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特許7683217炭素繊維テープ材料、ならびにそれを用いた強化繊維積層体および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】炭素繊維テープ材料、ならびにそれを用いた強化繊維積層体および成形体
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20250520BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20250520BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20250520BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20250520BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20250520BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20250520BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20250520BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20250520BHJP
【FI】
B29B11/16
B29C70/20
B32B5/26
B32B5/28 A
D06M17/00 J
B29K101:12
B29K105:08
B29L9:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020564017
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2020041312
(87)【国際公開番号】W WO2021095623
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019203907
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019203908
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 將之
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171982(WO,A1)
【文献】特開2015-116806(JP,A)
【文献】特開2019-111710(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031771(WO,A1)
【文献】特開2017-159652(JP,A)
【文献】特開2020-029011(JP,A)
【文献】特開2018-065999(JP,A)
【文献】特開2019-099987(JP,A)
【文献】特開2009-019202(JP,A)
【文献】特開2006-150904(JP,A)
【文献】国際公開第2000/061363(WO,A1)
【文献】特表2017-503679(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008169(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/004967(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0008849(US,A1)
【文献】特表2020-508382(JP,A)
【文献】中国実用新案第212555292(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111251673(CN,A)
【文献】中国実用新案第211074959(CN,U)
【文献】中国実用新案第211522081(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C41/00-41/36
41/46-41/52
70/00-70/88
B32B1/00-43/00
C08J5/04-5/10
5/24
D06M17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭素繊維束を繊維配向方向と平行に並べた炭素繊維束群と布地とを一体化させた炭素繊維テープ材料であって、次の(a)~(e)を満たすことを特徴とする炭素繊維テープ材料。
(a)前記布地が規則性を有し、1または複数種類の熱可塑性樹脂から構成されている
(b)前記炭素繊維テープ材料のうち、布地を除いた目付が120g/m~400g/mの間にある
(c)前記布地の少なくとも一方向において、前記布地に80mN/50mmの荷重をかけた際の布地伸び率E(%)が5%~100%である
=[(L-L)/L]×100
:布地伸び率(%)
:元の印間の布地長さ(mm)
:荷重付与時の布地長さ(mm)
(d)前記炭素繊維束群と前記布地とは、前記炭素繊維束群の少なくとも片面に付着している粒子形状の樹脂バインダを介して、接着により一体化している
(e)前記布地の軟化点が前記樹脂バインダの軟化点よりも高い
【請求項2】
炭素繊維束間に0.1mm~1mmの隙間が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項3】
前記炭素繊維テープ材料のテープ幅が、2mm~2000mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項4】
前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の少なくとも一部において、前記炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項5】
前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の全域において、前記炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成されていることを特徴とする、請求項に記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項6】
前記炭素繊維束群のうち、前記炭素繊維束の繊維配向方向と直交する方向の両端に位置する2本の炭素繊維束は、前記炭素繊維束の繊維配向方向に連続的に前記布地と接着されており、2本の炭素繊維束の間に位置する他の炭素繊維束は、前記炭素繊維束の繊維配向方向に間欠的に前記布地と接着されていることを特徴とする、請求項に記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項7】
前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域のうち、隣り合う前記炭素繊維束においては、前記接着領域が、前記炭素繊維の繊維配向方向にずれていることを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項8】
前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の少なくとも一部において、前記炭素繊維束の繊維配向に直交する方向に離散的に形成されてなることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項9】
2辺把持法によるピクチャーフレーム法を用いてせん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]が、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間で引張荷重F[N]の最大値を持たず、せん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]の最大値が0.5[N]より大きく、かつ、θ[°]が0.1°から1.0°の間において、ΔF/Δθが0.1より大きく1.0より小さいことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項10】
前記布地の形態が筒状体または袋状体であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料を用いてなる強化繊維積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の強化繊維積層体を用いてなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維テープ材料、ならびにそれを配置・積層してなる強化繊維積層体および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維と樹脂からなる繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic:FRP)は、軽量かつ高強度という特性から、航空、宇宙、自動車用途などに用いられている。FRPの生産性と高強度を両立する成形法として、例えばレジン・トランスファー・モールディング成形法(Resin Transfer Molding:RTM)やVaRTM成形法(Vacuum‐assisted Resin Transfer Molding)等のように、強化繊維積層体にあとから樹脂を含浸・硬化させる成形法が挙げられる。RTM成形法は、マトリックス樹脂を予備含浸していないドライな強化繊維束群で構成される強化繊維基材からなる強化繊維積層体を、成形型に配置して、液状で低粘度のマトリックス樹脂を注入することにより、後からマトリックス樹脂を含浸・固化させてFRPを成形する成形法である。特に高い生産性が必要な場合は、樹脂注入時は成形型内キャビティを最終成形品厚みより厚くしておき、型閉じにより高速含浸させることで繊維強化プラスチックの成形時間を短縮する技術などが用いられる。また近年では、強化繊維積層体に液状の樹脂を塗布したのちに型締めを行い、樹脂を含浸させるウェットプレスモールディング法も用いられる。
【0003】
樹脂を含浸・硬化させる強化繊維積層体は、従来は織物やノンクリンプファブリック(Non Crimp Fabric:NCF)のような、強化繊維束に樹脂が含浸されていないドライな強化繊維束群から構成される一定幅の(すなわち、略矩形の)布帛形態をした強化繊維基材から所望の形状を切り出したものを三次元形状に賦形、固着することで形成される。ところがこのように一定幅の布帛から所望形状を切り出すと、その後に残る端材が多く生成される。すなわち、強化繊維の廃棄量が多くなり、あらかじめ一定幅の布帛形態をした強化繊維基材を製造しておく従来の手法では製造コストが高くなるという課題があった。
【0004】
このような課題に対し、強化繊維束を、製品形状に合わせた所望の形状となるよう、必要な箇所のみに配置するファイバープレイスメント法が注目されている。ファイバープレイスメント法によれば、必要な箇所に必要な量の強化繊維を配置するため、強化繊維をテープ状の形態とし、かかるテープ材料を必要な箇所にのみ配置することで、廃棄される強化繊維の量を大幅に低減させることができる。さらに、ファイバープレイスメント法で製造される強化繊維基材は、従来の織物やNCFに比べて強化繊維束のクリンプが少なく真直性に優れるため、それに樹脂を注入・硬化させて得られるFRPは高い力学的強度を有する。
【0005】
ファイバープレイスメント法に用いられる炭素繊維テープ材料に関する従来技術として、例えば特許文献1では、両面にポリマー接着剤を結合した炭素繊維テープ材料およびその製造方法が提案されている。かかる方法によれば、ポリマー接着剤を溶融して強化繊維束群に貼り付けることにより、所望する幅の炭素繊維テープを高い精度で製造可能としている。
【0006】
また特許文献2では、少なくとも片面に不織ベールを接着した炭素繊維テープ材料、プリフォームおよびその製造方法が提案されている。かかる方法によれば、不織ベールを接着した炭素繊維テープ材料を用いることにより、RTM成形やVaRTM成形における樹脂注入時において面内方向の樹脂の拡散しやすさを増長する効果が得られる。また、不織ベールに熱可塑繊維材料を用いた場合、結果として、得られる複合材料を強靭化することができる。
【0007】
さらに、特許文献3では、目付が80g/m以下の強化繊維材料と熱可塑性樹脂材料の編地からなる補強シート材料が提案されている。かかる構成によれば、柔軟性を有する編地を用いることで、薄く広幅の状態で真直性を保った、カール等の変形のないシート材料を得られる。また、空隙の多い薄い編地を用いているため、内部の空気を脱気することができ、ボイド(空隙)の少ない成形品を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2012-510385号公報
【文献】特表2017-521291号公報
【文献】特開2015-116806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ファイバープレイスメント法では、炭素繊維テープを直接型に貼り付ける際に、該炭素繊維テープを型形状に追従させ沿わす必要がある。そのため、炭素繊維テープの幅が広いほど、また型形状が複雑になるほど、炭素繊維テープが高い変形性を有していることが求められる。また、炭素繊維テープの積層およびRTM成形やVaRTM成形における樹脂注入において高い生産性を有することが求められる。
【0010】
ここで特許文献1の発明では、ポリマー接着剤の変形性について言及されていない。そして、ポリマー接着剤に例えば不織ベールを用いた場合、不織ベールは短繊維をランダムに配向させて形成しているため、一般に面方向に十分な変形性を有していない。さらに、ポリマー接着剤が溶融した際に、不織ベールの形態が失われるため、布材本来が有する変形性が低下することになる。
【0011】
特許文献2の発明では、少なくとも片面に不織ベールを接着した炭素繊維テープ材料を用いている。そのため、引用文献1と同様に、不織ベールが短繊維をランダムに配向させて形成されていることから、十分な変形性を有していない。
【0012】
特許文献3の発明では、変形性を有する布地を用いるが、強化繊維材料の目付が低く所望の製品厚みを得るためには多くのシート材料を積層する必要があり、作業が煩雑となり生産性が低下する。また、特許文献3に記載の発明は補強シート材料に関するものであり、かかる補強シート材料のファイバープレイスメント法への適用を示唆するものではない。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するものであり、具体的には、型への追従性及びマトリックス樹脂の含浸性が良好であり、かつ、ファイバープレイスメント法により強化繊維積層体を製造する際には生産性を高めることができ、樹脂を含浸して成形した際には高い力学的強度を有する成形体を提供することができる、炭素繊維テープ材料を提供するものである。また、かかる炭素繊維テープ材料から得られる強化繊維積層体ならびに成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)複数の炭素繊維束を繊維配向方向と平行に並べた炭素繊維束群と布地とを一体化させた炭素繊維テープ材料であって、次の(a)~(c)を満たすことを特徴とする炭素繊維テープ材料。
(a)前記布地が1または複数種類の熱可塑性樹脂から構成されている
(b)前記炭素繊維テープ材料のうち、布地を除いた目付が120g/m~400g/mの間にある
(c)前記布地の少なくとも一方向において、前記布地に80mN/50mmの荷重をかけた際の布地伸び率E(%)が5%~100%である
=[(L-L)/L]×100
:布地伸び率(%)
:元の印間の布地長さ(mm)
:荷重付与時の布地長さ(mm)
(2)前記布地が規則性を有することを特徴とする、前記(1)に記載の炭素繊維テープ材料。
(3)炭素繊維束間に0.1mm~1mmの隙間が設けられていることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の炭素繊維テープ材料。
(4)前記炭素繊維テープ材料のテープ幅が、2mm~2000mmであることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
(5)前記炭素繊維束群と前記布地とが、前記炭素繊維束群の少なくとも片面に付着している樹脂バインダを介して、接着により一体化していることを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
(6)前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の少なくとも一部において、前記炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成されていることを特徴とする、前記(5)に記載の炭素繊維テープ材料。
(7)前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の全域において、前記炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成されていることを特徴とする、前記(6)に記載の炭素繊維テープ材料。
(8)前記炭素繊維束群のうち、前記炭素繊維束の繊維配向方向と直交する方向の両端に位置する2本の炭素繊維束は、前記炭素繊維束の繊維配向方向に連続的に前記布地と接着されており、2本の炭素繊維束の間に位置する他の炭素繊維束は、前記炭素繊維束の繊維配向方向に間欠的に前記布地と接着されていることを特徴とする、前記(6)に記載の炭素繊維テープ材料。
(9)前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域のうち、隣り合う前記炭素繊維束においては、前記接着領域が、前記炭素繊維の繊維配向方向にずれていることを特徴とする、前記(6)~(8)のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
(10)前記樹脂バインダを介して前記布地と前記炭素繊維束群とを接着させた接着領域が、前記炭素繊維テープ材料の少なくとも一部において、前記炭素繊維束の繊維配向に直交する方向に離散的に形成されてなることを特徴とする、前記(5)に記載の炭素繊維テープ材料。
(11)2辺把持法によるピクチャーフレーム法を用いてせん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]が、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間で引張荷重F[N]の最大値を持たず、せん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]の最大値が0.5[N]より大きく、かつ、θ[°]が0.1°から1.0°の間において、ΔF/Δθが0.1より大きく1.0より小さいことを特徴とする、前記(1)~(10)のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料。
(12)前記布地の形態が筒状体または袋状体であることを特徴とする、前記(1)~(11)に記載の炭素繊維テープ材料。
(13)前記(1)~(12)のいずれかに記載の炭素繊維テープ材料を用いてなる強化繊維積層体。
(14)前記(13)に記載の強化繊維積層体を用いてなる成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭素繊維テープ材料は、型への追従性及び樹脂の含浸性が良好であり、ファイバープレイスメント法により強化繊維積層体を製造する際には生産性を高めることができ、また、樹脂を含浸して成形した際には高い力学的強度を有する成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る炭素繊維テープ材料の概略図である。
図2】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図3】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図4】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図5】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図6】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図7】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
図8】布地伸び率の測定方法を示す概略図である。
図9】2辺把持法によるピクチャーフレーム法の実施方法を示す概略図である。
図10】2辺把持法によるピクチャーフレーム法実施時のせん断角―引張荷重の関係を示すグラフである。
図11】本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る炭素繊維テープ材料の概略図を図1に示す。
【0018】
図1に示す炭素繊維テープ材料100は、複数本の炭素繊維束101が、布地103によって互いに一体化されているものであり、それぞれの炭素繊維束は、幅方向に互いに平行(並列)に配置されて炭素繊維束群102を形成している。
【0019】
本発明に用いる炭素繊維束は、例えば事前にサイジング処理を施した炭素繊維束を用いることもできる。サイジング処理を施すことにより、炭素繊維束の集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制させることができる。また、本発明に用いる炭素繊維束は、炭素繊維に有機繊維を混合してもよい。
【0020】
炭素繊維束のフィラメント数N(単位:K=1,000本)は、1K(1,000)本以上であり、60K(60,000)本以下であることが好ましい態様である。炭素繊維束101の単繊維数が1K本より少ない場合、炭素繊維束101の糸幅が細く、ねじれ等の不良が生じやすい。炭素繊維束101の単繊維数が60K本より多い場合、炭素繊維束101の炭素繊維目付が高くなり、ファイバープレイスメント法で炭素繊維束101を引き揃えて基材にした際に1層あたりの炭素繊維目付が高くなりすぎるため、配向設計の許容範囲を狭めてしまうおそれがある。
【0021】
炭素繊維テープ材料100は、炭素繊維束101を複数本含み、布地103と互いに一体化した構成を具備することにより、炭素繊維テープ材料の単位長さあたりの炭素繊維フィラメント数および重量を大きくすることができる。また、ファイバープレイスメント法により炭素繊維テープ材料を配置・積層して繊維強化プラスチックを製造する際、所望する繊維体積含有量とするために要する炭素繊維テープ材料の配置・積層時間を短縮し、生産性を向上することができる。
【0022】
布地103は、1または複数種類の熱可塑性樹脂から構成される。ここで熱可塑性樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂のほか、さらに、熱可塑性エラストマー(ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系等)や、これらの共重合体、変性体、およびこれら樹脂を2種類以上ブレンドした樹脂等を示す。これら樹脂を繊維状にして織布(織物、編物)や不織布の形態としたり、フィルム状にしたりして布地103とすることができる。このような布地103を部分的に溶融することで、炭素繊維束群102と一体化する。
【0023】
本発明においては、布地103が変形性を有することが重要である。すなわち、布地の少なくとも一方向において、該布地に80mN/50mmの荷重をかけた際の布地伸び率が5%~100%であることが重要であり、15%~100%であることがさらに好ましい。変形性のある布地を用いることで、テープの変形性を向上させることができ、ファイバープレイスメント法で直接型に貼り付ける際に、炭素繊維テープが型形状に追従して沿うことが可能となる。布地伸び率が5%よりも小さい場合、布地に十分な変形性がなく、炭素繊維テープが型形状に追従して沿うことができない。布地伸び率が100%よりも大きい場合、布地がわずかな外力で変形してしまい、炭素繊維に精度よく布地を張り付けて一体化することが困難となる。ここで布地の伸び率は、JIS L 1096 8.16.1に則り、以下の式にて求める。
【0024】
=[(L-L)/L]×100
:布地伸び率(%)
:元の印間の布地長さ(mm)
:荷重付与時の布地長さ(mm)
布地伸び率の測定方法を図8に示す。図8(a)は一定荷重を負荷する前の布地803の状態を表す。指定のサイズに布地をカットし、指定の印808を布地にマーキングし、印間距離Lを測定後、図8(a)に示すようにクランプ807により布地をチャッキングする。その後、荷重を付与する。図8(b)は一定荷重付与後の布地803の状態を表す。図8(b)に示すように、一定荷重付与後の印間距離L1を測定することで、指定の式より伸び率を算出可能となる。なお、炭素繊維束と布地とを一体化したテープ材料から布地の伸び率を測定する場合は、布地をテープ材料から剥がしたのちに、上記手順で測定する。
【0025】
本発明の炭素繊維テープ材料は、布地を除いた目付が120g/m~400g/mの間にあることが重要である。炭素繊維テープ材料のうち、布地を除いた目付が120g/mより小さい場合、ファイバープレイスメント法で炭素繊維テープ材料を配置する際、所望の目付の積層体を得るために積層する炭素繊維テープ材料の枚数が多くなり、積層に要する時間が増加し、生産性をさらに向上するうえで制約となる。一方、炭素繊維テープ材料のうち、布地を除いた目付が400g/mより大きい場合、所望の目付の積層体を得るために積層する炭素繊維テープ材料の枚数が少なくなりすぎて、繊維配向を設計する際の自由度が狭まってしまうおそれがある。かかる目付は、160g/m~300g/mであることが好ましい。
【0026】
また、布地103は規則性を有していることが望ましい。本発明において、「規則性を有する」とは、ある一定の組織形態が布地の長手方向(すなわち炭素繊維テープ材料の長手方向)に連続的に繰り返されていることを意味する。規則性を有する布地の例として編地や織物が挙げられる。編地や織物はその組織形態が長手方向に連続的に繰り返されており、繊維の存在する位置はその組織により定められているため、布地としての繊維目付のばらつきや偏りが少ない材料であるといえる。一方、規則性を有さない布地の例としては不織布(不織ベール)が挙げられる。不織布は短繊維をランダムに散りばめた後に互いの繊維を接着した構成であるため、上記の布地伸び率を発現することが難しく、また、その組織形態が長手方向に連続的に繰り返されていないため、繊維の配向や目付のばらつき・偏りが生じやすいという特徴が挙げられる。
【0027】
規則性を有する布地の組織形態としては、平織、綾織、繻子織といった織組織、デンビ、コード、アトラス、鎖編、インレー、サテン、ハーフ、チュールといった経編組織、緯編組織、またはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0028】
これら規則性を有する布地は、繊維同士を互いに編み込む、もしくは織り込むことで形態が保持されている。すなわち、繊維同士が互いに接着されて相対位置が固定されている不織布に比べ、編み込まれたもしくは織り込まれた繊維の位置が完全には固定されておらず自由度が高いため、結果、布地の面内(面方向)に力が加わった際の変形性が優れている。
【0029】
布地103は、目付が2g/mよりも大きく、40g/m以下であることが好ましく、4g/mよりも大きく、20g/m以下であることがさらに好ましい。布地103の目付が2g/m以下の場合、布地の生地が破れやすく、所望の変形性を得られにくくなる。また、布地の厚みが薄くなることで、含浸時におけるマトリックス樹脂流路を十分に確保することが難しくなる。さらに、布地が薄いため成形体における層間強化材の厚みが薄くなり、積層された繊維束の層間を強化することが難しくなる。一方、布地103の目付が40g/mよりも大きい場合、布地の厚みが分厚くなるため炭素繊維テープ材料の厚みが増大し、炭素繊維テープ材料を用いた強化繊維積層体の厚みが所望の製品厚みよりも大きくなりやすい、すなわち、炭素繊維テープ材料を用いた強化繊維積層を所望する成形体のニアネットシェイプにすることが難しくなる。また、この強化繊維積層体を用いて成形した成形体は、層間強化材の厚みが大きくなりやすく、成形体における繊維含有率(Vf:%)を高くすることが難しくなる。
【0030】
また、布地103は、テープの変形性を向上させる目的だけでなく、樹脂含浸時におけるマトリックス樹脂流路を確保する目的や、高いじん性を発揮する材質の樹脂を使用することで層間を強化する目的でも使用することができる。
【0031】
炭素繊維テープ材料100を構成する複数の炭素繊維束101同士の間には隙間106が設けられていることが好ましい。炭素繊維テープ材料100を構成する複数の炭素繊維束101間に隙間106があることで、ファイバープレイスメント法にて一方向に配列し基材とした場合、マトリックス樹脂の流路を確保しやすい。また、複数本の炭素繊維テープ材料100をファイバープレイスメント法にて隙間なく一方向に配列して基材とした場合にも、1本の炭素繊維テープ材料100内で固定されている複数の炭素繊維束101の間に隙間が設けられている場合には、成形時のマトリックス樹脂の流動性を確保しやすくなる。
【0032】
炭素繊維束間の隙間106は0.1mm~1mmであることが好ましい。隙間106が0.1mmより小さい場合、マトリックス樹脂の流路が小さくなるため、成形に要する時間が増加し、生産性低下につながる恐れがある。隙間106が1mmより大きい場合、ファイバープレイスメント法にて炭素繊維テープ材料を積層して強化繊維積層体とし、成形する際に、上層のテープの一部が下層の炭素繊維束間の隙間に落ち込み、炭素繊維束の真直性が低下する恐れがある。その結果、得られた成形体の圧縮特性が低下する恐れがある。
【0033】
炭素繊維テープ材料100のテープ幅は、2mm~2000mmであることが好ましく、5mm~100mmであることがさらに好ましい。炭素繊維テープ材料100のテープ幅が2mmよりも小さい場合、ファイバープレイスメント工程でより多くの炭素繊維テープ材料を配置する必要が生じ、生産性が低下しやすい。炭素繊維テープ材料100のテープ幅が2000mmよりも大きい場合、テープを製造する装置が大型となり、テープコストの増大につながりやすく、好ましくない。
【0034】
図2に示す炭素繊維テープ材料200は、本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の概略斜視図である。この炭素繊維テープ材料200においては、図1に示した炭素繊維テープ材料と同様に炭素繊維束群202の少なくとも片面に規則性を有する布地203が位置しているが、該布地203は、各炭素繊維束201の形態保持を目的して炭素繊維束群202の少なくとも片面に付着している樹脂バインダ204を介して、炭素繊維束群202と一体化されている。その他の点は、図1に示す炭素繊維テープ材料100と同じ構成である
樹脂バインダ204は、粒子形状でもよく、不織布形状でもよい。またこれらの形状に限定されるものではなく、フィルム、メッシュ、エマルジョン、コーティング、または炭素繊維束に巻きつける補助糸でも良い。
【0035】
樹脂バインダの材質としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、さらに、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、およびこれら樹脂を2種類以上ブレンドした樹脂等を用いることができる。
【0036】
これらの樹脂バインダは、強化繊維積層体とした際の層間を固着する接着機能のほか、樹脂含浸時におけるマトリックス樹脂の流路を確保する目的や、高いじん性を発揮する材質の樹脂を使用することで層間を強化する目的でも使用することができる。
【0037】
樹脂バインダ204による炭素繊維束201の固定形態としては、炭素繊維束201の表面に樹脂バインダ204を見える状態で付着・部分含浸させて、炭素繊維束に含まれる複数のフィラメントを拘束していても良く、また、表面から見えない状態となるように樹脂バインダ204を炭素繊維束201の内部に含浸させて、炭素繊維束に含まれる複数のフィラメントを互いに拘束していても良い。この他にも、樹脂バインダを炭素繊維束201に巻き付ける、または、樹脂バインダで炭素繊維束201を被覆することもできる。
【0038】
炭素繊維束201を固定させるために必要な樹脂バインダの量は、炭素繊維束201の重量に対して25wt%以下であることが好ましく、20wt%以下であることがより好ましく、15wt%以下であることがさらに好ましい。樹脂バインダの量が25wt%よりも大きくなると、テープ材料をファイバープレイスメント法により配列、積層して強化繊維積層体とし、成形する際、マトリックス樹脂の粘度が向上して流動性が低下しやすく、そのため生産性が低下しやすい。また、マトリックス樹脂の流動に長時間を要するため、マトリックス樹脂粘度がさらに上昇してしまい、成形体において樹脂未含浸部位が発生しやすく、成形体の力学特性の悪化を招くことにもつながる。
【0039】
布地203の軟化点Ts(℃)は、樹脂バインダ204の軟化点よりも高いことが好ましい。ここで、複数種類の熱可塑性樹脂により布地203を構成している場合、複数種類の熱可塑性樹脂のうち、もっとも軟化点の低い熱可塑性樹脂の軟化点を布地203の軟化点Ts(℃)とみなす。この際、樹脂バインダ204の軟化点よりも高く布地203の軟化点よりも低い温度で加熱・加圧することで、溶融された樹脂バインダ204を接着剤として、布地203と炭素繊維束群202とを一体化することができる。この場合、布地203は溶融することなく組織の形態を保持しているため、布地203の持つ変形性を損なうことなく、変形性の優れた炭素繊維テープ材料200を得ることができる。
【0040】
また、樹脂バインダ204は、その軟化点(℃)が40℃より高く布地203の軟化点Ts(℃)よりも低い温度であることが好ましい。このような樹脂バインダを用いることによって、加熱により粘度が低下した後、冷却する等して常温に戻った状態のときに、炭素繊維束を構成する複数本のフィラメントを互いに固定し、炭素繊維束として一定の形態をより確実に保持することができる。そして、炭素繊維束の形態を一定に保持すると、ファイバープレイスメント法により炭素繊維テープ材料200が型上に配置され、炭素繊維テープ材料200に圧力や張力がかかった場合に、炭素繊維束の形態が崩れることを抑制できる。その結果、炭素繊維束201の間に設けられた隙間206を潰すことなく保持でき、成形する際のマトリックス樹脂の流路をより確実に確保することができる。
【0041】
なお、本明細書において、「軟化点」とは、布地、樹脂バインダ等の樹脂材料がその温度以上の温度になったときに樹脂材料が軟化/溶融する温度を指す。具体的には、樹脂材料が結晶性ポリマーである場合には融点を指すものとし、樹脂材料が非晶性ポリマーである場合にはガラス転移点を指すものとする。
【0042】
図3に、本発明に係るさらに別の炭素繊維テープ材料300の概略斜視図を示す。この炭素繊維テープ材料300においては、図2の態様と同様に、複数の炭素繊維束301を平行に並べた炭素繊維束群302の少なくとも片面(図3では両面)に、規則性を有する布地303を配置している。該布地303は、各炭素繊維束301の形態保持を目的して炭素繊維束群302の表面に付着している樹脂バインダ304を介して、炭素繊維束群302と一体化されている。そして、図3に示す態様においては、炭素繊維束群302の表面に設けた樹脂バインダ304のうち、接着領域305で囲まれる領域の樹脂バインダ304のみを溶融して、布地303と炭素繊維束群302との接着に寄与させる。接着領域305は、炭素繊維テープ材料300の少なくとも一部において、炭素繊維束301の繊維配向方向に連続的ではなく離散的(間欠的)に形成されている。ここで「接着領域」とは、布地303と炭素繊維束群302とが樹脂バインダ304を介して互いに接着している領域のことを示す。布地303と炭素繊維束群302とが少なくとも一部の接着領域にて接着されることで互いに一体化され、炭素繊維テープ材料の形態を保持することができる。図3に示す炭素繊維テープ材料300は、上記の点以外は、図2に示す炭素繊維テープ材料200と同じ構成である。
【0043】
本発明において、接着領域305は、上記したように炭素繊維束301の繊維配向方向に離散的に形成されていることが好ましい。接着領域305がテープ全域に及び、炭素繊維束群302と布地303とがテープ全面にわたり接着されている場合、布地を構成する熱可塑性繊維は炭素繊維束との接着により位置が完全に固定されてしまい、布地が本来有する変形性が低下する。図3においては、接着領域305が繊維配向方向に離散的に分散していることで、布地が局所的に自由に動ける余地を残しているため、接着による布地の変形性の低下を抑制することができる。
【0044】
さらに、接着領域を炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成した態様を以下に詳述する。図4(a)、(b)に示す炭素繊維テープ材料400は、本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の平面図である。図4(a)の実施形態では、樹脂バインダを介して布地と炭素繊維束群とを接着させた接着領域405が、炭素繊維テープ材料400の全域において、炭素繊維束401の繊維配向方向に離散的に形成されてなる。本実施形態では接着領域405が炭素繊維テープ材料400の全域に離散的に形成されているため、布地が局所的に自由に動ける余地が多く、優れたテープ変形性を発現可能となる。図4(b)の実施形態では、炭素繊維束群402のうち、炭素繊維束401の繊維配向方向と直交する方向の両端に位置する2本の炭素繊維束401(a)、401(b)が、炭素繊維束の繊維配向方向に連続的に布地403と接着され、2本の炭素繊維束401(a)、401(b)の間に位置する炭素繊維束401(c)、401(d)、401(e)が、炭素繊維束の繊維配向方向に間欠的に布地403と接着されている。本実施形態では炭素繊維束の繊維配向方向と直交する方向の両端に位置する2本の炭素繊維束401(a)、401(b)が連続的に布地403と接着されるため、布地403がテープ端部から剥がれることを抑制でき、テープ安定性とテープ変形性を両立することができる。なお、これら図4(a)、(b)に示す炭素繊維テープ材料400において、それぞれの接着領域405は、複数本の炭素繊維束にまたがらないように設けることが好ましい。
【0045】
図5(a)に示す炭素繊維テープ材料500は、本発明に係る別の炭素繊維テープ材料の平面図である。かかる炭素繊維テープ材料500のb-b断面、c-c-断面を、それぞれ図5(b)、図5(c)に示す。本実施形態においても、樹脂バインダを介して布地と炭素繊維束群とを接着させた接着領域505が、炭素繊維テープ材料500の全域において、炭素繊維束501の繊維配向方向に離散的に形成されている。それぞれの接着領域505は、複数本の炭素繊維束にまたがらないように設けられている。そして、隣り合う炭素繊維束(例えば501(a)および501(b))においては、接着領域(例えば505(a)および505(b))が、炭素繊維の繊維配向方向にずれている。本実施形態では、隣り合う炭素繊維束においてそれぞれに設けられた接着領域が炭素繊維の繊維配向方向にずれていることにより、隣り合う炭素繊維束同士の相対的な位置が固定されず独立して動くことができる。したがって、布地が変形した際に、炭素繊維束はそれぞれが接着している布地の部分の動きに追従して独立して動くことが可能になる。
【0046】
なお、本発明においては、接着領域を図6(a)のように設けてもよい。しかしながら、図6(a)に示す炭素繊維テープ材料600においては、隣り合う炭素繊維束(例えば炭素繊維束601(a)および601(b))において、接着領域(例えば接着領域605(a)および605(b))が炭素繊維の繊維配向方向にずれていない。そのため、隣り合う炭素繊維束同士の位置が固定されてしまい、それぞれの炭素繊維束が接着している布地の部分の動きに追従しにくくなり独立して動きにくくなる。よって、隣り合う炭素繊維束において接着領域が炭素繊維の繊維配向方向にずれていない場合に比べ、ずれている場合の方が、変形性の高いテープを得ることができ、好ましい。なお、図6(a)は、炭素繊維テープ材料600の平面図、図6(b)は炭素繊維テープ材料600のb-b断面図である。
【0047】
そして、図5に示すように、接着領域505を炭素繊維の繊維配向方向に実質的にずらして設ける場合であっても、次のようにすることがより好ましくい。すなわち、炭素繊維の繊維配向方向に直交する方向の任意の断面において、隣り合う炭素繊維束(例えば501(a)および501(b))の上に接着領域(例えば505(a)および505(b))が同時に存在することがないようにする。換言すれば、隣り合う炭素繊維束(例えば501(a)および501(b))においては、接着領域(例えば505(a)および505(b))を、炭素繊維の繊維配向方向に一部が重なるように(図5(b)に示すように)するのではなく、ずれるように(図5(c)に示すように)設けることが好ましい。かかる構成にすることで、炭素繊維テープ材料はより良好な変形性を発現することができる。そのため、炭素繊維テープ材料500においては、図5(b)に示すような断面となる部分が、炭素繊維の繊維配向方向に一定間隔で採取した全ての断面の30%以下の範囲内であることが好ましい。
【0048】
さらに、図7(a)、(b)に、本発明に係る別の炭素繊維テープ材料700の平面図を示す。上記図3図6では接着領域が炭素繊維束の繊維配向方向に離散的に形成された態様を示したが、図7に示す炭素繊維テープ材料700においては、樹脂バインダを介して布地と炭素繊維束群とを接着させた接着領域705が、炭素繊維束の繊維配向方向に直交する方向に離散的に形成されている。かかる構成によっても、隣り合う炭素繊維束の相対的な位置が固定されず、独立して動くことが可能となるため、炭素繊維テープ材料は良好な変形を発現することができる。
【0049】
以上のような構成の本発明に係る炭素繊維テープ材料は、次のようなせん断変形性能を発現することが可能となる。すなわち、2辺把持法によるピクチャーフレーム法を用いてせん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]が、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間で引張荷重F[N]の最大値を持たず、せん断角θ[°]を0°から45°の範囲で測定した引張荷重F[N]の最大値が0.5[N]より大きく、かつ、θ[°]が0.1°から1.0°の間において、ΔF/Δθが0.1より大きく1.0より小さい。
【0050】
せん断変形性能の評価方法である2辺把持法によるピクチャーフレーム法について説明する。図9は2辺把持法によるピクチャーフレーム法の概略図を示している。長さ220mmの炭素繊維テープ材料900を1本または複数本隙間なく平行に並べ、全幅の和が150mmとなるように準備する。つかみ間隔が200mmとなるようにつかみ部902に印をつけたのち、炭素繊維テープ材料900を、つかみ部902が200mm、測定角α[°]が90°、炭素繊維テープの長手方向がピクチャープレーム枠の炭素繊維テープ材料を把持していない2辺903と平行になるように、ピクチャーフレーム治具904に炭素繊維テープ両端の2辺を把持するようにとりつける。図示しない万能試験機に測定角α[°]が90°となるようにピクチャーフレーム治具を取り付けたのち、50mm/分の速度でピクチャーフレーム治具を鉛直方向に引っ張り、その時の引張力F[N]および測定角αを測定する。その後、次の式より算出されるせん断角θ[°]、およびθ[°]が0.1°から1.0°の間でのΔF/Δθを算出する。
【0051】
θ[°]=90°―α[°]
本発明に係る炭素繊維テープ材料について2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した時のせん断角―引張荷重グラフの一例を図10に示す。図10(a)はせん断角θ[°]を0から45まで試験した際のせん断角―引張荷重グラフであり、図10(b)は同一グラフのせん断角θ[°]が0から1の近傍を拡大したグラフである。
【0052】
本発明に係る炭素繊維テープ材料においては、せん断角θ[°]を0°から45°までとして試験した場合に、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間で引張荷重Fが最大値を持たないことが好ましい。引張荷重F[N]の最大値が、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間にある場合、炭素繊維テープ材料はせん断角θ[°]が1.0°に到達するまでに形態を保持できずに崩壊していることを意味する。この場合、ΔF/Δθの値を炭素繊維テープ材料のせん断変形性能として評価することはできない。
【0053】
本発明に係る炭素繊維テープ材料は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間で引張荷重Fが最大値を持たない場合、せん断角θ[°]が0.1°から1.0°の間でのΔF/Δθが1.0より小さいことが好ましく、0.4より小さいことがさらに好ましく、0.2より小さいことがさらに好ましい。ΔF/Δθが1.0以上の場合、炭素繊維テープ材料をせん断変形する際に大きな力が必要となり、ファイバープレイスメント法にて引き揃えて型へと配置する際に良好な型への追従性が得られない。一方、ΔF/Δθは0.1より大きいことが好ましい。ΔF/Δθが0.1以下の場合、わずかな力の付与で炭素繊維テープ材料が大きくせん断変形を起こし、炭素繊維テープ材料の安定性が損なわれてしまう。
【0054】
本発明に係る炭素繊維テープ材料は、せん断角θ[°]を0°から45°までとして試験した場合に、引張荷重Fの最大値が0.5Nより大きいことが好ましく、1.0Nより大きいことがさらに好ましい。せん断角θ[°]を0°から45°までとして試験した場合に、引張荷重Fの最大値が0.5N以下である場合、炭素繊維テープ材料は炭素繊維束と布材が剥がれる等、テープ形態を維持することができない。
【0055】
そして、本発明に係る炭素繊維テープ材料においては、例えば図11(a)、(b)に示すように、布地1103を炭素繊維束群1102の両面に配置し、全体としてみたときに筒状体(図11(a))または袋状体(図11(b))となるようにすることが好ましい。すなわち図11(a)のように、炭素繊維束1101の繊維配向方向と直交する方向の両端に位置する2本の炭素繊維束1101(a)、1101(b)は、その両面において布地1103と接着し、両端の炭素繊維束1101(a)、1101(b)と両面の布地1103とで筒状の閉じた系を形成することが好ましい。このようにすることで、内側3本の炭素繊維束1101(c)、1101(d)、1101(e)の脱落を防ぐことができる。また、同様の理由から、図11(b)のように、すべての炭素繊維束1101を内包するように布地1103を配置することも好ましい。このように布地を炭素繊維束群の両面に配置することで、炭素繊維テープ材料の取り扱い中に炭素繊維束が脱離することを抑制でき、炭素繊維テープ材料の生産安定性を向上することができる。
【0056】
本発明の炭素繊維テープ材料は、強化繊維積層体に用いられる。強化繊維積層体は、本発明の炭素繊維テープ材料を配列・積層し、その層間の少なくとも一部を固着することで形状が保持されたものである。このような構成をとることで、強化繊維積層体を構成する炭素繊維束同士の隙間を任意の距離に設定して配置することができる。その結果、成形時におけるマトリックス樹脂の流動性を確保することができ、注入する樹脂の種類やプロセスウインドウの幅を広げることができる等、生産性を向上させることができる。
【0057】
また、炭素繊維テープ材料を用いた強化繊維積層体には、マトリックス樹脂を含浸し繊維強化樹脂成形体とすることが好ましい。前記構成をとることにより、得られる繊維強化樹脂成形体は、その内部まで樹脂が完全に含浸し、高い力学特性を有することができる。
【実施例
【0058】
本発明に係る炭素繊維テープ材料について、実施例に基づいて説明する。実施例および比較例の条件および結果を表1に示す。
【0059】
(実施例1)
<強化繊維束>
強化繊維束として、予めサイジング処理を施した、東レ株式会社製炭素繊維「トレカ」(登録商標)T800SC、炭素繊維フィラメント数が24,000本(N=24K)を用いた。
【0060】
<布地>
布地として、トリコット機を用いてチュール組織状に経編した、規則性を有する編地(材質:ポリアミド、目付:8g/m)を用いた。
【0061】
<布地の伸び率測定>
布地の伸び率は、JIS L 1096 8.16.1を参考に、以下のとおり測定した。すなわち、前記布地のウェール方向が長手方向となるように幅50mm、長さ300mmにカットし、つかみ間隔が200mmとなるようにつかみ部に印をつけた。試験片の一端をクランプで固定したのち、80mN/50mmの荷重を静かに付与して1分間保持後の印間の長さを測定した。次の式から布地伸び率を算出した結果、伸び率は52%となった。
【0062】
=[(L-L)/L]×100
:布地伸び率(%)
:元の印間の布地長さ(mm)
:荷重付与時の布地長さ(mm)
<炭素繊維テープ材料>
図示しない炭素繊維束製造装置を用いて、炭素繊維束1本をボビンから引き出して、厚みを調整しながらスリットせずに幅を狭め、その後、軟化点温度80℃の加熱溶融性のバインダ粒子(平均粒径:0.2mm)を炭素繊維束の表面に散布した。バインダ粒子の重量割合は、5%(得られた炭素繊維束の重量を100%とする)となるように散布した後、溶融、冷却することで、その形態が固定された糸幅4.8mmの炭素繊維束を得た。
【0063】
10本の炭素繊維束を長手方向に平行に引き揃えた後、その片面に軟化点温度200℃の編地(布地)を配置し、120℃で加熱してバインダ粒子を溶融することで、編地と炭素繊維束とを、バインダ粒子を介して図4(b)のように部分接着(両端以外の炭素繊維束には、バインダ粒子を直径4.5mmの球状体として千鳥状に配置、両端の2本の炭素繊維束にはバインダ粒子を全面配置)して一体化させた。このようにすることにより、幅50mm、布地を除いたテープ目付が206g/m、炭素繊維束間の各隙間が0.2mmの炭素繊維テープ材料を得た。
【0064】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
炭素繊維テープ材料の変形性評価として、2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した。長さ220mm、幅50mmの炭素繊維テープ材料を3本平行に並べ、つかみ間隔が200mmとなるようにつかみ部に印をつけた。そして、3本平行に並べた炭素繊維テープ材料を、つかみ部が200mm、測定角α[°]が90°となるように、図9に示すピクチャーフレーム治具に2辺を把持するように取り付けて測定を実施した。その結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=0.3となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示すことを確認した。
【0065】
<強化繊維積層体>
図示しないファイバープレイスメント装置を用いて、架台上に、上記のようにして得られた炭素繊維テープ材料を、それぞれの炭素繊維テープ材料間にそれぞれ0.7mmの隙間を設けるように一方向に引き揃えて配置し、300mm×300mmの正方形形状となるように炭素繊維テープ材料を切断しながら配置を繰り返してシート基材を製作した。隣り合う炭素繊維テープ材料は、隣り合う編地を1mmラップさせて、ラップ部を200℃で加熱することにより接着一体化してシート基材を製作した。
【0066】
得られたシート基材をピラミッド(四面体)形状の型(底面:1辺が14cmの正三角形、高さ:7cm)に配置し、シート基材に張力をかけながら上型を降下してプレス賦形した後、下型を120℃で10分間加熱した。その結果、シート基材は大きなしわが入ることなく良好な賦形性を示した。同様の手順でシート基材をピラミッド形状の型に1層ずつ順次賦形した後、上型を閉じてから下型を120℃で10分間加熱した。その結果、大きなしわが入ることなく良好な強化繊維積層体が得られた。
【0067】
<成形体>
得られた強化繊維積層体を前述のピラミッド形状の下型に配置し、バグフィルムを用いて真空バッグした後、雰囲気温度100℃のオーブン内に型を配置した。その後、マトリックス樹脂(エポキシ樹脂)を注入し、180℃雰囲気下で硬化した。その結果、樹脂未含浸部位のない良好な成形体が得られた。
【0068】
(実施例2)
以下の点以外は実施例1と同様にして炭素繊維テープを得た。
・布地として、トリコット機を用いて鎖+ハーフ組織状に経編した、規則性を有する編地(材質:ポリアミド、目付:10g/m)を用いた。
【0069】
<布地の伸び率測定>
実施例1と同様の方法で伸び率を測定した結果、ウェール方向の伸び率は35%となった。
【0070】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
実施例1と同様の方法で2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=0.37となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示すことを確認した。
【0071】
<強化繊維積層体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、シート基材はよれやしわが生じることなく良好な強化繊維積層体が得られた。
<成形体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、樹脂未含浸部位のない良好な成形体が得られた。
【0072】
(実施例3)
以下の点以外は実施例1と同様にして炭素繊維テープを得た。
・実施例1と同様の方法で、形態が固定された糸幅3.5mmの炭素繊維束を得た後、10本の炭素繊維束を長手方向に平行に引き揃え、炭素繊維束間の各隙間をおよそ0.3mmと調整し、最終的に得られる炭素繊維テープ材料における幅が38mm、布地を除いたテープ目付が271g/mとなるようにした。
・編地と炭素繊維束とは、バインダ粒子を介して図4(a)のように部分接着(バインダ粒子を直径4.5mmの球状体として千鳥状に配置)して一体化させた。
【0073】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
実施例1と同様の方法で2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=0.17となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示すことを確認した。
【0074】
<強化繊維積層体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、シート基材はよれやしわが生じることなく良好な強化繊維積層体が得られた。
<成形体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、樹脂未含浸部位のない良好な成形体が得られた。
【0075】
(実施例4)
以下の点以外は実施例1と同様にして炭素繊維テープを得た。
・実施例1と同様の方法で、形態が固定された糸幅7.0mmの炭素繊維束を得た後、5本の炭素繊維束を長手方向に平行に引き揃え、炭素繊維束間の各隙間をおよそ0.7mmと調整し、最終的に得られる炭素繊維テープ材料における幅が38mm、布地を除いたテープ目付が135g/mとなるようにした。
・編地と炭素繊維束とは、バインダ粒子を介して、図7(a)のように炭素繊維束の繊維配向に直交する方向に離散的に部分接着(各炭素繊維束(幅7mm)のうち、中心から5mm幅分を長手方向に連続接着)して一体化させた。
【0076】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
実施例1と同様の方法で2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=0.33となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示すことを確認した。
【0077】
<強化繊維積層体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、シート基材はよれやしわが生じることなく良好な強化繊維積層体が得られた。
【0078】
<成形体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、樹脂未含浸部位のない良好な成形体が得られた。
【0079】
(実施例5)
以下の点以外は実施例1と同様にして炭素繊維テープを得た。
・布地として、Spunfab社製不織布(材質:ポリアミド、目付:6g/m)を用いた。
・実施例1と同様の方法で、形態が固定された糸幅3.5mmの炭素繊維束を得た後、10本の炭素繊維束を長手方向に平行に引き揃え、炭素繊維束間の各隙間を0.3mmと調整し、最終的に得られる炭素繊維テープ材料における幅が38mm、布地を除いたテープ目付が271g/mとなるようにした
・不織布と炭素繊維束とは、バインダ粒子を介して図4(a)のように部分接着(バインダ粒子を直径4.5mmの球状体として千鳥状に配置)して一体化させた。
【0080】
<布地の伸び率測定>
実施例1と同様の方法で伸び率を測定した結果、ウェール方向の伸び率は10%となり、良好な変形性が得られた。
【0081】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
実施例1と同様の方法で2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=0.23となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示すことを確認した。
【0082】
<強化繊維積層体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、シート基材はよれやしわが生じることなく良好な強化繊維積層体が得られた。
【0083】
<成形体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、樹脂未含浸部位のない良好な成形体が得られた。
【0084】
(比較例1)
以下の点以外は実施例1と同様にして炭素繊維テープを得た。
・布地として、Spunfab社製不織布(材質:ポリアミド、軟化点温度:130℃、目付:10g/m)を用いた。
・バインダ粒子の付着していない10本の炭素繊維束を長手方向に平行に引き揃えた後、その片面に軟化点温度130℃の不織布を配置し、130℃で加熱して不織布を溶融することで、不織布と炭素繊維束とを全面接着して一体化させた。このようにすることにより、幅が50mm、布地を除いたテープ目付が206g/m、炭素繊維束間の各隙間が0.2mmの炭素繊維テープ材料を得た。
【0085】
<布地の伸び率測定>
実施例1と同様の方法で伸び率を測定した結果、ウェール方向の伸び率は3%となり、良好な変形性は得られなかった。
【0086】
<炭素繊維テープ材料の変形性>
実施例1と同様の方法で2辺把持法によるピクチャーフレーム法を実施した結果、せん断角θ[°]が0°から45°の範囲における引張荷重F[N]は、最大値が0.5[N]より大きく、また、該最大値は、せん断角θ[°]が0°から1.0°の間には存在しなかった。そして、ΔF/Δθ=1.2となり、炭素繊維テープ材料が面内のせん断の力に対し良好な変形性を示さないことを確認した。
【0087】
<強化繊維積層体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、シート基材にはよれやしわが見られ、良好な強化繊維積層体が得られなかった。
【0088】
<成形体>
実施例1と同様の方法で実施した結果、しわの生じた箇所に樹脂未含浸部位のある成形体が得られた。
【0089】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の炭素繊維テープ材料やこれを用いた強化繊維積層体は、マトリックス樹脂の含浸性に優れるため、かかる強化繊維積層体を用いて得られる成形体は、特に、航空機や自動車、船舶等向けの大型部材や、風車ブレードのような一般産業用途の部材にも好適に用いられる。
【符号の説明】
【0091】
100、200、300、400、500、900、1100 炭素繊維テープ材料
101、201、301、401、501、601、1101 炭素繊維束
102、202、302、402、1102 炭素繊維束群
103、203、303、403、503、603、703、803、1103 布地
106、206、306 隙間
204、304、1104 樹脂バインダ
305、405、505、605、705、1105 接着領域
807 クランプ
808 印
902 つかみ部
903 炭素繊維テープ材料を把持していない2辺
904 ピクチャーフレーム治具
図1
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