ、鎖骨の中点を通る垂直線である鎖骨中央線上にあり、下方の胸部用電極はおよそ胸骨の下端部の高さにある。水平方向の信号は左右の手の間のリードを測定することにより取得され得る。心筋の概算直径より大きくなるように、頭尾方向での胸部用電極の間の距離が少なくとも5cm、好ましくは約10cmより大きい状態で、2個の胸部用電極の間のリードを測定することにより頭尾方向の信号が取得され得る。理想的なケースで、矢状方向の信号は患者の背中と胸部との間で測定され、これは指用及び胸部用電極のみを使用するというという制約下では可能でない。これを克服する為に、簡易抵抗ネットワークを使用して、心臓電気中心に近い中点(CP)を設ける。ほぼ矢状方向でのリードを記録する為、2個の手用電極と2個の抵抗器とを使用して取得される中心点(CP)について下方の胸部用電極の電圧を記録する。2個の抵抗器は等しくて各々がおよそ5kΩであるか、等しくなく、左手用電極とCPとの間の第1の抵抗器がおよそ5kΩであって、右手用電極とCPとの間の第2抵抗器がおよそ10kΩである。この非対称性は胴体で心臓が左側位置にあることを反映し、故に心臓のほぼ電気中心にCPをシフトする。こうして、略直交性である3リードシステムが得られる。
【0083】
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、増幅器及びADコンバータと、データ記憶モジュールと、GSM、WWAN、又は遠隔プロセッサ(例えばPCコンピュータ、パッド、スマートフォン等)との通信の為の類似の遠隔通信規格で作動する通信モジュールと、診断情報をユーザに伝える為の回路構成(例えばWi-Fi、ブルートゥース等)とを含むECG記録モジュールが組み込まれた独立型装置として構成され得る。代替的に、これはモバイルフォンと併せて実現され得る。
【0084】
信号処理及び診断ソフトウェアは、遠隔プロセッサ(例えばPCコンピュータ)で機能するのではなく、ハンドヘルド装置に一体化されたプロセッサを含むプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)でも機能できる。このケースでは、データ及び処理のバックアップを除いて、遠隔コンピュータへの記録情報の通信はもはや必要ない。また、遠隔プロセッサにより診断処理が行われる時には、マイクロプロセッサで機能するソフトウェアのバックアップバージョンがハンドヘルド装置に一体化され、無線ネットワークサービスエリア外のゾーンにユーザがいるという状況で使用され得る。
【0085】
やはり本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を使用するAMI(又は原因となる生理学的プロセスである虚血)の自動検出の為の方法及び機器である。これらの自動システムは、略直交性であって従来の12リードECGに存在する診断情報の大部分を格納する3本の心臓リードを含む。各ユーザは、3本の心臓リードによる自身の無症状時心臓記録の初回送信を実施することにより、診断システムに登録され得る。この初回記録は、診断記録のAMI検出の為の参照基準記録として使用され得る(診断記録は、同じユーザの3本の心臓リードの更なる記録を意味する)。参照基準心臓記録の有用性により、新旧のSTセグメント上昇型(STE)又は同等のパラメータを区別することが可能であり、他の心臓信号変化もAMIを示唆し、人によるECG解釈に匹敵する診断確度を有し得る自動AMI検出のツールが得られる。
【0086】
一例において、基準位置と比較して異なる位置にユーザが装置を設置し、これが診断確度を損なうことがある。この誤設置は、3本の心臓リードにより規定される3Dベクトル空間での心臓電気軸のバーチャル変化に等しい。幾つかの変形例では、この角度変化が各検査記録について計算されて基準記録と比較され得る。角度変化が15度のように閾値より大きい場合には、基準位置に近い位置を選択するようにユーザが警告され得る。変化が閾値より低い場合には、3Dベクトル空間での検査記録の信号ループを回転させて、基準信号と略同等の信号を得ることにより、これが補正され得る。
【0087】
AMI(又は虚血)の自動検出の為の方法は、幾つかの変形例では以下のステップ。ユーザ胸部の記録位置に装置を設置するステップ。本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置を使用して最初の3リード心臓記録を獲得し、信号を処理ユニットに通信するステップ。何らかの後続の診断記録との更なる比較の為に処理ユニットのデータベースに第1記録を基準記録として記憶するステップ。3リード心臓診断記録を獲得して信号を処理ユニットへ通信するステップ。結果として得られる信号を処理するステップ。記憶された基準信号と診断記録の信号との処理ユニットによる処理は以下のステップを含み得る。電力線干渉、基準変動、筋肉ノイズを除去する前処理を行うステップ。基準点及び平均心拍数の手順を使用して典型的心拍数を取得するステップ。左右の指の切り替えをチェックするステップ。対応の点が同期化されるように基準及び検査記録の典型的心拍数を同じ時間枠に入れる心拍アライメントを行うステップ。3本心臓リードのベクトル空間での心臓電気軸偏差を補正することにより検査信号の記録における胸部用電極の誤配置を補正するステップ。基準及び診断の三つの心臓リード信号の間の変化を表す差分信号を計算するステップ。検査記録のパラメータを基準記録と比較することにより、或いは差分信号のパラメータを既定の閾値と比較することにより、虚血を示唆する心臓信号変化を検出するステップ。処理ユニットにより装置へ情報を通信するステップ。そして最後に装置により患者へ診断情報を伝えるステップ。
【0088】
STEは、通常はJ点で、又は80ミリ秒後までに測定される、虚血のケースで最も一般的なECG変化である。STEをパラメータとして使用して、検査記録のSTEを基準記録と比較することにより虚血変化が検出され得る。また、基準記録を参照値として、3本の特殊な心臓リードにより規定されるベクトル空間でのSTベクトルのベクトル差分(STVD)を測定することにより、虚血変化が検出され得る。上述したように、これらのパラメータ(例えばST,J,STVD,STE)は旧来の12リードECG信号について規定されるものであるが、本明細書に記載の3本の心臓リード(直交信号)について判断されるものと同等の尺度を指す。故に、これら同等の点、領域、又は現象(例えばSTE,ST,J,STVD等)は、本明細書に記載の心臓信号と、旧来の12リードECG信号を含む旧来のECG信号との比較により、識別され得る。
【0089】
JとJ+80ミリ秒の点の間のベクトル信号ホドグラフを包囲する球体の半径として定義される「クリュー」のような基準参照信号との比較には、心臓信号の他のパラメータも使用され得る。
【0090】
個人についての心臓信号は、その形状に関する限り非常に反復性が高い。信号形状の変化は健常者つまり安定状態にある個人については概して小さい。例えば、胸郭に対する心臓の位置の変化は心臓電気軸を10°まで変化させ得る。しかしながら、両性早期再分極(BER)により引き起こされるSTEのように、信号形状が経時的に変化する状態が見られる。このような信号変化は非常に個人的であり重大であり得る。このような変化を補正する為に、ユーザにより経時的に取得される幾つかの基準記録は、(単一の基準記録が使用される時の単一点ではなく)3本の特殊な心臓リードにより規定されるベクトル空間で3D外形を形成する参照値を形成するのに使用され得る。このような3D外形参照値を使用する際に、STベクトル差分(STVD)は、基準STベクトルからではなく3D外形からの距離として定義され得る。虚血検出に二以上のパラメータが使用される場合に、このような参照外形は、このようなパラメータにより規定される多次元パラメータ空間での超曲面として構築され得る。このケースで、参照超曲面からの超距離はこのパラメータ空間内で規定される。
【0091】
幾つかの状態で、ブルガダ症候群、WPW症候群、索枝ブロック(BBB)等のように、信号形状変化は断続的(状態が「去来」する)であってもよい。このような状態での信号変化を補正する為、参照値を規定するのに、一方は正常信号を伴う、一方は断続的状態が存在する二つのグループの基準記録(例えば少なくとも二つの記録)が使用され得る。これら二つのグループはベクトル空間に二つの3D外形を形成し、比較の為の参照値を形成する。これら二つの3D外形は重複してもしなくてもよい。重複が見られない場合には、STベクトル差分(STVD)は二つの3D外形上の最も近い点からの距離として規定されるだろう。AMI/虚血検出に二以上のパラメータが使用される場合には、このような参照外形は、このようなパラメータにより規定される多次元パラメータ空間での二つの超曲面として構築され得る。このケースで、参照超曲面からの超距離はこのパラメータ空間内で規定される。
【0092】
本明細書に記載の方法の主な使用は、最も至急の心臓診断―AMIの検出に適用され得る。付加的に、遠隔プロセッサ(又はハンドヘルド装置の一体化プロセッサ)での診断方法(例えばソフトウェア)は、慢性冠状動脈疾患(CAD)、左室肥大(LVH)、索枝ブロック(BBB)、ブルガダ症候群、心房細動(AF)等のような心拍障害等、他の心臓状態を検出できる。
【0093】
本明細書に記載の方法は従来の12リードECG記録の再構築を必要としないが、再構築に使用されてもよい。検出される上述の状態の多くでは、AMIと比較すると程度は低いが、至急の治療が必要とされ得る。また、このような状態の多くは一過性であり、本明細書に記載の技術を使用して検出され得るが、後でユーザが診療所を訪れた時には存在しないことがある。このようなケースでは、記録の時点で発見された状態についてのECG信号を提示すると有益であるので、医師はこれを使用して診断を確認し得る。医師は従来の12リードECG記録を熟知している。それ故、状態が発見された時に記録される3本の特殊な心臓リードが、従来の12リードECG記録を概算的に再構築したものを生成するように変換され得る。12×3行列の3本の特殊心臓リードの乗算により、このような再構築が得られる。この行列は、母集団行列、すなわち個人による母集団において従来の12リードECGと3本の特殊な心臓リードを同時に記録することにより得られる個別行列の平均又は中央値として計算される係数を持つ行列であり、各個別行列は最小二乗法を使用して得られる。このような行列の係数はユーザの身体形状に依存する。それ故、単一の母集団行列を使用するのではなく、各々が性別、身長、体重、胸囲等のような身体形状及び構造の簡易パラメータにより規定されるユーザ集団について、ユーザによる取得が容易であり得る多数の行列が使用されてもよい。また、このような身体パラメータの連続関数として行列係数が求められてもよい。
【0094】
図9Aは、心臓信号検出及び/又は診断の為のシステムを作動させる方法の一変形例を図示している。図9Aにおいて、ユーザ2は心臓信号を(例えば2回以上)記録し、機器3(明確には、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置)は、3本の直交リードを処理して(例えば基準と検定時間の)時間差を比較する。機器3のプロセッサは更に、結果的に得られた差分信号が心臓問題を表しているかどうかを判断し、そしてユーザに警告できる。そしてユーザ(患者)は必要に応じて医療支援を受けることができる。図9Bは、ハンドヘルド装置の筐体3に直接取り付けられる心臓信号獲得の為の内蔵電極が組み込まれたハンドヘルド装置2と、遠隔通信リンクを介して装置に接続されるPCコンピュータ4とを含む、AMIの遠隔診断の為のシステム1を含む、心機能不全を検出する為のシステム及び方法の別の変形例の図を示す。
【0095】
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置には更に、電極により検出された信号を増幅する為の増幅器及びADコンバータと、記録信号を保存する為のデータ記憶装置(例えばメモリ)と、診断情報をユーザに通信する為の、GSM、WWAN、又は遠隔プロセッサ4と視覚及び/又は聴覚(例えばモニタ、スピーカ等)との通信の為の類似の遠隔通信規格で作動する通信回路構成とを含む心臓信号記録回路構成が組み込まれ得る。
【0096】
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置は、一体化された通信回路構成を介して遠隔プロセッサ4と通信し得る。遠隔プロセッサ4は、一体化通信モジュールを介してハンドヘルド装置2と通信し得る。プロセッサ4は、受信した心臓信号を処理して診断情報を生成する為と、特徴的な音又は音声メッセージを発生させるマイクロフォンを介して、或いは装置に一体化されたディスプレイを介したグラフィック情報の形で患者に診断情報を伝える為に情報をまたハンドヘルド装置へ送信する為の診断ソフトウェアを装備し得る。結果として、システムは、3リードシステムに基づいて心臓状態の自動検出を実施することが可能であり、専門家による処理済み診断情報の解釈を必要としない。代替的に、遠隔プロセッサの代わりに、システムは、記録された心臓信号を処理して診断情報を生成する為の、ハンドヘルド装置の筐体3に一体化されたマイクロプロセッサを含んでもよい。
【0097】
図10の例は、2個の抵抗器を備える簡易抵抗ネットワークを介して両手の電極を接続することにより中心点CPを取得する為の簡易電気方式を示す。
【0098】
図11Aは、身体に対する活性電極A,B,C,Dの配置と共に電極間の相対配置を図示する、一実施形態によるリード構成の空間図を示す。図11Bは、図11Aに示された電極の間の同じ相対配置を図示する簡易電気方式を示す。ほぼ矢状方向のリードを記録する為に、手用電極C,Dと2個の抵抗器R1,R2とを使用して、中心点CPについて下方の胸部用電極Bの電圧が取得され得る。2個の抵抗器R1,R2が等しくて各々がほぼ5kΩであるか、等しくなくて左手用電極とCPとの間でほぼ5kΩ、右手用電極とCPとの間で10kΩであり得る。この非対称性は、胴体において心臓が左側位置にあることを反映し、故に、心臓のほぼ電気中心にCP点を置く。この様に、略直交性の3リード構成が得られる。
【0099】
図11Cは、身体に対する電極の配置と共に電極間の相対配置を図示する、胸部用及び手用の電極A,B,C,Dによる同じ集合を使用して中心点CPを含む代替的なリード構成の空間図を示す。図11Dは、図11Cに示された電極A,B,C,Dの間の同じ相対配置を図示する簡易電気方式を示す。2個の手用電極C,Dと2個の抵抗器R1,R2とを使用して得られるCPを参照極としてリードを記録するのに胸部用電極A,Bが使用されるので、中心点CPを使用してCPと胸部用電極の各々との間の2本のリードを測定するこの代替的なリード構成も略直交性である。
【0100】
左手用電極について2個の胸部用電極と右手用電極との信号を記録する図11Eに示されている構成のように、中心点CPと抵抗器とを備えない他のリード構成も使用され得る。他の二つの類似構成が図11F及び11Gに示されている。抵抗器を備えないこのような構成は、50~60Hzの電気ノイズのように、受け取る外部干渉は少ないが、CPを使用する前述のものよりも直交性の低いリード方向を有する。概して、記載されたものと同じ4個の電極を使用する他のリード構成は結果的に非共平面性となり、その為、3方向全ての診断信号を捕捉するが、高直交性が欠如している。図11E,11F,11Gに示されているものを含めて、CPを含まない合計20個の構成が可能である。しかしながら、これらの構成は、右手用電極の使用に応じて異なるレベルの直交性を有する。右手用電極は4個の電極のうち心臓から最も遠く、故に3本のリードに対応するベクトルの間の角度が最小であるので、右手用電極を3本のリード全ての共通の参照極として使用する構成は最低の直交性を有する。図11Fに示されている構成のように、2本のリードに右手用電極を使用する構成は良好な直交性を有するが、図11E及び11Gに示されている構成のように1本のリードのみに右手用電極を使用する構成において最良の直交性が達成される。
【0101】
図12は、本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置の好適な実施形態によるAMIの自動検出の為の方法のブロック図を示す。AMI(又は虚血)の自動検出の為の方法は、以下に記載されるステップの全て又は幾つかを含み得る。最初に、ユーザ胸部の記録位置に装置を設置する。
【0102】
胸部でのハンドヘルド装置の最適位置は、装置の中心が心筋の中心のほぼ上方で胸部の左側にあるというものである。この位置で、従来のECGのV4電極と同じように、胸部用電極はほぼ、鎖骨の中点を通る垂直線である鎖骨中央線上にあり、下方の胸部用電極はおよそ胸骨の下端部の高さにある。ユーザは、装置の前側で、1個の活性電極と1個の接地電極とを左手の指で、1個の活性電極を右手の指で押下する。
【0103】
この方法は、最初の3リード心臓記録の獲得と、処理ユニットへの信号の通信も含み得る。自動AMI診断システムのユーザは、短時間(例えば少なくとも30秒、少なくとも20秒、少なくとも10秒、少なくとも5秒等)にわたってハンドヘルド装置を胸部に保持することにより、3リード心臓信号の記録を実施し得る。記録は装置のメモリに記憶され、それから商用通信ネットワークを介して遠隔PCコンピュータへ送信される。
【0104】
この方法は、最初の記録を処理ユニットのデータベースに基準として記憶することも含む。自身の心臓信号の最初の送信を実施した後に、心臓信号記録が遠隔プロセッサに記憶され、ユーザは診断システムに登録され得る。この最初の送信の前に、ユーザ又はそのMD/看護師は、(専用ウェブサイトを介して)、年齢、性別、心血管疾患についてのリスク因子等のような医療データを入力し、胸部痛又は虚血を示唆する他の症状を現在有しているかどうかを指摘する。回答が否定的である場合には、虚血を示唆する症状が起こった時の更なる送信における比較の為の参照値として機能する基準記録として、この初回心臓記録が診断システムに保持される。
【0105】
この方法は更に、3リード心臓診断記録の獲得と、信号を処理ユニットへ通信することとを含み得る。基準記録が受理されてデータベースに記憶されてからの後続の記録は、診断記録と見なされる。自動AMI診断システムのユーザは、ハンドヘルド装置を少なくとも10秒は胸部に保持することにより3リード心臓信号の診断記録を実施する。診断記録は装置のメモリに記憶され、それから商用通信ネットワークを介して遠隔PCコンピュータへ送信される。
【0106】
概して、本明細書に記載の方法は、記憶された基準及び診断記録の信号を処理ユニットにより処理することを含み得る。処理は前処理を含み得る。例えば、Va,Vb,Vcを、ハンドヘルド装置を使用して記録される3本の特殊リードにするように機器/方法が構成され得る。何らかの解析を実施する前に、電力線干渉、基準変動、そして筋肉ノイズのような攪乱因子が心臓信号から「消去」されなければならない。前者の二つは、それぞれ標準的な適応フィルタリング及び三次スプライン技術を使用して除去されるのに対して、後者は時間平均中央心拍数手順を使用して抑制される。
【0107】
中央心拍数を求める為に、心臓信号全体が列挙され、その結果、基準点の集合S={P,P,...,P}が得られ、P={Q,R,J,Tend}(又はこれらの箇所に等しい点)は第i心拍数の基準点である。それからSに基づいて、信号が同じ長さのn個の個別心拍数に分割される。最後に、相互相関(CC)を使用して個別心拍数が同期化され、各サンプルについて、n個の心拍数全ての中央値が計算される。故に、単一の最も典型的な中央心拍数により心臓信号全体が代表される。中央心拍数に関連する基準点の集合P={Q,R,J,T,Tend}は個別心拍数の基準点の中央値として簡単に計算される。
【0108】
中央心拍数ではなく典型的心拍数を取得する為の技術も使用され得る。ウェーブレット変換、サポートベクトルマシン等のような多様な技術を使用して、各心拍の基準点となる心臓信号の列挙が行われ得る。
【0109】
基準と診断の両方の記録に同じ前処理手順が使用される。
【0110】
左手と右手との間で記録されるリード又は水平方向に信号を捕捉する他のリードが反転されると、正しい記録位置を使用して記録を反復するようにユーザが警告を受ける。
【0111】
処理は心拍アライメントも含み得る。例えば、機器又は方法は、それぞれ基準及び診断心臓信号から抽出される中央心拍数をB及びDが指すように構成され、PB及びPDはその関連の基準点である。心拍アライメントの目標は、対応の点が正確に同期化されるようにB及びDを同じ時間枠にすることである。これは、Dと最適同期化されるように変換されてB*と呼ばれるBを発見することを必要とする。適用される変換は、区分的に均一なBの再サンプリングであるので、それぞれPB及びPDにより規定されるB*及びDの対応セグメントは同じサンプル数を有する。アライメントを数値化するコスト関数又は類似性尺度(SM)を最適化するような基準点PB*を検索することにより、最適アライメントが得られる。
【数1】
そしてP*を使用してBを変換することによりB*が得られる。
【0112】
この実施形態では、形状に基づくアライメントの問題について一般に使用されるSMであるCCを我々は使用した。しかしながら、B及びDの形状は大きく異なるので、CCのみの使用はアライメントのミスを招き得る。それ故、基準点Pは正確に分かると推定されるので、Pからの大きな偏差にペナルティを加える荷重関数fwiを導入する。
【数2】
i=Q,R,J,T,Tendであると、ΔPBiは第iの基準点からの偏差であり、ciは基準点に依存する倍率である。すなわち、R点は心臓信号で最も安定した参照点であるので、その偏差には最も大きなペナルティが加えられる。他方で、J及びTend点は安定度が最も低いので、大きな偏差が許容される。そしてCCと荷重関数fwiの和との積としてSM全体が計算される。
【数3】
【0113】
最後に、方程式(1)に従って、方程式(3)で得られるSMの最適値を見つけることにより、B*が求められる。
【0114】
処理は、胸部用電極の誤配置の補正も含み得る。ハンドヘルド装置の通常使用中に、胸部用電極は毎回同じ場所に設置される訳ではなく、故に何らかの病状が存在しなくても心臓信号の形状変化を招くことがある。リード位置が一定であると仮定した場合に、Va,Vb,Vcリードベクトル空間での「バーチャル」心臓電気軸偏差としてこの変化がモデリングされ、心臓電気軸はRベクトル―QRS群での最大規模モーメントでの心臓ベクトル(又は本明細書に記載の3リード心臓信号の同等領域)―で代表される。しかしながら、病状により誘発される変化がなくても差分信号ΔDが大きくなるので、これは望ましくない特性である。この問題を克服する為に、Dが変換されて結果的にD*=TDとなるので、その心臓電気軸はB*の軸と重複する。最小二乗法とD及びB*のQ‐Jセグメント(QRS群)とを入力として使用して、変換Tが計算される。
【0115】
概して、処理は、基準及び診断心臓リード信号の間の変化を表す差分信号を計算することも含み得る。差分信号ΔD*は次のように計算される。
【数4】
【0116】
最終的に、このような差分信号ΔD*は病状により誘発される変化のみを反映し、心臓軸偏差には依存しない。
【0117】
信号軸角度偏差の増加と共に装置設置ミス補正の質が低下するので、角度変化が15度のような閾値より大きい場合に、ユーザは基準位置に近い位置を選択するように促される。
【0118】
本明細書に記載の処理方法及び機器は、虚血による変化の検出も含み得る。STEは、通常はJ点又は80ミリ秒後までに測定される虚血のケースで最も一般的なECG変化である。この解決法では、検査記録を基準記録と比較することにより、虚血変化が検出される。好適な実施形態において、虚血検出の為のパラメータ又は「マーカ」は、STVM(又は本明細書に記載の心臓信号の同等領域)、つまり0.1mVのような既定の閾値と比較して、J点の80ミリ秒後(J+80ミリ秒)の補正差分信号ΔD*のベクトル大きさである。
【0119】
他の実施形態において、他の時点でのベクトル大きさは、J点,J+60ミリ秒、Tmax等のように虚血のマーカとして使用され得る。STセグメント(JとJ+80ミリ秒点の間のECG信号セグメント、又は類似のもの)の形状を表す他のマーカが使用され得る。このようなマーカは、JとJ+80ミリ秒点との間のベクトル信号ホドグラフを包囲する球体の半径として定義される「クリュー」である。また、STVM及びクリューのマーカの線形結合を使用するロジスティック回帰のように、他の複合マーカが使用されてもよい。
【0120】
経時的な信号形状変化を補正する為に、ある期間にわたってユーザにより取得される幾つかの基準記録は、(単一の基準記録が使用される時の単一点の代わりに)3本の特殊な心臓リードにより規定されるベクトル空間に3D外形を形成する参照値を形成するのに使用され得る。このような3D外形参照値を使用する際に、STベクトル差(STVD)は基準STベクトルからではなく3D外形からの距離として定義される。二以上のパラメータが虚血検出に使用される場合に、このような参照外形は、このようなパラメータにより規定される多次元パラメータ空間での超表面として構築されるだろう。このケースで、参照超表面からの超距離がこのパラメータ空間で規定される。
【0121】
断続的な心臓形状変化を伴う心臓状態を有するユーザでは、一方は正常信号、一方はこの状態を持つ信号という二つの基準記録グループ(少なくとも二つの記録)を形成して参照値を規定することにより、このような変化の補正が行われ得る。これら二つのグループは二つの3D外形をベクトル空間に形成して比較の為の参照値を形成し、STベクトル差(STVD)は二つの3D外形上の最も近い点からの距離として定義されるだろう。二以上のパラメータが虚血検出に使用される場合に、このような参照外形は、このようなパラメータにより規定される多次元パラメータ空間での二つの超表面として構築されるだろう。このケースでは、参照超表面からの超距離がこのパラメータ空間で規定されるだろう。
【0122】
これらの方法及び機器のいずれかは、情報を処理ユニットにより装置へ通信する為に構成され得る。生成される診断情報は、遠隔プロセッサ(例えばPCコンピュータ、サーバ等)から商用通信ネットワークを介して装置メモリへ送信され得る。方法及び機器はまた、装置により患者に診断情報を伝える為に構成され得る。受信した診断情報は、特徴的な音、音声、グラフィック、又はテキストの形でユーザに提示され得る。
【0123】
付加的に、近似の従来12リードECG信号が評価の為にユーザの医師へ送られ得る。ユーザにより記録された3個の特殊心臓リード信号を変換することにより、この信号は近似の従来12リードを再構築したものとして生成され得る。この再構築は、12×3行列による3本の特殊な心臓リードの乗算により得られる。一実施形態では、従来のベクトル心電図の規定について上述したものに類似した、人体の表面での電位分布という一般的解決法を使用することにより、この行列がコンピュータで取得され得る。別の実施形態では、個人の母集団で従来12リードECGと3本の特殊な心臓リードとを同時に記録することにより得られる個別行列の平均値又は中央値として計算される係数を持つ行列である母集団行列としてこの行列が得られ、各個別行列は最小二乗法を使用して求められる。また別の実施形態では、ユーザにより容易に取得され得る性別、身長、体重、胸囲等のような身体形状及び構造の単純なパラメータにより規定される対応のユーザグループに多数の行列が使用され得る。また、行列係数は、このような身体パラメータの連続関数として求められ得る。
【0124】
装置配置
本明細書に記載の第1小型非配備構成と第2配備構成とを有する3リードモバイル心臓監視装置の最適設置は胸部上であり、ほぼ心筋の中心の上方で胸部の左側に装置の中心が設けられる。この位置で、装置の右縁部は、胸骨の垂直中線である胸骨中線から約3cm離間し、装置の下縁部はおよそ胸骨の下端部の高さにある。理想的なケースで、ユーザは初回の基準記録で胸部の最適位置を選択し、将来的な各診断記録ではこの位置を反復する。このような状況で、心臓記録は反復可能であり、AMIを示唆する心臓信号変化を検出するのは容易である。
【0125】
リスク評価方法
急性心筋梗塞(AMI)又は心臓虚血のような重篤な状態を患者が有する確率を判定する為のリスク評価モデルは、3タイプの入力データに基づく。a)患者のリスク因子、b)心臓信号記録、c)現在症状データ。
【0126】
評価方法は以下のステップを包含し得る。1)患者自身によりリスク因子データを入力してシステムメモリにデータを記憶するステップ、2)ハンドヘルド装置を使用して患者により3リードECGを自動記録するステップ、3)患者自身により現在症状データを入力するステップ、4)心臓信号及び現在症状データを遠隔プロセッサ/サーバへ送るステップ、5)プロセッサ/サーバでデータを処理するステップ、6)診断メッセージをハンドヘルド装置に送るステップ、7)ハンドヘルド装置のグラフィカル又は音声インタフェースを使用して診断メッセージを患者に伝えるステップ。ステップ1は、患者による装置/システムの初回使用中に実施される。ステップ2~7は、患者が症状を有しているか心臓検診の実施を希望している時に実施される。診断メッセージは、救急サービスの要請、別の測定までの待機、症状の無視に言及するものである。言い換えると、メッセージは、いかなる動作動作を行うかについての患者への指示の形を有する。
【0127】
幾つかの実施形態において、自動的診断システムは、心臓信号リスク(CSR)、既存リスク(PER‐メモリに記憶された患者のリスク因子)、そして胸部痛リスク(CPR‐現在症状リスク)の三つのリスク要素を使用する心臓リスク評価に基づく。各リスクは、H‐高、I‐中、L‐低の三つのリスクレベルで記載される。患者に伝えられる診断メッセージを選択するのに心臓リスク判定値が使用される。
【0128】
患者への最終診断メッセージは、5~10分離れた3回までの反復的診断セッションの後に付与される。各診断セッションは心臓信号記録と胸部痛問診票(CPQ)とから成る
【0129】
心臓信号リスク(CSR)
心臓信号リスクの判定は、略直交性であって、従来の12リードECGに存在する診断情報の大部分を格納する3本の心臓リードを含み得る。3本の心臓リードによる無症状時心臓記録の初回送信を実施することにより、各ユーザが診断システムに登録され得る。この初回記録は、診断記録でのAMI検出の為の参照基準記録として使用され得る(診断記録は同じユーザの3本の心臓リードの更なる記録を意味する)。参照基準心臓記録の有用性により、新旧のSTE(STセグメント上昇型)の区別を可能にし、また他の心臓信号変化はAMIを示唆する。
【0130】
STEは、通常はJ点又は80ミリ秒後までに測定される虚血のケースで最も一般的なECG変化である。この解決法では、診断記録を基準記録と比較することにより、虚血変化が検出される。好適な実施形態において、虚血検出の為のパラメータ又は「マーカ」はSTVMであり、J点の80ミリ秒後(J+80ミリ秒)での差分信号ΔD*のベクトル大きさは、基準及び診断の3本の心臓リードベクトルの間の変化を表す。差分信号ΔD*は(上記のように)方程式(4)として計算される。
【数5】
【0131】
D*は診断の3本心臓リードベクトルであり、B*は基準の3本心臓リードベクトルである。
【0132】
他の実施形態では、他の時点でのベクトル大きさは、J点、J+60ミリ秒、Tmax等のような虚血についてのマーカとして使用され得る。STセグメント(JとJ+80ミリ秒の点の間のECG信号セグメント又は類似のセグメント)の形状を示す他のマーカが使用され得る。このようなマーカは、J及びJ+80ミリ秒の点の間のベクトル信号を包囲する球体の半径として定義される「クリュー」である。また、STVM及びクリューマーカの線形結合を使用するロジスティック回帰のように他の複合マーカが使用されてもよい。
【0133】
幾つかの実施形態において、虚血の心臓信号兆候の自動的検出は、基準記録を使用せず、診断記録のみに基づき得る。このアプローチは、患者が自動的装置の所有者ではないケースで使用され、故に基準記録は装置のメモリに記憶されない。このケースで、B*(基準の心臓3リードベクトル)は単純にゼロに設定され得る。
【0134】
幾つかの実施形態において、虚血の心臓信号兆候の自動的検出は、虚血の主な兆候がSTセグメントシフトとT波逆転である従来のアプローチに基づき得る。虚血のこれらのパラメータ又は「マーカ」は、従来の12リードECGで規定される。従来の12リードECGは、個別行列又は母集団基準行列を使用して行列変換を使用することにより3本の直交リードから合成され得る。
【0135】
CSRを分類する閾値(H‐高、I‐中、L‐低)は以下のように定義される。H‐CSRマーカ値が閾値(TH2)を上回る時。この閾値は0.2mVのように12リードECGに基づくSTEMIの基準に対応し得る。I‐CSRマーカ値がTH1とTH2との間にある時。0.1mVのようにTH1はAMIと非AMI信号の分離の為の最適閾値であり得る。L‐CSRマーカ値がTH1を下回る時。
【0136】
閾値TH1及びTH2は先行する経験及び医療文献から判断され得るか、臨床データ集合からの心臓信号記録を使用して最適化され得る。
【0137】
既存リスク(PER):(H‐高、I‐中、L‐低)
幾つかの変形例で、既存リスク(PER)判定アルゴリズムは、心血管リスクの評価についての2013年ACC/AHA指標に基づく。リスク評価方程式に含めることに統計上の長所が見られる変数は、年齢、総コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール、(治療後又は未治療ステータスを含む)収縮期BP、真性糖尿病(糖尿病)、そして現在喫煙ステータスであった。低(<5%についてのL)、中(5~10%についてのI)、高(>10%についてのH)リスクレベルの間でのカットオフには、心血管疾患(ASCVD)事象推定の10年リスクが使用される。計算には、既存リスク(PER)変数、指数関数タイプの「プールコホート方程式」が使用される。
【数6】
【0138】
可変IndividualSumは、個々のリスク因子の線形結合として計算され得る。
IndividualSum
=C1*In(年齢)+C3*In(総コレステロール)+C4*In(年齢)*In(総コレステロール)+C5*In(HDL)+C6*In(年齢)*In(HDL)+C7*治療後収縮期BP*In(収縮期BP)+In(HDL)+C9*(1-治療後収縮期BP)*In(収縮期BP)+C11*喫煙者-C12*In(年齢)*喫煙者+C13*糖尿病
【0139】
係数C1~C13と対応のリスク因子の値は、(参照により全体が本願に援用される、ゴフDCジュニア(Goff DC Jr)、ロイド‐ジョーンズDM(Lloyd-Jones DM)、ベネットG(Bennett G)その他による「心血管リスク評価についての2013年ACC/AHA指針:米国心臓病学会レポート/診療指針についての米国心臓学会タスクフォース、循環器,2014年(2013 ACC/AHA guideline on the assessment of cardiovascular risk: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014):129(2):S49~S73」に限定的にではなく示されているような)対応の所定値と共に使用され得る。既存リスク(PER)評価の為に代替的なスコアが使用されてもよい。
【0140】
胸部痛リスク(CPR):(H‐高、I‐中、L‐低)
心臓症状が発生した時点で、胸部痛リスク(CPR‐現在症状リスク)パラメータがキーボード又はタッチスクリーンを介して患者により手入力される。胸部痛リスクパラメータは、文献データと発明者自身の臨床経験とに基づいて選ばれる。
【0141】
好適な実施形態では、図13に示されているように9個のパラメータの問診リストが使用され得る。やはり図13に示されているように、問診への各回答には-1と3の間の特定数のポイントが割り当てられる。9個のパラメータ問診全てについてのポイントの合計としてCPR変数の値が計算される。
【0142】
CPRリスクレベルは、低(<2のポイントについてのL)、中(2~5のポイントについてのI)、高(>5のポイントについてのH)リスクレベルの間のカットオフにより推定される。
【0143】
他の実施形態において、代替的な問診/回答、ポイント数、又はカットオフ値が使用されてもよい。
【0144】
検査後AMIリスク(PTR):(H‐高、I‐中、L‐低)
検査後AMIリスク(PTR)評価は、心臓信号リスク(CSR)と既存リスク(PER)と胸部痛リスク(CPR)の三つのリスク要素の使用に基づいて、三つのレベル(H‐高、I‐中、L‐低)を有し得る。CSR、PER、CPR値の可能な組み合わせは27個ある。これらの組み合わせの各々についてのPTR値は、文献データと発明者自身の臨床経験とに基づいて確定される。27個の可能な組み合わせ全ての値と対応のPTR値とが図14に挙げられている。
【0145】
診断レポート(メッセージ)
5~10分の時間間隔を含む3回のセッションのように既定の時間間隔で患者により実施される1,2,3回の診断セッション(心臓信号記録と胸部痛問診票の記入)を有し得る診断評価を完了した後に、診断レポートが患者に付与される。
【0146】
患者に付与される診断レポートは、患者が取るべき動作を示唆する多様な診断メッセージから成る。例えば、診断メッセージは、患者が直ぐに医療を求めるか症状の良性の性質に関する安心感を得ることを示唆し得る。好適な実施形態では、可能なメッセージは6個ある。(1)心臓発作を起こしていることを診断システムが示す。直ぐに救急サービスを要請する。(2)心臓発作の確率が高いことを診断システムが示す。救急サービスに電話して救急救命室に行く必要がある。(2A)狭心症を起こしているかもしれない。静かな場所でのリラックスを試み、ニトログリセリンを飲んで5分で記録を反復する。痛みがひどくなっていつもの狭心症よりも長く続く場合には、救急サービスを要請する。(3)胸部痛発作は心臓の問題の兆候であり得る。かかりつけ医に知らせて更に検査が必要かどうかを話し合う。痛みが戻った場合には、救急サービスに電話する。(3A)狭心症の発作を起こしていることを診断システムが示す。診断システム評価により、痛みが解消してECGが正常に戻る。この発作がいつもの狭心症のようだと感じる場合には、緊急動作は必要ない。狭心症のパターン(重症度、頻度、痛みの期間)が変化する場合には、直ぐにかかりつけ医に知らせる必要がある。(4)診断システム評価に基づくと、胸部痛が心臓に関連している可能性は最も低い。次の予約時にはかかりつけ医にこれを伝えるべきである。痛みが続く場合には、医療を受けるかを自分で判断する。
【0147】
メッセージ2A及び3Aは、既存リスク(PER)問診票への記入時に報告されるので、狭心症を起こしている患者のみに使用される。
【0148】
デフォルトによる診断評価は、三つのセッションを有する。診断評価の終了条件が満たされた場合には、診断評価は三つより少ないセッションで終了してもよい。
【0149】
好適な実施形態では、PTR(検査後リスク)、CSR(心臓信号リスク)、胸部痛の存在、狭心症の先在、そして以下のルール集合に基づいて、診断メッセージが選ばれる。
【0150】
決定ルール
1.第1、第2、第3セッションでのスコアがCSR=Hであると、診断評価を終了してメッセージ1を発する。
2.第1、第2、第3セッションでのスコアがPTR=HかつCSR<Hであると、診断評価を終了してメッセージ2を発する。
3.現在完了セッション数が3未満である時に、スコアがPTR<Hであると追加セッションのリクエストを送る。
4.第3セッションの後に、セッションのいずれかでPTR=Iであって第3セッションでCP=1(胸部痛の持続)である場合に、メッセージ2が発せられる。
5.第3セッションの後に、セッションのいずれかでPTR=Iであって第3セッションでCP=0(胸部痛の停止)である場合に、(狭心症以外の患者のみに)メッセージ3が発せられる。
6.第3セッションの後に、三つのセッション全てでPTR=Lであって第3セッションでCP=0(胸部痛の停止)又はCP=1(胸部痛の持続)である場合に、メッセージ4を発する。
7.狭心症の患者であって第1又は第2セッションのスコアがPTR=HかつCSR<Hである場合に、メッセージ2Aを発する。
8.狭心症の患者であって第3セッションのスコアがCSR=I又はCSR=Hであり、CP=0(胸部痛の停止)である場合に、メッセージ3を発する。
9.狭心症の患者であって第1及び第2セッションのいずれかでスコアがPTR=I又はPTR=Hであり、第3セッションでCSR=LかつCP=0である場合に、メッセージ3Aを発する。
【0151】
図15は、上に記載されたルール1~9に基づくアルゴリズムのフローチャートを示している。フローチャートは、狭心症を持つか持たないかで患者についての2本のブランチを有する。各ブランチは、ルール1~2により規定される可能性のある出口を含む三つの記録セッションを有し、評価はルール3~9に従って完了する三つの記録セッションに基づく。いずれの出口アルゴリズムも、AMI評価に関連するメッセージ1~4(図15の円内)或いは狭心症発作に関連するメッセージ2A及び3A(図15の矩形内)を発する。
【0152】
本明細書に記載の(ユーザインタフェースを含む)方法のいずれかはソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアとして具現化され、プロセッサ(例えばコンピュータ、タブレット、スマートフォン等)による実行が可能であって、プロセッサによる実行時に表示、ユーザとの通信、解析、(タイミング、頻度、強度等を含む)パラメータの調整、判断、警告、その他を限定的でなく含むステップのいずれかをプロセッサに実施させる命令集合を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体として記され得る。
【0153】
ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に(on)」あると本明細書で言及される時には、他の特徴又は要素の直接上にあるか、介在の特徴及び/又は要素も存在し得る。対照的に、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直接上に(directly on)」あると言及される時には、介在の特徴又は要素は存在しない。ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される(connected)」、「装着される(attached)」、「連結される(coupled)」と言及される時には、他の特徴又は要素に直接接続、装着、連結されうるか、介在の特徴又は要素が存在しうることが理解されるだろう。対照的に、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接接続される(directly connected)」、「直接装着される(directly attached)」、「直接連結される(directly coupled)」と言及される時には、介在の特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して記載又は図示されたが、この様に記載又は図示された特徴及び要素は他の実施形態にも当てはまり得る。別の特徴に「隣接して(adjacent)」配設される構造又は特徴についての言及は隣接特徴の上又は下にある部分を有し得ることも、当業者には認識されるだろう。
【0154】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。例えば、本明細書で使用される際に、単数形の“a”,“an”,“the”は、そうではないことが文脈で明記されない限り複数形も同じく含むことが意図されている。「具備/包含する(comprises)」及び/又は「具備/包含する(comprising)」の語は、本明細書で使用された時に、記載の特徴、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を明記するものであるが、一以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はこれらのグループの存在又は追加を除外するものではないことがさらに理解されるだろう。本明細書に使用される際に、「及び/又は(and/or)」の語は関連して挙げられた物品のうち一以上の組み合わせのいずれか及び全てを含み、「/」で省略され得る。
【0155】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方に(over)」、「上方の(upper)」、その他などの空間的相対語は、図に示されている別の要素又は特徴に対する一つの要素又は特徴の関係を説明する記載を容易にする為に使用され得る。空間的相対語は、図に描かれている配向に加えて使用又は動作時の装置の多様な配向を内含する意図があることが理解されるだろう。例えば、図の装置が逆転された場合には、他の要素又は特徴の「下に(under)」又は「真下に(beneath)」と記載される要素は他の要素又は特徴の「上方に(over)」配向されることになる。故に、例示的な語である「下に(under)」は上と下の両方の配向を内含し得る。装置はその他の配向でもよく(90度回転されるか他の配向であり)、本明細書で使用される空間的相対記述子は適宜解釈される。同様に、「上向きに(upwardly)」、「下向きに(downwardly)」、「垂直の(vertical)」、「水平の(horizontal)」、その他の語は、そうではないことが明記されない限り、説明のみを目的として本明細書で使用されるものである。
【0156】
「第1(first)」及び「第2(second)」の語は、様々な特徴/要素を説明する為に本明細書で使用され得るが、これらの特徴/要素は、そうではないことが文脈に記されていない限り、これらの語により限定されるべきではない。これらの語は、一つの特徴/要素を別の特徴/要素から区別するのに使用され得る。故に、本発明の教示を逸脱することなく、以下に記す第1特徴/要素は第2特徴/要素と呼ばれてもよく、同様に、以下に記される第2特徴/要素が第1特徴/要素と呼ばれてもよい。
【0157】
本明細書とこれに続く請求項を通して、そうではないことが文脈から必要とされない限り、「包含/具備する(comprise)」と、「包含/具備する(comprises)」及び「包含/具備する(comprising)」などその変形は、様々なコンポーネントが方法及び物品(例えば組成と装置を含む機器と方法)において協働的に採用されることを意味する。例えば、「包含/具備する(comprising)」の語は、記載の要素又はステップのいずれかを含むが他の何らかの要素又はステップを除外しないという意味であることが理解されるだろう。
【0158】
概して、本明細書に記載の装置及び方法のいずれも包括的であると理解されるべきであるが、代替的にコンポーネント及び/又はステップの全て又は部分集合が排他的であり、様々なコンポーネント、ステップ、サブコンポーネント、又はサブステップ「から成る(consisting of)」か、代替的に「から本質的に成る(consisting essentially of)」と表現されてもよい。
【0159】
例で使用される際を含めて、明細書及び請求項で使用される際に、そしてそうではないことが明記されない限り、全ての数字は、「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」の語が明示されない場合でも、これらの語が前に置かれたかのように解釈され得る。「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」の語句が大きさ及び/又は位置を説明する時に使用されると、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを表す。例えば、ある数値は、記載の値(又は値の範囲)の+/-0.1%、記載の値(又は値の範囲)の+/-1%、記載の値(又は値の範囲)の+/-2%、記載の値(又は値の範囲)の+/-5%、記載の値(又は値の範囲)の+/-10%等である値を有し得る。本明細書で挙げられたいかなる数値も、そうではないことを文脈が指摘していない限り、約又はほぼその値を含むと理解されるべきである。例えば、「10」の値が開示されている場合には、「約10」も開示されている。本明細書に記載されるいかなる数値範囲も、これに包摂される全ての下位範囲を含むことが意図されている。当業者には適切に理解されるように、ある値がその値「未満であるか等しい」と開示される時には、「その値より大きいか等しい」とこれらの値の間の可能な範囲も開示されていることも言うまでもない。例えば、「X」の値が開示される場合には「Xより小さいか等しい」と共に「Xより大きいか等しい」(例えばXは数値である)も開示されている。本出願を通して、幾つかの異なる形式でデータが提供されることと、このデータが終点及び始点とデータ点の何らかの組み合わせの範囲を表すことも言うまでもない。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点「15」とが開示される場合に、10及び15より大きい、10及び15より大きいか等しい、10及び15より小さい、10及び15より小さいか等しい、10及び15に等しいは、10と15の間としても開示されていると考えられることは言うまでもない。二つの特定の単位の間の各単位も開示されていることも言うまでもない。例えば、10及び15が開示される場合には、11,12,13,14も開示されている。
【0160】
様々な例示的実施形態が上に記載されているが、請求項により記載される発明の範囲を逸脱することなく、幾つかの変更のいずれかが様々な実施形態に加えられてもよい。例えば、記載された様々な方法ステップが実施される順序は代替実施形態では変更されることが多く、他の代替実施形態では一以上の方法ステップがすべて省略されてもよい。様々な装置及びシステムの実施形態の任意の特徴が幾つかの実施形態では含まれて他の実施形態では含まれなくてもよい。それ故、上記の記載は主に例示的な目的で提供され、請求項に提示される発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0161】
本明細書に含まれる例及び図例は、主題が実践され得る特定の実施形態を限定ではなく例として示す。上述のように、本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な置換及び変更が行われ得るように、他の実施形態が利用され、これから導出されてもよい。発明の主題のこのような実施形態は、二以上が実際に開示されている場合に、単に簡便性の為に、そして本出願の範囲を単一の発明又は発明概念に自発的に制限することは意図せずに、「発明」の語により個別的又は集合的に本明細書で言及され得る。故に、特定の実施形態が本明細書に図示及び記載されたが、同じ目的を達成するように考案された何らかの仕組みが、示された特定の実施形態に置き換えられてもよい。本開示では、様々な実施形態のいかなる、そして全ての改変又は変形を包含することが意図されている。上記の実施形態の組み合わせと、本明細書では明確に記載されていない他の実施形態とが、上の記載を検討することで当業者に明白になるだろう。
【符号の説明】
【0162】
1 システム
2 ユーザ
3 機器
4 PCコンピュータ
10 筐体
12 面
14 手用電極
16 アーム
18 胸部用電極
20 背面
22 区画
23 短縁部
24 底部
26 側壁部
28 前壁部
30 開口部
32 遠位開口部
36 テール部分
34 ピン
38 スリーブ
40 コイル状ねじりばね
42 スロット
44 第1タング
46 第2タング
48 側面
55 先端
56 ソケット
60 ヘッド部分
61 陥凹面
63 ヘッド部分の上側
68 テール部分の上側
72 底側
73 陥凹部
76 面取り部分
78 長縁部
700 患者
703 信号収集装置
705,707 指用電極
709,711 胸部用電極
800 信号収集装置
804 直交リード
806 モバイル遠隔通信装置
810 遠隔サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12
図13
図14
図15