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特許7682405情報収集システムおよび移動支援システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】情報収集システムおよび移動支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250516BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024561043
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2022044099
(87)【国際公開番号】W WO2024116306
(87)【国際公開日】2024-06-06
【審査請求日】2025-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】下谷 光生
(72)【発明者】
【氏名】福田 圭作
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056878(JP,A)
【文献】特開2014-191774(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要注意状況指摘装置から、前記要注意状況指摘装置のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および前記指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する情報収集部と、
収集された前記要注意状況指摘情報を基にして前記要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する要注意状況モデル作成部と、
前記要注意状況モデルを記憶する要注意状況モデル記憶部と、
前記要注意状況モデルを移動支援装置に配信する情報配信部と、
前記移動支援装置から前記要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する評価結果受信部と、
有効と評価された前記要注意状況モデルの基となった前記要注意状況指摘情報の前記指摘者に報酬を付与する報酬付与部と、
を備える情報収集システムであって、
前記情報配信部は、配信契約を結んだクライアントの前記移動支援装置に対して前記要注意状況モデルを配信し、
前記情報収集システムは、前記要注意状況モデルの配信料金を前記クライアントに課金する課金部をさらに備え、
前記要注意状況モデルは、地理的種別、移動体種別、用途種別のうちの1つ以上によって分類されており、
前記情報配信部は、前記移動支援装置から指定された配信単位に応じた前記要注意状況モデルを、前記移動支援装置へ配信し、
前記課金部は、配信した前記要注意状況モデルの前記配信単位に応じた配信料金を前記クライアントに課金し、前記移動支援装置のレンタル契約を結んだ前記クライアントに対しては、前記要注意状況モデルの配信料金に加え、前記移動支援装置のレンタル料金を課金し、
前記配信単位は、前記要注意状況モデルの配信期間および配信対象とする前記要注意状況モデルの種別に基づいて設定される、
情報収集システム
【請求項2】
要注意状況指摘装置から、前記要注意状況指摘装置のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および前記指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する情報収集部と、
収集された前記要注意状況指摘情報を基にして前記要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する要注意状況モデル作成部と、
前記要注意状況モデルを記憶する要注意状況モデル記憶部と、
前記要注意状況モデルを移動支援装置に配信する情報配信部と、
前記移動支援装置から前記要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する評価結果受信部と、
有効と評価された前記要注意状況モデルの基となった前記要注意状況指摘情報の前記指摘者に報酬を付与する報酬付与部と、
を備えた情報収集システムであって、
前記情報配信部は、配信契約を結んだクライアントの前記移動支援装置に対して前記要注意状況モデルを配信し、
前記情報収集システムは、前記要注意状況モデルの配信料金を前記クライアントに課金する課金部をさらに備え、
前記クライアントが前記要注意状況指摘装置を搭載した移動体を所有する事業者であり、前記要注意状況指摘装置の前記ユーザが前記事業者の従業員である場合、前記課金部は、前記要注意状況モデルの配信料金の額から前記従業員が指摘した前記要注意状況に対する報酬の額を減額して前記クライアントに課金する、
情報収集システム
【請求項3】
前記要注意状況指摘情報に含まれる前記要注意状況の情報は、前記要注意状況における要注意対象の位置および属性、ならびに前記要注意対象に対する要注意事項の属性を含む
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項4】
前記要注意対象の位置は、絶対位置または前記要注意状況指摘装置を搭載した移動体に対する相対位置の片方または両方である、
請求項3に記載の情報収集システム。
【請求項5】
前記情報収集部は、前記要注意状況指摘装置から前記要注意状況の情報として、前記要注意状況が指摘されたときに記録された位置データ、映像データ、音声データ、周辺センサの出力データのいずれか1つ以上の生データを取得し、
前記要注意状況モデル作成部は、前記生データを分析して前記要注意状況の内容を判断することによって前記要注意状況モデルを作成する、
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項6】
前記生データの分析に用いられた分析規則または分析エンジンを、前記要注意状況指摘装置に配信する、
請求項5に記載の情報収集システム。
【請求項7】
前記要注意状況モデル記憶部は、前記有効性評価結果の受信履歴に基づいて、前記要注意状況モデル記憶部に記憶された前記要注意状況モデルを整理する、
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項8】
前記報酬付与部は、前記有効性評価結果の受信履歴に基づいて、前記指摘者に付与する報酬の額を設定する、
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項9】
前記報酬付与部は、前記有効性評価結果の送信元が一定の条件に当てはまる場合、前記有効性評価結果を無効とする、
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項10】
前記要注意状況モデルは、地理的種別、移動体種別、用途種別のうちの1つ以上によって分類されており、
前記情報配信部は、前記移動支援装置から指定された配信単位に応じた前記要注意状況モデルを、前記移動支援装置へ配信し、
前記配信単位は、前記要注意状況モデルの配信期間および配信対象とする前記要注意状況モデルの種別に基づいて設定される、
請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項11】
保険会社との保険契約を結んだ保険契約者の情報を管理する保険契約管理部をさらに備え、
前記情報配信部は、前記保険契約者の前記移動支援装置に対して前記要注意状況モデルを配信する、
請求項1または請求項2に記載の情報収集システム。
【請求項12】
前記移動支援装置および前記要注意状況指摘装置は、前記保険会社から前記保険契約者へレンタルされるドライブレコーダに搭載されている、
請求項11に記載の情報収集システム。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の情報収集システムと、
前記要注意状況指摘情報を前記情報収集システムへ送信する前記要注意状況指摘装置と、
前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに基づいて前記ユーザの移動支援を行う前記移動支援装置と、
を含む移動支援システムであって、
前記移動支援装置は、
周囲の状況が前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに近い状態になると、前記ユーザに前記要注意状況の報知を行うとともに前記報知が前記ユーザの安全に寄与したか否かを判断し、
前記報知が前記ユーザの安全に寄与したと判断した場合に、前記報知に対応する前記要注意状況モデルを有効と評価した前記有効性評価結果を前記情報収集システムに送信する、
移動支援システム。
【請求項14】
要注意状況指摘装置から、前記要注意状況指摘装置のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および前記指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する情報収集部と、
収集された前記要注意状況指摘情報を基にして前記要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する要注意状況モデル作成部と、
前記要注意状況モデルを記憶する要注意状況モデル記憶部と、
前記要注意状況モデルを移動支援装置に配信する情報配信部と、
前記移動支援装置から前記要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する評価結果受信部と、
有効と評価された前記要注意状況モデルの基となった前記要注意状況指摘情報の前記指摘者に報酬を付与する報酬付与部と、
を備える情報収集システムと、
前記要注意状況指摘情報を前記情報収集システムへ送信する前記要注意状況指摘装置と、
前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに基づいて前記ユーザの移動支援を行う前記移動支援装置と、
を含む移動支援システムであって、
前記移動支援装置は、
周囲の状況が前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに近い状態になると、前記ユーザに前記要注意状況の報知を行うとともに前記報知が前記ユーザの安全に寄与したか否かを判断し、
前記報知が前記ユーザの安全に寄与したと判断した場合に、前記報知に対応する前記要注意状況モデルを有効と評価した前記有効性評価結果を前記情報収集システムに送信
前記移動支援装置は、
前記ユーザの状態および前記ユーザの顔の向きまたは視線方向を検出し、
前記報知を切っ掛けにして、前記ユーザの状態が、前記要注意状況に気付いていない状態から気付いた状態に変化したこと、もしくは、前記ユーザの前記顔の向きまたは前記視線方向が、要注意対象に向いていない状態から向いた状態に変化したことが検出された場合に、前記報知が前記ユーザの安全に寄与したと判断する、
移動支援システム。
【請求項15】
要注意状況指摘装置から、前記要注意状況指摘装置のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および前記指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する情報収集部と、
収集された前記要注意状況指摘情報を基にして前記要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する要注意状況モデル作成部と、
前記要注意状況モデルを記憶する要注意状況モデル記憶部と、
前記要注意状況モデルを移動支援装置に配信する情報配信部と、
前記移動支援装置から前記要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する評価結果受信部と、
有効と評価された前記要注意状況モデルの基となった前記要注意状況指摘情報の前記指摘者に報酬を付与する報酬付与部と、
を備える情報収集システムと、
前記要注意状況指摘情報を前記情報収集システムへ送信する前記要注意状況指摘装置と、
前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに基づいて前記ユーザの移動支援を行う前記移動支援装置と、
を含む移動支援システムであって、
前記移動支援装置は、
周囲の状況が前記情報収集システムから配信された前記要注意状況モデルに近い状態になると、前記ユーザに前記要注意状況の報知を行うとともに前記報知が前記ユーザの安全に寄与したか否かを判断し、
前記報知が前記ユーザの安全に寄与したと判断した場合に、前記報知に対応する前記要注意状況モデルを有効と評価した前記有効性評価結果を前記情報収集システムに送信
前記移動支援装置は、
前記ユーザの動作を検出し、
前記ユーザが、前記報知を切っ掛けにして、要注意対象を避ける動作をとったことが検出された場合に、前記報知が前記ユーザの安全に寄与したと判断する、
移動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両や歩行者などの移動体から情報を収集する情報収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車両の運転者が首振り確認動作を行った場所を危険場所として検出し、検出された危険場所の情報を収集して、交通ハザードマップを生成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-118601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなシステムでは、車両の運転者から多くの情報を取得することが重要である。例えば、運転者の情報提供に報酬を支払うことで、運転者の情報提供に対するモチベーションを高めることができるが、一定金額の支払いでは、より優れた情報を提供しようというモチベーションには繋がらない。
【0005】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、より優れた情報を提供しようするモチベーションを情報提供者に与えることができる情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報収集システムは、要注意状況指摘装置から、要注意状況指摘装置のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する情報収集部と、収集された要注意状況指摘情報を基にして要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する要注意状況モデル作成部と、要注意状況モデルを記憶する要注意状況モデル記憶部と、要注意状況モデルを移動支援装置に配信する情報配信部と、移動支援装置から要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する評価結果受信部と、有効と評価された要注意状況モデルの基となった要注意状況指摘情報の指摘者に報酬を付与する報酬付与部と、を備えた情報収集システムであって、情報配信部は、配信契約を結んだクライアントの移動支援装置に対して要注意状況モデルを配信し、情報収集システムは、要注意状況モデルの配信料金をクライアントに課金する課金部をさらに備え、要注意状況モデルは、地理的種別、移動体種別、用途種別のうちの1つ以上によって分類されており、情報配信部は、移動支援装置から指定された配信単位に応じた要注意状況モデルを、移動支援装置へ配信し、課金部は、配信した要注意状況モデルの配信単位に応じた配信料金をクライアントに課金し、移動支援装置のレンタル契約を結んだクライアントに対しては、要注意状況モデルの配信料金に加え、移動支援装置のレンタル料金を課金し、配信単位は、要注意状況モデルの配信期間および配信対象とする要注意状況モデルの種別に基づいて設定される。

【発明の効果】
【0007】
本開示に係る情報収集システムによれば、要注意状況モデルの有効性評価結果に応じた報酬が、情報提供者である指摘者に付与されるため、より優れた要注意状況指摘情報を提供しようするモチベーションを指摘者に与えることができる。
【0008】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る情報収集システムを含む移動支援システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る要注意状況指摘装置の構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る移動支援装置の構成を示す図である。
図4】実施の形態1に係る要注意状況指摘装置の動作を示すフローチャートである。
図5】要注意状況の例を示す図である。
図6】要注意状況の例を示す図である。
図7】要注意状況指摘情報の例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る情報収集システムの情報収集プロセスを示すフローチャートである。
図9】実施の形態1に係る情報収集システムの情報配信プロセスを示すフローチャートである。
図10】実施の形態1に係る情報収集システムの報酬付与プロセスを示すフローチャートである。
図11】実施の形態1に係る移動支援装置の情報配信依頼プロセスを示すフローチャートである。
図12】実施の形態1に係る移動支援装置の要注意状況報知プロセスを示すフローチャートである。
図13】HUDを用いた要注意状況の報知の例を示す図である。
図14】要注意状況指摘情報の例を示す図である。
図15】実施の形態1の変形例に係る情報収集システムを含む移動支援システムの構成を示す図である。
図16】実施の形態1の変形例に係る移動支援装置の要注意状況報知プロセスを示すフローチャートである。
図17】実施の形態2に係る情報収集システムを含む移動支援システムの構成を示す図である。
図18】実施の形態2に係る要注意状況指摘装置の動作を示すフローチャートである。
図19】実施の形態2に係る情報収集システムのデータ分析プロセスを示すフローチャートである。
図20】実施の形態3に係る情報収集システムを含む移動支援システムの構成を示す図である。
図21】実施の形態4に係る情報収集システムを含む移動支援システムの構成を示す図である。
図22】実施の形態4に係る多機能ドライブレコーダの構成を示す図である。
図23】情報収集システムのハードウェア構成例を示す図である。
図24】情報収集システムのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る移動支援システムの構成を示す図である。この移動支援システムは、サーバ100に構築された情報収集システム10と、移動体である車両200に搭載された要注意状況指摘装置20と、移動体である車両300に搭載された移動支援装置30とを含む。以下、要注意状況指摘装置20のユーザを「指摘者」といい、要注意状況指摘装置20を搭載した車両200を「指摘者車両」という。また、移動支援装置30のユーザを「クライアント」といい、移動支援装置30を搭載した車両300を「クライアント車両」という。
【0011】
なお、以下の実施の形態では、要注意状況指摘装置20および移動支援装置30が搭載される移動体を車両としているが、移動体の種類に制約はなく、例えば、オートバイ、自転車、歩行者、船舶、飛行機、ヘリコプタなど、どのようなものでもよい。よって、以下の説明における「移動支援」は、移動体の種類に応じて、「運転支援」、「走行支援」、「歩行支援」、「操縦支援」、「飛行支援」などと読み替えることができる。
【0012】
要注意状況指摘装置20は、指摘者車両200の運転者である指摘者が指摘した、指摘者車両200の走行中に遭遇した要注意状況の情報と、当該指摘者の識別子である指摘者IDとを含む要注意状況指摘情報を生成して、情報収集システム10に送信する。
【0013】
情報収集システム10は、要注意状況指摘装置20から送信される要注意状況指摘情報を収集し、収集した要注意状況指摘情報を基にして要注意状況をモデル化した情報である要注意状況モデルを作成する。また、情報収集システム10は、作成した要注意状況モデルを蓄積し、移動支援装置30からの要求に応じて、要注意状況モデルを移動支援装置30へ配信する。
【0014】
移動支援装置30は、情報収集システム10から配信された要注意状況モデルに基づいて、クライアントの移動支援、すなわちクライアント車両300の運転支援を行う。具体的には、移動支援装置30は、クライアント車両300の周囲の状況が要注意状況モデルに近い状態になると、クライアント車両300が要注意状況にあると判断し、クライアント車両300の運転者であるクライアントに要注意状況の報知を行う。
【0015】
また、クライアント車両300は、報知がユーザの安全に寄与したか否かに応じて、当該要注意状況モデルの有効性を評価し、その評価結果(以下「有効性評価結果」ともいう)を情報収集システム10に送信する。具体的には、移動支援装置30は、要注意状況の報知がユーザの安全に寄与したと判断した場合には、当該要注意状況に対応する要注意状況モデルを「有効」と評価し、要注意状況の報知がユーザの安全に寄与しなかったと判断した場合には、当該要注意状況モデルを「無効」と評価する。
【0016】
情報収集システム10は、移動支援装置30から要注意状況モデルを「有効」と評価した評価結果を受信すると、その要注意状況モデルの基となった要注意状況指摘情報の指摘者(以下、「要注意状況モデルの指摘者」ということもある)に報酬を付与する。
【0017】
このように、実施の形態1に係る情報収集システム10は、要注意状況モデルの有効性評価結果に応じた報酬を、情報提供者である指摘者に付与することで、より優れた要注意状況指摘情報を提供しようするモチベーションを指摘者に与えることができる。また、「無効」と評価された要注意状況モデルに報酬が支払われないことで、質の低い要注意状況指摘情報が提供されることが抑制されるという効果も期待できる。
【0018】
次に、情報収集システム10、要注意状況指摘装置20および移動支援装置30の詳細を説明する。
【0019】
図1に示すように、情報収集システム10は、情報収集部11、要注意状況モデル作成部12、要注意状況モデル記憶部13、情報配信部14、評価結果受信部15および報酬付与部16を備える。
【0020】
情報収集部11は、要注意状況指摘装置20から、指摘者が指摘した要注意状況の情報および指摘者IDを含む要注意状況指摘情報を収集する。要注意状況モデル作成部12は、収集された要注意状況指摘情報を基にして要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する。要注意状況モデル記憶部13は、要注意状況モデル作成部12が作成した要注意状況モデルを記憶する。
【0021】
情報配信部14は、移動支援装置30からの要求に応じて、要注意状況モデル記憶部13に記憶された要注意状況モデルを移動支援装置30に配信する。評価結果受信部15は、移動支援装置30から送信された要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する。報酬付与部16は、評価結果受信部15が受信した有効性評価結果に基づいて、「有効」と評価された要注意状況モデルの基となった要注意状況指摘情報の指摘者に報酬を付与する。
【0022】
図2は、要注意状況指摘装置20の構成を示す図である。図2に示すように、要注意状況指摘装置20は、指摘者車両200が備える測位装置201、周辺検出装置202、運転者監視装置203、操作装置204に接続されている。これらの一部または全部は、要注意状況指摘装置20に内蔵されてもよい。
【0023】
測位装置201は、GNSS(Global Navigation Satellite System)からの測位信号に基づいて、指摘者車両200の位置を測定する。測位装置201は、指摘者車両200の車速センサまたは加速度センサの出力データと地図データとを用いたマップマッチング処理などによって、測位信号から測定した指摘者車両200の位置を補正してもよい。
【0024】
周辺検出装置202は、指摘者車両200の周辺状況を検出する。周辺検出装置202は、例えば、カメラで撮影した画像を認識する画像認識装置、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダなどで構成することができる。
【0025】
運転者監視装置203は、指摘者車両200の運転者の状態を監視する。運転者監視装置203は、運転者を撮影するカメラや運転者の声を集音するマイクなどを有しており、運転者の顔の向き、視線の向き、音声、指差し動作など、運転者の挙動を検出できる。要注意状況指摘装置20は、運転者監視装置203が検出した運転者の挙動から、運転者が要注意状況を指摘したことを検出することができる。
【0026】
なお、運転者監視装置203が運転者の状態を取得する方法は、直接的方法でも間接的方法でもよい。直接的方法とは、運転者の顔の向き、視線方向、表情、ペダルに対する足の位置、ハンドルを握る圧力、身体的な状態、心拍、呼吸数などの生理指標を検出する方法である。間接的方法とは運転状態を示す指標、例えば、ハンドルの向き、速度、加速度などから、運転者の状態を推定する方法である。
【0027】
操作装置204は、指摘者車両200の運転者が要注意状況指摘装置20に対する操作の入力手段である。操作装置204は、例えば、押しボタンや操作レバーなどのハードウェア、表示装置の画面に表示されるソフトウェアキー、音声操作を認識する音声認識装置など、どのようなものでもよい。
【0028】
図2に示すように、要注意状況指摘装置20は、要注意状況指摘情報生成部21、指摘者ID記憶部22および通信部23を備える。
【0029】
指摘者ID記憶部22は、指摘者IDを記憶した記憶媒体である。指摘者IDは、例えば、指摘者車両200に固有のID、要注意状況指摘装置20に固有のID、情報収集システム10から指摘者に付与されたID、指摘者自身が情報収集システム10に登録したIDなど、指摘者を特定できればどのようなものでもよい。また、指摘者ID記憶部22には、複数の指摘者IDが記憶されていてもよい。
【0030】
要注意状況指摘情報生成部21は、運転者監視装置203が検出した指摘者車両200の運転者の挙動から、運転者が要注意状況を指摘したことを検出すると、その要注意状況の情報と、運転者の指摘者IDとを含む要注意状況指摘情報を生成する。要注意状況の情報には、要注意状況の指摘地点、要注意状況の内容が含まれる。要注意状況の指摘地点は、運転者が要注意状況を指摘したことが検出されたときに測位装置201が測定した指摘者車両200の位置から判断できる。また、要注意状況の内容は、運転者が要注意状況を指摘したことが検出された時刻の前後に、周辺検出装置202が検出した指摘者車両200の周辺の状況や、運転者監視装置203が検出した運転者の挙動などから判断できる。
【0031】
通信部23は、操作装置204に入力される運転者の操作に基づいて、運転者が要注意状況指摘情報を情報収集システム10に提供する意思があるか否かを判断し、提供意思があると判断した場合に、通信装置(不図示)を用いて、要注意状況指摘情報を情報収集システム10に送信する。通信装置は、要注意状況指摘装置20に内蔵されていてもよいし、要注意状況指摘装置20に外付けされた携帯電話やスマートフォンなどでもよい。
【0032】
図3は、移動支援装置30の構成を示す図である。図3に示すように、移動支援装置30は、クライアント車両300が備える測位装置301、周辺検出装置302、操作装置304および報知装置305に接続されている。これらの一部または全部は、移動支援装置30に内蔵されてもよい。
【0033】
測位装置301は、周辺検出装置302および操作装置304は、それぞれ図2に示した測位装置201、周辺検出装置202および操作装置204と同様の機能を有する。
【0034】
報知装置305は、クライアント車両300の運転者に対する報知を行う装置である。報知装置305は、音声出力装置、画像表示装置、照射装置、振動装置など運転者に対する報知が可能なものであればどのようなものでもよい。報知装置305は、要注意状況の報知に用いられる。画像表示装置には、車両のフロントガラス(ウインドシールド)に画像を投影することで、車両の前方に存在して見える虚像を表示することができるHUD(Head-Up Display)が含まれる。報知装置305として、車両の前方に存在して見える虚像を表示するHUDや、車外に向けて光を照射する照射装置が用いられる場合、報知装置305は、要注意状況の報知とともに、運転者の視線を要注意対象の方へ誘導する視線誘導を行うこともできる。
【0035】
図3に示すように、移動支援装置30は、通信部31、要注意状況モデル記憶部32、報知判断部33および有効性判定部34を備える。
【0036】
通信部31は、通信装置(不図示)を用いて、情報収集システム10に対して要注意状況モデルの配信を要求したり、情報収集システム10から配信される要注意状況モデルを受信したりする。
【0037】
要注意状況モデル記憶部32は、通信部31が受信した要注意状況モデルを記憶する。
【0038】
報知判断部33は、クライアント車両300の運転者に要注意状況を報知するか否かを判断する。具体的には、報知判断部33は、測位装置301が測定したクライアント車両300の位置と、周辺検出装置302が検出したクライアント車両300の周辺の状況と基づいて、クライアント車両300の周囲の状況が要注意状況モデルに近い状態であるか否かを判断し、クライアント車両300の周囲の状況が要注意状況モデルに近い状態になると、クライアント車両300が要注意状況に遭遇すると判断し、報知装置305を用いて、クライアント車両300の運転者に要注意状況の報知を行う。
【0039】
有効性判定部34は、報知判断部33が行った要注意状況の報知の有効性を判断することで、その報知に対応する要注意状況モデルの有効性を評価する。具体的には、有効性判定部34は、報知がユーザの安全に寄与したか否かを判断し、報知がユーザの安全に寄与したと判断した場合に、その報知に効果があったと判断し、当該報知に対応する要注意状況モデルを「有効」と評価する。また、有効性判定部34は、要注意状況モデルの有効性評価結果を、通信部31を介して情報収集システム10へ送信する。
【0040】
有効性判定部34は、「有効」を示す評価結果と「無効」を示す評価結果との両方を情報収集システム10へ送信してもよいし、「有効」を示す評価結果のみを情報収集システム10へ送信してもよい。例えば、クライアント車両300が要注意状況モデルの示す要注意対象地点を通過したときに要注意状況が発生しなかった場合や、要注意状況が発生しても運転者が十分に注意を払っていると判断される場合に、有効性判定部34が、その要注意状況モデルを「無効」と評価した評価結果を情報収集システム10へ自動的に送信するようにしてもよい。
【0041】
図4は、要注意状況指摘装置20の動作を示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートに基づいて、要注意状況指摘装置20の動作を説明する。
【0042】
要注意状況指摘装置20は、特定の起動操作に応じて起動する。例えば指摘者車両200の走行開始に連動して要注意状況指摘装置20が起動してもよい。
【0043】
要注意状況指摘装置20が起動すると、要注意状況指摘情報生成部21は、測位装置201が測定した指摘者車両200の位置の情報を取得する(ステップS200)。指摘者車両200の位置の情報には、指摘者車両200の向きの情報が含まれていてもよい。指摘者車両200の向きは、指摘者車両200の位置の履歴から算出できる。また、指摘者車両200の向きは、指摘者車両200のハンドル角や、加速度に基づいて補正されてもよい。
【0044】
また、要注意状況指摘情報生成部21は、周辺検出装置202が検出した指摘者車両200の周辺状況の情報を取得する(ステップS201)。要注意状況指摘情報生成部21が取得する周辺状況の情報は、例えば、周辺の移動体の位置、道路形状、路面状態、周辺を撮影した画像、周辺の音声など、どのような情報でもよい。
【0045】
さらに、要注意状況指摘情報生成部21は、運転者監視装置203が検出した指摘者車両200の運転者の状態の情報を取得する(ステップS202)。要注意状況指摘情報生成部21が取得する運転者の状態は、例えば、運転者の視線、音声、指差し動作など、運転者の挙動が分かるものであればどのような情報でもよい。
【0046】
要注意状況指摘情報生成部21は、運転者の状態の情報から、運転者が要注意状況を指摘したか否かを判断する(ステップS203)。
【0047】
ここで、要注意状況の例を示す。例えば図5のように、指摘者車両200の前方に左の脇道との合流地点があり、脇道から自転車が飛び出してきたとき、この状況を指摘者車両200の運転者が要注意状況として指摘する場合について説明する。
【0048】
運転者が図5の要注意状況を指摘する方法としては、例えば、「左の脇道から自転車の飛び出しあり」と発声する方法、左の脇道に視線を移した後に「自転車の飛び出しあり」と発声する方法、左の脇道を指差して「自転車の飛び出しあり」と発声する方法、左の脇道に視線を移した後に指振りなど特定のジェスチャーをする方法、などが考えられる。要注意状況指摘情報生成部21は、このような運転者の挙動を検出することで、要注意状況が指摘されたことを検出する。
【0049】
要注意状況の指摘地点は、運転者が要注意状況を指摘したときに測位装置201が測定した指摘者車両200の位置でもよいし、周辺検出装置202が検出した要注意対象地点(図5の例では脇道との合流地点)の位置でもよい。基本的に両者の位置は近いので、以下では説明の簡略化のため、運転者が要注意状況を指摘したときに測位装置201が測定した指摘者車両200の位置を、要注意対象地点の位置とみなす。つまり、図5の例では、運転者が要注意状況を指摘したときの指摘者車両200の位置と、脇道との合流地点の位置とは、共に位置P1であるものとする。
【0050】
要注意状況の内容は、周辺検出装置202が検出した指摘者車両200の周辺状況と、運転者監視装置203が検出した運転者の挙動から抽出される。要注意状況の内容には、要注意対象および要注意事項の情報が含まれている。要注意対象は移動体であってもよいし、特定の地点であってもよい。図5の例において、要注意状況の内容は、「左の脇道から自転車の飛び出しあり」であり、要注意対象は「自転車」または「脇道との合流地点」であり、要注意事項は「自転車の飛び出し」である。
【0051】
また、図6のように、指摘者車両200が走行中の道路の幅が狭くなり、前方の自転車が右に寄って指摘者車両200と接触する可能性があるとき、この状況を指摘者車両200の運転者が要注意状況として指摘する場合について説明する。道路脇の歩道を走行中の自転車が、歩道が無くなる地点で車道にはみ出す場合も同様である。
【0052】
この場合、要注意状況指摘情報生成部21は、運転者が例えば「自転車が右に寄る」と発声したことを検出すると、要注意状況を指摘したと判断し、要注意状況の内容を「自転車のはみ出し」と判断する。また、要注意状況の指摘地点は、道路の幅が狭くなる地点の位置P2である。
【0053】
ここでは要注意状況指摘情報生成部21が、運転者が要注意状況を指摘したことを自動的に検出する例を示したが、後述するように、運転者が操作装置204を操作することで、要注意状況を指摘したと判断するようにしてもよい。
【0054】
図4に戻り、要注意状況指摘情報生成部21は、運転者が要注意状況を指摘したと判断すると(ステップS203でYES)、要注意状況指摘情報を作成する(ステップS204)。要注意状況指摘情報の構成は種々の形態が考えられるが、本実施の形態では、要注意状況指摘情報は、図7に示すように、指摘者IDと、要注意状況の指摘地点と、要注意状況の内容とから構成されるものとする。なお、図7に示す要注意状況指摘情報は、図5および図6に示した要注意状況の例に対応している。
【0055】
要注意状況指摘情報が作成されると、通信部23は、操作装置204に入力される運転者の操作に基づいて、要注意状況指摘情報を情報収集システム10に提供する意思が運転者にあるか否かを判断する(ステップS205)。例えば、操作装置204に特定の操作が入力されると、運転者に要注意状況指摘情報の提供意思があると判断される。あるいは、運転者が要注意状況を指摘したことをもって、運転者に要注意状況指摘情報の提供意思があると判断されてもよい。すなわち、ステップS205は省略されてもよい。
【0056】
通信部23は、運転者に要注意状況指摘情報の提供意思があると判断すると(ステップS206でYES)、要注意状況指摘情報を情報収集システム10へ送信する(ステップS207)。
【0057】
その後、要注意状況指摘装置20は、指摘者車両200の走行が終了したかどうかを確認する(ステップS208)。このとき走行が継続していれば(ステップS208でNO)ステップS200へ戻り、走行が終了していれば(ステップS208でYES)、要注意状況指摘装置20は動作を終了する。なお、運転者が要注意状況を指摘していないと判断された場合(ステップS203でNO)、ならびに、運転者に要注意状況指摘情報の提供意思があると判断された場合(ステップS206でNO)は、要注意状況指摘情報の作成または送信は行われずにステップS208へ移行し、指摘者車両200の走行が終了したかどうか確認される。
【0058】
図4のフローでは、ステップS204で要注意状況指摘情報が作成されるごとに、ステップS205で運転者に要注意状況指摘情報の提供意思があるか否かの判断がなされる。しかし、要注意状況指摘情報が作成された時点では運転者の意思確認を行わず、要注意状況指摘情報を記憶しておき、例えば指摘者車両200の停車時などに、それまでに記憶された1つ以上の要注意状況指摘情報のうちから情報収集システム10へ送信するものを運転者がまとめて選択するようにしてもよい。
【0059】
次に、情報収集システム10の動作を説明する。本実施の形態では、情報収集システム10の動作の一例として、図8図9および図10に示すフローチャートに相当する3つのプロセス、すなわち、情報収集プロセス、情報配信プロセスおよび報酬付与プロセスが並行して実施されるマルチプロセス構成を説明する。なお、情報収集システム10のプログラム構成は、シングルプロセス構成でもよいし、4つ以上のプロセスが並行して実施されるマルチプロセス構成でもよい。
【0060】
図8は、情報収集システム10の情報収集プロセスの動作フローである。
【0061】
情報収集プロセスでは、要注意状況指摘装置20から送信された要注意状況指摘情報を、情報収集部11が受信する(ステップS100)。要注意状況指摘情報が受信されると、要注意状況モデル作成部12が、その要注意状況指摘情報を基にして要注意状況モデルを作成する(ステップS101)。作成された要注意状況モデルは、要注意状況モデル記憶部13に記憶される。
【0062】
本実施の形態では、説明の簡略化のため、要注意状況モデル作成部12は、受信した要注意状況指摘情報をそのままのデータ構成で要注意状況モデルとするものとする。すなわち、要注意状況モデルも、図7と同様に、指摘者IDと、要注意状況の指摘地点と、要注意状況の内容とから構成される。
【0063】
なお、指摘者IDは異なるが内容の重複する複数の要注意状況モデルが得られた場合、指摘された時刻が最も古い要注意状況モデルのみを採用してもよいし、内容の重複する複数の要注意状況モデルを1つにマージして、複数の指摘者IDを持つ要注意状況モデルを作成してもよい。
【0064】
要注意状況モデル記憶部13は、要注意状況モデルを、要注意状況の指摘地点、要注意状況の内容、指摘者ID、地理的特徴などに基づいてカテゴライズして記憶してもよい。また、要注意状況モデル記憶部13は、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)を利用して要注意状況モデルを格納してもよい。
【0065】
図9は、情報収集システム10の情報配信プロセスの動作フローである。
【0066】
情報配信プロセスでは、移動支援装置30から送信された要注意状況モデルの配信要求を、情報配信部14が受信する(ステップS110)。情報配信部14は、要注意状況モデルの配信要求を受信すると、配信要求に応じた要注意状況モデルを要注意状況モデル記憶部13から読み出して、配信要求の送信元の移動支援装置30へ配信する(ステップS111)。
【0067】
要注意状況モデルの配信要求には、配信を要求する要注意状況モデルの範囲(以下「配信要求範囲」という)の情報が含まれていてもよい。要注意状況モデルの配信要求範囲は、例えば、要注意状況の指摘地点が特定の範囲内にある要注意状況モデルなどである。ここでいう特定の範囲は、例えば、移動支援装置30の位置を中心とする一定の範囲(例えば100km四方の範囲)、移動支援装置30の位置とは関係のない特定の範囲、移動支援装置30の走行予定経路に沿った範囲、移動支援装置30の過去の走行経路に沿った範囲などである。
【0068】
図10は、情報収集システム10の報酬付与プロセスの動作フローである。
【0069】
報酬付与プロセスでは、移動支援装置30から送信された要注意状況モデルの有効性評価結果を、評価結果受信部15が受信する(ステップS120)。要注意状況モデルの有効性評価結果が受信されると、報酬付与部16は、有効性評価結果の内容(すなわち評価結果が「有効」か「無効」か)を確認し、「有効」と評価された要注意状況モデルの指摘者に報酬を付与する(ステップS121)。
【0070】
報酬は、例えば、金銭、電子マネー、クーポン、指摘者の格付けアップ、何らかのポイント、移動支援装置30への広告の権利など、どのようなものでもよい。また、報酬の額は、指摘者ごと、あるいは要注意状況モデルごとに、「有効」の評価結果の獲得数に応じて計算されてもよい。
【0071】
次に、移動支援装置30の動作を説明する。本実施の形態では、移動支援装置30の動作の一例として、図11および図12に示すフローチャートに相当する2つのプロセス、すなわち、情報配信依頼プロセスおよび評価結果送信プロセスが並行して実施されるマルチプロセス構成を説明する。なお、情報収集システム10のプログラム構成は、シングルプロセス構成でもよいし、3つ以上のプロセスが並行して実施されるマルチプロセス構成でもよい。
【0072】
図11は、移動支援装置30の情報配信依頼プロセスの動作フローである。
【0073】
情報配信依頼プロセスでは、まず、通信部31は、情報収集システム10に要注意状況モデルの配信を要求するタイミングであるか否かを判断する(ステップS300)。要注意状況モデルの配信を要求するタイミングであれば(ステップS300でYES)、通信部31は、情報収集システム10に要注意状況モデルの配信要求を送信する(ステップS301)。
【0074】
要注意状況モデルの配信を要求するタイミングは、例えば、クライアント車両300が走行を開始した時点、クライアント車両300の走行予定経路として過去に走行したことのない場所を通る経路が設定された時点、クライアント車両300が過去に走行したことのない場所に進入した時点など、どのようなタイミングでもよい。
【0075】
その後、配信要求を受信した情報収集システム10から要注意状況モデルが配信され、通信部31が、その要注意状況モデルを受信する(ステップS302)。受信された要注意状況モデルは、要注意状況モデル記憶部32に記憶される(ステップS303)。
【0076】
その後、移動支援装置30は、クライアント車両300の走行が終了したかどうかを確認する(ステップS304)。このとき走行が継続していれば(ステップS304でNO)ステップS300へ戻り、走行が終了していれば(ステップS304でYES)、移動支援装置30は動作を終了する。なお、要注意状況モデルの配信を要求するタイミングでない場合(ステップS300でNO)は、要注意状況モデルの配信要求の送信は行われずにステップS304へ移行し、クライアント車両300の走行が終了したかどうか確認される。
【0077】
図12は、要注意状況報知プロセスの動作フローである。
【0078】
要注意状況報知プロセスでは、報知判断部33は、測位装置301が測定したクライアント車両300の位置の情報を取得する(ステップS310)。クライアント車両300の位置の情報には、クライアント車両300の向きの情報が含まれていてもよい。クライアント車両300の向きは、クライアント車両300の位置の履歴から算出できる。また、クライアント車両300の向きは、クライアント車両300のハンドル角や、加速度に基づいて補正されてもよい。
【0079】
また、報知判断部33は、周辺検出装置302が検出したクライアント車両300の周辺状況の情報を取得する(ステップS311)。報知判断部33が取得する周辺状況の情報は、例えば、周辺の移動体の位置、道路形状、路面状態、周辺を撮影した画像、周辺の音声など、どのような情報でもよい。
【0080】
続いて、報知判断部33は、クライアント車両300の位置および周辺状況の情報に基づいて、クライアント車両300の周囲の状況が、要注意状況モデル記憶部32に記憶されたいずれかの要注意状況モデルに近い状態か否かを判断することで、クライアント車両300が要注意状況にあるか否かを判断する(ステップS312)。
【0081】
例えば、要注意状況モデル記憶部32に、図7のような要注意状況モデルが記憶されている場合、クライアント車両300の位置が要注意状況の指摘地点の位置P1またはP2に近づくと(例えば、指摘地点の位置P1またはP2までの距離が10m以下になると)、クライアント車両300の周囲の状況が要注意状況モデルに近い状態になったと判断される。このとき、クライアント車両300の進行方向や、周辺検出装置302によって自転車が検出されているかどうかが加味されてもよい。
【0082】
クライアント車両300が要注意状況にあると判断された場合(ステップS313でYES)、報知判断部33は、報知装置305を用いて、クライアント車両300の運転者に要注意状況の報知を行う(ステップS314)。この報知の内容は、要注意状況モデルにおける要注意状況の内容に応じて決定される。例えば、要注意状況モデル記憶部32に、図7のような要注意状況モデルが記憶されており、クライアント車両300の位置が要注意状況の指摘地点の位置P1に近づいた場合には、報知装置305から「自転車飛び出し注意」などの音声メッセージが出力されるとよい。
【0083】
また、報知装置305がHUDを含む場合、報知判断部33は、例えば図13のように、クライアント車両300のフロントガラスに要注意対象の位置を示す虚像である表示オブジェクト35を表示してもよい。図13は、路肩の複数の駐車車両の間から歩行者が飛び出すおそれのある要注意状況(後に示す図14の「Info 7」の要注意状況に相当)を示しており、表示オブジェクト35はその要注意状況における要注意対象である複数の駐車車両の位置を視覚的に報知している。
【0084】
続いて、有効性判定部34が、ステップS314で行われた要注意状況の報知の有効性を判断することで、その報知に対応する要注意状況モデルの有効性を評価する(ステップS315)。本実施の形態では、クライアント車両300の運転者は、報知が有効であった場合に、その旨を示す特定の操作を操作装置304に入力するものとし、有効性判定部34は、報知が行われてから一定時間内(例えば10秒内)に特定の操作が入力されると、当該報知が有効であったと判断するものとする。
【0085】
有効性判定部34は、報知が有効であったと判断した場合(ステップS316でYES)、その報知に対応する要注意状況モデルを「有効」と評価し、その評価結果を、通信部31を通して情報収集システム10へ送信する(ステップS317)。
【0086】
その後、移動支援装置30は、クライアント車両300の走行が終了したかどうかを確認する(ステップS318)。このとき走行が継続していれば(ステップS318でNO)ステップS310へ戻り、走行が終了していれば(ステップS318でYES)、移動支援装置30は動作を終了する。なお、クライアント車両300が要注意状況にあると判断されなかった場合は(ステップS313でNO)、報知は行われずにステップS318へ移行する。また、報知が有効でなかったと判断された場合は(ステップS316でNO)、有効性評価結果の送信は行われずにステップS318へ移行する。あるいは、報知が有効でなかったと判断された場合は(ステップS316でNO)、有効性判定部34が、「無効」の評価結果を情報収集システム10に送信してから、ステップS318へ移行してもよい。
【0087】
[変形例1]
実施の形態1の移動支援装置30では、有効性判定部34は、報知が有効であったか否かを操作装置304に入力される操作に基づいて判断したが、クライアント車両300の運転者の発声やジェスチャーに基づいて判断してもよい。例えば、移動支援装置30の運転者が「助かった」などと発生した場合や、特定のしぐさを行った場合に、報知が有効であったと判断されてもよい。
【0088】
また、有効性評価結果は、「有効」と「無効」の2段階でなくてもよく、例えば「非常に有効」、「普通」、「逆効果」などを加えた3段階以上の多段階としてもよい。
【0089】
[変形例2]
要注意状況指摘情報および要注意状況モデルのデータ構造は、図7のような単純なものに限られず、例えば図14に示すような、要注意状況における要注意対象の位置および属性、ならびに要注意対象に対する要注意事項の属性などを含んでいてもよい。
【0090】
要注意対象には、交通違反の取り締まり場所が含まれてもよい。一般に、交通違反の取り締まり場所は、うっかり交通違反を犯しやすい場所であるため、運転支援の効果は高い。
【0091】
要注意状況モデルの情報に要注意対象の属性が含まれる場合、移動支援装置30が行う報知の態様を、要注意対象の属性に応じて変更することができる。例えば、要注意状況の報知がHUDで実施される場合、要注意対象の方向に属性に応じたマークを重畳表示することなどが考えられる。また、音声によって要注意対象の属性を報知してもよい。これにより、クライアント車両300の運転者は、注意すべき対象を絞ることができる。
【0092】
要注意事項の属性は、どのようなことに注意すればよいかを示す。例えば、要注意対象が自転車の場合は、飛び出し、フラツキ、急な進路変更などである。その他、クライアント車両300の進路変更時の巻き込み注意、右左折時の歩行者への接触注意、法令順守義務(一旦停止、進行方向制限、速度違反など)に違反するおそれに対する注意などでもよい。要注意事項の属性を報知することで、クライアント車両300の運転者は、注意すべき内容を絞ることができる。
【0093】
要注意状況の内容には、車両の走行環境が含まれていてもよい。悪天候時や交通渋滞時にのみ発生する要注意状況が存在するためである。例えば、降雨時の道路の冠水や、強風時のトンネル出口での横風、渋滞時の車両間からの歩行者の飛び出しなどがある。
【0094】
要注意対象の位置は、絶対位置(緯度、軽度)に限られず、車両(指摘者車両200または指摘者車両200)に対する相対位置であってもよい。例えば、追い抜き、追い越し、右左折、車線変更などに起因する要注意状況や、路肩の駐車車両や事故車両、緊急車両、不審車両、整備不良車両などに起因する要注意状況など、不特定の場所で発生する要注意状況が存在するためである。
【0095】
より具体的には、例えば、駐車車両の間からの自転車または歩行者が飛び出すおそれのある状況、狭い交差点での右折時に内輪差によって障害物(歩行者を含む)の巻き込むおそれのある状況、前方のバイクや自転車の運転者が左右に首を振り(左右確認を行い)、進路変更や車線変更するおそれのある状況は、不特定の場所で発生する要注意状況となる。
【0096】
[変形例3]
実施の形態1では、移動体が車両である例を示したが、本開示に係る移動支援システムは、船舶や航空機、ヘリコプタ等の移動支援システムに適用してもよい。例えば、船舶であれば、海流や、島、岩礁、風雨など特定の位置、地域、環境に応じた、ベテラン操作者から提供された要注意状況指摘情報から要注意状況モデルが作成されることで、艱難事故を抑制することができる。特に岩礁などの位置情報と海流の情報と組み合わせた要注意状況モデルは座礁防止効果が大きい。
【0097】
[変形例4]
本開示に係る移動支援システムは、歩行者や自転車などの軽車両の移動支援システムに適用してもよい。その場合、要注意状況指摘装置20や移動支援装置30は、位置測位機能付きの携帯通信端末(例えば携帯電話やスマートフォンなど)で動作するアプリケーションで実現されてもよい。また、軽車両には、軽車両用の専用端末を用意してもよい。
【0098】
[変形例5]
本開示に係る移動支援システムは、トラック、バス、特殊車両の移動支援システムに適用してもよい。トラック、バス、特殊車両に特有の要注意状況が存在するためである。また、要注意状況に関するベテランドライバのノウハウを、移動支援システムを通して初心者ドライバに伝授する価値は、乗用車にくらべて大きいものがある。トラックやバスは車幅が広く、狭い道路での通行可否や、巻き込みに関する注意、スリップのしやすさ等、乗用車とは異なる要注意状況が存在する。ダンプカーも、土砂運搬時や住宅走行時などの要注意状況には特殊なものがある。
【0099】
バスなどは急ブレーキ、急ハンドルによる乗客の転倒防止の観点が、要注意状況として加わる。また、パトカー、救急車、消防車などの緊急車両も、緊急走行時に、他の車両が停止しているかどうか、他の車両が緊急車両の進路を開けているかどうかなど特殊な状況確認が必要であるため、一般車両とは要注意状況が異なる。また、フォークリフトは、後輪操舵であることによる特殊な要注意状況や、フォークリフトが移動する工場ならではの要注意状況などがある。
【0100】
また、電車、汽車、路面電車などの操作に関しても、プラットフォーム近接時、踏切接近時などに、列車ならではの特殊な要注意状況があり、ベテラン運転手のノウハウ伝授は重要である。
【0101】
[変形例6]
また、指摘者車両200およびクライアント車両300を、その車両の使用目的別にカテゴライズして、要注意状況指摘情報の収集および要注意状況モデルの作成を行ってもよい。すなわち、要注意状況指摘情報および要注意状況モデルに、指摘者車両200またはクライアント車両300の使用目的の種別の情報を含ませてもよい。車両の使用目的としては、宅配、引っ越し、送迎、荷物の運搬、動物の運搬などがある。
【0102】
[変形例7]
実施の形態1では、要注意状況と報酬額について何ら規定していなかったが、要注意状況モデルの種別ごとに、要注意状況から事故に繋がったときの損失額(逆に言えば、事故を回避できたとき免れる損失額)を見積もり、その額に応じて要注意状況モデルの種別ごとの報酬額を設定してもよい。
【0103】
[変形例8]
移動支援装置30と要注意状況指摘装置20は一体型でもよい。その場合、指摘者車両200とクライアント車両300とは同一の車両になる。
【0104】
[変形例9]
情報収集システム10の報酬付与部16は、有効性評価結果の送信元が一定の条件に当てはまる場合、その有効性評価結果を無効化して、指摘者に報酬を付与しないようにしてもよい。
【0105】
例えば、有効性評価結果を送信したクライアントが、その有効性評価結果に対応する要注意状況モデルの指摘者と一致する場合に、有効性評価結果を無効化してもよい。クライアントと指摘者とが同じ場合は、不正に報酬を受けるための自作自演である可能性が高いためである。
【0106】
また、一定期間内に、同一のクライアントが同一の要注意状況モデルに対し、「有効」の評価結果を送信した場合に、その有効性評価結果を無効化してもよい。クライアントと指摘者とが異なる場合であっても、同一のクライアントから繰り返し「有効」の評価結果が送信されるときは、不正に報酬を受けるための組織的な自作自演(不正に報酬を受けることの幇助)である可能性が高いためである。
【0107】
[変形例10]
移動支援装置30が、クライアント車両300の運転者の運転操作を監視し、要注意状況を報知したときに、運転者がその報知内容に応じた運転操作、つまり、報知された要注意状況を回避する運転操作を行った場合に、運転者(クライアント)へ報酬を付与してもよい。クライアントを安全運転に寄与させる効果がある。
【0108】
[変形例11]
実施の形態1で示した移動支援装置30の要注意状況報知プロセス(図12)では、クライアント車両300の運転者が要注意状況に気づいているか否かにかかわらず要注意状況の報知を実施するものであったが、移動支援装置30は、運転者が要注意状況に気づいていない場合だけに要注意状況の報知を実施してもよい。また、移動支援装置30は、報知を切っ掛けにして、クライアント車両300の運転者が要注意状況に気付いていない状態から、要注意状況に気付いた状態に変化したことが検出された場合に、報知がユーザの安全に寄与したとみなし、当該報知が有効であったと判断してもよい。
【0109】
図15は、本変形に係る移動支援装置30のブロック図である。図15の移動支援装置30の構成は、図3の構成に対し、運転者監視装置303を追加したものである。運転者監視装置303は、図2に示した運転者監視装置303と同様の機能を有する。
【0110】
図16は、本変形に係る移動支援装置30の要注意状況報知プロセスの動作フローである。図16のフローは、図12に対して、ステップS320、S321およびS322を追加したものである。
【0111】
ステップS320は、ステップS313にてクライアント車両300が要注意状況にあると判断された場合(ステップS313でYES)に行われる。ステップS320では、報知判断部33が、運転者監視装置303から運転者の状態の情報を取得する。
【0112】
ステップS321は、ステップS320に続いて行われる。ステップS321では、報知判断部33が、ステップS320で取得された運転者の状況から、運転者が要注意状況に気づいているか否か判断する。運転者が要注意状況に気付いていない場合は(ステップS321でNO)、ステップS314へ移行して、要注意状況の報知が行われる。運転者が要注意状況に気付いている場合は(ステップS321でYES)、要注意状況の報知は行われずに、ステップS318へ移行する。
【0113】
運転者が要注意状況に気付いているか否かは、例えば、以下の方法で判断できる。例えば、運転者の視線や顔の向きから判断する方法がある。この方法を用いる場合、報知判断部33は、運転者の顔の向きや視線が要注意物対象物の方向と合致する場合に、運転者が要注意状況に気付いていると判断する。
【0114】
また、運転者の生理状況もしくは心理状況から判断する方法でもよい。この方法を用いる場合、報知判断部33は、運転者の心拍や呼吸に変化があった場合や、表情がシリアスに変化した場合、ハンドルを握る力が上昇した場合などに、運転者が要注意状況に気付いていると判断する。
【0115】
また、クライアント車両300の車両センサの出力から間接的に判断する方法でもよい。この方法を用いる場合、報知判断部33は、要注意対象から避けるようなハンドル操作や、衝突を避けるためのブレーキ、アクセル操作を検出した場合に、運転者が要注意状況に気付いていると判断する。
【0116】
以上のような判断方法を複数組み合わせ、複数の判断結果から、運転者が要注意状況に気付いているか否かを総合的に判断してもよい。
【0117】
ステップS322は、ステップS314の後、すなわち、要注意状況の報知が行われた後に行われる。ステップS322では、ステップS320と同様に、報知判断部33が、運転者監視装置303から運転者の状態の情報を取得する。
【0118】
ステップS322の後は、ステップS315へ移行し、有効性判定部34が、ステップS314で行われた要注意状況の報知の有効性を判断することで、その報知に対応する要注意状況モデルの有効性を評価する。ただし、本実施の形態では、有効性判定部34は、報知前のステップS320で取得された運転者の状態と、報知後のステップS321で取得された運転者の状態とを対比して、報知の前後における運転者の状態の変化から、報知の有効性を判断する。
【0119】
例えば、有効性判定部34は、運転者の状態が、報知を切っ掛けにして、要注意状況に気付いていない状態から気付いた状態に変化したことが検出された場合に、報知が運転者の安全に寄与したと判断し、報知が有効であったと判断してもよい。また、有効性判定部34は、運転者の顔の向きまたは視線方向を検出し、運転者の顔の向きまたは視線方向が、報知を切っ掛けにして、要注意対象に向いていない状態から向いた状態に変化したことが検出された場合に、報知が運転者の安全に寄与したと判断し、報知が有効であったと判断してもよい。また、有効性判定部34は、運転者の動作を検出し、運転者が、報知を切っ掛けにして、要注意対象を避ける動作をとったことが検出された場合に、報知が運転者の安全に寄与したと判断し、報知が有効であったと判断してもよい。
【0120】
本変形によれば、クライアント車両300の運転者が要注意状況に気づいていない場合に、要注意状況の報知が行われ、運転者が要注意状況に気づいたか否かに応じて自動的に報知の有効性が判断されるので、運転者の主観的な判断によらない、報知の有効性の客観的な評価がなされる。また、運転者が報知の有効性を判断する手間が省けるため、運転者にとっての利便性が向上する。
【0121】
なお、本変形例においても、実施の形態1で説明した操作装置304の操作に基づく報知の有効性の判断方法を併用してもよい。
【0122】
<実施の形態2>
実施の形態1の移動支援システムでは、指摘者車両200の運転者により要注意状況が指摘されたときに測位装置201、周辺検出装置202および運転者監視装置203で記録された要注意状況の情報を含むデータは、要注意状況指摘装置20で分析され、その分析結果が要注意状況指摘情報として情報収集システム10へ送信される。実施の形態2では、要注意状況が指摘されたときに測位装置201、周辺検出装置202および運転者監視装置203で記録されたデータの分析を、情報収集システム10で行う例を示す。以下、分析前のデータ、すなわち測位装置201、周辺検出装置202および運転者監視装置203などから取得したそのままのデータを「生データ」という。
【0123】
図17は、実施の形態2に係る移動支援システムの構成を示す図である。図17の移動支援システムの構成は、要注意状況指摘装置20の要注意状況モデル作成部12が、生データ記憶部12aおよび生データ分析部12bを備える点で図1の構成と異なる。
【0124】
また、実施の形態2においては、要注意状況指摘装置20では、測位装置201、周辺検出装置202および運転者監視装置203から取得した生データの分析は行われず、要注意状況指摘装置20が送信する要注意状況指摘情報に、要注意状況の情報として、運転者が要注意状況を指摘した時刻の前後一定期間に測位装置201、周辺検出装置202および運転者監視装置203で記録された生データが含められる。以下、この生データを「要注意状況の生データ」という。
【0125】
測位装置201で記録される生データは、指摘者車両200の位置データである。周辺検出装置202で記録される生データは、カメラにより記録される指摘者車両200周辺の映像データ、集音器により記録される指摘者車両200周辺の音声データ、周辺センサの出力データなどである。また、運転者監視装置203で記録される生データとしては、カメラにより記録される運転者の映像データ、集音器により記録される運転者の発声の音声データなどである。要注意状況指摘装置20から送信される要注意状況指摘情報には、これらのいずれか1つ以上の生データが含まれている。
【0126】
生データ記憶部12aは、要注意状況指摘装置20から受信した要注意状況指摘情報に含まれる生データ(要注意状況の生データ)を一時的に記憶する。生データ分析部12bは、生データ記憶部12aに記憶された要注意状況の生データを分析し、その分析結果に基づいて要注意状況モデルを生成する。また、生データ分析部12bが学習機能を有している場合、学習の進行に応じて、要注意状況モデル記憶部13に記憶済みの要注意状況モデルに対応する生データを再度分析し、要注意状況モデル作成部12がその分析結果に基づき要注意状況モデルを更新してもよい。
【0127】
図18は、実施の形態2に係る要注意状況指摘装置20の動作を示すフローチャートである。図18のフローは、図4のフローに対し、ステップS210を追加したものである。
【0128】
ステップS210は、ステップS203にて運転者が要注意状況を指摘したと判断された場合(ステップS203でYES)に行われる。ステップS210では、ステップS201からS103と同様の情報取得、すなわち、指摘者車両200の位置の情報、指摘者車両200の周辺状況の情報、指摘者車両200の運転者の状態の情報の取得が、一定期間継続される。
【0129】
ステップS210の後はステップS204へ移行し、要注意状況指摘情報を作成する(ステップS204)。このとき要注意状況指摘情報生成部21は、要注意状況指摘情報に、要注意状況の情報として、運転者が要注意状況を指摘した時刻の前後一定期間に周辺検出装置202および運転者監視装置203で記録された生データ(すなわち、要注意状況の生データ)を含ませる。要注意状況指摘情報生成部21が要注意状況の生データの分析を行う必要はない。
【0130】
ステップS203の後にステップS210が行われることで、要注意状況指摘情報生成部21は、運転者が要注意状況を指摘した時刻の前の生データだけでなく、その時刻の後の一定期間に記録された生データも、要注意状況指摘情報に含ませることができる。
【0131】
実施の形態2の情報収集システム10は、実施の形態1で説明した情報収集プロセス、情報配信プロセスおよび報酬付与プロセスに、下で説明するデータ分析プロセスを加えた4つのプロセスを並行して実行する。
【0132】
ただし、実施の形態2では、情報収集プロセスのフロー(図8)において、ステップS100で受信された要注意状況の生データを含む要注意状況指摘情報は、要注意状況モデル作成部12の生データ記憶部12aに記憶され、ステップS101では、生データ分析部12bが生データ記憶部12aに記憶された生データを分析して判断した要注意状況の内容に基づいて要注意状況モデルが作成される。
【0133】
図19は、情報収集システム10のデータ分析プロセスの動作フローである。
【0134】
データ分析プロセスでは、まず、生データ分析部12bが、生データを分析すべきタイミングであるか否かを判断する(ステップS120)。分析タイミングは、一定時間ごと(例えば1週間ごと)でもよいし、情報収集システム10のオペレータからの指示があった時点や、要注意状況指摘装置20から要注意状況指摘情報を受信した時点など、どのようなタイミングでもよい。
【0135】
分析のタイミングであれば(ステップS120でYES)、生データ分析部12bは、生データ記憶部12aから要注意状況の生データを読み出す(ステップS121)。そして、生データ分析部12bは、予め定められた分析方法で生データを分析することで、要注意状況の内容を判断する(ステップS122)。情報収集プロセスのフロー(図8)のステップS101では、ステップS122で判断された要注意状況の内容に基づいて、図7もしくは図14に示したような要注意状況モデルが作成される。
【0136】
生データの分析には、CNN(Convolutional Neural Network)などの機械学習処理を利用してもよい。機械学習は、教師なし学習でもよいし、音声データから判断された要注意状況の内容を教師として、映像データと要注意状況の内容との関係を学習するなどの教師あり学習でもよい。
【0137】
一般的に、サーバ100のCPU処理能力は、要注意状況指摘装置20となる端末装置のCPU処理能力よりも高いので、本実施の形態のように、サーバ100で要注意状況の生データの分析処理や学習処理を行うことで、要注意状況指摘装置20でそれらの処理を行うよりも高級な処理ができる。
【0138】
なお、移動支援装置30の動作は実施の形態1と同様である。
【0139】
[変形例1]
情報収集システム10は、生データ分析部12bが要注意状況の生データの分析に用いた分析規則、または機械学習で得られた分析エンジンを、要注意状況指摘装置20に配信してもよい。すなわち、要注意状況モデル作成部12が、生データ分析部12bが用いた分析規則または分析エンジンを情報収集システム10からダウンロードし、要注意状況指摘装置20がその分析規則または分析エンジンを利用して、生データの分析を行えるようにしてもよい。
【0140】
この場合、要注意状況指摘装置20が、実施の形態2のように生データを含む要注意状況指摘情報を送信する生データ送信モードと、実施の形態1のように生データの分析結果である要注意状況の内容を含む要注意状況指摘情報を送信する分析結果送信モードとの2つの動作モードを有するようにしてもよい。生データそのものよりも分析結果のデータの方がデータ量は少ないため、分析結果送信モードは、通信リソースの削減に寄与できる。
【0141】
また、情報収集システム10は、要注意状況指摘装置20のハードウェアリソースを模擬した環境で学習処理を行い、学習ロジックを要注意状況指摘装置20に配信してもよい。
【0142】
[変形例2]
要注意状況モデル記憶部13は、有効性評価結果の受信履歴に基づいて、要注意状況モデル記憶部13に記憶された要注意状況モデルを整理するなどの学習処理を行ってもよい。例えば、一定の期間(例えば2年間)「有効」の評価を得ることができなかった要注意状況モデルを、要注意状況モデル記憶部13から削除してもよい。
【0143】
また、移動支援装置30が、「有効」と「無効」を示す有効性評価結果を情報収集システム10へ受信する場合、「無効」の評価の割合が高い要注意状況モデルを、要注意状況モデル記憶部13から削除してもよい。
【0144】
また、情報収集システム10は、「無効」の評価の割合が高い要注意状況モデルの指摘者IDの信頼度を下げてもよく、信頼度の低い指摘者IDを持つ要注意状況モデルを採用しないようにしてもよい。
【0145】
また、情報収集システム10は、有効性評価結果の受信履歴に基づいて、指摘者に付与する報酬の額を設定してもよい。例えば、情報収集システム10は、「有効」の評価の割合が高い要注意状況モデルの指摘者IDの信頼度を上げ、信頼度の高い指摘者IDの指摘者への報酬を、他の指摘者への報酬よりも高くしてもよい。
【0146】
<実施の形態3>
移動支援システムの運営者が、事業とした移動支援システムを運用し、移動支援装置30のユーザであるクライアントに、要注意状況モデルの配信料金を課金してもよい。
【0147】
図20は、実施の形態3に係る移動支援システムの構成を示す図である。図20の移動支援システムの構成は、図1の構成に対し、要注意状況指摘装置20に課金部17を追加したものである。
【0148】
課金部17は、クライアントの移動支援装置30と要注意状況モデルの配信契約の締結を実施し、契約を結んだ移動支援装置30に要注意状況モデルの配信料金を課金する。情報配信契約は、クライアントが移動支援装置30を操作することで行われる。例えば、1か月などの単位期間に対して単位課金が設定される。
【0149】
また、移動支援システムの運営者が、移動支援装置30をクライアントへレンタルする事業形態も考えられる。その場合、情報収集システム10の課金部17は、移動支援装置30のレンタル契約を結んだクライアントに対し、要注意状況モデルの配信料金に加え、移動支援装置30のレンタル料金を課金する。また、課金部17は、移動支援装置30を貸与されたクライアントに対し、定額制など特別な料金体系を適用してもよい。
【0150】
情報配信部14は、契約を結んだ移動支援装置30から要注意状況モデルの配信要求を受信した場合に、その移動支援装置30へ要注意状況モデルを配信する。
【0151】
[変形例1]
要注意状況モデルは、地理的種別、移動体種別、用途種別のうちの1つ以上によって分類され、情報配信部14が、移動支援装置30から指定された配信単位に応じた要注意状況モデルを、移動支援装置30へ配信するようにしてもよい。この場合、課金部17は、情報配信部14が配信した要注意状況モデルの配信単位に応じた配信料金を移動支援装置30に課金する。また、配信単位は、要注意状況モデルの配信期間および配信対象とする要注意状況モデルの種別に基づいて設定される。
【0152】
要注意状況モデルが地理的種別によって分類される場合、要注意状況モデルの地理的種別は、要注意状況モデルにおける要注意対象地点の位置に応じて定められ、例えば、県、州、国などの行政区分ごと、移動体が船舶の場合は海域ごとに定められるとよい。配信される要注意状況モデルの地理的種別が属するエリアが広いほど、要注意状況モデルの配信料金が高くなるようにしてもよい。
【0153】
また、要注意状況モデルの地理的種別は、道路種別ごとに定められてもよい。道路種別とは、高速道路、一般国道、市街地道路、山道などである。また、行政区分と道路種別とを組み合わせた地理的種別でもよい。
【0154】
なお、移動支援装置30から指定された配信単位に応じた要注意状況モデルを、移動支援装置30へ配信する変形例は、通信リソースの削減に寄与できるため、実施の形態3以外の他の実施の形態に適用してもよい。
【0155】
[変形例2]
要注意状況モデルは、対象となる移動体種別によって分類されてもよい。要注意状況モデルの移動体種別は、例えば、歩行者用、軽車両用、乗用車用、バス用、トラック用、特殊車両用、船舶用、航空機用などである。配信される要注意状況モデルの移動体種別の事故発生率が高いほど、要注意状況モデルの配信料金が高くなるようにしてもよい。
【0156】
[変形例3]
要注意状況モデルは、用途種別によって分類されてもよい。要注意状況モデルの用途種別は、宅配、引っ越し、送迎、荷物の運搬、動物の運搬などである。配信される要注意状況モデルの用途種別に応じて、要注意状況モデルの配信料金を変更してもよい。
【0157】
[変形例4]
要注意状況モデルの配信契約が切れた後は、例えば、新たな要注意状況モデルを配信しないが配信済みの要注意状況モデルを用いた移動支援装置30の使用を許容するなど、要注意状況モデルの配信制限を行ってもよく、必ずしも移動支援装置30の使用を禁止しなくてもよい。
【0158】
[変形例5]
要注意状況モデルの配信契約は、1台の移動支援装置30ごとに締結されるものに限られず、複数の移動支援装置30を管理する事業者(例えば、タクシー業者、運送業者、教習所運営者など)に対して一括して締結されてもよい。事業者は、複数の移動支援装置30を所有する事業者に限られず、例えば保険会社など、複数の移動支援装置30の管理のみを行う事業者でもよい。
【0159】
[変形例6]
変形例5において、クライアントである事業者が、要注意状況指摘装置20を搭載した指摘者車両200を所有する事業者であり、指摘者車両200の運転者、すなわち指摘者が事業者の従業員であってもよい。その場合、1台の要注意状況指摘装置20ごとに報酬が支払われるのではなく、事業者に一括して報酬が支払われてもよい。また、情報収集システム10の課金部17は、要注意状況モデルの配信料金の額から従業員が指摘した要注意状況に対する報酬の額を減額してクライアントに課金してもよい。指摘者車両200とクライアント車両300とは同一の車両でもよい。
【0160】
[変形例7]
移動支援装置30が報知の有効性を自動的に判断する場合、要注意状況モデルの配信料金の基本料を安価に設定し、要注意状況モデルが「有効」と評価された回数に応じた金額を加算してもよい。配信料金を安くするために、報知の前に要注意状況に気づくよう、クライアント車両300の運転者が安全運転に努めるようになるという効果がある。
【0161】
[変形例8]
移動支援システムの運営者が移動支援装置30をクライアントにレンタルする場合、情報収集システム10から、レンタルした移動支援装置30のプログラムを更新するようにしてもよい。情報収集システム10側で移動支援装置30のプログラムを管理することにより、サービスの一元管理が可能となる。また、移動支援装置30が課金条件や配信条件設定のためのHMI(Human Machine Interface)も一元管理できるので、保守性にすぐれた情報収集システム10や移動支援システムが実現できる。
【0162】
[変形例9]
移動支援システムの運営者が、要注意状況指摘装置20を指摘者へレンタルする事業形態も考えられる。情報収集システム10が要注意状況指摘装置20と端末認証を行うことにより、信頼のある要注意状況指摘装置20とだけ情報の授受を行うことができる。また、適当なタイミングで、情報収集システム10から要注意状況指摘装置20のプログラムを書き換える処理を行うことにより、要注意状況指摘装置20の性能統一と性能の向上を実現できる。
【0163】
また、情報収集システム10運営者は、要注意状況指摘装置20と移動支援装置30の両方を同一のものにレンタルしてもよい。
【0164】
<実施の形態4>
移動支援システムの事業形態としては、自動車保険など移動体に関する保険を運用する保険会社が移動支援システムを運営する形態が考えられる。
【0165】
図21は、実施の形態3に係る移動支援システムの構成を示す図である。図21の移動支援システムの構成は、図1の構成に対し、情報収集システム10に保険契約管理部18を追加したものである。
【0166】
保険契約管理部18は、情報収集システム10を運営する保険会社との保険契約を結んだ保険契約者であるクライアントの情報を管理する。保険契約管理部18には、保険契約を結んだクライアントのクライアント車両300に搭載された移動支援装置30のIDが登録されている。
【0167】
情報配信部14は、移動支援装置30から要注意状況モデルの配信要求を受信すると、配信要求の送信元の移動支援装置30のIDを認証し、それが保険契約者の移動支援装置30であることを認証できた場合に、要注意状況モデルを配信する。
【0168】
実施の形態4に係る移動支援システムは、保険会社と契約を結んだ保険契約者であるクライアントの移動支援を実施することで、事故の発生を予防して、保険会社が支払う保険金を低減させることが期待できる。また、保険契約者は、保険会社から質の高い移動支援サービスを受けることができる。
【0169】
[変形例1]
保険契約管理部18は、情報収集システム10を運営する保険会社との保険契約を結んだ保険契約者であるクライアントの情報に加え、保険契約者である指摘者の情報も管理してもよい。この場合、保険契約管理部18には、保険契約を結んだクライアントのクライアント車両300に搭載された移動支援装置30のIDと、保険契約を結んだ指摘者の指摘者車両200に搭載された要注意状況指摘装置20のIDとが登録される。
【0170】
保険契約者は、クライアント且つ指摘者であってもよい。つまり、同一の保険契約者が、指摘者車両200およびクライアント車両300の両方の運転者となってもよいし、指摘者車両200とクライアント車両300とが同一の車両であってもよい。
【0171】
情報収集システム10の報酬付与部16は、保険契約者である指摘者から提供された要注意状況指摘情報に対応する要注意状況モデルが「有効」と評価された場合に、報酬として、保険契約管理部18を通してその保険契約者の保険の等級を上げたり、保険料を割り引いたりするなど、契約条件を有利にすることを報酬としてもよい。情報収集システム10を運営する保険会社に優れた要注意状況指摘情報が集まる効果がある。
【0172】
[変形例2]
移動支援システムを運営する保険会社は、移動支援装置30を保険契約者であるクライアントにレンタルしてもよい。それにより、品質が揃った移動支援サービスを保険契約者に提供できる。
【0173】
上記の変形例1のように、保険契約者がクライアント且つ指摘者である場合、要注意状況指摘装置20と移動支援装置30とは一体的に構成されていてもよい。昨今の保険会社は、保険契約者にドライブレコーダをレンタルすることもある。例えば、図22のように、車両の走行時の状況を記録する状況記録装置41とともに、要注意状況指摘装置20および移動支援装置30を内蔵する多機能ドライブレコーダ40を保険会社が保険契約者にレンタルしてもよい。それにより、安価でコンパクトな移動支援システムが実現される。
【0174】
図22の多機能ドライブレコーダ40は、クライアント且つ指摘者である保険契約者の車両400(以下「保険契約者車両」という)が備える測位装置401、周辺検出装置402、運転者監視装置403、操作装置404および報知装置405に接続される。これらは、上述した指摘者車両200の測位装置201、運転者監視装置203、運転者監視装置203または操作装置204、あるいは、クライアント車両300の測位装置301、周辺検出装置302、運転者監視装置303、操作装置304または報知装置305と同様の機能のものでよい。また、測位装置401、周辺検出装置402、運転者監視装置403、操作装置404および報知装置405の一部または全部が、多機能ドライブレコーダ40に内蔵されてもよい。
【0175】
状況記録装置41は、保険契約者車両400の走行時に、測位装置401が測定した保険契約者車両400の位置の情報、周辺検出装置402が検出した保険契約者車両400の周辺状況の情報(例えば車両周辺の映像や音声など)、運転者監視装置403が検出した保険契約者車両400の運転者の状態の情報(例えば運転者の映像や車内の音声など)を、記録媒体に記録する。要注意状況指摘装置20は、保険契約者車両400の運転者が指摘した要注意状況の情報を含む要注意状況指摘情報を生成して、情報収集システム10に送信する。移動支援装置30は、情報収集システム10から配信された要注意状況モデルに基づいて、保険契約者車両400の運転支援を行う。
【0176】
[変形例3]
移動支援装置30が、保険契約者であるクライアント車両300の運転者の運転操作を監視し、要注意状況を報知したときに、運転者がその報知内容に応じた運転操作、つまり、報知された要注意状況を回避する運転操作を行った場合に、運転者(保険契約者)へ保険料減額の報酬を付与してもよい。クライアントを安全運転に寄与させる効果がある。
【0177】
<ハードウェア構成例>
図23および図24は、それぞれ情報収集システム10のハードウェア構成の例を示す図である。図1等に示した情報収集システム10の構成要素の各機能は、例えば図23に示す処理回路50により実現される。すなわち、情報収集システム10は、要注意状況指摘装置20から、要注意状況指摘装置20のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集し、収集された要注意状況指摘情報を基にして要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成し、要注意状況モデルを記憶し、要注意状況モデルを移動支援装置30に配信し、移動支援装置30から要注意状況モデルの有効性評価結果を受信し、有効と評価された要注意状況モデルの基となった要注意状況指摘情報の指摘者に報酬を付与するための処理回路50を備える。処理回路50は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ(中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる)を用いて構成されていてもよい。
【0178】
処理回路50が専用のハードウェアである場合、処理回路50は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものなどが該当する。情報収集システム10の構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されてもよいし、それらの機能がまとめて一つの処理回路で実現されてもよい。
【0179】
図24は、処理回路50がプログラムを実行するプロセッサ51を用いて構成されている場合における情報収集システム10のハードウェア構成の例を示している。この場合、情報収集システム10の構成要素の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせ)により実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。プロセッサ51は、メモリ52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、情報収集システム10は、プロセッサ51により実行されるときに、要注意状況指摘装置20から、要注意状況指摘装置20のユーザである指摘者が指摘した要注意状況の情報および指摘者の識別子を含む要注意状況指摘情報を収集する処理と、収集された要注意状況指摘情報を基にして要注意状況のモデルである要注意状況モデルを作成する処理と、要注意状況モデルを記憶する処理と、要注意状況モデルを移動支援装置30に配信する処理と、移動支援装置30から要注意状況モデルの有効性評価結果を受信する処理と、有効と評価された要注意状況モデルの基となった要注意状況指摘情報の指摘者に報酬を付与する処理と、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ52を備える。換言すれば、このプログラムは、情報収集システム10の構成要素の動作の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0180】
ここで、メモリ52は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置のほか、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0181】
以上、情報収集システム10の構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、情報収集システム10の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であってもよい。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路50でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ51としての処理回路50がメモリ52に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0182】
以上のように、情報収集システム10は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0183】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0184】
上記した説明は、すべての態様において、例示であって、例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0185】
10 情報収集システム、11 情報収集部、12 要注意状況モデル作成部、12a 生データ記憶部、12b 生データ分析部、13 要注意状況モデル記憶部、14 情報配信部、15 評価結果受信部、16 報酬付与部、17 課金部、18 保険契約管理部、20 要注意状況指摘装置、21 要注意状況指摘情報生成部、22 指摘者ID記憶部、23 通信部、30 移動支援装置、31 通信部、32 要注意状況モデル記憶部、33 報知判断部、34 有効性判定部、35 表示オブジェクト、40 多機能ドライブレコーダ、41 状況記録装置、50 処理回路、51 プロセッサ、52 メモリ、100 サーバ、200 指摘者車両、201 測位装置、202 周辺検出装置、203 運転者監視装置、204 操作装置、300 クライアント車両、301 測位装置、302 周辺検出装置、303 運転者監視装置、304 操作装置、305 報知装置、400 保険契約者車両、401 測位装置、402 周辺検出装置、403 運転者監視装置、404 操作装置、405 報知装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24