(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】着用者の眼球の異常屈折を矯正すべく適合された能動レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20250519BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20250519BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/06
G02B5/32
(21)【出願番号】P 2021572032
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2020065650
(87)【国際公開番号】W WO2020245375
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ル・ソー
(72)【発明者】
【氏名】エステル・ネッテ
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・フィヤード
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535022(JP,A)
【文献】米国特許第07517083(US,B2)
【文献】特表2007-531912(JP,A)
【文献】特開2017-173847(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041866(WO,A1)
【文献】特表2013-522696(JP,A)
【文献】特表2018-500609(JP,A)
【文献】特表2009-525835(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03410177(EP,A1)
【文献】特開2010-113358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02B 5/18;5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の眼球の異常屈折を矯正する前記着用者の処方に基づいて第1の光学機能を有する
屈折領域を有するホルダーを備え、前記着用者の眼球の前方で着用されることが意図され、
前記着用者の眼球の瞳孔よりも小さい複数の活性化可能光学素子を備えた眼用レンズであって、
第1の状態では、前記活性化可能光学素子は、前記眼用レンズの残りの部分と共に、網膜上に遠くの物体の像を結
び前記着用者に鮮明な像を与えるのに寄与し、
第2の状態では、前記活性化可能光学素子は、前記着用者の前記眼球の前記網膜上に像を結ばず、
前記屈折領域が前記第1の光学機能を有することによって、前記着用者に鮮明な像を与えると共に前記眼球の前記異常屈折の進行を遅延させるという第2の光学機能を有し、
前記第2の光学機能は、同心環状
に配置された少なくとも3つの活性化可能光学素子によりサポートされる、眼用レンズ。
【請求項2】
前記第2の状態において、前記活性化可能光学素子は、前記着用者の眼球の網膜以外で結像するという第2の光学機能を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記活性化可能光学素子は、球面度数を有する、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記活性化可能光学素子は、非球面度数を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記活性化可能光学素子は、屈折率が温度に伴って10
-3/℃以上の速度で変化する熱光学材料を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記熱光学材料の温度を変更するように配置された少なくとも1つの電極を更に備え、前記少なくとも1つの電極は、80%超の透過率を有する導電材料で作られる、請求項5に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
第1の屈折率を有する第1の基板と、
前記第1の屈折率を有する第2の基板であって、前記第2の基板は、前記第1の基板に面し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される電気活性材料であって、前記電気活性材料は、第1の状態において前記基板の前記屈折率に等しい屈折率を有する、電気活性材料と、
前記電気活性材料に面する前記第1の基板の表面に配置される第1の導電層と、
前記電気活性材料に面する前記第2の基板の表面に配置される第2の導電層と、
を更に備え、
前記電気活性材料に面する前記基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子を含み、
第1の状態では、前記第1の基板及び前記第2の基板、前記電気活性材料、及び前記少なくとも1つの活性化可能光学素子は、同じ屈折率を有し、前記第1の光学機能に参加し、第2の状態では、前記電気活性材料の屈折率は変更され、それにより、前記少なくとも1つの活性化可能光学素子の前記第2の光学機能を活性化する、請求項1~4の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
第1の屈折率を有する第1の基板と、
前記第1の屈折率を有する第2の基板であって、前記第2の基板は、前記第1の基板に面し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される第1の液体であって、前記第1の液体は、前記第1の基板の屈折率及び前記第2の基板の屈折率に等しい第1の屈折率を有する、第1の液体と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される活性化可能ポンプと、
を更に備え、
前記第1の液体に面する前記基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子を備え、
第1の状態では、前記第1の基板及び前記第2の基板、前記第1の液体、及び前記少なくとも1つの活性化可能光学素子は、同じ屈折率を有し、前記第1の光学機能に参加し、第2の状態では、前記活性化可能ポンプは前記第1の液体を、前記第1の基板の屈折率及び前記第2の基板の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の液体に切り替え、それにより、前記少なくとも1つの活性化可能光学素子の前記第2の光学機能を活性化する、請求項1~4の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
第1の屈折率を有する第1の基板と、
前記第1の屈折率を有する第2の基板であって、前記第2の基板は、前記第1の基板に面し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、少なくとも1つの活性化可能光学素子を備える超薄変形可能膜と、
前記第1の基板と前記超薄変形可能膜との間に配置される第1の液体であって、前記第1の液体は第1の屈折率を有する、第1の液体と、
前記第2の基板と前記超薄変形可能膜との間に配置される第2の液体であって、前記第2の液体は、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する、第2の液体と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される活性化可能ポンプと、
を更に備え、
第1の状態では、前記少なくとも1つの活性化可能光学素子は、前記眼用レンズの前面と同じ曲率を有し、
第2の状態では、前記活性化可能ポンプは、前記第2の液体の圧力を変更して、前記超薄変形可能膜を変形させ、前記少なくとも1つの活性化可能光学素子の曲率を変更し、それにより、前記活性化可能光学素子の前記第2の光学機能を活性化する、請求項1~4の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
第1の屈折率を有する第1の基板と、
前記第1の屈折率を有する第2の基板であって、前記第2の基板は、前記第1の基板に面し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される第1の誘電性液体であって、前記第1の誘電性液体は第1の屈折率を有する、第1の誘電性液体と、
前記第1の誘電性液体と非混和性であり、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される第2の誘電性液体であって、前記第2の誘電性液体は、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率及び前記第1の誘電性液体の誘電率よりも低い誘電率を有する、第2の誘電性液体と、
液滴を形成する前記第2の誘電性液体に面する前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも1つの表面に配置される少なくとも1つの導電層であって、前記第1の誘電性液体は周囲を形成する、少なくとも1つの導電層と、
を更に備え、
第1の状態では、前記少なくとも1つの導電層は、前記眼用レンズの前面と同じ曲率を有する液滴に前記第2の誘電性液体を成形する電場を生成し、第2の状態では、前記少なくとも1つの導電層は、より弱い電場を有する領域に向かって縮小する前記第2の誘電性液体に、前記眼用レンズの表面曲率と異なる表面曲率を有する前記活性化可能光学素子を強制的に形成させる誘電力を生成する不均一電場を生み出す、請求項1~4の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
第1の屈折率を有する基板と、
前記着用者に面する前記基板の面に配置される少なくとも1つのホログラフィック光学素子と、
少なくとも1つの活性化可能画像源と、
を更に備え、
第1の状態では、前記基板及び前記少なくとも1つのホログラフィック光学素子は同じ屈折率を有し、前記第1の光学機能に参加し、第2の状態では、前記少なくとも1つの活性化可能画像源は、前記少なくとも1つのホログラフィック光学素子で反射されて前記着用者の前記眼球に向かい、それにより、前記活性化可能光学素子の前記第2の光学機能を活性化する光を生成する、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
前記着用者の前記眼球の前記異常屈折は近視に対応し、近視では、前記活性化可能光学素子は、光線を前記着用者の網膜上で結像しない、請求項1~11の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記着用者の前記眼球の前記異常屈折は近視に対応し、近視では、前記活性化可能光学素子は、光線を前記着用者の網膜の前方で結像する、請求項1~12の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
データを受信するように構成された受信手段を更に備え、前記眼用レンズの前記第1の状態と前記第2の状態との間の遷移は、前記受信手段が受信したデータに基づいてリアルタイムで駆動される、請求項1~13の何れか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項15】
前記受信手段が受信したデータは視距離又は視角に関連する、請求項14に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の眼球の異常屈折を矯正すべく適合されたレンズに関し、より詳細には、着用者の上記眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく第1の光学機能と、着用者の眼球の網膜以外で結像して、眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の活性化可能光学機能とを有する能動レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼球の近視は、眼球が遠距離対象を網膜の前方で結像することにより特徴付けられ、遠視は眼球が遠距離対象を網膜の後方で結像することにより特徴付けられる。近視は通常、負の屈折力を提供する凹レンズを用いて矯正され、遠視は通常、正の屈折力を提供する凸レンズを用いて矯正される。
【0003】
従来型の単焦点光学レンズを用いて視力が矯正されている人々、特に児童が近距離に位置する対象を見ている、すなわち近方視状態にある場合に不正確に結像されることが観察されている。遠方視が矯正された近視児童についても、当該結像不良に起因して近くにある対象の画像も網膜の後方に、極端な場合は中心窩領域に形成されてしまう。
【0004】
上述のような結像不良は上述のような個人の近視の進行に影響を及ぼし得る。上記人々の大多数において、長時間にわたり集中力を要する手元作業に一部起因して近視の程度が時間と共に悪化する傾向が見て取れる。
【0005】
特に、サルに対して行われた研究により、中心窩領域から離れた箇所で生じる網膜後方での光の顕著な結像不良が眼球を伸長させ、したがって近視の程度を悪化させ得ることが明らかになっている。
【0006】
眼球の異常屈折の進行の管理は一般に、その表面の1つに配置されて、近視又は遠視等の眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる光学素子を含む受動光学レンズを介して行われる。
【0007】
光学素子を含む受動光学レンズの使用は、眼球の異常屈折の進行の防止及び遅延に良好な結果を提供してきたが、そのようなレンズの利用には幾つかの欠点があり得る。
【0008】
実際、眼用レンズの表面に配置された光学素子は、網膜上で眼用レンズにより生成された鮮明な像と重なり得る複数のぼやけた画像を生成する場合がある。鮮鋭な像とぼやけた像とのそのような重なりは、着用者の光学性能及び/又はその快適性を下げ得る。さらに、眼用レンズの表面上の光学素子は、視野を狭め、コントラスト感度の損失を誘導し、頭痛につながる恐れがある歪みを誘導し得る。
【0009】
さらに、光学素子を含む受動光学レンズは、異常屈折進行制御量を調整することができず、必要ない場合、異常屈折進行制御機能を非活性化させることもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、着用者の眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる機能を制御しながら、着用者の上記眼球の異常屈折を矯正する眼用レンズを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、着用者の眼球の異常屈折を矯正する着用者の処方に基づいて第1の光学機能を有する、着用者の上記眼球の前方で着用されることが意図され、少なくとも1つの活性化可能光学素子を備えた眼用レンズであって、
第1の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、レンズの残りの部分と共に、網膜上に遠くの物体の像を結ぶのに寄与し、第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、例えば、着用者の眼球の網膜以外で結像することにより、着用者の眼球の網膜上に像を結ばず、眼球の異常屈折の進行を遅延させるという第2の光学機能を有する、眼用レンズを提供する。
【0012】
有利なことには、例えば、着用者の眼球の網膜以外で結像することにより、着用者の眼球の網膜上に像を結ばないという制御可能な光学機能を有する眼用レンズを有することは、着用者の眼球の異常屈折を防止又は遅延させることと上記ユーザの視覚的快適性又は性能の損失とのバランスを容易に調整できるようにする。
【0013】
換言すれば、本発明の眼用レンズにより、着用者の眼球の異常屈折を最適に防止又は遅延させる光学機能を管理して、上記着用者の視覚的快適性及び性能への上記機能の悪影響を制限することができる。
【0014】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
-第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、着用者の眼球の網膜以外で結像するという第2の光学機能を有し、且つ/又は
-着用者の眼球の異常屈折は近視に対応し、活性化可能光学素子は、ユーザの網膜の前方で光線を結像し、且つ/又は
-着用者の眼球の異常屈折は遠視に対応し、活性化可能光学素子は、ユーザの網膜の後方で光線を結像し、且つ/又は
-第2の光学機能は、複数の少なくとも3つの活性化可能光学素子によりサポートされ、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも1つは、球面度数を有し、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも1つは、非球面度数を有し、且つ/又は
-活性化可能光学素子は、眼用レンズの基板の少なくとも1つの表面上に同心環で編成され、且つ/又は
-活性化可能光学素子の平均屈折力は、活性化可能光学素子の少なくとも1つの同心環にわたり均一であり、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部まで変化し、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部まで低下し、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部まで増大し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも部分の平均球面及び/又は平均円柱度数は、レンズのセクションの第1のポイントから上記セクションの周縁部に向かって増大し、上記セクションの第2のポイントから上記セクションの周縁部に向かって低下し、第2のポイントは、第1のポイントよりも上記セクションの周縁部に近く、且つ/又は
-活性化可能光学素子の少なくとも部分は連続し、且つ/又は
-眼用レンズは、第1の屈折率を有する第1の基板と、上記第1の屈折率を有する第2の基板であって、第2の基板は、第1の基板に面し、上記第1の基板と第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置される電気活性材料であって、電気活性材料は、第1の状態において基板の屈折率に等しい屈折率を有する、電気活性材料と、電気活性材料に面する第1の基板の表面に配置される第1の導電層と、電気活性材料に面する第2の基板の表面に配置される第2の導電層とを更に備え、電気活性材料に面する基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子を含み、第1の状態では、第1及び第2の基板、電気活性材料、及び少なくとも1つの活性化可能光学素子は、同じ屈折率を有し、第1の光学機能に参加し、第2の状態では、電気活性材料の屈折率は変更され、それにより、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能を活性化し、且つ/又は
-電気活性材料は液晶であり、且つ/又は
-少なくとも1つの活性化可能光学素子は、屈折率が温度に伴って変化する熱光学材料を含み、且つ/又は
-熱光学材料の屈折率は、温度に伴って10-3/℃以上の速度で変化し、且つ/又は
-眼用レンズは、熱光学材料の温度を変更するように配置された少なくとも1つの電極を更に備え、且つ/又は
-少なくとも1つの電極は、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の透過率を有する導電材料で作られ、且つ/又は
-導電材料は、ITO及び/又はPEDOT及び/又はATO及び/又はAZOに対応し、且つ/又は
-熱光学素子の厚さは5μm以上であり、且つ/又は
-熱光学素子の厚さは500μm以下であり、且つ/又は
-眼用レンズは、第1の屈折率を有する第1の基板と、上記第1の屈折率を有する第2の基板であって、第2の基板は、第1の基板に面し、上記第1の基板と第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置される第1の液体であって、第1の液体は、第1及び第2の基板の屈折率に等しい第1の屈折率を有する、第1の液体と、2つの基板間に配置される活性化可能ポンプとを更に備え、第1の液体に面する基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子を備え、第1の状態では、第1及び第2の基板、第1の液体、及び少なくとも1つの活性化可能光学素子は、同じ屈折率を有し、第1の光学機能に参加し、第2の状態では、活性化可能ポンプは第1の液体を、第1及び第2の基板の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の液体に切り替え、それにより、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能を活性化し、且つ/又は
-眼用レンズは、第1の屈折率を有する第1の基板と、上記第1の屈折率を有する第2の基板であって、第2の基板は、第1の基板に面し、上記第1の基板と第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置され、少なくとも1つの活性化可能光学素子を備える超薄変形可能膜と、第1の基板と超薄変形可能膜との間に配置される第1の液体であって、第1の液体は第1の屈折率を有する、第1の液体と、第2の基板と超薄変形可能膜との間に配置される第2の液体であって、第2の液体は、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する、第2の液体と、第1の基板と第2の基板との間に配置される活性化可能ポンプとを更に備え、第1の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、眼用レンズの前面と同じ曲率を有し、第2の状態では、活性化可能ポンプは、第2の液体の圧力を変更して、超薄膜を変形させ、少なくとも1つの活性化可能光学素子の曲率を変更し、それにより、活性化可能光学素子の第2の光学機能を活性化し、且つ/又は
-眼用レンズは、第1の屈折率を有する第1の基板と、上記第1の屈折率を有する第2の基板であって、第2の基板は、第1の基板に面し、上記第1の基板と第2の基板との間にキャビティを形成するように配置される、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置される第1の誘電性液体であって、第1の液体は第1の屈折率を有する、第1の誘電性液体と、第1の誘電性液体と非混和性であり、第1の基板と第2の基板との間に配置される第2の誘電性液体であって、第2の液体は、第1の屈折率と異なる第1の屈折率及び第1の液体の誘電率よりも低い誘電率を有する、第2の誘電性液体と、液滴を形成する第2の誘電性液体に面する第1及び第2の基板の少なくとも1つの表面に配置される少なくとも1つの導電層であって、第1の誘電性は周囲を形成する、少なくとも1つの導電層と、を更に備え、第1の状態では、少なくとも1つの導電層は、眼用レンズの前面と同じ曲率を有する液滴に第2の誘電性液体を成形する電場を生成し、第2の状態では、少なくとも1つの導電層は、より弱い電場を有する領域に向かって縮小する第2の誘電性液体に、眼用レンズの表面曲率と異なる表面曲率を有する少なくとも1つの活性化可能光学素子を強制的に形成させる誘電力を生成する不均一電場を生み出し、且つ/又は
-眼用レンズは、第1の屈折率を有する基板と、ユーザの眼球に面する基板の面に配置される少なくとも1つのホログラフィック光学素子と、少なくとも1つの活性化可能画像源とを更に備え、第1の状態では、基板及び少なくとも1つのホログラフィック光学素子は同じ屈折率を有し、第1の光学機能に参加し、第2の状態では、少なくとも1つの画像源は、少なくとも1つのホログラフィック光学素子で反射されてユーザの眼球に向かい、それにより、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能を活性化する光を生成し、且つ/又は
-眼用レンズは、その表面の少なくとも1つに配置されるワニス要素を更に備え、且つ/又は
-眼用レンズは、データを受信するように構成された受信手段を更に備え、眼用レンズの第1の状態と第2の状態との間の遷移は、受信データに基づいてリアルタイムで駆動され、且つ/又は
-受信データは、着用者によって行われた活動に関連する活動データであり、且つ/又は
-受信データは視距離に関連し、且つ/又は
-受信データは視角に関連し、且つ/又は
-受信データは環境データに関連する。
【0015】
ここで本発明の複数の実施形態について、ほんの一例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による眼用レンズの平面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による眼用レンズを示す。
【
図3A】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図3B】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図4A】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図4B】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図5A】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図5B】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図6A】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図6B】本発明の一実施形態による第1の状態及び第2の状態における眼用レンズをそれぞれ示す。
【
図7】本発明の一実施形態による眼用レンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面の素子は簡潔且つ明快に示すため必ずしも一定の比率で描かれている訳ではない。例えば、本発明の実施形態を分かり易くするため図のいくつかの素子のサイズを他の素子に比べて誇張している場合がある。
【0018】
本発明は、着用者の眼球の異常屈折を矯正する着用者の処方に基づいて第1の光学機能を有する、着用者の上記眼球の前方で着用されることが意図され、少なくとも1つの活性化可能光学素子、例えば、複数の少なくとも3つの活性化可能光学素子を備えた眼用レンズに関する。
【0019】
第1の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、レンズの残りの部分と共に、網膜上に遠くの物体の像を結ぶのに寄与する。第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、着用者の眼球の網膜上に像を結ばず、上記着用者の眼球の異常屈折の進行を遅延させるという第2の光学機能を有する。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、着用者の眼球の網膜以外で遠くの物体の像を結び、上記着用者の眼球の異常屈折の進行を遅延させる第2の光学機能を有する。この特定の実施形態は、本発明に包含される任意の実施形態、特に
図1~
図7に関連して説明される任意の実施形態に該当する。
【0021】
図1に示すように、本発明による眼用レンズ2はホルダー4を含み、ホルダー4は屈折領域6及び複数の活性化可能光学素子8を備える。
【0022】
ホルダー4は例えばポリカーボネート材料製の1枚の基板であり得る。代替的には、ホルダー4は、互いに面して眼用レンズを形成するように配置された複数の基板、好ましくは2枚の基板で作られ得る。
【0023】
ホルダー4は、眼用レンズの着用者の眼球の網膜上に遠くの物体の像を結ぶ第1の光学機能を有する屈折領域6を有する。
【0024】
第1の光学機能は、眼用レンズが適合された着用者の眼球の処方に基づく。処方は、着用者の眼球の異常屈折を矯正すべく適合されている。
【0025】
用語「処方」は、眼科医又は検眼士により、例えば当該個人の眼球の前方に配置されたレンズを用いて、眼球の視力欠陥を矯正すべく決定された屈折力、乱視、及びプリズム偏差の光学特性の組を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼球に対する処方は遠方視の軸に沿った屈折力及び乱視の値を含んでいる。
【0026】
例えば、屈折領域6の形状は球形である。眼用レンズの他の面の形状は、網膜に結像する第1の光学機能を屈折領域が有するように構成される。
【0027】
例えば、上記第2の面の形状は、球-トーリック状(sphero-torical)である。有利には、レンズ着用時、屈折領域6上の何れの光ビーム入射も着用者の網膜に結像するように、眼用レンズの上記第2の面の形状は非球面であり、且つ光学的最適化によって算出される。
【0028】
本開示の種々の実施形態によると、眼球の異常屈折は、近眼、遠視、又は乱視である。
【0029】
本発明による眼用レンズ2は更に少なくとも1つの活性化可能光学素子8を含む。好ましくは、眼用レンズ2は、複数の少なくとも3つの活性化可能光学素子8を含む。
【0030】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、異なる光学機能を有する複数の状態、好ましくは2つの状態間で変化し得る。少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、上記活性化可能光学素子の状態を変える。
【0031】
第1の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜に遠くの物体を結像する光学機能を有している。換言すれば、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、眼用レンズの屈折領域6と共に第1の光学機能に寄与する。
【0032】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜に遠くの物体を結像しない第2の光学機能を有する第2の状態に切り替わり得る。
【0033】
本開示の一実施形態によれば、第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外で遠くの物体を結像する第2の光学機能を有する第2の状態に切り替わり得る。
【0034】
着用者の眼球の異常屈折が近視に対応する場合、一実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の前方で結像する光学機能を有する。
【0035】
着用者の眼球の異常屈折が遠視に対応する場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の後方で結像する光学機能を有する。
【0036】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の瞳孔よりも小さい。
【0037】
有利には、少なくとも1つの活性化可能光学素子8の配置で遠くの物体の像は網膜及び眼用レンズの着用者の網膜以外で同時に結ばれ、同時に物体を完全に見られるようにし、着用者の眼球の異常屈折を防止又は遅延させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、第2の状態での少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜に遠くの物体の像を結ばず、特定の実施形態では、着用者の眼球の網膜以外で透過光線を結像するように構成される。
【0039】
第2の光学機能は、複数の少なくとも3つの活性化可能光学素子によりサポートされ得る。例えば、活性化可能光学素子の少なくとも1つは球面度数を有し、且つ/又は活性化可能光学素子の少なくとも1つは非球面度数を有する。
【0040】
活性化可能光学素子は、眼用レンズ上、例えば眼用レンズの基板の少なくとも1つの表面上に同心環で編成し得る。
【0041】
眼用レンズ上に同心環で編成された活性化可能光学素子を有することで、レンズの美観が改善されると共に、着用者の快適性が改善される。
【0042】
活性化可能光学素子の平均屈折力は、活性化可能光学素子の少なくとも1つの同心環にわたり均一であり得る。
【0043】
活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部に変化し得る。
【0044】
活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部に低下し得る。さらに、活性化可能光学素子の少なくとも部分の平均屈折力は、眼用レンズの中心から縁部に増大し得る。
【0045】
光学素子の少なくとも部分の平均球面及び/又は平均円柱度数は、レンズのセクションの第1のポイントから上記セクションの周縁部に向かって増大し、上記セクションの第2のポイントから上記セクションの周縁部に向かって低下し、第2のポイントは、第1のポイントよりも上記セクションの周縁部に近い。
【0046】
活性化可能光学素子の少なくとも部分は連続し得る。本発明の意味において、2つの光学素子を結ぶ経路がある場合に、上記の経路の一部に沿って、着用者の眼球の処方に基づく屈折力を測定できない場合、2つの光学素子は連続である。
【0047】
少なくとも1つの活性化可能光学素子は、球面度数を有し得る。
【0048】
少なくとも1つの活性化可能光学素子は非球面度数を有し得る。
【0049】
図2に示すように、眼用レンズは、第1の屈折率を有する基板10を備え得る。例えば、基板10はポリカーボネート製である。
【0050】
眼用レンズは、少なくとも1つの電極12を更に備え得る。少なくとも1つの電極12は、好ましくはライン/カラムの行列又は同心パターンに配置された複数のピクセルを形成する複数のサブ電極に分割することができ、独立して又はライン/カラム又は同心電極により駆動することができる。少なくとも1つの電極12は、基板10の面に配置される。少なくとも1つの電極は、特定のパターンを形成するように基板の面に配置される。少なくとも1つの電極12は好ましくは、基板の面に配置される。例えば、少なくとも1つの電極は、着用者の眼球に面する基板の第1の表面に配置し得る。代替的には、少なくとも1つの電極は、第1の表面とは逆の基板の第2の表面に配置し得る。好ましくは、眼用レンズは、ホルダーの第1の及び第2の表面の両方に配置された複数の電極12を備える。
【0051】
少なくとも1つの電極12は、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の透過率を有する導電材料で作られる。例えば、電極の導電材料はITO(インジウムスズ酸化物)及び/又はPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸)及び/又はATO(アンチモン錫酸化物)及び/又はAZO(アルミニウム亜鉛酸化物)に対応する。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズは、少なくとも1つの電極12に配置される熱光学材料を更に含む。
【0053】
熱光学材料の屈折率は温度に伴って変化し得る。例えば、熱光学素子の屈折率は、10-3/℃以上の速度で変化する。熱光学素子の厚さは、5μm以上且つ/又は500μm以下であり得る。
【0054】
少なくとも1つの活性化可能光学素子を形成する熱光学材料は、異なる光学機能を有する異なる状態、好ましくは2つの状態間で変化し得る。例えば、第1の状態では、熱光学材料は、例えば、15℃以上且つ25℃以下の温度において基板の屈折率に等しい第1の屈折率を有し、レンズの残りの部分と共に第1の光学機能に寄与し、第2の状態では、熱光学材料は、第2の光学機能及び例えば、30℃以上且つ55℃以下の温度において基板の屈折率と異なる少なくとも第2の屈折率を有する。
【0055】
少なくとも1つの電極12は、電流が流れたとき、電極に熱を生成させることができる電気抵抗性材料で作ることができる。
【0056】
例えば、第1の状態では、第1の強度の電流が少なくとも1つの電極を通って流れ、それにより、熱光学材料を第1の温度にする第1の量の熱を生成する。上記第1の温度では、熱光学材料は、例えば、ホルダーの屈折率と同一の第1の屈折率を有する。この第1の状態では、熱光学材料は、第1の光学機能を有し、眼用レンズの第1の光学機能に参加する。
【0057】
第2の状態では、第2の強度の電流が少なくとも1つの電極を通って流れ、それにより、熱光学素子を第2の温度にする第2の量の熱を生成する。温度の変更は、熱光学材料の屈折率を変更し、それにより、その光学機能を変更する。この第2の状態では、熱光学材料は第2の光学機能を有する。
【0058】
活性化可能光学素子の第2の光学機能は、場合によっては複数の電極に細分することができる少なくとも1つの電極を通って流れる電流の強度によって生成される温度に依存し得る。電流の勾配は、少なくとも1つの電極を構成する複数のサブ電極により生成される印加電圧の勾配を通して取得されて、温度の勾配を生成し、特定の第2の光学機能を提供し得る。
【0059】
さらに、活性化可能光学素子の第2の光学機能は、少なくとも1つの電極の編成及び熱光学材料に依存し得る。換言すれば、基板の面に配置される電極の特定のパターンは、特定の第2の光学機能に対応し得る。
【0060】
一実施形態によれば、少なくとも1つの電極12は、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能が球面機能であるように、基板10の面に編成される。
【0061】
同様に、少なくとも1つの電極12は、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能が非球面機能であるように、基板10の面に編成し得る。
【0062】
熱光学材料はワニス要素14で覆われ得る。ワニス要素は、機械的保護を熱光学材料に提供し得る。さらに、ワニス要素は、熱光学材料への熱バッファーの役割を果たし得る。換言すれば、ワニス要素は熱光学材料を眼用レンズの残りの部分から分離して、熱の影響から保護する。
【0063】
さらに、眼用レンズは反射防止コーティング要素16を備え得る。反射防止コーティング要素は好ましくは、少なくとも1つの電極12によって生成される熱から少なくとも部分的に絶縁されるように、ワニス要素14上に配置される。有利には、反射防止コーティング要素は、眼用レンズの両面での光の反射から生じる寄生効果を抑制又は少なくとも低減できるようにする。
【0064】
反射防止コーティング要素は好ましくは、耐熱膨張性を有する。例えば、反射防止コーティング要素はゾルゲル反射防止要素であり得る。代替的には、反射防止コーティング要素は、低屈折率混成多層で構成し得る。
【0065】
本発明の別の実施形態によれば、眼用レンズは、少なくとも1つの電極12に配置される電気活性素子を更に備える。
【0066】
電気活性素子の屈折率は、受ける電場に応じて変化し得る。特に、電気活性材料を形成する素子の向きは、電場が印加されると変化し、したがって、眼用レンズを透過する光が受ける屈折率も変化する。
【0067】
少なくとも1つの活性化可能素子を形成する電気活性素子は、異なる光学機能を有する異なる状態、好ましくは2つの状態間で変化し得る。
【0068】
例えば、第1の状態では、電気活性素子は、基板の屈折率に等しい第1の屈折率を有し、第2の状態では、電気活性素子は、第2の光学機能及び基板の屈折率と異なる第2の屈折率を有する。
【0069】
少なくとも1つの電極12は、場合によっては電気ピクセルを形成するようなラインカラム編成に配置される複数の電極に分割される導電材料で作られ得る。複数の電極は、各ピクセルの印加電圧等の電源に接続され、個々に又はライン及びカラムにより制御することができる。
【0070】
例えば、第1の状態では、第1の印加電圧が少なくとも1つの電極の全てのピクセルを通って流れ、それにより第1の電場を生成する。上記電流印加電圧では、電気活性素子は、例えば、ホルダーの屈折率と同一の第1の屈折率を有する。この第1の状態では、電気活性素子は、第1の光学機能を有し、眼用レンズの第1の光学機能に参加する。
【0071】
第2の状態では、複数の印加電圧が、少なくとも1つの電極を形成する複数のピクセルに印加され、それにより、第2の電場分布を生成する。第2の電場分布は、電気活性素子の屈折率を変更し、それにより、その光学機能を変更する。この第2の状態では、少なくとも1つの活性光学素子は第2の光学機能を有する。
【0072】
さらに、活性化可能光学素子の第2の光学機能は、少なくとも1つの電極及び電気活性素子の編成に依存し得る。換言すれば、基板の面に配置される電極の特定のパターンは、特定の第2の光学機能に対応し得る。
【0073】
一実施形態によれば、少なくとも1つの電極12は、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能が球面機能であるように基板10の面に編成される。
【0074】
同様に、少なくとも1つの電極12は、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能が非球面機能であるように基板10の面に編成し得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの活性化可能光学素子は電気活性セルの行列を含み得る。電気活性セルの行列は好ましくは、ホルダーの面に配置される。セルの行列の各セルは、屈折率が互いから独立して各ピクセルで変化することができるように活性電気材料を充填し得る。
【0076】
図3Aに示すように、本発明の一実施形態による眼用レンズ2は、第1の基板20a及び第2の基板20bを備え得る。第2の基板20bは、第1の基板に面して、上記2つの基板間にキャビティ22を形成するように配置される。第1の基板20aは第1の屈折率を有し、第2の基板20bは、第1の屈折率と同一である第2の屈折率を有する。
【0077】
2つの基板は、同じ材料、例えばポリカーボネートで作られ得る。
【0078】
眼用レンズ2は、第1の基板と第2の基板との間且つキャビティ22内に配置される電気活性材料24を更に備え得る。
【0079】
電気活性材料24は、異なる屈折率を有する複数の状態、好ましくは2つの状態間で変化し得る。例えば、第1の状態では、電気活性材料24は、基板の屈折率と同一の第1の屈折率を有し、第2の状態では、電気活性材料24は、基板の屈折率と異なる第2の屈折率を有する。
【0080】
電気活性材料24は、液晶、例えばコレステリック液晶材料又は偏光独立材料の場合はブルー相液晶であり得る。
【0081】
眼用レンズ2は、第1の導電層26a及び第2の導電層26bを更に備え得る。第1の導電層26aは、キャビティ22及び電気活性材料24に面する第1の基板20aの表面に配置される。第2の導電層26bは、キャビティ22及び電気活性材料24に面する第2の基板20bの表面に配置される。
【0082】
第1及び第2の導電層は透明導電性ITO電極であり得る。
【0083】
キャビティ22に面する基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子8を形成する少なくとも1つの構造を含む。少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、電気活性材料に面する基板の少なくとも1つの表面上に凹形又は凸形を有し得る。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの活性化可能光学素子は、収束(凸形と同様)又は発散(凹形と同様)位相プロファイルを有する不連続面等の不連続性を有する。不連続面は、フレネル高さ(Fresnel height)レンズプロファイル、バイナリレンズプロファイル、πフレネルレンズプロファイル、回折素子、メタ表面であることができる。
【0085】
第1の状態では、基板20a、20b、及び電気活性材料24は、少なくとも1つの活性化可能光学素子8を不可視にする同様の屈折率を有する。上記第1の状態での眼用レンズ2は、その厚さにわたり略一定の屈折率を有し、それにより、その表面にわたり一定の屈折力を提供する。上記屈折力は、着用者の眼球の網膜に結像することにより上記着用者の眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく。
【0086】
図3Bに示すように、本発明による眼用レンズ2は、第1の状態と異なる第2の状態であり得る。
【0087】
第2の状態では、電圧が導電層26a、26bを通して印加されて、電気活性材料24の屈折率を第2の屈折率に変更する局所電場を生成する。第2の状態での電気活性材料の第2の屈折率は基板の屈折率と異なるため、電気活性素子24に面する基板の少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つの活性化可能光学素子8は光学的に活性化される。
【0088】
この第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、眼用レンズの屈折力と異なる第2の屈折力を有し、着用者の眼球の網膜に結像しない第2の光学機能を有する。特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外に結像する第2の光学機能を有する。
【0089】
電気活性材料の向きは、電場印加時に変化し、したがって、眼用レンズを通る光が受ける屈折力も変化する。
【0090】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、基板の少なくとも1つの表面上で凹形を有し得る。第2の状態での電気活性材料24の第2の屈折率が、第1の状態での上記電気活性材料の第1の屈折率よりも高い場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の前方で光を結像する光学機能を有する。代替的には、第2の状態での屈折率が第1の状態の屈折率よりも小さい場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の後方で光を結像する光学機能を有する。
【0091】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、基板の少なくとも1つの表面上で凹形を有し得る。第2の状態での電気活性材料24の第2の屈折率が、第1の状態での上記電気活性材料の第1の屈折率よりも高い場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の後方で光を結像する光学機能を有する。代替的には、第2の状態での屈折率が第1の状態の電気活性材料の屈折率よりも小さい場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の前方で光を結像する光学機能を有する。
【0092】
図4Aに示すように、本発明の別の実施形態による眼用レンズ2は、第1の基板30a及び第2の基板30bを備え得る。第2の基板30bは、上記2つの基板間にキャビティ32を形成するように第1の基板に面して配置される。第1の基板30aは第1の屈折率を有し、第2の基板30bは、第1の屈折率と同一である第2の屈折率を有する。
【0093】
キャビティ32に面する基板の表面の少なくとも1つは、少なくとも1つの活性化可能光学素子8、例えば複数の少なくとも3つの光学素子8を備える。
【0094】
2つの基板は、同じ材料、例えばポリカーボネートで作られ得る。
【0095】
眼用レンズ2は、第1の基板と第2の基板との間に配置され、且つキャビティ32内に配置される第1の液体34aを更に備え得る。第1の液体34aは、第1及び第2の基板の屈折率に等しい第1の屈折率を有する。
【0096】
眼用レンズ2は、活性化可能ポンプ36を更に備え得る。好ましくは、活性化可能ポンプ36は2つの基板間に配置される。
【0097】
第1の状態では、基板30a、30b、及び第1の液体34は、少なくとも1つの活性化可能光学素子8を不可視にする同様の屈折率を有する。上記第1の状態での眼用レンズ2は、その厚さにわたり略一定の屈折率を有し、それにより、その表面にわたり一定の屈折力を提供する。上記屈折力は、着用者の眼球の網膜に結像することにより上記着用者の眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく。
【0098】
図4Bに示すように、本発明による眼用レンズ2は、第1の状態と異なる第2の状態であり得る。
【0099】
第2の状態では、活性化可能ポンプ36は活性化されて、第2の屈折率を有する第2の液体34bで第1の液体34aを置換する。第2の液体34bの第2の屈折率は基板の屈折率と異なるため、第2の液体34bに面する基板の少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つの活性化可能光学素子8は光学的に活性化される。
【0100】
この第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、眼用レンズの屈折力と異なる第2の屈折力を有し、着用者の眼球の網膜に結像しない第2の光学機能を有する。特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外に結像する第2の光学機能を有する。
【0101】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、基板の少なくとも1つの表面上で凹形を有し得、又は収束(凸形と同様)若しくは発散(凹形と同様)位相プロファイルを生成する不連続面等の不連続性を有し得る。不連続面は、フレネル高さレンズプロファイル、バイナリレンズプロファイル、πフレネルレンズプロファイル、回折素子、メタ表面であることができる。
【0102】
第2の液体34bの屈折率が第1の液体34aの屈折率よりも高い場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の前方で光を結像する光学機能を有する。代替的には、第2の液体34bの屈折率が第1の液体34aの屈折率よりも小さい場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の後方で光を結像する光学機能を有する。
【0103】
少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、基板の少なくとも1つの表面上で凸形を有し得る。第2の液体34bの屈折率が第1の液体34aの屈折率よりも高い場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の後方で光を結像する光学機能を有する。代替的には、第2の液体34bの屈折率が第1の液体34aの屈折率よりも小さい場合、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜の前方で光を結像する光学機能を有する。
【0104】
図5Aに示すように、本発明の別の実施形態による眼用レンズ2は、第1の基板40a及び第2の基板40bを備え得る。第2の基板40bは、第1の基板に面して、上記2つの基板間にキャビティ42を形成するように配置される。第1の基板40aは第1の屈折率を有し、第2の基板40bは第2の屈折率を有する。好ましくは、第2の基板の第2の屈折率は第1の屈折率と同一である。
【0105】
2つの基板は、同じ材料、例えばポリカーボネートで作られ得る。
【0106】
眼用レンズ2は、第1の基板40a、第2の基板40b配置される超薄変形可能膜46を更に備え得る。超薄変形可能膜46は、少なくとも1つの活性化可能光学素子8に対応する少なくとも1つの変形可能ゾーンを備える。
【0107】
眼用レンズ2は、キャビティ42内且つ第1の基板40aと超薄膜46との間に配置される第1の液体44aと、キャビティ42内且つ第2の基板40bと超薄膜46との間に配置される第2の液体44bとを更に備え得る。
【0108】
第1の液体44aの屈折率n
1は好ましくは、第2の液体44bの屈折率n
2と異なる。有利には、超薄変形可能膜の屈折率は、反射を最小にするために、
【数1】
に等しい。好ましくは、第1の液体44aの屈折率n
1は、いかなる屈折及び反射も回避するために、第1の基板40aの屈折率に等しい。第1及び第2の基板の屈折率が異なる場合、第2の液体44bの屈折率n
2は好ましくは、いかなる屈折及び反射も回避するために、第2の基板40bの屈折率に等しい。
【0109】
眼用レンズ2は、活性化可能ポンプ48を更に備え得る。好ましくは、活性化可能ポンプ48は、基板と超薄膜46との間に配置されて、第1又は第2の液体の一方のみに接触する。
【0110】
第1の状態では、基板40a、40b、及び超薄変形可能膜46の表面は、眼用レンズの基本曲率に対応する同じ曲率を有する。第1の液体44a及び第2の液体44bの圧力は、超薄変形可能膜46の曲率を維持するように同一に維持される。上記第1の状態での眼用レンズ2は、一定の表面屈折力を有し、それにより、その表面にわたり一定の屈折力を提供する。上記屈折力は、着用者の眼球の網膜上に結像することにより上記着用者の眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく。
【0111】
図5Bに示すように、発明による眼用レンズ2は第1の状態と異なる第2の状態であり得る。
【0112】
第2の状態では、活性化可能ポンプ46は活性化されて、第2の液体44bの圧力を変更する。第2の液体44bの圧力の変更は、少なくとも1つの活性化可能光学素子8の配置で超薄変形可能膜46を変形させ、それにより、上記活性化可能光学素子の表面曲率を変更する。少なくとも1つの活性化可能光学素子8の曲率のそのような変更は、光学的に活性化される。
【0113】
この第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、眼用レンズの屈折率と異なる第2の屈折率を有し、着用者の眼球の網膜上に結像しない第2の光学機能を有する。
【0114】
特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外で結像する第2の光学機能を有する。
【0115】
膜が平坦である第1の状態から超薄変形可能膜が湾曲する第2の状態への超薄変形可能膜の相対的な変形は、関係:
【数2】
によって定義され、ここで、Φは光学素子8の直径であり、Rは光学素子8の曲率半径であり、Lはレンズ素子8の円弧長であり、dLはレンズ素子8の円弧の延長である。
【0116】
別の実施形態によれば、眼用レンズ2は、超薄変形可能膜46が配置される支持体を更に備える。支持体は、超薄変形可能膜と共に複数の活性化可能光学素子8を画定する穴を備える。
【0117】
好ましくは、支持体は剛性である。有利には、第2の液体の圧縮が変化するとき、支持体は変形する。支持体は平坦であり得る。好ましくは、支持体は、基板の曲率と同一の曲率を有し、例えば、支持体は球形である。
【0118】
有利には、支持体の屈折率は、いかなる屈折及び反射も回避するために、第1の液体44aの屈折率に等しい。
【0119】
図6Aに示すように、本発明の別の実施形態による眼用レンズ2は、第1の基板50a及び第2の基板50bを備え得る。第2の基板50bは、第1の基板に面して、上記2つの基板間にキャビティ52を形成するように配置される。第1の基板50aは第1の屈折率を有し、第2の基板50bは、第1の屈折率と同一である第2の屈折率を有する。
【0120】
2つの基板は、同じ材料、例えばポリカーボネートで作られ得る。
【0121】
眼用レンズ2は、キャビティ52内且つ第1の基板と第2の基板との間に配置される第1の誘電性液体54aを更に備え得る。第1の誘電性液体54aは第1の屈折率を有する。
【0122】
眼用レンズ2は、キャビティ52内且つ第1の基板と第2の基板との間に配置される第2の誘電性液体54bを更に備え得る。第2の誘電性液体54bは、第1の誘電性液体54aと不混和性であり、第1の誘電性液体54bの屈折率と異なる第2の屈折率を有する。第2の誘電性液体54bの誘電率は、第1の誘電性液体54aの誘電率よりも低い。
【0123】
眼用レンズ2は、キャビティに面する第1及び第2の基板の少なくとも一方の表面に配置された少なくとも1つの導電層56を更に備え得る。
【0124】
第1の状態では、複数の電極に細分された少なくとも1つの導電層56は、第2の液体を特定の編成に維持する電場を生成する。この第1の状態では、第2の誘電性液体は電場により成形されて、眼用レンズ2の前面曲率と同じ表面曲率を有する1つの液滴を形成する。第2の誘電性液体54bよりも高い誘電率を有する第1の誘電性液体54aは、キャビティ52の残りの部分を充填し、第2の誘電性液体54bを囲む。上記第1の状態での眼用レンズ2は、一定の表面屈折力を有し、それにより、その表面にわたり一定の屈折力を提供する。上記屈折力は、着用者の眼球の網膜上に結像することにより上記着用者の眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく。
【0125】
図6Bに示すように、発明による眼用レンズ2は、第1の状態と異なる第2の状態であり得る。
【0126】
第2の状態では、複数の電極に分割された少なくとも1つの導電層56は、最低誘電率第2の誘電性液体54bをより弱い電場を有する領域に向けて強制的に縮小させる非均一水平電場を生成する。非均一電場により成形された第2の誘電性液体54bは、少なくとも1つの活性化可能光学素子8を形成する。第2の誘電性液体54bの形状は変更されたため、少なくとも1つの活性化可能光学素子を形成する上記液体の表面の曲率も変更され、眼用レンズ2の表面曲率と異なる。少なくとも1つの活性化可能光学素子8の曲率のそのような変更は、光学的に活性化させる。
【0127】
この第2の状態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、眼用レンズの屈折率と異なる第2の屈折率を有し、着用者の眼球の網膜上に結像しない第2の光学機能を有する。
【0128】
特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外で結像する第2の光学機能を有する。
【0129】
図7に示す本発明の別の実施形態によれば、眼用レンズは、第1の屈折率を有する基板60を更に備え得る。
【0130】
眼用レンズは、着用者の目に面する基板の面に配置された少なくとも1つのホログラフィック光学素子を更に備え得る。好ましくは、眼用レンズは、着用者の眼球に面する基板の面に配置された複数の少なくとも3つのホログラフィック光学素子を備える。
【0131】
この特定の実施形態では、少なくとも1つのホログラフィック光学素子は、眼用レンズ2の少なくとも1つの活性化可能光学素子8を形成する。
【0132】
眼用レンズは、少なくとも1つの活性化可能画像源62を更に備え得る。代替的には、活性化可能画像源は、眼用レンズ2を曽根田眼鏡類機器に組み込まれ得る。
【0133】
第1の状態では、基板及び少なくとも1つのホログラフィック光学素子は、同じ屈折率を有し、眼用レンズの第1の光学機能に参加する。上記第1の状態での眼用レンズは、一定の表面屈折力を有し、それにより、その表面にわたり一定の屈折力を提供する。上記屈折力は、着用者の眼球の網膜上に結像することにより上記着用者の眼球の異常屈折を矯正するように、着用者の処方に基づく。
【0134】
第2の状態では、少なくとも1つの画像源は、ユーザの眼球に無糧少なくとも1つのホログラフィック光学素子上で偏向し、それにより、少なくとも1つの活性化可能光学素子の第2の光学機能を活性化する光を生成する。この第2の状態では、少なくとも1つのホログラフィック光学素子によって形成される少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜上に結像しない第2の光学機能を有する。
【0135】
特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外で結像する第2の光学機能を有する。
【0136】
眼用レンズ2は、その表面の少なくとも1つに配置されたワニス要素を備え得る。ワニス要素は、ワニス要素が覆う眼用レンズの表面に機械的保護を提供し得る。
【0137】
さらに、眼用レンズは反射防止コーティング要素を備え得る。反射防止コーティング要素は好ましくは、眼用レンズの表面の少なくとも1つに配置される。有利には、反射防止コーティング要素は、眼用レンズの両面での光の反射から生じる寄生効果を抑制又は少なくとも低減できるようにする。
【0138】
反射防止コーティング要素は好ましくは、耐熱膨張性を有する。例えば、反射防止コーティング要素はゾルゲル反射防止要素であり得る。代替的には、反射防止コーティング要素は、低屈折率混成多層で構成し得る。
【0139】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズ2は、データを受信するように構成された受信手段を更に備える。
【0140】
眼用レンズ2のある状態から別の状態への遷移は、受信データによってリアルタイムで駆動し得る。
【0141】
受信データは、活動データに関連し得る。本発明の意味では、活動データは、眼用レンズの着用者によって実行された活動を直接識別し得、又はそのような活動を特定できるようにするデータ、例えば、データベース及び/又はルックアップテーブルから着用者の活動を特定できるようにする指示であり得る。活動データは、着用者自身により直接、例えば、活動リスト中の活動を選択することにより提供し得る。
【0142】
例えば、眼用レンズは、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に、着用者の眼球の網膜上に結像する機能に寄与する第1の状態であり得る。着用者が本を読んでいることを示す活動データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子が着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態に遷移し得る。
【0143】
代替的には、眼用レンズは、活性化可能光学素子が、着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態であり得る。
【0144】
特定の実施形態では、少なくとも1つの活性化可能光学素子8は、着用者の眼球の網膜以外に結像する第2の光学機能を有する。
【0145】
着用者が車を運転中であることを示す活動データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に、着用者の眼球の網膜上に結像する機能に寄与する第1の状態に遷移し得る。
【0146】
受信データは視距離に関連し得る。本発明における意味で、視認距離は、眼用レンズを着用している着用者の眼球と上記着用者が見ている対象との距離に対応する。
【0147】
例えば、着用者が遠視距離を見ている間、眼用レンズは、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に、着用者の眼球の網膜上に結像する機能に寄与する第1の状態であり得る。着用者が近視距離を見ていることを示す視距離データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子が着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能、特定の実施形態では、着用者の眼球の網膜以外で結像する光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態に遷移し得る。
【0148】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズ2は、視距離を測定し、上記測定された視距離を眼用レンズの受信手段に送信する距離センサを更に備える。
【0149】
受信データは視角に関連し得る。本発明における意味で、視野角は、着用者の眼球と眼用レンズを着用している上記着用者が見ている対象との結ぶ方向と、レンズの幾何学的中心及び着用者の眼球の幾何学的中心を通る水平方向との間の角度に対応する。
【0150】
例えば、眼用レンズは、着用者がレンズの中心を見ている間、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に着用者の眼球の網膜に結像する機能に寄与する第1の状態であり得る。着用者が、例えば、眼用レンズの下部を見ていることを示す視角データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子が着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能、特定の実施形態では、着用者の眼球の網膜以外で結像する光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態に遷移し得る。
【0151】
代替的には、着用者がレンズの中心から離れる方向を見ている間、眼用レンズは、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に、着用者の眼球の網膜に結像する機能に寄与する第1の状態であり得る。着用者が眼用レンズの中央ゾーンを見ていることを示す視角データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子が着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能、特定の実施形態では、着用者の眼球の網膜以外で結像する光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態に遷移し得る。
【0152】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズ2は、視角を測定し上記測定された視角を眼用レンズの受信手段に送信する方位センサを更に備える。
【0153】
受信データは注視方向に対応し得る。発明の意味において、注視方向は眼球の光軸の位置に対応する。眼球の光軸は、眼球の回転中心及び上記眼球の瞳孔の中心を通る軸に対応する。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、視覚ゾーン内に含まれる活性化可能光学素子は、第1の状態であり、レンズの残りの部分と共に眼用レンズの第1の光学機能に寄与する。視覚ゾーン外部の活性化可能光学素子は、第2の状態であり、第2の光学機能を有する。
【0155】
代替的には、視覚ゾーン内に含まれる活性化可能光学素子は、第2の状態であり得、第2の光学機能を有し得る。視覚ゾーン外部の活性化可能光学素子は、第1の状態であり、レンズの残りの部分と共に眼用レンズの第1の光学機能に寄与する。
【0156】
視覚は、中心が着用者の眼球の実際の注視方向と眼用レンズの面、例えば、着用者の眼球に面する眼用レンズの面との交点によって定義される円形ゾーンに対応する。視覚ゾーンは、5mm~20mm、好ましくは5mm~15mm、より好ましくは5mm~10mmの直径を有し得る。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズ2は、注視方向を特定し、上記注視方向を眼用レンズの受信手段に送信する注視方向センサを更に備える。
【0158】
有利には、特定された注視方向は受信手段にリアルタイムで送信されて、着用者の眼球の実際の注視方向に従って活性化可能光学素子の状態を即座に適合させる。
【0159】
受信データは環境データに関連し得る。本発明における意味で、環境データは、上記着用者の視覚に影響し得る着用者の環境の任意のパラメータに関連する。例えば、環境データは、着用者が受けた光のスペクトル特徴及び強度に関連し得る。さらに、環境データは、着用者の環境の気温及び/又は湿度、着用者の環境に含まれるアレルゲン及び/又は汚染物質の量及び/又はタイプ及び/又は屋内又は屋外等の着用者の位置特定の指示等に関連し得る。
【0160】
例えば、着用者が受ける光の強度があまりに重要な場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子がレンズの残りの部分と共に、着用者の眼球の網膜に結像する機能に寄与する第1の状態であり得る。光の強度が予め定義された閾値よりも低いことを示す環境データを眼用レンズが受信する場合、眼用レンズは、活性化可能光学素子が着用者の眼球の網膜上に光を結像しない光学機能、特定の実施形態では、着用者の眼球の網膜以外で結像する光学機能を有し、上記眼球の異常屈折の進行を防止又は少なくとも遅延させる第2の状態に遷移し得る。
【0161】
本発明の一実施形態によれば、眼用レンズ2は、環境データを測定し、上記測定された環境データを眼用レンズの受信手段に送信するように構成された環境センサを更に備える。