(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】PI3K阻害剤としての化合物の製造方法及びその製造のための中間体化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20250519BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20250519BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20250519BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20250519BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20250519BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20250519BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20250519BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D401/12 CSP
A61K31/519
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023524264
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2021008200
(87)【国際公開番号】W WO2022005175
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080269
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523000891
【氏名又は名称】ボリュン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BORYUNG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】136,Changgyeonggung-ro,Jongno-gu,Seoul 03127,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100188499
【氏名又は名称】勝又 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100127568
【氏名又は名称】酒井 善典
(74)【代理人】
【識別番号】100171402
【氏名又は名称】上田 ▲茂▼
(74)【代理人】
【識別番号】100213779
【氏名又は名称】小川 有佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,オッキョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンクヮン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジハン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522852(JP,A)
【文献】Russian Chemical Bulletin, International Edition,2019年,Vol.68, No.2,pp.365-373
【文献】薬学雑誌,1973年,Vol.93, No.12,pp.1685-1687
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)化学式4の化合物で化学式5の化合物を製造するステップ;
(S2)化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させて化学式6の化合物を製造するステップ;及び
(S3)化学式6の化合物を環化反応させて化学式7の化合物を製造するステップを含む、化学式7の化合物の製造方法:
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
前記化学式4~化学式7において、X
1、X
2及びX
4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、
前記化学式6において、R
1及びR
2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンである。
【請求項2】
前記製造方法は、(S1-1)化学式3の化合物をハロゲン化反応させて化学式4の化合物を製造するステップをさらに含むものである、請求項1に記載の化学式7の化合物の製造方法:
[化学式3]
前記化学式3において、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、前記化学式4~化学式7で定義したものと同様である。
【請求項3】
前記製造方法は、(S1-2)化学式1の化合物と化学式2の化合物とを反応させて前記化学式3の化合物を製造するステップをさらに含むものである、請求項2に記載の化学式7の化合物の製造方法:
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1及び化学式2において、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、前記化学式4~化学式7で定義したものと同様であり、
前記化学式2において、X
3は、ハロゲン原子である。
【請求項4】
前記ステップ(S1)は、塩基条件下で行われるものである、請求項1に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(S1)は、非プロトン性極性溶媒で行われるものである、請求項1に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(S1-1)は、前記化学式3の化合物をN-クロロスクシンイミドと反応させて塩素化反応させるステップである、請求項2に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(S1)は、前記化学式4の化合物と水酸化アンモニウムとを反応させて化学式5の粗生成物を生成するステップを含む、請求項1に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(S1)は、前記粗生成物を精製するステップを含む、請求項7に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項9】
前記粗生成物を精製するステップは、精製溶媒としてエタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンから選択される少なくとも一つを含む、請求項8に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項10】
前記粗生成物を精製するステップは、イソプロピルアルコールを精製溶媒として用いる、請求項8に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(S3)において、前記環化反応は、前記化学式6の化合物を塩基と反応させるステップ及び酸を添加するステップを含む、請求項1に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項12】
前記塩基は、tert-ブトキシド塩である、請求項11に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項13】
前記酸は、酢酸又は塩酸であるものである、請求項11に記載の化学式7の化合物の製造方法。
【請求項14】
化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させるステップを含む、化学式6の化合物の製造方法:
[化学式5]
[化学式6]
前記化学式5及び化学式6において、X
1及びX
4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、
前記化学式6において、R
1及びR
2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンである。
【請求項15】
化学式6の化合物を環化反応させるステップを含む、化学式7の化合物の製造方法:
[化学式6]
[化学式7]
前記化学式6及び化学式7において、X
1及びX
4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、
前記化学式6において、R
1及びR
2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンである。
【請求項16】
下記化学式6で表される化合物:
[化学式6]
前記化学式6において、
X
1及びX
4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、
R
1及びR
2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PI3K阻害剤としての化合物の製造方法及びその製造のための中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3 kinase;PI3K)は、タンパク質の代わりに脂質分子をリン酸化する脂質キナーゼ(lipid kinase)であって、細胞生存(cell survival)、シグナル伝達(signal transduction)、細胞膜透過の調節(control of membrane trafficking)などで重要な役割を果たす。これらの調節に問題が生じると、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患などが発生する。
【0003】
近年、PI3キナーゼに対して選択的阻害効果を示す化合物を開発する研究の結果が報告されている。これらのPI3K阻害剤としての化合物は、癌、自己免疫疾患、及び呼吸器疾患などの治療に有効に用いられる。従って、PI3K阻害剤としての化合物の製造において、工程を単純化することが重要な課題として台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、工程の単純化が可能なPI3K阻害剤としての化合物の新しい製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0005】
本発明は、工程の単純化が可能なPI3K阻害剤としての化合物を製造するための中間体化合物の製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0006】
本発明は、工程の単純化が可能なPI3K阻害剤としての化合物を製造するための中間体化合物を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、化学式7の化合物の製造方法を提供する。
【0008】
化学式7の化合物の製造方法は、
(S1)化学式4の化合物で化学式5の化合物を製造するステップ;
(S2)化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させて化学式6の化合物を製造するステップ;及び
(S3)化学式6の化合物を環化反応させて化学式7の化合物を製造するステップを含んでいてもよい。
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
【0009】
前記化学式4~化学式7において、X1、X2及びX4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。
【0010】
前記X1、X2及びX4は、互いに同一であるか又は異なっていてもよい。X1、X2及びX4は、それぞれ独立に、F、Cl、Br又はIであってもよい。より詳しくは、前記X1、X2及びX4は、それぞれ独立に、Br又はClであってもよい。例えば、X1、X2及びX4は、いずれもClであってもよい。前記X1及び前記X4は、Clであってもよい。
【0011】
前記化学式6において、R1及びR2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンである。
【0012】
化学式7の化合物の製造方法は、(S1-1)化学式3の化合物をハロゲン化反応させて化学式4の化合物を製造するステップをさらに含んでいてもよい。
[化学式3]
【0013】
前記化学式3において、X1及びX2は、前記化学式4~化学式7で定義したものと同様であってもよい。
【0014】
化学式7の化合物の製造方法は、(S1-2)化学式1の化合物と化学式2の化合物とを反応させて前記化学式3の化合物を製造するステップをさらに含んでいてもよい。
[化学式1]
[化学式2]
【0015】
前記化学式1及び化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立に、前記化学式4~化学式7で定義したものと同様であってもよい。前記化学式2において、X3は、ハロゲン原子であってもよい。
【0016】
本明細書で特に言及しない限り、ハロゲン原子は、F、Cl、Br又はIから選択される何れか一つであってもよい。例えば、Cl及びBrから選択される何れか一つであってもよい。
【0017】
前記PI3K阻害剤としての化合物の製造方法は、下記ステップ(S1)~(S3)を含んでいてもよい。
(S1)化学式4の化合物をアミン化させて化学式5の化合物を製造するステップ;
(S2)化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させて化学式6の化合物を製造するステップ;及び
(S3)化学式6の化合物を環化反応させて化学式7の化合物を製造するステップ。
【0018】
前記PI3K阻害剤としての化合物の製造方法は、下記ステップ(S1-1)をさらに含んでいてもよい。
(S1-1)化学式3の化合物をハロゲン化反応させて化学式4の化合物を製造するステップ。
【0019】
前記PI3K阻害剤としての化合物の製造方法は、下記ステップ(S1-2)をさらに含んでいてもよい。
(S1-2)化学式1の化合物と化学式2の化合物とを反応させて化学式3の化合物を製造するステップ。
【0020】
一実施形態による化学式7の化合物の製造方法は、
(S1-2)化学式1の化合物と化学式2の化合物とを反応させて化学式3の化合物を製造するステップ;
(S1-1)化学式3の化合物をハロゲン化反応させて化学式4の化合物を製造するステップ;
(S1)化学式4の化合物で化学式5の化合物を製造するステップ;
(S2)化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させて化学式6の化合物を製造するステップ;及び
(S3)化学式6の化合物を環化反応させて化学式7の化合物を製造するステップを含んでいてもよく、化学式1~7の化合物について言及された事項は、矛盾しない限り、同様の内容が適用され得る。
【0021】
また、一実施形態による化学式7の化合物の製造方法は、
(S1-2)化学式1の化合物と化学式2の化合物とを反応させて化学式3の化合物を製造するステップ;
(S1-1)化学式3の化合物をハロゲン化反応させて化学式4の化合物を製造するステップ;
(S1)化学式4の化合物をアミン化させて化学式5の化合物を製造するステップ;
(S2)化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させて化学式6の化合物を製造するステップ;及び
(S3)化学式6の化合物を環化反応させて化学式7の化合物を製造するステップを含んでいてもよく、化学式1~7の化合物について言及された事項は、矛盾しない限り、同様の内容が適用され得る。
【0022】
前記ステップ(S1)は、非プロトン性極性溶媒で行ってもよい。例えば、前記ステップ(S1)における前記溶媒は、ジメチルスルホキシドを含んでいてもよい。
前記ステップ(S1)は、塩基条件下で行ってもよい。例えば、前記ステップ(S1)において、水酸化アンモニウムなどの塩基性化合物が反応に用いられてもよい。
【0023】
前記ステップ(S1-2)は、非プロトン性極性溶媒で行ってもよい。例えば、前記ステップ(S1-2)における前記溶媒は、アセトニトリルを含んでいてもよい。前記ステップ(S1-2)は、塩基条件下で行ってもよい。例えば、前記ステップ(S1-2)において、塩基性化合物が反応に用いられてもよい。前記塩基性化合物は、例えば、トリエチルアミンなどの第3級アミンであってもよい。
【0024】
本明細書において、非プロトン性極性溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記ステップ(S1-2)において、前記化学式1の化合物と前記化学式2の化合物と前記トリエチルアミンとの当量比は、1:1.1:1.5であってもよい。
【0026】
前記X1及びX2は、Clであってもよい。
より詳しくは、前記ステップ(S1-2)は、前記化学式1の化合物と前記化学式2の化合物を有機溶媒(例えば、アセトニトリルとトリエチルアミンの混合溶媒)に投入し、約1~3時間還流及び攪拌するステップ、常温に冷却した後、精製水を加えて常温で攪拌するステップ、濾過及び洗浄(例えば、洗浄溶媒は、精製水であってもよい)するステップ、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0027】
前記ステップ(S1-1)は、前記化学式3の化合物をN-クロロスクシンイミドと反応させて前記塩素化反応させるステップであってもよい。ステップ(S1-1)において、前記化学式3の化合物と前記N-クロロスクシンイミドとの当量比は、1:1.13であってもよい。
【0028】
前記ステップ(S1-1)は、非プロトン性極性溶媒で行ってもよい。より詳しくは、前記ステップ(S1-1)は、ジクロロメタン及びアセトニトリルから選択される少なくとも一つの溶媒で行ってもよい。
【0029】
より詳しくは、前記ステップ(S1-1)は、化学式3の化合物とN-クロロスクシンイミドを有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)に投入し、約3時間還流及び攪拌するステップ、常温に冷却した後濃縮し、有機溶媒(例えば、アセトニトリル)を加えて再び濃縮するステップ、アセトニトリルを加えて約0℃以上5℃以下に冷却及び攪拌するステップ、濾過及び洗浄(洗浄溶媒としては、有機溶媒を用いてもよく、例えば、アセトニトリルを用いてもよい)するステップ、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0030】
前記ステップ(S1)は、前記化学式4の化合物と水酸化アンモニウム(NH4OH)とを反応させて化学式5の粗生成物を生成するステップを含んでいてもよい。前記ステップ(S1)は、前記粗生成物を精製するステップを含んでいてもよい。
【0031】
前記粗生成物を精製するステップは、精製溶媒としてエタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンから選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。前記粗生成物を精製するステップは、イソプロピルアルコールを精製溶媒として用いてもよい。
【0032】
前記ステップ(S1)において、前記化学式4の化合物と水酸化アンモニウム(NH4OH)との当量比は、1:5~1:15であってもよい。
【0033】
より詳しくは、前記ステップ(S1)における前記粗生成物を生成するステップは、前記化学式4の化合物と前記水酸化アンモニウム(NH4OH)を有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)に投入し、約3時間加温(約70℃~90℃、例えば約80℃)攪拌するステップ、常温で約1~2時間(又は固体が生成されるまで約2時間以上)攪拌し、精製水を加えて常温で再び攪拌するステップ、濾過及び洗浄(洗浄溶媒としては、精製水を用いてもよい)するステップ、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0034】
より詳しくは、前記ステップ(S1)における前記粗生成物を精製するステップは、前記粗生成物に有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)を加えて約30分間還流及び攪拌するステップ、常温で約1~2時間攪拌するステップ、濾過及び洗浄するステップ(洗浄溶媒としては、有機溶媒を用いてもよく、例えば、イソプロピルアルコールを用いてもよい)、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0035】
前記ステップ(S2)において、前記化学式5の化合物と前記ジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとの当量比は、1:2であってもよい。
【0036】
より詳しくは、前記ステップ(S2)は、化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールを有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)で約1時間還流及び攪拌するステップ、常温に冷却及び濃縮するステップ、有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)を加えて還流及び攪拌するステップ、常温に冷却及び攪拌するステップ、濾過及び洗浄(洗浄溶媒としては、有機溶媒を用いてもよく、例えば、イソプロピルアルコールを用いてもよい)するステップ、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0037】
前記ステップ(S3)において、前記環化反応は、前記化学式6の化合物を塩基と反応させるステップ及び酸を添加するステップを含んでいてもよい。前記酸を添加するステップは、前記化学式6の化合物を前記塩基と反応させるステップの後に行ってもよい。前記塩基は、tert-ブトキシド塩であってもよい。例えば、前記塩基は、カリウムtert-ブトキシド又はナトリウムtert-ブトキシドであってもよい。前記酸は、有機酸又は無機酸であってもよく、例えば、酢酸又は塩酸であってもよい。
【0038】
前記ステップ(S3)において、前記化学式6の化合物と前記塩基との当量比は、1:1.5であってもよい。前記化学式6の化合物と前記酸との当量比は、1:3であってもよい。
【0039】
より詳しくは、前記ステップ(S3)は、化学式6の化合物を有機溶媒(例えば、テトラヒドロフランとアセトニトリルの混合溶媒)に投入し、約-5℃に冷却及び攪拌するステップ、前記塩基を分けて(例えば、約2~3回)投入し、約30分~2時間冷却及び攪拌するステップ、精製水を加えて酸(例えば、酢酸)を滴加し固体を生成させた後、常温で約1~2時間攪拌するステップ、濾過及び洗浄(洗浄溶媒としては、例えば、精製水を用いてもよい)するステップ、及び乾燥するステップを含んでいてもよい。
【0040】
一実施形態において、化学式7の化合物の製造方法は、化学式7の化合物の粗生成物を精製するステップをさらに含んでいてもよい。
【0041】
また、本発明は、化学式6の化合物の製造方法を提供することができる。一実施形態による化学式6の化合物の製造方法は、化学式5の化合物とジメチルホルムアミド-ジメチルアセタールとを反応させるステップを含んでいてもよい。
[化学式5]
[化学式6]
【0042】
前記化学式5及び化学式6において、X1及びX4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であってもよい。前記化学式6において、R1及びR2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンであってもよい。
【0043】
前記化学式6の化合物の製造方法は、本発明の化学式7の化合物の製造工程で用いられる中間体化合物である化学式6の化合物を提供することにより、化学式7の化合物の製造工程を単純化し、工程時間を削減することができる。
【0044】
一実施形態による化学式7の化合物の製造方法は、前述の化学式6の化合物を環化反応させるステップを含んでいてもよい。
【0045】
本発明の一実施形態によると、下記化学式6で表される化合物を提供することができる。
[化学式6]
【0046】
前記化学式6において、X1及びX4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子であってもよい。R1及びR2の何れか一つは水素原子であり、残り一つはジメチルアミンであってもよい。
【0047】
前記化学式6で表される化合物は、一実施形態のPI3K阻害剤としての化合物の製造工程に中間体化合物として用いられ、工程ステップ及び工程コストを削減することができる。
【0048】
本発明によると、従来知られているPI3K阻害剤としての化合物の製造方法とは異なり、PI3K阻害剤としての化合物の製造に必要な工程ステップを減らすことができ、数日以上かかる長時間の還流及び攪拌反応をすることなく、PI3K阻害剤としての化合物を合成することができる。また、穏やかな反応条件下で反応を行うことができるため、合成中に起こり得る危険要素を著しく減らし、製造工程を容易に管理することができる。
【0049】
従って、工程の単純化が実現でき、工程に所要される時間が短縮され、工程コストが削減でき、工程管理が容易になる。よって、一実施形態によるPI3K阻害剤としての化合物の製造方法は、PI3K阻害剤としての化合物の産業的生産に適している。
【発明の効果】
【0050】
本発明のPI3K阻害剤としての化合物の製造方法によると、PI3K阻害剤としての化合物の製造工程を単純化し、製造ステップ及び製造コストを削減することが可能である。また、本発明によるPI3K阻害剤としての化合物を製造するための中間体化合物は、PI3K阻害剤としての化合物の製造工程で用いることにより製造ステップ及び製造コストを削減することができる。これにより、PI3K阻害剤としての化合物の生産性が向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、下記実施例を参照しながら本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法について詳しく説明する。しかし本発明は、以下に開示される実施例によって限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で具体化してもよい。これらの実施例は、単に本発明の開示を完全なものとし、かつ本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供されるものであり、本発明は、請求項によって定義されるべきである。
【0052】
実施例1:(S)-4-((1-(4,8-ジクロロ-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)アミノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-5(8H)-オン{(S)-4-((1-(4,8-dichloro-1-oxo-2-phenyl-1,2-dihydroisoquinolin-3-yl)ethyl)amino)pyrido[2,3-d]pyrimidin-5(8H)-one}の合成
【0053】
【0054】
2.ステップ(1)-中間体化合物QHKの合成
前記反応式により、中間体化合物IQA((S)-3-(1-aminoethyl)-8-chloro-2-phenylisoquinolin-1(2H)-one)(10g、33.5mmol)にアセトニトリル(acetonitrile、AN)(80ml)、DCK(1-(4,6-dichloropyrimidin-5-yl)ethanone)(7.0g、36.8mmol)及びトリエチルアミン(triethylamine、Et3-N)(7.0ml、50.2mmol)を加えて3時間還流攪拌した。常温(25℃)に冷却した後、精製水(20ml)を加えて常温(25℃)で攪拌した。固体を濾過し精製水(25ml)で洗浄した後、40℃の熱風で乾燥して、中間体化合物QHK((S)-3-(1-((5-acetyl-6-chloropyrimidin-4-yl)amino)ethyl)-8-chloro-2-phenylisoquinolin-1(2H)-one)を得た(13.8g、収率:91%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.43(d,3H),δ2.78(s,3H),δ4.92(t,1H)δ6.48(s,1H),δ7.26-7.46(m,8H),δ8.18(s,1H),δ8.97(d,1H).
【0055】
3.ステップ(2)-中間体化合物IQCKの合成
前記ステップ(1)で得られた中間体化合物QHK(6.0g、13mmol)にジクロロメタン(dichloromethane、MC)(35ml)及びN-クロロスクシンイミド(N-chlorosuccinimide、NCS)(2.0g、15mmol)を加えて3時間還流攪拌した。常温(25℃)に冷却した後、反応混合物を減圧濃縮した。濃縮残渣にアセトニトリル(18ml)を加えて1時間0~5℃に冷却攪拌した後、固体を濾過し、アセトニトリル(6ml)で洗浄し、40℃の熱風で乾燥して、中間体化合物IQCK((S)-3-(1-((5-acetyl-6-chloropyrimidin-4-yl)amino)ethyl)-4,8-dichloro-2-phenylisoquinolin-1(2H)-one)を得た(5.7g、収率:89%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.62(d,3H),δ2.74(s,3H),δ4.98(t,1H),δ7.17-7.95(m,8H),δ8.26(s,1H),δ9.37(broad,1H)
【0056】
4.ステップ(3)-中間体化合物IQNKの合成
前記ステップ(2)で得られた中間体化合物IQCK(30.4g、62mmol)にジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)(304ml)、水酸化アンモニウム(48.6ml、642mmol)を加えて5時間80℃で加熱攪拌した後、常温に冷却し一晩中攪拌した。固体が生成された反応混合物に精製水(304ml)を加え、常温でさらに1.5時間攪拌した。反応混合物の固体を濾過し精製水(610ml)で洗浄した後、40℃の熱風で乾燥して、IQCKの粗生成物(29.8g)を得た。IQNK粗生成物(29.8g)をイソプロピルアルコール(300ml)に入れて10分間還流攪拌した後、常温に冷却し、さらに2時間攪拌した。固体を濾過しイソプロピルアルコール(75ml)で洗浄した後、40℃の熱風で乾燥して、精製されたIQNK((S)-3-(1-((5-acetyl-6-aminopyrimidin-4-yl)amino)ethyl)-4,8-dichloro-2-phenylisoquinolin-1(2H)-one)を得た(26.9g、収率92%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.60(d,3H),δ2.56(s,3H),δ5.03(t,1H),δ5.77(br,2H),δ7.15-7.97(m,9H)
【0057】
ステップ(3)において、IQNK粗生成物の精製溶媒としてイソプロピルアルコールを用いたが、実施例がこれに限定されるものではなく、様々な有機溶媒を用いてもよい。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンから選択される何れか一つ以上の有機溶媒を用いてもよい。好ましくは、イソプロピルアルコール溶媒を用いてもよい。
【0058】
5.ステップ(4)-中間体化合物IQVKの合成
前記ステップ(3)で得られた中間体化合物IQNK(26.8g、57.2mmol)にジクロロメタン(130ml)及びジメチルホルムアミド-ジメチルアセタール(dimethylformamide-dimethylacetal、DMF-DMA)(15.2ml、114.4mmol)を加えて1時間還流攪拌した後、常温(25℃)に冷却し、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロピルアルコール(190ml)を加えて還流攪拌し、常温に冷却した後、固体を濾過した。濾過した固体をイソプロピルアルコール(80ml)で洗浄し、40℃の熱風で乾燥して、中間体化合物IQVK((S)-N’-(5-acetyl-6-((1-(4,8-dichloro-1-oxo-2-phenyl-1,2-dihydroisoquinolin-3-yl)ethyl)amino)pyrimidin-4-yl)-N,N-dimethylformimidamide)を得た(26.2g、収率:88%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.60(d,3H),δ2.75(s,3H),δ3.11(s,3H),δ3.14(s,3H),δ4.99(t,1H),δ7.26-7.96(m,8H),δ8.10(s,1H),δ8.55(s,1H)
【0059】
6.ステップ(5)-最終生成物の合成
前記ステップ(4)で得られた中間体化合物IQVK(1g、1.9mmol)にテトラヒドロフラン(6ml)を加えて-5℃に冷却攪拌した。カリウムtert-ブトキシド(0.32g、2.9mmol)を3回に分けて添加し、温度を-5℃に保持しながら0.5時間攪拌した後、精製水(12ml)を加え、酢酸(0.33ml、5.7mmol)を加えてから常温で2時間攪拌した。生成された固体を濾過し精製水(10ml)で洗浄した後、40℃の熱風で乾燥して、最終生成物((S)-4-((1-(4,8-dichloro-1-oxo-2-phenyl-1,2-dihydroisoquinolin-3-yl)ethyl)amino)pyrido[2,3-d]pyrimidin-5(8H)-one)を得た(0.85g、収率:77%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.67(d,3H),δ5.03(t,1H),δ6.31(d,1H),δ7.20-7.95(m,9H),δ8.25(s,1H)
【0060】
実施例1を参照すると、一実施形態によるPI3K阻害剤としての化合物の製造方法は、ステップ(1)~ステップ(5)の5つの工程のみでPI3K阻害剤としての化合物を合成することができる。また、各ステップにおける反応時間が短いため、工程時間も短縮できる。より詳しくは、ステップ(1)~ステップ(5)は、数日以上も還流及び攪拌を行わなければならないなど、苛酷な反応条件を必要としない。特に、ステップ(1)~ステップ(5)においては、約1~5時間前後の還流及び攪拌ステップを含んでおり、それ以上の時間を要する還流及び攪拌ステップを含まない。従って、一実施形態のPI3K阻害剤としての化合物の製造方法によれば、全作業日数を数日以上短縮することができる。また、TFA(Trifluoroacetic acid、トリフルオロ酢酸)又はMsOH(Methane Sulfonic Acid、メタンスルホン酸)などの強酸を用いないため、穏やかな反応条件下で反応を行うことができる。よって、合成中に起こり得る危険要素を著しく減らし、製造工程を容易に管理できる。
【0061】
一実施形態によるPI3K阻害剤は、ステップ(S1)~ステップ(S5)を含む製造方法でPI3K阻害剤を製造することにより工程を単純化し、製造ステップ及び製造コストを削減することができる。また、穏やかな反応条件下でPI3K阻害剤を製造することにより、製造工程を容易に管理できる。