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特許7682852EphA2に特異的な二環式ペプチドリガンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】EphA2に特異的な二環式ペプチドリガンド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/50 20060101AFI20250519BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20250519BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
C07K7/50 ZNA
A61K38/12
A61P35/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022505581
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 GB2020051829
(87)【国際公開番号】W WO2021019245
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】62/880,191
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,088
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/931,442
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/022,667
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/024,715
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BicycleTx Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ケビン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】プニット ウパディヤヤ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハンナ ラーデンランタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ マッド
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/122860(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/122863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オンである分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、EphA2に特異的なペプチドリガンドであって、該ポリペプチドが、
【化1】
(ここで、Acはアセチルを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、His1MeはN1-メチル-L-ヒスチジンを表し、His3MeはN3-メチル-L-ヒスチジンを表し、4ThiAzはβ-(4-チアゾリル)-アラニンを表し、Thiは2-チエニル-アラニンを表し、3Thiは3-チエニルアラニンを表し、Nleはノルロイシンを表し、かつ[MerPro]i、Ci、Cii、Ciii、及び[Cysam]iiiは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸(MerPro)、及びシステアミン(Cysam)から選択される第一(i)、第二(ii)、及び第三(iii)の反応基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩からなる、前記EphA2に特異的なペプチドリガンド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、
【化3】
又はその医薬として許容し得る塩である、請求項1記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記医薬として許容し得る塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、請求項1~2のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項4】
前記EphA2がヒトEphA2である、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む、医薬組成物。
【請求項7】
罹患組織におけるEphA2の過剰発現を特徴とする疾患又は障害予防、抑制、又は治療するための医薬であって活性成分として請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む、前記医薬
【請求項8】
予防、抑制、又は治療するための医薬であって活性成分として請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む、前記医薬
【請求項9】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、癌、胃癌、卵巣癌、食道癌、多発性骨髄腫、及び線維肉腫から選択される、請求項8記載の医薬
【請求項10】
前記肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)であり、及び/又は前記乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項9記載の医薬。
【請求項11】
罹患組織におけるEphA2の過剰発現を特徴とする疾患又は障害を予防、抑制、又は治療するための医薬の製造における、請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドの使用。
【請求項12】
癌を予防、抑制、又は治療するための医薬の製造における、請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドの使用。
【請求項13】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、食道癌、多発性骨髄腫、及び線維肉腫から選択される、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)であり、及び/又は前記乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項13記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、本発明は、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、非芳香族分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、Eph受容体チロシンキナーゼA2(EphA2)の高親和性バインダーであるペプチドを記載している。本発明はまた、該ペプチドリガンドを含む医薬組成物及び罹患組織(例えば、腫瘍)におけるEphA2の過剰発現を特徴とする疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び標的特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005)、ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、トリス(ブロモメチル)ベンゼンのような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法は、WO 2004/077062号及びWO 2006/078161号に開示されている。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子(トリス-(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オンである分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され、ここで、ペプチドリガンドが、
【化1】
(ここで、Acはアセチルを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、His1MeはN1-メチル-L-ヒスチジンを表し、His3MeはN3-メチル-L-ヒスチジンを表し、4ThiAzはβ-(4-チアゾリル)-アラニンを表し、Thiは2-チエニル-アラニンを表し、3Thiは3-チエニルアラニンを表し、パルミトイル-Glu-LysN3はN2-((S)-4-カルボキシ-4-パルミトアミドブタノイル)-N6-ジアゾ-L-リジン:
【化2】
を表し、pCoPheはパラ-カルボキシ-フェニルアラニンを表し、hGluはホモグルタミン酸を表し、B-Alaはβ-アラニンを表し、Sar10は10個のサルコシン単位を表し、Nleはノルロイシンを表し、かつ[MerPro]i、Ci、Cii、Ciii、及び[Cysam]iiiは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸(MerPro)、及びシステアミン(Cysam)から選択される第一(i)、第二(ii)、及び第三(iii)の反応基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む、EphA2に特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンドを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるペプチドリガンドが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明の第一の態様によれば、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オンである分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され、ここで、ペプチドリガンドが、
【化3】
(ここで、Acはアセチルを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、His1MeはN1-メチル-L-ヒスチジンを表し、His3MeはN3-メチル-L-ヒスチジンを表し、4ThiAzはβ-(4-チアゾリル)-アラニンを表し、Thiは2-チエニル-アラニンを表し、3Thiは3-チエニルアラニンを表し、パルミトイル-Glu-LysN3はN2-((S)-4-カルボキシ-4-パルミトアミドブタノイル)-N6-ジアゾ-L-リジン:
【化4】
を表し、pCoPheはパラ-カルボキシ-フェニルアラニンを表し、hGluはホモグルタミン酸を表し、B-Alaはβ-アラニンを表し、Sar10は10個のサルコシン単位を表し、Nleはノルロイシンを表し、かつ[MerPro]i、Ci、Cii、Ciii、及び[Cysam]iiiは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸(MerPro)、及びシステアミン(Cysam)から選択される第一(i)、第二(ii)、及び第三(iii)の反応基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む、EphA2に特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0010】
1つの特定の実施態様において、EphA2結合二環式ペプチドリガンドは、BCY13118、BCY12860、BCY12859、BCY13119、BCY13917、BCY13918、BCY13919、BCY13920、BCY13922、BCY13923、BCY14047、BCY14048、BCY13135、BCY12865、BCY13120、及びBCY13117:から選択される。
【0011】
1つの特定の実施態様において、EphA2結合二環式ペプチドリガンドは、BCY13118 又はその医薬として許容し得る塩である。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0013】
(命名法)
(付番)
本発明の化合物内のアミノ酸残基位置に言及する場合、システイン残基(Ci、Cii、及びCiii)は不変であるので、これらは付番から省略され、それゆえ、配列番号1内のアミノ酸残基の付番は、以下のように言及される:
A-[HArg]-D-Ci-[HyP]1-L2-V3-N4-P5-L6-Cii-L7-H8-P9-[dD]10-W11-[HArg]12-Ciii (配列番号: 1)。
【0014】
この説明のために、全ての二環式ペプチドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)で環化され、三置換構造を生じると考えられる。TATAによる環化は、Ci、Cii、及びCiii上で生じる。
【0015】
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端βAla-Sar10-Alaテールは:
βAla-Sar10-A-(配列番号: X)
と表される。
【0016】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。誤解を避けるために、その正式名としてか又はそのアミノ酸の1文字もしくは3文字表記としてかのいずれかでのアミノ酸への言及は、別途明記されない限り、本明細書において、L-アミノ酸として表されることが意図される。そのようなアミノ酸がD-アミノ酸として表されることが意図される場合、アミノ酸に、例えば、[dA]、[dD]、[dE]、[dK]、[d1Nal]、[dNle]など、角括弧内に小文字のdが前置される。
【0017】
(ペプチドリガンドの利点)
本発明の特定の二環式ペプチドは、それを注射、吸入、経鼻、眼球、経口、又は局所投与のための好適な薬物様分子とみなすことができるいくつかの有利な特性を有する。そのような有利な特性としては、以下のもの挙げられる:
-種交差反応性。これは、前臨床的な薬力学及び薬物動態評価の典型的な必要条件である;
-プロテアーゼ安定性。二環式ペプチドリガンドは、ほとんどの状況で、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を示すべきである。プロテアーゼ安定性は、二環式ペプチドリード候補を動物モデルで開発するだけでなく、自信を持ってヒトに投与することもできるように、異なる種の間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化及び吸収目的で重要である、荷電残基及び親水性残基と疎水性残基の比率並びに分子内/分子間H-結合の関数である;
-循環中での最適な血漿半減期。臨床的適応及び治療レジメンに応じて、慢性疾患状態又は急性疾患状態のいずれかの管理のための短期又は長期のインビボ曝露時間を有する二環式ペプチドを開発する必要があり得る。最適な曝露時間は、薬剤の持続的曝露に起因する毒性学的効果を最小化するための短い曝露時間の要求と比べた(最大の治療効率のための)持続的曝露の要求によって決定される;
-選択性。本発明の特定のペプチドリガンドは、他のEph受容体チロシンキナーゼ、例えば、EphA1、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、及びEphB1、並びに第XIIA因子、カルボニックアンヒドラーゼ9、並びにCD38よりも優れた選択性を示す。本発明の選択されたペプチドリガンドは、動物モデルでの試験を許容する他の種(例えば、マウス及びラット)との交差反応性を示すことにも留意すべきである;及び
-安全性。出血イベントがEphA2抗体薬物コンジュゲートを用いる前臨床インビボモデル及び臨床試験で報告されている。例えば、MEDI-547を用いる第1相非盲検試験は、6人の患者のうちの5人で生じた出血及び凝固イベントのため中止された(Annunziataらの文献、Invest New Drugs(2013) 31:77-84)。患者で観察された出血イベントは、ラット及びサルの前臨床試験で観察された凝固系に対する効果:活性化部分トロンボプラスチン時間の増加及びフィブリノーゲン/フィブリン分解産物の増加と一致していた(Annunziataらの文献、同上)。明白な出血イベントは、サルにおける毒性学試験で見られることが報告された(Annunziataらの文献、同上)。まとめると、これらの結果は、MEDI-547が前臨床種と患者の両方において播種性血管内凝固(DIC)を引き起こすことを意味する。
【0018】
(ペプチドリガンド)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。典型的には、そのようなペプチドは、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸、及び/又はシステアミンから選択される少なくとも3つの反応基を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0019】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0020】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、August 2002に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0021】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0022】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0023】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4 +)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2 +、NHR3 +、NR4 +)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4 +である。
【0024】
本発明の化合物がアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明の範囲内である。
【0025】
(反応基)
本発明の分子スキャフォールドは、ポリペプチド上の官能基又は反応基を介してポリペプチドに結合していてもよい。これらは、典型的には、ポリペプチドポリマー中に見られる特定のアミノ酸の側鎖から形成される。そのような反応基は、システイン側鎖、リジン側鎖、もしくはN-末端アミノ基、又は任意の他の好適な反応基、例えば、ペニシラミンであってもよい。好適な反応基の詳細は、WO 2009/098450号に見出すことができる。
【0026】
天然アミノ酸の反応基の例は、システインのチオール基、リジンのアミノ基、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジウム基、チロシンのフェノール基、又はセリンのヒドロキシル基である。非天然アミノ酸は、アジド、ケト-カルボニル、アルキン、ビニル、又はアリールハライド基を含む広範な反応基を提供することができる。ポリペプチドの末端のアミノ及びカルボキシル基も、分子スキャフォールド/分子コアとの共有結合を形成する反応基としての役割を果たすことができる。
【0027】
本発明のポリペプチドは、少なくとも3つの反応基を含有する。該ポリペプチドは、4以上の反応基を含有することもできる。反応基をより多く使用すればするほど、より多くのループを分子スキャフォールド中に形成することができる。
【0028】
好ましい実施態様において、3つの反応基を有するポリペプチドが生成される。該ポリペプチドと3回転対称を有する分子スキャフォールド/分子コアとの反応により、単一生成物異性体が生成される。単一生成物異性体の生成は、いくつかの理由によって好ましい。化合物ライブラリーの核酸は、ポリペプチドの一次配列のみをコードするが、ポリペプチドと分子コアとの反応時に形成される異性状態の分子をコードしない。ただ1つの生成物異性体が形成されることができる場合、生成物異性体への核酸の帰属は、明確に規定される。多数の生成物異性体が形成される場合、核酸は、スクリーニング又は選択プロセスで単離された生成物異性体の性質に関する情報を与えることができない。単一生成物異性体の情報は、本発明のライブラリーの特定のメンバーが合成される場合にも有利である。この場合、ポリペプチドと分子スキャフォールドとの化学反応により、異性体の混合物ではなく、単一生成物異性体が産出される。
【0029】
別の実施態様において、4つの反応基を有するポリペプチドが生成される。該ポリペプチドと4面体対称を有する分子スキャフォールド/分子コアとの反応により、2つの生成物異性体が生成される。2つの異なる生成物異性体が1つの同じ核酸によってコードされるとしても、両方の異性体を化学合成し、2つの異性体を分離し、両方の異性体を標的リガンドとの結合について試験することにより、単離された異性体の性質を決定することができる。
【0030】
本発明の一実施態様において、ポリペプチドの反応基の少なくとも1つは、残りの反応基に対して直交性である。直交性反応基の使用は、該直交性反応基を分子コアの特定の部位に向けることを可能にする。直交性反応基が関係する連結戦略を用いて、形成される生成物異性体の数を制限することができる。言い換えると、少なくとも3つの結合のうちの残りのものに対して選択された反応基と別個の又は異なる反応基を少なくとも3つの結合のうちの1つ又は複数に対して選択することにより、分子スキャフォールド上の特定の位置へのポリペプチドの特定の反応基の特定の順序の結合又は方向付けを有効に達成することができる。
【0031】
別の実施態様において、本発明のポリペプチドの反応基は、分子リンカーと反応し、その場合、該リンカーは、該リンカーが最終的な結合状態の分子スキャフォールドとポリペプチドの間に入るように、分子スキャフォールドと反応することができる。
【0032】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドのライブラリー又はセットのメンバーのアミノ酸は、任意の天然又は非天然アミノ酸に交換することができる。ループ配列のみが交換可能となるように、ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基を有するものが、これらの交換可能なアミノ酸から除外される。交換可能なポリペプチド配列は、ランダムな配列、一定の配列、又はランダムなアミノ酸と一定のアミノ酸を有する配列のいずれかを有する。これらのアミノ酸の位置がループサイズを決定するので、反応基を有するアミノ酸はいずれも、ポリペプチド内の規定の位置にある。
【0033】
一実施態様において、3つの反応基を有するポリペプチドは、配列(X)lY(X)mY(X)nY(X)oを有し、ここで、Yは、反応基を有するアミノ酸を表し、Xは、ランダムなアミノ酸を表し、m及びnは、介在するポリペプチドセグメント(これは、同じであっても異なっていてもよい)の長さを規定する3~6の数を表し、l及びoは、隣接するポリペプチドセグメントの長さを規定する0~20の数を表す。
【0034】
チオール媒介性コンジュゲーションに代わるものを用いて、共有結合的相互作用を介して、分子スキャフォールドをペプチドに結合させることができる。或いは、これらの技法は、さらなる部分(例えば、分子スキャフォールドと異なる対象となる低分子)が本発明に従って選択又は単離された後、ポリペプチドへの該さらなる部分の修飾又は結合において使用することができ-この実施態様においては、明らかに、該結合は、共有結合的である必要はなく、非共有結合的な結合を包含し得る。これらの方法は、相補的反応基を有する低分子と組み合わせて必要な化学反応基を有する非天然アミノ酸を有するタンパク質及びペプチドを提示するファージを産生することによるか、又は分子が選択/単離段階の後に作製されているときに、非天然アミノ酸を化学的にもしくは組換えにより合成されたポリペプチドに組み入れることにより、チオール媒介法の代わりに(又はそれと組み合わせて)使用することができる。さらなる詳細は、WO 2009/098450号又はHeinisらの文献、Nat Chem Biol 2009, 5(7), 502-7において見出すことができる。
【0035】
一実施態様において、反応基は、システイン、3-メルカプトプロピオン酸、及び/又はシステアミン残基から選択される。
【0036】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基のアラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0037】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0038】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端システイン基(本明細書においてCiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0039】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0040】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端システイン基(本明細書において、Ciiiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。
【0041】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0042】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0043】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0044】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドの医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0045】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0046】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0047】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びアラニンによる置換を含む。この実施態様は、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0048】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design,(2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem(2009), 16, 4399-418を参照)。
【0049】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0050】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0051】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のネクチン-4標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0052】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0053】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(Positron Emission Topography)(PET)試験において有用であり得る。
【0054】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0055】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0056】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチドコンジュゲートに対して実施される。
【0057】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0058】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0059】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0060】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TATA)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0061】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0062】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0063】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンドを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0064】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0065】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0066】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シクロスポリン(cylcosporine)、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0067】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって決まる。
【0068】
本発明のペプチドリガンドは、保存前に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0069】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメーターを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0070】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を選択的に死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0071】
(治療的使用)
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0072】
治療(又は抑制)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
さらなる実施態様において、癌は、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B及びT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、並びに慢性骨髄性白血病(CML):から選択される造血器悪性腫瘍から選択される。
【0074】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0075】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって促進される。
【0076】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例
【0077】
(実施例)
(材料及び方法)
(ペプチド合成)
ペプチドを固相合成により合成した。RinkアミドMBHA樹脂を使用した。RinkアミドMBHA(0.4~0.45mmol/g)及びFmoc-Cys(Trt)-OH(3.0当量)を含有する混合物に、DMFを添加し、その後、DIC(3当量)及びHOAt(3当量)を添加し、1時間混合した。DMF中の20%ピペリジンをデブロッキングに使用した。各々の後続のアミノ酸を、DMF中のアクチベーター試薬DIC(3.0当量)及びHOAT(3.0当量)を用いて、3当量でカップリングさせた。反応をニンヒドリン呈色反応又はテトラクロル呈色反応によってモニタリングした。合成終了後、ペプチド樹脂をDMF×3、MeOH×3で洗浄し、その後、N2バブリング下で一晩乾燥させた。その後、ペプチド樹脂を92.5%TFA/2.5%TIS/2.5%EDT/2.5%H2Oで3時間処理した。ペプチドを冷イソプロピルエーテルで沈殿させ、遠心分離した(3000rpmで3分)。ペレットをイソプロピルエーテルで2回洗浄し、粗ペプチドを真空下で2時間乾燥させ、その後、凍結乾燥させた。凍結乾燥粉末をACN/H2O(50:50)に溶解させ、100mM TATAのACN溶液、次いで、H2O中の重炭酸アンモニウム(1M)を添加し、溶液を1時間混合した。環化が終了したら、反応液を1M水性システイン塩酸塩(TATAに対して10当量)でクエンチし、その後、混合し、1時間静置した。溶液を凍結乾燥させると、粗生成物が得られた。粗ペプチドを分取HPLCにより精製し、凍結乾燥させると、生成物が得られた。
【0078】
別途記載されない限り、アミノ酸は全て、L-立体配置で使用した。
【0079】
(生物学的データ)
蛍光タグを有さないペプチドを、蛍光タグ及び既知のKdを有するペプチドと競合させて試験した。使用された蛍光トレーサーは、配列
【化5】
(ここで、Flは5/6-カルボキシフルオレセインであり、かつSarはサルコシンである)のBCY90(Kd=2nM)であった。
【0080】
ペプチドを、最大5%のDMSOを用いる直接結合アッセイで記載されているようなアッセイバッファーに適切な濃度まで希釈し、その後、1対2で連続希釈した。5μLの希釈ペプチドをプレートに添加し、次いで、25nMの濃度の10μLのヒトEphA2、その後、10μLの蛍光ペプチドを添加した(最終濃度0.8nM)。測定を行ったが、ゲインは、最初の測定の前に決定した。データ解析は、Systat Sigmaplotバージョン12.0で行い、その場合、mP値をユーザー定義の三次方程式に適合させて、Ki値を出した:
f=ymax+(ymin-ymax)/Lig*((Lig*((2*((Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^2-3*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp))^0.5*COS(ARCCOS((-2*(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^3+9*(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp)-27*(-1*Klig*Kcomp*Prot*c))/(2*((((Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^2-3*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp))^3)^0.5)))/3))-(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)))/((3*Klig)+((2*((Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^2-3*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp))^0.5*COS(ARCCOS((-2*(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^3+9*(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp)-27*(-1*Klig*Kcomp*Prot*c))/(2*((((Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c)^2-3*(Kcomp*(Lig-Prot*c)+Klig*(Comp-Prot*c)+Klig*Kcomp))^3)^0.5)))/3))-(Klig+Kcomp+Lig+Comp-Prot*c))))。
「Lig」、「KLig」、及び「Prot」は全て、それぞれ:蛍光ペプチド濃度、蛍光ペプチドのKd、及びEphA2濃度に関する定義値であった。
【0081】
本発明の特定の二環式ペプチドを上述の競合結合アッセイで試験した。結果は、表1に見られる:
表1:本発明の選択された二環式ペプチドの競合結合アッセイ
【表1】
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オンである分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、EphA2に特異的なペプチドリガンドであって、該ペプチドリガンドが、
(化1)
(ここで、Acはアセチルを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、His1MeはN1-メチル-L-ヒスチジンを表し、His3MeはN3-メチル-L-ヒスチジンを表し、4ThiAzはβ-(4-チアゾリル)-アラニンを表し、Thiは2-チエニル-アラニンを表し、3Thiは3-チエニルアラニンを表し、パルミトイル-Glu-LysN 3 はN2-((S)-4-カルボキシ-4-パルミトアミドブタノイル)-N6-ジアゾ-L-リジン:
(化2)
を表し、pCoPheはパラ-カルボキシ-フェニルアラニンを表し、hGluはホモグルタミン酸を表し、B-Alaはβ-アラニンを表し、Sar 10 は10個のサルコシン単位を表し、Nleはノルロイシンを表し、かつ[MerPro] i 、C i 、C ii 、C iii 、及び[Cysam] iii は、システイン、3-メルカプトプロピオン酸(MerPro)、及びシステアミン(Cysam)から選択される第一(i)、第二(ii)、及び第三(iii)の反応基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む、前記EphA2に特異的なペプチドリガンド。
(態様2)
(化3)
又はその医薬として許容し得る塩である、態様1記載のペプチドリガンド。
(態様3)
(化4)
又はその医薬として許容し得る塩である、態様1記載のペプチドリガンド。
(態様4)
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、態様1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
(態様5)
前記EphA2がヒトEphA2である、態様1~4のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
(態様6)
態様1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンドを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む、医薬組成物。
(態様7)
罹患組織におけるEphA2の過剰発現を特徴とする疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、態様1~6のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
(態様8)
癌の予防、抑制、又は治療において使用するための、態様1~7のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
(態様9)
前記癌が、前立腺癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、卵巣癌、食道癌、多発性骨髄腫、及び線維肉腫:から選択される、態様8記載の使用のためのペプチドリガンド。

【配列表】
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