(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2781 20220101AFI20250516BHJP
H02K 15/02 20250101ALI20250516BHJP
H02K 16/00 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
H02K1/2781
H02K15/02
H02K16/00
(21)【出願番号】P 2023573738
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2022001071
(87)【国際公開番号】W WO2023135730
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】矢部 実透
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正文
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188005(JP,A)
【文献】特開2005-137117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0386531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0126081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0175683(US,A1)
【文献】特表2003-525011(JP,A)
【文献】特開2017-79570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2781
H02K 15/02
H02K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
回転軸と、前記回転軸に固定された複数の電磁鋼板によって構成されているとともに外周部を有する積層鋼板と、周方向に交互に前記外周部上に配置された複数の第1磁石及び複数の第2磁石とを有し、前記固定子から離間し、前記固定子に囲まれた回転子と、
を備え、
前記積層鋼板は、前記複数の第1磁石を固定する第1電磁鋼板と、前記複数の第2磁石を固定する第2電磁鋼板とを有し、
前記第1電磁鋼板は、前記周方向における前記第1磁石の一端を位置決めするとともに前記第1電磁鋼板の外側に向けて突出する第1固定位置決め突起と、前記周方向における前記第1磁石の他端を前記第1固定位置決め突起に向けて押圧するとともに前記第1電磁鋼板の外側に向けて突出する第1可動突起とを有し、
前記第2電磁鋼板は、前記周方向における前記第2磁石の一端を位置決めするとともに前記第2電磁鋼板の外側に向けて突出する第2固定位置決め突起と、前記周方向における前記第2磁石の他端を前記第2固定位置決め突起に向けて押圧するとともに前記第2電磁鋼板の外側に向けて突出する第2可動突起とを有する、
回転電機。
【請求項2】
前記第1電磁鋼板及び前記第2電磁鋼板は、前記回転軸の軸方向における一方の領域である第1領域と、前記軸方向における他方の領域である第2領域とに配置されている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1電磁鋼板及び前記第2電磁鋼板は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置されている、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1可動突起の自由端長は、前記第1固定位置決め突起の自由端長よりも大きく、
前記第2可動突起の自由端長は、前記第2固定位置決め突起の自由端長よりも大きく、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記積層鋼板は、前記回転軸の軸方向において前記第1電磁鋼板と前記第2電磁鋼板との間に配置された第3電磁鋼板を有し、
前記第3電磁鋼板は、前記第1電磁鋼板及び前記第2電磁鋼板に接触しており、
前記第3電磁鋼板は、切欠部を有し、
前記軸方向に見て、前記切欠部は、前記第1電磁鋼板の前記第1可動突起及び前記第2電磁鋼板の前記第2可動突起に重ならない、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記回転軸の軸方向における前記第1電磁鋼板の前記第1可動突起の厚さは、前記第1電磁鋼板の厚さよりも小さく、
前記軸方向における前記第2電磁鋼板の前記第2可動突起の厚さは、前記第2電磁鋼板の厚さよりも小さい、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記積層鋼板は、前記周方向に離間する複数のガイド突起を有する第4電磁鋼板を有し、
前記複数のガイド突起の各々は、前記第4電磁鋼板の外側に向けて突出し、かつ、先端部を有し、
前記回転軸の軸方向に見て、前記複数のガイド突起のうち一つは、前記第1可動突起と重なっており、
前記回転子の前記外周部と前記ガイド突起の前記先端部との間の距離は、前記回転子の前記外周部と前記第1可動突起の先端部との間の距離以上であり、
前記回転軸の軸方向に見て、前記複数のガイド突起のうち一つは、前記第2可動突起と重なっており、
前記回転子の前記外周部と前記ガイド突起の前記先端部との間の距離は、前記回転子の前記外周部と前記第2可動突起の先端部との間の距離以上である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ガイド突起は、前記第1可動突起及び前記第2可動突起のうち少なくとも一方の前記周方向の変位を規制する変位規制部である、
請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
各々が前記回転子に対応する複数の回転子を有し、
前記複数の回転子は、互いに重なるように前記回転軸に固定され、
前記複数の回転子は、前記周方向において互いにずれて配置されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルの内側で回転子ユニットを回転させる回転電機においては、電磁鋼板で構成された回転子の外周面に、接着剤を用いて磁石が固定された構造が知られている。
特許文献1は、固定位置決め突起と可動位置決め突起との間に磁石が押し込まれ、かつ、接着剤により磁石を固定する構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の回転電機においては、固定位置決め突起と可動位置決め突起の間隔をあけて配置する必要がある。このため、互いに隣接する磁石の間隔が広くなり、回転電機が大型化し、磁力が低くなる領域が増加し、駆動効率が低下するという問題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、駆動効率を向上させる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る回転電機は、固定子と、回転子とを備える。前記回転子は、回転軸と、前記回転軸に固定された複数の電磁鋼板によって構成されているとともに外周部を有する積層鋼板と、周方向に交互に前記外周部上に配置された複数の第1磁石及び複数の第2磁石とを有する。前記回転子は、前記固定子から離間し、前記固定子に囲まれている。前記積層鋼板は、前記複数の第1磁石を固定する第1電磁鋼板と、前記複数の第2磁石を固定する第2電磁鋼板とを有する。前記第1電磁鋼板は、前記周方向における前記第1磁石の一端を位置決めするとともに前記第1電磁鋼板の外側に向けて突出する第1固定位置決め突起と、前記周方向における前記第1磁石の他端を前記第1固定位置決め突起に向けて押圧するとともに前記第1電磁鋼板の外側に向けて突出する第1可動突起とを有する。前記第2電磁鋼板は、前記周方向における前記第2磁石の一端を位置決めするとともに前記第2電磁鋼板の外側に向けて突出する第2固定位置決め突起と、前記周方向における前記第2磁石の他端を前記第2固定位置決め突起に向けて押圧するとともに前記第2電磁鋼板の外側に向けて突出する第2可動突起とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る回転電機によれば、駆動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る回転電機を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る回転子ユニットを示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る回転子コアを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る回転子コアを示す上面図である。
【
図5】実施の形態1に係る回転子コアを示す正面図である。
【
図6】実施の形態1に係る回転子コアを示す部分分解図である。
【
図7】実施の形態1に係る非突起電磁鋼板を示す上面図である。
【
図8】実施の形態1に係る第1電磁鋼板を示す上面図である。
【
図9】実施の形態1に係る第2電磁鋼板を示す上面図である。
【
図10】実施の形態1に係る第1電磁鋼板を示す図であって、
図8の符号Aで示された部分を示す拡大図である。
【
図11】実施の形態1に係る第2電磁鋼板を示す図であって、
図9の符号Bで示された部分を示す拡大図である。
【
図12】実施の形態1に係る磁石を示す上面図である。
【
図13】実施の形態1に係る磁石が取り付けられた後の回転子コアを示す斜視図である。
【
図14A】実施の形態1の変形例1に係る回転子コアを示す正面図である。
【
図14B】実施の形態1の変形例2に係る回転子コアを示す上面図である。
【
図15】実施の形態2に係る回転子コアを示す斜視図である。
【
図16】実施の形態2に係る回転子コアを示す上面図である。
【
図17】実施の形態2に係る回転子コアを示す正面図である。
【
図18】実施の形態2に係る回転子コアを示す部分分解図である。
【
図19】実施の形態2に係る回転子コアを示す図であって、
図16の符号Cで示された部分を示す拡大図である。
【
図20】実施の形態2に係る第3電磁鋼板を示す上面図である。
【
図21】実施の形態2に係る第4電磁鋼板を示す上面図である。
【
図22】実施の形態2の変形例に係る第1電磁鋼板を示す斜視図である。
【
図23】実施の形態3に係る回転子ユニットを示す斜視図であって、磁石が回転子ユニットに固定される前の状態を示す図である。
【
図24】実施の形態3に係る回転子ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る回転電機について、
図1~
図24を参照して説明する。
図1~
図24において、互いに同一又は同様の構成部分には同じ符号が付されている。
図面は、模式的又は概念的に実施の形態を示している。図面に示されている各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率等は、必ずしも実際の部材と同一とは限らない。
本開示の特徴に関係しない構成の図示が省略されている場合がある。
【0010】
実施の形態1に係る回転電機は、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に適用される。パワーステアリング装置は、回転電機を制御する制御装置を備える。制御装置は、車両のステアリングの操舵力をアシスタントする。
図1~
図24では、このような制御装置の図示が省略されている場合がある。
【0011】
図面においては、3次元直交座標系に相当するX方向、Y方向、及びZ方向が示されている(符号X、Y、Z)。Z方向は、回転電機の軸方向に一致している。X方向及びY方向は、Z方向に交差する(例えば直交する)。X方向及びY方向は、互いに、交差する(例えば直交する)。
さらに、図面においては、X方向及びY方向に交差する方向が示されている場合がある。例えば、X方向に対して交差する方向を第1交差方向CRと称する。Y方向に対して交差する方向を第2交差方向CSと称する。第1交差方向CRとX方向との間の角度は、例えば、45度である。第2交差方向CSとY方向との間の角度は、例えば、45度である。第1交差方向CRと第2交差方向CSは、互いに、交差する(例えば直交する)。
【0012】
以下の説明において用いられる文言「周方向」、「径方向」、及び「軸方向」は、回転電機における「周方向」、「径方向」、及び「軸方向」の各々に対応している。さらに、文言「径方向外側」は、径方向における固定子の中心から外側に向かう方向を意味する。文言「径方向内側」は、径方向における固定子の外側から中心に向かう方向を意味する。
【0013】
回転電機の構成を説明するための文言として、「フロント側」及び「リア側」を用いる場合がある。フロント側とは、回転電機を車両に取り付ける部材が配置される位置を意味する。リア側は、フロント側とは反対側である。リア側には、制御装置が配置されている。例えば、
図1において、符号ZF(Z方向)は、フロント側を意味する。符号ZR(Z方向)は、リア側を意味する。
【0014】
実施の形態1.
実施の形態1に係る回転電機を
図1~
図13を参照して説明する。
<回転電機1の全体構成>
図1は、回転電機1を示す断面図である。
回転電機1は、フレーム2と、固定子3と、インシュレータ4と、固定子巻線5と、ターミナル6と、軸受7と、軸受ホルダ8と、軸受9と、回転子ユニット14と、ジョイント15と、ヒートシンク16とを備える。
回転電機1には、回転電機1の駆動状態を検出するセンサ17と、回転電機1の駆動を制御する制御装置18とが接続されている。
【0015】
<フレーム2>
フレーム2は、回転電機1を構成する筐体である。フレーム2を形成する材料は、例えば、安価で軽量なアルミニウム合金である。フレーム2は、フレーム本体2Mと台座2Dとを有する。フレーム本体2Mは、開口部2Aと内壁面2Bを有する。開口部2Aは、フレーム2のリア側に位置する部位である。内壁面2Bが露出する領域、すなわち、フレーム本体2Mの内側の空間は、回転電機1を構成する複数の部材が配置される内側領域2Cである。
【0016】
フレーム本体2Mの形状は、略円筒形である。略円筒形とは、フレーム本体2Mの全体形状を意味しており、幾何学的に定義された円筒のみを意味するとは限らない。略円筒形は、円筒形状の角部が面取りされた形状、製造上の誤差を含む形状、凸部、凹部、段差等を部分的に含む円筒形状を意味する。
【0017】
台座2Dは、フレーム2のフロント側に設けられた部位である。台座2Dには、ネジ穴が形成されている。ネジ穴には、ネジ等の公知の締結部材が挿通する。回転電機1は、台座2Dを介して、パワーステアリング装置に固定される。
【0018】
<固定子3>
固定子3は、内側領域2Cに配置され、フレーム2に固定されている。
固定子3は、複数の電磁鋼板を有する。複数の電磁鋼板は、例えば、軸方向において積層されている。
固定子3の径方向外側の位置において、固定子3は、固定子外側面3Aを有する。
固定子3の径方向内側の位置において、固定子3は、固定子内側面3Bを有する。
軸方向において、固定子3は、固定子上面3Cと、固定子下面3Dとを有する。固定子下面3Dは、固定子上面3Cとは反対側に位置する面である。
固定子3は、例えば、固定子鉄心を称することもできる。
【0019】
固定子3が内側領域2Cに配置されている状態で、固定子外側面3Aは、フレーム2の内壁面2Bに対向する。固定子外側面3Aと内壁面2Bとは、直接接触している。固定子外側面3Aと内壁面2Bとの間には、例えば、固定子3を内側領域2Cに固定するための固定部材が配置されてもよい。
固定子3が内側領域2Cに配置されている状態で、固定子内側面3Bは、回転子ユニット14に対向する。
【0020】
<インシュレータ4>
インシュレータ4は、公知の絶縁材料、例えば、樹脂材料で形成されている。
インシュレータ4は、固定子上面3Cの一部及び固定子下面3Dの一部を覆うように固定子3に配置されている。インシュレータ4は、固定子3と固定子巻線5との間に配置されている。インシュレータ4は、固定子巻線5と固定子3とを電気的に絶縁する。
【0021】
<固定子巻線5>
固定子巻線5は、公知の配線、例えば、樹脂等の絶縁膜が被覆された銅線である。
固定子3と固定子巻線5との間にインシュレータ4が介在するように、固定子3には固定子巻線5が巻回されている。
【0022】
<ターミナル6>
ターミナル6は、導電性を有する公知の金属材料で形成されている。
ターミナル6は、固定子巻線5に電気的に接続されている。ターミナル6は、回転電機1の外部に配置されている制御装置18に電気的に接続されている。ターミナル6は、制御装置18から出力される電力を固定子巻線5に供給する。
【0023】
<軸受7、軸受ホルダ8、軸受9>
軸受7及び軸受9は、例えば、公知のボールベアリング又はローラベアリング等である。軸受ホルダ8は、フレーム2のリア側に配置されている。言い換えると、フレーム2の開口部2Aに位置する。
【0024】
軸受7は、フレーム2のフロント側に配置されている。言い換えると、軸受7は、フレーム2の台座2Dにおける径方向内側の位置、すなわち、軸方向上に配置されている。
軸受9は、フレーム2のリア側に配置されている。言い換えると、軸受9は、軸受ホルダ8における径方向内側の位置、すなわち、軸方向上に配置されている。
【0025】
<回転子ユニット14>
図2は、回転子ユニット14を示す斜視図である。
回転子ユニット14は、回転子の一例である。
回転子ユニット14は、回転軸10と、回転子コア11と、複数の磁石12と、保護管13を有する。回転子ユニット14は、固定子3と離間しており、固定子3に囲まれるように配置されている。
【0026】
回転軸10は、例えば、公知の金属材料で形成されている。回転軸10のフロント側は、軸受7によって回転可能に支持されている。回転軸10のリア側は、軸受9によって回転可能に支持されている。回転軸10は、フロント側とリア側との間に位置する中央領域10Aを有する。回転軸10のフロント側において、回転軸10は、軸受7よりも外側に位置する端部10Bを有する。回転軸10のリア側において、回転軸10は、軸受9よりも外側に位置する端部10Cを有する。
【0027】
回転子コア11は、複数の電磁鋼板を有する。電磁鋼板は、公知の金属材料で形成されている。回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板は、例えば、軸方向において積層されている。回転子コア11は、回転軸10の中央領域10Aに固定されている。回転子コア11は、径方向外側に位置する外周部11Aを有する。
【0028】
複数の磁石12の各々は、公知の磁性材料で形成されている。
複数の磁石12は、回転子コア11の外周部11Aに接着されている。すなわち、複数の磁石12は、回転子コア11の外周部11Aに固定されている。
【0029】
保護管13は、ステンレス又はアルミニウム等の公知の非磁性材料で形成されている。
保護管13は、複数の磁石12を含めて、回転子ユニット14の径方向外側の部位を被覆している。保護管13は、回転子コア11に固定された磁石12の外側に設けられている。保護管13は、例えば、深絞り加工によって形成されている。
保護管13は、磁石12が割れた場合、又は、回転子ユニット14から外れたりした場合に、回転子ユニット14の回転が停止すること防ぐための部材である。保護管13は、回転子ユニット14に取り付けられている。なお、回転子ユニット14は、保護管13が備えなくてもよいが、実施の形態1においては、回転子ユニット14が保護管13を備えた構成が採用されている。
【0030】
<ジョイント15>
ジョイント15は、回転軸10の端部10Bに設置されている。
ジョイント15は、回転軸10の端部10Bと車両の回転軸と組付ける部材である。ジョイント15は、例えば、強度を有する公知の金属材料で形成されている。
【0031】
<ヒートシンク16>
ヒートシンク16は、フレーム2のリア側に配置されている。言い換えると、ヒートシンク16は、フレーム2の開口部2Aにおける軸受ホルダ8の外側に位置する開口端に配置されている。ヒートシンク16は、熱伝導性に優れた公知の金属材料で形成されている。ヒートシンク16には、不図示の制御装置が設置されている。
【0032】
<センサ17>
回転軸10の端部10Cには、センサ17が設置されている。センサ17は、回転子コア11の回転状態を検出する。センサ17は、例えば、公知の回転角度検出センサである。
【0033】
<制御装置18>
制御装置18は、電力変換回路と制御回路を有する。電力変換回路は、例えば、パワー半導体を有する電力変換回路である。電力変換回路は、制御装置18の外部から供給された直流電流を交流電流に変換する。制御装置18は、ターミナル6を介して固定子巻線5に供給される電流量を制御する。
【0034】
上述した構造を有する回転電機1においては、回転電機1に供給される電力量に応じて回転子コア11に回転力が発生する。回転子ユニット14が回転することで、ジョイント15が回転し、車両の回転軸が回転する。
【0035】
<回転子ユニット14の詳細構造>
次に、実施の形態1に係る回転子ユニット14の構成について詳細に説明する。
図3は、回転子コア11を示す斜視図である。
図4は、回転子コア11を示す上面図である。
図5は、回転子コア11を示す正面図である。
図6は、回転子コア11を示す部分分解図である。
図7は、非突起電磁鋼板110を示す上面図である。
図8は、第1電磁鋼板111を示す上面図である。
図9は、第2電磁鋼板112を示す上面図である。
図10は、第1電磁鋼板111を示す図であって、
図8の符号Aで示された部分を示す拡大図である。
図11は、第2電磁鋼板112を示す図であって、
図9の符号Bで示された部分を示す拡大図である。
図12は、磁石12を示す上面図である。
図13は、磁石12を回転子コア11に取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【0036】
回転子ユニット14は、回転軸10に固定された複数の電磁鋼板によって構成されている。回転子ユニット14は、外周部11Aを有する積層鋼板を有する。回転子ユニット14は、外周部11Aに周方向に配置された複数の磁石12を有する。回転子ユニット14は、固定子3から離間し、固定子3に囲まれている。
【0037】
回転子コア11は、複数の電磁鋼板がZ方向に積層された積層鋼板の一例である。
回転子コア11の外形形状は、例えば、略正八角柱形状である。略正八角柱形状とは、回転子コア11の全体形状を意味しており、幾何学的に定義された正八角柱のみを意味するとは限らない。略正八角柱は、正八角柱の角部が面取りされた形状、製造上の誤差を含む形状、径方向外側に突出する凸部、径方向内側に凹む凹部、段差等を部分的に含む正八角柱形状を意味する。
【0038】
回転子コア11は、径方向外側の位置において、8個の外周面11aを有する。
8個の外周面11aの各々は、磁石12が配置される領域である。周方向において時計回りに並ぶ8個の外周面11aを、順に、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8と称する場合がある。外周面11aは、外周部11Aに対応する。
【0039】
回転子コア11は、径方向内側の位置において、1個の第1貫通穴11bを有する。言い換えると、第1貫通穴11bは、回転子コア11の中央に設けられている。第1貫通穴11bは、回転軸10が挿入される部位である。第1貫通穴11bは、係合凹部11cを有する。係合凹部11cは、回転子コア11に回転軸10が挿入された際に回転子コア11と回転軸10の中央領域10Aとが係合する部位である。
【0040】
回転子コア11は、外周面11aと第1貫通穴11bとの間に形成された複数の第2貫通穴11dを有する。複数の第2貫通穴11dは、周方向において等間隔で形成されている。実施の形態1において、複数の第2貫通穴11dの個数は、5つである。第2貫通穴11dの個数は、5つに限定されない。例えば、回転子コア11の強度、重量、回転電機1によって発生する駆動力等、回転電機1の設計に応じて、第2貫通穴11dの個数は適宜変更可能である。
【0041】
実施の形態1において、回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板の枚数Nは、47枚である。電磁鋼板の枚数Nは、47に限定されない。例えば、回転子コア11のZ方向の大きさ、重量、回転電機1によって発生する駆動力等、回転電機1の設計に応じて、電磁鋼板の枚数Nは適宜変更可能である。
【0042】
以下の説明では、複数の電磁鋼板のうちフロント側に最も近い位置に配置された電磁鋼板を第1番目の電磁鋼板N1と称する場合がある。また、複数の電磁鋼板のうちリア側に最も近い位置に配置された電磁鋼板を第47番目の電磁鋼板N47と称する場合がある。フロント側からリア側に向かう方向において、第1番目の電磁鋼板N1と第47番目の電磁鋼板N47との間の配置された電磁鋼板を順に、第2番目の電磁鋼板N2、第3番目の電磁鋼板N3、第4番目の電磁鋼板N4、・・・第44番目の電磁鋼板N44、第45番目の電磁鋼板N45、第46番目の電磁鋼板N46と称する場合がある。
第1番目の電磁鋼板N1~第47番目の電磁鋼板N47によって回転子ユニット14の積層鋼板が構成されている。
【0043】
次に、回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板の各々の構成について説明する。
回転子コア11は、非突起電磁鋼板110と、第1電磁鋼板111と、第2電磁鋼板112とを有する。
非突起電磁鋼板110、第1電磁鋼板111、及び第2電磁鋼板112の形状は、Z方向に見て、略正八角形である。
【0044】
略正八角形とは、幾何学的に定義された正八角形のみを意味するとは限らない。略正八角形は、略正八角形の角部が面取りされた形状、製造上の誤差を含む形状、径方向外側に突出する凸部、径方向内側に凹む凹部、段差等を部分的に含む略正八角形を意味する。
【0045】
複数の電磁鋼板の各々は、回転子コア11の構成と同じく、外周面11a、第1貫通穴11b、係合凹部11c、及び複数の第2貫通穴11dを有している。このため、以下の説明では、回転子コア11において説明した上記部位の説明を省略する場合がある。
【0046】
<非突起電磁鋼板110>
図5に示すように、第1番目の電磁鋼板N1、第2番目の電磁鋼板N2、第5番目の電磁鋼板N5~第43番目の電磁鋼板N43、第46番目の電磁鋼板N46、及び第47番目の電磁鋼板N47は、非突起電磁鋼板110である。
【0047】
図7に示すように、非突起電磁鋼板110は、第1電磁鋼板111及び第2電磁鋼板112とは異なる電磁鋼板であり、突起を有していない電磁鋼板である。
非突起電磁鋼板110は、8つの外周角部110Cと、8つの直線部110Lとを有する。非突起電磁鋼板110は、8つの外周角部110Cに1対1で対応するように設けられた8つの凹部110aを有する。凹部110aは、正八角形の角部に位置する。
【0048】
凹部110aの形状は、例えば、半円形である。半円形の形状は、
図7に示す形状に限定されない。径方向内側に向けて凹む凹部110aの深さは調整可能である。凹部110aの形状は、曲率を有する半円形に限定されない。凹部110aは、角部を有してもよいし、直線に延びる直線部を有してもよい。凹部110aの形状として、曲率を有する曲面部、角部、及び直線部のうち少なくとも2つの部位が組み合わされた形状が採用されてもよい。凹部110aの形状は、例えば、略U字形状であってもよい。
【0049】
非突起電磁鋼板110は、回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板の一つである。このため、非突起電磁鋼板110は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8を有する。
【0050】
<第1電磁鋼板111>
図5に示すように、第4番目の電磁鋼板N4及び第44番目の電磁鋼板N44は、第1電磁鋼板111である。言い換えると、第1電磁鋼板111は、軸方向における回転子コア11のリア領域11R及びフロント領域11Fに配置されている。リア領域11Rは、第1領域の一例である。フロント領域11Fは、第2領域の一例である。
【0051】
図8に示すように、第1電磁鋼板111は、8つの外周角部111Cと、8つの直線部111Lとを有する。第1電磁鋼板111は、8つの外周角部111Cのうちの4つの外周角部111Cに1対1で対応するように設けられた固定位置決め突起111aと、残りの4つの外周角部111Cに1対1で対応するように設けられた可動突起111bとを有する。つまり、第1電磁鋼板111は、4つの固定位置決め突起111aと、4つの可動突起111bを一体的に備えている。第1電磁鋼板111は、複数の磁石12の一つである第1磁石12を固定する電磁鋼板である。以下の説明では、第1磁石12を単に磁石12と称する。
【0052】
言い換えると、第1電磁鋼板111は、第1固定位置決め突起111aと第1可動突起111bを有する。第1固定位置決め突起111aは、周方向における第1磁石12の一端を位置決めするとともに第1電磁鋼板111の外側に向けて突出する。第1可動突起111bは、周方向における第1磁石12の他端を第1固定位置決め突起111aに向けて押圧するとともに第1電磁鋼板111の外側に向けて突出する。以下の説明では、第1固定位置決め突起111aを単に固定位置決め突起111aと称し、第1可動突起111bを単に可動突起111bと称する。
【0053】
4つの固定位置決め突起111aは、周方向において90度ピッチで第1電磁鋼板111に設けられている。径方向において互いに反対側に設けられた2つの固定位置決め突起111aは、一組の固定位置決め突起を構成する。つまり、第1電磁鋼板111は、2組の固定位置決め突起を有する。
【0054】
4つの可動突起111bは、周方向において90度ピッチで第1電磁鋼板111に設けられている。径方向において互いに反対側に設けられた2つの可動突起111bは、一組の可動突起を構成する。つまり、第1電磁鋼板111は、2組の可動突起を有する。
【0055】
第1電磁鋼板111は、回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板の一つである。このため、第1電磁鋼板111は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8を有する。
【0056】
<可動突起111b>
図10に示すように、可動突起111bは、Y方向に延在する。第1電磁鋼板111は、X方向において可動突起111bの両側に設けられた2つの凹部111p、111qを有する。
2つの凹部111p、111qのうち、可動突起111bとX方向に延びる直線部111Lとの間に設けられた凹部は、第1可動直交凹部111qである。
2つの凹部111p、111qのうち、可動突起111bと第1交差方向CRに延びる直線部111Lとの間に設けられた凹部は、第1可動斜方凹部111pである。
【0057】
第1可動直交凹部111q及び第1可動斜方凹部111pの各々は、Y方向に平行に延びる第1電磁鋼板111に形成された切欠部である。第1可動直交凹部111qは、第1可動直交凹部111qの端部に位置する底部111sを有する。第1可動斜方凹部111pは、第1可動斜方凹部111pの端部に位置する底部111rを有する。
【0058】
可動突起111bは、可動突起111bの先端側に設けられた導入テーパ部111cを有する。導入テーパ部111cは、固定位置決め突起111aに対向している。導入テーパ部111cは、可動突起111bの先端部からX方向において固定位置決め突起111aに向けて突出している突出部である。磁石12を回転子コア11の外周部11Aに取り付ける際に、磁石12は、導入テーパ部111cに接触しながら、可動突起111bと固定位置決め突起111aとの間に挿入される。
【0059】
Y方向における導入テーパ部111cの頂部と底部111rとの間の距離、すなわち、Y方向における導入テーパ部111cの頂部と底部111sとの間の距離は、自由端長L1である。自由端長L1は、可動突起111bが弾性変形する際の周方向における移動量又は移動範囲と、可動突起111bの弾性復元力を考慮し設定されている。
【0060】
可動突起111bは、第1可動斜方凹部111pに面している可動延在面111bxを有する。導入テーパ部111cの頂部と可動延在面111bxとの間の距離は、可動突起111bの幅W1である。幅W1は、可動突起111bの加工性を考慮して設定されている。幅W1は、可動突起111bに隣接する磁石12と可動突起111bとの間の間隔が大きくならないように設定されている。実施の形態1では、幅W1は、固定位置決め突起111aの幅W2と同じである。
【0061】
<固定位置決め突起111a>
固定位置決め突起111aは、Y方向に延在する。第1電磁鋼板111は、X方向において固定位置決め突起111aの隣りに設けられた1つの第1固定延在凹部111tを有する。第1固定延在凹部111tは、固定位置決め突起111aとX方向に延びる直線部111Lとの間に設けられている。
【0062】
第1固定延在凹部111tは、Y方向に平行に延びる第1電磁鋼板111に形成された切欠部である。第1固定延在凹部111tは、第1固定延在凹部111tの端部に位置する底部111uを有する。
【0063】
固定位置決め突起111aは、先端部111afと、傾斜端部111asと、傾斜部111akと、固定延在面111atとを有する。先端部111afは、Y方向において固定位置決め突起111aの最も外側に位置する先端である。傾斜部111akは、Y方向に対して傾斜する方向に向けて先端部111afから傾斜端部111asに延びる面である。固定延在面111atは、固定位置決め突起111aにおいて第1固定延在凹部111tが形成されている位置とは反対側に位置する面である。傾斜部111akの一端は、先端部111afであり、傾斜部111akの他端は、傾斜端部111asである。言い換えると、先端部111afと傾斜端部111asとの間に傾斜部111akが形成されている。傾斜部111akと固定延在面111atとの間に傾斜端部111asが形成されている。
【0064】
Y方向における傾斜端部111asと底部111uとの間の距離は、自由端長L2である。固定位置決め突起111aの自由端長L2は、可動突起111bの自由端長L1に比べ短い。このため、第1電磁鋼板111の外部からの力が固定位置決め突起111aに加わっても、固定位置決め突起111aは、ほとんど変形しない。
言い換えると、自由端長L1は自由端長L2よりも大きいため、可動突起111bの周方向における弾性変形量は、固定位置決め突起111aよりも大きい。
X方向における固定位置決め突起111aの幅は、幅W2である。固定位置決め突起111aの幅W2は、可動突起111bの幅W1と同じである。
【0065】
図10に示す可動突起111b及び固定位置決め突起111aの構造は、第1配置領域R1、第3配置領域R3、第5配置領域R5、及び第7配置領域R7に適用されている。
【0066】
<第2電磁鋼板112>
図5に示すように、第3番目の電磁鋼板N3及び第45番目の電磁鋼板N45は、第2電磁鋼板112である。言い換えると、第2電磁鋼板112は、軸方向における回転子コア11のリア領域11R及びフロント領域11Fに配置されている。
図9に示すように、第2電磁鋼板112は、8つの外周角部112Cと、8つの直線部112Lとを有する。第2電磁鋼板112は、8つの外周角部112Cのうちの4つの外周角部112Cに1対1で対応するように設けられた固定位置決め突起112aと、残りの4つの外周角部112Cに1対1で対応するように設けられた可動突起112bとを有する。つまり、第2電磁鋼板112は、4つの固定位置決め突起112aと、4つの可動突起112bを一体的に備えている。第2電磁鋼板112は、周方向において第1磁石12に隣接するとともに複数の磁石12の一つである第2磁石12を固定する電磁鋼板である。以下の説明では、第2磁石12を単に磁石12と称する。
【0067】
言い換えると、第2電磁鋼板112は、第2固定位置決め突起112aと第2可動突起112bとを有する。第2固定位置決め突起112aは、周方向における第2磁石12の一端を位置決めするとともに第2電磁鋼板112の外側に向けて突出する。第2可動突起112bは、周方向における第2磁石12の他端を第2固定位置決め突起112aに向けて押圧するとともに第2電磁鋼板112の外側に向けて突出する。以下の説明では、第2固定位置決め突起112aを単に固定位置決め突起112aと称し、第2可動突起112bを単に可動突起112bと称する。
【0068】
4つの固定位置決め突起112aは、周方向において90度ピッチで第2電磁鋼板112に設けられている。径方向において互いに反対側に設けられた2つの固定位置決め突起112aは、一組の固定位置決め突起を構成する。つまり、第2電磁鋼板112は、2組の固定位置決め突起を有する。
【0069】
4つの可動突起112bは、周方向において90度ピッチで第2電磁鋼板112に設けられている。径方向において互いに反対側に設けられた2つの可動突起112bは、一組の可動突起を構成する。つまり、第2電磁鋼板112は、2組の可動突起を有する。
【0070】
第2電磁鋼板112は、回転子コア11を構成する複数の電磁鋼板の一つである。このため、第2電磁鋼板112は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8を有する。
【0071】
<可動突起112b>
図11に示すように、可動突起112bは、第1交差方向CRに延在する。第2電磁鋼板112は、第2交差方向CSにおいて可動突起112bの両側に設けられた2つの凹部112p、112qを有する。
2つの凹部112p、112qのうち、可動突起112bと第2交差方向CSに延びる直線部112Lとの間に設けられた凹部は、第2可動直交凹部112qである。
2つの凹部112p、112qのうち、可動突起112bとX方向に延びる直線部112Lとの間に設けられた凹部は、第2可動斜方凹部112pである。
【0072】
第2可動直交凹部112q及び第2可動斜方凹部112pの各々は、第1交差方向CRに平行に延びる第2電磁鋼板112に形成された切欠部である。第2可動直交凹部112qは、第2可動直交凹部112qの端部に位置する底部112sを有する。第2可動斜方凹部112pは、第2可動斜方凹部112pの端部に位置する底部112rを有する。
【0073】
可動突起112bは、可動突起112bの先端側に設けられた導入テーパ部112cを有する。導入テーパ部112cは、固定位置決め突起112aに対向している。導入テーパ部112cは、可動突起112bの先端部から第2交差方向CSにおいて固定位置決め突起112aに向けて突出している突出部である。磁石12を回転子コア11の外周部11Aに取り付ける際に、磁石12は、導入テーパ部112cに接触しながら、可動突起112bと固定位置決め突起112aとの間に挿入される。
【0074】
第1交差方向CRにおける導入テーパ部112cの頂部と底部112rとの間の距離、すなわち、第1交差方向CRにおける導入テーパ部112cの頂部と底部112sとの間の距離は、自由端長L1である。自由端長L1は、可動突起112bが弾性変形する際の周方向における移動量又は移動範囲と、可動突起112bの弾性復元力を考慮し設定されている。
【0075】
可動突起112bは、第2可動斜方凹部112pに面している可動延在面112bxを有する。導入テーパ部112cの頂部と可動延在面112bxとの間の距離は、可動突起112bの幅W1である。幅W1は、可動突起112bの加工性を考慮して設定されている。幅W1は、可動突起112bに隣接する磁石12と可動突起112bとの間の間隔が大きくならないように設定されている。実施の形態1では、幅W1は、固定位置決め突起112aの幅W2と同じである。
【0076】
<固定位置決め突起112a>
固定位置決め突起112aは、第1交差方向CRに延在する。第2電磁鋼板112は、第2交差方向CSにおいて固定位置決め突起112aの隣りに設けられた1つの第2固定延在凹部112tを有する。第2固定延在凹部112tは、固定位置決め突起112aと第2交差方向CSに延びる直線部112Lとの間に設けられている。
【0077】
第2固定延在凹部112tは、第1交差方向CRに平行に延びる第2電磁鋼板112に形成された切欠部である。第2固定延在凹部112tは、第2固定延在凹部112tの端部に位置する底部112uを有する。
【0078】
固定位置決め突起112aは、先端部112afと、傾斜端部112asと、傾斜部112akと、固定延在面112atとを有する。先端部112afは、第1交差方向CRにおいて固定位置決め突起112aの最も外側に位置する先端である。傾斜部112akは、第1交差方向CRに対して傾斜する方向に向けて先端部112afから傾斜端部112asに延びる面である。固定延在面112atは、固定位置決め突起112aにおいて第2固定延在凹部112tが形成されている位置とは反対側に位置する面である。傾斜部112akの一端は、先端部112afであり、傾斜部112akの他端は、傾斜端部112asである。言い換えると、先端部112afと傾斜端部112asとの間に傾斜部112akが形成されている。傾斜部112akと固定延在面112atとの間に傾斜端部112asが形成されている。
【0079】
第1交差方向CRにおける傾斜端部112asと底部112uとの間の距離は、自由端長L2である。固定位置決め突起112aの自由端長L2は、可動突起112bの自由端長L1に比べ短い。このため、第2電磁鋼板112の外部からの力が固定位置決め突起112aに加わっても、固定位置決め突起112aは、ほとんど変形しない。
言い換えると、自由端長L1は自由端長L2よりも大きいため、可動突起112bの周方向における弾性変形量は、固定位置決め突起112aよりも大きい。
第2交差方向CSにおける固定位置決め突起112aの距離は、幅W2である。固定位置決め突起112aの幅W2は、可動突起112bの幅W1と同じである。
【0080】
図11に示す可動突起112b及び固定位置決め突起112aの構造は、第2配置領域R2、第4配置領域R4、第6配置領域R6、及び第8配置領域R8に適用されている。
【0081】
図3及び
図4に示すように、複数の電磁鋼板がZ方向に積層された構成においては、第1電磁鋼板111の固定位置決め突起111aの一部は、第2電磁鋼板112の可動突起112bの一部と重なっている。同様に、第2電磁鋼板112の固定位置決め突起112aの一部は、第1電磁鋼板111の可動突起111bの一部と重なっている。
【0082】
<固定位置決め突起と可動突起とによって構成された積層突起>
図4に示すように、平面視において、回転子コア11は、可動突起111bと固定位置決め突起112aとが重ね合わされた第1積層突起と、固定位置決め突起111aと可動突起112bとが重ね合わされた第2積層突起とを有する。第1積層突起及び第2積層突起は、中心線CL1に対して対称に位置している。このような第1積層突起及び第2積層突起の対称性は、第1配置領域R1、第3配置領域R3、第5配置領域R5、及び第7配置領域R7に適用されている。
【0083】
同様に、第2配置領域R2、第4配置領域R4、第6配置領域R6、及び第8配置領域R8においても、回転子コア11は、可動突起111bと固定位置決め突起112aとが重ね合わされた第1積層突起と、固定位置決め突起111aと可動突起112bとが重ね合わされた第2積層突起とを有する。第1積層突起及び第2積層突起は、中心線CL2に対して対称に位置している。
【0084】
<磁石12>
磁石12は、Nd-Fe-B系の焼結磁石である。磁石12の表面は、防錆用のめっき等のコーティングが施されている。磁石12は、Z方向に延びる1つの円筒面12aと、円筒面12aとは反対側に位置する平面12bと、2つの側面12c、12dとを有する。
【0085】
例えば、
図12に示すように、平面12bがX方向に平行である場合において、磁石12の側面12cは、X方向における一端に位置しており、磁石12の側面12dは、X方向における他端に位置している。この場合、円筒面12aは、Y方向に向けて膨出した形状を有する。磁石12の形状は、円筒面12aは、半円筒形状の曲面の一部に相当する形状を有する。言い換えると、円筒面12aは、半月形状の曲面の一部に相当する形状を有する。複数の磁石12は、周方向に沿って配列している。
【0086】
2つの側面12c、12dの間の距離は、固定位置決め突起111aと可動突起111bとの間の間隔、及び、固定位置決め突起112aと可動突起112bとの間の間隔よりも僅かに大きくなるように設計されている。
【0087】
図13に示すように、磁石12は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8の各々に配置されている。言い換えると、複数の第1磁石と複数の第2磁石が周方向において、交互に、配置されている。
【0088】
第1配置領域R1、第3配置領域R3、第5配置領域R5、及び第7配置領域R7において、磁石12は、可動突起111bと固定位置決め突起111aとの間に位置し、固定されている。このような固定状態では、可動突起111bに弾性復元力が発生しており、この弾性復元力により、可動突起111bと固定位置決め突起111aとの間で磁石12が固定されている。このような磁石12の固定は、
図5に示す第4番目の電磁鋼板N4及び第44番目の電磁鋼板N44に相当する第1電磁鋼板111によって行われる。言い換えると、第1配置領域R1、第3配置領域R3、第5配置領域R5、及び第7配置領域R7の各々において、軸方向における2箇所であるフロント側及びリア側にて、磁石12が固定されている。
【0089】
第2配置領域R2、第4配置領域R4、第6配置領域R6、及び第8配置領域R8において、磁石12は、可動突起112bと固定位置決め突起112aとの間に位置し、固定されている。このような固定状態では、可動突起112bに弾性復元力が発生しており、この弾性復元力により、可動突起112bと固定位置決め突起112aとの間で磁石12が固定されている。このような磁石12の固定は、
図5に示す第3番目の電磁鋼板N3及び第45番目の電磁鋼板N45に相当する第2電磁鋼板112によって行われる。言い換えると、第2配置領域R2、第4配置領域R4、第6配置領域R6、及び第8配置領域R8の各々において、フロント側及びリア側の2箇所で、磁石12が固定されている。
【0090】
<回転子ユニット14の組立方法>
次に、回転子ユニット14の組立方法について説明する。
後述するように、回転子ユニット14の組立方法は、接着剤の塗布工程、磁石の取り付け工程、接着剤の硬化工程、保護管の取り付け工程、及び回転軸の圧入工程を有する。
【0091】
<接着剤の塗布工程>
接着剤の塗布工程は、磁石12を回転子コア11に取り付ける前に行われる。
まず、回転子コア11の外周面11aに接着剤を塗布する。接着剤は、例えば、熱硬化型シリコーン系接着剤又は2液硬化型アクリル系接着剤等である。
接着剤が硬化する前に、次の接着剤塗布工程が行われる。
【0092】
<磁石の取り付け工程>
まず、可動突起111b及び固定位置決め突起111aによる磁石の取り付けについて説明する。回転子コア11の外部から外周面11aに磁石12を押し付けて、可動突起111bと固定位置決め突起111aとの間に磁石12を挿入する。この際、可動突起111bに形成されている導入テーパ部111cに磁石12が接触しながら、可動突起111bが弾性変形しつつ、可動突起111bと固定位置決め突起111aとの間に磁石12が挿入され、固定される。
【0093】
このような固定状態では、磁石12は、回転子コア11の外周面11aと密着し、かつ、磁石12は、可動突起111bの弾性復元力により固定位置決め突起111aに押し付けられる。このような作業は、第1配置領域R1、第3配置領域R3、第5配置領域R5、及び第7配置領域R7において、かつ、第4番目の電磁鋼板N4及び第44番目の電磁鋼板N44において、行われる。
【0094】
次に、可動突起112b及び固定位置決め突起112aによる磁石の取り付けについて説明する。回転子コア11の外部から外周面11aに磁石12を押し付けて、可動突起112bと固定位置決め突起112aとの間に磁石12を挿入する。この際、可動突起112bに形成されている導入テーパ部112cに磁石12が接触しながら、可動突起112bが弾性変形しつつ、可動突起112bと固定位置決め突起112aとの間に磁石12が挿入され、固定される。
【0095】
このような固定状態では、磁石12は、回転子コア11の外周面11aと密着し、かつ、磁石12は、可動突起112bの弾性復元力により固定位置決め突起112aに押し付けられる。このような作業は、第2配置領域R2、第4配置領域R4、第6配置領域R6、及び第8配置領域R8において、第3番目の電磁鋼板N3及び第45番目の電磁鋼板N45において行われる。
これにより、回転子コア11の8つの外周面11aにおける複数の磁石12の位置が保持される。
【0096】
<接着剤の硬化工程>
次に、接着剤を硬化する。これにより、複数の磁石12は、回転子コア11の8つの外周面11aおいて高精度に固定される。
【0097】
<保護管の取り付け工程>
深絞り加工により、回転子コア11に固定された磁石12の外側に保護管13を形成する。具体的に、磁石12を保護管13の内部に圧入するように保護管13を固定する。その後、保護管13の端面を折り曲げる。これにより、保護管13は、回転子コア11のフロント側及びリア側に接触して固定される。
【0098】
<回転軸の圧入工程>
最後に、回転子コア11の第1貫通穴11bに回転軸10を圧入する。これにより、回転子ユニット14が完成する。
なお、上述した回転子ユニット14の組立方法においては、回転子コア11に磁石12を固定した後に回転軸10を圧入固定した。実施の形態1は、このような工程に限定されない。回転子コア11に回転軸10を圧入して固定した後に、上述した接着剤の塗布工程、磁石の取り付け工程、接着剤の硬化工程、及び保護管の取り付け工程を行ってもよい。
【0099】
<実施の形態1の効果>
実施の形態1によれば、複数の磁石の各々が第1電磁鋼板111及び第2電磁鋼板112によって固定されている。すなわち、互いに隣接する磁石12は、別々の電磁鋼板によって固定されている。したがって、従来の回転電機のように、互いに隣接する磁石の間に、固定位置決め突起と可動突起とを並べて配置する必要がない。すなわち、磁石12の間隔を狭く構成でき、小型で駆動効率の高い回転電機1を提供することができる。
【0100】
また、第1電磁鋼板111の固定位置決め突起111aの一部は、第2電磁鋼板112の可動突起112bの一部と重なっている。同様に、第2電磁鋼板112の固定位置決め突起112aの一部は、第1電磁鋼板111の可動突起111bの一部と重なっている。
これにより、複数の磁石12のうち互いに隣り合う2つの周方向における間隔を狭くすることができる。小型で、磁力を有効に使った駆動効率の高い回転電機1を実現することができる。
【0101】
また、第1電磁鋼板111及び第2電磁鋼板112の各々は、回転子コア11のZ方向におけるフロント側及びリア側に配置されているため、軸方向に対して磁石12が傾くことがなく、磁石12をより高精度に配置することができる。
【0102】
さらに、従来の回転電機においては、磁石の左右に固定位置決め突起と可動位置決め突起とが配置されているが、固定位置決め突起の形状と可動位置決め突起の形状は互いに異なっている。この場合、磁石の左端に発生する磁力の磁束密度の分布と、磁石の右端に発生する磁力の磁束密度の分布とがアンバランスになる。このような磁束密度の分布のアンバランスに起因して、コギングトルク等のモータ特性が劣化するという問題がある。
【0103】
このような従来の回転電機に対し、実施の形態1に係る回転子コア11においては、可動突起111bと固定位置決め突起112aとが重ね合わされた第1積層突起と、固定位置決め突起111aと可動突起112bとが重ね合わされた第2積層突起とが中心線CL1、CL2に対して対称に配置されている。
これにより、磁石12の左端及び右端の各々において、バランス良く磁力が発生し、磁石12の左端及び右端の各々においてバランスした磁束密度の分布を得ることができる。
このため、従来の回転電機のような磁束密度の分布のアンバランスが発生せず、良好なモータ特性を得ることができる。
【0104】
また、可動突起111bの幅W1は、固定位置決め突起111aの幅W2よりも大きい。可動突起112bの幅W1は、固定位置決め突起112aの幅W2よりも大きい。さらに、可動突起111bの自由端長L1は、固定位置決め突起111aの自由端長L2よりも大きい。可動突起112bの自由端長L1は、固定位置決め突起112aの自由端長L2よりも大きい。
このため、第1電磁鋼板111及び第2電磁鋼板112の加工が容易であるとともに、良好なバネ特性を有した可動突起111b、112bを構成することができる。
【0105】
したがって、磁石12を固定位置決め突起111a、112aに確実に押し当てることができ、外周面11aに対する磁石12の高い配置精度が得られ、トルクリップル又はコギングトルクの発生を抑制した良好な特性を有する回転電機1を提供することができる。
【0106】
回転子ユニット14の組立方法において、磁石12の接着に用いられる接着剤を硬化するための仮押さえ治具が不要であり、仮押さえ治具の付け外し作業も無い。このため、組み立て作業性にも優れた回転電機1を提供することができる。
【0107】
次に、実施の形態1の2つの変形例、実施の形態2、実施の形態2の変形例、及び実施の形態3について説明する。
以下の説明では、実施の形態1と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0108】
実施の形態1の変形例1.
上述した実施の形態1では、第4番目の電磁鋼板N4及び第44番目の電磁鋼板N44として第1電磁鋼板111を採用した。第3番目の電磁鋼板N3及び第45番目の電磁鋼板N45として第2電磁鋼板112を採用した。その他の電磁鋼板は、非突起電磁鋼板110とした。これにより、軸方向における2箇所であるフロント側及びリア側にて、磁石12を固定した。
【0109】
回転子コア11において、第1電磁鋼板111、第2電磁鋼板112、及び非突起電磁鋼板110が採用される位置は、適宜変更してもよい。また、第1電磁鋼板111の枚数、第2電磁鋼板112の枚数、及び非突起電磁鋼板110の枚数も適宜変更してもよい。
【0110】
図14Aは、実施の形態1の変形例1に係る回転子コア11を示す正面図である。
本変形例では、実施の形態1の構成に加えて、第23番目の電磁鋼板N23として第1電磁鋼板111を採用し、第24番目の電磁鋼板N24として第2電磁鋼板112を採用した。第23番目の電磁鋼板N23及び第24番目の電磁鋼板N24は、軸方向における回転子コア11の中央領域11Mに相当する。中央領域11Mは、リア領域11Rとフロント領域11Fとの間の領域である。言い換えると、第1領域と第2領域との間の領域が中央領域11Mである。
【0111】
つまり、第4番目の電磁鋼板N4、第23番目の電磁鋼板N23、及び第44番目の電磁鋼板N44に相当する3つの第1電磁鋼板111により、軸方向における3箇所にて磁石12が固定されている。
同様に、第3番目の電磁鋼板N3、第24番目の電磁鋼板N24、及び第45番目の電磁鋼板N45に相当する3つの第2電磁鋼板112により、軸方向における3箇所にて磁石12が固定されている。
【0112】
図14Aに示すように、中央領域11Mに第1電磁鋼板111と第2電磁鋼板112を配置することにより、可動突起と固定位置決め突起との間への磁石12の挿入のし易さを調整することができる。さらに、可動突起及び固定位置決め突起によって磁石12を保持する保持力を調整することができる。
【0113】
実施の形態1の変形例2.
また、上述した実施の形態1では、磁石12の個数は8個であり、回転子コア11の形状は略正八角柱形状である。実施の形態1は、磁石12の個数を限定しておらず、回転子コア11の形状も限定しない。
図14Bは、実施の形態1の変形例2に係る回転子コア11を示す上面図である。
【0114】
図14Bに示すように、本変形例に係る回転子コア11においては、セグメント型形状の磁石12を用いた円筒形状の回転子が採用されている。この構造においては、可動突起111b及び固定位置決め突起111aの間にセグメント型形状の磁石12が配置されている。同様に、可動突起112b及び固定位置決め突起112aの間にセグメント型形状の磁石12が配置されている。
上述したように、セグメント型形状の磁石12が円筒形状の回転子に固定された構成においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0115】
実施の形態2.
実施の形態2に係る回転子コア11の構成について
図15~
図21を参照して説明する。
図15は、回転子コアを示す斜視図である。
図16は、回転子コアを示す上面図である。
図17は、回転子コアを示す正面図である。
図18は、回転子コアを示す部分分解図である。
図19は、回転子コアを示す図であって、
図16の符号Cで示された部分を示す拡大図である。
図20は、第3電磁鋼板を示す上面図である。
図21は、第4電磁鋼板を示す上面図である。
【0116】
回転子コア211は、実施の形態1において説明した非突起電磁鋼板110、第1電磁鋼板111、及び第2電磁鋼板112を有する。さらに、回転子コア211は、第3電磁鋼板113及び第4電磁鋼板114を有する。回転子コア211は、複数の電磁鋼板がZ方向に積層された積層鋼板の一例である。
【0117】
図17及び
図18に示すように、第1番目の電磁鋼板N1、第2番目の電磁鋼板N2、第9番目の電磁鋼板N9~第39番目の電磁鋼板N39、第46番目の電磁鋼板N46、及び第47番目の電磁鋼板N47は、非突起電磁鋼板110である。第4番目の電磁鋼板N4及び第42番目の電磁鋼板N42は、第1電磁鋼板111である。第6番目の電磁鋼板N6及び第44番目の電磁鋼板N44は、第2電磁鋼板112である。第3番目の電磁鋼板N3、第5番目の電磁鋼板N5、第7番目の電磁鋼板N7、第41番目の電磁鋼板N41、第43番目の電磁鋼板N43、第45番目の電磁鋼板N45は、第3電磁鋼板113である。第8番目の電磁鋼板N8及び第40番目の電磁鋼板N40は、第4電磁鋼板114である。
【0118】
<第3電磁鋼板113>
図20に示すように、第3電磁鋼板113は、回転子コア211を構成する複数の電磁鋼板の一つである。このため、非突起電磁鋼板110は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8を有する。
【0119】
第3電磁鋼板113は、第1電磁鋼板111、第2電磁鋼板112、第4電磁鋼板114とは異なる電磁鋼板であり、突起を有していない電磁鋼板である。
第3電磁鋼板113は、8つの外周角部113Cと、8つの直線部113Lとを有する。第3電磁鋼板113は、8つの外周角部113Cに1対1で対応するように設けられた8つの切欠部113aを有する。切欠部113aは、正八角形の角部に位置する。
【0120】
軸方向において、切欠部113aの位置は、第1電磁鋼板111の可動突起111b及び第2電磁鋼板112の可動突起112bに一致している。つまり、切欠部113aは、第3電磁鋼板113と可動突起111b、112とが重ならないように形成されている。
【0121】
切欠部113aの形状は、例えば、角部を有する略U字形状ある。切欠部113aの形状は、
図20に示す形状に限定されない。切欠部113aに延在方向、つまり、U字形状の深さ方向における深さは調整可能である。凹部110aの形状は、U字形状に限定されない。可動突起111b、112bと第3電磁鋼板113との接触を避けることが可能であれば、切欠部113aの形状は適宜選択される。
【0122】
言い換えると、回転軸10の軸方向において、第3電磁鋼板113は、第1電磁鋼板111と第2電磁鋼板112との間に配置されている。第3電磁鋼板113は、第1電磁鋼板111及び第2電磁鋼板112に接触している。軸方向に見て、切欠部113aは、第1電磁鋼板111の第1可動突起111b及び第2電磁鋼板112の第2可動突起112bに重ならない。
【0123】
<第4電磁鋼板114>
図21に示すように、第4電磁鋼板114は、回転子コア211を構成する複数の電磁鋼板の一つである。このため、非突起電磁鋼板110は、第1配置領域R1、第2配置領域R2、第3配置領域R3、第4配置領域R4、第5配置領域R5、第6配置領域R6、第7配置領域R7、及び第8配置領域R8を有する。
【0124】
第4電磁鋼板114は、8つの外周角部114Cと、8つの直線部114Lとを有する。第4電磁鋼板114は、8つの外周角部114Cに1対1で対応するように設けられた8つのガイド突起114aを有する。ガイド突起114aは、正八角形の角部に位置する。言い換えると、ガイド突起114aは、周方向に離間するように配置されている。第4電磁鋼板114は、周方向に離間する複数のガイド突起114aを一体的に備えている。
【0125】
<ガイド突起114a>
以下の説明では、第1配置領域R1におけるガイド突起114aの構造について説明する。他の配置領域R2~R8は、第1配置領域R1と同じ構造を有するため、説明を省略する。
【0126】
ガイド突起114aは、互いに隣り合う2つの直線部114Lに相当する第1直線部114LAと第2直線部114LBの間に設けられている。
ガイド突起114aは、第1直線部114LAに直交する方向に向けて、第4電磁鋼板114の外側に突出している。言い換えると、ガイド突起114aは、第4電磁鋼板114の外側に向けて突出している。
【0127】
具体的に、ガイド突起114aは、繋がり部114cと、垂直延在部114dと、傾斜部114eと、傾斜端部114fと、先端部114gとを有する。繋がり部114cは、第2直線部114LBとガイド突起114aとが繋がる部分である。垂直延在部114dは、繋がり部114cから第1直線部114LAに直交する方向に延在する部分である。先端部114gは、第1直線部114LAに直交する方向においてガイド突起114aの最も外側に位置する先端である。傾斜部114eは、傾斜端部114fにおいて垂直延在部114dに繋がっており、直線部114Lに対して傾斜する方向に延びている。傾斜部114eは、傾斜端部114fと先端部114gとの間に設けられている。
【0128】
第1直線部114LAに直交する方向における繋がり部114cと傾斜端部114fとの間の距離は、自由端長L3である。第1直線部114LAに平行な方向におけるガイド突起114aの幅は、幅W3である。自由端長L3は、自由端長L1よりも小さい。幅W3は、幅W1よりも大きい。このため、ガイド突起114aは、可動突起111b、112bに比べて、外力に対して変形し難い構造を有する。
【0129】
図19の左部分に示すように、ガイド突起114aは、第1電磁鋼板111の可動突起111bと重なるように配置されている。具体的に、ガイド突起114aは、外周部11Aに対して垂直方向に突出している。可動突起111bも外周部11Aに対して垂直方向に突出している。外周部11Aとガイド突起114aの先端部114gとの間の距離は、P4である。外周部11Aと可動突起111bの先端部111xとの間の距離は、P1である。距離P4は、距離P1と同じか、距離P1よりも大きい。
【0130】
図19の右部分に示すように、ガイド突起114aは、第2電磁鋼板112の可動突起112bと重なるように配置されている。具体的に、ガイド突起114aは、外周部11Aに対して垂直方向に突出している。可動突起112bも外周部11Aに対して垂直方向に突出している。外周部11Aとガイド突起114aの先端部114gとの間の距離は、P4である。外周部11Aと可動突起112bの先端部112xとの間の距離は、P2である。距離P4は、距離P2と同じか、距離P2よりも大きい。
【0131】
ガイド突起114aには、可動突起111b、112bに設けられている導入テーパ部を有しない。言い換えると、ガイド突起114aは、磁石12を固定するための部位ではない。ガイド突起114aは、可動突起、112bの導入テーパ部に磁石12が接触するように磁石12をガイドする部位である。
【0132】
磁石12が外周部11Aに取り付けられる際には、磁石12の側面12dは、導入テーパ部に接触し、可動突起111b、112bは弾性変形する。このため、第4電磁鋼板114におけるガイド突起114aの配置は、可動突起111b、112bの弾性変形に伴う変形量に応じて決定されている。言い換えると、磁石12の側面12dとガイド突起114aとが接触しないように、ガイド突起114aの配置が設定されている。
言い換えると、ガイド突起114aは、第1可動突起111b及び第2可動突起112bの周方向における変位を規制する変位規制部である。
【0133】
<実施の形態2の効果>
実施の形態2によれば、第1電磁鋼板111と第2電磁鋼板112との間に第3電磁鋼板113を配置することで、可動突起111b及び可動突起112bは互いに接触することがない。これにより、可動突起111b及び可動突起112bは、摩擦の影響を受けずに、より滑らかに弾性変形することができ、磁石12を確実に固定することが可能となる。
【0134】
磁石12を外周部11Aに固定する際、回転子コア211に対して磁石12の位置がずれた場合であっても、磁石12は、ガイド突起114aと接触し、ガイド突起114aは、磁石12を外周部11Aに向けて移動させる。これにより、可動突起111b、112bの先端に磁石12が接触することを防止することができる。可動突起111b、112bの座屈等の不要な変形を防止することができる。したがって、変形が防止された可動突起111b、112bによる磁石12の固定が確実に行われる。
【0135】
第1電磁鋼板111と第4電磁鋼板114との間には、第3電磁鋼板113が配置されている。第2電磁鋼板112と第4電磁鋼板114との間には、第1電磁鋼板111と2枚の第3電磁鋼板113とが配置されている。これにより、可動突起111b及びガイド突起114aは互いに接触することがなく、可動突起112b及びガイド突起114aは互いに接触することがない。したがって、可動突起111b及びガイド突起114aは、摩擦の影響を受けずに、より滑らかに弾性変形することができ、磁石12を確実に固定することが可能となる。
【0136】
ところで、従来の回転電機においては、可動位置決め突起の幅を固定位置決め突起の幅に対して狭く設定する必要があった。このため、回転子コアの製作が困難であるとともに、磁石を回転子コアに押し込む際に、可動位置決め突起を変形させてしまい、磁石を確実に固定位置決め突起に押し付けることができないという問題があった。これにより、磁石の配置精度が低下し、コギングトルク等のモータ特性が劣化するという問題があった。
【0137】
これに対し、実施の形態2によれば、ガイド突起114aを備える第4電磁鋼板114を用いているので、磁石12を回転子コア211に滑らかに押し込むことができ、可動突起111b、112bの塑性変形の発生を防止することができる。このため、磁石12の配置精度が低下することがなく、コギングトルク等のモータ特性が劣化するという問題が生じることがない。
【0138】
回転子コア211は、ガイド突起114aを有する第4電磁鋼板114を備えるので、可動突起111b、112bが周方向に過度に変形することが防止される。このため、可動突起111b、112bにおける大きな塑性変形の発生を防止することができる。さらに、可動突起111b、112bによる磁石12の押しつけ力が損なわれることを防止することができる。
【0139】
実施の形態2の変形例.
上述した実施の形態2では、第3電磁鋼板113を第1電磁鋼板111と第2電磁鋼板112との間に配置することによって可動突起111bと可動突起112bとが接触しなし構造が採用した。本変形例は、可動突起111bと可動突起112bとの接触を回避する別の構造を示す。
【0140】
図22は、本変形例に係る第1電磁鋼板311を示す斜視図である。
図22に示すように、第1電磁鋼板311は、軸方向における厚さT1を有する。第1電磁鋼板311の可動突起111bは、軸方向における厚さT2を有する。厚さT2は、厚さT1よりも小さい。
【0141】
同様に、第2電磁鋼板312は、軸方向における厚さT1を有する。第2電磁鋼板312の可動突起112bは、軸方向における厚さT2を有する。厚さT2は、厚さT1よりも小さい。なお、第2電磁鋼板312は、
図9に示す第2電磁鋼板112の可動突起112bの厚さを上記のように変更することで得られる。
【0142】
このような第1電磁鋼板311及び第2電磁鋼板312を回転子コア211に適用することで、可動突起111b及び可動突起112bは、摩擦の影響を受けずに、より滑らかに弾性変形することができ、磁石12を確実に固定することが可能となる。さらに、第3電磁鋼板113を用いる必要がなくなるため、電磁鋼板の種類を減らすことができ、回転子コア211において複数の電磁鋼板を積層する工程が簡単になる。
【0143】
実施の形態3.
次に、回転電機1に適用される段スキュー構造を有する回転子ユニット414について説明する。
図23は、回転子ユニット414を示す斜視図であって、磁石が回転子ユニットに固定される前の状態を示す図である。
図24は、回転子ユニットを示す斜視図である。
【0144】
<回転子ユニット414>
図23に示すように、回転子ユニット414は、回転軸10と、2つの回転子コア11を有する。回転軸10は、2つの回転子コア11の第1貫通穴11bに圧入され、固定されている。2つの回転子コア11は、Z方向に向けて重なるように配置されている。2つの回転子コア11は、周方向において所定の角度でずれるように配置されている。回転子コア11は、上述した実施の形態1において説明した回転子コアである。
【0145】
言い換えると、実施の形態3に係る回転電機は、複数の回転子ユニット14を備えている。複数の回転子ユニット14の各々は、上述した回転子ユニット14に対応する。複数の回転子ユニット14は、互いに重なるように回転軸10に固定されている。複数の回転子ユニット14は、周方向において互いにずれて配置されている
【0146】
<回転子ユニット414の組立方法>
次に、回転子ユニット414の組立方法について説明する。
回転子ユニット414の組立方法は、上述した回転子ユニット14の組立方法と同様である。
【0147】
まず、回転子コア11の外周面11aに予め接着剤等を塗布する。その後、複数の磁石12を回転子コア11の外周面11aに順に挿入する。
磁石12が回転子コア11の外周面11aと密着した状態においては、可動突起111b、112bによって磁石12が外周面11aに押し付けられ、磁石12の位置が決定し、磁石12の位置が保持される。
【0148】
この状態で接着剤を硬化することで、
図23に示す回転子ユニット414が得られる。回転子ユニット414においては、複数の磁石12は、回転子コア11に高精度に固定される。
以上のように、段スキュー構造を有する回転子ユニット414において、回転子コアの個数又は磁石の個数が増えても、複数の磁石12を簡単に固定することが可能になる。磁石12の接着に用いられる接着剤を硬化するための仮押さえ治具が不要であり、仮押さえ治具の付け外し作業も無い。したがって、組み立て作業性がより一層優れた回転電機1を提供することができる。
なお、回転子ユニット414においては、回転子コア11に代えて、上述した実施の形態2において説明した回転子コア211を用いてもよい。
なお、本開示は、各実施の形態を適宜、組み合わせ、変形、省略することができる。
【符号の説明】
【0149】
1…回転電機、2…フレーム、2A…開口部、2B…内壁面、2C…内側領域、2D…台座、2M…フレーム本体、3…固定子、3A…固定子外側面、3B…固定子内側面、3C…固定子上面、3D…固定子下面、4…インシュレータ、5…固定子巻線、6…ターミナル、7、9…軸受、8…軸受ホルダ、10…回転軸、10A…中央領域、10B、10C…端部、11…回転子コア、11a…外周面、11A…外周部、11b…第1貫通穴、11c…係合凹部、11d…第2貫通穴、11F…フロント領域、11M…中央領域、11R…リア領域、12…磁石(第1磁石、第2磁石)、12a…円筒面、12b…平面、12c…側面、12d…側面、13…保護管、14、414…回転子ユニット(回転子)、15…ジョイント、16…ヒートシンク、17…センサ、18…制御装置、110…非突起電磁鋼板、110a…凹部、110C…外周角部、110L…直線部、111…第1電磁鋼板、111a…固定位置決め突起(第1固定位置決め突起)、111af…先端部、111ak…傾斜部、111as…傾斜端部、111at…固定延在面、111b…第1可動突起、111bx…可動延在面、111c…導入テーパ部、111C…外周角部、111L…直線部、111p…第1可動斜方凹部、111p…凹部、111q…第1可動直交凹部、111q…凹部、111r、111s、111u…底部、111t…第1固定延在凹部、111x…先端部、112…第2電磁鋼板、112a…固定位置決め突起(第2固定位置決め突起)、112af…先端部、112ak…傾斜部、112as…傾斜端部、112at…固定延在面、112b…第2可動突起、112bx…可動延在面、112c…導入テーパ部、112C…外周角部、112L…直線部、112p…第2可動斜方凹部、112p…凹部、112q…第2可動直交凹部、112q…凹部、112r、112s、112u…底部、112t…第2固定延在凹部、112x…先端部、113…第3電磁鋼板、113a…切欠部、113C…外周角部、113L…直線部、114…第4電磁鋼板、114a…ガイド突起、114c…繋がり部、114C…外周角部、114d…垂直延在部、114e…傾斜部、114f…傾斜端部、114g…先端部、114L…直線部、114LA…第1直線部、114LB…第2直線部、211…回転子コア、311…第1電磁鋼板、312…第2電磁鋼板