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特許7682816ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20250519BHJP
【FI】
G02B27/01
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022008347
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107265
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 智貴
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197236(JP,A)
【文献】特開2005-114869(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0132852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00-37/06
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像の映像光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された前記映像光を前記乗り物の表示領域に投射して反射させることで、虚像を前記乗り物の前方に表示する映像光投射部と、
前記映像光の光路上に設けられ、前記映像光の光路を形成する光路形成状態、または前記映像光の光路を形成しない光路非形成状態に切り替えるシャッターと、
を備え、
前記シャッターが前記光路非形成状態に切り替えられる期間の長さは、前記映像光を虚像として視認できる長さであり、
前記シャッターは、前記光路形成状態では光を透過し、前記光路非形成状態では、光を吸収するか、または、光を拡散する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
さらに、前記映像表示装置と前記映像光投射部との間の前記映像光の光路上に設けられ、前記映像表示装置からの前記映像光を前記映像光投射部に反射する映像光反射部を備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記シャッターは、前記映像表示装置と前記映像光反射部との間の前記映像光の光路上に設けられる、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記シャッターは、前記映像光反射部と前記映像光投射部との間の前記映像光の光路上に設けられる、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置および前記シャッターを制御する制御部、を備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記制御部は、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とが切り替わるように、前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記制御部は、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とが周期的に切り替わるように、前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置は、
オンに制御された際にバックライトを点灯し、オフに制御された際に前記バックライトを消灯する光源と、
前記光源からの前記バックライトを変調することで前記映像を表示する表示パネルと、
を備え、
前記制御部は、PWM制御を用いて前記光源のオン/オフを制御し、前記光源のオン/オフに連動して、前記シャッターを前記光路形成状態/前記光路非形成状態に制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項または記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記制御部は、条件判定を行い、前記条件判定の判定結果に基づいて、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とを周期的に切り替える第1の制御モードか、前記光路形成状態に固定する第2の制御モードを用いて、前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記制御部は、さらに、前記映像光投射部を制御し、
前記映像光投射部は、
前記映像光を前記表示領域に向けて反射するミラーと、
前記ミラーの設置角度を調整する駆動機構と、
を有し、
前記制御部は、前記駆動機構を介して前記ミラーの設置角度を調整することで、前記映像光投射部を、前記映像光を前記表示領域に投射しない非投射モード、または、前記映像光を前記表示領域に投射する投射モードに制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項10記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記制御部は、前記駆動機構の動作に異常を検出した場合には、前記光路非形成状態に固定する第3の制御モードを用いて、前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項12】
乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像の映像光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された前記映像光を前記乗り物の表示領域に投射して反射させることで、虚像を前記乗り物の前方に表示する映像光投射部と、
前記映像光の光路上に設けられ、前記映像光の光路を形成する光路形成状態、または前記映像光の光路を形成しない光路非形成状態に切り替えるシャッターと、
を備え、
前記シャッターが前記光路非形成状態に切り替えられる期間の長さは、前記映像光を虚像として視認できる長さであり、
前記シャッターは、前記光路形成状態では光を透過し、前記光路非形成状態では光を反射し、
前記シャッターは、前記シャッターの面法線と前記映像光の光軸とが交差するように設置される、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項13】
乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像の映像光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された前記映像光を前記乗り物の表示領域に投射して反射させることで、虚像を前記乗り物の前方に表示する映像光投射部と、
前記映像光の光路上に設けられ、前記映像光の光路を形成する光路形成状態、または前記映像光の光路を形成しない光路非形成状態に切り替えるシャッターと、
前記映像表示装置および前記シャッターを制御する制御部と、
を備え、
前記シャッターが前記光路非形成状態に切り替えられる期間の長さは、前記映像光を虚像として視認できる長さであり、
前記制御部は、条件判定を行い、前記条件判定の判定結果に基づいて、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とを周期的に切り替える第1の制御モードか、前記光路形成状態に固定する第2の制御モードを用いて、前記シャッターを制御し、
前記映像表示装置の温度を検出する温度検出部を有し、
前記制御部は、前記温度検出部で検出された温度が閾値を超えた場合には、前記第1の制御モードを用いて前記シャッターを制御し、前記閾値を超えない場合には、前記第2の制御モードを用いて前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項14】
乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像の映像光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された前記映像光を前記乗り物の表示領域に投射して反射させることで、虚像を前記乗り物の前方に表示する映像光投射部と、
前記映像光の光路上に設けられ、前記映像光の光路を形成する光路形成状態、または前記映像光の光路を形成しない光路非形成状態に切り替えるシャッターと、
前記映像表示装置および前記シャッターを制御する制御部と、
を備え、
前記シャッターが前記光路非形成状態に切り替えられる期間の長さは、前記映像光を虚像として視認できる長さであり、
前記制御部は、条件判定を行い、前記条件判定の判定結果に基づいて、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とを周期的に切り替える第1の制御モードか、前記光路形成状態に固定する第2の制御モードを用いて、前記シャッターを制御し、
前記制御部は、前記乗り物の位置情報と、現在日時の情報とに基づいて太陽の高度を算出し、算出した前記太陽の高度が所定範囲にある場合には、前記第1の制御モードを用いて前記シャッターを制御し、前記所定範囲にない場合には、前記第2の制御モードを用いて前記シャッターを制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項15】
乗り物に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法であって、
前記乗り物に関する情報を取得し、
取得した前記乗り物に関する情報を表す映像を表示し、表示した映像の映像光を出射し、
出射した前記映像光を表示領域に投射することで、投射された前記映像光を虚像として利用者に視認させ、
前記映像光の光路上に設けられ、前記映像光の光路を形成する光路形成状態、または前記映像光の光路を形成しない光路非形成状態に制御されるシャッターを用いて前記映像光の光路を制御し、
前記映像光の光路を制御する際に、前記光路形成状態と前記光路非形成状態とが周期的に切り替わる第1の制御モード、または前記光路形成状態に固定する第2の制御モード、または前記光路非形成状態に固定する第3の制御モードに切り替えるように、前記シャッターを制御し、
前記シャッターは、前記光路形成状態では光を透過し、前記光路非形成状態では、光を吸収するか、または、光を拡散する、
ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置およびその制御方法に関し、例えば、AR(Augmented Reality:拡張現実)を利用したヘッドアップディスプレイ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽光などの外光の侵入を効果的に防ぐことができるヘッドアップディスプレイ装置が示される。当該ヘッドアップディスプレイ装置は、複数のシャッターを有するシャッター部を備え、表示部が表示する表示画像の大きさに応じて、シャッター部に形成される透過窓部の大きさを変化させることで、外光の侵入、ひいては、表示部の破損を防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-152746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車等の車両を代表とする乗り物には、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、明細書では「HUD」と略す)が搭載される場合がある。HUDは、車速やエンジン回転数といった走行情報や、ナビゲーション情報等をウィンドシールド(フロントガラス)等に投射して表示する。HUDを用いると、運転者は、ダッシュボードに組み込まれる計器盤、いわゆるインパネに視線を移動することなく運転に必要な情報を得ることができる。このため、安全運転に寄与することが可能になる。
【0005】
一方、HUDでは、近年、実在する風景上の対象物に各種情報を付加して表示するようなARの利用が望まれる。特に、ARを利用したHUD(AR-HUDと呼ぶ)では、広い表示領域が必要とされる。表示領域を広げるためには、映像光の光路上、すなわち表示パネルからウィンドシールドへの光路上に設けられる開口部を広げる必要がある。ただし、開口部を広げるほど、映像光の光路とは逆向きの光路で太陽光が入射し易くなる。その結果として、表示パネルが破損し易くなる。
【0006】
そこで、特許文献1のように、透過窓部の大きさを変化させる方式が考えられる。ただし、表示画像の大きさに応じて透過窓部の大きさを変化させた場合であっても、表示パネル上に太陽光の集光箇所が依然として生じ得るため、十分な保護が図れるとは限らない。十分な保護を図るためには、例えば、太陽光が入射する光路を遮断することが望まれる。しかしながら、通常、太陽光の光路を遮断すると、表示パネルからの映像光の光路も同時に遮断されるため、利用者が虚像を視認できない時間帯が生じる。
【0007】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、太陽光に伴う破損を防止しつつ、利用者が虚像を視認できない時間帯を削減することが可能なヘッドアップディスプレイ装置およびその制御方法を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
代表的なヘッドアップディスプレイ装置は、乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、映像表示装置と、映像光投射部と、シャッターと、を備える。映像表示装置は、映像の映像光を出射する。映像光投射部は、映像表示装置から出射された映像光を表示領域に投射して反射させることで、虚像を乗り物の前方に表示する。シャッターは、映像光の光路上に設けられ、映像光の光路を形成する光路形成状態、または映像光の光路を形成しない光路非形成状態に切り替える。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、ヘッドアップディスプレイ装置において、太陽光に伴う破損を防止しつつ、利用者が虚像を視認できない時間帯を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1によるヘッドアップディスプレイ装置を搭載した車両の構成例を示す概略図である。
図2図1におけるHUD装置の主要部の構成例を示す概略図である。
図3図2におけるHUD装置のより詳細な構成例および動作例を示す図である。
図4図3に示されるHUD装置の外形例を示す斜視図である。
図5図3に示されるHUD装置に含まれる制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
図6図5において、情報取得部に関わる箇所の構成例を示すブロック図である。
図7A図5における温度検出部の処理内容の一例を説明する図である。
図7B図5における温度検出部の処理内容の一例を説明する図である。
図8図3における光源の制御方法の一例を示すタイムチャートである。
図9図3におけるシャッターの制御方法の一例を示すタイムチャートである。
図10A図3におけるシャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図10B図3におけるシャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図11図3における光源およびシャッターの制御方法と、太陽光強度との関係の一例を示すタイムチャートである。
図12図5において、シャッターの制御に伴う制御部の処理内容の一例を示すフロー図である。
図13図12に示される条件判定(ステップS100)の具体例を示す図である。
図14図13を補足する図であり、太陽と車両との位置関係の一例を示す図である。
図15A図3におけるシャッターの別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図15B図3におけるシャッターの別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図16A図3におけるシャッターの更に別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図16B図3におけるシャッターの更に別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図17A】実施の形態2によるHUD装置において、シャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
図17B】実施の形態2によるHUD装置において、シャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施の形態1)
<HUD装置の概要>
図1は、実施の形態1によるヘッドアップディスプレイ装置を搭載した車両の構成例を示す概略図である。図1に示されるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1は、乗り物の一つである車両2に搭載される。車両2は、代表的には、自動車であるが、必ずしもこれに限定されず、鉄道車両等であってもよい。また、乗り物は、車両に限らず、航空機等であってもよい。また、車両2には、通常、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる制御ユニット(図示せず)が搭載される。
【0015】
当該制御ユニットは、例えば、車両2の各部に設置された各種センサや、加えて、ナビゲーション装置等から車両情報4を取得する。各種センサは、例えば、車両2で生じた各種イベントを検知し、また、走行状況に関する各種パラメータ値を検知する。HUD装置1は、制御ユニットによって取得された車両情報4を、例えばCAN(Controller Area Network)通信等を用いて取得する。
【0016】
車両情報4には、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、車内外のカメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報等が含まれる。GPS情報の中には、現在時刻等の情報も含まれる。HUD装置1は、このような車両情報4に基づいて、ウィンドシールド3等の表示領域5に映像を投射する。これにより、HUD装置1は、運転者等の利用者に、表示領域5に投射された映像を虚像として、詳細には車両2の前方の風景に重畳された虚像として視認させる。
【0017】
図2は、図1におけるHUD装置の主要部の構成例を示す概略図である。図2に示すHUD装置1は、映像表示装置35と、光反射部材であるミラーM1,M2とに加えて、シャッター68を備える。映像表示装置35は、例えば、プロジェクタやLCD(Liquid Crystal Display)等であり、入力された映像データに基づいて映像を表示し、表示した映像の映像光を生成して出射する。映像表示装置35は、詳細には、光源65と、光学部品63aと、表示パネル64とを備える。
【0018】
光源65は、例えば、LED(Light Emitting Diode)光源や、レーザ光源等であり、表示パネル64にバックライトを照射する。詳細には、光源65は、オンに制御された際にバックライトを点灯し、オフに制御された際にバックライトを消灯する。光学部品63aは、例えば、光源用のレンズであり、光源65からのバックライトが表示パネル64に均一に照射されるようにバックライトの光路を調整する。表示パネル64は、代表的には、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)である。表示パネル64は、入力された映像データに応じて、光源65からのバックライトを変調することで、詳細には、透過率を画素毎に変調することで、映像を表示する。
【0019】
ミラーM2は、例えば、平面鏡であり、映像表示装置35とミラーM1との間の映像光の光路30上に設けられる。ミラーM2は、映像表示装置35からの映像光をミラーM1に反射する映像光反射部として機能する。ミラーM1は、例えば、凹面鏡(拡大鏡)であり、ミラーM2と、表示領域5との間の映像光の光路30上に設けられる。ミラーM1は、映像表示装置35から出射された映像光を表示領域5に投射することで、投射された映像光を虚像として運転者6等の利用者に視認させる映像光投射部として機能する。つまり、映像光投射部は、映像表示装置35から出射された映像光を乗り物の表示領域5に投射して反射させることで、虚像を乗り物の前方に表示するものである。
【0020】
詳細には、ミラー(映像光投射部)M1は、ミラー(映像光反射部)M2で反射された映像光を反射および拡大し、開口部7を介して表示領域5に投射する。表示領域5に投射された映像光は、表示領域5で反射され、運転者6の目に入射する。その結果、運転者6は、表示領域5に投射された映像光を、透明のウィンドシールド3の先の虚像として、車外の風景(道路や建物、人など)に重畳される形で視認する。虚像が表す情報の中には、例えば、道路標識や、自車の現速度や、風景上の対象物に付加される各種情報、すなわちAR情報等、様々なものが含まれる。
【0021】
なお、ミラーM1,M2は、例えば、自由曲面ミラーや光軸非対称の形状を有するミラー等であってよい。ここで、ミラー(映像光反射部)M2は、設置角度が固定される。一方、ミラー(映像光投射部)M1は、駆動機構62を含んでいる。これにより、ミラーM1は、駆動機構62を介して設置角度が可変調整される。駆動機構62は、例えば、モータを含み、モータの回転動作によってミラーM1を回転させる。ミラーM1の角度を、回転軸を中心に回転しながら調整することで、映像光を表示領域5に投射する投射モードまたは映像光を表示領域5に投射しない非投射モードに切り替えることが可能となる。
【0022】
また、投射モードにおいてミラーM1の設置角度を調整することで、ウィンドシールド3上の表示領域5の位置、すなわち、運転者6が視認する虚像の上下方向の位置を調整できる。また、例えば、ミラーM1および開口部7を大面積化することで、表示領域5の面積を拡大でき、より多くの情報を表示領域5に投射することが可能になる。これにより、風景上の対象物に各種情報を付加して表示するAR機能が実現できる。
【0023】
シャッター68は、映像光の光路30上、図2に示される例では、映像表示装置35とミラー(映像光反射部)M2との間の映像光の光路30上に設けられる。シャッター68は、映像光の光路を形成する光路形成状態、または映像光の光路を形成しない光路非形成状態に制御される。図2に示される例では、シャッター68は、光路形成状態では光を透過し、光路非形成状態では光を遮光する。シャッター68は、代表的には、透過/遮光を高速に切り替えることが可能な液晶シャッター等である。詳細は後述するが、光路形成状態と光路非形成状態との切り替えは、運転者6が表示領域5に投射された映像光を虚像として視認できる程度に速い速度で行われる。
【0024】
<HUD装置の詳細>
図3は、図2におけるHUD装置のより詳細な構成例および動作例を示す図である。図4は、図3に示されるHUD装置の外形例を示す斜視図である。図3に示すHUD装置1は、筐体61内に、図2の場合と同様の映像表示装置35、シャッター68、ミラーM1,M2および駆動機構62を備える。さらに、図3では、筐体61内に、日射センサ66と光学部品63bとが設けられる。
【0025】
日射センサ66は、太陽60の位置および太陽光31の強度を検知する。光学部品63bは、投射用のレンズであり、映像表示装置35とシャッター68との間の映像光の光路上に設けられる。光学部品63bは、例えば、表示パネル64からの映像光の広がり等を調整する。なお、図3では、記載の簡略化のため、図2に示した映像表示装置35内の光学部品63aの図示は省略されている。
【0026】
ここで、ミラー(映像光投射部)M1は、駆動機構62を介して設置角度が調整されることによって、映像光を表示領域に投射する投射モード、または映像光を表示領域に投射しない非投射モードに制御される。図3に示す矢印方向は、ミラーM1を回転する方向となり、投射モードから非投射モードに切り替える方向となる。投射モードでは、映像光が表示領域に投射される一方で、当該映像光の光路とは逆向きの光路33aで太陽光31が表示パネル64に入射され得る。その結果、表示パネル64が破損するおそれがある。そこで、ミラーM1を非投射モードに制御することで、太陽光31が表示パネル64に入射されないような光路33bを形成することができる。
【0027】
なお、図3では、シャッター68が設けられるため、仮に、ミラーM1が投射モードに制御された状態であっても、シャッターを光路非形成状態、例えば遮光に固定することで、太陽光31の表示パネル64への入射を防止することができる。ただし、シャッター68は、材質等によっては、強い太陽光31が照射されることで劣化するような場合がある。このため、非投射モードを設け、シャッター68から外れる光路33bとなるように、ミラーM1の設置角度を調整することが望ましい。
【0028】
ミラー(映像光投射部)M1を非投射モードに制御するか否かは、例えば、日射センサ66の検知結果に基づいて判定することができる。また、図示は省略されるが、筐体61内には、さらに、周囲温度を検知するための温度センサが設置されてもよい。そして、当該周囲温度に基づいて、ミラーM1を非投射モードに制御するか否かを判定してもよい。ただし、例えば、車両2に設置された温度センサから周囲温度を取得する場合には、筐体61に温度センサを設置する必要はない。
【0029】
図4において、筐体61には、図3に示した開口部7が形成され、当該開口部7に、グレアトラップ等と呼ばれる透明色のカバー部材71が設置される。筐体61内には、図3に示したように、ミラー(映像光反射部)M2からの光をカバー部材71、すなわち開口部7に反射するようにミラー(映像光投射部)M1が設置される。また、筐体61には、例えば、カバー部材71の周辺等に日射センサ66が設置される。
【0030】
日射センサ66は、太陽60の位置(方位および仰角)が所定範囲内に存在する場合に太陽光強度を検知するような構成および配置であってよい。例えば、ミラーM1に対する太陽光31の入射角、ひいては太陽60の位置によっては、太陽光31の光路が表示パネル64から逸脱するため、表示パネル64の破損の可能性を無視できる。すなわち、季節、時間帯、車両2の向き等によっては、破損の可能性を無視できる。
【0031】
この破損の可能性を無視できる入射角の範囲、言い換えれば破損の可能性を無視できない入射角の範囲は、ミラーM1,M2および光学部品63bを含む光学系の光学条件(例えば、設置位置、設置角度、サイズ等)に基づいて予め定めることができる。そこで、日射センサ66は、この表示パネル64の破損の可能性を無視できない入射角(太陽60の位置)の範囲を所定範囲として、この所定範囲内で太陽光強度を検知する。
【0032】
具体的な日射センサ66の構成として、例えば、フォトダイオード等の受光素子周りに開口部や遮蔽板等を適宜設置することで、受光素子に入射される太陽光の入射角を物理的に制限するような方式が挙げられる。または、太陽60の位置および太陽光強度の両方を検知可能な既知の日射センサ(例えば、4個の受光素子の光強度バランスで位置を検知するセンサ等)を用いて、検知された位置情報と太陽光強度情報とを組み合わせて信号処理を行うような方式であってもよい。なお、日射センサ66は、必ずしも太陽60の位置を検知する必要はなく、少なくとも太陽光強度を検知するように構成および配置されればよい。
【0033】
<HUD装置の制御系の構成>
図5は、図3に示されるHUD装置に含まれる制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。図5に示されるHUD装置1は、互いにバスで接続される、制御部10、映像処理部11、音声処理部12、通信部13、情報取得部14、温度検出部15、不揮発性メモリ17、揮発性メモリ18、シャッター駆動部21、光源駆動部22および駆動機構62を備える。また、当該HUD装置1は、音声用ドライバ19、表示用ドライバ20、スピーカ25、表示パネル64、光源65、日射センサ66、シャッター68およびミラー(映像投射部)M1を備える。
【0034】
不揮発性メモリ17には、各種プログラムや各種データが保存される。不揮発性メモリ17に保存された各種プログラムや各種データは、適宜、揮発性メモリ18にコピーされ、プロセッサによって参照される。情報取得部14は、例えば、CANインタフェース回路またはLIN(Local Interconnect Network)インタフェース回路などで構成され、図1で述べたように、CAN通信またはLIN通信を用いて制御ユニットから車両情報4を取得する。通信部13は、例えば、所定の通信規格に基づく有線通信インタフェース回路または無線通信インタフェース回路で構成され、HUD装置1の外部との間で、車両情報4を除く各種制御情報等を通信する。
【0035】
光源駆動部22は、例えば、LEDドライバ回路等によって構成され、光源65を駆動する。その一つして、光源駆動部22は、例えば、光源65に対する電圧印加の有り/無しを周期的に切り替えることで、光源65からのバックライトの輝度を制御する。具体的には、光源駆動部22は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御等を用いてバックライトの輝度を制御する。
【0036】
映像処理部11は、車両情報4などに基づいて、表示パネル64に表示する映像、ひいては、図2に示した表示領域5に投射する映像を定める映像データを生成する。この際に、映像処理部11は、例えば、ウィンドシールド3の曲率等によって生じ得る各種歪みを補正したのちの映像データを生成する。映像処理部11は、例えば、プロセッサが、揮発性メモリ18に保存された映像処理プログラムを実行すること等で実現される。
【0037】
表示用ドライバ20は、例えば、LCDドライバ回路等によって構成される。表示用ドライバ20は、映像処理部11からの映像データに基づいて、表示パネル64に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これにより、表示用ドライバ20は、表示パネル64に、光源65からのバックライトを変調させ、映像データに基づく映像を表示させる。
【0038】
音声処理部12は、必要に応じて、車両情報4などに基づく音声データを生成する。音声データは、例えば、ナビゲーション装置の音声案内を行う場合や、AR機能によって運転者6に警告を発行する場合などで生成される。音声用ドライバ19は、音声処理部12からの音声データに基づいてスピーカ25を駆動し、スピーカ25に音声を出力させる。音声処理部12は、例えば、プロセッサが、揮発性メモリ18に保存された音声処理プログラムを実行すること等で実現される。
【0039】
シャッター駆動部21は、例えば、シャッター68の種類に応じたドライバ回路で構成される。シャッター駆動部21は、図2で述べたように、シャッター68を光路形成状態または光路非形成状態に制御する。駆動機構62は、例えば、モータおよび、当該モータを駆動するモータドライバ回路等によって構成される。駆動機構62は、ミラーM1の設置角度を調整する。
【0040】
温度検出部15は、映像表示装置35、詳細には、表示パネル64の温度を検出する。この際に、温度検出部15は、詳細は後述するが、日射センサ66からの検知結果、すなわち太陽光強度等に基づいて、表示パネル64の温度を演算によって推定する。すなわち、実装上の制約等により、表示パネル64の温度を直接的に検出することが困難となる場合がある。温度検出部15は、このような場合に設けられ、所定の演算によって表示パネル64の温度を間接的に検出する。温度検出部15は、例えば、プロセッサが、揮発性メモリ18に保存された温度検出プログラムを実行すること等で実現される。
【0041】
制御部10は、HUD装置1全体を制御する。その一つとして、制御部10は、光源駆動部22を介して光源65からのバックライトの輝度を制御する。すなわち、制御部10は、PWM制御等を用いて、光源65のオン/オフ、すなわち光源65への電圧印加の有り/無しを制御する。さらに、制御部10は、光路形成状態と光路非形成状態とが周期的に切り替わるように、シャッター駆動部21を介してシャッター68を制御する。制御部10は、例えば、プロセッサが、揮発性メモリ18に保存された制御プログラムを実行すること等で実現される。
【0042】
なお、制御部10、映像処理部11、音声処理部12、通信部13、情報取得部14、温度検出部15、不揮発性メモリ17および揮発性メモリ18は、プロセッサおよび各種周辺回路を備えたマイクロコントローラ等で実現され得る。ただし、これらの一部または全ては、適宜、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現されてもよい。
【0043】
図6は、図5において、情報取得部に関わる箇所の構成例を示すブロック図である。情報取得部14は、各種センサ等の情報取得デバイスによって生成された車両情報4を、図示しない制御ユニットを介して取得する。図6には、当該情報取得デバイスの一例が示される。
【0044】
図6において、車速センサ41は、図1の車両2の速度を検知し、検知結果となる速度情報を生成する。シフトポジションセンサ42は、現在のギアを検知し、検知結果となるギア情報を生成する。ハンドル操舵角センサ43は、現在のハンドル操舵角を検知し、検知結果となるハンドル操舵角情報を生成する。ヘッドライトセンサ44は、ヘッドライトのON/OFFを検知し、検知結果となるランプ点灯情報を生成する。照度センサ45および色度センサ46は、外光を検知し、検知結果となる外光情報を生成する。
【0045】
測距センサ47は、車両2と外部の物体との間の距離を検知し、検知結果となる距離情報を生成する。赤外線センサ48は、車両2の近距離における物体の有無や距離等を検知し、検知結果となる赤外線情報を生成する。エンジン始動センサ49は、エンジンのON/OFFを検知し、検知結果となるON/OFF情報を生成する。加速度センサ50およびジャイロセンサ51は、車両2の加速度および角速度をそれぞれ検知し、検知結果として、車両2の姿勢や挙動を表す加速度ジャイロ情報を生成する。温度センサ52は、車内外の温度を検知し、検知結果となる温度情報を生成する。
【0046】
路車間通信用無線送受信機53は、車両2と、道路、標識、信号機等との間の路車間通信によって路車間通信情報を生成する。車車間通信用無線送受信機54は、車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信によって車車間通信情報を生成する。車内用カメラ55および車外用カメラ56は、それぞれ、車内および車外を撮影することで車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報を生成する。車内用カメラ55は、例えば、図2に示した運転者6の姿勢や、眼の位置、動き等を撮影するDMS(Driver Monitoring System)用のカメラ等である。この場合、撮像された映像を解析することで、運転者6の疲労状況や視線の位置等が把握できる。
【0047】
一方、車外用カメラ56は、例えば、車両2の前方や後方といった周囲の状況を撮影する。この場合、撮像された映像を解析することで、周辺に存在する他の車両や人などの障害物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸等といった路面状況、および道路標識等を把握することが可能になる。また、車外用カメラ56には、例えば、走行中の状況を映像で記録するドライブレコーダ等も含まれる。
【0048】
GPS受信機57は、GPS信号を受信することで得られるGPS情報を生成する。例えば、GPS受信機57によって、現在時刻を取得することも可能である。VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)受信機58は、VICS信号を受信することで得られるVICS情報を生成する。GPS受信機57やVICS受信機58は、ナビゲーション装置の一部として設けられてもよい。なお、図6に示される各種情報取得デバイスに関しては、適宜、削除することや、他の種類のデバイスを追加することや、他の種類のデバイスに置き換えることが可能である。
【0049】
<温度検出部と太陽光対策について>
図7Aおよび図7Bは、図5における温度検出部の処理内容の一例を説明する図である。図7Aには、図3の場合と同様のHUD装置1が示される。図7Bには、図7Aにおける映像表示装置35の部分が抽出して示される。図7Bに示されるように、表示パネル64の温度は、映像表示装置35の周囲温度Taと、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)と、光源65からの熱放射に伴う温度上昇量ΔT(L)とによって推定することができる。
【0050】
周囲温度Taは、図3で述べたように、HUD装置1内に設置された温度センサか、または、車両2内に設置された温度センサ52によって検知される。太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)は、日射センサ66によって検知された太陽光強度に基づいて算出される。光源65からの熱放射に伴う温度上昇量ΔT(L)は、光源65に設定されるバックライトの輝度、すなわちPWM制御のデューティ比等に基づいて算出される。温度検出部15は、このような周囲温度Taと、温度上昇量ΔT(I)と、温度上昇量ΔT(L)とを用いた演算によって表示パネル64の温度を間接的に検出する。
【0051】
ここで、光源65からの熱放射に伴う温度上昇量ΔT(L)は、バックライトの輝度によって制御可能なパラメータである。このため、制御部10は、例えば、温度検出部15によって検出された表示パネル64の温度が、所定の閾値を超えるような場合には、バックライトの輝度を下げる、すなわちPWM制御のデューティ比を下げることで、表示パネル64の温度上昇を抑制することが可能である。
【0052】
一方、例えば、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)が非常に大きいような場合には、このようなバックライトの輝度制御を用いたとしても、表示パネル64の温度上昇を抑制することが困難となり得る。このような場合、制御部10は、駆動機構62を介してミラー(映像光投射部)M1を非投射モードに制御すればよい。ただし、ミラーM1を非投射モードに制御した場合、運転者6は、虚像を視認できなくなる。そこで、シャッター68を用いて、以下に述べるような制御を行うことが有益となる。
【0053】
<シャッターの詳細>
図8は、図3における光源の制御方法の一例を示すタイムチャートである。図7Bで述べたように、制御部10は、光源65からの熱放射に伴う温度上昇量ΔT(L)を抑制するため、バックライトの輝度を制御することができる。また、制御部10は、運転者6からの要求、例えば、運転者6による操作に応じて、バックライトの輝度を制御する場合もある。
【0054】
このような場合、制御部10は、光源駆動部22を介して、例えば、図8に示されるようなPWM制御を用いて光源65のオン/オフを制御する。各PWM周期Tpwmには、光源65に電圧Vfが印加されるオン期間Tonと、光源65に電圧が印加されないオフ期間Toffとが設けられる。光源65は、オン期間Tonで点灯し、オフ期間Toffで消灯する。PWM周期Tpwmに対するオン期間Tonの比率(=Ton/Tpwm)は、デューティ比[%]と呼ばれる。映像光は、デューティ比が100%に近づくほど明るくなり、0%に近づくほど暗くなる。
【0055】
図9は、図3におけるシャッターの制御方法の一例を示すタイムチャートである。図10Aおよび図10Bは、図3におけるシャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。図9に示されるように、制御部10は、光源65に電圧Vfを印加するオン期間Tonでは、シャッター68を光路形成状態、例えば透過に制御し、光源65に電圧を印加しないオフ期間Toffでは、シャッター68を光路非形成状態、例えば遮光に制御する。詳細には、制御部10は、このようなシャッター68の透過/遮光を、シャッター駆動部21を介して制御する。
【0056】
図10Aおよび図10Bは、映像光32を表示領域に投射する投射モードでの動作を示す。具体例として、図10Aおよび図10Bに示されるシャッター68は、例えば、透過/吸収型の液晶シャッターである。図10Aに示されるように、シャッター68は、光源65のオン期間Tonでは、光路形成状態に制御されることで光を透過する。すなわち、映像表示装置35からの映像光32は、シャッター68を透過し、ミラーM2に入射する。また、ミラーM2からの太陽光31は、シャッター68を透過し、映像表示装置35に入射する。一方、図10Bに示されるように、シャッター68は、光源65のオフ期間Toffでは、光路非形成状態に制御されることで光を吸収する。すなわち、シャッター68は、太陽光31を吸収することで、表示パネル64への太陽光31を遮光する。
【0057】
液晶シャッターを用いる場合、太陽光31の吸収によってシャッター68自身が熱を持ち得る。これに伴うシャッター68の破損を防止するため、制御部10は、例えば、表示パネル64に加えて、シャッター68の温度管理を行うことが望ましい。具体例として、制御部10は、例えば、日射センサ66で検知された太陽光強度、シャッター68をPWM制御する際のデューティ比、および周囲温度Ta等に基づいて、シャッター68の温度を推定できる。そして、制御部10は、シャッター68の推定温度が閾値を超えた場合には、ミラーM1を非投射モードに制御することで、シャッター68の破損を防止すればよい。
【0058】
また、シャッター68の設置箇所は、図10Aおよび図10Bに示されるような、光学部品63bとミラー(映像光反射部)M2との間の映像光32の光路上に限らない。例えば、シャッター68の設置箇所は、映像表示装置35と光学部品63bとの間、またはミラー(映像光反射部)M2とミラー(映像光投射部)M1との間の映像光32の光路上であってもよい。この際に、シャッター68は、ミラーM2の反射面に接する形で設置されてもよい。あるいは、シャッター68の設置箇所は、ミラー(映像光投射部)M1と表示領域5との間の映像光32の光路上、例えば、開口部7の箇所であってもよい。
【0059】
ただし、映像光32は開口部7に近づくほど広がり得るため、これに応じて必要とされるシャッター68の面積も大きくなり得る。また、シャッター68の設置箇所が表示パネル64に近過ぎる場合、太陽光31を吸収したシャッター68からの放熱が表示パネル64の温度上昇を招くおそれがある。これら2つの事項のバランスをとる観点では、シャッター68の設置箇所は、図10Aおよび図10Bに示される箇所が望ましい。
【0060】
ここで、図8に示したPWM周期Tpwmの長さは、特に限定はされないが、例えば、msオーダである。このようなPWM周期Tpwmを用いた場合、運転者6は、オン期間Tonで投射された虚像の残像によって、オフ期間Toffが存在するにも関わらず、虚像を持続的に視認することができる。なお、実施の形態では、シャッター68の制御方法として、PWM制御が用いられるが、必ずしもPWM制御が用いられる必要はない。すなわち、必要な条件として、シャッター68が光路非形成状態に制御される期間、ここではオフ期間Toffの長さは、運転者6が映像光32を虚像として持続的に視認できる長さであればよい。
【0061】
明細書では、図9に示したように、光路形成状態と光路非形成状態とが周期的に切り替わるようにシャッター68を制御する制御モードを、切り替え制御モードまたは第1の制御モードと呼ぶ。切り替え制御モードの代表例として、制御部10は、図9に示したように、光源65のオン/オフに連動して、シャッター68を光路形成状態/光路非形成状態に制御する。
【0062】
一方、明細書では、図9の場合と異なり、光源65のオン/オフに関わらず、シャッター68を光路形成状態に固定する、例えば透過に固定する制御モードを、光路形成制御モードまたは第2の制御モードと呼ぶ。同様に、光源65のオン/オフに関わらず、シャッター68を光路非形成状態に固定する、例えば遮光に固定する制御モードを、光路非形成制御モードまたは第3の制御モードと呼ぶ。
【0063】
例えば、光路形成制御モードを用いた場合、運転者6は映像光32を虚像として視認できるが、その反面、映像表示装置35への太陽光31の入射が生じ得る。また、光路非形成制御モードを用いた場合、映像表示装置35への太陽光31の入射を防止できるが、その反面、運転者6は映像光32を虚像として視認できなくなる。一方、切り替え制御モードを用いると、運転者6に映像光32を虚像として視認させつつ、映像表示装置35への太陽光31の入射を抑制できる。
【0064】
具体的には、切り替え制御モードでは、シャッター68は、オン期間Tonで出射された表示パネル64からの映像光32を、全て透過することができる。また、シャッター68は、表示パネル64からの映像光32が出射されないオフ期間Toffにおいて、太陽光31の表示パネル64への入射を遮光することができる。その結果、太陽光31が入射される期間は、PWM周期Tpwm内のオン期間Tonに限定されるため、図7Bに示した太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)を抑制できる。これらにより、太陽光31に伴う映像表示装置35、詳細には表示パネル64の破損を防止しつつ、運転者6が虚像を視認できない時間帯を削減することが可能になる。
【0065】
なお、シャッター68は、デフォルト状態が透過であるものと、デフォルト状態が遮光であるものとが存在し得る。シャッター68は、デフォルト状態が透過である場合、電圧Vfの印加によって遮光に制御され、デフォルト状態が遮光である場合、電圧Vfの印加によって透過に制御される。デフォルト状態が透過であるシャッター68を用いると、シャッター68の制御に伴う消費電力を抑制できる。すなわち、HUD装置1の一般的な使用形態では、シャッター68を透過に制御する期間は、シャッター68を遮光に制御する期間よりも長くなる。一方、デフォルト状態が遮光であるシャッター68を用いると、何らかの原因でシャッター68を制御できなくなった場合でも、表示パネル64の破損を防止することができる。
【0066】
図11は、図3における光源およびシャッターの制御方法と、太陽光強度との関係の一例を示すタイムチャートである。図11に示されるように、制御部10は、太陽光強度が強くなると、光源65に対するPWM制御のディーティ比を下げる制御を行う。これにより、光源65に伴う温度上昇量ΔT(L)、ひいては表示パネル64の温度上昇を抑制することができる。
【0067】
さらに、制御部10は、当該光源65のPWM制御に連動して、シャッター68を切り替え制御モードで制御する。これにより、ディーティ比の低下に伴いより長くなったオフ期間Toffにおいて、太陽光31をシャッター68で遮光できるため、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)、ひいては、表示パネル64の温度上昇をより大きく抑制することができる。このように、PWM制御を用いて光源65のオン/オフを制御し、当該光源65のオン/オフに連動して、シャッター68を光路形成状態/光路非形成状態に制御することで、表示パネル64の温度上昇を抑制する効果を相乗的に得ることが可能になる。
【0068】
<切り替え制御モードの変形例>
図9では、光源65のオン/オフに連動させるように切り替え制御モードを用いたが、場合によっては、表示パネル64が常時映像光を出射した状態、すなわち、光源65が常時オンの状態で、シャッター68をPWM制御するような方式を用いることも可能である。このような方式を用いた場合であっても、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)を抑制する効果が得られる。ただし、この場合、光源65のオン/オフに連動させる場合と比較して、光源65に伴う温度上昇量ΔT(L)が増加し、さらに、光源65で生じる消費電力も増大する。このような観点では、光源65のオン/オフに連動させるように切り替え制御モードを用いることが有益となる。
【0069】
<シャッターの制御方法の詳細>
図12は、図5において、シャッターの制御に伴う制御部の処理内容の一例を示すフロー図である。制御部10は、図12の示されるフローを所定の制御周期で繰り返し実行する。図12において、制御部10は、判定項目Aに対する条件判定を行う(ステップS100)。制御部10は、ステップS100での判定結果が判定結果[1]の場合、シャッター68を切り替え制御モードで制御する(ステップS101)。すなわち、制御部10は、光路形成状態/光路非形成状態が周期的に切り替わるようにシャッター68を制御し、詳細には、例えば、光源65のオン/オフに連動してシャッター68を光路形成状態/光路非形成状態に制御する。
【0070】
一方、制御部10は、ステップS100での判定結果が判定結果[2]の場合、シャッター68を光路形成制御モードで制御する(ステップS102)。すなわち、制御部10は、シャッター68を光路形成状態に固定する。また、制御部10は、ステップS100での判定結果が判定結果[3]の場合、シャッター68を光路非形成制御モードで制御する(ステップS103)。すなわち、制御部10は、シャッター68を光路非形成状態に固定する。
【0071】
図13は、図12に示される条件判定(ステップS100)の具体例を示す図である。図14は、図13を補足する図であり、太陽と車両との位置関係の一例を示す図である。図13には、図12における条件判定(ステップS100)の具体例として、例1~例13が示される。例1~例13では、判定項目Aと、判定結果[1]、判定結果[2]および判定結果[3]との対応関係が示される。
【0072】
例1において、制御部10は、日射センサ66による太陽光31の検知有無を判定する。詳細には、制御部10は、日射センサ66の検知結果に基づいて、例えば、昼間/夜間、晴れ/曇りといったような区分で、太陽光31の実質的な存在有無を判定する。制御部10は、太陽光31を検知有りと判定した場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、太陽光31を検知無しと判定した場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。なお、例1では、判定結果[3]は、用いられない。
【0073】
例2において、制御部10は、日射センサ66で検知した太陽光強度が閾値を超えたか否かを判定する。詳細には、制御部10は、例えば、日射センサ66で検知された太陽光強度が表示パネル64の破損を招き得る程度であるか否かを、閾値に基づいて判定する。このため、例2では、ある程度大きい閾値が用いられる。なお、制御部10は、例えば、例1において、例2の場合よりも十分に小さい閾値を用いて、太陽光31の検知有無を判定してもよい。また、例1および例2では、制御部10は、図4で述べたような日射センサ66の構成および配置によって、太陽60の位置を含めて判定を行ってもよい。
【0074】
制御部10は、太陽光強度が閾値を超えた場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、太陽光強度が閾値を超えない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。太陽光強度が閾値を超えた場合に、切り替え制御モードを用いることで、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)を抑制することが可能になる。一方、太陽光強度が閾値を超えない場合、光路形成制御モードを用いることで、シャッター68のオン/オフ動作の頻度が減り、消費電力を低減することや、シャッター68の摩耗を抑制すること等が可能になる。なお、例2では、判定結果[3]は、用いられない。
【0075】
例3において、制御部10は、周囲温度Ta、映像輝度に応じた温度上昇量ΔT(L)、および太陽光強度に応じた温度上昇量ΔT(I)から推定される現時点での表示パネル64の推定温度が、閾値を超えたか否かを判定する。すなわち、制御部10は、温度検出部15の検出結果に基づいて判定を行う。制御部10は、現時点での表示パネル64の推定温度が閾値を超えた場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、太陽光強度が閾値を超えない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。なお、例3では、判定結果[3]は、用いられない。
【0076】
例4において、制御部10は、例3の場合と異なり、周囲温度Ta、映像輝度に応じた温度上昇量ΔT(L)、および太陽光強度に応じた温度上昇量ΔT(I)から推定される一定時間後の表示パネル64の温度が、閾値を超えたか否かを判定する。詳細には、制御部10は、例えば、温度上昇量ΔT(L),ΔT(I)の変化率や、過渡特性等を反映して一定時間後の表示パネル64の温度を推定し、当該推定した温度が閾値を超えた場合には、現時点で切り替え制御モードを適用する。例3では、急激な温度上昇が生じた場合、表示パネル64の温度が、制御遅延によって想定を超えて上昇する可能性がある。例4を用いると、このような場合にも対応することが可能になる。
【0077】
例5において、制御部10は、ミラーM1に装着された駆動機構62における異常検出の有無を判定する。制御部10は、異常検出有りと判定した場合には、判定結果[3]として、シャッター68を光路非形成制御モードで制御する。なお、例5では、判定結果[1]および判定結果[2]は、用いられない。異常検出有りの場合とは、例えばモータ等の駆動機構62において、過電流、過負荷、過温度等が検出された場合である。この場合、ミラーM1を用いた保護動作、すなわち非投射モードへの遷移が実行不可となるため、光路非形成制御モードを用いることで、表示パネル64の破損を確実に防止する。
【0078】
例6において、制御部10は、ミラーM1の制御状態が非投射モードであるか否かを判定する。制御部10は、ミラーM1の制御状態が非投射モードである場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御するか、または、判定結果[3]として、シャッター68を光路非形成制御モードで制御する。非投射モードでは、シャッター68は、太陽光31が入射されずに待機している状態であるため、光路形成制御モードまたは光路非形成制御モードのいずれで制御されてもよい。なお、例6では、判定結果[1]は、用いられない。
【0079】
例7において、制御部10は、映像表示装置35の周囲温度Taが閾値を超えたか否かを判定する。制御部10は、周囲温度Taが閾値を超えた場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、閾値を超えない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。周囲温度Taが閾値を超えた場合、その分だけ、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)の許容値は低下する。そこで、切り替え制御モードを用いることで、温度上昇量ΔT(I)を抑制し、表示パネル64の破損を防止する。なお、例7では、判定結果[3]は、用いられない。
【0080】
例8において、制御部10は、車両2の位置情報、例えば、緯度および経度情報と、現在日時の情報とに基づいて算出される太陽60の高度(言い換えれば仰角)が所定範囲にあるか否かを判定する。車両2の位置情報や、現在日時の情報は、例えば、車両情報4に含まれるGPS情報等から取得され得る。制御部10は、太陽60の高度が所定範囲にある場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、所定範囲にない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。所定範囲は、例えば、相対的に高い高度の範囲であり、太陽光強度が相対的に強くなり得る範囲である。なお、例8では、判定結果[3]は、用いられない。
【0081】
例9において、制御部10は、車両2の位置情報、例えば、緯度および経度情報と、現在日時の情報とに基づいて算出される太陽60の高度(言い換えれば仰角)“α”と、太陽60の相対方位角“β-γ”とが、それぞれ、所定範囲にあるか否かを判定する。“β”は、太陽60の方位角であり、“γ”は、車両2の方位角(言い換えれば向き)である。太陽60の相対方位角“β-γ”は、図14に示されるように、車両2の向きを基準した太陽60の方位角を表す。太陽60の方位角“β”は、車両情報4に含まれるGPS情報等、例えば車両2の位置情報および現在日時の情報等に基づいて算出される。車両2の向き“γ”は、車両情報4に含まれる加速度ジャイロ情報やGPS情報等に基づいて算出される。
【0082】
制御部10は、太陽60の高度“α”が所定範囲にあり、すなわちAmin≦α≦Amaxを満たし、かつ、太陽60の相対方位角“β-γ”が所定範囲にある、すなわちBmin≦β-γ≦Bmaxを満たす場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御する。一方、制御部10は、太陽60の高度“α”が所定範囲にないか、または、相対方位角“β-γ”が所定範囲にない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。なお、例9では、判定結果[3]は、用いられない。
【0083】
ここで、例8では、太陽60の高度が所定範囲にあれば、強い太陽光31が入射し得る状況と判定され、切り替え制御モードが用いられる。これにより、太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)が抑制される。一方、例9では、太陽60の高度が所定範囲にあったとしても、太陽光31が表示パネル64に入射されないような車両2の向きになっていれば、強い太陽光31が入射されない状況と判定され、切り替え制御モードではなく、光路形成制御モードが用いられる。これにより、例8の場合と比較して、シャッター68のオン/オフ動作の頻度が減り、消費電力を低減することや、シャッター68の摩耗を抑制すること等が可能になる。なお、例9では、判定結果[3]は、用いられない。
【0084】
例10において、制御部10は、情報取得部14を介して車両2の照度センサ45から取得した照度が、閾値を超えたか否かを判定する。制御部10は、取得した照度が閾値を超えた場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、閾値を超えない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。例10では、照度センサ45の検知結果に基づいて、太陽光強度等が間接的に判定される。そして、制御部10は、太陽光強度等が強いと判定される場合には、切り替え制御モードを用いて太陽光31に伴う温度上昇量ΔT(I)を抑制する。なお、例10では、判定結果[3]は、用いられない。
【0085】
例11において、制御部10は、情報取得部14を介して車両2の温度センサ52から取得した温度が、閾値を超えたか否かを判定する。制御部10は、取得した温度が閾値を超えた場合には、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御し、閾値を超えない場合には、判定結果[2]として、シャッター68を光路形成制御モードで制御する。例11では、制御部10は、例えば、温度センサ52から取得した温度に基づいて、周囲温度Ta等を検知または推定し、その結果に基づいてシャッター68を制御する。なお、例11では、判定結果[3]は、用いられない。
【0086】
例12において、制御部10は、HUD装置1の動作における異常検出の有無を判定する。制御部10は、異常検出有りと判定した場合には、判定結果[3]として、シャッター68を光路非形成制御モードで制御する。例えば、映像表示装置35に異常が発生し、映像表示装置35から強い映像光32が出射されたような場合、当該映像光32を運転者6が視認することで、運転に支障が生じるおそれがある。このような事態を代表に、HUD装置1に異常が生じた場合でも安全性を確保するため、異常検出有りと判定された場合には、光路非形成制御モードが用いられる。なお、例12では、判定結果[1]および判定結果[2]は、用いられない。
【0087】
例13において、制御部10は、HUD装置1が動作中であれば、判定結果[1]として、シャッター68を切り替え制御モードで制御する。すなわち、例13では、光路形成制御モードおよび光路非形成制御モードは用いられず、常に、切り替え制御モードが用いられる。この場合であっても、例えば、光源65に対する太陽光強度に応じたディーティ比の制御や、または、ミラーM1による保護動作等と併用することで、表示パネル64の破損を十分に防止することが可能である。
【0088】
なお、例1~例12に示した各判定項目Aは、それぞれ単独で用いることも、適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0089】
<シャッターの各種適用例>
図15Aおよび図15Bは、図3におけるシャッターの別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。図15Aおよび図15Bに示されるシャッター68は、例えば、透過/拡散型の液晶シャッターである。図15Aに示されるように、当該シャッター68は、光源65のオン期間Tonでは、光路形成状態に制御されることで図10Aの場合と同様に光を透過する。
【0090】
一方、図15Bに示されるように、当該シャッター68は、光源65のオフ期間Toffでは、光路非形成状態に制御されることで、図10Bの場合と異なり光を拡散する。すなわち、当該シャッター68は、太陽光31を拡散することで、表示パネル64への太陽光31を遮光する。この場合、拡散された一部の太陽光31は表示パネル64に入射され得るが、その入射エネルギーは小さいため、実質的に、太陽光31は遮光される。
【0091】
シャッター68の設置箇所に関しては、図15Aおよび図15Bに示されるような、光学部品63bとミラーM2との間の箇所に限らず、図10Aおよび図10Bの場合と同様に、適宜変更可能である。すなわち、シャッター68の設置箇所は、映像表示装置35と光学部品63bとの間の箇所、またはミラー(映像光反射部)M2とミラー(映像光投射部)M1との間の箇所、あるいは開口部7の箇所等であってもよい。また、シャッター68は、ミラーM2の反射面に接する形で設置されてもよい。
【0092】
ただし、シャッター68の設置箇所が表示パネル64に近過ぎる場合、例えば、映像表示装置35と光学部品63bとの間の箇所である場合、拡散された太陽光31が表示パネル64に入射され易くなる。この観点で、シャッター68の設置箇所は、図15Aおよび図15Bに示される箇所が望ましい。また、シャッター68で拡散された太陽光は、迷光となり、開口部7から出射されたのち運転者6の目に到達する可能性がある。このため、シャッター68の周辺には、例えば、壁状の遮光部品等が設置されるのが望ましい。
【0093】
図16Aおよび図16Bは、図3におけるシャッターの更に別の具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。図16Aおよび図16Bに示されるシャッター68は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターである。図16Aに示されるように、当該シャッター68は、光源65のオン期間Tonでは、光路形成状態に制御されることで図10Aの場合と同様に光を透過する。一方、図16Bに示されるように、当該シャッター68は、光源65のオフ期間Toffでは、光路非形成状態に制御されることで、図10Bの場合と異なり光を反射する。すなわち、当該シャッター68は、太陽光31を反射することで、表示パネル64への太陽光31を遮光する。
【0094】
ここで、図16Bでは、図10Bの場合と異なり、シャッター68で反射された太陽光31は、入射光路とは逆の光路を通って開口部7から出射されたのち、運転者6の目に到達する可能性がある。このため、シャッター68は、図16Aおよび図16Bに示されるように、反射光がミラーM2に向かわないように設置されることが望ましい。具体的には、シャッター68は、シャッター68の面法線SNと映像光32の光軸とが交差するように設置されることが望ましい。また、筐体61における反射光が当たる部分は、高耐熱の材料や、放熱性の高い材料で構成されるのが望ましい。あるいは、反射光が当たる部分に放熱フィン等を設置してもよい。
【0095】
シャッター68の設置箇所に関しては、図16Aおよび図16Bに示されるような、光学部品63bとミラーM2との間の箇所に限らず、図10Aおよび図10Bの場合と同様に、適宜変更可能である。この際には、シャッター68が表示パネル64の近くに設置された場合であっても、図10Bの場合のような表示パネル64への放熱の問題や、図15Bの場合のような表示パネル64への拡散光の入射の問題は生じ難い。一方、シャッター68の設置箇所として、反射光が運転者6の目に到達しないように、ミラー(映像光投射部)M1と表示領域5との間の箇所、例えば開口部7の箇所は、除外されることが望ましい。
【0096】
<実施の形態1の主要な効果>
以上、実施の形態1のHUD装置1では、映像光32の光路上にシャッター68が設けられ、当該シャッター68は、光路形成状態と光路非形成状態とが周期的に切り替わるように制御される。これにより、太陽光31に伴う表示パネル64の破損を防止しつつ、利用者が虚像を視認できない時間帯を削減することが可能になる。また、このような切り替え制御モードに加えて、光路形成制御モードや光路非形成制御モードを設け、各種条件に応じて光路形成制御モードや光路非形成制御モードも選択できるようにすることで、不必要なシャッターのオン/オフ動作を無くすことができる。さらに、ミラー(映像光投射部)M1による保護動作と組み合わせることで、表示パネル64の破損をより確実に防止することが可能になる。
【0097】
(実施の形態2)
<シャッターの適用例>
図17Aおよび図17Bは、実施の形態2によるHUD装置において、シャッターの具体的な適用例と、その際の動作例を説明する図である。図17Aおよび図17Bに示されるシャッター68は、図16Aおよび図16Bの場合と同様に、例えば、透過/反射型のMEMSシャッターである。ただし、図17Aおよび図17Bでは、シャッター68が映像表示装置35からの映像光をミラーM2に反射するように、映像表示装置35およびシャッター68が配置されている。
【0098】
これに伴い、図17Aに示されるように、シャッター68は、図16Aの場合と異なり、光源65のオン期間Tonでは、すなわち光路形成状態では、光を透過するのではなく反射する。具体的には、当該シャッター68は、映像表示装置35からの映像光32をミラーM2に反射し、また、ミラーM2からの太陽光31を映像表示装置35に反射する。
【0099】
一方、図17Bに示されるように、当該シャッター68は、図16Bの場合と異なり、光源65のオフ期間Toffでは、すなわち光路非形成状態では、光を反射するのではなく透過する。当該シャッター68は、太陽光31を透過することで、表示パネル64への太陽光31を遮光する。筐体61における透過光が当たる部分は、高耐熱の材料や、放熱性の高い材料で構成されるのが望ましい。あるいは、透過光が当たる部分に放熱フィン等を設置してもよい。
【0100】
なお、図17Aおよび図17Bでは、シャッター68を別途設置する例を示したが、シャッター68の反射特性を利用した別の変形例として、例えば、図10Aおよび図10Bにおいて、ミラーM2をMEMSシャッターに置き換えることも可能である。この場合、当該MEMSシャッターは、光源65のオン期間Tonでは、すなわち光路形成状態では、光を反射し、これに伴い、図10Aの場合と同様の光路が形成される。一方、当該MEMSシャッターは、光源65のオフ期間Toffでは、すなわち光路非形成状態では、光を透過し、図10Bにおいて、ミラーM2が太陽光31を透過するような光路が形成される。
【0101】
以上、実施の形態2のHUD装置1を用いることでも、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。
【0102】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0103】
例えば、実施の形態に係る技術を用いると、前述したように、太陽光に伴う表示パネルの破損を防止しつつ、利用者が虚像を視認できない時間帯を削減することが可能になる。また、フロントガラス等に投射された行き先や速度などのナビゲーション情報表示の他に、対向車や歩行者を検知した際のアラート情報表示などの走行に必要な情報の映像を視認でき、運転者の視点移動を軽減して安全運転の支援に寄与する情報表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)を提供できる。これにより、交通事故を防止することが可能となる。さらに、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3.すべての人に健康と福祉を」に貢献することが可能になる。
【符号の説明】
【0104】
1…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置、2…車両、4…車両情報、5…表示領域、6…運転者(利用者)、10…制御部、14…情報取得部、15…温度検出部、30…映像光の光路、32…映像光、35…映像表示装置、60…太陽、62…駆動機構、64…表示パネル、65…光源、68…シャッター、M1…ミラー(映像光投射部)、M2…ミラー(映像光反射部)、SN…面法線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B