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特許7682280プロピレンランダムコポリマーを含む繊維強化組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】プロピレンランダムコポリマーを含む繊維強化組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20250516BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20250516BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20250516BHJP
   C08L 23/26 20250101ALI20250516BHJP
【FI】
C08L23/14
C08J5/04 CES
C08K7/14
C08L23/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023543060
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022051204
(87)【国際公開番号】W WO2022157229
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】21152960.7
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21153759.2
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バーンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン パウリ
(72)【発明者】
【氏名】グレシュテンベルガー ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】クリムケ カトヤ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0218355(US,A1)
【文献】特表2017-509742(JP,A)
【文献】特開2010-106263(JP,A)
【文献】特表2016-540864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化組成物(C)であって、前記繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~94.9重量%のプロピレンランダムコポリマー(P)であって、コモノマーは、少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンから選択され、前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)45~150g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、
ii)125~150℃の範囲の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tm、及び
iii)0.4~1.2モル%の範囲の量の1,2エリスロ位置欠陥
を有するプロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%の繊維(F)と、
c)0.1~5.0重量%の接着促進剤(AP)と
を含む繊維強化組成物(C)。
【請求項2】
前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含み、前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との重量比は20/80~60/40の範囲にあり、前記プロピレンランダムコポリマー(P)に対する前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の総量は少なくとも95.0重量%である請求項1に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項3】
前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する請求項1又は請求項2に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項4】
前記コモノマーは1-ヘキセンである請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項5】
i)前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)は、0.4~2.5モル%の範囲のコモノマー含有量を有し、
ii)前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、2.8~7.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する
請求項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項6】
前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、前記プロピレンランダムコポリマー(P)の総重量に基づいて3.0~15.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項7】
前記コモノマーは1-ブテンである請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項8】
前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)2.0~6.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)4.0~10.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含み、
前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量を有し、前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との重量比は20/80~60/40の範囲にあり、前記プロピレンランダムコポリマー(P)に対する前記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び前記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の総量は少なくとも95.0重量%である請求項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項9】
前記プロピレンランダムコポリマー(P)は、前記プロピレンランダムコポリマー(P)の総重量に基づいて0.1~5.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する請求項又は請求項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項10】
前記繊維(F)は、ガラス繊維(GF)である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項11】
前記接着促進剤(AP)は、20.0g/10分~400g/10分のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する無水マレイン酸でグラフトされたプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである極性変性ポリプロピレン(PM-PP)である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項12】
8.0~60.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンランダムコポリマー(P)、繊維(F)及び接着促進剤(AP)を含む繊維強化ポリプロピレン組成物(C)、並びにこの繊維強化ポリプロピレン組成物(C)を含む物品に向けられる。
【0002】
繊維強化材料は、様々な用途において、とりわけ、より高い剛性、より高い荷重たわみ温度(熱変形温度)(HDT)及び良好な耐衝撃性が利益として見られるエンジニアリング分野において広く使用されている。ポリプロピレンは、その多様性、低コスト及び低密度のために最も普及しているベースポリマーの1つである。ポリプロピレンは、目標特性のほとんどを満たすことができる。メタロセン触媒の存在下で調製されたポリプロピレンは、制御された分子量分布、良好なコモノマー組み込み及び低放出量等の追加の利点のため、有望な候補である。しかしながら、剛性及びHDTは充分に高くないことが多いので、現在のグレードは固有の欠点を有する。自動車外装のようないくつかの特定の分野では、優れた衝撃特性も要求される。
【0003】
従って、当該技術分野では、良好な剛性及び衝撃特性を低放出量と組み合わせる繊維強化ポリプロピレン材料が必要とされている。さらに、射出成形加工には優れた流動特性が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、バランスのとれた剛性及び衝撃特性並びに低放出量を特徴とする高流動繊維強化ポリプロピレン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、繊維強化ポリプロピレン組成物(C)であって、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~95.0重量%のプロピレンランダムコポリマー(P)であって、コモノマーは、エチレン及び/又は少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンから選択され、このプロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)45~150g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
ii)125~150℃の範囲の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tm
を有するプロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.1~40.0重量%の繊維(F)と、
c)任意選択で、0.1~5.0重量%の接着促進剤(AP)と
を含む繊維強化ポリプロピレン組成物(C)によって解決される。
【0006】
本発明の1つの実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも0.4モル%(mol-%)の量の1,2エリスロ位置欠陥を有する。本発明の1つの好ましい実施形態は、繊維強化組成物(C)であって、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~94.9重量%のプロピレンランダムコポリマー(P)であって、コモノマーは、エチレン及び/又は少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンから選択され、このプロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)45~150g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、
ii)125~150℃の範囲の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tm、及び
iii)少なくとも0.4モル%の量の1,2エリスロ位置欠陥
を有するプロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%の繊維(F)と、
c)0.1~5.0重量%の接着促進剤(AP)と
を含む繊維強化組成物(C)に関する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含み、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との重量比は20/80~60/40の範囲にあり、プロピレンランダムコポリマー(P)に対する第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との総量は少なくとも95.0重量%である。
【0008】
本発明のさらなる実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)は、0.4~2.5モル%の範囲のコモノマー含有量を有し、第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、2.8~7.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する。
【0010】
本発明の1つの実施形態によれば、上記コモノマーは、少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンである。コモノマーが1-ヘキセン又は1-ブテンであることがとりわけ好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、このプロピレンランダムコポリマーの総重量に基づいて3.0~15.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも5.0のビスブレーキング比[最終MFR(230℃/2.16kg)/初期MFR(230℃/2.16kg)]でビスブレーキングされており、式中、「最終MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング後のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)であり、「初期MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング前のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)である。MFR(230℃、2.16kg)はISO1133に従って決定される。
【0013】
本発明のさらなる実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、0.5~10.0g/10分の範囲の、ビスブレーキング前にISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、繊維(F)は、ガラス繊維(GF)、好ましくは2.0~10.0mmの平均長さ、及び/又は5~20μmの平均直径を有するガラス短繊維(SGF)である。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、接着促進剤(AP)は、20.0g/10分~400g/10分のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する無水マレイン酸でグラフトされたプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである極性変性ポリプロピレン(PM-PP)である。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、繊維強化組成物(C)は、8.0~60.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、メタロセン化合物を含む固体触媒系(SCS)の存在下で得られる。
【0018】
メタロセン化合物は式(I)を有することがとりわけ好ましく、
(Cp)MX (I)
上記式(I)中、
各Cpは、独立に、非置換若しくは置換及び/又は縮合シクロペンタジエニル配位子、例えば置換若しくは非置換のシクロペンタジエニル、置換若しくは非置換のインデニル又は置換若しくは非置換のフルオレニル配位子であり、任意選択の1つ以上の置換基は、独立に、好ましくは、ハロゲン、ヒドロカルビル(例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはC7~C20-アリールアルキル)、環部分に1、2、3若しくは4個のヘテロ原子を含有するC3~C12-シクロアルキル、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-ハロアルキル、-SiR”、-OSiR”、-SR”、-PR”、OR”又は-NR”から選択され、
各R”は、独立に、水素若しくはヒドロカルビル、例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル若しくはC6~C20-アリールであるか、又は例えば-NR”の場合、その2つの置換基R”は、それらが結合する窒素原子とともに、環、例えば5員環若しくは6員環を形成することができ、
Rは、1~3個の原子の架橋基であり、例えば1~2個のC原子及び0~2個のヘテロ原子の架橋基であって、このヘテロ原子は、例えばSi、Ge及び/若しくはO原子であることができ、架橋原子の各々は、独立に、置換基、例えばC1~C20-アルキル、トリ(C1~C20-アルキル)シリル、トリ(C1~C20-アルキル)シロキシ若しくはC6~C20-アリール置換基を保有してもよい架橋基、又は1~3個、例えば1個若しくは2個、のヘテロ原子、例えばケイ素、ゲルマニウム及び/若しくは酸素原子の架橋基、例えば、各R10が独立に、C1~C20-アルキル、C3~12シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはトリ(C1~C20-アルキル)シリル残基、例えばトリメチルシリルである-SiR10 であり、
Mは、4族の遷移金属、例えばZr又はHf、とりわけZrであり、
各Xは、独立に、σ-配位子、例えばH、ハロゲン、C1~C20-アルキル、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール、C6~C20-アリールオキシ、C7~C20-アリールアルキル、C7~C20-アリールアルケニル、-SR”、-PR”、-SiR”、-OSiR”、-NR”又は-CH-Yであり、Yは、C6~C20-アリール、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-アルコキシ、C6~C20-アリールオキシ、NR”、-SR”、-PR”、-SiR”、又は-OSiR”であり、
上記の環部分の各々は、単独で、又はCp、X、R”若しくはRについての置換基としての別の部分の一部として、例えばSi及び/又はO原子を含有してもよいC1~C20-アルキルでさらに置換されることが可能であり、
nは1又は2である。
【0019】
本発明はさらに、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の繊維強化組成物(C)を含む物品に向けられる。
【0020】
以下で、本発明はより詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
繊維強化組成物(C)
本発明に係る繊維強化組成物(C)は、プロピレンランダムコポリマー(P)と、繊維(F)と、接着促進剤(AP)とを含む。
【0022】
特に、繊維強化組成物(C)は、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~95.0重量%、好ましくは60.0~90.0重量%、より好ましくは65.0~85.0重量%、さらにより好ましくは70.0~80.0重量%の上記プロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%、好ましくは8.0~37.0重量%、より好ましくは11.0~32.0重量%、さらにより好ましくは15.0重量%~27.0重量%の上記繊維(F)と
を含む。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、繊維強化組成物(C)は、接着促進剤(AP)をさらに含む。
【0024】
それゆえ、繊維強化組成物(C)が、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~94.9重量%、好ましくは60.0~90.0重量%、より好ましくは65.0~85.0重量%、さらにより好ましくは70.0~80.0重量%の上記プロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%、好ましくは8.0~37.0重量%、より好ましくは11.0~32.0重量%、さらにより好ましくは15.0重量%~27.0重量%の上記繊維(F)と、
c)0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、より好ましくは0.8~3.5重量%、さらにより好ましくは1.0~3.0重量%の上記接着促進剤(AP)と
を含む。
【0025】
さらに、本発明に係る繊維強化組成物(C)は、添加剤(AD)を含んでいてもよい。1つの実施形態では、繊維強化組成物(C)は、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~94.8重量%、好ましくは60.0~90.0重量%、より好ましくは65.0~85.0重量%、さらにより好ましくは70.0~80.0重量%の上記プロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%、好ましくは8.0~37.0重量%、より好ましくは11.0~32.0重量%、さらにより好ましくは15.0重量%~27.0重量%の上記繊維(F)と、
c)0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、より好ましくは0.8~3.5重量%、さらにより好ましくは1.0~3.0重量%の上記接着促進剤(AP)と、
d)0.01~2.5重量%の添加剤(AD)と
を含み、好ましくはこれらからなり、成分a)~d)の量は、好ましくは100重量%となるように選択される。
【0026】
従って、繊維強化組成物(C)が、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~92.4重量%、好ましくは60.0~90.0重量%、より好ましくは65.0~85.0重量%、さらにより好ましくは70.0~80.0重量%の上記プロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%、好ましくは8.0~37.0重量%、より好ましくは11.0~32.0重量%、さらにより好ましくは15.0重量%~27.0重量%の上記繊維(F)と、
c)0.1~5.0重量%、より好ましくは1.0~3.0重量%の上記接着促進剤(AP)と、
d)0.01~2.5重量%の添加剤(AD)と
を含み、より好ましくはこれらからなることが好ましい。添加剤(AD)は、以下により詳細に記載される。
【0027】
好ましくは、本発明の繊維強化組成物(C)は、(a)プロピレンランダムコポリマー(P)及び接着促進剤(AP)とは異なるさらなるポリマー(複数種可)を、繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて5.0重量%を超える量、好ましくは3.0重量%を超える量、より好ましくは2.5重量%を超える量では含まない。そのような少量で存在してもよい1つの追加のポリマーは、プロピレンランダムコポリマー(P)の調製によって得られる反応副生成物であるポリエチレンである。従って、繊維強化組成物(C)が、プロピレンランダムコポリマー(P)、接着促進剤(A)、及び任意選択で、この段落で言及される量のポリエチレンのみをポリマー化合物として含有することが特に理解される。
【0028】
本発明の繊維強化組成物(C)が、繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて5.0重量%を超える量、好ましくは3.0重量%を超える量、より好ましくは2.5重量%を超える量のエラストマーポリマーを含まないことがとりわけ好ましい。特に、本発明の繊維強化組成物(C)が、繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて5.0重量%を超える量、好ましくは3.0重量%を超える量、より好ましくは2.5重量%を超える量のエチレンプロピレンゴム(EPR)を含まないことが好ましい。従って、当該繊維強化組成物は、繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて3.0~15.0重量%の範囲、より好ましくは3.5~12.0重量%の範囲、さらにより好ましくは4.0~10.0重量%の範囲、例えば4.5~9.5重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有することが好ましい。
【0029】
好ましくは、繊維強化組成物(C)は、8.0~60.0g/10分の範囲、より好ましくは10.0~50.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは12.0~40.0g/10分の範囲、例えば14.0~30.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0030】
さらに、繊維強化組成物(C)は、155℃以下、より好ましくは125~150℃の範囲、さらにより好ましくは130~145℃の範囲、例えば132~140℃の範囲の示差走査熱量測定(DSC)によって決定された融解温度を有することが好ましい。
【0031】
機械的特性に関して、繊維強化組成物(C)が、2500~6000MPaの範囲、より好ましくは2800~5500MPaの範囲、さらにより好ましくは3000~5200MPaの範囲、例えば3200~5000MPaの範囲のISO527-1Aに従って決定された引張弾性率、及び/又は40~100MPaの範囲、好ましくは40~80MPa、より好ましくは42~70MPaの範囲、さらにより好ましくは45~68MPaの範囲、例えば50~65MPaの範囲のISO527-2に従って決定された引張強さを有することが好ましい。
【0032】
前の段落に加えて又はその代わりに、繊維強化組成物(C)が、少なくとも25.0kJ/m、より好ましくは少なくとも30.0kJ/m、さらにより好ましくは35.0kJ/m、例えば少なくとも40.0kJ/mのISO179に従って23℃で決定されたノッチなしシャルピー衝撃強さを有することが好ましい。ISO179に従って23℃で決定されたノッチなしシャルピー衝撃強さの妥当な上限は100kJ/mである。
【0033】
さらに、繊維強化組成物(C)が、少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも115℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃、例えば少なくとも125℃のISO75Aに従って決定された荷重たわみ温度(HDT)を有することが好ましい。ISO75Aに従って決定された荷重たわみ温度(HDT)の妥当な上限は155℃である。
【0034】
さらに、繊維強化組成物(C)が、25μg/g未満、より好ましくは20μg/g未満、さらにより好ましくは15μg/g未満、例えば12μg/g未満のVDA278に従って決定された少量の揮発性化合物(VOC)を含むことが好ましい。
【0035】
同様に、繊維強化組成物(C)が、80μg/g未満、より好ましくは75μg/g未満、さらにより好ましくは45μg/g未満、例えば40μg/g未満のVDA278に従って決定された少量の中揮発性化合物(FOG)を含むことが好ましい。
【0036】
繊維強化組成物(C)は、好ましくは、プロピレンランダムコポリマー(P)、繊維(F)、任意選択で接着促進剤(AP)及び任意選択で添加剤(AD)を溶融ブレンド(溶融混合)して得られる。
【0037】
以下で、繊維強化組成物(C)の成分について、より詳細に説明する。
【0038】
プロピレンランダムコポリマー(P)
本発明の繊維強化組成物(C)は、プロピレンランダムコポリマー(P)を含む。
【0039】
特に、プロピレンランダムコポリマー(P)は、プロピレン並びにエチレン及び/又は少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンのコポリマーである。従って、プロピレンランダムコポリマー(P)は、エチレン及びC4~C12α-オレフィンから選択されるプロピレンと共重合可能なモノマーを含む。好ましくは、このコモノマーは、エチレン及びC4~C6α-オレフィン、例えば1-ブテン及び/又は1-ヘキセンから選択される。本発明に係るプロピレンランダムコポリマーは、プロピレン、並びにエチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群から選択されるプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、より好ましくはこれらからなることがとりわけ好ましい。より具体的には、本発明のプロピレンランダムコポリマー(P)は、プロピレン以外に、エチレン、1-ブテン及び/又は1-ヘキセンから誘導可能な単位を含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、コモノマーは1-ヘキセンである。それゆえ、プロピレンランダムコポリマー(P)が、プロピレン及び1-ヘキセンから誘導可能な単位のみを含むことがとりわけ好ましい。言い換えれば、プロピレン及び1-ヘキセンのみが重合されていることが好ましい。
【0041】
用語「ランダムコポリマー」は、好ましくは、IUPAC(Pure Appl.Chem.、第68巻、第8号、1591~1595頁、1996年)に従って理解されなければならない。好ましくは、コモノマーダイアド(dyad)、例えば1-ヘキセンダイアドのモル濃度は、以下の関係に従う。
[HH]<[H]
式中、
[HH]は、隣接するコモノマー単位、例えば隣接する1-ヘキセン単位のモル分率であり、
[H]は、ポリマー中の全コモノマー単位、例えば全1-ヘキセン単位のモル分率である。
【0042】
好ましくは、プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲、より好ましくは1.5~5.2モル%の範囲、さらにより好ましくは2.0~4.7モル%の範囲、例えば2.2~4.2モル%の範囲のコモノマー含有量、より好ましくは1-ヘキセン含有量を有する。
【0043】
さらに、プロピレンランダムコポリマー(P)はバイモーダル(二峰性)であることが好ましい。
【0044】
特に、プロピレンランダムコポリマー(P)が、
i)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量、好ましくは1-ヘキセン含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含み、プロピレンランダムコポリマー(P)に対する第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の総量は少なくとも95.0重量%、より好ましくは97.0重量%、さらにより好ましくは99.0重量%、例えば99.9重量%であることが好ましい。このランダムプロピレンコポリマーが、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)から本質的になり、好ましくはそれらからなることがとりわけ好ましい。
【0045】
用語「ランダムコポリマー」に関しては、上記で提供された定義が参照される。
【0046】
好ましくは、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との重量比は、20/80~60/40の範囲、より好ましくは30/70~55/45の範囲、さらにより好ましくは40/60~50/50の範囲にある。
【0047】
第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、好ましくは、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量、例えば1-ヘキセン含有量を有する。好ましくは、比C(P2)/C(P1)は、1.1~10.0の範囲、より好ましくは2.0~7.5の範囲、さらにより好ましくは3.0~6.2の範囲にあり、式中、C(P2)は、第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の[モル%]でのコモノマー含有量、好ましくは1-ヘキセン含有量であり、C(P1)は、第1のプロピレンランダムコポリマー(P2)の[モル%]でのコモノマー含有量、好ましくは1-ヘキセン含有量である。
【0048】
第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)は、0.4~2.5モル%の範囲、より好ましくは0.5~2.0モル%の範囲、さらにより好ましくは0.6~1.6モル%の範囲のコモノマー含有量、好ましくは1-ヘキセン含有量を有することがとりわけ好ましい。
【0049】
第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、好ましくは、2.8~7.0モル%の範囲、より好ましくは3.0~6.0モル%の範囲、さらにより好ましくは3.2~5.0モル%の範囲のコモノマー含有量、好ましくは1-ヘキセン含有量を有する。
【0050】
好ましくは、プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも0.4モル%、より好ましくは0.4~1.2モル%の範囲の量の1,2エリスロ位置欠陥を有する。理論に束縛されるものではないが、ポリマー鎖内のプロピレン並びに/又は1-ヘキセン及び/若しくは1-ブテンの多量の誤挿入は、プロピレンランダムコポリマー(P)がシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒の存在下で生成されることを示す。Ziegler-Natta(チーグラー・ナッタ)触媒の存在下で生成されるプロピレンランダムコポリマーは、0.4モル%をはるかに下回る量の1,2エリスロ領域欠陥を有することができ、多くの場合、1,2エリスロ領域欠陥を本質的に含まないことが当該技術分野で公知である。
【0051】
さらに、本発明に係るプロピレンランダムコポリマー(P)は、かなり高いメルトフローレートを有することが好ましい。従って、プロピレンランダムコポリマー(P)は、45.0~150g/10分の範囲、好ましくは50.0~130g/10分の範囲、より好ましくは55.0~110g/10分の範囲、さらにより好ましくは60.0~100g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0052】
これに関して、プロピレンランダムコポリマー(P)はビスブレーキングされている(粘性破壊されている、visbroken)ことが好ましい。
【0053】
プロピレンランダムコポリマー(P)を熱で、又は過酸化物でより制御された条件でビスブレーキング(visbreaking)することによって、モル質量分布(MWD)はより狭くなり、その理由は、長い分子鎖がより容易に分解又は切断され、モル質量Mが減少するからであり、モル質量Mの減少に対応してMFRは増加する。MFRは、使用される過酸化物の量の増加に伴って増加する。特段の記載がない限り、本発明を通して、プロピレンランダムコポリマー(P)のメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)は、好ましくは、ビスブレーキング後のメルトフローレート(230℃/2.16kg)である。
【0054】
ビスブレーキングに適した好ましい混合装置は、不連続式及び連続式の混練機(ニーダー)、特殊な混合セクションを備えた二軸押出機及び単軸押出機、並びに共混練機(コニーダー)である。
【0055】
ビスブレーキングは、任意の公知の様式で、例えば過酸化物ビスブレーキング剤を使用することにより、実施されてもよい。典型的なビスブレーキング剤は、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン(DHBP)(例えば、商品名Luperox 101及びTrigonox 101で販売されている)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3(DYBP)(例えば、商品名Luperox 130及びTrigonox 145で販売されている)、ジクミルペルオキシド(DCUP)(例えば、商品名Luperox DC及びPerkadox BCで販売されている)、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド(DTBP)(例えば、商品名Trigonox B及びLuperox Diで販売されている)、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド(BCUP)(例えば、商品名Trigonox T及びLuperox 801で販売されている)並びにビス(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン(DIPP)(例えば、商品名Perkadox 14S及びLuperox DCで販売されている)である。本発明に従って用いられる過酸化物の適切な量は、原則として当業者に公知であり、ビスブレーキングに供されるプロピレンランダムコポリマー(P)の量、ビスブレーキングに供されるプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)値及び得られる生成物の所望の目標MFR(230℃/2.16kg)に基づいて容易に計算することができる。従って、過酸化物ビスブレーキング剤の典型的な量は、用いられるポリプロピレンの量に基づいて、0.005~0.7重量%、より好ましくは0.01~0.4重量%である。
【0056】
典型的には、本発明に係るビスブレーキングは押出機中で行われ、その結果、適切な条件下でメルトフローレートの増加が得られる。ビスブレーキングの間、出発物のより高いモル質量の鎖は、より低いモル質量の分子よりも統計的に頻繁に破壊され、上記のように、平均分子量の全体的な低下及びメルトフローレートの増加をもたらす。
【0057】
従って、プロピレンランダムコポリマー(P)のメルトフローレートMFR(初期)(230℃/2.16kg)、すなわちビスブレーキング前のメルトフローレートは、0.5~10.0g/10分の範囲のようにはるかに低い。例えば、ビスブレーキング前のプロピレンランダムコポリマー(P)のメルトフローレートMFR(初期)(230℃/2.16kg)は、0.8~8.0g/10分の範囲、例えば1.0~6.0g/10分の範囲にある。
【0058】
本発明の1つの実施形態では、プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも5.0のビスブレーキング比[最終MFR(230℃/2.16kg)/初期MFR(230℃/2.16kg)]でビスブレーキングされており、式中、「最終MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング後のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)であり、「初期MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング前のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)である。好ましくは、プロピレンランダムコポリマー(P)は、5.0~100のビスブレーキング比[最終MFR(230℃/2.16kg)/初期MFR(230℃/2.16kg)]でビスブレーキングされており、式中、「最終MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング後のプロピレンホモポリマーのMFR(230℃/2.16kg)であり、「初期MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング前のプロピレンホモポリマーのMFR(230℃/2.16kg)である。より好ましくは、プロピレンランダムコポリマー(P)は、10~80、さらにより好ましくは20~70のビスブレーキング比[最終MFR(230℃/2.16kg)/初期MFR(230℃/2.16kg)]でビスブレーキングされており、式中、「最終MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング後のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)であり、「初期MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング前のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)である。
【0059】
プロピレンランダムコポリマー(P)の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tmは、125~150℃の範囲、好ましくは128~145℃の範囲、より好ましくは130~142℃の範囲、さらにより好ましくは132~140℃の範囲にある。
【0060】
プロピレンランダムコポリマー(P)は、冷キシレン可溶部(XCS)の量によってさらに特徴付けられる。プロピレンランダムコポリマー(P)は、3.0~15.0重量%の範囲、より好ましくは3.5~12.0重量%の範囲、さらにより好ましくは4.0~10.0重量%の範囲、例えば5.0~9.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有することが好ましい。別の好ましい実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマー(P)は、0.1~15.0重量%の範囲、より好ましくは0.1~12.0重量%の範囲、さらにより好ましくは0.1~10.0重量%の範囲、例えば0.1~9.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する。
【0061】
冷キシレン可溶部(XCS)の量が少ないことは、加えて、プロピレンランダムコポリマー(P)が、好ましくは、機械的特性を改善するための第2の相として混在物を形成するエラストマー(コ)ポリマーを含有しないことを示す。第2の相の挿入物としてエラストマー(コ)ポリマーを含有するポリマーは、対照的に異相性と呼ばれ、好ましくは本発明の一部ではない。第2の相又はいわゆる混在物の存在は、例えば高分解能顕微鏡法、例えば電子顕微鏡観察若しくは原子間力顕微鏡法によって、又は動的機械熱分析(dynamic mechanical thermal analysis:DMTA)によって見ることができる。具体的には、DMTAにおいて、多相構造の存在は、少なくとも2つの区別可能なガラス転移温度の存在によって特定できる。
【0062】
従って、本発明に係るプロピレンランダムコポリマー(P)は、-30℃未満、好ましくは-25℃未満、より好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有さないことが好ましい。
【0063】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマーのコモノマーは1-ブテンである。それゆえ、プロピレンランダムコポリマー(P)は、プロピレン及び1-ブテンから誘導可能な単位のみを含むことがとりわけ好ましい。言い換えれば、プロピレン及び1-ブテンのみが重合されていることが好ましい。
【0064】
別の好ましい実施形態では、プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲、より好ましくは1.5~5.2モル%の範囲、さらにより好ましくは2.0~5.2モル%の範囲、例えば3.5~5.0モル%の範囲の1-ブテン含有量を有する。別の好ましい実施形態では、プロピレンランダムコポリマーのコモノマーは1-ブテンであり、プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲、より好ましくは1.5~5.2モル%の範囲、さらにより好ましくは2.0~5.2モル%の範囲、例えば3.5~5.0モル%の範囲の1-ブテン含有量を有する。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマーのコモノマーは1-ブテンであり、プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)2.0~6.0モル%の範囲、好ましくは2.5~5.5モル%の範囲、より好ましくは3.0~5.0モル%の範囲(例えば4.0~4.5モル%)のコモノマー含有量を有する第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)4.0~10.0モル%の範囲、好ましくは5.0~9.0モル%の範囲、より好ましくは5.5~8.0モル%の範囲(例えば6.0~7.0モル%)のコモノマー含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含む。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマーのコモノマーは1-ブテンであり、プロピレンランダムコポリマー(P)は、プロピレンランダムコポリマー(P)の総重量に基づいて0.1~5.0重量%の範囲、好ましくは0.2~3.0重量%の範囲、より好ましくは0.3~2.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、プロピレンランダムコポリマーのコモノマーは1-ブテンであり、プロピレンランダムコポリマー(P)は、45.0~150.0g/10分の範囲、好ましくは50.0~130.0g/10分の範囲、より好ましくは55.0~110.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは60.0~100.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
プロピレンランダムコポリマー(P)は、特に、以下に詳細に規定されるプロセスによって得ることができ、好ましくは得られる。
【0068】
プロピレンランダムコポリマー(P)の調製のためのプロセスは、好ましくは、直列に接続された少なくとも2つの反応器を含む逐次重合プロセスであり、このプロセスは、
(A)スラリー反応器(SR)、好ましくはループ反応器(LR)である第1の反応器(R-1)においてプロピレン並びにエチレン及びC4~C12α-オレフィンから選択されるコモノマー、好ましくは1-ヘキセン又は1-ブテンを重合し、本発明で規定される第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)を得る工程と、
(B)第1の反応器(R-1)の上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び未反応コモノマーを、気相反応器(GPR-1)である第2の反応器(R-2)に移す工程と、
(C)上記第2の反応器(R-2)にプロピレン並びにエチレン及びC4~C12α-オレフィンから選択されるコモノマー、好ましくは1-ヘキセン又は1-ブテンを供給する工程と、
(D)上記第2の反応器(R-2)において上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)の存在下でプロピレン並びにエチレン及びC4~C12α-オレフィンから選択されるコモノマー、好ましくは1-ヘキセン又は1-ブテンを重合し、本発明で規定される第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)を得る工程であって、これらの第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、本発明で規定されるプロピレンランダムコポリマー(P)を形成する工程と
を含み、さらに、第1の反応器(R-1)及び第2の反応器(R-2)において、重合は、
(i)式(I)の遷移金属化合物であって、
(Cp)MX (I)
上記式(I)中、
「M」はジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)であり、
各「X」は独立に、一価のアニオン性σ-配位子であり、
各「Cp」は、独立に、非置換若しくは置換及び/又は縮合シクロペンタジエニル、置換若しくは非置換のインデニル又は置換若しくは非置換のフルオレニルからなる群から選択されるシクロペンタジエニル型有機配位子であり、この有機配位子は遷移金属(M)に配位し、
「R」は、上記有機配位子(Cp)を連結する二価の架橋基であり、
「n」は1又は2であり、好ましくは1である
遷移金属化合物と、
(ii)任意選択で、周期表(IUPAC)の13族の元素(E)を含む共触媒(Co)、好ましくはAl及び/又はBの化合物を含む共触媒(Co)と
を含む固体触媒系(SCS)の存在下で起こる。
【0069】
プロピレンランダムコポリマー(P)、第1のランダムプロピレンコポリマー(P1)及び第2のランダムプロピレンコポリマー(P2)の定義に関しては、上記で与えられた定義が参照される。
【0070】
固体触媒系(SCS)は、以下により詳細に定義される。
【0071】
逐次重合プロセスにおける固体触媒系(SCS)の使用により、上記で定義されたプロピレンランダムコポリマー(P)の製造が可能である。特に、第1の反応器(R-1)におけるプロピレンコポリマー、すなわち第1のランダムプロピレンコポリマー(P1)の調製と、第2の反応器(R-2)へのこのプロピレンコポリマーの輸送及び、とりわけ、未反応コモノマーの輸送とにより、逐次重合プロセスにおいて高いコモノマー含有量を有するコポリマー(P)を生成することが可能である。通常、逐次重合プロセスにおける高いコモノマー含有量を有するプロピレンコポリマーの調製は、ファウリングをもたらし、又は重篤な場合には、通常は未反応のコモノマーが移送ラインで凝縮するので、移送ラインの閉塞(ブロッキング)をもたらす。しかしながら、上記新しい方法を用いると、コモノマーの転化率が上昇し、それに伴って、より高いコモノマー含量及び粘着性の問題の低減をもたらすポリマー鎖へのより良好な組み込みが達成される。
【0072】
用語「逐次重合プロセス」は、プロピレンランダムコポリマー(P)が、直列に接続された少なくとも2つの反応器において生成されることを意味する。より正確には、用語「逐次重合プロセス」は、本出願において、第1の反応器(R-1)のポリマーが未反応コモノマーとともに第2の反応器(R-2)に直接運ばれることを示す。従って、当該プロセスの決定的な態様は、2つの異なる反応器中でのプロピレンランダムコポリマー(P)の調製であり、第1の反応器(R-1)の反応材料は、第2の反応器(R-2)に直接運ばれる。従って、当該プロセスは、少なくとも第1の反応器(R-1)及び第2の反応器(R-2)を含む。1つの特定の実施形態では、当該プロセスは、2つの重合反応器(R-1)及び(R-2)からなる。用語「重合反応器」は、主重合がそこで起こることを示すものとする。従って、当該プロセスが2つの重合反応器からなる場合、この定義は、プロセス全体が例えば前重合反応器における前重合(予備重合、プレポリマー化)工程を含むという選択肢を排除しない。用語「consists of(…からなる)」は、主たる重合反応器を考慮した閉鎖語句(closing formulation)に過ぎない。
【0073】
第1の反応器(R-1)はスラリー反応器(SR)であり、スラリーで稼働する、いずれの連続若しくは単純撹拌式のバッチタンク反応器又はループ反応器であることができる。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくはループ反応器(LR)である。
【0074】
第2の反応器(R-2)及び任意の後続の反応器は気相反応器(GPR)である。このような気相反応器(GPR)は、任意の機械的混合反応器又は流動床反応器であることができる。好ましくは、気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/秒のガス速度を有する機械的に撹拌された流動床反応器を含む。従って、気相反応器(GPR)は、好ましくは機械的撹拌機を備えた流動床型反応器であることが理解される。
【0075】
各反応器における条件(温度、圧力、反応時間、モノマー供給)は所望の生成物に依存し、それは当業者の知識の範囲内にある。すでに上で示したように、第1の反応器(R-1)はスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)であるのに対して、第2の反応器(R-2)は気相反応器(GPR-1)である。後続の反応器も、存在する場合、気相反応器(GPR)である。
【0076】
好ましい多段階プロセスは、Borealis A/S(ボレアリス)、デンマークによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知)等の「ループ-気相」プロセスであり、例えば欧州特許出願公開第0887379号明細書又は国際公開第92/12182号パンフレット等の特許文献に記載されている。
【0077】
マルチモーダル(多峰性)ポリマーは、例えば国際公開第92/12182号パンフレット、欧州特許出願公開第0887379号明細書、及び国際公開第98/58976号パンフレットに記載されているいくつかのプロセスに従って製造することができる。これらの文書の内容は、参照により本明細書に含まれる。
【0078】
好ましくは、上記で規定されたプロピレンランダムコポリマー(P)を製造するための当該プロセスでは、工程(A)の第1の反応器(R-1)、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)についての条件は、以下のとおりであってもよい。
・温度は、40℃~110℃の範囲内、好ましくは60℃~100℃の間、より好ましくは65~90℃の範囲内にあり、
・圧力は、20bar(バール)~80barの範囲内、好ましくは40bar~70barの間にあり、
・それ自体公知の方法でモル質量を制御するために水素を添加することができる。
【0079】
続いて、工程(A)からの反応混合物は、第2の反応器(R-2)、すなわち気相反応器(GPR-1)、すなわち工程(D)に移され、この際の工程(D)における条件は、好ましくは以下のとおりである。
・温度は50℃~130℃の範囲内、好ましくは60℃~100℃の間にあり、
・圧力は5bar~50barの範囲内、好ましくは15bar~40barの間にあり、
・それ自体公知の方法でモル質量を制御するために水素を添加することができる。
【0080】
滞留時間は、両方の反応器ゾーンで異なってもよい。
【0081】
プロピレンランダムコポリマー(P)の製造プロセスの1つの実施形態では、スラリー反応器(SR)、例えばループ(LR)における滞留時間は、0.2~4.0時間、例えば0.3~1.5時間の範囲にあり、気相反応器(GPR)における滞留時間は、概して0.2~6.0時間、例えば0.5~4.0時間となる。
【0082】
所望に応じて、上記重合は、第1の反応器(R-1)中、すなわちスラリー反応器(SR)中、例えばループ反応器(LR)中で、超臨界条件下で、公知の様式で行われてもよい。
【0083】
存在する場合の他の気相反応器(GPR)における条件は、第2の反応器(R-2)と同様である。
【0084】
当該プロセスは、第1の反応器(R-1)における重合の前の前重合も包含してもよい。この前重合は第1の反応器(R-1)中で行うことができるが、しかしながら、前重合が別個の反応器、いわゆる前重合反応器中で行われることが好ましい。
【0085】
本発明に係るプロピレンランダムコポリマー(P)は、遷移金属化合物を含む固体触媒系(SCS)の存在下で調製される。
【0086】
遷移金属化合物は、式(I)を有し、
(Cp)MX (I)
上記式(I)中、
各Cpは、独立に、非置換若しくは置換及び/又は縮合シクロペンタジエニル配位子、例えば置換若しくは非置換のシクロペンタジエニル、置換若しくは非置換のインデニル又は置換若しくは非置換のフルオレニル配位子であり、任意選択の1つ以上の置換基は、独立に、好ましくは、ハロゲン、ヒドロカルビル(例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはC7~C20-アリールアルキル)、環部分に1、2、3若しくは4個のヘテロ原子を含有するC3~C12-シクロアルキル、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-ハロアルキル、-SiR”、-OSiR”、-SR”、-PR”、OR”又は-NR”から選択され、
各R”は、独立に、水素若しくはヒドロカルビル、例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル若しくはC6~C20-アリールであるか、又は例えば-NR”の場合、その2つの置換基R”は、それらが結合する窒素原子とともに、環、例えば5員環若しくは6員環を形成することができ、
Rは、1~3個の原子の架橋基であり、例えば1~2個のC原子及び0~2個のヘテロ原子の架橋基であって、このヘテロ原子は、例えばSi、Ge及び/若しくはO原子であることができ、架橋原子の各々は、独立に、置換基、例えばC1~C20-アルキル、トリ(C1~C20-アルキル)シリル、トリ(C1~C20-アルキル)シロキシ若しくはC6~C20-アリール置換基を保有してもよい架橋基、又は1~3個、例えば1個若しくは2個、のヘテロ原子、例えばケイ素、ゲルマニウム及び/若しくは酸素原子の架橋基、例えば、各R10が独立に、C1~C20-アルキル、C3~12シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはトリ(C1~C20-アルキル)シリル残基、例えばトリメチルシリルである-SiR10 であり、
Mは、4族の遷移金属、例えばZr又はHf、とりわけZrであり、
各Xは、独立に、σ-配位子、例えばH、ハロゲン、C1~C20-アルキル、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール、C6~C20-アリールオキシ、C7~C20-アリールアルキル、C7~C20-アリールアルケニル、-SR”、-PR”、-SiR”、-OSiR”、-NR”又は-CH-Yであり、Yは、C6~C20-アリール、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-アルコキシ、C6~C20-アリールオキシ、NR”、-SR”、-PR”、-SiR”、又は-OSiR”であり、
上記の環部分の各々は、単独で、又はCp、X、R”若しくはRについての置換基としての別の部分の一部として、例えばSi及び/又はO原子を含有してもよいC1~C20-アルキルでさらに置換されることが可能であり、
nは1又は2である。
【0087】
適切には、各Xが-CH-Yであるとき、各Yは、独立に、C6~C20-アリール、NR”、-SiR”又は-OSiR”から選択される。最も好ましくは、-CH-YとしてのXはベンジルである。CH-Y以外の各Xは、独立に、ハロゲン、C1~C20-アルキル、C1~C20-アルコキシ、C6~C20-アリール、C7~C20-アリールアルケニル又は上記で規定されたとおりの-NR”、例えば-N(C1~C20-アルキル)である。
【0088】
好ましくは、各Xはハロゲン、メチル、フェニル又は-CH-Yであり、各Yは独立に、上記で規定されたとおりである。
【0089】
Cpは、好ましくは、シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、上記で規定されたように置換されていてもよい。理想的には、Cpはシクロペンタジエニル又はインデニルである。
【0090】
式(I)の化合物の適切なサブグループでは、各Cpは、独立に、上記で規定された1、2、3又は4個の置換基、好ましくは1、2又は3個の置換基、例えば1又は2個の置換基を有し、これらの置換基は、好ましくはC1~C20-アルキル、C6~C20-アリール、C7~C20-アリールアルキル(この基において、アリール環は単独で又はさらなる部分の一部として、上で示されたようにさらに置換されていてもよい)、-OSiR”から選択され、R”は上記のとおりであり、好ましくはC1~C20-アルキルである。
【0091】
Rは、好ましくはメチレン、エチレン又はシリル架橋基であって、シリルは、上記で規定されたように置換されることが可能であり、例えば、(ジメチル)Si=、(メチルフェニル)Si=、(メチルシクロヘキシル)シリル=又は(トリメチルシリルメチル)Si=であることが可能であり、nは0又は1である。好ましくは、R”は水素以外である。
【0092】
特定のサブグループには、架橋された2つのη5-配位子、例えば上記で規定されたとおりのシロキシ若しくはアルキル(例えばC1~6-アルキル)で置換されていてもよいシクロペンタジエニル配位子、又は例えば上記で規定されたシロキシ若しくはアルキルで環部分のいずれか、例えば、2位、3位、4位及び/若しくは7位で置換されていてもよい2つの架橋インデニル配位子を有するZr及びHfの周知のメタロセンが含まれる。好ましい架橋基は、エチレン又は-SiMeである。
【0093】
メタロセンの調製は、文献から公知である方法に従って、又はそれに類似して行うことができ、当業者の技能の範囲内である。従って、調製については、欧州特許出願公開第129368号明細書を参照し、金属原子が-NR”配位子を保有する化合物の例については、とりわけ、国際公開第9856831号パンフレット及び国際公開第0034341号パンフレットを参照されたい。調製については、例えば、欧州特許出願公開第260130号明細書、国際公開第9728170号パンフレット、国際公開第9846616号パンフレット、国際公開第9849208号パンフレット、国際公開第9912981号パンフレット、国際公開第9919335号パンフレット、国際公開第9856831号パンフレット、国際公開第0034341号パンフレット、欧州特許出願公開第423101号明細書及び欧州特許出願公開第537130号明細書も参照されたい。
【0094】
本発明の錯体は、好ましくは非対称である。これは単に、メタロセンを形成する2つのインデニル配位子が異なること、すなわち、各インデニル配位子が、化学的に異なるか、又は他のインデニル配位子に対して異なる位置に位置する置換基のセットを有することを意味する。より正確には、それらはキラルなラセミ架橋ビスインデニルメタロセンである。本発明の錯体は、理想的にはsyn配置であってもよいが、それらはanti配置である。本発明の目的のために、ラセミ-antiは、2つのインデニル配位子がシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル平面に対して反対方向に配向していることを意味するのに対して、ラセミ-synは、2つのインデニル配位子がシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル平面に対して同じ方向に配向していることを意味する。
【0095】
本発明の好ましい錯体は、式(II’)又は(II)のものであり、
【化1】
上記式(II’)及び(II)中、
MはZrであり;
各Xはσ(シグマ)配位子であり、好ましくは各Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基、C1~C6アルキル、フェニル又はベンジル基であり、
Lは、-R’C-、-R’C-CR’、-R’Si-、-R’Si-SiR’-、-R’Ge-から選択される二価の架橋基であり、各R’は、独立に、水素原子、C1~C20アルキル、C3~C10シクロアルキル、トリ(C1~C20-アルキル)シリル、C6~C20-アリール、C7~C20アリールアルキルであり、
各R又はR’はC1~C10アルキル基であり、
’はC1~C10アルキル基又はZ’R’基であり、
は水素又はC1~C10アルキル基であり、
’はC1~C10アルキル基又はC6~C10アリール基であり、
は、水素、C1~C6アルキル基又はZR基であり、
’は水素又はC1~C10アルキル基であり、
Z及びZ’は独立にO又はSであり、
’は、C1~C10アルキル基、又は1つ以上のハロゲン基で置換されていてもよいC6~C10アリール基であり、
はC1~C10アルキル基であり、
各nは独立に、0~4、例えば0、1又は2であり、
各Rは、独立に、C1~C20ヒドロカルビル基、例えばC1~C10アルキル基である。
【0096】
本発明の特に好ましい化合物としては、
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-l-イル]ジルコニウムジクロリド
rac-ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-l-イル)ジルコニウムジクロリド
rac-anti-MeSi(2-Me-4-Ph-6-tBu-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(3,5-ジ-tBuPh)-6-tBu-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OC)-6-iPr-Ind)ZrCl
rac-anti-Me(CyHex)Si(2-Me-4-Ph-6-tBu-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(3,5-ジ-tBuPh)-7-Me-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(3,5-ジ-tBuPh)-7-OMe-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-6-tBu-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-Ind)(2-Me-4-(4-tBuPh)-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-Ind)(2-Me-4-(3,5-tBu2Ph)-5-OMe-6-tBu-Ind)ZrCl
rac-anti-MeSi(2-Me-4-(p-tBuPh)-Ind)(2-Me-4-Ph-5-OtBu-6-tBu-Ind)ZrCl
が挙げられる。
【0097】
最も好ましいメタロセン錯体(触媒前駆体(前駆触媒))は、rac-anti-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリドである。
【0098】
メタロセン錯体(触媒前駆体)以外に、上記メタロセン触媒は、国際公開第2015/011135A1号パンフレットで規定される共触媒をさらに含む。従って、好ましい共触媒は、メチルアルミノキサン(MAO)及び/又はボレート、好ましくはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0099】
上記メタロセン触媒が担持されていないこと、すなわち外部担体が使用されないことがとりわけ好ましい。このようなメタロセン錯体の調製に関しては、再び国際公開第2015/011135A1号パンフレットが参照される。
【0100】
繊維(F)
当該繊維強化組成物(C)の必須成分は、繊維(F)である。
【0101】
好ましくは、繊維(F)は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、金属繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、繊維(F)はガラス繊維及び/又は炭素繊維である。
【0102】
繊維(F)がガラス繊維(GF)であることがとりわけ好ましい。好ましくは、ガラス繊維(GF)は、ガラス短繊維(SGF)若しくはチョップドストランドとしても知られる切断ガラス繊維、及び/又はガラス長繊維(LGF)、好ましくはガラスロービングから得られるガラス長繊維(LGF)である。
【0103】
繊維(F)がガラス短繊維(SGF)であることが特に好ましい。
【0104】
繊維強化組成物(C)に使用される切断ガラス繊維又はガラス短繊維(SGF)は、好ましくは、2.0~10.0mmの範囲、より好ましくは2.3~9.0mmの範囲、さらにより好ましくは2.5~8.0mmの範囲、例えば3.0~7.0mmの範囲の平均長さを有する。
【0105】
繊維強化組成物(C)に用いられる切断ガラス繊維又はガラス短繊維(SGF)は、好ましくは5~20μm、より好ましくは6~18μm、さらにより好ましくは8~16μmの平均直径を有する。
【0106】
好ましくは、ガラス短繊維(SGF)は、125~650、好ましくは150~500、より好ましくは200~450のアスペクト比を有する。アスペクト比は、繊維の平均長さと平均直径との間の関係である。
【0107】
接着促進剤(AP)
本発明によれば、繊維強化ポリプロピレン組成物(C)は、接着促進剤(AP)をさらに含んでもよい。繊維(F)がガラス繊維及び/又は炭素繊維である場合、繊維強化ポリプロピレン組成物(C)が接着促進剤(AP)を含むことが好ましい。
【0108】
接着促進剤(AP)は、極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーとして特定される。
【0109】
極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーは、反応性極性基を有する低分子量化合物を含む。変性されたポリプロピレンホモポリマー及びコポリマー、例えばプロピレン及びエチレン又は他のα-オレフィン、例えばC4~C10α-オレフィンとのコポリマーは、本発明の繊維強化ポリプロピレン組成物(C)のプロピレンポリマー(P)と非常に相溶性が高いため、最も好ましい。
【0110】
構造に関して、極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーは、好ましくはグラフトホモポリマー又はコポリマーから選択される。
【0111】
これに関して、極性化合物、特に酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、第一級及び第二級アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリン並びにエポキシドからなる群から選択される極性化合物、並びにイオン性化合物に由来する基を含有する極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーが好ましい。
【0112】
上記極性化合物の具体例は、不飽和環状無水物及びその脂肪族ジエステル、並びに二塩基酸誘導体等である。特に、無水マレイン酸、並びにマレイン酸C1~C10直鎖及び分岐ジアルキル、フマル酸C1~C10直鎖及び分岐ジアルキル、無水イタコン酸、イタコン酸C1~C10直鎖及び分岐ジアルキルエステル、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸並びにこれらの混合物から選択される化合物を使用することができる。
【0113】
無水マレイン酸又はアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーを極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマー、すなわち接着促進剤(AP)として使用することが特に好ましい。
【0114】
上記変性ポリマー、すなわち接着促進剤は、例えば米国特許第4,506,056号明細書、米国特許第4,753,997号明細書又は欧州特許出願公開第1805238号明細書に開示されるように、フリーラジカル発生剤(有機過酸化物等)の存在下での、上記ポリマーと、例えば無水マレイン酸又はアクリル酸との反応押出によって単純な方法で製造することができる。
【0115】
極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマー、すなわち接着促進剤(AP)、中の極性化合物に由来する基の好ましい量は、0.5~5.0重量%である。例えば、この量は、0.5重量%~4.5重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~4.0重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~3.5重量%の範囲にあってもよい。
【0116】
極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーについて、すなわち接着促進剤(AP)についてのメルトフローレートMFR(230℃)の好ましい値は、20.0~400g/10分である。極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーが40.0~300g/10分の範囲、より好ましくは50.0~250g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが特に好ましい。
【0117】
本発明の1つの好ましい実施形態では、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンホモ/コポリマー、及び/又はアクリル酸変性ポリプロピレンホモ/コポリマーである。好ましくは、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンホモポリマー及び/又はアクリル酸変性ポリプロピレンホモポリマー、好ましくは無水マレイン酸変性ポリプロピレンホモポリマーである。例えば、適切な極性変性ポリプロピレン(PM-PP)ホモポリマー又はコポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸でグラフトされたポリプロピレンホモポリマー(PP-g-MAH)及びアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンホモポリマー(PP-g-AA)が挙げられる。
【0118】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸でグラフトされた上記のプロピレンランダムコポリマー(P)である。
【0119】
添加剤(AD)
プロピレンランダムコポリマー(P)、繊維(F)及び接着促進剤(AP)に加えて、本発明の繊維強化組成物(C)は、添加剤(AD)を含んでもよい。典型的な添加剤は、酸スカベンジャー、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、可塑剤、スリップ剤、擦り傷防止剤(anti-scratch agent)、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料などである。
【0120】
このような添加剤は市販されており、例えばHans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」、第6版、2009年(1141~1190頁)に記載されている。
【0121】
さらには、本発明に係る用語「添加剤(AD)」は、担体材料、特にポリマー担体材料も含む。
【0122】
ポリマー担体材料
好ましくは、本発明の繊維強化ポリプロピレン組成物(C)は、(a)プロピレンランダムコポリマー(P)及び接着促進剤(AP)とは異なるさらなるポリマー(複数種可)を、繊維強化ポリプロピレン組成物(C)の重量に基づいて5.0重量%を超える量、好ましくは3.0重量%を超える量、より好ましくは2.0重量%を超える量では含まない。添加剤(AD)のための担体材料であるいずれのポリマーも、本発明に示されるようなポリマー化合物の量ではなく、それぞれの添加剤の量に算入される。
【0123】
添加剤(AD)のポリマー担体材料は、本発明の繊維強化ポリプロピレン組成物(C)中での均一分布を確保するための担体ポリマーである。このポリマー担体材料は特定のポリマーには限定されない。ポリマー担体材料は、エチレンホモポリマー、エチレン及びC3~C8α-オレフィンコモノマー等のα-オレフィンコモノマーから得られるエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、並びに/又はプロピレン並びにエチレン及び/若しくはC4~C8α-オレフィンコモノマー等のα-オレフィンコモノマーから得られるプロピレンコポリマーであってもよい。ポリマー担体材料がスチレン又はその誘導体から誘導可能なモノマー単位を含有しないことが好ましい。
【0124】
物品
本発明は、上記で規定された繊維強化組成物(C)を含む物品、例えば射出成形品にも関する。本発明は、特に、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%の、上記で規定された繊維強化ポリプロピレン組成物(C)を含む物品、例えば射出成形品に関する。とりわけ好ましい実施形態では、本発明は、上記で規定された繊維強化組成物(C)からなる物品、例えば射出成形品に関する。
【0125】
好ましくは、当該物品は、自動車物品、例えば射出成形自動車物品である。
【0126】
さらなる実施形態
[1] 繊維強化組成物(C)であって、この繊維強化組成物(C)の総重量に基づいて、
a)57.0~95.0重量%のプロピレンランダムコポリマー(P)であって、コモノマーは、エチレン及び/又は少なくとも1種のC4~C12α-オレフィンから選択され、このプロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)45~150g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
ii)125~150℃の範囲の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tm
を有するプロピレンランダムコポリマー(P)と、
b)5.0~40.0重量%の繊維(F)と、
c)任意選択で、0.1~5.0重量%の接着促進剤(AP)と
を含む繊維強化組成物(C)。
【0127】
[2] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも0.4モル%の量の1,2エリスロ位置欠陥を有する[1]に記載の繊維強化組成物(C)。
【0128】
[3] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、
i)第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と、
ii)上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)よりも高いコモノマー含有量を有する第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)と
を含み、上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)と上記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)との重量比は20/80~60/40の範囲にあり、上記プロピレンランダムコポリマー(P)に対する上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び上記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の総量は少なくとも95.0重量%である
[1]又は[2]に記載の繊維強化組成物(C)。
【0129】
[4] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、1.0~6.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する[1]~[3]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0130】
[5] i)上記第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)は、0.4~2.5モル%の範囲のコモノマー含有量を有し、
ii)上記第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)は、2.8~7.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する
[1]~[4]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0131】
[6] 上記コモノマーは1-ヘキセンである[1]~[5]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0132】
[7] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、上記プロピレンランダムコポリマー(P)の総重量に基づいて3.0~15.0重量%の範囲のISO16152(25℃)に従って決定されたキシレン可溶部含有量(XCS)を有する[1]~[6]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0133】
[8] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、少なくとも5.0のビスブレーキング比[最終MFR(230℃/2.16kg)/初期MFR(230℃/2.16kg)]でビスブレーキングされており、式中、「最終MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング後のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)であり、「初期MFR(230℃/2.16kg)」は、ビスブレーキング前のプロピレンランダムコポリマー(P)のMFR(230℃/2.16kg)である[1]~[6]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0134】
[9] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、0.5~10.0g/10分の範囲の、ビスブレーキング前にISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する[8]に記載の繊維強化組成物(C)。
【0135】
[10] 上記繊維(F)は、ガラス繊維(GF)、好ましくは
i)2.0~10.0mmの平均長さ、及び/又は
ii)5~20μmの平均直径
を有するガラス短繊維(SGF)である[1]~[9]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0136】
[11] 上記接着促進剤(AP)は、20.0g/10分~400g/10分のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する無水マレイン酸でグラフトされたプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである極性変性ポリプロピレン(PM-PP)である[1]~[10]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0137】
[12] 8.0~60.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する[1]~[11]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0138】
[13] 上記プロピレンランダムコポリマー(P)は、メタロセン化合物を含む固体触媒系(SCS)の存在下で得られる[1]~[12]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)。
【0139】
[14] 上記メタロセン化合物は、式(I)を有し、
(Cp)MX (I)
上記式(I)中、
各Cpは、独立に、非置換若しくは置換及び/又は縮合シクロペンタジエニル配位子、例えば置換若しくは非置換のシクロペンタジエニル、置換若しくは非置換のインデニル又は置換若しくは非置換のフルオレニル配位子であり、任意選択の1つ以上の置換基は、独立に、好ましくは、ハロゲン、ヒドロカルビル(例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはC7~C20-アリールアルキル)、環部分に1、2、3若しくは4個のヘテロ原子を含有するC3~C12-シクロアルキル、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-ハロアルキル、-SiR”、-OSiR”、-SR”、-PR”、OR”又は-NR”から選択され、
各R”は、独立に、水素若しくはヒドロカルビル、例えばC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル若しくはC6~C20-アリールであるか、又は例えば-NR”の場合、その2つの置換基R”は、それらが結合する窒素原子とともに、環、例えば5員環若しくは6員環を形成することができ、
Rは、1~3個の原子の架橋基であり、例えば1~2個のC原子及び0~2個のヘテロ原子の架橋基であって、このヘテロ原子は、例えばSi、Ge及び/若しくはO原子であることができ、上記架橋原子の各々は、独立に、置換基、例えばC1~C20-アルキル、トリ(C1~C20-アルキル)シリル、トリ(C1~C20-アルキル)シロキシ若しくはC6~C20-アリール置換基を保有してもよい架橋基、又は1~3個、例えば1個若しくは2個、のヘテロ原子、例えばケイ素、ゲルマニウム及び/若しくは酸素原子の架橋基、例えば各R10が独立に、C1~C20-アルキル、C3~12シクロアルキル、C6~C20-アリール若しくはトリ(C1~C20-アルキル)シリル残基、例えばトリメチルシリルである-SiR10 であり、
Mは、4族の遷移金属、例えばZr又はHf、とりわけZrであり、
各Xは、独立に、σ-配位子、例えばH、ハロゲン、C1~C20-アルキル、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール、C6~C20-アリールオキシ、C7~C20-アリールアルキル、C7~C20-アリールアルケニル、-SR”、-PR”、-SiR”、-OSiR”、-NR”又は-CH-Yであり、Yは、C6~C20-アリール、C6~C20-ヘテロアリール、C1~C20-アルコキシ、C6~C20-アリールオキシ、NR”、-SR”、-PR”、-SiR”、又は-OSiR”であり、
上記の環部分の各々は、単独で、又はCp、X、R”若しくはRについての置換基としての別の部分の一部として、例えばSi及び/又はO原子を含有してもよいC1~C20-アルキルでさらに置換されることが可能であり、
nは1又は2である
請求項[13]に記載の繊維強化組成物(C)。
【0140】
[15] [1]~[14]のいずれか1つに記載の繊維強化組成物(C)を含む物品。
【0141】
本発明は、これより、以下に提供される実施例によりさらに詳細に説明される。
【実施例
【0142】
A. 測定方法
以下の用語の定義及び決定方法は、別段の定義がない限り、本発明の上記概説及び以下の実施例に適用される。
【0143】
プロピレン-1-ヘキセンコポリマー(P)についての1-ヘキセンのコモノマー含有量
定量的13C{H} NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ500.13MHz及び125.76MHzで動作するBruker Avance III 500 NMR分光計を使用して溶融状態で記録した。すべてのスペクトルを、180℃の13Cに最適化した7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの材料を外径7mmのジルコニアMASローターに充填し、4kHzで回転させた。迅速な同定及び正確な定量に必要な高感度を主な理由としてこの設定を選んだ(Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382.;Parkinson,M.、Klimke,K.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2007;208:2128.;Castignolles,P.、Graf,R.、Parkinson,M.、Wilhelm,M.、Gaborieau,M.、Polymer 50(2009)2373)。3sの短い繰り返し時間(recycle delay)でのNOE(Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382;Pollard,M.、Klimke,K.、Graf,R.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Sperber,O.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Macromolecules 2004;37:813.)及びRS-HEPTデカップリングスキーム(Filip,X.、Tripon,C.、Filip,C.、J.Mag.Resn. 2005、176、239.;Griffin,J.M.、Tripon,C.、Samoson,A.、Filip,C.、及びBrown,S.P.、Mag.Res.in Chem. 2007 45、S1、S198)を利用する標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で16384(16k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部基準としている。
1-ヘキセンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し、コモノマー含有量を以下のようにして定量した。
PHPの孤立した配列で組み込まれた1-ヘキセンの量は、44.2ppmのαB4部位の積分値を使用し、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して定量した。
H=IαB4/2
PHHPの2回の連続的なシーケンスで組み込まれた1-ヘキセンの量は、41.7ppmのααB4部位の積分値を使用し、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して定量した。
HH=2×IααB4
2回の連続的な組み込みが認められたとき、PHPの孤立したシーケンスで組み込まれた1-ヘキセンの量は、44.4ppmでのαB4シグナル及びαB4B4シグナルの重なりに起因して補正される必要がある。
H=(IαB4-2×IααB4)/2
総1-ヘキセン含有量は、孤立して組み込まれた1-ヘキセン及び連続的に組み込まれた1-ヘキセンの和に基づいて算出した。
Htotal=H+HH
連続的な組み込みを示す部位が観察されなかった場合、総1-ヘキセンコモノマー含有量を、この量だけに基づいて算出した。
Htotal=H
位置2,1-エリスロ欠陥を示す特徴的なシグナルを観察した(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253)。
2,1-エリスロ位置欠陥の存在は、17.7ppm及び17.2ppmのPαβ(21e8)及びPαγ(21e6)のメチル部位の存在によって示され、他の特徴的なシグナルによって確認された。
二次(2,1-エリスロ)挿入したプロペンの総量は、42.4ppmのαα21e9メチレン部位に基づいて定量した。
P21=Iαα21e9
一次(1,2)挿入したプロペンの総量は、46.7ppmの主要なSααメチレン部位に基づき、かつ考慮されないプロペンの2,1-エリスロ、αB4メチレン単位及びααB4B4メチレン単位の相対量を補正して定量した(なお、1シーケンスあたりのヘキセンモノマーのH及びHHカウント数はシーケンスの数ではない)。
P12=Iαα+2×P21+H+HH/2
プロペンの総量は、一次(1,2)及び二次(2,1-エリスロ)挿入したプロペンの和として定量した。
Ptotal=P12+P21=Iαα+3×Iαα21e9+(IαB4-2×IααB4)/2+IααB4
これは、次のように簡単になる。
Ptotal=Iαα+3×Iαα21e9+0.5×IαB4
次いで、ポリマー中の1-ヘキセンの総モル分率を以下のように算出した。
fH=Htotal/(Htotal+Ptotal)
ポリマー中の1-ヘキセンのモル分率の完全な積分方程式は、以下のとおりである。
fH=(((IαB4-2×IααB4)/2)+(2×IααB4))/((Iαα+3×Iαα21e9+0.5×IαB4)+((IαB4-2×IααB4)/2)+(2×IααB4))
これは、次のように簡単になる。
fH=(IααB4/2+IααB4)/(Iαα+3×Iαα21e9+IαB4+IααB4)
モルパーセント単位での1-ヘキセンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から通常のようにして算出した。
H[モル%]=100×fH
重量パーセント単位での1-ヘキセンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から標準的なやり方で算出した。
H[重量%]=100×(fH×84.16)/((fH×84.16)+((1-fH)×42.08))
【0144】
第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)のコモノマー含有量の算出
【数1】
上記式中、
w(P1)は、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)の重量分率であり、
w(P2)は、第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の重量分率であり、
C(P1)は、第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)、すなわち第1の反応器(R1)の生成物の13C NMR分光法によって測定されたコモノマー含有量[単位:モル%]であり、
C(P)は、第2の反応器(R2)において得られる生成物、すなわち[プロピレンランダムコポリマー(P)の]第1のプロピレンランダムコポリマー(P1)及び第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の混合物の13C NMR分光法によって測定されたコモノマー含有量[単位:モル%]であり、
C(P2)は、第2のプロピレンランダムコポリマー(P2)の計算されたコモノマー含有量[単位:モル%]である。
【0145】
プロピレン-1-ブテンコポリマー(P)についての1-ブテンのコモノマー含有量
定量的13C{H} NMRスペクトルを、上記のとおりに記録し、処理し、参照した。
1-ブテンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し、コモノマー含有量を以下のように定量した。
PPBPPの孤立したシーケンスで組み込まれた1-ブテンの量は、43.6ppmのαB2部位の積分値を使用し、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して定量した。
B=Iα/2
PPBBPPの2回の連続的なシーケンスで組み込まれた1-ブテンの量は、40.5ppmのααB2B2部位の積分値を使用し、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して定量した。
BB=2×Iαα
2回の連続的な組み込みが認められたとき、PPBPPの孤立したシーケンスで組み込まれた1-ブテンの量は、43.9ppmでのαB2シグナル及びαB2B2シグナルの重なりに起因して補正される必要がある。
B=(Iα-2×Iαα)/2
総1-ブテン含有量は、孤立して組み込まれた1-ブテン及び連続的に組み込まれた1-ブテンの和に基づいて算出した。
total=B+BB
プロペンの量は、46.7ppmの主要なSααメチレン部位に基づき、かつ考慮されないプロペンのαB2メチレン単位及びααB2B2メチレン単位の相対量を補正して定量した(なお、1シーケンスあたりのブタンモノマーのB及びBBカウント数はシーケンスの数ではない)。
total=Iαα+B+BB/2
位置欠陥に対応する特徴的なシグナル(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253)が観察された場合、誤挿入したプロピレン単位に付いての補正をPtotalに対して使用した。
2,1-エリスロ誤挿入が存在する場合、42.5ppmの化学シフトを有するこの微細構造要素の9番目の炭素(S21e9)からのシグナル(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253)を補正のために選んだ。この場合、
total=Iαα+B+BB/2+3×I(S21e9
次いで、ポリマー中の1-ブテンの総モル分率を以下のように算出した。
fB=(Btotal/(Btotal+Ptotal
モルパーセント単位での1-ブテンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から通常のようにして算出した。
B[モル%]=100×fB
重量パーセント単位での1-ブテンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から標準的なやり方で算出した。
B[重量%]=100×(fB×56.11)/((fB×56.11)+((1-fB)×42.08))
【0146】
メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートMFRは、プロピレンコポリマーについては230℃で2.16kgの荷重を用いて、エチレンコポリマーについては190℃で2.16kgの荷重を用いて測定した。メルトフローレートは、ISO1133に規格化された試験装置が2.16kgの荷重の下でそれぞれ230℃、190℃の温度で10分以内に押し出す、グラム単位のポリマーの量である。
【0147】
冷キシレン可溶部(XCS、重量%):冷キシレン可溶部(XCS)の含有量は、ISO16152;第1版;2005-07-01に従って25℃で決定した。
【0148】
融解温度Tm、結晶化温度Tは、5~7mgの試料に対してMettler TA820示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した。DSCは、ISO11357/パート3/方法C2に従い、-30~+225℃の温度範囲の10℃/分の走査速度での加熱/冷却/加熱のサイクルにおいて実行した。結晶化温度は冷却工程から決定したのに対して、融解温度は第2の加熱工程から決定した。
すべての機械的測定は、試験片の96時間のコンディショニング時間(23℃、50%相対湿度)後に行った。
【0149】
ガラス転移温度Tgは、ISO6721-7に従って動的機械分析によって決定した。測定は、圧縮成形試料(40×10×1mm)に対して、-100℃~+150℃の間で2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数によってねじりモードで行った。
【0150】
ノッチなしシャルピー衝撃強さを、EN ISO1873-2に従って調製した射出成形試験片(80×10×4mm)を使用することによって、ISO179-1/1eUに従って23℃で決定した。
【0151】
引張特性は、EN ISO1873-2に従って調製した厚さ4mmの射出成形ドッグボーン試験片に対して決定した。引張弾性率は、1mm/分のひずみ速度及び23℃でISO527-1Aに従って決定し、引張強さ及び破断点伸び(ひずみ)は、50mm/分のひずみ速度及び23℃でISO527-2に従って決定した。
【0152】
荷重たわみ温度(HDT)
HDTは、ISO1873-2に従って調製した80×10×4mmの射出成形試験片に対して決定した。試験は、1.80MPaの公称表面応力で、ISO75、条件Aに従って平らに支持された試験片に対して実施した。
【0153】
VOC/Fog(フォグ)放出は、射出成形試験片及び造粒配合物に対してVDA278:2002に従って測定した。揮発性有機化合物は、トルエン当量/グラムで測定した。曇り(fogging)は、ヘキサデカン当量/グラムで測定した。
測定は、キャリアガスとしてヘリウム5.0を使用し、長さ50m、直径0.32mm及び5%フェニル-メチル-シロキサンの0.52μmコーティングのカラムHP Ultra 2を使用して、Gerstel(ゲステル)によって供給されたTDSAを用いて実施した。
VOC分析は、以下の主なパラメータを使用して、上記規格に列挙されたデバイス設定1に従って行った:フローモード スプリットレス、最終温度90℃;最終時間30分、速度60K/分。冷却トラップを、-150℃~+280℃の温度範囲において、加熱速度12K/秒及び最終時間5分で、フローモード スプリット1:30でパージした。以下のGC設定を分析に使用した:40℃で2分間等温、3K/分で92℃まで、次いで5K/分で160℃まで、次いで10K/分で280℃まで加熱、10分間等温;流量1.3ml/分。
fog(フォグ)分析は、以下の主なパラメータを使用して、上記規格に列挙されたデバイス設定1に従って行った:フローモード スプリットレス、速度60K/分;最終温度120℃;最終時間60分。冷却トラップを、-150℃~+280℃の温度範囲において、加熱速度12K/秒で、フローモード スプリット1:30でパージした。以下のGC設定を分析に使用した:50℃で2分間等温、25K/分で160℃まで、次いで10K/分で280℃まで加熱、30分間等温;流量1.3ml/分。
【0154】
2. 実施例
触媒の調製
メタロセン(MC1)(rac-anti-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド)は、国際公開第2013/007650号パンフレットに記載されているように合成した。
触媒は、メタロセンMC1並びにMAO及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの触媒系を使用して、国際公開第2015/11135号パンフレットの触媒3に従って調製したが、ただし、界面活性剤は2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)-1-プロパノールである。この触媒を用いてランダムプロピレンコポリマーP-I及びP-IIを調製した。
【0155】
ランダムプロピレンコポリマー(P-I)の調製
ランダムプロピレンコポリマー(P-I)を、ループ反応器及び気相反応器を含む逐次(連続)プロセスで調製した。反応条件を表1に要約する。
【0156】
【表1】
【0157】
次いで、得られたコポリマーを、ポリプロピレンを伴う5重量%2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンのマスターバッチ(POX)を用いて、同方向回転(共回転)二軸押出機中、210~230℃でビスブレーキングした。得られた変性プロピレンランダムコポリマー(mP-1)は、79g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。これは、ビスブレーキング率が52.7であることを意味する。
【0158】
ランダムプロピレンコポリマー(P-II)の調製
ランダムプロピレンコポリマー(P-II)を、ループ反応器及び気相反応器を含む逐次プロセスで調製した。反応条件を表2に要約する。
【0159】
【表2】
【0160】
得られたコポリマーを、安定化のために基本的な抗酸化剤の組み合わせを使用して、ビスブレーキングなしで配合した。
【0161】
P-IIは、94g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、5.5モル%のC4コモノマー含有量を有し、核形成剤を含有しないC3C4ランダムコポリマーである。P-IIは、140℃の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された融解温度Tm及び105℃の示差走査熱量測定(DSC)に従って決定された結晶化温度Tcを有する。
【0162】
繊維強化組成物(C)の調製
繊維強化組成物(C)は、変性プロピレンランダムコポリマー(mP-I)又はプロピレンランダムコポリマー(P-II)と、ガラス繊維(GF)、接着促進剤(AP)及び添加剤(AD)とを、同方向回転二軸押出機で溶融ブレンドすることにより得た。発明例及び比較例の組成物及び特性を表3に要約する。
【0163】
【表3】
【0164】
hPは、75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)、905kg/mのISO1183-187に従って決定された密度及び+2℃のガラス転移温度Tgを有する、Ziegler-Natta触媒を用いて調製された、Borealis AGの市販のプロピレンホモポリマーHJ120UBである。
GFは、10.5μmのフィラメント直径及び3mmのストランド長を有する日本電気硝子株式会社の市販製品ECS 03 T-480Hである。
AP1は、Scona(スコナ)による接着促進剤SCONA TPPP 8112 GAであり、1.4重量%の無水マレイン酸含有量及び、約50g/10分のMFR(230℃、2.16kg)に相当する、80g/10分を超えるMFR(190℃、2.16kg)を有する無水マレイン酸で官能化されたポリプロピレンである。
AP2は、同方向回転二軸押出機中で1000ppmのPOXの存在下で、上記のプロピレンランダムコポリマー(P)を0.7重量%の無水マレイン酸とグラフトすることによって得られるプロピレン及び1-ヘキセンのMAHグラフトコポリマーである。AP2は、72g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
AD1は、8.0重量%のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(HPL Additives(エイチピーエル・アディティブズ)によるKinox-68-G)、8.0重量%のペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(BASF(ビーエーエスエフ)によるIrganox 1010FF)、20.0重量%のBorealisによるカーボンブラック(39.5重量%マスターバッチ)、並びに64.0重量%の、905kg/mのISO1183-187に従って決定された密度及び3.2g/10分のMFR(230℃、2.16kg)を有するBorealisによるプロピレンホモポリマーHC001Aからなるマスターバッチである。
AD2は、14.3重量%のトリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(HPL AdditivesによるKinox-68-G)、14.3重量%のペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(BASFによるIrganox 1010FF)、35.7重量%のBorealisによるカーボンブラック(39.5重量%マスターバッチ)、並びに35.7重量%の、905kg/mのISO1183-187に従って決定された密度及び3.2g/10分のMFR(230℃、2.16kg)を有するBorealisによるプロピレンホモポリマーHC001Aからなるマスターバッチである。