(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】弾性波装置、フィルタ、分波器及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20250516BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20250516BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20250516BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/145 Z
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
(21)【出願番号】P 2023534771
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027079
(87)【国際公開番号】W WO2023286704
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2021117708
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 富夫
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/120153(WO,A1)
【文献】特開平11-261370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208446(WO,A1)
【文献】特開昭56-54114(JP,A)
【文献】特開2015-56746(JP,A)
【文献】特開平10-173467(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017422(WO,A1)
【文献】特開2006-246510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有している圧電体と、
前記第1面上に位置するIDT電極と、を有し、
前記IDT電極は、
第1バスバーと、
前記第1バスバーと対向する第2バスバーと、
前記第1バスバーにそれぞれ電気的に接続した複数の第1電極指と、
前記第2バスバーにそれぞれ電気的に接続し、弾性波伝搬方向に前記複数の第1電極指と交互に配列されている、複数の第2電極指と、
前記第1バスバ
ーと前記複数の第1電極指との間に介在し、前記第1バスバーに対して並列に延びているとともに互いに並列に延びている複数のバー電極と、
前記第1バスバーと前記第1バスバーに隣り合うバー電極との間に介在して両者を接続している接続部と、隣り合うバー電極の間に介在して両者を接続している接続部と、を含む複数の接続部と、を有し、
前記複数の接続部の少なくとも一部は、前記複数の第1電極指の延在方向に対して、不連続に配置されており、
前記隣り合うバー電極と前記弾性波伝搬方向において隣り合う接続部とに囲まれる開口領域の形状が、前記弾性波伝搬方向を長手方向とする楕円状であり、前記長手方向の長さが互いに異なる複数の前記開口領域が前記複数のバー電極の配列方向に並んでいる
弾性波装置。
【請求項2】
前記複数の接続部が、前記延在方向に対して傾斜する方向に並んでいる、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記複数の接続部が、前記複数の第1電極指の側へ向かって閉じるV字状に配置されている、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記複数の接続部が、前記複数の第1電極指の側へ向かって開くY字状に配置されている、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1面の平面視において、前記IDT電極が位置している領域は、
前記
第1バスバーが位置しているバスバー領域と、
前記複数のバー電極及び前記複数の接続部が位置している介在領域と、
前記複数の第2電極指の先端に対して前記介在領域側に隣接するギャップが位置するギャップ領域と、
前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが前記弾性波伝搬方向に重なる交差領域とを有しており、
前記交差領域は、
当該交差領域の前記延在方向における中央に位置し、前記ギャップ領域よりも音速が低い中央領域と、
前記中央領域と前記ギャップ領域との間に位置し、前記中央領域よりも音速が低いエッジ領域と、を有し、
前記介在領域は、前記バスバー領域よりも音速が高い
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
最も前記複数の第1電極指の側に位置するバー電極に接続され、先端が前記複数の第2電極指の先端とギャップを介して対向する複数のダミー電極を更に有している、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項7】
圧電膜からなる前記圧電体の前記第1面とは反対側に重なり、前記圧電体より音速の低い低音速膜と、
前記低音速膜の前記圧電膜とは反対側に重なり、前記圧電体より音速の高い高音速膜と、を更に有している、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項8】
請求項1に記載の弾性波装置と、
前記第1面上に位置しており、前記IDT電極とラダー型に接続されてラダー型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極と、
を有しているフィルタ。
【請求項9】
請求項1に記載の弾性波装置と、
前記第1面上に位置しており、前記IDT電極に対して前記弾性波伝搬方向に並べられて多重モード型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極と、
を有しているフィルタ。
【請求項10】
アンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続されている送信フィルタと、
前記アンテナ端子に接続されている受信フィルタと、
を有しており、
前記送信フィルタ及び受信フィルタの少なくとも一方が、請求項8又は9のフィルタによって構成されている
分波器。
【請求項11】
請求項10に記載の分波器と、
前記アンテナ端子に接続されているアンテナと、
前記送信フィルタ及び前記受信フィルタに接続されているICと、
を有している通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波(acoustic wave)から電気信号への変換、及び電気信号から弾性波への変換の少なくとも一方が可能な弾性波装置、当該弾性波装置を含むフィルタ、当該フィルタを含む分波器、並びに当該分波器を含む通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波装置として、圧電層と、圧電層上に位置するIDT(Interdigital Transducer)電極とを有するものが知られている(例えば、下記特許文献1)。IDT電極は、1対の櫛歯電極を有する。各櫛歯電極は、バスバーと、バスバーから互いに並列に延びる複数の電極指とを有する。1対の櫛歯電極は、互いに噛み合うように配置される。特許文献1では、バスバーが延びる方向に配列された複数の開口をバスバーに設けたIDT電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る弾性波装置は、第1面を有している圧電体と、前記第1面上に位置するIDT電極と、を有している。前記IDT電極は、第1バスバーと、第2バスバーと、複数の第1電極指と、複数の第2電極指と、複数のバー電極と、複数の接続部と、を有している。前記第2バスバーは、前記第1バスバーと対向する。前記複数の第1電極指は、前記第1バスバーにそれぞれ電気的に接続されている。前記複数の第2電極指は、前記第2バスバーにそれぞれ電気的に接続され、弾性波伝搬方向に前記複数の第1電極指と交互に配列されている。前記複数のバー電極は、前記第1バスバーの間と前記複数の第1電極指との間に介在し、前記第1バスバーに対して並列に延びているとともに互いに並列に延びている。前記複数の接続部は、前記第1バスバーと前記第1バスバーに隣り合うバー電極との間に介在して両者を接続している接続部と、隣り合うバー電極の間に介在して両者を接続している接続部と、を含む。前記複数の接続部の少なくとも一部は、前記複数の第1電極指の延在方向に対して、不連続に配置されている。
【0005】
本開示の一態様に係るフィルタは、上記弾性波装置と、前記第1面上に位置しており、前記IDT電極とラダー型に接続されてラダー型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極と、を有している。
【0006】
本開示の一態様に係るフィルタは、上記弾性波装置と、前記第1面上に位置しており、前記IDT電極に対して前記弾性波伝搬方向に並べられて多重モード型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極と、を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る分波器は、アンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されている送信フィルタと、前記アンテナ端子に接続されている受信フィルタと、を有している。前記送信フィルタ及び受信フィルタの少なくとも一方が、上記のいずれかのフィルタによって構成されている。
【0008】
本開示の一態様に係る通信装置は、上記の分波器と、前記アンテナ端子に接続されているアンテナと、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタに接続されているIC(Integrated Circuit)と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る弾性波装置の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の領域IIの拡大図であり、IDT電極の具体例の一部を示す図である。
【
図3A】IDT電極の他の具体例(第2例)を示す図である。
【
図3B】IDT電極のさらに他の具体例(第3例)を示す図である。
【
図3C】IDT電極のさらに他の具体例(第4例)を示す図である。
【
図3D】IDT電極のさらに他の具体例(第5例)を示す図である。
【
図4A】IDT電極のさらに他の具体例(第6例)を示す図である。
【
図4B】IDT電極のさらに他の具体例(第7例)を示す図である。
【
図4C】IDT電極のさらに他の具体例(第8例)を示す図である。
【
図4D】IDT電極のさらに他の具体例(第9例)を示す図である。
【
図4E】IDT電極のさらに他の具体例(第10例)を示す図である。
【
図5】IDT電極のさらに他の具体例(第11例)を示す図である。
【
図6】
図1のVI-VI線における断面の例を示す図である。
【
図7】
図1のVI-VI線における断面の他の例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る弾性波共振子の構成を示す平面図である。
【
図9】実施形態に係る分波器の構成を模式的に示す回路図である。
【
図10】実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】第1比較例及び第1実施例に係る共振子の特性を示す図である。
【
図12】第1~第3実施例に係る共振子の特性を示す図である。
【
図13】第2及び第3比較例並びに第4実施例に係る共振子の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明で用いられる図は模式的なものである。従って、例えば、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。寸法比率等が図面同士で一致しないこともある。特定の形状又は寸法等が誇張されて示されることもある。
【0011】
本開示に係る弾性波装置は、いずれの方向が上方または下方とされてもよい。ただし、以下では、便宜的に、D1軸、D2軸およびD3軸からなる直交座標系を定義するとともに、D3軸の正側を上方として、上面または下面等の用語を用いることがある。また、平面視または平面透視という場合、特に断りがない限りは、D3方向に見ることをいう。なお、D1軸は、後述する圧電体の上面に沿って伝搬する弾性波の伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電体の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電体の上面に直交するように定義されている。
【0012】
<弾性波装置>
(弾性波装置の概要)
図1は、実施形態に係る弾性波装置1(以下、単に「装置1」ということがある。)の要部の構成を示す平面図である。
【0013】
装置1は、例えば、圧電体3(後述する
図6等を参照)と、圧電体3の上面3a(第1面の一例)上に位置しているIDT電極5とを有している。
図1は、上面3aの平面視となっている。ただし、圧電体3に係る符号及び上面3aの外縁等の図示は省略されている。
【0014】
IDT電極5に電圧が印加されることによって、圧電体3の交差領域R0(IDT電極5のD2方向中央側の領域)をD1方向に伝搬する弾性波が励振される。及び/又は、弾性波が交差領域R0をD1方向に伝搬することによって、圧電体3に電荷が生成され、IDT電極5に電圧が印加される。装置1は、例えば、このような弾性波と電圧(電気信号)との間の変換を利用する共振子及び/又はフィルタを構成してよい。なお、以下において、D1方向を弾性波伝搬方向又は伝搬方向等ということがある。
【0015】
IDT電極5は、圧電体3の上面3aに重なる導体層によって構成されている。また、IDT電極5は、1対の櫛歯電極7を含んでいる。各櫛歯電極7は、例えば、バスバー9と、バスバー9に電気的に接続されている複数の電極指11と、を含んでいる。1対の櫛歯電極7は、複数の電極指11が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。上記の交差領域R0は、一方の櫛歯電極7の複数の電極指11と他方の櫛歯電極7の複数の電極指11とが弾性波伝搬方向に重なる領域である。
【0016】
一般に、各櫛歯電極7において、複数の電極指11は、バスバー9から延びる。すなわち、両者は直接的に接続されている。一方、本実施形態においては、各櫛歯電極7は、バスバー9と複数の電極指11との間に介在する介在電極41を有している。これにより、例えば、後に詳述するように、横モードのスプリアスを低減することができる。
【0017】
装置1において、介在電極41に係る構成以外の構成は、種々の態様とされてよく、例えば、公知の態様とされても構わない。このような公知の態様とされても構わない構成については、適宜に説明を省略する。
【0018】
実施形態の説明では、概ね、以下の順に説明を行う。
・IDT電極5(主として介在電極41以外の部分)(
図1)
・介在電極41(
図2)
・IDT電極5(特に介在電極41)の種々の具体例(
図2~
図5)
・弾性波の速度プロファイル(
図1)
・圧電体を含む基板の種々の構成例(
図6及び
図7)
・弾性波装置のその他の構成
・弾性波装置のまとめ
【0019】
(IDT電極)
バスバー9は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向(D1方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。1対のバスバー9は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)において互いに対向している。各バスバー9の交差領域R0側の縁部は、例えば、直線状である。また、1対のバスバー9において、交差領域R0側の縁部は、例えば、互いに平行(「平行」の概念は「曲線」に拡張されてよい。)である。別の観点では両縁部の距離(D2方向)はD1方向の位置によらずに一定である。
【0020】
図示の例とは異なり、バスバー9は、幅が変化したり、弾性波の伝搬方向に対して傾斜したりしていてもよい。また、各バスバー9において、交差領域R0側の縁部は、曲線状であってもよいし、互いに交差する複数の直線からなる形状であってもよい。また、1対のバスバー9において、互いに対向している縁部同士の距離は、D1方向の位置に応じて変化してもよい。
【0021】
バスバー9の長さ(D1方向)は、例えば、1対の櫛歯電極7における複数の電極指11のピッチp及び本数の積と概ね同等とされてよい。バスバー9の幅(D2方向)は任意である。一般に、バスバー9の幅は、電極指11の幅(D1方向)よりも大きい。例えば、バスバー9の幅は、1p以上とされてよい。
【0022】
複数の電極指11は、例えば、互いに同じ形状及び寸法を有している。図示の例とは異なり、複数の電極指11は、互いに異なる形状及び/又は寸法を有していても構わない。例えば、複数の電極指11は、互いに長さが異なっていてもよい。すなわち、IDT電極5は、いわゆるアポダイズが施されたものであってもよい。
【0023】
各電極指11は、例えば、概略、その中心線が弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。電極指11は、一定の幅(D1方向の長さ)で延びていてもよいし、長さ方向(D2方向)の位置に応じて幅が変化していてもよい(図示の例)。
図1に示す例では、電極指11は、先端と根元側とに、他の大部分(主部11a)よりも幅が広い拡幅部11bを有している。これにより、いわゆるピストンモード(又はこれに類似するモード。以下、同様。)が利用され、ひいては、横モードのスプリアスが低減される。なお、本実施形態の説明では、当該態様を前提とした表現をすることがある。
【0024】
各櫛歯電極7において、複数の電極指11は、弾性波の伝搬方向に配列されている。各櫛歯電極7において、複数の電極指11の先端(又は根元)を結ぶ線(不図示)は、例えば、伝搬方向に平行な直線状である。ただし、図示の例とは異なり、上記線は、伝搬方向に傾斜していてもよいし、曲線状であってもよいし、互いに交差する複数の直線からなる形状であってもよい。なお、上記のようにピストンモードが利用される態様においては、例えば、上記線は、伝搬方向に対して平行な、又は傾斜する、直線状とされてよい。
【0025】
一方の櫛歯電極7の複数の電極指11と、他方の櫛歯電極7の電極指11とは、弾性波の伝搬方向に交互に配列されている。なお、このようにいうとき、一方の櫛歯電極7の複数の電極指11と、他方の櫛歯電極7の電極指11とは、1本ずつ交互に配列されていてもよいし(図示の例)、2以上の本数ずつ交互に配列されていてもよい。また、いわゆる間引き等によって、特異的な部分が存在していても構わない。実施形態の説明では、1本ずつ交互に配列されている態様を例に取る。
【0026】
1対の櫛歯電極7における複数の電極指11のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指11の中心間距離)は、IDT電極5内において基本的に一定である。なお、IDT電極5は、一部にピッチpに関して特異な部分を有していてもよい。特異な部分としては、例えば、大部分(例えば8割以上)よりもピッチpが狭くなる狭ピッチ部、大部分よりもピッチpが広くなる広ピッチ部、少数の電極指11が実質的に間引かれた間引き部が挙げられる。
【0027】
実施形態の説明において、ピッチpという場合、特に断りがない限りは、上記のような特異な部分を除いた部分(複数の電極指11の大部分)のピッチをいうものとする。また、特異な部分を除いた大部分の複数の電極指11においても、ピッチが変化しているような場合においては、大部分の複数の電極指11のピッチの平均値をピッチpの値として用いてよい。
【0028】
電極指11の本数は、IDT電極5(装置1)に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。
図1は模式図であることから、電極指11の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多くの電極指11が配列されてよい。例えば、電極指11の本数は100本以上とされてよい。なお、
図1は、IDT電極5の一部を抽出して示す図として捉えられてもよい。
【0029】
一方の櫛歯電極7の各電極指11の先端は、他方の櫛歯電極7の介在電極41(より詳細には最も電極指11側のバー電極43(後述))の縁部とギャップG1を介して対向している。複数のギャップG1のD2方向における長さは、例えば、互いに同一である。当該長さは、適宜に設定されてよく、例えば、0.1p以上0.5p以下とされてよい。
【0030】
1対の櫛歯電極7に電圧が印加されると、複数の電極指11によって圧電体3の上面3aに電圧が印加され、圧電体3の上面(圧電体3が相対的に厚い場合)又は圧電体3の全体(圧電体3が相対的に薄い場合)が振動する。これにより、上面3aに沿って伝搬する弾性波が励振される。このとき、複数の電極指11によって励振された複数の弾性波は、その半波長が概ねピッチpと同等であるときに、複数の電極指11に直交する方向(D1方向)において互いに同相となり、その振幅が足し合わされる。すなわち、ピッチpを半波長とし、D1方向に伝搬する弾性波が最も励振されやすい。その結果、IDT電極5に印加された電圧のうち、主として、概ねピッチpを半波長とする弾性波の周波数と同等の周波数を有する成分が弾性波に変換される。また、上面3aのうち1対の櫛歯電極7の配置領域に弾性波が生じた場合においては、上記とは逆の原理によって、主として、概ねピッチpを半波長とし、D1方向に伝搬する弾性波が電圧に変換される。このような原理を利用して、共振子又はフィルタが実現される。
【0031】
装置1においては、適宜なモードの弾性波が利用されてよい。例えば、弾性波は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)であってよい。SAWとしては、例えば、レイリー波又はリーキー波が利用されてよい。また、弾性波は、薄板状の圧電体を伝搬する板波であってよい。板波としては、例えば、A1モードのラム波、S0モードのラム波及びSH(Shear Horizontal)型の板波が利用されてよい。また、弾性波のモードは、このように明確に特定又は区別できなくてもよい。
【0032】
電極指11のピッチpは、上記のように、基本的に、意図されている共振周波数と同等の周波数を有している弾性波の半波長である。ピッチpの絶対値を例示すると、0.5μm以上15μm以下である。電極指11の長さ(D2方向)は、例えば、10p以上又は20p以上とされてよく、また、100p以下又は50p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0033】
電極指11のピッチpの2倍(2p)に対する電極指11の幅(D1方向)の比(=幅/2p)をデューティー比ということがある。デューティー比は適宜に設定されてよい。例えば、主部11a(若しくは全長に亘って一定の幅を有する電極指11)のデューティー比は、0.40以上又は0.45以上とされてよく、また、0.60以下又は0.55以下とされてよい。上記の上限と下限とは、いかように組み合わされてもよい。また、拡幅部11bのデューティー比は、上記の主部11aのデューティー比よりも大きいことを条件として、0.50以上又は0.55以上とされてよく、また、0.80以下、0.70以下又は0.65以下とされてよい。上記の上限と下限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0034】
図示の例のように、各電極指11が1つの主部11aと2つの拡幅部11bとを有する構成である態様において、これらの長さ(D2方向)は適宜に設定されてよい。例えば、1つの拡幅部11bの長さは、0.5p以上、0.7p以上又は0.9p以上とされてよく、また、2p以下、1.5p以下又は1.1p以下とされてよい。上記の上限と下限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0035】
IDT電極5(導体層)の厚さは、例えば、概ね、平面方向(D1-D2平面に平行な方向)の位置によらずに一定である。導体層の厚さは、装置1に要求される特性に応じて適宜に設定されてよい。例えば、導体層の厚さは、0.04p以上0.20p以下、及び/又は50nm以上600nm以下とされてよい。
【0036】
導体層は、例えば、金属により形成されている。金属は、適宜な種類のものとされてよく、例えば、アルミニウム(Al)又はAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、Al-銅(Cu)合金である。導体層は、複数の金属層から構成されていてもよい。例えば、導体層は、圧電体3の上面3aに重なるチタン(Ti)からなる比較的薄い層と、その上に重なるAl又はAl合金とによって構成されてよい。Tiは、例えば、Al又はAl合金と圧電体3との接合性の強化に寄与する。
【0037】
(介在電極)
図2は、
図1の領域IIの拡大図である。
【0038】
なお、後に例示するように、介在電極41の具体的な形状は種々可能である。
図2では、第1例に係る介在電極41Aが例示されている。
図2(及び
図2に類似する図面)を参照して行う説明において、特に断りがない限り、また、矛盾等が生じない限り、バスバー9、電極指11及び介在電極41は、互いに接続されているもの(1つの櫛歯電極7内のもの)を指す。
【0039】
介在電極41は、例えば、概略、格子状若しくは網目状に構成されている。具体的には、例えば、介在電極41は、複数(図示の例では8本)のバー電極43及び複数の接続部45の2種の部位を有している。複数のバー電極43は、バスバー9に並列に延びているとともに、互いに並列に延びている。隣り合う2つのバー電極43(又は隣り合うバー電極43及びバスバー9)の間の領域をスリット領域S1と呼称することがある。各接続部45は、スリット領域S1に位置して、隣り合う2つのバー電極43(又は隣り合うバー電極43及びバスバー9)を接続する。
【0040】
複数の接続部45の少なくとも一部(図示の例では全部)は、電極指11の延在方向(D2方向)に対して不連続に配置されている。すなわち、複数の接続部45の少なくとも一部は、バスバー9から最も電極指11側のバー電極43まで延びるD2方向に平行な直線を構成するように配置されていない。別の観点では、少なくとも1つの接続部45の少なくとも一部は、自己が位置するスリット領域S1以外の少なくとも1つのスリット領域S1(例えば隣のスリット領域S1)における導体(IDT電極5)の非配置領域とD2方向に重なる。
【0041】
上記のように複数の接続部45を配置することによって、例えば、スプリアスを低減することができる。当該効果について、出願人は、試作品における実測値及びシミュレーション計算によって確認しており、後に、いくつかの例を示す。スプリアスを低減できる原理としては、以下に説明するものが挙げられる。
【0042】
弾性波は、導体(IDT電極5)の配置領域と非配置領域との境界で反射する。仮に、全ての接続部45がD2方向に平行な直線を構成するように配置されている場合、横モードのスプリアスは、上記直線のD1方向の位置においては、最も電極指11側のバー電極43で反射し、他のD1方向の位置においては、複数のバー電極43(及びバスバー9)それぞれにより反射する。すなわち、反射が生じるD2方向における位置は、基本的に、D1方向の位置によらずに一定である。その結果、横モードのスプリアスは、波長、並びに節及び腹の位置が揃いやすく、ひいては、互いに強め合いやすい。
【0043】
一方、本実施形態のように複数の接続部45がD2方向に対して不連続に配置されていると、接続部45とD2方向に重なる位置に導体の非配置領域が存在する。この非配置領域とバー電極43との間でも横モードのスプリアスが反射する。また、接続部45の形状によっては、接続部45においても反射が生じる。これらの新たな反射の位置は、D1方向及びD2方向の位置が分散されている。その結果、横モードのスプリアスは、波長、並びに節及び腹の位置が分散され、ひいては、互いに強め合う作用が減じられる。
【0044】
上記の原理から理解されるように、複数の接続部45がD2方向に対して不連続に配置される限り、複数のバー電極43及び複数の接続部45の数、形状、位置及び寸法等は任意である。例えば、以下のとおりである。
【0045】
複数のバー電極43の数は、2以上の任意の数とされてよい。2本のバー電極43が設けられていると、当該2本のバー電極43及びバスバー9によって2つのスリット領域S1が構成される。ひいては、互いに異なるスリット領域S1に位置する少なくとも2つの接続部45をD2方向に対して不連続に配置できる。
【0046】
複数のバー電極43は、例えば、互いに同一の形状及び寸法を有している。また、各バー電極43は、概略、一定の幅で直線状に延びる形状である。別の観点では、バー電極43の縁部又は中心線の形状は、バスバー9の電極指11側の縁部の形状と同じ、及び/又は介在電極41とギャップG1を介して対向している電極指11の先端(着目しているバー電極43が属する櫛歯電極7と噛み合う櫛歯電極7の電極指11の先端)を結ぶ線の形状と同じである。
【0047】
上記の例示の裏返しとなるが、念のために記載すると、図示の例とは異なり、少なくとも1つのバー電極43は、他の少なくとも1つのバー電極43に対して、互いに異なる形状及び/又は寸法を有していてもよい。バー電極43は、D1方向の位置に応じて幅(D2方向)が変化してもよい。バー電極43の中心線及び/又は縁部は、曲線状であったり、互いに交差する複数の直線を有する形状であったりしてもよい。また、バー電極43の中心線及び/又は縁部の形状は、バスバー9の電極指11側の縁部の形状と異なっていてもよいし、及び/又は介在電極41とギャップG1を介して対向している電極指11の先端を結ぶ線の形状と異なっていてもよい。
【0048】
バー電極43の長さ(D1方向)は、バスバー9の長さと概ね同等とされてよい。バー電極43の幅は、例えば、バスバー9の幅(D2方向)及び/又は電極指11の幅(D1方向)に対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。また、例えば、バー電極43の幅は、0.1p以上又は0.2p以上とされてよく、0.5p以下又は0.3p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0049】
既述のように、複数のバー電極43は、バスバー9に対して並列に延びているとともに互いに並列に延びている。より詳細には、図示の例では、複数のバー電極43(例えば中心線。以下、同様。)及びバスバー9の電極指11側の縁部は、互いに平行に延びている。別の観点では、これらのD2方向(電極指11の延在方向)における距離は、D1方向(弾性波の伝搬方向)の位置によらずに一定である。複数のバー電極43(及びバスバー9)が延びる方向は、例えば、D1方向である。
【0050】
図示の例とは異なり、少なくとも1つのバー電極43の一部又は全部は、バスバー9、他の少なくとも1つのバー電極43、及び/又はD1方向に対して傾斜していてもよい。また、その結果、バー電極43は、バスバー9及び/又は他のバー電極43に対して交差する部分を有していてもよい。ただし、この場合、交差する部分の一部を接続部45の一種として捉え、複数のバー電極43は交差していないと捉えてもよい。
【0051】
複数のバー電極43のピッチ(例えば互いに隣り合う2本のバー電極43の中心間距離)は、例えば、互いに同一である。ただし、少なくとも1つのピッチが他のピッチと異なっていてもよい。また、バー電極43のピッチは、電極指11のピッチpに対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。バー電極43のピッチは、例えば、0.2p以上又は0.4p以上とされてよく、1p以下又は0.6p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0052】
複数のスリット領域S1の幅(D2方向)は、例えば、互いに同一である。ただし、少なくとも1つの幅が他の幅と異なっていてもよい。また、スリット領域S1の幅は、電極指11のピッチpに対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。例えば、スリット領域S1の幅は、0.1p以上又は0.2p以上とされてよく、0.5p以下又は0.3p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0053】
バー電極43のピッチに対するバー電極43の幅の比(後者を前者で割った値。デューティー比)は、例えば、電極指11のデューティー比に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。例えば、バー電極43のデューティー比は、0.1以上又は0.4以上とされてよく、0.8以下又は0.6以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0054】
複数の接続部45の形状及び寸法は、例えば、互いに同一である。そして、複数の接続部45のD2方向に対する不連続性は、複数の接続部45の位置(例えば幾何中心の位置。特に断りが無い限り、以下、同様。)がD2方向に平行な直線上に位置しない(D1方向に互いにずれる)ことによって実現されている。ただし、図示の例とは異なり、複数の接続部45の形状及び寸法は、互いに異なっていてもよい。この場合、D1方向の位置のずれに加えて、又は代えて、複数の接続部45の形状及び/又は寸法の相違によって、D2方向に対する不連続性が実現されてもよい。
【0055】
接続部45の形状、例えば、D1方向及びD2方向に平行な4辺を有する矩形状(
図4A参照)、若しくはD1方向に平行な2辺を有する平行四辺形状(
図2の例)、又はこれらのいずれとも言えない形状(例えば
図5参照)とされてよい。接続部45のD2方向の長さは、スリット領域S1の幅と同等であり、当該幅については、既述のとおりである。接続部45のD1方向の長さは適宜に設定されてよい。例えば、接続部45のD1方向の長さは、接続部45のD2方向の長さに対して、短くてもよいし、同等でもよいし、長くてもよい。また、例えば、接続部45のD1方向の長さは、0.1p以上、0.3p以上又は0.5p以上とされてよく、また、1p以下、0.8p以下又は0.7p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
【0056】
(IDT電極(特に介在電極)の種々の具体例)
図3A~
図5は、IDT電極5(特に介在電極41)の他の具体例を示す平面図である。
図3A~
図3D及び
図5は、
図2と同様に、
図1の領域IIに相当する範囲を示している。
図4A~
図4Eは、1対の櫛歯電極7のD1方向における一部の範囲を示している。なお、
図3A~
図4Eにおいては、直交座標系D1-D2-D3の図示が省略されているが、
図2と同様に、図の左右方向がD1方向であり、図の上下方向がD2方向である。
【0057】
これらの図に例示されている種々の具体例は、主として、複数の接続部45の配置が互いに異なっている。以下、
図2から順に、各具体例について説明する。なお、
図2に示されているIDT電極5A(介在電極41A)の説明の後においては、基本的に、先に説明されたIDT電極5との相違点について述べる。特に言及が無い事項については、先に説明されたIDT電極5と同様とされたり、先に説明されたIDT電極5から類推されたりしてよい。また、複数の具体例間において、互いに対応する部位が互いに異なる形状を有していても、便宜上、当該部位に同一の符号を用いることがある。
【0058】
(IDT電極の第1例)
図2に示すIDT電極5A(介在電極41A)では、複数の接続部45は、D2方向に傾斜する直線を構成するように配置されている。当該直線は、例えば、バスバー9から、最も電極指11側のバー電極43まで延びている。また、D1方向において隣り合う2本の直線に着目すると、複数の接続部45は、電極指11側に向かって閉じる(又は開く)V字状に配列されている。図示の例では、複数のV字がD1方向に互いにつながるように配列されている。換言すれば、複数の接続部45は、ジグザグにD1方向に延びる線上に配列されている。なお、図示の例とは異なり、D1方向の特定の位置に1つのV字が位置したり、隣り合うV字が互いに離れていたりしてもよい。
【0059】
図2の例では、最も電極指11側のスリット領域S1においては、2直線上の2つの接続部45がつながっている、又は1つの接続部45が2直線に共用されている。一方、最もバスバー9側のスリット領域S1においては、2直線上の2つの接続部45は互いに離れている。ただし、図示の例とは異なり、最も電極指11側のスリット領域S1において、2直線状の2つの接続部45は、互いに離れていてもよい。最もバスバー9側のスリット領域S1において、2直線状の2つの接続部45は、互いにつながっていてもよい(2直線に共用されていてもよい。)
【0060】
なお、最も電極指11側のスリット領域S1において、2直線上の2つの接続部45が互いに離れている場合においても、当該2つの接続部45の距離が大きくない限りは、電極指11側において閉じるV字が構成されていると捉えられてよい。例えば、最も電極指11側の2つの接続部45の間の隙間の大きさ(又は幾何中心同士の距離)が、1.5p以下、1.0p以下又は0.7p以下の場合は、電極指11側において閉じるV字が構成されていると捉えられてよい。バスバー9側において閉じるV字が構成されていると捉える場合についても同様である。また、複数のV字がD1方向に繰り返し配列されている態様において、V字同士がつながっていると捉える場合についても同様である。
【0061】
複数の接続部45がD2方向に対して傾斜する直線(又は曲線)に沿って配列されている態様において、最も電極指11側に位置する接続部45、及び最もバスバー9側に位置する接続部45のD1方向における位置は適宜に設定されてよい。例えば、最も電極指11側に位置する接続部45は、自己が属する櫛歯電極7の電極指11のD1方向における位置に位置していてもよいし(
図3Aの左右方向中央側を参照)、他の櫛歯電極7の電極指11のD1方向における位置に位置していてもよいし(
図2の例)、前者の位置と後者の位置との間の任意の位置に位置していてもよい。最もバスバー9の側に位置する接続部45についても同様である。
【0062】
複数の接続部45がD2方向に対して傾斜する直線(又は曲線)に沿って配列されている態様において、当該直線の傾斜角は適宜に設定されてよい。別の観点では、V字のD1方向における大きさは適宜に設定されてよい。さらに別の観点では、上記直線上における最も電極指11側に位置する接続部45と、最もバスバー9側に位置する接続部45とのD1方向における距離(相対位置)は適宜に設定されてよい。さらに別の観点では、複数のV字の配列のピッチは適宜に設定されてよい。
【0063】
例えば、直線状(又は曲線状)に配列された複数の接続部45の幾何中心を連ねた線を基準として、直線又はV字のD1方向における配置範囲を考える(他の具体例において直線又はV字等の配置範囲について説明するときも同様とする。)。このとき、1つの直線のD1方向における配置範囲は、0.1p以上又は0.2p以上とされてよく、また、2.0p以下、1.5p以下又は1.2p以下とされてよい。上記の下限と上限とは、いかようにも組み合わされてよい。
図2の例では、1つの直線のD1方向における配置範囲は、概ね1p(例えば0.8p以上1.2p以下)とされている。また、別の観点では、
図2の例では、V字のD1方向における配置範囲は、概ね2p(例えば1.8p以上2.2p以下)とされている。
【0064】
直線状(又は曲線状)に配列された複数の接続部45の-D1側又は+D1側の縁部に着目する。このとき、当該縁部は、例えば、D1方向に傾斜する同一直線上(又は同一曲線上)に位置している(
図4Cのように階段状になっていない。)。換言すれば、複数の接続部45の-D1側の縁部及び/又は+D側の縁部は、互いに滑らかにつながっているかのように構成されている(厳密にはバー電極43が介在している。)。なお、複数の接続部45の配列がV字又は他の形状をなすいずれの態様においても、-D1側の縁部及び/又は+D側の縁部は、滑らかにつながっているかのように構成されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0065】
直線状(又は曲線状)に配列された複数の接続部45において、隣り合う接続部45同士は、一部同士がD2方向に重なっていてもよいし(
図2の例)、重なっていなくてもよい(
図4A及び
図4Eを参照)。前者の場合における重なる量は、任意であり、例えば、1つの接続部45のD1方向における長さの半分に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。後者の場合における2つの接続部45の距離は任意であり、例えば、当該距離は0でもよいし(
図4A及び
図4Eの例)、0よりも大きくてもよい。
【0066】
(IDT電極の第2例)
図3Aに示す介在電極41B(IDT電極5B)は、
図2の介在電極41Aと同様に、V字状に配列された複数の接続部45を有している。ただし、介在電極41Bでは、V字のD1方向における大きさが介在電極41Aよりも小さくされている。別の観点では、D1方向の所定の長さ範囲において、V字を繰り返し配列する数が多くなっている。具体的には、介在電極41Bでは、1つの直線のD1方向における配置範囲は、概ね0.5p(例えば0.3p以上0.7p以下)とされている。また、別の観点では、
図3Aの例では、V字のD1方向における配置範囲は、概ね1p(例えば0.8p以上1.2p以下)とされている。
【0067】
(IDT電極の第3例)
図3Bに示す介在電極41C(IDT電極5C)では、複数の接続部45が電極指11側に開くY字状に配置されている。この例に示されるように、複数の接続部45は、D2方向に平行な直線状に配列される2以上の接続部45を含んでいても構わない。介在電極41Cに関しては、電極指11側に位置する複数(スリット領域S1の数よりも少ない数)の接続部45が電極指11側に開くV字状に配置されていると捉えられてもよい。従って、介在電極41AにおけるV字に関する説明は、適宜に介在電極41CのY字のうちのV字に援用されてよい。Y字のうちのV字状部分を構成するスリット領域S1の数と、Y字のうちのI字状部分を構成するスリット領域S1の数との比率は任意である。
【0068】
(IDT電極の第4例)
図3Cに示すIDT電極5Cでは、複数の電極指11がその全長に亘って一定の幅で延びている。
図3Cの例では、介在電極41として、
図2の介在電極41Aが例示されている。ただし、全長に亘って一定の幅で延びる電極指11は、他の介在電極41の具体例と組み合わされてもよい。同様に、拡幅部11bを有する電極指11は、いずれの介在電極41の具体例と組み合わされてもよい。
【0069】
(IDT電極の第5例)
図3Dに示すIDT電極5Eは、いわゆるダミー電極25を有している。複数のダミー電極25は、介在電極41(より詳細には最も電極指11側のバー電極43)から複数の電極指11と並列に延びている。一方の櫛歯電極7のダミー電極25の先端は、他方の櫛歯電極7の電極指11の先端とギャップG1を介して対向している。
【0070】
ダミー電極25の形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、ダミー電極25の形状は、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向に突出する形状とされている。また、図示の例では、ダミー電極25の幅は、拡幅部11bを有さない電極指11の幅(又は拡幅部11bを有する電極指11の主部11aの幅)と同じとされている。
【0071】
図示の例とは異なり、ダミー電極25の幅は、ギャップG1側及び/又はバスバー9側の一部が拡幅していてもよい。電極指11及びダミー電極25の拡幅部の有無の組み合わせは任意である。例えば、図示の例の他、拡幅部を有する電極指11と拡幅部を有さないダミー電極25との組み合わせ、拡幅部を有する電極指11と拡幅部を有するダミー電極25との組み合わせ、拡幅部を有さない電極指11と拡幅部を有するダミー電極25との組み合わせが採用されてもよい。また、拡幅部を有する電極指11と拡幅部を有さないダミー電極25との組み合わせにおいて、ダミー電極25の幅は、例えば、主部11aの幅と同等であってもよいし、拡幅部11bの幅と同等であってもよい。
【0072】
図3Dの例では、介在電極41として、
図2の介在電極41Aが例示されている。ただし、ダミー電極25は、他の介在電極41の具体例と組み合わされてもよい。同様に、ダミー電極25を有さない態様は、いずれの介在電極41の具体例に適用されてもよい。
【0073】
(IDT電極の第6例)
図4Aに示す介在電極41F(IDT電極5F)では、複数の接続部45は、
図2の介在電極41Aと同様に、D2方向に傾斜する直線状に配列されている。ただし、複数の接続部45は、電極指11側に開くV字状ではなく、D1方向の一方側(
図4Aの右側)に開くV字状に配列されている。別の観点では、複数の接続部45は、D2方向に対して互いに逆側に傾斜するとともに互いに交差する2直線に沿って配列されている。V字が開く方向は、1対の櫛歯電極7同士で、同一であってもよいし(図示の例)、異なっていてもよい。特に図示しないが、複数の接続部45は、順に交差する3つ以上の直線(ジグザグの経路)に沿って配置されていてもよい。直線が交差する位置では、2つの接続部45が位置しているが、1つの接続部45のみが位置してもよい。
【0074】
複数の接続部45が構成する2つ(又はそれ以上)の直線の長さ及び/又は傾斜角は、互いに同等であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。また、介在電極41Aの説明で述べたように、直線状に配列された複数の接続部45の-D1側又は+D1側の縁部は、同一直線上に位置してもよいし(滑らかにつながってもよいし)、位置しなくてもよい。
図4Aの例では、後者が採用されており、複数の接続部45の縁部は階段状を呈している。また、介在電極41Aの説明で述べたように、直線状に配列された複数の接続部45において、互いに隣り合う接続部45は、一部同士がD2方向に重なってもよいし、重ならなくてもよい。
図4Aの例では、後者であり、より詳細には、互いに隣り合う接続部45は、D1方向に投影したときに互いに隣接している(両者の距離は0である。)。
【0075】
(IDT電極の第7例)
図4Bに示す介在電極41G(IDT電極5G)では、複数の接続部45は、市松模様をなすように配置されている。また、別の観点では、複数の接続部45は、D2方向に傾斜する互いに平行な複数の直線状に配置され、かつ複数の直線は、一部同士がD2方向に互いに重なっている。
【0076】
(IDT電極の第8例)
図4Cに示す介在電極41H(IDT電極5H)では、複数の接続部45は、D2方向に対して傾斜する互いに平行な複数の直線状に配置されている。ただし、
図4Bとは異なり、複数の直線は、D1方向の配置範囲が互いに異なっており、D2方向に互いに重なっていない。
【0077】
(IDT電極の第9例)
図4Dに示す介在電極41I(IDT電極5I)は、
図4Cの介在電極41Hと概ね同様の構成を有している。すなわち、複数の接続部45は、D2方向(電極指11の延在方向)に対して傾斜する互いに平行な複数の直線状に配置されている。ただし、
図4Cでは、一方の櫛歯電極7の直線と他方の櫛歯電極7における直線とが、D2方向に対して互いに逆側に傾斜したのに対して、
図4Dでは、一方の櫛歯電極7の直線と他方の櫛歯電極7における直線とが互いに同一側に傾斜している。
【0078】
(IDT電極の第10例)
図4Eに示す介在電極41J(IDT電極5J)は、
図4Cの介在電極41Hと概ね同様の構成を有している。すなわち、複数の接続部45は、D2方向(電極指11の延在方向)に対して傾斜する互いに平行な複数の直線状に配置されている。ただし、介在電極41Hとは異なり、介在電極41Jの複数の直線は、市松模様(
図4Bの介在電極41G参照)に至らない量で、一部同士がD2方向に互いに重なっている。
【0079】
(IDT電極の第11例)
図5に示す介在電極41K(IDT電極5K)において、各スリット領域S1内において互いに隣り合う接続部45と、各スリット領域S1の両側のバー電極43とによって囲まれる領域(導体の非配置領域)を開口領域47と呼称するものとする。複数の開口領域47のうち少なくとも1つ(図示の例では全て)の形状は、楕円状となっている。なお、ここでいう楕円は、数学で定義される楕円でなくてよい。例えば、D1方向の両側の縁部が外側に膨らむ曲線状である場合、楕円状と捉えられてよい。典型的には、楕円は、例えば、円形をD2方向につぶした形状である。また、円形も楕円に含まれてよい。長方形の短辺を外側に曲線状に膨らませた形状も、ここでいう楕円状に含まれてよい。ここでは、
図2の介在電極41Aと同様に、複数の接続部45がV字状に配置されている態様を例に取っている。ただし、楕円状の開口領域47は、他の態様に適用されて構わない。
【0080】
(その他)
複数の接続部45の配置は、図示の例以外にも種々可能である。例えば、複数の接続部45は、X字状に配置されてもよい。既に触れているように、曲線に沿って複数の接続部45が配列されてもよい。
【0081】
(速度プロファイル)
図1に戻る。圧電体3の上面3aの平面視において、IDT電極5が配置されている領域は、IDT電極5の構成に基づいて、D2方向において以下の4種の領域に区分することができる。複数の第1電極指(一方の櫛歯電極7の電極指11)と複数の第2電極指(他方の櫛歯電極7の電極指11)とが弾性波伝搬方向に重なる交差領域R0。ギャップG1が位置するギャップ領域RG。介在電極41が位置する介在領域RI。バスバー9が位置するバスバー領域RB。
【0082】
交差領域R0は、一方の櫛歯電極7の電極指11の先端を結ぶ線(不図示)と、他方の櫛歯電極7の電極指11の先端を結ぶ線(不図示)とに挟まれる領域として捉えられてもよい。なお、複数の電極指11の所定部位(例えば先端)を結ぶ線を仮定するときに、電極指11の幅内のいずれの位置を基準にするかで上記線の位置等が異なる場合においては、電極指11の中心線を基準としてよい。
【0083】
図示の例においては、交差領域R0は、電極指11の幅に基づいて、D2方向において以下の2種(3つ)の領域に区分することができる。複数の主部11aがD1方向に互いに重なる中央領域RC。複数の拡幅部11bがD2方向に互いに重なるエッジ領域RE。これらの幅(D2方向)については、主部11a及び拡幅部11bの説明を参照されたい。
【0084】
これらの複数の領域は、互いに音速が異なる。ここでいう音速は、例えば、装置1によって利用されるモードの弾性波が圧電体3を伝搬する速度とされてよい。ただし、通常、IDT電極5の形状等に基づいて複数の領域が規定されている場合において、利用される弾性波の具体的なモードの相違に応じて複数の領域の音速の高低関係が逆転することはない。従って、以下に述べる音速の高低の関係を考慮するに際して、いずれのモードの弾性波の音速であるかは特定されなくても構わない。
【0085】
弾性波の音速は、圧電体3の上面3a上に位置する部材(例えばIDT電極5)の質量の影響を受ける。例えば、各領域において、単位面積当たりの質量が大きいほど音速は低くなる。一方、IDT電極5を構成する導体層の厚さが一定の場合、単位面積に占める導体層の比率が大きいほど、単位面積当たりの質量は大きくなる。従って、IDT電極5を構成する導体層の面積比率が大きい領域ほど音速は低くなる。
【0086】
従って、図示の例において、音速が低いものから領域名を挙げると、例えば、バスバー領域RB、交差領域R0及びギャップ領域RGである。また、交差領域R0においては、エッジ領域REは、中央領域RCよりも音速が低い。介在領域RIの音速は、バスバー領域RBの音速よりも高い。介在領域RIの音速は、交差領域R0及びギャップ領域RGの音速に対して、低くもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。例えば、介在領域RIの音速は、ギャップ領域RGの音速及び中央領域RC(又は電極指11の幅が全長に亘って一定の態様における交差領域R0)の音速よりも低い。
【0087】
特に図示しないが、交差領域R0の音速は、2段階ではなく、3段階以上で変化してもよい。例えば、中央領域RCは、音速が異なる2種以上の領域を含んでよい。エッジ領域REについても同様である。また、D2方向の位置に対する音速の変化は、段階的なものでなく、連続的なものであってもよい。上述した速度プロファイル(領域間の速度の高低の関係)は、単位面積に占める導体層の比率以外の方法によって実現されてもよい。例えば、IDT電極5の上面又は下面に対して部分的に重なる付加膜(後述)が設けられることによって、当該付加膜が設けられた領域の速度が低くされてよい。また、IDT電極5を構成する導体層が部分的に厚くされることによって、当該厚くされた領域の速度が低くされてよい。また、IDT電極5を構成する導体の配置領域及び非配置領域を問わずに、適宜な位置に絶縁膜が設けられることによって、当該絶縁膜が設けられた領域の速度が低くされてよい。
【0088】
(圧電体を含む基板の種々の構成例)
IDT電極5が形成される上面3aを有する圧電体3は、例えば、基板の一部又は全部とされてよい。当該基板の構成は、種々の態様とされてよく、例えば、公知の態様とされても構わない。以下に、基板の構成を例示する。
【0089】
図6は、基板の第1例としての基板13Aの構成を示す断面図である。図示の断面は、
図1のVI-VI線における断面に相当する。
【0090】
基板13Aは、例えば、支持基板15と、支持基板15の上面に重なっている中間層17と、中間層17の上面に重なっている圧電体3とを有している。ここでは、圧電体3は、圧電膜として構成されている。なお、弾性波装置の構成の説明において、特に断りがない限り、「板」、「層」及び「膜」の語に相違はないものとする。各層の厚さは、例えば、平面方向(D1-D2平面に平行な方向)の位置によらずに一定である。
【0091】
圧電体3は、例えば、圧電性を有する単結晶によって構成されている。このような単結晶を構成する材料としては、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3。以下、LTと略すことがある。)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3。以下、LNと略すことがある。)及び水晶(SiO2)を挙げることができる。なお、圧電体3は、多結晶によって構成されていても構わない。圧電体3のカット角、平面形状及び各種の寸法は適宜に設定されてよい。例えば、LT又はLNからなる圧電体は、回転YカットX伝搬のものとされてよい。すなわち、弾性波の伝搬方向(D1方向)とX軸とは略一致してよい(例えば両者の差は±10°)。このときの圧電体3の上面3aの法線(D3方向)に対するY軸の傾斜角は適宜に設定されてよい。圧電体3の厚さは、例えば、0.1p以上又は0.3p以上とされてよく、また、2p以下又は1p以下とされてよい。上記の上限と下限とは適宜に組み合わされてよい。
【0092】
支持基板15は、例えば、基板13Aの強度の向上、温度変化に起因する特性変化の補償(温度補償)、及び圧電体3への弾性波の閉じ込めの少なくとも1つに寄与してよい。強度の向上は、例えば、ある程度の強度を有する材料によって構成された支持基板15の厚さが適宜に設定されることによって実現されてよい。温度補償は、例えば、支持基板15の線膨張率が圧電体3の線膨張率よりも小さいことによって実現されてよい。弾性波の閉じ込めは、例えば、支持基板15の音速が圧電体3(及び/又は中間層17)の音速よりも高いこと、及び/又は支持基板15の音響インピーダンスと中間層17の音響インピーダンスとが異なることによって実現されてよい。
【0093】
支持基板15の材料及び厚さは、上記のような目的に照らして適宜に設定されてよい。例えば、支持基板15の材料は、シリコン(Si)等の半導体、サファイア(Al2O3)等の単結晶又は酸化アルミニウム質焼結体(Al2O3)等のセラミックとされてよい。支持基板15の厚さは、例えば、1p以上又は3p以上である。また、支持基板15の厚さは、例えば、圧電体3の厚さよりも厚い。
【0094】
中間層17は、例えば、圧電体3と支持基板15の接合強度の向上、及び圧電体3への弾性波の閉じ込めの少なくとも1つに寄与してよい。接合強度の向上は、例えば、所定の接合手法を用いたときに圧電体3及び支持基板15との接合強度が相対的に高い材料が中間層17の材料として選択されることによって実現されてよい。弾性波の閉じ込めは、例えば、中間層17の音速が圧電体3(及び/又は支持基板15)の音速よりも低いこと、及び/又は中間層17の音響インピーダンスと圧電体3(及び/又は支持基板15)の音響インピーダンスとが異なることによって実現されてよい。
【0095】
中間層17の材料及び厚さは、上記のような目的に照らして適宜に設定されてよい。例えば、中間層17の材料は、酸化ケイ素(SiO2)とされてよい。中間層17の厚さは、例えば、0.01p以上又は0.1p以上とされてよく、また、2p以下、1p以下又は0.5p以下とされてよい。上記の上限と下限とは、適宜に組み合わされてよい。また、中間層17の厚さは、例えば、支持基板15の厚さよりも薄い。また、中間層17の厚さは、圧電体3の厚さに対して、薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。
【0096】
上記のように、中間層17が圧電体3よりも音速が低い低音速層とされる一方で、支持基板15が圧電体3よりも音速が高い高音速層とされてもよい。これにより、例えば、圧電体3から漏れる弾性波を低減できる。
【0097】
ここでいう音速は、例えば、各材料自体の物性値によって決定される横波音速とされてよい。換言すれば、IDT電極5の配置領域における速度プロファイルで述べた音速とは異なり、IDT電極5の影響は無視されてよい。横波音速は、弾性率を密度で割った値の平方根によって得られる。ただし、中間層17及び支持基板15の音速と比較される圧電体3の音速は、横波音速に代えて、利用されるモードの弾性波の中央領域RC(電極指11の幅が全長に亘って一定の態様では交差領域R0)における音速とされてもよい。また、中間層17及び/又は支持基板15の音速は、利用されるモードの弾性波のエネルギーの漏れに及ぼす影響が相対的に大きいモードのバルク波の音速とされてもよい。
【0098】
低音速層としての中間層17の材料及び高音速層としての支持基板15の材料の組み合わせは任意である。例えば、これらの材料の組み合わせとしては、上述したSiO2及びSiの組み合わせを挙げることができる。中間層17が低音速層として設けられている場合において、中間層17と圧電体3との接合強度を向上させる層、及び/又は中間層17と支持基板15との接合強度を向上させる比較的薄い層が設けられていてもよい。
【0099】
図7は、基板の第2例としての基板13Bの構成を示す断面図である。図示の断面は、
図1のVI-VI線における断面に相当する。
【0100】
基板13Bは、既述の基板13Aにおいて、中間層17に代えて多層膜19を設けたものである。多層膜19は、2層以上(図示の例では6層)の音響膜(第1膜21A及び第2膜21B)を有している。複数層の音響膜の材料は、積層方向において互いに隣り合っている(他の音響膜を介さずに互いに重なっている)音響膜同士で互いに異なっている。別の観点では、隣り合う音響膜同士は、音響インピーダンスが互いに異なっている。これにより、例えば、両者の界面においては弾性波の反射率が比較的高くなる。その結果、例えば、圧電体3を伝搬する弾性波の漏れが低減される。なお、
図6の基板13Aにおける中間層17及び支持基板15の組み合わせは多層膜の一種と捉えられてよい。
図7の基板13Bにおいて、支持基板15を含んで多層膜が定義されてもよい。
【0101】
多層膜19の音響膜の材料の種類の数及び音響膜の数は適宜に設定されてよい。図示の例では、2種の音響膜(第1膜21A及び第2膜21B)が交互に3層以上(より詳細には6層)で積層されている。また、音響膜の材料も任意である。例えば、第1膜21Aの材料は、二酸化ケイ素(SiO2)とされてよい。第2膜21Bの材料は、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)又は窒化ケイ素(Si3N4)とされてよい。この場合、第1膜21Aは、例えば、第2膜21Bよりも、音響インピーダンスが低い。音響膜の厚さは適宜に設定されてよく、例えば、上記の中間層17の厚さの説明が援用されてよい。
【0102】
音響膜(第1膜21A及び第2膜21B)は、
図6の基板13Aの中間層17及び支持基板15と同様に、低音速膜と高音速膜とを構成してもよい。例えば、第1膜21Aは、圧電体3よりも音速が低い材料(例えばSiO
2又はTa
2O
5)とされてよい。第2膜21Bは、圧電体3よりも音速が高い材料(例えばSi
3N
4)とされてよい。
【0103】
特に図示しないが、圧電体3を含む基板は、上記の例以外の種々の態様とされてもよい。例えば、基板は、その概ね全体が圧電体3によって構成されるものであってもよい。別の観点では、圧電体3は、比較的厚くされてよい。また、基板は、比較的薄い(例えば2p以下又は1p以下の厚さ)圧電体3の下方に空洞を有するものであってもよい。また、基板は、
図6の基板13Aにおいて、低音速層としての中間層17の下面に重なる高音速層を支持基板15とは別に有するものであってもよい。基板13A及び13Bの説明とは逆に、高音速層が圧電体3の下面に重なることによって弾性波の閉じ込めが実現されてもよい。
【0104】
(弾性波装置のその他の構成)
特に図示しないが、弾性波装置1は、IDT電極5を含む導体層の上から圧電体3の上面3aを覆う絶縁性の保護膜を有していてもよい。保護膜は、例えば、導体層の腐食を低減することに寄与したり、及び/又は温度補償に寄与したりしてよい。保護膜の材料としては、例えば、SiO2、Si3N4及びSiを挙げることができる。保護膜は、これらの材料の積層体であってもよい。
【0105】
また、装置1は、IDT電極5の上面又は下面に重なる付加膜を有していてもよい。付加膜は、例えば、IDT電極5の全体又は一部に重なり、平面透視においてIDT電極5に収まる形状を有している。このような付加膜は、例えば、IDT電極5の材料とは音響的な特性が異なる絶縁材料又は金属材料からなり、弾性波の反射係数を向上させることに寄与する。
【0106】
装置1は、適宜にパッケージングされてよい。パッケージの構成としては、例えば、以下のものを挙げることができる。不図示の基板上に隙間を介して圧電体3の上面3aを対向させるように基板13A(又は13B等)を実装し、その上からモールド樹脂によって封止を行うパッケージ。又は、上面3aを覆う箱型のカバーを基板13A(又は13B等)に設けるウェハレベルパッケージ。
【0107】
(弾性波装置のまとめ)
以上のとおり、弾性波装置1は、圧電体3と、IDT電極5とを有している。圧電体3は、第1面(上面3a)を有している。IDT電極5は、上面3a上に位置する。IDT電極5は、以下の部位を有している。第1バスバー(一方の櫛歯電極7のバスバー9)。第1バスバーに対向する第2バスバー(他方の櫛歯電極7のバスバー9)。第1バスバーにそれぞれ電気的に接続されている複数の第1電極指(一方の櫛歯電極7の電極指11)。第2バスバーにそれぞれ電気的に接続され、複数の第1電極指と弾性波伝搬方向(D1方向)に交互に配列されている複数の第2電極指(他方の櫛歯電極7の電極指11)。第1バスバーの間と複数の第1電極指との間に介在し、第1バスバーに対して並列に延びているとともに互いに並列に延びている複数のバー電極43(ここでは一方の櫛歯電極7のバー電極43を例に取る。)。第1バスバーと第1バスバーに隣り合うバー電極43との間に介在して両者を接続している接続部45と、隣り合うバー電極43の間に介在して両者を接続している接続部45と、を含む複数(少なくとも2つ)の接続部45。そして、複数の接続部45の少なくとも一部は、複数の電極指11の延在方向(D2方向)に対して、不連続に配置されている。
【0108】
従って、例えば、既述のように、複数の接続部45がD2方向に対して連続して配置されている態様に比較して、横モードのスプリアスの反射位置を分散させることができる。その結果、横モードのスプリアスの波長、並びに節及び腹の位置を分散させ、横モードのスプリアスの強め合いを低減できる。ひいては、スプリアスを低減できる。
【0109】
複数の接続部45は、電極指11の延在方向(D2方向)に対して傾斜する方向に並んでいてよい(
図2~
図5)。
【0110】
この場合、例えば、接続部45の周囲における反射位置は、D1方向の一方側に位置するほど、+D2側又は-D2側に位置する。これにより、確実かつ効率的に横モードのスプリアスの反射位置を分散させ、横モードのスプリアスの強め合いを低減できる。特に、最も電極指11側のバー電極43からバスバー9に至るまで、複数の接続部45が斜めに並んでいると、上記効果が向上する。
【0111】
複数の接続部45は、複数の電極指11の側へ向かって閉じるV字状に配置されてよい(
図2、
図3A~
図3D)。
【0112】
この場合、例えば、複数の接続部45の配列によって構成されたD2方向に傾斜する2つの直線が交差するから、2つの直線が互いに離れている態様に比較して、反射位置を分散させる効果をD1方向において隙間なく得ることが容易である。その結果、横モードのスプリアスを低減する効果が向上する。
【0113】
複数の接続部45は、複数の電極指11の側へ向かって開くY字状に配置されてよい(
図3B)。
【0114】
この場合、例えば、Y字はV字を含むから、上記と同様の効果が奏される。また、例えば、Y字が含むV字のD2方向における大きさを調整できる。調整の結果残ったバー電極43は、Y字が含むI字によって同電位に維持される。
【0115】
圧電体3の上面3aの平面視において、IDT電極5が位置している領域は、以下の領域を有してよい。バスバー9が位置しているバスバー領域RB。複数のバー電極43及び複数の接続部45が位置している介在領域RI。複数の第2電極指(着目している介在電極41が属する櫛歯電極7と噛み合う櫛歯電極7の電極指11)の先端に対して介在領域RI側に隣接するギャップG1が位置するギャップ領域RG。1対の櫛歯電極7の電極指11が弾性波伝搬方向(D1方向)に重なる交差領域R0。また、交差領域R0は、以下の領域を有してよい。交差領域R0のD2方向における中央に位置し、ギャップ領域RGよりも音速が低い中央領域RC。中央領域RCとギャップ領域RGとの間に位置し、中央領域RCよりも音速が低いエッジ領域RE。介在領域RIは、バスバー領域RBよりも音速が高くされてよい。
【0116】
この場合、例えば、ピストンモードの利用によって横モードのスプリアスが低減されるから、横モードのスプリアスをより低減することができる。また、介在領域RIの音速がバスバー領域RBの音速よりも低いと、介在電極41がバスバー9と同様に機能して、介在電極41をバスバー9とギャップ領域RGとの間に設けた意義が低下する。ひいては、横モードのスプリアスの反射位置を分散させた効果が低減される。しかし、介在領域RIの音速がバスバー領域RBの音速よりも高いことによって、そのような不都合が低減される。
【0117】
複数の接続部45の弾性波伝搬方向の一方側(+D1側又は-D1側)に位置する縁部は、電極指11の延在方向(D2方向)に対して傾斜する同一直線上又は同一曲線上に位置してよい(
図2~
図3D)。
【0118】
この場合、例えば、上記縁部がD2方向に平行な態様(
図4A~
図4E)に比較して、各接続部45の縁部によって横モードのスプリアスの反射位置を構成することができ、かつその位置をD1方向の位置によってD2方向に変化させることができる。その結果、スプリアスを低減する効果が向上する。
【0119】
隣り合うバー電極43の間のそれぞれに(各スリット領域S1に)、弾性波伝搬方向(D1方向)の位置が互いに異なる2以上の接続部45が位置してよい。この2以上の接続部45と、当該2以上の接続部45によって接続されているバー電極43とによって囲まれている領域(開口領域47)の形状は、楕円状とされてよい。
【0120】
この場合、例えば、1つの開口領域47の縁部によって、横モードのスプリアスの反射位置を構成し、かつその位置をD1方向の位置によってD2方向に変化させることができる。その結果、スプリアスを低減する効果が向上する。
【0121】
装置1は、複数のダミー電極25を更に有してよい。複数のダミー電極25は、最も複数の第1電極指(一方の櫛歯電極7の電極指11)の側に位置するバー電極43(第1電極指と同電位のバー電極43)に接続され、先端が複数の第2電極指(他方の櫛歯電極7の電極指11)の先端とギャップG1を介して対向してよい。
【0122】
この場合、例えば、ギャップG1と介在電極41との距離の調整が容易である。ギャップG1は、弾性波の回析が生じる部分であり、横モードのスプリアスに影響を及ぼすから、上記距離の調整によって、スプリアスの低減が容易である。また、例えば、ギャップG1の大きさを一定にしつつ、D1方向の位置に対してギャップG1のD2方向の位置を変化させるアポダイズをIDT電極5に施し、横モードのスプリアスを低減することもできる。
【0123】
弾性波装置1は、低音速膜(
図6の中間層17又は
図7の第1膜21A)及び高音速膜(
図6の支持基板15又は
図7の第2膜21B)を更に有してよい。低音速膜は、圧電膜からなる圧電体3の上面3aとは反対側に重なり、圧電体3より音速が低い。高音速膜は、低音速膜の圧電体3とは反対側に重なり、圧電体3より音速が高い。
【0124】
この場合、例えば、圧電体3から漏れる弾性波を低減することができる。その結果、装置1の特性が向上する。
【0125】
<弾性波装置の利用例>
弾性波装置1は、共振子及びフィルタ等の種々の態様で利用されてよい。以下では、弾性波装置の利用例を示す。具体的には、概ね、以下の順に説明する。
・共振子の一例
・分波器の一例
・通信装置の一例
【0126】
共振子、分波器及び通信装置のいずれも、弾性波装置の利用例である。分波器の説明では、弾性波装置の利用例としてのフィルタの例についても説明する。
【0127】
(共振子の一例)
図8は、共振子31の構成を示す平面図である。なお、下記の説明において、IDT電極5に係る符号は、
図1等を参照されたい。
【0128】
共振子31は、いわゆる1ポート弾性波共振子として構成されている。共振子31は、
図8において概念的かつ模式的に示されている2つの端子33の一方から所定の周波数の電気信号が入力されると共振を生じ、その共振を生じた信号を2つの端子33の他方から出力可能である。
【0129】
共振子31は、例えば、圧電体3(
図6等を参照)を有しているとともに、圧電体3の上面3a上に位置しているIDT電極5及び1対の反射器35を有している。なお、共振子31は、弾性波装置1を含んでいると捉えられてもよいし、装置1に含まれていると捉えられてもよい。また、共振子31は、上記のように、圧電体3(及び弾性波に影響を及ぼす他の層)を含む。ただし、便宜上、IDT電極5及び1対の反射器35の組み合わせを共振子31として表現することがある。
【0130】
1対の反射器35は、例えば、IDT電極5を構成する導体層と同じ導体層によって構成されている。IDT電極5の全部又は一部に重なる付加膜が設けられている態様では、反射器35の全部又は一部に重なる付加膜が設けられてもよい。1対の反射器35は、弾性波の伝搬方向においてIDT電極5の両側に位置している。各反射器35は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。
【0131】
各反射器35は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器35は、互いに対向する1対のバスバー37と、1対のバスバー37間において延びる複数のストリップ電極39とを含んでいる。なお、複数の電極指11と同様に、複数のストリップ電極39は、実際には図示された数よりも多い数で設けられてよい。
【0132】
バスバー37は、例えば、IDT電極5のバスバー9と概ね同様の構成であり、バスバー9の説明は、バスバー37に援用されてよい。バスバー37のD2方向における位置は、例えば、ギャップ領域RGよりも外側の適宜な位置とされてよい。図示の例では、バスバー37は、介在電極41のD2方向における配置範囲に位置している。バスバー37の幅(D2方向)は、バスバー9の幅に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。バスバー9が弾性波の伝搬方向に傾斜しているとき、バスバー37は、バスバー9と同様に傾斜していてもよいし、弾性波の伝搬方向に平行であってもよい。
【0133】
複数のストリップ電極39の概略構成は、1対のバスバー37に架け渡されていることを除いて、IDT電極5の電極指11の概略構成と同様である。電極指11の説明は、適宜にストリップ電極39に援用されてよい。複数のストリップ電極39は、複数の電極指11の配列に続くように弾性波の伝搬方向に配列されている。複数のストリップ電極39のピッチ、並びに反射器35に隣接する電極指11とIDT電極5に隣接するストリップ電極39とのピッチは、例えば、複数の電極指11のピッチと同等である。
【0134】
ストリップ電極39の具体的な平面形状(別の観点ではD2方向の位置に応じた幅(D1方向の長さ)の変化)は任意である。図示の例では、ストリップ電極39は、電極指11と同様に、主部39a及び拡幅部39bを有している。主部39aは、電極指11の主部11aとD2方向に重なる。拡幅部39bは、電極指11の拡幅部39bとD2方向に重なる。主部11a及び拡幅部11bの説明は、主部39a及び拡幅部39bに援用されてよい。
【0135】
図示の例では、反射器35は、介在電極41に相当する構成を有していない。ただし、反射器35は、介在電極41に相当する構成を有していてもよい。
【0136】
(分波器の一例)
図9は、分波器101(例えばデュプレクサ)の構成を模式的に示す回路図である。この図の紙面左上に示された符号から理解されるように、この図では、櫛歯電極7が二叉のフォーク形状によって模式的に示され、反射器35は両端が屈曲した1本の線で表わされている。
【0137】
分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
【0138】
送信フィルタ109は、例えば、複数の共振子31(直列共振子31S及び並列共振子31P)がラダー型に接続されて構成された、ラダー型フィルタによって構成されている。すなわち、送信フィルタ109は、送信端子105とアンテナ端子103との間で直列に接続された複数(1つでも可)の直列共振子31Sと、その直列のライン(直列腕)と基準電位部(符号省略)とを接続する複数(1つでも可)の並列共振子31P(並列腕)とを有している。
【0139】
受信フィルタ111は、例えば、共振子31と、多重モード型フィルタ(ダブルモード型フィルタを含むものとする。)113とを含んで構成されている。なお、多重モード型フィルタは、2重モード型フィルタを含むものとする。多重モード型フィルタ113は、弾性波の伝搬方向に配列された複数(図示の例では3つ)のIDT電極5と、その両側に配置された1対の反射器35とを有している。
【0140】
送信フィルタ109(ラダー型フィルタ)の複数の共振子の少なくとも1つは、実施形態に係る弾性波装置1(IDT電極5)を含んでよい。装置1が有する1つのIDT電極5を基準とした表現では、送信フィルタ109は、装置1と、装置1の圧電体3の上面3a上に位置しており、上記1つのIDT電極5とラダー型に接続されてラダー型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極(図示の例では他のIDT電極も実施形態に係るIDT電極5)とを有している。
【0141】
多重モード型フィルタ113の複数のIDT電極の少なくとも1つは、実施形態に係る弾性波装置1(IDT電極5)を含んでよい。装置1が有する1つのIDT電極5を基準とした表現では、多重モード型フィルタ113は、装置1と、装置1の圧電体3の上面3a上に位置しており、上記1つのIDT電極5に対して弾性波伝搬方向に並べられて多重モード型フィルタを構成している1以上の他のIDT電極(図示の例では他のIDT電極も実施形態に係るIDT電極5)とを有している。
【0142】
なお、分波器101、送信フィルタ109(ラダー型フィルタ)、受信フィルタ111及び多重モード型フィルタ113のそれぞれは、実施形態に係る装置1を含んでいると捉えられてもよいし、装置1に含まれていると捉えられてもよい。
【0143】
分波器101の複数のIDT電極5(及び反射器35)は、1つの圧電体3(基板)に設けられてもよいし、2以上の圧電体3に分散して設けられてもよい。例えば、送信フィルタ109を構成する複数の共振子31は、同一の圧電体3に設けられてよい。同様に、受信フィルタ111を構成する共振子31及び多重モード型フィルタ113は、例えば、同一の圧電体3に設けられてよい。送信フィルタ109及び受信フィルタ111は、例えば、同一の圧電体3に設けられてもよいし、互いに異なる圧電体3に設けられてもよい。上記の他、例えば、複数の直列共振子31Sを同一の圧電体3に設けるとともに、複数の並列共振子31Pを他の同一の圧電体3に設けてもよい。
【0144】
図9は、あくまで分波器101の構成の一例である。従って、例えば、受信フィルタ111が送信フィルタ109と同様にラダー型フィルタによって構成されてもよい。また、送信フィルタ109が多重モード型フィルタ113を有していてもよい。分波器101は、デュプレクサに限定されず、例えば、ダイプレクサであってもよいし、3以上のフィルタを含んだマルチプレクサであってもよい。
【0145】
(通信装置)
図10は、弾性波装置1の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、分波器101を含んでいる。
【0146】
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101(送信フィルタ109)は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
【0147】
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101(アンテナ端子103)に入力される。分波器101(受信フィルタ111)は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して受信端子107から増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0148】
送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号若しくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、公知の各種の規格に従ってよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、
図10は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0149】
弾性波装置1は、上記に例示した態様以外の種々の態様で利用されてよい。例えば、弾性波装置1は、2ポート共振子に利用されたり、トランスバーサルフィルタに利用されたりしてもよい。
【0150】
<実施例>
実施形態に係る共振子31(
図8)の試作品の特性を測定したり、共振子31の特性をシミュレーションによって計算したりして、実施形態に係る弾性波装置1の効果を確認した。以下に、シミュレーション計算の結果のうち、いくつかの例を示す。
【0151】
(第1比較例及び第1実施例)
図11は、第1比較例及び第1実施例に係る共振子の特性を示す図である。
【0152】
図11において、横軸は周波数を示している。縦軸はインピーダンスの位相を示している。線LC1は、第1比較例の特性を示している。線LE1は、第1実施例の特性を示している。
【0153】
共振子31は、インピーダンスの絶対値が極小値となる共振周波数と、インピーダンスの絶対値が極大値となる反共振周波数とを有している。一般に、共振周波数と反共振周波数との間の範囲においては、インピーダンスの位相が90°に近いほど共振子31の特性がよいとされる。また、上記の範囲の外側においては、インピーダンスの位相が-90°に近いほど共振子31の特性がよいとされる。
図11では、横軸の範囲は、概ね、共振周波数と反共振周波数との間の範囲に対応している。
【0154】
第1実施例は、IDT電極5として、
図2に示した第1例に係るIDT電極5Aと同様の構成を有している。第1比較例は、第1実施例において、複数の接続部45を無くした構成である。ただし、各櫛歯電極7において、複数のバー電極43及びバスバー9は、互いに同電位となっている(電気的に接続されている)と仮定している。
【0155】
図11に示されているように、第1実施例では、第1比較例に比較して、スプリアスの数及び大きさが低減されている。すなわち、複数の接続部45をD2方向に対して不連続に設けることによって、スプリアスが低減されることが確認された。
【0156】
シミュレーション計算の具体的な条件を以下に示す。
・圧電体:
材料:LT
カット角:50°回転YカットX伝搬
厚さ:0.65μm
・低音速層(中間層17):
材料:SiO2
厚さ:0.22μm
・高音速層(支持基板15):
材料:Si
厚さ:ピッチpに対して十分な厚さ(200μm)
・IDT電極:
材料:TiとAlとの積層構造
厚さ:
Ti:60Å
Al:1400Å
電極指:
本数:250本
ピッチ:1.03μm
主部のデューティー:0.50
拡幅部のデューティー:0.60
1つの拡幅部の長さ(D2方向):1.0μm
交差領域R0の幅:40p
ギャップG1の長さ(D2方向):0.3μm
バー電極:
本数:8本
幅(D2方向):0.25p
バー電極の間隔(スリット領域S1の幅):0.25p
・反射器:
材料及び厚さ:IDT電極と同じ
ストリップ電極:
本数:30本(1つの反射器)
ピッチ:電極指のピッチと同じ
【0157】
(第1~第3実施例)
図12は、第1~第3実施例に係る共振子の特性を示す図であり、
図11と同様の図である。
図12において、線LE1は、第1実施例の特性を示しており、
図11に示した線LE1と同一のものである。線LE2及びLE3は、それぞれ第2及び第3実施例の特性を示している。
【0158】
第2実施例は、IDT電極5として、
図3Aに示した第2例に係るIDT電極5Bと同様の構成を有している。すなわち、第1実施例は、V字のD2方向の大きさが概ね2pであるのに対して、第2実施例は、V字のD2方向の大きさが概ね1pである。また、第3実施例は、概略、
図3Bに示した第3例に係るIDT電極5Cと同様の構成を有している。ただし、Y字が含むI字の部分については、接続部45を無くすとともに、複数のバー電極43及びバスバー9が互いに同電位とされている(互いに電気的に接続されている)と仮定した。
【0159】
図12に示されているように、概略、第2実施例は第1実施例よりもスプリアスが低減されており、第1実施例は第3実施例よりもスプリアスが低減されている。すなわち、D1方向の位置に対する接続部45のD2方向の位置の変化が大きいほど、スプリアスが低減されている。なお、第1実施例は、第2実施例に比較して、作製が容易である。
【0160】
(第2及び第3比較例並びに第4実施例)
図13は、第2及び第3比較例並びに第4実施例に係る共振子の特性を示す図であり、
図11と同様の図である。
図13において、線LC2、LC3及びLE4は、それぞれ、第2及び第3比較例並びに第4実施例の特性を示している。
【0161】
第4実施例は、IDT電極5として、
図3Cに示した第4例に係るIDT電極5Dと同様の構成を有している。すなわち、第4実施例は、第1実施例において、電極指11の幅を電極指11の全長に亘って一定としたものである。第2比較例は、第4実施例において、バスバー9を介在電極41の配置領域まで広げることによって、介在電極41を無くしたものである。第3比較例は、第4実施例において、複数の接続部45を無くしたものである。ただし、第4実施例において、各櫛歯電極7の複数のバー電極43及びバスバー9は、互いに同電位とされている(互いに電気的に接続されている)と仮定した。
【0162】
図13に示されているように、概略、第4実施例は第2及び第3比較例よりもスプリアスが低減されている。これにより、IDT電極5がピストンモードを利用しないものであても、複数の接続部45をD2方向に対して不連続に配置することによって、スプリアスが低減されることが確認された。
【0163】
特に図示しないが、第2比較例において、バスバーの厚さを薄くした比較例についてもシミュレーション計算を行った。別の観点では、介在電極41を設けずに、介在領域RIに相当する領域における音速を高くした比較例についてもシミュレーション計算を行った。その結果、バスバーの厚さを薄くすると、スプリアスを低減する効果が得られるものの、実施例ほどの効果は得られなかった。このことから、介在電極41よるスプリアスを低減する効果は、横モードのスプリアスに対する反射器としての効果であることが確認できた。
【符号の説明】
【0164】
1…弾性波装置、3…圧電体、3a…上面(第1面)、5…IDT電極、9…バスバー(第1バスバー、第2バスバー)、11…電極指(第1電極指、第2電極指)、43…バー電極、45…接続部。