IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7682289通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星
<>
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図1
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図2
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図3
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図4
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図5
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図6
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図7
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図8
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図9
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図10
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図11
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図12
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図13
  • 特許-通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/195 20060101AFI20250516BHJP
   H04B 10/118 20130101ALI20250516BHJP
【FI】
H04B7/195
H04B10/118
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023553806
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037803
(87)【国際公開番号】W WO2023062732
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0266061(US,A1)
【文献】国際公開第2020/255310(WO,A1)
【文献】米国特許第05813634(US,A)
【文献】特開平08-307457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/14-7/22
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軌道面から成る通信衛星システムであって、
前記複数の軌道面の各軌道面に対する法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散しており、
前記複数の軌道面の各軌道面を対象軌道面とし、前記対象軌道面は傾斜軌道に対応する軌道面であり、前記対象軌道面には複数の衛星が飛翔しており、
前記対象軌道面を飛翔している各衛星を対象衛星とし、前記対象衛星は、前記対象衛星が飛翔している軌道面を飛翔している衛星であって、前記対象衛星の進行方向に対して前方および後方の各々に位置する衛星と通信する第一の通信装置と、地上に設置された地上設備と通信する第二の通信装置と、前記対象衛星が飛翔している軌道面と、前記対象衛星が飛翔している軌道面とは異なる軌道面である別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、前記別軌道面を飛翔している衛星と通信する第三の通信装置とを具備しており、
前記対象軌道面において、前記対象軌道面を飛翔している複数の衛星が円環状通信網を形成している通信衛星システム。
【請求項2】
第一の地上設備の上空を通過する軌道面であって、前記複数の軌道面を構成するいずれかの軌道面である第一の軌道面を飛翔している衛星である第一受信衛星が、前記第一の地上設備の上空において前記第一の地上設備が送信したデータである通信データを受信し、
前記第一受信衛星は、前記第一の軌道面に形成されている円環状通信網を通じて前記第一の軌道面を飛翔している他の衛星と前記通信データを共有し、
前記第一の軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星は、前記第一の軌道面と、第二の地上設備の上空を通過する軌道面であって、前記複数の軌道面を構成する軌道面のうち前記第一の軌道面以外のいずれかの軌道面である第二の軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、前記第二の軌道面を飛翔している衛星である第二受信衛星に前記通信データを送信し、
前記第二受信衛星は、前記第二の軌道面に形成されている円環状通信網を通じて前記第二の軌道面を飛翔している他の衛星と前記通信データを共有し、
前記第二の軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星は、前記第二の地上設備の上空において前記第二の地上設備に前記通信データを送信する請求項1に記載の通信衛星システム。
【請求項3】
前記複数の軌道面を構成する軌道面の総数が12以上であり、前記対象軌道面を飛翔している衛星の総数が15以上である請求項1または請求項2に記載の通信衛星システム。
【請求項4】
対象軌道面を飛翔している複数の衛星から成るエッジコンピューティングシステムであって、
前記複数の衛星の各衛星を対象衛星とし、前記対象衛星は、前記対象軌道面を飛翔している衛星であって、前記対象衛星の進行方向に対して前方および後方の各々に位置する衛星と通信する第一の通信装置と、地上に設置された地上設備と通信する第二の通信装置と、前記対象衛星が飛翔している軌道面と、前記対象衛星が飛翔している軌道面とは異なる軌道面である別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、前記別軌道面を飛翔している衛星と通信する第三の通信装置とを具備しており、
前記複数の衛星は、円環状通信網を形成しており、
前記複数の衛星を構成するいずれかの衛星は、計算機と、前記複数の衛星の各衛星の軌道情報を格納しているエッジサーバとを具備している主衛星であり、
前記計算機は、
解析処理を実行することにより成果情報を生成し、
前記エッジサーバが格納している軌道情報に基づいて、前記複数の衛星の中から前記地上設備の上空を通過する衛星を衛星mとして選択し、前記衛星mが前記地上設備の上空を通過する時刻Tm0を導出し、
前記主衛星は、前記成果情報を、前記円環状通信網を通じて前記衛星mに送信し、
前記衛星mは、前記時刻Tm0に、前記地上設備に前記成果情報を送信するエッジコンピューティングシステム。
【請求項5】
複数の軌道面から成るエッジコンピューティングシステムであって、
前記複数の軌道面の各軌道面に対する法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散しており、
前記複数の軌道面の各軌道面を対象軌道面とし、前記対象軌道面は傾斜軌道に対応する軌道面であり、前記対象軌道面には複数の衛星が飛翔しており、
前記対象軌道面を飛翔している各衛星を対象衛星とし、前記対象衛星は、前記対象衛星が飛翔している軌道面を飛翔している衛星であって、前記対象衛星の進行方向に対して前方および後方の各々に位置する衛星と通信する第一の通信装置と、地上に設置された地上設備と通信する第二の通信装置と、前記対象衛星が飛翔している軌道面と、前記対象衛星が飛翔している軌道面とは異なる軌道面である別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、前記別軌道面を飛翔している衛星と通信する第三の通信装置とを具備しており、
前記対象軌道面において、前記対象軌道面を飛翔している複数の衛星が円環状通信網を形成しており、
前記エッジコンピューティングシステムを構成する衛星の中には、計算機と、前記エッジコンピューティングシステムを構成する各衛星の軌道情報を格納しているエッジサーバとを具備している主衛星があり、
前記計算機は、
解析処理を実行することにより成果情報を生成し、
前記エッジサーバが格納している軌道情報に基づいて、前記複数の軌道面のうち前記計算機を具備している主衛星が飛翔している軌道面である主衛星軌道面以外の中から前記地上設備の上空を通過する軌道面を上空通過軌道面として選択し、前記上空通過軌道面が前記地上設備の上空を通過する時刻である上空通過時刻を導出し、
前記主衛星軌道面と、前記上空通過軌道面とが平面視において形成する交点である対象交点の位置を、前記エッジサーバが格納している軌道情報に基づいて導出し、
前記主衛星は、前記主衛星軌道面に形成されている円環状通信網を通じて前記主衛星軌道面を飛翔している他の衛星と前記成果情報を共有し、
前記主衛星軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星である第一通信衛星は、前記対象交点の近傍において、前記上空通過軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星である第二通信衛星に前記成果情報を送信し、
前記第二通信衛星は、前記軌道面を飛翔している衛星であって、前記上空通過時刻に前記地上設備の上空を通過する衛星である第三通信衛星に、前記上空通過軌道面に形成されている円環状通信網を通じて前記成果情報を送信し、
前記第三通信衛星は、前記上空通過時刻に、前記地上設備に前記成果情報を送信するエッジコンピューティングシステム。
【請求項6】
前記第一通信衛星は、前記対象交点における前記第一通信衛星の進行方向が前記対象交点における前記第二通信衛星の進行方向よりも対象方角寄りである場合に、前記対象交点の近傍において、前記第二通信衛星に前記成果情報を送信する請求項5に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項7】
前記複数の軌道面の各軌道面には送信順序に関する優先順位が設定されており、
前記複数の軌道面を構成する軌道面である軌道面αと軌道面βとの各々において前記主衛星が飛翔しており、前記軌道面αを飛翔している主衛星が具備している計算機が成果情報として成果情報αRを生成し、前記軌道面βを飛翔している主衛星が具備している計算機が成果情報として成果情報βRを生成し、前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報αRを送信し、前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報βRを送信するとき、
前記軌道面αに設定された優先順位が前記軌道面βに設定された優先順位よりも高い場合において、前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報βRを送信する前に、前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報αRを送信し、
前記軌道面αに設定された優先順位が前記軌道面βに設定された優先順位よりも低い場合において、前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報βRを送信した後で、前記軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が前記軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に前記成果情報αRを送信する請求項5に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項8】
前記エッジコンピューティングシステムを構成する軌道面に複数の主衛星が飛翔している場合において、前記複数の主衛星の各主衛星に送信順序に関する優先順位が設定されている請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項9】
前記主衛星が具備している計算機は、送信または受信に関する指令コマンドを生成し、
前記主衛星は、前記主衛星が飛翔している軌道面を飛翔する衛星であって、前記対象交点の近傍を通過する衛星に、前記主衛星が飛翔している軌道面に形成されている円環状通信網を経由して前記指令コマンドを送信する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項10】
前記エッジコンピューティングシステムを構成するいずれかの衛星は、衛星の外部の情報を収集する情報収集装置を具備している請求項5から請求項9のいずれか1項に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項11】
前記エッジコンピューティングシステムを構成する2機以上の衛星の各々が前記情報収集装置を具備しており、
前記エッジサーバは、飛翔経路モデルを格納しており、
前記情報収集装置は、赤外監視装置であり、移動体である飛翔体を探知した結果を示す飛翔体探知情報を生成し、
前記情報収集装置を具備している各衛星は、前記複数の軌道面の各々に形成されている円環状通信網を通じた通信と、前記複数の軌道面の互いに異なる2つの軌道面が平面視において形成する交点の近傍における通信とによって、前記情報収集装置を具備している他の衛星、および前記主衛星と前記飛翔体探知情報を共有し、
前記計算機は、
前記飛翔体探知情報と前記エッジサーバが格納している飛翔経路モデルとを用いて前記飛翔体の飛翔経路を予測し、前記情報収集装置を具備している衛星に対するコマンドであって、前記飛翔体の情報を取得することを指令するコマンドである情報取得コマンドを生成し、
前記主衛星は、前記情報取得コマンドを、前記複数の軌道面の各軌道面に形成されている円環状通信網を通じた通信と、前記複数の軌道面の互いに異なる2つの軌道面が平面視において形成する交点の近傍における通信とによって前記情報収集装置を具備している各衛星に送信する請求項10に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項12】
前記情報収集装置は、合成開口レーダまたは光学監視装置であり、移動体を追跡監視する機能を有する請求項10に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項13】
前記計算機は、前記エッジコンピューティングシステムにおける衛星の配置と、前記エッジコンピューティングシステムを構成する衛星間の通信における通信ルートとの関係を学習した推論モデルと、前記複数の衛星の配置を示す情報とを用いて、前記主衛星と前記情報収集装置を具備している各衛星との間の通信における通信ルートを探索する請求項11または12に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項14】
前記計算機は、前記情報収集装置が収集した移動体の情報と、前記情報収集装置が収集した情報に対応する移動体の移動経路との関係を学習した推論モデルと、前記情報収集装置が収集した情報であって、移動している移動体である対象移動体についての情報である対象移動体情報とを用いて、前記対象移動体の移動経路を予測する請求項11から13のいずれか1項に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項15】
請求項4から請求項14のいずれか1項に記載の主衛星。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信衛星システム、エッジコンピューティングシステム、および主衛星に関する。
【背景技術】
【0002】
GEO(Geostationary Earth Orbit)衛星を用いた通信において遠距離通信に伴うレイテンシが課題となっていた。そこで、近年、LEO(Low Earth Orbit)衛星群から成るメガコンステレーションによる通信衛星システムの整備が進んでいる。しかしながら、現状の当該通信衛星システムでは、個別衛星がベントパイプ方式により通信するものの、衛星間通信は実施されていない。そのため、当該通信衛星システムにおいて衛星間通信機能が追加されることが待望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9647749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、前後左右に位置する衛星と光衛星間通信を実行するLEO衛星群から成るLEOコンステレーションによる通信衛星システムを開示している。しかしながら、当該通信衛星システムによれば、軌道面の南端および北端において軌道の左右入替が発生するため、隣接軌道を飛翔している衛星であって左右に位置する衛星との通信において通信途絶が毎周回2度ずつ発生するという課題がある。また、当該課題に伴い、毎周回2度ずつ回線を光無線通信により確立するため、高精度な光軸合せ技術を確立する必要があるという課題があり、さらに、ロス時間が大きいという課題がある。
【0005】
本開示は、LEOコンステレーションによる通信衛星システムにおいて、各衛星が、隣接軌道を飛翔している衛星であって左右に位置する衛星と常には通信しないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る通信衛星システムは、
複数の軌道面から成る通信衛星システムであって、
前記複数の軌道面の各軌道面に対する法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散しており、
前記複数の軌道面の各軌道面を対象軌道面とし、前記対象軌道面は傾斜軌道に対応する軌道面であり、前記対象軌道面には複数の衛星が飛翔しており、
前記対象軌道面を飛翔している各衛星を対象衛星とし、前記対象衛星は、前記対象衛星が飛翔している軌道面を飛翔している衛星であって、前記対象衛星の進行方向に対して前方および後方の各々に位置する衛星と通信する第一の通信装置と、地上に設置された地上設備と通信する第二の通信装置と、前記対象衛星が飛翔している軌道面と、前記対象衛星が飛翔している軌道面とは異なる軌道面である別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、前記別軌道面を飛翔している衛星と通信する第三の通信装置とを具備しており、
前記対象軌道面において、前記対象軌道面を飛翔している複数の衛星が円環状通信網を形成している。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る通信衛星システムは、LEOコンステレーションによるものであってもよい。また、本開示において、対象軌道面を飛翔している衛星と、別軌道面を飛翔している衛星とは、対象軌道面と別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において通信する。従って、本開示によれば、LEOコンステレーションによる通信衛星システムにおいて、各衛星が、隣接軌道を飛翔している衛星であって左右に位置する衛星と常には通信しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る通信衛星システム10の概略を示す図。
図2】実施の形態1に係る円環状通信網を説明する図。
図3】実施の形態1に係る衛星30のハードウェア構成例を示す図。
図4】実施の形態1に係る地上設備90のハードウェア構成例を示す図。
図5】実施の形態1に係る通信衛星システム10の動作例を説明する図。
図6】円環状通信網が形成されている様子を示す図。
図7】前後左右に位置する衛星と通信する様子を示す図。
図8】衛星の左右入れ替えを説明する図。
図9】実施の形態1に係る軌道間通信を説明する図。
図10】実施の形態1に係る軌道間通信を説明する図。
図11】地球の自転と傾斜軌道衛星の軌道面の回転とが同期していない様子を示す図であり、(a)は06:00の様子の具体例、(b)は12:00の様子の具体例。
図12】実施の形態1の変形例に係る地上設備90のハードウェア構成例を示す図。
図13】実施の形態2に係るエッジコンピューティングシステム11の構成例を示す図。
図14】実施の形態2に係るエッジコンピューティングシステム11の動作例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の説明および図面において、同じ要素および対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れまたは処理の流れを主に示している。また、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」または「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。本明細書では、人工衛星を単に衛星と表記することもある。
また、実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった方向あるいは位置が示されている場合がある。それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置、器具、あるいは部品といった構成の配置および向きを限定するものではない。
【0010】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る通信衛星システム10の概略を示している。
通信衛星システム10は、本図に示すように、衛星コンステレーション20と、地上設備90とを備える。
【0012】
衛星コンステレーション20は、複数の軌道面から成り、典型的には、各衛星30の軌道が傾斜軌道である傾斜軌道衛星コンステレーションである。即ち、通信衛星システム10は複数の軌道面から成る。衛星コンステレーション20は、LEO(Low Earth Orbit)コンステレーションであってもよい。また、複数の軌道面の各軌道面に対する法線ベクトルのアジマス成分は経度方向に分散している。複数の軌道面の各軌道面を対象軌道面としたとき、対象軌道面は傾斜軌道に対応する軌道面であり、対象軌道面には複数の衛星30が飛翔している。また、対象軌道面を飛翔している各衛星30を対象衛星としたとき、対象衛星は、第一の通信装置と、第二の通信装置と、第三の通信装置とを具備している。第一の通信装置は、対象衛星が飛翔している軌道面を飛翔している衛星30であって、対象衛星の進行方向に対して前方および後方の各々に位置する衛星30と通信する。第二の通信装置は、地上に設置された地上設備90と通信する。第三の通信装置は、対象衛星が飛翔している軌道面と、対象衛星が飛翔している軌道面とは異なる軌道面である別軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、別軌道面を飛翔している衛星30と通信する。第一の通信装置と、第二の通信装置と、第三の通信装置との少なくとも2つは適宜一体的に構成されていてもよい。なお、交点の近傍は交点を含む交点の周囲の領域である。交点の近傍の範囲は適宜定められてよい。
また、対象軌道面において、対象軌道面を飛翔している複数の衛星30が円環状通信網を形成している。図2は、複数の衛星30が形成している円環状通信網を説明する図である。図2に示すように同一の軌道上において隣接する衛星30間で通信することにより、複数の軌道面の各軌道面に円環状通信網が形成される。
衛星コンステレーション20の具体例は[参考文献1]および[参考文献2]に開示されている。通信衛星システム10は、これらの参考文献に開示されている機能を適宜備える。また、衛星コンステレーション20はメガコンステレーションであってもよい。
【0013】
[参考文献1]
特開2021-054167号公報
[参考文献2]
特開2021-070342号公報
【0014】
地上設備90は、地上側通信装置810と衛星制御装置91とを備え、各衛星30と通信することによって衛星コンステレーション20を制御する。
衛星制御装置91は、各衛星30を制御するための各種コマンドを生成するコンピュータであり、処理回路および入出力インタフェースなどのハードウェアを備える。処理回路は各種コマンドを生成する。入出力インタフェースには入力装置および出力装置が接続される。衛星制御装置91は、入出力インタフェースを介して、地上側通信装置810に接続される。
地上側通信装置810は、各衛星30と通信を行う。具体的には、地上側通信装置810は、各種コマンドを各衛星30へ送信する。
【0015】
図3は、衛星30のハードウェア構成例を示している。図3を参照して、衛星30のハードウェア構成を説明する。
衛星30は、衛星制御装置31と通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とを備える。衛星30は、その他の各種の機能を実現する構成要素を備えていてもよいが、図3では、衛星制御装置31と通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とについて説明する。
【0016】
衛星制御装置31は、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御するコンピュータであり、処理回路を備える。具体的には、衛星制御装置31は、地上設備90などから送信される各種コマンドにしたがって、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御する。
通信装置32は、衛星30の外部との通信を実行する装置である。通信装置32は、第一の通信装置と第二の通信装置と第三の通信装置との総称でもある。
推進装置33は、衛星30に推進力を与える装置であり、衛星30の速度を変化させる。
姿勢制御装置34は、衛星30の姿勢と衛星30の角速度と視線方向(Line Of Sight)といった姿勢要素を制御するための装置である。姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置34は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサといった装置である。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロといった装置である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上設備90などからの各種コマンドに従ってアクチュエータを制御する。
電源装置35は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置といった機器を備え、衛星30に搭載される各機器に電力を供給する。
【0017】
衛星制御装置31に備わる処理回路について説明する。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより実現することができる。専用のハードウェアは、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0018】
図4は、地上設備90のハードウェア構成例を示している。地上設備90は衛星30との間で通信する。地上設備90は地上側通信装置810に接続しており、地上設備90は地上側通信装置810を介して衛星30と通信する。地上設備90は移動端末であってもよい。
【0019】
地上設備90は、プロセッサ710を備えるとともに、主記憶装置720、補助記憶装置730、入力インタフェース740、出力インタフェース750および通信インタフェース760といった他のハードウェアを備える。図4においてインタフェースはIFと表記されている。プロセッサ710は、信号線770を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0020】
地上設備90は、機能要素として、制御部711を備える。制御部711の機能は、ハードウェアあるいはソフトウェアにより実現される。制御部711は、通信衛星プログラムの指示に従い処理を実行する。
【0021】
***動作の説明***
通信衛星システム10の動作手順は、通信衛星方法に相当する。また、通信衛星システム10の動作を実現するプログラムは、通信衛星プログラムに相当する。通信衛星プログラムは、通信衛星システム10が備える各機器において動作するプログラムの総称でもある。通信衛星プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスクまたはフラッシュメモリである。通信衛星プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0022】
<実施の形態1に係る動作例1>
図5は、本動作例を説明する図である。図5を参照して本動作例を説明する。
【0023】
(1)地上設備との通信
第一の軌道面を飛翔している衛星30である第一受信衛星が、第一の地上設備90の上空において第一の地上設備90が送信したデータである通信データを受信する。第一の軌道面は、第一の地上設備90の上空を通過する軌道面であり、複数の軌道面を構成するいずれかの軌道面である。なお、地上設備90の上空は、衛星30が地上設備90と通信することができる領域である。
【0024】
(2)同一軌道面通信
第一受信衛星は、第一の軌道面に形成されている円環状通信網を通じて第一の軌道面を飛翔している他の衛星30と通信データを共有する。
【0025】
(3)軌道間通信
第一の軌道面を飛翔している複数の衛星30のいずれかの衛星30は、第一の軌道面と、第二の軌道面とが平面視において形成する交点の近傍において、第二の軌道面を飛翔している衛星30である第二受信衛星に通信データを送信する。第二の軌道面は、第二の地上設備90の上空を通過する軌道面であって、複数の軌道面を構成する軌道面のうち第一の軌道面以外のいずれかの軌道面である。
【0026】
(4)同一軌道面通信
第二受信衛星は、第二の軌道面に形成されている円環状通信網を通じて第二の軌道面を飛翔している他の衛星30と通信データを共有する。
【0027】
(5)地上設備との通信
第二の軌道面を飛翔している複数の衛星30のいずれかの衛星30は、第二の地上設備90の上空において第二の地上設備90に通信データを送信する。
【0028】
近年、メガコンステレーションと呼ばれる大規模衛星群により通信衛星網を構築する計画が増えている。メガコンステレーションでは、一例として、各軌道面において各衛星が前後の衛星と通信することにより円環状通信網が形成され、さらに、各軌道面の各衛星が、各軌道面に隣接している軌道面上の衛星であって、各軌道面の各衛星の左右に位置する衛星と通信する。その結果、各衛星が前後左右に位置する合計4機の衛星と通信するメッシュ通信網が構築される。図6は、円環状通信網が形成されている様子を示している。図7は、衛星が前後左右に位置する合計4機の衛星と通信する様子を示している。
しかしながら、隣接軌道との通信において通信状態を維持するために通信装置の指向制御が必要である。また、軌道面の最北端および最南端の各々において軌道の左右入れ替えが発生するため、1つの通信を継続することが難しいという課題がある。図8は、軌道面の最北端において左右入れ替えが発生する様子を示している。図8において、最北端に到達するまでは軌道1を飛翔している衛星の進行方向に対して右側に軌道2を飛翔している衛星が位置する。一方、最北端に到達した後、軌道1を飛翔している衛星の進行方向に対して左側に軌道2を飛翔している衛星が位置する。
【0029】
傾斜軌道衛星コンステレーションでは、法線ベクトルが互いに異なる2つの軌道面同士の交点は2つある。そのため、ある軌道面を飛翔する衛星30と、当該ある軌道面が有する法線ベクトルと異なる法線ベクトルを有する他の軌道面を飛翔する衛星30との間で、当該ある軌道面と当該他の軌道面とが平面視において形成するいずれかの交点の近傍を当該ある軌道面を飛翔している衛星30と当該他の軌道面を飛翔している衛星30との双方が共に通過する時点において衛星情報を軌道間通信により通信すれば、双方の衛星30の間で当該ある軌道面と当該他の軌道面との双方における衛星情報を共有することができる。同様にして、各衛星30が全ての軌道面における衛星情報を共有することができる。
図9は、軌道間通信を説明する図であり、1つの軌道面を飛翔している衛星30が他の全ての軌道面を飛翔している衛星30と通信する具体例を示している。
図10は、軌道間通信を説明する図であり、各軌道面を飛翔している衛星30が他の2つの軌道面を飛翔している衛星30と通信する具体例を示している。
【0030】
衛星30が軌道面の交点の近傍を通過する際に実施する衛星間通信は、隣接軌道間通信のような遠距離通信ではなく、近傍通信である。そのため、具体例として、無指向性アンテナまたは固定アンテナによる簡易な通信装置により当該衛星間通信を実現することができる。
また、全ての軌道面の衛星情報を共有するために必要な通信を実行すべき交点の組み合わせは多数存在する。そのため、各衛星30は、傾斜軌道の交点の全てにおいて近傍通信を実行する必要はなく、合理的に選択された交点の組み合わせに属する各交点の近傍のみにおいて近傍通信を実行すればよい。
具体例として、第一の地上設備90が通信衛星システム10を経由して第二の地上設備90と通信する場合を考える。この場合において、地球の自転と傾斜軌道衛星の軌道面の回転とは同期していない。そのため、時刻T0において第一の地上設備90の上空を飛翔する衛星30が属する軌道面は限定される。図11は、地球の自転と傾斜軌道衛星の軌道面の回転とが同期していない様子を示している。図11において、(a)は06:00の様子の具体例を示しており、(b)は12:00の様子の具体例を示している。図11において、地上設備90と通信可能な衛星30が飛翔する軌道面である通信可能な軌道面は、06:00と12:00とで同じとは限らない。
ここで、時刻T0において第一の地上設備90の上空を飛翔する軌道面を第一の軌道面と呼ぶ。また、時刻T0において第二の地上設備90の上空を飛翔する軌道面を第二の軌道面と呼ぶ。第一の軌道面と第二の軌道面とが同一である場合、円環状通信網を経由して第一の地上設備90と第二の地上設備90との間で通信することができる。一方、第一の軌道面と第二の軌道面とが異なる場合、第一の軌道面が形成する第一の円環状通信網と、第二の軌道面が形成する第二の円環状通信網とを接続する必要がある。そこで、第一の軌道面と第二の軌道面とが平面視において形成する交点のいずれかの近傍を通過する衛星30同士が通信することにより、第一の円環状通信網と第二の円環状通信網とを接続することができる。
なお、第一の軌道面の軌道高度と第二の軌道面の軌道高度とが同一である場合には第一の軌道面と第二の軌道面との交点が存在する。そのため、第一の軌道面と第二の軌道面とが形成する交点のいずれかの近傍において、第一の軌道面に属する衛星30と第二の軌道面に属する衛星30との間で通信すればよい。一方、第一の軌道面の軌道と第二の軌道面の軌道との各々が離心率を有する楕円軌道である場合などにおいて、具体例として、第一の軌道面と第二の軌道面との交点ではなく、第一の軌道面と第二の軌道面との最接近地点の近傍において第一の軌道面に属する衛星30と第二の軌道面に属する衛星30との間で通信を実行する。即ち、第一の軌道面と第二の軌道面とが平面視において形成する交点は、第一の軌道面と第二の軌道面との最接近地点など、第一の軌道面と第二の軌道面とが実際に交わる地点ではないこともある。
【0031】
ここで、LEO衛星は、任意の地上設備の上空を短時間で通過する。また、LEO衛星の軌道は太陽非同期軌道である、即ち、LEO衛星の軌道面の回転が地球の自転と同期していないため、LEO衛星が地上設備の上空を通過する軌道面が時々刻々と変化する。そのため、従来技術によってある地上設備から他の地上設備へ通信するためには、当該ある地上設備と当該他の地上設備との各々の上空を通過する軌道面の探索と、通信経路の探索と、経由する衛星の選択と、通信経路上の各衛星が情報を送受信する時刻の設定とを予め実施して運用計画を立てる必要がある。従って、従来技術によれば、通信衛星システムの運用が煩雑になるという課題がある。また、従来技術によれば、地上設備において、運用計画に基づいて衛星への通信コマンドを生成し、生成した通信コマンドを軌道上の衛星に伝送する必要があるという課題がある。
本動作例によれば、第一の軌道面と第二の軌道面との各々が有する法線ベクトルの経度方向の離角は既知であるので、第一の軌道面と第二の軌道面との交点の位置も既知である。従って、本動作例によれば、第一の地上設備90が通信衛星システム10を経由して第二の地上設備90と通信する場合において、既知である第一の軌道面と第二の軌道面との交点の位置を活用することにより多数の軌道面を経由する必要がない。そのため、本動作例によれば、複雑な通信ルート探索をせずに隣接軌道間の通信を実現することができるという効果がある。また、本動作例によれば、地上設備の負荷を軽減することができるという効果がある。
【0032】
<実施の形態1に係る動作例2>
本動作例は、実施の形態1に係る動作例1を拡張した動作例に当たる。本動作例において、複数の軌道面を構成する軌道面の総数が12以上であり、複数の軌道面の各軌道面を飛翔している衛星30の総数が15以上である。
【0033】
超音速滑空弾の登場により、静止軌道上の衛星による発射探知だけでは飛翔体に対して対処することができなくなった。そこで、低軌道衛星コンステレーションによる飛翔体追跡システムが待望されている。
地球周縁を指向する監視はリム監視とも呼ばれ、リム監視によって宇宙を背景に飛翔体を監視することができる。そのため、噴射終了後に温度が上昇した飛翔体本体を、赤外監視装置により誤差に埋もれることなく監視することができるという効果がある。
低軌道衛星が取得した飛翔体情報は、迅速に対処アセットに対して伝送される必要がある。この際、具体例として、北緯35度、東経140度地点に配置された地上設備90に迅速に衛星情報を伝送する通信衛星システムが待望されていた。
【0034】
本動作例によれば、迅速に地上設備90に衛星情報を伝送することができるという効果がある。また、法線ベクトルが互いに異なる軌道面間の通信装置を比較的低いコストで実現することができるという効果がある。
【0035】
***他の構成***
<変形例1>
本実施の形態では、制御部711の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、制御部711の機能がハードウェアで実現されてもよい。図12は、本変形例を示している。
【0036】
地上設備90は、プロセッサ710に替えて電子回路780を備える。
電子回路780は、制御部711の機能を実現する専用の電子回路である。
電子回路780は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC、または、FPGAである。
制御部711の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
別の変形例として、制御部711の一部の機能が電子回路780で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0037】
プロセッサ710と電子回路780と主記憶装置720と補助記憶装置730とを総称して、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、地上設備90において、制御部711の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
他の実施の形態に係る地上設備90についても、本変形例と同様の構成であってもよい。
【0038】
実施の形態2.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
***構成の説明***
図13は、本実施の形態に係るエッジコンピューティングシステム11の構成例を示している。エッジコンピューティングシステム11は、対象軌道面を飛翔している複数の衛星30から成り、また、主衛星40を備える。エッジコンピューティングシステム11が備える主衛星40の数はいくつであってもよい。対象軌道面には、衛星30および主衛星40によって円環状通信網が形成されている。
【0040】
本実施の形態に係る衛星30は、第三の通信装置を具備していなくてもよい。
【0041】
主衛星40の構成は、計算機41およびエッジサーバ42を具備する点を除いて衛星30の構成と同様である。主衛星40は、衛星30が有する機能を実現してもよい。
計算機41およびエッジサーバ42の各々はコンピュータである。当該コンピュータは、地上設備90が備えるコンピュータと同様であってもよい。計算機41およびエッジサーバ42は、適宜一体的に構成されていてもよい。
計算機41は、地上設備90からの指示に基づいて解析処理を実行する。この際、計算機41は地上設備90から適宜データを受信する。また、計算機41は、地上設備90へ成果情報を通信するためのコマンドであって、衛星mに対するコマンドである送信コマンドを生成する。
エッジサーバ42は、衛星30および主衛星40の軌道情報を格納している。
【0042】
地上設備90は、データセンタを構成する地上設備、またはユーザによって所有される地上設備である。ユーザは、具体例として、データセンタの運営者と契約している顧客である。
【0043】
***動作の説明***
<実施の形態2に係る動作例1>
以下、エッジコンピューティングシステム11の動作例を説明する。
まず、計算機41は、解析処理を実行することにより成果情報を生成する。
次に、計算機41は、エッジサーバ42が格納している軌道情報に基づいて、複数の衛星の中から地上設備90の上空を通過する衛星を衛星mとして選択し、衛星mが地上設備90の上空を通過する時刻Tm0を導出する。ここで、衛星30と主衛星40との総称を「衛星」と表記することがある。
次に、主衛星40は、成果情報を、円環状通信網を通じて衛星mに送信する。
次に、衛星mは、時刻Tm0に、地上設備90に成果情報を送信する。
【0044】
なお、本動作例において、エッジサーバ42を具備してエッジコンピューティングを実行する主衛星40は、生成した成果情報を地上設備90に送信するに当たり、対象軌道面を飛翔している衛星に対する地上設備90への通信コマンドを生成する。その後、主衛星40は、円環状通信網を経由して、対象軌道面を飛翔している衛星に生成した通信コマンドを送信する。また、対象軌道面の直下に地上設備90が配置されていたとしても、対象軌道面を飛翔する衛星が個別の地上設備90の上空を通過する時刻は軌道面内の飛翔位置に依存する。そのため、主衛星40は、エッジサーバ42に格納された衛星の軌道情報に基づき、個別の地上設備90の上空を衛星mが通過する時刻Tm0を導出し、また、通信コマンドを生成する。
【0045】
本動作例によれば、主衛星40が軌道上で通信コマンドを生成することにより、従来地上において発生した負荷であって、コマンド生成と、コマンド送信と、通信運用計画の作成と、管制制御とについての負荷を地上設備90において低減することができるという効果がある。
また、本動作例によれば、主衛星40がIoT(Internet of Things)とみなされており、主衛星40が計算機41とエッジサーバ42とを具備している。さらに、各衛星30は、円環状通信網を経由して、データセンタを構成する地上設備90と衛星情報を通信することができる。そのため、本動作例によれば、各衛星30および地上設備90は、主衛星40が具備するエッジサーバ42との通信を迅速に実施することができるという効果がある。
また、本動作例によれば、軌道上で演算処理した結果を直接ユーザの地上設備90に送信することができる。そのため、データセンタを具備する地上設備90の負担を軽減することができるという効果がある。
【0046】
実施の形態3.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0047】
***構成の説明***
本実施の形態に係るエッジコンピューティングシステム11の構成は、実施の形態1に係る通信衛星システム10と、実施の形態2に係るエッジコンピューティングシステム11との組み合わせに当たる。即ち、エッジコンピューティングシステム11は複数の軌道面から成る。
エッジコンピューティングシステム11を構成する衛星の中には、主衛星40がある。2つ以上の軌道面の各軌道面において主衛星40が飛翔していてもよい。
エッジサーバ42は、エッジコンピューティングシステム11を構成する各衛星30と主衛星40との軌道情報を格納している。
【0048】
主衛星40が具備している計算機41は、送信と受信との少なくとも一方に関する指令コマンドを生成する。また、計算機41は、エッジコンピューティングシステム11における衛星の配置と、エッジコンピューティングシステム11を構成する衛星間の通信における通信ルートとの関係を学習した推論モデルと、エッジコンピューティングシステム11を構成する複数の衛星の配置を示す情報とを用いて、主衛星40と情報収集装置を具備している各衛星との間の通信における通信ルートを探索してもよい。計算機41は、情報収集装置が収集した移動体の情報と、情報収集装置が収集した情報に対応する移動体の移動経路との関係を学習した推論モデルと、対象移動体情報とを用いて、対象移動体の移動経路を予測してもよい。ここで、情報収集装置は衛星の外部の情報を収集する装置である。対象移動体情報は、情報収集装置が収集した情報であって、対象移動体についての情報である。対象移動体は、移動している移動体である。
主衛星40は、主衛星40が飛翔している軌道面を飛翔する衛星であって、当該軌道面と他の軌道面との交点の近傍を通過する衛星に、主衛星40が飛翔している軌道面に形成されている円環状通信網を経由して指令コマンドを送信する。
【0049】
***動作の説明***
<実施の形態3に係る動作例1>
図14は、本動作例を説明する図である。図14を参照して本動作例を説明する。
まず、計算機41は、解析処理を実行することにより成果情報を生成する。
次に、計算機41は、エッジサーバ42が格納している軌道情報に基づいて、複数の軌道面のうち主衛星軌道面以外の中から地上設備90の上空を通過する軌道面を上空通過軌道面として選択する。ここで、主衛星軌道面は、計算機41を具備している主衛星40が飛翔している軌道面である。その後、計算機41は、上空通過軌道面が地上設備90の上空を通過する時刻である上空通過時刻を導出する。なお、上空通過時刻はある時間帯であってもよい。
次に、計算機41は、主衛星軌道面と、上空通過軌道面とが平面視において形成する交点である対象交点の位置を、エッジサーバ42が格納している軌道情報に基づいて導出する。
次に、主衛星40は、主衛星軌道面に形成されている円環状通信網を通じて主衛星軌道面を飛翔している他の衛星と成果情報を共有する。
次に、第一通信衛星は、対象交点の近傍において、第二通信衛星に成果情報を送信する。ここで、第一通信衛星は、主衛星軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星である。第二通信衛星は、上空通過軌道面を飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星である。
次に、第二通信衛星は、第三通信衛星に、上空通過軌道面に形成されている円環状通信網を通じて成果情報を送信する。ここで、第三通信衛星は、軌道面を飛翔している衛星であって、上空通過時刻に地上設備の上空を通過する衛星である。なお、第二通信衛星と第三通信衛星とが同一の衛星であってもよく、この場合において、第二通信衛星は第三通信衛星に成果情報を送信しない。
次に、第三通信衛星は、上空通過時刻に、地上設備90に成果情報を送信する。
【0050】
本動作例において、軌道面の地球周りの回転は地球の自転と同期していない。そのため、特定の軌道面の衛星が、特定の地上設備90の上空を通過する時間は限定的である。そこで、法線ベクトルの経度方向成分が分散した複数の軌道面を具備することによって任意の地上設備90の上空を通過する軌道面を増やすことにより、任意の地上設備90がいずれかの衛星と通信することができる時間が増える。
任意の地上設備90がいずれかの軌道面のいずれかの衛星といつでも通信することができるようエッジコンピューティングシステム11が十分な数の軌道面と十分な数の衛星とを具備すれば、常時通信環境が構築される。この際、特定の軌道面の主衛星40が生成した成果情報を、任意の地上設備90に送信するためには、特定の時刻において地上設備90の上空を通過する軌道面の衛星に成果情報を伝送し、地上設備90の上空を通過する衛星が地上設備90に成果情報を送信すればよい。
【0051】
<実施の形態3に係る動作例2>
本動作例は、実施の形態3に係る動作例1を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、第一通信衛星は、対象交点における第一通信衛星の進行方向が対象交点における第二通信衛星の進行方向よりも対象方角寄りである場合に、対象交点の近傍において、第二通信衛星に成果情報を送信する。対象方角は、具体例として北である。
【0052】
軌道面毎に主衛星40を有するエッジコンピューティングシステム11では、軌道面の優先順位をつけること、または軌道相対位置に依存する優先順位をつけることによって、成果情報を送受するタイミングと、送受する衛星とを決める必要がある。
軌道傾斜角を有する2面の軌道面の交線上の軌道高度に形成される2点の交点の近傍では、南半球側から北半球側へ北上する衛星と、北半球側から南半球側へ南下する衛星とが通過する。そこで、一例として、南半球側から北半球側へ北上する衛星が送信側となり、北半球側から南半球側へ南下する衛星が受信側となることにすれば、北上する衛星30が優先となるシステムを構築できる。この場合において、北上する衛星の進行方向は、南下する衛星の進行方向よりも北寄りである。なお、送信側と受信側とが逆であっても構わない。また、交点の近傍において2つの軌道面の両方を飛翔している衛星が北上または南下する衛星である場合、2つの軌道面の軌道傾斜角が互いに異なっているとこに留意する必要がある。
【0053】
<実施の形態3に係る動作例3>
本動作例は、実施の形態3に係る前述のいずれかの動作例を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、複数の軌道面の各軌道面には送信順序に関する優先順位が設定されている。
【0054】
本動作例における前提を説明する。複数の軌道面を構成する軌道面である軌道面αと軌道面βとの各々において主衛星40が飛翔している。軌道面αを飛翔している主衛星40が具備している計算機41が成果情報として成果情報αRを生成する。軌道面βを飛翔している主衛星40が具備している計算機41が成果情報として成果情報βRを生成する。軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報αRを送信する。軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報βRを送信する。
まず、軌道面αに設定された優先順位が軌道面βに設定された優先順位よりも高い場合における動作を説明する。この場合において、軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報βRを送信する前に、軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報αRを送信する。
次に、軌道面αに設定された優先順位が軌道面βに設定された優先順位よりも低い場合における動作を説明する。この場合において、軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報βRを送信した後で、軌道面αを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星が軌道面βを飛翔している複数の衛星のいずれかの衛星に成果情報αRを送信する。
【0055】
予め軌道面の優先順位を決めることにより、軌道面の交点付近を衛星が通過している際における通信に係るデフォルトの優先順位が定まる。ただし、優先順位が相対的に低い軌道面を飛翔している主衛星40が生成した成果情報を、優先順位が相対的に高い軌道面を経由して伝送することもある。そこで、優先順位が相対的に高い軌道面を飛翔している衛星から優先順位が相対的に低い軌道面を飛翔している衛星へデータを送信する際に、双方の衛星の間で双方の軌道面間における通信手順を共有しておくことが合理的である。
【0056】
<実施の形態3に係る動作例4>
本動作例は、実施の形態3に係る前述のいずれかの動作例を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、エッジコンピューティングシステム11を構成する軌道面に複数の主衛星40が飛翔している場合において、複数の主衛星40の各主衛星40に送信順序に関する優先順位が設定されている。
【0057】
エッジサーバ42とAI(Artificial Intelligence)を具備する計算機41との少なくとも一方を具備する複数の主衛星40が同一軌道面内に存在するエッジコンピューティングシステム11では、各主衛星40が連携せずに他の軌道面を飛翔している衛星と通信すると、通信網が混乱するリスクがある。そこで、予め軌道面毎に主衛星40間の優先順位を決めておき、複数の主衛星40間で特定の軌道面との軌道間通信が重複する場合において、当該複数の主衛星40のうち相対的に高い優先順位が設定されている主衛星40が、同一軌道面の他の主衛星40の成果情報の送信も含めて管理すればよい。
相対的に高い優先順位が設定されている主衛星40が前述の処理を実行することにより、通信網の混乱を回避することができるという効果がある。
【0058】
<実施の形態3に係る動作例5>
本動作例は、実施の形態3に係る前述のいずれかの動作例を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、エッジコンピューティングシステム11を構成するいずれかの衛星は、情報収集装置を具備している。ここで、衛星が具備する情報収集装置としては、画像情報収集装置、電波情報収集装置、または宇宙環境モニタ情報収集装置がある。画像情報収集装置としては、可視画像を取得する光学監視装置、電波画像を取得する合成開口レーダ、または温度情報を可視化する赤外監視装置がある。
【0059】
<実施の形態3に係る動作例6>
本動作例は、実施の形態3に係る動作例5を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、エッジコンピューティングシステム11を構成する2機以上の衛星の各々が情報収集装置を具備している。
エッジサーバ42は、飛翔経路モデルを格納している。飛翔経路モデルは、移動体である飛翔体の飛翔経路を推定することに用いられる。飛翔体の飛翔経路は、移動体の移動経路に当たる。
情報収集装置は、赤外監視装置であり、また、飛翔体探知情報を生成する。飛翔体探知情報は、飛翔体を探知した結果を示す。
情報収集装置を具備している各衛星は、複数の軌道面の各々に形成されている円環状通信網を通じた通信と、複数の軌道面の互いに異なる2つの軌道面が平面視において形成する交点の近傍における通信とによって、情報収集装置を具備している各衛星、および主衛星40と飛翔体探知情報を共有する。
計算機41は、飛翔体探知情報とエッジサーバ42が格納している飛翔経路モデルとを用いて飛翔体の飛翔経路を予測し、情報取得コマンドを生成する。情報取得コマンドは、情報収集装置を具備している衛星に対するコマンドであって、飛翔体の情報を取得することを指令するコマンドである。
主衛星40は、情報取得コマンドを、複数の軌道面の各軌道面に形成されている円環状通信網を通じた通信と、複数の軌道面の互いに異なる2つの軌道面が平面視において形成する交点の近傍における通信とによって情報収集装置を具備している各衛星に送信する。
【0060】
エッジコンピューティングシステム11は、機械学習を用いて前述の本動作例の処理を実行してもよい。以下、機械学習について説明する。
機械学習は、教師信号(正解)の入力によって最適化されていく教師あり学習と、教師信号を必要としない教師なし学習とに分けられる。
具体例として、予め飛翔体の種別と、推薬の種別と、典型的な複数のパターンの飛翔モデルとを教師モデルとして学習させて推論モデルを生成することにより、情報収集装置が発射を探知して軌道情報を取得した飛翔体の実測データを用いた推論が、比較的容易かつ迅速になる。ここで、計算機41は、推論モデルを用いて、飛翔体の飛翔経路予測と、飛翔体の着地位置の推定とを実施する。
ただし、発射を探知した段階において飛翔方向が不明である飛翔体の飛翔経路を予測するためには、後続する監視衛星により飛翔体を追跡監視する必要がある。ここで、監視衛星は情報収集装置を具備している衛星である。そこで、後続の監視衛星に対して発射探知情報を送信するために、発射探知情報が、通信衛星群によって形成される通信網を経由する必要がある。ここで、通信衛星コンステレーションによる通信網では、通信衛星の飛翔位置が時事刻々と変化する。そのため、監視衛星は、最適な通信ルートを探索して、飛翔体情報を授受する通信衛星のID(Identification)と、発射探知情報を送受する時刻とを決める必要がある。これは、監視衛星と通信衛星との間における飛翔体情報の授受においても同様である。なお、監視衛星が通信衛星の機能を有することもある。
最適な通信ルートの探索を地上設備90で実施した場合、監視衛星と通信衛星との各々に対して、飛翔体情報を授受する時刻と衛星IDとの各々を示す情報をコマンド送信する必要がある。しかし、この場合においてコマンド送信するための通信網が課題となる。
そこで、主衛星40が、機械学習による解析装置を具備し、軌道上で最適な通信ルートを探索し、通信コマンドを生成し、探索した最適な通信ルートを構成する各衛星に対して生成した通信コマンドを送信することが合理的である。解析装置は、典型的には計算機41である。
最適な通信ルートを探索する手法としては、ダイクストラ法として知られるアルゴリズムを用いた手法が有効である。なお、静的ダイクストラ法では各ルートの重みが変化しない。しかしながら、通信衛星コンステレーションによって形成される通信網では、通信衛星の飛翔位置の変化によって各通信ルートの重みが変化する、即ち、時刻の変化に応じて各通信ルートの重みが変化する。そのため、軌道情報を更新しながら最適な通信ルートを探索する個々の通信衛星毎に、飛翔体情報を受信した通信衛星が最適な通信ルートを探索して次の通信衛星に飛翔体情報を送信する、という動作が繰り返されてもよい。つまり、各衛星30が計算機41を具備してもよい。また、計算機41は、過去に探索された最適な通信ルートと、最適な通信ルートを探索した時点における衛星の配置とに基づいて、通信の始点の衛星および終点の衛星を示す情報と、エッジコンピューティングシステム11における衛星の配置を示す情報とを入力として最適な通信ルートを推論する推論モデルを生成してもよい。
【0061】
また、ルートの探索において、幅優先探索と深度優先探索とが知られている。発射探知情報については幅優先探索により迅速に通信網に飛翔体情報を伝送することが優先され、後続の衛星において追跡が繰り返される。ただし、飛翔体の飛翔方向を概ね推定することができる段階においては、深度優先探索を実施することが合理的である。
【0062】
飛翔体追跡システムにおいては、前述の機械学習による飛翔経路予測とダイクストラ法による通信ルートの探索とを繰り返しながら、飛翔体の追跡監視を行い、最終的な飛翔体の着地位置の推論を実施する。
【0063】
さらに、具体例として、計算機41は、飛翔体の追跡監視を繰り返した後に、過去における飛翔体の追跡監視の実績を用いて機械学習を行うこと、また、教師モデルとして使用した複数の飛翔体モデルに合わない飛翔体の動作事例を用いてディープラーニングを行うことにより推論モデルを生成する。ここで、飛翔体の追跡監視の実績は、情報収集装置が収集した情報と、飛翔体の飛翔経路を示す情報とから成る。これにより、飛翔体の飛翔経路についての予測において、予測精度の向上と予測の迅速化とが実現される。
【0064】
なお、固定発射台から発射されず移動式発射台(TEL)などから発射された飛翔体の飛翔方向および飛翔距離と、典型的な飛翔モデルが示す飛翔体の飛翔方向および飛翔距離とには相違がある。そのため、飛翔体の実測データを用いてディープラーニングを行うことにより飛翔体の軌道モデルを補正することが有効である。
【0065】
本動作例によれば、衛星間で迅速に衛星情報を共有することができるという効果がある。なお、本動作例に係るエッジコンピューティングシステム11は、超音速滑空弾と呼ばれる飛翔体を追跡するためにエッジコンピューティングにより軌道上で赤外監視した情報を、赤外監視装置を具備する他の衛星に送信する構成であってもよい。
【0066】
<実施の形態3に係る動作例7>
本動作例は、実施の形態3に係る動作例5または動作例6を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、情報収集装置は、合成開口レーダまたは光学監視装置であり、移動体を追跡監視する機能を有する。移動体は、具体例として船舶である。
【0067】
本動作例によれば、合成開口レーダまたは光学監視装置を用いて海洋を航行する船舶を追跡する場合において、互いに異なる軌道間で監視情報を共有することにより、迅速かつ見失うリスクが低く船舶を追跡することができるという効果がある。
【0068】
***他の実施の形態***
前述した各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
また、実施の形態は、実施の形態1から3で示したものに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。図などを用いて説明した手順は、適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 通信衛星システム、11 エッジコンピューティングシステム、20 衛星コンステレーション、30 衛星、31 衛星制御装置、32 通信装置、33 推進装置、34 姿勢制御装置、35 電源装置、40 主衛星、41 計算機、42 エッジサーバ、90 地上設備、91 衛星制御装置、710 プロセッサ、711 制御部、720 主記憶装置、730 補助記憶装置、740 入力インタフェース、750 出力インタフェース、760 通信インタフェース、770 信号線、780 電子回路、810 地上側通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14