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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】オスコネクタ及び医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/26 20060101AFI20250516BHJP
【FI】
A61M39/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022573928
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040134
(87)【国際公開番号】W WO2022149339
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021002397
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】栗山 佑
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/117648(WO,A1)
【文献】特開2018-007719(JP,A)
【文献】特開2019-054971(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225604(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056465(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174265(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0090805(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/26
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性弁体を備えるメスコネクタと接続可能なオスコネクタであって、
中空部を区画するハウジングと、
前記中空部内に延在し、延在方向の一端側に開口が形成されている流路管部材と、
前記中空部内に位置し、前記流路管部材の前記開口を閉鎖可能な弁体と、を備え、
前記ハウジングは、
ハウジング本体と、
前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動することにより、前記流路管部材の前記開口が前記弁体により閉鎖される第1形態と、前記流路管部材の前記開口が前記弁体から開放される第2形態と、の間で形態を変化するように、前記弁体を変形又は移動させる移動体と、を備え、
前記移動体は、前記第1形態において、前記弁体と前記メスコネクタの前記弾性弁体とが当接する状態で、前記メスコネクタを係止可能な第1係止部を備え、
前記ハウジング本体は、前記第2形態において、前記第1係止部が前記メスコネクタを係止している状態で、前記メスコネクタを係止可能な第2係止部を備える、オスコネクタ。
【請求項2】
前記移動体の前記第1係止部は、前記流路管部材の周方向において、1つのみ、又は、間隔を隔てて複数、設けられている、請求項1に記載のオスコネクタ。
【請求項3】
前記移動体の前記第1係止部は、前記移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動することにより、前記流路管部材の径方向に移動可能である、請求項1又は2に記載のオスコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング本体の前記第2係止部は、前記流路管部材の周方向において、1つのみ、又は、間隔を隔てて複数、設けられている、請求項1から3のいずれか1つに記載のオスコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジング本体の前記第2係止部が前記メスコネクタを係止する状態が解除されると、変形した前記弁体の復元力、又は、前記弁体若しくは前記移動体を前記延在方向の前記一端側に付勢する付勢部材の付勢力により、前記移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動し、前記第2形態から前記第1形態に形態が変化する、請求項1から4のいずれか1つに記載のオスコネクタ。
【請求項6】
前記第2形態から前記第1形態に形態が変化した後、前記復元力又は前記付勢力により、前記移動体が前記ハウジング本体に対して引き続き前記延在方向に移動することにより、前記第1係止部が前記メスコネクタを係止する状態が解除される、請求項5に記載のオスコネクタ。
【請求項7】
前記移動体は、前記延在方向において相対的に移動可能な第1移動体及び第2移動体を備え、
前記第2移動体は、前記第1移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動しないように係止されている状態で、前記第1移動体及び前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動可能である、請求項1から6のいずれか1つに記載のオスコネクタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のオスコネクタを備える医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オスコネクタ及び医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に輸液を行う際には、薬液等の流体を輸送するための経路(輸液ライン)を形成する必要がある。輸液ラインは、一般に、輸液チューブなどを接続することによって形成される。また、患者に投与する薬液等の流体を薬液バッグに注入する際には、薬液バッグとシリンジ等とを接続する必要がある。このように異なる部材を着脱可能に相互接続するためにオスコネクタやメスコネクタが使用されている。
【0003】
薬液の中には、例えば抗癌剤のような劇薬に指定された薬剤を含む薬液があり、医療従事者は、オスコネクタやメスコネクタの着脱作業時等において、このような危険な薬液などの流体が指などに付着することがないように、十分に注意を払う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/056465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、メスコネクタとの接続解除時に、薬液等の流体が外部に漏れ出すことを抑制可能な構成を備えるオスコネクタが開示されている。特許文献1に記載のオスコネクタによれば、薬液等の液体が、医療従事者の指に付着することを抑制できる。
【0006】
特許文献1に記載のオスコネクタは、メスコネクタとの接続安定性の観点で、更なる改良の余地がある。
【0007】
本開示は、メスコネクタとの接続安定性を向上させると共に、メスコネクタとの接続解除時に薬液等の流体が外部に漏れ出すことを抑制可能なオスコネクタ、及び、このオスコネクタを備える医療器具、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様としてのオスコネクタは、弾性弁体を備えるメスコネクタと接続可能なオスコネクタであって、中空部を区画するハウジングと、前記中空部内に延在し、延在方向の一端側に開口が形成されている流路管部材と、前記中空部内に位置し、前記流路管部材の前記開口を閉鎖可能な弁体と、を備え、前記ハウジングは、ハウジング本体と、前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動することにより、前記流路管部材の前記開口が前記弁体により閉鎖される第1形態と、前記流路管部材の前記開口が前記弁体から開放される第2形態と、の間で形態を変化するように、前記弁体を変形又は移動させる移動体と、を備え、前記移動体は、前記第1形態において、前記弁体と前記メスコネクタの前記弾性弁体とが当接する状態で、前記メスコネクタを係止可能な第1係止部を備え、前記ハウジング本体は、前記第2形態において、前記第1係止部が前記メスコネクタを係止している状態で、前記メスコネクタを係止可能な第2係止部を備える。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記移動体の前記第1係止部は、前記流路管部材の周方向において、1つのみ、又は、間隔を隔てて複数、設けられている。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記移動体の前記第1係止部は、前記移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動することにより、前記流路管部材の径方向に移動可能である。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記ハウジング本体の前記第2係止部は、前記流路管部材の周方向において、1つのみ、又は、間隔を隔てて複数、設けられている。
【0012】
本開示の1つの実施形態として、前記ハウジング本体の前記第2係止部が前記メスコネクタを係止する状態が解除されると、変形した前記弁体の復元力、又は、前記弁体若しくは前記移動体を前記延在方向の前記一端側に付勢する付勢部材の付勢力により、前記移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動し、前記第2形態から前記第1形態に形態が変化する。
【0013】
本開示の1つの実施形態として、前記第2形態から前記第1形態に形態が変化した後、前記復元力又は前記付勢力により、前記移動体が前記ハウジング本体に対して引き続き前記延在方向に移動することにより、前記第1係止部が前記メスコネクタを係止する状態が解除される。
【0014】
本開示の1つの実施形態として、前記移動体は、前記延在方向において相対的に移動可能な第1移動体及び第2移動体を備え、前記第2移動体は、前記第1移動体が前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動しないように係止されている状態で、前記第1移動体及び前記ハウジング本体に対して前記延在方向に移動可能である。
【0015】
本開示の第2の態様としての医療器具は、上記オスコネクタを備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、メスコネクタとの接続安定性を向上させると共に、メスコネクタとの接続解除時に薬液等の流体が外部に漏れ出すことを抑制可能なオスコネクタ、及び、このオスコネクタを備える医療器具、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態としてのオスコネクタ、及び、このオスコネクタに接続可能なメスコネクタ、を示す斜視図である。
図2図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの接続前の側面図である。
図3図2とは異なる位置から見た、図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの接続前の側面図である。
図4図2のI-I線に沿う断面図である。
図5図3のII-II線に沿う断面図である。
図6図1に示すオスコネクタのハウジング本体の単体を示す斜視図である。
図7図1に示すオスコネクタの第1移動体の単体を示す斜視図である。
図8図1に示すオスコネクタの流路管部材、弁体及び第2移動体の分解斜視図である。
図9図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの接続途中を示す、図4と同位置での断面図である。
図10図9に示す接続途中のオスコネクタ及びメスコネクタについての、図5と同位置での断面図である。
図11図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの第1接続状態を示す、図4図9と同位置での断面図である。
図12図11に示す第1接続状態のオスコネクタ及びメスコネクタについての、図5図10と同位置での断面図である。
図13図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの第2接続状態を示す、図4図9図11と同位置での断面図である。
図14図13に示す第2接続状態のオスコネクタ及びメスコネクタについての、図5図10図12と同位置での断面図である。
図15図1に示すオスコネクタの第1移動体に対する第2移動体の移動を示す図である。
図16】本開示の一実施形態としての医療器具を示す図である。
図17図1に示すオスコネクタに、図1に示すメスコネクタとは別のメスコネクタが接続されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係るオスコネクタ及び医療器具の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0019】
図1は、本開示に係るオスコネクタの一実施形態としてのオスコネクタ1と、このオスコネクタ1に接続可能なメスコネクタ2と、を示す斜視図である。本実施形態のオスコネクタ1は、メスコネクタ2と接続されていない状態で、オスルアーとしての後述する流路管本体46(図4等参照)が外部に露出しない、所謂「閉鎖式オスコネクタ」である。
【0020】
図2図3は、図1に示すオスコネクタ1及びメスコネクタ2の側面図である。図2図3それぞれは、異なる位置から見た側面図である。図4は、図2のI-I線に沿う断面図である。図5は、図3のII-II線に沿う断面図である。図1図5に示すオスコネクタ1及びメスコネクタ2は、相互に接続される前(以下、単に「接続前状態」と記載する。)のそれぞれ単体の状態を示している。詳細は後述するが、本実施形態のオスコネクタ1及びメスコネクタ2は、図1に示す状態から、流路管部材40の延在方向Aに互いに近接させる動作のみで、接続可能である。以下、本実施形態に係るオスコネクタ1及びメスコネクタ2において、輸液ラインにて薬液等の流体の流路下流側(図1では右方向、図2図5では上方向)となる一端側を「遠位側」、輸液ラインにて流体の流路上流側(図1では左方向、図2図5では下方向)となる他端側を「近位側」と記載する。
【0021】
図1図5に示すように、オスコネクタ1は、ハウジング10と、流路管部材40と、弁体50と、を備えている。図4図5に示すように、ハウジング10は、中空部11を区画している。流路管部材40は、ハウジング10の中空部11内に延在している。また、流路管部材40の延在方向Aの遠位側には、開口42が形成されている。図4図5に示すように、弁体50は、ハウジング10の中空部11内に位置する。また、図4に示すように、弁体50は、流路管部材40の開口42を閉鎖している。詳細は後述するが、オスコネクタ1では、弁体50が流路管部材40の開口42を閉鎖する第1形態(図4等参照)と、弁体50が流路管部材40の開口42を開放する第2形態(図13図14参照)と、の間で形態変化可能である。
【0022】
以下、流路管部材40の延在方向Aを単に「延在方向A」と記載する。また、流路管部材40の中心軸線O回りの仮想円の径方向Bを単に「径方向B」と記載する。更に、流路管部材40の中心軸線O回りの周方向Cを単に「周方向C」と記載する。
【0023】
図1図5に示すように、メスコネクタ2は、ハウジング60と、弾性弁体70と、を備えている。図4図5に示すように、ハウジング60は、中空部としてオスコネクタ挿入部61及び流路66を区画している。弾性弁体70は、ハウジング60のオスコネクタ挿入部61の近位端に位置し、オスコネクタ挿入部61を閉塞している。弾性弁体70の天面72は、メスコネクタ2の外部に露出している。オスコネクタ1の流路管部材40の後述する流路管本体46(図4等参照)は、弾性弁体70の天面72側からオスコネクタ挿入部61に挿入される。
【0024】
以下、オスコネクタ1及びメスコネクタ2それぞれの構成について詳細に説明する。以下、説明の便宜上、オスコネクタ1のハウジング10を「第1ハウジング10」、メスコネクタ2のハウジング60を「第2ハウジング60」と記載する。また、説明の便宜上、オスコネクタ1の流路41を「第1流路41」、メスコネクタ2の流路66を「第2流路66」と記載する。
【0025】
<オスコネクタ1>
[第1ハウジング10]
第1ハウジング10は、ハウジング本体20と、このハウジング本体20に対して移動可能な移動体30とを備えている。第1ハウジング10の中空部11は、ハウジング本体20が区画する中空部29及び移動体30が区画する中空部39により構成されている。
【0026】
[[ハウジング本体20]]
図6は、ハウジング本体20単体を示す斜視図である。ハウジング本体20は、延在方向Aに延在する筒状部21と、この筒状部21から突出する係止爪部22と、を備える。筒状部21は、径方向Bで対向する位置に、径方向Bに貫通する開口21aを区画している。また、筒状部21の延在方向Aの遠位側の端面には、近位側に向かって窪む複数の凹部21cが形成されている。本実施形態では、筒状部21の上記端面に、周方向Cにおいて離間して配置された4つの凹部21cが形成されている。
【0027】
また、図6に示すように、筒状部21の内面には、延在方向Aに沿って延在する長溝部21bが形成されている。長溝部21bの近位端は、筒状部21の近位端まで延在し、筒状部21の近位端で開放されている。これに対して、長溝部21bの遠位端は、筒状部21の内面に形成された壁部21b1の位置で終端している。
【0028】
係止爪部22は、支持部22aと、爪本体部22bと、操作部22cと、を備える。
【0029】
係止爪部22の支持部22aは、筒状部21から径方向B外側に突出している。本実施形態の支持部22aは、爪本体部22b及び操作部22cを支持している。本実施形態の支持部22aは、筒状部21の径方向Bで対向する位置に設けられている。具体的に、本実施形態の2つの支持部22aは、筒状部21の2つの開口21aと周方向Cにおいて同じ位置に配置されている。
【0030】
爪本体部22bは、支持部22aから延在方向Aの遠位側に向かって突出している。爪本体部22bは、その先端部である遠位端部に、径方向B内側に向かって突出する係止爪22b1を備える。爪本体部22bは、支持部22aを支点として、径方向Bに搖動可能である。爪本体部22bが径方向Bに搖動することで、係止爪22b1も径方向Bに移動する。本実施形態の爪本体部22bの係止爪22b1は、図1等に示す接続前状態において、筒状部21の開口21a内に入り込んでいる。
【0031】
係止爪22b1の遠位側の端面は、径方向Bの外側から内側に向かうにつれて延在方向Aの近位側に傾斜する傾斜面25aを備える。本実施形態の傾斜面25aは、係止爪22b1の径方向Bの内側端まで延在する。
【0032】
係止爪22b1の近位側の端面は、径方向Bに略平行な引っ掛かり面25bを備える。本実施形態の引っ掛かり面25bは、係止爪22b1の径方向Bの内側端まで延在する。
【0033】
操作部22cは、支持部22aから延在方向Aの近位側に向かって突出している。操作部22cは、支持部22aを支点として、径方向Bに搖動可能である。操作部22cを径方向Bの内側に移動させることで、爪本体部22bは、支持部22aを支点として、径方向Bの外側に移動する。すなわち、操作部22cを径方向Bに搖動させることで、爪本体部22bを径方向Bに移動させることができる。
【0034】
[[移動体30]]
移動体30は、ハウジング本体20に対して延在方向Aに移動可能である。移動体30は、ハウジング本体20に対して延在方向Aに移動することにより、第1形態と第2形態との間で形態を変化するように、弁体を変形又は移動(本実施形態では変形)させることができる。「第1形態」とは、流路管部材40の開口42が弁体50により閉鎖される形態である。図4図5に示すように、本実施形態では、弁体50が流路管部材40の延在方向Aの遠位側の一端部を覆い、開口42を閉鎖することで、第1形態が実現されている。「第2形態」とは、流路管部材40の開口42が弁体50から開放される形態である。詳細は後述するが、本実施形態では、流路管部材40が弁体50を貫通し、開口42が弁体50より遠位側に露出することで、第2形態が実現される(図13図14参照)。
【0035】
本実施形態の移動体30は、第1移動体31と、第2移動体32と、を備える。第1移動体31及び第2移動体32は、延在方向Aにおいて相対的に移動可能である。
【0036】
図7は、第1移動体31の単体を示す斜視図である。第1移動体31は、筒状の本体部31aと、係止爪部31bと、を備える。筒状の本体部31aは、略円筒状の外形を有する。図7に示すように、本体部31aは、径方向Bの対向する位置に、径方向Bに貫通する長孔31a1を区画している。長孔31a1は、延在方向Aに長尺な開口である。
【0037】
また、本体部31aは、径方向Bの対向する位置に、径方向Bの外側に向かって突出する突起部31a2を備える。図5に示すように、突起部31a2は、上述したハウジング本体20の長溝部21b(図6参照)に嵌合している。突起部31a2が長溝部21bに沿って移動することで、第1移動体31はハウジング本体20に対して延在方向Aに移動することができる。第1移動体31は、突起部31a2が長溝部21bの壁部21b1(図6参照)に当接する位置まで、ハウジング本体20に対して延在方向Aの遠位側に移動可能である。換言すれば、ハウジング本体20の長溝部21bは、第1移動体31の延在方向Aへの移動をガイドするガイド溝である。また、ハウジング本体20の長溝部21bの壁部21b1は、第1移動体31と当接して、第1移動体31がそれ以上、延在方向Aの遠位側へ移動することを規制する移動規制壁である。
【0038】
係止爪部31bは、本体部31aから径方向B外側に突出している。より具体的に、本実施形態の係止爪部31bは、本体部31aから径方向Bの外側に、延在方向Aと傾斜する方向に向かって突出するアーム部31b1と、このアーム部31b1の先端部である遠位端部から径方向B内側に向かって突出する係止爪31b2と、を備える。アーム部31b1は、本体部31aと連なる基端部である近位端部を支点として、径方向Bに搖動可能である。アーム部31b1の径方向B外側の面には、延在方向Aの近位側を向く係合面33が設けられている。この係合面33は、上述したハウジング本体20の延在方向Aの遠位側の端面と係合する。より具体的に、本実施形態の係合面33は、ハウジング本体20の延在方向Aの遠位側の端面に形成されている凹部21cと当接して係合する。係合面33がハウジング本体20の上記端面と係合することで、第1移動体31の、ハウジング本体20に対する延在方向Aの近位側への移動が規制される。
【0039】
図8は、オスコネクタ1の流路管部材40、弁体50及び第2移動体32の分解斜視図である。図4図5図8に示すように、第2移動体32は、略円筒状の外筒部32aと、環状のフランジ部32bと、内筒部32cと、を備える。
【0040】
外筒部32aの外面には、径方向B外側に突出する突起部32a1が設けられている。突起部32a1は、径方向Bで対向する位置に設けられている。突起部32a1は、上述した第1移動体31の長孔31a1に嵌合する。突起部32a1は、長孔31a1内で、延在方向Aに移動可能である。これにより、第2移動体32は、突起部32a1が長孔31a1内を延在方向Aに移動可能な範囲において、第1移動体31に対して延在方向Aに移動可能である。
【0041】
フランジ部32bは、外筒部32aの内面から径方向Bの内側に突出している。図4図5に示すように、フランジ部32bは、弁体50のフランジ部58の遠位側の面と当接している。そのため、第2移動体32を延在方向Aの近位側に移動させると、フランジ部32bが弁体50のフランジ部58を近位側に押圧する。これにより、第2移動体32を延在方向Aの近位側に移動させることで、弁体50を延在方向Aの近位側に圧縮変形させることができる。逆に、延在方向Aの近位側に圧縮変形した状態の弁体50が、復元力により、延在方向Aの遠位側に伸長する際は、弁体50のフランジ部58が、第2移動体32のフランジ部32bを遠位側に押圧する。これにより、第2移動体32を、元の位置に復帰させることができる。この詳細は後述する。
【0042】
内筒部32cは、フランジ部32bの内縁から延在方向Aの遠位側に突出している。内筒部32cは、外筒部32aの径方向Bの内側で、同心円状に配置されている。
【0043】
内筒部32cの内面には、径方向Bの内側に突出する環状突起32c1が設けられている。環状突起32c1は、弁体50の先端部57の外面の環状溝57a(図8参照)に嵌合する。これにより、内筒部32c内に収容される先端部57は、内筒部32cから延在方向Aの近位側に抜け落ち難くなる。
【0044】
第1ハウジング10を構成するハウジング本体20、第1移動体31及び第2移動体32の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリ-(4-メチルペンテン-1);アイオノマー;アクリル樹脂;ポリメチルメタクリレート;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂);ブタジエン-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンオキシド;変性ポリフェニレンオキシド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;芳香族ポリエステル(液晶ポリマー);ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂;などの各種樹脂材料が挙げられる。また、これらのうちの1種以上を含むブレンド体やポリマーアロイなどでもよい。その他に、各種ガラス材、セラミックス材料、金属材料であってもよい。
【0045】
[流路管部材40]
流路管部材40は、内部に第1流路41を区画している。第1流路41は開口42を通じて外部と連通している。流路管部材40は、第1ハウジング10の近位端を構成するハウジング本体20の近位端と連結されている。これにより、ハウジング本体20の中空部29の近位側は、流路管部材40により封止されている。流路管部材40は、近位端部に、医療用チューブ等の医療器具と接続可能な医療器具接続部43を備える。また、流路管部材40は、第1ハウジング10の中空部11内に延在し、遠位端部に開口42が形成されている流路管本体46を備えている。第1流路41は、医療器具接続部43の近位端から流路管本体46の遠位端部の開口42まで連通している。また、流路管部材40は、遠位端部に、延在方向Aの遠位側に向かって縮径する先端部44を備えている。本実施形態では、先端部44は縮径率の異なる2つのテーパー部分からなる形状であるが、例えば円錐形状等、先細りする別の形状であってもよい。先端部44の遠位端は鋭利でなく径方向Bに沿って平面状に形成されていてもよい。
【0046】
また、流路管部材40は、医療器具接続部43から径方向B外側に突出する環状のフランジ部45を備える。後述する弁体50の蛇腹筒部56の近位端は、フランジ部45の遠位側の面に支持される。
【0047】
流路管部材40は、上述した第1ハウジング10と同様の材料により形成することが可能である。
【0048】
[弁体50]
弁体50は、第1ハウジング10内で、流路管本体46を覆っている。具体的に、本実施形態の弁体50は、延在方向Aに弾性変形可能な蛇腹筒部56と、この蛇腹筒部56の中空部の遠位側を閉鎖するように蛇腹筒部56に連続し、第2移動体32の内筒部32c内に収容されている先端部57と、蛇腹筒部56から径方向Bの外側に突出するフランジ部58と、を備える。
【0049】
蛇腹筒部56の近位端部は流路管部材40に支持されている。より具体的に、蛇腹筒部56及び先端部57により、流路管部材40の流路管本体46を覆った状態で、蛇腹筒部56の近位端が、流路管部材40のフランジ部45の遠位側の面に当接して支持されている。
【0050】
先端部57は、移動体30の第2移動体32における内筒部32c内に保持されている。図8に示すように、本実施形態の先端部57の外面には、環状溝57aが形成されている。上述したように、内筒部32cの内面に設けられている環状突起32c1(図4参照)は、先端部57の外面の環状溝57aに嵌合する。これにより、先端部57は、内筒部32c内から延在方向Aの近位側に抜け落ち難くなる。更に、先端部57は、フランジ部58が上述した第2移動体32のフランジ部32bに当接することで、内筒部32c内から延在方向Aの遠位側に抜け落ちないように構成されている。このようにして、先端部57は、第2移動体32の内筒部32c内に収容された状態が維持される。
【0051】
また、先端部57には、近位側から遠位側に貫通するスリット51が形成されている。また、先端部57の遠位側の端面である天面52の中央部には、遠位側に突出する円錐状の凸部52aが形成されている。天面52の中央部に凸部52aを設けることで、後述するメスコネクタ2の弾性弁体70の天面72と密着しやすくなる。そのため、オスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続を解除する際に、薬液等の液体が弁体50の天面52及び弾性弁体70の天面72に付着し難くなる。この詳細は後述する。
【0052】
図1図5に示す接続前のオスコネクタ1では、流路管部材40の開口42が弁体50により閉鎖されている第1形態となる。図4に示すように、本実施形態では、開口42を含む流路管部材40aの遠位端部が、弁体50に覆われることで、開口42が閉鎖されている。
【0053】
弁体50は、硬度がショアA硬度10以上70以下であることが好ましく、ショアA硬度20以上50以下であることがより好ましい。硬度がショアA硬度10より小さいと、第1流路41内の圧力が高まったときに、薬液等の流体が外部に漏れ出すおそれがある。硬度がショアA硬度70より大きいと、弁体50とメスコネクタ2の弾性弁体70との当接が不十分になり、メスコネクタ2との接続解除時に、薬液等の流体が外部に漏れ出すおそれがある。また、弁体50は、硬度がショアA硬度20以上50以下であれば、メスコネクタ2との好適な密着性を確保することができ、メスコネクタ2との接続解除時に、薬液等の流体が外部に漏れ出すことをより確実に抑制することができる。
【0054】
弁体50は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弁体50の材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合した構成であってもよい。弁体50を、別々の材料により形成することも、同一の材料により形成することも可能である。
【0055】
<メスコネクタ2>
[第2ハウジング60]
図4図5に示すように、第2ハウジング60は、オスコネクタ1が外方から挿入されるオスコネクタ挿入部61を区画するキャップ62と、このキャップ62を支持し、第2流路66を区画するホルダ63と、を備えている。オスコネクタ挿入部61は、キャップ62及びホルダ63により区画された中空部である。第2流路66は、ホルダ63により区画された中空部である。オスコネクタ挿入部61は、第2流路66より近位側に区画されている。第2ハウジング60が区画する中空部は、オスコネクタ挿入部61と第2流路66とで構成されている。
【0056】
キャップ62の外周壁には、第1移動体31の係止爪部31bの係止爪31b2が嵌合可能な、被係止部としての環状溝65が形成されている。また、環状溝65には、ハウジング本体20の係止爪部22の係止爪22b1も嵌合可能である。環状溝65への係止爪31b2及び係止爪22b1の嵌合についての詳細は後述する(図9図14参照)。また、キャップ62は、弾性弁体70を延在方向A両側から挟持、固定する2つの部材により形成されている。
【0057】
第2ハウジング60は、上述したオスコネクタ1の第1ハウジング10と同様の材料により形成することが可能である。
【0058】
[弾性弁体70]
弾性弁体70には、近位側から遠位側に貫通するスリット71が形成されている。図4図5に示すように、弾性弁体70の天面72は外部に露出している。弾性弁体70は、上述したオスコネクタ1の弁体50と同様の材料により形成することが可能である。弾性弁体70は、硬度がショアA硬度20以上60以下であることが好ましい。また、弾性弁体70は、硬度がオスコネクタ1の弁体50の硬度より大きいことが好ましい。弾性弁体70の硬度を弁体50の硬度より大きくすることで、第2流路66内の圧力が高まったときに、薬液等の流体が外部に漏れ出すことを抑えつつ、オスコネクタ1とメスコネクタ2とを接続した際の弾性弁体70の変形量を抑え易くなる。弾性弁体70の変形量が大きいと、メスコネクタ2からオスコネクタ1を抜去した際に、第2流路66内に負圧が発生し、第2流路66と連通している患者の血管から血液を吸引するおそれがある。
【0059】
<オスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続動作>
以下、図4図5図9図15を参照しながら、オスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続動作について説明する。上述したように、図4図5は、オスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続前状態を示す断面図である。図9図11図13は、図4と同位置での断面であり、図9は接続途中状態、図11は第1接続状態、図13は第2接続状態、をそれぞれ示している。同様に、図10図12図14は、図5と同位置での断面であり、図10は接続途中状態、図12は第1接続状態、図14は第2接続状態、をそれぞれ示している。図15は、図9図10に示す接続途中状態から、図11図12に示す第1接続状態まで、の第2移動体32の動作を示す説明図である。第1接続状態及び第2接続状態の詳細については後述する。
【0060】
オスコネクタ1及びメスコネクタ2は、図4図5に示す接続前状態から、延在方向Aに相互に近接させるように移動することで、接続可能である。図9図10は、図4図5に示す接続前状態からオスコネクタ1及びメスコネクタ2を延在方向Aに近接させ、オスコネクタ1の弁体50の天面52と、メスコネクタ2の弾性弁体70の天面72と、を当接させた状態を示している。このように、本実施形態のオスコネクタ1及びメスコネクタ2が接続される場合、オスコネクタ1の弁体50の天面52と、メスコネクタ2の弾性弁体70の天面72と、が最初に接触する。オスコネクタ1及びメスコネクタ2を延在方向Aに更に近接させると、メスコネクタ2のキャップ62の天面62aが、オスコネクタ1の第2移動体32の内筒部32cの遠位端32c2に当接する。図9図10では、オスコネクタ1の弁体50の天面52がメスコネクタ2の弾性弁体70の天面72に当接し、かつ、オスコネクタ1の第2移動体32の遠位端32c2がメスコネクタ2のキャップ62の天面62aに当接する状態を示している。
【0061】
図9図10に示す状態から、オスコネクタ1及びメスコネクタ2を延在方向Aに更に近接させると、メスコネクタ2のキャップ62の天面62aが、オスコネクタ1の第2移動体32の内筒部32cの遠位端32c2を、延在方向Aの近位側に押圧する。これにより、図15(a)に示す状態から、図15(b)に示す状態へと、第2移動体32が延在方向Aの近位側に移動する。図15(a)、図15(b)に示すように、この際、第2移動体32は、第1移動体31及びハウジング本体20に対して相対的に移動する。この際、第1移動体31は、ハウジング本体20に対して延在方向Aに移動しないように係止されている状態を維持する。より具体的には、図15(a)、図15(b)に示すように、第1移動体31の係止爪部31bの係合面33が、ハウジング本体20の筒状部21の端面の凹部21cに当接した状態が維持される。そのため、第1移動体31は、ハウジング本体20に対して延在方向Aの近位側に相対移動できない係止されている状態が維持される。
【0062】
図15(a)、図15(b)に示すように、本実施形態の第2移動体32は、突起部32a1が長孔31a1の遠位壁に当接する位置から、突起部32a1が長孔31a1の近位壁に当接する位置まで、第1移動体31に対して延在方向Aに移動可能である。第2移動体32が、図15(a)に示す状態から、図15(b)に示す状態まで、移動する際に、弁体50も延在方向Aに圧縮変形される。具体的に、第2移動体32のフランジ部32b(図4等参照)が、弁体50のフランジ部58(図4等参照)を、延在方向Aの近位側に押圧する。これにより、弁体50の蛇腹筒部56が延在方向Aに弾性変形して圧縮される。
【0063】
図15(b)に示す状態から、第2移動体32が更に延在方向Aの近位側に押圧されると、第2移動体32の突起部32a1が、長孔31a1の近位壁を近位側に向かって押圧する。これにより、第1移動体31の係止爪部31bの係合面33が、ハウジング本体20の筒状部21の端面の一部である凹部21cと摺動するように、径方向B内側に向かって移動する(図11参照)。これにより、第1移動体31の係止爪部31b全体が、ハウジング本体20の筒状部21内に入り込む。つまり、第1移動体31がハウジング本体20に対して延在方向Aの近位側に移動しないように係止されている状態が解除される。その結果、第1移動体31は、ハウジング本体20に対して延在方向Aの近位側に移動可能な状態となる。
【0064】
図11は、図15(b)に示す状態から、第1移動体31の係止爪部31b全体が、ハウジング本体20の筒状部21内に入り込んだ状態を示している。図11に示すように、第1移動体31の係止爪部31bが径方向Bの内側に移動することで、係止爪31b2は、メスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込む。これにより、第1移動体31は、メスコネクタ2を延在方向Aの遠位側に移動しないように係止することができる。そのため、オスコネクタ1の弁体50と、メスコネクタ2の弾性弁体70と、が当接領域を形成した状態を、安定的に維持することができる。本実施形態では、係止爪31b2が、メスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込む状態を、「第1接続状態」と呼ぶ。
【0065】
図11図12に示す状態から、オスコネクタ1及びメスコネクタ2を延在方向Aに更に近接させると、第1移動体31がメスコネクタ2を係止した状態のまま、第1移動体31及び第2移動体32が、ハウジング本体20に対して延在方向Aの近位側に更に移動する。これにより、弁体50の蛇腹筒部56が延在方向Aに、更に圧縮変形される。その結果、図13図14に示すように、流路管部材40の流路管本体46の先端が、弁体50及び弾性弁体70の当接領域を通じて、弁体50及び弾性弁体70を貫通する。これにより、オスコネクタ1は、弁体50が流路管部材40の開口42を閉鎖する第1形態(図4図9図11参照)から、弁体50が流路管部材40の開口42を開放する第2形態(図13参照)に形態変化する。そして、オスコネクタ1の第1流路41と、メスコネクタ2の第2流路66と、が液密に連通する状態となる。
【0066】
そして、第1移動体31及び第2移動体32が、ハウジング本体20に対して延在方向Aの近位側に更に移動すると、図14に示すように、ハウジング本体20の係止爪部22の係止爪22b1が、メスコネクタ2のキャップ62の外周面の一部を乗り越える。その結果、係止爪22b1は、メスコネクタ2の環状溝65に入り込む。より具体的に、係止爪22b1は、その傾斜面25aがメスコネクタ2のキャップ62の天面62aの外縁部と摺動することで径方向B外側に押圧される。これにより、爪本体部22bは、径方向B外側に揺動するように移動する。その結果、係止爪22b1は、径方向Bの外側に移動すし、キャップ62の外周面の一部を乗り越えることができる。つまり、オスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続動作時において、係止爪部22の操作部22cは操作不要である。本実施形態のオスコネクタ1及びメスコネクタ2では、両者を延在方向Aで近接する方向に移動させるのみで、係止爪22b1をメスコネクタ2の環状溝65に入り込ませることができる。これにより、係止爪31b2が環状溝65に入り込んだ状態(図13参照)のまま、図14に示すように、係止爪22b1についても環状溝65に入り込ませることができる。本実施形態では、係止爪31b2が、メスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込んでいる状態、かつ、係止爪22b1が、メスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込んでいる状態を、「第2接続状態」と呼ぶ。
【0067】
オスコネクタ1及びメスコネクタ2は、上述の第2接続状態を達成することで、接続が完了する。
【0068】
<オスコネクタ1及びメスコネクタ2の取り外し動作>
次に、図13図14に示す第2接続状態にあるオスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続を解除する取り外し動作について説明する。取り外しの際は、オスコネクタ1の係止爪部22の操作部22cを、径方向Bの内側に押圧して移動させる。このようにすることで、支持部22aを挟んで操作部22cと反対側に位置する爪本体部22bを、支持部22aを支点として、径方向Bの外側に移動させることができる。それにより、メスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込んでいる係止爪22b1についても、径方向Bの外側に移動し、環状溝65から抜け出る。つまり、第2接続状態が解除される。
【0069】
係止爪22b1が環状溝65から抜け出ると、圧縮変形していた弁体50の蛇腹筒部56の復元力としての弾性力により、第2移動体32が延在方向Aの遠位側に押圧される。より具体的に、弁体50のフランジ部58が、第2移動体32のフランジ部32bを遠位側に押圧する。これにより、第2移動体32は、延在方向Aの遠位側に移動する。
【0070】
第1移動体31の係止爪31b2がメスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込んでいる状態は、この時点でも維持されている。そのため、第2移動体32が延在方向Aの遠位側に移動すると、第1移動体31及びメスコネクタ2も追従して延在方向Aの遠位側に移動する。
【0071】
このように、第1移動体31、第2移動体32及びメスコネクタ2が一体となって、延在方向Aの遠位側に移動することで、流路管部材40の流路管本体46が、弁体50及び弾性弁体70から抜去される。つまり、第1移動体31の係止爪31b2がメスコネクタ2のキャップ62の環状溝65に入り込んでいる第1接続状態が維持されたまま、流路管部材40の流路管本体46を、弁体50及び弾性弁体70から抜去することができる。これにより、弁体50及び弾性弁体70の当接領域が安定して形成されている状態において、この当接領域を通じて、流路管部材40の流路管本体46を、弁体50及び弾性弁体70から抜去できる。その結果、抜去後の弁体50の天面52及び弾性弁体70の天面72に薬液等の液体が付着すること、換言すれば、弁体50の天面52及び弾性弁体70の天面72に「液滴残り」が発生することを抑制できる。
【0072】
そして、流路管部材40の流路管本体46が、弁体50及び弾性弁体70から抜去された後、第1移動体31の係止爪部31bの係合面33が、ハウジング本体20の筒状部21の端面の一部である凹部21cの延在方向Aの位置に到達する。その時に、アーム部31b1の復元力としての弾性力により、係止爪部31bは径方向Bの外側に移動し、係止爪31b2が環状溝65から抜け出る。つまり、第1接続状態が解除される。これにより、オスコネクタ1及びメスコネクタ2は、延在方向Aに離間可能な状態になる。
【0073】
第1移動体31及び第2移動体32は、弁体50の復元力により、図4図5の示す状態まで戻る。すなわち、第1移動体31は、突起部31a2(図7等参照)が、ハウジング本体20の長溝部21bの壁部21b1(図6等参照)に当接する位置まで復帰する。また、第2移動体32は、突起部32a1(図8図15等参照)が第1移動体31の長孔31a1(図7図15等参照)の遠位壁に当接する位置まで復帰する。換言すれば、第2移動体32は、第1移動体31より延在方向Aの遠位側に突出する状態まで復帰する。
【0074】
以上のように、オスコネクタ1は、弁体50が流路管部材40の開口42を閉鎖する第1形態(図4図5図9図12参照)と、弁体50が流路管部材40の開口42を開放する第2形態(図13図14参照)と、の間で形態変化することができる。本実施形態では、流路管部材40の流路管本体46全体が、弁体50に覆われることで、第1形態が実現されている。また、本実施形態では、流路管部材40の流路管本体46先端部が、弁体50を貫通し、先端部に位置する開口42が弁体50の外部に出ることで、第2形態が実現されている。但し、第1形態及び第2形態の実現する構成は、本実施形態の構成に限られない。したがって、第1形態及び第2形態を実現可能な構成であれば、流路管部材40及び弁体50の構成についても、本実施形態の構成に限られない。
【0075】
また、オスコネクタ1の移動体30は、第1形態において、弁体50とメスコネクタ2の弾性弁体70とが当接する状態で、メスコネクタ2を係止可能な第1係止部としての係止爪31b2を備える。図11に示すように、移動体30の第1移動体31における第1係止部としての係止爪31b2は、第1形態において、弁体50及び弾性弁体70が当接して当接領域を形成している状態で、メスコネクタ2の環状溝65に嵌合可能である。
【0076】
更に、オスコネクタ1のハウジング本体20は、第2形態において、第1係止部としての係止爪31b2がメスコネクタ2を係止している状態で、第1係止部としての係止爪31b2に係止される位置とは異なる位置でメスコネクタ2を係止可能な第2係止部としての係止爪22b1を備える。図14に示すように、ハウジング本体20の第2係止部としての係止爪22b1は、第2形態において、第1係止部としての係止爪31b2がメスコネクタ2の環状溝65に嵌合した状態のまま、環状溝65の別の位置に嵌合可能する。
【0077】
本実施形態の第1係止部は、係止爪31b2により構成されているが、メスコネクタ2が延在方向Aの遠位側に離間しないように、メスコネクタ2の延在方向Aの遠位側への移動を規制する構成であればよく、その構成は特に限定されない。また、本実施形態の第2係止部は、係止爪22b1により構成されているが、メスコネクタ2が延在方向Aの遠位側に離間しないように、メスコネクタ2の延在方向Aの遠位側への移動を規制する構成であればよく、その構成は特に限定されない。
【0078】
オスコネクタ1が第1形態と第2形態との間で形態変化できることで、メスコネクタ2との接続解除時に薬液等の流体が外部に漏れ出すことを抑制できる。また、オスコネクタ1が上述の第1係止部及び第2係止部を備えることで、メスコネクタ2との接続安定性を向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、移動体30の第1係止部としての第1移動体31の係止爪31b2は、周方向Cにおいて、間隔を隔てて2つ設けられている。より具体的に、本実施形態の2つの係止爪31b2は、径方向Bで対向する位置に配置されている。このように、第1係止部としての係止爪31b2は、筒状などの無端状の構成でないことが好ましい。このようにすることで、径方向Bへ移動し易い係止爪31b2を実現できる。但し、第1係止部は、本実施形態の数および位置に限られない。第1係止部は、周方向Cの一部に1つのみ設けられてもよく、周方向Cで間隔を隔てて3つ以上設けられていてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、移動体30の第1係止部としての係止爪31b2は、移動体30がハウジング本体20に対して延在方向Aに移動することにより、径方向Bに移動可能である。より具体的に、本実施形態の移動体30の第1係止部としての第1移動体31の係止爪31b2は、第1移動体31がハウジング本体20に対して延在方向Aに移動することにより、径方向Bに移動可能である。図4等に示すように、本実施形態の第1移動体31は、ハウジング本体20の筒状部21の端面の一部である凹部21cに係合面33が当接して引っ掛かることで、ハウジング本体20に係止され、延在方向Aの近位側への移動が規制される。この状態から、第1移動体31が延在方向Aの近位側に押圧されると、第1移動体31の係止爪部31bのアーム部31b1が径方向Bの内側に弾性変形し、上述の係合面33が凹部21cより径方向Bの内側に移動する。これにより、図11等に示すように、第1移動体31のハウジング本体20への係止が解除される。また、第1係止部としての係止爪31b2が、径方向Bの内側に移動する。換言すれば、第1係止部としての係止爪31b2は、第1移動体31の延在方向Aの近位側への移動に連動し、径方向Bの内側に移動することができる(図11参照)。逆に、メスコネクタ2との接続解除時などにおいて、第1係止部としての係止爪31b2は、第1移動体31の延在方向Aの遠位側への移動に連動し、アーム部31b1の復元力によって径方向Bの外側に移動する。その結果、第1係止部としての係止爪31b2は、図4等に示す位置へと復帰する。
【0081】
但し、第1係止部は、移動体30の延在方向Aの移動に連動し、径方向Bに移動する構成であれば、本実施形態の係止爪31b2の構成に限られない。
【0082】
オスコネクタ1の移動体30が、移動体30の延在方向Aの移動に連動し、径方向Bに移動する第1係止部を備えることで、延在方向Aの近接移動のみによるオスコネクタ1及びメスコネクタ2の接続動作において、第1係止部によるメスコネクタ2の係止を実現することができる。
【0083】
また、本実施形態では、ハウジング本体20の第2係止部としての係止爪22b1は、周方向Cにおいて、間隔を隔てて2つ設けられている。より具体的に、本実施形態の2つの係止爪22b1は、径方向Bで対向する位置に配置されている。このように、第2係止部としての係止爪22b1は、対向する位置に2つ配置されていることが好ましい。このようにすることで、メスコネクタ2を安定して係止することができる。特に、本実施形態の係止爪22b1は、操作部22cを径方向Bの内側に押し込むことで、メスコネクタ2との係止状態が解除される。そのため、メスコネクタ2との接続解除時に、医療従事者は、対向する位置に配置される2つの操作部22cを挟み込むように操作することで、係止爪22b1のメスコネクタ2との係止状態を、容易に解除することができる。
【0084】
但し、第2係止部は、本実施形態の数および位置に限られない。第2係止部は、周方向Cの一部に1つのみ設けられてもよく、周方向Cで間隔を隔てて3つ以上設けられていてもよい。
【0085】
更に、本実施形態では、ハウジング本体20の第2係止部としての係止爪22b1がメスコネクタ2を係止する状態が解除されると、変形した弁体50の復元力により、移動体30がハウジング本体20に対して延在方向Aの遠位側に移動する。その結果、オスコネクタ1は、開口42が開放される第2形態から、開口42が閉鎖される第1形態に、形態変化する。つまり、本実施形態のオスコネクタ1によれば、第2係止部としての係止爪22b1によるメスコネクタ2の係止状態を解除する操作に連動し、第2形態から第1形態へと形態を変化させることができる。これにより、メスコネクタ2との接続解除時に、流路管部材40の開口42を、弁体50により、より確実に閉鎖することができる。
【0086】
本実施形態では、上述したように、延在方向Aに圧縮変形した弁体50の蛇腹筒部56の復元力により、移動体30を元の位置に復帰させることができるが、この構成に限られない。オスコネクタ1は、例えば、弁体50又は移動体30を延在方向Aの遠位側に付勢する付勢部材を備える構成であってもよい。つまり、オスコネクタ1は、付勢部材の付勢力により、移動体30を元の位置に復帰させてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、開口42が開放される第2形態から、開口42が閉鎖される第1形態に形態が変化した後、弁体50の復元力により、移動体30がハウジング本体20に対して引き続き延在方向Aの遠位側に移動する。これにより、第1係止部としての係止爪31b2がメスコネクタ2を係止する状態が解除される。より具体的には、メスコネクタ2との接続解除時に、本実施形態の第1係止部としての係止爪31b2は、移動体30が延在方向Aの遠位側に移動することに連動し、アーム部31b1の復元力により、径方向Bの外側に移動する(図9図11参照)。これにより、第1係止部としての係止爪31b2が、メスコネクタ2の環状溝65から抜け出し、係止爪31b2によりメスコネクタ2を係止する状態が解除される。つまり、本実施形態のオスコネクタ1によれば、弁体50の復元力により、第1係止部としての係止爪31b2によるメスコネクタ2の係止状態を解除することができ、その結果、メスコネクタ2をオスコネクタ1から完全に離間させることが可能となる。換言すれば、本実施形態のオスコネクタ1では、上述の第2係止部としての係止爪22b1によるメスコネクタ2の係止状態を解除することのみにより、第2形態から第1形態への形態変化と、第1係止部としての係止爪31b2によるメスコネクタ2の係止状態の解除と、を実現できる。すなわち、本実施形態のオスコネクタ1によれば、医療従事者は、メスコネクタ2との接続解除時に、操作部22cを挟み込む操作のみで、メスコネクタ2との接続を容易に解除できる。上述したように、本実施形態のオスコネクタ1は、メスコネクタ2との接続時に、延在方向Aにおいてメスコネクタ2と近接させる操作のみで、メスコネクタ2と容易に接続可能である。
【0088】
また、本実施形態の移動体30は、上述したように、延在方向Aにおいて相対的に移動可能な第1移動体31及び第2移動体32を備える。そして、図15(a)、図15(b)に示すように、第2移動体32は、第1移動体31がハウジング本体20に対して延在方向Aに移動しないように係止されている状態で、第1移動体31及びハウジング本体20に対して延在方向Aに移動可能である。より具体的に、第2移動体32は、第1移動体31がハウジング本体20に対して延在方向Aに移動しないように係止されている状態で、突出位置(図15(a)参照)と、退避位置(図15(b)参照)と、の間で第1移動体31に対して延在方向Aに移動可能である。「突出位置」とは、第2移動体32が、第1移動体31より延在方向Aの遠位側に向かって弁体50と共に突出する位置を意味する(図15(a)参照)。また、「退避位置」とは、第2移動体32が、突出位置より延在方向Aの近位側に弁体50と共に退避する位置を意味する(図15(b)参照)。
【0089】
このように、移動体30が延在方向Aに相対移動可能な第1移動体31及び第2移動体32を備えることで、上述した第2移動体32の突出位置と退避位置との間の移動を実現できる。第2移動体32を突出位置とすることで、第2移動体32に保持されている弁体50の天面52を、オスコネクタ1の外部から清掃し易い位置に配置できる。本実施形態では、弁体50の天面52が、オスコネクタ1全体の遠位端を構成している。
【0090】
<オスコネクタ1を備える医療器具>
最後に、図16を参照して、上述したオスコネクタ1を備える医療器具としての輸液チューブセット100について説明する。図16は、オスコネクタ1を備える輸液チューブセット100を、上述したメスコネクタ2を備える別の輸液チューブセット110に接続する様子を示す図である。輸液チューブセット100及び別の輸液チューブセット110は、生体に薬液等の輸液を投与するために用いられる。図16に示すように、輸液チューブセット100は、薬液容器200と接続される接続器具102と、この接続器具102よりも下流側である遠位側に位置するオスコネクタ1と、接続器具102とオスコネクタ1とを繋ぐ医療用チューブ103と、を備えている。また、医療用チューブ103の途中には、その部分を閉塞するクランプ104が装着されていてもよい。このクランプ104は、医療用チューブ103を外側から挟持するように押圧して、医療用チューブ103内を圧閉するよう構成される。
【0091】
このような構成の輸液チューブセット100では、クランプ104を開放した状態で、薬液容器200内の薬液等の液体が接続器具102から医療用チューブ103を通じてオスコネクタ1に流入する。そして、オスコネクタ1が、例えば、混注ポートとして上述したメスコネクタ2を備える別の輸液チューブセット110に、メスコネクタ2を介して接続されている場合には、オスコネクタ1に流入した液体は、オスコネクタ1及びメスコネクタ2内を通過し、別の輸液チューブセット110へと流入し、生体まで供給される。
【0092】
接続器具102は、近位端部に位置し、薬液容器200に接続される第1接続部105と、遠位端部に位置し、医療用チューブ103に接続される第2接続部106と、外壁から側方に向かって突出して設けられ、シリンジが接続される第3接続部107と、を備えている。接続器具102内には、第1接続部105から第2接続部106まで連通し、薬液容器200内の液体を医療用チューブ103へと輸送可能なメイン流路と、第1接続部105と第3接続部107との間で連通し、薬液容器200と第3接続部107に接続されるシリンジとの間で液体の輸送が可能なサブ流路と、が区画されている。
【0093】
したがって、例えば抗癌剤を含む薬液が内部に収容されたシリンジを、接続器具102の第3接続部107と接続することにより、シリンジ内の薬液を接続器具102のサブ流路を介して薬液容器200へと輸送することができる。そして、薬液容器200内に収容された抗癌剤を含む薬液は、接続器具102のメイン流路及び医療用チューブ103内を通じて、オスコネクタ1まで供給される。
【0094】
上述したように、オスコネクタ1の遠位側にメスコネクタ2を接続し、抗癌剤を含む薬液を別の輸液チューブセット110内へ供給することにより、抗癌剤を含む薬液を生体へと投与することができる。そして、薬液投与が完了し、オスコネクタ1とメスコネクタ2との接続を解除する際には、オスコネクタ1の弁体50が閉鎖するため、オスコネクタ1の遠位端から抗癌剤を含む薬液が漏れ出ることが抑制される。
【0095】
オスコネクタ1を備える医療器具として輸液チューブセット100を例示したが、オスコネクタ1は、輸液チューブセットに限らず、他の医療器具に用いることも可能である。例えば、シリンジ本体の先端部にオスコネクタ1を備えるシリンジとしてもよい。かかる場合には、例えば、上述した接続器具102の第3接続部107をメスコネクタ2と同様の構成とし、オスコネクタ1を備えるシリンジを、第3接続部107に接続するようにすればよい。
【0096】
本開示に係るオスコネクタ、及び、オスコネクタを備える医療器具は、上述した実施形態の構成に限定されず、請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。上述した実施形態の弁体50は、蛇腹筒部56によって延在方向Aに圧縮変形可能な構成であるが、この構成に限られない。弁体50は、例えば、移動体30と共に延在方向Aに移動可能な構成であってもよい。また、弁体50のスリット51及び弾性弁体70のスリット71は、予め設けられていなくてもよく、流路管部材40に穿刺されて連通可能な構成であってもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、オスコネクタ1の第1係止部としての係止爪31b2及び第2係止部としての係止爪22b1が、メスコネクタ2の被係止部としての同一の環状溝65に嵌合し、メスコネクタ2を係止する構成であるが、この構成に限られない。つまり、オスコネクタ1の第1係止部が係合する被係止部と、オスコネクタ1の第2係止部が係合する被係止部と、はメスコネクタ2の別々の部位であってもよい。また、被係止部の構成は、本実施形態の環状溝65に限られず、第1係止部及び第2係止部の構成に合わせて適宜変更可能である。
【0098】
また、上述の実施形態では、オスコネクタ1に接続可能なメスコネクタ2として、ストレートタイプの第2流路66を備える所謂「I型コネクタ」を例示説明したが、この構成に限られない。オスコネクタ1に接続可能なメスコネクタ2は、例えば、上流ポート、下流ポート、及び、オスコネクタ1を接続可能な混注ポート、を備える、例えばT字タイプのメスコネクタであってもよい。更に、上述の実施形態のオスコネクタ1は、図1等に示すストレートタイプのメスコネクタ2のみならず、図17に示すように、T字タイプのメスコネクタ82も接続可能に構成されている。T字タイプのメスコネクタ82の混注ポート83は、上述した実施形態で示すメスコネクタ2のうちオスコネクタ1と接続可能な部分と同様の構成を有する。T字タイプのメスコネクタ82における上流ポート84及び下流ポート85は、オスコネクタ1が混注ポート83に接続されている状態で、ハウジング本体20の筒状部21の端面に形成されている4つの凹部21cのうち、接続前状態(図4参照)において係止爪部31b(図1等参照)と係合しない残りの2つの凹部21cの位置を通じて、外部に延在するように構成されている。上述の実施形態のオスコネクタ1では、接続前状態(図4参照)において係止爪部31b(図1等参照)と係合する2つの凹部21cが、径方向Bで対向する位置に配置されている。また、上述の実施形態のオスコネクタ1では、メスコネクタ82の上流ポート84及び下流ポート85を受け入れる2つの凹部21cについても、径方向Bで対向する位置に配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示は、オスコネクタ及び医療器具に関する。
【符号の説明】
【0100】
1:オスコネクタ
2:メスコネクタ
10:第1ハウジング
11:中空部
20:ハウジング本体
21:筒状部
21a:開口
21b:長溝部
21b1:壁部
21c:凹部
22:係止爪部
22a:支持部
22b:爪本体部
22b1:係止爪(第2係止部の例)
22c:操作部
25a:傾斜面
25b:引っ掛かり面
29:中空部
30:移動体
31:第1移動体
31a:本体部
31a1:長孔
31a2:突起部
31b:係止爪部
31b1:アーム部
31b2:係止爪(第1係止部の例)
32:第2移動体
32a:外筒部
32a1:突起部
32b:フランジ部
32c:内筒部
32c1:環状突起
32c2:遠位端
33:係合面
39:中空部
40:流路管部材
41:第1流路
42:開口
43:医療器具接続部
44:先端部
45:フランジ部
46:流路管本体
50:弁体
51:スリット
52:天面
52a:凸部
56:蛇腹筒部
57:先端部
57a:環状溝
58:フランジ部
60:第2ハウジング
61:オスコネクタ挿入部
62:キャップ
62a:天面
63:ホルダ
65:環状溝
66:第2流路
70:弾性弁体
71:スリット
72:天面
82:メスコネクタ
83:混注ポート
84:上流ポート
85:下流ポート
100:輸液チューブセット(オスコネクタを備える医療器具の例)
110:輸液チューブセット
102:接続器具
103:医療用チューブ
104:クランプ
105:第1接続部
106:第2接続部
107:第3接続部
A:流路管部材の延在方向
B:流路管部材の径方向
C:流路管部材の周方向
O:流路管部材の中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17