(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】アタッチメント主軸を用いた加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20250519BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20250519BHJP
B23Q 5/04 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
B23Q17/22 D
B23Q17/24 B
B23Q5/04 520Z
(21)【出願番号】P 2024049575
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓志
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 知博
(72)【発明者】
【氏名】山本 風雅
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-138392(JP,A)
【文献】特開2003-011036(JP,A)
【文献】特開平09-136234(JP,A)
【文献】特開2014-135068(JP,A)
【文献】特開2011-255442(JP,A)
【文献】特開2007-290042(JP,A)
【文献】特開2009-233785(JP,A)
【文献】特開平10-138097(JP,A)
【文献】特開2005-088176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 5/04
B23Q 15/00 - 15/28
B23Q 17/22 - 17/24
G01C 11/00 - 11/20
G05B 19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線周りに回転可能に主軸頭に支持され、先端部に工具ホルダを装着するためのテーパ穴が形成された主軸を備えた工作機械上で
、回転アクチュエータを内蔵したアタッチメント主軸を
工具ホルダの代わりに主軸
のテーパ穴に装着し、主軸を回転
軸線周りの原点位置に停止した状態で
、テーパ穴に装着したアタッチメント主軸に装着した工具を回転アクチュエータで回転させて加工を行う加工方法において、
第1の工具を取り付けた工具ホルダを主軸
のテーパ穴に装着する工程と、
工具ホルダを主軸で回転させて、テーブルに載置したワークを
第1の工具で加工する工程と、
第2の工具を装着したアタッチメント主軸を
工具ホルダに代えて主軸
のテーパ穴に装着する工程と、
アタッチメント主軸を装着したまま主軸を
回転軸線周りの回転位置である複数の
測定位置に
移動する工程と、
複数の
測定位置のそれぞれで、テーブルに載置したセンサを用いて、アタッチメント主軸の回転軸線と直交する第1の方向にアタッチメント主軸の回転軸線の位置を求める工程と、
前記複数の
測定位置のそれぞれで求めたアタッチメント主軸の回転軸線の第1の方向の位置
と、主軸の回転軸線を中心とした原点位置と前記複数の測定位置のそれぞれとの間の角度とに基づき、主軸が原点位置にあるときの、主軸の回転軸線に対するアタッチメント主軸の回転軸線の位置の第1の方向へのずれ量と、アタッチメント主軸の回転軸線および第1の方向に直交する方向である第2の方向へのずれ量とを算出する工程と、
主軸を原点位置に移動、固定する工程と、
前記第1の方向へのずれ量と第2の方向へのずれ量を補償するよう補正しつつ、
主軸を原点位置に固定した状態で、回転アクチュエータで回転させた第2の工具で、テーブルに載置した前記ワークを加工する工程とを備えることを特徴とした加工方法。
【請求項2】
前記アタッチメント主軸の回転軸線の位置を求める工程は、回転アクチュエータを回転させながら、アタッチメント主軸の回転軸線の位置を求める請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記センサは、レーザ光を直線状に照射するレーザ照射部と、該レーザ光を受光するレーザ受光部とを備え、前記レーザ光が遮られたときにスキップ信号を出力する請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記加工方法は、前記レーザ光が、工作機械のX軸またはY軸方向に照射されるように、前記センサを配置し、前記アタッチメント主軸に装着された第2の工具が、前記レーザ光を横断するように、前記工作機械の主軸をY軸またはX軸に沿って両方向から前記レーザ光にアプローチさせることを更に含む請求項3に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、工作機械の主軸に装着するアタッチメント主軸を用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テーブル上に球状タッチセンサを備えたタッチプローブを定置し、主軸に基準工具を装着して、基準工具をX軸、Y軸、Z軸方向に移動させて、タッチプローブに当接させた座標を求め、これに基づいてアタッチメント主軸の補正値を求めるようにした補正方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の補正方法では、タッチプローブに基準工具を当接させているので、タッチプローブが不可避的に有するロストモーションのために、得られた補正値はロストモーションに起因する誤差が含まれている。また、タッチプローブは、測定対象物が当接する方向に依存する誤差を含んでいるので、特許文献1の補正方法で得られた補正値は、基準工具をタッチプローブにアプローチする方向によっても変わってしまう問題がある。更に、特許文献1の補正方法では、基準工具をタッチプローブに物理的に当接させるので、回転する工具では測定することができない。
【0005】
本願発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、容易かつ迅速にアタッチメント主軸を装着する主軸に対するアタッチメント主軸の位置ずれを測定し、アタッチメント主軸を使用したときの加工誤差を容易に補正し、高精度にワークを加工可能な加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本願発明によれば、回転軸線周りに回転可能に主軸頭に支持され、先端部に工具ホルダを装着するためのテーパ穴が形成された主軸を備えた工作機械上で、回転アクチュエータを内蔵したアタッチメント主軸を工具ホルダの代わりに主軸のテーパ穴に装着し、主軸を回転軸線周りの原点位置に停止した状態で、テーパ穴に装着したアタッチメント主軸に装着した工具を回転アクチュエータで回転させて加工を行う加工方法において、第1の工具を取り付けた工具ホルダを主軸のテーパ穴に装着する工程と、工具ホルダを主軸で回転させて、テーブルに載置したワークを第1の工具で加工する工程と、第2の工具を装着したアタッチメント主軸を工具ホルダに代えて主軸のテーパ穴に装着する工程と、アタッチメント主軸を装着したまま主軸を回転軸線周りの回転位置である複数の測定位置に移動する工程と、複数の測定位置のそれぞれで、テーブルに載置したセンサを用いて、アタッチメント主軸の回転軸線と直交する第1の方向にアタッチメント主軸の回転軸線の位置を求める工程と、前記複数の測定位置のそれぞれで求めたアタッチメント主軸の回転軸線の第1の方向の位置と、主軸の回転軸線を中心とした原点位置と前記複数の測定位置のそれぞれとの間の角度とに基づき、主軸が原点位置にあるときの、主軸の回転軸線に対するアタッチメント主軸の回転軸線の位置の第1の方向へのずれ量と、アタッチメント主軸の回転軸線および第1の方向に直交する方向である第2の方向へのずれ量とを算出する工程と、主軸を原点位置に移動、固定する工程と、前記第1の方向へのずれ量と第2の方向へのずれ量を補償するよう補正しつつ、主軸を原点位置に固定した状態で、回転アクチュエータで回転させた第2の工具で、テーブルに載置した前記ワークを加工する工程とを備える加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、工作機械の主軸に装着したアタッチメント主軸の回転軸線と、工作機械の主軸の回転軸線との間の位置ずれを、直交する第1の方向へのずれ量と第2の方向へのずれ量とを工作機械上でセンサを用いて求めることによって、加工誤差の補正量を容易かつ迅速に求めることが可能となり、ワークを高精度に加工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本願発明を適用可能な工作機械の一例を示す略示側面図である。
【
図2】主軸にアタッチメント主軸を装着した
図1と同様の工作機械の略示側面図である。
【
図3】アタッチメント主軸の一例を示す断面図である。
【
図4】本願発明の実施形態によるアタッチメント主軸誤差測定システムの示すブロック図である。
【
図5】アタッチメント主軸誤差測定方法のフローチャートである。
【
図7】アタッチメント主軸誤差測定の動作説明図である。
【
図8】アタッチメント主軸を装着する主軸の回転軸線に対するアタッチメント主軸の回転軸線の位置ずれの説明図である。
【
図9】他の例によるアタッチメント主軸誤差測定方法の動作説明図である。
【
図10】
図9の例によるアタッチメント主軸誤差測定方法の動作説明図である。
【
図11】
図9、10のアタッチメント主軸誤差測定方法におけるアタッチメント主軸の回転軸線の位置ずれを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本願発明を適用可能な工作機械の一例を示す略示側面図である。
図1において、工作機械100は立形マシニングセンタである。本実施形態では、工作機械100は直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)の送り軸を有する3軸加工機である。
【0010】
工作機械100は、工場等の床面に固定される基台としてのベッド102を備えている。ベッド102の上面の後端側にはコラム104が立設されている。コラム104の前面には、Xスライダ106が、水平な左右方向であるX軸方向(
図1では紙面に垂直な方向)に往復動可能に取り付けられている。Xスライダ106は、X軸方向に延設されたX軸案内レール108に沿って摺動するブロック106aを有している。
【0011】
コラム104には、Xスライダ106を往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータMxが設けられており、Xスライダ106には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。また、X軸送り装置の位置を検知するX座標検知装置として、コラム104には、X軸デジタルスケール(図示せず)が設けられている。X座標検知装置は、X軸サーボモータMxの回転位置を検知するロータリエンコーダ(図示せず)を備えていてもよい。
【0012】
Xスライダ106の前面には、主軸頭110が、鉛直方向であるZ軸方向に往復動可能に取付けられている。主軸頭110は、Z軸方向に延設されたZ軸案内レール112に沿って摺動するブロック110aを有している。主軸頭110を往復駆動するZ軸送り装置として、Xスライダ106には、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたZ軸サーボモータMzが設けられており、コラム104には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。また、Z軸送り装置の位置を検知するZ座標検知装置として、Xスライダ106には、Z軸デジタルスケール(図示せず)が設けられている。Z座標検知装置は、Z軸サーボモータMzの回転位置を検知するロータリエンコーダ(図示せず)を備えていてもよい。
【0013】
主軸頭110には、軸受116によって、主軸114が、鉛直方向に伸びる回転軸線Osを中心として回転可能に支持されている。主軸頭110は、主軸114を回転駆動するための主軸サーボモータMsと、回転軸線Os周りの主軸114の回転位置を検知する回転位置検知装置として、主軸114に取り付けられたロータリエンコーダ118とを備えている。
【0014】
ベッド102の前端側(
図1では左側)には、テーブル120が、X軸に垂直な水平前後方向であるY軸方向に往復動可能に配設されている。テーブル120は、Y軸方向に延設されたY軸案内レール122に沿って摺動するブロック120aを有している。工作機械100が加工すべきワークWは、主軸114に対面するテーブル120の上面にパレット(図示せず)や治具(図示せず)を用いて固定される。
【0015】
テーブル120を往復駆動するY軸送り装置として、ベッド102には、Y軸方向に延設されたボールねじ124と、該ボールねじ124の一端に連結されたY軸サーボモータMyが設けられており、テーブル120には、ボールねじ124に係合するナット126が取り付けられている。また、Y軸送り装置の位置を検知するY座標検知装置として、ベッド102には、Y軸デジタルスケール128が設けられている。Y座標検知装置は、Y軸サーボモータMyの回転位置を検知するロータリエンコーダ(図示せず)を備えていてもよい。
【0016】
主軸114の先端部には、第1の工具としてのエンドミルやドリルのような回転切削工具T(以下、単に工具Tと記載する)を装着することができる。
図1では、主軸114の先端部には、HSK規格(DIN69893)やISO7388のような所定の規格に適合したテーパ穴(図示せず)が形成されており、工具Tは、該規格に準拠した工具ホルダ130を介して主軸114の先端部に装着されている。工作機械100は、複数の工具Tを格納した工具マガジン(図示せず)と、該工具マガジンと主軸114との間で工具Tを交換する自動工具交換装置(図示せず)を備えることができる。
【0017】
工作機械100は、主軸114のテーパ穴の内周面を清掃したり、主軸114に装着した工具からエアを噴き出して切りくずを吹き出して切りくずを除去するために、清掃用空気供給装置を備えることができる。清掃用空気供給装置は、回転軸線Osに沿って主軸114内に設けられた空気供給管路(図示せず)または空気供給通路(図示せず)と、該空気供給管路または空気供給通路に圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置(図示せず)とを備えることができる。圧縮空気供給装置は、空気を圧縮するコンプレッサ(図示せず)、圧縮された空気を貯留するアキュムレータ(図示せず)およびアキュムレータの出口に配設された圧力調整弁(図示せず)等を含むことができる。圧縮空気供給装置は、アキュムレータと、主軸114の空気供給管路または空気供給通路とを連通/遮断するON/OFF弁(図示せず)を含むことができる。ON/OFF弁は、例えばソレノイドバルブとすることができる。圧縮空気供給装置は、主軸114のテーパ穴の内周面を清掃したり、工具からエアを噴き出して切りくずを除去するだけでなく、後述するアタッチメント主軸10に、動力源となる圧縮空気を供給するためのアタッチメント主軸駆動源64(
図4参照)の役割を兼ねる。
【0018】
工作機械100は制御装置200を備えている。制御装置200は、CPU(中央演算素子)、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)のようなメモリ装置、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のような記憶デバイス、出入力ポート、および、これらを相互接続する双方向バスを含むコンピュータおよび関連するソフトウェアから構成することができ、X軸、Y軸、Z軸のサーボモータMx、My、Mzおよび主軸114のサーボモータMsを制御するNC装置や、工作機械100の周辺機器(図示せず)を制御する機械制御装置を含むことができる。工作機械の周辺機器は、工具マガジン(図示せず)、自動工具交換装置(図示せず)、圧縮空気供給装置および加工液供給装置(図示せず)などを含むことができる。
【0019】
本実施形態では、工作機械100は、回転軸線Os周りの主軸114の回転角度位置を制御可能である(Cs軸制御)。具体的には、本実施形態では、主軸114は、速度制御モードと、位置制御モード(Cs軸制御モードと記載することもある)と、の双方によって制御可能である。すなわち、本願発明を適用する工作機械100は、X軸、Y軸、Z軸の軸送り制御に加えて、Cs軸制御を行うことができる。
【0020】
速度制御モードでは、主軸114は、速度(回転数)に基づいて制御され、この場合、回転軸線Os周りの主軸114の回転角度位置は制御されない。対照的に、Cs軸制御モードでは、主軸114は、回転数と共に、回転軸線Os周りの原点位置からの回転角度量に基づいて制御され、したがって、回転軸線Os周りの主軸114の回転角度位置が制御可能である。回転角度の原点は、例えば主軸頭110のある位置に対して定められた所定の位置に設定されることができる。さらに、原点は、この所定の位置からずれた任意の位置に変更されることもできる。
【0021】
主軸114の先端には、
図2に示すように、工具Tに代えて、アタッチメント主軸10を装着することができる。
図3を参照すると、一例として示すアタッチメント主軸10はハウジング12を有している。ハウジング12は、主軸114のテーパ穴に嵌合すれるテーパシャンク部12aが基端側に形成されている。本実施形態では、ハウジング12は、HSK規格(DIN69893)に準拠する2面拘束形の工具ホルダ形状を有している。ハウジング12は、ISO7388によって規定されるような7/24テーパの工具ホルダの形状を有していてもよい。ハウジング12は、また、工作機械100の自動工具交換装置の交換アーム(図示せず)に係合するV溝12bを有している。また、工具ホルダには、主軸114の空気通路からアタッチメント主軸へと圧縮空気の供給を受けるため、HSK規格の工具ホルダならクーラントパイプ、7/24テーパの工具ホルダならセンター穴の空いたプルスタッドボルトなど、主軸114と分離可能な圧縮空気の供給路が備えられている。
【0022】
ハウジング12内には、主軸14が、軸受16によって、回転軸線Oa周りに回転可能に支持されている。アタッチメント主軸10の回転軸線Oaは、アタッチメント主軸10が主軸114の先端部に装着されたときに、主軸114の回転軸線Osに合致する。
【0023】
アタッチメント主軸10は、更に、主軸14を回転駆動する主軸駆動装置を備えている。本実施形態では、主軸駆動装置は、ハウジング12の空気室18内に配設された回転アクチュエータとしてのエアタービン20を備えている。エアタービン20は、回転軸線Oa周りに回転するように、主軸14に結合されている。ハウジング12は空気室18に空気を供給する空気供給通路22と、空気室18から空気を外部に排気する排気通路24とを有している。空気供給通路22は、アタッチメント主軸10が工作機械100の主軸114に装着されたときに、主軸114の空気通路に連通する。
【0024】
ハウジング12は、また、位置決め突起部26を有している。位置決め突起部26は回転軸線Oaに平行に延設された凹部26aと、該凹部26a内で回転軸線Oa方向に移動可能に収容されたボール28と、凹部26a内に配設された付勢部材としてのコイルばね30とを含む。ボール28を凹部26a内に収容した後に凹部26aの開口部にキャップ32が取付けられる。キャップ32は、
図3に示すように、ボール28が、一部が外部に突出可能であるが、キャップ32の開口部を超えてキャップ32から脱離できない形状を有している。こうして、ボール28は、コイルばね30によって、キャップ32の開口部から一部が外部に突出するように、キャップ32に対して付勢される。ボール28は、アタッチメント主軸10が工作機械100の主軸114に装着されたときに、主軸頭110の位置決め係合部132に係合する。これによって、アタッチメント主軸10は、Cs軸制御モードにおける回転軸線Oa周りの原点位置に位置決めされる。
【0025】
ハウジング12は、更に、テーパシャンク部12aの反対側の端部の中心部に開口部を有しており、該開口部を通って主軸14が突出する。主軸14の前端部には工具装着穴14aが形成されており、該工具装着穴14aに第2の工具としての工具34が装着される。本実施形態では、工具34は、コレットチャック36によって工具装着穴14aに固定される。本実施形態では、コレットチャック36は、主軸14の前端部の外周面に形成されたねじ部にナット38を螺合し締め付けることによって、工具装着穴14a内に押し込まれると共に、工具34を把持するようになっている。
【0026】
以下、工作機械100に本願発明を適用する場合を一例として、本願発明のアタッチメント主軸誤差測定システムおよび測定方法を説明する。
図4は、本願発明のアタッチメント主軸誤差測定システムの好ましい実施形態を示すブロック図である。
図4において、アタッチメント主軸誤差測定システム50は、制御装置52、入力部54、サーボアンプ56、サーボモータ58、位置検知装置60、記憶装置62およびセンサとしての工具測定装置70を主要な構成要素として具備している。
【0027】
制御装置52は、入力部54から入力された工具測定プログラムに従い、サーボアンプからサーボモータ58に出力される電流を制御し、主軸114に装着されているアタッチメント主軸10と工具測定装置70とを相対移動させる。制御装置52は、
図1、2の実施形態では制御装置200によって構成することができる。つまり、本願発明を適用する工作機械のNC装置や機械制御装置の一部として構成することができる。
【0028】
入力部54は、工具測定プログラムを制御装置52へ入力する要素であって、制御装置52(
図1、2の実施形態では制御装置200)の出入力ポートに接続されたキーボード(図示せず)やタッチパネル(図示せず)のような入力デバイスや、通信ネットワークを介して制御装置52に接続されたサーバー(図示せず)やパーソナルコンピュータ(図示せず)、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置を含むことができる。
【0029】
サーボモータ58は、アタッチメント主軸10が装着されている工作機械の送り軸を駆動する要素であって、
図1、2の実施形態では、工作機械100のX軸サーボモータMx、Y軸サーボモータMy、Z軸サーボモータMzおよび主軸サーボモータMsによって構成することができる。
【0030】
位置検知装置60は、アタッチメント主軸10が装着されている工作機械の送り軸の座標を制御装置52に出力する要素であって、
図1、2の実施形態では、X軸デジタルスケール、Y軸デジタルスケール128、Z軸デジタルスケールおよびロータリエンコーダ118によって構成することができる。位置検知装置60は、X軸デジタルスケール、Y軸デジタルスケール128、Z軸デジタルスケールに代えて、X軸サーボモータMx、Y軸サーボモータMyおよびZ軸サーボモータMzに設けたロータリエンコーダ(図示せず)によって構成してもよい。
【0031】
記憶装置62は、測定されたアタッチメント主軸の誤差を記憶する要素であって、
図1、2の実施形態では、制御装置200が備えるRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)のようなメモリ装置および/またはHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のような記憶デバイスによって構成することができる。
【0032】
工具測定装置70は、測定対象である工具を検知したときにスキップ信号を出力する非接触式の工具測定装置により構成することができる。
図6を参照すると、一例として示す工具測定装置70は、直線状の細いレーザ光を照射するレーザ照射部と、該レーザ光を受けるレーザ受光部とを備えて、レーザ照射部とレーザ受光部との間のレーザ光を測定対象物が横切ったときに、スキップ信号を出力するレーザ式測定装置である。工具をレーザ光に接近させるためには、X軸、Y軸、Z軸のいずれかに工具を移動させる指令を与えて軸送りするが、指令した目標位置まで工具が移動する前にスキップ信号が出力された時点で軸の移動が停止し、指令した目標位置に到達していない状態で次のプログラム(ブロック)に移る。移動指令が完了していないのに、移動を止めて、指令をスキップさせるためのトリガになる信号をスキップ信号という。
【0033】
より詳細には、工具測定装置70は、前記レーザ照射部とレーザ受光部とを所定の位置に配置するフレームを有している。該フレームは、アタッチメント主軸10を装着する工作機械の適当な部位に固定されるベース部72を有している。ベース部72を取り付ける工作機械の所定の部位は、アタッチメント主軸10を装着する主軸の回転軸線、例えば工作機械100の主軸114の回転軸線Osに関して水平方向に、該主軸に対して相対移動可能なサポート部材、例えば工作機械100のテーブル120とすることができる。
【0034】
工具測定装置70の前記フレームは、ベース部72を工作機械のサポート部材に固定したときに前記主軸の回転軸線に対して平行になる一対の腕部74a、74bを有している。一対の腕部74a、74bの先端部分には、レーザ光Lを照射するレーザ照射部76aと、レーザ光Lを受光するレーザ受光部76b(
図7参照)が互いに対向するように配設されている。こうして、工具測定装置70を構成するレーザ式測定装置は、ベース部72および一対の腕部74a、74bから成る概ねU字形のフレームを備え、腕部74a、74bの間にレーザ光Lを照射するようになっている。レーザ式測定装置は、更に、レーザ照射部76aからレーザ受光部76bへ向けて照射されるレーザ光Lが遮断されたときに、スキップ信号を出力するスキップ信号生成回路(図示せず)を備えている。
【0035】
工具測定装置70は、工作機械100の主軸114の回転軸線Osに対して垂直な方向にレーザ光Lを照射するように、テーブル120固定される。工具測定装置70は、好ましくは、X軸またはY軸に平行にレーザ光LxまたはLyを照射するように、テーブル120に固定される。以下、工具測定装置70は、
図2に示すように、Y軸方向にレーザ光Lyを照射するようにテーブル120上に配置されているとして、アタッチメント主軸誤差測定方法を説明するが、X軸方向(紙面に垂直な方向)に照射するように配置してもよい。
【0036】
ワークWを加工する際、アタッチメント主軸10の主軸14には、第2の工具として非常に細い工具が装着されるので、アタッチメント主軸10は、通常は、工作機械100の主軸114の先端部に第1の工程として装着されるエンドミルやドリルのような回転切削工具である工具TによってワークWが加工された後に使用される。
【0037】
アタッチメント主軸10は、その回転軸線Oaが、工作機械100の主軸114の回転軸線Osに合致するように、主軸114に装着されると説明したが、実際には、主軸114に装着されているアタッチメント主軸10の回転軸線Oaは、工作機械100の回転軸線Osと完全には一致していない。本願発明では、アタッチメント主軸10による加工が開始される前に、以下に説明するアタッチメント主軸誤差測定方法によって、アタッチメント主軸10の回転軸線Oaの工作機械100の回転軸線Osからのずれ量を測定する。
【0038】
図5において、第1の工具としての工具TによるワークWの加工の後に、アタッチメント主軸10によりワークWを加工するために、主軸114の先端にアタッチメント主軸10が装着される(ステップS10)。これは、オペレータが手動で行ってもよいが、通常は、制御装置52に入力された加工プログラムに従い、工作機械100の自動工具交換装置で行われる。自動工具交換に際しては、工作機械100の主軸114はCs軸制御により原点位置に割り出されている。また、アタッチメント主軸10が主軸114に装着されるときに、アタッチメント主軸10のボール28が工作機械100の主軸頭110の位置決め係合部132に係合し、アタッチメント主軸10がCs軸制御モードにおける原点位置P0(
図8参照)に位置決めされる。
【0039】
ここで
図8を参照すると、Cs軸が原点位置P0にあるときのアタッチメント主軸10の主軸14の回転軸線Oaの位置Pr0が図示されている。工作機械100の主軸114の回転軸線Osからのアタッチメント主軸10の主軸14の回転軸線Oaの位置ずれ量(偏差)は、以下の式で表される。
δx=X
ca(0)-Xs=rcosφ…(1)
δy=Y
ca(0)-Ys=rsinφ…(2)
【0040】
工作機械100の主軸114にアタッチメント主軸10が装着された後、ステップS12以下でアタッチメント主軸誤差測定方法が実行される。これは、例えば、制御装置52に入力される加工プログラム中に、アタッチメント主軸誤差測定プログラムを読み込む指令を書き込むことによって自動で行うことができる。加工プログラムの実行とは無関係に、アタッチメント主軸誤差測定プログラムのみを実行してもよい。
【0041】
まず、アタッチメント主軸10の主軸14が所定の回転速度、例えば加工するときの回転速度で回転させられる(ステップS12)。好ましくは、これを所定時間継続してアタッチメント主軸10の暖機運転が実行される(ステップS14)。暖機運転により、アタッチメント主軸10の回転が安定する。
【0042】
次いで、Cs軸制御により、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第1の測定位置Pr1へ移動させる(ステップS16)。
図8の例では、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ1の回転位置である。第1の測定位置Pr1への主軸114の回転はCs軸制御モードで行うことができる。このとき、アタッチメント主軸10のボール28は、主軸頭110の位置決め係合部132から離脱する。
【0043】
次いで、アタッチメント主軸10の工具34を、+側および-側からレーザ光Lを横断するように、工作機械100の主軸114をテーブル120に対して相対移動させる。アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光Lを遮断したときの座標に基づいて、回転軸線Osの移動方向座標値を演算する(ステップS18)。これは、例えば、
図7に示すように、レーザ光LがY軸方向に照射されるように工具測定装置70がテーブル120に固定されている場合、以下に説明するように、主軸114をX軸方向に移動させて実行することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、X軸方向が、アタッチメント主軸10の回転軸線Oaと直交する第1の方向であり、Y軸方向がアタッチメント主軸の回転軸線および第1の方向に直交する方向である第2の方向である。
【0045】
(1)X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、レーザ光Lから-X軸方向に所定の距離離間した所定の第1の測定開始位置P1に配置する。
(2)X軸を制御して、矢印A1で示すように、主軸114を第1の測定開始位置P1からX軸に沿って+方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lへアプローチさせることが好ましい。
(3)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのX座標値X-
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0046】
(4)次いで、X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、レーザ光Lから+X軸方向に所定の距離離間した所定の第2の測定開始位置P2に配置する。
(5)X軸を制御して、矢印A2で示すように、主軸114を第2の測定開始位置P2からX軸に沿って-方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lへアプローチさせることが好ましい。
(6)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのX座標値X+
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0047】
第1の測定位置Pr1におけるアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの移動方向座標値(この場合、主軸114をX軸方向に移動させて測定した回転軸線Oaの座標値)としてX座標値Xca(1)は以下の式(3)により表すことができる。
Xca(1)=(X-
(1)+X+
(1))/2=Xs+rcos(φ+θ1)…(3)
【0048】
次に、Cs軸制御モードにより、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第2の測定位置Pr2へ移動させる(ステップS20)。
図8の例では、第2の測定位置Pr2は、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ2の回転位置である。
【0049】
主軸114を第2の測定位置Pr2へ移動させた後、上述の工程(1)~(6)と同様の工程を実行してX-
(2)およびX+
(2)を求め、これに基づいて、第2の測定位置におけるアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX座標値Xca(2)を以下の式(4)により演算する(ステップS22)。
Xca(2)=(X-
(2)+X+
(2))/2=Xs+rcos(φ+θ2)…(4)
【0050】
更に、Cs軸制御モードにより、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第3の測定位置Pr3へ移動させる(ステップS24)。
図8の例では、第3の測定位置Pr3は、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ3の回転位置である。
【0051】
主軸114を第3の測定位置Pr3へ移動させた後、上述の工程(1)~(6)と同様の工程を実行してX-
(3)およびX+
(3)を求め、これに基づいて、第3の測定位置にPr3おけるアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX座標値Xca(3)を以下の式(5)により演算する(ステップS26)。
Xca(3)=(X-
(3)+X+
(3))/2=Xs+rcos(φ+θ3)…(5)
【0052】
更に、Cs軸制御モードにより、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第4の測定位置PR4へ移動させる(ステップS28)。
図8の例では、第4の測定位置Pr4は、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ4の回転位置である。
【0053】
主軸114を第4の測定位置Pr4へ移動させた後、上述の工程(1)~(6)と同様の工程を実行してX-
(4)およびX+(4)を求め、これに基づいて、第4の測定位置Pr4におけるアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX座標値Xca(4)を式(6)により演算する(ステップS30)。
Xca(4)=(X-
(4)+X+
(4))/2=Xs+rcos(φ+θ4)…(6)
【0054】
得られたXca(1)、Xca(2)、Xca(3)、Xca(4)および式(1)~(6)に基づいて工作機械100の主軸114の回転軸線Osからのアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX軸方向の位置ずれ(第1の方向へのずれ量)δxおよびY軸方向の位置ずれ(第2の方向へのずれ量)δyは以下の式(7)、(8)で示される。
【0055】
【0056】
工作機械100の制御装置200は、X軸方向およびY軸方向の位置ずれδx、δyに基づいて、加工誤差の補正量を演算する(ステップS32)。制御装置200は、更に、工作機械100の主軸114をCs軸制御モードで原点位置P0へ回転させ、この位置で固定する(ステップS34)。このときアタッチメント主軸10のボール28が工作機械100の主軸頭110の位置決め係合部132に係合する。アタッチメント主軸10で回転させた第2の工具としての工具34でワークWを加工する(ステップS36)。
【0057】
本実施形態によれば、工作機械100の主軸114に装着したアタッチメント主軸10の主軸14の回転軸線Oaと、工作機械100の主軸114の回転軸線Osとの間のX軸方向(第1の方向)のずれ量およびY軸方向(第2の方向)のずれ量を、工作機械100のテーブル120上に載置されたセンサとしての工具測定装置70を用いて求めることによって、加工誤差の補正量を容易かつ迅速に求めることが可能となる。
【0058】
なお、上述の方法では、主軸114を第1の測定開始位置P1からX軸に沿って+方向に移動させ、次いで、第2の測定開始位置P2からX軸に沿って-方向に移動させるように説明したが、このアプローチ方法に限定されず、主軸114を先に第2の測定開始位置P2からX軸に沿って-方向に移動させ、次いで第1の測定開始位置P1からX軸に沿って+方向に移動させるようにしてもよい。
【0059】
また、既述したように、Y軸方向に照射された1本のレーザ光Lを用いて、工作機械100の主軸114をCs軸制御モードで複数の回転割出位置、既述の実施形態では4つの測定位置Pr1、Pr2、Pr3、Pr4に位置決めして、アタッチメント主軸10の回転軸線Oaと直交する第1の方向としてのX軸方向にアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの位置Xca(1)、Xca(2)、Xca(3)、Xca(4)を測定し、これに基づいて工作機械100の主軸114の回転軸線Osからのアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX軸方向の位置ずれ(第1の方向へのずれ量)δxおよびY軸方向の位置ずれ(第2の方向へのずれ量)δyを演算するようになっている。
【0060】
本願発明はこれに限定されず、
図9~
図11に示すように、Y軸方向に照射されたレーザ光Lyに加えて、X軸方向にもレーザ光を照射し、工作機械100の主軸114をCs軸制御モードで2つの測定位置に位置決めして、第1の方向(X軸方向)の位置ずれと、第2の方向(Y軸方向)の位置ずれを求め、それに基づいてアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの第1と第2の方向への芯ずれを演算するようにしてもよい。
【0061】
図11を参照すると、上述のステップS10と同様に、アタッチメント主軸10を工作機械100の主軸114の先端に装着したとき、工作機械100の主軸114の回転軸線Osからのアタッチメント主軸10の主軸14の回転軸線Oaの位置ずれ量(偏差)は、以下の式で表される。
δx=X
ca(0)-Xs=rcosφ…(9)
δy=Y
ca(0)-Ys=rsinφ…(10)
【0062】
(7)次いで、上述のステップS12およびステップS14と同様に暖機運転をした後、Cs軸制御により、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第1の測定位置Pr1へ移動させる。
図11の例では、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ1の回転位置である。
【0063】
(8)次いで、
図9に示すように、X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、Y軸方向に照射されているレーザ光Lyから-X軸方向に所定の距離離間した所定の第1の測定開始位置P1に工具34を配置する。
(9)X軸を制御して、矢印A1で示すように、主軸114を第1の測定開始位置P1からX軸に沿って+方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lyへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lyへアプローチさせることが好ましい。
(10)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lyを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのX座標値X
-
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0064】
(11)次いで、X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、レーザ光Lyから+X軸方向に所定の距離離間した所定の第2の測定開始位置P2に配置する。
(12)X軸を制御して、矢印A2で示すように、主軸114を第2の測定開始位置P2からX軸に沿って-方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lyへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lyへアプローチさせることが好ましい。
(13)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lyを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのX座標値X+
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0065】
第1の測定位置Pr1におけるアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの移動方向座標値としてX座標値Xca(1)は以下の式(11)により表すことができる。
Xca(1)=(X-
(1)+X+
(1))/2=Xs+rcos(φ+θ1)…(11)
【0066】
次に、Cs軸制御モードにより、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第2の測定位置Pr2へ移動させる。
図11の例では、第2の測定位置Pr2は、回転軸線Osを中心として原点位置Pr0から角度θ2の回転位置である。
【0067】
主軸114を第2の測定位置Pr2へ移動させた後、上述の工程(8)~(13)と同様の工程を実行してX-
(2)およびX+
(2)を求め、これに基づいて、第2の測定位置におけるアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX座標値Xca(2)を以下の式(12)により演算する。
Xca(2)=(X-
(2)+X+
(2))/2=Xs+rcos(φ+θ2)…(12)
【0068】
(14)次いで、Cs軸制御により、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第1の測定位置Pr1へ再び移動させる。
(15)次いで、
図10に示すように、X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、X軸方向に照射されているレーザ光Lxから-Y軸方向に所定の距離離間した所定の第3の測定開始位置P3に工具34を配置する。
(16)Y軸を制御して、矢印B1で示すように、主軸114を第3の測定開始位置P3からY軸に沿って+方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lxへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lxへアプローチさせることが好ましい。
(17)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lxを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのX座標値Y
-
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0069】
(18)次いで、X軸、Y軸、Z軸を制御して、アタッチメント主軸10の工具34が、レーザ光Lxから+Y軸方向に所定の距離離間した所定の第4の測定開始位置P4に配置する。
(19)Y軸を制御して、矢印B2で示すように、主軸114を第4の測定開始位置P4からY軸に沿って-方向に移動させ、アタッチメント主軸10の工具34をレーザ光Lxへ向けてアプローチさせる。このとき、工具34は停止していてもよいが、回転させながらレーザ光Lxへアプローチさせることが好ましい。
(20)アタッチメント主軸10の工具34がレーザ光線Lxを遮断すると、工具測定装置70のスキップ信号回路から、制御装置52へスキップ信号が出力される。制御装置52は、スキップ信号を受信したときのY座標値Y+
(1)を位置検知装置60から読み取る。
【0070】
第1の測定位置Pr1におけるアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの移動方向座標値(主軸114をY軸方向に移動させて測定した回転軸線Oaの座標値)としてY座標値Yca(1)は以下の式(13)により表すことができる。
Yca(1)=(Y-
(1)+Y+
(1))/2=Ys+rsin(φ+θ1)…(13)
【0071】
次に、Cs軸制御モードにより、工作機械100の主軸114を回転軸線Os周りの所定の回転位置である第2の測定位置Pr2へ移動させる。
【0072】
主軸114を第2の測定位置Pr2へ移動させた後、上述の工程(15)~(20)と同様の工程を実行してY-
(2)およびY+
(2)を求め、これに基づいて、第2の測定位置におけるアタッチメント主軸10の回転軸線Oaの移動方向座標値(主軸114をY軸方向に移動させて測定した回転軸線Oaの座標値)Y座標値Yca(2)を以下の式(12)により演算する。
Yca(2)=(Y-
(2)+Y+
(2))/2=Ys+rsin(φ+θ2)…(14)
【0073】
得られたXca(1)、Xca(2)、Yca(1)、Yca(2)および式(9)~(14)に基づいて工作機械100の主軸114の回転軸線Osからのアタッチメント主軸10の回転軸線OaのX軸方向の位置ずれ(第1の方向へのずれ量)δxおよびY軸方向の位置ずれ(第2の方向へのずれ量)δyは以下の式(15)、(16)で示される。
【0074】
【符号の説明】
【0075】
10 アタッチメント主軸
12 ハウジング
12a テーパシャンク部
12b V溝
14 主軸
14a 工具装着穴
15 工程
16 軸受
18 空気室
20 エアタービン
22 空気供給通路
24 排気通路
26 突起部
26a 凹部
28 ボール
32 キャップ
34 工具
36 コレットチャック
38 袋ナット
50 アタッチメント主軸誤差測定システム
52 制御装置
54 入力部
56 サーボアンプ
58 サーボモータ
60 位置検知装置
62 記憶装置
70 工具測定装置
72 ベース部
74a 腕部
74b 腕部
76a レーザ照射部
76b レーザ受光部
100 工作機械
102 ベッド
104 コラム
106 Xスライダ
106a ブロック
108 X軸案内レール
110 主軸頭
110a ブロック
112 Z軸案内レール
114 主軸
116 軸受
118 ロータリエンコーダ
120 テーブル
120a ブロック
122 Y軸案内レール
126 ナット
128 Y軸デジタルスケール
130 工具ホルダ
132 係合部
200 制御装置
【要約】
【課題】容易かつ迅速にアタッチメント主軸を装着する主軸に対するアタッチメント主軸の位置ずれを測定し、アタッチメント主軸で加工したときの加工誤差を容易に補正し、高精度にワークを加工すること。
【解決手段】アタッチメント主軸に装着した工具で加工を行う加工方法が、アタッチメント主軸を主軸に装着した状態で、主軸を複数の回転割出位置でアタッチメント主軸の回転軸線と直交する第1の方向にアタッチメント主軸の回転軸線の位置を求め、複数の回転割出位置のそれぞれで求めた回転軸線の位置から、主軸の回転軸線に対するアタッチメント主軸の回転軸線の位置の第1の方向へのずれ量と、アタッチメント主軸の回転軸線および第1の方向に直交する方向である第2の方向へのずれ量とを算出し、これに基づいて第1の方向へのずれ量と第2の方向へのずれ量を補償するよう補正しつつ、アタッチメント主軸の工具でワークを加工するようにした。
【選択図】
図5