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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】植物性ミルク
(51)【国際特許分類】
   A23C 11/06 20250101AFI20250519BHJP
   A23F 5/14 20250101ALI20250519BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20250519BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250519BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20250519BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20250519BHJP
   A23L 11/00 20250101ALI20250519BHJP
   A23L 11/60 20250101ALI20250519BHJP
【FI】
A23C11/06
A23F5/14
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/60
A23L2/66
A23L11/00 F
A23L11/60
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022526762
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020081796
(87)【国際公開番号】W WO2021094395
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】19208395.4
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】ブチコフスキ, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ドンブロウスキー, ジャニカ
(72)【発明者】
【氏名】イディエダー, ベノワ
(72)【発明者】
【氏名】カリスト, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェット, リオネル, ジャン, レネ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, クリストフ, ジョセフ, エティエンヌ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-216653(JP,A)
【文献】特表2015-524276(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115280(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/068590(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 11/00
A23L
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
組成の唯一のタンパク質源として少なくとも1種の植物タンパク質、
少なくとも1種の植物性油又は植物性脂肪、
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成中の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物、
リン酸二カリウム、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの混合物並びにそれらの対応する酸のリストから選択される少なくとも1種の緩衝剤
水、
を含む成分組成を有する液体植物性ミルクであって、
前記ミルクが、ガム、親水コロイド増粘剤、及び合成乳化剤を含ま、 前記ミルクのミネラル組成が、7~70mmol/Lで含まれるクエン酸塩の濃度に対し、
10~100mmol/LのCa、
10~80mmol/LのNa、
20~200mmol/LのK、
15~150mmol/LのP、を含むように、前記成分の性質及び量が選択される、液体植物性ミルク。
【請求項2】
前記少なくとも1種の植物タンパク質が、エンドウ豆タンパク質のみ又はソラ豆タンパク質のみである、請求項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項3】
前記少なくとも1種の植物タンパク質が、前記成分組成の2~8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、請求項1又は2に記載の液体植物性ミルク。
【請求項4】
前記少なくとも1種の植物油又は植物性脂肪が、前記成分組成の1~5重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項5】
前記少なくとも1種の天然甘味料が、前記成分組成の1~10重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項6】
クエン酸カルシウム四水和物が、前記成分組成の0.18~1.8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項7】
前記緩衝剤が、リン酸二カリウムであり、前記リン酸二カリウムが、前記成分組成の0.5~1.8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項8】
前記成分組成が、
エンドウ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油又は植物性脂肪
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物
リン酸二カリウム、及び
水を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項9】
前記成分組成が、
ソラ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油又は植物性脂肪
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物
リン酸二カリウム、及び
水を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項10】
前記少なくとも1種の植物タンパク質及び前記少なくとも1種の植物性油又は植物性脂肪が乳化され、前記ミルク中に凝集体を形成する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項11】
前記凝集体の平均直径D[4,3]が、1~30μmの範囲である、請求項10に記載の液体植物性ミルク。
【請求項12】
前記ミルクのpHが、6.7~7.8に含まれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項13】
総固形分が、8重量%~24重量%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項14】
香料、着色剤及び/又はビタミンをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の植物性ミルクの調製方法であって、前記方法が、
エマルションを得るために、水、前記少なくとも1種の植物タンパク質、前記少なくとも1種の植物性油又は植物性脂肪、前記少なくとも1種の天然甘味料、クエン酸カルシウム四水和物、及び前記少なくとも1種の緩衝剤を混合して組成物を生成するステップと
記組成物を均質化又は剪断するステップと、
前記均質化又は剪断された組成物を加熱するステップと、
前記加熱された組成物を容器内に無菌充填するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
前記混合するステップの後に、前記組成物のpHを調整するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が香料、着色剤及び/又はビタミンをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
コーヒー系飲料における添加物として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の植物性ミル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性ミルク、及びコーヒー飲料におけるその使用に関する。
【0002】
[背景技術]
コーヒー飲料の調製の分野では、ミルクは、クリーム入りコーヒー、カプチーノ、ラテマキアート、又はラテアートでカスタマイズされた飲み物のような飲料の調製のために不可欠な添加物である。
【0003】
これらのミルク飲料及びコーヒー飲料は、専門のバリスタによって又は自動マシンで調製することができる。これらの飲料の調製中に、ミルクを冷却し、加熱し、機械的に泡立てて、又は熱水若しくは蒸気の注入によって泡立てて、最終的にホットコーヒー又はアイスコーヒーのいずれかに混合又は添加することができる。
【0004】
従来、飲料のこのいわゆる「バリスタ」スタイルの調製で使用されるミルクは、牛乳である。現在、ビーガン及びベジタリアンに適した食品製品における需要傾向では、植物から生成された代替ミルクが必要とされており、いくつかの植物性ミルクが、バリスタスタイルでのコーヒー飲料の調製に使用するために具体的に開発されている。例えば、エンドウ豆タンパク質、アーモンド、米又はオート麦をベースにしたミルクが商品化されている。
【0005】
これらの植物性ミルクのほとんどは、加熱し、泡立てて、コーヒーと混合すると、牛乳と同じ特性を示さないことが観察されている。泡の質はあまり良くなく(泡立てたミルクはピッチャーから分配することができず、ラテアートができず、泡立てると明らかに異なる2つの相を生じ、すなわち液体と泡との混合物ではなく液体とその上部の泡を生じ、泡は安定なものではなく、泡は水っぽくなってしまう(too liquid)、など)、コーヒーと混合すると軟凝集を生じる。
【0006】
更に、これらの植物性ミルクのうち、コーヒー系飲料の調製においてより良好な結果を示すものは、食感、口当たり、安定性を提供するためにガムのような添加物を含むものであることが認められている。しかし、より多くの消費者がこれらの成分の存在を懸念するようになってきているため、これらの添加物の使用は望ましくない。
【0007】
本発明の目的は、バリスタスタイルでのコーヒー飲料の調製に植物性ミルクを使用するときの、先行技術の植物性ミルクの欠点の、少なくともいくつかに対処することである。
【0008】
本発明の目的は、以下の特性を示す植物性ミルクを提供することである。
軟凝集せずにホットコーヒー飲料又はアイスコーヒー飲料に添加することができ、
一般的な牛乳のように、コーヒーマシン(冷却、加熱、分配、泡立て)で、又は専門のバリスタによって処理することができ、
泡立てると、例えば、ラテアート(latter art)のために一般的な牛乳と同じ特性を示し、
心地よい口当たり及び味を提供する。
【0009】
ガム、親水コロイド増粘剤、合成乳化剤を含まない植物性ミルクを提供することが有利であろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施例の6つの飲料の写真である。
図2図2は3つのミルクで調製された飲料の写真、及び異なる処方で調製されたこれら3つのミルクの凝集体の粒度分布を示す図である。
【0011】
[発明を実施するための形態]
本発明の第1の態様では、以下の成分:
該組成の唯一のタンパク質源として少なくとも1種の植物タンパク質、
少なくとも1種の植物性油又は脂肪、
少なくとも1種の天然甘味料、
該組成中の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物、
リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの混合物のリストから選択される少なくとも1種の緩衝剤、並びにそれらの対応する酸、
任意選択で香料、着色剤、ビタミン、
水、を含む成分組成を有する、液体植物性ミルクであって、
該ミルクは、ガム、親水コロイド増粘剤、及び合成乳化剤を含まない、液体植物性ミルクが提供される。
【0012】
そのようなベースの植物ミルク中の唯一のカルシウム塩として、クエン酸カルシウム四水和物を使用することは、コーヒー飲料に使用するときのミルクの安定性を向上させる重要な特徴であることが観察されている。
【0013】
好ましくは、該ミルクのミネラル組成が、7~70mmol/Lで含まれるクエン酸塩の濃度に対し、
10~100mmol/LのCa、
10~80mmol/LのNa、
20~200mmol/LのK、
15~150mmol/LのP、
を含むように、成分の性質及び量が選択される。
【0014】
成分の由来及びこれらの成分のミネラル組成をもとに成分量を選択して、最終的なミルク中の各ミネラルの濃度及びクエン酸塩の濃度に達することができる。
【0015】
一般に、これらのミネラルは、植物タンパク質、緩衝剤及び/又は水に由来し、成分供給元又は工場によって異なる。
【0016】
この濃度のクエン酸塩を含むミネラル組成物は、コーヒー飲料に使用するときの植物性ミルクの最適な安定性を保証することが観察されている。特に、ミルクをホット又はアイスのいずれかでコーヒーと混合したときに軟凝集が観察されない。
【0017】
好ましい実施形態では、液体植物性ミルクは、以下の成分:
組成の唯一のタンパク質源として少なくとも1種の植物タンパク質、好ましくはエンドウ豆タンパク質分離物及び/又はソラ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油又は脂肪、
少なくとも1種の天然甘味料、
該組成中の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム、
pH調整のための、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの混合物並びにそれらの対応する酸のリストから選択される、少なくとも1種の緩衝剤、
任意選択で香料、着色剤、ビタミン、
水、を含む成分組成を有する。
【0018】
ミルクは、植物性ミルクであり、牛乳ではない。特に、成分組成は、乳タンパク質又は乳脂肪を含まない。
【0019】
ミルクの成分組成は、少なくとも1種の植物タンパク質を含む。
【0020】
ミルクは、植物タンパク質以外のタンパク質を含まない。
【0021】
1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の植物タンパク質は、エンドウ豆タンパク質のみである。
【0022】
本発明によるエンドウ豆タンパク質は、緑色、黄色、又は紫色エンドウ豆(Pisum sativum)から分離した又は抽出したエンドウ豆タンパク質であってもよい。エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆タンパク質画分であってもよい。エンドウ豆タンパク質は、緑色エンドウ豆の種由来のものであってもよい。例えば、エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆から分離した、乾燥重量基準で80%超のタンパク質含量を有する植物性タンパク質材料であってもよい。好ましくは、エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆タンパク質濃縮物又はエンドウ豆タンパク質分離物である。
【0023】
あるいは、ミルクは、エンドウ豆タンパク質以外の1種の植物タンパク質又は2種若しくは3種の異なる植物タンパク質の混合物を含むことができる。これらのタンパク質は、分離濃縮物又は酵素処理された穀粉を含む。
【0024】
好ましくは、少なくとも1種の植物タンパク質は、成分組成の2~8重量%に含まれる量で成分組成に存在する。
【0025】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の植物タンパク質は、ソラ豆タンパク質分離物のみである。
【0026】
ミルクの成分組成は、少なくとも1種の植物油又は脂肪を含む。
【0027】
植物油又は脂肪は、パーム核油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、パーム油、コーン油、ココナッツ油、微細藻類油及びこれらの油の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0028】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の植物脂肪は、高オレイン酸ヒマワリ油である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1種の植物脂肪は、成分組成の1~5重量%に含まれる量で成分組成中に存在する。
【0030】
ミルクの成分組成は、砂糖などの少なくとも1種の天然甘味料、例えば、フルクトース、グルコース、マルトース、スクロース、ラクトース、デキストロース、高フルクトースコーンシロップをなどの糖又は例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、若しくはそれらの組み合わせなどの糖代替物からなる、炭水化物ベースの甘味料、及びそれらの混合物を含む。
【0031】
好ましくは、少なくとも1種の天然甘味料は、成分組成のミルクの1~10重量%に含まれる量で成分組成物中に存在する。
【0032】
ミルクの成分組成は、該組成の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物を含む。好ましくは、クエン酸カルシウム四水和物は、例えば、カルシウムが水又は少なくとも1種の植物性タンパク質などの塩以外の他の成分によっても導入される場合に、成分組成中のカルシウムの主な供給源でもある。
【0033】
好ましくは、クエン酸カルシウム四水和物は、成分組成のミルクの0.18~1.8重量%に含まれる量で成分組成中に存在する。
【0034】
酸性のコーヒーにおいてもミルクを安定化するその特性に加えて、クエン酸カルシウム四水和物は、組成中にカルシウムを導入するという利点を示し、これは植物性ミルクにおいて栄養的利点であり得る。
【0035】
ミルクの成分組成は、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びそれらの混合物のリストから選択される少なくとも1種の緩衝剤を含む。
【0036】
緩衝剤はpHを調整し、遊離カルシウムと部分的に相互作用する。必要に応じて、対応する酸をpH調整に使用することができる。
【0037】
好ましい実施形態によれば、緩衝剤は、リン酸二カリウムであり、このリン酸二カリウムは、成分組成のミルクの0.5重量%~1.8重量%に含まれる量で成分組成中に存在する。
【0038】
1つの好ましい実施形態では、液体植物性ミルクの成分組成は、
エンドウ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油、
少なくとも1種の天然甘味料、
該組成中の唯一のカルシウムの供給源としてクエン酸カルシウム、
リン酸二カリウム、
水、及び
任意選択で香料、着色剤及び/又はビタミンを含む。
【0039】
別の好ましい実施形態では、液体植物性ミルクの成分組成は、
ソラ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油、
少なくとも1種の天然甘味料、
該組成中の唯一のカルシウムの供給源としてクエン酸カルシウム、
リン酸二カリウム、
水、及び
任意選択で香料、着色剤及び/又はビタミンを含む。
【0040】
液体植物性ミルクでは、少なくとも1種の植物タンパク質及び少なくとも1種の植物性脂肪が乳化され、ミルク中(inside the milk)に凝集体を形成する。
【0041】
一般に、凝集体の平均直径D[4,3]は、レーザー回折によって測定される場合、1~30μmの範囲である。本発明において、D[4,3]という用語は、De Brouckere平均直径と呼ばれる場合もある、粒度分布の体積加重平均直径を指して通常使用される。凝集体の粒度分布は、Malvern(登録商標)Mastersizer 3000又は同等の測定システムを使用して測定してもよい。測定のために、試料を、例えば、9~10%の遮蔽率(obscuration rate)が得られるまでHydro SM測定セル中に分散し、次いでMastersizerで分析してもよい。
【0042】
一般に、ミルクのpHは、6.7~7.8に含まれる。
【0043】
一般に、ミルクの総固形分は、8重量%~24重量%である。
【0044】
ミルクは、ガム、親水コロイド増粘剤、及び合成乳化剤を含まない。唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物を使用すれば、ミルクが酸性コーヒーと接触する場合でも、ミルクの凝集体の安定した分散を得るのに十分であるため、前記成分は必要ではない。
【0045】
第2の態様では、上記の植物性ミルクの調製方法が提供され、該方法は、
エマルションを得るために、水、少なくとも1種の植物タンパク質、少なくとも1種の植物性脂肪又は油、少なくとも1種の天然甘味料、クエン酸カルシウム四水和物、少なくとも1種の緩衝剤及び任意選択で香料、着色剤、ビタミンを混合するステップと、
任意選択でpHを調整するステップと、
組成物を均質化又は剪断するステップと、
均質化された組成物又は剪断された組成物を加熱するステップと、
組成物を容器内に無菌充填することと、を含む。
【0046】
通常、混合するステップは、例えば50℃を超える熱水により起こり、水中の脂肪又は油及びタンパク質のエマルションの形成を開始する。
【0047】
均質化ステップ又は剪断ステップは、成分の混合中に既に予備乳化された組成物の乳化を仕上げることを目的としている。
【0048】
加熱ステップは、均質化ステップ又は剪断ステップ中に生成されたエマルションを安定化させることを目的としている。
【0049】
加熱は、80℃~125℃の温度で30秒間~20分間実施することができ、又は125℃を超える温度で3~45秒間加熱が実施されるUHT処理で構成され得る。
【0050】
均質化又は剪断及び加熱の2つのステップは、同時に起こることができる。
【0051】
第3の態様では、上記のような植物性ミルクの、コーヒー系飲料における添加物としての使用が提供される。
【0052】
実施例1:本発明によるエンドウ豆タンパク質ミルク
以下の成分組成から2つの植物性ミルクを調製した。
【0053】
【表1】
【0054】
ミルクを以下のように調製した。
【0055】
65℃の、エンドウ豆タンパク分離物、ブラウンシュガー及び水を、62℃に維持されたScanimaミキサー中で混合し、1時間剪断した。次いで、高オレイン酸ヒマワリ油を添加し、混合物に高剪断を10分間適用した。
【0056】
得られたプレエマルションを、62℃に維持されたViscojet高剪断ミキサー中に移した。リン酸二カリウムを添加し、高剪断混合を5~10分間維持し、次いでクエン酸カルシウム四水和物を導入し、高剪断混合を5~10分間維持した。次いで、処方2の場合、バニラ香味料を、溶解が視認されるまで、中程度の撹拌下で導入した。
【0057】
得られたエマルションのpHを調節し、必要に応じて緩衝塩を用いて最終的に6.65のpHに調整した。
【0058】
エマルションを62℃の温度で200バールで均質化し、次いで、均質化したエマルションに、154℃で5秒間、1000L/時間の流速で直接蒸気注入することによってUHT(超高温)処理を行った。
【0059】
最終的に、加熱したエマルションを200mLのTetraPak容器中に無菌充填した。
【0060】
2つのミルクのそれぞれについて、ミネラル組成は以下のものであるとして分析された。
【0061】
【表2】
【0062】
クエン酸塩は、32mmol/Lである597mg/100gのレベルで存在していた。
【0063】
両方のミルクにおいて、
凝集体の平均直径D[4,3]は、28.1μmであった。
pH(20℃で)は、6.80であった。
【0064】
凝集体の粒度分布を、Malvern(登録商標)Mastersizer 3000又は同等の測定システムを使用して測定した。測定のために、試料を、9~10%の遮蔽率が得られるまでHydro SM測定セル中に分散し、次いでMastersizerで分析した。
【0065】
実施例2-実施例1のミルクをコーヒーに使用する
2.1.それぞれ実施例1で得られた植物性ミルクを、コーヒー飲料の自動調製マシンのミルク貯蔵容器に充填した。ミルクを従来の牛乳のようにポンピングし、泡立てた。
【0066】
ホット又はアイスのいずれかのコーヒーと混合した場合に、凝集体の軟凝集は観察されなかった。
【0067】
泡立てると、得られた泡は濃厚かつ安定であった。この泡は、コーヒー飲料の上部でラテアートを生成するために容易に使用することができる。
【0068】
2.2.更に、実施例1のミルク及び処方1で得られたミルクを使用して、異なるタイプのコーヒー飲料を調製した。
ホットコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを3.2:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたホットラテコーヒー
ホットコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを2:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたホットカプチーノコーヒー
ホットコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを1:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたホットコルタードコーヒー
水出しコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを3.2:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたアイスラテコーヒー
水出しコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを2:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたアイスカプチーノコーヒー
水出しコーヒー及び泡立てた植物性ミルクを1:1(ミルク:コーヒー)の比率で混合することによって得られたアイスコルタードコーヒー。
【0069】
各飲料調製において、ミルクの体積を固定(fixed)して160gのミルクを得、コーヒーの体積は、上記のミルク:コーヒー比を遵守するように合わせた。
【0070】
ホットコーヒーは、2gの可溶性コーヒー(Nescafe Milano Ispirazione)を100gの熱水に溶解することによって調製した。ホットコーヒーは80℃の温度を示した。水出しコーヒーは、12℃の温度を示した。
【0071】
各調製のために、植物性ミルクを、少なくとも24時間収容していた冷蔵庫から取り出した。冷蔵庫から取り出したミルクを、Nespressoによって市販されているミルクフローサAeroccinoに直接入れ、次いで泡立てた。泡立てたミルクがホットコーヒー飲料調製物に使用されるのかアイスコーヒー飲料調製物に使用されるのかに応じて、ミルクフローサのホット泡立てプロセスかアイス泡立てプロセスかを選択した(ホットの泡立ての場合は65℃、アイスの泡立ての場合は8.5℃となる)。
【0072】
次いで、泡立てたミルクを対応する体積のコーヒーに導入した。
【0073】
図1はこれら6つの飲料の写真を提供する。
【0074】
6つの飲料は、厚くかつ濃密な泡の層を示した。6つのコーヒー飲料のいずれも軟凝集を示さず、飲料は時間内に安定したままであった。
【0075】
3つのホット飲料は、非常に厚い泡の層を含んでいた。
コルタード飲料では、泡の層は、液体の高さよりも大きく、
カプチーノ飲料では、泡の層は、液体の高さとほぼ同じ厚さであった。
【0076】
上記で調製したアイスラテコーヒー及びホットラテコーヒーの泡の層の安定性を5分間測定したものを以下の表3に報告する。
【0077】
【表3】
【0078】
2.3.更に、実施例1のミルクを冷蔵庫から取り出し、3つの異なる比(ミルク:コーヒー)1:1、1:2及び1:3に従って、ホットコーヒー(80℃)中に単にクリーマーとして添加した。軟凝集は観察されず、飲料は安定したままである。
【0079】
2.4.最終的に、泡の品質、ー特に泡の密度、泡の小さいサイズ及び大きな泡がないことーが、ラテアートの性能を可能にした。
【0080】
実施例3-市販の植物性ミルクとの比較
ホットミルク及びコーヒー飲料を、実施例1のミルクを用いて、そして表4に記載されるような異なる成分組成を示す3つの別の植物性ミルクを用いて調製した。ミルクをミルクフローサAeroccinoで泡立たせ、次いで120gの泡立てたミルクを100gのホットコーヒー中に導入した(実施例2.2と同じ方法で調製した)。
【0081】
【表4】
【0082】
カプチーノの特性を表5に要約する。
【0083】
【表5】

実施例4
クエン酸カルシウム四水和物がそれぞれ塩化カルシウム又はリン酸カルシウムで置き換えられたことを除いて、実施例1の処方1と同じ成分を用いて2つの植物性ミルクを調製した。各場合において、カルシウム塩の重量パーセントは、処方中のカルシウムを同じモル濃度に維持するように合わせ、47mmol/Lとした。したがって、植物性ミルクを以下の処方で調製した。
【0084】
【表6】
【0085】
ホットミルク及びコーヒー飲料を、処方1、処方3、及び処方4から得られたミルクを用いて調製した。各ミルクについて、120gのミルクをミルクフローサAeroccinoで泡立てた。次いで泡立てたミルクを100gのホットコーヒー中に導入した(実施例2.2と同じ方法で調製した)。
【0086】
処方1のミルクで調製された飲料は、液体の上に108%の非常に高い起泡性を意味する130mLの泡を示した。泡は濃密であり、気泡は小さいままで、親水コロイドのような安定剤を添加する必要なく、時間内に安定でクリーミーな口当たりを提供した。
【0087】
処方3で調製された飲料は、液体の上にいかなる泡も示さなかった。
【0088】
処方4で調製された飲料は、液体の上に100%の起泡性を意味する120mLの泡をもたらした。
【0089】
処方1のミルクで調製された飲料は、最良のクリーミーな口当たり及び製品の物理的安定性を提供した。
【0090】
図2は3つのミルクで調製された飲料の写真、及び異なる処方で調製されたこれら3つのミルクの凝集体の粒度分布を提供する。凝集体の粒度分布を、Malvern(登録商標)Mastersizer 3000又は同等の測定システムを使用して測定した。測定のために、試料を、9~10%の遮蔽率が得られるまでHydro SM測定セル中に分散し、次いでMastersizerで分析した。
【0091】
実施例5
2つのカルシウム塩が使用されたこと、つまり、クエン酸カルシウム四水和物の一部を炭酸カルシウムで置き換えたことを除いて、実施例1の処方1と同じ成分を用いて新しい植物性ミルクを調製した。カルシウム塩の重量パーセントは、処方中のカルシウムを同じモル濃度に維持するように合わせ、190mgのCa/100gのミルクとした。したがって、植物性ミルクを以下の処方で調製した。
【0092】
【表7】
【0093】
このミルクをクリーマーとして使用して、3つの異なる混合比1:1、1:2及び1:3(ミルク:コーヒー)でコーヒーを含む、3つの飲料を調製した。3つの飲料では、軟凝集及び沈降が観察された。
【0094】
炭酸カルシウムの代わりにリン酸カルシウムを含む同様の植物性ミルクでも同じ結果が生じ得る。
【0095】
実施例6
リン酸二カリウムの代わりにリン酸二ナトリウムを使用したことを除いて、実施例1の処方1と同じ成分を用いて新しい植物性ミルクを調製した。処方1のリン酸二カリウムにと同様のモル濃度を得るように量を調整した。この調整に必要とされたリン酸二ナトリウム量(組成物の0.73重量%)では、ミルクの味に直接的かつ不快な影響が生じた。
【0096】
実施例7-本発明によるソラ豆タンパク質ミルク
以下の成分組成から植物性ミルクを調製した:
【0097】
【表8】

ミルクを、実施例1においてと同じステップに従って調製した。
ミルクにおいて、
凝集体の平均直径D[4,3]は、27.9μmであった。
pH(20℃で)は、6.78であった。
【0098】
アイスラテコーヒー及びホットラテコーヒーを、実施例2.2においてと同様の方法でこのミルクで調製した。ホットコーヒーラテは、190mLの泡の層を示し、アイスコーヒーラテは、120mLの泡の層を示した。この層は、時間内に安定なままであった。
【0099】
本発明のミルクは、コーヒー調製物に必要な泡品質(軟凝集なし、口当たり、時間内の泡の安定性、泡体積)を提供しながら、短い成分リスト(1つのカルシウム塩のみ、及びガム、親水コロイド増粘剤又は合成乳化剤は不要)で凝集安定性を保証するという利点を示す。
本発明は、以下の態様であってもよい。
[1]
以下の成分:
組成の唯一のタンパク質源として少なくとも1種の植物タンパク質、
少なくとも1種の植物性油又は脂肪、
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成中の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム四水和物、
リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの混合物並びにそれらの対応する酸のリストから選択される少なくとも1種の緩衝剤、
任意選択で香料、着色剤及び/又はビタミン、
水、
を含む成分組成を有する液体植物性ミルクであって、
前記ミルクが、ガム、親水コロイド増粘剤、及び合成乳化剤を含まない、液体植物性ミルク。
[2]
前記ミルクのミネラル組成が、7~70mmol/Lで含まれるクエン酸塩の濃度に対し、
10~100mmol/LのCa、
10~80mmol/LのNa、
20~200mmol/LのK、
15~150mmol/LのP、を含むように、前記成分の性質及び量が選択される、項目1に記載の液体植物性ミルク。
[3]
前記少なくとも1種の植物タンパク質が、エンドウ豆タンパク質のみ又はソラ豆タンパク質のみである、項目1又は2のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[4]
前記少なくとも1種の植物タンパク質が、前記成分組成の2~8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、項目1~3のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[5]
前記少なくとも1種の植物油又は脂肪が、前記成分組成の1~5重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、項目1~4のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[6]
前記少なくとも1種の天然甘味料が、前記成分組成の1~10重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、項目1~5のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[7]
クエン酸カルシウム四水和物が、前記成分組成の0.18~1.8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、項目1~6のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[8]
前記緩衝剤が、リン酸二カリウムであり、前記リン酸二カリウムが、前記成分組成の0.5~1.8重量%に含まれる量で前記成分組成中に存在する、項目1~7のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[9]
前記成分組成が、
エンドウ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油、
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム、
リン酸二カリウム、
水、及び
任意選択で香料、着色剤及び/又はビタミンを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[10]
前記成分組成が、
ソラ豆タンパク質分離物、
少なくとも1種の植物性油、
少なくとも1種の天然甘味料、
前記組成の唯一のカルシウム塩としてクエン酸カルシウム、
リン酸二カリウム、
水、及び
任意選択で香料、着色剤及び/又はビタミンを含む、項目1~9のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[11]
前記少なくとも1種の植物タンパク質及び前記少なくとも1種の植物性脂肪が乳化され、前記ミルク中に凝集体を形成する、項目1~10のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[12]
前記凝集体の平均直径D[4,3]が、1~30μmの範囲である、項目11に記載の液体植物性ミルク。
[13]
前記ミルクのpHが、6.7~7.8に含まれる、項目1~12のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[14]
総固形分が、8重量%~24重量%である、項目1~13のいずれか一項に記載の液体植物性ミルク。
[15]
項目1~13のいずれか一項に記載の植物性ミルクの調製方法であって、前記方法が、
エマルションを得るために、水、前記少なくとも1種の植物タンパク質、前記少なくとも1種の植物性油又は脂肪、前記少なくとも1種の天然甘味料、クエン酸カルシウム四水和物、前記少なくとも1種の緩衝剤及び任意選択で香料、着色剤、ビタミンを混合するステップと、
任意選択でpHを調整するステップと、
前記組成物を均質化又は剪断するステップと、
前記均質化された組成物又は剪断された組成物を加熱するステップと、
前記組成物を容器内に無菌充填することと、を含む、方法。
[16]
コーヒー系飲料における添加物としての、項目1~14のいずれか一項に記載の植物性ミルクの使用。
図1
図2