(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20250516BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250516BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20250516BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20250516BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/48 P
H01M10/633
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2024533383
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2022027511
(87)【国際公開番号】W WO2024013867
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 聡
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-109910(JP,A)
【文献】特開2015-056354(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239640(WO,A1)
【文献】特開2021-026842(JP,A)
【文献】特開2004-220799(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194082(WO,A1)
【文献】特開2020-178488(JP,A)
【文献】特開2021-051915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/6563
H01M 10/633
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池セル、前記複数の蓄電池セルを制御するバッテリーマネージメントユニット、少なくとも一つ以上の温度センサをそれぞれ有する複数の蓄電池モジュールと、
前記バッテリーマネージメントユニットを介して前記複数の蓄電池モジュールを制御する制御装置と、
前記蓄電池モジュールごとに設定された目標温度に基づき、前記複数の蓄電池モジュールごとに送風の風量、風向及び吹き出し温度の少なくとも一つ以上を制御する空調機と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の蓄電池モジュールごとの容量及び前記複数の蓄電池モジュールごとに前記温度センサによって測定された温度を用いて、前記複数の蓄電池モジュールごとに寿命を予測する寿命予測部と、
制御開始点において前記寿命予測部によって予測された前記複数の蓄電池モジュールごとの寿命が前記制御開始点以降に平均化された寿命となるように、前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算し、前記空調機に前記目標温度を送信する温度制御部と、を備え、
前記温度制御部は制御温度決定部を有し、
前記制御温度決定部は、前記制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算する、または、前記制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算することを特徴とする蓄電池システム。
【請求項2】
前記バッテリーマネージメントユニットは前記蓄電池モジュールの容量を計測し、
前記寿命予測部は、前記蓄電池モジュールの容量の推移データを用いて、使用時間の平方根に対する前記容量の推移の傾きで表される劣化係数に基づき、前記複数の蓄電池モジュールごとに前記寿命を予測することを特徴とする請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記制御温度決定部は、制御対象となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量と目標寿命の容量の差分値と、前記劣化係数の基準となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量と前記目標寿命の容量の差分値との比率に基づき、前記制御対象となる蓄電池モジュールの劣化速度を算出して前記目標温度を決定することを特徴する請求項2に記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記温度センサは前記蓄電池モジュールを構成する複数の蓄電池セルごとに設けられ、前記蓄電池セルごとに計測された前記複数の蓄電池セルの温度の平均値を、前記蓄電池モジュールの温度とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記温度センサは前記蓄電池モジュール内に一つ設けられ、前記温度センサによって計測された温度を、前記蓄電池モジュールの温度とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記バッテリーマネージメントユニットに接続された変換器をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項7】
前記バッテリーマネージメントユニットは、前記蓄電池セルの電流値を計測することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項8】
複数の蓄電池セル、前記複数の蓄電池セルを制御するバッテリーマネージメントユニット、少なくとも一つ以上の温度センサをそれぞれ有する複数の蓄電池モジュールを含む蓄電池システムの制御方法であって、
前記バッテリーマネージメントユニットを介して前記複数の蓄電池モジュールごとに容量を取得するステップと、
前記複数の蓄電池モジュール内にそれぞれ設置された少なくとも一つ以上の温度センサによって前記蓄電池モジュールの温度を測定するステップと、
前記複数の蓄電池モジュールごとの容量及び温度を用いて、前記蓄電池モジュールごとに寿命を予測するステップと、
前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された前記寿命が平均化された寿命となるように、前記複数の蓄電池モジュールごとにそれぞれ目標温度を計算するステップと、
前記目標温度に基づき、空調機が前記蓄電池モジュールごとに送風する風の風量、風向及び吹き出し温度の少なくとも一つ以上を制御するステップと、を備え、
前記目標温度は、制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに計算される、または、前記目標温度は、制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに計算されることを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項9】
複数の蓄電池セル、前記複数の蓄電池セルを制御するバッテリーマネージメントユニット、少なくとも一つ以上の温度センサをそれぞれ有する複数の蓄電池モジュールを含む蓄電池システムの制御方法であって、
前記バッテリーマネージメントユニットを介して前記複数の蓄電池モジュールごとに容量を取得するステップと、
前記複数の蓄電池モジュール内にそれぞれ設置された少なくとも一つ以上の温度センサによって前記蓄電池モジュールの温度を測定するステップと、
前記複数の蓄電池モジュールごとの容量及び温度を用いて、前記蓄電池モジュールごとに寿命を予測するステップと、
前記バッテリーマネージメントユニットにより計測された前記蓄電池モジュールの容量の推移データを用いて、使用時間の平方根に対する前記容量の推移の傾きで表される劣化係数に基づき、前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された前記寿命が平均化された寿命となるように、前記複数の蓄電池モジュールごとにそれぞれ制御対象となる前記蓄電池モジュールの制御開始点の容量と目標寿命の容量の差分値と、前記劣化係数の基準となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量と前記目標寿命の容量の差分値との比率に基づき、前記制御対象となる蓄電池モジュールの劣化速度を算出し
て目標温度を決定するステップと、
前記目標温度に基づき、空調機が前記蓄電池モジュールごとに送風する風の風量、風向及び吹き出し温度の少なくとも一つ以上を制御するステップと、
を備える蓄電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの需要の高まりにより、太陽光発電、風力発電などの普及が予想される。再生可能エネルギーによる発電電力は、天候などによって変動するため、電力系統安定化のために大型の蓄電池システムとの併設で設置されることが多い。また、近年の再生可能エネルギー施設の大型化により、大容量かつ大型の蓄電池システムが必要とされ、長期的な運用を想定した蓄電池システムが普及している。このような大容量かつ大型の蓄電池システムは運用期間が10~20年と想定されているため、高効率で長期的に安定した運用技術が必要とされる。
【0003】
しかしながら、蓄電池システムの大型化にともない、蓄電池システムを構成する各蓄電池モジュールの位置によって温度にばらつきが発生し、蓄電池モジュールの寿命にばらつきが発生するおそれがある。使用期間中に寿命に達した蓄電池モジュールは、それ自体を交換するか、または、健全な蓄電池モジュールが存在するにもかかわらず、蓄電池システム全体の寿命に到達したと判断し、蓄電池システム全体で交換する必要がある。したがって、蓄電池システム内の温度を制御し、蓄電池システム内の各蓄電池モジュールの寿命を合致させるように制御することで、蓄電池システム全体を長寿命化する技術が重要となる。
【0004】
蓄電池システムを長寿命化する技術として、例えば特許文献1に記載された蓄電システム及び蓄電システムの温度制御方法では、蓄電システム内部をエリア毎に区分し、各エリアの平均温度の温度差に基づき、該当するエリアごとにファンの起動または停止を判断し、蓄電システム内の温度を均一に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された大容量の蓄電システムの温度制御方法では、各エリアの平均温度の温度差に基づき、ファンの制御を実施しているため、温度差の閾値によって温度分布が発生してしまい、発生した温度分布が原因で生じた蓄電池モジュール間の劣化の度合いの差異により、各エリアにそれぞれ設置された蓄電池モジュールの寿命を合致させることは困難である。
【0007】
また、蓄電池システム内部の空調機にあっては、各エリアの平均温度が低温(例えば15℃程度の温度)である場合には、劣化の小さい常温(例えば25℃の温度)で運転しているエリアの蓄電池モジュールを冷却してしまい、劣化の促進、ひいては寿命の低下を招いてしまう。さらに、蓄電池の特徴として、常温での運転の劣化が小さいことを考慮すると、常温であるエリアなどの冷却を実施する必要のないエリアの蓄電池モジュールを冷却してしまい、空調機の効率の低下を招いてしまうといった課題があった。
【0008】
本開示は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、大容量の蓄電池システムにおける高効率で長期的に安定した運用が可能な蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る蓄電池システムは、
複数の蓄電池セル、前記複数の蓄電池セルを制御するバッテリーマネージメントユニット、少なくとも一つ以上の温度センサをそれぞれ有する複数の蓄電池モジュールと、
前記バッテリーマネージメントユニットを介して前記複数の蓄電池モジュールを制御する制御装置と、
前記蓄電池モジュールごとに設定された目標温度に基づき、前記複数の蓄電池モジュールごとに送風の風量、風向及び吹き出し温度の少なくとも一つ以上を制御する空調機と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の蓄電池モジュールごとの容量及び前記複数の蓄電池モジュールごとに前記温度センサによって測定された温度を用いて、前記複数の蓄電池モジュールごとに寿命を予測する寿命予測部と、
制御開始点において前記寿命予測部によって予測された前記複数の蓄電池モジュールごとの寿命が前記制御開始点以降に平均化された寿命となるように、前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算し、前記空調機に前記目標温度を送信する温度制御部と、を備え、
前記温度制御部は制御温度決定部を有し、
前記制御温度決定部は、前記制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算する、または、前記制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに前記目標温度を計算することを特徴とする。
【0010】
本開示に係る蓄電池システムの制御方法は、
複数の蓄電池セル、前記複数の蓄電池セルを制御するバッテリーマネージメントユニット、少なくとも一つ以上の温度センサをそれぞれ有する複数の蓄電池モジュールを含む蓄電池システムの制御方法であって、
前記バッテリーマネージメントユニットを介して前記複数の蓄電池モジュールごとに容量を取得するステップと、
前記複数の蓄電池モジュール内にそれぞれ設置された少なくとも一つ以上の温度センサによって前記蓄電池モジュールの温度を測定するステップと、
前記複数の蓄電池モジュールごとの容量及び温度を用いて、前記蓄電池モジュールごとに寿命を予測するステップと、
前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された前記寿命が平均化された寿命となるように、前記複数の蓄電池モジュールごとにそれぞれ目標温度を計算するステップと、
前記目標温度に基づき、空調機が前記蓄電池モジュールごとに送風する風の風量、風向及び吹き出し温度の少なくとも一つ以上を制御するステップと、を備え、
前記目標温度は、制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも短い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに計算される、または、前記目標温度は、制御開始点において前記複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で前記寿命の平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールに対して、前記制御開始点以降に前記平均値よりも長い寿命を有する前記蓄電池モジュールの寿命が前記寿命の平均値と合致するように前記複数の蓄電池モジュールごとに計算されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法によれば、蓄電池システム内に設置されている複数の蓄電池モジュールの寿命を均一化できるので、蓄電池システム全体を本来の目標寿命まで使用することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る蓄電池システムの概観図である。
【
図2】実施の形態1に係る蓄電池システムの構成を表す図である。
【
図3】実施の形態1に係る蓄電池システムの構成を表すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける蓄電池モジュールの保存劣化及び保存劣化+サイクル劣化の劣化量を示す模式図である。
【
図5】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける各蓄電池モジュールの容量の推移を表した図である。
【
図6】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける蓄電池モジュールの劣化係数と温度の相関データを表す図である。
【
図7】実施の形態1に係る蓄電池システム内において温度分布が発生した場合の各蓄電池モジュールの容量の推移を表した図である。
【
図8】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける使用時間の開始から制御開始点までの温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
【
図9】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける制御開始点間の温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
【
図10】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける制御開始点間の温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
【
図11】実施の形態1に係る蓄電池システムにおける制御開始点間の温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
【
図12】実施の形態1に係る蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法において、制御開始点における各蓄電池モジュールの容量を用いて蓄電池モジュールの温度を制御する方法の一例を表す図である。
【
図13】比較例による蓄電池システムの制御方法を適用した場合の蓄電池システムと蓄電池モジュールの容量の推移を表す図である。
【
図14】比較例による蓄電池システムの制御方法を適用した場合の蓄電池システムと蓄電池モジュールの容量の推移を表す図である。
【
図15】実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【
図16】比較例による制御及び制御適用時の温度推移を表す図である。
【
図17】実施の形態1に係る蓄電池システムの制御及び制御適用時の容量の推移を表す図である。
【
図18】比較例による制御及び制御適用時の容量の推移を表す図である。
【
図19】実施の形態1に係る蓄電池システムの制御及び制御適用時の容量の推移を表す図である。
【
図20】比較例による制御及び制御適用時の容量の推移を表す図である。
【
図21】実施の形態1に係る蓄電池システムの制御及び制御適用時の温度の推移を表す図である。
【
図22】実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法の適用前後の空調機の消費電力の推移を表す図である。
【
図23】実施の形態1に係る蓄電池システムのハードウエアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
<実施の形態1に係る蓄電池システムの構成>
図1は、実施の形態1に係る蓄電池システム100の概観図である。蓄電池システム100は、空調機101と、蓄電池ラック102と、変換器103と、制御装置104と、温度センサ105と、信号線106と、で構成される。蓄電池システム100は、例えば筐体150内に収納される。
【0014】
蓄電池ラック102は、内部に複数の蓄電池モジュール201を格納する。蓄電池ラック102に収納された複数の蓄電池モジュール201の少なくとも一つには、温度センサ105が設置されている。蓄電池ラック102に収納された全ての蓄電池モジュール201にそれぞれ温度センサ105を設置しても良い。
【0015】
温度センサ105は蓄電池モジュール201を構成する複数の蓄電池セル203ごとに設けられても良い。この場合、蓄電池セル203ごとに計測された複数の蓄電池セル203の温度の平均値を、蓄電池モジュール201の温度としても良い。また、温度センサ105を蓄電池モジュール201内に一つ設け、この温度センサ105によって計測された温度を、蓄電池モジュール201の温度としても良い。
【0016】
空調機101は、風向、風量、吹き出し温度を制御可能な空調機であり、信号線106を介して制御装置104によって制御される。すなわち、制御装置104の指令によって、空調機101からの送風の風向、風量、吹き出し温度などが制御される。
【0017】
変換器103は、直流電流を交流電流に変換するAC/DC変換器、または蓄電池ラックの電圧を任意の電圧に変換するDC/DC変換器などが用いられる。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る蓄電池システム100の構成の一部を表す図である。蓄電池ラック102は、蓄電池モジュール201が複数台直並列接続されるように構成される。蓄電池ラック102に格納された複数の蓄電池モジュール201は、それぞれ1台のバッテリーマネージメントユニット(Battery Management Unit:BMU)202、及び蓄電池セル203が複数セル直並列で接続されるように構成される。
【0019】
蓄電池モジュール201内の蓄電池セル203は、例えば充放電可能な二次電池である。蓄電池セル203は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などで構成される。
【0020】
BMU202は、蓄電池セル203の過充電、過放電、過電圧、過電流、温度異常などを防止する目的で、上下限電圧、最大充放電電流、最大セル温度などが設定され、蓄電池セル203を保護する機能、蓄電池セル203の電圧計測、電流計測、及び電力計測、蓄電池モジュール201の温度計測、満充電管理、残容量管理などの蓄電池セル203及び蓄電池モジュール201の状態監視機能を有する。
【0021】
複数の蓄電池モジュール201が設置された蓄電池ラック102は、変換器103と接続される。また、複数台の蓄電池ラック102は、それぞれ変換器103を介して負荷あるいは系統500に接続される。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る蓄電池システム100の構成を表すブロック図である。制御装置104は、寿命予測部301と、温度制御部302と、で構成される。寿命予測部301は、蓄電池モジュール201の容量を取得する容量取得部303と、容量の経時変化に基づき蓄電池モジュール201の寿命を推定する寿命算出部304と、で構成される。
【0023】
制御装置104の一部を構成する温度制御部302は、蓄電池モジュール201の目標寿命を決定する目標寿命決定部305と、劣化係数と温度の相関データを格納するデータ格納部306と、目標寿命及び劣化係数と温度の相関に基づき目標温度(制御温度とも呼ぶ)を決定する制御温度決定部307と、で構成されている。
【0024】
寿命予測部301の一部を構成する容量取得部303について、以下に説明する。BMU202は蓄電池モジュール201の満充電管理及び残容量管理を実施する機能を有しているため、BMU202によって蓄電池モジュール201の容量を取得することが可能である。BMU202は、例えば電流値の積算によって、蓄電池モジュール201の容量を計算することも可能である。BMU202は、下記の式(1)を適用して、SOC0%からSOC100%への充電時の電流値Iを積算する方法によって、容量Qを算出することが可能である。
【0025】
【0026】
式(1)において、SOC(State Of Charge)は蓄電池の充電状態を表すパラメータであり、SOC0%は放電状態、SOC100%は充電状態をそれぞれ表す。
【0027】
BMU202は上述の式(1)による容量Qの計算方法以外にも、以下の式(2)を適用して、ある区間内においてSOCa%からSOCb%まで変化した場合の電流値Iの積算値に基づき、SOC100%の容量Qを算出することが可能である。
【0028】
【0029】
容量取得部303は、各蓄電池モジュール201にそれぞれ設けられたBMU202から出力される各蓄電池モジュール201の容量に関するデータを受信し、全ての蓄電池モジュール201の容量を算出して、寿命算出部304に出力する。
【0030】
寿命算出部304について、以下に説明する。予測時点における容量による蓄電池モジュールの寿命予測方法は、様々な方法が提案されている。以下では、一般的な寿命予測方法について説明する。蓄電池モジュールの容量Qは、使用時間twのルート則による予測が用いられ、以下の式(3)で表される。
【0031】
【0032】
式(3)において、Qは蓄電池モジュールの現在の容量、Qrは蓄電池モジュールの定格容量(初期容量)、kwは劣化係数、twは蓄電池システムの使用時間をそれぞれ示す。
【0033】
蓄電池システム100の寿命到達時の容量をQL、寿命到達時間をtweと想定した場合、寿命到達時間tweは、以下の式(4)の計算式で表される。蓄電池システム100の寿命到達時点の容量QLについて、例えば、初期容量Qrの60%劣化を寿命と設定した場合は、QL=0.6×Qrとなる。
【0034】
【0035】
式(4)中の劣化係数kwは、蓄電池モジュール201に印加する電流、SOC範囲(充電電圧、放電電圧の設定)、使用時の温度などで決定される。劣化係数kwを予め取得する方法、あるいは運用中に劣化係数kwを取得し、寿命を予測する方法がある。
【0036】
図4は、蓄電池モジュール201における保存劣化及び保存劣化+サイクル劣化の劣化量を示す模式図である。
図4では、特にリチウムイオン電池の温度と劣化量の特徴を示している。点線401に示す保存劣化のみでは、蓄電池内部の電解液の分解反応による副反応物の生成が低温になるほど小さく、高温になるほど大きいため、高温になるほど蓄電池モジュール201の劣化量が大きいことが特徴である。
【0037】
一方、点線402に示す充放電サイクルを実施した際には、電解液の分解反応による副反応物の生成とは異なるリチウム金属析出による劣化が発生してしまい、充放電サイクルを考慮した場合には、低温領域においても蓄電池モジュール201の劣化が進行してしまうという特徴を有している。蓄電池モジュール201の劣化量を小さくするためには、電解液の分解反応が進行しない温度範囲、及び、リチウム金属析出が発生しない劣化量の小さな温度範囲、例えば
図4中の温度Tnから温度Tn+1の範囲内で蓄電池モジュール201を温度管理し、使用することが望ましい。
【0038】
図5は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における蓄電池モジュール201において、蓄電池モジュール201の使用時間の√を横軸に取った場合の各蓄電池モジュール201a、201b、201cの容量の推移を表した図である。
図5中の容量推移線501は蓄電池モジュール201a、容量推移線502は蓄電池モジュール201b、容量推移線503は蓄電池モジュール201cをそれぞれ表している。容量の推移を蓄電池モジュール201の使用時間の√でプロットした場合には、上述の式(3)に示すように、蓄電池モジュール201は劣化係数k
wを傾きとして、直線的に劣化する。なお、以下の説明では、時間の√についても、便宜上、時間と呼ぶ場合がある。
【0039】
図5中の劣化係数K
w1は蓄電池モジュール201aの容量推移の傾きを表し、劣化係数K
w2は蓄電池モジュール201bの容量推移の傾きを表し、劣化係数K
w3は蓄電池モジュール201cの容量推移の傾きを表す。すなわち、複数の蓄電池モジュール201間において、温度及び使用時の条件によって傾きが異なることが特徴である。
【0040】
蓄電池モジュール201aは温度T1の条件で使用され、劣化係数Kw1の傾きで劣化が進行し、使用開始時の初期容量Qrが時間の経過とともに減少する。蓄電池モジュール201aの使用時間の√がxになった時、蓄電池モジュールの容量QLで定義された蓄電池モジュール201aの寿命に到達すると予測される。
【0041】
蓄電池モジュール201bは温度T2の条件で使用され、劣化係数Kw2の傾きで劣化が進行し、使用開始時の初期容量Qrが時間の経過とともに減少する。蓄電池モジュール201bの使用時間の√がyになった時、蓄電池モジュールの容量QLで定義された蓄電池モジュール201bの寿命に到達すると予測される。
【0042】
蓄電池モジュール201cは温度T3の条件で使用され、劣化係数Kw3の傾きで劣化が進行し、使用開始時の初期容量Qrが時間の経過とともに減少する。蓄電池モジュール201cの使用時間の√がzになった時、蓄電池モジュールの容量QLで定義された蓄電池モジュール201cの寿命に到達すると予測される。
【0043】
各温度T1、T2、T3は、T1<T3<T2の関係があり、
図5から中間領域である温度T3での蓄電池モジュール201cの使用が最も劣化が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0044】
目標寿命決定部305について、
図5を用いて説明する。目標寿命に関して、蓄電池システム100内に設置されている、例えば各蓄電池モジュール201a、201b、201cの中で最も平均的な寿命(以下、平均寿命L
aveと呼ぶ)を持つ蓄電池モジュール201aの寿命予測結果(
図5中の時間xで示される)を目標寿命Lとして設定する。平均寿命L
aveは蓄電池システム100自体の目標寿命Lと一致しても問題はないが、蓄電池システム100自体の目標寿命L以上であることが望ましい。平均寿命L
aveを目標寿命Lとして設定する場合は、各蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの予測寿命である時間x、y、zに基づき、温度制御によって目標寿命Lを実現できるような劣化係数に制御することが望ましい。
【0045】
図6は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における蓄電池モジュール201の劣化係数k
wnと温度の相関データを表す図である。劣化係数k
wnは、蓄電池モジュール201に印加する電流、SOCの範囲、すなわち充電電圧及び放電電圧の設定、蓄電池モジュール201の使用時の温度で決定される。劣化係数k
wnについては、予め取得する方法、あるいは運用中に取得した容量、温度などのデータに基づき推定する方法がある。さらに、予め各温度において寿命試験を実施し劣化係数k
wnを取得する方法、アレニウスの式により各温度域で予測する方法などもある。実施の形態1に係る蓄電池システム100では劣化係数k
wnを取得するために、上述のいずれの方法を用いても良い。
【0046】
劣化係数k
wを取得する方法として、
図6に示すように各温度に対する劣化係数k
wを関連付け、蓄電池モジュール201の目標温度を設定して、劣化係数k
wnを算出する方法が挙げられる。なお、アレニウス式による予測方法では、実測の温度測定点として3点以上のデータがあると、劣化係数k
wnの精度向上につながる。劣化係数k
wnを算出する際に必要となるアレニウス式を以下の式(5)に示す。
【0047】
【0048】
式(5)において、Aは定数、Eaは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tnは絶対温度である。ある温度の条件下で実測した劣化係数kwnの測定データに基づき、他の温度の劣化係数kwnを予測することも可能である。以下の説明では、劣化係数kwnと温度の相関データを用いている。
【0049】
次に、温度制御部302の一部を構成する制御温度決定部307について説明する。制御温度決定部307は、劣化係数kwnと蓄電池モジュール201の温度との相関データに基づき、目標寿命Lに到達可能な劣化係数kwnとなるように蓄電池モジュール201ごとに温度制御するために、各蓄電池モジュール201の目標温度をそれぞれ個別に決定する。
【0050】
最も長い寿命(以下、最長寿命Lmaxと呼ぶ)を持つ蓄電池モジュール201cと最も短い寿命(以下、最短寿命Lminと呼ぶ)を持つ蓄電池モジュール201bとを含め、空調機101によって各蓄電池モジュール201a、201b、201cの温度をそれぞれ制御することにより、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの寿命を、平均寿命Laveを持つ蓄電池モジュールの寿命に合致させる。なお、かかる温度制御の結果、蓄電池システム100内の各蓄電池モジュール201a、201b、201cの寿命の順位が変更された場合には、制御対象となる蓄電池モジュールは適宜、変更される。
【0051】
なお、複数の蓄電池モジュール201が3個より多い場合は、制御温度決定部307は、制御開始点において複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で平均寿命Laveよりも長い寿命を有する蓄電池モジュールに対して、制御開始点以降に平均寿命Laveよりも長い寿命を有する蓄電池モジュールの寿命が平均寿命Laveのような目標寿命と合致するように複数の蓄電池モジュールごとに目標温度を計算すれば良い。一方、制御開始点において複数の蓄電池モジュールごとに予測された寿命の中で平均寿命Laveよりも短い寿命を有する蓄電池モジュールに対して、制御開始点以降に平均寿命Laveよりも短い寿命を有する蓄電池モジュールの寿命が平均寿命Laveのような目標寿命と合致するように複数の蓄電池モジュールごとに目標温度を計算すれば良い。
【0052】
<実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法>
実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法、つまり制御温度決定方法及び各蓄電池モジュールの寿命を合致させる方法について、以下に説明する。
図7は、実施の形態1に係る蓄電池システム100内において温度分布が発生した場合の各蓄電池モジュール201a、201b、201cにおける使用時間に対する容量の推移を表した図である。
図7中に、使用時間ゼロから制御開始点t1までの間、蓄電池モジュール201aを温度T1、蓄電池モジュール201bを温度T2、蓄電池モジュール201cを温度T3で運用した場合における、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの使用時間の√に対する容量の推移を示す。
【0053】
図7の使用時間ゼロから制御開始点t1までの間において、容量推移線701は蓄電池モジュール201a、容量推移線702は蓄電池モジュール201b、容量推移線703は蓄電池モジュール201cをそれぞれ表している。
【0054】
使用時間ゼロから制御開始点t1までは、温度制御なしの状態で稼働しているため、蓄電池システム100内で温度分布が発生する。各蓄電池モジュール201a、201b、201c運用時の温度をそれぞれ、T1(201a)、T2(201b)、T3(201c)と想定する。温度分布の影響により、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの劣化係数は、それぞれKw1、Kw2、Kw3と互いに異なる値となる。つまり、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの間で、劣化速度がそれぞれ異なっている状況を表している。温度の大小関係はT1<T3<T2と想定する。
【0055】
制御開始点t1から、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を実施する。蓄電池モジュール201bは、使用時間ゼロから制御開始点t1までは容量推移線702に示されるように使用温度がT2と高いため劣化速度が大きい、つまり劣化係数Kw2が大きい。したがって、制御開始点t1以降は蓄電池モジュール201bの劣化を抑制、つまり劣化係数を小さくするために、空調機101による温度制御によって蓄電池モジュール201bの温度を下降させる。
【0056】
蓄電池モジュール201bに対する温度制御の結果、制御開始点t1から制御開始点t2の間において容量推移線702から容量推移線704へと劣化速度が遅くなる。蓄電池モジュール201bに対するさらなる温度制御によって、制御開始点t2から制御開始点t3の間において容量推移線706、制御開始点t3以降は容量推移線708へと一層劣化速度が遅くなり、蓄電池モジュール201bが寿命を定義する容量QLとなる時間xに到達する。
【0057】
蓄電池モジュール201cに対する温度制御の結果、制御開始点t1から制御開始点t2の間において容量推移線703から容量推移線705へと劣化速度が増大する。蓄電池モジュール201cに対するさらなる温度制御によって、制御開始点t2から制御開始点t3の間において容量推移線707、制御開始点t3以降は容量推移線709へと一層劣化速度が増大して、蓄電池モジュール201cが寿命を定義する容量QLとなる時間xに到達する。
【0058】
蓄電池モジュール201aは、使用時間ゼロから制御開始点t1までは使用温度がT1であって、容量推移線701に示されるように劣化係数Kw1である。劣化係数Kw1に基づき蓄電池モジュール201aの寿命を予測すると、蓄電池モジュール201cが寿命を定義する容量QLとなる時間xに到達するため、蓄電池モジュール201aに対しては特に温度制御を実施しないか、あるいは空調機101を用いて使用温度をT1に維持する温度制御を実施する。
【0059】
図7に示す各制御開始点t1,t2,t3のような任意の制御点において、各蓄電池モジュールの寿命をそれぞれ予測し、蓄電池モジュールの温度を上昇させるのか、あるいは下降させるのかについて、蓄電池モジュールごとに温度制御の方向を決定することにより、各蓄電池モジュール間の寿命の差を低減することが可能である。
【0060】
図8から
図11は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における各制御開始点t1、t2、t3までの温度分布と各蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
【0061】
図8は、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの使用時間の開始から制御開始点t1までの温度分布と各蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
図8に示す劣化曲線より、使用時間の開始から制御開始点t1の間では、蓄電池モジュール201bの温度T2が最も高く、蓄電池モジュール201cの温度T3は中間の温度領域、例えば20~30℃の範囲内にあると予想される。また、蓄電池モジュール201aの温度T1は、最も低温であると予想される。つまり、各温度は、T1<T3<T2の関係となる。
【0062】
制御開始点t1までの各蓄電池モジュール201a、201b、201cの間の劣化量の大小関係は、
図8から蓄電池モジュール201b>蓄電池モジュール201a>蓄電池モジュール201cとなる。各蓄電池モジュール間の寿命を合致させるために、蓄電池モジュール201cの温度を上昇もしくは下降させ、蓄電池モジュール201bの温度を下降させる温度制御を実施する。
【0063】
図9は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における制御開始点t1から制御開始点t2の間の温度分布と各蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
図9に示す劣化曲線より、制御開始点t1から制御開始点t2の間では、蓄電池モジュール201bの温度T2’が最も高く、蓄電池モジュール201cの温度T3’は中間の温度領域からわずかに高めの温度であり、蓄電池モジュール201aの温度T1は、最も低温であると予想される。ただし、温度T2’と温度T3’の温度差は、温度T1と温度T3’の温度差よりも小さくなっている。
【0064】
蓄電池モジュール201bが使用時間の開始から制御開始点t1までの温度T2から、制御開始点t1以降に温度T2’へと下降したのは、制御開始点t1において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201bへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを制御することにより、蓄電池モジュール201bが冷却され、制御開始前の温度T2から制御開始後の温度T2’へと下降したからである。
【0065】
蓄電池モジュール201cが使用時間の開始から制御開始点t1までの温度T3から、制御開始点t1以降に温度T3’へと上昇したのは、制御開始点t1において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201cへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを制御することにより、蓄電池モジュール201cの温度が上昇したからである。
【0066】
図10は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における制御開始点t2から制御開始点t3の間の温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
図10に示す劣化曲線より、制御開始点t2から制御開始点t3の間では、蓄電池モジュール201bの温度T2’’が最も高く、蓄電池モジュール201cの温度T3’’は、中間の温度領域からわずかに高めの温度であると予想される。また、蓄電池モジュール201aの温度T1は、最も低温であると予想される。
【0067】
蓄電池モジュール201bが制御開始点t1から制御開始点t2までの温度T2’から、制御開始点t2以降に温度T2’’へとさらに下降したのは、制御開始点t2において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201bへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを調整することにより、蓄電池モジュール201bがさらに冷却されたためである。
【0068】
蓄電池モジュール201cが制御開始点t1から制御開始点t2までの温度T3’から、制御開始点t2以降に温度T3’’へとさらに温度変化したのは、制御開始点t2において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201cへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを調整することにより、蓄電池モジュール201cの温度がさらに上昇したからである。
【0069】
図11は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における制御開始点t3から寿命到達時間である時間xの間の温度分布と蓄電池モジュールの劣化量との関係を示した図である。
図11に示す劣化曲線より、制御開始点t3から寿命到達時間である時間xの間では、蓄電池モジュール201bの温度T2’’’が最も高く、蓄電池モジュール201cの温度T3’’’は中間の温度領域からわずかに高めの温度であると予想される。
【0070】
蓄電池モジュール201bが制御開始点t2から制御開始点t3までの温度T2’’から、制御開始点t3以降に温度T2’’’へとさらに下降したのは、制御開始点t3において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201bへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを調整することにより、蓄電池モジュール201bがさらに冷却されたためである。蓄電池モジュール201bに対する温度制御の結果、蓄電池モジュール201bの温度T2’’’と蓄電池モジュール201cの温度T3’’’との温度差はさらに小さくなる。
【0071】
蓄電池モジュール201cが制御開始点t2から制御開始点t3までの温度T3’’から、制御開始点t3以降に温度T3’’’へと温度変化したのは、制御開始点t3において、温度制御部302による指令に基づき、空調機101が蓄電池モジュール201cへと送風する風の風向、風量、吹き出し温度などを調整することにより、蓄電池モジュール201cの温度T3’’’と蓄電池モジュール201bの温度T2’’’との温度差を一層小さくするためである。
【0072】
上述のように、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法では、各制御開始点t1,t2,t3において、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの寿命の予測をそれぞれ実施し、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの目標温度をそれぞれ個別に決定する。
【0073】
なお、上述の説明では、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法として、蓄電池モジュール201b及び201cの両方の温度を制御するようにした。しかしながら、蓄電池モジュール201cの温度は上昇、もしくは下降の両方向への制御が可能であるので、蓄電池モジュール201bの温度を制御する一方、蓄電池モジュール201cの温度は制御せず、蓄電池モジュール201bの制御にともなう温度制御であっても良い。蓄電池モジュール201bの温度制御のみであれば、空調機101の負荷が小さくなるため、さらなる空調機101の効率の向上が見込める。
【0074】
図12は、実施の形態1に係る蓄電池システム100及び蓄電池システムの制御方法において、制御開始点における各蓄電池モジュールの容量を用いて各蓄電池モジュールの温度を個別に制御する方法の一例を表す図である。
【0075】
制御開始点tにおいて、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの容量がそれぞれ、容量QLa、QLb、QLc、と定まった場合に、劣化係数kwmは以下の式(6)によって算出される。
【0076】
【0077】
式(6)において、劣化係数kwmは算出したい蓄電池モジュールの劣化係数、QLnは制御対象の蓄電池モジュールの制御開始点の容量、QLbは劣化係数kw1の基準となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量、Qeは寿命時の容量、劣化係数kw1は基準となる蓄電池モジュールの劣化係数である。すなわち、制御温度決定部307は、式(6)を用いて、制御対象となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量QLnと目標寿命の容量Qeの差分値と、劣化係数kw1の基準となる蓄電池モジュールの制御開始点の容量QLbと目標寿命の容量QLnの差分値との比率に基づき、制御対象となる蓄電池モジュールの劣化係数kwmを算出して目標温度を決定する。
【0078】
図6に示される、温度制御部302のデータ格納部306に格納された劣化係数k
wnと蓄電池モジュール201の温度との相関データに基づいて、温度制御部302の目標寿命決定部305は、各蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの劣化係数k
w1、k
w2、k
w3を参照して目標寿命を決定する。
【0079】
温度制御部302の制御温度決定部307は、制御対象となる蓄電池モジュールごとに目標温度を設定する。制御温度決定部307は設定された目標温度を空調機101に出力し、空調機101は目標温度を制御目標値として採用する。
【0080】
図13及び
図14は、蓄電池モジュール201a、201b、201cの温度制御を模式的に表す図である。実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法の制御開始前に、各蓄電池モジュール201a、201b、201cは、それぞれ温度T1、T2、T3で動作していると想定している。蓄電池システム100の制御装置104は、蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの劣化を予測し、蓄電池モジュールごとに目標温度を決定する。
【0081】
図13に示す一例では、制御開始前は各温度間で、T2>T3>T1という関係があるため、制御装置104は蓄電池モジュール201b及び蓄電池モジュール201cの温度制御を実施する必要があると判断する。寿命算出部304による蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの寿命の予測結果に基づき、
図14に示すように、制御装置104は蓄電池モジュール201bに対しては制御開始点tより以前の温度T2よりも低温側の温度T2’に温度制御する必要があると判断する。
【0082】
一方、制御装置104は蓄電池モジュール201cに対しては制御開始点前の温度T3よりも高温側または低温側に制御する必要があると判断する。なお、
図14に示す一例では、制御装置104は、蓄電池モジュール201cに対しては温度T3よりも高温側に温度制御する必要があると判断している。
【0083】
以上をまとめると、制御開始点tにおいて、温度制御部302による指令に基づき、空調機101の風向、風量、吹き出し温度を制御することにより、蓄電池モジュール201bは低温側に、蓄電池モジュール201cは高温側にそれぞれ温度制御される。温度制御の結果、蓄電池モジュール201aの温度T1と蓄電池モジュール201bの制御開始後の温度T2’との温度差は減少する方向に温度制御される一方、蓄電池モジュール201aの温度T1と蓄電池モジュール201cの制御開始後の温度T3’との温度差は増大する方向に温度制御される。
【0084】
上述の説明では、空調機101が各蓄電池モジュール201を個別に温度制御する態様を一例として示したが、蓄電池エリアごとに分けて温度制御を実施しても良い。蓄電池エリアごとに温度制御する際は、蓄電池エリア内に設置している各蓄電池モジュールの温度の平均値である平均温度、あるいは、蓄電池エリアを代表する蓄電池モジュールの温度を基準として温度制御する方法でも良い。
【0085】
図12に示すように、制御開始点tより以前は、蓄電池モジュール201aは劣化係数k
w1の傾きを持つ容量推移線901に沿って、蓄電池モジュール201bは劣化係数k
w2の傾きを持つ容量推移線902に沿って、蓄電池モジュール201cは劣化係数k
w3の傾きを持つ容量推移線903に沿ってそれぞれ容量が推移したが、制御開始点t以降は、上述の温度制御が実施された結果、蓄電池モジュール201aは劣化係数k
w1を維持した状態で引き続き容量推移線901に沿って、蓄電池モジュール201bは劣化係数k’
w2の傾きを持つ容量推移線904に沿って、蓄電池モジュール201cは劣化係数k’
w3の傾きを持つ容量推移線905に沿ってそれぞれ容量が推移する。なお、
図12中で、制御開始点容量906は制御開始点tにおける蓄電池モジュール201aの容量、制御開始点容量907は制御開始点tにおける蓄電池モジュール201bの容量、制御開始点容量908は制御開始点tにおける蓄電池モジュール201cの容量をそれぞれ表している。
【0086】
制御開始点t以降に、温度制御によって蓄電池モジュール201b及び蓄電池モジュール201cの劣化速度が調整された結果、全ての蓄電池モジュール201a、201b、201cが、寿命を定義する容量QLとなる時間xに到達する。つまり、蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの寿命は時間xに合致することになる。
【0087】
上述の説明において、蓄電池モジュール201cは、上昇させるように温度制御を実施している。劣化を促進させるように低温側へ温度制御値(目標温度)を決定しても良い。
【0088】
上述の説明では、蓄電池モジュール201bの温度T2及び蓄電池モジュール201cの温度T3の両温度を制御する一例を示した。しかしながら、蓄電池モジュール201cの温度T3は上昇、あるいは下降の両方向への制御が可能であるので、蓄電池モジュール201bの温度のみを制御し、蓄電池モジュール201cの温度は制御せず、蓄電池モジュール201bの制御に伴う温度制御であっても良い。蓄電池モジュール201bの温度T2の温度制御のみであれば、空調機101の負荷が小さくなるので、さらなる空調機効率の向上が見込めるからである。
【0089】
蓄電池モジュール201ごとの目標温度が決定した場合は、制御装置104は空調機101に指令を送信し、蓄電池モジュール201ごとに送風の風向、風量、吹き出し温度の制御を実施する。空調機101の動作として、制御前の風向をθ0、風量をW0、吹き出し温度T0とし、制御後の風向をθ0+Δθ、風量をW0+ΔW、吹き出し温度をT0+ΔTとそれぞれ制御した場合に、蓄電池モジュール201の目標温度が個別に設定された制御目標値側にそれぞれ移行しているようであれば良い。
【0090】
上述の説明では、空調機101による温度制御として、送風の風向、風量、吹き出し温度のすべてのパラメータを変化させて実施している。しかしながら、蓄電池モジュール201の目標温度が個別に設定された制御目標側へ移行するのであれば、送風の風向、風量、吹き出し温度の少なくとも一つ以上のパラメータの実施でも良い。例えば、空調機101の送風の風量のみによって、各蓄電池モジュール201の温度制御を実施しても良い。
【0091】
<実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法>
図15に示すフローチャートを用いて、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法における制御フローについて説明する。
【0092】
ステップS101において、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法による制御を開始する。制御装置104内の容量取得部303は、蓄電池システム100内の蓄電池モジュール201ごとに設けられたBMU202から出力される各蓄電池モジュール201の容量を取得する。
【0093】
ステップS102において、制御装置104内の寿命算出部304は、取得した蓄電池モジュール201ごとの容量を時系列に解析し、蓄電池モジュール201ごとに寿命の算出を実施する。
【0094】
ステップS103において、制御装置104内の目標寿命決定部305は、各蓄電池モジュール201の寿命を平均した平均寿命Laveに最も近い寿命を持つ蓄電池モジュールに、他の蓄電池モジュール201の寿命を合致させるための目標寿命を決定する。
【0095】
ステップS104において、制御装置104内のデータ格納部306に格納された劣化係数kwと温度の相関データを参照する。
【0096】
ステップS105において、制御装置104内の制御温度決定部307は、蓄電池モジュール201ごとの目標温度をそれぞれ決定する。
【0097】
ステップS106において、制御装置104内の制御温度決定部307は、目標温度に基づく空調機制御の指令を、信号線106を介して空調機101に送信する。なお、空調機制御の指令は、信号線106ではなく無線通信によって送信されても良い。
【0098】
ステップS107において、制御装置104は、各蓄電池モジュール201の温度が目標温度へ移行しているか否かについて、蓄電池モジュール201ごとに個別に判定する。各蓄電池モジュール201において目標温度への移行が完了している場合、つまりステップS107においてYESの場合は、制御を終了する。一方、目標温度への移行が完了していない場合、つまりステップS107においてNOの場合は、ステップS106に戻り、空調機制御を継続する。
以上が、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法の各動作である。
【0099】
図16及び
図17は、比較例の蓄電池システムと各蓄電池モジュールの容量推移及び実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用した場合の蓄電池システムと各蓄電池モジュールの容量推移をそれぞれ表す図である。なお、比較例として、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用しない場合の容量推移を図示している。
【0100】
図16は、比較例における各蓄電池モジュールの容量推移を表した図である。実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用しない場合は、蓄電池システム内の温度分布の影響により蓄電池モジュール間で劣化速度が異なるため、蓄電池システム全体の寿命は寿命の短い蓄電池モジュールに制限されてしまう結果、蓄電池システム全体の寿命が短くなってしまう。以下、
図16を用いて、具体的に説明する。
【0101】
蓄電池モジュール201a、201b、201cの時間に対する容量の推移は、
図16の容量推移線1401、1402、1403でそれぞれ示される。蓄電池モジュール201aは容量推移線1401に沿って時間とともに劣化し、時間zにおいて寿命に到達する。蓄電池モジュール201bは容量推移線1402に沿って時間とともに劣化し、時間xにおいて寿命に到達する。蓄電池モジュール201cは容量推移線1403に沿って時間とともに劣化し、時間yにおいて寿命に到達する。
【0102】
つまり、蓄電池モジュール201cの劣化係数kwが最も大きく、蓄電池モジュール201aの劣化係数kwが最も小さい。したがって、各蓄電池モジュールが寿命に到達する時間x、y、zの大小関係は、z>x>yとなる。すなわち、蓄電池モジュール201cが最も速く寿命に到達する。複数の蓄電池モジュール201によって構成される蓄電池システム全体の寿命は、最も速く寿命に到達する蓄電池モジュールによって決定される。つまり、上述の一例では、蓄電池モジュール201cの時間yが比較例による蓄電池システム全体の寿命となる。
【0103】
図17は、実施の形態1に係る蓄電池システム100における各蓄電池モジュール201の容量推移を表した図である。実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用した場合は、制御開始点より以前は蓄電池システム内の温度分布の影響により蓄電池モジュール201間で劣化速度が異なるものの、制御開始点以降は、各蓄電池モジュール201a、201b、201cの寿命は時間xに合致するため、蓄電池システム100全体の寿命が増大する。以下、
図17を用いて、具体的に説明する。
【0104】
蓄電池モジュール201a、201b、201cの時間に対する容量の推移は、
図17の容量推移線1407、1406、1405でそれぞれ示される。蓄電池モジュール201aは容量推移線1407に沿って、制御開始点より以前は時間とともに劣化するが劣化の度合いは相対的に小さい。蓄電池モジュール201bは容量推移線1406に沿って制御開始点以降は時間とともに一定の劣化係数k
wの傾きで劣化し、時間xにおいて寿命に到達する。蓄電池モジュール201cは容量推移線1405に沿って、制御開始点より以前は時間とともに劣化するが、劣化の度合いは大きい。
【0105】
つまり、制御開始点より以前は、蓄電池モジュール201cの劣化係数kwが最も大きく、蓄電池モジュール201aの劣化係数kwが最も小さい。したがって、蓄電池モジュール201cが最も速く寿命に到達すると予測される。制御開始点以降は、制御装置104は、空調機101による温度制御により、蓄電池モジュール201aの劣化係数kwを大きくするとともに、蓄電池モジュール201cの劣化係数kwを小さくするように制御する。この結果、蓄電池モジュール201a、201b、201cのそれぞれの寿命は、時間xに合致する。
【0106】
つまり、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用することにより、各蓄電池モジュールの劣化速度を揃えることが可能となり、この結果、各蓄電池モジュールの寿命を均一化させることができる。各蓄電池モジュールの寿命の均一化は、蓄電池システム自体の長寿命化に繋がる。なお、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法における「寿命の均一化」とは、例えば、蓄電池システム100を構成する蓄電池モジュール201の平均寿命Laveに対して、各蓄電池モジュールの寿命を平均寿命Laveから±5%の範囲内に制御することを意味する。
【0107】
図18及び
図19は、比較例の蓄電池システム全体の容量推移及び実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用した場合の蓄電池システム全体の容量推移をそれぞれ表す図である。なお、比較例として、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用しない場合の容量推移を図示している。
【0108】
図18に示すように、比較例の蓄電池システム全体の寿命は、
図16に示す蓄電池システムを構成する蓄電池モジュール201cの寿命である時間yによって決定される。すなわち、比較例による蓄電池システムの中で最も寿命の短い蓄電池モジュール201cの寿命である時間yによって、比較例の蓄電池システム全体の寿命が決定される。
【0109】
一方、
図19の容量推移線1408によって示される実施の形態1に係る蓄電池システム100の寿命は、制御開始後に決定される全ての蓄電池モジュール201の寿命である時間xによって決定される。すなわち、
図19の容量推移線1404によって示される比較例の蓄電池システム全体の寿命である時間yよりも、より長い寿命である時間xに到達することが可能となる。
【0110】
図20及び
図21は、比較例の温度制御による温度推移及び実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法を適用した場合の温度制御による温度推移をそれぞれ表す図である。
図20に示される比較例による蓄電池システムの制御では、蓄電池システム内の温度を均一にするため、目標温度(
図20ではより低温側の蓄電池モジュールの温度)を制御目標として温度の高い蓄電池モジュールを冷却していた。
【0111】
一方、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法では、
図21に示すように、各蓄電池モジュール201間の寿命を合致させることを制御目標としているため、各蓄電池モジュール201の温度の均一化を実施する必要は無い。したがって、蓄電池モジュール201の冷却においては、比較例による制御よりも高い温度を局所的な目標温度として設定することが可能となる。
【0112】
また、実施の形態1に係る蓄電池システムの制御方法では、寿命の予測結果によっては加熱する蓄電池モジュール201も存在する一方、空調機101の送風の風向、風量、吹き出し温度の制御によっては、自動的に加熱される蓄電池モジュール201も存在するので、かかる蓄電池モジュール201に対しては温度制御の実施が不要となる。この結果、
図22に示すように、空調機101の消費電力が抑制できるため、蓄電池システム100全体の高効率化に寄与するという効果を奏する。
【0113】
<実施の形態1の効果>
実施の形態1に係る蓄電池システム及び蓄電池システムの制御方法によれば、蓄電池システム内に設置されている複数の蓄電池モジュールの寿命を均一化できるので、蓄電池システム全体を本来の目標寿命まで使用することが可能となるという効果を奏する。また、各蓄電池モジュールを平均温度となるように一律に温度制御する必要がなくなるため、各蓄電池モジュールを過剰に冷却することを防止することが可能となり、この結果、空調機の効率が向上するという効果を奏する。
【0114】
なお、上述の実施の形態1による蓄電池システム100の構成では、蓄電池システム100は機能ブロックとして説明されているが、蓄電池システム100を格納するハードウエアとしての構成の一例を
図23に示す。ハードウエア800は、プロセッサ801と記憶装置802から構成される。記憶装置802は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。
【0115】
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備しても良い。プロセッサ801は、記憶装置802から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ801にプログラムが入力される。また、プロセッサ801は、演算結果等のデータを記憶装置802の揮発性記憶装置に出力しても良いし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存しても良い。
【0116】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0117】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0118】
100 蓄電池システム、101 空調機、102 蓄電池ラック、103 変換器、104 制御装置、105 温度センサ、106 信号線、150 筐体、201、201a、201b、201c 蓄電池モジュール、202 BMU、203 蓄電池セル、301 寿命予測部、302 温度制御部、303 容量取得部、304 寿命算出部、305 目標寿命決定部、306 データ格納部、307 制御温度決定部、401、402 点線、501、502、503、701、702、703、704,705、706、707、708、709、901、902,903、904、905、1401、1402、1403、1404、1405、1406、1407、1408 容量推移線、800 ハードウエア、801 プロセッサ、802 記憶装置、906、907、908 制御開始点容量