(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】放射線変換ユニット及び放射線変換ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20250516BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
(21)【出願番号】P 2024088181
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2025-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】外山 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 純
(72)【発明者】
【氏名】白川 和広
(72)【発明者】
【氏名】畑中 将志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖崇
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光部と、
前記受光部上に配置されたシンチレータパネルと、を備え、
前記シンチレータパネルは、
支持層と、
前記支持層に対して前記受光部側に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、
前記シンチレータ層に対して前記受光部側に配置されており、前記受光部に接触している粘着層と、
前記シンチレータ層の外縁部及び前記粘着層の外縁部を一体で覆っている第1防湿層と、を含み、
前記第1防湿層における前記受光部側の縁部は、前記粘着層の前記外縁部に対する内側において前記受光部と前記粘着層との間に配置された内側部分、及び、前記粘着層の前記外縁部に対する外側において前記受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含み、
前記第1防湿層における前記受光部側の前記縁部は、前記内側部分を含む、放射線変換ユニット。
【請求項2】
受光部と、
前記受光部上に配置されたシンチレータパネルと、を備え、
前記シンチレータパネルは、
支持層と、
前記支持層に対して前記受光部側に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、
前記シンチレータ層に対して前記受光部側に配置されており、前記受光部に接触している粘着層と、
前記シンチレータ層の外縁部及び前記粘着層の外縁部を一体で覆っている第1防湿層と、を含み、
前記第1防湿層における前記受光部側の縁部は、前記粘着層の前記外縁部に対する内側において前記受光部と前記粘着層との間に配置された内側部分、及び、前記粘着層の前記外縁部に対する外側において前記受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含み、
前記内側部分及び前記外側部分のそれぞれの幅は、0.5μm以上300μm以下である、放射線変換ユニット。
【請求項3】
受光部と、
前記受光部上に配置されたシンチレータパネルと、を備え、
前記シンチレータパネルは、
支持層と、
前記支持層に対して前記受光部側に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、
前記シンチレータ層に対して前記受光部側に配置されており、前記受光部に接触している粘着層と、
前記シンチレータ層の外縁部及び前記粘着層の外縁部を一体で覆っている第1防湿層と、を含み、
前記第1防湿層における前記受光部側の縁部は、前記粘着層の前記外縁部に対する内側において前記受光部と前記粘着層との間に配置された内側部分、及び、前記粘着層の前記外縁部に対する外側において前記受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含み、
前記第1防湿層は、前記支持層の外縁部、及び前記支持層における前記シンチレータ層とは反対側の表面を更に一体で覆っている、放射線変換ユニット。
【請求項4】
受光部と、
前記受光部上に配置されたシンチレータパネルと、を備え、
前記シンチレータパネルは、
支持層と、
前記支持層に対して前記受光部側に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、
前記シンチレータ層に対して前記受光部側に配置されており、前記受光部に接触している粘着層と、
前記シンチレータ層の外縁部及び前記粘着層の外縁部を一体で覆っている第1防湿層と、を含み、
前記第1防湿層における前記受光部側の縁部は、前記粘着層の前記外縁部に対する内側において前記受光部と前記粘着層との間に配置された内側部分、及び、前記粘着層の前記外縁部に対する外側において前記受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含み、
前記支持層の厚さ方向から見た場合に、前記支持層の外縁、前記シンチレータ層の外縁、及び前記粘着層の外縁は、一致している、放射線変換ユニット。
【請求項5】
前記第1防湿層における前記受光部側の前記縁部は、前記外側部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線変換ユニット。
【請求項6】
前記シンチレータ層と前記粘着層との間に配置された第2防湿層を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線変換ユニット。
【請求項7】
前記受光部は、センサパネルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線変換ユニット。
【請求項8】
前記第1防湿層における前記受光部側の前記縁部は、前記内側部分を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の放射線変換ユニット。
【請求項9】
前記内側部分及び前記外側部分のそれぞれの幅は、0.5μm以上300μm以下である、請求項3又は4に記載の放射線変換ユニット。
【請求項10】
前記第1防湿層は、前記支持層の外縁部、及び前記支持層における前記シンチレータ層とは反対側の表面を更に一体で覆っている、請求項4に記載の放射線変換ユニット。
【請求項11】
支持層と、前記支持層上に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、前記シンチレータ層上に配置された粘着層と、前記粘着層上に配置された剥離層と、前記シンチレータ層の外縁部、前記粘着層の外縁部、前記剥離層の外縁部、及び、前記剥離層における前記粘着層とは反対側の表面を一体で覆っている防湿層と、を備えるシンチレータパネルを用意するステップと、
前記防湿層のうち前記剥離層の前記表面を覆っている部分を前記剥離層と共に除去するステップと、
前記粘着層を介して前記シンチレータパネルを受光部に貼り付けるステップと、を備える放射線変換ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線変換ユニット及び放射線変換ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線変換ユニット(放射線検出器)として、特許文献1には、放射線を光に変換するシンチレータパネルと変換された光を検出するセンサパネルとが接着剤層を介して貼り合わされた構成が記載されている。特許文献1に記載の構成では、柱状結晶層(シンチレータ層)が防湿保護層によって被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような放射線変換ユニットでは、シンチレータ層の防湿性を確保することが極めて重要である。
【0005】
本発明は、シンチレータ層の防湿性を十分に確保することができる放射線変換ユニット、及びそのような放射線変換ユニットを得ることができる放射線変換ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放射線変換ユニットは、[1]「受光部と、前記受光部上に配置されたシンチレータパネルと、を備え、前記シンチレータパネルは、支持層と、前記支持層に対して前記受光部側に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、前記シンチレータ層に対して前記受光部側に配置されており、前記受光部に接触している粘着層と、前記シンチレータ層の外縁部及び前記粘着層の外縁部を一体で覆っている第1防湿層と、を含み、前記第1防湿層における前記受光部側の縁部は、前記粘着層の前記外縁部に対する内側において前記受光部と前記粘着層との間に配置された内側部分、及び、前記粘着層の前記外縁部に対する外側において前記受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含む、放射線変換ユニット」である。
【0007】
上記[1]に記載の放射線変換ユニットでは、第1防湿層が、シンチレータ層の外縁部及び粘着層の外縁部を一体で覆っている。これにより、シンチレータ層の外縁部、粘着層の外縁部、及び、シンチレータ層と粘着層との界面から水分が侵入することが抑制される。さらに、第1防湿層における受光部側の縁部は、粘着層の外縁部に対する内側において受光部と粘着層との間に配置された内側部分、及び、粘着層の外縁部に対する外側において受光部上に配置された外側部分を含む。これにより、第1防湿層の縁部と受光部との接触面積が増え、第1防湿層の縁部と受光部との界面から水分が侵入することが抑制される。以上により、上記放射線変換ユニットによれば、シンチレータ層の防湿性を十分に確保することができる。
【0008】
本発明の放射線変換ユニットは、[2]「前記第1防湿層における前記受光部側の前記縁部は、前記内側部分を含む、上記[1]に記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[2]に記載の放射線変換ユニットによれば、受光部上の領域のうち、シンチレータパネルの外縁よりも外側の領域を有効に活用し、この領域において、例えば、配線及びIC回路等を配置することができる。
【0009】
本発明の放射線変換ユニットは、[3]「前記第1防湿層における前記受光部側の前記縁部は、前記外側部分を含む、上記[1]又は[2]に記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[3]に記載の放射線変換ユニットによれば、受光部上の領域のうち、受光部と粘着層とが接触している部分においては、第1防湿層が存在しないことから、受光部の受光領域を広く確保することができる。
【0010】
本発明の放射線変換ユニットは、[4]「前記内側部分及び前記外側部分のそれぞれの幅は、0.5μm以上300μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[4]に記載の放射線変換ユニットによれば、シンチレータ層の防湿性を確実に確保しつつ、受光領域が必要以上に狭まることを避けることができる。
【0011】
本発明の放射線変換ユニットは、[5]「前記第1防湿層は、前記支持層の外縁部、及び前記支持層における前記シンチレータ層とは反対側の表面を更に一体で覆っている、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[5]に記載の放射線変換ユニットによれば、第1防湿層が、支持層の外縁部、及び支持層におけるシンチレータ層とは反対側の表面を更に一体で覆っていることにより、支持層、及びシンチレータ層と支持層との界面が外部に露出しない。よって、支持層、及びシンチレータ層と支持層との界面から水分が侵入することを抑制することができ、シンチレータ層の防湿性を更に向上させることができる。
【0012】
本発明の放射線変換ユニットは、[6]「前記シンチレータ層と前記粘着層との間に配置された第2防湿層を更に備える、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[6]に記載の放射線変換ユニットによれば、シンチレータ層の防湿性をより十分に確保することができる。
【0013】
本発明の放射線変換ユニットは、[7]「支持層の厚さ方向から見た場合に、前記支持層の外縁、前記シンチレータ層の外縁、及び前記粘着層の外縁は、一致している、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[7]に記載の放射線変換ユニットによれば、シンチレータパネルを受光部に貼り付ける際に、シンチレータパネルと受光部との位置合わせが容易になる。
【0014】
本発明の放射線検出器放射線変換ユニットは、[8]「前記受光部は、センサパネルである、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の放射線変換ユニット」であってもよい。当該[8]に記載の放射線変換ユニットによれば、センサパネルを備えることで放射線検出器として動作可能な、シンチレータ層の防湿性の高い放射線変換ユニットを得ることができる。
【0015】
本発明の放射線変換ユニットの製造方法は、[9]「支持層と、前記支持層上に配置されており、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層と、前記シンチレータ層上に配置された粘着層と、前記粘着層上に配置された剥離層と、前記シンチレータ層の外縁部、前記粘着層の外縁部、前記剥離層の外縁部、及び、前記剥離層における前記粘着層とは反対側の表面を一体で覆っている防湿層と、を備えるシンチレータパネルを用意するステップと、前記防湿層のうち前記剥離層の前記表面を覆っている部分を前記剥離層と共に除去するステップと、前記粘着層を介して前記シンチレータパネルを受光部に貼り付けるステップと、を備える放射線変換ユニットの製造方法」である。
【0016】
当該[9]に記載の放射線変換ユニットの製造方法では、シンチレータ層の外縁部、粘着層の外縁部、剥離層の外縁部、及び、剥離層における粘着層とは反対側の表面を一体で覆っている防湿層を備えたシンチレータパネルが用意される。これにより、シンチレータパネルの未使用時において、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層の防湿性を確保することができる。更に、当該[8]に記載の放射線変換ユニットの製造方法では、防湿層のうち剥離層の表面を覆っている部分が剥離層と共に除去される。これにより、剥離層の外縁部を覆っていた防湿層の縁部が、粘着層の外縁部から受光部側に突出した状態となる。この状態で粘着層を介してシンチレータパネルが受光部に貼り付けられる。これにより、第1防湿層の縁部が、粘着層の外縁部に対する内側において受光部と粘着層との間に配置された内側部分、及び、粘着層の外縁部に対する外側において受光部上に配置された外側部分の少なくとも一方を含んだ状態となる。よって、当該[8]に記載の放射線変換ユニットの製造方法によれば、シンチレータ層の防湿性を十分に確保し得る放射線変換ユニットを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シンチレータ層の防湿性を十分に確保することができる放射線変換ユニット、及びそのような放射線変換ユニットを得ることができる放射線検出器の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態のシンチレータパネルの断面図である。
【
図2】
図1に示されるシンチレータパネルを備える放射線検出器の断面図である。
【
図3】
図1に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図4】
図1に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図5】
図1に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図6】
図1に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図7】
図2に示される放射線検出器の製造方法を示す図である。
【
図9】変形例のシンチレータパネルの断面図である。
【
図10】
図9に示されるシンチレータパネルを備える放射線検出器の断面図である。
【
図11】
図9に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図12】
図9に示されるシンチレータパネルの製造方法を示す図である。
【
図13】
図10に示される放射線検出器の製造方法を示す図である。
【
図14】変形例のシンチレータパネルの断面図である。
【
図15】変形例のシンチレータパネルの断面図である。
【
図16】
図15に示されるシンチレータパネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[シンチレータパネルの構成]
【0020】
図1に示されるように、シンチレータパネル1は、シンチレータユニット2と、第1防湿層3と、を備えている。第1防湿層3は、シンチレータユニット2を覆っている。シンチレータユニット2は、支持層4と、シンチレータ層5と、粘着層6と、剥離層7と、第2防湿層8と、を備えている。シンチレータ層5は、支持層4上に配置されている。粘着層6は、シンチレータ層5上に配置されている。剥離層7は、粘着層6上に配置されている。換言すれば、シンチレータ層5、第2防湿層8、粘着層6及び剥離層7は、支持層4の厚さ方向(以下、「方向A」)において、この順序で支持層4上に積層されている。つまり、第2防湿層8は、シンチレータ層5と粘着層6との間に配置されている。方向Aから見た場合に、支持層4の外縁4a、シンチレータ層5の外縁5a、第2防湿層8の外縁8a、粘着層6の外縁6a及び剥離層7の外縁7aは、一致している。すなわち、外縁4a、外縁5a、外縁8a、外縁6a及び外縁7aは、面一な状態にある。
【0021】
第1防湿層3は、支持層4の外縁部41、シンチレータ層5の外縁部51、第2防湿層8の外縁部81、粘着層6の外縁部61、剥離層7の外縁部71、及び、剥離層7の表面7b、及び支持層4の表面4bを一体で覆っている。剥離層7の表面7bは、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面である。支持層4の表面4bは、支持層4におけるシンチレータ層5とは反対側の表面である。すなわち、第1防湿層3は、シンチレータユニット2を連続的に切れ目なく一体で覆っている。このため、シンチレータパネル1では、第1防湿層3と各層との界面が外部に露出していない。第1防湿層3は、外部からシンチレータユニット2内に水分が侵入することを抑制する機能を有している。シンチレータパネル1では、第1防湿層3の厚さは、シンチレータユニット2の全面に亘って均一であり、0.5μm以上40μm以下である。第1防湿層3の材料は、例えば、パリレン(ポリパラキシレン)である。
【0022】
支持層4は、第1支持層401と、第2支持層402と、を含んでいる。第2支持層402は、第1支持層401に対してシンチレータ層5側に位置した状態で第1支持層401上に配置されている。第1支持層401の外縁部及び第2支持層402の外縁部は、支持層4の外縁部41を構成している。方向Aから見た場合に、第1支持層401の外縁及び第2支持層402の外縁は一致している。
【0023】
第1支持層401は、外部からシンチレータユニット2内に水分が侵入することを抑制する機能、及び外部からシンチレータユニット2内に光が入射することを抑制する機能を有している。第1支持層401の材料は、例えば、樹脂材料と金属材料とが組み合わされた複合材料である。一例として、第1支持層401の材料は、PET(ポリエチレンテレフタラート)とAlとの複合材料である。第1支持層401に含まれる樹脂材料は、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PU(ポリウレタン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等であってもよい。第1支持層401に含まれる金属材料は、Cu、Ti、Fe、SUS(ステンレス鋼)等であってもよい。
【0024】
第2支持層402は、放射線(例えば、X線)の入射に応じてシンチレータ層5において発せられた光を反射する機能を有している。第2支持層402の材料は、例えば、樹脂材料と白色の無機材料とが組み合わされた複合材料である。一例として、第2支持層402の材料は、PETと白色の無機材料との複合材料である。樹脂材料は、PET以外には、例えば、PEN、PI、PP、PE、PU、PMMA等である。白色の無機材料は、例えば、TiO2、ZnO、LAS(リチウムアルミニウムシリケート)等である。
【0025】
第1支持層401の厚さは、例えば、30μm以上250μm以下である。第2支持層402の厚さは、例えば、10μm以上250μm以下である。支持層4は、可撓性を有している。支持層4は、例えば、30mm以上120mm以下の曲率半径を有するように撓められ得る。
【0026】
シンチレータ層5は、第2支持層402における第1支持層401とは反対側の表面上に配置されている。シンチレータ層5は、複数の柱状結晶50を含んでいる。複数の柱状結晶50は、方向Aに垂直な平面に沿って並んでいる。各柱状結晶50は、方向Aに延在しており、全領域にわたって略均一な高さ(厚さ)を有している。各柱状結晶50は、支持層4とは反対側の第1端部50aと、支持層4側の第2端部50bと、を含んでいる。各第1端部50aは、支持層4とは反対側に向かって細くなっている。シンチレータ層5の材料は、例えば、CsI:Tl(タリウムを賦活剤として含むヨウ化セシウム)、CsI:Na(ナトリウムを賦活剤として含むヨウ化セシウム)、CsI:Ce(セリウムを賦活剤として含むヨウ化セシウム)、CsI:Tl,Eu(タリウム及びユーロピウムを賦活剤として含むヨウ化セシウム)等である。シンチレータ層5の厚さは、例えば、50μm以上1000μm以下(好ましくは、解像度を求める場合は100μm以上300μm以下、感度を求める場合は400μm以上700μm以下)である。
【0027】
第2防湿層8は、複数の第1端部50aを覆っている。第2防湿層8は、仮に粘着層6が水分を含んだとしても、粘着層6からシンチレータ層5に水分が移動することを抑制する機能を有している。第2防湿層8の材料は、例えば、パリレン(ポリパラキシレン)である。第2防湿層8の厚さは、第1防湿層3の厚さよりも小さい。第2防湿層8の厚さは、例えば、第1防湿層3の厚さの半分以下である。ここで、第2防湿層8の厚さとは、例えば、複数の第1端部50aが有する複数の先端が平面に沿って並んでいる場合に、当該平面と第2防湿層8におけるシンチレータ層5とは反対側の表面8bとの距離である。第2防湿層8の厚さは、0.5μm以上40μm以下である。
【0028】
粘着層6は、第2防湿層8上に配置されている。粘着層6は、第2防湿層8の表面8bに接触している。粘着層6は、シンチレータパネル1をセンサパネル11に貼り合わせるための接着層として機能する。粘着層6の材料は、光透過性を有する有機材料であり、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)等である。粘着層6の厚さは、例えば、0.5μm以上50μm以下である。
【0029】
剥離層7は、粘着層6におけるシンチレータ層5とは反対側の表面6bに接触している。剥離層7は、粘着層6の表面6bに対する離型性を有している。剥離層7は、例えば、離型フィルムであり、表面6bから容易に剥離可能である。剥離層7は、シンチレータパネル1の使用時には、粘着層6の表面6bから剥離される。剥離層7は、シンチレータパネル1の未使用時には、粘着層6の粘着性を保護し、不要な物質が粘着層6に付着するのを防ぐ。剥離層7の材料は、例えば、PET、PE、PP等である。剥離層7における粘着層6側の表面は、シリコーン系の離型剤によってコーティングされてもよい。これにより、剥離層7が粘着層6の表面6bから容易に剥離され得る。第1防湿層3は、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面7b側の外縁領域3aにおいて、ユーザが剥離し易いように剥離きっかけ32(脆弱部)を備えている。剥離きっかけ32は、外縁領域3aにおいて、剥離層7の表面7b側の中心領域3bよりも強度が小さい。例えば、方向Aから見た場合に矩形状であるシンチレータパネル1において、剥離きっかけ32は、第1防湿層3における表面7b側の4つの角部の少なくとも1つに設けられてもよい。剥離きっかけ32は、
図1に示されるように、第1防湿層3の角部に設けられた切込であってもよい。或いは、剥離きっかけ32は、第1防湿層3の角部を含む外縁領域3aの全周に亘って設けられた切込であってもよいし、剥離層7の表面7bに平行な方向に設けられた切込であってもよいし、方向Aにおいて剥離層7の外縁7aに平行な方向(表面7bに垂直な方向)に設けられた切込であってもよい。剥離層7の厚さは、5μm以上300μm以下である。
[放射線検出器の構成]
【0030】
図2に示されるように、放射線検出器(放射線変換ユニット)10は、上述したシンチレータパネル1と、センサパネル(受光部)11と、を備えている。センサパネル11は、受光面11aを有している。シンチレータパネル1は、シンチレータ層5が支持層4に対してセンサパネル11側に位置した状態で、受光面11a上に配置されている。シンチレータパネル1は、粘着層6によってセンサパネル11に接着されている。センサパネル11のうち受光面11aに沿った部分には、複数の光電変換素子(図示省略)が設けられている。各光電変換素子は、画素を構成しており、入射した光に応じた電気信号を出力する。放射線検出器10では、放射線の入射に応じてシンチレータパネル1のシンチレータ層5において発せられた光がセンサパネル11によって検出される。放射線検出器10は、放射線イメージング装置として、例えば、医療用放射線画像診断装置、非破壊検査装置等に用いられる。
【0031】
放射線検出器10は、剥離層7が粘着層6から剥離されると共に、第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分が除去された後、粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられることによって製造される。シンチレータパネル1がセンサパネル11に接着された状態において、第1防湿層3のセンサパネル11側の縁部31は、内側部分311を含む。内側部分311は、粘着層6の外縁部61に対する内側においてセンサパネル11と粘着層6との間に配置された部分である。内側部分311は、粘着層6の外縁部61に対する内側に縁部31が折り返された部分であってもよい。内側部分311は、粘着層6の外縁部61に対する内側において、粘着層6の表面6bを覆うと共に、センサパネル11の受光面11aを覆っている。換言すれば、内側部分311は、粘着層6の外縁部61において、粘着層6の表面6bとセンサパネル11の受光面11aとの間に配置されている。
【0032】
内側部分311の幅D1は、粘着層6の外縁6aに沿って変化している。ここで、内側部分311の幅D1は、方向Aに垂直な方向における外縁6aから縁部31の端面31aまでの長さである。幅D1は、0.5μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上200μm以下である。幅D1が変化している場合において幅D1が5μm以上200μm以下であるとは、幅D1の最大値及び最小値が5μm以上200μm以下の範囲に含まれることを意味する。
【0033】
放射線検出器10は、封止部材12を更に備えている。封止部材12は、センサパネル11の表面のうち受光面11aを包囲する領域において、枠状に延在しており、シンチレータパネル1の側面を覆っている。封止部材12は、第1防湿層3とセンサパネル11との界面から水分が侵入することを抑制する機能を有している。封止部材12の材料は、例えば、エポキシ、シリコーン、フッ素、ウレタン、アクリル等である。封止部材12の材料は、ガラス等の無機材料からなるフィラー材を含んでいてもよい。
[シンチレータパネルの製造方法]
【0034】
上述したシンチレータパネル1の製造方法について説明する。まず、
図3の(a)に示されるように、キャリア基板13に貼り合わされた第2支持層402が用意される。キャリア基板13と第2支持層402とは、接着剤によって貼り合わされてもよいし、両面テープによって貼り合わされてもよい。キャリア基板13の材料は、例えば、ガラス基板である。平滑性及び剥離性を向上させるために、キャリア基板13の表面は、剥離剤によってコーティングされていてもよい。キャリア基板13の厚さは、例えば、0.1mm以上1.5mm以下である。続いて、
図3の(b)に示されるように、気相堆積法によって第2支持層402上にシンチレータ層5が形成される。本実施形態では、蒸着法によって第2支持層402上にシンチレータ層5が形成される。これにより、複数の柱状結晶50では、複数の第2端部50bが第2支持層402側に位置することになり、複数の第1端部50aが第2支持層42とは反対側に位置することになる。なお、蒸着法以外の気相堆積法の例としては、スパッタリング法がある。
【0035】
続いて、
図4の(a)に示されるように、キャリア基板13、第2支持層402、及びシンチレータ層5が第2防湿層8によって覆われる。
図4の(a)の例では、キャリア基板13における第2支持層402とは反対側の表面、キャリア基板13の両端、第2支持層402の両端、シンチレータ層5の両端、及びシンチレータ層5の複数の第1端部50aが第2防湿層8によって一体で覆われる。続いて、
図4の(b)に示されるように、キャリア基板13が第2支持層402から除去される。
図4の(b)の例では、キャリア基板13と共に、第2防湿層8のうちキャリア基板13の表面を覆っていた部分及びキャリア基板13の両端を覆っていた部分が除去される。これにより、第2支持層402におけるシンチレータ層5とは反対側の表面が外部に露出する。
【0036】
続いて、
図5の(a)に示されるように、第2支持層402におけるシンチレータ層5とは反対側の表面に第1支持層401が貼り合わされる。また、剥離層7が表面6bに貼り合わされた状態の粘着層6が用意され、シンチレータ層5上に第2防湿層8を介して粘着層6が配置される。
図5の(a)の例では、粘着層6における剥離層7とは反対側の表面6cが、第2防湿層8の表面8bに貼り合わされる。続いて、
図5の(b)に示されるように、第1支持層401、第2支持層402、シンチレータ層5、第2防湿層8、粘着層6、及び剥離層7が方向Aにおいて所定の大きさに切断される。例えば、支持層4、シンチレータ層5、第2防湿層8、粘着層6、及び剥離層7から構成される積層体が
図5の(a)に示される状態から、互いに同じ寸法、形状(例えば矩形)の複数のシンチレータユニット2が得られるように切断される。或いは、例えば、支持層4、シンチレータ層5、第2防湿層8、粘着層6、及び剥離層7のそれぞれの端部が切断されることで、一つのシンチレータユニット2が得られてもよい。これにより、支持層4の外縁4a、シンチレータ層5の外縁5a、第2防湿層8の外縁8a、粘着層6の外縁6a、及び剥離層7の外縁7aが、一致する。そして、これらの外縁がシンチレータユニット2の外縁を構成する。なお、切断に用いられるブレードとして、ブレードの先端の厚さが方向Aにおいて徐々に小さくなるブレードが用いられる場合がある。このようなブレードによって切断された場合、シンチレータユニット2の外縁が方向Aにおいて徐々に大きくなってもよい。以上
図4の(a)~
図5の(b)において説明した製造ステップがシンチレータユニット2を用意するステップに該当し、
図5の(b)において説明した切断ステップは、シンチレータユニット2を用意するステップに含まれる。
【0037】
続いて、
図6に示されるように、支持層4の外縁部41、シンチレータ層5の外縁部51、粘着層6の外縁部61、剥離層7の外縁部71、第2防湿層8の外縁部81、及び、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面7bが第1防湿層3によって一体で覆われる(第1防湿層3によって一体で覆うステップ)。これにより、シンチレータユニット2の全面が、第1防湿層3に完全に包囲される。この結果、シンチレータユニット2における各層間の界面、及び各層と第1防湿層3との界面は、第1防湿層3によって覆われ、外部に露出しない状態となる。以上により、シンチレータパネル1が製造される。
[放射線検出器の製造方法]
【0038】
上述した放射線検出器10の製造方法について説明する。まず、
図7の(a)に示されるように、第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分が剥離層7と共に除去される(第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分を剥離層7と共に除去するステップ)。剥離層7が粘着層6の表面6bに対する離型性を有していることから、剥離層7が表面6bから容易に剥離される。剥離層7の角部に剥離きっかけが設けられている場合は、ユーザは剥離きっかけを掴み、剥離層7を剥離してもよい。剥離層7が剥離されることで、表面6bが外部に露出する。
【0039】
第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分が剥離層7と共に除去されることにより、第1防湿層3のうち剥離層7の外縁部71を覆っていた部分が、粘着層6の外縁部61からセンサパネル11側に突出した状態となる。この突出した部分が第1防湿層3の縁部31となる。この際に、縁部31にはバリが立っている状態となる。例えば、縁部31における端面31aは、第1防湿層3の厚さ方向から見た場合に、不規則な凹凸形状(例えば、鋸刃形状)を呈している。
【0040】
続いて、
図7の(b)に示されるように、粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられる(粘着層6を介してシンチレータパネル1をセンサパネル11に貼り付けるステップ)。この際に、第1防湿層3の縁部31が粘着層6の外縁部61からセンサパネル11側に突出した状態で、粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられる。この結果、縁部31は、粘着層6の外縁部61に対する内側に折り返された部分を含む。これにより、縁部31が、内側部分311を含んだ状態となる。
【0041】
最後に、
図2に示されるように、シンチレータパネル1の側面が封止部材12によって覆われる。以上により、放射線検出器10が製造される。
[作用及び効果]
【0042】
放射線検出器10では、第1防湿層3が、シンチレータ層5の外縁部51及び粘着層6の外縁部61を一体で覆っている。これにより、シンチレータ層5の外縁部51、粘着層6の外縁部61、及び、シンチレータ層5と粘着層6との界面から水分が侵入することが抑制される。さらに、第1防湿層3におけるセンサパネル11側の縁部31は、粘着層6の外縁部61に対する内側においてセンサパネル11と粘着層6との間に配置された内側部分311を含む。これにより、第1防湿層3の縁部31とセンサパネル11との接触面積が増え、第1防湿層3の縁部31とセンサパネル11との界面から水分が侵入することが抑制される。以上により、上記放射線検出器によれば、シンチレータ層の防湿性を十分に確保することができる。
【0043】
第1防湿層3におけるセンサパネル11側の縁部31は、内側部分311を含む。これによれば、センサパネル11上の領域のうち、シンチレータパネル1の外縁1aよりも外側の領域を有効に活用し、この領域において、例えば、配線及びIC回路等を配置することができる。また、内側部分311においては、縁部31における端面31aが内側に折り込まれて粘着層6の外縁部61を包み込むように配置されるため、粘着層6の外縁部61を介した外部からの水分の侵入をより抑制することができる。
【0044】
内側部分311の幅D1は、0.5μm以上300μm以下である。これによれば、シンチレータ層5の防湿性を確実に確保しつつ、受光領域が必要以上に狭まることを避けることができる。
【0045】
第1防湿層3は、支持層4の外縁部41、及び支持層4におけるシンチレータ層5とは反対側の表面4bを更に一体で覆っている。これによれば、第1防湿層3が、支持層4の外縁部41、及び支持層4におけるシンチレータ層5とは反対側の表面4bを更に一体で覆っていることにより、支持層4、及びシンチレータ層5と支持層4との界面が外部に露出しない。よって、支持層4、及びシンチレータ層5と支持層4との界面から水分が侵入することを抑制することができ、シンチレータ層5の防湿性を更に向上させることができる。
【0046】
放射線検出器10は、シンチレータ層5と粘着層6との間に配置された第2防湿層8を更に備える。これによれば、シンチレータ層5の防湿性をより十分に確保することができる。また、粘着層6がシンチレータ層5と直接接触しないため、粘着層6及び剥離層7を貼り合わせる際にも柱状結晶50の第1端部50aの先端を破損すること等を抑制することができる。その際、第2防湿層8は粘着層6よりも硬い(硬度が大きい)ため、第2防湿層8で第1端部50aの先端を保護しつつ、粘着層6のクッション性により、貼り合わせる際の第1端部50aの先端にかかる力を低減することができる。
【0047】
支持層4の厚さ方向(方向A)から見た場合において、支持層4の外縁4a、シンチレータ層5の外縁5a、粘着層6の外縁6a、及び剥離層7の外縁7aは、一致している。これによれば、シンチレータパネル1を他の部材(例えば、センサパネル11)に貼り付ける際に、シンチレータパネル1と他の部材との位置合わせが容易になる。また、シンチレータパネル1の側面が平坦になるため、第1防湿層3を形成する際にも厚さのムラが生じにくく、より防湿性の高い第1防湿層3を形成することができる。
【0048】
放射線検出器10は、センサパネル11を備える。これによれば、シンチレータ層5の防湿性の高い放射線検出器10を得ることができる。
【0049】
放射線検出器10の製造方法では、シンチレータ層5の外縁部51、粘着層6の外縁部61、剥離層7の外縁部71、及び、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面7bを一体で覆っている第1防湿層3を備えたシンチレータパネル1が用意される。これにより、シンチレータパネル1の未使用時において、複数の柱状結晶50を含むシンチレータ層5の防湿性を確保することができる。更に、上記製造方法では、第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分が剥離層7と共に除去される。これにより、剥離層7の外縁部71を覆っていた第1防湿層3の縁部31が、粘着層6の外縁部61からセンサパネル11側に突出した状態となる。この状態で粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられる。これにより、第1防湿層3の縁部31が、粘着層6の外縁部61に対する内側においてセンサパネル11と粘着層6との間に配置された内側部分311を含んだ状態となる。よって、上記製造方法によれば、シンチレータ層5の防湿性を十分に確保し得る放射線検出器10を得ることができる。
[変形例]
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
図8に示されるように、シンチレータパネル1がセンサパネル11に接着された状態において、第1防湿層3のセンサパネル11側の縁部31は、内側部分311に代えて外側部分312を含んでもよい。外側部分312は、粘着層6の外縁部61に対する外側においてセンサパネル11上に配置された部分である。外側部分312は、粘着層6の外縁部61に対する外側に縁部31が折り返された部分であってもよい。外側部分312は、
図8の例では、粘着層6の外縁部61に対する外側において、センサパネル11の受光面11aを覆っている。外側部分312は、センサパネル11の受光面11a上の領域のうち、シンチレータパネル1の外縁1aとセンサパネル11の外縁11bとの間に配置されている。
【0051】
外側部分312の幅D2は、粘着層6の外縁6aに沿って変化している。ここで、外側部分312の幅D2は、方向Aに垂直な方向における外縁6aから縁部31の端面31aまでの長さである。幅D2は、0.5μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上200μm以下である。幅D2が変化している場合において幅D2が5μm以上200μm以下であるとは、幅D2の最大値及び最小値が5μm以上200μm以下の範囲に含まれることを意味する。
【0052】
外側部分312を含む放射線検出器10の製造方法では、内側部分311を含む放射線検出器10と同様に、第1防湿層3の縁部31が粘着層6の外縁部61からセンサパネル11側に突出した状態で、粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられる。この結果、縁部31は、粘着層6の外縁部61に対する外側に折り返された部分を含む。これにより、縁部31が、外側部分312を含んだ状態となる。
【0053】
縁部31が、外側部分312を含むことにより、センサパネル11上の領域のうち、センサパネル11と粘着層6とが接触している部分においては、第1防湿層3が存在しないことから、センサパネル11の受光領域を広く確保することができる。加えて、縁部31が外側部分312を含む場合、
図8に示されるように、第1防湿層3とセンサパネル11との界面の入口(端面31aと受光面11aとの接触箇所)がシンチレータ層5から離れる。これにより、第1防湿層3の縁部31とセンサパネル11との界面から水分が侵入することが更に抑制される。外側部分312の幅が、0.5μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上200μm以下であることにより、シンチレータ層5の防湿性を確実に確保しつつ、受光領域が必要以上に狭まることを避けることができる。外側部分312を含む放射線検出器10の製造方法では、内側部分311を含む放射線検出器10と同様に、シンチレータ層5の防湿性を十分に確保し得る放射線検出器10を得ることができる。
【0054】
縁部31は、内側部分311又は外側部分312を含んでもよいし、内側部分311及び外側部分312の両方を含んでもよい。すなわち、縁部31は、内側部分311及び外側部分312の少なくとも一方を含んでいればよい。
【0055】
図9に示されるように、シンチレータパネル1Aは、第2防湿層8を備えていなくてもよい。シンチレータパネル1Aは、シンチレータ層5と粘着層6との間に第2防湿層8が配置されていない点においてシンチレータパネル1と相違する。シンチレータパネル1Aでは、粘着層6が複数の第1端部50aと接触しており、複数の第1端部50aを覆っている。シンチレータパネル1Aでは、シンチレータ層5の外縁部51、粘着層6の外縁部61、剥離層7の外縁部71、及び、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面7bが第1防湿層3によって一体で覆われる。
【0056】
図10に示されるように、シンチレータパネル1Aを含む放射線検出器10Aでは、放射線検出器10に比べて、複数の第1端部50aが有する複数の先端を含む平面とセンサパネル11との距離が小さくなる。これにより、放射線検出器10Aでは、シンチレータ層5において変換された光の散乱や減衰の発生が抑制され、第2防湿層8の存在に起因する解像度の低下を抑制することができる。なお、この場合においても、縁部31は、内側部分311及び外側部分312の少なくとも一方を含んでいればよい。
【0057】
続いて、シンチレータパネル1Aの製造方法について説明する。まず、シンチレータパネル1と同様に、
図3の(a)及び
図3の(b)に示されるように、キャリア基板13に貼り合わされた第2支持層402上にシンチレータ層5が形成される。続いて、
図11の(a)に示されるように、キャリア基板13が第2支持層402から除去される。そして、
図11の(b)に示されるように、第2支持層402におけるシンチレータ層5とは反対側の表面に第1支持層401が貼り合わされる。これと共に、粘着層6における剥離層7とは反対側の表面が、シンチレータ層5の複数の第1端部50aに直接貼り合わされる。続いて、
図12の(a)に示されるように、第1支持層401、第2支持層402、シンチレータ層5、粘着層6、及び剥離層7が方向Aにおいて所定の大きさに切断される。例えば、支持層4、シンチレータ層5、粘着層6、及び剥離層7から構成される積層体が、
図11の(b)に示される状態から、同じ寸法、形状(例えば矩形)の複数のシンチレータユニット2Aが得られるように切断される。或いは、例えば、支持層4、シンチレータ層5、粘着層6、及び剥離層7のそれぞれの端部が切断されることで、一つのシンチレータユニット2Aが得られてもよい。これにより、支持層4の外縁4a、シンチレータ層5の外縁5a、粘着層6の外縁6a、及び剥離層7の外縁7aが、一致する。続いて、
図12の(b)に示されるように、支持層4の外縁部41、シンチレータ層5の外縁部51、粘着層6の外縁部61、剥離層7の外縁部71、及び、剥離層7における粘着層6とは反対側の表面7bが第1防湿層3によって一体で覆われる。
【0058】
続いて、放射線検出器10Aの製造方法について説明する。放射線検出器10と同様に、
図13の(a)に示されるように、第1防湿層3のうち剥離層7の表面7bを覆っている部分が剥離層7と共に除去される。続いて、
図13の(b)に示されるように、第1防湿層3の縁部31が粘着層6の外縁部61からセンサパネル11側に突出した状態で、粘着層6を介してシンチレータパネル1がセンサパネル11に貼り付けられる。これにより、縁部31が、内側部分311及び外側部分312の少なくとも一方を含んだ状態となる。最後に、
図10に示されるように、シンチレータパネル1Aの側面が封止部材12によって覆われる。
【0059】
第1防湿層3に含まれる剥離きっかけは、切込でなくてもよい。
図14に示されるように、剥離きっかけ32Aは、第1防湿層3における表面7b側の4つの角部の少なくとも1つの角がとれた部分であってもよい。剥離きっかけ32Aは、研磨部材によって第1防湿層3の角部が削れられた部分であってもよい。研磨部材は、例えば、ハンドラッパー、カッター等の刃物である。ハンドラッパーとは、先端に砥石が付いたブラシのような工具である。或いは、剥離きっかけ32Aは、レーザー加工によって第1防湿層3の角部が削れられた部分であってもよい。なお、剥離きっかけ32Aは、第1防湿層3の角部を含む外縁領域3aの全周に亘って設けられてもよい。
【0060】
第1防湿層3は、剥離層7におけるシンチレータ層5とは反対側の表面7bを覆っていなくてもよい。
図15に示されるように、第1防湿層3は、支持層4におけるシンチレータ層5とは反対側の表面4b、支持層4の外縁部41、シンチレータ層5の外縁部51、第2防湿層8の外縁部81、粘着層6の外縁部61、及び剥離層7の外縁部71を一体で覆っていてもよい。第1防湿層3におけるセンサパネル11側の縁部31の端面31aは、表面7bと面一であってもよい。この場合、表面7b及び端面31aは、外部に露出している。また、第1防湿層3に対してではなく、剥離層7に対する剥離きっかけ72として、表面7bに張り合わされたテープを設けてもよい。剥離きっかけ72は、
図16に示されるように、第1防湿層3における4つの角部の少なくとも1つにおいて、表面7bの中心を向くように、表面7bに張り合わされてもよい。剥離きっかけ72の個数は、一枚に限られず、複数であってもよい。剥離きっかけ72は、第1防湿層3における4つの辺の少なくとも1つに設けられてもよい。
【0061】
シンチレータパネル1では、第1防湿層3の厚さは、0.5μmを下回ってもよいし、40μmを上回ってもよい。第1防湿層3の厚さは、シンチレータユニット2の全面に亘って均一でなく、変化してもよい。剥離層7の厚さは、5μmを下回ってもよいし、200μmを上回ってもよい。内側部分311の幅D1及び外側部分312の幅D2のそれぞれは、5μmを下回ってもよいし、200μmを上回ってもよい。幅D1及び幅D2のそれぞれは、粘着層6の外縁6aに沿って一定であってもよい。幅D1及び幅D2のそれぞれが一定である場合においても、幅D1及び幅D2のそれぞれは、5μm以上200μm以下であることが好ましいが、5μmを下回ってもよいし、200μmを上回ってもよい。第2支持層402は、放射線(例えば、X線)の入射に応じてシンチレータ層5において発せられた光を吸収する機能を有してもよい。この場合、一例として、第2支持層402の材料は、PETと黒色の無機材料との複合材料である。黒色の無機材料は、例えば、カーボンブラック、酸化鉄等である。また、シンチレータパネル1が配置される受光部は、センサパネル11に限られず、例えばFOP(ファイバオプティックスプレート)等の導光部材であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,1A…シンチレータパネル、2,2A…シンチレータユニット、3…第1防湿層、4…支持層、10,10A…放射線検出器(放射線変換ユニット)、11…センサパネル(受光部)、31…縁部、311…内側部分、312…外側部分、41…支持層の外縁部、4a…支持層の外縁、4b…支持層の表面、5…シンチレータ層、50…柱状結晶、51…シンチレータ層の外縁部、5a…シンチレータ層の外縁、6…粘着層、61…粘着層の外縁部、6a…粘着層の外縁、6b…粘着層の表面、7…剥離層、71…剥離層の外縁部、7a…剥離層の外縁、7b…粘着層の表面、8…第2防湿層、A…方向、D1…内側部分の幅、D2…外側部分の幅。
【要約】
【課題】シンチレータ層の防湿性を十分に確保することができる放射線変換ユニット、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】放射線検出器10は、センサパネル11と、センサパネル11上に配置されたシンチレータパネル1と、を備える。シンチレータパネル1は、支持層4と、支持層4に対してセンサパネル11側に配置されているシンチレータ層5と、シンチレータ層5に対してセンサパネル11側に配置されており、センサパネル11に接触している粘着層6と、シンチレータ層5の外縁部51及び粘着層6の外縁部61を一体で覆っている第1防湿層3と、を含む。第1防湿層3におけるセンサパネル11側の縁部31は、粘着層6の縁部31に対する内側においてセンサパネル11と粘着層6との間に配置された内側部分311、及び、粘着層6の外縁部61に対する外側においてセンサパネル11上に配置された外側部分の少なくとも一方を含む。
【選択図】
図2