(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】可変厚さの遮熱コーティングを有するターボ機械翼形部
(51)【国際特許分類】
F01D 5/28 20060101AFI20250519BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20250519BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20250519BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20250519BHJP
F04D 29/24 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
F01D5/28
F01D5/14
F01D25/00 L
F01D9/02 101
F04D29/24 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032674
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2024-02-20
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ジェイムズ・ジャスパー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・アグード
(72)【発明者】
【氏名】メルボルン・ジェームズ・マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ライアン・ピルソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ダブリュー.・ケスター
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0272166(US,A1)
【文献】米国特許第08070454(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0085708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0254181(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0156049(US,A1)
【文献】特開2019-157689(JP,A)
【文献】特開平03-020451(JP,A)
【文献】特開平06-159003(JP,A)
【文献】米国特許第04492522(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0014962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/28
F01D 5/14
F01D 25/00
F01D 9/02
F04D 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用の翼形部(100)であって、
当該翼形部(100)が、
根元(102)と、
前記根元(102)から半径方向外側に離間した先端(104)であって、前記根元(102)
及び前記先端(104)
が、それらの間に前記翼形部(100)のスパン(128)を画定する先端(104)と、
前記根元(102)から前記先端(104)まで前記翼形部(100)の前記スパン(128)にわたって延びる前縁(124)と、
流れ方向に沿って前記前縁(124)の下流にある後縁(126)であって、前記根元(102)から前記先端(104)まで前記翼形部(100)の前記スパン(128)にわたって延びる後縁(126)と、
前記根元(102)と前記先端(104)との間に延び、前記前縁(124)と前記後縁(126)との間に延びる正圧側面(120)と、
前記根元(102)と前記先端(104)との間に延び、前記前縁(124)と前記後縁(126)との間に延びる負圧側面(122)であって、前記正圧側面(120)に対向する負圧側面(122)と、
前記正圧側面(120)
及び前記負圧側面(122)上の遮熱コーティング(108)
と
を備えており、前記遮熱コーティング(108)
が、ベース層(110)
及びトップコート(112)を備え
ており、前記ベース層(110)の厚さ
が、
前記正圧側面(120)
及び前記負圧側面(122)の各々
で前記前縁(124)から前記後縁(126)まで一定の移行で減少して前記前縁(124)で最大の厚さとなり、前記トップコート(112)の厚さが、前記正圧側面(120)及び前記負圧側面(122)の各々で前記前縁(124)から前記後縁(126)に向かって増加する、翼形部(100)。
【請求項2】
前記前縁(124)における前記ベース層(110)の前記厚さ
が、前記前縁(124)における前記トップコート(112)の厚さよりも大きい、請求項1に記載の翼形部(100)。
【請求項3】
前記後縁(126)に近接する前記ベース層(110)の前記厚さ
が、前記後縁(126)に近接する前記トップコート(112)の厚さよりも小さい、請求項1に記載の翼形部(100)。
【請求項4】
前記遮熱コーティング(108)
の総厚
が、前記正圧側面(120)
及び前記負圧側面(122)の各々において前記翼形部(100)の大部分にわたって前記前縁(124)から前記後縁(126)への方向に沿って一定である、請求項1に記載の翼形部(100)。
【請求項5】
前記ベース層(110)の前記厚さ
が、前記翼形部(100)の前記スパン(128)にわたって変化する、請求項1に記載の翼形部(100)。
【請求項6】
基材(106)をさらに備え
ており、前記遮熱コーティング(108)
が、前記基材(106)の外面(107)上に形成される、請求項1に記載の翼形部(100)。
【請求項7】
前記基材(106)の前記外面(107)上に直接形成されたボンドコート(114)をさらに備え
ており、前記遮熱コーティング(108)
が、前記ボンドコート(114)上に直接形成される、請求項
6に記載の翼形部(100)。
【請求項8】
前記基材(106)
が金属材料を含み、前記遮熱コーティング(108)
がセラミック材料を含む、請求項
6に記載の翼形部(100)。
【請求項9】
ターボ機械であって、当該ターボ機械が、
圧縮機と、
前記圧縮機の下流に配置された燃焼器と、
前記燃焼器の下流に配置されたタービンと
を備え
ており、前記タービン
が、ロータブレード(30)
及びステータベーン(29)を備え
ており、前記ロータブレード(30)
及び前記ステータベーン(29)の少なくとも一方
が、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の翼形部(100)を備え
ている、ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ターボ機械に関する。より詳細には、本開示は、そのステータベーンまたはロータブレードなどのターボ機械用の翼形部に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、一般に、圧縮機セクションと、燃焼セクションと、タービンセクションと、排気セクションとを含む。圧縮機セクションは、ガスタービンエンジンに入る作動流体の圧力を徐々に上昇させ、この圧縮された作動流体を燃焼セクションに供給する。圧縮された作動流体および燃料(例えば、天然ガス)は、燃焼セクション内で混合され、燃焼チャンバ内で燃焼して高圧および高温の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、燃焼セクションからタービンセクションに流入し、そこで膨張して仕事を発生する。例えば、タービンセクションにおける燃焼ガスの膨張は、例えば、発電機に接続されたロータシャフトを回転させ、電気を発生することができる。次いで、燃焼ガスは、排気セクションを介してガスタービンから排出される。
【0003】
タービンセクションは、一般に、複数のステータベーンと、対応する複数のロータブレードとを含む。各ステータベーンおよび各ロータブレードは、燃焼ガスの流れの中に位置決めされた翼形部を含み、したがって翼形部は、高温ガス経路構成要素と呼ばれる。各ステータベーンおよび各ロータブレードの翼形部は、典型的には、ステータベーンの場合には内側プラットフォームなどのプラットフォームから半径方向外側に延びる。各ステータベーンの翼形部は、ステータベーン翼形部の半径方向外側端部における外側プラットフォームに延びる。各ロータブレードの翼形部は、ロータブレード翼形部の半径方向外側端部における先端に延びる。特定のロータブレードは、翼形部の半径方向外側端部に結合された先端シュラウドを含むことができる。翼形部とプラットフォームとの間の各移行部および/または翼形部と先端シュラウドとの間の移行部には、フィレットを設けることができる。
【0004】
翼形部は、前縁から前縁の下流の後縁に延びることができ、正圧側面および負圧側面などの空気力学的表面をその間に画定することができる。翼形部は高温ガス経路構成要素であるため、空気力学的表面などの翼形部の表面は、典型的には、高温ガス経路の高温環境に対する耐性を高めるように処理される。そのような表面処理の1つは、遮熱コーティングである。従来の翼形部では、遮熱コーティングの各層は、スパン方向(すなわち、根元から先端まで)と流れ方向(すなわち、前縁から後縁まで)の両方において、空気力学的表面にわたってほぼ均一であり、例えば、一定の均一な厚さを有する。しかし、翼形部の周囲の様々な場所に存在する条件は異なり得、熱障壁内の層の性質も変化し得る。例えば、ある層は物理的衝撃に対してより堅牢であり得るが、別の層はより良好な温度耐性を提供し得る。
【0005】
したがって、翼形部の選択された領域または部分に堅牢な物理的特性を提供する遮熱コーティングを有するターボ機械用の翼形部が有用であろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示によるシステムの態様および利点は、以下の説明に部分的に記載されており、または説明から明らかとなり、または本技術の実践を通して学ぶことができる。
【0007】
一実施形態によれば、ターボ機械用の翼形部が提供される。翼形部は、根元と、根元から半径方向外側に離間した先端とを含む。翼形部のスパンは、根元と先端との間に画定される。翼形部はまた、根元から先端まで翼形部のスパンにわたって延びる前縁と、流れ方向に沿って前縁の下流にある後縁とを含む。後縁はまた、根元から先端まで翼形部のスパンにわたって延びる。翼形部は、根元と先端との間に延び、前縁と後縁との間に延びる正圧側面と、根元と先端との間に延び、前縁と後縁との間に延びる負圧側面とをさらに含む。負圧側面は、正圧側面に対向する。翼形部はまた、正圧側面および負圧側面上に遮熱コーティングを含む。遮熱コーティングは、ベース層およびトップコートを含む。ベース層の厚さは、前縁におけるベース層の最大厚さを伴って正圧側面および負圧側面の各々にわたって変化する。
【0008】
別の実施形態によれば、ターボ機械が提供される。ターボ機械は、圧縮機と、圧縮機の下流に配置された燃焼器と、燃焼器の下流に配置されたタービンとを含む。タービンは、ロータブレードおよびステータベーンを含む。ロータブレードおよびステータベーンの少なくとも一方は、翼形部を含む。翼形部は、根元と、根元から半径方向外側に離間した先端とを含む。翼形部のスパンは、根元と先端との間に画定される。翼形部はまた、根元から先端まで翼形部のスパンにわたって延びる前縁と、流れ方向に沿って前縁の下流にある後縁とを含む。後縁はまた、根元から先端まで翼形部のスパンにわたって延びる。翼形部は、根元と先端との間に延び、前縁と後縁との間に延びる正圧側面と、根元と先端との間に延び、前縁と後縁との間に延びる負圧側面とをさらに含む。負圧側面は、正圧側面に対向する。翼形部はまた、正圧側面および負圧側面上に遮熱コーティングを含む。遮熱コーティングは、ベース層およびトップコートを含む。ベース層の厚さは、前縁におけるベース層の最大厚さを伴って正圧側面および負圧側面の各々にわたって変化する。
【0009】
本システムのこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照して、よりよく理解されよう。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものであるが、本技術の実施形態を例示し、明細書における説明と併せて本技術の原理を説明するのに役立つ。
【0010】
当業者へと向けられた本システムおよび方法の作製および使用の最良の態様を含む、本システムの完全かつ実施可能な開示が、添付の図を参照する本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態による、ターボ機械の概略図である。
【
図2】本開示の実施形態による、
図1のガスタービンエンジンなどのターボ機械のステータベーンまたはロータブレードに組み込むことができる例示的な翼形部の斜視図である。
【
図5】
図3に示す翼形部の第1の中間部分の拡大図である。
【
図6】
図3に示す翼形部の第2の中間部分の拡大図である。
【
図7】本開示の1つまたは複数の実施形態による、
図3に示す翼形部の後部の拡大図である。
【
図8】本開示の1つまたは複数の追加の実施形態による、
図3に示す翼形部の後部の拡大図である。
【
図9】本開示の1つまたは複数のさらなる実施形態による、
図3に示す翼形部の後部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および図面における符号の反復使用は、本技術の同じまたは類似の特徴もしくは要素を表すことを意図している。
【0013】
ここで、本システムの実施形態を詳細に参照するが、その1つまたは複数の例が添付の図面に示されている。各例は、本技術の説明のために提供するものであって、本技術を限定するものではない。実際、特許請求される技術の範囲または趣旨を逸脱せずに、様々な修正および変更が本技術において可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または記載された特徴は、またさらなる実施形態をもたらすために、別の実施形態において使用することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にあるそのような修正および変更を包含することを意図している。
【0014】
詳細な説明は、図面の特徴を参照するために、数字および文字の符号を使用する。図面および説明における類似または同様の符号は、本技術の類似または同様の部品を指して使用されている。本明細書で使用する場合、「第1の」、「第2の」、および「第3の」という用語は、ある構成要素を別の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の位置または重要性を示すことを意図するものではない。
【0015】
本明細書で使用する場合、「上流」(または「前方」)、および「下流」(または「後方」)という用語は、流体経路における流体の流れに関する相対的な方向を指す。例えば、「上流」は、流体が流れてくる方向を指し、「下流」は、流体が流れていく方向を指す。「半径方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線に実質的に垂直な相対的な方向を指し、「軸方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線に実質的に平行および/または同軸に整列する相対的な方向を指し、「円周方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線の周囲に延びる相対的な方向を指す。
【0016】
「概して」、または「約」などの近似の用語は、記載された値のプラスマイナス10パーセントの範囲内の値を含む。角度または方向の文脈で使用されるとき、そのような用語は、記載された角度または方向のプラスマイナス10度の範囲を含む。例えば、「概して垂直」は、任意の方向、例えば、時計回りまたは反時計回りの垂直から10度の範囲内の方向を含む。
【0017】
産業用または陸上用のガスタービンが本明細書に示されて説明されているが、本明細書に示されて説明される本システムは、特許請求の範囲に特に明記されない限り、陸上用および/または産業用ガスタービンに限定されない。例えば、本明細書に記載の本技術は、限定はしないが、蒸気タービン、航空機用ガスタービン、または船舶用ガスタービンを含む任意のタイプのターボ機械に使用することが可能である。
【0018】
ここで図面を参照すると、図全体を通して同一の数字は同じ要素を示し、
図1は、ターボ機械の一実施形態の概略図を示しており、これは、図示の実施形態ではガスタービン10である。本開示のガスタービン10は、ガスタービンエンジンである必要はなく、蒸気タービンエンジンまたは他の適切なエンジンなどの任意の適切なターボ機械であってもよいことを理解されたい。
【0019】
示すように、ガスタービン10は、一般に、入口セクション12と、入口セクション12の下流に配置された圧縮機セクション14と、圧縮機セクション14の下流に配置された燃焼器セクション16内の複数の燃焼器(図示せず)と、燃焼器セクション16の下流に配置されたタービンセクション18と、タービンセクション18の下流に配置された排気セクション20とを含む。加えて、ガスタービン10は、圧縮機セクション14とタービンセクション18との間に結合された1つまたは複数のシャフト22を含むことができる。
【0020】
圧縮機セクション14は、一般に、複数のロータディスク24(そのうちの1つが示されている)と、各ロータディスク24から半径方向外側に延び、各ロータディスク24に接続されている複数のロータブレード26とを含むことができる。次に、各ロータディスク24は、圧縮機セクション14を通って延びるシャフト22の一部に結合されるか、またはその一部を形成してもよい。
【0021】
タービンセクション18は、一般に、複数のロータディスク28(そのうちの1つが示されている)と、各ロータディスク28から半径方向外側に延び、各ロータディスク28に接続されている複数のロータブレード30とを含むことができる。次に、各ロータディスク28は、タービンセクション18を通って延びるシャフト22の一部に結合されるか、またはその一部を形成してもよい。タービンセクション18は、シャフト22の一部およびロータブレード30を円周方向に囲む外側ケーシング31をさらに含み、それによってタービンセクション18を通る高温ガス経路32を少なくとも部分的に画定する。タービンセクションはまた、高温ガス経路32内でケーシング31に取り付けられた複数のステータベーン29を含むことができる。
【0022】
動作中、空気などの作動流体が入口セクション12を通って圧縮機セクション14に流入し、ここで空気が徐々に圧縮され、それにより加圧空気を燃焼器セクション16の燃焼器に提供する。加圧空気は燃料と混合され、各燃焼器内で燃焼されて燃焼ガス34を発生する。燃焼ガス34は、高温ガス経路32を通って燃焼器セクション16からタービンセクション18に流入し、ここでエネルギー(運動エネルギーおよび/または熱エネルギー)が燃焼ガス34からロータブレード30に伝達されることにより、シャフト22が回転する。次いで、機械的回転エネルギーを圧縮機セクション14への動力供給および/または発電に使用することができる。タービンセクション18から排出された燃焼ガス34は次に、排気セクション20を介してガスタービン10から排気され得る。
【0023】
図2は、ガスタービン10のタービンセクション18のロータブレード30および/またはステータベーン29に組み込むことができる例示的な翼形部100の斜視図を示している。
図2に示されるように、翼形部100は、根元102から先端104に半径方向外側に延びることができる。翼形部100は、正圧側面120と、対向する負圧側面122(
図3)とを含む。正圧側面120および負圧側面122は、燃焼ガス34(
図1)の流れに配向される翼形部100の前縁124で共に接合されるかまたは相互接続される。正圧側面120および負圧側面122はまた、前縁124から下流に離間した翼形部100の後縁126で共に接合されるかまたは相互接続される。正圧側面120は概して凹状であり、負圧側面122は概して凸状である。
【0024】
特に
図2を参照すると、翼形部100は、根元102から先端104に延びるスパン128を画定する。特に、根元102は、スパン128の0パーセント(0%)に位置決めされ、先端104は、スパン128の100パーセント(100%)に位置決めされる。
【0025】
図3~
図9は、例示的な翼形部100の様々な断面図を示す。
図3~
図9の断面図の各々は、一定のスパン断面であることに留意されたい。例えば、
図3は、スパン128の約50パーセント(50%)で取られてもよく、
図3に示す翼形部100を通る断面全体は、スパン128に沿った同じ位置、例えば、スパン128の約50パーセント(50%)にある。
【0026】
例えば、
図3に見られるように、翼形部100は、キャンバ線118を画定する。より具体的には、キャンバ線118は、前縁124から後縁126に延びる。キャンバ線118はまた、正圧側面120と負圧側面122との間に位置決めされ、それらから等距離にある。また、
図3に一般的に見られるように、遮熱コーティング108を翼形部100の最外面に設けることができる。例えば、
図3に示されるように、遮熱コーティング108は、正圧側面120および負圧側面122の各々に設けられてもよい。
【0027】
図4は、翼形部100の前縁部分、例えば、前縁124およびそれに近接する翼形部100の部分を含む翼形部100の一部の拡大図を示す。
図5は、翼形部100の中央前方部分、例えば、前縁124の後方かつ翼形部100の中間点の前方にある翼形部100の一部の拡大図を示し、中間点は、燃焼ガスの流れの方向に沿って画定される。
図6は、翼形部100の中央後方部分、例えば、翼形部100の中間点の後方かつ後縁126の前方にある翼形部100の一部の拡大図を示す。
図7は、1つまたは複数の実施形態による、翼形部100の後縁部分、例えば、後縁126およびそれに近接する翼形部100の部分を含む翼形部100の一部の拡大図を示す。
図8および
図9は、1つまたは複数の追加の実施形態による、翼形部の後縁部分のさらなる図を示す。
【0028】
図3~
図9に見られるように、翼形部100のベースまたはコア材料は、遮熱コーティング108が適用される基材106を含むことができる。例えば、基材106は、鉄およびニッケルまたはコバルトを含む合金、例えば、高温鋼、超合金、および/または他の適切な金属合金などの金属材料であってもよく、またはそれらを含んでもよい。遮熱コーティング108は、例えば、セラミック材料を含むことができる。遮熱コーティング108は、一般に、基材106の外面107上に形成される。様々な実施形態において、翼形部100は、外面107上に直接遮熱コーティング108を含むことができ、または基材106の外面107上に直接形成されたボンドコート114を含むことができる。ボンドコート114が設けられる実施形態では、遮熱コーティング108は、ボンドコート114上に直接形成されてもよい。
【0029】
図4~
図9に見られるように、遮熱コーティング108は、複数の層を含むことができる。例えば、遮熱コーティング108は、基材106により近いベース層110と、ベース層110の外側および/または上のトップコート112とを含み得る。
【0030】
ベース層110の厚さは、正圧側面120および負圧側面122の各々にわたって変化してもよい。例えば、ベース層110の厚さは、正圧側面120および負圧側面122の各々にわたって減少してもよい。少なくともいくつかの実施形態では、ベース層110の厚さは、前縁124における最大から後縁126における最小まで減少してもよい。前縁124におよびその周囲にベース層110の最大厚さを設けることは、翼形部100の前縁部分に改善された物理的抵抗を有利に提供することができ、これは、翼形部100の前縁部分が翼形部100の下流部分よりも物理的衝撃および/または浸食を受ける可能性が高いときに有利であり得る。
【0031】
したがって、様々な実施形態において、前縁124におけるベース層110の厚さは、前縁124におけるトップコート112の厚さよりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、ベース層110の厚さは、正圧側面120および負圧側面122の各々にわたって前縁124から後縁126まで連続的に先細になってもよい。いくつかの実施形態では、後縁126におけるベース層110の厚さは、後縁126におけるトップコート112の厚さよりも小さくてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、遮熱コーティング108は、前縁124においてベース層110のみで構成されてもよく、例えば、ベース層110対トップコート112の比は、前縁部分において100:0であってもよく、前縁124にトップコート112が存在しなくてもよい。代替の実施形態では、遮熱コーティング108は、約90:10、例えば約80:20のベース層110対トップコート112の比など、前縁におよびその周囲に主にベース層110を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、例えば、
図7に示されるように、遮熱コーティング108を後縁126に設けなくてもよい。例えば、そのような実施形態では、ベース層110とトップコート112の両方は、
図7に示されるように、後縁126でまたはその近傍でゼロ厚まで先細に減少してもよい。
【0034】
他の実施形態では、遮熱コーティング108は、後縁126にわたって連続してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、後縁126における遮熱コーティング108の層の割合は、前縁124における割合と同じまたは同様であってもよい(例えば、
図4に示されるように)。そのような実施形態では、例えば、
図8に示されるように、トップコート112は、後縁126においてまたは近づくにつれて厚さが先細に減少してもよく、その結果、ベース層110対トップコート112の比は、後縁部分において100:0であってもよく、後縁126にトップコート112が存在しなくてもよい。加えて、上述のような前縁124と同様に、遮熱コーティング108は、約90:10、例えば約80:20のベース層110対トップコート112の比など、後縁126におよびその周囲に主にベース層110を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、例えば、
図9に示されるように、遮熱コーティング108の両方の層、例えば、ベース層110およびトップコート112は、後縁126の周囲にほぼ一定の厚さで後縁126に巻き付くことができる。
【0036】
再び
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、ベース層110の厚さが最大である翼形部100の前縁部分および/または領域もしくは一部は、翼形部100上の高衝撃ゾーン130を包含することができる。高衝撃ゾーン130は、翼形部100の残りの部分、特に、その空気力学的表面120および122の残りの部分に対して、描写領域130内の物理的衝撃および/または浸食の比較的高い確率を指すことに留意されたい。加えて、高衝撃ゾーン130は、前縁124に関してほぼ対称であり、正圧側120(
図2に示す)と負圧側122の両方において翼形部100の長さに沿ってほぼ同じ距離にわたって延びることを理解されたい。
【0037】
上述したように、翼形部100の長さは、流れ方向に沿って画定される。少なくともいくつかの実施形態では、前縁部分は、高衝撃ゾーン130と同一の広がりを有してもよく、例えば、ベース層110の最大厚さは、前縁124におよび高衝撃ゾーン130全体に設けられてもよい。前縁124から後縁126に移ると、ベース層110の厚さは、領域130において最大であってもよく、第1の中間ゾーン132において減少してもよく、第2の中間ゾーン134において再び減少してもよい。結果として、ベース層110の厚さは、第2の中間ゾーン134では第1の中間ゾーン132よりも小さくなり得る。また、ベース層110の厚さは、下流または後方ゾーン136で再び減少することができる。いくつかの実施形態では、ベース層110の厚さは、後縁126および/または
図2の136によって示される後方ゾーンの領域内で最小であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、ベース層110の最小厚さは、全遮熱コーティング108の約70パーセント(70%)以下、例えば約60パーセント(60%)以下、例えば約50パーセント(50%)以下、例えば約40パーセント(40%)以下、または例えば約30パーセント(30%)以下を占めてもよい。
【0039】
さらに
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、ベース層110の厚さはまた、翼形部100のスパン128にわたって変化してもよい。例えば、遮熱コーティング108内のベース層110対トップコート112の比は、根元102における翼形部100の全長にわたってベース比、例えば、ベース層110の最小厚さであってもよく、ベース層110の厚さは、スパン128の約10パーセント(10%)~約20パーセント(20%)で増加してもよい。すなわち、遮熱コーティング108は、後方ゾーン136におけるベース層110の最小厚さから、スパン128の約5パーセント(5%)以上、例えばスパン128の約10パーセント(10%)、例えばスパン128の約20パーセント(20%)、例えばスパン128の約30パーセント(30%)で、および/またはスパン128の約5パーセント(5%)~約30パーセント(30%)まで延びるゾーン内で、中間ゾーン134または132の一方に移行することができる。様々な実施形態において、ベース層110の厚さにおける第2のスパン方向の増加、例えば、第2の中間ゾーン134から第1の中間ゾーン132への移行があってもよく、これは、スパン128の約10パーセント(10%)以上、例えばスパン128の約20パーセント(20%)、例えばスパン128の約30パーセント(30%)、例えばスパン128の約40パーセント(40%)で、および/またはスパン128の約10パーセント(10%)~スパン128の約40%(40%)まで延びるゾーン内で発生し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、前縁124におけるベース層110の厚さは、翼形部100のスパン128にわたって変化してもよく、また、後縁126などの翼形部100の他の部分においてスパン128にわたって一定であってもよい。そのような実施形態では、ベース層110の最大厚さは、前縁124、特に前縁124上のほぼ中間スパン点(例えば、約50パーセントのスパン)に画定されてもよい。例えば、ベース層110の最大厚さは、スパン128の約40パーセントから外側に、例えば、40パーセントのスパンから始まって100パーセントのスパンまで続き、例えば約50パーセントのスパンから外側に、または例えば約60パーセントのスパンから外側に設けられてもよい。
【0041】
さらに、追加の実施形態は、スパン方向と流れ方向の一方または両方において、例えば、翼形部100の長さに沿って、より多くのまたはより少ない数の移行部を含むことができることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態は、1つの中間ゾーンのみ、または3つの中間ゾーン、4つの中間ゾーン、またはそれ以上を含んでもよい。ベース層110の厚さにおける1つまたは複数の移行は、一般に漸進的に先細になり、したがって
図2の様々なゾーンを示す線は例示のみを目的としており、ベース層110の様々な厚さの領域間の鋭い境界として理解されるべきではない。加えて、いくつかの実施形態は、ベース層110の厚さの連続的な変化を含んでもよく、したがってベース層110の厚さにおける実質的に無限または一定の移行が存在する。例えば、遮熱コーティング108が、例えば、
図3に示されるように翼形部100の周囲に連続しているとき、ベース層110の様々な厚さは、したがって翼形部100の周辺に実質的に無限のループを形成することができる。
【0042】
少なくともいくつかの実施形態では、遮熱コーティング108の総厚は、例えば、翼形部100の長さが流れ方向に沿って画定される場合、少なくとも前縁124から翼形部100の長さの少なくとも約75パーセント(75%)までなど、翼形部100の大部分にわたって同じであってもよい。例えば、遮熱コーティング108の全体の厚さは、翼形部100の長さの少なくとも約85パーセント(85%)、例えば翼形部100の長さの少なくとも約90パーセント(90%)、例えば翼形部100の長さの少なくとも約95パーセント(95%)、例えば翼形部100の長さの約98パーセント(98%)またはそれ以上にわたって一定であってもよい。いくつかの実施形態では、遮熱コーティング108の総厚は、前縁124から後縁126まで翼形部100の全長にわたって一定であってもよい。翼形部100の長さの全部または大部分にわたって遮熱コーティング108に均一かつ一定である全体の厚さを設けることは、翼形部100のバランス、例えば、質量分布を有利に改善することができ、また、上述したように、比較的厚いベース層110を有する前縁124および/または前縁部分における物理的衝撃および/または浸食に対する改善された耐性を可能にする。
【0043】
本明細書は、最良の態様を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意のデバイスまたはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含む場合、あるいは特許請求の範囲の文言との実質的な相違がない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。
【符号の説明】
【0044】
10 ガスタービン
12 入口セクション
14 圧縮機セクション
16 燃焼器セクション
18 タービンセクション
20 排気セクション
22 シャフト
24 ロータディスク
26 ロータブレード
28 ロータディスク
29 ステータベーン
30 ロータブレード
31 外側ケーシング
32 高温ガス経路
34 燃焼ガス
100 翼形部
102 根元
104 先端
106 基材
107 外面
108 遮熱コーティング
110 ベース層
112 トップコート
114 ボンドコート
118 キャンバ線
120 正圧側面
122 負圧側面
124 前縁
126 後縁
128 スパン
130 高衝撃ゾーン、領域
132 第1の中間ゾーン
134 第2の中間ゾーン
136 後方ゾーン