(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】前立腺幹細胞抗原(PSCA)キメラ抗原受容体(CAR)を含む組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250519BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250519BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20250519BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250519BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250519BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20250519BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250519BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250519BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250519BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250519BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20250519BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250519BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250519BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/725
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/12
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/04
(21)【出願番号】P 2022515826
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020050090
(87)【国際公開番号】W WO2021050656
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-06
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ヤンビン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109593726(CN,A)
【文献】特表2008-529556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0055297(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0247432(US,A1)
【文献】特表2015-513399(JP,A)
【文献】特表2015-531242(JP,A)
【文献】特表2017-513818(JP,A)
【文献】特表2016-515810(JP,A)
【文献】特表2015-524255(JP,A)
【文献】特表2012-504402(JP,A)
【文献】特表2018-530333(JP,A)
【文献】特表2010-538080(JP,A)
【文献】Human Gene Therapy,2014年,Vol.25,pp.1003-1012
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含
み、
配列番号21、23、25、または27のアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
請求項
1記載のCARをコードするポリヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項3】
請求項
2記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項4】
(a)発現ベクターである;および/または
(b)DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、
請求項
3記載のベクター。
【請求項5】
請求項
1記載のCAR、請求項
2記載の核酸、または請求項
3記載のベクターを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
【請求項6】
PSMA-CARをさらに含み、PSMA-CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、請求項
5記載の改変された細胞。
【請求項7】
スイッチ受容体をさらに含む、請求項
5または6記載の改変された細胞。
【請求項8】
改変されたT細胞である
、請求項
5~
7のいずれか一項記載の改変された細胞。
【請求項9】
請求項
5~
8のいずれか一項記載の改変された細胞の治療有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
請求項
5~
8のいずれか一項記載の改変された細胞の有効量を含む、それを必要とする対象における疾患を処置するための薬学的組成物。
【請求項11】
(a)疾患が、がんである
;
(b)疾患が、がんであり、がんが、前立腺がんである
;または
(c)疾患が、がんであり、がんが、転移性去勢抵抗性前立腺がんである、
請求項
10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
(a)改変されたT細胞がドミナントネガティブ型受容体をさらに含み;かつ/または
(b)改変されたT細胞がスイッチ受容体をさらに含む、
請求項
9~
11のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
リンパ球枯渇化学療法と組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項
9~
12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
対象がヒトである、請求項
9~
13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/985,808号、および2019年9月11日に出願された米国仮特許出願第62/898,896号の優先権を主張する権利を有し、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺がんは、米国男性において、最も多いがん診断結果であり、がん関連死亡原因の第2位である。限局性病変の検出および治療における近年の進歩にもかかわらず、この疾病の管理においては依然として大きな課題がある。現行の診断法は、特異性の欠如、およびどの患者が転移性病変の発症リスクを有するかを予測できないことによって制限されている。前立腺特異的抗原(PSA)は、前立腺がんを有し得る男性を特定する際に有効であるが、往々にして、前立腺肥大、前立腺炎および他の非悪性障害を有する男性において上昇する。PSAおよび他の現行のマーカーでは、緩徐進行性がんと急速進行性がんとを正確に区別することができない。外科手術もしくは放射線療法後に疾患が再発する20~40%の患者または診断時に転移性病変が認められる患者にとって、有効な治療はない。ホルモン除去療法は、これらの患者を一時的に緩和することができるが、大多数は、進行が避けられずに不治のアンドロゲン非依存性疾患を発症する。
【0003】
前立腺がんを治療するための組成物および方法が当技術分野において必要とされている。本発明は、この必要性に応えるものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が強力な抗腫瘍活性を示すという知見に基づく。本発明はまた、PSCAおよび前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性CARおよび二重CARが、大幅に増強された抗腫瘍活性を示すという知見にも基づく。
【0005】
したがって、ある特定の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0006】
ある特定の例示的な態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む。
【0007】
ある特定の例示的な態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ/または、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0008】
ある特定の例示的な態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0009】
ある特定の例示的な態様では、細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む。
【0010】
ある特定の例示的な態様では、CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能であり、かつ、SEQ ID NO:21、23、25または27と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0012】
ある特定の例示的な態様では、細胞外ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。細胞外ドメインはまた、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインも含む。
【0013】
ある特定の例示的な態様では、二重特異性CARの第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;第1の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ/または、二重特異性CARの第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:35と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0014】
ある特定の例示的な態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0015】
別の局面では、本開示は、SEQ ID NO:40、42、80、81または82と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0016】
別の局面では、本開示は、本明細書に開示されるCARまたは二重特異性CARのいずれかをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0017】
別の局面では、本開示は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む。
【0018】
ある特定の例示的な態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:43と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:44と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含み;かつ/または、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:45と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0019】
別の局面では、本開示は、SEQ ID NO:20、22、24または26と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0020】
別の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、二重特異性CARが、PSCAが可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸を提供する。
【0021】
ある特定の例示的な態様では、細胞外ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。細胞外ドメインはまた、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインも含む。
【0022】
ある特定の例示的な態様では、第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:43と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第1の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:44と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;かつ/または、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:46と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:47と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;かつ/または、核酸は、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、ICOS、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む細胞内ドメインを含む。
【0023】
ある特定の例示的な態様では、二重特異性CARは、SEQ ID NO:39または41または79と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0024】
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。
【0025】
ある特定の例示的な態様では、ベクターは、発現ベクターである;および/または、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0026】
別の局面では、本開示は、本明細書において想定されるCARのいずれか、本明細書において想定される核酸のいずれか、または本明細書において想定されるベクターのいずれかを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0027】
別の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0028】
ある特定の例示的な態様では、改変された細胞は、PSMA-CARをさらに含み、PSMA-CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。
【0029】
別の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な第1の抗原結合ドメインを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な第2の抗原結合ドメインを含む第2のCARとを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、第1および第2のCARが各々、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0030】
ある特定の例示的な態様では、改変された細胞は、スイッチ受容体をさらに含む。
【0031】
ある特定の例示的な態様では、CARの少なくとも1つは、ヒトPSCAに結合可能である;および/または、CARの少なくとも1つは、ヒトPSMAに結合可能である;および/または、改変された細胞は、改変された免疫細胞である;および/または、改変された細胞は、改変されたT細胞である改変された免疫細胞である。
【0032】
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される改変された細胞のいずれかの治療有効量を含む薬学的組成物を提供する。
【0033】
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される改変された細胞のいずれか、または本明細書において想定される薬学的組成物のいずれかの有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における疾患を処置する方法を提供する。
【0034】
ある特定の例示的な態様では、疾患は、がんである;および/または、疾患は、がんであり、がんは、前立腺がんである;および/または、疾患は、がんであり、がんは、転移性去勢抵抗性前立腺がんである。
【0035】
別の局面では、本開示は、前立腺幹細胞抗原に結合可能な第1のキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)と前立腺特異的膜抗原に結合可能な第2のキメラ抗原受容体(CAR)(PSMA-CAR)とを含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法であって、第1のCARおよび第2のCARが各々、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、方法を提供する。
【0036】
別の局面では、本開示は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法を提供する。二重特異性CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。
【0037】
ある特定の例示的な態様では、改変されたT細胞は、ドミナントネガティブ型受容体をさらに含む;および/または、改変されたT細胞は、スイッチ受容体をさらに含む。
【0038】
ある特定の例示的な態様では、該方法は、リンパ球枯渇化学療法を対象に施す工程をさらに含む。
【0039】
ある特定の例示的な態様では、対象は、ヒトである。
【0040】
[本発明1001]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
[本発明1002]
抗原結合ドメインが、
(a)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域;および
(b)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域
を含む、本発明1001のCAR。
[本発明1003]
(a)重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または
(b)軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、
本発明1002のCAR。
[本発明1004]
抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である、本発明1001~1003のいずれかのCAR。
[本発明1005]
細胞内ドメインが、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む、本発明1001~1004のいずれかのCAR。
[本発明1006]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能であり、かつ、SEQ ID NO:21、23、25または27と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1001~1005のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)。
[本発明1007]
(a)前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインを含む、細胞外ドメイン;
(b)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメイン;
(c)膜貫通ドメイン;および
(d)細胞内ドメイン
を含む、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)。
[本発明1008]
(a)PSCAに結合可能な抗原結合ドメインが、
(i)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;
(ii)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域と
を含み;
(b)PSMAに結合可能な抗原結合ドメインが、
(i)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;
(ii)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域と
を含む、
本発明1007の二重特異性CAR。
[本発明1009]
(a)第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;第1の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または
(b)第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:35と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、
本発明1008の二重特異性CAR。
[本発明1010]
PSCAに結合可能な抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である、本発明1007~1009のいずれかの二重特異性CAR。
[本発明1011]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能であり、かつ、SEQ ID NO:40、42、80、81または82と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1007~1010のいずれかの二重特異性CAR。
[本発明1012]
本発明1001~1006のいずれかのCARをコードするポリヌクレオチド配列を含む、核酸。
[本発明1013]
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、
抗原結合ドメインが、
(a)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;
(b)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域と
を含む、核酸。
[本発明1014]
(a)抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:43と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域を含み;かつ/または
(b)抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:44と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含み;かつ/または
(c)抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:45と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変フラグメント(scFv)である、
本発明1013の核酸。
[本発明1015]
SEQ ID NO:20、22、24または26と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、本発明1013~1014のいずれかの核酸。
[本発明1016]
本発明1007~1011のいずれかの二重特異性CARをコードするポリヌクレオチド配列を含む、核酸。
[本発明1017]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、二重特異性CARが、PSCAが可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸。
[本発明1018]
(a)PSCAに結合可能な抗原結合ドメインが、
(i)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;
(ii)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域と
を含み;
(b)PSMAに結合可能な抗原結合ドメインが、
(i)3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;
(ii)3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域と
を含む、
本発明1017の核酸。
[本発明1019]
(a)第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:43と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第1の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:44と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;かつ/または
(b)第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:46と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:47と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;かつ/または
(c)核酸が、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、ICOS、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む、細胞内ドメインを含む、
本発明1017または1018の核酸。
[本発明1020]
二重特異性CARが、SEQ ID NO:39または41または79と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる、本発明1017~1019のいずれかの核酸。
[本発明1021]
本発明1012~1020のいずれかの核酸を含む、ベクター。
[本発明1022]
(a)発現ベクターである;および/または
(b)DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、
本発明1021のベクター。
[本発明1023]
本発明1001~1011のいずれかのCAR、本発明1012~1020のいずれかの核酸、または本発明1021~1022のいずれかのベクターを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
[本発明1024]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
[本発明1025]
PSMA-CARをさらに含み、PSMA-CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、本発明1024の改変された細胞。
[本発明1026]
(a)前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な第1の抗原結合ドメインを含む、第1のキメラ抗原受容体(CAR)と
(b)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な第2の抗原結合ドメインを含む、第2のCARと
を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、
第1および第2のCARが各々、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
[本発明1027]
スイッチ受容体をさらに含む、本発明1023~1026のいずれかの改変された細胞。
[本発明1028]
(a)CARの少なくとも1つが、ヒトPSCAに結合可能である;および/または
(b)CARの少なくとも1つが、ヒトPSMAに結合可能である;および/または
(c)改変された細胞が、改変された免疫細胞である;および/または
(d)改変された細胞が、改変されたT細胞である改変された免疫細胞である、
本発明1023~1027のいずれかの改変された細胞。
[本発明1029]
本発明1023~1028のいずれかの改変された細胞の治療有効量を含む、薬学的組成物。
[本発明1030]
本発明1023~1028のいずれかの改変された細胞、または本発明1029の薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における疾患を処置する方法。
[本発明1031]
(a)疾患が、がんである;および/または
(b)疾患が、がんであり、がんが、前立腺がんである;および/または
(c)疾患が、がんであり、がんが、転移性去勢抵抗性前立腺がんである、
本発明1030の方法。
[本発明1032]
(a)前立腺幹細胞抗原に結合可能な第1のキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)と
(b)前立腺特異的膜抗原に結合可能な第2のキメラ抗原受容体(CAR)(PSMA-CAR)と
を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程
を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法であって、
第1のCARおよび第2のCARが各々、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、方法。
[本発明1033]
前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法。
[本発明1034]
(a)改変されたT細胞がドミナントネガティブ型受容体をさらに含み;かつ/または
(b)改変されたT細胞がスイッチ受容体をさらに含む、
本発明1030~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
リンパ球枯渇化学療法を対象に施す工程をさらに含む、本発明1030~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
対象がヒトである、本発明1030~1035のいずれかの方法。
本発明の前述および他の特徴および利点は、以下の例示的な態様の詳細な説明から、添付の図面と併せ読むことにより、さらに十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)特異的CARの生成を図示する。ヒト化抗PSCA Ab(2B3)由来のscFvから構成されるPSCA CARを構築し、レトロウイルスベクターMSGVにクローニングした。
【
図2】
図2は、4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA CAR(2B3.BBZ)ならびに/または4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSMA CAR(J591.BBZ)のインビトロ転写RNAをエレクトロポレーションしたT細胞のCAR発現(上部パネル)、ならびに二重特異性抗体10A5-1412(aPDL1-aCD28二重特異性Ab;10A5として表示)またはTGFB3-1412(aTGFbRII-aCD28二重特異性Ab;TGFB3として表示)を共エレクトロポレーションしたPSCA CARのPD-L1-Fc染色を図示する。
【
図3】
図3は、PC3-PSCA-PSMAまたはK562で刺激したRNA共エレクトロポレーションT細胞のCD107a発現を図示する。T細胞に、表示した通り、4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA CAR(2B3.BBZ)ならびに/または4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSMA CAR(J591.BBZ)をエレクトロポレーションした。
【
図4】
図4は、変異型ICOSシグナル伝達ドメイン(ICOS.YMNM)を有するPSCA(2B3)CARをレンチウイルス形質導入したT細胞が、改善された溶解能、減少したインビトロサイトカイン産生、および4-1BBシグナル伝達PSCA CARと等価なインビボ抗腫瘍活性を示したことを図示する。ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを構築し、レンチウイルスベクターにクローニングした。CAR発現レベルは、4-1BBまたはCD28のいずれかのシグナル伝達ドメインCARと同等であった(上部)。CAR-T細胞をPSCA陽性細胞株PC3.PSCA.PSMA.CBGまたはPC3.PSCA.PSMA.CBG.PD-L1で刺激し、サイトカイン(IL-2およびIFN-ガンマ)産生について調べた(下部パネル)。ヒト肺がん細胞株A549およびヒト乳がん細胞株MDA468も使用した。略語:ICOSおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3.ICOSzまたはPSCA.2B3.ICOSz);バリアントICOS(YMNM)およびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3.ICOSz.YMNMまたはPSCA.2B3.ICOSz.YMNM);CD28およびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3.28zまたはPSCA.2B3.28z);PD1-CD28スイッチ受容体と共発現されたICOSおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(PD1.282B3.ICOSzまたはPD1.28.PSCA.2B3.ICOSz);PD1-CD28スイッチ受容体と共発現されたバリアントICOS(YMNM)およびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(PD1.282B3.ICOSz.YMNMまたはPD1.28.PSCA.2B3.ICOSz.YMNM);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3.BBzまたはPSCA.2B3.BBz);PD1-CD28スイッチ受容体と共発現された4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3.BBz)(PD1.28.2B3.BBzまたはPD1.28.PSCA.2B3.BBz);および非形質導入(TDなしまたはNTD)。
【
図5A】
図5Aは、ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを発現するT細胞のCD107aアッセイの結果を図示する。
図5Aにおいて使用される略語は、
図4におけるものと同じである。
【
図5B】
図5Bは、ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを発現するT細胞についての死滅アッセイの結果を図示する。
図5Bにおいて使用される略語は、
図4におけるものと同じである。
【
図6】
図6は、PC3-PSCA-CBG-PDL1腫瘍モデルを使用した実験の結果を図示する。レンチウイルス形質導入(LVV TD)T細胞について、腫瘍接種後21日目に、マウス1匹当たり1e
6個の細胞をi.v.(静脈内)注射した。各群、5匹のマウスを試験した。
図7において使用される略語は、
図4におけるものと同じである。
【
図7】
図7は、様々なPSCA CARを皮下注射した後の腫瘍の平均放射輝度を図示する。
図7において使用される略語は、
図4におけるものと同じである。
【
図8】
図8は、様々なPSCA CARを皮下注射した後の腫瘍サイズを図示する。
図8において使用される略語は、
図4におけるものと同じである。
【
図9A】
図9Aは、Gly4Serエレメントで連結されたPSMA(2F5 scFvを有する)標的CARおよびPSCA(2B3 scFvを有する)標的CARをコードする研究に使用した二重特異性CARベクターの略図である。
図9A~9Dにおいて使用される略語:非形質導入(NTD);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSMA(2F5)CAR(2F5-BBZ);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)CAR(2B3-BBZ);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSMA(2F5)およびPSCA(2B3)二重特異性CAR(2F5-S-2B3-BBZ;Gly4Serリンカー);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSMA(2F5)およびPSCA(2B3)二重特異性CAR(2F5-S-2B3-BBZ;(Gly4Ser)4リンカー);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)およびPSMA(2F5)二重特異性CAR(2B3-S-2F5-BBZ;Gly4Serリンカー);4-1BBおよびCD3zドメインを有するPSCA(2B3)およびPSMA(2F5)二重特異性CAR(2B3-L-2F5-BBZ;(Gly4Ser)4リンカー)。
【
図9B】
図9Bは、最初の増大終了時のレンチウイルス形質導入CAR T細胞上のCARの表面発現を図示する。
【
図9C】
図9Cは、ヒト組み換えPSMA-FcおよびPSCA-Hisタンパク質による染色、フローサイトメトリーを通じて測定した場合の、PSMAもしくはPSCA-CAR、またはPSMA-PSCA二重特異性CARを発現するレンチウイルス形質導入CAR T細胞の割合を図示する。
【
図9D】
図9Dは、表示のCARを含むCAR T細胞を標的と4時間共培養し、CD107a発現の割合をCD8陽性細胞上で定量したことを図示する。
【
図10A】
図10Aは、CAR T細胞をPC3-PSCA細胞と共培養(エフェクター:標的比=1:1)した結果を図示する。共培養の24時間後に上清を得て、ELISAによってサイトカイン産生を解析した。
図10A~10Dにおいて使用される略語は、
図9A~9Dにおいて使用したものと同じである。
【
図10B】
図10Bは、表示のE:T比で8時間のPC3-PSCA細胞に対するT細胞の細胞溶解活性の試験結果を図示する。
【
図10C】
図10Cは、CAR T細胞をPC3-PSMA細胞と共培養(エフェクター:標的比=1:1)した結果を図示する。共培養の24時間後に上清を得て、ELISAによってサイトカイン産生を解析した。
【
図10D】
図10Dは、表示のE:T比で8時間のPC3-PSMA細胞に対するT細胞の細胞溶解活性の試験結果を図示する。
【
図11A】
図11A~11Bは、TGFbR-IL12Rスイッチ受容体がT細胞機能を強化できるという知見を図示する。
図11A(右上パネル)は、培養中TGFb1ありまたはTGFb1なしでK562と共培養したTGFbR-IL12Rを移入したNK細胞のIFN-ガンマ産生を示す。
図11A(右下パネル)は、TGFベータで刺激した後のTGFbR-IL12Rスイッチ受容体を移入したT細胞のpSmad染色を示す。
【
図11B】
図11A~11Bは、TGFbR-IL12Rスイッチ受容体がT細胞機能を強化できるという知見を図示する。
図11Bは、TGFbR-IL12Rスイッチ受容体を共移入したNY-ESO-1 TCR形質導入T細胞で刺激したNY-ESO-1陽性腫瘍のサイトカイン産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、改変されたT細胞)のための組成物および方法を提供する。ある特定の態様では、本発明は、二重特異性CAR(例えば、PSCA&PSMA)、ドミナントネガティブ型受容体(例えば、TGFbRDN)を有するPSCA CAR、スイッチ受容体(例えば、PD1/CD28またはTGFbR/IL12R)を有するPSCA CAR、および二重特異性抗体(例えば、PD-L1/CD28)と組み合わせたPSCA CARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆体のための組成物および方法を提供する。提供される組成物および方法は、がん(例えば、前立腺がん)を治療するために有用である。
【0043】
本開示に記載される方法は、本明細書において開示される特定の方法および/または実験条件が変動し得るので、そのような方法および条件に限定されないことを理解されたい。また、本明細書において使用される用語法は、特定の態様だけを説明することを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解されたい。
【0044】
さらに、本明細書に記載される実験は、特に示さないかぎり、当業者の技能の範囲内で従来の分子細胞生物学的および免疫学的技法を使用する。そのような技法は、熟練の作業者に周知であり、文献に十分に説明されている。例えば、すべての補遺を含むAusubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008)、MR GreenおよびJ. SambrookによるMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition)ならびにHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照されたい。
【0045】
A. 定義
特に定義されないかぎり、本明細書において用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって広く理解されている意味を有する。何らかの潜在的意味不確定が発生した場合、本明細書において提供される定義が、任意の辞書または外部の定義よりも優先される。状況により特に必要とされないかぎり、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。特に述べないかぎり、「または」の使用は「および/または」を意味する。「含んでいる(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、非限定的である。
【0046】
一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は周知であり、当技術分野において広く使用される。本明細書において提供される方法および技法は、特に示さないかぎり一般的に当技術分野において周知の従来法に従って、本明細書全体にわたり引用され、論じられる様々な一般的でより具体的な参考文献に記載されるように行われる。酵素反応および精製技法は、当技術分野において広く成し遂げられる、または本明細書に記載されるように製造業者の規格に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、および医薬化学に関連して使用される命名法ならびにその検査手技および技法は、周知であり、当技術分野において広く使用されるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達ならびに患者の処置のために標準的な技法が使用される。
【0047】
本開示がより容易に理解され得るように、選ばれた用語を以下に定義する。
【0048】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書においてその冠詞の文法的対象物の1つまたは1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうように用いられる。例として、「1つの(an)要素」は、1つの要素または1つよりも多い要素を意味する。
【0049】
量、時間的持続期間などのような測定可能な値をいう場合に本明細書において用いられる「約」は、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%のばらつきを包含するものとするが、これはそのようなばらつきが、開示された方法を実施する上で妥当なためである。
【0050】
本明細書において用いられる「活性化」とは、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態のことを指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能に関連することができる。「活性化T細胞」という用語は、特に、細胞分裂を起こしているT細胞のことを指す。
【0051】
本明細書において使用される場合、疾患を「緩和する」は、疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低減することを意味する。
【0052】
本明細書において用いられる「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれ得る。当業者は、事実上、すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として働くことができることを理解するであろう。
【0053】
さらに、抗原は、組み換えDNAまたはゲノムDNAに由来することができる。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それゆえ、本明細書においてその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明が、1つよりも多い遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されるわけではないこと、およびこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要はまったくないことを理解するであろう。抗原が生物学的試料から生成、合成または由来することができることは、容易に明らかである。そのような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液を含むことができるが、それに限定されるわけではない。
【0054】
本明細書において用いられる場合、「自己」という用語は、後にその個体に再び導入される、同じ個体に由来する任意の材料をいうよう意図される。
【0055】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、非限定的に増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0056】
「共刺激シグナル」は、本明細書において使用される場合、TCR/CD3の連結などの一次シグナルとの組み合わせで、T細胞増殖および/または鍵となる分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションを導くシグナルを指す。
【0057】
「疾患」は、動物が恒常性を維持できず、疾患が改善されなければその動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、その動物が恒常性を維持できるが、その動物の健康状態が障害のない場合よりも好ましくない健康状態である。未処置のまま放置されても、障害が必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすとは限らない。
【0058】
用語「ダウンレギュレーション」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少または消失を指す。
【0059】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、または治療的もしくは予防的利益をもたらす、本明細書において記述される化合物、製剤、材料または組成物の量のことを指す。そのような結果には、哺乳動物に投与した場合に、本発明の組成物の非存在下で検出される免疫応答と比較して検出可能なレベルの免疫抑制または耐容性を引き起こす量が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。免疫応答は、おびただしい数の当技術分野において認識されている方法によって容易に評価することができる。当業者は、本明細書において投与される組成物の量が、変動すること、そして、処置されている疾患または状態、処置されている哺乳動物の齢および健康および身体の状態、疾患の重症度、投与されている特定の化合物などの多数の要因に基づいてこれを容易に決定できることを理解するであろう。
【0060】
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)配列または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性ならびにそれに起因する生物学的特性をいう。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり通常は配列表に示されるヌクレオチド配列であるコード鎖も、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖も共に、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「内因性」とは、生物、細胞、組織もしくは系の内部に由来するか、またはそれらの内部で産生される、任意の材料をいう。
【0062】
用語「エピトープ」は、本明細書において使用される場合、免疫応答を誘発し、B細胞応答および/またはT細胞応答を誘導することができる、抗原上の小化学分子として定義される。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。ほとんどの抗原は、多くのエピトープを有する;すなわち、これらは多価である。一般に、エピトープは、おおよそ約10アミノ酸および/または糖のサイズである。好ましくは、エピトープは、約4~18アミノ酸、より好ましくは約5~16アミノ酸、さらにより最も好ましくは6~14アミノ酸、より好ましくは約7~12、そして、最も好ましくは約8~10アミノ酸である。一般には、分子の特定の直鎖状配列よりも全体の三次元構造が抗原の特異性の主な基準であること、それゆえ、これによってあるエピトープが別のエピトープと区別されることを、当業者は理解する。本開示に基づいて、本発明で用いられるペプチドは、エピトープであることができる。
【0063】
本明細書において用いられる場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される、任意の材料をいう。
【0064】
本明細書において用いられる「増大する」という用語は、T細胞の数の増加のように、数が増加することをいう。一態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中に当初存在している数と比べて数が増加する。別の態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中の他の細胞型と比べて数が増加する。本明細書において用いられる「エクスビボ」という用語は、生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外側で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクタ中で)繁殖させた細胞をいう。
【0065】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0066】
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されることができる。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)ならびにウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野において公知のすべてのものが含まれる。
【0067】
本明細書において用いられる「同一性」とは、2つのポリマー分子間の、特に2つのポリペプチド分子間のような2つのアミノ酸分子間のサブユニット配列の同一性をいう。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子の各々における位置がアルギニンによって占有されているなら、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアライメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、百分率として表現されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致しているまたは同一である位置の数の一次関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマーにおける5つの位置)が同一であるなら、2つの配列は50%同一であり;位置の90%(例えば、10中9)が一致しているまたは同一であるなら、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0068】
本明細書において用いられる「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を異物と同定し、抗体の形成を誘導し、かつ/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する場合に起きる、抗原に対する細胞応答と定義される。
【0069】
「免疫抑制」という用語は、本明細書において免疫応答全体を低減することを指すために使用される。
【0070】
「単離された」とは、天然の状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または例えば、宿主細胞のような、非天然環境で存在することができる。
【0071】
本明細書において用いられる「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属をいう。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点で、レトロウイルスの中でも独特である;それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるため、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで有意なレベルの遺伝子移入を達成するための手段を与える。
【0072】
本明細書において用いられる用語「改変された」とは、本発明の分子または細胞の変化した状態または構造を意味する。分子は化学的に、構造的に、および機能的になど、多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入によって改変され得る。
【0073】
本明細書において用いられる用語「モジュレートする」とは、処置もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが処置を受けていない対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、天然のシグナルもしくは応答を撹乱させ、かつ/またはそれに影響を与え、それにより有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0074】
本発明の文脈において、一般的に存在する核酸塩基に関する以下の略語が用いられる。「A」はアデノシンをいい、「C」はシトシンをいい、「G」はグアノシンをいい、「T」はチミジンをいい、そして「U」はウリジンをいう。
【0075】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、短いポリヌクレオチドのことを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、C、G)によって表される場合、このヌクレオチド配列はRNA配列(すなわち、A、U、C、G)(「U」が「T」に置き換わる)も含むことが理解されよう。
【0076】
別途指定がなされないかぎり、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンでありかつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンにおいてイントロンを含有し得るかぎり、イントロンも含み得る。
【0077】
免疫原性組成物の「非経口」投与は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、もしくは胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0078】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書において用いられる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらは単量体「ヌクレオチド」に加水分解することができるという一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書において用いられる場合、ポリヌクレオチドには、非限定的に、組み換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCRなどを用いた組み換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野において利用可能な任意の手段により、ならびに合成手段により得られるすべての核酸配列が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0079】
本明細書において用いられる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基で構成される化合物をいう。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互につなぎ合わされた2つまたはそれよりも多いアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において用いられる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーともいわれる短鎖と、当技術分野において一般にタンパク質といわれる長鎖の両方をいい、その中には多くのタイプがある。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0080】
抗体に関して本明細書において用いられる用語「特異的に結合する」とは、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識またはそれと結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体が、1つまたは複数の種由来のその抗原にも結合する場合がある。しかし、そのような異種間反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体が、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合する場合がある。しかし、そのような交差反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語を、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して用いて、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味することができる;例えば、抗体は、タンパク質全体ではなく特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的であるなら、標識された「A」およびその抗体を含む反応物中にエピトープAを含む分子(または遊離した、標識されていないA)が存在することにより、その抗体に結合した標識されたAの量が低減するであろう。
【0081】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同族リガンドと結合し、それによって、非限定的に、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達のような、シグナル伝達事象を媒介することにより誘導される一次応答を意味する。刺激は、TGF-ベータのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再編成などのような、ある特定の分子の発現の変化を媒介することができる。
【0082】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
【0083】
本明細書において用いられる「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激分子」といわれる)と特異的に結合でき、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むが、それに限定されるわけではない、T細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0084】
「対象」という用語は、免疫応答を誘発することができる生物(例えば、哺乳動物)を含むよう意図される。本明細書において用いられる「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物のような、家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0085】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合が起きるのに十分な条件の下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の一部分を規定する核酸配列をいう。いくつかの態様では、標的配列は、結合が起こるのに十分な条件下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の一部を規定するゲノム核酸配列のことを指す。
【0086】
本明細書において使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体のことを指す。TCRは、主要組織適合性複合体分子に結合した抗原を認識する役割を担う。TCRは、アルファ(a)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、一部の細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、構造的に類似しているが異なる解剖学的位置および機能を有する、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタ形態で存在し得る。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、すなわち可変ドメインおよび定常ドメインから構成される。いくつかの態様では、TCRは、TCRを含む任意の細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびガンマデルタT細胞を含む)上で改変され得る。
【0087】
本明細書において用いられる「治療的」という用語は、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0088】
「移植片」は、移植されることになる生体適合性の格子またはドナーの組織、臓器または細胞のことをいう。移植片の例には、皮膚細胞または組織、骨髄ならびに心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓などの実質臓器が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。移植片はまた、宿主に投与されることになる任意の材料を指すことができる。例えば、移植片は、核酸またはタンパク質を指すことができる。
【0089】
本明細書において用いられる「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入される過程をいう。「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクションされた、形質転換された、または形質導入されたものである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0090】
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、対象が被っている疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減することを意味する。
【0091】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる材料の組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結び付いたポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むが、それに限定されるわけではない、多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えばポリリシン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0092】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明の様々な局面を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式の記述は、単に便宜および簡略化のためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、可能なすべての部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0093】
B. キメラ抗原受容体
本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。ある特定の態様では、対象CARは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、二重特異性CARを含む。
【0094】
また、CARを含む改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、改変されたT細胞)のための組成物および方法も提供される。したがって、いくつかの態様では、免疫細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されている。前記CARをコードする核酸、前記核酸をコードするベクター、および前記CAR、ベクター、または核酸を含む改変された細胞(例えば、改変されたT細胞)も提供される。
【0095】
本発明の対象CARは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。本発明の対象CARは、任意でヒンジドメインを含み得る。したがって、本発明の対象CARは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。本発明の対象二重特異性CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメインを含む。CARが二重特異性CARである態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインに連結されている。いくつかの態様では、PSCA抗原結合ドメインは、PSMA抗原結合ドメインのN末端側にあり得る。いくつかの態様では、PSMA抗原結合ドメインは、PSCA抗原結合ドメインのN末端側にあり得る。本発明の二重特異性CARのC末端の抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるようなCARの別のドメインに機能的に連結され得る。
【0096】
抗原結合ドメインは、CARの別のドメイン、例えば、いずれも本明細書の別の箇所に記載される膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインに、細胞での発現のために機能的に連結され得る。一態様では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に機能的に連結されており、さらに、細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列に機能的に連結されている。
【0097】
本明細書に記載される抗原結合ドメインは、本明細書に記載される膜貫通ドメインのいずれか、本明細書に記載される細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれか、または本発明のCARに含まれ得る本明細書に記載される他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。本発明の対象CARはまた、本明細書に記載されるようなヒンジドメインを含み得る。本発明の対象CARはまた、本明細書に記載されるようなスペーサードメインを含み得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインの各々は、リンカーによって隔てられている。
【0098】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、糖類、および糖脂質を含む特定の標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。本発明の対象CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインを含む。
【0099】
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびそれらの任意のフラグメントを含み得るが、それらに限定されない。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン部分は、哺乳動物抗体またはそのフラグメントを含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面上に存在する抗原の種類および数に依存し得る。
【0100】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合フラグメント(Fab)、および単鎖可変フラグメント(scFv)からなる群より選択される。いくつかの態様では、本発明のPSCA結合ドメインは、PSCA特異的抗体、PSCA特異的Fab、およびPSCA特異的scFvからなる群より選択される。一態様では、PSCA結合ドメインは、PSCA特異的抗体である。一態様では、PSCA結合ドメインは、PSCA特異的Fabである。一態様では、PSCA結合ドメインは、PSCA特異的scFvである。
【0101】
本明細書に用いられる用語「一本鎖可変フラグメント」または「scFv」は、(例えば、マウスまたはヒトの)免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域が共有結合して、VH::VLヘテロ二量体を形成した融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に繋がっているか、またはVHのN末端をVLのC末端と、もしくはVHのC末端をVLのN末端と接続するペプチドコードリンカーによって繋がっている。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えば、PSCA結合ドメイン)は、N末端からC末端方向に、VH-リンカー-VLの配置を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端方向に、VL-リンカー-VHの配置を有するscFvを含む。当業者は、本発明への使用に適した配置を選択することが可能であろう。
【0102】
リンカーは、通常、可動性のためにグリシンに富むだけでなく、可溶性のためにセリンまたはトレオニンに富む。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)および国際公開公報第2014/087010号に開示されており、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO:1)、(GGGS)
n(SEQ ID NO:2)、および(GGGGS)
n(SEQ ID NO:3)[配列中、nは少なくとも1の整数を表す]などのグリシンセリン(GS)リンカーを含むが、それに限定されるわけではない様々なリンカー配列が当技術分野において公知である。例示的なリンカー配列は、
などを含むが、それに限定されるわけではないアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明への使用に適したリンカー配列を選択することが可能であろう。一態様では、本発明の抗原結合ドメイン(例えば、PSMA結合ドメイン)は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、その際、VHおよびVLは、核酸配列
によってコードされ得るアミノ酸配列
を有するリンカー配列により隔てられている。
【0103】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、本来の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)によって記載されるようなVHおよびVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号および同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが、記載されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51; Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61; Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84; Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7; Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71; Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55; Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
【0104】
本明細書に用いられる「Fab」は、抗原に結合するが、一価であってFc部分を有しない抗体構造のフラグメントを指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFabフラグメントおよび1つのFcフラグメント(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)をもたらす。
【0105】
本明細書に用いられる「F(ab')2」は、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成される抗体フラグメントを指し、その際、このフラグメントは2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、抗原との結合のためのH鎖の一部および軽(L)鎖という2つの別々のアミノ酸鎖がS-S結合によって連結されたものを含み、残ったH鎖部分は一緒に連結している。「F(ab')2」フラグメントは、2つの個別のFab'フラグメントに分割することができる。
【0106】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される種と同じ種に由来する場合がある。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはそのフラグメントを含む場合がある。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される異なる種に由来し得る。例えば、ヒトにおいて使用するために、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体またはそのフラグメントを含み得る。
【0107】
ある特定の態様では、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。HCDR1は、アミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2は、アミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3は、アミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む。前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2は、アミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0108】
ある特定の態様では、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインの重鎖可変領域(VH)は、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ/または、軽鎖可変領域(VH)は、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0109】
ある特定の態様では、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインは、完全長抗体もしくはその抗原結合フラグメント、Fab、単鎖可変フラグメント(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0110】
抗原結合ドメイン配列の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8または9に示されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0111】
いくつかの態様では、本開示のCARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対して親和性を有し得る。いくつかの態様では、CARは、ある標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対して親和性を有し得る。そのような態様では、CARは、二重特異性CAR、または多重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に対する親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の別個のエピトープに結合することもできる。CAR中に複数の標的特異的結合ドメインが存在する場合、結合ドメインは、縦に整列されていても、リンカーペプチドによって隔てられていてもよい。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARでは、結合ドメインは、オリゴもしくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域または膜ヒンジ領域を通じて、単一ポリペプチド鎖上で互いに共有結合よって接続される。
【0112】
ある特定の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、二重特異性CARを含む。
【0113】
ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む。PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0114】
ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含み、そして、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列EYTIH(SEQ ID NO:68)を含み、HCDR2がアミノ酸配列NINPNNGGTTYNQKFED(SEQ ID NO:69)を含み、HCDR3がアミノ酸配列GWNFDY(SEQ ID NO:70)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列KASQDVGTAVD(SEQ ID NO:71)を含み、LCDR2がアミノ酸配列WASTRHT(SEQ ID NO:72)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQYNSYPLT(SEQ ID NO:73)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0115】
ある特定の態様では、二重特異性CARは、SEQ ID NO:7と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域とSEQ ID NO:8と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:34と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域とSEQ ID NO:35と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む。
【0116】
ある特定の態様では、二重特異性CARは、SEQ ID NO:7と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域とSEQ ID NO:8と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:75と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域とSEQ ID NO:77と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む。
【0117】
ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)であり、かつ/または、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:36、78、84もしくは85と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0118】
ある特定の態様では、二重特異性CARは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメインを含み、細胞外ドメインは、SEQ ID NO:50または52に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0119】
ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、リンカーによって隔てられている。PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを分離するために、当技術分野において公知の任意のリンカーを使用してよい。ある特定の態様では、リンカーは、SEQ ID NO:37または38に示されるアミノ酸配列を含む。
【0120】
追加のPSMA結合剤およびCARが、PCT/US2019/020729に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:75と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:77と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:36、78または84と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0121】
ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、PCT特許公開番号WO2017212250A1およびWO2018033749A1に開示されている重鎖可変領域および軽鎖可変領域のいずれかを含み、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。例えば、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、その中に開示されている重鎖可変領域および軽鎖可変領域のいずれかを含むscFvを含むことができる。したがって、本発明の二重特異性CARまたはPSMA-CARは、WO2017212250A1およびWO2018033749A1に開示されているような任意のscFvならびに任意の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができる、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。
【0122】
ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、表1に示されるいずれかの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができる。
【0123】
【0124】
膜貫通ドメイン
本発明のCAR(二重特異性CARを含む)は、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインと接続する膜貫通ドメインを含み得る。対象のCARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆細胞)の形質膜を貫通することが可能な領域である。膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば、真核生物細胞膜内への挿入のためのものである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に挟まれている。
【0125】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARにおけるドメインの1つまたは複数に自然に関連している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、このようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を回避するように、選択または1つもしくは複数のアミノ酸置換によって修飾して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
【0126】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する場合がある。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質、例えば、I型膜貫通タンパク質に由来し得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、細胞膜へのCARの挿入を容易にする任意の人工配列、例えば、人工疎水性配列であり得る。本発明における特定の使用の膜貫通ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、ICOS(CD278)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8およびTLR9に由来する(すなわち、これらの少なくとも膜貫通領域を含む)膜貫通ドメイン、またはキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0127】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、CD8の膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインである。ある特定の態様では、CD8の膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、CD28の膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、ICOSの膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、ICOSの膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、合成であり得るが、この場合、それは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含むであろう。好ましくは、合成膜貫通ドメインの各末端で、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの3つ組が見いだされるであろう。
【0129】
本明細書に記載の膜貫通ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の細胞内ドメインのいずれか、または対象のCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0130】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。本発明の対象のCARはまた、ヒンジ領域も含み得る。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。いくつかの態様では、このドメインは、CARにふさわしいタンパク質フォールディングを容易にする。ヒンジ領域は、CARの任意の成分である。ヒンジ領域は、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工的なヒンジ配列またはそれらの組み合わせより選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例は、非限定的に、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)ほどの小ささであり得るポリペプチドから構成される人工的なヒンジ、ならびにIgG(ヒトIgG4など)のCH1ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0131】
いくつかの態様では、本開示の対象のCAR(二重特異性CARを含む)は、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続してこれを次いで細胞内ドメインに接続する、ヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、好ましくは、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識してこれに結合することを支援することが可能である(例えば、Hudecek et al., Cancer Immunol. Res. (2015) 3(2): 125-135を参照されたい)。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、可動性ドメインであり、その結果、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特異的な構造および密度を最適に認識する構造を有することが可能となる(Hudecekら、上記)。そのヒンジ領域の可動性は、ヒンジ領域が多くの異なる立体配座をとることを許容する。
【0132】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、受容体に由来するヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来ヒンジ領域)である。
【0133】
ヒンジ領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有することができる。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、5aa超、10aa超、15aa超、20aa超、25aa超、30aa超、35aa超、40aa超、45aa超、50aa超、55aa超、またはそれ以上の長さを有することができる。
【0134】
適切なヒンジ領域を、容易に選択することができ、いくつかの適切な長さ、例えば、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含む、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸のいずれかであることができ、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸であることができる。適切なヒンジ領域は、20アミノ酸超(例えば、30個、40個、50個、60個、またはそれ以上)の長さを有することができる。
【0135】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)
n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO:119)および(GGGS)
n(SEQ ID NO:120)を含み、その際、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野において公知の他の可動性リンカーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーを使用することができる;GlyおよびSerの両方は、相対的に構造不定であり、したがって、成分間の中性の繋ぎ鎖(tether)として役立つことができる。グリシンポリマーを使用することができる;グリシンは、アラニンより有意に多くφ-ψ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限を受けない(例えば、Scheraga, Rev. Computational. Chem. (1992) 2: 73-142を参照されたい)。例示的なヒンジ領域は、非限定的に
などを含むアミノ酸配列を含むことができる。
【0136】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列は、当技術分野において公知である;例えば、Tan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87(1):162-166;およびHuck et al., Nucleic Acids Res. (1986) 14(4): 1779-1789を参照されたい。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列:
(例えば、Glaser et al., J. Biol.Chem. (2005) 280:41494-41503を参照されたい);
などのうちの1つを含むことができる。
【0137】
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列を含むことができる。一態様では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含むことができる。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、Tyrにより置換することができ、それによって、ヒンジ領域は、配列EPKSCDKTYTCPPCP(SEQ ID NO:142)を含む;例えば、Yan et al., J. Biol. Chem. (2012) 287: 5891-5897を参照されたい。
【0138】
ある特定の態様では、ヒンジ領域は、ヒトCD8またはそのバリアントに由来するアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の態様では、CARは、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含むCD8アルファヒンジ配列を含む。ある特定の態様では、CARは、SEQ ID NO:99に示されるアミノ酸配列を含むヒンジ配列を含む。ある特定の態様では、CARは、SEQ ID NO:100に示されるアミノ酸配列を含むヒンジ配列を含む。
【0139】
細胞内ドメイン
本発明の対象CAR(対象二重特異性CARを含む)はまた、細胞内ドメインも含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARの細胞内ドメインは、CARが発現される細胞(例えば、免疫細胞)におけるエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば、免疫細胞)がその特殊な機能、例えば、標的細胞の損傷および/または破壊を果たすように指令する。
【0140】
本発明において使用するための細胞内ドメインの例は、表面受容体の細胞質部分、共刺激性分子、およびT細胞においてシグナル伝達を開始するように協力して作用する任意の分子、ならびに、これらのエレメントの任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含むが、それらに限定されない。
【0141】
細胞内ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体複合体のζ鎖またはその同族体のいずれか、例えば、η鎖、FcsRIγおよびβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびにCD2、CD5およびCD28などのT細胞伝達に関与する他の分子を含む。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を保有する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0142】
ある特定の態様では、CARの細胞内ドメインは、1つまたは複数の共刺激性分子の任意の部分、例えば、CD2、CD3、CD8、CD27、CD28、ICOS(CD278)、4-1BB、PD-1に由来する少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、それらの任意の誘導体またはバリアント、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含む。細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む。
【0143】
さらに、対象CARにおいて使用するのに適したバリアント細胞内シグナル伝達ドメインは、当技術分野において公知である。YMFMモチーフは、ICOS中に見いだされ、PI3Kのp85およびp50アルファサブユニットの両方を動員して、増強されたAKTシグナル伝達をもたらすSH2結合モチーフである。例えば、Simpson et al. (2010) Curr. Opin. Immunol., 22:326-332を参照されたい。一態様では、YMFMモチーフを含むようにCD28細胞内ドメインバリアントが生成され得る。YMNMモチーフは、CD28細胞質ドメイン中に見いだされ、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3-K)およびGrb2の公知の結合部位である。Harada et al. (2003) J. Exp. Med., 197(2):257-262を参照されたい。一態様では、YMNMモチーフを含むようにICOS細胞内ドメインバリアントが生成され得る。
【0144】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、4-1BBの共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、CD28の共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、ICOSの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、ICOSの共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、ICOS(YMNM)の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、ICOS(YMNM)の共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含む。
【0145】
細胞内ドメインの他の例には、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマRlla、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80 (KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、バリアント、またはフラグメント、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、それに限定されるわけではない1つまたは複数の分子または受容体に由来するフラグメントまたはドメインが含まれる。
【0146】
細胞内ドメインの追加的な例には、非限定的に、CD3、B7ファミリー共刺激受容体および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2および第3世代のT細胞シグナル伝達タンパク質を非限定的に含む、数種類の様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが含まれる(例えば、Park and Brentjens, J. Clin. Oncol. (2015) 33(6): 651-653を参照されたい)。追加的に、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK細胞およびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(例えば、Hermanson and Kaufman, Front. Immunol. (2015) 6: 195を参照されたい)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al., J. Immunol. (2012) 189(5): 2290-2299を参照されたい)、およびDAP12(例えば、Topfer et al., J. Immunol. (2015) 194(7): 3201-3212を参照されたい)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、およびCD3zのシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0147】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を保有する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはそのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD3ζまたはそのバリアントの細胞内ドメインを含む。ある特定の態様では、CD3ζの細胞内ドメインは、18または19に示されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
本発明の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、CARの活性化(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化される)に反応して別個のかつ検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増加;標的遺伝子の転写の変化;タンパク質の活性の変化;細胞挙動の変化、例えば、細胞死;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達応答のモジュレーションなど)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、以下に記載のような少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つなど)のITAMモチーフを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、膜結合CARに共有結合することなく、代わりに細胞質中に拡散される。
【0149】
本発明の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、ITAMモチーフは、細胞内ドメイン内で二度反復され、そこで、ITAMモチーフの第1および第2の例は、6~8アミノ酸により互いに隔てられている。一態様では、対象のCARの細胞内ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
【0150】
いくつかの態様では、細胞内ドメインは、非限定的に、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、FcRL5などの、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有するヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al., Front. Immunol. (2014) 5:254を参照されたい)。
【0151】
適切な細胞内ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来する、ITAMモチーフ含有部分であることができる。例えば、適切な細胞内ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであることができる。したがって、適切な細胞内ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。適切なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例は、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)、およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0152】
一態様では、細胞内ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX活性化タンパク質12;KAR関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fc-イプシロンRI-ガンマ;fcRガンマ;fceRlガンマ;高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体、高親和性ガンマ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン関連タンパク質;表面IgM関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CAR中の細胞内ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0153】
通常、細胞内ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、必ずしも鎖全体を使用する必要はない。細胞内ドメインの切断型部分が使用される範囲内で、そのような切断型部分は、エフェクター機能シグナルを伝達するかぎり、無傷の鎖の代わりに使用され得る。細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内ドメインの任意の切断型部分を含む。
【0154】
本明細書に記載の細胞内ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれか、またはCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0155】
個々のCARドメイン配列(ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメイン)の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARドメインは、SEQ ID NO:10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、99および100に示されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0156】
一局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0157】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0158】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:21、23、25または27と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CAR配列の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:21、23、25または27に示されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0159】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:67、87、89、91、93、95または97と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CAR配列の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:67、87、89、91、93、95または97に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0160】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0161】
一局面では、本発明は、細胞外ドメインがPSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む、二重特異性CARであって、SEQ ID NO:40、42または80~82に示されるアミノ酸配列を含む、二重特異性CARを提供する。CAR配列の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:40、42または80~82に示されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0162】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)であって、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:78、84もしくは85と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)であり、かつ/または、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインおよびPSMAに結合可能な抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:50もしくは52に示されるアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0163】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)が可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、PSCAとPSMAに結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または、SEQ ID NO:35と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0164】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)であって、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)であり、かつ/または、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:36と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0165】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)が可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、PSCAとPSMAに結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とSEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:75と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とSEQ ID NO:77と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0166】
一局面では、本発明は、細胞外ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域;および/または3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域を含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインと;3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域;および/または3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域を含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む、二重特異性CARを提供する。
【0167】
一局面では、本発明は、細胞外ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域;および/または3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域を含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインと;3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列EYTIH(SEQ ID NO:68)を含み、HCDR2がアミノ酸配列NINPNNGGTTYNQKFED(SEQ ID NO:69)を含み、HCDR3がアミノ酸配列GWNFDY(SEQ ID NO:70)を含む、第2の重鎖可変領域;および/または3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列KASQDVGTAVD(SEQ ID NO:71)を含み、LCDR2がアミノ酸配列WASTRHT(SEQ ID NO:72)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQYNSYPLT(SEQ ID NO:73)を含む、第2の軽鎖可変領域を含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む、二重特異性CARを提供する。
【0168】
【0169】
C. 核酸および発現ベクター
本開示は、CARをコードする核酸を提供する。本開示の核酸は、本明細書に開示されるCAR(二重特異性CARを含む)のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0170】
ある特定の局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む。
【0171】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:43と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:44と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む。
【0172】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:45と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0173】
また、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:7と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:8と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、核酸も提供される。
【0174】
また、SEQ ID NO:20と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。
【0175】
本発明はまた、SEQ ID NO:20、22、24または26と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0176】
本発明はまた、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、PSMA-CARが、SEQ ID NO:67、87、89、91、93、95または97に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、核酸も提供する。ある特定の態様では、PSMA-CARは、SEQ ID NO:88、90、92、94、96または98と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0177】
また、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、二重特異性CARが、PSCAが可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸も提供される。
【0178】
ある特定の態様では、細胞外ドメインは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含む。PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む。PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0179】
ある特定の態様では、細胞外ドメインは、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインとを含み、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む。PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列EYTIH(SEQ ID NO:68)を含み、HCDR2がアミノ酸配列NINPNNGGTTYNQKFED(SEQ ID NO:69)を含み、HCDR3がアミノ酸配列GWNFDY(SEQ ID NO:70)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列KASQDVGTAVD(SEQ ID NO:71)を含み、LCDR2がアミノ酸配列WASTRHT(SEQ ID NO:72)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQYNSYPLT(SEQ ID NO:73)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0180】
ある特定の態様では、第1の重鎖可変領域(PSCAに結合可能)は、SEQ ID NO:43と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第1の軽鎖可変領域(PSCAに結合可能)は、SEQ ID NO:44と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、第2の重鎖可変領域(PSMAに結合可能な)は、SEQ ID NO:46もしくは74と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ;第2の軽鎖可変領域(PSMAに結合可能な)は、SEQ ID NO:47もしくは76と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0181】
ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:45と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるscFvを含む。ある特定の態様では、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:48、83または86と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるscFvを含む。
【0182】
ある特定の態様では、細胞外ドメインは、SEQ ID NO:49または51に示される核酸配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0183】
ある特定の態様では、CAR(二重特異性CARを含む)は、SEQ ID NO:10、99または100に示されるアミノ酸配列を含むヒンジ配列をさらに含む。ある特定の態様では、CARまたは二重特異性CARの膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含むCD8アルファの膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含むCD28の膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含むICOSの膜貫通ドメインを含む。
【0184】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含むCD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列を含むICOSの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含むICOS(YMNM)の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζまたはそのバリアントの細胞内ドメインを含み、CD3ζの細胞内ドメインは、SEQ ID NO:18または19に示されるアミノ酸配列を含む。
【0185】
ある特定の態様では、二重特異性CARは、SEQ ID NO:39、41または79と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0186】
本発明の別の局面は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)をコードする第1のポリヌクレオチド配列とドミナントネガティブ型受容体をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む核酸であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸を含む。
【0187】
ある特定の態様では、ドミナントネガティブ型受容体は、負のシグナルに関連する野生型タンパク質の切断型バリアントである。ある特定の態様では、負のシグナルに関連する野生型タンパク質の切断型バリアントは、SEQ ID NO:56と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ/または、SEQ ID NO:55と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0188】
また、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)をコードする第1のポリヌクレオチド配列とスイッチ受容体をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む核酸であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸も提供される。
【0189】
ある特定の態様では、スイッチ受容体は、負のシグナルに関連する第1のスイッチポリペプチドに由来する第1のドメインと;正のシグナルに関連する第2のスイッチポリペプチドに由来する第2のドメインとを含む。ある特定の態様では、第1のドメインは、負のシグナルに関連する第1のスイッチポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも一部を含み、第2のドメインは、正のシグナルに関連する第2のスイッチポリペプチドの細胞内ドメインの少なくとも一部を含む。
【0190】
ある特定の態様では、スイッチ受容体は、スイッチ受容体膜貫通ドメインをさらに含む。ある特定の態様では、スイッチ受容体膜貫通ドメインは、負のシグナルに関連する第1のスイッチポリペプチドの膜貫通ドメイン;または正のシグナルに関連する第2のスイッチポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。
【0191】
ある特定の態様では、負のシグナルに関連する第1のスイッチポリペプチドは、CTLA4、PD-1、PD-L1、BTLA、TIM-3、IFNγR、およびTGFβRからなる群より選択される。ある特定の態様では、正のシグナルに関連するスイッチポリペプチドは、CD28、ICOS、およびIL-12Rからなる群より選択される。
【0192】
ある特定の態様では、スイッチ受容体は、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部を含む第1のドメインと;CD28の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含むスイッチ受容体膜貫通ドメインと;CD28の細胞内ドメインの少なくとも一部を含む第2のドメインとを含む。PD1-CD28スイッチ受容体は、Liu X, et al. (2016) Cancer research, 76(6), 1578-1590に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ある特定の態様では、スイッチ受容体は、SEQ ID NO:57と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、SEQ ID NO:58と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0193】
ある特定の態様では、スイッチ受容体は、IFNγRの細胞外ドメインの少なくとも一部を含む第1のドメインと;IL12Rβ1の細胞内ドメインの少なくとも一部を含む第2のドメインとを含む。ある特定の態様では、スイッチ受容体は、SEQ ID NO:59に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、SEQ ID NO:60と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0194】
ある特定の態様では、スイッチ受容体は、IFNγRの細胞外ドメインの少なくとも一部を含む第1のドメインと;IL12Rβ2の細胞内ドメインの少なくとも一部を含む第2のドメインとを含む。ある特定の態様では、スイッチ受容体は、SEQ ID NO:61に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、SEQ ID NO:62と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0195】
さらなるスイッチ受容体がPCT/US2019/020729に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0196】
本発明の別の局面は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)をコードする第1のポリヌクレオチド配列と二重特異性抗体をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む核酸であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、核酸を提供する。
【0197】
ある特定の態様では、二重特異性抗体は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む。ある特定の態様では、第1の結合ドメインは、CTLA4、PD-1、PD-L1、BTLA、TIM-3、およびTGFβRからなる群より選択される負のシグナルに結合する。ある特定の態様では、第2の結合ドメインは、共刺激性分子に結合する。ある特定の態様では、共刺激性分子は、CD28である。
【0198】
ある特定の態様では、二重特異性抗体は、PD-L1に結合可能な第1の結合ドメインとCD28に結合可能な第2の結合ドメインとを含む。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:63と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、SEQ ID NO:64と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0199】
ある特定の態様では、二重特異性抗体は、TGFβR2に結合可能な第1の結合ドメインとCD28に結合可能な第2の結合ドメインとを含む。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:65と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ/または、SEQ ID NO:66と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0200】
ある特定の態様では、本開示の核酸は、第1のポリヌクレオチド配列および第2のポリヌクレオチド配列を含む。第1および第2のポリヌクレオチド配列は、リンカーによって隔てられていてもよい。例えば、ある特定の態様では、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインとPSMAに結合可能な抗原結合ドメインは、リンカーによって隔てられている。ある特定の態様では、リンカーは、SEQ ID NO:53または54に示される核酸配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる。本開示において使用するためのリンカーは、複数のタンパク質が、同じ核酸配列によってコードされることを可能にし(例えば、マルチシストロン性またはバイシストロン性配列)、これらは、別々のタンパク質成分へと解離されるポリタンパク質として翻訳される。例えば、PSCA CARコード配列およびPSMA CARコード配列を含む本開示の核酸において使用するためのリンカーは、PSCA CARおよびPSMA CARが、別々のCARへと解離されるポリタンパク質として翻訳されることを可能にする。ある特定の態様では、核酸は、5'から3'へ、第1のポリヌクレオチド配列、リンカー、および第2のポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の態様では、核酸は、5'から3'へ、第2のポリヌクレオチド配列、リンカー、および第1のポリヌクレオチド配列を含む。
【0201】
いくつかの態様では、リンカーは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、タンパク質コード領域のATGなどの開始コドンへの直接的な配列内リボソーム進入を促進し、遺伝子のキャップ非依存的翻訳を導くエレメントのことを指す。様々な配列内リボソーム進入部位が、当業者に公知であり、非限定的に、ウイルスまたは細胞のmRNA供給源から入手可能なIRES、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP);血管内皮細胞増殖因子(VEGF);線維芽細胞増殖因子2;インスリン様成長因子;翻訳開始因子eIF4G;酵母転写因子TFIIDおよびHAP4;ならびに、例えば、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、HCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)から入手可能なIRESを含む。当業者は、本発明において使用するための適切なIRESを選択することができるであろう。
【0202】
いくつかの態様では、リンカーは、自己切断ペプチドをコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「自己切断ペプチド」または「2Aペプチド」は、複数のタンパク質がポリタンパク質としてコードされることを可能にするオリゴペプチドのことを指し、これらは、翻訳後に構成タンパク質へと解離する。「自己切断」という用語の使用は、タンパク質分解切断反応を意味することを意図していない。様々な自己切断ペプチドまたは2Aペプチドが、当業者に公知であり、非限定的に、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ウイルスファミリーのメンバー、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV0)、ゾセアアシグナウイルス(Thosea asigna virus)(TaV)、およびブタテッショウウイルス-1(PTV-1);ならびにタイロウイルスおよび脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルスに見いだされるものを含む。FMDV、ERAV、PTV-1およびTaVに由来する2Aペプチドは、本明細書において、それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」および「T2A」と称される。当業者は、本発明において使用するための適切な自己切断ペプチドを選択することができるであろう。
【0203】
いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位をコードする核酸配列をさらに含む。フーリンは、トランスゴルジ中に存在し、タンパク質前駆体を分泌の前にプロセシングする、遍在的に発現されるプロテアーゼである。フーリンは、そのコンセンサス認識配列のCOOH-末端で切断する。様々なフーリンコンセンサス認識配列(または「フーリン切断部位」)が、当業者に公知であり、非限定的に、Arg-X1-Lys-Arg(SEQ ID NO:143)またはArg-X1-Arg-Arg(SEQ ID NO:144)、X2-Arg-X1-X3-Arg(SEQ ID NO:145)およびArg-X1-X1-Arg(SEQ ID NO:146)、例えば、Arg-Gln-Lys-Arg(SEQ ID NO:147)(式中、X1は、任意の天然に存在するアミノ酸であり、X2は、LysまたはArgであり、X3は、LysまたはArgである)を含む。当業者は、本発明において使用するための適切なフーリン切断部位を選択することができるであろう。
【0204】
いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位と2Aペプチドの組み合わせをコードする核酸配列を含む。例は、非限定的に、フーリン切断部位およびF2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリン切断部位およびE2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリン切断部位およびP2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フーリン切断部位およびT2Aをコードする核酸配列を含むリンカーを含む。当業者は、本発明において使用するための適切な組み合わせを選択することができるであろう。そのような態様では、リンカーは、フーリン切断部位と2Aペプチドとの間にスペーサー配列をさらに含み得る。いくつかの態様では、リンカーは、2Aペプチドの5'にフーリン切断部位を含む。いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位の5'に2Aペプチドを含む。様々なスペーサー配列が、当技術分野において公知であり、非限定的に、グリシンセリン(GS)スペーサー、例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:119)および(GGGS)n(SEQ ID NO:120)(式中、nは、少なくとも1の整数を表す)を含む。例示的なスペーサー配列は、非限定的に、GGSG(SEQ ID NO:122)、GGSGG(SEQ ID NO:123)、GSGSG(SEQ ID NO:124)、GSGGG(SEQ ID NO:125)、GGGSG(SEQ ID NO:126)、GSSSG(SEQ ID NO:127)などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明において使用するための適切なスペーサー配列を選択することができるであろう。
【0205】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、転写調節エレメント、例えば、プロモーターおよびエンハンサーなどに機能的に連結され得る。適切なプロモーターおよびエンハンサー エレメントは、当業者に公知である。
【0206】
ある特定の態様では、外因性CARをコードする核酸が、プロモーターと機能的連結状態にある。ある特定の態様では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターである。
【0207】
細菌細胞における発現に適したプロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPおよびtrcが含まれるが、それに限定されるわけではない。真核細胞における発現に適したプロモーターには、軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント;サイトメガロウイルス前初期プロモーター;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター;初期および後期SV40プロモーター;レトロウイルス由来の長鎖末端反復配列に存在するプロモーター;マウスメタロチオネイン-Iプロモーター;ならびに当技術分野において公知の様々な組織特異的プロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。可逆誘導性プロモーターを含む、適切な可逆プロモーターは、当技術分野において公知である。そのような可逆プロモーターは、多数の生物、例えば、真核生物および原核生物から単離され、それに由来する場合がある。第2の生物における使用のために第1の生物に由来する可逆プロモーターの改変(例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物など)は、当技術分野において周知である。そのような可逆プロモーター、およびそのような可逆プロモーターに基づくが、追加的な制御タンパク質も含むシステムには、アルコール調節プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(A1cR)応答プロモーターなど)、テトラサイクリン調節プロモーター、(例えば、TetActivator、TetON、TetOFFなどを含むプロモーターシステム)、ステロイド調節プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーターシステム、ヒトエストロゲン受容体プロモーターシステム、レチノイドプロモーターシステム、甲状腺プロモーターシステム、エクジソンプロモーターシステム、ミフェプリストンプロモーターシステムなど)、金属調節プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーターシステムなど)、病原性関連調節プロモーター(例えば、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーター、ベンゾチアジアゾール調節プロモーターなど)、温度調節プロモーター(例えば、熱ショック誘導プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光調節プロモーター、合成誘導プロモーターなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0208】
いくつかの態様では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーター、またはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる;例えば、Salmon et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:7739;およびMarodon et al. (2003) Blood 101:3416を参照されたい。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、NcrI(p46)プロモーターの使用により達成することができる;例えば、Eckelhart et al. Blood (2011) 117:1565を参照されたい。
【0209】
酵母細胞における発現に適したプロモーターは、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなどのような構成的プロモーター;またはGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、およびAOX1(例えば、ピキア(Pichia)における使用のため)のような調節可能なプロモーターである。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内である。原核生物宿主細胞における使用に適したプロモーターには、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;ssaGプロモーターなどのインビボ調節プロモーターまたは関連プロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照されたい)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller, J. Bacteriol. (1991) 173(1): 86-93;Alpuche-Aranda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89(21): 10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al. Mol. Micro. (1992) 6:2805-2813)など(例えば, Dunstan et al., Infect. Immun. (1999) 67:5133-5141;McKelvie et al., Vaccine (2004) 22:3243-3255;およびChatfield et al., Biotechnol. (1992) 10:888-892を参照されたい);sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961、およびAX798183を参照されたい);静止期プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、WO96/17951を参照されたい);actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al., Infect. Immun. (2002) 70:1087-1096を参照されたい);rpsMプロモーター(例えば, Valdivia and Falkow Mol. Microbiol. (1996). 22:367を参照されたい);tetプロモーター(例えば、Hillen, W. and Wissmann, A. (1989) In Saenger, W. and Heinemann, U. (eds), Topics in Molecular and Structural Biology, Protein--Nucleic Acid Interaction. Macmillan, London, UK, Vol. 10, pp. 143-162を参照されたい);SP6プロモーター(例えば, Melton et al., Nucl. Acids Res. (1984) 12:7035を参照されたい)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物における使用に適した強力なプロモーターには、Trc、Tac、T5、T7、およびPラムダが含まれるが、それに限定されるわけではない。細菌宿主細胞における使用のためのオペレーターの非限定的な例には、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触した場合に立体配座を変化させ、それにより、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを阻止する)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合体化した場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターと結合する立体配座を有し;トリプトファンの非存在下で、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合しない立体配座を有する)、およびtacプロモーターオペレーターが含まれる(例えば、deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25を参照されたい)。
【0210】
適切なプロモーターの他の例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が含まれる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を推進することが可能な、強力な構成的プロモーター配列である。サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびに非限定的にアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターを含むが、それに限定されるわけではない他の構成的プロモーター配列も使用される場合がある。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導プロモーターもまた、本発明の一部として考えられている。誘導プロモーターの使用は、それが機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現が望ましい場合に、そのような発現をオンにすること、または発現が望ましくない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導プロモーターの例には、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0211】
いくつかの態様では、適切なプロモーターを含有する遺伝子座または構築物または導入遺伝子は、誘導システムの誘導を経由して不可逆的にスイッチされる。不可逆スイッチの誘導に適したシステムは、当技術分野において周知であり、例えば、不可逆スイッチの誘導は、Cre-lox媒介組み換えを利用する場合がある(例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 28:e99を参照されたい)。当技術分野において公知であるリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組み換え部位などの任意の適切な組み合わせが、不可逆的にスイッチ可能なプロモーターを生成するために使用される場合がある。本明細書の他の箇所に記載される部位特異的組み換えを行うための方法、メカニズム、および要件が、不可逆的にスイッチされたプロモーターの生成に用いられ、当技術分野において周知である。例えば、その開示が、参照により本明細書に組み入れられる、Grindley et al. Annual Review of Biochemistry (2006) 567-605;およびTropp, Molecular Biology (2012) (Jones & Bartlett Publishers, Sudbury, Mass.)を参照されたい。
【0212】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、CAR誘導発現カセットをコードする核酸配列をさらに含む。一態様では、CAR誘導発現カセットは、CARシグナル伝達の際に放出されるトランスジェニックポリペプチド産物の産生のためである。例えば、Chmielewski and Abken, Expert Opin. Biol. Ther. (2015) 15(8): 1145-1154;およびAbken, Immunotherapy (2015) 7(5): 535-544を参照されたい。いくつかの態様では、本開示の核酸は、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの態様では、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインは、別々の核酸配列上に存在する。一態様では、サイトカインはIL-12である。
【0213】
本開示の核酸は、発現ベクターおよび/またはクローニングベクター内に存在し得る。発現ベクターは、選択マーカー、複製起点、ならびにベクターの複製および/または維持を提供する他の特徴を含むことができる。適切な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが含まれる。多数の適切なベクターおよびプロモーターが、当業者に公知であり;対象の組み換え構築物を生成するために多くが市販されている。以下のベクターが例として提供されるが、これらは、いかようにも限定として解釈されるべきではない:細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene, La Jolla, Calif., USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia, Uppsala, Sweden)。原核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmacia)。
【0214】
発現ベクターは、一般的に、プロモーター配列近くに位置する好都合な制限部位を有して、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供する。発現宿主において作動する選択マーカーが存在する場合がある。適切な発現ベクターには、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1994) 35: 2543-2549;Borras et al., Gene Ther. (1999) 6: 515-524;Li and Davidson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92: 7700-7704;Sakamoto et al., H. Gene Ther. (1999) 5: 1088-1097;国際公開公報第94/12649号、同第93/03769号;同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第95/00655号を参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum. Gene Ther. (1998) 9: 81-86, Flannery et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 6916-6921;Bennett et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1997) 38: 2857-2863;Jomary et al., Gene Ther. (1997) 4:683 690, Rolling et al., Hum. Gene Ther. (1999) 10: 641-648;Ali et al., Hum. Mol. Genet. (1996) 5: 591-594;国際公開公報第93/09239号におけるSrivastava、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63: 3822-3828;Mendelson et al., Virol. (1988) 166: 154-165;およびFlotte et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 10613-10617を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 10319-23;Takahashi et al., J. Virol. (1999) 73: 7812-7816を参照されたい)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳がんウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0215】
使用に適した追加的な発現ベクターは、例えば、非限定的に、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルスベクター、トランスポゾン媒介ベクターなどである。ウイルスベクター技法は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY)ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0216】
一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能性の複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号;同第01/29058号;および米国特許第6,326,193号)。
【0217】
いくつかの態様では、免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)中にCARを導入するために、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)が使用される場合がある。したがって、本発明の発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARをコードする核酸を含む場合がある。いくつかの態様では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、その中にコードされるCARの機能的発現を助ける追加的なエレメントを含むであろう。いくつかの態様では、CARをコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳動物プロモーターをさらに含む。一態様では、ベクターは、伸長因子-1-アルファプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子(例えば、CARをコードする核酸配列)の発現における効率を上げる場合がある。生理的プロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)は、組み込み媒介遺伝毒性を誘導する可能性が低い場合があり、レトロウイルスベクターが幹細胞を形質転換する能力を打ち消す場合がある。ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)における使用に適した他の生理的プロモーターは、当業者に公知であり、本発明のベクターに組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、力価および遺伝子発現を改善する場合がある、必須ではないシス作用配列をさらに含む。必須ではないシス作用配列の非限定的な一例は、効率的な逆転写および核内輸送に重要なセントラルポリプリントラクトおよびセントラルターミネーション配列(cPPT/CTS)である。他の必須ではないシス作用配列は、当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクターは、転写後調節エレメントをさらに含む。転写後調節エレメントは、RNAの翻訳を改善し、導入遺伝子の発現を改善し、RNA転写物を安定化する場合がある。転写後調節エレメントの一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。したがって、いくつかの態様では、本発明のためのベクターは、WPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節因子エレメントは、当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。本発明のベクターは、RNAの輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、ならびに5'および3'長鎖末端反復配列(LTR)などの追加的なエレメントをさらに含む場合がある。「長鎖末端反復配列」または「LTR」という用語は、U3、RおよびU5領域を含むレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは、一般的にレトロウイルス遺伝子の発現(例えば、プロモーション、イニシエーションおよび遺伝子転写物のポリアデニル化)およびウイルス複製に必要な機能を提供する。一態様では、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、3' U3欠失LTRを含む。したがって、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、本明細書に記載されるエレメントの任意の組み合わせを含んで、導入遺伝子の機能的発現の効率を高める場合がある。例えば、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARをコードする核酸に加えてWPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5'LTR、3' U3欠失LTR'を含む場合がある。
【0218】
本発明のベクターは、自己不活化ベクターであり得る。本明細書に用いられる「自己不活化ベクター」という用語は、3' LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が改変されている(例えば、欠失または置換により)、ベクターを指す。自己不活化ベクターは、ウイルス複製の第1ラウンドを超えたウイルス転写を防止し得る。結果として、自己不活化ベクターは、感染して、次いで宿主ゲノム(例えば、哺乳動物ゲノム)中に1回だけ組み込まれることができ得るが、さらに継代され得ない。したがって、自己不活化ベクターは、複製適格ウイルスを生み出すリスクを大きく低減し得る。
【0219】
いくつかの態様では、本発明の核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであり得る。RNAのインビトロ合成のための方法は、当業者に公知であり;任意の公知の方法を使用して、本開示のCARをコードする配列を含むRNAを合成することができる。宿主細胞内にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞中に導入することは、インビトロまたはエクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0220】
ポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞内に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターによりトランスフェクションまたは感染させようとする細胞集団から発現している細胞の特定および選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の一方または両方を含有する場合がある。いくつかの態様では、選択マーカーは、別々のDNA片上に保有され、共トランスフェクション手順に使用される場合がある。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な調節配列に隣接する場合がある。有用な選択マーカーには抗生物質耐性遺伝子が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0221】
トランスフェクションされた可能性のある細胞を特定するためおよび調節配列の機能性を評価するために、レポーター遺伝子が使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織中に存在することもそれによって発現されることもない遺伝子であって、いくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞内に導入された後の適切な時間に評価される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれる場合があるが、それに限定されるわけではない(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。
【0222】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、本明細書に記載されるようなCARの、例えば、哺乳動物細胞中での産生を提供する。いくつかの態様では、本開示の核酸は、CARをコードする核酸の増幅を提供する。
【0223】
D. 改変された免疫細胞
本発明は、PSCA(例えば、ヒトPSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、T細胞)を提供する。また、二重特異性CAR(例えば PSCA&PSMA)、ドミナントネガティブ型受容体(例えば、TGFbRDN)を有するPSCA CAR、スイッチ受容体(例えば、PD1/CD28またはTGFbR/IL12R)を有するPSCA CAR、および二重特異性抗体(例えば、PD-L1/CD28)と組み合わせたPSCA CARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆体も提供される。本発明はまた、本明細書に開示される核酸のいずれかまたは本明細書に開示されるベクターのいずれかを含む、改変された免疫細胞またはその前駆体も含む。
【0224】
一局面では、本発明は、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を含む。
【0225】
ある特定の例示的な態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む。
【0226】
別の局面では、本開示は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0227】
別の局面では、本開示は、SEQ ID NO:9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0228】
ある特定の例示的な態様では、膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む。
【0229】
ある特定の例示的な態様では、細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、ICOSの共刺激性ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、ICOS(YMNM)の共刺激性ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζまたはそのバリアントの細胞内ドメインを含む。
【0230】
別の局面では、本開示は、SEQ ID NO:21、23、25または27と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0231】
ある特定の例示的な態様では、改変された細胞は、PSMA-CARをさらに含み、PSMA-CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。
【0232】
一局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメインを含む二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を含む。
【0233】
ある特定の態様では、二重特異性CARの細胞外ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。細胞外ドメインはまた、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインも含む。
【0234】
ある特定の態様では、細胞外ドメインは、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域と;SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、および/または、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域と;SEQ ID NO:35と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。
【0235】
ある特定の態様では、二重特異性CARの細胞外ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、および/または、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列EYTIH(SEQ ID NO:68)を含み、HCDR2がアミノ酸配列NINPNNGGTTYNQKFED(SEQ ID NO:69)を含み、HCDR3がアミノ酸配列GWNFDY(SEQ ID NO:70)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列KASQDVGTAVD(SEQ ID NO:71)を含み、LCDR2がアミノ酸配列WASTRHT(SEQ ID NO:72)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQYNSYPLT(SEQ ID NO:73)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。
【0236】
ある特定の態様では、二重特異性CARの細胞外ドメインは、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域と;SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域とを含む、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、および/または、SEQ ID NO:75と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域と;SEQ ID NO:77と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域とを含む、PSMAに結合可能な抗原結合ドメインを含む。
【0237】
ある特定の例示的な態様では、二重特異性CARは、ヒトPSCAに結合可能である。ある特定の例示的な態様では、二重特異性CARは、ヒトPSMAに結合可能である。ある特定の例示的な態様では、二重特異性CARは、ヒトPSCAとヒトPSMAに結合可能である。
【0238】
別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な第1の抗原結合ドメインを含む第1のCARと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な第2の抗原結合ドメインを含む第2のCARとを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、第1および第2のCARが各々、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を含む。
【0239】
ある特定の例示的な態様では、第1の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む。第2の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列SNWIG(SEQ ID NO:28)を含み、HCDR2がアミノ酸配列IIYPGDSDTRYSPSFQG(SEQ ID NO:29)を含み、HCDR3がアミノ酸配列QTGFLWSFDL(SEQ ID NO:30)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列RASQDISSALA(SEQ ID NO:31)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DASSLES(SEQ ID NO:32)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQFNSYPLT(SEQ ID NO:33)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0240】
ある特定の例示的な態様では、第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第1の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:35と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0241】
ある特定の例示的な態様では、第1の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第1の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列DYYIH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列WIDPENGDTEFVPKFQG(SEQ ID NO:2)を含み、HCDR3がアミノ酸配列TGGF(SEQ ID NO:3)を含む、第1の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第1の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列SASSSVRFIHW(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列DTSKLAS(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSSSPFT(SEQ ID NO:6)を含む、第1の軽鎖可変領域とを含む。第2の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む第2の重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列EYTIH(SEQ ID NO:68)を含み、HCDR2がアミノ酸配列NINPNNGGTTYNQKFED(SEQ ID NO:69)を含み、HCDR3がアミノ酸配列GWNFDY(SEQ ID NO:70)を含む、第2の重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む第2の軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列KASQDVGTAVD(SEQ ID NO:71)を含み、LCDR2がアミノ酸配列WASTRHT(SEQ ID NO:72)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQYNSYPLT(SEQ ID NO:73)を含む、第2の軽鎖可変領域とを含む。
【0242】
ある特定の例示的な態様では、第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第1の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:8と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:75と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ/または、第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:77と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0243】
ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARは各々、人工的な疎水性配列、およびI型膜貫通タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS、およびCD154、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインからなる群より選択される膜貫通ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARは各々、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む。
【0244】
ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARの細胞内ドメインは各々、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0245】
ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARの細胞内ドメインは各々、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARの細胞内ドメインは各々、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。
【0246】
ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは各々、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を保有する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはそのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内ドメインを含む。ある特定の例示的な態様では、第1のCARおよび第2のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは各々、CD3ζまたはそのバリアントの細胞内ドメインを含む。
【0247】
ある特定の例示的な態様では、第1のCARは、SEQ ID NO:21と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ/または、第2のCARは、SEQ ID NO:67、87、89、91、93、95もしくは97と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0248】
ある特定の態様では、改変された細胞は、ドミナントネガティブ型受容体をさらに含む。ある特定の態様では、ドミナントネガティブ型受容体は、負のシグナルに関連する野生型タンパク質の切断型バリアントである。ある特定の例示的な態様では、負のシグナルに関連する野生型タンパク質の切断型バリアントは、SEQ ID NO:56と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0249】
ある特定の態様では、改変された細胞は、スイッチ受容体をさらに含む。ある特定の態様では、スイッチ受容体は、負のシグナルに関連する第1のスイッチポリペプチドに由来する第1のドメインと;正のシグナルに関連する第2のスイッチポリペプチドに由来する第2のドメインとを含む。ある特定の例示的な態様では、スイッチ受容体は、SEQ ID NO:58、60または62と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0250】
したがって、ある特定の態様では、本発明は、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、ドミナントネガティブ型受容体(例えば、TGFbRDN)をさらに含む、免疫細胞またはその前駆細胞を含む。
【0251】
したがって、ある特定の態様では、本発明は、PSCAに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、スイッチ受容体(例えば、PD1/CD28スイッチ受容体)をさらに含む、免疫細胞またはその前駆細胞を含む。
【0252】
また、前立腺幹細胞抗原に結合可能なCAR(PSCA-CAR)および二重特異性抗体を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、かつ、二重特異性抗体を分泌する、改変された免疫細胞またはその前駆細胞も提供される。
【0253】
ある特定の態様では、改変された細胞は、二重特異性抗体をさらに含み、該細胞は、二重特異性抗体を分泌する。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:64または66と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0254】
ある特定の態様では、改変された細胞は、改変された免疫細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、改変されたT細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、ヒト対象から得られる自家細胞である。
【0255】
E. 免疫細胞の供給源
いくつかの態様では、エクスビボ操作のために免疫細胞(例えばT細胞)の供給源が対象から得られる。エクスビボ操作のための免疫細胞の供給源はまた、例えば、自己または異種のドナー血、臍帯血、または骨髄も含む場合がある。例えば、免疫細胞の供給源は、本発明の改変された免疫細胞により処置されるべき対象に由来する場合があり、例えば、対象の血液、対象の臍帯血、または対象の骨髄であり得る。対象の非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0256】
免疫細胞は、血液、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパ液、またはリンパ器官を含むいくつかの供給源から得ることができる。免疫細胞は、免疫系の細胞、例えば自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含む骨髄系細胞またはリンパ球系細胞である。他の例示的な細胞には、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性および多能性幹細胞などの幹細胞が含まれる。いくつかの局面では、細胞はヒト細胞である。処置されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離され、かつ/または対象から単離され凍結された初代細胞である。
【0257】
ある特定の態様では、免疫細胞は、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)または樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。ある態様では、標的細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞またはiPS細胞に由来する細胞、例えば、対象から生成され、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を変化させる(例えばそれに変異を誘導する)または操作するように操作され、例えば、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞または造血幹細胞に分化したiPS細胞である。
【0258】
いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えばT細胞集団全体、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分集団、例えば機能、活性化状態、成熟、分化能、増大、再循環、局在、および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の度合いにより定義されるものを含む。T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよび部分集団は中でも、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、中枢性メモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞である。ある特定の態様では、当技術分野において入手可能ないくつものT細胞系が、使用される場合がある。
【0259】
いくつかの態様では、方法は、対象から免疫細胞を単離する段階、それらを調製、処理、培養、および/または操作する段階を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製段階を含む。記載のように操作するための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば対象から得られたまたは対象に由来する試料から単離される場合がある。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする、もしくは細胞療法が投与されるであろう対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、処理、および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入の必要のあるヒトである。したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取された組織、液体、および他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理段階の結果として生じる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られる試料または処理された試料であることができる。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織、ならびに器官試料が、それらに由来する処理された試料を含めて含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0260】
いくつかの局面では、細胞が由来または単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物である、もしくはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。試料は、細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連して、自己および同種供給源からの試料を含む。
【0261】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製段階および/または親和性に基づかない細胞分離段階を含む。いくつかの例では、細胞が、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされて、例えば、望まれない成分が除去され、所望の成分が濃縮され、特定の試薬に感受性の細胞が溶解または除去される。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づき分離される。
【0262】
いくつかの例では、対象の循環血からの細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスにより得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、洗浄されて、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理段階に適した緩衝液または媒質中に細胞を入れる。いくつかの態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの局面では、洗浄段階は、タンジェント流濾過(TFF)により、製造業者の説明に従って成し遂げられる。いくつかの態様では、細胞は洗浄後に多様な生体適合性緩衝液中に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される。いくつかの態様では、方法は、赤血球を溶解し、PercollまたはFicoll勾配による遠心分離を行うことによる末梢血からの白血球の調製などの、密度に基づく細胞分離方法を含む。
【0263】
一態様では、免疫は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られた個体の循環血から得られた細胞である。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。血漿画分を除去するため、および適切な緩衝液もしくは媒質、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)中に細胞を入れるために、アフェレーシスによって収集された細胞が洗浄される場合があり、または洗浄溶液は、その後の処理段階のためにカルシウムを欠如し、かつマグネシウムを欠如する場合があり、もしくはすべてとはいわないまでも多くの二価陽イオンを欠如する場合がある。洗浄後、細胞は、多様な生体適合性緩衝液、例えば、Ca不含、Mg不含PBSなどの中に再懸濁される場合がある。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が、除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される場合がある。
【0264】
いくつかの態様では、単離方法は、1種または複数種の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の細胞中の発現または存在に基づく、異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のために、任意の公知の方法が使用される場合がある。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、分離は、いくつかの局面では、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーと一緒のインキュベーション、一般的にそれに続く洗浄段階、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離による、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離を含む。
【0265】
そのような分離段階は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、所望の集団以外の細胞により発現されるマーカーに基づいて分離が最も良好に行われるように、不均一な集団中の細胞型を特異的に特定する抗体が利用不能な場合に、負の選択は特に有用であることができる。分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現している細胞の100%の濃縮または除去を生じる必要はない。例えば、特定の種類の細胞、例えばマーカーを発現している細胞の正の選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、マーカーを発現していない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現している細胞などの特定の種類の細胞の負の選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、そのような細胞のすべての完全な除去をもたらす必要はない。
【0266】
いくつかの例では、複数ラウンドの分離段階が実施され、その際、1つの段階から正または負の選択をされた画分が、後続の正または負の選択などの別の分離段階に供される。いくつかの例では、それぞれが負の選択のための標的とされるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時発現している細胞を単一の分離段階で枯渇させることができる。同様に、複数の抗体または様々な細胞型に発現される結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型に同時に正の選択を行うことができる。
【0267】
いくつかの態様では、T細胞集団の1つまたは複数は、1つまたは複数の特定のマーカー、例えば表面マーカーについて陽性(マーカー+)である、もしくはそれを高レベル発現する(マーカーhigh)細胞、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性である(マーカー-)もしくはそれを比較的低レベルを発現する(マーカーlow)細胞が濃縮または枯渇されている。例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の部分集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカー、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞について陽性またはそれを高レベル発現している細胞は、正または負の選択技法により単離される。場合によっては、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(非メモリー細胞など)に存在しない、または比較的低レベルで発現されるが、T細胞のある特定の他の集団(メモリー細胞など)に存在する、または比較的高レベル発現されるマーカーである。一態様では、細胞(CD8+細胞、またはT細胞、例えばCD3+細胞など)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、および/もしくはCD62Lについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が濃縮されている(すなわち、正の選択をされている)、かつ/またはCD45RAについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が枯渇されている(例えば、それについて負の選択をされている)。いくつかの態様では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、および/またはIL7-Ra(CD127)について陽性であるまたはその高い表面レベルを発現している細胞が濃縮されているまたはそれを枯渇している。いくつかの例では、CD8+ T細胞は、CD45ROについて陽性(またはCD45RAについて陰性)およびCD62Lについて陽性の細胞が濃縮されている。例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して正の選択を行うことができる。
【0268】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞に発現されるマーカー、例えばCD14の負の選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+選択段階は、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分集団上に発現されるまたは比較的高い度合いで発現されるマーカーについて正の選択または負の選択により部分集団にさらに選別することができる。いくつかの態様では、CD8+細胞は、例えば、それぞれの部分集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択により、ナイーブ、中枢性メモリー、エフェクターメモリー、および/または中枢性メモリー幹細胞についてさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、有効性を増加させるために、例えば、投与後に長期生存、増大、および/または生着を改善するために実施され、それは、いくつかの局面ではそのような部分集団において特に堅固である。いくつかの態様では、TCMが濃縮されたCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を組み合わせることで、有効性がさらに高まる。
【0269】
いくつかの態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体などを使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮されているまたはそれを枯渇していることができる。いくつかの態様では、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞部分集団、例えば、中枢性メモリー(TCM)細胞について濃縮された部分集団である。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127について陽性またはその高い表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現しているまたは高度に発現している細胞についての負の選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現している細胞の枯渇、およびCD62Lを発現している細胞についての正の選択または濃縮により実施される。一局面では、中枢性メモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4の発現に基づき選択される細胞の負の画分から開始して実施され、それが、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択、ならびにCD62Lに基づく正の選択に供される。そのような選択は、いくつかの局面では、同時に実施され、他の局面では、どちらかの順序で順次に実施される。いくつかの局面では、CD8+細胞集団または部分集団を調製するのに使用されるCD4発現に基づく同じ選択段階はまた、CD4+細胞集団または部分集団を生成するために使用され、それにより、CD4に基づく分離からの正の画分および負の画分の両方が、任意で1つまたは複数のさらなる正または負の選択段階に続いて、方法のその後の段階において保持および使用される。
【0270】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することにより、ナイーブ、中枢性メモリー、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+ リンパ球は、標準的な方法により得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、中枢性メモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45ROである。一例では、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、正および/または負の選択のための細胞の分離を可能にするために磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。
【0271】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション段階は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または繁殖を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導するために、抗原曝露を模倣するために、ならびに/または遺伝子操作、例えば組み換え抗原受容体の導入のために細胞をプライミングするために設計された条件が含まれる。条件は、特定の媒質、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組み換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様では、刺激条件または刺激物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な1つまたは複数の作用物質、例えば、リガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを始動する、または開始する。そのような作用物質は、例えば、ビーズなどの固体支持体に結合した抗体、例えば、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的な抗体、例えば、抗CD3、抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数のサイトカインを含むことができる。任意で、増大方法は、培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する段階をさらに含む場合がある。いくつかの態様では、刺激物質は、IL-2および/またはIL-15、例えば、少なくとも約10ユニット/mLのIL-2濃度を含む。
【0272】
別の態様では、T細胞は、赤血球を溶解することおよび単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により、末梢血から単離される。あるいは、T細胞は、臍帯から単離することができる。任意の事象では、T細胞の特定の部分集団を正または負の選択技法によりさらに単離することができる。
【0273】
そのように単離された臍帯血単核細胞は、非限定的にCD34、CD8、CD14、CD19、およびCD56を含む、ある特定の抗原を発現している細胞を枯渇していることができる。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、抗体を含む生物学的試料、例えば腹水、物理的支持体に結合した抗体、細胞と結合した抗体を使用して成し遂げることができる。
【0274】
負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負の選択をされた細胞に独特な表面マーカーに対する抗体の組み合わせを使用して成し遂げることができる。好ましい方法は、負の選択をされた細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負磁気免疫接着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介する細胞選別および/または選択である。例えば、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0275】
正または負の選択により細胞の所望の集団を単離するために、細胞濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させることができる。ある特定の態様では、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積を顕著に減少させて(すなわち、細胞の濃度を増加させて)、細胞とビーズとの最大の接触を保証することが望ましい場合がある。例えば、一態様では、20億個/mlの細胞濃度が使用される。一態様では、10億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、細胞1億個/ml超が使用される。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個/mlの細胞濃度が使用される。なお別の態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万個/mlの細胞濃度を使用することができる。高濃度を使用することは、増加した細胞収量、細胞活性化、および細胞増大をもたらすことができる。
【0276】
T細胞はまた、単球の除去段階を必要としない洗浄段階の後に凍結することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、凍結およびその後の解凍段階は、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後で、細胞が凍結溶液中に懸濁される場合がある。多数の凍結溶液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、この状況で有用であろうものの、非限定的な例では、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の適切な細胞凍結媒を使用することを伴う。次いで細胞は、1℃/分の速度で-80℃に凍結され、液体窒素保存タンクの気相中で保管される。制御凍結の他の方法および-20℃または液体窒素中での即時の非制御凍結が使用される場合もある。
【0277】
一態様では、T細胞は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、T細胞の精製集団、およびT細胞株などの細胞の集団中に含まれる。別の態様では、末梢血単核細胞は、T細胞集団を含む。なお別の態様では、精製T細胞は、T細胞集団を含む。
【0278】
ある特定の態様では、制御性T細胞(Treg)は、試料から単離することができる。試料は、臍帯血または末梢血を含むことができるが、それに限定されるわけではない。ある特定の態様では、Tregは、フローサイトメトリー選別によって単離される。試料は、当技術分野において公知の任意の手段により単離前にTregが濃縮されることができる。単離されたTregを、凍結保存し、かつ/または使用前に増大させることができる。Tregを単離するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号、および同第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号に記載されており、それらの内容は、その全体で本明細書に組み入れられる。
【0279】
F. 処置の方法
本明細書に記載される改変された免疫細胞(例えば、T細胞)は、免疫療法のための組成物に含まれ得る。組成物は、薬学的組成物を含み得、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。改変されたT細胞を含む薬学的組成物の治療有効量が投与され得る。
【0280】
一局面では、本発明は、対象における疾患または病態を処置する方法であって、それを必要とする対象に本発明の改変された細胞(例えば、T細胞)の有効量を投与する工程を含む方法を含む。別の局面では、本発明は、対象における疾患または病態を処置する方法であって、それを必要とする対象に本発明の改変された細胞(例えば、T細胞)の有効量を含む薬学的組成物を投与する工程を含む方法を含む。別の局面では、本発明は、養子細胞移入療法のための方法であって、それを必要とする対象に本発明の改変された細胞(例えば、T細胞)の有効量を投与する工程を含む方法を含む。
【0281】
養子細胞療法のための免疫細胞の投与のための方法は、公知であり、提供される方法および組成物と共に使用される場合がある。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになる対象もしくはそのような対象に由来する試料から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、自己移入によって実施される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、処置を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および処理の後に同じ対象に投与される。
【0282】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになる、または最終的に受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象から単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、同種移入によって実施される。そのような態様では、次いで細胞は、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似である。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたは上位タイプを発現する。
【0283】
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に疾患または状態、例えば、腫瘍を標的とする治療剤により処置されている。いくつかの局面では、対象は、他の治療剤に対して抗療性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後に持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
【0284】
いくつかの態様では、対象は、他の治療剤に応答性であり、治療剤による処置は、疾病負荷を低減する。いくつかの局面では、対象は、最初は治療剤に応答性であるが、時間が経つにつれて疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は、再発の危険性がある、例えば再発の高い危険性があると決定され、したがって細胞は、例えば、再発の可能性を低減するまたは再発を防止するために、予防的に投与される。いくつかの局面では、対象は、別の治療剤による事前の処置を受けたことがない。
【0285】
いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後で、持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
【0286】
本発明の改変された免疫細胞を、動物、好ましくは哺乳動物、なおより好ましくはヒトに投与して、がんを処置することができる。加えて、本発明の細胞は、疾患を処置または軽減することが望ましい場合に、がんに関係する任意の状態の処置、特に腫瘍細胞に対する細胞媒介免疫応答のために使用することができる。本発明の改変された細胞または薬学的組成物により処置されるべきがんの種類には、がん腫、芽腫、および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ系腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに悪性疾患、例えば、肉腫、がん腫、および黒色腫が含まれる。他の例示的ながんには、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん、甲状腺がんなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。がんは、非固形腫瘍(血液腫瘍など)または固形腫瘍であり得る。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんもまた含まれる。一態様では、がんは固形腫瘍または血液学的腫瘍である。一態様では、がんは癌種である。一態様では、がんは肉腫である。一態様では、がんは白血病である。一態様では、がんは固形腫瘍である。
【0287】
固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であることができる。異なる種類の固形腫瘍が、それら(肉腫、がん腫、およびリンパ腫など)を形成する細胞の種類にちなんで名付けられる。肉腫およびがん腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、リンパ系腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、甲状腺髄様がん、乳頭様甲状腺がん、褐色細胞腫、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞腫、胆管がん、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱がん、黒色腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合性神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移など)が含まれる。いくつかの態様では、がんは星状細胞腫である。いくつかの態様では、がんは高悪性度星状細胞腫である。いくつかの態様では、がんは前立腺がんである。いくつかの態様では、がんは転移性去勢抵抗性前立腺がんである。
【0288】
本明細書に開示される方法による治療の対象となるがん腫には、食道がん、肝細胞がん、基底細胞がん(皮膚がんの一形態)、扁平上皮がん(様々な組織)、移行上皮がん(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱がん、気管支原性がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む肺がん、副腎皮質がん、甲状腺がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、腎細胞がん、非浸潤性乳管がんまたは胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、骨原性がん、上皮がん、および上咽頭がんが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0289】
本明細書に開示の方法による治療の対象となる肉腫には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および他の軟組織肉腫が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0290】
ある特定の例示的な態様では、本発明の改変された免疫細胞は、骨髄腫、または骨髄腫に関連する病態を処置するために使用される。骨髄腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、孤立性形質細胞腫、多発性孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫)、アミロイドーシス、および多発性骨髄腫を含む。一態様では、本開示の方法は、多発性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性骨髄腫を処置するために使用される。
【0291】
ある特定の例示的な態様では、本発明の改変された免疫細胞は、黒色腫、または黒色腫に関連する病態を処置するために使用される。黒色腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、または皮膚の黒色腫(例えば、皮膚黒色腫、眼黒色腫、外陰部黒色腫、膣黒色腫、直腸黒色腫)を含む。一態様では、本開示の方法は、皮膚黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性黒色腫を処置するために使用される。
【0292】
さらに他の例示的な態様では、本発明の改変された免疫細胞は、肉腫、または肉腫に関連する病態を処置するために使用される。肉腫またはそれに関連する病態の例は、非限定的に、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、骨肉腫、多形肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫を含む。一態様では、本開示の方法は、滑膜肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液状/円形細胞脂肪肉腫、分化型/脱分化型脂肪肉腫、および多形脂肪肉腫などの脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液状/円形細胞脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性肉腫を処置するために使用される。
【0293】
投与されるべき本発明の細胞は、治療を受けている対象に対して自己であり得る。
【0294】
本発明の細胞の投与は、当業者に公知の任意の好都合な方法で実施される場合がある。本発明の細胞は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、埋め込みまたは移植により対象に投与される場合がある。本明細書に記載される組成物は、患者に経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与される場合がある。他の例では、本発明の細胞は、対象における炎症部位、対象における局所疾患部位、リンパ節、器官、腫瘍などに直接注射される。
【0295】
いくつかの態様では、細胞は、所望の投薬量で投与され、投薬量は、いくつかの局面では、細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様では細胞の合計数(またはkg体重あたりの数)およびCD4+対CD8+の比のように個別の集団またはサブタイプの所望の比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投薬量は、個別の集団における、または個別の細胞型の細胞の所望の合計数(またはkg体重あたりの数)に基づく。いくつかの態様では、投薬量は、所望の総細胞数、所望の比、および個別の集団中の所望の細胞合計数などの、そのような特徴の組み合わせに基づく。
【0296】
いくつかの態様では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、所望の用量の総細胞、例えば所望の用量のT細胞の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりの所望の細胞数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、最小細胞数または単位体重あたりの最小細胞数である、またはそれを超える。いくつかの局面では、所望の用量で投与される総細胞の中で、個別の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(CD4+対CD8+の比など)でまたはそれ近くで、例えば、そのような比のある特定の許容される差異または誤差内で存在する。
【0297】
いくつかの態様では、細胞は、細胞の個別の集団またはサブタイプのうち1つまたは複数の所望の用量、例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりのそのような細胞の所望の数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数、または単位体重あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数である、またはそれを超える。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプもしくは部分集団の1つもしくは複数、例えば、それぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+細胞対CD8+細胞の所望の比に基づき、かつ/またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0298】
ある特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個別の集団は、対象に、約100万~約1000億個の細胞の範囲で、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)で、場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値で投与される。
【0299】
いくつかの態様では、総細胞の用量および/または細胞の個別の部分集団の用量は、細胞1×105個または約1×105個/kg~約1×1011個/kg、細胞104個~1011個または約1011個/キログラム(kg)体重、例えば、細胞105~106個/kg体重の範囲内であり、例えば、細胞1×105個または約1×105個/kg、細胞1.5×105個/kg、細胞2×105個/kg、または細胞1×106個/kg体重である。例えば、いくつかの態様では、細胞は、T細胞104個または約104個~109個または約109個/キログラム(kg)体重、例えば、T細胞105個~106個/kg体重で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、T細胞1×105個もしくは約1×105個/kg、T細胞1.5×105個/kg、T細胞2×105個/kg、またはT細胞1×106個/kg体重で投与される。他の例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した、改変された細胞の投薬量範囲は、細胞約1×105個/kg~細胞約1×106個/kg、細胞約1×106個/kg~細胞約1×107個/kg、細胞約1×107個/kg~細胞約1×108個/kg、細胞約1×108個/kg~細胞約1×109個/kg、細胞約1×109個/kg~細胞約1×1010個/kg、細胞約1×1010個/kg~細胞約1×1011個/kgを含むが、それに限定されるわけではない。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×108個/kgである。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×107個/kgである。他の態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×107個~総細胞約5×107個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×108個~総細胞約5×108個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1.4×107個~総細胞約1.1×109個である。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、総細胞約7×109個である。
【0300】
いくつかの態様では、細胞は、104または約104~109または約109個/キログラム(kg)体重のCD4+および/またはCD8+細胞、例えば、105~106個/kg体重のCD4+および/またはCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、1×105もしくは約1×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、1.5×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、2×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、または1×106個/kg体重のCD4+および/もしくはCD8+細胞で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個を超える、もしくは少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD8+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のT細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のT細胞、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD4+細胞、および/または約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。
【0301】
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその耐容される範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であることができる、または比の範囲であることができ、例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、5:1もしくは約5:1~5:1もしくは約5:1(または約1:5よりも大きく、約5:1よりも小さい)、または1:3もしくは約1:3~3:1もしくは約3:1(または約1:3よりも大きく、約3:1よりも小さい)、例えば、2:1もしくは約2:1~1:5もしくは約1:5(または約1:5よりも大きく、約2:1よりも小さい、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、約1:1.9、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、もしくは約1:5である。いくつかの局面では、耐容される差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0302】
いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、それを必要とする対象に単回用量または複数回用量で投与される。いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、複数回用量で、例えば、週1回または7日毎、2週1回または14日毎、3週1回または21日毎、4週1回または28日毎に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量が、それを必要とする対象に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量は、急速静脈内注入によりそれを必要とする対象に投与される。
【0303】
疾患の予防または治療に適した投薬量は、処置されるべき疾患の種類、細胞もしくは組み換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的それとも治療目的で投与されるか、事前の療法、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医師の判断に依存する場合がある。組成物および細胞は、いくつかの態様では、対象に1回でまたは一連の処置にわたり適宜投与される。
【0304】
いくつかの態様では、細胞は、組み合わせ処置の部分として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤もしくは治療剤と同時にまたは任意の順序で順次に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時にまたは任意の順序で順次に共投与される。いくつかの状況では、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加的な治療剤の効果を高めるように十分に近い時間で別の療法と共に、またはその逆で共投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な作用物質は、例えば持続性を高めるための、IL-2などのサイトカインを含む。いくつかの態様では、この方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0305】
ある特定の態様では、本発明の改変された細胞(例えば、CARを含む改変された細胞)は、免疫チェックポイントの阻害剤と組み合わせて対象に投与され得る。免疫チェックポイントの例は、CTLA-4、PD-1、およびTIM-3を含むが、それらに限定されない。抗体を使用して、免疫チェックポイントを阻害してもよい(例えば、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、または抗TIM-3抗体)。例えば、改変された細胞は、例えば、PD-1(プログラム死1タンパク質)を標的とする抗体または抗体フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗PD-1抗体の例は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、以前はランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、およびニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538、OPDIVA(登録商標))またはその抗原結合フラグメントを含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、改変された細胞は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗PD-L1抗体の例は、BMS-936559、MPDL3280A(TECENTRIQ(登録商標)、アテゾリズマブ)、およびMEDI4736(デュルバルマブ、イミフィンジ)を含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、改変された細胞は、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合フラグメントと組み合わせて投与され得る。抗CTLA-4抗体の例は、イピリムマブ(商標名Yervoy)を含むが、それに限定されない。低分子、siRNA、miRNAおよびCRISPR系を非限定的に含む他のタイプの免疫チェックポイントモジュレーターを使用してもよい。免疫チェックポイントモジュレーターは、CARを含む改変された細胞の前に、その後に、またはそれと同時に投与され得る。ある特定の態様では、免疫チェックポイントモジュレーターを含む併用処置は、本発明の改変された細胞を含む療法の治療有効性を高め得る。
【0306】
細胞の投与に続いて、いくつかの態様では、操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば、多数の公知の方法のいずれかによって測定される。評価するためのパラメーターは、例えば画像化によるインビボ、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボの、抗原への操作されたまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の特異的結合を含む。ある特定の態様では、操作された細胞の標的細胞を破壊する能力を、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載されている細胞傷害アッセイなどの当技術分野において公知の任意の適切な方法を使用して測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD 107a、IFNγ、IL-2およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、全身腫瘍組織量または腫瘍負荷量の減少などの臨床結果を評価することによって測定される。
【0307】
ある特定の態様では、対象に二次的処置が提供される。二次的処置は、化学療法、放射線照射、外科手術および薬物治療を含むが、それらに限定されない。
【0308】
いくつかの態様では、CAR T細胞療法の前に、対象に条件づけ療法を投与することができる。いくつかの態様では、条件づけ療法は、シクロホスファミドの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、条件づけ療法は、フルダラビンの有効量を対象に投与することを含む。好ましい態様では、条件づけ療法は、シクロホスファミドとフルダラビンの組み合わせの有効量を対象に投与することを含む。CAR T細胞療法の前の条件づけ療法の投与は、CAR T細胞療法の有効性を高め得る。T細胞療法のための患者を条件づける方法は、米国特許第9,855,298号に記載されており、それは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0309】
いくつかの態様では、本開示の特定の投薬レジメンは、改変されたT細胞の投与前にリンパ球枯渇工程を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む。
【0310】
いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドの投与を含む。例示的な態様では、シクロホスファミドの用量は、約300mg/m2/日である。いくつかの態様では、リンパ球枯渇工程は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、フルダラビンの用量は、約30mg/m2/日である。
【0311】
一部の態様では、リンパ球枯渇工程は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドおよび約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇工程は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび約30mg/m2/日の用量のフルダラビンの投与を含む。
【0312】
例示的な態様では、シクロホスファミドの投薬は、3日間にわたる300mg/m2/日であり、フルダラビンの投薬は、3日間にわたる30mg/m2/日である。
【0313】
リンパ球枯渇化学療法の投薬は、0日目のT細胞(例えば、CAR-T、TCR-T、改変されたT細胞など)注入に対して、-6日目~-4日目(-1日枠あり、すなわち、-7日目~-5日目に投薬)で計画され得る。
【0314】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与の3日前に静脈内注入によって300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与前の3日間静脈内注入によって300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。
【0315】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0316】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミドおよび約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミドおよび30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0317】
本発明の細胞は、適切な前臨床および臨床の実験および試験で決定されるべき投与量および経路かつ回数で投与することができる。細胞組成物は、これらの範囲内の投与量で複数回投与され得る。本発明の細胞の投与は、当業者によって決定されるような所望の疾患または病態を処置するのに有用な他の方法と併用してもよい。
【0318】
CAR T細胞の注入後の有害作用の1つが、サイトカイン放出症候群(CRS)として知られている免疫活性化の開始であることが当技術分野において公知である。CRSは、上昇した炎症性サイトカインを招く免疫活性化である。CRSは、公知のオンターゲット毒性であり、その発生は、有効性と相関する可能性が高い。臨床尺度および検査尺度は、軽度のCRS(全身症状および/またはグレード2の臓器毒性)~重度のCRS(sCRS;グレード≧3の臓器毒性、積極的な臨床介入および/または潜在的に生死にかかわる)の範囲である。臨床特徴は、高熱、倦怠感、疲労、筋肉痛、悪心、食欲不振、頻脈/低血圧、毛細血管漏出、心機能不全、腎機能障害、肝不全、および播種性血管内凝固を含む。インターフェロン-ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL-10およびIL-6を含むサイトカインの劇的な上昇が、CAR T細胞注入後に示されている。1つのCRSの徴候は、IL-6(重度上昇)、IFN-ガンマ、TNF-アルファ(中度)およびIL-2(軽度)を含むサイトカインの上昇である。また、フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む炎症の臨床利用可能なマーカーの上昇も、CRS症候群と相関することが観察されている。CRSの存在は、一般的に、養子移入された細胞の増大および進行性免疫活性化と相関する。高い腫瘍量を有する患者は、より大きいsCRSを経験するので、CRSの重症度は注入時の疾病負荷により決まることが実証されている。
【0319】
したがって、本発明は、CRSの診断後に、操作された細胞(例えば、CAR T細胞)の抗腫瘍有効性を弱めずに、制御されない炎症の生理的症状を緩和するために適したCRS管理戦略を提供する。CRS管理戦略は、当技術分野において公知である。例えば、全身コルチコステロイドは、最初の抗腫瘍応答を損なわずに、sCRS(例えば、グレード3のCRS)の症状を急速に後退させるために投与される場合がある。
【0320】
いくつかの態様では、抗IL-6R抗体が投与される場合がある。抗IL-6R抗体の例は、米国食品医薬品局に承認された、アトリズマブとしても知られるモノクローナル抗体トシリズマブである(ActemraまたはRoActemraとして市販されている)。トシリズマブは、インターロイキン-6受容体(IL-6R)に対するヒト化モノクローナル抗体である。トシリズマブの投与は、CRSのほぼ即時の後退を実証した。
【0321】
CRSは、一般的に、観察される症候群の重症度に基づき管理され、介入はそのように個別化される。CRSの管理の決定は、単に臨床検査値だけではなく、臨床徴候および症状ならびに介入に対する応答に基づき得る。
【0322】
軽症例~中等症例は、一般的に、症状の十分な緩和のために必要に応じて輸液療法、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および抗ヒスタミン薬を用いた症状管理で処置される。より重症の例は、任意の程度の血行動態不安定を有する患者を含み;任意の血行動態不安定では、トシリズマブの投与が推奨される。CRSの第一選択管理は、いくつかの実施形態では、表示用量8mg/kg(800mg/回を超えない)の60分間にわたるIVのトシリズマブであり得;トシリズマブは反復Q8時間であることができる。トシリズマブの初回用量に対する応答が最適以下である場合、トシリズマブの追加的な用量が考慮される場合がある。トシリズマブは、単独で、またはコルチコステロイド療法と組み合わせて投与することができる。トシリズマブに対して12~18時間で不十分な臨床改善または応答不良の、継続性または進行性のCRS症状を有する患者は、高用量コルチコステロイド療法、一般的にヒドロコルチゾン100mg IVまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgで処置される場合がある。より重症の血行動態不安定またはより重症の呼吸器症状を有する患者では、患者は、CRSのクールの初期に高用量コルチコステロイド療法が投与される場合がある。CRS管理のガイダンスは、公表された基準に基づき得る(Lee et al. (2019) Biol Blood Marrow Transplant, doi.org/10.1016/j.bbmt.2018.12.758; Neelapu et al. (2018) Nat Rev Clin Oncology, 15:47; Teachey et al. (2016) Cancer Discov, 6(6):664-679)。
【0323】
CRSの臨床徴候と同時発生的に、マクロファージ活性化症候群(MAS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)に一致する特徴が、CAR-T療法で処置された患者で観察されている(Henter, 2007)。MASは、CRSから起こる免疫活性化に対する反応のように見え、したがって、CRSの徴候とみなすべきである。MASは、HLH(同じく免疫刺激に対する反応)と類似している。MASの臨床的症候群は、高グレードの非弛張性の発熱、3系統のうち少なくとも2つを冒す血球減少、および肝脾腫によって特徴付けられる。これは、高い血清フェリチン、可溶性インターロイキン-2受容体、およびトリグリセリド、ならびに循環ナチュラルキラー(NK)活性の減少に関連する。
【0324】
本発明のCARを含む改変された免疫細胞は、本明細書に記載されるような処置の方法において使用され得る。一局面では、本発明は、本明細書に開示される改変された免疫細胞または前駆細胞のいずれか1つを対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法を含む。本発明のさらに別の局面は、本明細書に開示される方法のいずれか1つによって生成される改変された免疫細胞または前駆細胞を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法を含む。
【0325】
本発明の一局面は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法を提供する。
【0326】
別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原に結合可能な第1のキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)と前立腺特異的膜抗原に結合可能な第2のキメラ抗原受容体(CAR)(PSMA-CAR)とを含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法であって、第1のCARおよび第2のCARが各々、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、方法を提供する。
【0327】
本発明の別の局面は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法を提供する。
【0328】
本発明の別の局面は、本明細書において想定される改変されたT細胞のいずれかの有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における前立腺がんを処置する方法を提供する。
【0329】
さらに別の局面は、前立腺幹細胞抗原に結合可能な第1のキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)と前立腺特異的膜抗原に結合可能な第2のキメラ抗原受容体(CAR)(PSMA-CAR)とを含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、第1のCARおよび第2のCARが各々、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、方法を含む。
【0330】
また、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に結合可能な抗原結合ドメインと前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な抗原結合ドメインとを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法も提供される。
【0331】
別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)およびドミナントネガティブ型受容体を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法を提供する。
【0332】
別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)およびスイッチ受容体を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法を提供する。
【0333】
別の局面では、本発明は、前立腺幹細胞抗原に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)(PSCA-CAR)および二重特異性抗体を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における転移性去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、改変されたT細胞が二重特異性抗体を分泌する、方法を提供する。
【0334】
G. 免疫細胞の増大
CARを発現させる細胞改変の前か後かを問わず、細胞を、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載されているような方法を使用して、活性化し、その数を増大させることができる。例えば、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞表面の共刺激性分子を刺激するリガンドが付着している表面との接触により増大され得る。特に、T細胞集団は、表面に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと一緒のプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって刺激され得る。T細胞表面のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞は、T細胞の増殖を刺激するために適した条件下で抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。抗CD28抗体の例は、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)を含み、これらを本発明において使用することができるが、当技術分野において公知の他の方法および試薬も同様に使用することができる(例えば、ten Berge et al., Transplant Proc. (1998) 30(8): 3975-3977;Haanen et al., J. Exp. Med. (1999) 190(9): 1319-1328;およびGarland et al., J. Immunol. Methods (1999) 227(1-2): 53-63を参照のこと)。
【0335】
本明細書に開示される方法によるT細胞の増大は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍またはそれ以上、およびそれらの間の任意およびすべての整数(whole integer)および分数(partial integer)倍にすることができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲で増大する。
【0336】
培養に続き、別の培養装置に細胞を継代する前に、T細胞を、培養装置内の細胞培地中で、一定期間または細胞がコンフルエンスに達するか最適な継代のための高い細胞密度に達するまで、インキュベートすることができる。培養装置は、細胞をインビトロ培養するために一般に使用される任意の培養装置であることができる。好ましくは、コンフルエンスのレベルは、別の培養装置に細胞を継代する前に70%またはそれ以上である。より好ましくは、コンフルエンスのレベルは、90%またはそれ以上である。期間は、インビトロ細胞培養に適した任意の時間であることができる。T細胞培地は、T細胞の培養中、任意の時間で交換され得る。好ましくは、T細胞培地は、約2~3日毎に交換される。次いで、T細胞を培養装置から回収し、その後、T細胞を直ちに使用するか、後で使用するために凍結保存して貯蔵することができる。一態様では、本発明は、増大したT細胞を凍結保存することを含む。凍結保存されたT細胞は、T細胞中に核酸を導入する前に融解される。
【0337】
別の態様では、該方法は、T細胞を単離する工程およびT細胞を増大させる工程を含む。別の態様では、本発明はさらに、増大の前にT細胞を凍結保存する工程を含む。さらに別の態様では、凍結保存されたT細胞は、キメラ膜タンパク質をコードするRNAをエレクトロポレーションするために融解される。
【0338】
細胞をエクスビボ増大させるための別の手順は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。米国特許第5,199,942号に記載されるような増大は、本明細書に記載される他の増大法の代替または追加であることができる。簡潔に述べると、T細胞のエクスビボ培養および増大は、米国特許第5,199,942号に記載されるものなどの細胞増殖因子または他の因子、例えばflt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドの添加を含む。一態様では、T細胞を増大させることは、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子と共にT細胞を培養することを含む。
【0339】
本明細書に記載されるような培養工程(本明細書に記載されるような作用物質との接触またはエレクトロポレーション後)は、非常に短く、例えば、24時間未満、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23時間であることができる。本明細書にさらに記載されるような培養工程(本明細書に記載されるような作用物質との接触)は、より長く、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれを超える日数であることができる。
【0340】
培養細胞を記述するために様々な用語が使用される。細胞培養物は、一般に、生きた生物から採取され、制御された条件下で成長させた細胞のことを指す。初代細胞培養物は、生物から直接採取された細胞、組織または器官の培養物であって、最初の植え継ぎ前の培養物である。細胞の成長および/または分裂を容易にする条件下で細胞が成長培地中に入れられた場合に、細胞は培養で増大され、より大きい細胞集団をもたらす。細胞が培養で増大される場合、細胞の増殖速度は、典型的には、細胞の数が倍加するのに必要な時間、別の言い方で倍加時間として知られる時間によって測定される。
【0341】
植え継ぎの各ラウンドは、継代と称される。細胞が植え継がれたとき、それらの細胞は継代されたと称される。特定の細胞集団または細胞株は、時に、継代された回数によって称される、または特徴付けられる。例えば、10回継代された培養細胞集団は、P10培養物と称され得る。初代培養物、すなわち、組織から細胞を単離した後の最初の培養物は、P0と呼ばれる。1回目の植え継ぎの後、細胞は二次培養物(P1または継代1)と記述される。2回目の植え継ぎの後、細胞は、三次培養物(P2または継代2)になる(等々)。継代期間の間に多くの集団倍加があり得ることが、当業者によって理解されるであろう;それゆえ、培養物の集団倍加数は、継代数よりも大きい。継代と継代の間の細胞の増大(すなわち、集団倍加数)は、非限定的に播種密度、基質、培地および継代間隔を含む多くの要因に依存する。
【0342】
一態様では、細胞は、数時間(約3時間)~約14日間またはその間の任意の時間整数値の間、培養され得る。T細胞培養に適した条件は、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-ガンマ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF-ベータおよびTNF-αまたは当業者に公知の細胞の成長のための任意の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza))を含む。細胞の成長のための他の添加剤は、界面活性剤、プラスマネート(plasmanate)、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤を含むが、それらに限定されない。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、無血清であるか適切な量の血清(または血漿)もしくは規定のホルモン群ならびに/またはT細胞の成長および増大に十分な量のサイトカインが補充された、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20、Optimizerを含むことができる。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物中にのみ含まれ、対象に注入されるべき細胞の培養物中には含まれない。標的細胞は、成長を支援するために必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)下で維持される。
【0343】
T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を共刺激することができる作用物質を含み得る。例えば、CD3を刺激することができる作用物質は、CD3に対する抗体であり、CD28を刺激することができる作用物質は、CD28に対する抗体である。本明細書に開示される方法によって単離される細胞は、およそ10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれ以上増大させることができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲、またはそれ以上増大する。一態様では、ヒト制御性T細胞は、抗CD3抗体で被覆されたKT64.86人工抗原提示細胞(aAPC)を介して増大される。T細胞を増大および活性化するための方法は、米国特許第7,754,482号、8,722,400号および9,555,105号に見いだすことができ、それらの内容は、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0344】
一態様では、T細胞を増大させる方法はさらに、増大されたT細胞をさらなる適用のために単離する工程を含むことができる。別の態様では、増大させる方法はさらに、それに続く増大されたT細胞のエレクトロポレーションを培養前に含むことができる。後続のエレクトロポレーションは、核酸を用いて、増大されたT細胞を形質導入すること、増大されたT細胞にトランスフェクションすること、または増大されたT細胞にエレクトロポレーションすることなど、増大されたT細胞集団に、作用物質をコードする核酸を導入することを含んでもよく、該作用物質が、T細胞をさらに刺激する。作用物質は、さらなる増大、エフェクター機能または別のT細胞機能を刺激するなどによって、T細胞を刺激し得る。
【0345】
H. 改変された免疫細胞を産生する方法
本開示は、腫瘍免疫療法、例えば、養子免疫療法のための本発明の改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、T細胞)を産生または生成するための方法を提供する。
【0346】
いくつかの態様では、CARは、発現ベクターによって細胞に導入される。本発明のCARをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、本明細書に提供される。適切な発現ベクターは、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルス、トランスポゾン媒介ベクターを非限定的に含むネイキッドDNA、例えばSleeping Beauty、PiggybakおよびPhi31などのインテグラーゼを含む。いくつかの他の適切な発現ベクターは、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびレトロウイルス発現ベクターを含む。
【0347】
ある特定の態様では、CARをコードする核酸は、ウイルス形質導入を介して細胞に導入される。ある特定の態様では、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターと接触させる工程を含む。ある特定の態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。ある特定の態様では、AAVベクターは、AAV6に由来する5'ITRおよび3'ITRを含む。ある特定の態様では、AAVベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。ある特定の態様では、AAVベクターは、ポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ある特定の態様では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリA配列である。
【0348】
アデノウイルス発現ベクターは、アデノウイルスに基づき、ゲノムDNA内への組み込みについて低い容量を有するが、宿主細胞へのトランスフェクションについて高い効率を有する。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングを支援するために、かつ(b)宿主細胞においてCARを最終的に発現させるために十分なアデノウイルス配列を含有する。いくつかの態様では、アデノウイルスゲノムは、36kbの直鎖状二本鎖DNAであり、本発明の発現ベクターを作製するために、そこに外来DNA配列(例えば、CARをコードする核酸)を挿入して、アデノウイルスDNAの大型片と置換してもよい(例えば、Danthinne and Imperiale, Gene Therapy (2000) 7(20): 1707-1714を参照のこと)。
【0349】
別の発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づき、アデノウイルス共役系を利用する。このAAV発現ベクターは、宿主ゲノム内への高い組み込み頻度を有する。このベクターは、非分裂細胞に感染することができ、したがって、例えば組織培養またはインビボで哺乳動物細胞中に遺伝子を送達するのに役立つ。AAVベクターは、感染度について広い宿主範囲を有する。AAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
【0350】
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノム内への組み込み、大量の外来遺伝物質の送達、広域の種および細胞型への感染、ならびに特別な細胞株へのパッケージングが可能である。レトロウイルスベクターは、核酸(例えば、CARをコードする核酸)をウイルスゲノム内のある特定の位置に挿入して、複製欠損のウイルスを産生することによって構築される。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することができるが、CARの組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする。
【0351】
レンチウイルスベクターは、レンチウイルスに由来し、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて調節機能または構造的機能を有する他の遺伝子を含有する、複合レトロウイルスである(例えば、米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照のこと)。レンチウイルスのいくつかの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含む。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重減弱化することによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失されて、ベクターが生物学的に安全になる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染可能であり、例えばCARをコードする核酸の、インビボおよびエクスビボの両方の遺伝子移入および発現に使用することができる(例えば、米国特許第5,994,136号を参照のこと)。
【0352】
本開示の核酸を含む発現ベクターは、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞内に導入することができる。発現ベクターは、所望であればトランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、発現ベクターは、融合、エレクトロポレーション、バイオリスティクス、トランスフェクション、リポフェクションなどによって導入され得る。宿主細胞は、発現ベクターの導入前に培養で成長および増大され、続いてベクターの導入および組み込みに適した処理が行われ得る。次いで、宿主細胞が増大され、ベクター中に存在するマーカーによりスクリーニングされ得る。使用され得る様々なマーカーが当技術分野において公知であり、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性などを含み得る。本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの態様では、宿主細胞は、免疫細胞またはその前駆体、例えば、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞である。
【0353】
本発明はまた、本開示のCARを含みかつそれを安定的に発現する、遺伝子操作された細胞も提供する。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、治療的に関連する子孫を生じさせることが可能な遺伝子操作された、Tリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、中枢性メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、およびマクロファージである。ある特定の態様では、遺伝子操作された細胞は、自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、T細胞消耗に抵抗性である。
【0354】
改変された細胞(例えば、CARを含む)は、本開示の核酸を含む発現ベクターを宿主細胞に安定的にトランスフェクションすることによって産生され得る。本開示の改変された細胞を生成するための追加の方法は、非限定的に、化学的形質転換法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/または陽イオン性ポリマーを使用する)、非化学的形質転換法(例えば、エレクトロポレーション、光形質転換、遺伝子電気移入および/または流体力学的送達)および/または粒子に基づく方法(例えば、遺伝子銃を使用するインペールフェクションおよび/またはマグネトフェクション)を含む。本開示のCARを発現するトランスフェクションされた細胞は、エクスビボで増大され得る。
【0355】
宿主細胞中に発現ベクターを導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照されたい。宿主細胞中に発現ベクターを導入するための化学的方法は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベース系を含む。
【0356】
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手することができ;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手してもよい。脂質のクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール溶液の原液は、約-20℃で貯蔵することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので唯一の溶媒として使用され得る。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される多様な単一および多重膜脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁させると自然に形成される。閉鎖構造の形成前に、脂質成分は自己再構成を受け、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。また、溶液状態で通常の小胞構造と異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとるか、または単に脂質分子の非均一凝集体として存在し得る。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想定される。
【0357】
外因性核酸を宿主細胞中に導入するために使用される方法か、それ以外の本発明の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法かを問わず、宿主細胞中の核酸の存在を確認するために多様なアッセイが行われ得る。そのようなアッセイは、例えば、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの当業者に周知の分子生物学的アッセイ;特定のペプチドの存在または非存在を検出するなどの生化学的アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によるもの、または本発明の範囲内に入る作用物質を特定するための本明細書に記載されるアッセイによるものを含む。
【0358】
一態様では、宿主細胞中に導入される核酸は、RNAである。別の態様では、RNAは、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成された鋳型を使用するインビトロ転写によって産生され得る。任意の供給源からの関心対象のDNAを、PCRによって、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用して、インビトロmRNA合成のための鋳型に直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または任意の他の適切なDNA供給源であり得る。
【0359】
PCRを使用して、その後に細胞中に導入されるmRNAのインビトロ転写のための鋳型を生成してもよい。PCRを行うための方法は、当技術分野において周知である。PCRにおいて使用するためのプライマーは、PCRのための鋳型として使用されるべきDNA領域と実質的に相補的な領域を有するように設計される。「実質的に相補的な」は、本明細書において使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分またはすべてが相補的なヌクレオチド配列のことを指す。実質的に相補的な配列は、PCRのために使用されるアニーリング条件下で目的となるDNA標的とアニールまたはハイブリダイズすることが可能である。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分と実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーは、5' UTRおよび3' UTRを含む、細胞において通常転写される遺伝子部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。プライマーはまた、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するように設計され得る。一態様では、プライマーは、5' UTRおよび3' UTRのすべてまたは部分を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野において周知の合成方法により生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の上流であるDNA鋳型上のヌクレオチドと実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「上流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列の5位を指すために使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の下流である二本鎖DNA鋳型と実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「下流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるべきDNA配列の3'位を指すために使用される。
【0360】
RNAの安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用され得る。RNAは、好ましくは5' UTRおよび3' UTRを有する。一態様では、5' UTRは、ゼロ~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加されるべき5' UTRおよび3' UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用プライマーを設計することを非限定的に含め、異なる方法によって変更することができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5'UTRおよび3'UTRの長さを改変することができる。
【0361】
5' UTRおよび3' UTRは、関心対象の遺伝子についての天然に存在する内因性5' UTRおよび3' UTRであることができる。あるいは、関心対象の遺伝子に内因性でないUTR配列を、フォワードプライマーおよびリバースプライマー中にUTR配列を組み込むことによって、または鋳型の任意の他の改変によって付加することができる。関心対象の遺伝子に内因性でないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するために有用であることができる。例えば、3' UTR配列中のAUに富むエレメントは、mRNAの安定性を減少させ得ることが知られている。それゆえ、転写されたRNAの安定性を当技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて増加させるように、3' UTRを選択または設計することができる。
【0362】
一態様では、5' UTRは、内因性遺伝子のKozak配列を含有することができる。あるいは、関心対象の遺伝子に内因性でない5' UTRが上記のようにPCRによって付加される場合、5' UTR配列を付加することによりコンセンサスKozak配列を再設計することができる。Kozak配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳効率を増加させることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAにとって必要であるとは思われない。多くのmRNAにとってのKozak配列の必要性は、当技術分野において公知である。他の態様では、5' UTRは、RNAゲノムが細胞中で安定なRNAウイルスに由来することができる。他の態様では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害するために、3'UTRまたは5'UTR中に様々なヌクレオチド類似体を使用することができる。
【0363】
遺伝子クローニングの必要なしにDNA鋳型からのRNA合成を可能にするために、転写プロモーターが、転写されるべき配列の上流のDNA鋳型に付着されるべきである。RNAポリメラーゼについてのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加される場合、RNAポリメラーゼプロモーターは、PCR産物中の転写されるべきオープンリーディングフレームの上流に組み込まれるようになる。一態様では、プロモーターは、本明細書の別の箇所に記載されるようなT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターは、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含むが、それらに限定されない。T7、T3およびSP6プロモーターについてのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
【0364】
一態様では、mRNAは、5'末端上のキャップおよび3'ポリ(A)テールの両方を有しており、これらが、リボソームの結合、翻訳開始および細胞中でのmRNAの安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNA上で、RNAポリメラーゼは、真核細胞における発現に適さない長いコンカテマー産物を産生する。3'UTRの末端で直鎖状にされたプラスミドDNAの転写は、通常サイズのmRNAを生じ、このmRNAは、転写後にポリアデニル化された場合であっても真核生物のトランスフェクションに有効でない。
【0365】
直鎖状DNA鋳型上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写物の3'末端を、鋳型の最終塩基を超えて延長することができる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0366】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100TテールなどのポリTテール(サイズは50~5000Tであることができる)を含有するリバースプライマーを使用することによってPCRの間に、または非限定的にDNAライゲーションもしくはインビトロ組み換えを含む任意の他の方法によってPCRの後に、産生することができる。ポリ(A)テールはまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一態様では、ポリ(A)テールは、100~5000アデノシンである。
【0367】
RNAのポリ(A)テールは、インビトロ転写後に大腸菌(E. coli)ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼの使用によりさらに伸長することができる。一態様では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドへと増加させることは、RNAの翻訳効率に約2倍の増加をもたらす。加えて、3'末端への異なる化学基の付着は、mRNAの安定性を増加させることができる。そのような付着は、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有することができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ATP類似体をポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増加させることができる。
【0368】
5'キャップもまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい態様では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野において公知の技法および本明細書に記載される技法を使用して提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0369】
いくつかの態様では、RNAは、インビトロ転写RNAのように細胞中にエレクトロポレーションされる。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化物質および界面活性剤などの細胞透過性および生存率を助長する因子を含有することができる、細胞エレクトロポレーションに適した任意の溶質を含むことができる。
【0370】
いくつかの態様では、本開示のCARをコードする核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであろう。RNAのインビトロ合成のための方法は、当技術分野において公知であり;CARをコードする配列を含むRNAを合成するために任意の公知の方法を使用することができる。宿主細胞中にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞中に導入することは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0371】
開示される方法は、標的がん細胞を死滅する遺伝子改変されたT細胞の能力の評価を含め、がん、幹細胞、急性および慢性感染、ならびに自己免疫疾患の分野の基礎研究および治療法におけるT細胞活性のモジュレーションに適用することができる。
【0372】
該方法はまた、例えば、プロモーターまたは投入RNAの量を変化させることによって、発現レベルを広い範囲で制御する能力を提供し、発現レベルを個別に調節することを可能にする。さらに、mRNA産生のPCRに基づく技法は、異なる構造およびそれらのドメインの組み合わせを有するmRNAの設計を極めて容易にする。
【0373】
本発明のRNAトランスフェクション法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、ベクター不要であることである。RNA導入遺伝子は、リンパ球に送達することができ、いかなる追加のウイルス配列の必要もなく、最小の発現カセットとして短時間のインビトロ細胞活性化後にその中で発現させることができる。これらの条件下で、宿主細胞ゲノム中への導入遺伝子の組み込みは、起こる可能性が低い。RNAのトランスフェクション効率およびリンパ球集団全体を均一に改変するRNAの能力により、細胞のクローニングは不必要である。
【0374】
インビトロ転写RNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝的改変は、共に様々な動物モデルにおいて試験に成功した2つの異なる戦略を利用する。細胞に、インビトロ転写RNAがリポフェクションまたはエレクトロポレーションによってトランスフェクションされる。移入されたIVT-RNAの長期発現を達成するために、様々な改変を使用してIVT-RNAを安定化することが望ましい。
【0375】
インビトロ転写のための鋳型として標準的な手法で利用されており、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝的に改変されているいくつかのIVTベクターが文献から公知である。現在、当技術分野において使用されるプロトコルは、以下の構造を有するプラスミドベクターに基づく:RNA転写を可能にする5' RNAポリメラーゼプロモーターに続いて、3'および/または5'のいずれかに非翻訳領域(UTR)が隣接する関心対象の遺伝子、ならびに50~70個のAヌクレオチドを含有する3'ポリアデニルカセット。インビトロ転写の前に、II型制限酵素により環状プラスミドがポリアデニルカセットの下流で直鎖状にされる(認識配列は切断部位に対応する)。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物中のその後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、いくつかのヌクレオチドは、直鎖状にされた後に酵素切断部位の部分として残り、ポリ(A)配列を3'末端で伸長またはマスクする。この非生理学的オーバーハングがそのような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響するかどうかは明らかでない。
【0376】
別の局面では、RNA構築物は、エレクトロポレーションによって細胞内に送達される。例えば、US 2004/0014645、US 2005/0052630A1、US 2005/0070841A1、US 2004/0059285A1、US 2004/0092907A1において教示されるような、哺乳動物細胞内への核酸構築物のエレクトロポレーションの製剤および方法論を参照されたい。任意の公知の細胞型のエレクトロポレーションに必要な電場の強さを含む様々なパラメーターが、関連する研究文献ならびに本分野の数多くの特許および出願から一般的に公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号、および米国特許第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療的応用のための装置は、市販されており、例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics, San Diego, Calif.)、米国特許第6,567,694号;米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号、および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されている;エレクトロポレーションはまた、例えばUS20070128708A1に記載されているように、細胞のインビトロトランスフェクションのためにも使用され得る。エレクトロポレーションはまた、核酸を細胞内にインビトロ送達するためにも利用され得る。したがって、当業者に公知の多くの利用可能なデバイスおよびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用した、発現構築物を含む核酸の細胞内へのエレクトロポレーション媒介投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新しい手段を提示する。
【0377】
I. 薬学的組成物および製剤
別の局面では、本開示は、本明細書において想定される改変された細胞のいずれかの治療有効量を含む薬学的組成物を提供する。また、本発明の免疫細胞集団、そのような細胞を含有するおよび/またはそのような細胞が濃縮された組成物、例えば、CARを発現する細胞が、組成物中の総細胞またはT細胞もしくはCD8+細胞もしくはCD4+細胞などのある特定の種類の細胞に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超を占める、組成物も提供される。組成物は中でも、養子細胞療法のためなどの、投与のための薬学的組成物および製剤である。また、細胞および組成物を、対象、例えば、患者に投与するための治療法も提供される。
【0378】
また、薬学的組成物および製剤を含めた投与のための細胞を含む組成物、例えば、所与の用量またはその画分での投与のための細胞数を含む単位用量形態組成物も提供される。薬学的組成物および製剤は、一般には、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0379】
用語「薬学的製剤」は、それに含有される活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態の調製物であって、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほど有毒な追加の成分を含有しない、調製物を指す。「薬学的に許容される担体」は、対象に対して無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存料を含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与方法によって決定される。したがって、多種多様な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有することができる。適切な保存料は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの局面では、2つまたはそれよりも多い保存料の混合物が使用される。保存料またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)により記載されている。薬学的に許容される担体は、一般には、採用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、それに限定されるわけではない。
【0380】
いくつかの局面では、緩衝剤が組成物中に含まれる。適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムならびに様々な他の酸および塩を含む。いくつかの局面では、2種またはそれより多くの緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)に、より詳細に記載されている。
【0381】
製剤は、水溶液を含むことができる。製剤または組成物はまた、細胞により処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な1つよりも多い活性成分、好ましくは細胞を補完する活性であって、それぞれが、互いに悪影響を及ぼさない活性を有するもの、を含有し得る。そのような活性成分は、適切には、意図する目的に効果的な量で組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な作用物質または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチンおよび/またはビンクリスチンをさらに含む。薬学的組成物は、いくつかの態様では、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で細胞を含有する。治療有効性または予防有効性は、いくつかの態様では、処置される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって、所望の投与量を送達することができる。
【0382】
製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下または坐剤投与のための製剤を含む。いくつかの態様では、細胞集団は、非経口投与される。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。組成物は、いくつかの態様では、無菌の液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液または粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調製しやすい。追加的に、液体組成物が、投与に、とりわけ、注射による投与にいくらか便利である。他方で、粘性組成物を、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすのに適した粘性範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる、担体を含むことができる。
【0383】
無菌注射液は、溶媒中に、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合された溶媒中に細胞を取り入れることによって、調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは粘性増強添加物、保存料、着香剤および/または着色剤などの補助物質を含有することができる。いくつかの局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教科書に助言を求めてよい。
【0384】
抗菌保存料、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝液を含む、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって保証することができる。注射用薬学的剤形の長期吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0385】
インビボ投与に使用されるべき製剤は、一般に無菌のものである。無菌は、例えば滅菌濾過膜で濾過することによって、容易に達成され得る。
【0386】
本明細書において言及または引用される論文、特許および特許出願、ならびにすべての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、それぞれの個々の刊行物が参照によって組み入れられることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によってそれらの全体が同程度に本明細書に組み入れられる。出願人等は、そのような任意の論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的文書からのあらゆる資料および情報を本出願中に物理的に組み入れる権利を有する。
【0387】
本発明は、その具体的な態様を参照しながら記載されてきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱しなければ、様々な変更を行っても等価物に置換してもよいことが、当業者によって理解されるべきである。本明細書に開示の態様の範囲から逸脱しなければ、適切な等価物を使用して本明細書に記載の方法の他の適切な改変および適合を行ってよいことが、当業者には容易に明らかとなろう。加えて、多くの改変を行って、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセス段階を本発明の目的、精神および範囲に適合させてもよい。そのような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。ここでは特定の態様を詳細に記載してきたが、同じものが以下の実施例を参照することによってより明確に理解され、以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであって、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0388】
実験的実施例
以下の実施例を参照して本発明をこれから説明する。これらの実施例は、例証だけの目的で提供されるものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるわけではなく、本明細書において提供される教示の結果として明白であるすべての変形を包含する。
【0389】
材料および方法
細胞株および初代ヒトTリンパ球培養物:健康志願者ドナーから、白血球アフェレーシス後、RosetteSepキット(Stem Cell Technologies)を使用する負の選択によって、初代ヒトCD4およびCD8 T細胞を単離した。大学審査委員会が承認したプロトコルの下、すべての検体を収集し、各ドナーから同意文書を得た。初代ヒトCD4およびCD8 T細胞混合物(1:1)を抗CD3/CD28 Dynabeads(Life Technologies)で刺激した。
【0390】
CAR構築物およびレンチウイルス形質導入:ヒト化抗PSCA Ab(2B3)由来のscFvから構成されるPSCA CARを構築し、レトロウイルスベクターMSGVにクローニングした。PSCAに対するscFvドメインを合成および/またはPCRにより増幅し、CD8膜貫通ドメイン、ならびに4-1BB、CD28、ICOS、またはICOS.YMNM、およびCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインと連結し、pTRPEレンチウイルスベクター内にサブクローニングした。T細胞にレンチウイルスベクターを5のMOIで形質導入した。
【0391】
フローサイトメトリー:形質導入細胞をビオチン標識ポリクローナル抗マウスF(ab)2抗体(Jackson Immunoresearch)で染色後、フローサイトメトリーを使用して形質導入細胞の形質導入効率を決定した。フローサイトメトリー実験に以下の抗体を使用した:PEコンジュゲートストレプトアビジン。データの取得はFACSCalibur(BC Biosciences)で行い、FlowJoにより解析した。
【0392】
CD107aアッセイ: E:Tが1:2(1×105個のエフェクター:2×105個)で96ウェルプレート内のR10培地160μL中に細胞を蒔いた。注目すべきことに、フィコエリトリン標識抗CD107a Ab 20μLを添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートし、その後、Golgi Stop(R10培地3mL中にGolgi Stop 2mL、20mL/ウェル;BD Biosciences, 51-2092 KZ)を添加し、プレートをさらに2.5時間インキュベートした。次いで、FITC-抗CD8 5mLおよびストレプトアビジン-アロフィコシアニン(APC)-抗CD3 5mLを添加し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、試料をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0393】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA):標的細胞を洗浄し、R10培地中に細胞1×106個/mLで懸濁した。注目すべきことに、各標的細胞型100μLを96ウェル丸底プレート(Corning)に3つ組で添加した。エフェクターT細胞を洗浄し、R10細胞中に1×106個/mLで再懸濁し、次いで、表示のウェル内でT細胞100μLを標的細胞と合わせた。プレートを37℃で18~24時間インキュベートした。インキュベートの後、上清を回収し、ELISAアッセイ(eBioscience)に供した。
【0394】
ルシフェラーゼに基づく細胞溶解性T細胞(CTL)アッセイ:簡単にいうと、クリックビートル緑色ルシフェラーゼ(CBG)-T2A-eGFPをレンチウイルスによりPSCA腫瘍細胞中に形質導入し、GFPの発現について選別した。腫瘍細胞を異なる比のT細胞と共に37℃で8時間インキュベートした。注目すべきことに、混合物100mLを96ウェル白色ルミノメータープレートに移し、基質100mLを添加し、発光を直ちに決定した。腫瘍を有するがT細胞を有しないウェルにおけるルシフェラーゼ活性に基づく死滅パーセントとして結果を報告する。(死滅%=100-((エフェクターと標的細胞との共培養物を有するウェルからのRLU)/(標的細胞を有するウェルからのRLU)×100)。
【0395】
実施例1:
様々な前立腺幹細胞抗原(PSCA)特異的CARを本明細書において生成した。抗原結合ドメインは、ヒト化抗PSCA抗体(2B3)から誘導した(米国特許出願公開第US2010/0297004号、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)(
図1)。2B3 scFvを、4-1BBおよびCD3ゼータ(2B3.BBZ CAR)、CD28およびCD3ゼータ(2B3.28Z CAR)、ICOSおよびCD3ゼータ(2B3.ICOSZ CAR)、ならびに変異型ICOS(ICOS.YMNM CAR)およびCD3ゼータ(2B3.ICOS.YMNM CAR)を含む様々な細胞内ドメインと組み合わせて使用した。また、PD1-CD28スイッチ受容体、TGFbR/IL12Rスイッチ受容体およびドミナントネガティブ型受容体(TGFbRDN)を含むPSCA CARも生成した。また、PSCAおよびPSMAに対する特異性を含む二重CARも開発した。また、PSCA CARを二重特異性抗体(例えば、aPD-L1/CD28またはaTGFbRII-CD28)と組み合わせて使用した。
【0396】
PSCA CAR(2B3.BBZ)およびPMSA CAR(J591.BBZ)のインビトロ転写RNAを共エレクトロポレーションしたT細胞中でCAR発現を測定した(
図2、上部パネル)。二重特異性抗体10A5-1412(aPDL1-aCD28二重特異性Ab)またはTGFB3-1412(aTGFbRII-aCD28二重特異性Ab)を共エレクトロポレーションしたPSCA CARのPD-L1-Fc染色を
図2の下部パネルに示す。
【0397】
PC3-PSCA-PSMAまたはK562で刺激したRNA共エレクトロポレーションT細胞中でCD107aを測定した(
図3)。
【0398】
変異型ICOSシグナル伝達ドメイン(ICOS.YMNM)を有するPSCA(2B3)CARをレンチウイルス形質導入したT細胞は、改善された溶解能、減少したインビトロサイトカイン産生、および4-1BBシグナル伝達PSCA CARと等価なインビボ抗腫瘍活性を示した(
図4および
図6)。ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを構築し、レンチウイルスベクターにクローニングした。CAR発現レベルは、4-1BBまたはCD28のいずれかのシグナル伝達ドメインCARと同等であった(
図4、上部)。PSCA陽性細胞株PC3.PSCA.PMSA.CBGまたはPC3.PSCA.PMSA.CBG.PD-L1による刺激に続いて、サイトカイン産生(IFN-ガンマ)を測定した(
図4、下部パネル)。
【0399】
ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを発現するT細胞についてのCD107aアッセイの結果を
図5Aに示す。
図5Bは、ICOSまたはICOS.YMNMのいずれかのシグナル伝達ドメインを有するPSCA CARを発現するT細胞の腫瘍株PC3-PSCAに対する死滅アッセイの結果を図示する。
【0400】
図6は、PC3-PSCA-CBG-PDL1腫瘍モデルのBLI結果を図示する。レンチウイルス形質導入(LVV TD)T細胞について、腫瘍接種後21日目にマウス1匹当たり1e
6個の細胞を静脈内(i.v.)に形質導入した。様々なPSCA CARを皮下注射した後に、腫瘍のBLI(平均放射輝度)(
図7)および腫瘍サイズ(
図8)を測定した。
【0401】
二重特異性CARも本明細書において生成した。Gly4Serエレメントで連結されたPSMA(2F5 scFv)標的CARおよびPSCA標的CARをコードする研究に使用したベクターを
図9Aに描写する。最初の増大終了時のレンチウイルス形質導入CAR T細胞上のCARの表面発現を
図9Bに描写する。PSMAもしくはPSCA-CAR、または二重特異性CARを発現するレンチウイルス形質導入CAR T細胞の割合を、ヒト組み換えPSMA-FcおよびPSCA-Hisタンパク質による染色によって測定し、フローサイトメトリーによって解析した(
図9C)。表示のscFvを発現するCAR T細胞を標的と4時間共培養し、CD107a発現の割合をCD8陽性細胞上で定量した(
図9D)。
【0402】
二重特異性CAR T細胞を、PC3-PSCA細胞と共培養した(エフェクター:標的=1:1)。共培養の24時間後に上清を得て、ELISAによってサイトカイン産生を解析した(
図10A)。二重特異性CAR T細胞を、様々なE:T比で8時間のPC3-PSCA細胞に対する細胞溶解活性について試験した(
図10B)。二重特異性CAR T細胞を、PC3-PSMA細胞と共培養した(エフェクター:標的=1:1)。共培養の24時間後に上清を得て、ELISAによってサイトカイン産生を解析した(
図10C)。二重特異性CAR T細胞を、様々なE:T比で8時間のPC3-PSMA細胞に対する細胞溶解活性について試験した(
図10D)。
【0403】
図11A~11Bは、TGFbR-IL12Rスイッチ受容体がT細胞機能を強化できるという知見を図示する。
図11A(右上パネル)は、培養中TGFb1ありまたはTGFb1なしでK562と共培養したTGFbR-IL12Rを移入したNK細胞のIFN-ガンマ産生を示す。
図11A(右下パネル)は、TGFベータで刺激した後のTGFbR-IL12Rスイッチ受容体を移入したT細胞のpSmad染色を示す。
図11Bは、TGFbR-IL12Rスイッチ受容体を共移入したNY-ESO-1 TCR形質導入T細胞で刺激したNY-ESO-1陽性腫瘍のサイトカイン産生を示す。
【0404】
他の態様
本明細書中の可変部の任意の定義における要素の一覧の記載は、その可変部の定義を、列記された要素の任意の単一の要素としてまたはそれらの組み合わせ(または部分的組み合わせ)として含む。本明細書におけるある態様の記載は、その態様を、任意の単一の態様としてまたは任意の他の態様もしくはその一部との組み合わせで含む。
【0405】
本明細書において引用されるありとあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明は、具体的な態様を参照して開示しているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに当業者によって本発明の他の態様および変形が考案されてよいことが明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価な変形のすべてを包含すると解釈されるものとする。
【配列表】