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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20250520BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B60T7/12 D
B60T17/18
B60T7/12 A
B60T7/12 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021080536
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174617
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 康生
【審査官】小原 博樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-149217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行を行う車両の制動システムであって
前記自律走行に係る制御を実行する制御装置と、
前記制御装置から抑制要求を受けていない間は、前記車両に制動力及び停止保持力を発生させ、前記制御装置から前記抑制要求を受けている間は、前記車両に前記制動力及び前記停止保持力を発生させない抑制状態となるように動作する第1制動装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両の自律走行を継続中は、前記抑制要求を前記第1制動装置に出力する処理を実行し、
前記抑制要求は、
所定の周期毎に、所定のパターンでオンオフする規則に従う信号であり、
前記第1制動装置は、
前記制御装置から受ける前記信号が前記規則に従っていない場合、前記信号を前記抑制要求としない
ことを特徴とする制動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制動システムであって、
前記制御装置から制動要求を受けた場合に、前記車両に制動力を発生させるように動作する第2制動装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記自律走行において制動が必要である場合に、前記制動要求を前記第2制動装置に出力する処理を実行する
ことを特徴とする制動システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制動システムであって、
前記車両に前記自律走行に支障のある異常が発生しているとする場合、前記第1制動装置は、
前記抑制要求に依らずに、前記車両に前記制動力及び前記停止保持力を発生させる
ことを特徴とする制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行を行う車両の制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバー操作又は制御装置の出力により要求が与えられた場合に車両の制動を行う様々な制動システムが提案されている。
【0003】
特許文献1には、自動運転が可能な車両に設けられる制動システム(ブレーキシステム)において、簡単な構成で、保持力が高いパーキングブレーキを実現する制動システムが開示されている。この制動システムは、同じ液圧伝達経路に設けられ、かつ、非電気作動式のブレーキ液圧発生装置を含む複数のブレーキ液圧発生装置を備えている。そして、非通電状態である場合又は緊急停止ボタンの操作後に非通電状態に移行する場合には、非電気作動式のブレーキ液圧発生装置のブレーキ液圧で制動力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-168929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車内にドライバーを必要とせずに車両が自律走行を行う自動運転システム(レベル4以上の自動運転システム)の開発が進められている。このような自動運転システムにおいては、自律走行に係る制御を実行する制御装置の出力により要求が与えられ車両の運転操作が実現されることになる。
【0006】
従って、このような自動運転システムに、要求が与えられた場合に制動を行う従来の制動システムを適用すると、制御装置の失陥や異常により制御装置の出力が停止又は異常となる場合に適切に車両の制動を行うことができなくなる虞がある。
【0007】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、自律走行を行う車両において、制御装置の失陥や異常が発生したとしても、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことが可能な制動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の開示に係る制動システムは、自律走行に係る制御を実行する制御装置と、制御装置から抑制要求を受けていない間は、車両に制動力及び停止保持力を発生させ、制御装置から抑制要求を受けている間は、車両に制動力及び停止保持力を発生させない抑制状態となるように動作する第1制動装置と、を備えている。そして、制御装置は、車両の自律走行を継続中は、抑制要求を第1制動装置に出力する処理を実行する。
【0009】
第2の開示に係る制動システムは、第1の開示に係る制動システムに対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
制御装置が出力する抑制要求は、所定の周期毎に、所定のパターンでオンオフする規則に従う信号である。そして、第1制動装置は、制御装置から受ける信号がこの規則に従っていない場合、その信号を抑制要求としない。
【0010】
第3の開示に係る制動システムは、第1又は第2の開示に係る制動システムに対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
制動システムは、制御装置から制動要求を受けた場合に、車両に制動力を発生させるように動作する第2制動装置をさらに備えている。そして、制御装置は、自律走行において制動が必要である場合に、制動要求を第2制動装置に出力する処理を実行する。
【0011】
第4の開示に係る制動システムは、第1乃至第3の開示のいずれか1つの開示に係る制動システムに対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
車両に自律走行に支障のある異常が発生しているとする場合、第1制動装置は、抑制要求に依らずに、車両に制動力及び停止保持力を発生させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る制動システムによれば、第1制動装置は、制御装置から抑制要求を受けていない間は、車両に制動力及び停止保持力を発生させる一方で、制御装置から抑制要求を受けている間は抑制状態となる。また、制御装置は、車両の自律走行を継続中は、抑制要求を第1制動装置に出力する。これにより、制御装置による車両の自律走行を実現しつつ、制御装置の失陥や異常が発生した場合は、第1制動装置が車両に制動力及び停止保持力を発生させ、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る制動システムが適用される自動運転システムの構成の例を説明するためのブロック図である。
図2】本実施の形態に係る制動システムについて説明するためのブロック図である。
図3】自律走行制御装置が出力する抑制要求の例を示す概念図である。
図4】自律走行制御装置が出力する信号と、その信号に対する第1制動装置の状態の例を示す概念図である。
図5】自律走行制御装置の失陥や異常が発生した場合の、制動システムの動作について説明するためのブロック図である。
図6】本実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システムにおいて、車両の起動プロセスの例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システムにおいて、車両が自律走行を開始する際の車両の動作の例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システムにおいて、車両が自律走行を終了する際の車両の動作の例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システムにおいて、車両の起動終了プロセスの例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システムにおいて、異常処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
1.自動運転システム
本実施の形態に係る制動システムは、車内にドライバーを必要とせずに車両が自律走行を行う自動運転システムに適用される。図1は、本実施の形態に係る制動システムが適用される自動運転システム10の構成の例を説明するためのブロック図である。自動運転システム10は、自律走行制御装置100と、運転操作装置200と、駐車/非常用エネルギー保持供給装置300と、を含んでいる。
【0016】
自律走行制御装置100は、運転操作装置200に含まれる装置と互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、ワイヤーハーネスにより電気的に接続している。ただし、その他の態様により構成されていても良い。例えば、無線通信や光通信により情報を伝達することができるように構成されていても良い。
【0017】
自律走行制御装置100は、自律走行に係る制御を実行し、自律走行を行うための制御信号を出力する制御装置である。典型的には、車両の運転環境に関する情報を示す運転環境情報や地図情報に基づいて、目的地までの走行計画を設定し、走行ルート上の走行軌道を生成する。そして、走行軌道に沿って車両が走行するように、加速、操舵、制動、その他自律走行に関連する運転操作(ヘッドライトの点灯、方向指示器の作動、ハザードの点灯、ワイパーの作動、クラクションの作動等)に係る制御信号を生成して出力する。ここで、運転環境情報や地図情報は、典型的には、図1において図示しない車両に備えるセンサや通信装置を介して取得される。
【0018】
自律走行制御装置100は、メモリ110とプロセッサ120と、を備える情報処理装置である。典型的には、自律走行制御装置100は、ECU(Electronic Control Unit)である。メモリ110は、プロセッサ120で実行可能なプログラム111と、自律走行制御装置100が取得する情報やプログラム111に係る種々の情報を含むデータ112を記憶している。プロセッサ120は、メモリ110からプログラム111を読み出し、メモリ110から読み出すデータ112の情報に基づいて、プログラム111に従う処理を実行する。
【0019】
自律走行制御装置100は、入出力インターフェースを介して、制御信号を出力する。自律走行制御装置100が出力する制御信号は、運転操作装置200に伝達される。
【0020】
運転操作装置200は、自律走行制御装置100から取得する制御信号に従って、車両の運転操作を実現する装置の類である。運転操作装置200に含まれる装置が、自律走行制御装置100が出力する制御信号に従って動作することにより、車両の自律走行が実現される。運転操作装置200は、加速装置210と、操舵装置220と、制動装置230と、を含んでいる。また、その他運転操作装置240を含んでいても良い。ここで、運転操作装置200に含まれる装置を機能的に分類しているが、それぞれの装置は統合されて構成されていても良い。例えば、インホイールモーターのように、加速装置210及び制動装置230が1つの装置に統合されて構成されていても良い。
【0021】
加速装置210は、前進後退の加速に係る運転操作を実現する装置である。典型的には、エンジン(内燃機関、電気モータ、あるいはそれらのハイブリット等)や変速機構の状態を検出するセンサと、エンジンや変速機構を駆動するアクチュエータと、そのアクチュエータを制御するECUと、により構成される。そして、自律走行制御装置100から取得する制御信号に従って、ECUがアクチュエータを制御することで、自律走行の加速に係る運転操作が実現される。
【0022】
操舵装置220は、操舵に係る運転操作を実現する装置である。典型的には、車両に備えるステアリング機構の状態を検出するセンサと、ステアリング機構を駆動するアクチュエータと、そのアクチュエータを制御するECUと、により構成される。そして、自律走行制御装置100から取得する制御信号に従って、ECUがアクチュエータを制御することで、自律走行の操舵に係る運転操作が実現される。
【0023】
制動装置230は、制動に係る運転操作を実現する装置である。典型的には、車両に備えるブレーキ機構の状態を検出するセンサと、ブレーキ機構を駆動するアクチュエータと、そのアクチュエータを制御するECUと、により構成される。そして、自律走行制御装置100から取得する制御信号に従って、ECUがアクチュエータを制御することで、自律走行の制動に係る運転操作が実現される。
【0024】
本実施の形態に係る制動システムを適用した自動運転システム10では、後述するように、制動装置230は、第1制動装置と、第2制動装置と、を含んでいる。第1制動装置及び第2制動装置については後述する。
【0025】
その他運転操作装置240は、例えば、ヘッドライト、方向指示器、ハザード、ワイパー、クラクション等の操作に係る装置である。
【0026】
駐車/非常用エネルギー保持供給装置300は、駐車等の車両停止時や非常時に必要なエネルギーを保持し、必要に応じて供給する装置である。典型的には、蓄圧装置、蓄電装置、ばね、ラッチ機構等である。
【0027】
2.制動システム
以下、図1に示す自動運転システム10に適用される場合として、本実施の形態に係る制動システムについて説明する。
【0028】
2-1.構成
図2は、本実施の形態に係る制動システム20の構成について説明するためのブロック図である。図2の(A)は、自律走行制御装置100により車両が自律走行を継続している場合(自律走行継続中)を示し、図2の(B)は、自律走行を終了している場合(自律走行終了中)を示している。ここで、自律走行を終了している場合とは、自律走行制御装置100による車両の自律走行が行われていない場合であり、車両が起動していないか、車両が自律走行を終了(電源オフ又はエンジンオフにより車両が停止)している間(以下、「終了状態」とも称する。)、車両の起動後自律走行を開始するまでの間、車両を駐車している間、車両が自律走行を終了し一時的に休止(例えば、駐車位置で停車)している間、自律走行制御装置100の起動を終了した後、等を含んでいる。
【0029】
制動システム20は、自律走行制御装置100と、第1制動装置231と、第2制動装置232と、を備えている。ここで、第1制動装置231、及び第2制動装置232は、制動装置230に含まれる装置である。
【0030】
第1制動装置231は、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない間は、車両に制動力及び停止保持力を発生させる(制動状態)。一方で、自律走行制御装置100から抑制要求を受けている間は、車両に制動力及び停止保持力を発生させない状態(抑制状態)となるように動作する。ここで、停止保持力とは、坂路等において車両が移動せずに停止している状態を維持するための力である。抑制要求の詳細については後述する。
【0031】
なお、第1制動装置231は、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない間は、制動力及び停止保持力を発生させるに当たり、外部からのエネルギー供給を必要とすることはない。つまり、外部からのエネルギー供給が途絶えても、所要の制動力を発生させ、また停止保持を維持することができる。
【0032】
例えば、第1制動装置231は、車両の車輪をブレーキパッドやブレーキシュー等で押さえた状態となっており、またブレーキパッドやブレーキシュー等を動作させるアクチュエータを備えている。そして、自律走行制御装置100から抑制要求を受けている間は、ブレーキパッドやブレーキシュー等が車輪を解放するようにアクチュエータを動作させる。
【0033】
この場合、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない間は、車両の車輪がブレーキパッドやブレーキシュー等で押さえられた状態が維持されることで、制動力及び停止保持力が発生し、自律走行制御装置100から抑制要求を受けている間は、ブレーキパッドやブレーキシュー等が車輪を解放することで、制動力及び停止保持力を発生させない抑制状態となる。
【0034】
第2制動装置232は、自律走行制御装置100から制動要求を受けた場合に、車両に制動力を発生させるように動作する。第2制動装置に与えられる制動要求には、制動の程度を示す制御量が含まれていても良い。この場合、第2制動装置は、制御量に従ってアクチュエータを動作し、車両の制動を行う。
【0035】
第2制動装置232は、例えば、典型的なディスクブレーキ又はドラムブレーキによるブレーキ機構に係る装置であって、制動要求を受けた場合に、車両の車輪をブレーキパッド又はブレーキシューにより押さえるようにアクチュエータを動作させて制動力を発生させる装置である。
【0036】
以下図2を参照して、制動システム20の典型的な動作について説明する。
【0037】
まず図2の(A)を参照して、自律走行継続中の場合の制動システム20の動作について説明する。図2の(A)に示すように、自律走行継続中、自律走行制御装置100は、制御信号として抑制要求を第1制動装置231に出力する処理を実行する。つまり、自律走行継続中は、第1制動装置231は抑制状態となり制動力及び停止保持力を発生させない。
【0038】
一方で、自律走行継続中であって、自律走行において制動が必要な場合(例えば、先行車が減速した場合、一時停止する場合等)は、自律走行制御装置100は、制御信号として制動要求を第2制動装置232に出力する処理を実行する。これにより、自律走行において制動が必要な場合は、第2制動装置232が制動力を発生させることで、制動に係る運転操作を実現することができる(一点鎖線)。
【0039】
次に図2の(B)を参照して、自律走行終了中の場合の制動システム20の動作について説明する。図2の(B)に示すように、自律走行終了中、自律走行制御装置100は、出力を停止することとなる。従って、第1制動装置231は、抑制要求を受けることなく制動状態となり、制動力及び停止保持力を発生させる。これにより、自律走行終了中の車両の停止、及び停止保持を実現することができる。一方で、第2制動装置232は、制動要求を受けないため、制動力を発生させない。
【0040】
このように、制動システム20を適用した自動運転システム10では、自律走行継続中は、第2制動装置232により制動に係る運転操作が実現され、自律走行終了中は、第1制動装置231により車両の停止、及び停止保持が実現される。
【0041】
2-2.抑制要求
前述したように、自律走行継続中、自律走行制御装置100は、抑制要求を第1制動装置231に出力する。そして、第1制動装置231は、抑制要求を受けている間は、抑制状態となり制動力及び停止保持力を発生させない。以下、抑制要求についてより詳細に説明する。
【0042】
図3は、自律走行制御装置100が出力する抑制要求の例を示す概念図である。図3に示す例では、抑制要求は、周期dt毎に、時間d1の間オン、その後時間d2の間オフ、その後時間d3の間オン、その後時間d4の間オフ、その後時間d5の間オン、その後時間d6の間オフとなるパターンでオンオフする信号である。このように、抑制要求は、所定の周期dt毎に、所定のパターンでオンオフする規則に従う信号である。ただし、所定の周期dt及び所定のパターンは、実験的に最適に与えられて良い。
【0043】
第1制動装置231は、自律走行制御装置100から伝達される信号が所定の周期及びパターンでオンオフする規則に従う間は、抑制要求を受けていると判断し、抑制状態となる。一方で、この所定の規則に従わない信号が伝達されたとき、その信号を抑制要求ではないと判断し、制動状態となる。これらの判断は、典型的には、第1制動装置231を構成するECUにより実行される。
【0044】
図4は、自律走行制御装置100が出力する信号(出力信号)と、その信号に対する第1制動装置231の状態の例を示す概念図である。ここで、抑制要求は、図3に示す例と同等の所定の規則に従う信号である場合とする。また、図4では、2つの例(A)と(B)を示している。以下、それぞれの例について説明する。
【0045】
図4の(A)に示す例は、自律走行制御装置100が、時刻t1から1周期の間、所定の規則に従う信号を出力し、その後、信号を停止する場合を示している(実線)。この場合、第1制動装置231は、時刻t1から時刻t2の間は、伝達される信号が所定の規則に従っていることから、抑制要求を受けていると判断し、抑制状態を継続する。そして、時刻t2において、所定の規則ではオンであるのに対し(破線)伝達される信号がオフであり、所定の規則に従っていないことから、抑制要求を受けていないと判断し、制動状態となる。
【0046】
図4の(B)に示す例では、自律走行制御装置100が、時刻t1から2周期の間、規則に従う信号を出力し、その後、図4の(B)に示すように規則に従わない信号が出力され続ける場合を示している(実線)。これは、例えば、時刻txにおいて自律走行制御装置100に出力異常が発生した場合等である。この場合、第1制動装置231は、時刻t1から時刻txの間は、伝達される信号が所定の規則に従っていることから、抑制要求を受けていると判断し、抑制状態を継続する。そして、時刻txにおいて、所定の規則ではオフであるのに対し(破線)伝達される信号がオンであり、所定の規則に従っていないことから、抑制要求を受けていないと判断し、制動状態となる。
【0047】
ここで、抑制要求を受けていないと判断し、制動状態となった場合、第1制動装置231は、自律走行に支障のある異常が発生していないことを確認するまで伝達される信号に依らず制動状態を継続するように構成されていても良い。
【0048】
このように、第1制動装置231は、自律走行制御装置100の出力が停止した場合の他、故障等により自律走行制御装置100の出力が異常となった場合においても、制動状態となり、制動力及び停止保持力を発生させる。
【0049】
なお、第1制動装置231による制動力及び停止保持力の発生の応答性を十分に保つため、周期dtは十分に短く与えられることが望ましい。
【0050】
2-3.自律走行制御装置の失陥や異常発生時の動作
以下、自律走行制御装置100の失陥や異常が発生した場合の、制動システム20の動作について説明する。
【0051】
図5は、自律走行制御装置100の失陥や異常が発生した場合の、制動システム20の動作について説明するためのブロック図である。
【0052】
まず図5の(A)を参照して、自律走行制御装置100が失陥した場合(失陥時)の制動システム20の動作について説明する。図5の(A)に示すように、失陥時、自律走行制御装置100は、出力が固定、あるいは出力を停止することとなる。従って、第1制動装置231は、抑制要求を受けていないと判断し制動状態となり、制動力及び停止保持力を発生させる。
【0053】
次に図5の(B)を参照して、自律走行制御装置100に異常が発生し出力異常となる場合(異常時)の制動システム20の動作について説明する。このとき、第1制動装置231は、自律走行制御装置100から伝達される信号が規則に従っていないことから抑制要求を受けていないと判断し制動状態となり、制動力及び停止保持力を発生させる。
【0054】
このように、制動システム20を適用した自動運転システム10では、自律走行制御装置100の失陥や異常が発生した場合であっても、第1制動装置231が制動力及び停止保持力を発生させ、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことができる。
【0055】
なお、前述したように、第1制動装置231は制動力及び停止保持力を発生させるに当たり、外部からのエネルギー供給を必要とすることはない。従って、駐車/非常用エネルギー保持供給装置300が供給するエネルギーが途絶えて動力が失われたとしても、車両の停止保持を維持することができる。
【0056】
また後述するように、第1制動装置231は、車両に自律走行に支障のある異常が発生し、所定の異常処理が実行された場合において、抑制要求に依らずに制動力及び停止保持力を発生するように動作しても良い。これにより、自律走行継続中に自律走行制御装置100の出力異常以外の異常が発生した場合においても、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことができる。
【0057】
2-4.補足
前述したように、制動システム20を適用した自動運転システム10では、自律走行継続中は、第2制動装置232により制動に係る運転操作が実現され、自律走行終了中は、第1制動装置231により車両の停止、及び停止保持が実現される。また、自律走行制御装置100の失陥や異常が発生した場合には、第1制動装置231が制動力及び停止保持力を発生させ、車両の制動を行う。
【0058】
つまり、第1制動装置231は、典型的には、駐車用又は非常用として機能する。一方で、第2制動装置232は、典型的には、車両が走行中の主制動装置として機能する。なお、第1制動装置231及び第2制動装置232は、複数の装置を含む類であっても良い。例えば、第1制動装置231は、駐車用として機能する装置と、非常用として機能する装置と、を別個に含んでいても良い。さらに、第2制動装置232は、主制動装置として機能する装置とは別個に、駐車用として機能する装置と、非常用として機能する装置と、を含むことで、冗長な多重系の安全機構を構成しても良い。
【0059】
3.車両の動作
以下、本実施の形態に係る制動システム20を適用した自動運転システム10による車両の動作について説明する。
【0060】
3-1.車両の起動
図6は、車両の起動プロセスの例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、車両が終了状態から起動する際に開始する。典型的には、車両が終了状態のときに、車両又は車両の外部に備えられる起動装置が操作されたときに開始する。
【0061】
ステップS100において、車両の電源をオンする。ステップS100の後、ステップS110に進む。
【0062】
ステップS110において、車両の認証を行い、認証のチェックを行う。車両の認証は、例えば、車両の乗員が車両に備える認証装置を操作することにより行われる。あるいは、車両のオペレータが車両の一部、あるいは外部の認証装置を操作することにより行われる。
【0063】
ステップS110における車両の認証が正しく完了した場合(ステップS120;Yes)、ステップS130に進む。ステップS110における車両の認証が正しく完了しない場合(ステップS120;No)、車両に認証上の異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。異常処理については後述する。
【0064】
なお、車両の認証が正しく完了しないとする判断は、ステップS110における車両の認証のチェックにおいて、所定回数あるいは所定時間以内に認証されない場合であって良い。
【0065】
ステップS130において、運転操作装置200の起動前処理を行う。これにより、運転操作装置200が正常に起動可能であるかが確認される。典型的には、それぞれの装置が接続する機器の状態確認やそれぞれの装置のソフトウェアの更新の確認を行う。これは、それぞれの装置において行われても良いし、車両に備えるいずれか1つ又は複数の装置において行われても良い。
【0066】
ステップS130の後、運転操作装置200が正常に起動可能である場合(ステップS140;Yes)、ステップS150に進む。運転操作装置200が正常に起動可能でない場合(ステップS140;No)、車両の運転操作に支障のある異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0067】
ステップS150において、運転操作装置200を起動する。このとき、典型的には、運転操作装置200に係るECUにおける制御パラメータ等の設定値の読み込み、ブレーキ機構の状態を検出するセンサ及びセンサデータのチェック、及びダイアグ機能による自己診断が行われる。ここで、運転操作装置200のダイアグ機能又は車両に備えるダイアグ装置、あるいはそれらの組み合わせにより、運転操作装置200が正常であるか否かが判断される。
【0068】
ステップS150の後、運転操作装置200が正常である場合(ステップS160;Yes)、ステップS170に進む。運転操作装置200が正常でない場合(ステップS160;No)、車両の運転操作装置200に支障のある異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0069】
ステップS170において、自律走行制御装置100を起動する。このとき、典型的には、制御パラメータ等の設定値の読み込み、自律走行に係るセンサ及びセンサデータのチェック、及びダイアグ機能による自己診断が行われる。ここで、自律走行制御装置100のダイアグ機能又は車両に備えるダイアグ装置、あるいはそれらの組み合わせにより、自律走行制御装置100が正常であるか否かが判断される。
【0070】
ステップS170の後、自律走行制御装置100が正常である場合(ステップS180;Yes)、起動プロセスを終了する。自律走行制御装置100が正常でない場合(ステップS180;No)、自律走行制御装置100に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0071】
なお、運転操作装置200及び自律走行制御装置100以外の搭載装置については、図6に示すフローチャートでは省略している。ただし、それらの搭載装置についても、運転操作装置200及び自律走行制御装置100と同様に、起動及び正常であるか否かの判断が適宜行われるように構成して良い。
【0072】
また、第1制動装置231は、車両が自律走行を開始するまでは、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない。つまり、車両が終了状態であるとき、第1制動装置231は制動状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させている。これにより、車両が終了状態、及び車両の起動後自律走行を開始するまでの間においても、車両の停止、及び停止保持が実現される。
【0073】
3-2.自律走行の開始
図7は、車両が自律走行を開始する際の車両の動作の例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、典型的には、車両が停止中に開始される。例えば、車両の起動後自律走行の開始を待機している間、車両を駐車している間、自律走行を一時的に休止している間、等である。
【0074】
ステップS200において、自律走行制御装置100が自律走行に係る制御を実行することで、車両は自律走行を開始する。このとき、典型的には、開始前処理として自律走行制御装置100により、車両の現在位置周囲の環境の確認、道路交通情報の取得、走行計画の生成等が行われる。
【0075】
ステップS200の後、自律走行への移行が正常に行われたか否かが判断される。例えば、制御信号に従う車両の走行が実現されているか、運転操作装置200が制御信号に従って動作しているか等により判断される。自律走行への移行が正常に行われた場合(ステップS210;Yes)、自律走行を継続する(ステップS220)。自律走行への移行が正常に行われていない場合(ステップS210;No)、自律走行への移行に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0076】
自律走行を継続中(ステップS220)、所定の周期毎に自律走行制御装置100が正常であるか否かが判断される(ステップS221)。これは、自律走行制御装置100のダイアグ機能又は車両に備えるダイアグ装置、あるいはそれらの組み合わせにより行われる。自律走行制御装置100が正常である場合(ステップS221;Yes)、自律走行を継続する。自律走行制御装置100が正常でない場合(ステップS221;No)、自律走行制御装置100に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0077】
なお、自律走行を開始(ステップS200)後から自律走行を継続中(ステップS220)において、自律走行制御装置100は、第1制動装置231に対して抑制要求を出力する。つまり、自律走行を開始後(ステップS200)から自律走行を継続中(ステップS220)において、第1制動装置231は抑制状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させていない。一方で、自律走行を継続中(ステップS220)において、車両の制動が必要となる場合、自律走行制御装置100は、第2制動装置232に対して制動要求を出力する。これにより、自律走行の開始及び継続、自律走行における制動が実現される。
【0078】
また、図7に示すフローチャートが開始される前においては、自律走行を開始していない状態であるため、第1制動装置231は制動状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させている。
【0079】
3-3.自律走行の終了
図8は、車両が自律走行を終了する際の車両の動作の例を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、車両が自律走行を継続中であって、車両を所定の位置に停止させる場合に開始される。例えば、走行計画における目的地に車両を停止させる場合、車両を駐車させる場合、自律走行を一時的に休止させる場合、等に開始される。
【0080】
ステップS300において、自律走行制御装置100により、車両を所定の位置に停止させるための車両の停止処理を開始する。
【0081】
ステップS300の後、停止処理への移行が正常に行われた否かが判断される。停止処理への移行が正常に行われた場合(ステップS310;Yes)、停止処理を継続する(ステップS320)。停止処理への移行が正常に行われていない場合(ステップS310;No)、停止処理への移行に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0082】
停止処理を継続中(ステップS320)、所定の周期毎に自律走行制御装置100が正常であるか否かが判断される(ステップS321)。自律走行制御装置100が正常である場合(ステップS321;Yes)、停止処理を継続する。自律走行制御装置100が正常でない場合(ステップS321;No)、停止処理中に自律走行制御装置100に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0083】
停止処理により車両の停止が完了した後(ステップS322;Yes)、自律走行を終了する(ステップS330)。
【0084】
なお、停止処理を継続中(ステップS320)は、自律走行制御装置100は第1制動装置231に対する抑制要求を出力している。つまり、停止処理を継続中(ステップS320)は、第1制動装置231は抑制状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させていない。
【0085】
また、自律走行を終了(ステップS330)後、自律走行制御装置100から第1制動装置231に対する抑制要求の出力が停止する。つまり、自律走行を終了(ステップS330)後、第1制動装置231は制動状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させる。これにより、自律走行の終了後において、車両の停止、及び停止保持が実現される。
【0086】
なお、自律走行を終了(ステップS330)後、再度自律走行を開始する場合(例えば、駐車位置で停止している状態から自律走行を開始する場合、自律走行の一時的な休止から復帰する場合等)は、図7に示すフローチャートを再度開始する。この場合、自律走行制御装置100は起動した状態を維持(例えば、省エネモードで待機状態)したままであって良い。ただし、前述したように、自律走行を終了(ステップS330)後、再度自律走行を開始するまでの間は、自律走行制御装置100から第1制動装置231に対する抑制要求の出力は停止していても良く、この場合、第1制動装置231は制動状態である。
【0087】
3-4.車両の起動終了
図9は、車両の起動終了プロセスの例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、典型的には、自律走行の終了後、車両が目的地に到達した場合等の車両の利用が終了する場合に開始する。あるいは、自律走行の終了後、車両又は車両の外部に備える起動装置に対して車両の起動を終了する操作がされたときに開始する。
【0088】
ステップS400において、自律走行制御装置100が正常であるか否かが判断される。自律走行制御装置100が正常である場合(ステップS400;Yes)、ステップS410に進む。自律走行制御装置100が正常でない場合(ステップS400;No)、自律走行制御装置100に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0089】
ステップS410において、車両が停止しているか否かが判断される。典型的には、運転環境情報に基づいて判断される。車両が停止している場合(ステップS410;Yes)、ステップS420に進む。車両が停止していない場合(ステップS410;No)、車両停止判定に異常が発生しているとして異常処理(ステップS500)に移行する。
【0090】
ステップS420において、運転操作装置200の起動終了を行う。
【0091】
ステップS420の後、車両の電源をオフする(ステップS430)。
【0092】
なお、運転操作装置200の起動終了(ステップS420)後においても、第1制動装置231は制動状態であり、車両に制動力及び停止保持力を発生させる。これにより、運転操作装置200の起動終了後においても、車両の停止、及び停止保持が実現される。
【0093】
3-5.異常処理
図10は、異常処理を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、前述したような車両に自律走行に支障のある異常が発生し、異常処理に移行した場合(ステップS500)に開始する。
【0094】
異常処理に移行した後、所定の処理を実行する(ステップS510)。例えば、所定のプロセスに従って車両を停止させる処理、ダイアグ機能により車両状態等のセンサデータを各ECUのメモリに記憶する処理、異常の発生を通知(音、表示等による)する処理等を実行する。ここで、異常の内容に応じて異なる処理が実行されても良い。
【0095】
所定の処理の実行(ステップS510)後、自律走行制御装置100が抑制要求を出力しているかどうかに依らず、第1制動装置231を抑制状態としない(ステップS520)。つまり、第1制動装置231は、抑制要求に依らずに、車両に制動力及び停止保持力を発生させる。これは、例えば、第1制動装置231に係るECUが、異常処理の実行を受けて抑制要求を無視する処理を実行することにより行われる。あるいは、自律走行制御装置100から第1制動装置231への情報の伝達の遮断や、第1制動装置231に係るECUの起動を終了することにより行われても良い。これにより、第1制動装置231は制動状態となり、車両の停止、及び停止保持が行われる。
【0096】
このような異常処理が実行されることで、車両の認証が正しく完了しない場合、運転操作装置200が正常に起動できない場合、自律走行制御装置100が正常でない場合、自律走行への移行が正常に行われていない場合、停止処理への移行が正常に行われていない場合、終了プロセスにおいて車両が停止していない場合、といった車両に自律走行に支障のある異常が発生している場合において、第1制動装置231により車両の停止、及び停止保持を行うことができる。
【0097】
なお、異常処理は、制動装置230が正常でない場合においても実行されて良い。この場合に、第1制動装置231が正常でないときは、第2制動装置232による制動が行われるように構成して良い。
【0098】
異常処理の後、運転操作装置200の故障等による失陥がなければ、典型的には、車両は自律走行が開始(図4に示す車両の動作の開始)されるまで第1制動装置231により停止した状態となる。
【0099】
なお、異常処理に係る処理は、車両に備えるそれぞれの装置において適宜実行されても良いし、車両に備えるいずれか1つ又は複数の装置において行われても良い。さらに、自律走行中に何らかの理由で検出されない異常状態に備えて、自律走行制御装置100が正常に作動している場合においても、自律走行中の車両を外部から停止させることが可能な非常停止手段(例えば、緊急停止ボタンや、バンパースイッチ、タッチセンサ等)を設けても良い。そして、何らかの理由で異常処理されない場合は、非常停止手段によって、第1制動装置を制動状態となるようにしても良い。
【0100】
4.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る制動システム20は、第1制動装置231を備える。第1制動装置231は、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない間は、制動状態となる一方で、自律走行制御装置100から抑制要求を受けている間は抑制状態となる。自律走行制御装置100は、車両の自律走行継続中は、抑制要求を第1制動装置231に出力する。これにより、自律走行制御装置100による車両の自律走行を実現しつつ、自律走行制御装置100の失陥や異常が発生した場合であっても、第1制動装置231が制動力及び停止保持力を発生させ、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことができる。
【0101】
また、第1制動装置231は、自律走行制御装置100から抑制要求を受けていない間は、制動力及び停止保持力を発生させるに当たり、外部からのエネルギー供給を必要とすることはない。これにより、車両が起動する前や、駐車/非常用エネルギー保持供給装置300が供給するエネルギーが途絶えた場合等、動力が失われた後においても車両の停止、及び停止保持を行うことができる。
【0102】
また、抑制要求は、所定の周期dt毎に、所定のパターンでオンオフする規則に従う信号であり、第1制動装置231は、自律走行制御装置100から伝達される信号が規則に従っていない場合、信号を抑制要求としない。これにより、自律走行制御装置100の出力が異常である場合に、第1制動装置231が制動力及び停止保持力を発生させ、ドライバーを必要とすることなく車両の制動を行うことができる。
【0103】
また、本実施の形態に係る制動システム20は、第2制動装置232を備える。第2制動装置は、自律走行制御装置100から制動要求を受けた場合に、車両に制動力を発生させるように動作する。そして、自律走行制御装置100は、自律走行において制動が必要である場合は、制動要求を第2制動装置に出力する。これにより、自律走行における制動を実現することができる。
【0104】
さらに、本実施の形態に係る制動システム20は、異常処理において、第1制動装置を抑制状態としないようにする。これにより、車両に自律走行に支障のある異常が発生している場合において、第1制動装置231により車両の停止、及び停止保持を行うことができる。また、何らかの理由で異常処理されない場合は、自律走行中の車両外部から操作できる非常停止手段を介在させることによって、第1制動装置を制動状態となるように構成することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 自動運転システム
20 制動システム
100 自律走行制御装置
200 運転操作装置
210 加速装置
220 操舵装置
230 制動装置
231 第1制動装置
232 第2制動装置
240 その他運転操作装置
300 駐車/非常用エネルギー保持供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10